JP2005057095A - セラミック多層回路基板 - Google Patents

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健吾 戸田
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Abstract

【課題】積層数が十分に多く且つ高温で安定して使用でき、しかも、製造工程の簡単なセラミック多層回路基板を提供する。
【解決手段】グリーンシート法で製造され且つタングステン等が内部配線層14に用いられ且つ高温で焼結するアルミナで絶縁体層12を構成した回路基板10において、内部配線層14と同じタングステン等から成る貫通導体20と厚膜銅から成る表面導体層18との間に、それらに共に固溶する二酸化マンガンを含む接合層24が備えられるので、貫通導体20との間ではタングステン等と二酸化マンガンとの間の化学的結合によって接合層24と貫通導体20とが強固に接合される。また、接合層24と表面導体層18との間では、接合層24を構成する二酸化マンガンおよび銅と表面導体層18内の銅との間の化学的結合によってそれらが強固に接合される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数の導体層がセラミックスから成る絶縁体層を介して積層されたセラミック多層回路基板に関する。
例えば、アルミナ・セラミックス等から成る絶縁体層と導体層とが交互に積層されることにより複数の導体層を備えたセラミックス多層回路基板が知られている。このような回路基板は、種々の装置に用いられるが、例えば、高温環境下で使用される回路基板においては、可及的に小さく且つ比較的高温でも安定して長期間動作し得ることが要求される。
ところで、セラミック多層回路基板の製造方法は種々知られているが、例えば、焼結基板上に導体ペーストと絶縁体ペーストとを交互に印刷して積層する厚膜印刷法や、未焼成セラミック・シート(すなわちグリーンシート)の表面に導体パターンを印刷し、これを積層して絶縁体と導体とを同時に焼結するシート積層法或いはグリーンシート法と称される方法等が一般に行われている。後者のシート積層法は、900(℃)程度の低温で焼結するセラミック材料を用いた低温焼結基板(LTCC)と称されるものや、1500(℃)程度の高温で焼結するアルミナ等を用いたもの(アルミナ多層基板)などがある(例えば非特許文献1、特許文献1等参照)。
中重治・早川茂共著、「ファインセラミクステクノロジーシリーズ(3)電子材料セラミクス」、株式会社オーム社、1986年9月30日、p.173−188,202−203 特開平10−158082号公報
しかしながら、厚膜印刷法による多層回路基板は、積層数が増すに従って基板表面の凹凸が大きくなることから印刷が次第に困難になる。そのため、積層できる層数が例えば4層程度と少なく、十分な多層化ができない不都合がある。また、低温焼結基板では、導体パターンをそれぞれ印刷形成したグリーンシートを積層して絶縁体層と導体パターンとを同時焼成する。そのため、積層数を比較的多くすることができるが、このような材料は熱伝導率が例えば1(W/mK)程度と低くアルミナの1/20程度に過ぎないので、放熱性が要求される用途では放熱対策が必要になり、しかも、高温での信頼性に劣る不都合がある。
また、アルミナ多層基板では、熱伝導率が高く且つ高温で焼結されるので、低温焼結の場合のような問題はないが、導体層の形成材料に焼結温度に耐えるタングステンやモリブデン等の高融点導体材料が用いられる。これらの高融点材料で形成されたパターン上に抵抗体等の回路部品を接続形成することは困難であるため、回路部品を設けるに先立って、例えば、表面に形成された高融点材料のパターン上に銅を鍍金する必要があるが(例えば前記の特許文献1参照)、銅鍍金の工程で基板が水溶液に浸されることから基板表面が汚れ易く、しかも、付着した水分の乾燥や鍍金膜の熱処理等の工程が必要となる不都合がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、積層数が十分に多く且つ高温で安定して使用でき、しかも、製造工程の簡単なセラミック多層回路基板を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、高融点導体材料から成る導体パターンを形成したグリーンシートを積層して焼成処理を施すことにより得られる複数層の内部導体層が絶縁体層を介して積層されたセラミック基体と、そのセラミック基体の表面にその絶縁体層によってその内部導体層と絶縁された状態で設けられた表面導体層と、それら内部導体層および表面導体層を相互に接続するためにその絶縁体層を貫通して設けられた高融点導体材料から成る貫通導体とを備えたセラミック多層回路基板において、(a)前記表面導体層を厚膜銅で構成すると共に、(b)その表面導体層と前記貫通導体との間にその貫通導体を構成する高融点導体材料および銅の何れにも固溶する固溶導体成分と銅とを含む接合層を設けたことにある。
このようにすれば、十分な多層化が可能なグリーンシート法で製造され且つ高融点導体材料が内部配線に用いられることから高温で焼結する絶縁体材料を用い得るセラミック基体を備えた基板において、高融点導体材料から成る貫通導体と厚膜銅から成る表面導体層との間に、それらに共に固溶する固溶導体成分を含む接合層が備えられるので、貫通導体との間では高融点導体材料と固溶導体成分との間の化学的結合によって接合層と貫通導体とが強固に接合される。また、接合層と表面導体層との間では、接合層内の固溶導体成分および銅と表面導体層内の銅との間の化学的結合によってそれらが強固に接合される。そのため、表面導体層が接合層を介して貫通導体に強固に接合されるので、銅鍍金のような工数が多く且つ基板表面が汚れ易い工程を必要とすることなく、基板表面に回路部品の実装が容易な銅導体を設けることができる。したがって、積層数が十分に多く且つ高温で安定して使用でき、しかも、製造工程の簡単なセラミック多層回路基板が得られる。
なお、本願において「高融点導体材料」とは、一般的なアルミナ等のセラミックスの焼結温度よりも十分に高い例えば2000(℃)程度以上の融点を有する導体材料を言うものであり、例えば、タングステン、モリブデン、およびこれらにマンガンを加えたものなどが挙げられる。また、内部導体層および貫通導体を構成する高融点導体材料は、相互に異なるものであっても同一のものであっても良い。
因みに、基板表面に高融点導体材料に代えて厚膜銅で表面導体層を形成すれば、抵抗体等の回路部品をこれに接続形成することができるが、厚膜銅と高融点導体材料との間では化学的反応が生じ得ないことから、貫通導体に接続されるように表面導体層を形成しても接合強度を確保することができないのである。
ここで、好適には、前記高融点導体材料はタングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を主成分とするものであり、前記接合層はマンガン、二酸化マンガン、ニッケル、および酸化チタンのうちの少なくとも一種の固溶導体成分と銅との混合物から成るものである。タングステンおよびモリブデンは、アルミナ等の高温焼結基板の導体として好適に用いられるものであるが、上記マンガン等は、これらに好適に固溶されるので表面導体層を強固に接合することができる。
また、好適には、前記固溶導体成分は前記接合層内に混合物全体に対して20(%)以下の重量比で含まれるものである。このようにすれば、固溶導体成分が接合層内に過剰に含まれないので、貫通導体および表面導体層間の強固な接合が一層確実に得られる。すなわち、固溶導体成分が含まれていれば、その量が僅かであっても接合強度の改善効果を得ることができるが、過剰になると却って接合強度が低下する傾向が見られるのである。上記固溶導体成分は、15(%)以下の重量比で含まれることが一層好ましい。また、0.1(%)以上の重量比で含まれることが一層好ましい。更に好適には、固溶導体成分の含有率は、1〜10(%)である。このようにすれば、例えば高温環境下で使用される回路基板として一層好適な接合強度を確保できる。
また、好適には、前記絶縁体層は、アルミナ・セラミックスから成るものである。このようにすれば、アルミナ・セラミックスは1500(℃)以上の高温で焼結させられることから、高い耐熱性を有するので、高温で使用しても信頼性の高いセラミック多層回路基板が得られる。
また、好適には、前記セラミック多層回路基板は、複数枚のグリーンシートの各々に高融点導体材料で回路パターンを形成するパターン形成工程と、それらグリーンシートを積層して焼成処理を施すことにより複数層の内部導体層が絶縁体層を介して積層され且つその絶縁体層を貫通してそれら内部導体層を相互に接続する複数個の貫通導体が備えられたセラミック基体を生成する工程と、生成されたセラミック基体の表面の前記貫通導体に重なる位置に前記高融点導体材料および銅の何れにも固溶する固溶導体成分と銅とを含むペースト膜を設ける工程と、そのペースト膜を焼成することにより接合層を生成する工程と、前記セラミック基体の表面に前記接合層に接続されるように厚膜銅ペースト膜を形成する工程と、その厚膜銅ペースト膜を焼成することにより厚膜銅から成る表面導体層を生成する工程とを、含む工程により製造される。
また、好適には、前記セラミック多層回路基板は、表面導体層が形成された基板表面に厚膜抵抗体ペースト膜を形成する工程と、その厚膜抵抗体ペースト膜を焼成することにより厚膜抵抗体を生成する工程とを含むものである。
また、好適には、前記接合層を生成するためのペースト膜を設ける工程は、0.1〜5(μm)の範囲内の平均粒径を備えた前記固溶導体成分および銅の粒子を含むペースト膜を設けるものである。固溶導体成分は、0.5〜3(μm)範囲内の平均粒径を備えたものが一層好適である。0.5(μm)未満になると、粉体の取扱いが著しく困難になり、3(μm)を越えると、焼成後膜厚を10(μm)以下に留めることが困難になる。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、寸法および形状は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のセラミック多層回路基板(以下、単に回路基板という)10の要部断面構造を模式的に示す図である。図において、回路基板10は、複数の絶縁体層12と、その絶縁体層12の相互間に位置する複数の内部導体層14と、最上部に位置する絶縁体層12の表面16に設けられた表面導体層18とを備えている。上記内部導体層14相互および内部導体層14と表面導体層18とは、絶縁体層12を貫通する貫通導体(すなわちビア導体)20によって相互に接続されている。なお、図においては三層構成で示されているが、実際には、例えば四層以上の多層に構成されている。
上記の絶縁体層12は、例えば1500(℃)程度で焼結させられたアルミナ・セラミックス(Al2O3)から成るものであって、例えば50〜350(μm)程度の厚さ寸法を備えている。また、上記の内部導体層14は、例えばタングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点導体材料から成るものであって、例えば、10〜25(μm)程度の厚さ寸法を備え、各層毎に回路基板10の用途に応じた適宜の配線形状で設けられている。また、表面導体層16は、例えば厚膜銅で構成されたものであって、例えば10〜25(μm)程度の厚さ寸法を備え、適宜の配線形状に形成されている。また、貫通導体20は、内部導体層14と同じ或いは他の高融点導体材料で構成されたものであって、絶縁体層12を厚み方向に貫通して設けられた例えば50〜250(μm)程度の直径或いは差渡し寸法を備えた円形孔或いは矩形孔内に充填された導体で構成されている。
また、上記の表面16上の複数箇所には、厚膜抵抗体22が備えられている。厚膜抵抗体22は、形成位置毎に定められた電気的特性に応じて例えば酸化錫(SnO2)や六硼化ランタン(LaB6)、銅ニッケル(CuNi)等の適宜の厚膜抵抗体材料から選択されたものがその電気的特性に応じた厚さ寸法および幅寸法で設けられたものである。また、厚膜抵抗体22は、表面導体層18に形成されている複数本の配線間にその両端部が重なるように設けられている。
また、前記の表面導体層18と貫通導体20との間には、接合層24が備えられている。接合層24は、例えば何れも導体成分である銅(Cu)および二酸化マンガン(MnO2)を95:5程度の重量比で含むものであって、貫通導体20の上端面の全面或いは略全面を覆い且つ表面導体層18にその全体が覆われ、例えば1〜15(μm)程度の厚さ寸法で設けられたものである。この接合層24の厚さ寸法は、例えば表面導体層18の厚さ寸法に応じて、例えばその半分以下の厚さ寸法になるように定められている。また、その面積は、例えば貫通導体20の上端面の面積に応じて、それよりも僅かに大きくなるように定められている。そのため、二酸化マンガンはタングステンやモリブデンのような高融点導体材料と固溶するものであることから、接合層24と貫通導体20とは化学的に強固に接合されている。また、二酸化マンガンは銅とも固溶するものであることから、接合層24は、表面導体層18とも化学的に強固に接合されている。この結果、表面導体層18は、導体材料から成る接合層24を介して貫通導体20に強固に接合されているので、それらの間の導通が確保されている。
すなわち、厚膜銅から成る表面導体層18は、高融点導体材料から成る貫通導体20上に直接設けてもそれらは化学的に結合させられないため接合強度が得られず、導通の確保もできないが、上記のように両者にそれぞれ化学的に結合させられる接合層24を介在させることにより、間接的に強固に接合させることができるのである。本実施例においては、回路基板10のうち表面導体層18、厚膜抵抗体22、および上記接合層24を除く部分がセラミック基体に相当する。
ところで、上記の回路基板10は、例えば、アルミナ・グリーン・シートを積層して焼成するグリーンシート法を用いて製造される。以下、製造工程の要部を示す図2の工程図を参照して製造方法を説明する。
先ず、内部配線印刷工程S1においては、例えばドクターブレード法等の周知のシート成形法を用いて製造され、且つ後の工程で取り扱うための適宜の寸法に切断されると共に前記貫通導体20に対応する所定の位置に貫通孔を形成されたアルミナ・グリーン・シートの一面に、例えば厚膜スクリーン印刷法等を用いて各層の導体配線パターンに応じて内部導体層14および貫通導体20を形成するための導体ペーストを塗布する。この導体ペーストは、例えばタングステンやモリブデン等を導体成分とし、これにビヒクル、溶剤、可塑剤、分散材等を適宜混合したものである。
次いで、グリーンシート積層工程S2においては、上記のように印刷したグリーン・シートを積層して圧着し、続く基板焼成工程S3において例えば1550(℃)程度の所定の最高保持温度で焼結させることにより、グリーン・シートから前記絶縁体層12を生成すると共に、上記導体ペーストから内部導体層14および貫通導体20を生成して前記の回路基板10のうち表面16に設けられている部分を除く基板部分すなわちセラミック基体を形成する。
次いで、接合層印刷工程S4においては、銅粉末および二酸化マンガン粉末を混合し、これにビヒクル、溶剤、可塑剤、分散剤等を適宜混合したペーストを調製し、例えば厚膜印刷法等を用いて、表面16に露出する貫通導体20の上端面に、例えばそれよりも僅かに広い範囲に塗布する。上記銅粉末は例えば1.1(μm)程度の平均粒径を備えたものであり、上記の二酸化マンガン粉末は例えば2(μm)程度の平均粒径を備えたものである。上記混合ペーストは、これらを例えば95:5程度の重量比で混合している。続く接合層焼成工程S5においては、これに900(℃)程度の最高保持温度で窒素ガス中において焼成処理を施すことにより、混合ペーストから前記の接合層24を生成する。混合ペーストは銅粉末および二酸化マンガン粉末の他は有機成分のみを含むものであるため、この焼成過程においてその有機成分が焼失させられるので、接合層24は、銅および二酸化マンガンのみで構成されることになる。また、生成過程において接合層24はその構成成分中の二酸化マンガンが貫通導体20の構成材料であるタングステン等と化学的に結合させられるので、接合層24が表面16に強固に接合される。
次いで、厚膜銅ペースト印刷工程S6においては、接合層24が設けられた基板表面16に、銅粉末およびガラス粉末をビヒクル、溶剤、可塑剤、および分散剤等に適宜混合した厚膜銅ペーストを、厚膜スクリーン印刷法等を用いて所定のパターンで印刷する。続く厚膜銅焼成工程S7では、これに900(℃)程度の最高保持温度で窒素ガス中(すなわち中性雰囲気)において焼成処理を施すことにより、厚膜銅ペーストから前記の表面導体層18を生成する。この生成過程において表面導体層18はその構成成分中の銅が接合層24の構成材料である銅および二酸化マンガンと化学的に結合させられるので、表面導体層18が接合層24に強固に接合される。すなわち、表面導体層18が接合層24を介して貫通導体20に化学的に結合させられ強固に接合される。本実施例においては、二酸化マンガンが固溶導体成分に相当する。
次いで、抵抗体印刷工程S8においては、適宜の抵抗体材料とガラス粉末との混合物にビヒクル、溶剤、可塑剤、および分散剤等を混合した抵抗体ペーストを、表面16の予め定められた所定位置に所定の厚さ寸法および幅寸法で塗布する。続く抵抗体焼成工程S9では、これを抵抗体ペーストの種類に応じて定められた所定の条件で焼成することにより、抵抗体ペーストから前記の厚膜抵抗体22を生成する。これにより、前記の回路基板10が得られる。
したがって、本実施例によれば、十分な多層化が可能なグリーンシート法で製造され且つタングステン等の高融点導体材料が内部配線層14に用いられ且つ高温で焼結するアルミナで絶縁体層12を構成した回路基板10において、内部配線層14と同じタングステン等から成る貫通導体20と厚膜銅から成る表面導体層18との間に、それらに共に固溶する二酸化マンガンを含む接合層24が備えられるので、貫通導体20との間ではタングステン等と二酸化マンガンとの間の化学的結合によって接合層24と貫通導体20とが強固に接合される。また、接合層24と表面導体層18との間では、接合層24を構成する二酸化マンガンおよび銅と表面導体層18内の銅との間の化学的結合によってそれらが強固に接合される。そのため、表面導体層18が導体材料から成る接合層24を介して貫通導体20に強固に接合されるので、銅鍍金のような工数が多く且つ基板表面16が汚れ易い工程を必要とすることなく、基板表面16に回路部品の実装が容易な銅導体(すなわち表面導体層18)を設けることができる。したがって、積層数が十分に多く且つ高温で安定して使用でき、しかも、製造工程の簡単なセラミック多層回路基板10が得られる。
また、本実施例においては、貫通導体20および表面導体層18の構成材料に共に固溶する二酸化マンガンを含む接合層24内に、その二酸化マンガンが混合物全体に対して20(%)以下の重量比で含まれるものである。このようにすれば、二酸化マンガンが接合層24内に過剰に含まれないので、貫通導体20および表面導体層18間の強固な接合が一層確実に得られる。すなわち、二酸化マンガンが含まれていれば、その量が僅かであっても接合強度の改善効果を得ることができるが、過剰になると却って接合強度が低下する傾向が見られるのである。
図3は、接合層24中の二酸化マンガンの重量比と表面導体層18の引張強度との関係を評価した結果を示したものである。この評価は、二酸化マンガンの割合を1(wt%)、5(wt%)、10(wt%)、20(wt%)の4種とした接合層24を貫通導体20上に設け、その上に表面導体層18を形成してその引張強度を測定することで行った。また、引張強度は、例えば直径0.8(mm)程度の錫鍍金銅線を半田付けし、ピーリングによって測定した。半田は例えば錫(Sn) 60(wt%)、鉛(Pb) 38(wt%)、銀(Ag) 2(wt%)から成るものを用いた。表中に示される△は各含有率の試験体における測定値を表しており、○はその平均値を表している。また、左端に示される×は、接合層24を設けることなく表面導体層18を貫通導体20上に直接形成した従来の構成における強度を表したものである。
上記の図に示されるように、二酸化マンガンを含む接合層24を介在させることで引張強度が飛躍的に増大する結果が得られた。すなわち、5(wt%)程度までの混合量では、二酸化マンガンの割合を増加させるに従って引張強度が向上し、平均値で17(N/mm2)程度もの高い強度が得られた。この割合を越えると、引張強度が低下する傾向が見られるが、20(wt%)程度までは接合層24を設けない従来よりは高い接合強度が維持される。特に、1〜12(wt%)程度の範囲では、10(N/mm2)以上の強度が得られるので、貫通導体20と表面導体層18との導通信頼性が極めて高いといえる。
なお、高温環境下における耐久性や信頼性を確かめるために150(℃)の高温および80(℃)、85(%)の高温高湿で200時間保持する試験をそれぞれ行ったところ、実験した全混合量の範囲で引張強度の低下が認められた。高い耐熱信頼性が要求される用途では、例えば、このような耐久試験後に2(N/mm2)以上の引張強度を維持することが要求されているが、1〜10(wt%)の範囲内の二酸化マンガン量であれば、この要求を満たすことが判った。
また、図4は、上記の実施例における二酸化マンガンに代えてニッケルを固溶導体成分として含む接合層24を用いた場合の引張強度の評価結果を示したものである。この図に示されるように、接合層24が銅およびニッケルで構成される場合にも、前述した実施例と同様に、接合層24を介在させることで表面導体層18の引張強度が著しく向上することが確かめられた。すなわち、5(wt%)程度までの混合量では、ニッケルの割合を増加させるに従って引張強度が向上し、平均値で11(N/mm2)程度もの高い強度が得られた。この割合を越えると、引張強度が低下する傾向が見られるが、20(wt%)程度までは接合層24を設けない従来よりは高い接合強度が維持される。特に、2〜7(wt%)程度の範囲では、10(N/mm2)以上の十分な強度が得られるので、貫通導体20と表面導体層18との導通信頼性が極めて高いといえる。
また、図5は、接合層24を構成する固溶導体成分として二酸化チタン(チタニア)を用いた場合の評価結果を示したものである。この図に示されるように、酸化チタンを用いた場合にも、高い接合強度が得られることが確かめられた。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施できる。
例えば、実施例においては、本発明が高温環境下で高い信頼性が要求される回路基板10に適用された場合について説明したが、本発明は、タングステン等の高融点導体材料が内部導体層14に用いられ且つ高温で焼成されることにより、高温における信頼性を要求される多層基板であれば、種々の用途のものにも同様に適用される。
また、実施例においては、絶縁体層12がアルミナで構成されていたが、その構成材料は使用温度に応じた適宜定められるものであり、ムライト等種々のセラミックから成る回路基板にも本発明は同様に適用される。
また、実施例においては、高融点導体材料としてタングステンやモリブデンが用いられている場合について説明したが、アルミナの焼結温度に耐え得る導体材料であれば、構成材料はこれらに限られない。
また、実施例においては、接合層24を構成する固溶導体成分が二酸化マンガン、ニッケル、または酸化チタンである場合について説明したが、これらが混合して用いられ、或いはその他に他の成分が含まれていても良く、また、固溶導体成分は、貫通導体20を構成する高融点導体材料および銅に共に固溶するものであれば良いので、マンガン、コバルト、酸化コバルト、白金、またはクロム等の他の材料が用いられていても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
本発明の一実施例のセラミック多層回路基板の要部構成を説明するための断面図である。 図1のセラミック多層回路基板の製造方法を説明するための工程図である。 接合層に含まれるMnO2の割合と厚膜銅パターンの接合強度との関係を説明する図である。 接合層にNiが含まれる場合におけるその割合と厚膜銅パターンの接合強度との関係を説明する図である。 接合層にTiO2が含まれる場合におけるその割合と厚膜銅パターンの接合強度との関係を説明する図である。
符号の説明
10:セラミック多層回路基板、12:絶縁体層、14:内部導体層、18:表面導体層、20:貫通導体、24:接合層

Claims (3)

  1. 高融点導体材料から成る導体パターンを形成したグリーンシートを積層して焼成処理を施すことにより得られる複数層の内部導体層が絶縁体層を介して積層されたセラミック基体と、そのセラミック基体の表面にその絶縁体層によってその内部導体層と絶縁された状態で設けられた表面導体層と、それら内部導体層および表面導体層を相互に接続するためにその絶縁体層を貫通して設けられた高融点導体材料から成る貫通導体とを備えたセラミック多層回路基板において、
    前記表面導体層を厚膜銅で構成すると共に、
    その表面導体層と前記貫通導体との間にその貫通導体を構成する高融点導体材料および銅の何れにも固溶する固溶導体成分と銅とを含む接合層を設けたことを特徴とするセラミック多層回路基板。
  2. 前記高融点導体材料はタングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を主成分とするものであり、
    前記接合層はマンガン、二酸化マンガン、ニッケル、および酸化チタンのうちの少なくとも一種の固溶導体成分と銅との混合物から成るものである請求項1のセラミック多層回路基板。
  3. 前記固溶導体成分は前記接合層内に20(%)以下の重量比で含まれるものである請求項2のセラミック多層回路基板。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008258214A (ja) * 2007-03-31 2008-10-23 Sumitomo Metal Electronics Devices Inc 発光素子実装用多層配線基板とその製造方法
JP2010098291A (ja) * 2008-10-17 2010-04-30 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd 無収縮セラミック基板及び無収縮セラミック基板の製造方法
KR101046142B1 (ko) * 2008-10-17 2011-07-01 삼성전기주식회사 무수축 세라믹 기판의 제조 방법
JP2012132823A (ja) * 2010-12-22 2012-07-12 Kyocera Corp プローブカード用セラミック配線基板およびこれを用いたプローブカード

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