JP2005053943A - 水性インク組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク中の顔料濃度を上げることなく、印刷物の光学濃度の高い水性インク組成物を提供すること。
【解決手段】分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする水性インク組成物。また、前記インク組成物が、さらに有機酸塩類を含み、アルカリ性であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする水性インク組成物。また、前記インク組成物が、さらに有機酸塩類を含み、アルカリ性であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法に適した、着色剤としてカーボンブラックもしくは有機顔料を用いた水性インク組成物に関する。さらに詳しくは、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料を含む水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。
【0003】
インクジェット記録に使用されるインク組成物は、水を主成分とし、これに着色成分および目詰まり防止等の目的でグリセリン等の保湿剤を含有したものが一般的である。インクジェット記録用インク組成物に用いられる着色剤としては、色剤の彩度の高さ、利用できる色剤の種類の豊富さ、水への溶解性などの理由から水溶性染料が数多く使用されている。
【0004】
しかし、一方で染料は耐光性および耐水性等の諸特性に劣ることがあり、よって染料系のインク組成物により印刷された印刷物は、耐光性および耐水性に劣ることになる。耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録紙によって改善されているが、普通紙については未だ十分とは言い難い。
【0005】
顔料は、染料に比べて耐光性および耐水性に優れており、近年、耐光性および耐水性を改善する目的でインクジェット記録用インク組成物の着色剤として利用が検討されている。ここで、顔料は一般に水には不溶であるため、顔料を水系インク組成物に利用する場合には、顔料を水溶性樹脂などの分散剤と共に混合し、水に安定分散させた後にインク組成物として調製する必要がある。
【0006】
顔料が水系に安定に分散するためには、顔料の種類、粒径、用いる樹脂の種類、および分散手段等を検討する必要があり、これまで多くの分散方法およびインクジェット記録用インクが提案されている。
【0007】
特開平8−3498号公報には、酸性カーボンブラックを次亜ハロゲン酸で酸化処理して顔料単独で自発的に分散できる表面改質カーボンブラックをインクに用いることが記載されている(特許文献1参照)。また、特開平10−120958号公報には、1次粒径40nm以下でDBP吸油量60mL/100gのカーボンブラックを次亜ハロゲン酸で酸化処理した表面改質カーボンブラックをインクに用いることが記載されている(特許文献2参照)。これらに記載の顔料単独で自発的に分散できる表面改質カーボンブラック顔料をインクジェット記録用インクに用いることは、普通紙上で高発色するために有効な手段である。しかしながら、より高発色にするためにはインク中の顔料濃度を高める等の手段が必要で、インクジェット記録用インクとして用いるためには安定なインクとする事が困難になる。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−3498号公報(特に、請求項1)
【特許文献2】
特開平10−120958号公報(特に、請求項1および2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するものであって、即ち、インクジェット記録方法に用いるインクにおいて、顔料濃度を上げることなく発色性を高めた水性インク組成物を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水性インク組成物は、本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部と有機酸塩類を含み、アルカリ性のインクであるであることを特徴とする。
【0012】
本発明の水性インク組成物は、前記有機酸塩類が、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩を含んだことを特徴とする。
【0013】
本発明の水性インク組成物は、前記分散された着色剤が、無機顔料のカーボンブラックであることを特徴とする。
【0014】
本発明の水性インク組成物は、前記分散された着色剤が、有機顔料から選ばれることを特徴とする。
【0015】
本発明の水性インク組成物は、インクの表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の水性インク組成物は、前記表面張力が40mN/m以下である水性インクが、アセチレングリコール系界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のインクジェット記録方法は、水性インク組成物の液滴を吐出して、上記液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として上述の水性インク組成物を用いることを特徴とする。
【0018】
本発明の記録物は、上述の水性インク組成物を用いて印刷したことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部と有機酸塩類を含み、アルカリ性のインクであるであることを特徴とする。
【0021】
以下に本発明の水性インク組成物の構成要素について説明する。
【0022】
<水溶性有機溶剤>
本発明に用いる水溶性有機溶剤としては、保湿剤、浸透溶剤や界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
<保湿剤>
保湿剤はインクの乾燥を抑制するために添加するものである。ノズル先端の乾燥による水分蒸発を抑制して、インクの凝集・固化を防止するために添加される。
【0024】
保湿剤は、水溶性で吸湿性の高い材料から選ばれ、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクラム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類、を用いることができる。
【0025】
さらに、上述の保湿性有機溶剤の能力を補助する目的で、水溶性の固体保湿剤を併用、添加することも可能である。
1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等、ε−カプロラクタム等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類およびこれらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0026】
これらの保湿剤の添加量は、単独あるいは複数混合して、インク中に1〜40wt%が好ましく、より好ましくは1〜30wt%である。これらの保湿剤は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることができる。
【0027】
<浸透溶剤>
浸透溶剤は、記録媒体へのインク浸透性を早めるための添加剤であり、所望のインク乾燥時間により適宜選択される。
【0028】
浸透剤の一例としては、好ましくは低沸点の水溶性有機溶剤であり、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどがあげられ、特に一価アルコールが好ましい。低沸点の水溶性有機溶剤の添加量はインク組成物に対して0.5〜10wt%の範囲が好ましい。
【0029】
また、インクの表面張力を40mN/m以下とするために水溶液の表面張力が小さくなる水溶性有機溶剤として、1,2−アルキルジオール類あるいは多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体から選択することもできる。
【0030】
1,2−アルキルジオール類としては、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルキルジオールが好ましい。炭素数6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録紙への浸透性が強く、特に好ましい。また、1,2−アルキルジオールは、0.25〜5wt%の範囲で添加することが好ましい。
【0031】
多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体としては、特にアルキルの炭素数は3以上の多価アルコールの誘導体が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。また、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体は0.5〜15wt%の範囲で添加することが好ましい。
【0032】
これらの浸透剤は単独で用いても良く、あるいは複数を混合して用いることもできる。特に、異なる構造の化合物を複数併用することで、異なる吸収性、発色性の種々の紙種に対して同じ様な画質を得ることができ、紙種対応性の観点から好ましい。
【0033】
なお、インクの表面張力が40mN/mを超え乾燥時間が比較的長いインクの場合は、保湿剤の中で水溶液の表面張力が比較的小さくなるものを浸透剤の代用として用いることもでき、この場合は上述の浸透剤を加えずにインクとする事もできる。
【0034】
<界面活性剤>
界面活性剤は、浸透溶剤と併用、あるいは単独で用い、インクの表面張力を40mN/m以下とするために表面張力を下げて記録媒体へのインク浸透性を早めるために添加される。
【0035】
好適な材料として、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、燐系界面活性剤、硼素系界面活性剤等を用いることができる。
【0036】
シリコン系界面活性剤として、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(商品名、以上いずれもビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
【0037】
さらに、本発明においてアセチレングリコール系界面活性剤は、起泡性が少ない、あるいは無いために、特に好ましい。本発明において好ましいアセチレングリコール化合物の好ましい具体例としては、Air Products andChemicals.Inc.社製のサーフィノール61、82、104、440、465、485、またはTG、日信化学工業株式会社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010などが挙げられる。
【0038】
このアセチレングリコール化合物の添加量は所望のインク乾燥時間で適宜決定されてよいが、インク組成物に対して0.01〜5wt%が好ましい。
【0039】
なお、界面活性剤は単独で浸透材として用いても良いが、界面活性剤と上述の浸透溶剤を併用した場合は、浸透剤の総量を減らすことができる、界面活性剤の気泡性を低減できる等、特に好ましい。
【0040】
<カルボン酸型表面処理顔料>
分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能なカルボン酸型表面処理顔料としては、その表面にカルボキシル基およびその塩が直接結合するような表面処理により、分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能とされたものである。具体的には、真空プラズマなどの物理的処理や次亜塩素酸ナトリウムやオゾン等の酸化剤を用いた化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子を顔料の表面にグラフトさせることによって得ることができる。本発明において、一つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
【0041】
なお、本発明において、顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態を「分散および/または溶解」と表現する。物質が溶解しているか、分散しているのかを明確に区別することが困難な場合も少なくない。本発明にあっては、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料である限り、その状態が分散か、溶解かを問わず、そのような顔料を利用可能である。よって、本明細書において、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料を水溶性顔料ということがあるが、顔料が分散状態にあるものまでも排除することを意味するものではない。
【0042】
本発明において用いられる上記顔料は、例えば特開平8−3498号公報記載の方法によって得ることができる。
【0043】
本発明で好ましいカーボンブラックの具体例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラックとして、#20B、#40、MA100などが挙げられる。デグサ社製のカーボンブラックとして、カラーブラックFW18、カラーブラックS170、スペシャルブラック250などが挙げられる。コロンビアカーボン社製のカーボンブラックとして、コンダクテックスSC、ラーベン1255などが挙げられる。キャボット社製のカーボンブラックとして、モナーク700、モナーク880、エルフテックス12などが挙げられる。なお、これらは本発明に好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0044】
また、上記顔料として市販品を利用することも可能であり、好ましい例としては黒色顔料としてカーボンブラックを原料としたオリエント化学工業株式会社製のマイクロジェットCW1が挙げられる。
【0045】
本発明で好ましい有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、トリフェニルメタン系レーキ顔料、オキサジン系レーキ顔料等が挙げられる。更に、水性媒体に不溶であれば、油溶染料、分散染料等を用いることもできる。具体的には、黄色系としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、65、83が挙げられる。また、赤色系としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、49、50、51、52、53、55、60、64、83、87、88、89、90、112、114、123、163等が挙げられる。青色系としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、22、25等、黒色系としてはC.I.ピグメントブラック1が挙げられる。
【0046】
本発明において、前記表面処理顔料の添加量は、0.5〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
本発明の水性インク組成物は、少なくとも一部に中和されていないカルボン酸官能基部を含んだ表面処理顔料をインク中に分散して構成している。表面処理顔料のカルボン酸官能基部は、例えば次亜塩素酸ナトリウムによる酸化にて調整した場合は、カルボン酸ナトリウムとして完全中和して得られる。この原料を、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸を加えてpH3以下に調整して加熱撹拌して、塩からアルカリ分を除いて未中和にする。続いて、限外ろ過等の脱塩手段にて精製して、中和されていないカルボン酸官能基部のみの表面処理顔料を得ることができる。このようにして得られるカルボン酸官能基部のみの表面処理顔料はKOH酸価換算で6〜60mg/gの官能基量が好ましく、さらにこの量に応じてアルカリ化剤を添加してカルボン酸の一部のみが中和している分散液を調整することができる。このようにして得られた、カルボン酸の一部のみが中和している、すなわち未中和のカルボン酸が存在する分散液を用いて、インク作成時にアルカリ成分を加えることなく調整することで、中和されていないカルボン酸官能基部を含んだ表面処理顔料を分散した水性インクを得ることができる。その結果として、顔料を添加量を増やすことなく、印刷濃度を上げることができる。
【0048】
さらに、インクジェット記録装置の流路に金属を用いた場合は、インクが酸性では金属の腐食が生じるために、中性もしくはアルカリ性に調整することが望ましい。しかし、水酸化ナトリウム等のアルカリを加えると、未中和のカルボン酸部の中和が進んでしまうため、後述の有機酸塩類を加えることで、中和率を大きく変えずにインクをアルカリ性に保つことができ、印刷濃度を上げながら、信頼性の高いインクを提供することができる。
【0049】
インク中の中和されていないカルボン酸官能基部の含有量は、未中和率=[(カルボン酸総量−カルボン酸中和部)/カルボン酸総量]として5%〜50%が好ましく、15%〜50%の範囲がより好ましい。
【0050】
<有機酸塩類>
本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部と有機酸塩類を含み、アルカリ性のインクであるであることを特徴とする。
【0051】
上記有機酸塩類として好ましい有機酸塩類は、酢酸塩、プロピオン酸塩等のアルキルカルボン酸の塩類、乳酸塩、グリコール酸塩、グリセリン酸塩等のヒドロキシ酸の塩類が挙げられる。
【0052】
特に好ましくは、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩であり、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等が挙げられる。
【0053】
本発明において、前記有機酸塩類の添加量は、0.01〜2重量%の範囲で、所望のインクpHに合わせて添加される。
【0054】
<水>
水は、本発明のインクの中心となる媒体であり、本発明に好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0055】
<その他の成分>
本発明の水性インクの必須成分は上述の通りであるが、さらに必要に応じてインクジェット記録方法に用いられる添加物を加えることもできる。
【0056】
必要に応じて加える添加物としては、酸化防止剤・紫外線吸収剤、防腐剤・防かび剤などが挙げられる。
【0057】
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物等が用いられる。
【0058】
防腐剤・防かび剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オンなどの中から選ぶことができる。
【0059】
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方式であればいかなる方法も使用することができる。その幾つかを説明すると、先ず静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式がある。
【0060】
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
【0061】
第三の方法は圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0062】
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0063】
以上の様な種々のインクジェット記録方式の内、特に10m/s以下の比較的低速のインク吐出速度での印刷方法と本発明の水性インク組成物を組み合わせることで、吐出ノズルへのインク付着を防止して安定にインクジェット記録を行うことができ、好ましい。
【0064】
以下の実施例により本発明の内容を明確に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0065】
【実施例】
<分散液の作成>
分散液1(ブラック分散液)
カーボンブラックとしてMA8(商品名、三菱化学株式会社製)100gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液400gを加えて、10時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名、アドバンテック東洋株式会社製)でろ過して、さらに水で洗浄した。このウェットケーキを水5kgに再分散して、1%塩酸にて脱ナトリウム化、引き続いて限外ろ過システムのミニタン(商品名、ミリポア社製)により分画分子量10万の限外ろ過膜を用いて電導度4mS/cmまで脱塩・精製した。さらに顔料濃度15wt%まで濃縮して、1N水酸化ナトリウムにてpH6.5に調整して分散液1を得た。
【0066】
分散液2(ブラック分散液)
カーボンブラックとしてカラーブラックS170(商品名、デグサ社製)40gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液400gを加えて、10時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名、アドバンテック東洋株式会社製)でろ過して、さらに水で洗浄した。このウェットケーキを水5kgに再分散して、1%塩酸にて脱ナトリウム化、限外ろ過システムのミニタン(商品名、ミリポア社製)により分画分子量10万の限外ろ過膜を用いて電導度4mS/cmまで脱塩・精製した。さらに顔料濃度15wt%まで濃縮して、1N水酸化ナトリウムにてpH6.5に調整して分散液2を得た。
【0067】
分散液3(マゼンタ分散液)
有機顔料としてC.I.ピグメントレッド163の50gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液150gを加えて、10時間攪拌しながら湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名、アドバンテック東洋株式会社製)でろ過して、さらに水で洗浄した。このウェットケーキを水5kgに再分散して、1%塩酸にて脱ナトリウム化、限外ろ過システムのミニタン(商品名、ミリポア社製)により分画分子量10万の限外ろ過膜を用いて電導度6mS/cmまで脱塩・精製した。さらに顔料濃度15wt%まで濃縮して、1N水酸化ナトリウムにてpH6.5に調整して分散液3を得た。
水性インクの調整
【0068】
(実施例1)
得られたブラック分散液1 27g、保湿剤としてグリセリン9g、トリエチレングリコール4g、トリメチロールプロパン8g、2−ピロリドン4gと浸透溶剤としてiso−プロピルアルコール1.5gを混合、さらに超純水を加えて全量を100gとして2時間攪拌、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)にて濾過して水性インク組成物を調製した。
【0069】
(実施例2)
実施例1に対して、有機酸塩として酢酸ナトリウム0.2gを添加する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0070】
(比較例1)
実施例1に対して、アルカリ化剤として水酸化カリウム0.05gを添加する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0071】
(実施例3〜6)
実施例1に対して、添加物、量を表1の組成に変更する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0072】
(比較例2〜3)
実施例1に対して、添加物、量を表1の組成に変更する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0073】
組成の一覧を表1にまとめて示す。
【0074】
【表1】
【0075】
[評価方法]
<インク物性>
(pH)
実施例1〜6および比較例1〜3のインクについて、pHメータ D−20(商品名、株式会社 堀場製作所)にてインクのpHを測定した。
【0076】
(表面張力)
実施例1〜6および比較例1〜3のインクについて、プレート法による表面張力計 CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社)にてインクの表面張力を測定した。
【0077】
(未中和率)
精製直後の分散液、すなわち完全未中和の表面処理顔料分散液について、濃縮、乾燥して粉末化した。この粉末を不活性ガス融解−赤外線吸収法(JISZ2613−1976法)に従って酸素含有量を算出して、カルボン酸量に換算した。このカルボン酸量に対して、表1の実施例1〜6の未中和率になるように1N水酸化ナトリウムによるpH調整を行い、分散液を調整した。インク作成時にアルカリ化剤を加えない実施例では、この時点での未中和率が決定される。また、比較例では、中和率が0%未満、すなわち中和率100%に必要な量より過剰にアルカリ化剤をインク作成時に添加して調整した。
【0078】
<光学濃度>
実施例1、2および比較例1のインクの表面張力が40mN/mを超え乾燥時間が比較的長いインクについて、圧電素子型のインクジェットプリンタとしてMJ500(商品名、セイコーエプソン株式会社製)にて両面上質普通紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製)印刷を行い、ブラック100%のベタ部分の光学濃度を測定した。なお光学濃度の測定は、Spectrophotometer SPM50sho(商品名)(グレタグ−マクベス社製)を用いて行った。
【0079】
実施例3〜6および比較例2、3のインクのインクの表面張力を40mN/m以下で短時間で乾燥するインクについて、圧電素子型のインクジェットプリンタとしてEM930(商品名、セイコーエプソン株式会社製)にて両面上質普通紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製)印刷を行い、ブラック100%もしくはマゼンタ100%のベタ部分の光学濃度を測定した。
【0080】
インク物性および光学濃度の結果一覧を表1にまとめて示す。
【0081】
表1に示した様に本発明のインクは、実施例1、2、比較例1の緩浸透系インク、実施例3〜6、比較例2、3の浸透系インクのいずれについても、未中和カルボン酸部分が存在しない比較例に対して顔料濃度を上げることなく光学濃度を高くすることができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法に適した、着色剤としてカーボンブラックもしくは有機顔料を用いた水性インク組成物に関する。さらに詳しくは、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料を含む水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。
【0003】
インクジェット記録に使用されるインク組成物は、水を主成分とし、これに着色成分および目詰まり防止等の目的でグリセリン等の保湿剤を含有したものが一般的である。インクジェット記録用インク組成物に用いられる着色剤としては、色剤の彩度の高さ、利用できる色剤の種類の豊富さ、水への溶解性などの理由から水溶性染料が数多く使用されている。
【0004】
しかし、一方で染料は耐光性および耐水性等の諸特性に劣ることがあり、よって染料系のインク組成物により印刷された印刷物は、耐光性および耐水性に劣ることになる。耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録紙によって改善されているが、普通紙については未だ十分とは言い難い。
【0005】
顔料は、染料に比べて耐光性および耐水性に優れており、近年、耐光性および耐水性を改善する目的でインクジェット記録用インク組成物の着色剤として利用が検討されている。ここで、顔料は一般に水には不溶であるため、顔料を水系インク組成物に利用する場合には、顔料を水溶性樹脂などの分散剤と共に混合し、水に安定分散させた後にインク組成物として調製する必要がある。
【0006】
顔料が水系に安定に分散するためには、顔料の種類、粒径、用いる樹脂の種類、および分散手段等を検討する必要があり、これまで多くの分散方法およびインクジェット記録用インクが提案されている。
【0007】
特開平8−3498号公報には、酸性カーボンブラックを次亜ハロゲン酸で酸化処理して顔料単独で自発的に分散できる表面改質カーボンブラックをインクに用いることが記載されている(特許文献1参照)。また、特開平10−120958号公報には、1次粒径40nm以下でDBP吸油量60mL/100gのカーボンブラックを次亜ハロゲン酸で酸化処理した表面改質カーボンブラックをインクに用いることが記載されている(特許文献2参照)。これらに記載の顔料単独で自発的に分散できる表面改質カーボンブラック顔料をインクジェット記録用インクに用いることは、普通紙上で高発色するために有効な手段である。しかしながら、より高発色にするためにはインク中の顔料濃度を高める等の手段が必要で、インクジェット記録用インクとして用いるためには安定なインクとする事が困難になる。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−3498号公報(特に、請求項1)
【特許文献2】
特開平10−120958号公報(特に、請求項1および2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するものであって、即ち、インクジェット記録方法に用いるインクにおいて、顔料濃度を上げることなく発色性を高めた水性インク組成物を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水性インク組成物は、本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部と有機酸塩類を含み、アルカリ性のインクであるであることを特徴とする。
【0012】
本発明の水性インク組成物は、前記有機酸塩類が、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩を含んだことを特徴とする。
【0013】
本発明の水性インク組成物は、前記分散された着色剤が、無機顔料のカーボンブラックであることを特徴とする。
【0014】
本発明の水性インク組成物は、前記分散された着色剤が、有機顔料から選ばれることを特徴とする。
【0015】
本発明の水性インク組成物は、インクの表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の水性インク組成物は、前記表面張力が40mN/m以下である水性インクが、アセチレングリコール系界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のインクジェット記録方法は、水性インク組成物の液滴を吐出して、上記液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として上述の水性インク組成物を用いることを特徴とする。
【0018】
本発明の記録物は、上述の水性インク組成物を用いて印刷したことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部と有機酸塩類を含み、アルカリ性のインクであるであることを特徴とする。
【0021】
以下に本発明の水性インク組成物の構成要素について説明する。
【0022】
<水溶性有機溶剤>
本発明に用いる水溶性有機溶剤としては、保湿剤、浸透溶剤や界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
<保湿剤>
保湿剤はインクの乾燥を抑制するために添加するものである。ノズル先端の乾燥による水分蒸発を抑制して、インクの凝集・固化を防止するために添加される。
【0024】
保湿剤は、水溶性で吸湿性の高い材料から選ばれ、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクラム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類、を用いることができる。
【0025】
さらに、上述の保湿性有機溶剤の能力を補助する目的で、水溶性の固体保湿剤を併用、添加することも可能である。
1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等、ε−カプロラクタム等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類およびこれらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0026】
これらの保湿剤の添加量は、単独あるいは複数混合して、インク中に1〜40wt%が好ましく、より好ましくは1〜30wt%である。これらの保湿剤は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることができる。
【0027】
<浸透溶剤>
浸透溶剤は、記録媒体へのインク浸透性を早めるための添加剤であり、所望のインク乾燥時間により適宜選択される。
【0028】
浸透剤の一例としては、好ましくは低沸点の水溶性有機溶剤であり、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどがあげられ、特に一価アルコールが好ましい。低沸点の水溶性有機溶剤の添加量はインク組成物に対して0.5〜10wt%の範囲が好ましい。
【0029】
また、インクの表面張力を40mN/m以下とするために水溶液の表面張力が小さくなる水溶性有機溶剤として、1,2−アルキルジオール類あるいは多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体から選択することもできる。
【0030】
1,2−アルキルジオール類としては、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルキルジオールが好ましい。炭素数6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録紙への浸透性が強く、特に好ましい。また、1,2−アルキルジオールは、0.25〜5wt%の範囲で添加することが好ましい。
【0031】
多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体としては、特にアルキルの炭素数は3以上の多価アルコールの誘導体が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。また、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体は0.5〜15wt%の範囲で添加することが好ましい。
【0032】
これらの浸透剤は単独で用いても良く、あるいは複数を混合して用いることもできる。特に、異なる構造の化合物を複数併用することで、異なる吸収性、発色性の種々の紙種に対して同じ様な画質を得ることができ、紙種対応性の観点から好ましい。
【0033】
なお、インクの表面張力が40mN/mを超え乾燥時間が比較的長いインクの場合は、保湿剤の中で水溶液の表面張力が比較的小さくなるものを浸透剤の代用として用いることもでき、この場合は上述の浸透剤を加えずにインクとする事もできる。
【0034】
<界面活性剤>
界面活性剤は、浸透溶剤と併用、あるいは単独で用い、インクの表面張力を40mN/m以下とするために表面張力を下げて記録媒体へのインク浸透性を早めるために添加される。
【0035】
好適な材料として、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、燐系界面活性剤、硼素系界面活性剤等を用いることができる。
【0036】
シリコン系界面活性剤として、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(商品名、以上いずれもビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
【0037】
さらに、本発明においてアセチレングリコール系界面活性剤は、起泡性が少ない、あるいは無いために、特に好ましい。本発明において好ましいアセチレングリコール化合物の好ましい具体例としては、Air Products andChemicals.Inc.社製のサーフィノール61、82、104、440、465、485、またはTG、日信化学工業株式会社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010などが挙げられる。
【0038】
このアセチレングリコール化合物の添加量は所望のインク乾燥時間で適宜決定されてよいが、インク組成物に対して0.01〜5wt%が好ましい。
【0039】
なお、界面活性剤は単独で浸透材として用いても良いが、界面活性剤と上述の浸透溶剤を併用した場合は、浸透剤の総量を減らすことができる、界面活性剤の気泡性を低減できる等、特に好ましい。
【0040】
<カルボン酸型表面処理顔料>
分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能なカルボン酸型表面処理顔料としては、その表面にカルボキシル基およびその塩が直接結合するような表面処理により、分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能とされたものである。具体的には、真空プラズマなどの物理的処理や次亜塩素酸ナトリウムやオゾン等の酸化剤を用いた化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子を顔料の表面にグラフトさせることによって得ることができる。本発明において、一つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
【0041】
なお、本発明において、顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態を「分散および/または溶解」と表現する。物質が溶解しているか、分散しているのかを明確に区別することが困難な場合も少なくない。本発明にあっては、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料である限り、その状態が分散か、溶解かを問わず、そのような顔料を利用可能である。よって、本明細書において、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料を水溶性顔料ということがあるが、顔料が分散状態にあるものまでも排除することを意味するものではない。
【0042】
本発明において用いられる上記顔料は、例えば特開平8−3498号公報記載の方法によって得ることができる。
【0043】
本発明で好ましいカーボンブラックの具体例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラックとして、#20B、#40、MA100などが挙げられる。デグサ社製のカーボンブラックとして、カラーブラックFW18、カラーブラックS170、スペシャルブラック250などが挙げられる。コロンビアカーボン社製のカーボンブラックとして、コンダクテックスSC、ラーベン1255などが挙げられる。キャボット社製のカーボンブラックとして、モナーク700、モナーク880、エルフテックス12などが挙げられる。なお、これらは本発明に好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0044】
また、上記顔料として市販品を利用することも可能であり、好ましい例としては黒色顔料としてカーボンブラックを原料としたオリエント化学工業株式会社製のマイクロジェットCW1が挙げられる。
【0045】
本発明で好ましい有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、トリフェニルメタン系レーキ顔料、オキサジン系レーキ顔料等が挙げられる。更に、水性媒体に不溶であれば、油溶染料、分散染料等を用いることもできる。具体的には、黄色系としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、65、83が挙げられる。また、赤色系としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、49、50、51、52、53、55、60、64、83、87、88、89、90、112、114、123、163等が挙げられる。青色系としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、22、25等、黒色系としてはC.I.ピグメントブラック1が挙げられる。
【0046】
本発明において、前記表面処理顔料の添加量は、0.5〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。
【0047】
本発明の水性インク組成物は、少なくとも一部に中和されていないカルボン酸官能基部を含んだ表面処理顔料をインク中に分散して構成している。表面処理顔料のカルボン酸官能基部は、例えば次亜塩素酸ナトリウムによる酸化にて調整した場合は、カルボン酸ナトリウムとして完全中和して得られる。この原料を、例えば塩酸、硫酸等の鉱酸を加えてpH3以下に調整して加熱撹拌して、塩からアルカリ分を除いて未中和にする。続いて、限外ろ過等の脱塩手段にて精製して、中和されていないカルボン酸官能基部のみの表面処理顔料を得ることができる。このようにして得られるカルボン酸官能基部のみの表面処理顔料はKOH酸価換算で6〜60mg/gの官能基量が好ましく、さらにこの量に応じてアルカリ化剤を添加してカルボン酸の一部のみが中和している分散液を調整することができる。このようにして得られた、カルボン酸の一部のみが中和している、すなわち未中和のカルボン酸が存在する分散液を用いて、インク作成時にアルカリ成分を加えることなく調整することで、中和されていないカルボン酸官能基部を含んだ表面処理顔料を分散した水性インクを得ることができる。その結果として、顔料を添加量を増やすことなく、印刷濃度を上げることができる。
【0048】
さらに、インクジェット記録装置の流路に金属を用いた場合は、インクが酸性では金属の腐食が生じるために、中性もしくはアルカリ性に調整することが望ましい。しかし、水酸化ナトリウム等のアルカリを加えると、未中和のカルボン酸部の中和が進んでしまうため、後述の有機酸塩類を加えることで、中和率を大きく変えずにインクをアルカリ性に保つことができ、印刷濃度を上げながら、信頼性の高いインクを提供することができる。
【0049】
インク中の中和されていないカルボン酸官能基部の含有量は、未中和率=[(カルボン酸総量−カルボン酸中和部)/カルボン酸総量]として5%〜50%が好ましく、15%〜50%の範囲がより好ましい。
【0050】
<有機酸塩類>
本発明の水性インク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部と有機酸塩類を含み、アルカリ性のインクであるであることを特徴とする。
【0051】
上記有機酸塩類として好ましい有機酸塩類は、酢酸塩、プロピオン酸塩等のアルキルカルボン酸の塩類、乳酸塩、グリコール酸塩、グリセリン酸塩等のヒドロキシ酸の塩類が挙げられる。
【0052】
特に好ましくは、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩であり、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等が挙げられる。
【0053】
本発明において、前記有機酸塩類の添加量は、0.01〜2重量%の範囲で、所望のインクpHに合わせて添加される。
【0054】
<水>
水は、本発明のインクの中心となる媒体であり、本発明に好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0055】
<その他の成分>
本発明の水性インクの必須成分は上述の通りであるが、さらに必要に応じてインクジェット記録方法に用いられる添加物を加えることもできる。
【0056】
必要に応じて加える添加物としては、酸化防止剤・紫外線吸収剤、防腐剤・防かび剤などが挙げられる。
【0057】
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物等が用いられる。
【0058】
防腐剤・防かび剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オンなどの中から選ぶことができる。
【0059】
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方式であればいかなる方法も使用することができる。その幾つかを説明すると、先ず静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式がある。
【0060】
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
【0061】
第三の方法は圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0062】
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0063】
以上の様な種々のインクジェット記録方式の内、特に10m/s以下の比較的低速のインク吐出速度での印刷方法と本発明の水性インク組成物を組み合わせることで、吐出ノズルへのインク付着を防止して安定にインクジェット記録を行うことができ、好ましい。
【0064】
以下の実施例により本発明の内容を明確に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0065】
【実施例】
<分散液の作成>
分散液1(ブラック分散液)
カーボンブラックとしてMA8(商品名、三菱化学株式会社製)100gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液400gを加えて、10時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名、アドバンテック東洋株式会社製)でろ過して、さらに水で洗浄した。このウェットケーキを水5kgに再分散して、1%塩酸にて脱ナトリウム化、引き続いて限外ろ過システムのミニタン(商品名、ミリポア社製)により分画分子量10万の限外ろ過膜を用いて電導度4mS/cmまで脱塩・精製した。さらに顔料濃度15wt%まで濃縮して、1N水酸化ナトリウムにてpH6.5に調整して分散液1を得た。
【0066】
分散液2(ブラック分散液)
カーボンブラックとしてカラーブラックS170(商品名、デグサ社製)40gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液400gを加えて、10時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名、アドバンテック東洋株式会社製)でろ過して、さらに水で洗浄した。このウェットケーキを水5kgに再分散して、1%塩酸にて脱ナトリウム化、限外ろ過システムのミニタン(商品名、ミリポア社製)により分画分子量10万の限外ろ過膜を用いて電導度4mS/cmまで脱塩・精製した。さらに顔料濃度15wt%まで濃縮して、1N水酸化ナトリウムにてpH6.5に調整して分散液2を得た。
【0067】
分散液3(マゼンタ分散液)
有機顔料としてC.I.ピグメントレッド163の50gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液150gを加えて、10時間攪拌しながら湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名、アドバンテック東洋株式会社製)でろ過して、さらに水で洗浄した。このウェットケーキを水5kgに再分散して、1%塩酸にて脱ナトリウム化、限外ろ過システムのミニタン(商品名、ミリポア社製)により分画分子量10万の限外ろ過膜を用いて電導度6mS/cmまで脱塩・精製した。さらに顔料濃度15wt%まで濃縮して、1N水酸化ナトリウムにてpH6.5に調整して分散液3を得た。
水性インクの調整
【0068】
(実施例1)
得られたブラック分散液1 27g、保湿剤としてグリセリン9g、トリエチレングリコール4g、トリメチロールプロパン8g、2−ピロリドン4gと浸透溶剤としてiso−プロピルアルコール1.5gを混合、さらに超純水を加えて全量を100gとして2時間攪拌、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)にて濾過して水性インク組成物を調製した。
【0069】
(実施例2)
実施例1に対して、有機酸塩として酢酸ナトリウム0.2gを添加する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0070】
(比較例1)
実施例1に対して、アルカリ化剤として水酸化カリウム0.05gを添加する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0071】
(実施例3〜6)
実施例1に対して、添加物、量を表1の組成に変更する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0072】
(比較例2〜3)
実施例1に対して、添加物、量を表1の組成に変更する以外は同様な方法でインクを作成した。
【0073】
組成の一覧を表1にまとめて示す。
【0074】
【表1】
【0075】
[評価方法]
<インク物性>
(pH)
実施例1〜6および比較例1〜3のインクについて、pHメータ D−20(商品名、株式会社 堀場製作所)にてインクのpHを測定した。
【0076】
(表面張力)
実施例1〜6および比較例1〜3のインクについて、プレート法による表面張力計 CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社)にてインクの表面張力を測定した。
【0077】
(未中和率)
精製直後の分散液、すなわち完全未中和の表面処理顔料分散液について、濃縮、乾燥して粉末化した。この粉末を不活性ガス融解−赤外線吸収法(JISZ2613−1976法)に従って酸素含有量を算出して、カルボン酸量に換算した。このカルボン酸量に対して、表1の実施例1〜6の未中和率になるように1N水酸化ナトリウムによるpH調整を行い、分散液を調整した。インク作成時にアルカリ化剤を加えない実施例では、この時点での未中和率が決定される。また、比較例では、中和率が0%未満、すなわち中和率100%に必要な量より過剰にアルカリ化剤をインク作成時に添加して調整した。
【0078】
<光学濃度>
実施例1、2および比較例1のインクの表面張力が40mN/mを超え乾燥時間が比較的長いインクについて、圧電素子型のインクジェットプリンタとしてMJ500(商品名、セイコーエプソン株式会社製)にて両面上質普通紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製)印刷を行い、ブラック100%のベタ部分の光学濃度を測定した。なお光学濃度の測定は、Spectrophotometer SPM50sho(商品名)(グレタグ−マクベス社製)を用いて行った。
【0079】
実施例3〜6および比較例2、3のインクのインクの表面張力を40mN/m以下で短時間で乾燥するインクについて、圧電素子型のインクジェットプリンタとしてEM930(商品名、セイコーエプソン株式会社製)にて両面上質普通紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製)印刷を行い、ブラック100%もしくはマゼンタ100%のベタ部分の光学濃度を測定した。
【0080】
インク物性および光学濃度の結果一覧を表1にまとめて示す。
【0081】
表1に示した様に本発明のインクは、実施例1、2、比較例1の緩浸透系インク、実施例3〜6、比較例2、3の浸透系インクのいずれについても、未中和カルボン酸部分が存在しない比較例に対して顔料濃度を上げることなく光学濃度を高くすることができた。
Claims (8)
- 分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含む水性インク組成物であって、上記表面処理顔料がカルボン酸型表面処理顔料であり、且つ上記水性インク組成物中に中和されていないカルボン酸官能基部を含むことを特徴とする水性インク組成物。
- さらに、有機酸塩類を含み、アルカリ性であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
- 前記有機酸塩類が、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項2に記載の水性インク組成物。
- 前記顔料が、無機顔料のカーボンブラックまたは有機顔料である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
- インクの表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
- アセチレングリコール系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の水性インク組成物。
- 水性インク組成物の液滴を吐出して、上記液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法であって、上記インク組成物として請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク組成物を用いて印刷した、記録物。
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- 2003-08-01 JP JP2003205401A patent/JP2005053943A/ja active Pending
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