JP2005050580A - アルカリ蓄電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】α−Ni(OH)2に固溶させる3価の金属元素の固溶量を減少させたりあるいは無固溶にして、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池10に用いられるニッケル電極11に充填された主正極活物質は、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、この主正極活物質にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されているとともに、この3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下であることを特徴とする。あるいは、主正極活物質はα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、かつ、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された3価の金属元素が固溶されていないことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のアルカリ蓄電池10に用いられるニッケル電極11に充填された主正極活物質は、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、この主正極活物質にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されているとともに、この3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下であることを特徴とする。あるいは、主正極活物質はα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、かつ、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された3価の金属元素が固溶されていないことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に係り、特に、水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルを主正極活物質とするニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のアルカリ蓄電池の正極として一般に用いられるニッケル電極は、充電時には、下記の(1)式で示すように、価数が2価の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)が価数が3価のオキシ水酸化ニッケル(β−NiOOH)になり、放電時には、下記の(2)式で示すように、価数が3価のオキシ水酸化ニッケル(β−NiOOH)が価数が2価の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)になる可逆反応を利用している。
β−Ni(OH)2+OH−→β−NiOOH+H2O+e・・・(1)
β−Ni(OH)2+OH−←β−NiOOH+H2O+e・・・(2)
【0003】
ここで、価数が2価のβ−Ni(OH)2と価数が3価のβ−NiOOHとの間の反応は1電子反応であるため、活物質利用率を向上させることには限界があり、ニッケル電極の高容量化を達成することが困難であった。これに対して、α−Ni(OH)2の結晶構造を有する活物質においては、充電時の反応電子数がβ−Ni(OH)2よりも多くなるため、充電量が多くなって放電容量が大きくなることが知られている。そこで、上記のような反応電子数を多くした充放電反応を利用して活物質利用率を向上させる方法が検討されるようになった。
【0004】
例えば、特許文献1においては、α−Ni(OH)2を製造する際に、Alを固溶させるとともに、さらにNi,Al以外のCa,Cr,Y,Tiなどの金属元素を固溶する方法が提案されている。この特許文献1にて提案されたニッケル電極においては、Ca,Cr,Y,Tiなどの異種金属元素を固溶させたα型Al固溶Ni(OH)2をNi(OH)2に被覆させてニッケル活物質を作製し、このニッケル活物質を用いた活物質ペーストを発泡ニッケル基板に充填して、ニッケル電極としている。これにより、価数が2価のα−Ni(OH)2と価数が3.5価のγ−NiOOHとの充放電反応を利用して反応電子数を増加させ、ニッケル電極の利用率を向上させるようにしている。
【特許文献1】
特開平11−176437号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した特許文献1にて提案されたニッケル活物質においては、α−Ni(OH)2中に固溶されたAl,Ca,Cr,Y,Tiなどの金属元素の含有量は数%〜数十%と多くなっている。ここで、Al,Ca,Cr,Y,Tiなどの金属元素の化合物は充放電反応には寄与しないため、これらの金属元素の含有量が多くなると、単位活物質量に対する放電容量が低下するという問題を生じた。また、Alはアルカリ性溶液に錯体を形成して溶解し易いため、活物質の形態が安定しないという問題も生じた。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に固溶させる金属元素の固溶量を減少させたりあるいは無固溶にして、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池を提供できるようにするとともに、このようなアルカリ蓄電池を容易に製造できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池に用いられるニッケル電極に充填された主正極活物質は、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、この主正極活物質にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されているとともに、この3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下であることを特徴とする。あるいは、主正極活物質はα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、かつ、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された3価の金属元素が固溶されていないことを特徴とする。
【0008】
上述したように、β−Ni(OH)2にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されると、容易にα−Ni(OH)2に変化するが、3価の金属元素の固溶量が増加すると単位活物質量に対する放電容量が低下する。そこで、本発明においては、3価の金属元素の固溶量を減少させても、あるいは3価の金属元素が固溶されていなくても、弱アルカリにより反応出発物質(硝酸塩あるいは硫酸塩などのニッケル塩を含有する物質)を中和することにより、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を生成させることを見いだした。これにより、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を得ることが可能となる。
【0009】
そして、このようなニッケル電極を作製するためには、ニッケル塩にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくとも1種の3価の金属元素を含有する塩が混合された混合塩水溶液にニッケル焼結基板を浸漬して、混合塩をニッケル焼結基板の空孔内に含浸する含浸工程と、混合塩が含浸されたニッケル焼結基板を所定の温度に加熱されたアルカリ溶液中でアルカリ処理して、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくとも1種の3価の金属元素が固溶されたα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に変化させて、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)からなる主正極活物質をニッケル焼結基板に充填する活物質充填工程とを備えるようにすればよい。
【0010】
あるいは、ニッケル塩を含有する水溶液にニッケル焼結基板を浸漬して、ニッケル塩をニッケル焼結基板の空孔内に含浸する含浸工程と、ニッケル塩が含浸されたニッケル焼結基板を所定の温度に加熱されたアルカリ溶液中でアルカリ処理して、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に変化させて、該α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)からなる主正極活物質をニッケル焼結基板に充填する活物質充填工程とを備えるようにしてもよい。
【0011】
この場合、アルカリ溶液はNa2CO3あるいはNaHCO3からなる弱アルカリであるのが望ましい。また、アルカリ溶液中の弱アルカリにNaOH,KOH,LiOHからなる強アルカリが混合されていてもよいが、強アルカリの混合量はNa2CO31モルに対して12モル以下あるいはNaHCO31モルに対して6モル以下であるのが好ましい。
【0012】
また、含浸工程の前に、コバルト塩を含有する溶液にニッケル焼結基板を浸漬した後、アルカリ熱処理あるいは酸化処理してニッケル焼結基板の表面にコバルト化合物層を形成するコバルト形成工程を設けるのがさらに好ましい。この場合は、電極基板の表面にコバルトを含む化合物層が形成されることとなるので、ニッケル電極内の導電性が向上して、活物質の利用率がさらに向上したニッケル電極が得られるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
1.ニッケル電極の作製
(1)ニッケル電極a1
まず、多孔度が約84%のニッケル焼結基板(電極基板)を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸鉄とを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した。ついで得られた混合硝酸塩溶液中にニッケル焼結基板を浸漬して、ニッケル焼結基板の空孔内に混合硝酸塩を含浸させた。
【0014】
ついで、乾燥(この乾燥を中間乾燥という)させた後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して、高温アルカリ処理を行って硝酸塩を水酸化物に変化させた。これにより、鉄が固溶された水酸化ニッケルがニッケル焼結基板の空孔内に充填されることとなる。これを水洗、乾燥して、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬し、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Feが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a1を作製した。
【0015】
(2)ニッケル電極a2
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸マンガンとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0016】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Mnが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a2を作製した。
【0017】
(3)ニッケル電極a3
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸アルミニウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0018】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Alが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a3を作製した。
【0019】
(4)ニッケル電極a4
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸ガリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0020】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Gaが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a4を作製した。
【0021】
(5)ニッケル電極a5
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸インジウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0022】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Inが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a5を作製した。
【0023】
(6)ニッケル電極a6
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸タリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0024】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Tlが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a6を作製した。
【0025】
(7)ニッケル電極a7
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0026】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(α−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a7を作製した。
【0027】
(8)ニッケル電極a8
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0028】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が2.0mol/lで、温度が70℃の炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(α−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a8を作製した。
【0029】
(9)ニッケル電極a9
まず、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意し、これを硝酸ニッケルと硝酸コバルト(金属モル比)を1:2で溶解させた比重が1.30の水溶液中に浸漬した。ついで、乾燥させた後、水酸化ナトリウムにてアルカリ処理、水洗を行い、100℃で熱処理を行って、ニッケル焼結基板の表面にコバルト被覆層を形成した。ついで、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、表面にコバルト被覆層が形成されたニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0030】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(α−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a9を作製した。
【0031】
(10)ニッケル電極x1
まず、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した。ついで得られた混合硝酸塩溶液中にニッケル焼結基板を浸漬して、ニッケル焼結基板の空孔内に混合硝酸塩を含浸させた。
【0032】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が7.0mol/lで、温度が70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(β−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x1を作製した。
【0033】
(11)ニッケル電極x2
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸鉄とを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0034】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Feが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x2を作製した。
【0035】
(12)ニッケル電極x3
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸マンガンとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0036】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Mnが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x3を作製した。
【0037】
(13)ニッケル電極x4
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸アルミニウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0038】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Alが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x4を作製した。
【0039】
(14)ニッケル電極x5
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸ガリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0040】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Gaが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x5を作製した。
【0041】
(15)ニッケル電極x6
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸インジウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0042】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Inが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x6を作製した。
【0043】
(16)ニッケル電極x7
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸タリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0044】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Tlが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x7を作製した。
【0045】
ついで、上述のようにして作製された各ニッケル電極a1〜a9,x1〜x7を用いて、これらの各ニッケル電極をCu−Kα線源を用いたX線回折装置(測定条件としては、管球銅(Cu)で管電圧が30KVで、管電流が12.5mAで、スキャンスピードが3deg/minで行った)でX線回折した。その結果、ニッケル電極a1〜a9およびx2〜x7においては、回折角(2θ)が11.5°、23.1°、35.0°でピークを示しており、α−Ni(OH)2が存在していることが分かった。一方、ニッケル電極x1においては、回折角(2θ)が19.2°、33.0°、38.8°でピークを示しており、β−Ni(OH)2が存在していることが分かった。
【0046】
2.アルカリ蓄電池の作製
ついで、図1(なお、図1は本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である)に示すように、酸化カドミウム粉末を主体とするペースト状の負極活物質を導電芯体12aに塗着して非焼結式カドミウム電極12を作製した後、上述のように作製した各ニッケル電極11(a1〜a9,x1〜x7)とカドミウム電極12とを用いて、これらの間にセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群をそれぞれ形成した。ついで、渦巻状電極群の上部に正極集電体11aを抵抗溶接するとともに、渦巻状電極群の下部に負極集電体12bを抵抗溶接して渦巻状電極体をそれぞれ作製した。ついで、鉄にニッケルメッキを施した有底円筒形の金属外装缶15内に渦巻状電極体を挿入した後、負極集電体12bと金属外装缶15の底部をスポット溶接した。
【0047】
一方、正極キャップ17bと蓋体17aとからなる封口体を用意し、正極集電体11aに設けられたリード部11bを蓋体17aの底部17cに接触させて、蓋体17aの底部17cとリード部11bとを溶接した。この後、渦巻状電極群の上端面に防振リング14を挿入し、外装缶15の上部外周面に溝入れ加工を施して、防振リング14の上端部に環状溝部15aを形成した後、金属製外装缶15内に電解液(水酸化リチウム(LiOH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を含有した8Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液)を注液し、封口体を封口ガスケット16を介して外装缶15の環状溝部15aに載置するとともに、外装缶15の先端部を封口体側にカシメて封口して、公称容量が2.1AhでCサイズのアルカリ蓄電池(ニッケル−カドミウム蓄電池)A1〜A9,X1〜X7をそれぞれ組み立てた。
【0048】
なお、ニッケル電極a1を用いたものを電池A1とし、ニッケル電極a2を用いたものを電池A2とし、ニッケル電極a3を用いたものを電池A3とし、ニッケル電極a4を用いたものを電池A4とし、ニッケル電極a5を用いたものを電池A5とし、ニッケル電極a6を用いたものを電池A6とし、ニッケル電極a7を用いたものを電池A7とし、ニッケル電極a8を用いたものを電池A8とし、ニッケル電極a9を用いたものを電池A9とした。また、ニッケル電極x1を用いたものを電池X1とし、ニッケル電極x2を用いたものを電池X2とし、ニッケル電極x3を用いたものを電池X3とし、ニッケル電極x4を用いたものを電池X4とし、ニッケル電極x5を用いたものを電池X5とし、ニッケル電極x6を用いたものを電池X6とし、ニッケル電極x7を用いたものを電池X7とした。
【0049】
3.電池特性の測定
ついで、上述のように作製した電池A1〜A9および電池X1〜X7をそれぞれ用い、これらを0.1It(Itは定格容量(Ah)/1h(時間)で表される数値)の充電電流で16時間充電した後、0.2Itの放電電流で終止電圧が0.8Vになるまで放電させて、放電時間から放電容量(mAh)を求めると下記の表1に示すような結果となった。
【0050】
また、電極a1〜a9および電極x1〜x7と同質量(但し、固溶元素は除く)のα−Ni(OH)2およびβ−Ni(OH)2を充放電(α−Ni(OH)2とα−NiOOHとの1電子反応、およびβ−Ni(OH)2とβ−NiOOHとの1電子反応)させた場合の理論放電容量(mAh)を算出し、算出した理論放電容量に対する実際に求めた放電容量(mAh)との比率を活物質利用率(%)として、下記の(1)式に基づいて算出すると、下記の表1に示すような結果となった。
【0051】
【表1】
【0052】
上記表1の結果から明らかなように、活物質の結晶構造がα型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を含有するニッケル電極a1〜a9,x2〜x7を備えた電池A1〜A9,X2〜X7は固溶元素を除く活物質利用率および放電容量が、活物質の結晶構造がβ型の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)を含有するニッケル電極x1を備えた電池X1よりも大きいことが分かる。これは、活物質がα型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)であると、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を得ることができるようになったためと考えられる。
【0053】
この場合、表1においては固溶元素を除いた活物質利用率が示されているため、3価の金属元素の固溶量が異なっていても固溶元素を除いた活物質利用率は等しくなっているが、実際は、α型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)とするために、ニッケル電極x2〜x7のように、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素がニッケル1モルに対して5モル%も固溶されていると、充放電に関与しない金属元素の質量が相対的に増大するため、単位活物質量当たりの放電容量が低下して、エネルギー密度が低下する。
【0054】
このため、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素の固溶量はできる限り少なくするのが望ましいということができる。この場合、ニッケル電極a1〜a6のように、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素がニッケル1モルに対して1モル%だけ固溶されていると、その放電容量が2100mAh以上になるため、3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下にするのが望ましく、特に、ニッケル電極a7〜a9のように、3価の金属元素が無固溶であるのが好ましい。
【0055】
さらに、3価の金属元素が無固溶で、そのニッケル焼結基板の表面にコバルトの化合物層が形成されたニッケル電極a9を備えた電池A9においては、ニッケル電極内に形成されたコバルトの化合物層により、ニッケル電極内の導電性がさらに向上する。このため、活物質の利用率が97%に向上し、その放電容量も2210mAhに向上した電池が得られるようになる。
【0056】
4.アルカリ処理液中の強アルカリのモル濃度比の検討
ついで、アルカリ処理液中に添加する強アルカリ(NaOH)のモル濃度比について検討した。そこで、濃度が7.0mol/lで、温度が70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に代えて、温度が70℃で3mol/lのNaOHと、温度が70℃で2mol/lのNa2CO3を用いること以外は、上述のニッケル電極x1と同様にニッケル電極を作製して、ニッケル電極b1とした。
【0057】
同様に、温度が70℃で6mol/lのNaOHと、温度が70℃で0.5mol/lのNa2CO3を用いること以外は、上述のニッケル電極x1と同様にニッケル電極を作製して、ニッケル電極b2とした。また、温度が70℃で6.5mol/lのNaOHと、温度が70℃で0.25mol/lのNa2CO3を用いること以外は、上述のニッケル電極x1と同様にニッケル電極を作製して、ニッケル電極b3とした。
【0058】
ついで、これらのニッケル電極b1,b2,b3を用いて、上述と同様にして公称容量が2.1AhでCサイズのニッケル−カドミウム蓄電池B1〜B3をそれぞれ組み立てた。そして、これらの各電池B1,B2,B3を用いて、上述と同様に、各電池B1,B2,B3の放電容量(mAh)および各ニッケル電極b1,b2,b3の活物質利用率を求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、表2においては、電池X1(電極x1)および電池A7(電極a7)の結果も併せて示している。
【0059】
【表2】
【0060】
上記表2の結果から明らかなように、電池X1のようにアルカリ処理液が強アルカリ(NaOH)のみ、あるいは電池B3のようにアルカリ処理液が強アルカリ(NaOH)が6.5mol/lで弱アルカリ(Na2CO3)が0.25mol/lであって、強アルカリ(NaOH)の濃度が大きい場合には、得られた活物質の結晶構造はβ型の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)となる。このため、単位活物質量当たりの放電容量が小さくなって、エネルギー密度が向上しないニッケル電極となる。
【0061】
一方、電池A7のようにアルカリ処理液が弱アルカリ(Na2CO3)のみ、あるいは電池B1,B2のようにアルカリ処理液が強アルカリ(NaOH)が3mol/lで弱アルカリ(Na2CO3)が2mol/l,強アルカリ(NaOH)が6mol/lで弱アルカリ(Na2CO3)が0.5mol/lであって、強アルカリ(NaOH)の濃度が比較的小さい場合には、得られた活物質の結晶構造はα型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)となる。これにより、単位活物質量当たりの放電容量が大きくなって、エネルギー密度が向上したニッケル電極が得られるようになる。このことから、アルカリ処理液中に添加する強アルカリ(NaOH)のモル濃度比は、弱アルカリ(Na2CO3)に対して12倍以下にするのが望ましい。
【0062】
なお、弱アルカリとして炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を用いることもでき、上記と同程度の効果が得られる。ただし、アルカリ処理液中に添加する強アルカリ(NaOH)のモル濃度比は、弱アルカリ(NaHCO3)に対して6倍以下にするのが望ましい。また、アルカリ処理液中に添加する強アルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)に代えて、水酸化カリウム(KOH)あるいは水酸化リチウム(LiOH)を用いても、ほぼ同様な結果が得られた。
【0063】
【発明の効果】
上述したように、本発明においては、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素の固溶量を減少させても、あるいは3価の金属元素が固溶されていなくても、弱アルカリにより反応出発物質(硝酸塩あるいは硫酸塩などのニッケル塩を含有する物質)を中和することにより、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を生成させることが可能となった。これにより、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を得ることが可能となった。
【0064】
なお、上述した実施の形態においては、ニッケル塩とFe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素を含有する混合硝酸塩溶液にニッケル焼結基板を浸漬した後、炭酸ナトリウム(Na2CO3)などの弱アルカリを含有するアルカリ処理液に浸漬してアルカリ処理を行って、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質を充填する焼結式ニッケル電極を作製する例について説明した。
しかしながら、本発明はこのような焼結式ニッケル電極に限らず、電極基板にα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を含有するペーストを直接充填した非焼結式ニッケル電極を用いるようにしても本発明を適用できることは明らかである。また、上述した実施の形態においては、本発明により得られたニッケル電極をニッケル−カドミウム蓄電池に用いる例について説明したが、本発明はこれに限らず、ニッケル−水素蓄電池などの他のアルカリ蓄電池に適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10…アルカリ蓄電池、11…ニッケル電極、11a…正極集電体、11b…リード部、12…カドミウム電極、12a…導電芯体、12b…負極集電体、13…セパレータ、14…防振リング、15…金属製外装缶、15a…環状溝部、16…封口ガスケット、17a…蓋体、17b…正極キャップ、17c…底部
【発明の属する技術分野】
本発明はニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に係り、特に、水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルを主正極活物質とするニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のアルカリ蓄電池の正極として一般に用いられるニッケル電極は、充電時には、下記の(1)式で示すように、価数が2価の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)が価数が3価のオキシ水酸化ニッケル(β−NiOOH)になり、放電時には、下記の(2)式で示すように、価数が3価のオキシ水酸化ニッケル(β−NiOOH)が価数が2価の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)になる可逆反応を利用している。
β−Ni(OH)2+OH−→β−NiOOH+H2O+e・・・(1)
β−Ni(OH)2+OH−←β−NiOOH+H2O+e・・・(2)
【0003】
ここで、価数が2価のβ−Ni(OH)2と価数が3価のβ−NiOOHとの間の反応は1電子反応であるため、活物質利用率を向上させることには限界があり、ニッケル電極の高容量化を達成することが困難であった。これに対して、α−Ni(OH)2の結晶構造を有する活物質においては、充電時の反応電子数がβ−Ni(OH)2よりも多くなるため、充電量が多くなって放電容量が大きくなることが知られている。そこで、上記のような反応電子数を多くした充放電反応を利用して活物質利用率を向上させる方法が検討されるようになった。
【0004】
例えば、特許文献1においては、α−Ni(OH)2を製造する際に、Alを固溶させるとともに、さらにNi,Al以外のCa,Cr,Y,Tiなどの金属元素を固溶する方法が提案されている。この特許文献1にて提案されたニッケル電極においては、Ca,Cr,Y,Tiなどの異種金属元素を固溶させたα型Al固溶Ni(OH)2をNi(OH)2に被覆させてニッケル活物質を作製し、このニッケル活物質を用いた活物質ペーストを発泡ニッケル基板に充填して、ニッケル電極としている。これにより、価数が2価のα−Ni(OH)2と価数が3.5価のγ−NiOOHとの充放電反応を利用して反応電子数を増加させ、ニッケル電極の利用率を向上させるようにしている。
【特許文献1】
特開平11−176437号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した特許文献1にて提案されたニッケル活物質においては、α−Ni(OH)2中に固溶されたAl,Ca,Cr,Y,Tiなどの金属元素の含有量は数%〜数十%と多くなっている。ここで、Al,Ca,Cr,Y,Tiなどの金属元素の化合物は充放電反応には寄与しないため、これらの金属元素の含有量が多くなると、単位活物質量に対する放電容量が低下するという問題を生じた。また、Alはアルカリ性溶液に錯体を形成して溶解し易いため、活物質の形態が安定しないという問題も生じた。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に固溶させる金属元素の固溶量を減少させたりあるいは無固溶にして、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池を提供できるようにするとともに、このようなアルカリ蓄電池を容易に製造できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池に用いられるニッケル電極に充填された主正極活物質は、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、この主正極活物質にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されているとともに、この3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下であることを特徴とする。あるいは、主正極活物質はα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、かつ、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された3価の金属元素が固溶されていないことを特徴とする。
【0008】
上述したように、β−Ni(OH)2にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されると、容易にα−Ni(OH)2に変化するが、3価の金属元素の固溶量が増加すると単位活物質量に対する放電容量が低下する。そこで、本発明においては、3価の金属元素の固溶量を減少させても、あるいは3価の金属元素が固溶されていなくても、弱アルカリにより反応出発物質(硝酸塩あるいは硫酸塩などのニッケル塩を含有する物質)を中和することにより、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を生成させることを見いだした。これにより、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を得ることが可能となる。
【0009】
そして、このようなニッケル電極を作製するためには、ニッケル塩にFe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくとも1種の3価の金属元素を含有する塩が混合された混合塩水溶液にニッケル焼結基板を浸漬して、混合塩をニッケル焼結基板の空孔内に含浸する含浸工程と、混合塩が含浸されたニッケル焼結基板を所定の温度に加熱されたアルカリ溶液中でアルカリ処理して、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくとも1種の3価の金属元素が固溶されたα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に変化させて、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)からなる主正極活物質をニッケル焼結基板に充填する活物質充填工程とを備えるようにすればよい。
【0010】
あるいは、ニッケル塩を含有する水溶液にニッケル焼結基板を浸漬して、ニッケル塩をニッケル焼結基板の空孔内に含浸する含浸工程と、ニッケル塩が含浸されたニッケル焼結基板を所定の温度に加熱されたアルカリ溶液中でアルカリ処理して、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に変化させて、該α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)からなる主正極活物質をニッケル焼結基板に充填する活物質充填工程とを備えるようにしてもよい。
【0011】
この場合、アルカリ溶液はNa2CO3あるいはNaHCO3からなる弱アルカリであるのが望ましい。また、アルカリ溶液中の弱アルカリにNaOH,KOH,LiOHからなる強アルカリが混合されていてもよいが、強アルカリの混合量はNa2CO31モルに対して12モル以下あるいはNaHCO31モルに対して6モル以下であるのが好ましい。
【0012】
また、含浸工程の前に、コバルト塩を含有する溶液にニッケル焼結基板を浸漬した後、アルカリ熱処理あるいは酸化処理してニッケル焼結基板の表面にコバルト化合物層を形成するコバルト形成工程を設けるのがさらに好ましい。この場合は、電極基板の表面にコバルトを含む化合物層が形成されることとなるので、ニッケル電極内の導電性が向上して、活物質の利用率がさらに向上したニッケル電極が得られるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
1.ニッケル電極の作製
(1)ニッケル電極a1
まず、多孔度が約84%のニッケル焼結基板(電極基板)を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸鉄とを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した。ついで得られた混合硝酸塩溶液中にニッケル焼結基板を浸漬して、ニッケル焼結基板の空孔内に混合硝酸塩を含浸させた。
【0014】
ついで、乾燥(この乾燥を中間乾燥という)させた後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して、高温アルカリ処理を行って硝酸塩を水酸化物に変化させた。これにより、鉄が固溶された水酸化ニッケルがニッケル焼結基板の空孔内に充填されることとなる。これを水洗、乾燥して、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬し、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Feが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a1を作製した。
【0015】
(2)ニッケル電極a2
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸マンガンとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0016】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Mnが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a2を作製した。
【0017】
(3)ニッケル電極a3
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸アルミニウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0018】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Alが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a3を作製した。
【0019】
(4)ニッケル電極a4
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸ガリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0020】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Gaが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a4を作製した。
【0021】
(5)ニッケル電極a5
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸インジウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0022】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Inが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a5を作製した。
【0023】
(6)ニッケル電極a6
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸タリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:1.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0024】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Tlが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a6を作製した。
【0025】
(7)ニッケル電極a7
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0026】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(α−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a7を作製した。
【0027】
(8)ニッケル電極a8
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0028】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が2.0mol/lで、温度が70℃の炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(α−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a8を作製した。
【0029】
(9)ニッケル電極a9
まず、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意し、これを硝酸ニッケルと硝酸コバルト(金属モル比)を1:2で溶解させた比重が1.30の水溶液中に浸漬した。ついで、乾燥させた後、水酸化ナトリウムにてアルカリ処理、水洗を行い、100℃で熱処理を行って、ニッケル焼結基板の表面にコバルト被覆層を形成した。ついで、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、表面にコバルト被覆層が形成されたニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0030】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(α−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極a9を作製した。
【0031】
(10)ニッケル電極x1
まず、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムとを、モル比が100:5.6:5.6(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した。ついで得られた混合硝酸塩溶液中にニッケル焼結基板を浸漬して、ニッケル焼結基板の空孔内に混合硝酸塩を含浸させた。
【0032】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が7.0mol/lで、温度が70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(β−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x1を作製した。
【0033】
(11)ニッケル電極x2
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸鉄とを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0034】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Feが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x2を作製した。
【0035】
(12)ニッケル電極x3
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸マンガンとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0036】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Mnが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x3を作製した。
【0037】
(13)ニッケル電極x4
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸アルミニウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0038】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Alが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x4を作製した。
【0039】
(14)ニッケル電極x5
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸ガリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0040】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Gaが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x5を作製した。
【0041】
(15)ニッケル電極x6
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸インジウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0042】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Inが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x6を作製した。
【0043】
(16)ニッケル電極x7
同様に、多孔度が約84%のニッケル焼結基板を用意するとともに、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸カドミウムと硝酸タリウムとを、モル比が100:5.6:5.6:5.0(金属モル比)となるように混合して、比重が1.7の混合硝酸塩溶液を調製した後、上述と同様のニッケル焼結基板をこの混合硝酸塩溶液中に浸漬した。
【0044】
ついで、上述と同様に中間乾燥した後、濃度が3.5mol/lで、温度が70℃の炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液中に浸漬して高温アルカリ処理を行って、硝酸塩を水酸化物に変化させた。これを水洗、乾燥し、再度、混合硝酸塩溶液中に浸漬して、中間乾燥の後、高温アルカリ処理するという一連の工程を所定回数(例えば、5回)だけ繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質(Tlが固溶されたα−Ni(OH)2)を充填してニッケル電極x7を作製した。
【0045】
ついで、上述のようにして作製された各ニッケル電極a1〜a9,x1〜x7を用いて、これらの各ニッケル電極をCu−Kα線源を用いたX線回折装置(測定条件としては、管球銅(Cu)で管電圧が30KVで、管電流が12.5mAで、スキャンスピードが3deg/minで行った)でX線回折した。その結果、ニッケル電極a1〜a9およびx2〜x7においては、回折角(2θ)が11.5°、23.1°、35.0°でピークを示しており、α−Ni(OH)2が存在していることが分かった。一方、ニッケル電極x1においては、回折角(2θ)が19.2°、33.0°、38.8°でピークを示しており、β−Ni(OH)2が存在していることが分かった。
【0046】
2.アルカリ蓄電池の作製
ついで、図1(なお、図1は本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である)に示すように、酸化カドミウム粉末を主体とするペースト状の負極活物質を導電芯体12aに塗着して非焼結式カドミウム電極12を作製した後、上述のように作製した各ニッケル電極11(a1〜a9,x1〜x7)とカドミウム電極12とを用いて、これらの間にセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群をそれぞれ形成した。ついで、渦巻状電極群の上部に正極集電体11aを抵抗溶接するとともに、渦巻状電極群の下部に負極集電体12bを抵抗溶接して渦巻状電極体をそれぞれ作製した。ついで、鉄にニッケルメッキを施した有底円筒形の金属外装缶15内に渦巻状電極体を挿入した後、負極集電体12bと金属外装缶15の底部をスポット溶接した。
【0047】
一方、正極キャップ17bと蓋体17aとからなる封口体を用意し、正極集電体11aに設けられたリード部11bを蓋体17aの底部17cに接触させて、蓋体17aの底部17cとリード部11bとを溶接した。この後、渦巻状電極群の上端面に防振リング14を挿入し、外装缶15の上部外周面に溝入れ加工を施して、防振リング14の上端部に環状溝部15aを形成した後、金属製外装缶15内に電解液(水酸化リチウム(LiOH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を含有した8Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液)を注液し、封口体を封口ガスケット16を介して外装缶15の環状溝部15aに載置するとともに、外装缶15の先端部を封口体側にカシメて封口して、公称容量が2.1AhでCサイズのアルカリ蓄電池(ニッケル−カドミウム蓄電池)A1〜A9,X1〜X7をそれぞれ組み立てた。
【0048】
なお、ニッケル電極a1を用いたものを電池A1とし、ニッケル電極a2を用いたものを電池A2とし、ニッケル電極a3を用いたものを電池A3とし、ニッケル電極a4を用いたものを電池A4とし、ニッケル電極a5を用いたものを電池A5とし、ニッケル電極a6を用いたものを電池A6とし、ニッケル電極a7を用いたものを電池A7とし、ニッケル電極a8を用いたものを電池A8とし、ニッケル電極a9を用いたものを電池A9とした。また、ニッケル電極x1を用いたものを電池X1とし、ニッケル電極x2を用いたものを電池X2とし、ニッケル電極x3を用いたものを電池X3とし、ニッケル電極x4を用いたものを電池X4とし、ニッケル電極x5を用いたものを電池X5とし、ニッケル電極x6を用いたものを電池X6とし、ニッケル電極x7を用いたものを電池X7とした。
【0049】
3.電池特性の測定
ついで、上述のように作製した電池A1〜A9および電池X1〜X7をそれぞれ用い、これらを0.1It(Itは定格容量(Ah)/1h(時間)で表される数値)の充電電流で16時間充電した後、0.2Itの放電電流で終止電圧が0.8Vになるまで放電させて、放電時間から放電容量(mAh)を求めると下記の表1に示すような結果となった。
【0050】
また、電極a1〜a9および電極x1〜x7と同質量(但し、固溶元素は除く)のα−Ni(OH)2およびβ−Ni(OH)2を充放電(α−Ni(OH)2とα−NiOOHとの1電子反応、およびβ−Ni(OH)2とβ−NiOOHとの1電子反応)させた場合の理論放電容量(mAh)を算出し、算出した理論放電容量に対する実際に求めた放電容量(mAh)との比率を活物質利用率(%)として、下記の(1)式に基づいて算出すると、下記の表1に示すような結果となった。
【0051】
【表1】
【0052】
上記表1の結果から明らかなように、活物質の結晶構造がα型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を含有するニッケル電極a1〜a9,x2〜x7を備えた電池A1〜A9,X2〜X7は固溶元素を除く活物質利用率および放電容量が、活物質の結晶構造がβ型の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)を含有するニッケル電極x1を備えた電池X1よりも大きいことが分かる。これは、活物質がα型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)であると、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を得ることができるようになったためと考えられる。
【0053】
この場合、表1においては固溶元素を除いた活物質利用率が示されているため、3価の金属元素の固溶量が異なっていても固溶元素を除いた活物質利用率は等しくなっているが、実際は、α型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)とするために、ニッケル電極x2〜x7のように、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素がニッケル1モルに対して5モル%も固溶されていると、充放電に関与しない金属元素の質量が相対的に増大するため、単位活物質量当たりの放電容量が低下して、エネルギー密度が低下する。
【0054】
このため、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素の固溶量はできる限り少なくするのが望ましいということができる。この場合、ニッケル電極a1〜a6のように、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素がニッケル1モルに対して1モル%だけ固溶されていると、その放電容量が2100mAh以上になるため、3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下にするのが望ましく、特に、ニッケル電極a7〜a9のように、3価の金属元素が無固溶であるのが好ましい。
【0055】
さらに、3価の金属元素が無固溶で、そのニッケル焼結基板の表面にコバルトの化合物層が形成されたニッケル電極a9を備えた電池A9においては、ニッケル電極内に形成されたコバルトの化合物層により、ニッケル電極内の導電性がさらに向上する。このため、活物質の利用率が97%に向上し、その放電容量も2210mAhに向上した電池が得られるようになる。
【0056】
4.アルカリ処理液中の強アルカリのモル濃度比の検討
ついで、アルカリ処理液中に添加する強アルカリ(NaOH)のモル濃度比について検討した。そこで、濃度が7.0mol/lで、温度が70℃の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に代えて、温度が70℃で3mol/lのNaOHと、温度が70℃で2mol/lのNa2CO3を用いること以外は、上述のニッケル電極x1と同様にニッケル電極を作製して、ニッケル電極b1とした。
【0057】
同様に、温度が70℃で6mol/lのNaOHと、温度が70℃で0.5mol/lのNa2CO3を用いること以外は、上述のニッケル電極x1と同様にニッケル電極を作製して、ニッケル電極b2とした。また、温度が70℃で6.5mol/lのNaOHと、温度が70℃で0.25mol/lのNa2CO3を用いること以外は、上述のニッケル電極x1と同様にニッケル電極を作製して、ニッケル電極b3とした。
【0058】
ついで、これらのニッケル電極b1,b2,b3を用いて、上述と同様にして公称容量が2.1AhでCサイズのニッケル−カドミウム蓄電池B1〜B3をそれぞれ組み立てた。そして、これらの各電池B1,B2,B3を用いて、上述と同様に、各電池B1,B2,B3の放電容量(mAh)および各ニッケル電極b1,b2,b3の活物質利用率を求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、表2においては、電池X1(電極x1)および電池A7(電極a7)の結果も併せて示している。
【0059】
【表2】
【0060】
上記表2の結果から明らかなように、電池X1のようにアルカリ処理液が強アルカリ(NaOH)のみ、あるいは電池B3のようにアルカリ処理液が強アルカリ(NaOH)が6.5mol/lで弱アルカリ(Na2CO3)が0.25mol/lであって、強アルカリ(NaOH)の濃度が大きい場合には、得られた活物質の結晶構造はβ型の水酸化ニッケル(β−Ni(OH)2)となる。このため、単位活物質量当たりの放電容量が小さくなって、エネルギー密度が向上しないニッケル電極となる。
【0061】
一方、電池A7のようにアルカリ処理液が弱アルカリ(Na2CO3)のみ、あるいは電池B1,B2のようにアルカリ処理液が強アルカリ(NaOH)が3mol/lで弱アルカリ(Na2CO3)が2mol/l,強アルカリ(NaOH)が6mol/lで弱アルカリ(Na2CO3)が0.5mol/lであって、強アルカリ(NaOH)の濃度が比較的小さい場合には、得られた活物質の結晶構造はα型の水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)となる。これにより、単位活物質量当たりの放電容量が大きくなって、エネルギー密度が向上したニッケル電極が得られるようになる。このことから、アルカリ処理液中に添加する強アルカリ(NaOH)のモル濃度比は、弱アルカリ(Na2CO3)に対して12倍以下にするのが望ましい。
【0062】
なお、弱アルカリとして炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を用いることもでき、上記と同程度の効果が得られる。ただし、アルカリ処理液中に添加する強アルカリ(NaOH)のモル濃度比は、弱アルカリ(NaHCO3)に対して6倍以下にするのが望ましい。また、アルカリ処理液中に添加する強アルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)に代えて、水酸化カリウム(KOH)あるいは水酸化リチウム(LiOH)を用いても、ほぼ同様な結果が得られた。
【0063】
【発明の効果】
上述したように、本発明においては、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素の固溶量を減少させても、あるいは3価の金属元素が固溶されていなくても、弱アルカリにより反応出発物質(硝酸塩あるいは硫酸塩などのニッケル塩を含有する物質)を中和することにより、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を生成させることが可能となった。これにより、単位活物質量当たりの放電容量が大きく、かつエネルギー密度が大きいニッケル電極を得ることが可能となった。
【0064】
なお、上述した実施の形態においては、ニッケル塩とFe,Mn,Al,Ga,In,Tlなどの3価の金属元素を含有する混合硝酸塩溶液にニッケル焼結基板を浸漬した後、炭酸ナトリウム(Na2CO3)などの弱アルカリを含有するアルカリ処理液に浸漬してアルカリ処理を行って、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量の活物質を充填する焼結式ニッケル電極を作製する例について説明した。
しかしながら、本発明はこのような焼結式ニッケル電極に限らず、電極基板にα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)を含有するペーストを直接充填した非焼結式ニッケル電極を用いるようにしても本発明を適用できることは明らかである。また、上述した実施の形態においては、本発明により得られたニッケル電極をニッケル−カドミウム蓄電池に用いる例について説明したが、本発明はこれに限らず、ニッケル−水素蓄電池などの他のアルカリ蓄電池に適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10…アルカリ蓄電池、11…ニッケル電極、11a…正極集電体、11b…リード部、12…カドミウム電極、12a…導電芯体、12b…負極集電体、13…セパレータ、14…防振リング、15…金属製外装缶、15a…環状溝部、16…封口ガスケット、17a…蓋体、17b…正極キャップ、17c…底部
Claims (8)
- 電極基板に水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルからなる主正極活物質が充填されたニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池であって、
前記主正極活物質はα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、
前記主正極活物質に鉄(Fe),マンガン(Mn),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),タリウム(Tl)から選択された少なくともに1種の3価の金属元素が固溶されているとともに、
前記3価の金属元素の固溶量はニッケル1モルに対して1モル%以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池。 - 電極基板に水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルからなる主正極活物質が充填されたニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池であって、
前記主正極活物質はα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)の結晶構造を有し、
かつ、前記主正極活物質に鉄(Fe),マンガン(Mn),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),タリウム(Tl)から選択された3価の金属元素が固溶されていないことを特徴とするアルカリ蓄電池。 - 前記電極基板の表面にコバルトを含む化合物層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ蓄電池。
- ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルからなる主正極活物質を充填して形成されたニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池の製造方法であって、
ニッケル塩に鉄(Fe),マンガン(Mn),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),タリウム(Tl)から選択された少なくとも1種の3価の金属元素を含有する塩が混合された混合塩水溶液に前記ニッケル焼結基板を浸漬して、該混合塩を前記ニッケル焼結基板の空孔内に含浸する含浸工程と、
前記混合塩が含浸されたニッケル焼結基板を所定の温度に加熱されたアルカリ溶液中でアルカリ処理して、Fe,Mn,Al,Ga,In,Tlから選択された少なくとも1種の3価の金属元素が固溶されたα型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に変化させて、該α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)からなる主正極活物質を前記ニッケル焼結基板に充填する活物質充填工程とを備えたことを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。 - ニッケル焼結基板に水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルからなる主正極活物質を充填して形成されたニッケル電極を備えたアルカリ蓄電池の製造方法であって、
ニッケル塩を含有する水溶液に前記ニッケル焼結基板を浸漬して、該ニッケル塩を前記ニッケル焼結基板の空孔内に含浸する含浸工程と、
前記ニッケル塩が含浸されたニッケル焼結基板を所定の温度に加熱されたアルカリ溶液中でアルカリ処理して、α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)に変化させて、該α型水酸化ニッケル(α−Ni(OH)2)からなる主正極活物質をニッケル焼結基板に充填する活物質充填工程とを備えたことを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。 - 前記アルカリ溶液はNa2CO3あるいはNaHCO3からなる弱アルカリであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
- 前記アルカリ溶液中の弱アルカリにNaOH,KOH,LiOHからなる強アルカリが混合されているとともに、
前記強アルカリの混合量は前記Na2CO31モルに対して12モル以下あるいはNaHCO31モルに対して6モル以下であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のアルカリ蓄電池の製造方法。 - 前記含浸工程の前に、コバルト塩を含有する溶液に前記ニッケル焼結基板を浸漬した後、アルカリ熱処理あるいは酸化処理して該ニッケル焼結基板の表面にコバルト化合物層を形成するコバルト形成工程を設けるようにしたことを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載のアルカリ蓄電池の製造方法。
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