JP2005049539A - 電析表示用電解液および電析型表示装置 - Google Patents
電析表示用電解液および電析型表示装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】電析表示用電解液中の金属イオンを透明電極上に電気化学的に還元・析出させる、あるいは透明電極上の金属を電気化学的に酸化して電解液中に溶解させることにより、表示・非表示が行われる電析型表示装置において、金属イオンの再溶解性が高い電解液を提供する。
【解決手段】有機溶媒中に、金属塩からなる電解質が溶解し、かつ色材を含有する電析表示用電解液において、当該電解液中の水分含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする、電析表示用電解液。
【選択図】 なし
【解決手段】有機溶媒中に、金属塩からなる電解質が溶解し、かつ色材を含有する電析表示用電解液において、当該電解液中の水分含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする、電析表示用電解液。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学的な酸化・還元によって、電解液中の金属イオンが可逆的に析出・溶解する電析表示用電解液と、これを用いて表示/非表示を制御する電析型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター技術や通信技術の発展につれて、多くの情報がいわゆる電子情報として配布されるようになり、屋内のみならず屋外でも手軽に電子情報を得ることができるようになった。
従来、電子情報を表示する手段としてはブラウン管が用いられてきたが、ブラウン管は重く消費電力も大きいことから、表示手段としてのブラウン管は携帯性に乏しい。
【0003】
ブラウン管に変わる軽量・低消費電力の携帯情報表示手段としては、近年、液晶ディスプレイ(LCD)の技術革新は目覚しいが、室内光のもとで表示を見るに場合、実際にはLCD備え付けの照明用ランプを用いる必要があった。これは、現状のLCDは偏光板を用いる必要があり、外部光の使用効率が低いからである。
【0004】
ところで紙は、情報表示媒体として古くから一般的に用いられてきているが、室内光下でも一般にスタンドなどの別光源を用いることなく表示を読むことができる。これは紙の光反射率が高く、外部光の使用効率が高いからである。
そこで、例えば特許文献1にあるように、光反射率が高い酸化チタンなどの顔料層と、顔料層の上部に設けられた透明電極との間(電極表面)に金属を電析させて反射光を遮ることにより表示を行う、光反射率、コントラスト比がともに高い電析型表示装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】USP 4,240,716号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、表示装置(ディスプレイ)には消費電力の低減や、応答速度の向上が求められるが、電析型表示装置についても同様に、これらの改善が望まれていた。
本発明者らは鋭意検討の結果、電解液から析出した金属の再溶解速度を改善することにより、上記問題を解決できることを見出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして発明者らは、更に検討した結果電解液中の水分量を一定量以下に制御することにより、電解質中に含まれる金属の再溶解性を向上させることができることを見出した。また、このような電解液を使用することにより、電析型表示装置の応答速度を向上させ、また消費電力低減に有効であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、有機溶媒中に、金属塩からなる電解質が溶解し、かつ色材を含有する電析表示用電解液において、当該電解液中の水分含有量が0.2重量%以下である電析表示用電解液、およびこれを用いた電析型表示装置に存する。
また本発明は、少なくとも片方が透明である一対の電極間に、金属塩からなる電解質が溶解し、色材を含有する電解液を有し、該透明電極上に、電解質中に含まれる金属を電気化学的に析出/再溶解させることにより反射率を変化させ、表示および非表示を制御する、電析型表示装置であって、該電析型表示装置内に組み込まれた電解液中の水分含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする電析型表示装置に存する。
【0009】
【発明の実施の態様】
本発明の電析表示用電解液は、基本的に有機溶媒、顔料や染料などの色材、および金属塩からなる電解質を構成成分として含有するものであり、これらの他に、本発明の性能を損なわない範囲で任意の成分を含有していても良い。
以下、本発明の電析表示用電解液の構成成分につき、詳細に説明する。
【0010】
<有機溶媒>
本発明に使用される有機溶媒は、電解コンデンサーや電池に一般的に用いられている溶媒を用いることができるが、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ニトリル、アミド、スルホン、エーテル、スルホキシドなどの非プロトン性非水溶媒が適当であり、特に比誘電率が5以上であるものが好ましい。
【0011】
そのような溶媒の具体的な例としては、以下が挙げられる。
鎖状炭酸エステル(例えば、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル)、環状炭酸エステル(例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル)等の炭酸エステル;
脂肪族カルボン酸エステル(例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等)、芳香族カルボン酸エステル(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル等)、ラクトン(例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等)等のカルボン酸エステル;
リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル;
アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル等のニトリル;
N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド;
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等のスルホン;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル;
ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
【0012】
中でも、電解質の溶解度が高く、電気化学的反応性が低い点から、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、またはエーテルが好ましい。
なお、本発明の性能を損なわない範囲で、さらに上記以外の溶媒を含有していても良い。
【0013】
<電解質>
本発明の電析表示用電解液は、電圧印加により、電解質中に含まれる金属が可逆的に、電気化学的に析出/再溶解し、電析型表示装置における表示状態および非表示状態を作り出す。
電解質は、イオン化傾向が比較的に貴である(電圧印加により金属が析出しやすい)各種金属の塩からなる。具体的には、例えば、銀塩、ビスマス塩、銅塩、スズ塩などの各種金属塩が挙げられる。
【0014】
これらの金属塩として、銀塩を例に説明すると、例えばRbAg4Br5、NH4Ag4Br5、RbAg4I5、NH4Ag4I5等の銀塩、AgCl、AgBr、AgIなどのハロゲン化銀などが挙げられる。その他の金属についても、これらに対応する各種金属塩を使用することが出来る。金属塩の中でも、1価の金属イオンの析出に要する電気量が少ない点から、特に銀塩が好ましい。
【0015】
電解液中の金属イオンの濃度は、1mM以上が好ましく、5mM以上がより好ましい。下限値より低い濃度では、金属イオンの析出が著しく遅くなる場合がある。また、濃度の上限値は2M程度が望ましい。金属イオンの濃度が高すぎると経済的に不利であるばかりでなく、低温時には金属塩の析出などの問題が生じるおそれがある。
【0016】
電解液の電気伝導度を向上させる目的で、支持電解質を同時に用いることができる。具体的には、電解コンデンサーや電池で一般に使用されているものが使用でき、好ましくは、イオン化傾向が卑である(金属が電析しない)アルカリ金属のハロゲン化物塩や、あるいはアルキルアンモニウムのハロゲン化物塩である。支持電解質の濃度は、通常、析出させる金属イオン濃度の1/2〜5倍濃度である。
【0017】
<色材(顔料)>
本発明の電析表示用電解液に使用される顔料は特に制限されず、同様の電解液に従来使用されている各種顔料粒子から、適宜選定して使用することが出来る。顔料粒子は、電荷を有している顔料、電荷を付与することができる顔料、あるいはまた全く電荷を持たない(つまり電気泳動しない)顔料のいずれをも使用することができ、たとえば、一般の顔料、レーキ顔料、樹脂で被覆された顔料等が挙げられる。これらの顔料は有機物質であっても無機物質であってもよいし、光吸収性であっても光放射性であってもよく、又光散乱性であっても光反射性であってもよい。また、顔料の選定は、電解液に使用する溶媒(分散媒)に対し難溶ないし不溶である組み合わせのものを選定することが必要である。
【0018】
本発明に使用される顔料としては、白色、黒色、シアン色、マゼンタ色、黄色などの所望の表示色に応じた公知の顔料から選ばれる。具体的には、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、などの金属酸化物;カーボンブラック、アニリンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チタンブラック等の黒色の着色剤:フタロシアニンブルー、メチレンブルー、ビクトリアブルー、メチルバイオレット、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー等のシアン色着色剤;ローダミン6Gレーキ、ジメチルキナクリドン、ウォッチングレッド、ローズベンガル、ローダミンB、アリザリンレーキ等のマゼンタ色着色剤;クロムイエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、モリブデンオレンジ、キノリンイエロー、タートラジン等の黄色着色剤などが挙げられる。これらの顔料は、単独あるいは混合したものを用いることができる。また、USP6,300,932号公報に記載の各種着色顔料を使用することも可能である。
【0019】
また、上記顔料を樹脂と複合化した複合化粒子も使用することが出来る。具体的には、例えば顔料粒子の周りを樹脂で被覆してカプセル化したものでもよいし、微細顔料粒子を樹脂中に均一に分散させたものを所望の粒子径に粉砕して用いてもよい。複合化するのに用いることができる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(Du Pont (社)Elvax resins )、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体 (Du pont(社)製Nucrel Resins, Dow Chemical(社)製Primacor Resins)、アクリル系共重合体及び三元共重合体 (Du Pont(社)製Elvacite Resins,) 、及びポリメチルメタクリレート等が挙げられる。高速剪断溶融(in high shear melt)における単独重合体/顔料相分離に有用な物質としては、これらに限定されないが、 以下のものが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、 ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリラウリルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレート、 ポリt−ブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、及びこれらの物質の2種以上の共重合体等が挙げられる。
【0020】
白色顔料として用いる顔料は、酸化チタンが望ましい。酸化チタンはアルミナやシリカなどの無機物で表面処理されていてもよいし、高級脂肪酸などの有機物で表面処理されていてもよいし、これら両方の物質で表面処理されていてもよい。またシランカップラー、チタンカップラー、アルミニウムカップラー、ジルコニウムカップラーなどで表面処理されていてもよい。
【0021】
なお、ルチル型酸化チタンの方がアナターゼ型酸化チタンよりも望ましい。ルチル型の方が純白に近いという色味の点と、アナターゼ型は光触媒として働くため、例えば溶媒(分散媒)中に染料を溶解し、着色して使用する場合には、この染料を分解してしまうおそれがあるため、不活性なルチル型酸化チタンの方が好ましい。
【0022】
顔料には、大別して光散乱性と光吸収性の2タイプがあり、通常、白色やメタリック調の顔料は光散乱タイプ、その他の色味(有色)の顔料は光吸収タイプに分類される。本発明において、使用する顔料の量は白に代表される光散乱性顔料と、その他の色味の光吸収性顔料とでは異なる。
本発明の電析表示用電解液における顔料の含有量は、無機顔料粒子の場合、溶媒100重量部に対して通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、また通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。有機顔料粒子の場合には、溶媒100重量部に対して通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、また通常100重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0023】
本発明の電解液に使用する顔料の好適な平均粒径は、顔料自体の比重や粒径、表面状態などにより異なり画一的に決められないが、分散安定性等から、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、また通常5μm以下、好ましくは2μm以下である。
なお、本発明の電析表示用電解液において、耐久性、耐光性、耐候性等に優れる点、および白色が容易に得られ、カラーフィルターとの併用に適している点からは、色材として顔料を使用することが好ましい。
【0024】
<色材(染料)>
本発明の電析表示用電解液に使用される染料は特に制限されず、同様の電解液に従来使用されている各種染料から、適宜選定して使用することが出来る。該染料は蛍光性でも、光官能性でもよく、例えば以下の染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
好適な染料の具体例として、オイルレッド染料:スーダンレッド、スーダンブラック系染料などのアゾ染料;オイルブルー染料:マクロレックスブルー系染料等のアンスラキノン系染料;ミカエルハイドロール、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、オーラミンO等のトリフェニルメタン系染料等が挙げられる。
【0026】
なお、本発明の電析表示用電解液において、鮮明な表示色が得られる点からは、色材として染料を使用することが好ましい。
<添加剤>
上記顔料が電解液内で沈降したり偏在するのを防止する目的で、電解液の安定性を損なわない範囲で増粘剤を加えて固体化し、いわゆるゲル化電解液としてもよい。無機増粘剤としては、シリカやアルミナの微粒子などがある。また有機系の増粘剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、などを用いることができる。
【0027】
また電解質の安定性を改善したり、金属イオンの電析および金属の溶解を促進する目的で、電解液に安定剤を加えることができる。例えば、チオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、メルカプトベンズイミダゾール、クマリン、フタル酸、こはく酸、サリチル酸、グリコール酸、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、酒石酸、シュウ酸、D−グルコノ−1,5−ラクトン、トリエタノールアミン等がある。
【0028】
また上記顔料の分散を促進・安定化する目的で、工業用途で一般に用いられる顔料分散剤を用いてもよい。
<電析表示用電解液の製造方法>
本発明の電析表示用電解液は、常法に従って製造することができる。
例えば、有機溶媒に電解質を溶解し、これに顔料、および必要に応じて有機増粘剤、安定剤などの各種添加剤を加えて分散処理して製造する。必要であれば、この様にして得られた顔料分散液に、さらに樹脂、添加剤などを配合、混合し均一な溶液とすることにより、電析表示用電解液とする。
【0029】
分散処理は通常、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて行う。
サンドグラインダーなどで分散メディアを用いて分散させる場合、0.1mm〜数mm径のガラス製、アルミナ等のセラミック製、鋼等の金属製のビーズを媒体として用いるのが好ましい。分散条件は、通常、温度0〜100℃であり、好ましくは室温〜80℃の範囲である。分散時間は分散液の組成(色材、溶媒、分散剤)及びサンドグラインダーの装置サイズ等により適正時間が異なるため適宜調節する。
【0030】
なお、無機増粘剤を用いる場合は、上記顔料分散液を作成した後で、無機増粘剤を加え、さらに分散操作を行うとよい。
<水分量>
本発明の電析表示用電解液における水分含有量は、0.2重量%以下であり、好ましくは0.15重量%以下である。水分含有量を上記以下にすることにより、一旦析出した金属の、電解液中への再溶解速度が向上する。
【0031】
一般に、電解液に用いられる溶媒や電解質には、製造過程及び保存雰囲気に由来して、0.3wt%程度の水分が含有されてくるため、通常の電解質濃度での電解液とした場合には、0.3wt%程度の水分が持ち込まれてしまう。後述する比較例1及び2に示すとおり、水分0.25wt%では、電析型表示装置としての機能上、不十分である。
【0032】
これに対して、本発明においては、水分含有量を制限することにより、一旦析出した金属の、電解液中への再溶解速度を向上させる効果を得ることができる。
一般に、液相に含まれる水分含有量は、カールフィッシャー法、加熱法、近赤外分光法、ガスクロマトグラフィ法などにより測定することができるが、1重量%以下程度の水分含有量を再現性よく、また精度よく測定できるため、本発明の電析表示用電解液における水分含有量は、カールフィッシャー法を用いる。
【0033】
具体的には、例えば、電解液を遠心分離法などにより固相成分と液相成分に分離し、液相部分の水分量を、容量滴定法を使用したカールフィッシャー法で測定する。
電析表示用電解液における水分量を、本発明の範囲に制御する方法は、特に限定されない。例えば、電解液の構成成分のうち、固形成分は電気炉などを用いて乾燥させ、また液体成分はモレキュラーシーブ、塩化カルシウム、無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥させ、これらを用いて電解液を調製してもよいし、或いは電解液を調製後、これに乾燥剤を加えて乾燥させてもよい。
【0034】
また、電析型表示装置に電解液が組み込まれる迄には、電解液を収容する容器、雰囲気、保管状態、電解液が接する装置部材の付着水分などから持ち込まれることとなる。従って、電析型表示装置が組み立てられ、電解液が組み込まれた際の水分量についても、0.2重量%以下となるように、部材に付着する水分を低減したり、乾燥雰囲気中で組立作業を行うなどして水分を管理することが好ましい。
【0035】
<電析型表示装置>
本発明の電析型表示装置は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に、上述した電析表示用電解液を有し、該電解液に電界を印加することにより金属を析出させることにより、表示/非表示を行う。
電析型表示装置の構成に、特に制限はなく、例えば個々の画素が駆動素子であるTFT(Thin Film transistor)によって制御される、いわゆるアクティブマトリクス型駆動方式の表示装置であってもよいし、陽極−陰極がX−Yマトリクス状に設けられた、単純マトリクス型駆動方式の表示装置であってもよい。以下、単純マトリクス型駆動方式を例に、図1および図2を参照しつつ、本発明の電析型表示装置について説明する。
【0036】
単純マトリクス駆動方式により駆動される電析型表示装置において、その電極構造としては、図1に示すように、第1の電極群X1,X2・・・と第2の電極群Y1,Y2・・・とが互いに直交して配列されている。図2は、その具体的構造を示すものであり、透明基板1上に第1の電極群に相当するストライプ状の透明導電膜2が形成されている。また、これと対向して第2の電極群に相当するストライプ状の対極4が形成された支持基板3が配され、これらが電解液層5を介して重ね合わされている。上記透明導電膜2や対極4は、画素数に応じて所定の本数形成されており、これらの交点が画素となる。
【0037】
上記の構成において、透明基板1には、石英ガラス板、白板ガラス板等の透明ガラス基板を用いることが可能であるが、これに限定されず、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミドを例として挙げることができる。これら合成樹脂を支持体として用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板とすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能である。
【0038】
透明導電膜2には、例えばIn2O3とSnO2の混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn2O3をコーティングした膜を用いることが好ましい。これらITO膜やSnO2またはIn2O3をコーティングした膜にSnやSbをドーピングしたものでも良く、MgOやZnO等を用いることも可能である。
電解液層5には、前述した本発明の電解液を用いるとよい。
【0039】
背面側に設けられる支持基板3は、必ずしも透明である必要はなく、対極4を確実に保持できる基板やフィルム等を用いることができる。例示すると、石英ガラス板、白板ガラス板等のガラス基板、セラミック基板、紙基板、木材基板を用いることが可能である。勿論、これに限定されず、合成樹脂基板等も使用可能である。合成樹脂基板としては、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンーコヘキサフルオロプロピレン等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミドを例として挙げることができる。これら合成樹脂を支持基板として用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板とすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能である。
【0040】
対極4には、導電材料、例えば金属材料を使用することができる。ただし、この対極4を構成する金属と透明電極2上に析出する金属の電位差が大きいと、着色状態において電荷が電極上に蓄積され、電荷の移動が起こって意図しない画素が着色されてしまう虞れがある。特に、電位差が金属が析出する際の析出過電圧(単純マトリクス駆動の閾値)を越えると、前記着色が起こる可能性が生ずる。そこで、対極4には、発色材料として析出する金属との電位差が析出過電圧(閾値)未満となるような金属を選択することが望ましい。理想的には、対極4の金属材料として、発色材料に用いた金属イオンのイオン化前の状態(金属状態)のものを用いる。すなわち、例えば、銀の析出・溶解を利用する場合には対極4に銀を用いるというように、対極4には析出・溶解する金属と同一の金属を用いる。これによって、透明電極2上に金属が析出した状態で上記電位差が生ずることがなくなる。
【0041】
以上の構成を有する電析型表示装置においては、単純マトリクス駆動により表示を行う。駆動に際しては、金属の析出過電圧を閾値電圧として利用し、金属を析出させる画素において、上記透明電極2と対極4間にこの閾値以上の電圧を印加する。図3は、銀の場合の析出過電圧を示すサイクリックボルタモグラムである。このサイクリックボルタモグラムの還元電流の立ち上がりの電圧が析出過電圧を与えるが、この値を閾値として単純マトリクス駆動を行う。これにより、意図する画素以外の画素に電荷が移動したとしても、上記閾値を越えなければ金属が析出して着色することはない。
【0042】
ただし、駆動電圧は上記析出過電圧の2倍以下とすることが好ましい。例えば、点順次走査の場合、半選択点に加わる電圧は、マトリクス電極のライン数Nが十分に大きい場合には、選択点に印加した駆動電圧の1/2である。点順次走査の場合、半選択点に印加される電圧は、選択点に印加される電圧をVとすると、マトリクスがN×Nのとき、「液晶エレクトロニクスの基礎と応用」(オーム社、94頁)の記載より、(N−1)V/(2N−1)で与えられる。ここで、Nが十分に大きいときには、V/2となる。したがって、駆動電圧の1/2が上記析出過電圧を越えなければ、クロストークは起こらないことになる。
【0043】
単純マトリクス駆動においては、一般には線順次走査を行う。この場合、表示するパターンにより、半選択点に加わる電圧は異なる。しかしながら、電析型表示装置は、液晶表示装置とは異なり、極性を有するが故に、複数の選択点から半選択点への影響は互いに打ち消し合う場合が多い。例えば、図4は、矢印で示す走査線A,Bを選択した場合の本来のパス(主パス)を示すものである。選択点Sには、図中太線で示す駆動電流が流れる。一方、隣接する選択点(半選択点)Hには、図5に示す副パスにより、図中太線で示すような電流が流れる。これに対して、図6に示すように、もう一つの走査線Cを選択したときには、図中太線で示す別の副パスの電流が流れ、半選択点Hに流れる電流は、図5に示す副パスの場合とは逆方向である。多数の点を選択した場合に影響を互いに打ち消し合う事情は前記の通りであり、そのため、線順次操作においても上記の条件(駆動電圧を析出過電圧の2倍以下)を満たしていれば、実際上はクロストークは生じない。
【0044】
以上、本発明を適用した表示装置の基本的な構成及びその駆動方法について説明してきたが、本発明は、これに限らず種々の構成を採用することが可能である。例えば、図7に示すように、第3の電極として、第1の電極群X1,X2・・・(透明導電膜2)や第2の電極群Y1,Y2・・・(対極4)とは独立した電位検知電極11,12を形成してもよい。これら電位検知電極11,12は、透明基板1上の透明画素電極(透明導電膜2)または共通電極(対極4)と同一の面内に電気的に絶縁された部材として配設されており、透明基板1上の透明画素電極や共通電極の電位を検知するのに用いられる。
【0045】
上記第3の電極である電位検知電極11,12は、ストライプ電極である第1の電極群X1,X2・・・(透明導電膜2)、または第2の電極群Y1,Y2・・・(対極4)と同じ面に形成することができる。ここで、反応の過程における電位を正確に検知するためには、第1の電極群X1,X2・・・(透明導電膜2)側に形成するのが好ましいが、そうすると開口率が低下するので、この点では不利である。
【0046】
上記第3の電極である電位検知電極11,12の電極材料としては、銀が好ましく、これをストライプ電極間に、各ストライプ電極と平行に1本から複数本設置し、さらに各ストライプ電極と直交して1本から複数本設置し、互いに交差する交点で結線するようにする。このとき、ストライプ電極と直交する第3の電極が、ストライプ電極を跨ぐ部分については、ストライプ電極の表面を絶縁膜でコーティングしておかなければならない。
【0047】
【実施例】
次に本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
《実施例1》
γ−ブチロラクトン(関東化学(株)製、特級)15gに無水臭化リチウム(関東化学製、1級)2.17gおよびヨウ化銀(関東化学(株)製、特級)2.94gを攪拌溶解させて得られた溶液を25mLメスフラスコに移し、γ−ブチロラクトンを加えて全量を25mLにした。
【0048】
この溶液から12gをとり、ついでモレキュラーシーブ4A(和光純薬工業(株)製)を加えて12時間放置して、乾燥溶液を得た(なお、25mLメスフラスコ内に残った溶液を、未乾燥溶液とする)。
この乾燥溶液7gに、別に電気炉で加熱乾燥した酸化チタン(石原産業(株)製)1.5gとジルコニア粒子22gを加えたのち、ペイントシェーカーを用いて顔料の分散を1時間行った。得られた顔料分散液(乾燥電解液)の一部を抜き取り、遠心分離によって酸化チタンを分離した後、透明な上澄み液の水分量を測定した。
具体的には、滴定剤として三菱化学(株)製KF(カールフィッシャー)試薬SS−Z3mg、滴定溶剤として三菱化学(株)製脱水溶剤GEXを使用し、(株)ダイアインスツルメンツ製容量滴定法水分測定装置KF−100により測定した。水分量は0.12重量%であった。
【0049】
このようにして得た乾燥電解液を、一対の向かい合ったITOガラス電極(電極間距離100μm、電極面積2.8cm2)に封入した後、電極を電源(菊水電子(株)製PBX40−2.5)を繋いだ。電極は、反射率測定側を接地側とし、回路を5秒間開放したあと、+3Vを1秒間印加すると銀は速やかに析出し、ついで−1Vを印加すると析出した銀は速やかに再溶解した。
【0050】
一連の銀の析出/再溶解の際の反射率変化は、分光器(オーシャンオプティックス社製USB2000)を用いて測定した。電圧印加前の反射率は40%であった。なお、反射率の基準として硫酸バリウムを用いた。得られた反射率から、次式を用いて規格化反射率を計算した。
【0051】
【数1】
規格化反射率(λ)
=(反射率(λ)−最小反射率)/(最大反射率−最小反射率)
ただし、最大反射率は測定波長範囲での反射率の最大値、最小反射率は測定波長範囲での反射率の最小値、λは波長である。このようにして求めた、規格化反射率を図1に示した。
【0052】
《比較例1》
実施例1で作成した未乾燥溶液7gに、酸化チタン1.5gとジルコニア粒子22gを加えた後、ペイントシェーカーを用いて顔料の分散を1時間行った。
このようにして得られた顔料分散液(未乾燥電解液)の水分量を、実施例1と同様にして求めたところ、0.25重量%であった。
実施例1と同様にして、透明電極上に銀を析出再溶解させたところ、銀の析出は実施例1と同様に速やかであったが、−1Vに印加すると一瞬間を置いてから溶解を開始した。実施例1と同様にして反射率を求め、規格化反射率を算出した。規格化反射率の時間変化の関係を図1に示した。なお、電圧印加前の反射率は40%であった。
【0053】
《比較例2》
比較例1と同様にして得られた未乾燥電解液に、イオン交換水30μLを加えた後、手でよく振ってイオン交換水を溶解させた。この顔料分散液の水分量を実施例1と同様にして求めたところ、水分量は0.66重量%であった。
実施例1と同様にして透明電極上に銀を析出再溶解させたところ、銀の析出は実施例1と同様に速やかであったが、−1V印加すると一瞬間を置いてから溶解した。また銀析出前の反射率は実施例1および比較例1よりも低く、電圧印加前の反射率は38.5%であった。
実施例1と同様にして求めた規格化反射率の時間変化を図1に示した。
図1から明らかなとおり、比較例は6秒(再溶解開始)から8秒までの規格化反射率が実施例よりも低く、再溶解が遅いことがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の電析表示用電解液は、金属の再溶出速度を向上させることが可能であり、結果として、応答速度が高く、および消費電力が低い電析型表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電析型表示装置における、単純マトリクス駆動のための電極の配列状態を示す模式図である。
【図2】本発明の電析型表示装置の一例に関する、概略断面図である。
【図3】銀の析出過電圧を表すサイクリックボルタモグラムである。
【図4】選択点における電流の主パスを示す模式図である。
【図5】半選択点における電流の副パスの一例を示す模式図である。
【図6】半選択点における電流の副パスの他の例を示す模式図である。
【図7】第3の電極の形成状態を示す模式図である。
【図8】単純マトリクス駆動における電荷の平準化を示すものであり、(a)は電荷移動前の状態を示す模式図、(b)は電荷移動後の状態を示す模式図である。
【図9】本発明の実施例および比較例における、印加電圧に対する規格化反射率変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 透明基板
2 透明電極膜
3 支持基板
4 対極
5 電解液層
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学的な酸化・還元によって、電解液中の金属イオンが可逆的に析出・溶解する電析表示用電解液と、これを用いて表示/非表示を制御する電析型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター技術や通信技術の発展につれて、多くの情報がいわゆる電子情報として配布されるようになり、屋内のみならず屋外でも手軽に電子情報を得ることができるようになった。
従来、電子情報を表示する手段としてはブラウン管が用いられてきたが、ブラウン管は重く消費電力も大きいことから、表示手段としてのブラウン管は携帯性に乏しい。
【0003】
ブラウン管に変わる軽量・低消費電力の携帯情報表示手段としては、近年、液晶ディスプレイ(LCD)の技術革新は目覚しいが、室内光のもとで表示を見るに場合、実際にはLCD備え付けの照明用ランプを用いる必要があった。これは、現状のLCDは偏光板を用いる必要があり、外部光の使用効率が低いからである。
【0004】
ところで紙は、情報表示媒体として古くから一般的に用いられてきているが、室内光下でも一般にスタンドなどの別光源を用いることなく表示を読むことができる。これは紙の光反射率が高く、外部光の使用効率が高いからである。
そこで、例えば特許文献1にあるように、光反射率が高い酸化チタンなどの顔料層と、顔料層の上部に設けられた透明電極との間(電極表面)に金属を電析させて反射光を遮ることにより表示を行う、光反射率、コントラスト比がともに高い電析型表示装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】USP 4,240,716号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、表示装置(ディスプレイ)には消費電力の低減や、応答速度の向上が求められるが、電析型表示装置についても同様に、これらの改善が望まれていた。
本発明者らは鋭意検討の結果、電解液から析出した金属の再溶解速度を改善することにより、上記問題を解決できることを見出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして発明者らは、更に検討した結果電解液中の水分量を一定量以下に制御することにより、電解質中に含まれる金属の再溶解性を向上させることができることを見出した。また、このような電解液を使用することにより、電析型表示装置の応答速度を向上させ、また消費電力低減に有効であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、有機溶媒中に、金属塩からなる電解質が溶解し、かつ色材を含有する電析表示用電解液において、当該電解液中の水分含有量が0.2重量%以下である電析表示用電解液、およびこれを用いた電析型表示装置に存する。
また本発明は、少なくとも片方が透明である一対の電極間に、金属塩からなる電解質が溶解し、色材を含有する電解液を有し、該透明電極上に、電解質中に含まれる金属を電気化学的に析出/再溶解させることにより反射率を変化させ、表示および非表示を制御する、電析型表示装置であって、該電析型表示装置内に組み込まれた電解液中の水分含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする電析型表示装置に存する。
【0009】
【発明の実施の態様】
本発明の電析表示用電解液は、基本的に有機溶媒、顔料や染料などの色材、および金属塩からなる電解質を構成成分として含有するものであり、これらの他に、本発明の性能を損なわない範囲で任意の成分を含有していても良い。
以下、本発明の電析表示用電解液の構成成分につき、詳細に説明する。
【0010】
<有機溶媒>
本発明に使用される有機溶媒は、電解コンデンサーや電池に一般的に用いられている溶媒を用いることができるが、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ニトリル、アミド、スルホン、エーテル、スルホキシドなどの非プロトン性非水溶媒が適当であり、特に比誘電率が5以上であるものが好ましい。
【0011】
そのような溶媒の具体的な例としては、以下が挙げられる。
鎖状炭酸エステル(例えば、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル)、環状炭酸エステル(例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル)等の炭酸エステル;
脂肪族カルボン酸エステル(例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等)、芳香族カルボン酸エステル(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル等)、ラクトン(例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等)等のカルボン酸エステル;
リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル;
アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル等のニトリル;
N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド;
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等のスルホン;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル;
ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
【0012】
中でも、電解質の溶解度が高く、電気化学的反応性が低い点から、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、またはエーテルが好ましい。
なお、本発明の性能を損なわない範囲で、さらに上記以外の溶媒を含有していても良い。
【0013】
<電解質>
本発明の電析表示用電解液は、電圧印加により、電解質中に含まれる金属が可逆的に、電気化学的に析出/再溶解し、電析型表示装置における表示状態および非表示状態を作り出す。
電解質は、イオン化傾向が比較的に貴である(電圧印加により金属が析出しやすい)各種金属の塩からなる。具体的には、例えば、銀塩、ビスマス塩、銅塩、スズ塩などの各種金属塩が挙げられる。
【0014】
これらの金属塩として、銀塩を例に説明すると、例えばRbAg4Br5、NH4Ag4Br5、RbAg4I5、NH4Ag4I5等の銀塩、AgCl、AgBr、AgIなどのハロゲン化銀などが挙げられる。その他の金属についても、これらに対応する各種金属塩を使用することが出来る。金属塩の中でも、1価の金属イオンの析出に要する電気量が少ない点から、特に銀塩が好ましい。
【0015】
電解液中の金属イオンの濃度は、1mM以上が好ましく、5mM以上がより好ましい。下限値より低い濃度では、金属イオンの析出が著しく遅くなる場合がある。また、濃度の上限値は2M程度が望ましい。金属イオンの濃度が高すぎると経済的に不利であるばかりでなく、低温時には金属塩の析出などの問題が生じるおそれがある。
【0016】
電解液の電気伝導度を向上させる目的で、支持電解質を同時に用いることができる。具体的には、電解コンデンサーや電池で一般に使用されているものが使用でき、好ましくは、イオン化傾向が卑である(金属が電析しない)アルカリ金属のハロゲン化物塩や、あるいはアルキルアンモニウムのハロゲン化物塩である。支持電解質の濃度は、通常、析出させる金属イオン濃度の1/2〜5倍濃度である。
【0017】
<色材(顔料)>
本発明の電析表示用電解液に使用される顔料は特に制限されず、同様の電解液に従来使用されている各種顔料粒子から、適宜選定して使用することが出来る。顔料粒子は、電荷を有している顔料、電荷を付与することができる顔料、あるいはまた全く電荷を持たない(つまり電気泳動しない)顔料のいずれをも使用することができ、たとえば、一般の顔料、レーキ顔料、樹脂で被覆された顔料等が挙げられる。これらの顔料は有機物質であっても無機物質であってもよいし、光吸収性であっても光放射性であってもよく、又光散乱性であっても光反射性であってもよい。また、顔料の選定は、電解液に使用する溶媒(分散媒)に対し難溶ないし不溶である組み合わせのものを選定することが必要である。
【0018】
本発明に使用される顔料としては、白色、黒色、シアン色、マゼンタ色、黄色などの所望の表示色に応じた公知の顔料から選ばれる。具体的には、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、などの金属酸化物;カーボンブラック、アニリンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チタンブラック等の黒色の着色剤:フタロシアニンブルー、メチレンブルー、ビクトリアブルー、メチルバイオレット、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー等のシアン色着色剤;ローダミン6Gレーキ、ジメチルキナクリドン、ウォッチングレッド、ローズベンガル、ローダミンB、アリザリンレーキ等のマゼンタ色着色剤;クロムイエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、モリブデンオレンジ、キノリンイエロー、タートラジン等の黄色着色剤などが挙げられる。これらの顔料は、単独あるいは混合したものを用いることができる。また、USP6,300,932号公報に記載の各種着色顔料を使用することも可能である。
【0019】
また、上記顔料を樹脂と複合化した複合化粒子も使用することが出来る。具体的には、例えば顔料粒子の周りを樹脂で被覆してカプセル化したものでもよいし、微細顔料粒子を樹脂中に均一に分散させたものを所望の粒子径に粉砕して用いてもよい。複合化するのに用いることができる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(Du Pont (社)Elvax resins )、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体 (Du pont(社)製Nucrel Resins, Dow Chemical(社)製Primacor Resins)、アクリル系共重合体及び三元共重合体 (Du Pont(社)製Elvacite Resins,) 、及びポリメチルメタクリレート等が挙げられる。高速剪断溶融(in high shear melt)における単独重合体/顔料相分離に有用な物質としては、これらに限定されないが、 以下のものが挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、 ポリメチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリラウリルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレート、 ポリt−ブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、及びこれらの物質の2種以上の共重合体等が挙げられる。
【0020】
白色顔料として用いる顔料は、酸化チタンが望ましい。酸化チタンはアルミナやシリカなどの無機物で表面処理されていてもよいし、高級脂肪酸などの有機物で表面処理されていてもよいし、これら両方の物質で表面処理されていてもよい。またシランカップラー、チタンカップラー、アルミニウムカップラー、ジルコニウムカップラーなどで表面処理されていてもよい。
【0021】
なお、ルチル型酸化チタンの方がアナターゼ型酸化チタンよりも望ましい。ルチル型の方が純白に近いという色味の点と、アナターゼ型は光触媒として働くため、例えば溶媒(分散媒)中に染料を溶解し、着色して使用する場合には、この染料を分解してしまうおそれがあるため、不活性なルチル型酸化チタンの方が好ましい。
【0022】
顔料には、大別して光散乱性と光吸収性の2タイプがあり、通常、白色やメタリック調の顔料は光散乱タイプ、その他の色味(有色)の顔料は光吸収タイプに分類される。本発明において、使用する顔料の量は白に代表される光散乱性顔料と、その他の色味の光吸収性顔料とでは異なる。
本発明の電析表示用電解液における顔料の含有量は、無機顔料粒子の場合、溶媒100重量部に対して通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、また通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。有機顔料粒子の場合には、溶媒100重量部に対して通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、また通常100重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0023】
本発明の電解液に使用する顔料の好適な平均粒径は、顔料自体の比重や粒径、表面状態などにより異なり画一的に決められないが、分散安定性等から、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上であり、また通常5μm以下、好ましくは2μm以下である。
なお、本発明の電析表示用電解液において、耐久性、耐光性、耐候性等に優れる点、および白色が容易に得られ、カラーフィルターとの併用に適している点からは、色材として顔料を使用することが好ましい。
【0024】
<色材(染料)>
本発明の電析表示用電解液に使用される染料は特に制限されず、同様の電解液に従来使用されている各種染料から、適宜選定して使用することが出来る。該染料は蛍光性でも、光官能性でもよく、例えば以下の染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
好適な染料の具体例として、オイルレッド染料:スーダンレッド、スーダンブラック系染料などのアゾ染料;オイルブルー染料:マクロレックスブルー系染料等のアンスラキノン系染料;ミカエルハイドロール、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、オーラミンO等のトリフェニルメタン系染料等が挙げられる。
【0026】
なお、本発明の電析表示用電解液において、鮮明な表示色が得られる点からは、色材として染料を使用することが好ましい。
<添加剤>
上記顔料が電解液内で沈降したり偏在するのを防止する目的で、電解液の安定性を損なわない範囲で増粘剤を加えて固体化し、いわゆるゲル化電解液としてもよい。無機増粘剤としては、シリカやアルミナの微粒子などがある。また有機系の増粘剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、などを用いることができる。
【0027】
また電解質の安定性を改善したり、金属イオンの電析および金属の溶解を促進する目的で、電解液に安定剤を加えることができる。例えば、チオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、メルカプトベンズイミダゾール、クマリン、フタル酸、こはく酸、サリチル酸、グリコール酸、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、酒石酸、シュウ酸、D−グルコノ−1,5−ラクトン、トリエタノールアミン等がある。
【0028】
また上記顔料の分散を促進・安定化する目的で、工業用途で一般に用いられる顔料分散剤を用いてもよい。
<電析表示用電解液の製造方法>
本発明の電析表示用電解液は、常法に従って製造することができる。
例えば、有機溶媒に電解質を溶解し、これに顔料、および必要に応じて有機増粘剤、安定剤などの各種添加剤を加えて分散処理して製造する。必要であれば、この様にして得られた顔料分散液に、さらに樹脂、添加剤などを配合、混合し均一な溶液とすることにより、電析表示用電解液とする。
【0029】
分散処理は通常、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて行う。
サンドグラインダーなどで分散メディアを用いて分散させる場合、0.1mm〜数mm径のガラス製、アルミナ等のセラミック製、鋼等の金属製のビーズを媒体として用いるのが好ましい。分散条件は、通常、温度0〜100℃であり、好ましくは室温〜80℃の範囲である。分散時間は分散液の組成(色材、溶媒、分散剤)及びサンドグラインダーの装置サイズ等により適正時間が異なるため適宜調節する。
【0030】
なお、無機増粘剤を用いる場合は、上記顔料分散液を作成した後で、無機増粘剤を加え、さらに分散操作を行うとよい。
<水分量>
本発明の電析表示用電解液における水分含有量は、0.2重量%以下であり、好ましくは0.15重量%以下である。水分含有量を上記以下にすることにより、一旦析出した金属の、電解液中への再溶解速度が向上する。
【0031】
一般に、電解液に用いられる溶媒や電解質には、製造過程及び保存雰囲気に由来して、0.3wt%程度の水分が含有されてくるため、通常の電解質濃度での電解液とした場合には、0.3wt%程度の水分が持ち込まれてしまう。後述する比較例1及び2に示すとおり、水分0.25wt%では、電析型表示装置としての機能上、不十分である。
【0032】
これに対して、本発明においては、水分含有量を制限することにより、一旦析出した金属の、電解液中への再溶解速度を向上させる効果を得ることができる。
一般に、液相に含まれる水分含有量は、カールフィッシャー法、加熱法、近赤外分光法、ガスクロマトグラフィ法などにより測定することができるが、1重量%以下程度の水分含有量を再現性よく、また精度よく測定できるため、本発明の電析表示用電解液における水分含有量は、カールフィッシャー法を用いる。
【0033】
具体的には、例えば、電解液を遠心分離法などにより固相成分と液相成分に分離し、液相部分の水分量を、容量滴定法を使用したカールフィッシャー法で測定する。
電析表示用電解液における水分量を、本発明の範囲に制御する方法は、特に限定されない。例えば、電解液の構成成分のうち、固形成分は電気炉などを用いて乾燥させ、また液体成分はモレキュラーシーブ、塩化カルシウム、無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤を用いて乾燥させ、これらを用いて電解液を調製してもよいし、或いは電解液を調製後、これに乾燥剤を加えて乾燥させてもよい。
【0034】
また、電析型表示装置に電解液が組み込まれる迄には、電解液を収容する容器、雰囲気、保管状態、電解液が接する装置部材の付着水分などから持ち込まれることとなる。従って、電析型表示装置が組み立てられ、電解液が組み込まれた際の水分量についても、0.2重量%以下となるように、部材に付着する水分を低減したり、乾燥雰囲気中で組立作業を行うなどして水分を管理することが好ましい。
【0035】
<電析型表示装置>
本発明の電析型表示装置は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に、上述した電析表示用電解液を有し、該電解液に電界を印加することにより金属を析出させることにより、表示/非表示を行う。
電析型表示装置の構成に、特に制限はなく、例えば個々の画素が駆動素子であるTFT(Thin Film transistor)によって制御される、いわゆるアクティブマトリクス型駆動方式の表示装置であってもよいし、陽極−陰極がX−Yマトリクス状に設けられた、単純マトリクス型駆動方式の表示装置であってもよい。以下、単純マトリクス型駆動方式を例に、図1および図2を参照しつつ、本発明の電析型表示装置について説明する。
【0036】
単純マトリクス駆動方式により駆動される電析型表示装置において、その電極構造としては、図1に示すように、第1の電極群X1,X2・・・と第2の電極群Y1,Y2・・・とが互いに直交して配列されている。図2は、その具体的構造を示すものであり、透明基板1上に第1の電極群に相当するストライプ状の透明導電膜2が形成されている。また、これと対向して第2の電極群に相当するストライプ状の対極4が形成された支持基板3が配され、これらが電解液層5を介して重ね合わされている。上記透明導電膜2や対極4は、画素数に応じて所定の本数形成されており、これらの交点が画素となる。
【0037】
上記の構成において、透明基板1には、石英ガラス板、白板ガラス板等の透明ガラス基板を用いることが可能であるが、これに限定されず、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミドを例として挙げることができる。これら合成樹脂を支持体として用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板とすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能である。
【0038】
透明導電膜2には、例えばIn2O3とSnO2の混合物、いわゆるITO膜や、SnO2またはIn2O3をコーティングした膜を用いることが好ましい。これらITO膜やSnO2またはIn2O3をコーティングした膜にSnやSbをドーピングしたものでも良く、MgOやZnO等を用いることも可能である。
電解液層5には、前述した本発明の電解液を用いるとよい。
【0039】
背面側に設けられる支持基板3は、必ずしも透明である必要はなく、対極4を確実に保持できる基板やフィルム等を用いることができる。例示すると、石英ガラス板、白板ガラス板等のガラス基板、セラミック基板、紙基板、木材基板を用いることが可能である。勿論、これに限定されず、合成樹脂基板等も使用可能である。合成樹脂基板としては、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンーコヘキサフルオロプロピレン等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミドを例として挙げることができる。これら合成樹脂を支持基板として用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板とすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能である。
【0040】
対極4には、導電材料、例えば金属材料を使用することができる。ただし、この対極4を構成する金属と透明電極2上に析出する金属の電位差が大きいと、着色状態において電荷が電極上に蓄積され、電荷の移動が起こって意図しない画素が着色されてしまう虞れがある。特に、電位差が金属が析出する際の析出過電圧(単純マトリクス駆動の閾値)を越えると、前記着色が起こる可能性が生ずる。そこで、対極4には、発色材料として析出する金属との電位差が析出過電圧(閾値)未満となるような金属を選択することが望ましい。理想的には、対極4の金属材料として、発色材料に用いた金属イオンのイオン化前の状態(金属状態)のものを用いる。すなわち、例えば、銀の析出・溶解を利用する場合には対極4に銀を用いるというように、対極4には析出・溶解する金属と同一の金属を用いる。これによって、透明電極2上に金属が析出した状態で上記電位差が生ずることがなくなる。
【0041】
以上の構成を有する電析型表示装置においては、単純マトリクス駆動により表示を行う。駆動に際しては、金属の析出過電圧を閾値電圧として利用し、金属を析出させる画素において、上記透明電極2と対極4間にこの閾値以上の電圧を印加する。図3は、銀の場合の析出過電圧を示すサイクリックボルタモグラムである。このサイクリックボルタモグラムの還元電流の立ち上がりの電圧が析出過電圧を与えるが、この値を閾値として単純マトリクス駆動を行う。これにより、意図する画素以外の画素に電荷が移動したとしても、上記閾値を越えなければ金属が析出して着色することはない。
【0042】
ただし、駆動電圧は上記析出過電圧の2倍以下とすることが好ましい。例えば、点順次走査の場合、半選択点に加わる電圧は、マトリクス電極のライン数Nが十分に大きい場合には、選択点に印加した駆動電圧の1/2である。点順次走査の場合、半選択点に印加される電圧は、選択点に印加される電圧をVとすると、マトリクスがN×Nのとき、「液晶エレクトロニクスの基礎と応用」(オーム社、94頁)の記載より、(N−1)V/(2N−1)で与えられる。ここで、Nが十分に大きいときには、V/2となる。したがって、駆動電圧の1/2が上記析出過電圧を越えなければ、クロストークは起こらないことになる。
【0043】
単純マトリクス駆動においては、一般には線順次走査を行う。この場合、表示するパターンにより、半選択点に加わる電圧は異なる。しかしながら、電析型表示装置は、液晶表示装置とは異なり、極性を有するが故に、複数の選択点から半選択点への影響は互いに打ち消し合う場合が多い。例えば、図4は、矢印で示す走査線A,Bを選択した場合の本来のパス(主パス)を示すものである。選択点Sには、図中太線で示す駆動電流が流れる。一方、隣接する選択点(半選択点)Hには、図5に示す副パスにより、図中太線で示すような電流が流れる。これに対して、図6に示すように、もう一つの走査線Cを選択したときには、図中太線で示す別の副パスの電流が流れ、半選択点Hに流れる電流は、図5に示す副パスの場合とは逆方向である。多数の点を選択した場合に影響を互いに打ち消し合う事情は前記の通りであり、そのため、線順次操作においても上記の条件(駆動電圧を析出過電圧の2倍以下)を満たしていれば、実際上はクロストークは生じない。
【0044】
以上、本発明を適用した表示装置の基本的な構成及びその駆動方法について説明してきたが、本発明は、これに限らず種々の構成を採用することが可能である。例えば、図7に示すように、第3の電極として、第1の電極群X1,X2・・・(透明導電膜2)や第2の電極群Y1,Y2・・・(対極4)とは独立した電位検知電極11,12を形成してもよい。これら電位検知電極11,12は、透明基板1上の透明画素電極(透明導電膜2)または共通電極(対極4)と同一の面内に電気的に絶縁された部材として配設されており、透明基板1上の透明画素電極や共通電極の電位を検知するのに用いられる。
【0045】
上記第3の電極である電位検知電極11,12は、ストライプ電極である第1の電極群X1,X2・・・(透明導電膜2)、または第2の電極群Y1,Y2・・・(対極4)と同じ面に形成することができる。ここで、反応の過程における電位を正確に検知するためには、第1の電極群X1,X2・・・(透明導電膜2)側に形成するのが好ましいが、そうすると開口率が低下するので、この点では不利である。
【0046】
上記第3の電極である電位検知電極11,12の電極材料としては、銀が好ましく、これをストライプ電極間に、各ストライプ電極と平行に1本から複数本設置し、さらに各ストライプ電極と直交して1本から複数本設置し、互いに交差する交点で結線するようにする。このとき、ストライプ電極と直交する第3の電極が、ストライプ電極を跨ぐ部分については、ストライプ電極の表面を絶縁膜でコーティングしておかなければならない。
【0047】
【実施例】
次に本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
《実施例1》
γ−ブチロラクトン(関東化学(株)製、特級)15gに無水臭化リチウム(関東化学製、1級)2.17gおよびヨウ化銀(関東化学(株)製、特級)2.94gを攪拌溶解させて得られた溶液を25mLメスフラスコに移し、γ−ブチロラクトンを加えて全量を25mLにした。
【0048】
この溶液から12gをとり、ついでモレキュラーシーブ4A(和光純薬工業(株)製)を加えて12時間放置して、乾燥溶液を得た(なお、25mLメスフラスコ内に残った溶液を、未乾燥溶液とする)。
この乾燥溶液7gに、別に電気炉で加熱乾燥した酸化チタン(石原産業(株)製)1.5gとジルコニア粒子22gを加えたのち、ペイントシェーカーを用いて顔料の分散を1時間行った。得られた顔料分散液(乾燥電解液)の一部を抜き取り、遠心分離によって酸化チタンを分離した後、透明な上澄み液の水分量を測定した。
具体的には、滴定剤として三菱化学(株)製KF(カールフィッシャー)試薬SS−Z3mg、滴定溶剤として三菱化学(株)製脱水溶剤GEXを使用し、(株)ダイアインスツルメンツ製容量滴定法水分測定装置KF−100により測定した。水分量は0.12重量%であった。
【0049】
このようにして得た乾燥電解液を、一対の向かい合ったITOガラス電極(電極間距離100μm、電極面積2.8cm2)に封入した後、電極を電源(菊水電子(株)製PBX40−2.5)を繋いだ。電極は、反射率測定側を接地側とし、回路を5秒間開放したあと、+3Vを1秒間印加すると銀は速やかに析出し、ついで−1Vを印加すると析出した銀は速やかに再溶解した。
【0050】
一連の銀の析出/再溶解の際の反射率変化は、分光器(オーシャンオプティックス社製USB2000)を用いて測定した。電圧印加前の反射率は40%であった。なお、反射率の基準として硫酸バリウムを用いた。得られた反射率から、次式を用いて規格化反射率を計算した。
【0051】
【数1】
規格化反射率(λ)
=(反射率(λ)−最小反射率)/(最大反射率−最小反射率)
ただし、最大反射率は測定波長範囲での反射率の最大値、最小反射率は測定波長範囲での反射率の最小値、λは波長である。このようにして求めた、規格化反射率を図1に示した。
【0052】
《比較例1》
実施例1で作成した未乾燥溶液7gに、酸化チタン1.5gとジルコニア粒子22gを加えた後、ペイントシェーカーを用いて顔料の分散を1時間行った。
このようにして得られた顔料分散液(未乾燥電解液)の水分量を、実施例1と同様にして求めたところ、0.25重量%であった。
実施例1と同様にして、透明電極上に銀を析出再溶解させたところ、銀の析出は実施例1と同様に速やかであったが、−1Vに印加すると一瞬間を置いてから溶解を開始した。実施例1と同様にして反射率を求め、規格化反射率を算出した。規格化反射率の時間変化の関係を図1に示した。なお、電圧印加前の反射率は40%であった。
【0053】
《比較例2》
比較例1と同様にして得られた未乾燥電解液に、イオン交換水30μLを加えた後、手でよく振ってイオン交換水を溶解させた。この顔料分散液の水分量を実施例1と同様にして求めたところ、水分量は0.66重量%であった。
実施例1と同様にして透明電極上に銀を析出再溶解させたところ、銀の析出は実施例1と同様に速やかであったが、−1V印加すると一瞬間を置いてから溶解した。また銀析出前の反射率は実施例1および比較例1よりも低く、電圧印加前の反射率は38.5%であった。
実施例1と同様にして求めた規格化反射率の時間変化を図1に示した。
図1から明らかなとおり、比較例は6秒(再溶解開始)から8秒までの規格化反射率が実施例よりも低く、再溶解が遅いことがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の電析表示用電解液は、金属の再溶出速度を向上させることが可能であり、結果として、応答速度が高く、および消費電力が低い電析型表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電析型表示装置における、単純マトリクス駆動のための電極の配列状態を示す模式図である。
【図2】本発明の電析型表示装置の一例に関する、概略断面図である。
【図3】銀の析出過電圧を表すサイクリックボルタモグラムである。
【図4】選択点における電流の主パスを示す模式図である。
【図5】半選択点における電流の副パスの一例を示す模式図である。
【図6】半選択点における電流の副パスの他の例を示す模式図である。
【図7】第3の電極の形成状態を示す模式図である。
【図8】単純マトリクス駆動における電荷の平準化を示すものであり、(a)は電荷移動前の状態を示す模式図、(b)は電荷移動後の状態を示す模式図である。
【図9】本発明の実施例および比較例における、印加電圧に対する規格化反射率変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 透明基板
2 透明電極膜
3 支持基板
4 対極
5 電解液層
Claims (5)
- 有機溶媒中に、金属塩からなる電解質が溶解し、かつ色材を含有する電析表示用電解液において、当該電解液中の水分含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする、電析表示用電解液。
- 電解質がハロゲン化銀である、請求項1記載の電析表示用電解液。
- 有機溶媒が炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、およびエーテルからなる群より選ばれたものである、請求項1または2記載の電析表示用電解液。
- 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電析表示用電解液を、少なくとも片方が透明である一対の電極間に配置し、透明電極上に、電解質中に含まれる金属を電気化学的に析出/再溶解させることにより反射率を変化させ、表示および非表示を制御する、電析型表示装置。
- 少なくとも片方が透明である一対の電極間に、金属塩からなる電解質が溶解し、色材を含有する電解液を有し、該透明電極上に、電解質中に含まれる金属を電気化学的に析出/再溶解させることにより反射率を変化させ、表示および非表示を制御する、電析型表示装置であって、該電析型表示装置内に組み込まれた電解液中の水分含有量が0.2重量%以下であることを特徴とする電析型表示装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003204941A JP2005049539A (ja) | 2003-07-31 | 2003-07-31 | 電析表示用電解液および電析型表示装置 |
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Publications (1)
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