JP2004309817A - 電気化学調光素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気化学的な還元又は酸化とこれに伴う析出又は溶解とによって発色又は消色する発色材料を含有する高分子電解質層4が、第1極1と第2極5との間に挟持されている電気化学的調光装置において、少なくとも有機物で表面処理された二酸化チタンが高分子電解質層4に含有されていることを特徴とする、電気化学調光素子。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学的な酸化還元反応によって画像情報の表示を行う電気化学表示装置等として好適な電気化学調光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ネットワークの普及につれ、これまで印刷物の形状で配布されていた文書類が、いわゆる電子書類として配信されるようになってきた。さらに、書籍や雑誌なども、いわゆる電子出版の形で提供される場合が多くなりつつある。
【0003】
これらの情報を閲覧するために一般に行われているのは、コンピュータのCRT(Cathode Ray Tube)又は液晶ディスプレイの画像に表示させて読むことである。しかし、これらのディスプレイを見る作業は、人間工学的理由から、生理的に読む人に疲労を生じさせ易く、長時間の読書には適さないことが指摘されている。また、利用できる場所がコンピュータの設置場所に限られるという難点もある。
【0004】
最近、小型コンピュータの普及に伴って携帯型のディスプレイが開発されている。これを用いれば、利用場所の問題は多少緩和されるが、内蔵電池の容量と消費電力との関係で、数時間以上継続して利用することはできない。また、ディスプレイが発光型であると、長時間の作業に適さないことに変わりはない。
【0005】
また、近年、反射型の液晶ディスプレイも開発されている。これを用いれば、発光型ディスプレイに起因する上記の難点が生じることはなく、しかも、低消費電力で長時間駆動が可能になると予想される。しかし、無表示(白色表示)状態における反射率は30%にすぎないので、紙上に印刷された物に比べて著しく視認性が悪い。このため、利用者に疲労を生じさせ易く、長時間の利用に適さない。
【0006】
これらの問題点を解決するために、最近、いわゆるペーバーライクディスプレイ、或いは電子ペーパーと呼ばれるものが開発されつつある。これらは、例えば、電気泳動法により着色粒子を電極間で移動させるか、或いは二色性を有する粒子を電場で回転させることなどで発色させている。しかしこれらの方法では、粒子間の隙間が光を吸収してコントラストが悪くなること、また駆動する電圧を100V以上にしなければ、実用上の書き込み速度(1秒以内)が得られないこと等の難点がある。
【0007】
これらに対して、電気化学的な作用による変色で情報を表示する電気化学表示装置(ECD:Electric Chromic Display、又はEDD:Electro−Deposition Device)は、コントラストの高さという点で電気泳動方式などに比べて優れており、すでに調光ガラスや時計用ディスプレイに実用化されている。しかし、調光ガラスや時計用ディスプレイに用いられる電気化学表示装置にはマトリクス駆動の機能が無く、そのままでは電子ペーパーのディスプレイ等の用途には適用できない。また、一般的に黒色の品位が悪く、反射率が低いものにとどまっている。特公平4−73764号公報には、マトリクス駆動装置が開示されているが、電気化学表示装置についての具体的な記述はない。
【0008】
また、調光ガラスや時計用ディスプレイに実用化されているような電気化学表示装置では、黒色の部分を形成するために、有機材料が使用されている。有機材料は耐光性に乏しいため、電子ペーパーのディスプレイのように、太陽光や室内光などの光に晒され続ける用途に用いると、長時間使用した場合には退色して黒色濃度が低下するという問題点が生じる。
【0009】
本出願人は、上記したような技術的な問題点を解決するものとして、電気化学的な酸化還元反応によって色の変化を行う材料として金属イオンを用い、これを溶解する材料として白く着色された高分子電解質を用い、マトリクス駆動が可能であり、コントラスト及び黒色濃度を高くすることができる電気化学表示素子及び電気化学表示装置を提案した(後述の特許文献1参照。)。
【0010】
特許文献1の電気化学表示素子によれば、高分子電解質中に二酸化チタン等の着色材料が分散されており、この着色材料によって高分子電解質が白く着色されている。そして、二酸化チタン等の着色材料を用いて高分子電解質を白色化することにより、高いコントラスト及び黒色濃度を得ることができる。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−258327号公報(第7〜12頁、図3、4及び8〜12)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に係る電気化学表示装置は、上記の優れた利点を有しているが、なお改善すべき点が存在することが明らかになった。即ち、高分子電解質を白色化するために、高分子電解質中に二酸化チタン等の着色材料が分散されているが、この場合、以下に述べるような課題があった。
【0013】
高分子電解質中に分散された二酸化チタンは、高分子電解質をゲル化する際に凝集又は沈降してしまう。その結果、二酸化チタンの存在しない箇所が発生し、見た目上、デバイスがひび割れたように見えてしまうことがある。
【0014】
また、上記のひび割れたように見える箇所には、高分子電解質は存在するので動作はできるが、上記したように二酸化チタンは存在しないので、デバイスの品位が低下するだけでなく、二酸化チタンの存在によって得られていた遮光性が低下するために、デバイスの劣化が促進される可能性もある。
【0015】
さらに、画素電極の電極パターンを表示透明電極側から見えないように完全に隠蔽するためには、二酸化チタンの粒子径を一次粒径である約0.29μmにする必要があるが、様々なイオン種が多量に存在する高分子電解質中では、二酸化チタンの一次粒径化及びその分散安定化は非常に困難である。通常、分散安定化剤として用いられている界面活性剤等は、上記の問題についてある程度有効であるものの、ポットライフが短かったり、安定化効果が小さい等の課題を有している。このため、ある程度のコントラストは得られるものの、完全な一次分散系ではないため、高分子電解質を薄膜化した際にコントラストが低下してしまう。
【0016】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、二酸化チタンの一次粒径化及びその分散安定化を図ることができ、高いコントラストを得ることができる電気化学調光素子を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、電気化学的な還元又は酸化とこれに伴う析出又は溶解とによって発色又は消色する発色材料を含有する高分子電解質層が、第1極と第2極との間に挟持されている電気化学的調光装置において、少なくとも有機物で表面処理された酸化チタン、特に二酸化チタンが前記高分子電解質層に含有されていることを特徴とする、電気化学調光素子に係るものである。
【0018】
本発明の電気化学調光素子によれば、前記高分子電解質層に含有された前記酸化チタンは、前記高分子電解質層を白く着色するために用いられ、この酸化チタンが、少なくとも前記有機物で表面処理されているので、前記酸化チタンの一次粒径化(約0.29μm)及びその分散安定化を図ることができる。
【0019】
そして、従来例のような二酸化チタンの凝集や沈降による、見た目上のデバイスのひび割れが生じることはなく、また例えば、画素電極の電極パターンを表示透明電極側から見えないように完全に隠蔽することができる等、デバイスの品位の向上を図ることができる。また、前記酸化チタンの一次粒径への分散安定性に優れているので、遮光性が向上し、電気化学調光素子の劣化速度を低下させることができる。
【0020】
従って、前記高分子電解質層を薄膜化した場合においても、高いコントラストを得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に基づく電気化学調光素子において、前記有機物が、前記高分子電解質中の高分子材料と同じ分子構造のセグメント単位を少なくとも1つ有することが好ましい。これにより、前記酸化チタンへの前記高分子材料の吸着力が高まるので、前記酸化チタン、特に二酸化チタンの分散安定性をより向上することができる。ここで、前記セグメント単位とは、エーテル(−CH2−CH2−O−)やアクリル(−CH2−CH(COCOOR)−)、アミド(−CO−NH−)等の高分子の単位ユニットを意味する。
【0022】
また、前記有機物の分子量が250〜8000であることが好ましく、分子量が小さすぎると十分な分散安定化効果が得られないことがある。
【0023】
前記有機物による前記二酸化チタンの表面処理方法は特に限定されないが、一般的には、前記有機物を溶解した溶液中に二酸化チタンを分散し、この溶液を加熱反応させた後、乾燥させるなどして得ることができる。いずれの処理剤も二酸化チタン表面の水酸基と反応させている。
【0024】
また、前記有機物による表面処理量が、前記二酸化チタンの重量に対して1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。前記有機物による表面処理量が1重量%未満の場合、充分な分散安定化効果が得られないことがあり、10重量%を超えると、電気化学調光素子としての応答速度が遅くなる等の調光特性に悪影響を与えることが考えられる。
【0025】
さらに、前記高分子電解質層がゲル化されていることが好ましく、これにより、前記二酸化チタンの分散安定性を一層向上することができる。前記ゲル化の方法としては、UV照射や加熱によって前記高分子電解質中の前記樹脂を硬化させる方法、物理的に流動性を低下させる方法等、一般的に用いられている手法のいずれも適用可能である。
【0026】
一般に、二酸化チタンは光触媒性を有しており、樹脂等と混合して屋外で使用した場合などは、樹脂を黄変させてしまうことがある。従って、電子ペーパーのように屋外で使用されるケース等を考慮して、前記二酸化チタンは耐光性を有することが望ましい。
【0027】
この課題を解決するために、本発明に基づく電気化学調光素子は、前記二酸化チタンの表面が無機物により表面処理され、更にこの無機物層が前記有機物で表面処理されていることが望ましい。
【0028】
前記無機物としては、Si(シリカ)、Zr(ジルコニア)、Zn(亜鉛)、Al(アルミナ)等を用いることができ、これらは単独でも複数でもよい。特に、上記の無機物のうちAl又はSiが好ましく、最も好ましくはAl及びSiの両方によって表面処理することであり、これにより、更に優れた耐光性を持たせることができる。
【0029】
また、前記無機物による表面処理量は、二酸化チタンの重量に対して0.2〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜7重量%である。
【0030】
前記無機物による前記二酸化チタンの表面処理方法は、特に限定されない。例えば、表面処理槽中で所定量のAl、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、Zn等の塩類水溶液を加え、この塩類水溶液を中和するアルカリ又は酸を加え、このとき生成する含水酸化物で二酸化チタンの粒子表面を被覆すればよい。
【0031】
前記二酸化チタンの前記高分子電解質への添加量は、例えば約10〜75重量%が好ましく、より好ましくは約15〜60重量%であり、さらに好ましくは約20〜60重量%である。前記高分子電解質層の着色、前記二酸化チタンの分散安定性、及び前記二酸化チタンにはイオン導電性がないので、混合割合の増加は前記高分子電解質の導電性の低下を招くので、これらを考慮すると、混合割合の上限は約75重量%とするのがよい。
【0032】
また、前記二酸化チタンを前記高分子電解質中に分散させる方法は、ホモジナイザー、ビーズミル、ボールミル、その他公知の方法を使うことができる。
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態である電気化学表示装置について詳細に説明する。この電気化学表示装置は、エレクトロデポジション表示素子の構造を有する本発明に基づく電気化学調光素子を複数個、面状に配列してなる構造を有する。
【0034】
実施の形態1
図1は、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子の一例の概略斜視図であり、図2は、その概略断面図である。
【0035】
図1に示すように、この電気化学表示装置は、一方の基板である支持体3の上に、画素電極1がマトリクス状に分割されて形成され、分離された各画素電極1が1画素を構成するようになっている。薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)2は、各画素を独立して駆動できるように各画素電極1毎に設けられる。そして、画素電極1と対向する側には、金属膜などの電気の良導体からなる透明共通電極5が設けられている透明支持体6が対向基板として設置されている。また、高分子電解質層4は、画素電極1と透明共通電極5に挟持されて保持される。
【0036】
支持体3としては、石英ガラス板、白板ガラス板等のガラス基板を用いることが可能であるが、これらに限定されず、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレン等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、及びポリイミドーアミドやポリエーテルイミド等のポリイミドを例として挙げることができる。
【0037】
これらの合成樹脂を支持体として用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板状にすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能である。
【0038】
画素電極1は、略矩形若しくは正方形パターンに形成された導電性膜からなり、電気化学的に安定な金属であれば何でもよいが、好ましくは銀、白金、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム等である。更に、主反応に用いる金属を予め或いは随時十分に補うことができれば、カーボンを画素電極として使用可能である。この場合、カーボンを電極上に担持させる方法としては、樹脂を用いてインク化し、基板面に印刷する方法がある。カーボンを使用することで、電極の低価格化を図ることができる。また、図1に示すように、各画素間が分離されており、その一部には画素毎のTFT2が配設されている。
【0039】
各画素に形成されたTFT2は、図示しない配線によって選択され、対応する画素電極1を制御する。TFT2は画素間のクロストークを防止するのに極めて有効である。TFT2は、例えば画素電極1の一角を占めるように形成されるが、画素電極1がTFT2と積層方向で重なる構造であってもよい。
【0040】
TFT2には、具体的には、ゲート線とデータ線が接続され、各ゲート線に各TFT2のゲート電極が接続され、データ線には各TFT2のソース・ドレインの一方が接続され、そのソース・ドレインの他方は画素電極1に電気的に接続される(図示省略)。なお、TFT2以外の駆動素子は、平面型ディスプレイに用いられているマトリクス駆動回路で、基板上に形成できるものであれば他の材料でもよい。
【0041】
透明共通電極5は、透明で導電性のあるものであればいずれも使用できるが、In2O3とSnO2の混合物、いわゆるITO膜やSnO2又はIn2O3をコーティングした膜等を用いることが好ましい。これらITO膜やSnO2又はIn2O3をコーティングした膜にSnやSbをドーピングしたものでもよく、MgOやZnO等を用いることも可能であり、透明支持体6上に金属膜などの良導体からなる膜を成膜することで作製できる。
【0042】
透明支持体6としては、透明かつ透明共通電極5や高分子電解質層4を確実に保持できる基板やフィルム等を用いること好ましい。このような材料としては、石英ガラス板、白板ガラス板等の透明ガラス基板などを用いることが可能であるが、これに限定されず、合成樹脂基板として、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレン等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミドを例として挙げることができる。
【0043】
これら合成樹脂を支持体として用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板状にすることも可能である。透明共通電極5に十分な剛性がある場合には、透明支持体6を設けなくてもよい。
【0044】
高分子電解質層4は、電気化学的な還元又は酸化とこれに伴う析出又は溶解とによって発色又は消色する前記発色材料、高分子材料、溶剤、及び高分子電解質層4を白色に着色させる着色材料を含有している。なお、前記着色材料として、少なくとも前記有機物で表面処理された前記二酸化チタンが用いられている。
【0045】
前記発色材料としては、金属イオンが用いられている。前記金属イオンは、電気化学的な析出又は溶解によって発色又は消色し、これにより表示を行うことができる。
【0046】
前記金属イオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばビスマス、銅、銀、鉄、クロム、ニッケル、カドミウムの各イオン又はそれらの組み合わせからなるイオンを用いることができ、特に好ましい金属イオンは、ビスマス、銀である。ビスマス、銀が好適である理由は、可逆的な反応を容易に進めることができ、析出時の変色度が高いためである。
【0047】
例えば、前記発色材料が銀イオン(Ag+)である場合、書き込み時には、銀イオンは、次の反応式
Ag++e−→Ag
で還元され、図2に示すように、画素電極1上に銀(Ag)の微粒子からなる黒色の析出物33を形成する。消色時には、析出した銀33が逆反応で酸化され、無色の銀イオン(Ag+)に変化して再び溶解する。
【0048】
前記マトリクス(母材)高分子材料としては、骨格ユニットがそれぞれ−(C−C−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。これらを主鎖構造として、枝分があってもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンクロライト、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルブチラール等も好ましい。
【0049】
前記高分子材料は、開始剤との組み合わせで架橋されていてもよく、架橋方法は光架橋でも熱架橋でもよい。また、前記開始剤とモノマーを含有させたものを光又は熱で重合することで前記マトリクス(母材)高分子材料とすることもできる。
【0050】
高分子電解質層4を形成する際には、前記マトリクス高分子材料に所要の溶剤を加えるのが好ましい。好ましい前記溶剤としては、マトリクスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びこれらの混合物等が好ましく、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフオキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、ジピリジル及びこれらの混合物が好ましい。
【0051】
高分子電解質層4は前記マトリクス高分子材料に支持電解質を溶解して形成されるが、その電解質としては、リチウム塩、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、カリウム塩、例えばKCl、KI、KBr等、ナトリウム塩、例えばNaCl、NaI、NaBr、或いはテトラアルキルアンモニウム塩、例えばほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等を挙げることができる。上述の4級アンモニウム塩のアルキル鎖長は不揃いでもよい。
【0052】
また、高分子電解質層4は必要に応じて単独又は複数の添加剤を使用してもよい。前記添加剤は、前記金属イオンの析出を制御するものであり、前記添加剤の種類は目的を達成するものであればいずれも使用することができる。
【0053】
さらに、高分子電解質層4は少なくとも前記有機物で表面処理された前記酸化チタン、特に前記二酸化チタンを含有している。これにより、高分子電解質層4を白く着色すると共に、前記二酸化チタンの一次粒径への分散安定性に優れ、より高いコントラストを実現することができる。
【0054】
前記有機物は、高分子電解質層4中の前記高分子材料と同じ分子構造のセグメント単位を少なくとも1つ有することが好ましい。これにより、前記二酸化チタンへの前記高分子材料の吸着力が高まるので、前記二酸化チタンの分散安定性をより向上することができる。
【0055】
また、前記有機物の分子量が250〜8000であることが好ましく、小さすぎると十分な分散安定化効果が得られないことがある。
【0056】
前記有機物による前記二酸化チタンの表面処理方法は特に限定されないが、一般的には、前記有機物を溶解した溶液中に二酸化チタンを分散し、この溶液を加熱反応させた後、乾燥させるなどして得ることができる。いずれの処理剤も二酸化チタン表面の水酸基と反応させている。
【0057】
また、前記有機物による表面処理量が、前記二酸化チタンの重量に対して1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。前記有機物による表面処理量が1重量%未満の場合、充分な分散安定化効果が得られないことがあり、10重量%を超えると、電気化学表示装置としての応答速度が遅くなる等の調光特性に悪影響を与えることが考えられる。
【0058】
また、上述したように、前記二酸化チタンは耐光性を有することが望ましいので、図1に示すような電気化学表示装置では、前記二酸化チタンの表面が無機物により表面処理され、更にこの無機物層が前記有機物で表面処理されていることが望ましい。
【0059】
前記無機物としては、Si(シリカ)、Zr(ジルコニア)、Zn(亜鉛)、Al(アルミナ)等を用いることができ、これらは単独でも複数でもよい。特に、上記の無機物のうちAl又はSiが好ましく、最も好ましくはAl及びSiの両方によって表面処理することであり、これにより、更に優れた耐光性を持たせることができる。
【0060】
また、前記無機物による表面処理量は、二酸化チタンの重量に対して0.2〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜7重量%である。
【0061】
前記無機物による前記二酸化チタンの表面処理方法は、特に限定されない。例えば、表面処理槽中で所定量のAl、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、Zn等の塩類水溶液を加え、この塩類水溶液を中和するアルカリ又は酸を加え、このとき生成する含水酸化物で二酸化チタンの粒子表面を被覆すればよい。
【0062】
前記二酸化チタンの高分子電解質層4への添加量は、例えば約10〜75重量%が好ましく、より好ましくは約15〜60重量%であり、さらに好ましくは約20〜60重量%である。高分子電解質層4の着色、前記二酸化チタンの分散安定性、及び前記二酸化チタンにはイオン導電性がないので、混合割合の増加は高分子電解質4の導電性の低下を招くので、これらを考慮すると、混合割合の上限は約75重量%とするのがよい。
【0063】
また、前記二酸化チタンを前記高分子電解質中に分散させる方法は、ホモジナイザー、ビーズミル、ボールミル、その他公知の方法を使うことができる。
【0064】
さらに、高分子電解質層4がゲル化されていることが好ましく、これにより、前記二酸化チタンの分散安定性を一層向上することができる。前記ゲル化の方法としては、UV照射や加熱によって前記高分子電解質中の前記樹脂を硬化させる方法、物理的に流動性を低下させる方法等、一般的に用いられている手法のいずれも適用可能である。
【0065】
高分子電解質層4の膜厚は、5μm〜200μmであることが好ましく、より好ましくは5μm〜150μmであり、更に好ましくは10μm〜150μmである。膜厚が薄いほうが電極間の抵抗が小さくなるので発色、消色時間の短縮や消費電力の低下につながり好ましい。しかしながら5μm未満になると、機械的強度が低下して、ピンホールや亀裂が生じ易いので好ましくない。
【0066】
この電気化学表示装置には、画素電極1及びTFT2を有する支持体3と、高分子電解質層4と、透明共通電極5を有する透明支持体6とを保持するために、図2に示すように、封着部材7が周囲に取り付けられる。
【0067】
本実施の形態による電気化学表示装置によれば、高分子電解質層4に含有された前記二酸化チタンは、高分子電解質層4を白く着色するために用いられており、この二酸化チタンが、少なくとも前記有機物で表面処理されているので、前記二酸化チタンの一次粒径化(約0.29μm)及びその分散安定化を図ることができる。さらに、上記したように前記無機物によって表面処理されていれば、耐光性にも優れている。
【0068】
そして、前記二酸化チタンの凝集や沈降による、見た目上のデバイスのひび割れが生じることはなく、また、画素電極1の電極パターンを透明共通電極5側から見えないように完全に隠蔽することができる等、デバイスの品位の向上を図ることができる。また、前記二酸化チタンの一次粒径への分散安定性に優れているので、遮光性が向上し、電気化学表示装置の劣化速度を低下させることができる。
【0069】
従って、高分子電解質層4を薄膜化した場合においても、高いコントラスト及び黒色濃度を得ることができる。
【0070】
実施の形態2
本実施の形態は、上記した実施の形態1の電気化学表示装置を製造する方法であり、支持体3上に画素電極1及び駆動素子(TFT)2を形成する工程と、画素電極1及び駆動素子2が形成された支持体3と、透明共通電極5を有する透明支持体6とを所定のギャップを介して張り合わせ、空セルを形成する工程と、前記空セル中に、前記発色材料、前記高分子材料、前記溶剤、及び高分子電解質層4を白色に着色させる前記着色材料等を含有する高分子電解質を注入し、高分子電解質層4を形成する工程とを有する。
【0071】
図3及び図4は、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子を製造する方法を工程順に示す概略断面図である。
【0072】
まず、図3(a)に示すように、ガラス基板等の支持体8上に、銀膜からなる画素電極9及びTFT(薄膜トランジスタ)10を画素毎にパターン形成する。TFT10は公知の半導体製造技術を用いて形成することができ、銀膜は蒸着、スパッタリング等の方法によって形成することができる。これら画素電極9及びTFT10を画素毎に形成し、各画素は支持体8上にマトリクス状に配列する。
【0073】
次に、画素電極9及びTFT10を有する支持体8上に、図3(b)に示すように、スペーサー30として所定の粒径のガラスビーズやプラスチックビーズを噴霧し、かつ支持体8の周囲部に封止材31として熱溶着性のフィルム、UV又は熱硬化性の樹脂等を設置する。このとき、封止材31には、図3(c)に示すように、後の工程で高分子電解質を注入するための開口部32を形成しておく。
【0074】
次に、図4(d)に示すように、ガラス基板などからなる透明支持体13上に、所定の膜厚のITO膜からなる透明共通電極12を形成する。透明共通電極12は蒸着、スパッタリング等の公知の方法によって形成することができる。
【0075】
そして、支持体8と平行して支持体13上の透明共通電極12が向かい合うようにして、位置合わせして貼り合わせ、その後、加熱やUV照射によって溶着或いは接着して固定化し、空セルを形成する。
【0076】
次に、上記に得られた空セルの開口部32から、前記高分子電解質材料を減圧注入し、加温槽中にて加熱処理又はUV照射処理した後、前記高分子材料を架橋してゲル化し、高分子電解質層11を形成する(図4(e))。
【0077】
そして、開口部32を酸化チタン顔料、熱又はUV硬化性樹脂等で塞いだ後、更に貼り合わせの端部全体に、図4(f)に示すように、封着部材14を取り付け、電気化学表示装置が完成する。
【0078】
本実施の形態においては、図示省略したが高分子電解質層11の調製段階で、電解質と共に金属イオンが導入される。したがって、比較的に簡単な工程で、高分子電解質層11と前記発色材料が組み合わされることになり、容易に製造することができる。
【0079】
また、高分子電解質層4の作製方法として、減圧注入による例を説明したが、例えば真空貼り合わせ方により作製することもできる。即ち、透明共通電極12上に前記高分子電解質材料を塗布し、電極を減圧下で張り合わせることによりセルを作製することができる。なお、前記塗布方法としては、ドクターブレード、バーコーター、スクリーン印刷、その他の公知の方法を用いることができる。
【0080】
実施の形態3
本実施の形態による電気化学表示装置は、第3の電極として、前記画素電極及び前記透明共通電極とは独立した電位検知電極18、19が形成される例である。これら電位検知電極18、19は、前記支持体上の前記画素電極又は前記透明共通電極と同一の面内に電気的に絶縁された部材として配設されてなり、前記支持体上の前記画素電極又は前記透明共通電極の電位を検知するのに用いられる。
【0081】
図5は、前記画素電極側の平面図である。支持体15上には、画素毎に画素電極17と駆動素子としてのTFT16が形成されており、各画素はマトリクス状に配されている。画素電極17の電位を検知するための電位検知電極18は、各画素の間のスペースに略十字状のパターンで形成されており、その端部(図中黒丸でしめす。)は厚さ約1000nmの銀又はアルミニウム電極となっている。端部をつなぐ線の部分は幅約1μm程度の銀又はアルミニウム線状配線部とされる。この電位検知電極18は画素電極17と同一の面内に電気的に絶縁された部材として形成されることから、画素電極17の電位を正確にモニターすることができる。従って、画素電極17で生じている反応を検知できる。電位検知電極18の材質としては、反応に全く関与しない媒質中への自然溶出がない安定した金属材料を選ぶことが好ましく、画素電極17の電極と同様な銀、白金、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム等を選ぶことができる。
【0082】
図6は、前記透明電極側の平面図である。透明支持体20上には透明共通電極21が形成されているが、逆π字状のパターンで、電位検知電極19が形成されている。この電位検知電極19は透明共通電極21と同一の面内に電気的に絶縁された部材として形成されることから、透明共通電極21の電位を正確にモニターすることができる。従って、透明共通電極21で生じている反応を検知できる。電位検知電極19の材質としては、反応に全く関与しない媒質中への自然溶出がない安定した金属材料を選ぶことが好ましく、前記画素電極の電極と同様な銀、白金、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム等を選ぶことができる。また、電位検知電極19は透明共通電極21と同一の面内に同一の材料で形成できるため、電位検知電極19と透明共通電極21の間をパターンニングすることで容易に形成可能である。
【0083】
図7は電位検知電極27を備えた電気化学表示装置の回路図である。TFT25と画素電極26からなる画素がマトリクス状に配されており、容量の対向電極側が透明共通電極となる。各画素を選択するためのデータ線駆動回路23、23aとゲート線駆動回路24が設けられており、それぞれ所定のデータ線29とゲート線28が信号制御部22からの信号によって選択される。信号制御部22からは電位検知電極27が接続するように構成されていて、電位検知電極27からの信号によって画素部分の電位をモニターすることができる。すなわち、電位検知電極27の材質としては、反応に全く関与しない媒質中への自然溶出がない安定した金属材料が選択され、電気化学主反応の進み具合を正確にモニターすることができる。この電位検知電極27を用いたモニターから、十分な析出や電気化学反応が行われたところでそれ以上の反応を止めることができる。
【0084】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0085】
実験例1
(画素電極の作製)
厚さ1.5mm、10cm×10cmの大きさのガラス基板上に、銀膜膜とTFT(Thin Film transistor)を150μmピッチで平面的に、公知の方法により配列形成した。この基板から公知の方法によって駆動回路につながるリード部を形成し、次いで全体を電析棺内に設置した。
【0086】
(透明共通電極の作製)
厚さ0.5mm、10cmm×10cmの大きさのガラス基板上に、スパッタリングにより厚さ3000ÅのITO膜を形成した。
【0087】
(空セルの形成)
上記のようにして作製したTFT電極上に、中心粒径30μmのガラスビーズを1平方ミリあたり約10個になるように噴霧した後、画素電極外周の封止部にUV硬化樹脂をデイスペンサーで塗布設置した。このとき、封止部の一部は、後の工程で高分子電解液を注入するための注入口として開口した。そして、画素電極と透明共通電極を位置合わせして張り合わせ、減圧下でUV照射することで30μmのギャップを均一に保ったまま2つの電極を固定化させた空セルを形成した。
【0088】
(高分子電解質の調製)
2重量部のAgI及び3重量部のLiIをジメチルスルホキシド12重量部及びγ−ブチロラクトン8重量部の混合溶剤に溶解し、更にアクリル基を有するポリエチレンオキシド(分子量5万)25重量部及び熱開始剤(パーヘキシルND、日本油脂株式会社製)0.5重量部を溶解して高分子電解質を調製した。
【0089】
次いで、二酸化チタンの表面をアルミナ(2.5重量%)及びシリカ(5.8重量%)で表面処理し、更にこの表面を下記の構造式(1)で表される有機化合物で表面処理した。下記構造式(1)で表される有機化合物において、セグメント単位とは−(CH2CH2O)20−(ポリエーテル)を意味する。なお、前記有機化合物による表面処理量は、前記二酸化チタンの重量に対して1重量%とした。
【0090】
構造式(1):
CH3CH2O−(CH2CH2O)20−CH2CH2O−C(O)−CH(CH2−tBu)−CH2CH2C(O)−Cl
【0091】
そして、上記に得られた高分子電解質溶液中に、上記のようにして無機物及び上記構造式(1)で表される有機化合物で表面処理した前記二酸化チタン35重量部を添加し、ビーズミルでこれらを均一に分散させた。次いで、上記に作製した空セルの中に注入させ、注入口を封止した。これを100度で10分間加熱架橋させ、高分子電解質をゲル化し、評価用セルを作製した。
【0092】
実験例2
実施例1において前記有機化合物の表面処理量を前記二酸化チタンの重量に対して5重量%とした以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0093】
実験例3
実施例1において前記有機化合物の表面処理量を前記二酸化チタンの重量に対して10重量%とした以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0094】
実験例4
実施例1において前記二酸化チタンの表面を前記有機物化合物で処理しなかった以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0095】
実験例5
実施例1において前記有機化合物の表面処理量を前記二酸化チタンの重量に対して0.2重量%とした以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0096】
実験例6
実施例1において前記有機化合物の表面処理量を前記二酸化チタンの重量に対して0.8重量%とした以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0097】
実験例7
実施例1において前記有機化合物の表面処理量を前記二酸化チタンの重量に対して12重量%とした以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0098】
実験例8
実施例1において前記有機化合物の表面処理量を前記二酸化チタンの重量に対して14重量%とした以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0099】
実験例9
実施例1において前記有機化合物として下記の構造式(2)で表される化合物を使用した以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0100】
構造式(2):CH3CH2CH2CH2−Si(CH3)2−Cl
【0101】
実験例10
実施例1において架橋剤を除いた以外は、実施例1と同様にして高分子電解質を作製し、これを空セルに注入後、ゲル化させないで評価用セルを作製した。
【0102】
上記のようにして作製した各評価用セルに対して、以下に示す測定を行った。結果を下記表1に併せて示す。
【0103】
前記二酸化チタンの凝集によるひび割れの発生の有無は、目視及び100倍の顕微鏡で観察した。○はひび割れの発生なしの場合、△は視認できないが顕微鏡ではひび割れの発生が観察できる場合、×は目視でひび割れが観察できる場合とした。
【0104】
隠蔽性や白色度に影響する前記二酸化チタンの平均粒径は、マイクロトラックMT3000粒度分析計(日機装社製)を用いて測定した。評価は、最も効率よく隠蔽しかつ高い白色度を発現する一次粒径近傍0.2以上、0.4μm以下の場合を○、0.4を超えて、0.6μm以下の場合を△、0.6μmを超えた場合を×と評価した。
【0105】
隠蔽性は白黒に塗り分けられた市販の隠蔽力試験紙(JIS5400)に30μmの高分子電解質層を形成し、白上の高分子電解質層の反射率(Rw)と黒上の高分子電解質層の反射率(Rb)の比(Rb/Rw)が0.98以上となる場合を○、0.90以上、0.98未満の場合を△、0.90未満の場合を×とした。
【0106】
また、応答特性は、評価用セルの画面表示時間を計測し、60msec以下の場合を○、60msecより遅い場合を△で評価した。
【0107】
【表1】
【0108】
表1より明らかなように、実験例1〜3及び実験例5〜10の本発明に基づく電気化学調光素子(評価用セル)によれば、前記高分子電解質層に含有された前記二酸化チタンは、前記高分子電解質層を白く着色するために用いられており、この二酸化チタンが、少なくとも前記有機物で表面処理されているので、前記二酸化チタンの一次粒径化及びその分散安定化を図ることができ、ひび割れの発生を効果的に防止することができた。これに対し、実験例4は、前記二酸化チタンが前記有機物により表面処理されていないので、前記二酸化チタンの一次粒径への分散安定性が低下し、前記二酸化チタンの凝集が起こり、ひび割れの発生が増加した。
【0109】
図8は、前記有機物の表面処理量と隠蔽性又は応答特性の関係を示すグラフである(実験例1、2、3、4、5、6、7及び8)。
【0110】
上記表1及び図8より明らかなように、前記有機物の表面処理量が1重量%未満の場合、前記二酸化チタンの分散安定性が低下し易く、凝集によるひび割れが生じやすく、隠蔽性が低下し易い傾向にあった。また、前記有機物の表面処理量が10重量%を超える場合、一次粒径への分散安定性が向上し、隠蔽性の向上を図ることができたが、応答特性が低下し易い。従って、前記有機物の表面処理量は、前記二酸化チタンの重量に対して1〜10重量%が好ましいことが分かった。
【0111】
また、実験例1と実験例9の比較から明らかなように、前記有機物が、前記高分子電解質中の前記高分子材料と同じ分子構造のセグメント単位を少なくとも1つ有することが好ましいことが分かる。これにより、前記二酸化チタンへの前記高分子材料の吸着力がより高まるので、前記二酸化チタンの分散安定性をより向上することができた。
【0112】
さらに、実験例1と実験例10の比較から明らかなように、前記高分子電解質層がゲル化されていることが好ましいことが分かる。これにより、前記二酸化チタンの分散安定性を一層向上することができた。
【0113】
以上、本発明を実施の形態及び実施例について説明したが、上述の例は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
【0114】
例えば、各電極を含むセル構成部分の材質、形状等を種々変更してよい。変色材料は、金属イオンに限ることなく、他の公知の材料を使用することができ、析出物や変色物の色も黒以外であってよい。
【0115】
また、本発明に係る電気化学調光素子は、電気化学表示装置として構成されるのは勿論のこと、反射又は透過光量の調節等の調光機能を生かして、光シャッターや光通信機器等に応用可能である。電気化学表示装置は、表示領域が単一のものでも複数の画素領域に分割されたものでもよく、表示する情報が文字や記号であっても画像であってもよい。また、表示色も、モノカラー、マルチカラー及びフルカラーのいずれでもよく、例えば、トリオ画素の各画素をセルとして分離したものであってもよい。
【0116】
【発明の作用効果】
本発明の電気化学調光素子によれば、前記高分子電解質層に含有された前記酸化チタンは、前記高分子電解質層を白く着色するために用いられており、この酸化チタンが、少なくとも前記高分子電解質中の前記高分子材料と同じ分子構造のセグメント単位を少なくとも1つ有する前記有機物で表面処理されているので、前記酸化チタンの一次粒径化(約0.29μm)及びその分散安定化を図ることができる。
【0117】
そして、従来例のような二酸化チタンの凝集や沈降による、見た目上のデバイスのひび割れが生じることはなく、また例えば、画素電極の電極パターンを表示透明電極側から見えないように完全に隠蔽することができる等、デバイスの品位の向上を図ることができる。また、前記酸化チタンの一次粒径への分散安定性に優れているので、遮光性が向上し、電気化学調光素子の劣化速度を低下させることができる。
【0118】
従って、前記高分子電解質層を薄膜化した場合においても、高いコントラストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子の部分斜視図である。
【図2】同、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子の概略断面図である。
【図3】同、電気化学表示装置の製造方法の一例の概略断面図である。
【図4】同、電気化学表示装置の製造方法の一例の概略断面図である。
【図5】同、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子の画素電極側の平面図である。
【図6】同、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子の透明共通電極側の平面図である。
【図7】同、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光素子の回路図である。
【図8】本発明の実施例による、前記有機物と隠蔽性又は応答特性の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1、9、17、26…画素電極、2、10、16、25…TFT、3、8、15…支持体、4、11…高分子電解質層、5、12、21…透明共通電極、6、13、20…透明支持体、7、14…封着部材、18、19、27…電位検知電極、22…信号制御部、23、23a…データ線駆動回路、24…ゲート線駆動回路、28…ゲート線、29…データ線
Claims (6)
- 電気化学的な還元又は酸化とこれに伴う析出又は溶解とによって発色又は消色する発色材料を含有する高分子電解質層が、第1極と第2極との間に挟持されている電気化学的調光装置において、少なくとも有機物で表面処理された酸化チタンが前記高分子電解質層に含有されていることを特徴とする、電気化学調光素子。
- 前記有機物が、前記高分子電解質中の高分子材料と同じ分子構造のセグメント単位を少なくとも1つ有する、請求項1に記載した電気化学調光素子。
- 前記有機物の分子量が250〜8000である、請求項1に記載した電気化学調光素子。
- 前記有機物による表面処理量が、前記酸化チタンの重量に対して1〜10重量%である、請求項1に記載した電気化学調光素子。
- 二酸化チタンの表面が無機物により表面処理され、更にこの無機物層が前記有機物で表面処理されている、請求項1に記載した電気化学調光素子。
- 前記高分子電解質層がゲル化されている、請求項1に記載した電気化学調光素子。
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- 2003-04-08 JP JP2003103688A patent/JP2004309817A/ja active Pending
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