JP2005048810A - スラストころ軸受とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微量潤滑且つ高速回転及び高負荷スラスト荷重と言った厳しい使用条件下でも、スラストニードル軸受5aの耐久性を十分に確保できる様にする。
【解決手段】各ニードル9、9の転動面の粗さ曲線に関する2つのパラメータSpeak及びRvalleyを、それぞれ所定の範囲に規制する。これにより、上記各転動面を、滑らかな平坦面と潤滑剤溜りとなる微小な凹部とから成る面とする。この様な構成を採用する事により、上記各転動面と各軌道7、7との転がり接触部で油膜切れが生じる事と、上記各転動面に剥離の起点が生じる事とを有効に防止して、上記課題を解決する。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、自動車用のトランスミッションや斜板式コンプレッサ等の回転軸に装着して使用するスラストころ軸受(ニードル軸受を含む。)と、その製造方法との改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用空気調和装置に組み込まれる蒸気圧縮式冷凍機用のコンプレッサとして従来から、例えば図5に示す様な、斜板式コンプレッサ1が使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。この斜板式コンプレッサ1は、ケーシング2の内側に回転軸3を、回転のみ自在に支持している。即ち、この回転軸3の軸方向(図5の左右方向)両端寄り部分を上記ケーシング2に対し、それぞれ1対のラジアルニードル軸受4、4により回転自在に支持している。これと共に、上記回転軸3に加わるスラスト荷重を、それぞれがスラストころ軸受の一種である、1対のスラストニードル軸受5a、5bにより支承可能としている。
【0003】
これら1対のスラストニードル軸受5a、5bのうち、一方(図5の右方)のスラストニードル軸受5aは、上記回転軸3の一端部(図5の右端部)と上記ケーシング2の一部との間に、この回転軸3と同心に設けている。これに対し、他方(図5の左方)のスラストニードル軸受5bは、上記回転軸3の他端(図5の左端)寄り部分に結合固定した支持ブラケット6と、上記ケーシング2の一部との間に、上記回転軸3と同心に設けている。又、これら各スラストニードル軸受5a、5bはそれぞれ、互いに対向する軸方向(図5の左右方向)側面に軌道7、7を形成した、それぞれが円輪状である1対の軌道輪(レース)8a、8a(8b)と、上記両軌道7、7同士の間に放射状に且つ転動自在に設けた、それぞれがころの一種である複数本のニードル9、9とを備える。尚、これら各ニードル9、9は、図示しない保持器により転動自在に保持している。
【0004】
又、上記回転軸3の中間部に、この回転軸3と共に回転する斜板10を支持している。そして、これら回転軸3及び斜板10を回転させる事に伴って、上記ケーシング2内の円周方向複数個所に設けたシリンダ11の内側で、それぞれピストン12を軸方向(図5の左右方向)に往復変位させられる様にしている。
【0005】
この様な斜板式コンプレッサ1の運転時には、上記回転軸3及び斜板10を回転させる事に伴い、上記ピストン12を上記シリンダ11の内側で軸方向に往復変位させる。これにより、この往復変位運動の1サイクル毎に、蒸気圧縮式冷凍機の回路を通じて送られてくる冷媒蒸気を、吸入ポート13を通じて上記シリンダ11内に吸入し、更にこのシリンダ11内で圧縮した後、吐出ポート14を通じて上記回路内に送り込む。尚、この際に、上記回転軸3には、上記ピストン12を往復変位させる事に伴う反力として、大きなスラスト荷重が加わるが、この様なスラスト荷重は、前記1対のスラストニードル軸受5a、5bにより支承する。又、これら各スラストニードル軸受5a、5bを設置した空間内には、上述した冷媒蒸気の一部を送り込んでおり、この冷媒蒸気中に混在させた冷凍機油を利用して、上記各スラストニードル軸受5a、5bの転がり接触部を潤滑する。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−210619号公報
【特許文献2】
特開2003−97566号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記各スラストニードル軸受5a、5bの潤滑状態を良好にする観点からは、上記冷媒蒸気中の冷凍機油の混在量を多くするのが好ましい。ところが、この様に冷凍機油の混在量を多くすると、エバポレータ及びコンデンサの内面に形成される、伝熱不良の油膜の厚さが大きくなり、蒸気圧縮式冷凍機の冷房能力が低下する。この為、この冷媒蒸気中の冷凍機油の混在量は、少なくせざるを得ない。この様な理由から、上記各スラストニードル軸受5a、5bは、微量潤滑と言った、厳しい潤滑条件で使用されている。更に、近年の斜板式コンプレッサ1の小型化及び高性能化に伴い、上記各スラストニードル軸受5a、5bの回転速度及び負荷スラスト荷重が増大しており、これら各スラストニードル軸受5a、5bの使用条件が益々厳しくなっている。この様な状況から、上記各スラストニードル軸受5a、5bの耐久性を向上させる事、即ち、上述の様な厳しい使用条件下でも、上記各スラストニードル軸受5a、5bの転がり接触部で油膜切れが生じにくく、前記各ニードル9、9の転動面及び前記各軌道7、7にピーリングや剥離等の損傷が生じにくい構造を実現する事が望まれている。
本発明のスラストころ軸受とその製造方法は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のスラストころ軸受(ニードル軸受を含む。)及びその製造方法のうち、請求項1に記載したスラストころ軸受は、上述した従来のスラストニードル軸受5a、5bと同様、それぞれが互いに対向する軸方向側面に軌道を有する1対の軌道輪(レースを含む。)と、これら両軌道同士の間に放射状に且つ転動自在に設けられた複数のころ(ニードルを含む。)とを備える。
【0009】
特に、請求項1に記載したスラストころ軸受に於いては、上記各ころの転動面の表面粗さを、次の様に規制する。即ち、図1に示す様な、これら各ころの転動面の粗さ曲線のうち、この粗さ曲線の中心線α(周知の中心線平均粗さの中心線と同じ)を基準とする最大凸部(振幅値が最大となる山部)Pの振幅値[μm]をymax とし、同じく最大凹部(振幅値が最大となる谷部)Qの振幅値[μm]をymin と規定する。又、図2に示す様な関係、即ち、上記粗さ曲線に関して上記中心線αを挟む両側(図1の上下両側)でそれぞれこの中心線αを基準とする振幅値[μm]とその相対頻度(上記粗さ曲線全体の中で、当該振幅値[μm]を持った波形部分が占める割合)[%]との関係を考えた場合に、上記両側を含めた全範囲でこの相対頻度[%]が最大となる振幅値[μm]をymodeとする。更に、上記粗さ曲線のうち、上記転動面の径方向(図1の上下方向)に関して上記振幅値ymodeの位置(図1の鎖線βの位置)から上記振幅値ymax の位置(図1の鎖線γの位置)までの範囲に存在する各波形部分の振幅値y [μm]とその相対頻度[%]とに関するパラメータ{これら各振幅値y のそれぞれに就いて、これら各振幅値y と上記振幅値ymodeとの差(y −ymode)と、これら各振幅値y の相対頻度[%]との積を求め、更にこれらを総て足し合わせたもの}Speakを、
【数3】
Figure 2005048810
とする。これと共に、上記粗さ曲線のうち、上記転動面の径方向に関して上記振幅値ymin の位置(図1の鎖線δの位置)から、上記振幅値ymodeの位置(図1の鎖線βの位置)よりも0.5μmだけ深い位置(図1の鎖線εの位置)までの範囲に存在する各波形部分の振幅値y [μm]の相対頻度[%]に関するパラメータ{これら各振幅値y の相対頻度[%]の総和であり、言い換えれば、上記粗さ曲線のうち、その深さが上記振幅値ymodeの位置(図1の鎖線βの位置)を基準として0.5μm以下である波形部分の存在率)Rvalleyを、
【数4】
Figure 2005048810
とする。そして、この場合に、Speak≦2.5μm・%、且つ、2.0%≦Rvalley≦7.0%としている。
【0010】
尚、この様な各ころの転動面の性状は、従来から使用されている表面粗さパラメータ(例えば、算術平均粗さ、二乗平均粗さ等)では、的確に表現する事ができない。この為、本発明では、上記各ころの転動面の性状を的確に表現できる様にすべく、上記各パラメータSpeak、Rvalleyを使用している。
【0011】
尚、上述した様な請求項1に記載したスラストころ軸受を製造する場合、製造した上記各ころの転動面の性状が所望通り(Speak≦2.5μm・%、且つ、2.0%≦Rvalley≦7.0%)になっているか否かを確認する為に、品質検査を行なう。この場合、上記粗さ曲線を構成する各部分の振幅値[μm]を、所定寸法(例えば0.01μm)刻みの値(実際の振幅値を四捨五入して得た値)として取り扱えば、上記品質検査の為の計算{上記(1)式及び(2)式の計算}を容易に行なう事ができる。但し、上記刻みを細かくした方が、計算の精度は高くなる。
【0012】
又、請求項2に記載したスラストころ軸受は、斜板式コンプレッサの回転軸に加わるスラスト荷重を支承すると共に、この回転軸をケーシングに対して回転自在に支持する為、このケーシングの内側に上記回転軸と同心に設けて使用する、上述した請求項1に記載したスラストころ軸受である。
【0013】
又、請求項2に記載したスラストころ軸受の製造方法は、上述した請求項1〜2の何れかに記載したスラストころ軸受の製造方法であって、先ず、各ころにバレル加工を施す(例えば、これら各ころを粗い研磨材と共に回転ドラム内に入れて、遠心流動バレルを施す)事により、上記各ころの転動面の形状を完成状態の形状(上述したSpeak≦2.5μm・%、且つ、2.0%≦Rvalley≦7.0%の条件を満たす面で、理想的には、滑らかな平坦部と微小な凹部とから成る面)に比べて粗い凹凸形状(例えば、平均粗さ0.4Ra程度のランダムな凹凸形状)とする。その後、(細かい研磨材を使用して、)開放タンブラー加工若しくは超仕上加工を施す事により、上記凹凸形状のうちの少なくとも一部(好ましくは、できるだけ多く)の凸部を除去する事で、上記各転動面の形状を上記完成状態の形状に仕上げる。
【0014】
【作用】
上述した様に、本発明のスラストころ軸受の場合には、各ころの転動面の粗さ曲線のうち、その深さが振幅値ymodeの位置(図1の鎖線βの位置)を基準として0.5μm以下である波形部分の存在率Rvalleyを、所定の範囲(2.0%≦Rvalley≦7.0%)に規制している。この為、上記各ころの転動面と各軌道との転がり接触部に、切断されにくい強力な油膜を形成する事ができる。即ち、上記各ころの転動面のうち、粗さ曲線の深さが振幅値ymodeの位置(図1の鎖線βの位置)を基準として0.5μm以下である波形部分に対応する凹部は、その内側に潤滑剤を保持して、上記転がり接触部に油膜を形成し易くする機能を有する。但し、上記存在率Rvalleyを2.0%未満(Rvalley<2.0%)とすると、上記油膜の形成効果を十分に得られなくなる。この為、本発明の場合には、上記油膜の形成効果を十分に得られる様にすべく、上記存在率Rvalleyの下限値を2.0%(Rvalley≧2.0%)とした。一方、上記存在率Rvalleyを7.0%よりも大きく(Rvalley>7.0%)すると、上記転動面に存在する上記凹部の割合が多くなり過ぎる{この転動面に存在する平端部(この転動面のうち、粗さ曲線の振幅値がymodeである波形部分に対応する部分)の割合が少なくなり過ぎる}。この結果、上記凹部の開口周縁部に過大面圧が作用して、当該部分で油膜切れが生じ易くなったり、或は応力集中が起こり易くなる。この為、本発明の場合には、この様な不都合を防止すべく、上記存在率Rvalleyの上限値を7.0%(Rvalley≦7.0%)とした。
【0015】
又、上述した様に、本発明のスラストころ軸受の場合には、前記パラメータSpeakを所定の範囲(Speak≦2.5μm・%)に規制している。この為、上記各ころの転動面に剥離等の損傷に結び付く起点が生じる事を、有効に防止できる。即ち、上記パラメータSpeakは、上記転動面に存在する凸部(この転動面のうち、粗さ曲線の振幅値がymodeよりも大きい波形部分に対応する部分で、上記平坦部から径方向外方に飛び出した部分)の大きさ及び割合を示す量である。この様なパラメータSpeakの値が2.5μm・%よりも大きく(Speak>2.5μm・%)なると、上記凸部が上記各軌道と金属接触して欠け易くなり、欠けた場合にはこの欠けた部分を起点として上記転動面に剥離等の損傷が生じ易くなる。この為、本発明の場合には、この様な不都合が生じるのを防止すべく、上記パラメータSpeakの値を2.5μm・%以下(Speak≦2.5μm・%)とした。
【0016】
従って、上述した様な本発明のスラストころ軸受の場合には、例えば斜板式コンプレッサの回転軸に組み付けて使用する場合(請求項2の場合)の様に、微量潤滑且つ高速回転及び高負荷スラスト荷重と言った厳しい条件下で使用する場合でも、上記各ころの転動面と上記各軌道との転がり接触部で油膜切れが生じたり、或はこれら各転動面に応力集中や剥離等の損傷に結び付く起点が生じるのを、有効に防止できる。この結果、本発明のスラストころ軸受の場合には、上述の様な厳しい条件下で使用する場合でも、上記各軌道及び上記各転動面にピーリングや剥離等の損傷が発生するのを有効に防止でき、耐久性を十分に確保する事ができる。
【0017】
又、請求項3に記載したスラストころ軸受の製造方法によれば、上述した様な本発明のスラストころ軸受を、適切に製造する事ができる。
【0018】
【実施例】
本発明の効果を確認する為に行なった実験に就いて説明する。本実験では、以下の表1に示す様な、本発明のスラストニードル軸受(実施例1〜3)と、従来のスラストニードル軸受(比較例1〜4)とを試料として用意した。図3に示す様に、これら各スラストニードル軸受(実施例1〜3、比較例1〜4)はそれぞれ、互いに対向する軸方向(図3の上下方向)側面に軌道7、7を形成した、それぞれが円輪状である1対の軌道輪8a、8cと、上記両軌道7、7同士の間に放射状に且つ転動自在に設けた、それぞれがころの一種である複数本のニードル9、9とを備える。尚、これら各ニードル9、9は、図示しない保持器により転動自在に保持している。又、本実験では、上記各スラストニードル軸受(実施例1〜3、比較例1〜4)としてそれぞれ、全体の外径が69mmであり、同じく内径が40mmであり、上記各ころ9、9の本数が38本であり、同じく外径が3.0mmであり、同じく長さが6.7mmであり、且つ、上記各軌道輪8a、8cの材料がSCM415であると共に上記各軌道7、7の平均粗さが0.12Raであり、且つ、上記各ころ9、9の材料がSUJ2であると共にこれら各ころ9、9の転動面の性状{前記式(1)で示したSpeak及び前記式(2)で示したRvalleyの値}が以下の表1に示されるものを使用した。尚、上記各スラストニードル軸受(実施例1〜3、比較例1〜4)の基本動定格荷重は、37,632Nである。
【表1】
Figure 2005048810
【0019】
そして、上記各スラストニードル軸受(実施例1〜3、比較例1〜4)に就いて、上述の図3に示す様な試験装置を使用して、試験運転を行なった。具体的には、この試験装置を構成する受台15の上面に、上記各スラストニードル軸受(実施例1〜3、比較例1〜4)を構成する一方(図3の下方)の軌道輪8cを回転不能に支持した状態で、上記試験装置を構成するスピンドル16により、他方(図3の上方)の軌道輪8aにスラスト荷重を負荷しつつ、この他方の軌道輪8aを回転させた。詳しい試験条件は、以下の通りである。
負荷スラスト荷重:11,290N
回転速度:700min−1
潤滑条件:コンプレッサ用冷凍機油を使用し、流量を制御して枯渇潤滑とした。
試験運転時間:200時間(hr)
【0020】
上述の様にして行なった実験の結果を、図4に示す。
先ず、実施例1〜3に就いては、上記各転動面及び軌道7、7の摩耗は軽微なものであり、ピーリングや剥離等の損傷も生じる事がなく、本発明の効果を確認する事ができた。
【0021】
次に、比較例1に就いては、上記各転動面が7μm程度、上記各軌道7、7が8μm程度、それぞれ摩耗し、更にこのうちの各転動面に、ピーリングが生じた。この様な結果が得られた理由は、Rvalleyが2.0%よりも小さい(Rvalley=1.25%)為であると思われる。即ち、上記各転動面に、潤滑油溜りとなる凹部{これら各転動面のうち、粗さ曲線の深さが振幅値ymodeの位置(図1の鎖線βの位置)を基準として0.5μm以下である波形部分に対応する凹部}が不足して、潤滑不良の状態となった為であると思われる。
【0022】
次に、比較例2に就いては、上記各転動面が10μm程度、上記各軌道7、7が12μm程度、それぞれ摩耗し、更にこのうちの各転動面に、ピーリングが生じた。この様な結果が得られた理由は、Speakが2.5μm・%より大きい(Speak=2.78μm・%)為であると思われる。即ち、上記各転動面に存在する凸部(これら各転動面のうち、粗さ曲線の振幅値がymodeよりも大きい波形部分に対応する凸部)が欠け、この欠けた部分が上記ピーリングの発生起点になったものと思われる。
【0023】
次に、比較例3に就いては、上記各転動面が12μm程度、上記各軌道7、7が5μm程度、それぞれ摩耗し、更にこのうちの各転動面に、剥離が生じた。同様に、比較例4に就いては、上記各転動面が14μm程度、上記各軌道7、7が15μm程度、それぞれ摩耗し、更にこのうちの各転動面に、剥離が生じた。又、これら比較例3〜4の各転動面を走査型電子顕微鏡により観察したところ、上記剥離が、上記凹部の開口周縁部を起点として発生している事が分かった。この様な結果が得られた理由は、特に、Rvalleyが7.0%よりも大きい(比較例3ではRvalley=7.2%、比較例4ではRvalley=7.8%)為であると思われる。即ち、これら比較例3、4の場合には、上記各転動面に存在する上記凹部の割合が多くなり過ぎる{これら各転動面に存在する平面部(これら各転動面のうち、粗さ曲線の振幅値がymodeである波形部分に対応する部分)の割合が少なくなり過ぎる}結果、上記凹部の開口周縁部に過大面圧が作用し、当該部分で油膜切れが生じたり、或は応力集中が起こって、当該部分に上記剥離の発生起点となる亀裂等の損傷が生じたものと思われる。
【0024】
上述した実験結果及びその考察結果からも明らかな様に、本発明品(実施例1〜3)の様に、上記各パラメータSpeak、Rvalleyの双方が所定の範囲内にある(Speak≦2.5μm・%、且つ、2.0%≦Rvalley≦7.0%である)場合には、微量潤滑且つ高速回転及び高負荷スラスト荷重と言った厳しい条件下で使用した場合でも、十分な耐久性を確保できる。これに対し、従来品(比較例1〜4)の様に、上記各パラメータSpeak、Rvalleyのうちの少なくとも一方のパラメータが上記所定の範囲外にある場合には、上述の様な厳しい条件下で使用した場合に、十分な耐久性を確保するのが難しくなる。
【0025】
【発明の効果】
本発明のスラストころ軸受とその製造方法は、以上に述べた様に構成され作用する為、このうちのスラストころ軸受に関しては、微量潤滑且つ高速回転及び高負荷スラスト荷重と言った厳しい条件下で使用する場合でも、十分な耐久性を確保する事ができる。従って、この様な厳しい条件下での使用が要求される、斜板式コンプレッサ等の機械装置の小型化及び高性能化の発展に寄与できる。又、上記スラストころ軸受の製造方法に関しては、上述の様な優れた効果を発揮するスラストころ軸受を、効率良く造る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ころの転動面の粗さ曲線、並びに、本発明により規制する寸法を示す図。
【図2】ころの転動面の粗さ曲線を構成する各波形部分の振幅値[μm]と、この振幅値[μm]の相対頻度[%]との関係を表す線図。
【図3】本発明の効果を確認する為に行なった実験で使用した装置の断面図。
【図4】同じく実験の結果を示す図。
【図5】本発明の対象となるスラストニードル軸受を組み込んだ、斜板式コンプレッサの1例を示す断面図。
【符号の説明】
1 斜板式コンプレッサ
2 ケーシング
3 回転軸
4 ラジアルニードル軸受
5a、5b スラストニードル軸受
6 支持部ラケット
7 軌道
8a、8b、8c 軌道輪
9 ニードル
10 斜板
11 シリンダ
12 ピストン
13 吸入ポート
14 吐出ポート
15 受台
16 スピンドル

Claims (3)

  1. それぞれが互いに対向する軸方向側面に軌道を有する1対の軌道輪と、これら両軌道同士の間に放射状に且つ転動自在に設けられた複数のころとを備えたスラストころ軸受に於いて、上記各ころの転動面の粗さ曲線のうち、この粗さ曲線の中心線を基準とする最大凸部の振幅値[μm]をymax とし、同じく最大凹部の振幅値[μm]をymin とし、上記粗さ曲線に関して上記中心線を挟む両側でそれぞれこの中心線を基準とする振幅値[μm]とその相対頻度[%]との関係を考えた場合に、上記両側を含めた全範囲でこの相対頻度[%]が最大となる振幅値[μm]をymodeとし、更に、上記粗さ曲線のうち、上記転動面の径方向に関して上記振幅値ymodeの位置から上記振幅値ymax の位置までの範囲に存在する各波形部分の振幅値y [μm]とその相対頻度[%]とに関するパラメータSpeakを、
    Figure 2005048810
    とすると共に、上記粗さ曲線のうち、上記転動面の径方向に関して上記振幅値ymin の位置から上記振幅値ymodeの位置よりも0.5μmだけ深い位置までの範囲に存在する各波形部分の振幅値y [μm]の相対頻度[%]に関するパラメータRvalleyを、
    Figure 2005048810
    とした場合に、Speak≦2.5μm・%、且つ、2.0%≦Rvalley≦7.0%とした事を特徴とするスラストころ軸受。
  2. 斜板式コンプレッサの回転軸に加わるスラスト荷重を支承すると共に、この回転軸をケーシングに対して回転自在に支持する為、このケーシングの内側に上記回転軸と同心に設けて使用する、請求項1に記載したスラストころ軸受。
  3. 請求項1〜2の何れかに記載したスラストころ軸受の製造方法であって、各ころにバレル加工を施す事により、これら各ころの転動面の形状を完成状態の形状に比べて粗い凹凸形状とした後、開放タンブラー加工若しくは超仕上加工を施す事により、上記凹凸形状のうちの少なくとも一部の凸部を除去する事で、上記各転動面の形状を完成状態の形状に仕上げる、スラストころ軸受の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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