JP2005048634A - 内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法 - Google Patents
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- F01L3/14—Cooling of valves by means of a liquid or solid coolant, e.g. sodium, in a closed chamber in a valve
Abstract
【課題】高温に曝される内燃機関のポペットバルブにおいて、市販車にも安心して採用できる内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ステム部(22)と傘部(21)とから構成されるとともにステム部及び傘部の内側に中空部(25)を有し、中空部に、カーボン繊維を含む成型体(26)又はカーボン繊維の粉体が封入されて構成される。
【選択図】 図2
【解決手段】ステム部(22)と傘部(21)とから構成されるとともにステム部及び傘部の内側に中空部(25)を有し、中空部に、カーボン繊維を含む成型体(26)又はカーボン繊維の粉体が封入されて構成される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法に係り、詳しくは、安心して市販車に採用可能な内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のシリンダヘッドに装備されるバルブには、混合ガスの入口側に位置する吸気バルブと、燃焼ガスの出口側に位置する排気バルブとがある。これらのバルブは、ともに燃焼室に直面しており、高熱及び高圧に耐えなければならないことの他、毎分数千回転にも及ぶ回転に対する往復運動の衝撃にも耐えなければならない。よって、これらのバルブは、ポペットバルブと呼ばれる茸状の形状に構成されている。
【0003】
ここで、吸気バルブは、新しい混合ガスの流入によって冷却されるのに対し、排気バルブは、開弁しても燃焼ガスに曝されている。つまり、排気バルブは、高温環境下での作動が特に要求されることから、その冷却を如何に達成するかが極めて重要である。
そして、バルブの冷却効果を高めるべく、内燃機関のポペットバルブの技術が各種提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
実開昭64−44305号公報(第1図等)
【特許文献2】
特開平5−59920号公報(段落番号0020、図1等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記特許文献1記載の従来の技術では、茸状をなす傘部に放熱芯体を埋設させたポペットバルブが開示され、また、前記特許文献2記載の従来の技術では、ステム部に相当する軸部を炭素長繊維等で構成させる一方、傘部の表面部分を窒化ケイ素焼結体で構成させたポペットバルブが開示されている。
【0006】
よって、これらの従来の技術によれば、バルブの熱負荷を低減させることは可能である。しかし、前者の技術では、放熱芯体が傘部の底面側にて燃焼室に曝されているので、放熱芯体の材質如何によっては放熱芯体自体が燃えて、傘部の耐熱・耐久性に問題が生じてしまうとの問題がある。一方、後者の技術では、傘部の材質が熱伝導性の低い材料で構成されていることから、傘部の温度上昇によってノッキングが発生するとの問題がある。つまり、上記従来の技術のポペットバルブでは、いずれも安心して市販車に採用する点については依然として課題が残されている。
【0007】
また、これらの構成の他、中空にしたステム部内に金属ナトリウムを封入させたナトリウム封入バルブの構成が知られている。この金属ナトリウムは、エンジンの使用範囲温度では液状になっており、バルブの動きに応じてステム部内を移動し、傘部の熱をステム部に逃がしている。このように、金属ナトリウムを用いて傘部の温度が低減させれば、抗ノック効果、すなわち、燃焼ガスの温度が低減されることによるノッキングの発生を抑制できる。
【0008】
しかし、この金属ナトリウムは、酸化反応性が高く爆発の危険性がある物質である。すなわち、万一、バルブの折損等が起こったときには危険であることを鑑みれば、一部の高性能エンジンを除き、量産車に安心して適用させるにはやはり抵抗がある。これを回避する手段としては、例えば、ステム部の内側にオイル冷却通路を設ける、或いは、冷却水による冷却通路を設けることも考えられるが、複数本の細い冷却通路をステム部に設けなければならない等、最近の傾向の如く、動弁機能の向上を目指すべくステム部の細軸化を図る状況下では採用し難いという問題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、高温に曝される内燃機関のポペットバルブにおいて、市販車にも安心して採用できる内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の内燃機関のポペットバルブは、ステム部と傘部とから構成されるとともにステム部及び傘部の内側に中空部を有し、中空部に、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体が封入されていることを特徴としている。
【0011】
したがって、請求項1記載の内燃機関のポペットバルブによれば、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、爆発する危険がなく、かつ、高い熱伝導性を有していることから、傘部の冷却が効率良く行え、高負荷時の抗ノック性を高めて出力向上に寄与するとともに、比重も軽いのでバルブの軽量化にも寄与する。よって、当該ポペットバルブを市販車に安心して採用可能となる。
【0012】
しかも、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、蓋部材で閉塞されて外気に曝されないので、この成型体又は粉体自体が酸化によって変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性が向上する。この点からも当該ポペットバルブを市販車に安心して採用可能となる。
また、請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法は、中空部を有するステム部及び傘部分からなる中空粗材を成型する工程と、中空部の形状に沿って予め成型されたカーボンコンポジット材を傘部分の底面側の開口から中空部に充填する工程と、傘部分の開口周縁部に蓋部材を係合させるとともに、係合部分を溶接して開口を閉塞する工程と、閉塞された傘部分を鍛造して傘部を成型する工程と、ステム部にコッタ溝部を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
したがって、請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成し、機械的強度は外側に相当する中空粗材に具備させれば、内側に相当する部分にはカーボンコンポジット材の如く、熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定が可能となり、バルブの傘部の冷却を効率良く行える。しかも、爆発の危険性を伴わないので、当該製造方法によって構成されたポペットバルブを安心して市販車に採用可能となる。
【0014】
また、予め成型されたカーボンコンポジット材を中空部内に封入して外部と接触させないので、カーボンコンポジット材自体が燃焼ガスの温度上昇によって変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性が向上する。さらに、中空粗材にカーボンコンポジット材を充填・閉塞してから傘部分を鍛造成型すれば、ポペットバルブの成型を効率良く行え、ステム部の細軸化も達成可能となる。
【0015】
なお、カーボンコンポジット材としては、その繊維方向で高熱伝導性能を有するカーボン繊維に、アルミニウムや銅等の高熱伝導金属を含浸させたものが考えられる。このようなカーボン繊維を採用すれば、例え焼却しても、爆発することなくそのまま燃えるので、バルブの廃棄時にも好適になる。
また、請求項3記載の発明では、係合部分を溶接して中空部を閉塞する工程は、不活性ガス雰囲気中で行われることを特徴としている。
【0016】
このように、カーボン繊維は、不活性ガス雰囲気中の如く酸素のない雰囲気では3000℃までの温度に耐え得るので、傘部の温度が600℃を超える可能性のある排気バルブにおいても、使用中におけるカーボンコンポジット材の変質を防止し、その高熱伝導機能が維持される。なお、仮に酸素のある雰囲気であっても500℃レベルまでの温度では十分に使用可能である。
【0017】
なお、係合部分の閉塞は、局所加熱できるレーザ溶接等により行われることが好ましい。これにより、溶接中におけるカーボンコンポジット材の焼失も防止される。
さらに、請求項4記載の発明では、中空部を有するステム部及び傘部を形成させるとともに、ステム部にコッタ溝部を形成させて中空バルブパーツを成型する工程と、ポペットバルブの動きに応じて中空部内で移動可能なカーボン粉体を傘部の底面側の開口から中空部に装填する工程と、傘部の開口周縁部に蓋部材を係合させるとともに、係合部分を不活性ガス雰囲気中で溶接して開口を閉塞する工程とを備えたことを特徴としている。
【0018】
したがって、請求項4記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成して上述と同様の効果が得られることの他、内側に相当する部分には、カーボン粉体の如くの熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定がより可能となり、熱伝導機能がさらに高められる。
そして、不活性ガス雰囲気中で中空部を閉塞すれば、排気バルブにおいても使用中のカーボンコンポジット材の変質を防止し、上記のさらに高められた熱伝導機能も維持される。
【0019】
なお、カーボン粉体としては、カーボンナノチューブが考えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
図1を参照すると、本発明の第一実施形態に係る内燃機関のポペットバルブが排気バルブとして適用されたエンジンの部分構成図が示されている。また、図2には、当該ポペットバルブの縦断面図が示されており、以下図1及び図2に基づき本発明に係る内燃機関のポペットバルブの構成を説明する。
【0021】
エンジンのシリンダヘッド1には、略水平方向に排気ポート2が形成されており、排気ポート2の燃焼室3側には、排気ポート2と燃焼室3とを連通する排気口4の開閉を行う排気バルブ20が設けられている。
排気バルブ20は、シリンダヘッド1に配設された直動式動弁機構5に組み込まれている。この直動式動弁機構5は、排気バルブ20を往復運動させるバルブリフタ10と、エンジン回転に応じて回転して排気バルブ20を開弁させるカム13とを備えている。
【0022】
バルブリフタ10は、排気バルブ20のステム部22に圧接される突起部11と、突起部11の上側にてカム13に当接されクリアランスを調整するシム12と、シリンダヘッド1に圧入固定されステム部22を支持するバルブガイド19と、バルブガイド19のシール18と、カム13の押圧力に抗して排気バルブ20を閉弁させるバルブスプリング16と、バルブスプリング16の上端及び下端に設けられたアッパシート15及びロアシート17と、ステム部22とバルブスプリング16等とを固定させるバルブコッタ14とから構成されている。
【0023】
排気バルブ20は、茸状をなし排気口4を開閉する傘部21と、傘部21に連なりバルブの軸部分をなしてバルブガイド19に支持されるステム部22と、突起部11に当接する上端部23と、バルブコッタ14に係合されるコッタ溝部24とを備えている。そして、傘部21からコッタ溝部24近傍に至るまでのステム部22の内側には中空部25が構成されており、本実施形態においては、中空部25には、この中空部25の形状に沿って予め成型されたカーボンコンポジット材26が充填される。また、カーボンコンポジット材26が充填された中空部25は、傘部21の底面側の開口周縁部27に係合される蓋部材28によって閉塞される。
【0024】
上記カーボンコンポジット材26とは、カーボン繊維を含む成型体を意味し、その繊維方向で高熱伝導性能を有するカーボン繊維に、アルミニウムや銅等の高熱伝導金属を含浸させたものである。
次に、前記の如き構成のポペットバルブ20の製造方法について説明する。
図3は、ポペットバルブ20の製造工程を示す図である。
【0025】
同図(a)は、中空粗材20Aを鍛造により成型する工程である。すなわち、ポペットバルブ20の製造にあたり、まず中空粗材20Aが成型される。より具体的には、板状の部材が段階を経て絞られることで、ステム部22の外形の他、ステム部22の内側に中空部25を構成させるとともに、傘部分21Aの外形を構成させる。この傘部分21Aは、最終的に傘部21として構成される前段階のものである。なお、中空部25は傘部分21Aの内側にも構成される。
【0026】
次に、カーボンコンポジット材26が別工程で成型される。この形状は上記中空部25の形状に等しくされている。そして、同図(b)に示すように、この予め成型されたカーボンコンポジット材26を傘部分21Aの開口から中空部25に充填する。これにより、ステム部22及び傘部分21Aの内側の中空部25はカーボンコンポジット材26によってほぼ一杯に満たされる。
【0027】
次いで、同図(c)は中空部25を閉塞する工程を示している。つまり、傘部分21Aの開口周縁部27に蓋部材28を係合させ、この係合部分29をレーザ溶接により傘部分21Aの開口を閉塞している。このように、レーザ溶接で係合部分29のみを局所的に加熱すれば、溶接中のカーボンコンポジット材26の焼失等による変質が防止できる。
【0028】
ここで、この溶接は、不活性ガス雰囲気中で行われることが望ましい。中空部25内に酸素が存在しないように溶接すれば、封入されたカーボン繊維は、約3000℃までの温度に耐えるようになり、傘部21の温度が約600℃を超える可能性のある排気バルブ20においても、その高熱伝導機能が維持されるからである。なお、不活性ガス雰囲気中で溶接を行わない場合には、中空部25内に酸素が存在することになるが、この場合であっても、カーボン繊維は、約500℃レベルの温度までは十分に使用でき、例えば吸気バルブには十分に適用可能である。
【0029】
そして、同図(d)に示すように、カーボンコンポジット材26が封入された中空粗材20Aを保持具50内に載置し、続いて、押圧具51が、傘部分21Aの開口周縁部27側からステム部22の長手方向に向けて傘部分21Aを鍛造すれば、保持具50の内側形状に沿った傘部21が成型される。
そして、鍛造形成後に保持具50から取り出されたステム部22に対し、コッタ溝部24を形成すれば排気バルブ20が完成する。
【0030】
図4は、本発明の第二実施形態を示すものである。当該第二実施形態では、バルブの冷却材の構成及び製造方法の点を除き、前記第一実施形態と同一の構成からなるものであることから、このバルブの冷却材の構成及び製造方法の点について詳細に説明する。
本実施形態の排気バルブ30は、傘部31と、ステム部32と、上端部33と、コッタ溝部34とを備え、ステム部32及び傘部31の内側には中空部35が構成されている。これは上記第一実施形態と同様である。一方、本実施形態においては、中空部35には、カーボンナノチューブ36と不活性ガス36Gとが装填される。具体的には、カーボンナノチューブ36は、排気バルブ30の往復運動に伴って中空部35内を移動することから、この移動を可能にさせるための量が考慮されて封入されている。また、カーボンナノチューブ36及び不活性ガス36Gが装填された中空部35は、傘部31の開口周縁部37に係合される蓋部材38によって閉塞される。なお、上記カーボンナノチューブ36とは、カーボン繊維の粉体を意味し、その繊維方向で高熱伝導性能を有するものである。
【0031】
この排気バルブ30の製造工程は、図5に示されている。
同図(a)は、中空バルブパーツ30Aを鍛造により成型する工程である。すなわち、本実施形態においては、ポペットバルブ30の製造にあたり、まず中空バルブパーツ30Aが成型される。より具体的には、板状の部材が段階を経て絞られ、ステム部32及び傘部31の外形の他、これらステム部32及び傘部31の内側に中空部35を構成させる。また、上記鍛造形成後には、ステム部32にコッタ溝部34を形成させる。
【0032】
次に、同図(b)に示すように、カーボンナノチューブ36を傘部31の開口から中空部35に装填する。これにより、ステム部32の内側に相当する中空部35の部分がカーボンナノチューブ36によって満たされる。
次いで、同図(c)は中空部35を閉塞する工程を示している。つまり、同図に示すように、まず、カーボンナノチューブ36が装填された中空バルブパーツ30Aを不活性ガス槽60内に置く。そして、傘部31の開口周縁部37に蓋部材38を係合させ、この係合部分39をレーザ溶接により傘部21の開口を閉塞している。つまり、中空部35内には、カーボンナノチューブ36の層と不活性ガス36Gの層とが形成される。このように、不活性ガス雰囲気中で溶接を行うことにより、粉体であるカーボンナノチューブ36が酸化して変質することが防止できる。また、レーザ溶接で係合部分39のみを局所的に加熱すれば、溶接中のカーボンナノチューブ36の焼失も防止できる。
【0033】
そして、不活性ガス槽60から取り出して排気バルブ30が完成する。
以上のように、上記第一実施形態のポペットバルブ20及び第二実施形態のポペットバルブ30の構成によれば、カーボンコンポジット材、カーボンナノチューブ等のカーボン繊維を含んだ冷却材が封入され、ポペットバルブ20、30がカーボン繊維により積極的に冷却されることから、傘部21、31の熱をシートやステム部22、32から効率良く逃がすことができる。つまり、傘部21、31の温度を効果的に下げることが可能になり、バルブの耐久性の向上が図られる。しかも、燃焼ガスの加熱を抑制させるのでノッキングが発生し難くなり、その分だけ点火時期を進めることが可能になって燃費及びエンジン出力等の性能の向上が図られる。
【0034】
また、金属ナトリウムを封入するナトリウム封入バルブに比して爆発の危険がなく、バルブの廃棄の際の処置も容易化される。
さらに、第一実施形態のポペットバルブ20の製造方法の如く、予め成型され、高熱伝導金属が含浸されたカーボンコンポジット材26を中空粗材20Aの中空部25へ導入し、封入後に鍛造成型していることから、成型性が良く、かつ、高熱伝導能力を有するポペットバルブ20を製造することができる。
【0035】
また、第二実施形態のポペットバルブ30の製造方法の如く、粉体のカーボンナノチューブ36を中空バルブパーツ30Aの中空部35に導入しているので、高熱伝導能力の更なる向上を図ることができる。さらに、不活性ガス36Gも封入されることから、高温環境下での作動が特に要求される排気バルブにおいても、カーボンナノチューブ36の焼失を防止できる。
【0036】
以上で本発明の各実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、ポペットバルブ20、30が排気バルブとして適用された例が示されているが、吸気バルブとして適用されるものであっても良く、上記と同様に、バルブの耐久性の他、ノッキングの発生の抑制、及びバルブの廃棄処置を容易化できる効果を奏する。
【0037】
また、動弁機構についても、上述の直動式の形態に限定されるものではなく、ロッカーアーム式のものであっても良い。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、請求項1記載の本発明の内燃機関のポペットバルブによれば、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、爆発する危険がなく、かつ、高い熱伝導性を有していることから、傘部の冷却が効率良く行え、高負荷時の抗ノック性を高めて出力向上に寄与するとともに、比重も軽いのでバルブの軽量化にも寄与する。よって、当該ポペットバルブを市販車に安心して採用することができる。
【0039】
しかも、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、蓋部材で閉塞されて外気に曝されないので、この成型体又は粉体自体が変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性を向上させることができる。この点からも当該ポペットバルブを市販車に安心して採用することができる。
また、請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成し、機械的強度は外側に相当する中空粗材に具備させれば、内側に相当する部分にはカーボンコンポジット材の如く、熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定が可能となり、バルブの傘部の冷却を効率良く行うことができる。しかも、爆発の危険性を伴わないので、当該製造方法によって構成されたポペットバルブを安心して市販車に採用することができる。
【0040】
また、予め成型されたカーボンコンポジット材を中空部内に封入して外部と接触させないので、カーボンコンポジット材自体が燃焼ガスの温度上昇によって変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性を向上させることができる。さらに、中空粗材にカーボンコンポジット材を充填・閉塞してから傘部分を鍛造成型すれば、ポペットバルブの成型を効率良く行うことができ、ステム部の細軸化も達成することができる。
【0041】
さらに、請求項3記載の発明によれば、カーボン繊維は、不活性ガス雰囲気中の如く酸素のない雰囲気では3000℃までの温度に耐え得るので、傘部の温度が600℃を超える可能性のある排気バルブにおいても、使用中におけるカーボンコンポジット材の変質を防止し、その高熱伝導機能を維持させることができる。
【0042】
また、請求項4記載の発明によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成して上述と同様の効果が得られることの他、内側に相当する部分には、カーボン粉体の如くの熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定がより可能となり、熱伝導機能をさらに高めることができる。そして、不活性ガス雰囲気中で中空部を閉塞すれば、排気バルブにおいても使用中のカーボンコンポジット材の変質を防止し、上記のさらに高められた熱伝導機能も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る内燃機関のポペットバルブが適用されるエンジンの部分構成図である。
【図2】図1のポペットバルブの縦断面図である。
【図3】図1のポペットバルブの製造方法を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る内燃機関のポペットバルブの縦断面図である。
【図5】図4のポペットバルブの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
20、30 ポペットバルブ
20A 中空粗材
21、31 傘部
21A 傘部分
22、32 ステム部
24、34 コッタ溝部
25、35 中空部
26 カーボンコンポジット材(カーボン繊維を含む成型体)
27、37 開口周縁部
28、38 蓋部材
29、39 係合部
30A 中空バルブパーツ
36 カーボンナノチューブ(カーボン繊維の粉体)
36G 不活性ガス
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法に係り、詳しくは、安心して市販車に採用可能な内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のシリンダヘッドに装備されるバルブには、混合ガスの入口側に位置する吸気バルブと、燃焼ガスの出口側に位置する排気バルブとがある。これらのバルブは、ともに燃焼室に直面しており、高熱及び高圧に耐えなければならないことの他、毎分数千回転にも及ぶ回転に対する往復運動の衝撃にも耐えなければならない。よって、これらのバルブは、ポペットバルブと呼ばれる茸状の形状に構成されている。
【0003】
ここで、吸気バルブは、新しい混合ガスの流入によって冷却されるのに対し、排気バルブは、開弁しても燃焼ガスに曝されている。つまり、排気バルブは、高温環境下での作動が特に要求されることから、その冷却を如何に達成するかが極めて重要である。
そして、バルブの冷却効果を高めるべく、内燃機関のポペットバルブの技術が各種提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
実開昭64−44305号公報(第1図等)
【特許文献2】
特開平5−59920号公報(段落番号0020、図1等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記特許文献1記載の従来の技術では、茸状をなす傘部に放熱芯体を埋設させたポペットバルブが開示され、また、前記特許文献2記載の従来の技術では、ステム部に相当する軸部を炭素長繊維等で構成させる一方、傘部の表面部分を窒化ケイ素焼結体で構成させたポペットバルブが開示されている。
【0006】
よって、これらの従来の技術によれば、バルブの熱負荷を低減させることは可能である。しかし、前者の技術では、放熱芯体が傘部の底面側にて燃焼室に曝されているので、放熱芯体の材質如何によっては放熱芯体自体が燃えて、傘部の耐熱・耐久性に問題が生じてしまうとの問題がある。一方、後者の技術では、傘部の材質が熱伝導性の低い材料で構成されていることから、傘部の温度上昇によってノッキングが発生するとの問題がある。つまり、上記従来の技術のポペットバルブでは、いずれも安心して市販車に採用する点については依然として課題が残されている。
【0007】
また、これらの構成の他、中空にしたステム部内に金属ナトリウムを封入させたナトリウム封入バルブの構成が知られている。この金属ナトリウムは、エンジンの使用範囲温度では液状になっており、バルブの動きに応じてステム部内を移動し、傘部の熱をステム部に逃がしている。このように、金属ナトリウムを用いて傘部の温度が低減させれば、抗ノック効果、すなわち、燃焼ガスの温度が低減されることによるノッキングの発生を抑制できる。
【0008】
しかし、この金属ナトリウムは、酸化反応性が高く爆発の危険性がある物質である。すなわち、万一、バルブの折損等が起こったときには危険であることを鑑みれば、一部の高性能エンジンを除き、量産車に安心して適用させるにはやはり抵抗がある。これを回避する手段としては、例えば、ステム部の内側にオイル冷却通路を設ける、或いは、冷却水による冷却通路を設けることも考えられるが、複数本の細い冷却通路をステム部に設けなければならない等、最近の傾向の如く、動弁機能の向上を目指すべくステム部の細軸化を図る状況下では採用し難いという問題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、高温に曝される内燃機関のポペットバルブにおいて、市販車にも安心して採用できる内燃機関のポペットバルブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の内燃機関のポペットバルブは、ステム部と傘部とから構成されるとともにステム部及び傘部の内側に中空部を有し、中空部に、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体が封入されていることを特徴としている。
【0011】
したがって、請求項1記載の内燃機関のポペットバルブによれば、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、爆発する危険がなく、かつ、高い熱伝導性を有していることから、傘部の冷却が効率良く行え、高負荷時の抗ノック性を高めて出力向上に寄与するとともに、比重も軽いのでバルブの軽量化にも寄与する。よって、当該ポペットバルブを市販車に安心して採用可能となる。
【0012】
しかも、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、蓋部材で閉塞されて外気に曝されないので、この成型体又は粉体自体が酸化によって変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性が向上する。この点からも当該ポペットバルブを市販車に安心して採用可能となる。
また、請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法は、中空部を有するステム部及び傘部分からなる中空粗材を成型する工程と、中空部の形状に沿って予め成型されたカーボンコンポジット材を傘部分の底面側の開口から中空部に充填する工程と、傘部分の開口周縁部に蓋部材を係合させるとともに、係合部分を溶接して開口を閉塞する工程と、閉塞された傘部分を鍛造して傘部を成型する工程と、ステム部にコッタ溝部を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
したがって、請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成し、機械的強度は外側に相当する中空粗材に具備させれば、内側に相当する部分にはカーボンコンポジット材の如く、熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定が可能となり、バルブの傘部の冷却を効率良く行える。しかも、爆発の危険性を伴わないので、当該製造方法によって構成されたポペットバルブを安心して市販車に採用可能となる。
【0014】
また、予め成型されたカーボンコンポジット材を中空部内に封入して外部と接触させないので、カーボンコンポジット材自体が燃焼ガスの温度上昇によって変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性が向上する。さらに、中空粗材にカーボンコンポジット材を充填・閉塞してから傘部分を鍛造成型すれば、ポペットバルブの成型を効率良く行え、ステム部の細軸化も達成可能となる。
【0015】
なお、カーボンコンポジット材としては、その繊維方向で高熱伝導性能を有するカーボン繊維に、アルミニウムや銅等の高熱伝導金属を含浸させたものが考えられる。このようなカーボン繊維を採用すれば、例え焼却しても、爆発することなくそのまま燃えるので、バルブの廃棄時にも好適になる。
また、請求項3記載の発明では、係合部分を溶接して中空部を閉塞する工程は、不活性ガス雰囲気中で行われることを特徴としている。
【0016】
このように、カーボン繊維は、不活性ガス雰囲気中の如く酸素のない雰囲気では3000℃までの温度に耐え得るので、傘部の温度が600℃を超える可能性のある排気バルブにおいても、使用中におけるカーボンコンポジット材の変質を防止し、その高熱伝導機能が維持される。なお、仮に酸素のある雰囲気であっても500℃レベルまでの温度では十分に使用可能である。
【0017】
なお、係合部分の閉塞は、局所加熱できるレーザ溶接等により行われることが好ましい。これにより、溶接中におけるカーボンコンポジット材の焼失も防止される。
さらに、請求項4記載の発明では、中空部を有するステム部及び傘部を形成させるとともに、ステム部にコッタ溝部を形成させて中空バルブパーツを成型する工程と、ポペットバルブの動きに応じて中空部内で移動可能なカーボン粉体を傘部の底面側の開口から中空部に装填する工程と、傘部の開口周縁部に蓋部材を係合させるとともに、係合部分を不活性ガス雰囲気中で溶接して開口を閉塞する工程とを備えたことを特徴としている。
【0018】
したがって、請求項4記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成して上述と同様の効果が得られることの他、内側に相当する部分には、カーボン粉体の如くの熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定がより可能となり、熱伝導機能がさらに高められる。
そして、不活性ガス雰囲気中で中空部を閉塞すれば、排気バルブにおいても使用中のカーボンコンポジット材の変質を防止し、上記のさらに高められた熱伝導機能も維持される。
【0019】
なお、カーボン粉体としては、カーボンナノチューブが考えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
図1を参照すると、本発明の第一実施形態に係る内燃機関のポペットバルブが排気バルブとして適用されたエンジンの部分構成図が示されている。また、図2には、当該ポペットバルブの縦断面図が示されており、以下図1及び図2に基づき本発明に係る内燃機関のポペットバルブの構成を説明する。
【0021】
エンジンのシリンダヘッド1には、略水平方向に排気ポート2が形成されており、排気ポート2の燃焼室3側には、排気ポート2と燃焼室3とを連通する排気口4の開閉を行う排気バルブ20が設けられている。
排気バルブ20は、シリンダヘッド1に配設された直動式動弁機構5に組み込まれている。この直動式動弁機構5は、排気バルブ20を往復運動させるバルブリフタ10と、エンジン回転に応じて回転して排気バルブ20を開弁させるカム13とを備えている。
【0022】
バルブリフタ10は、排気バルブ20のステム部22に圧接される突起部11と、突起部11の上側にてカム13に当接されクリアランスを調整するシム12と、シリンダヘッド1に圧入固定されステム部22を支持するバルブガイド19と、バルブガイド19のシール18と、カム13の押圧力に抗して排気バルブ20を閉弁させるバルブスプリング16と、バルブスプリング16の上端及び下端に設けられたアッパシート15及びロアシート17と、ステム部22とバルブスプリング16等とを固定させるバルブコッタ14とから構成されている。
【0023】
排気バルブ20は、茸状をなし排気口4を開閉する傘部21と、傘部21に連なりバルブの軸部分をなしてバルブガイド19に支持されるステム部22と、突起部11に当接する上端部23と、バルブコッタ14に係合されるコッタ溝部24とを備えている。そして、傘部21からコッタ溝部24近傍に至るまでのステム部22の内側には中空部25が構成されており、本実施形態においては、中空部25には、この中空部25の形状に沿って予め成型されたカーボンコンポジット材26が充填される。また、カーボンコンポジット材26が充填された中空部25は、傘部21の底面側の開口周縁部27に係合される蓋部材28によって閉塞される。
【0024】
上記カーボンコンポジット材26とは、カーボン繊維を含む成型体を意味し、その繊維方向で高熱伝導性能を有するカーボン繊維に、アルミニウムや銅等の高熱伝導金属を含浸させたものである。
次に、前記の如き構成のポペットバルブ20の製造方法について説明する。
図3は、ポペットバルブ20の製造工程を示す図である。
【0025】
同図(a)は、中空粗材20Aを鍛造により成型する工程である。すなわち、ポペットバルブ20の製造にあたり、まず中空粗材20Aが成型される。より具体的には、板状の部材が段階を経て絞られることで、ステム部22の外形の他、ステム部22の内側に中空部25を構成させるとともに、傘部分21Aの外形を構成させる。この傘部分21Aは、最終的に傘部21として構成される前段階のものである。なお、中空部25は傘部分21Aの内側にも構成される。
【0026】
次に、カーボンコンポジット材26が別工程で成型される。この形状は上記中空部25の形状に等しくされている。そして、同図(b)に示すように、この予め成型されたカーボンコンポジット材26を傘部分21Aの開口から中空部25に充填する。これにより、ステム部22及び傘部分21Aの内側の中空部25はカーボンコンポジット材26によってほぼ一杯に満たされる。
【0027】
次いで、同図(c)は中空部25を閉塞する工程を示している。つまり、傘部分21Aの開口周縁部27に蓋部材28を係合させ、この係合部分29をレーザ溶接により傘部分21Aの開口を閉塞している。このように、レーザ溶接で係合部分29のみを局所的に加熱すれば、溶接中のカーボンコンポジット材26の焼失等による変質が防止できる。
【0028】
ここで、この溶接は、不活性ガス雰囲気中で行われることが望ましい。中空部25内に酸素が存在しないように溶接すれば、封入されたカーボン繊維は、約3000℃までの温度に耐えるようになり、傘部21の温度が約600℃を超える可能性のある排気バルブ20においても、その高熱伝導機能が維持されるからである。なお、不活性ガス雰囲気中で溶接を行わない場合には、中空部25内に酸素が存在することになるが、この場合であっても、カーボン繊維は、約500℃レベルの温度までは十分に使用でき、例えば吸気バルブには十分に適用可能である。
【0029】
そして、同図(d)に示すように、カーボンコンポジット材26が封入された中空粗材20Aを保持具50内に載置し、続いて、押圧具51が、傘部分21Aの開口周縁部27側からステム部22の長手方向に向けて傘部分21Aを鍛造すれば、保持具50の内側形状に沿った傘部21が成型される。
そして、鍛造形成後に保持具50から取り出されたステム部22に対し、コッタ溝部24を形成すれば排気バルブ20が完成する。
【0030】
図4は、本発明の第二実施形態を示すものである。当該第二実施形態では、バルブの冷却材の構成及び製造方法の点を除き、前記第一実施形態と同一の構成からなるものであることから、このバルブの冷却材の構成及び製造方法の点について詳細に説明する。
本実施形態の排気バルブ30は、傘部31と、ステム部32と、上端部33と、コッタ溝部34とを備え、ステム部32及び傘部31の内側には中空部35が構成されている。これは上記第一実施形態と同様である。一方、本実施形態においては、中空部35には、カーボンナノチューブ36と不活性ガス36Gとが装填される。具体的には、カーボンナノチューブ36は、排気バルブ30の往復運動に伴って中空部35内を移動することから、この移動を可能にさせるための量が考慮されて封入されている。また、カーボンナノチューブ36及び不活性ガス36Gが装填された中空部35は、傘部31の開口周縁部37に係合される蓋部材38によって閉塞される。なお、上記カーボンナノチューブ36とは、カーボン繊維の粉体を意味し、その繊維方向で高熱伝導性能を有するものである。
【0031】
この排気バルブ30の製造工程は、図5に示されている。
同図(a)は、中空バルブパーツ30Aを鍛造により成型する工程である。すなわち、本実施形態においては、ポペットバルブ30の製造にあたり、まず中空バルブパーツ30Aが成型される。より具体的には、板状の部材が段階を経て絞られ、ステム部32及び傘部31の外形の他、これらステム部32及び傘部31の内側に中空部35を構成させる。また、上記鍛造形成後には、ステム部32にコッタ溝部34を形成させる。
【0032】
次に、同図(b)に示すように、カーボンナノチューブ36を傘部31の開口から中空部35に装填する。これにより、ステム部32の内側に相当する中空部35の部分がカーボンナノチューブ36によって満たされる。
次いで、同図(c)は中空部35を閉塞する工程を示している。つまり、同図に示すように、まず、カーボンナノチューブ36が装填された中空バルブパーツ30Aを不活性ガス槽60内に置く。そして、傘部31の開口周縁部37に蓋部材38を係合させ、この係合部分39をレーザ溶接により傘部21の開口を閉塞している。つまり、中空部35内には、カーボンナノチューブ36の層と不活性ガス36Gの層とが形成される。このように、不活性ガス雰囲気中で溶接を行うことにより、粉体であるカーボンナノチューブ36が酸化して変質することが防止できる。また、レーザ溶接で係合部分39のみを局所的に加熱すれば、溶接中のカーボンナノチューブ36の焼失も防止できる。
【0033】
そして、不活性ガス槽60から取り出して排気バルブ30が完成する。
以上のように、上記第一実施形態のポペットバルブ20及び第二実施形態のポペットバルブ30の構成によれば、カーボンコンポジット材、カーボンナノチューブ等のカーボン繊維を含んだ冷却材が封入され、ポペットバルブ20、30がカーボン繊維により積極的に冷却されることから、傘部21、31の熱をシートやステム部22、32から効率良く逃がすことができる。つまり、傘部21、31の温度を効果的に下げることが可能になり、バルブの耐久性の向上が図られる。しかも、燃焼ガスの加熱を抑制させるのでノッキングが発生し難くなり、その分だけ点火時期を進めることが可能になって燃費及びエンジン出力等の性能の向上が図られる。
【0034】
また、金属ナトリウムを封入するナトリウム封入バルブに比して爆発の危険がなく、バルブの廃棄の際の処置も容易化される。
さらに、第一実施形態のポペットバルブ20の製造方法の如く、予め成型され、高熱伝導金属が含浸されたカーボンコンポジット材26を中空粗材20Aの中空部25へ導入し、封入後に鍛造成型していることから、成型性が良く、かつ、高熱伝導能力を有するポペットバルブ20を製造することができる。
【0035】
また、第二実施形態のポペットバルブ30の製造方法の如く、粉体のカーボンナノチューブ36を中空バルブパーツ30Aの中空部35に導入しているので、高熱伝導能力の更なる向上を図ることができる。さらに、不活性ガス36Gも封入されることから、高温環境下での作動が特に要求される排気バルブにおいても、カーボンナノチューブ36の焼失を防止できる。
【0036】
以上で本発明の各実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、ポペットバルブ20、30が排気バルブとして適用された例が示されているが、吸気バルブとして適用されるものであっても良く、上記と同様に、バルブの耐久性の他、ノッキングの発生の抑制、及びバルブの廃棄処置を容易化できる効果を奏する。
【0037】
また、動弁機構についても、上述の直動式の形態に限定されるものではなく、ロッカーアーム式のものであっても良い。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、請求項1記載の本発明の内燃機関のポペットバルブによれば、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、爆発する危険がなく、かつ、高い熱伝導性を有していることから、傘部の冷却が効率良く行え、高負荷時の抗ノック性を高めて出力向上に寄与するとともに、比重も軽いのでバルブの軽量化にも寄与する。よって、当該ポペットバルブを市販車に安心して採用することができる。
【0039】
しかも、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体は、蓋部材で閉塞されて外気に曝されないので、この成型体又は粉体自体が変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性を向上させることができる。この点からも当該ポペットバルブを市販車に安心して採用することができる。
また、請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成し、機械的強度は外側に相当する中空粗材に具備させれば、内側に相当する部分にはカーボンコンポジット材の如く、熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定が可能となり、バルブの傘部の冷却を効率良く行うことができる。しかも、爆発の危険性を伴わないので、当該製造方法によって構成されたポペットバルブを安心して市販車に採用することができる。
【0040】
また、予め成型されたカーボンコンポジット材を中空部内に封入して外部と接触させないので、カーボンコンポジット材自体が燃焼ガスの温度上昇によって変質することもなく、傘部の耐熱・耐久性を向上させることができる。さらに、中空粗材にカーボンコンポジット材を充填・閉塞してから傘部分を鍛造成型すれば、ポペットバルブの成型を効率良く行うことができ、ステム部の細軸化も達成することができる。
【0041】
さらに、請求項3記載の発明によれば、カーボン繊維は、不活性ガス雰囲気中の如く酸素のない雰囲気では3000℃までの温度に耐え得るので、傘部の温度が600℃を超える可能性のある排気バルブにおいても、使用中におけるカーボンコンポジット材の変質を防止し、その高熱伝導機能を維持させることができる。
【0042】
また、請求項4記載の発明によれば、ポペットバルブの内側と外側とを別部材で構成して上述と同様の効果が得られることの他、内側に相当する部分には、カーボン粉体の如くの熱伝導能力の高さを主眼にした冷却材の選定がより可能となり、熱伝導機能をさらに高めることができる。そして、不活性ガス雰囲気中で中空部を閉塞すれば、排気バルブにおいても使用中のカーボンコンポジット材の変質を防止し、上記のさらに高められた熱伝導機能も維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る内燃機関のポペットバルブが適用されるエンジンの部分構成図である。
【図2】図1のポペットバルブの縦断面図である。
【図3】図1のポペットバルブの製造方法を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る内燃機関のポペットバルブの縦断面図である。
【図5】図4のポペットバルブの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
20、30 ポペットバルブ
20A 中空粗材
21、31 傘部
21A 傘部分
22、32 ステム部
24、34 コッタ溝部
25、35 中空部
26 カーボンコンポジット材(カーボン繊維を含む成型体)
27、37 開口周縁部
28、38 蓋部材
29、39 係合部
30A 中空バルブパーツ
36 カーボンナノチューブ(カーボン繊維の粉体)
36G 不活性ガス
Claims (4)
- ステム部と傘部とから構成されるとともに該ステム部及び傘部の内側に中空部を有し、該中空部に、カーボン繊維を含む成型体又はカーボン繊維の粉体が封入されていることを特徴とする内燃機関のポペットバルブ。
- 中空部を有するステム部及び傘部分からなる中空粗材を成型する工程と、
前記中空部の形状に沿って予め成型されたカーボンコンポジット材を前記傘部分の底面側の開口から前記中空部に充填する工程と、
前記傘部分の開口周縁部に蓋部材を係合させるとともに、該係合部分を溶接して前記開口を閉塞する工程と、
該閉塞された傘部分を鍛造して傘部を成型する工程と、
前記ステム部にコッタ溝部を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする内燃機関のポペットバルブの製造方法。 - 前記係合部分を溶接して前記中空部を閉塞する工程は、不活性ガス雰囲気中で行われることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のポペットバルブの製造方法。
- 中空部を有するステム部及び傘部を形成させるとともに、前記ステム部にコッタ溝部を形成させて中空バルブパーツを成型する工程と、
ポペットバルブの動きに応じて前記中空部内で移動可能なカーボン粉体を前記傘部の底面側の開口から前記中空部に装填する工程と、
前記傘部の開口周縁部に蓋部材を係合させるとともに、該係合部分を不活性ガス雰囲気中で溶接して前記開口を閉塞する工程と、
を備えたことを特徴とする内燃機関のポペットバルブの製造方法。
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Cited By (2)
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JP2007327357A (ja) * | 2006-06-06 | 2007-12-20 | Suncall Corp | 内燃機関用バルブ構造 |
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2003
- 2003-07-31 JP JP2003204855A patent/JP2005048634A/ja not_active Withdrawn
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