JP2005048007A - トリフルオロナフタレン誘導体を含有する液晶組成物と表示素子及び液晶性化合物。 - Google Patents
トリフルオロナフタレン誘導体を含有する液晶組成物と表示素子及び液晶性化合物。 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な、トリフルオロナフタレン誘導体を含有する誘電率異方性が負でその絶対値が大きい液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としても従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、単純マトリックス方式、最近ではTFT(薄膜トランジスタ)やMIMにより駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式が主流となっている。
【0003】
これらの表示方式において、IPS型、ECB型、VA型、あるいはCSH型等は現在汎用のTN型やSTN型と異なり、誘電率異方性(Δε)が負の、いわゆるn型の液晶材料を用いるという特徴を有する。これらの中で特にAM駆動によるVA型表示は、高速で広視野角の要求される表示素子、例えばテレビ等への応用において、現在最も期待されているものである。
【0004】
液晶材料としては、これまでにも非常に多種類の化合物が合成されてきており、その表示方式や駆動方式あるいはその用途に応じて使用されているが、上記のVA型等の表示方式に用いられるn型の液晶材料についてはそれほど多くの化合物が知られているわけではない。VA型等の表示方式においても通常の表示方式と同様に、低電圧駆動や高速応答に加えて、広い作動温度範囲が要求される。またセル厚等に合わせた適当な屈折率異方性(Δn)も要求される訳であるが、特にアクティブマトリックス駆動に用いられるn型の液晶材料は分子内に2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基を有する化合物(特許文献1参照)が多用されている。
【0005】
アクティブマトリックス駆動させるためには、液晶材料に高い電圧保持率が要求される。個々の化合物の化学構造と、電圧保持率との関係は完全に解明されたとは言い難いが、分子内にシアノ基やエステル結合など極性の非常に強い基を有する化合物では高い電圧保持率が得られ難く、エーテル結合でも好ましくない場合が多い。低駆動電圧化の必要性から誘電率異方性の絶対値を大きくしようとすると、極性基の存在は必要であり、このため化合物の分子設計は大きく制約を受けているのが実情である。
【0006】
駆動電圧を低減させるためには、液晶組成物の誘電率異方性(Δε)の絶対値がなるべく大きいことが重要である。上記VA表示においてはそのΔεは−3以下望ましくは−3.5以下さらに好ましくは−4以下であることが好ましい。従って、n型の液晶化合物としては単独では少なくとも−4以下のΔεを有するものが必要である。
【0007】
作動温度範囲としてはネマチック相上限温度(TN−I)が少なくとも70℃以上であることが好ましく、ネマチック相下限温度(T−N)が少なくとも−20℃以下であることが好ましい。
【0008】
またセルの構成(セル厚や表示モード等)にも依存するが、Δnは通常0.08〜0.10程度が要求されることが多い。
【0009】
また、応答の高速化のために液晶材料の粘性をなるべく小さくすることも重要である。
【0010】
これらの要求特性を単独で満足できるような液晶化合物は存在せず、従って液晶材料は上記の2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体を主として多くの液晶化合物から調製される液晶組成物(特許文献2参照)が用いられてきたのが現状である。
【0011】
ところが、これまで知られている2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体のほとんどは他の環構造としてトランス−1,4−シクロヘキシレン基及び1,4−フェニレン基を有する化合物であるが、その1位及び4位がともに炭素原子と連結した構造を有する場合には−2〜−3程度のΔεしか示さない。より絶対値の大きいΔεを得るためにはその1位あるいは4位に酸素原子がエーテル結合で連結することが必要であり、その場合には−4〜−5のΔεが得られるが、上述のように高い電圧保持率を得るためにはあまり好ましいとは言えないという問題点が存在した。
【0012】
さらにこれらの2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体は他の液晶化合物との相溶性において必ずしも良好ではないという問題点も存在した。そのために温度範囲の広い液晶組成物、特に低温で長時間保存しても結晶の析出や相分離を生じ難い液晶組成物を調製することは容易でなく、そのホモログ(側鎖アルキル基の炭素数だけが異なった同族体)等を加えて、非常に多種の化合物を混合することにより溶解性を高め、組成物の融点を低下させる必要があった。
【0013】
液晶組成物の融点を低下させるためには、骨格構造の異なる液晶化合物の添加が効果的であることはよく知られている。従って、広い温度範囲を有する液晶組成物の調製を容易とするために、従来化合物とは異なる骨格構造、特に液晶化合物に強い負の誘電率異方性を寄与でき、かつ2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン骨格とは異なる新しい骨格構造、例えばフッ素置換されたナフタレン構造(特許文献3、4及び5参照)あるいはテトラヒドロナフタレン構造(特許文献6及び7参照)を含み、他の液晶化合物との相溶性に優れ、その添加により、n型液晶としての特性を向上させ、かつ組成物の温度範囲を拡大できるような液晶性化合物が望まれていた。
【0014】
引用文献4にはこのフッ素置換されたナフタレン骨格を有する広範囲な一般式が示されているが、当該引用文献に記載の発明は元来スメクチック液晶である強誘電性液晶を目的としたもので、開示された化合物のの具体的な合成方法やその例、特にネマチック液晶組成物における物性及び電気光学特性の記載は全くなく、本願発明に対して何ら示唆を与えるものとは言い難い。
【0015】
一方、本発明者等による引用文献5には、フルオロナフタレン骨格を有する一連の化合物がその一般式とともに記載されている。しかし、当該引用文献に記載の発明はフルオロナフタレン骨格の一般的な効果とその用途を開示したものであり、トリフルオロナフタレン誘導体の中のどの化合物が、電圧保持率が高くかつ温度範囲の広いΔεが負の液晶組成物(n型組成物)の調製に特に好適であるかについては具体的には触れられていない。
【特許文献1】
特表平2−503441号公報
【特許文献2】
特表平10−176167号公報
【特許文献3】
独国特許出願公開第19522167号明細書
【特許文献4】
独国特許出願公開第19522195号明細書
【特許文献5】
特開2001−31597号公報
【特許文献6】
特開2001−40354号公報
【特許文献7】
独国特許出願公開第19522145号明細書
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来化合物とは異なる骨格である6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレン構造を含み、他の液晶化合物との相溶性に優れ、ネマチック相温度範囲が高温域まで広く、さらに分子内にアルコキシル基等の極性基を有しないにもかかわらず、絶対値の大きい負の誘電率異方性(Δε)を有する液晶性化合物を提供し、それを鍵成分とするΔεが負で温度範囲が広く、かつ電圧保持率の高い液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレン骨格を有する化合物が、その絶対値が大きい負のΔεを有し、ネマチック相温度範囲が高温域まで広いことに加えて、従来の液晶化合物との相溶性に非常に優れていること。そしてそれを用いることによってVA型等の液晶表示素子において低電圧駆動と高速応答に加えて、高い電圧保持率を達成できるような液晶組成物が調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち、一般式(1)
【化6】
(式中、Raは炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表し、pは0又は1を表し、Rbは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(5)
【0019】
【化7】
(式中、Rmは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表し、Rnは炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、m6は0又は1を表し、ML及びMmはそれぞれ独立的に単結合、−COO−又は−CH2CH2−を表し、Gはトランス−1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基を表す。)で表される化合物の1種又は2種以上を含有し、誘電率異方性が−3以下であることを特徴とする液晶組成物を提供し、それを用いた液晶表示素子を提供する。併せて一般式(1)で表される化合物を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本願発明における液晶組成物において、一般式(1)で表される化合物を含有するが、一般式(1)において、Raは炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表すが、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基が好ましく、エチル基、プロピル基又はブチル基がより好ましく、プロピル基がさらに好ましい。
pは0又は1を表し、p=0の場合には化合物(1)は2環(ナフタレン骨格を1環と数えて)性であり、TN−I(ネマチック相上限温度)は低くなるが、より低粘性であり、誘電率異方性の絶対値もより大きい。p=1の場合には化合物(1)は3環性であり、より高いTN−Iを示す。従って、組成物として温度範囲がより重要な場合にはp=1であることがより好ましく、その粘性がより重要な場合にはp=0であることがより好ましい。
【0021】
Rbは炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基を表すがエチル基又はプロピル基が好ましく、プロピル基が特に好ましい。また、シクロヘキサン環はトランス配置である。
【0022】
本発明の液晶組成物においては、一般式(5)で表される化合物を含有するが、一般式(5)において、Rmは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表すが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜5の1−アルケニル基、又は炭素原子数4〜5の3−アルケニル基が好ましく、直鎖状アルキル基としてはエチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基がより好ましく、1−アルケニル基としてはビニル基又はトランス−1−プロペニル基がより好ましく、3−アルケニル基としては3−ブテニル基又はトランス−3−ペンテニル基がより好ましい。Rnは炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜5の1−アルケニル基、炭素原子数4〜5の3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基が好ましく、特にCがトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表す場合にはエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基又はプロポキシ基が好ましく、Cが1個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基の場合、上記に加えてメトキシ基、エトキシ基、アリルオキシ基及びクロチルオキシ基も好ましい。m6は0又は1を表す。Ml及びMmはそれぞれ独立的に単結合、−COO−又は−CH2CH2−を表すが、Mlが存在する場合にはMl及びMmの少なくとも一方は単結合が好ましい。Gはトランス−1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基を表す。
【0023】
一般式(5)で表される化合物としては以下の一般式(5a)〜一般式(5m)で表される化合物が好ましく、一般式(5a)、一般式(5b)、一般式(5d)又は一般式(5e)で表される化合物が特に好ましい。
【化8】
【0024】
上式中、R7及びR8はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜3の1−アルケニル基又は炭素原子数4〜5の3−アルケニル基を表し、R9は炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3〜4の直鎖状2−アルケニル基を表し、R10は炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数4〜5の3−アルケニル基を表し、R11は炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3〜4の直鎖状2−アルケニル基を表す。
【0025】
本発明の液晶組成物においては一般式(1)で表される化合物を組成物中に1質量%(以下組成物中の%は質量%を表す)以上50%以下含有することが好ましく、2%〜40%含有することがより好ましく、4〜30%含有することがさらに好ましい。一般式(2)で表される化合物を1%〜50%含有することが好ましく、2%〜40%含有することがより好ましい。
【0026】
本発明の液晶組成物において一般式(2)
【化9】
【0027】
(式中、Rcは炭素原子数1〜7のアルキル基を表し、Rdは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、m1は0又は1を表し、Ma及びMbはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−、又は−COO−を表し、Bはトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表す。)で表される2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体の1種又は2種以上を含有していても良い。
【0028】
一般式(2)において、Rcは炭素原子数1〜7のアルキル基を表すが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基が好ましい。Rdは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシル基が好ましく、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基が特に好ましい。m1は0又は1を表す。Ma及びMbはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−、又は−COO−を表すが、一方は単結合であることが好ましく、他方は単結合、−CH2CH2−又は−COO−であることが好ましい。Bはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表すが、調製すべき液晶組成物の屈折率異方性(Δn)に応じて、小さいΔnが要求される場合にはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、大きいΔnが要求される場合には1,4−フェニレン基が好ましい。
【0029】
一般式(2)には非常に多くの化合物が含まれるが、以下の一般式(2a)〜一般式(2g)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化10】
上式中、R5は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表し、R6は炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基を表す。
【0031】
また、本発明の液晶組成物において、一般式(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)
【化11】
【0032】
(式中、Re、Rg、Ri及びRkは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表し、Rf、Rh、及びRlは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、Rjは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表し、m2、m3、m4及びm5は0又は1を表し、Mc及びMd、Me及びMf、Mh及びMi、Mj及びMkはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−又は−COO−を表し、C、D、E及びFはトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表す。ただし、(3a)において、一般式(1)で表される化合物は除かれる。)で表される化合物の1種又は2種以上を含有していても良い。
【0033】
一般式(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)において、Re、Rg、Ri及びRkは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表すが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基が好ましい。Rf、Rh、及びRlは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシル基が好ましく、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基及び炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基が特に好ましい。Rjは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表すが、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基が好ましい。m2、m3、m4及びm5は0又は1を表す。Mc及びMd、Me及びMf、Mh及びMi、Mj及びMkはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−又は−COO−を表すが、一方は単結合であることが好ましく、他方は単結合、−CH2CH2−又は−COO−であることが好ましい。C、D、E及びFはトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表すが、調製すべき液晶組成物の屈折率異方性(Δn)に応じて、小さいΔnが要求される場合にはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、大きいΔnが要求される場合には1,4−フェニレン基が好ましい。
【0034】
かくして得られる本願発明の液晶組成物においてそのネマチック相上限温度(TN−I)が70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、ネマチック相下限温度(T−N)が−20℃以下である。また、その誘電率異方性(Δε)は−3以下であるが、−3.5以下であることがより好ましく、−4以下がさらに好ましい。
【0035】
一般式(1)で表される化合物は一般式(6a)
【化12】
(式中、Rbは一般式(1)と同じ意味を表す。)で表される6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレンにアルキルリチウム(n−ブチルリチウムあるいはメチルリチウムが好ましい)を反応させてリチオ化し、得られた有機リチウム反応剤を一般式(7)
【化13】
(式中、Raは炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは0又は1を表し、シクロヘキシレン基はトランス配置である。)で表されるトランス−4−(トランス−4−アルキルシクロヘキシル)シクロヘキシルエタナールと反応させ、得られたアルコール誘導体を酸触媒存在下に脱水してエテニルナフタレン誘導体とし、これを水素添加することにより合成することができる。
【0036】
あるいは有機リチウム反応剤をヨウ素と反応させることにより、一般式(6b)
【化14】
(式中、Rbは一般式(1)と同じ意味を表す。)で表されるトリフルオロヨードナフタレン誘導体を得ることができる。これを遷移金属触媒存在下に、一般式(8)
【0037】
【化15】
(式中、Raは炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは0又は1を表し、シクロヘキシレン基はトランス配置である。)で表されるシクロヘキシルアセチレン誘導体と反応させ、得られたエチニルナフタレン誘導体を水素添加することにより得ることもできる。ここでトリフルオロヨードナフタレンに換えて、一般式(6b)においてヨウ素を臭素に置換した化合物、あるいはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基に置換した化合物を用いることもできる。
【0038】
6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレン(6a)のリチオ化及びシクロヘキシルシクロヘキサノンとの反応あるいはヨウ素との反応は溶媒中冷却下で行われる。溶媒としてはジイソプロピルエーテル(IPE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ヘキサンやヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPTA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等の非プロトン性極性溶媒あるいはこれらの混合溶媒が好適である。反応温度は−10℃から−100℃で実施されるが、−20℃〜−80℃が好ましく、−30〜−50℃がさらに好ましい。
【0039】
アルコール体の脱水は溶媒中、酸触媒存在下に実施されるが、溶媒としては、ヘキサンやヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒が好ましく、酸触媒としては硫酸等の鉱酸、p−トルエンスルホン酸、蟻酸等の有機酸、あるいは硫酸水素カリウム等の強酸の弱塩基塩が好ましい。反応は室温〜溶媒の還流下に加熱して実施されるが、溶媒としてベンゼンやトルエンを用いた場合に還流温度まで加熱すると、精製した水を溶媒との共沸により除去することが容易となるため、特に好ましい。
【0040】
エテニルナフタレン誘導体あるいはエチニルナフタレン誘導体の水素添加は溶媒中水素雰囲気下で、触媒存在下に冷却〜加熱下に実施される。溶媒としてはエタノール、メタノール、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチルエーテル、IPE、DME、THF等のエーテル類、ヘキサンやベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類等が好ましい。水素圧は常圧〜加圧下で実施され、常圧〜500MPaが好ましい。反応温度は0℃〜100℃が好ましいが、15℃〜50℃がより好ましい。用いる触媒としては活性炭に担持されたパラジウムや白金、ルテニウム等の貴金属類、あるいはラネーニッケル等のラネー触媒が好ましく、パラジウム及びラネーニッケルが特に好ましい。
【0041】
(6b)で表される化合物と(8)で表される化合物との反応における遷移金属触媒としてはテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等のパラジウム(0)錯体、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のパラジウム(II)錯体、塩化パラジウム等のパラジウム(II)塩、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等のニッケル(II)錯体等が好ましい。反応は銅(I)塩併用下に行うことが好ましく、特にヨウ化銅(I)を併用することが好ましい。反応は溶媒中で行われ、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のいわゆる極性溶媒が好ましく、通常はトリエチルアミン等のアミン系溶媒を併用することが好ましい。
【0042】
ここで出発原料として用いた一般式(6a)で表される化合物は液晶中間体として有用性の高い化合物であるが、この化合物は3,4,5−トリフルオロナフタレン−6−オール(この化合物は3,4−ジフルオロナフタレン−6−オールをフッ素化し、必要に応じて還元することにより得ることができる。)をトリフルオロメタンスルホン酸無水物によりトリフルオロメタンスルホン酸エステル(トリフラート)とし、次いでテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等の遷移金属触媒存在下に末端アルキンと反応させ、次いで三重結合を水素添加することにより得ることができる。末端アルキンは一般式(6)におけるRbにより異なるが、例えばRbがプロピル基の場合にはプロピン、ブチル基の場合には1−ブチン、ペンチル基の場合には1−ペンチンが用いられる。遷移金属反応触媒と反応溶媒は前述の(6b)で表される化合物と(8)で表される化合物との反応におけると同様である。
【0043】
かくして一般式(1)で表される化合物が製造されるが、一般式(1)で表される化合物は本発明者等が初めてその合成に成功し、その特性を明らかにした化合物であるが、前述のように広範な一般式としてこの化合物(1)を包含しうる報告例は存在している。
【0044】
引用文献4にはこのトリフルオロナフタレン骨格を有する広範囲な一般式が示されており、その一般式から部分構造を選択することによって化合物(1)を導くことも可能である。しかしながら、本特許は元来スメクチック液晶である強誘電性液晶を目的としたもので、ネマチック液晶についてはほとんど触れられておらず、特に本願発明の化合物(1)の具体的な合成例や、その物性及び電気光学特性の記載は全くなく、その製造方法すら開示されておらず、本願発明に対して何ら示唆を与えるものとは言い難い。
【0045】
一方、本願発明者等による引用文献5には、フルオロナフタレン骨格を有する一連の化合物がその一般式とともに記載されているが、本発明の一般式(1)で表される化合物の如く、6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレンの2位においてエチレン基を介してビシクロヘキサン環と連結した形の化合物は記載されていない。さらに、本公報にはトリフルオロナフタレン誘導体を用いたΔεが負の液晶組成物の調製例は記載されておらず、また本願発明のごとくトリフルオロナフタレン誘導体の中のどの化合物が、電圧保持率が高くかつ温度範囲の広いΔεが負の液晶組成物(n型組成物)の調製に特に好適であるかについては具体的には触れられていない。
【0046】
また、引用文献6にはフルオロナフタレン骨格を有する化合物を用いたΔεが負の液晶組成物の調製例が記載されているが、その構成化合物として本発明の一般式(1)で表される化合物は具体的には記載されていない。
【0047】
本願発明に於いてはフルオロナフタレン誘導体の中で、6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレンの2位においてエチレン基を介してシクロヘキサン環又はビシクロヘキサン環と結合した一般式(1)の構造を有し、かつ(1)においてRaが炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、Rbが炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基である化合物が、特に上記の液晶組成物の調製に有効であることを見いだしたものである。
【0048】
本発明はさらに、本発明の液晶組成物を使用した液晶表示素子、特に液晶TV用等に好適なVA(垂直配向)モードで表示される液晶表示素子を提供する。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また前述の通り、組成物における%は質量%を表す。
【0050】
(参考例) 6−プロピル−3,4,5−トリフルオロナフタレン(6a−1)の合成
【化16】
【0051】
4,5,6−トリフルオロナフタレン−3−オール8.5g(この化合物は2,3−ジフルオロフェニル酢酸クロリドに塩化アルミニウムとエチレンを反応させ,得られた5,6−ジフルオロテトラヒドロナフタレン−3−オンを臭素で芳香化し,次いで付加した臭素を接触還元で脱離させることにより得た)を130mLのジクロロメタンに溶解し、5℃で攪拌した。これに7.4mLのトリフルオロメタンスルホン酸無水物及びピリジン7.4mLを5〜10℃でゆっくり滴下し、さらに5℃で1時間攪拌した。
【0052】
水15mLをゆっくり加え、水層を分離後、有機層を10%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/20)で精製して、トリフラートの白色結晶13.2gを得た。
【0053】
この全量をDMF80mL及びトリエチルアミン20mLに溶解し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.92g、ヨウ化銅(I)0.3gを加え、プロピンを吹き込みながら、50℃で8時間攪拌した。
【0054】
室温に戻した後、トルエン150mLを加え、水80mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を溜去して得られた油状物を再度トルエン120mLに溶解し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(8%)32mL及び水32mLを加え、氷水冷下で2時間攪拌した。析出した結晶をセライト濾過した後、水層を分離し、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を溜去して、3,4,5−トリフルオロ−6−(1−プロピニル)ナフタレン8.0gを得た。
【0055】
この全量を400mLのTHFに溶解し、オートクレーブ中水素圧0.5MPa下において、20℃で4時間攪拌した。触媒を濾別した後、溶媒を溜去し、さらにフラッシュカラム(シリカゲル/ヘキサン)で精製して、6−プロピル−3,4,5−トリフルオロナフタレンの白色結晶7.3gを得た。
【0056】
(実施例1) 2−[2−[トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレン(1−a)の合成
【化17】
【0057】
参考例に従って得られた6−プロピル−3,4,5−トリフルオロナフタレン19.6gをTHF250mLに溶解し、窒素気流下−50℃に冷却、攪拌した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M)61mLを40分かけて滴下し、滴下終了後さらに1時間−50〜−40℃で攪拌した。この溶液にトランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンエタナール24.1gのTHF50mL溶液を−50〜−40℃で40分間かけて滴下した。滴下終了後2時間−50〜−40℃に保った後、−20℃まで攪拌下に昇温した。5%塩酸200mLと酢酸エチル100mL中に反応液を加えて30分攪拌し、相分離後、水層は酢酸エチル50mLで抽出した。有機層を併せて、水次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下に溶媒を溜去してアルコール体41.2gを得た。
【0058】
この全量をトルエン200mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸(1水和物)1.4gを加え、共沸する水を除去しながら、4時間加熱還流させた。室温まで放冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を溜去し、エタノールから再結晶させて得られたエテニルナフタレン誘導体36.5gを400mLのTHFに溶解し、5%パラジウム炭素(50%含水)1.7gとともにオートクレーブ中に加え、室温下水素圧0.5MPaで1時間接触還元した。触媒を濾別した後、溶媒を溜去して粗結晶37gを得た。これをアルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、さらにエタノールから2回再結晶させて、2−[2−[トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレンの白色結晶31gを得た。この化合物の融点は86℃で、加熱下187℃の高温域までネマチック相を示した。
IR(KBr): 3054,2923,2852,1627,1461,1348,1066,885,802cm−1
NMR(CDCl3):δ=0.80−1.34(m,22H),1.54−1.60(m,2H),1.66−1.77(m,8H),1.85−1.87(m,2H),2.75−2.83(m,4H),7.23(dd,J=8.4,6.4Hz,1H),7.35(d,J=6.4Hz,1H),7.44(dd,J=8.4,1.8Hz,1H)
【0059】
(実施例2) 2−[2−(トランス−4−プロピル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレン(1−b)の合成
【化18】
実施例1において、トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンエタナールに換えて、トランス−4−プロピルシクロヘキサンエタナールを用いた他は同様にして、2−[2−(トランス−4−プロピル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレンの白色結晶を得た。この化合物の融点は47.5℃で、冷却下27℃以下でネマチック相を示した。
【0060】
IR(KBr): 2956,2842,1627,1459,1344,1270,1157,1037,887,802,769cm−1
NMR(CDCl3):δ=0.82−1.03(m,10H),1.13−1.36(m,6H),1.54−1.85(m,8H),2.70−2.82(m,4H),7.23(dd,J=8.4,6.4Hz,1H),7.34(d,J=6.4Hz,1H),7.43(dd,J=8.4,2.0Hz,1H)
【0061】
(実施例3)n型液晶組成物の調製(1)
以下の化合物からなる非極性の標準母体液晶組成物(Ma)を調製した。
【化19】
【0062】
(Ma)のネマチック相上限温度(TN−I)は103.0℃であった。20℃でその物性値を測定したところ、屈折率異方性(Δn)は0.0983、誘電率異方性(Δε)は0.04であった。また、回転粘度は15.6(mPa・s)であった。
【0063】
次にこの(Ma)の80%と実施例1で得られた式(1−a)で表される化合物20%からなる液晶組成物(M−1)を調製した。
この(M−1)は120.9℃以下でネマチック相を示した。これを0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.1068、Δεは−0.67であった。以上から外挿した式(1−a)で表される化合物のΔnは0.137であり、Δεは−3.5と分子内にアルコキシル基のような極性基を有さないにもかかわらず、強いn型の化合物であることが確認できた。また、この組成物の粘度は23.3(mPa・s)で比較的低粘性であった。
【0064】
(比較例1)
これに対して、(Ma)の80%と式(2c−1)で表される化合物20%からなる液晶組成物(R−1)を調製した。
【化20】
この(R−1)のネマチック相上限温度(TN−I)は109.5℃であり、(M−1)と比較して約9°も低くなった。しかしも−20℃で放置したところ、3日以内に結晶の析出が観察された。また20℃で測定した物性値は、Δnが0.099と(M−1)よりやや小さく、Δεは−0.37とその絶対値が(M−1)の約1/2と小さくなった。
【0065】
以上から、比較例1記載の式(2c−1)で表される化合物は本発明の式(1−a)で表される化合物と比較して、Δεの絶対値がより小さく、またネマチック相温度範囲が狭く従来液晶との相溶性や低温での安定性に於いても劣っていることがわかる。
【0066】
(実施例4)n型液晶組成物の調製(2)
(Ma)の80%と実施例2で得られた式(1−b)で表される化合物20%からなる液晶組成物(M−2)を調製した。
この(M−2)のTN−Iは87.5℃以下と(M−1)と比較すると低くなったが、これを0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.1028で(M−1)よりやや小さくなり、Δεは−0.78とその絶対値が(M−1)より大きくなった。以上から外挿した式(1−a)で表される化合物のΔnは0.119であり、Δεは−4.1とさらに強いn型の化合物であることが確認できた。また、この組成物の粘度は20.2(mPa・s)で低粘性であった。
【0067】
(実施例5)n型液晶組成物の調製(3)
(Ma)の20%、式(1−a)で表される化合物25%、式(2c−1)で表される化合物15%、式(2a−1)
【化21】
【0068】
で表される化合物30%、及び式(2c−2)
【化22】
で表される化合物化合物10%からなる液晶組成物(M−3)を調製した。この(M−3)は85.5℃以下で安定にネマチック相を示し、−20℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.098、Δεは−3.02であった。またこの組成物の粘度は33(mPa・s)で実用的なn型の液晶材料として好適であった。
【0069】
(実施例6)n型液晶組成物の調製(4)
以下の化合物からなる非極性の母体液晶組成物(Mb)を調製した。
【化23】
(Mb)のネマチック相上限温度(TN−I)は60℃であった。20℃でその物性値を測定したところ、屈折率異方性(Δn)は0.050、誘電率異方性(Δε)は0.03であった。また、回転粘度は4.0(mPa・s)であった。
【0070】
この(Mb)の40%、式(1−a)で表される化合物20%、及び(3a−1)
【化24】
で表される化合物化合物20%、及び式(3a−2)で表される化合物20%
【化25】
からなる液晶組成物(M−4)を調製した。この(M−4)は117℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.110、Δεは−3.73であった。またこの組成物の粘度は35(mPa・s)と実用的なn型の液晶材料として好適であった。
【0071】
(実施例7)n型液晶組成物の調製(5)
(Ma)の20%、(Mb)の10%、式(1−a)で表される化合物20%、式(2a−1)で表される化合物10%、式(2c−1)で表される化合物10%、式(3a−1)で表される化合物20%及び式(3a−2)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−4)を調製した。この(M−4)は109℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.115、Δεは−4.01であった。またこの組成物の粘度は36(mPa・s)とΔεの絶対値が大きい割には比較的低粘性であり、実用的なn型の液晶材料として好適であった。
【0072】
(実施例8)n型液晶組成物の調製(6)
(Ma)の20%、(Mb)の20%、式(1−a)で表される化合物25%、式(3a−1)で表される化合物25%及び式(3a−2)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−5)を調製した。この(M−5)は118℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.118、Δεは−3.65であった。またこの組成物の粘度は34(mPa・s)とΔεの絶対値が大きい割には比較的低粘性であり、実用的なn型の液晶材料として好適であった
【0073】
(実施例9)n型液晶組成物の調製(7)
(Mb)の23%、式(1−a)で表される化合物19%、式(1−b)で表される化合物20%、及び式(3a−3)
【化26】
で表される化合物20%、及び式(3a−4)で表される化合物18%
【0074】
【化27】
からなる液晶組成物(M−7)を調製した。この(M−7)は89℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.115、Δεは−3.02であった。またこの組成物の粘度は57(mPa・s)であった。この組成物は極性基としてエーテル酸素を有する化合物を全く用いておらず、高い信頼性が得られる実用的なn型の液晶材料として好適であった
【0075】
(実施例10)表示素子の作成(1)
実施例5で得られた液晶組成物(M−3)を透明電極(片側の電極はジグザグ状に配列)を備え、垂直配向処理を施したセル厚3.5μmのVA表示用セルに充填し、VA表示素子を作成した。この素子に電界を印加して25℃におけるその電気光学特性を測定したところ、暗視野から明視野への閾値電圧(Vth)は3.3Vであった。次に5V印加時の応答時間を測定したところ、立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)の和は30m秒であった。また、この素子の70℃における電圧保持率(HR)を測定したところ、87%であった。同様の条件で測定した非極性の母体液晶(Ma)のHRが90%であったので、この値は充分に高いものと判断できる。
【0076】
(実施例11)表示素子の作成(2)
実施例7で得られた(M−5)を用いて同様にしてVA表示素子を作成し、その電気光学特性(25℃)を測定したところ、閾値電圧(Vth)は3.0Vでありより低電圧駆動が可能であることが確認できた。また、5V印加時の応答時間(立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)の和)は35m秒であった。さらに70℃における電圧保持率(HR)は87%であった。
【0077】
(実施例12)表示素子の作成(3)
実施例9で得られた(M−7)を用いて同様にしてVA表示素子を作成し、その電気光学特性(25℃)を測定したところ、閾値電圧(Vth)は3.6Vでやや高く、その5V印加時の応答時間(立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)の和)も45m秒とやや遅かった。しかしながら、70℃における電圧保持率(HR)は90%と非極性の母体液晶(Mb)と同じ高い値であった。
【0078】
【発明の効果】
本発明の液晶化合物の組み合わせによって、絶対値の大きい負の誘電率異方性と広いネマチック温度範囲を有し、かつ好適な屈折率異方性を有する液晶組成物が得られた。この組成物を用いることにより、高温域まで高い電圧保持率を維持できる信頼性に優れた液晶表示素子が提供され、このディスプレイはVA方式やECB方式、IPS方式等の、特にVA方式のアクティブマトリックス駆動液晶ディスプレイとして非常に実用的である。
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な、トリフルオロナフタレン誘導体を含有する誘電率異方性が負でその絶対値が大きい液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としても従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、単純マトリックス方式、最近ではTFT(薄膜トランジスタ)やMIMにより駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式が主流となっている。
【0003】
これらの表示方式において、IPS型、ECB型、VA型、あるいはCSH型等は現在汎用のTN型やSTN型と異なり、誘電率異方性(Δε)が負の、いわゆるn型の液晶材料を用いるという特徴を有する。これらの中で特にAM駆動によるVA型表示は、高速で広視野角の要求される表示素子、例えばテレビ等への応用において、現在最も期待されているものである。
【0004】
液晶材料としては、これまでにも非常に多種類の化合物が合成されてきており、その表示方式や駆動方式あるいはその用途に応じて使用されているが、上記のVA型等の表示方式に用いられるn型の液晶材料についてはそれほど多くの化合物が知られているわけではない。VA型等の表示方式においても通常の表示方式と同様に、低電圧駆動や高速応答に加えて、広い作動温度範囲が要求される。またセル厚等に合わせた適当な屈折率異方性(Δn)も要求される訳であるが、特にアクティブマトリックス駆動に用いられるn型の液晶材料は分子内に2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基を有する化合物(特許文献1参照)が多用されている。
【0005】
アクティブマトリックス駆動させるためには、液晶材料に高い電圧保持率が要求される。個々の化合物の化学構造と、電圧保持率との関係は完全に解明されたとは言い難いが、分子内にシアノ基やエステル結合など極性の非常に強い基を有する化合物では高い電圧保持率が得られ難く、エーテル結合でも好ましくない場合が多い。低駆動電圧化の必要性から誘電率異方性の絶対値を大きくしようとすると、極性基の存在は必要であり、このため化合物の分子設計は大きく制約を受けているのが実情である。
【0006】
駆動電圧を低減させるためには、液晶組成物の誘電率異方性(Δε)の絶対値がなるべく大きいことが重要である。上記VA表示においてはそのΔεは−3以下望ましくは−3.5以下さらに好ましくは−4以下であることが好ましい。従って、n型の液晶化合物としては単独では少なくとも−4以下のΔεを有するものが必要である。
【0007】
作動温度範囲としてはネマチック相上限温度(TN−I)が少なくとも70℃以上であることが好ましく、ネマチック相下限温度(T−N)が少なくとも−20℃以下であることが好ましい。
【0008】
またセルの構成(セル厚や表示モード等)にも依存するが、Δnは通常0.08〜0.10程度が要求されることが多い。
【0009】
また、応答の高速化のために液晶材料の粘性をなるべく小さくすることも重要である。
【0010】
これらの要求特性を単独で満足できるような液晶化合物は存在せず、従って液晶材料は上記の2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体を主として多くの液晶化合物から調製される液晶組成物(特許文献2参照)が用いられてきたのが現状である。
【0011】
ところが、これまで知られている2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体のほとんどは他の環構造としてトランス−1,4−シクロヘキシレン基及び1,4−フェニレン基を有する化合物であるが、その1位及び4位がともに炭素原子と連結した構造を有する場合には−2〜−3程度のΔεしか示さない。より絶対値の大きいΔεを得るためにはその1位あるいは4位に酸素原子がエーテル結合で連結することが必要であり、その場合には−4〜−5のΔεが得られるが、上述のように高い電圧保持率を得るためにはあまり好ましいとは言えないという問題点が存在した。
【0012】
さらにこれらの2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体は他の液晶化合物との相溶性において必ずしも良好ではないという問題点も存在した。そのために温度範囲の広い液晶組成物、特に低温で長時間保存しても結晶の析出や相分離を生じ難い液晶組成物を調製することは容易でなく、そのホモログ(側鎖アルキル基の炭素数だけが異なった同族体)等を加えて、非常に多種の化合物を混合することにより溶解性を高め、組成物の融点を低下させる必要があった。
【0013】
液晶組成物の融点を低下させるためには、骨格構造の異なる液晶化合物の添加が効果的であることはよく知られている。従って、広い温度範囲を有する液晶組成物の調製を容易とするために、従来化合物とは異なる骨格構造、特に液晶化合物に強い負の誘電率異方性を寄与でき、かつ2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン骨格とは異なる新しい骨格構造、例えばフッ素置換されたナフタレン構造(特許文献3、4及び5参照)あるいはテトラヒドロナフタレン構造(特許文献6及び7参照)を含み、他の液晶化合物との相溶性に優れ、その添加により、n型液晶としての特性を向上させ、かつ組成物の温度範囲を拡大できるような液晶性化合物が望まれていた。
【0014】
引用文献4にはこのフッ素置換されたナフタレン骨格を有する広範囲な一般式が示されているが、当該引用文献に記載の発明は元来スメクチック液晶である強誘電性液晶を目的としたもので、開示された化合物のの具体的な合成方法やその例、特にネマチック液晶組成物における物性及び電気光学特性の記載は全くなく、本願発明に対して何ら示唆を与えるものとは言い難い。
【0015】
一方、本発明者等による引用文献5には、フルオロナフタレン骨格を有する一連の化合物がその一般式とともに記載されている。しかし、当該引用文献に記載の発明はフルオロナフタレン骨格の一般的な効果とその用途を開示したものであり、トリフルオロナフタレン誘導体の中のどの化合物が、電圧保持率が高くかつ温度範囲の広いΔεが負の液晶組成物(n型組成物)の調製に特に好適であるかについては具体的には触れられていない。
【特許文献1】
特表平2−503441号公報
【特許文献2】
特表平10−176167号公報
【特許文献3】
独国特許出願公開第19522167号明細書
【特許文献4】
独国特許出願公開第19522195号明細書
【特許文献5】
特開2001−31597号公報
【特許文献6】
特開2001−40354号公報
【特許文献7】
独国特許出願公開第19522145号明細書
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来化合物とは異なる骨格である6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレン構造を含み、他の液晶化合物との相溶性に優れ、ネマチック相温度範囲が高温域まで広く、さらに分子内にアルコキシル基等の極性基を有しないにもかかわらず、絶対値の大きい負の誘電率異方性(Δε)を有する液晶性化合物を提供し、それを鍵成分とするΔεが負で温度範囲が広く、かつ電圧保持率の高い液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレン骨格を有する化合物が、その絶対値が大きい負のΔεを有し、ネマチック相温度範囲が高温域まで広いことに加えて、従来の液晶化合物との相溶性に非常に優れていること。そしてそれを用いることによってVA型等の液晶表示素子において低電圧駆動と高速応答に加えて、高い電圧保持率を達成できるような液晶組成物が調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち、一般式(1)
【化6】
(式中、Raは炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表し、pは0又は1を表し、Rbは炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(5)
【0019】
【化7】
(式中、Rmは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表し、Rnは炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、m6は0又は1を表し、ML及びMmはそれぞれ独立的に単結合、−COO−又は−CH2CH2−を表し、Gはトランス−1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基を表す。)で表される化合物の1種又は2種以上を含有し、誘電率異方性が−3以下であることを特徴とする液晶組成物を提供し、それを用いた液晶表示素子を提供する。併せて一般式(1)で表される化合物を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本願発明における液晶組成物において、一般式(1)で表される化合物を含有するが、一般式(1)において、Raは炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表すが、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基が好ましく、エチル基、プロピル基又はブチル基がより好ましく、プロピル基がさらに好ましい。
pは0又は1を表し、p=0の場合には化合物(1)は2環(ナフタレン骨格を1環と数えて)性であり、TN−I(ネマチック相上限温度)は低くなるが、より低粘性であり、誘電率異方性の絶対値もより大きい。p=1の場合には化合物(1)は3環性であり、より高いTN−Iを示す。従って、組成物として温度範囲がより重要な場合にはp=1であることがより好ましく、その粘性がより重要な場合にはp=0であることがより好ましい。
【0021】
Rbは炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基を表すがエチル基又はプロピル基が好ましく、プロピル基が特に好ましい。また、シクロヘキサン環はトランス配置である。
【0022】
本発明の液晶組成物においては、一般式(5)で表される化合物を含有するが、一般式(5)において、Rmは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表すが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜5の1−アルケニル基、又は炭素原子数4〜5の3−アルケニル基が好ましく、直鎖状アルキル基としてはエチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基がより好ましく、1−アルケニル基としてはビニル基又はトランス−1−プロペニル基がより好ましく、3−アルケニル基としては3−ブテニル基又はトランス−3−ペンテニル基がより好ましい。Rnは炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜5の1−アルケニル基、炭素原子数4〜5の3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基が好ましく、特にCがトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表す場合にはエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基又はプロポキシ基が好ましく、Cが1個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基の場合、上記に加えてメトキシ基、エトキシ基、アリルオキシ基及びクロチルオキシ基も好ましい。m6は0又は1を表す。Ml及びMmはそれぞれ独立的に単結合、−COO−又は−CH2CH2−を表すが、Mlが存在する場合にはMl及びMmの少なくとも一方は単結合が好ましい。Gはトランス−1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基を表す。
【0023】
一般式(5)で表される化合物としては以下の一般式(5a)〜一般式(5m)で表される化合物が好ましく、一般式(5a)、一般式(5b)、一般式(5d)又は一般式(5e)で表される化合物が特に好ましい。
【化8】
【0024】
上式中、R7及びR8はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜3の1−アルケニル基又は炭素原子数4〜5の3−アルケニル基を表し、R9は炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3〜4の直鎖状2−アルケニル基を表し、R10は炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数4〜5の3−アルケニル基を表し、R11は炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3〜4の直鎖状2−アルケニル基を表す。
【0025】
本発明の液晶組成物においては一般式(1)で表される化合物を組成物中に1質量%(以下組成物中の%は質量%を表す)以上50%以下含有することが好ましく、2%〜40%含有することがより好ましく、4〜30%含有することがさらに好ましい。一般式(2)で表される化合物を1%〜50%含有することが好ましく、2%〜40%含有することがより好ましい。
【0026】
本発明の液晶組成物において一般式(2)
【化9】
【0027】
(式中、Rcは炭素原子数1〜7のアルキル基を表し、Rdは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、m1は0又は1を表し、Ma及びMbはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−、又は−COO−を表し、Bはトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表す。)で表される2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン誘導体の1種又は2種以上を含有していても良い。
【0028】
一般式(2)において、Rcは炭素原子数1〜7のアルキル基を表すが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基が好ましい。Rdは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシル基が好ましく、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基が特に好ましい。m1は0又は1を表す。Ma及びMbはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−、又は−COO−を表すが、一方は単結合であることが好ましく、他方は単結合、−CH2CH2−又は−COO−であることが好ましい。Bはトランス−1,4−シクロヘキシレン基、あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表すが、調製すべき液晶組成物の屈折率異方性(Δn)に応じて、小さいΔnが要求される場合にはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、大きいΔnが要求される場合には1,4−フェニレン基が好ましい。
【0029】
一般式(2)には非常に多くの化合物が含まれるが、以下の一般式(2a)〜一般式(2g)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化10】
上式中、R5は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表し、R6は炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基又は炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基を表す。
【0031】
また、本発明の液晶組成物において、一般式(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)
【化11】
【0032】
(式中、Re、Rg、Ri及びRkは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表し、Rf、Rh、及びRlは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、Rjは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表し、m2、m3、m4及びm5は0又は1を表し、Mc及びMd、Me及びMf、Mh及びMi、Mj及びMkはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−又は−COO−を表し、C、D、E及びFはトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表す。ただし、(3a)において、一般式(1)で表される化合物は除かれる。)で表される化合物の1種又は2種以上を含有していても良い。
【0033】
一般式(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)において、Re、Rg、Ri及びRkは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表すが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基が好ましい。Rf、Rh、及びRlは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシル基が好ましく、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基及び炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基が特に好ましい。Rjは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基を表すが、炭素原子数1〜3の直鎖状アルキル基が好ましい。m2、m3、m4及びm5は0又は1を表す。Mc及びMd、Me及びMf、Mh及びMi、Mj及びMkはそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−OCF2−、−CF2O−又は−COO−を表すが、一方は単結合であることが好ましく、他方は単結合、−CH2CH2−又は−COO−であることが好ましい。C、D、E及びFはトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表すが、調製すべき液晶組成物の屈折率異方性(Δn)に応じて、小さいΔnが要求される場合にはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、大きいΔnが要求される場合には1,4−フェニレン基が好ましい。
【0034】
かくして得られる本願発明の液晶組成物においてそのネマチック相上限温度(TN−I)が70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、ネマチック相下限温度(T−N)が−20℃以下である。また、その誘電率異方性(Δε)は−3以下であるが、−3.5以下であることがより好ましく、−4以下がさらに好ましい。
【0035】
一般式(1)で表される化合物は一般式(6a)
【化12】
(式中、Rbは一般式(1)と同じ意味を表す。)で表される6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレンにアルキルリチウム(n−ブチルリチウムあるいはメチルリチウムが好ましい)を反応させてリチオ化し、得られた有機リチウム反応剤を一般式(7)
【化13】
(式中、Raは炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは0又は1を表し、シクロヘキシレン基はトランス配置である。)で表されるトランス−4−(トランス−4−アルキルシクロヘキシル)シクロヘキシルエタナールと反応させ、得られたアルコール誘導体を酸触媒存在下に脱水してエテニルナフタレン誘導体とし、これを水素添加することにより合成することができる。
【0036】
あるいは有機リチウム反応剤をヨウ素と反応させることにより、一般式(6b)
【化14】
(式中、Rbは一般式(1)と同じ意味を表す。)で表されるトリフルオロヨードナフタレン誘導体を得ることができる。これを遷移金属触媒存在下に、一般式(8)
【0037】
【化15】
(式中、Raは炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基を表し、pは0又は1を表し、シクロヘキシレン基はトランス配置である。)で表されるシクロヘキシルアセチレン誘導体と反応させ、得られたエチニルナフタレン誘導体を水素添加することにより得ることもできる。ここでトリフルオロヨードナフタレンに換えて、一般式(6b)においてヨウ素を臭素に置換した化合物、あるいはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基に置換した化合物を用いることもできる。
【0038】
6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレン(6a)のリチオ化及びシクロヘキシルシクロヘキサノンとの反応あるいはヨウ素との反応は溶媒中冷却下で行われる。溶媒としてはジイソプロピルエーテル(IPE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ヘキサンやヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPTA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等の非プロトン性極性溶媒あるいはこれらの混合溶媒が好適である。反応温度は−10℃から−100℃で実施されるが、−20℃〜−80℃が好ましく、−30〜−50℃がさらに好ましい。
【0039】
アルコール体の脱水は溶媒中、酸触媒存在下に実施されるが、溶媒としては、ヘキサンやヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒が好ましく、酸触媒としては硫酸等の鉱酸、p−トルエンスルホン酸、蟻酸等の有機酸、あるいは硫酸水素カリウム等の強酸の弱塩基塩が好ましい。反応は室温〜溶媒の還流下に加熱して実施されるが、溶媒としてベンゼンやトルエンを用いた場合に還流温度まで加熱すると、精製した水を溶媒との共沸により除去することが容易となるため、特に好ましい。
【0040】
エテニルナフタレン誘導体あるいはエチニルナフタレン誘導体の水素添加は溶媒中水素雰囲気下で、触媒存在下に冷却〜加熱下に実施される。溶媒としてはエタノール、メタノール、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチルエーテル、IPE、DME、THF等のエーテル類、ヘキサンやベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類等が好ましい。水素圧は常圧〜加圧下で実施され、常圧〜500MPaが好ましい。反応温度は0℃〜100℃が好ましいが、15℃〜50℃がより好ましい。用いる触媒としては活性炭に担持されたパラジウムや白金、ルテニウム等の貴金属類、あるいはラネーニッケル等のラネー触媒が好ましく、パラジウム及びラネーニッケルが特に好ましい。
【0041】
(6b)で表される化合物と(8)で表される化合物との反応における遷移金属触媒としてはテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等のパラジウム(0)錯体、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のパラジウム(II)錯体、塩化パラジウム等のパラジウム(II)塩、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等のニッケル(II)錯体等が好ましい。反応は銅(I)塩併用下に行うことが好ましく、特にヨウ化銅(I)を併用することが好ましい。反応は溶媒中で行われ、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のいわゆる極性溶媒が好ましく、通常はトリエチルアミン等のアミン系溶媒を併用することが好ましい。
【0042】
ここで出発原料として用いた一般式(6a)で表される化合物は液晶中間体として有用性の高い化合物であるが、この化合物は3,4,5−トリフルオロナフタレン−6−オール(この化合物は3,4−ジフルオロナフタレン−6−オールをフッ素化し、必要に応じて還元することにより得ることができる。)をトリフルオロメタンスルホン酸無水物によりトリフルオロメタンスルホン酸エステル(トリフラート)とし、次いでテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等の遷移金属触媒存在下に末端アルキンと反応させ、次いで三重結合を水素添加することにより得ることができる。末端アルキンは一般式(6)におけるRbにより異なるが、例えばRbがプロピル基の場合にはプロピン、ブチル基の場合には1−ブチン、ペンチル基の場合には1−ペンチンが用いられる。遷移金属反応触媒と反応溶媒は前述の(6b)で表される化合物と(8)で表される化合物との反応におけると同様である。
【0043】
かくして一般式(1)で表される化合物が製造されるが、一般式(1)で表される化合物は本発明者等が初めてその合成に成功し、その特性を明らかにした化合物であるが、前述のように広範な一般式としてこの化合物(1)を包含しうる報告例は存在している。
【0044】
引用文献4にはこのトリフルオロナフタレン骨格を有する広範囲な一般式が示されており、その一般式から部分構造を選択することによって化合物(1)を導くことも可能である。しかしながら、本特許は元来スメクチック液晶である強誘電性液晶を目的としたもので、ネマチック液晶についてはほとんど触れられておらず、特に本願発明の化合物(1)の具体的な合成例や、その物性及び電気光学特性の記載は全くなく、その製造方法すら開示されておらず、本願発明に対して何ら示唆を与えるものとは言い難い。
【0045】
一方、本願発明者等による引用文献5には、フルオロナフタレン骨格を有する一連の化合物がその一般式とともに記載されているが、本発明の一般式(1)で表される化合物の如く、6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレンの2位においてエチレン基を介してビシクロヘキサン環と連結した形の化合物は記載されていない。さらに、本公報にはトリフルオロナフタレン誘導体を用いたΔεが負の液晶組成物の調製例は記載されておらず、また本願発明のごとくトリフルオロナフタレン誘導体の中のどの化合物が、電圧保持率が高くかつ温度範囲の広いΔεが負の液晶組成物(n型組成物)の調製に特に好適であるかについては具体的には触れられていない。
【0046】
また、引用文献6にはフルオロナフタレン骨格を有する化合物を用いたΔεが負の液晶組成物の調製例が記載されているが、その構成化合物として本発明の一般式(1)で表される化合物は具体的には記載されていない。
【0047】
本願発明に於いてはフルオロナフタレン誘導体の中で、6−アルキル−3,4,5−トリフルオロナフタレンの2位においてエチレン基を介してシクロヘキサン環又はビシクロヘキサン環と結合した一般式(1)の構造を有し、かつ(1)においてRaが炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、Rbが炭素原子数2〜5の直鎖状アルキル基である化合物が、特に上記の液晶組成物の調製に有効であることを見いだしたものである。
【0048】
本発明はさらに、本発明の液晶組成物を使用した液晶表示素子、特に液晶TV用等に好適なVA(垂直配向)モードで表示される液晶表示素子を提供する。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また前述の通り、組成物における%は質量%を表す。
【0050】
(参考例) 6−プロピル−3,4,5−トリフルオロナフタレン(6a−1)の合成
【化16】
【0051】
4,5,6−トリフルオロナフタレン−3−オール8.5g(この化合物は2,3−ジフルオロフェニル酢酸クロリドに塩化アルミニウムとエチレンを反応させ,得られた5,6−ジフルオロテトラヒドロナフタレン−3−オンを臭素で芳香化し,次いで付加した臭素を接触還元で脱離させることにより得た)を130mLのジクロロメタンに溶解し、5℃で攪拌した。これに7.4mLのトリフルオロメタンスルホン酸無水物及びピリジン7.4mLを5〜10℃でゆっくり滴下し、さらに5℃で1時間攪拌した。
【0052】
水15mLをゆっくり加え、水層を分離後、有機層を10%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/20)で精製して、トリフラートの白色結晶13.2gを得た。
【0053】
この全量をDMF80mL及びトリエチルアミン20mLに溶解し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.92g、ヨウ化銅(I)0.3gを加え、プロピンを吹き込みながら、50℃で8時間攪拌した。
【0054】
室温に戻した後、トルエン150mLを加え、水80mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を溜去して得られた油状物を再度トルエン120mLに溶解し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(8%)32mL及び水32mLを加え、氷水冷下で2時間攪拌した。析出した結晶をセライト濾過した後、水層を分離し、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を溜去して、3,4,5−トリフルオロ−6−(1−プロピニル)ナフタレン8.0gを得た。
【0055】
この全量を400mLのTHFに溶解し、オートクレーブ中水素圧0.5MPa下において、20℃で4時間攪拌した。触媒を濾別した後、溶媒を溜去し、さらにフラッシュカラム(シリカゲル/ヘキサン)で精製して、6−プロピル−3,4,5−トリフルオロナフタレンの白色結晶7.3gを得た。
【0056】
(実施例1) 2−[2−[トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレン(1−a)の合成
【化17】
【0057】
参考例に従って得られた6−プロピル−3,4,5−トリフルオロナフタレン19.6gをTHF250mLに溶解し、窒素気流下−50℃に冷却、攪拌した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M)61mLを40分かけて滴下し、滴下終了後さらに1時間−50〜−40℃で攪拌した。この溶液にトランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンエタナール24.1gのTHF50mL溶液を−50〜−40℃で40分間かけて滴下した。滴下終了後2時間−50〜−40℃に保った後、−20℃まで攪拌下に昇温した。5%塩酸200mLと酢酸エチル100mL中に反応液を加えて30分攪拌し、相分離後、水層は酢酸エチル50mLで抽出した。有機層を併せて、水次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下に溶媒を溜去してアルコール体41.2gを得た。
【0058】
この全量をトルエン200mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸(1水和物)1.4gを加え、共沸する水を除去しながら、4時間加熱還流させた。室温まで放冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を溜去し、エタノールから再結晶させて得られたエテニルナフタレン誘導体36.5gを400mLのTHFに溶解し、5%パラジウム炭素(50%含水)1.7gとともにオートクレーブ中に加え、室温下水素圧0.5MPaで1時間接触還元した。触媒を濾別した後、溶媒を溜去して粗結晶37gを得た。これをアルミナカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、さらにエタノールから2回再結晶させて、2−[2−[トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレンの白色結晶31gを得た。この化合物の融点は86℃で、加熱下187℃の高温域までネマチック相を示した。
IR(KBr): 3054,2923,2852,1627,1461,1348,1066,885,802cm−1
NMR(CDCl3):δ=0.80−1.34(m,22H),1.54−1.60(m,2H),1.66−1.77(m,8H),1.85−1.87(m,2H),2.75−2.83(m,4H),7.23(dd,J=8.4,6.4Hz,1H),7.35(d,J=6.4Hz,1H),7.44(dd,J=8.4,1.8Hz,1H)
【0059】
(実施例2) 2−[2−(トランス−4−プロピル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレン(1−b)の合成
【化18】
実施例1において、トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンエタナールに換えて、トランス−4−プロピルシクロヘキサンエタナールを用いた他は同様にして、2−[2−(トランス−4−プロピル)シクロヘキシル]エチル−3,4,5−トリフルオロ−6−プロピルナフタレンの白色結晶を得た。この化合物の融点は47.5℃で、冷却下27℃以下でネマチック相を示した。
【0060】
IR(KBr): 2956,2842,1627,1459,1344,1270,1157,1037,887,802,769cm−1
NMR(CDCl3):δ=0.82−1.03(m,10H),1.13−1.36(m,6H),1.54−1.85(m,8H),2.70−2.82(m,4H),7.23(dd,J=8.4,6.4Hz,1H),7.34(d,J=6.4Hz,1H),7.43(dd,J=8.4,2.0Hz,1H)
【0061】
(実施例3)n型液晶組成物の調製(1)
以下の化合物からなる非極性の標準母体液晶組成物(Ma)を調製した。
【化19】
【0062】
(Ma)のネマチック相上限温度(TN−I)は103.0℃であった。20℃でその物性値を測定したところ、屈折率異方性(Δn)は0.0983、誘電率異方性(Δε)は0.04であった。また、回転粘度は15.6(mPa・s)であった。
【0063】
次にこの(Ma)の80%と実施例1で得られた式(1−a)で表される化合物20%からなる液晶組成物(M−1)を調製した。
この(M−1)は120.9℃以下でネマチック相を示した。これを0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.1068、Δεは−0.67であった。以上から外挿した式(1−a)で表される化合物のΔnは0.137であり、Δεは−3.5と分子内にアルコキシル基のような極性基を有さないにもかかわらず、強いn型の化合物であることが確認できた。また、この組成物の粘度は23.3(mPa・s)で比較的低粘性であった。
【0064】
(比較例1)
これに対して、(Ma)の80%と式(2c−1)で表される化合物20%からなる液晶組成物(R−1)を調製した。
【化20】
この(R−1)のネマチック相上限温度(TN−I)は109.5℃であり、(M−1)と比較して約9°も低くなった。しかしも−20℃で放置したところ、3日以内に結晶の析出が観察された。また20℃で測定した物性値は、Δnが0.099と(M−1)よりやや小さく、Δεは−0.37とその絶対値が(M−1)の約1/2と小さくなった。
【0065】
以上から、比較例1記載の式(2c−1)で表される化合物は本発明の式(1−a)で表される化合物と比較して、Δεの絶対値がより小さく、またネマチック相温度範囲が狭く従来液晶との相溶性や低温での安定性に於いても劣っていることがわかる。
【0066】
(実施例4)n型液晶組成物の調製(2)
(Ma)の80%と実施例2で得られた式(1−b)で表される化合物20%からなる液晶組成物(M−2)を調製した。
この(M−2)のTN−Iは87.5℃以下と(M−1)と比較すると低くなったが、これを0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.1028で(M−1)よりやや小さくなり、Δεは−0.78とその絶対値が(M−1)より大きくなった。以上から外挿した式(1−a)で表される化合物のΔnは0.119であり、Δεは−4.1とさらに強いn型の化合物であることが確認できた。また、この組成物の粘度は20.2(mPa・s)で低粘性であった。
【0067】
(実施例5)n型液晶組成物の調製(3)
(Ma)の20%、式(1−a)で表される化合物25%、式(2c−1)で表される化合物15%、式(2a−1)
【化21】
【0068】
で表される化合物30%、及び式(2c−2)
【化22】
で表される化合物化合物10%からなる液晶組成物(M−3)を調製した。この(M−3)は85.5℃以下で安定にネマチック相を示し、−20℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.098、Δεは−3.02であった。またこの組成物の粘度は33(mPa・s)で実用的なn型の液晶材料として好適であった。
【0069】
(実施例6)n型液晶組成物の調製(4)
以下の化合物からなる非極性の母体液晶組成物(Mb)を調製した。
【化23】
(Mb)のネマチック相上限温度(TN−I)は60℃であった。20℃でその物性値を測定したところ、屈折率異方性(Δn)は0.050、誘電率異方性(Δε)は0.03であった。また、回転粘度は4.0(mPa・s)であった。
【0070】
この(Mb)の40%、式(1−a)で表される化合物20%、及び(3a−1)
【化24】
で表される化合物化合物20%、及び式(3a−2)で表される化合物20%
【化25】
からなる液晶組成物(M−4)を調製した。この(M−4)は117℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.110、Δεは−3.73であった。またこの組成物の粘度は35(mPa・s)と実用的なn型の液晶材料として好適であった。
【0071】
(実施例7)n型液晶組成物の調製(5)
(Ma)の20%、(Mb)の10%、式(1−a)で表される化合物20%、式(2a−1)で表される化合物10%、式(2c−1)で表される化合物10%、式(3a−1)で表される化合物20%及び式(3a−2)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−4)を調製した。この(M−4)は109℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.115、Δεは−4.01であった。またこの組成物の粘度は36(mPa・s)とΔεの絶対値が大きい割には比較的低粘性であり、実用的なn型の液晶材料として好適であった。
【0072】
(実施例8)n型液晶組成物の調製(6)
(Ma)の20%、(Mb)の20%、式(1−a)で表される化合物25%、式(3a−1)で表される化合物25%及び式(3a−2)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−5)を調製した。この(M−5)は118℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で1週間放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.118、Δεは−3.65であった。またこの組成物の粘度は34(mPa・s)とΔεの絶対値が大きい割には比較的低粘性であり、実用的なn型の液晶材料として好適であった
【0073】
(実施例9)n型液晶組成物の調製(7)
(Mb)の23%、式(1−a)で表される化合物19%、式(1−b)で表される化合物20%、及び式(3a−3)
【化26】
で表される化合物20%、及び式(3a−4)で表される化合物18%
【0074】
【化27】
からなる液晶組成物(M−7)を調製した。この(M−7)は89℃以下で安定にネマチック相を示し、0℃で放置しても結晶の析出や相分離は観察されなかった。20℃においてその物性値を測定したところ、Δnは0.115、Δεは−3.02であった。またこの組成物の粘度は57(mPa・s)であった。この組成物は極性基としてエーテル酸素を有する化合物を全く用いておらず、高い信頼性が得られる実用的なn型の液晶材料として好適であった
【0075】
(実施例10)表示素子の作成(1)
実施例5で得られた液晶組成物(M−3)を透明電極(片側の電極はジグザグ状に配列)を備え、垂直配向処理を施したセル厚3.5μmのVA表示用セルに充填し、VA表示素子を作成した。この素子に電界を印加して25℃におけるその電気光学特性を測定したところ、暗視野から明視野への閾値電圧(Vth)は3.3Vであった。次に5V印加時の応答時間を測定したところ、立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)の和は30m秒であった。また、この素子の70℃における電圧保持率(HR)を測定したところ、87%であった。同様の条件で測定した非極性の母体液晶(Ma)のHRが90%であったので、この値は充分に高いものと判断できる。
【0076】
(実施例11)表示素子の作成(2)
実施例7で得られた(M−5)を用いて同様にしてVA表示素子を作成し、その電気光学特性(25℃)を測定したところ、閾値電圧(Vth)は3.0Vでありより低電圧駆動が可能であることが確認できた。また、5V印加時の応答時間(立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)の和)は35m秒であった。さらに70℃における電圧保持率(HR)は87%であった。
【0077】
(実施例12)表示素子の作成(3)
実施例9で得られた(M−7)を用いて同様にしてVA表示素子を作成し、その電気光学特性(25℃)を測定したところ、閾値電圧(Vth)は3.6Vでやや高く、その5V印加時の応答時間(立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)の和)も45m秒とやや遅かった。しかしながら、70℃における電圧保持率(HR)は90%と非極性の母体液晶(Mb)と同じ高い値であった。
【0078】
【発明の効果】
本発明の液晶化合物の組み合わせによって、絶対値の大きい負の誘電率異方性と広いネマチック温度範囲を有し、かつ好適な屈折率異方性を有する液晶組成物が得られた。この組成物を用いることにより、高温域まで高い電圧保持率を維持できる信頼性に優れた液晶表示素子が提供され、このディスプレイはVA方式やECB方式、IPS方式等の、特にVA方式のアクティブマトリックス駆動液晶ディスプレイとして非常に実用的である。
Claims (9)
- 一般式(1)
- 一般式(3a)、一般式(3b)、一般式(4a)及び一般式(4b)
- 一般式(2)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(3a)、(3b)、(4a)及び(4b)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜3の何れかに記載の液晶組成物。
- ネマチック相上限温度が70℃以上であり、ネマチック相下限温度が−20℃以下であり、化合物(1)の含有量が1〜50質量%の範囲であるところの請求項1〜4の何れかに記載の液晶組成物。
- 請求項1〜5記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。
- アクティブマトリックス駆動される請求項7記載の液晶表示素子。
- 垂直配向モードで表示される請求項8記載の液晶表示素子。
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