JP2005047721A - アルミノフォスフェート類の製造方法 - Google Patents

アルミノフォスフェート類の製造方法

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展 渡辺
Takahiko Takewaki
隆彦 武脇
Masanori Yamazaki
正典 山崎
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Abstract

【課題】アルミノフォスフェート類の合成に反応容器を繰り返し使用する場合であっても、収量の低下を引き起こさず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類を製造する方法を提供する。
【解決手段】アルミノフォスフェート類を水熱合成する前に、当該水熱合成に使用される反応容器をアルカリ性水溶液で洗浄することにより、上記課題を解決する。また、同一の反応容器を使用した水熱合成によるアルミノフォスフェート類の製造が複数回繰り返し行われる場合においては、前記反応容器が、アルミノフォスフェート類の複数回の製造毎に一回又は複数回の製造毎に少なくとも一回、水熱合成前にアルカリ水溶液で洗浄されることが望ましく、この製造方法においては、前記アルミノフォスフェート類の原料組成が実質的に同一であることが好ましい。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミノフォスフェート類の製造方法に関し、更に詳しくは、収量を低下させず且つ再現性のよいアルミノフォスフェート類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミノフォスフェート類は、その骨格構造にアルミニウム(Al)とリン(P)を含み、さらにAlやPの一部がヘテロ原子で置換されていてもよい各種の結晶性アルミノフォスフェートである。このアルミノフォスフェート類は、従来より、酸反応や酸化反応用等の触媒、分離材又は吸着材等に広く利用されている。
【0003】
こうしたアルミノフォスフェート類の合成方法として、種々の構造を有するアルミノフォスフェート(ALPO)の合成方法(例えば、特許文献1を参照。)や、種々の構造を有するシリコアルミノフォスフェート(SAPO)の合成方法(例えば、特許文献2を参照。)が開示されている。
【0004】
また、その他のアルミノフォスフェート類の合成方法として、三次元酸化物骨格を形成しうる少なくとも1種の元素(EL)を含むシリコアルミノフォスフェート(ELAPSO)の合成方法(例えば、特許文献3を参照。)、鉄シリコアルミノフォスフェート(FAPSO)の合成方法(例えば、特許文献4を参照。
)、亜鉛シリコアルミノフォスフェート(ZnAPSO)の合成方法(例えば、特許文献5を参照。)、鉄アルミノフォスフェート(FAPO)の合成方法(例えば、特許文献6を参照。)、亜鉛シリコアルミノフォスフェート(ZnAPSO)の合成方法(例えば、特許文献5を参照。)、マグネシウム、マンガン、亜鉛、コバルト群の中の少なくとも1つの金属Mを含むアルミノフォスフェート(MAPSO)の合成方法(例えば、特許文献7を参照。)、及びマグネシウムシリコアルミノフォスフェート(MgAPSO)の合成方法(例えば、特許文献8を参照。)、等が知られている。
【0005】
アルミノフォスフェート類は、工業的には、所望構造のアルミノフォスフェート類を再現性及び収率よく得ることが重要であり、例えば下記特許文献9には、結晶性シリコアルミノホスフェート(SAPO−37)の合成において、合成時の昇温速度とpHを特定範囲にすることにより、SAPO−37の収量とそのイオン交換能を増大させると共に製造の再現性を向上させることが教示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−77015号公報
【特許文献2】
特開昭59−35018号公報
【特許文献3】
特開昭60−251122号公報
【特許文献4】
特開昭60−231415号公報
【特許文献5】
特開昭60−231414号公報
【特許文献6】
特開昭61−36110号公報
【特許文献7】
特開昭60−86011号公報
【特許文献8】
特開昭60−231412号公報
【特許文献9】
特開昭61−151021号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のアルミノフォスフェートの合成方法を開示した各特許文献には収量についての記載がなく、また、各合成方法は、各製造バッチの中での操作条件により収量の向上を図るものである。
【0008】
しかしながら、上述した従来のアルミノフォスフェート類の合成方法においては、工業規模でのアルミノフォスフェート類の水熱合成に不可欠な反応容器を繰り返し使用するので、各製造バッチの中で操作条件を最適化しても、その反応容器の繰り返し使用に伴う収量の低下や不純物の混入が起こるという問題が判明した。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、アルミノフォスフェート類の合成に反応容器を繰り返し使用する場合であっても、収量の低下を引き起こさず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類を製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、アルカリ性水溶液で洗浄した後の反応容器を用いることにより、収量の低下を引き起こさず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類を製造できることを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法は、アルミノフォスフェート類を水熱合成する前に、当該水熱合成に使用される反応容器をアルカリ性水溶液で洗浄することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、アルミノフォスフェート類の水熱合成前に反応容器をアルカリ性水溶液で洗浄するので、反応容器の内壁に付着した不純物が水熱合成前の段階で予め除去される。その結果、アルミノフォスフェート類の合成時に不純物が混入しないので、収量の低下が起こらず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類が製造される。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法は、同一の反応容器を使用した水熱合成によるアルミノフォスフェート類の製造が複数回繰り返し行われるアルミノフォスフェート類の製造方法であって、前記反応容器が、アルミノフォスフェート類の複数回の製造毎に一回又は複数回の製造毎に少なくとも一回、水熱合成前にアルカリ水溶液で洗浄されることを特徴とする。この製造方法においては、前記アルミノフォスフェート類の原料組成が実質的に同一であることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、同一の反応容器を使用した水熱合成によるアルミノフォスフェート類の製造が複数回繰り返し行われるアルミノフォスフェート類の製造方法においても、上記の技術的手段を適用できる。すなわち、反応容器を、アルミノフォスフェート類の複数回の製造毎に一回又は複数回の製造毎に少なくとも一回、水熱合成前にアルカリ水溶液で洗浄するので、同一の反応容器を繰り返し使用した場合であっても、収量の低下が起こらず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類がその都度製造される。さらに、アルミノフォスフェート類の原料組成が実質的に同一である場合には通常は水洗されるが、本発明は、反応容器がアルカリ性水溶液で洗浄されるので、収量の低下が起こらず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類が製造される。
【0015】
上述した本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法において、好ましくは、前記アルミノフォスフェート類は、骨格構造を構成するMe、Al及びPのモル比が下記式1〜3を満足することを特徴とする。この場合において、Meは、周期表第3周期又は第4周期に属する2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く。)及び4B族の元素から選ばれる少なくとも一種類の元素を示す。
【0016】
0≦x≦0.3 …1
(xは、Me、Al及びPの合計に対するMeのモル比を示す)
0.2≦y≦0.6 …2
(yは、Me、Al及びPの合計に対するAlのモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 …3
(zは、Me、Al及びPの合計に対するPのモル比を示す)
上述した本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法において、好ましくは、前記アルミノフォスフェート類の骨格構造が、IZAが定めるコードで表されたAEI、AEL、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATS、CHA、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA及びVFIから選ばれる構造であることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法について説明する。
【0018】
本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法は、Me源、アルミニウム源、リン源及びテンプレートからなる構成原料を混合した後に水熱合成して(Me−)アルミノフォスフェート類を製造する方法である。本発明の製造方法において、構成原料に混合するMe源は必要に応じて任意に混合される。Me源を含む構成原料でアルミノフォスフェート類を合成する場合には、Me原子がアルミノフォスフェート類の骨格構造を構成するAl及びPの一部と置換された構造となる。
【0019】
最初に、本発明のアルミにフォスフェート類を合成するための構成材料について詳細に説明する。
【0020】
(構成原料)
本発明のアルミにフォスフェート類は、アルミニウム源、Me源(特に好ましくは鉄源)、リン源及びテンプレートを主な構成原料として用い、それらの構成原料を混合した後、水熱合成により製造される。
【0021】
アルミニウム源;アルミニウム源は特に問わないが、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が使用される。中でも、取り扱い易さや反応性の観点からは、擬ベーマイトが好ましく使用される。
【0022】
Me源;Me源は、周期表第3周期又は第4周期に属する2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く。)及び4B族の元素から選ばれる少なくとも一種類(一種類又は2種類以上)の元素(Me)を有する無機酸塩、有機酸塩、有機金属化合物等であり、必要に応じて任意に使用される。Meは、(i)アルミノフォスフェート類中のアルミニウムの一部と置換する「Me1」と、(ii)アルミノフォスフェート類中のリンの一部と置換する「Me2」に分けることができる。好ましいMe(Me1,Me2)は価数が2価のものであり、Me源として上記元素が一種類又は2種類以上含まれていてもよい。
【0023】
Me1は、上記Me元素のうち、2価の状態でイオン半径が0.3Å以上、0.8Å以下であるもの(Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Mg)が好ましく、特に2価且つ4配位の状態でイオン半径が0.4Å以上、0.7Å以下のもの(Fe,Co,Cu,Zn,Mg)が好ましい。その中でも、合成の容易さ、吸着特性及び触媒特性の点から、Fe,Co,Mg,Znから選ばれる少なくとも一種類の元素であることが好ましく、特にFeであることが好ましい。また、Me2は、周期表第3周期又は第4周期に属する4B族元素であり、好ましくはSiである。なお、1Åは10nmに換算される単位である。
【0024】
Me源である無機酸塩、有機酸塩、有機金属化合物等は、通常、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物等が使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは、無機酸塩と有機酸塩が好ましく使用される。場合によってはコロイド状の酸化物を用いてもよい。
【0025】
リン源;リン源は、通常リン酸が使用されるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。
【0026】
テンプレート;テンプレートとしては、アミン、イミン、四級アンモニウム塩を使用できるが、好ましくは(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物、(2)シクロアルキル基を有するアミン、及び(3)アルキル基を有するアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種(1種又は2種以上)の化合物が用いられる。それらは入手し易く安価であり、更に、製造されたアルミノフォスフェート類の取り扱いも容易で構造破壊も起き難いという効果がある。これらのアミン類の中から1種用いる場合は、合成の容易さやアルミノフォスフェート類の耐久性の点から、(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物の中のモルホリン、又は、(2)シクロアルキル基を有するアミンの中のシクロヘキシルアミンが好ましく、その中でもモルホリンが特に好ましい。
【0027】
一方、所望の組成のものを純度よく合成するため、2種類以上のアミン類を組み合わせて用いることが好ましい。これらのうち、好ましい組み合わせとしては、テンプレートとして、(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物、(2)シクロアルキル基を有するアミン、及び(3)アルキル基を有するアミン、からなる群の2以上の群からそれぞれ1種以上の化合物を組み合わせたものを用いることが好ましい。このように組み合わせることにより、所望の元素割合のものや、結晶性の高いアルミノフォスフェート類の合成がし易いという利点がある。中でも、(1)ヘテロ原子として窒素を含む脂環式複素環化合物を含む2種以上の組み合わせの場合は、所望の元素割合のものや結晶性の高いアルミノフォスフェート類の合成がし易いので、より好ましい。具体的な好ましい組み合わせとしては、モルホリン、トリエチルアミン又はN,N−ジエチルエタノールアミン及びシクロヘキシルアミンから2種以上の化合物を組み合わせたものが挙げられ、中でもモルホリンを含む2種以上の組み合わせの場合がより好ましい。
【0028】
これらのテンプレート各群の混合比率は、条件に応じて適時選ぶ必要があるが、混合させる2種のテンプレートのモル比は1:20〜20:1の範囲であり、所望の元素割合のものや結晶性の高いアルミノフォスフェート類の合成のし易さの観点から、1:10〜10:1が好ましい。なお、その他のテンプレートが入っていてもよいが、その場合には、モル比で通常20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。これらのテンプレートは、価格的にも安く、従来のテンプレート(例えばテトラエチルアンモニウムヒドロキシド)等に比べて扱い易く腐食性等も少ないという利点がある。
【0029】
上記のように、複数のテンプレートを併用すると共に、更に条件を選択することにより、(イ)アルミノフォスフェート類の結晶化速度を向上させることができ、(ロ)不純物の生成を抑制し、所望構造のアルミノフォスフェート類を容易に製造することができ、更に、(ハ)壊れ難い安定した構造のアルミノフォスフェート類を製造できる、という効果を得ることができる。また、上記した(1)〜(3)から選択された化合物を複数種組み合わせたテンプレートが好ましく用いられ、それらのテンプレートが示す相乗作用により単独のテンプレートでは得られない上記の効果(イ〜ハ)を得ることができる。
【0030】
(水熱合成)
次に、水熱合成について説明する。以下においては、構成原料中にMeを含有させる場合について説明する。
【0031】
先ず、Me源、アルミニウム源、リン源、テンプレート及び水を混合して水性ゲルを調合する。構成原料を混合する順序には制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン源、アルミニウム源を混合し、これにMe源、テンプレートを混合する。
【0032】
水性ゲルの組成は、所望のものの合成し易さに影響し、アルミニウム源、Me源及びリン源を酸化物のモル比で表すと、MeO/Alの値は、通常0より大きく1.0以下であり、好ましくは0.02以上であり、一方、好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。また、P/Alの比は、所望のものの合成し易さに影響し、通常0.6以上、好ましくは0.8以上、更に好ましくは1以上であり、通常1.8以下、好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.6以下である。
【0033】
テンプレートの総量は、所望のものの合成し易さと経済性に影響し、Pに対するテンプレートのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下である。また、2種以上のテンプレートを混合する場合におけるその混合比は、所望のものの合成し易さに影響し、条件に応じて適宜選ぶ必要があるが、上記したように、例えば、モルホリンとトリエチルアミンを用いる場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比が0.03〜20、好ましくは0.05〜10、更に好ましくは0.1〜9、最も好ましいのは0.2〜4である。
【0034】
前記2つ以上の群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に問わないが、テンプレートを調製した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
【0035】
また、水の割合の下限は、Alに対して、モル比(水/Al)で3以上であり、合成のし易さの観点からは5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。水の割合の上限は、モル比(水/Al)で200以下であり、合成のし易さや生産性の高さの観点からは150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましい。
【0036】
水性ゲルのpHは、4〜10であり、合成のし易さの観点からは5〜9が好ましく、5.5〜7.5がより好ましい。pHの調整は、テンプレート類の量の調節、又は塩酸、硫酸等の酸の添加により行われる。なお、水性ゲル中には、原料の溶解性を向上させる目的で、又は鉱化剤等の効果を期待して、上記以外の成分を共存させてもよい。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。共存成分の割合は、所望のものの合成し易さに影響し、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩の場合は、Alに対してモル比(共存成分/Al)で通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒の場合は、水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0037】
こうした条件下で、水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧下又は結晶化を阻害しない気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持することにより水熱合成を行う。
【0038】
水熱合成の反応温度は、所望のものの合成し易さに影響し、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であって、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
【0039】
反応時間は、所望のものの合成し易さに影響し、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、更に好ましくは4日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0040】
水熱合成後においては、生成物を分離する。生成物の分離方法は特に問わないが、通常、濾過又はデカンテーション等により分離し、水洗、室温(25℃)から150℃以下の温度で乾燥して生成物であるテンプレートを含有したアルミノフォスフェート類を得ることができる。
【0041】
(水熱合成用の反応容器の洗浄)
次に、本発明の製造方法における特徴的な技術的事項について説明する。
【0042】
本発明の製造方法は、アルミノフォスフェート類を上述のように水熱合成する前に、その水熱合成に使用される反応容器をアルカリ性水溶液で洗浄することに特徴がある。なお、以下において、アルカリ性水溶液を「アルカリ洗浄液」と略すことがあり、アルカリ洗浄液での洗浄を、「アルカリ洗浄」と略すことがある。
【0043】
反応容器は水熱合成に使用されるものであり、その材質は特に制限されず、ステンレス製の反応容器、又は、ステンレス、チタン、Ni−Cr合金、ハステロイ若しくはテフロン(登録商標)で内面を被覆した反応容器等を用いることができるが、中でも、ステンレスを材料として用いたものが最も安価で一般的である。
【0044】
反応容器の洗浄は、水熱合成後の反応容器内面に付着したアルミノフォスフェート類の微結晶等を洗浄するために行われるものである。
【0045】
洗浄に用いられる洗浄液としては、pHが8以上14以下、好ましくは11以上14以下のアルカリ性の水溶液が用いられる。このpH範囲のアルカリ性水溶液(アルカリ洗浄液という。)は、反応容器内面に付着したアルミノフォスフェート類の微結晶等を効率的に洗浄することができると共に、例えばステンレス製の反応容器に腐食等のダメージを与えないので好ましく用いられる。従って、上記pH範囲のアルカリ洗浄液であれば、アルカリ源の種類や濃度は問われない。
アルカリ源としては、例えば、加水分解して水酸化物イオンを生じる化合物(例えば、アルカリ金属酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等)の水溶液、アルカリ金属水酸化物の水溶液、又はアルカリ土類水酸化物の水溶液(懸濁液)を用いることができる。また、アンモニア水、有機アミン類等の塩基性有機化合物の水溶液を用いてもよい。この中でも、取り扱いの容易さ及び溶解性の点から、通常アルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく用いられる。また、アルカリ洗浄液の濃度は、上記のpHの範囲を満たせば特に問わないが、通常0.1重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%である。濃度が低すぎると洗浄に要する時間が長くなり、また、濃度が高すぎると経済的に不利である。
【0046】
洗浄方法については、反応容器に付着したアルミノフォスフェート類の微結晶が除去されれば方法は問わないが、通常、反応容器で水熱合成されたアルミノフォスフェート類を含むスラリーをその反応容器内から移送した後、必要に応じてその反応容器を水洗し、その後、上記のアルカリ洗浄液を反応容器に注入して洗浄したり、反応容器内でアルカリ洗浄液を調製することにより洗浄する。
【0047】
洗浄に使用するアルカリ洗浄液の量は、通常、水熱合成に供される反応液の充填量程度である。アルカリ洗浄液を、反応容器を洗浄する前に予め反応容器に充填しておくこともでき、また、洗浄中に連続的に供給することもできる。
【0048】
アルカリ洗浄液の撹拌は行っても行わなくてもよいが、通常はアルカリ洗浄液を撹拌することにより洗浄が促進される。また、必要に応じて超音波等をアルカリ洗浄液に与え、反応容器内の洗浄を促進してもよい。
【0049】
洗浄中は加熱を行っても行わなくてもよい。アルカリ洗浄液を加熱することによりアルカリ洗浄液の温度が高くなり、通常は洗浄が促進される。アルカリ洗浄液の温度は、通常、室温から200℃、好ましくは50℃以上150℃以下である。アルカリ洗浄液の温度が低すぎると洗浄効果が充分でなく、高すぎると取り扱いが困難になる。
【0050】
アルカリ洗浄液による反応容器の洗浄は、常圧、加圧いずれでも行われるが、加熱を行う際には、反応容器を密封し、自己発生圧下で洗浄を行うことも可能である。
【0051】
洗浄時間は、反応容器内壁の付着物の状態等に依存して任意に設定されるが、通常は0.5時間以上100時間以下、好ましくは1時間以上48時間以下である。洗浄時間が短すぎると効果が充分でなく、長すぎると製造設備の生産性が低下する。
【0052】
本発明においては、アルカリ洗浄液で洗浄した後の反応容器は、アルミノフォスフェート類の水熱合成に用いる前に、イオン交換水等で洗浄され、そのアルカリ洗浄液中に含まれるアルカリ金属等による汚染が防がれる。イオン交換水等による反応容器の洗浄は、洗浄後のイオン交換水中のアルカリ金属濃度が200ppm以下になるまで行うことが好ましい。なお、必要に応じて、更に酸で洗浄し、水洗してもよい。
【0053】
本発明において、アルカリ洗浄は、アルミノフォスフェート類を水熱合成する前に、その水熱合成に使用される反応容器をアルカリ洗浄液で洗浄するものである。従って、同一の反応容器を使用した水熱合成によるアルミノフォスフェート類の製造が複数回繰り返し行われる場合においては、アルカリ洗浄液による反応容器の洗浄を、アルミノフォスフェート類の複数回の製造毎に一回行ってもよいし、複数回の製造毎に少なくとも一回行ってもよい。
【0054】
例えば、複数回の製造毎に一回の洗浄とは、2回の製造毎に1回、3回の製造毎に1回等のように行うことであり、複数回の製造毎に少なくとも一回行う洗浄とは、3回の製造で2回洗浄したり、4回の製造で3回洗浄するような場合である。
【0055】
特に本発明においては、上述したアルカリ洗浄を、アルミノフォスフェート類の構成原料の組成が実質的に同一な場合に適用することが好ましい。このような場合は、従来では水洗のみが行われるのが通例であるが、本発明においては、構成原料の組成が実質的に同一な場合でも反応容器をアルカリ洗浄して繰り返し使用することにより、収量低下の問題がなく且つ再現性のよいアルミノフォスフェート類を安定して製造できる。
【0056】
以上説明したように、アルカリ洗浄液で洗浄した反応容器を使用することにより、収量の低下を引き起こさず且つ再現性のよいアルミノフォスフェート類の製造が可能になる。この理由は完全には明らかではないが、水熱合成時に反応容器内壁に付着した微結晶が通常の水洗では完全には除去されず、同じ反応容器を用いた次の合成バッチにおけるアルミノフォスフェート類の結晶成長を阻害するが、上述したアルカリ洗浄を行うことにより、反応容器の内壁に付着していた微結晶が取り除かれるためと推察される。
【0057】
アルカリ洗浄の頻度は、合成1バッチ毎でも、収量の低下が実施上問題ないと判断される数のバッチ毎でもよく、反応容器の内壁の状態や生産上の制約その他により選択できる。アルカリ洗浄の頻度が高いと、再現性や収量の点では好ましいが、アルカリ洗浄の頻度が高すぎると合成設備の生産性が低下したり、洗浄液の調製や廃棄処理に伴う費用が嵩むという難点がある。アルカリ洗浄の頻度が低すぎると、収量の低下により生産性が低下する場合がある。
【0058】
(焼成)
以下、水熱合成後のアルミノフォスフェート類を焼成する場合における焼成条件等について説明する。
【0059】
上述した水熱合成により合成されたアルミノフォスフェート類は、その使用目的に応じ、公知の方法で焼成されてもよい。焼成された後のアルミノフォスフェート類は、テンプレートが除去され、触媒や吸着材等として好ましく使用される。
【0060】
焼成は、例えば水熱合成された後のテンプレート含有アルミノフォスフェート類を、窒素で希釈した空気等のガスの流通下又は減圧下で、所定の条件で加熱処理するプロセスであり、その結果、テンプレートの一部又は全部が除去されたアルミノフォスフェート類が得られる。
【0061】
焼成温度は、通常、200℃以上800℃以下であり、250℃以上が好ましく、280℃以上が更に好ましく、300℃以上が特に好ましい。一方、700℃以下が好ましく、600℃以下が更に好ましい。焼成時間は、1分間から15時間であり、2分間から10時間が好ましく、5分間から8時間がより好ましい。焼成時の圧力は、減圧でも加圧でもよいが、通常は大気圧又は大気圧付近で行われる。
【0062】
焼成は、酸素を含まないガス中で行ってもよいが、通常、不活性ガス中に酸素を含有するガス中で行う。ガス中に酸素を含有させた場合における酸素濃度は、下限が0.1vol%であり、0.5vol%以上が好ましく、1vol%以上がより好ましく、2vol%以上が特に好ましい。一方、含有させる酸素濃度は、上限が20%であり、15vol%以下が好ましい。ガス中に酸素を含有させ且つガス中の酸素濃度をこの範囲で制御することにより、焼成時におけるテンプレートの発熱を抑制し、焼成の制御を容易にする効果がある。また、テンプレートの酸化分解に伴う急激な発熱を回避するために、窒素等の不活性ガス気流下で焼成した後、含酸素ガス気流中で焼成することもできる。この場合は、不活性ガス中での焼成時にテンプレートの一部が除去されているので、2段目の含酸素ガス中での焼成時の発熱が抑制され、上記同様に焼成時の制御が容易になる。酸素以外の含有ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが用いられるが、場合によっては水蒸気、窒素酸化物を体積比で10%まで混合させてもかまわない。
【0063】
焼成ガスを、焼成装置内に流通させてもよいし、させなくてもよいが、流通させる場合は、焼成するアルミノフォスフェート類に対する空間速度(GHSV:gasous hourly space velocity)が所定の範囲であることが好ましい。その空間速度(GHSV)としては、10hr−1以上、10000hr−1以下が好ましく、20hr−1以上、3000hr−1以下がより好ましい。GHSVが小さすぎるとテンプレートの除去が遅くなり、GHSVが高すぎると焼成に要するガス流量が大きすぎることになるので経済的には好ましくない。焼成装置としては、マッフル炉や、管状炉、キルン等の任意の加熱装置を用い、固定床又は流動床形式で行われる。なお、ここでのGHSVは、単位時間当たりの「流すガス容量/アルミノフォスフェート類の容積」で表される。
【0064】
(製造されたアルミノフォスフェート類)
以下に、本発明の方法で製造されるアルミノフォスフェート類について説明する。
【0065】
本発明の方法により製造されるアルミノフォスフェート類は、International Zeolite Association(国際ゼオライト協会:IZAと略す。)の規定による分類で結晶性アルミノフォスフェート類に属するものであり、その骨格構造にアルミニウム(Al)とリン(P)を含み、さらにAlやPの一部がヘテロ原子で置換されていてもよい各種の結晶性アルミノフォスフェート類である。なお、本発明の方法で製造されたアルミノフォスフェート類を、「(Me−)アルミノフォスフェート類」と略すことがある。
【0066】
すなわち、本発明の方法により製造されるアルミノフォスフェート類は、吸着特性及び触媒性能の点から、(i)アルミノフォスフェート類中のアルミニウムが上述したヘテロ原子(Me1)で一部置換されていてもよい(Me−)アルミノフォスフェート類、(ii)アルミノフォスフェート類中のリンが上述したヘテロ原子(Me2)で一部置換されていてもよい(Me−)アルミノフォスフェート類、又は、(iii)アルミニウムとリンの両方が上述したヘテロ原子(それぞれMe1、Me2)で一部置換されていてもよい(Me−)アルミノフォスフェート類、であることが好ましい。
【0067】
本発明の方法により製造された(Me−)アルミノフォスフェート類は、骨格構造を構成しているMe、Al及びPの構成割合(モル比)が、下記式1〜3を満足することが好ましく、下記式1’〜3’を満足することが更に好ましい。
【0068】
0≦x≦0.3 …1
(xは、Me、Al及びPの合計に対するMeのモル比を示す)
0.2≦y≦0.6 …2
(yは、Me、Al及びPの合計に対するAlのモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 …3
(zは、Me、Al及びPの合計に対するPのモル比を示す)
0.01≦x≦0.3 …1’
(xは、Me、Al及びPの合計に対するMeのモル比を示す)
0.3≦y≦0.5 …2’
(yは、Me、Al及びPの合計に対するAlのモル比を示す)
0.4≦z≦0.5 …3’
(zは、Me、Al及びPの合計に対するPのモル比を示す)
Meのモル比を示すxが上記範囲より大きい場合には、合成時に不純物が混入し易い傾向がある。一方、Meのモル比を示すxは0でも効果がある。しかし、xの下限が0に近い場合には、得られたアルミノフォスフェート類を吸着材として用いた際の吸着特性の低下(吸着質の圧力が低い領域での吸着量の低下)が生じたり、アルミノフォスフェート類の合成がやや困難となる傾向がある。従って、xの下限は上記式1’で示したように0.01であることが好ましい。また、Alのモル比を示すy及びPのモル比を示すzが上記範囲外になると、合成が困難になることがある。
【0069】
Me(Me1及びMe2)は、構成原料中にMe源として供給され、前記の(i)〜(iii)で説明したような態様で、水熱合成後のアルミノフォスフェート類中に1種又は2種以上含まれていてもよい。なお、Me(Me1、Me2)の種類、価数、イオン半径等については、構成原料の説明欄で説明したとおりである。
【0070】
アルミノフォスフェート類は、骨格構造を構成する成分とは別に、他のカチオンとイオン交換可能なカチオン種を持つものものを含んでいてもよい。そうしたカチオン種としては、プロトン、Li、Na、K等のアルカリ元素、Ca等のアルカリ土類元素、La,Ce等の希土類元素などが挙げられる。中でも、プロトン、アルカリ元素、アルカリ土類元素が好ましい。
【0071】
また、アルミノフォスフェート類は、そのフレームワーク密度が、通常、10T/nm以上19T/nm以下であることが好ましい。上記範囲の下限未満では、アルミノフォスフェート類の構造が不安定となる傾向があり、一方、上記範囲の上限を越えると吸着量及び触媒活性が小さくなる傾向がある。こうしたフレームワーク密度は、12T/nm以上であることがより好ましく、更に好ましくは13T/nm以上である。一方、18T/nm以下であることが好ましく、17.5T/nm以下であることが更に好ましい。ここで、Tとは、アルミノフォスフェート骨格を構成する酸素原子以外の原子であり、T/nmは、nmあたり存在するT原子の個数(フレームワーク密度)を示す単位である。
【0072】
本発明のアルミノフォスフェート類の骨格構造は、IZAが定めるコードで表されたAEI、AEL、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATS、CHA、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA及びVFIから選ばれる構造であることが好ましい。中でも、吸着特性及び触媒活性の点から、AEI、AEL、AFI、CHA及びLEVから選ばれる構造であることが好ましく、特にAFI又はCHAが好ましい。
【0073】
【実施例】
以下、実施例と比較例により本発明を更に具体的に説明する。
【0074】
(実施例1)
先ず、水210gに85%リン酸86.5gを加え、これに擬ベーマイト(25%水含有、コンデア製)40.8gをゆっくりと加え、3時間攪拌した。これに、硫酸第一鉄7水和物41.7gを水218gに溶かした液を加え、更にモルホリン37.9gとトリエチルアミン43.9gをゆっくりと加えて更に3時間攪拌し、以下の組成を有するゲル状の出発物質を得た。
【0075】
0.4FeSO:0.8Al:P:1.16モルホリン:1.16トリエチルアミン:70H
水熱合成の際に使用される反応容器として、内容積1Lのステンレス製オートクレーブを用い、次の手順でアルカリ洗浄と水洗を行った。先ず、この反応容器にアルカリ洗浄液として8重量%の水酸化ナトリウム水溶液(pH=13.7)を650g入れて密封した後、200rpmで撹拌しながら80℃で6時間洗浄した。その後、反応容器中のアルカリ洗浄液を抜き、反応容器(撹拌羽根、内温測定管等接液部全てを含む。)をイオン交換水で充分に洗浄した。
【0076】
上記の出発物質をアルカリ洗浄と水洗をした後の反応容器に仕込み、100rpmで攪拌しながら180℃で24時間水熱合成反応を行った。反応後に冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後に濾別し、120℃で乾燥することにより、実施例1のアルミノフォスフェート類(63gの乾燥固体)を得た。
【0077】
こうして得られた実施例1のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法で元素分析した。その結果、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)及びリン(P)の合計に対する各元素の構成割合(mol%)は、Al:36.8mol%、Fe:13.2mol%、P:50mol%であった。また、実施例1のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法でXRD測定した結果、純粋なCHA構造が確認された。
【0078】
(実施例2)
実施例1で水熱合成した後の反応容器を水洗し、実施例1と同様にアルカリ洗浄と水洗を行った。こうした反応容器を用いて、実施例1と同様に水熱合成を行い、実施例2のアルミノフォスフェート類(62gの乾燥固体)を得た。
【0079】
得られた実施例2のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法で元素分析した結果、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)及びリン(P)の合計に対する各元素の構成割合(mol%)は、Al:36.9mol%、Fe:13.1mol%、P:50mol%であった。また、実施例2のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法でXRD測定した結果、純粋なCHA構造が確認された。
【0080】
(実施例3)
実施例2で水熱合成した後の反応容器(オートクレーブ)を用い、実施例1と同様にアルカリ洗浄と水洗を行った。この反応容器を用いて、実施例1と同様に水熱合成を行い、実施例3のアルミノフォスフェート類(63.9gの乾燥固体)を得た。
【0081】
得られた実施例3のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法で元素分析した結果、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)及びリン(P)の合計に対する各元素の構成割合(mol%)は、Al:36.8mol%、Fe:13.2mol%、P:50mol%であった。また、実施例3のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法でXRD測定した結果、純粋なCHA構造が確認された。
【0082】
(比較例1)
実施例1で水熱合成した後の反応容器を水洗した。実施例1のアルミノフォスフェートの製造において、水洗しただけで実施例1のようなアルカリ洗浄を行わない反応容器を用いた他は、実施例1と同様に水熱合成を行い、比較例1のアルミノフォスフェート(20.9gの乾燥固体)を得た。
【0083】
得られた比較例1のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法で元素分析した結果、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)及びリン(P)の合計に対する各元素の構成割合(mol%)は、Al:37.7mol%、Fe:12.3mol%、P:50mol%であった。また、比較例1のアルミノフォスフェート類を以下に示す方法でXRD測定した結果、純粋なCHA構造が確認された。
【0084】
(元素分析)
試料を空気流通下、550℃で6時間焼成し、塩酸に溶解した後、ICP法により組成分析を行った。
【0085】
(粉末X線回折(XRD)測定条件)
X線源:Cu−Kα線(λ=1.54184Å)
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:発散スリット=1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=4〜50°
試料:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕した試料約100mgを用い、同一形状のサンプルホルダーを使用して試料量がほぼ一定となるようにした。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアルミノフォスフェート類の製造方法によれば、反応容器の内壁に付着した不純物が水熱合成前の段階で予め除去することができるので、アルミノフォスフェート類の合成時に不純物が混入せず、収量の低下が起こらず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類が製造される。また、本発明によれば、同一の反応容器を繰り返し使用した場合であっても、収量の低下が起こらず且つ再現性よくアルミノフォスフェート類がその都度製造することができる。

Claims (5)

  1. アルミノフォスフェート類を水熱合成する前に、当該水熱合成に使用される反応容器をアルカリ性水溶液で洗浄することを特徴とするアルミノフォスフェート類の製造方法。
  2. 同一の反応容器を使用した水熱合成によるアルミノフォスフェート類の製造が複数回繰り返し行われるアルミノフォスフェート類の製造方法であって、
    前記反応容器が、アルミノフォスフェート類の複数回の製造毎に一回又は複数回の製造毎に少なくとも一回、水熱合成前にアルカリ水溶液で洗浄されることを特徴とするアルミノフォスフェート類の製造方法。
  3. 前記アルミノフォスフェート類の原料組成が実質的に同一であることを特徴とする請求項2に記載のアルミノフォスフェート類の製造方法。
  4. 前記アルミノフォスフェート類は、骨格構造を構成するMe、Al及びPのモル比が下記式1〜3を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミノフォスフェート類の製造方法(但し、Meは、周期表第3周期又は第4周期に属する2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く。)及び4B族の元素から選ばれる少なくとも一種類の元素を示す。)。
    0≦x≦0.3 …1
    (xは、Me、Al及びPの合計に対するMeのモル比を示す)
    0.2≦y≦0.6 …2
    (yは、Me、Al及びPの合計に対するAlのモル比を示す)
    0.3≦z≦0.6 …3
    (zは、Me、Al及びPの合計に対するPのモル比を示す)
  5. 前記アルミノフォスフェート類の骨格構造が、IZAが定めるコードで表されたAEI、AEL、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATS、CHA、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA及びVFIから選ばれる構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミノフォスフェート類の製造方法。
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