JP2005044609A - 複合膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】プロトン伝導性を損なうことなくテトラフルオロエチレン共重合体からなるイオン交換樹脂の機械的強度を改善し、発電性および耐メタノール透過性等に優れる複合膜を提供するものである。
【解決手段】1)耐熱性、機械的特性有するスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体膜とテトラフルオロエチレン共重合体膜の接合、2)スルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体膜の両面をテトラフルオロエチレン共重合体膜で接合、3)テトラフルオロエチレン共重合体膜の両面をスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体膜で接合させ、それぞれの膜の接合表面にN−ビニルピロリドン,重合性不飽和基を少なくとも1個以上有するフォスフェート系化合物を付与した後、積層し加熱し接合させた複合膜の製造方法を提供する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロトン伝導性を損なうことなくテトラフルオロエチレン共重合体からなるイオン交換樹脂の機械的強度を改善し、発電性および耐メタノール透過性等に優れる複合膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有し、電気自動車や分散発電等の電源装置としての開発が進んできている。また、同じく高分子固体電解質膜を使用し、燃料としてメタノールを直接供給するダイレクトメタノール形燃料電池も携帯機器の電源などの用途に向けた開発が進んでいる。高分子固体電解質膜には通常プロトン伝導性のプロトン交換樹脂膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素等の透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。高分子固体電解質膜として代表される米国デュポン社製ナフィオン(商品名)の様なスルホン酸基を導入したテトラフルオロエチレン共重合体からなる膜は、100℃以上での耐熱性不足に起因した膜の軟化に伴うガス遮断性の低下や耐メタノール透過性の低下等の問題が指摘されている。特許文献1及び特許文献2には、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の空隙部にイオン交換樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含浸し、一体化した複合高分子固体電解質膜が記載されているが、上記と同様の問題を抱えていた。
【0003】
固体高分子形燃料電池の高出力化や高効率化のためには高分子固体電解質膜のプロトン伝導抵抗を低減させることが有効であり、その方策のひとつとして膜厚の低減が挙げられる。ナフィオンに代表されるような高分子固体電解質膜でも膜厚を低減させる試みが行われている。しかしながら、膜厚を低減させると機械的強度が低下し、例えば高分子固体電解質膜と電極をホットプレスで接合させる際などに膜が破損しやすくなったり、膜の寸法の変動により、高分子固体電解質膜に接合した電極がはがれて発電特性が低下したりするなどの問題点を有していた。さらに、膜厚を低減させることはガス遮断性や耐メタノール透過性を低下させ、起電力の低下や燃料の利用効率の低下を招くなどの問題点を有していた。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−29032号公報
【特許文献2】
特開平8−162132号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プロトン伝導性を損なうことなくテトラフルオロエチレン共重合体からなるプロトン交換樹脂膜の機械的強度を改善し、発電性および耐メタノール透過性等に優れる複合膜を提供することにある。
【0006】
【問題を解決するための手段】
すなわち本発明は、テトラフルオロエチレン共重合体からなるプロトン伝導膜と耐熱性、機械的特性を有するスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体からなるプロトン伝導膜を接合させてなる複合膜に関する。即ち、一般式(1)で表される構造単位からなるテトラフルオロエチレン共重合体のイオン交換樹脂、
【0007】
【化6】
Figure 2005044609
【0008】
一般式(1)中、nは1〜30の数、mは10〜2000の数、oは0〜10の数 pは1〜10の数、Rは−SOMまたは−COOM(Mは水素原子またはアルカリ金属原子である)
【0009】
またスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体が一般式(2)〜(5)で示される構成成分を含むポリアリーレンエーテル系化合物からなるイオン交換樹脂、
【0010】
【化7】
Figure 2005044609
【0011】
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
【0012】
【化8】
Figure 2005044609
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
【0013】
【化9】
Figure 2005044609
【0014】
【化10】
Figure 2005044609
ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
【0015】
これ等イオン交換樹脂を用いて、1)テトラフルオロエチレン共重合体膜とスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体膜との接合、2)ポリアリーレンエーテル系共重合体膜の両面をテトラフルオロエチレン共重合体膜で接合、3)テトラフルオロエチレン共重合体膜の両面をスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体膜で接合させた複合膜で、それぞれの膜の接合表面にN−ビニルピロリドンおよび重合性不飽和基を少なくとも1個以上有するフォスフェート系化合物もしくはいずれか一方を付与した後、積層し加熱し接合させた複合膜の製造方法、又はいずれかのプロトン伝導膜へイオン交換樹脂を塗工し表面層を形成させた複合膜の製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の複合膜のプロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体は、例えばテトラフルオロエチレンと末端にスルホニルフルオライド基を有するパーフルオロビニルエーテルの共重合体を加水分解してスルホン酸基としたスルホン化ポリマー、或いは、このスルホン酸基の一部または全部がカルボキシル基に置換された形のカルボキシル化ポリマーからなる膜およびイオン交換樹脂である。
【0017】
【化11】
Figure 2005044609
【0018】
上記一般式(1)中、nは1〜30の数、mは10〜2000の数、oは0〜10の数、pは1〜10の数、Rは−SOMまたは−COOM(Mは水素原子またはアルカリ金属原子である。
【0019】
プロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体中のイオン交換容量(IEC)は、0.7〜1.5meq/g、好ましくは0.8〜1.2meq/gである。
【0020】
ポリマーの具体例としては、米国デュポン社製ナフィオン(IEC=0.9、R=―SOH、米国ダウケミカル社製の通称Dow膜(IEC=0.8、R=―SOH)、旭化成工業(株)製のアシベックス(IEC=0.9〜1.0、R=―SOH、−COOH)旭硝子(株)製のフレミオン(IEC=0.9、R=−COOH)等が挙げられ、例えば米国デュポン社製では、イオン伝導膜としてナフィオン112、ナフィオン117が使用でき、イオン交換樹脂としては20%ナフィオン溶液が使用できる。
【0021】
本発明の複合膜の他方のスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体は、芳香環上にスルホン酸を導入したポリアリーレンエーテル系化合物により、耐熱性、加工性、イオン伝導性、機械的特性に優れた高分子材料である。すなわち、電子吸引性の芳香環上にスルホン酸基を導入したモノマーとして、3,3’−ジスルホ−4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン誘導体を用いてポリアリーレンエーテルを合成することにより、高温でもスルホン酸基が脱離しにくいポリマーを提供することができるとともに、3,3’−ジスルホ−4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン誘導体とともに2,6−ジクロロベンゾニトリルを併用していることにより、重合性の低い3,3’−ジスルホ−4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン誘導体を使用していても短時間で高重合度のポリアリーレンエーテル化合物が得られる特徴も有している。
【0022】
すなわち、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(2)とともに一般式(3)で示される構成成分を含むことを特徴とする。
【0023】
【化12】
Figure 2005044609
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
【0024】
【化13】
Figure 2005044609
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
【0025】
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物においては上記一般式(2)および一般式(3)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(3)または下記一般式(4)で示される以外の構造単位は本発明のスルホン酸を導入したポリアリーレンエーテルの50重量%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物としては、スルホン酸基含有量が0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン伝導膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きい場合にはイオン伝導膜を高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。
【0027】
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物としては、下記一般式(4)とともに一般式(5)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。ビフェニレン構造を有していることにより高温高湿条件での寸法安定性に優れるとともに、フィルムの強靱性も高いものとなる。
【0028】
【化14】
Figure 2005044609
【化15】
Figure 2005044609
ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
【0029】
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(6)および一般式(7)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(6)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったものが挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(7)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリルを挙げることができる。
【0030】
【化16】
Figure 2005044609
【化17】
Figure 2005044609
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Zは塩素またはフッ素を示す。
【0031】
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(6)、(7)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
【0032】
また、上述の一般式(2)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(3)で表される構成成分中のAr’は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(6)、(7)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーよりより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
【0033】
本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(6)および一般式(7)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
【0034】
また、本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、測定したポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、イオン伝導膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
【0035】
本発明のスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体は、プロトン伝導膜およびイオン交換樹脂として使用できる。プロトン伝導膜を作製する手法として最も好ましいのは、イオン交換樹脂溶液からのキャストであり、キャスト膜の溶媒を除去してプロトン伝導膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることが膜の均一性からは好ましい。また、溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、樹脂溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。得られたプロトン伝導膜の厚みは、10〜100μmであることが好ましい。キャスト方法としては、例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。プロトン伝導膜として使用する場合、膜中のスルホン酸基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに得られた膜を浸漬処理することで行うことも効果的である。また、プロトン伝導膜のイオン伝導率は1.0x10−3S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導率が1.0x10−3S/cm以上である場合には、そのイオン伝導膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0x10−3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
【0036】
本発明のスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体をイオン交換樹脂溶液として使用する場合、イオン交換樹脂溶液濃度は0.5〜25wt%、好ましくは10〜18wt%が好ましく使用できる。この時のイオン交換樹脂溶液粘度(Pa.s@30℃)は、0.2〜4.0、好ましくは0.3〜2.0が好ましく使用できるがポリマー還元比粘度や溶液濃度によって溶液粘度は変化するものであって、この範囲を限定するものではない。
【0037】
本発明のプロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体膜とスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体膜を接合して複合膜得る方法としては、それぞれの膜の接合表面にN−ビニルピロリドンおよびモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート又はモノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の重合性不飽和基を少なくとも1個以上有するホスフェート系化合物いずれか一方を付与した後、積層し加熱し接合する方法等が挙げられる。
【0038】
或いは、少なくともいずれかの膜の接合表面にN−ビニルピロリドンおよびモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート又はモノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の重合性不飽和基を少なくとも1個以上有するホスフェート系化合物いずれか一方を付与した後、いずれかのイオン交換樹脂溶液を塗工・乾燥し、表面層を形成し更に加熱し接合する方法等が挙げられる。
【0039】
N−ビニルピロリドンや前記重合性ホスフェート系化合物には、ラジカル開始剤として、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−クミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が、重合性化合物に対して0.01〜10wt%程度に配合される。
【0040】
本発明の複合膜の膜―膜同士の積層方法によって得る方法を例示すると、N−ビニルピロリドンや重合性化合物をメタノール、エタノール、イソプロパノール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等に溶解し、前記ラジカル開始剤を配合し、この混合液を塗布剤として膜接合表面に塗布し、次いで80〜200℃、10〜160分間乾燥し、次いで、両膜を100g/cm程度の加圧下、100〜150℃で加熱・積層することによって複合膜が得られる。加熱・積層時の温度が150℃を超えるとテトラフルオロエチレン共重合体膜のガラス転移点温度(Tg)が140℃近傍であることから膜が炭化し脆くなるので好ましくない。
【0041】
本発明の複合膜は、プロトン伝導性、耐熱性および機械的特性を有するスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体からなるプロトン伝導膜とテトラフルオロエチレン共重合体からなるプロトン伝導膜とを接合することによって、テトラフルオロエチレン共重合体からなるプロトン伝導膜の耐熱性、機械的特性を改善し、発電特性および耐メタノール透過性等に優れ固体高分子型燃料電池用のプロトン交換膜として有用に利用できるものである。
【0042】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0043】
評価法・測定法
<強度・伸度・引張弾性率>
複合膜の機械的特性は、気温25℃、相対湿度50%の雰囲気で、オリエンテック社製テンシロンを用いて測定した。試料は幅10mmの短冊状とし、支間長40mm、引っ張り速度20mm/secで測定した応力歪み曲線から算出した。
【0044】
<イオン導電率>
イオン導電率σは次のようにして測定した。自作測定用プローブ(ポリテトラフルオロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の10kHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした直線の勾配D[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅×膜厚[cm]×D
【0045】
<溶液粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
【0046】
<イオン交換容量(IEC)>
乾燥試料を50〜60mg秤量し2.5mmol/1水酸化ナトリウム水溶液110mlに浸漬し1時間攪拌する。この液を濾過し、濾液100mlを分取りして0.01mol/1塩酸標準溶液により逆滴定する。また、同操作を試料のない状態で行いブランクとする。
Figure 2005044609
【0047】
<メタノール透過速度>
イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノールの透過速度として、以下の方法で測定した。25℃に調整した5モル/リットルのメタノール水溶液に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5モル/リットルのメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm)。
【0048】
<発電特性>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)に、触媒担持カーボン(カーボン:Cabot社製ValcanXC−72、白金−ルテニウム触媒担持量:40重量%)を、白金−ルテニウム触媒とナフィオンの重量比が2.7:1になるように加え、撹拌して触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cmになるように塗布、乾燥して、アノード用電極触媒層付きガス拡散層を作製した。また、デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液(品番:SE−20192)に、触媒担持カーボン(カーボン:Cabot社製ValcanXC−72、白金触媒担持量:40重量%)を、白金触媒とナフィオンの重量比が2.7:1になるように加え、撹拌して触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cmになるように塗布、乾燥して、カソード用電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記2種類の電極触媒層付きガス拡散層の間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により120℃、2MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ水・メタノール混合溶液と空気を供給し、電流密度0.2A/cmで放電試験を行った。
【0049】
本発明の実施例に用いるイオン交換樹脂を、以下の方法で合成した。
<イオン交換樹脂Aの合成>
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)5.2335g(0.01065mole)、2,6−ジシアノベンゾニトリル(略号:DCBN)2.3323g(0.013559mole)、4,4‘−ビフェノール4.5086g(0.02421mole)、炭酸カルシウム3.8484g(0.02784mole)を100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。35mlのNMPを入れて、150℃で一時間撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約5時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は1.24を示した。本試料の滴定でもとめたIECは、2.0meq/gを示した。
【0050】
<実施例1>
イオン交換樹脂Aのポリマー10gをNMP56mlに溶解し、ホットプレート上ガラス板にキャストし、乾燥した後、水中に一晩以上浸漬した。得られた膜は、希硫酸(濃硫酸6ml、水300ml)中で1時間沸騰水処理して塩をはずした後、純水でさらに1時間煮沸することで酸成分を除去した。得られた膜の厚みは10μmで、そのイオン伝導性を測定したところ、0.22S/cmの値を示した。次にテトラフルオロエチレン共重合体からなるプロトン伝導膜として、市販品米国デュポン社製ナフィオン112(IEC0.9meq/g)を用い、N−ビニルピロリドン10部と重合性ホスフェート系化合物PM−1(共栄社(株)製)2部、過酸化ベンゾイル0.01部、希釈溶媒エタノール88部からなる塗工液を各々に付与し、次いでお互いの膜を80℃、10分間乾燥し、次いで、両膜を100g/cm程度の加圧下、100℃で30分間で加熱・積層することによって60μm厚みの複合膜を作成した。
【0051】
<実施例2>
実施例1で得られた膜とナフィオン112膜を用いて、実施例1で得られた膜を挟む形でナフィオン112膜で実施例1と同様な方法で接合し70μm厚みの複合膜を作成した。
【0052】
<実施例3>
実施例1で得られた膜とナフィオン112膜を用いて、ナフィオン112を挟む形で実施例1で得られた膜で実施例1と同様な方法で接合し70μm厚みの複合膜を作成した。
【0053】
<実施例4>
実施例1で作成した膜に塗工液を付与した表面に、20%ナフィオン溶液を用いて塗工・乾燥し、更に100g/cm程度の加圧下、100℃で30分間で加熱・積層し40μm厚みの複合膜を作成した。
【0054】
<比較例>
実施例で用いた市販のプロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体からなる膜(米国デュポン社製ナフィオン112、膜厚50μm)の評価結果を表1に示した。
【0055】
実施例1〜4、比較例の特性値を表1に示す。
【0056】
【発明の効果】
実施例1から4の複合膜は、比較例と対比して機械的特性が改善され、耐メタノール透過性や発電性にも優れ、電池用電解質膜、固体高分子型燃料電池、表示素子、各種センサー、イオン交換膜等に使用でき、これ等の産業界に寄与すること大である。

Claims (7)

  1. プロトン伝導を有するテトラフルオロエチレン共重合体を含む膜と、スルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体を含む膜が、接合されてなる複合膜。
  2. プロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体が一般式(1)で表される構造からなる請求項1記載の複合膜。
    Figure 2005044609
    (一般式(1)中、nは1〜30の数、mは10〜2000の数、oは0〜10の数 pは1〜10の数、Rは−SOMまたは−COOM(Mは水素原子またはアルカリ 金属原子である)
  3. スルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体が一般式(2)〜(5)で示される構成成分を含むポリアリーレンエーテル系化物からなる共重合体のスルホン化物である請求項1乃至2いずれかに記載の複合膜。
    Figure 2005044609
    ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
    Figure 2005044609
    ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
    Figure 2005044609
    Figure 2005044609
    ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
  4. スルホン化ポリアリーレンエーテル系重合体からなる膜の両面にプロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体からなる膜で挟む形で接合した請求項1乃至3いずれかに記載の複合膜。
  5. プロトン伝導性を有するテトラフルオロエチレン共重合体からなる膜の両面にスルホン化ポリアリーレンエーテル系共重合体からなる膜で挟む形で接合した請求項1乃至3いずれかに記載の複合膜。
  6. 膜の接合表面にN−ビニルピロリドンを付与した後、積層し加熱し接合させることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の複合膜の製造方法。
  7. 膜の接合表面に重合性不飽和基を少なくとも1個以上有するホスフェート系化合物を付与した後、積層し加熱し接合させることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の複合膜の製造方法。
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JP2008060002A (ja) * 2006-09-01 2008-03-13 Sanyo Electric Co Ltd 膜電極接合体および燃料電池
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