JP2005043529A - ハロゲン化銀感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と、特定の構造を有するイエローカプラーとを含有するハロゲン化銀感光材料であって、高温条件下での保管、特に反復された高温条件下での保管による感度安定性に優れたハロゲン化銀感光材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に少なくとも1層の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が、イリジウム錯体化合物と、イリジウム以外の周期律表第5族〜10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体化合物とを含有するハロゲン化銀乳剤と、下記一般式(A)で表される化合物とを含有することを特徴とするハロゲン化銀感光材料。
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に少なくとも1層の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が、イリジウム錯体化合物と、イリジウム以外の周期律表第5族〜10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体化合物とを含有するハロゲン化銀乳剤と、下記一般式(A)で表される化合物とを含有することを特徴とするハロゲン化銀感光材料。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温条件下での保管、特に反復された高温条件での保管における感度安定性に優れたハロゲン化銀感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀感光材料は、高感度であること、色再現性に優れていること、連続処理に適していることから今日盛んに用いられている。従来より広く使われている一般撮影用ハロゲン化銀カラー感光材料では、例えば、カラーネガフィルムで撮影し、現像処理を介して得られた色画像を、光学系を用いて焼き付ける方式では、予めプリント条件を設定しておけば、カラーネガフィルムの濃度を測定した結果から簡単にプリント条件が決定、調整され、カラープリント感光材料(カラー印画紙)上に、1回の露光でフルカラーの優れた画質のカラープリント画像を連続的に得ることが可能であり、極めて高い生産性を有しているシステムである。また、このカラー印画紙は、最近では、デジタルカメラ等で撮影された画像データにより、レーザー、LED等の露光光源の光量を変調し、カラー画像を形成するデジタル画像形成方法にも使われている。デジタル画像露光においても、通常であれば変調されたB、G、Rの3色の光を混合し、1回の走査によってカラー画像が形成され、従来と同様の高い生産性を示していた。
【0003】
また、ハロゲン化銀感光材料を用いた記録材料は、特に低濃度においてノイズが少ないことが知られており、非常に滑らかな階調再現が可能である特徴を有していることから、露光装置が十分な階調再現容量を有する場合には、特に、ハイライトの描写性に優れるという特徴を有していた。こうした特徴から、ハロゲン化銀感光材料は、写真の分野のみではなく、印刷の分野でも、印刷の途中の段階で仕上がりの印刷物の状態をチェックするためのいわゆるカラープルーフの分野で広く用いられるようになってきている。
【0004】
プルーフの分野では、コンピュータ上で編集された色画像を印刷用フィルムに出力し、現像処理済みのフィルムを適宜交換しつつ分解露光することによって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色画像を形成させ、最終印刷物の画像をカラー印画紙上に形成させることにより、最終印刷物のレイアウトや色の適否を判断することが行われていた。
【0005】
最近では、コンピュータ上で編集された画像を直接印刷版に出力する方式が徐々に普及してきており、このような場合には、コンピュータ上のデータからフィルムを介することなく直接カラー画像を得ることが望まれていた。
【0006】
このような目的には、昇華型・溶融熱転写方式、電子写真方式、インクジェット方式等種々の方式の応用が試みられてきたが、高画質な画像が得られる方式では費用がかかり、生産性が劣るという欠点を有しており、また、費用が少なく、生産性に優れた方式では画質が劣るという欠点があった。
【0007】
ハロゲン化銀感光材料を用いたシステムでは、優れた鮮鋭性等から、正確な網点画像が形成できるなど高画質な画像形成が可能であり、一方、上述したように連続した現像処理が可能であることや、複数の色画像形成ユニットに対し同時に画像を書き込むことができる等の観点から、高い生産性を実現することが可能であった。
【0008】
近年、印刷の分野でデジタル化が進み、コンピュータ内のデータから直接画像を得る要求が強まっているが、前述のような理由によって、例えば、特開2001−235816号に開示されているようなハロゲン化銀感光材料がこの分野で有利に使われはじめている。
【0009】
ハロゲン化銀感光材料、特にカラー印画紙では、イエローの再現がオレンジ味になることが知られており、特に、プルーフ分野では改良が望まれていた。また、分子吸光係数の大きな画像色素の採用は、ハロゲン化銀感光材料のゼラチンの低減を可能とし、ひいては迅速処理が可能となることから、高い分子吸光係数を持つイエローカプラーの開発が望まれている。
【0010】
上記課題に対し、活性点に4−ピリミドン環とアニリノ基が結合したイエローカプラーを提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このイエローカプラーを用いることにより、裾切れのよいシャープな分光吸収特性が得られ、かつ耐光性、暗退色性に優れることを開示している。また、特定のイエローカプラーにより、色相が優れ、分子吸光係数が大きく、保存安定性特に光堅牢性が良好な色素を得ることができる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
これらの各公報に記載の特定の構造を有するイエローカプラーは、本発明に係るイエローカプラーに包含されるものであり、色再現的に好ましい特色を有する化合物であった。しかしながら、これらのイエローカプラーを、イリジウム化合物を含有する95モル%以上が塩化銀からなるハロゲン化銀乳剤と組み合わせて用いた場合に、保存による感度変動が大きいことが判明した。
【0012】
本発明者らがこの現象を解析した結果、合計の高温保存期間が等しい場合でも、継続して高温に保存された場合よりも、周期的に温度が変動する環境下で保存された場合の方が、よりダメージが大きいことが判明した。こうした現象に関して、特許文献1、2では何ら開示がなされてはおらず、また、その解決法に関しても示唆されていない。
【0013】
一方、VIII族金属錯体をdoping剤として含有し、第5族〜第10族の金属錯体を表面改質剤として含有するハロゲン化銀乳剤により、高感度で硬調な特性が得られる方法を開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、塩化銀含有率が95%以上で、粒子表面近傍に第5族〜第10族の金属元素を中心金属とし、6個の単座配位子のうち4回回転軸上の配位子の少なくとも一つが、他と異なった配位子である錯体を含有するハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀感光材料を用いて、低補充処理する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。低補充処理条件下でも、硬調で高い最高濃度を有するカラー画像を形成できることが記載されている。また、ハロゲン化銀粒子中に異なる電子徐放時間をもつ遷移金属錯体を3種以上含有し、該3種の遷移金属錯体が100秒以上、1/10〜100秒、1/1000〜1/10秒、1/1000秒以下のいずれかであるハロゲン化銀乳剤により、高感度、硬調で高照度不軌に優れる特性が得られる方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、これら特許文献3〜5の各公報には、特定の構造を有するカプラーを用いて、長期保存下における感度変動や、変動の温度依存性を改良する記載は一切無く、また、これを解決する手段についての示唆もない。
【0014】
一方、発色現像処理後の未露光部の濃度または色度値が特定の範囲にあり、かつイエロー色素が特定の規格化分光吸収を有するハロゲン化銀感光材料により、優れた色再現(黄色及び白)、明所あるいは暗所保存での白の安定性において優れた特性が得られることが開示されている(例えば、特許文献6参照。)。特許文献6に記載の実施例(段落番号0198〜同0204)には、イエローカプラーと組み合わせて用いられる青感光性ハロゲン化銀乳剤に、K3IrCl5(H2O)、K4Ru(CN)6、K4Fe(CN)6、六塩化イリジウムをドープしたことが記載されている。また、特許文献6の段落番号0142には、ハロゲン化銀粒子の内部及び/又は表面に金属イオンを組み込むことが好ましく、配位子としてニトロシルイオン、またはチオニトロシルイオンを用いることが好ましいことが開示されている。また、特許文献6の段落0143には、高照度相反則不軌改良の目的で、少なくとも一つの有機配位子を持つイリジウムイオンを持つことが特に好ましく、チアゾール配位子、中でも5−メチルチアゾールが特に好ましく用いられると記載している。この特許文献6の特許請求の範囲に記載の一般式(I)、(II)で表される化合物は、本発明に係る一般式(A)で表されるイエローカプラーに包含されるものであるが、特許文献6にはイリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と特定のイエローカプラーの組み合わせにより生じる長期保存による感度変動や、感度変動の温度依存性についての記載は一切なく、またこれを解決する手段についての示唆もない。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第5,455,149号明細書 (特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献2】
特開2002−296740号公報 (特許請求の範囲)
【0017】
【特許文献3】
特開平6−235994号公報 (特許請求の範囲)
【0018】
【特許文献4】
特開平7−128829号公報 (特許請求の範囲)
【0019】
【特許文献5】
特開2002−214733号公報 (特許請求の範囲)
【0020】
【特許文献6】
特開2002−351023号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と、特定の構造を有するイエローカプラーとを含有するハロゲン化銀感光材料であって、高温条件下での保管、特に反復された高温条件下での保管による感度安定性に優れたハロゲン化銀感光材料を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0023】
1.支持体上に、少なくとも1層の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が、イリジウム錯体化合物と、イリジウム以外の周期律表第5族〜10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体化合物とを含有するハロゲン化銀乳剤と、前記一般式(A)で表される化合物とを含有することを特徴とするハロゲン化銀感光材料。
【0024】
2.前記一般式(A)におけるBが、前記一般式(B)で表されることを特徴とする前記1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0025】
3.前記イリジウム錯体化合物が、前記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0026】
4.前記イリジウム錯体化合物が、前記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0027】
5.前記イリジウム錯体化合物が、前記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0028】
6.前記一般式(A)におけるZが、−N−C=N−部と共に3H−ピリミジン−4−オン環、または1H−ピリミジン−4−オン環を表すのに必要な原子群を表すことを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0029】
7.前記一般式(A)におけるZが、−N−C=N−部と共に2H−〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシド環、または4H−〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシド環を表すのに必要な原子群を表すことを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0030】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、95モル%以上が塩化銀からなるハロゲン化銀乳剤を用いることが1つの特徴である。
【0031】
この条件を満たせば、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等任意のハロゲン組成を有するものが用いられる。中でも、塩化銀を95モル%以上含有する塩臭化銀、中でも臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられ、また、表面近傍に沃化銀を0.05〜0.5モル%含有する塩沃化銀も好ましく用いられる。臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤の高濃度に臭化銀を含有する部分は、いわゆるコア・シェル乳剤であっても、完全な層を形成せず単に部分的に組成の異なる領域が存在するだけのいわゆるエピタキシー接合した領域を形成していてもよい。臭化銀が高濃度に存在する部分は、ハロゲン化銀粒子の表面の結晶粒子の頂点に形成されることが特に好ましい。また、組成は連続的に変化してもよいし不連続に変化してもよい。
【0032】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、上記の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤が、イリジウム錯体化合物を含有することが、特徴の1つである。本発明で規定する構成をとることにより、相反則不軌が改良され、高照度露光での減感が防止されたり、シャドー部領域(低濃度領域)での軟調化が防止されることが期待される。
【0033】
本発明でにおいては、イリジウム錯体化合物として、下記一般式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0034】
一般式(I)
[IrXnY6−n]m
上記一般式(I)において、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表し、mは−2または−3を表す。nは0〜5の整数を表す。
【0035】
本発明に係る上記一般式(I)で表されるイリジウム錯体化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
I−1:K3[IrCl6]
I−2:K2[IrCl6]
I−3:K3[IrBr6]
I−4:K2[IrBr6]
I−5:K3[IrBr4F2]
I−6:K3[IrI6]
I−7:(NH4)2[IrF6]
I−8:K2[IrBrCl5]
また、本発明においては、イリジウム錯体化合物として、下記一般式(II)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0037】
一般式(II)
[Ir(H2O)nXkY6−n−k]m
上記一般式(II)において、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表す。mは−2〜0の整数、kは0〜(6−n)の整数、nは1または2を表す。
【0038】
本発明に係る上記一般式(II)で表されるイリジウム錯体化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0039】
II−1:Cs2[IrBr5(H2O)]
II−2:K2[IrBr4Cl(H2O)]
II−3:K2[IrBr4Cl(H2O)]
II−4:K2[IrCl5(H2O)]
II−5:K[IrCl4(H2O)2]
II−6:K[IrBr4(H2O)2]
II−7:(NH4)2[IrCl5(H2O)]
また、本発明においては、イリジウム錯体化合物として、下記一般式(III)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0040】
一般式(III)
[IrLnXkY6−n−k]m
上記一般式(III)において、Lは有機配位子を表し、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表す。mは−2〜0の整数、kは0〜(6−n)の整数、nは1または2を表す。nが2である時は、Lは同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
Lで表される有機配位子としては、鎖式または環式の炭化水素または複素環化合物を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団によって置き換えられた化合物が好ましい。母体構造となる環式の炭化水素化合物及び複素環化合物としては、例えば、ベンゼン、フラン、チオフェン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−または1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、2,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビチオフェン、2,2′−ビピリジン、2,2′:6′,2″−ターピリジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾリン、チアゾール、5−メチルチアゾール、トリアジン、チアジアゾール、ジチアゾール、フェナントロリン化合物等を挙げることができ、イミダゾール、チアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−メチルチアゾール、チアジアゾールが好ましく用いられる。
【0042】
本発明に係る上記一般式(III)で表されるイリジウム錯体化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
III−1:K2[Ir(thiazole)Cl5]
III−2:K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]
III−3:K[Ir(thiazole)2Cl4]
III−4:K[Ir(5−methylthiazole)2Cl4]
III−5:K2[Ir(thiazole)Br5]
III−6:K[Ir(thiazole)2Br4]
III−7:K2[IrBr5(1,2,4−triazole)]
III−8:K2[IrBr5([1,3,4]−thiadiazole)]
III−9:K2[IrBr5(2,5−dichrolo−[1,3,4]−thiadiazole)]
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に、上述した各イリジウム錯体化合物を含有せしめるには、イリジウム錯体化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、あるいはハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の時期で添加すればよい。
【0044】
前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、イリジウム錯体化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。また、予めこれらのイリジウム錯体化合物を含有するハロゲン化銀微粒子を形成しておいて、これを添加することによって調製することもできる。
【0045】
本発明に係るイリジウム錯体化合物のハロゲン化銀乳剤中への添加量は、ハロゲン化銀1モル当り1×10−10モル以上、1×10−5モル以下が好ましく、1×10−9モル以上、1×10−7モル以下がより好ましい。
【0046】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、ハロゲン化銀乳剤中に、上記説明したイリジウム錯体化合物と共に、イリジウム以外の周期律表第5族〜第10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体を含有することが、特徴の1つである。
【0047】
中心金属原子としては、ルテニウム、オスミウムが好ましく用いられる。ニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体として好ましく用いることのできる化合物として、下記の化合物(dopt)を挙げることができる。
【0048】
dopt−1:Cs2[Os(NO)Cl5]
dopt−2:K2[Ru(NO)Cl5]
dopt−3:K2[Fe(NO)(CN)5]
dopt−4:K2[Ru(NO)Br5]
dopt−5:K2[Ru(NO)I5]
dopt−6:K2[Re(NO)(CN)5]
dopt−7:K2[Re(NO)Cl5]
dopt−8:K[Ir(NO)Cl5]
dopt−9:K2[Ru(NS)Cl5]
dopt−10:K2[Os(NS)Br5]
dopt−11:K2[Ru(NS)(CN)5]
dopt−12:K2[Ru(NS)(SCN)5]
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に、上記の金属錯体を含有せしめるには、該金属錯体をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の時期で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、金属錯体をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。また、予めこれらの金属錯体を含有するハロゲン化銀微粒子を形成しておいて、これを添加することによって調製することもできる。
【0049】
本発明に係る上記金属錯体のハロゲン化銀乳剤への添加量は、ハロゲン化銀1モル当り5×10−11モル以上、5×10−6モル以下が好ましく、5×10−10モル以上、5×10−8モル以下がより好ましい。
【0050】
次いで、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの詳細について説明する。
【0051】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、上記特性を有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層中に、前記一般式(A)で表されるイエローカプラーを共存させることが特徴の1つである。
【0052】
前記一般式(A)において、Rは置換基を表し、Rで表される置換基としては、特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(例えば、ピリジルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、シクロヘキシルスルホニルアミノ基、ドデシルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、エチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられ、これらの基は、更に上記の同様の置換基によって置換されていてもよい。
【0053】
Rで表される基として好ましくは、アルキル基、またはアリール基であり、更に好ましくは、Rに更に置換する置換基も含めて総炭素数が2〜24のアルキル基、または同様に総炭素数が6〜24のアリール基である。Rで表される基として更に好ましくは、Rに更に置換する置換基も含めて総炭素数が2〜18のアルキル基、または同様に総炭素数が6〜18のアリール基である。ここで、Rに置換する基としては、異種原子を含んでも良く、総炭素数には異種原子の数は含まない。
【0054】
前記一般式(A)において、Aで表される脱離基は、例えば、フェノキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルホニル基、あるいは含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、あるいはヒダントイニル基等)が挙げられる。これらAで表わされる基は、置換基を有することもでき、置換基としては、例えば、前記Rで表される基を挙げることができる。更に詳しくは、特開平8−29932号公報の段落〔0033〕〜同〔0043〕に記載されているWで表される基と同義のものを挙げることができる。
【0055】
前記一般式(A)において、Bで表される置換基としては、前記一般式(B)または複素環基であることが好ましい。
【0056】
前記一般式(B)において、Xは水素原子または置換基を表し、R′は置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2〜4の整数を表すとき、R′は同じでも異なってもよい。
【0057】
一般式(B)のR′が表す置換基としては、特に制限はないが、下記一般式(1)〜一般式(5)で表される基または、一般式(A)におけるRで挙げた基と同義の基を挙げることができる。R′が表す置換基として、好ましくはアシルアミノ基、スルホニルアミノ基、オキシカルボニル基等が挙げられる。
【0058】
【化3】
【0059】
上記一般式(1)において、Arはアリール基または複素環基、R1は炭素原子数4以下の脂肪族基、もしくはアリール基または複素環基を表す。L1は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0060】
Arで表されるアリール基としては、フェニル基またはナフチル基を挙げることができる。Arで表される複素環基としては5〜7員ものが好ましく、具体的には2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−ピロリル基、1−テトラゾニル基等を挙げることができる。Arで表されるアリール基、複素環基はさらに置換基を有してもよく、これらの置換基としては特に制限はないが、代表例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を挙げることができる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等を挙げることができる。アルキニル基としては、ビニル、アリル、オレイル、シクロヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基としては、プロパルギル、1−ペンチニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基を挙げることができる。複素環基としては、5〜7員のものが好ましく、具体的には2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−ピロリル基、1−テトラゾリジニル基等を挙げることができる。Arとして好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0061】
一般式(1)において、R1は炭素数4以下の脂肪族基を表し、またはアリール基、複素環基を表す。R1で表される脂肪族基としては、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基等を挙げることができる。アルキニル基としては、ビニル、アリル基等が挙げられる。アルケニル基としては、プロパルギル基等が挙げられる。R1で表されるアリール基、R1で表される複素環基としては、前記Arで表される基と同義の基で表すことができる。R1で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、総炭素数が4以下の範囲で、更に置換基を有してもよい。これらの置換基としては特に限定されないが、代表例としては、例えば、アルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アルケニル、シクロアルキル等の各基が挙げられるが、この他にハロゲン原子、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、スルホ等の各基、スピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基等も挙げられる。
【0062】
一般式(1)において、R1で表されるアリール基、複素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリミジニル基、チエニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基等が挙げられる。これらの基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、一般式(A)におけるRで表される基と同様の基を挙げることができる。
【0063】
R1として好ましくは、炭素数が4以下のアルキル基、もしくはアリール基であり、特に好ましくはアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等である。
【0064】
一般式(1)において、L1で表される2価の連結基は、特に制限はないが、例えば、−NHCOCH2CH2−、−NHCOCH2CH2CH2−、−COOCH2CH2−、NHSO2CH2CH2−、−COOCH2CH2CH2−、−SO2NHCH2CH2−、−NHCOCH2C(CH2)2CH2−、−COOCH2C(CH2)2CH2O−、−COOCH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2SO2CH2CH2−、−NHCOCH2CH2−Ph−CH2CH2−などが挙げられる。
【0065】
一般式(1)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(1)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0066】
次に、一般式(2)で表される置換基について詳細に説明する。
【0067】
【化4】
【0068】
上記一般式(2)において、R2は前記一般式(1)のR1と同義の基を表し、R3及びR4は各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。L2は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0069】
一般式(2)において、R3、R4は各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、これらの代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基の他、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オレイル基、ネオペンチル基、フェニル基等を例として挙げることができる。一般式(2)において、R2、R3、R4は、各々好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、無置換アルキル基であるのが最も好ましい。
【0070】
一般式(2)におけるL2で表される2価の連結基は、特に制限はなく、一般式(1)におけるL1で表される基と同様の基を挙げることができる。
【0071】
一般式(2)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(2)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして、特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0072】
次に、一般式(3)で表される置換基について説明する。
【0073】
【化5】
【0074】
上記一般式(3)において、R5は炭素原子数5以上の無置換のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基、R6は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基、J1は−O−または−NR11−を表し、R11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。L3は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0075】
R5は、炭素数5以上の無置換アルキル基、無置換アルケニル基、または無置換アルキニル基を表し、分岐であっても直鎖であってもよく、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、1,1,3−トリメチルブチル基、オレイル基、シクロヘキセニル基、アダマンチル基を挙げることができる。
【0076】
一般式(3)において、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R6及びR7の表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0077】
一般式(3)において、R6は好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは水素原子であり、R7は好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0078】
一般式(3)において、J1は好ましくは−NR11−である。R11は一般式(1)におけるR1と同義である。
【0079】
一般式(3)におけるL3で表される2価の連結基は、特に制限はなく、一般式(1)におけるL1で表される基と同様の基を挙げることができる。
【0080】
一般式(3)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(3)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして、特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0081】
次に、一般式(4)で表される置換基について説明する。
【0082】
【化6】
【0083】
上記一般式(4)において、R8、R9及びR10は各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基、Wは−CO−又は−SO2−を表す。L4は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0084】
一般式(4)において、R8、R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R8、R9及びR10の表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0085】
J1は−O−または−NR11−を表し、R11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0086】
一般式(4)におけるL4で表される2価の連結基は、特に制限はなく、一般式(1)におけるL1で表される基と同様の基を挙げることができる。
【0087】
一般式(4)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(4)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして、特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0088】
次に、一般式(5)で表される置換基について説明する。
【0089】
【化7】
【0090】
上記一般式(5)において、R12及びR13は各々置換基を表す。mは0または1の整数を表す。L5は2価の連結基を表しnは0または1の整数を表す。
【0091】
一般式(5)において、R12及びR13で表される置換基としては、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R12及びR13の表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及び複素環基の代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0092】
一般式(5)において、L5は2価の連結基を表し、L5としては、例えば、−NH−、−CH2CH2CONH−、−CH2CH2CH2CONH−、−CH2CH2SO2NH−、−CH2CH2CH2SO2NH2−、−O−Ph−SO2NH−、−CH2CH2CH2OCO−、−CH2C(CH2)2CH2OCO−、−CH2CH2NHCONH−、−CH2CH2CH2NHSO2−Ph−NHSO2−などが挙げられる。
【0093】
一般式(5)において、nは0または1を表し、好ましくは1である。
一般式(5)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(5)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0094】
前記一般式(B)において、Xは水素原子または置換基を表す。Xで表される置換基としては、前記一般式(B)におけるR′で表される置換基と同様の基を挙げることができる。Xとして好ましいのは、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、またはスルホンアミド基であり、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシルアミノ基が更に好ましい。
【0095】
前記一般式(A)において、Bが表す複素環基としては、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロール、チオフェン、チアゾリル、オキサゾリル、フラン、チアゾリル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾピリミジニル、ナフトイミダゾリル、ナフトピラゾリルなどが挙げられる。Bで表される複素環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記一般式(A)におけるRで表される置換基の他、ハロゲン原子なども挙げることができる。Bで表される複素環基としてより好ましい基は、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフトイミダゾリル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、ピラゾール−2−イル、ベンゾオキサゾール−2−イル、ピロール−2−イル等であり、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフトイミダゾリル、ピラゾール−2−イルが特に好ましい。
【0096】
一般式(A)において、Zが−N−C=N−部とともに表す窒素6員環の例としては、ピリミジン−4−オン、1,3−ジアジン−4,6−ジオン、〔1,3,5〕トリアジン−2−オン、〔1,2,4〕トリアジン−5−オン、〔1,2,4〕チジアジン−1,1−ジオキシド等が挙げられる。
【0097】
Zが形成する含窒素7員環の例としては、1,3−ジアゼピン−4−オン、1,3−ジアゼピン−5−オン、〔1,2,4〕チアジアゼピン−1,1−ジオキシド、〔1,3,5〕チアジアゼピン−1,1−ジオキシド等が挙げられる。
【0098】
Zは好ましくは6員環であり、3H−ピリミジン−4−オン環、1H−ピリミジン−4−オン環もしくは1H−〔1,2,4〕チジアジン−1,1−ジオキシド環、4H−〔1,2,4〕チジアジン−1,1−ジオキシド環がより好ましい。即ち、Zは−C(−R2)=C(−R3)−CO−、または−C(−R2)=C(−R3)−SO2−のように表され、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R2、R3は互いに結合して−C=C−部とともに5〜7員環を形成してもよく、このようにして形成する環としては、好ましくは5〜7員の脂環、芳香環、もしくはヘテロ環で、例えば、ベンゼン環、ピラゾール環、フラン環、チオフェン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環が挙げられる。より好ましくは、芳香族6員環であり、ベンゼン環であることが最も好ましい。なお、R2、R3が表す置換基としては、前述の一般式(B)におけるR′と同義である。
【0099】
以下に、前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの例示化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
【化8】
【0101】
【化9】
【0102】
【化10】
【0103】
【化11】
【0104】
【化12】
【0105】
【化13】
【0106】
【化14】
【0107】
【化15】
【0108】
【化16】
【0109】
【化17】
【0110】
【化18】
【0111】
【化19】
【0112】
【化20】
【0113】
【化21】
【0114】
【化22】
【0115】
【化23】
【0116】
【化24】
【0117】
【化25】
【0118】
【化26】
【0119】
【化27】
【0120】
【化28】
【0121】
【化29】
【0122】
【化30】
【0123】
【化31】
【0124】
【化32】
【0125】
【化33】
【0126】
【化34】
【0127】
【化35】
【0128】
【化36】
【0129】
【化37】
【0130】
【化38】
【0131】
【化39】
【0132】
【化40】
【0133】
【化41】
【0134】
【化42】
【0135】
【化43】
【0136】
【化44】
【0137】
【化45】
【0138】
【化46】
【0139】
【化47】
【0140】
【化48】
【0141】
【化49】
【0142】
【化50】
【0143】
次いで、本発明のハロゲン化銀感光材料の上記で説明した構成要件を除いたその他の構成要件について説明する。
【0144】
はじめに、ハロゲン化銀粒子、ハロゲン化銀乳剤について説明する。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の形状は、任意のものを用いることができる。好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21号、39ページ(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有するハロゲン化銀粒子を調製し、これを用いることもできる。更に、双晶面を有するハロゲン化銀粒子を用いてもよい。
【0145】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられるが、単分散のハロゲン化銀粒子を二種以上、同一層に添加することが特に好ましい。
【0146】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径は、特に制限はないが、迅速処理性及び得られる感度や、他の写真性能などを考慮すると、好ましくは0.1〜1.2μm、更に好ましくは、0.2〜1.0μmの範囲である。
【0147】
この粒径は、ハロゲン化銀粒子の投影面積、あるいは直径近似値を使ってこれを測定することができる。ハロゲン化銀粒子が実質的に均一形状である場合には、粒径分布はその直径か、あるいは投影面積としてかなり正確にこれを表すことができる。
【0148】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子であり、特に好ましくは変動係数0.15以下の単分散乳剤を2種以上同一層に添加することである。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0149】
変動係数=S/R
(ここに、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
ハロゲン化銀乳剤の調製装置、あるいは調製方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0150】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。該ハロゲン化銀粒子は、一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を調製した後で成長させてもよい。種粒子を調製する方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0151】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなど、いずれでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に、同時混合法の一形式として、特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0152】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許第2,921,164号等に記載されている水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化させて添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行なう装置などを用いてもよい。
【0153】
更に、必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物または増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、または、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0154】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法等を適宜組み合わせて用いることができる。カルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることができるが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としては、チオ硫酸塩、トリエチルチオ尿素、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。
【0155】
イオウ増感剤の添加量としては、適用されるハロゲン化銀乳剤の種類や期待する効果の大きさなどにより適宜変更することが好ましいが、概ねハロゲン化銀1モル当たり5×10−10〜5×10−5モルの範囲、好ましくは5×10−8〜3×10−5モルの範囲である。
【0156】
金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することができる。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることができる。金化合物の使用量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などによって一様ではないが、通常は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−4〜1×10−8モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10−5〜1×10−8モルである。これらの化合物は、増感剤としてではなく、塗布液の調製段階などで種々の目的で添加することもできる。
【0157】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いてもよい。
【0158】
本発明のハロゲン化銀感光材料には、400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含む層を有することもできる。該ハロゲン化銀乳剤は、1種または、2種以上の増感色素を組み合わせて含有する。
【0159】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、公知の化合物をいずれも用いることができるが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号28ページに記載のBS−1〜8を単独でまたは組み合わせて好ましく用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。
【0160】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。また、これらの色素の添加方法としては、水またはメタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水と混和性の有機溶媒に溶解して溶液として添加してもよいし、増感色素を密度が1.0g/mlより大きい、水混和性溶媒の溶液または、乳化物、懸濁液として添加してもよい。
【0161】
増感色素の分散方法としては、高速撹拌型分散機を用いて水系中に機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法以外に、特開昭58−105141号に記載のようにpH6〜8、60〜80℃の条件下で水系中において機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法、特公昭60−6496号に記載の表面張力を3.8×10−2N/m以下に抑える界面活性剤の存在下に分散する方法、特開昭50−80826号に記載の実質的に水を含まず、pKaが5を上回らない酸に溶解し、該溶解液を水性液に添加分散し、この分散物をハロゲン化銀乳剤に添加する方法等を用いることができる。
【0162】
分散に用いる分散媒としては水が好ましいが、少量の有機溶媒を含ませて溶解性を調整したり、ゼラチン等の親水性コロイドを添加して分散液の安定性を高めることもできる。
【0163】
分散液を調製するのに用いることのできる分散装置としては、例えば、特開平4−125631号公報の第1図に記載の高速撹拌型分散機の他、ボールミル、サンドミル、超音波分散機等を挙げることができる。
【0164】
また、これらの分散装置を用いるに際し、特開平4−125632号に記載のように、あらかじめ乾式粉砕などの前処理を施した後、湿式分散を行う等の方法をとってもよい。
【0165】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、ハロゲン化銀感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で、公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることができる。この様な目的で用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号公報の7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される含窒素複素環メルカプト化合物を挙げることができ、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、特開2000−267235号公報の8ページ右欄32〜36行目に記載の化合物、特開平9−152674号の一般式(I)で表されるメルカプトピリミジン化合物、一般式(II)で表されるハロゲン化銀への吸着促進基と置換、未置換のヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物、具体的には、(I−1)、(I−2)、(I−7)、(I−9)、(II−1)、(II−3)で表される化合物を挙げることができる。また、特開平10−31279号の(A)〜(D)で示されたスルフィド、ポリスルフィド基を有する化合物を挙げることができ、具体的には、(C−1)、(C−9)、(C−14)、(C−15)、(C−16)、(D−1)、(D−6)、α−イオウ、特開2000−122204号の(I−4)、(I−6)を挙げることができる。
【0166】
これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。これらの化合物の存在下に化学増感を行う場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−5〜5×10−4モル程度の量で好ましく用いられる。化学増感終了時に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−6〜1×10−2モル程度の量が好ましく、1×10−5〜5×10−3モルがより好ましい。塗布液調製工程において、ハロゲン化銀乳剤層に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−6〜1×10−1モル程度の量が好ましく、1×10−5〜1×10−2モルがより好ましい。またハロゲン化銀乳剤層以外の層に添加する場合には、塗布皮膜中の量が、1m2当り1×10−9〜1×10−3モル程度の量が好ましい。
【0167】
次いで、本発明のハロゲン化銀感光材料で用いる油溶性添加剤について説明する。
【0168】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられるカプラーとしては、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの他に、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得るいかなる化合物を用いることが出来るが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0169】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられるマゼンタカプラーとしては、特開平6−95283号の7ページ右欄に記載の一般式[M−1]で示される化合物が発色色素の分光吸収特性がよく好ましい。好ましい化合物の具体例としては、同号の8〜11ページに記載の化合物M−1〜M−19を挙げることができる。更に、他の具体例としては欧州公開特許第273,712号の6〜21頁に記載されている化合物M−1〜M−61及び同第235,913号の36〜92頁に記載されている化合物1〜223の中の上述の代表的具体例以外のものを挙げることができる
上記マゼンタカプラーは、他の種類のマゼンタカプラーと併用することもでき、通常ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル、好ましくは1×10−2〜8×10−1モルの範囲で用いることができる。
【0170】
本発明のハロゲン化銀感光材料において形成されるマゼンタ画像の分光吸収のλmaxは530〜560nmであることが好ましく、またλL0.2は、580〜635nmであることが好ましい。λL0.2とは、マゼンタ画像の分光吸光度曲線上において、最大吸光度が1.0を示す波長よりも長波で、吸光度が0.2を示す波長をいう。
【0171】
本発明のハロゲン化銀感光材料のマゼンタ画像形成層には、マゼンタカプラーに加えて、イエローカプラーが含有されることが好ましい。これらのカプラーのpKaの差は2以内であることが好ましく、更に好ましくは1.5以内である。本発明のマゼンタ画像形成性層に含有させる好ましいイエローカプラーは、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの他に、特開平6−95283号の12ページ右欄に記載の一般記載一般式[Y−Ia]で表されるカプラーである。同公報の一般式[Y−1]で表されるカプラーのうち、特に好ましいものは、一般式[M−1]で表されるマゼンタカプラーと組み合わせる場合、一般式[M−1]で表されるカプラーのpKa値より、3以上低くないpKa値を有するカプラーである。
【0172】
イエローカプラーとして具体的な化合物例は、特開平6−95283号の12〜13ページ記載の化合物Y−1及びY−2の他、特開平2−139542号の13〜17ページに記載の化合物(Y−1)〜(Y−58)を好ましく使用することができるがもちろんこれらに限定されることはない。
【0173】
本発明のハロゲン化銀感光材料のイエロー画像形成層には、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーと共に、上記の公知のイエローカプラーを併せて用いることができる。
【0174】
本発明のハロゲン化銀感光材料により形成されるイエロー画像の分光吸収のλmaxは425nm以上であることが好ましく、λL0.2は515nm以下であることが好ましい。
【0175】
イエロー色画像の分光吸収のλL0.2とは、特開平6−95283号21ページ右欄1行〜24行に記載の内容で定義される値であり、イエロー色素画像の分光吸収特性で長波側の不要吸収の大きさを表す。
【0176】
イエローカプラーは、通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル、好ましくは1×10−2〜8×10−1モルの範囲で用いることができる。
【0177】
本発明のハロゲン化銀感光材料において、シアン画像形成層中に含有されるシアンカプラーとしては、公知のフェノール系、ナフトール系又はイミダゾール系、アゾール系カプラーを用いることができる。例えば、アルキル基、アシルアミノ基、或いはウレイド基などを置換したフェノール系カプラー、5−アミノナフトール骨格から形成されるナフトール系カプラー、離脱基として酸素原子を導入した2当量型ナフトール系カプラーなどが代表される。このうち好ましい化合物としては、特開平6−95283号の13ページに記載の一般式[C−I]、[C−II]が挙げられる。
【0178】
シアンカプラーは、通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル、好ましくは1×10−2〜8×10−1モルの範囲で用いることができる。
【0179】
該マゼンタ色画像、シアン色画像及びイエロー色画像の分光吸収特性を調整するために、色調調整作用を有する化合物を添加することが好ましい。このための化合物としては、特開平6−95283号22ページ記載の一般式[HBS−I]に記載されるリン酸エステル系化合物、[HBS−II]で示されるホスフィンオキサイド系化合物が好ましく、より好ましくは同号22ページ記載の一般式[HBS−II]で示される化合物である。また、特開平4−265,975号5ページ記載の(a−i)〜(a−x)を代表とする高級アルコール系化合物を挙げることができる。
【0180】
前記マゼンタ、シアン、イエローの各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することができる。好ましい化合物としては、特開平2−66541号の3ページに記載の一般式IおよびIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物、特開昭64−90445号記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が、特にマゼンタ色素用として好ましい。また、特開平1−196049号に記載の一般式I′で示される化合物および特開平5−11417号記載の一般式IIで示される化合物が、特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0181】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられるステイン防止剤やその他の有機化合物等の油溶性添加剤を塗布液中に添加する手段として、水中油滴型乳化分散法を用いる場合、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後、または、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。ステイン防止剤等を溶解して分散するために用いることの出来る高沸点有機溶媒としては、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリオクチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類が好ましく用いられる。また高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0であることが好ましい。また二種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0182】
本発明のハロゲン化銀感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物をハロゲン化銀乳剤層間に設けた中間層に添加して色濁りを防止したり、また、ハロゲン化銀乳剤層に直接添加してカブリ等を改良することが好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2、5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は、特開平4−133056号に記載の一般式IIで示される化合物であり、同号13〜14ページ記載の化合物II−1〜II−14および17ページ記載の化合物1が挙げられる。
【0183】
本発明のハロゲン化銀感光材料中には、紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり、色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては特開平1−250944号に記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号に記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号に記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号に記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号に記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0184】
本発明のハロゲン化銀感光材料では、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的で、公知の化合物をいずれも用いることができるが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号308ページに記載のAI−1〜11の染料および特開平6−3770号記載の染料が好ましく用いられる。
【0185】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、ハロゲン化銀乳剤層のうち最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の耐拡散性化合物で着色された親水性コロイド層を有することが好ましい。着色物質としては染料またはそれ以外の有機、無機の着色物質を用いることができる。
【0186】
本発明のハロゲン化銀感光材料では、ハロゲン化銀乳剤層のうち最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の着色された親水性コロイド層を有することが好ましく、該層に白色顔料を含有していてもよい。例えば、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、硫酸バリウム、ステアリン酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン等を用いることができるが、種々の理由から、中でも二酸化チタンが好ましい。白色顔料は処理液が浸透できるような、例えば、ゼラチン等の親水性コロイドの水溶液バインダー中に分散される。白色顔料の塗設量は、好ましくは0.1〜50g/m2の範囲であり、更に好ましくは0.2〜5g/m2の範囲である。
【0187】
また、支持体と、支持体から最も近いハロゲン化銀乳剤層との間には、白色顔料含有層の他に、必要に応じて下塗り層、あるいは任意の位置に中間層等の非感光性親水性コロイド層を設けることができる。
【0188】
本発明のハロゲン化銀感光材料中に、蛍光増白剤を添加することで、白地性をより改良でき好ましい。蛍光増白剤は、紫外線を吸収して可視光の蛍光を発する事のできる化合物であれば特に制限はないが、分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を有するジアミノスチルベン系化合物であり、これらの化合物には増感色素の感材外への溶出を促進する効果もあり好ましい。他の好ましい一つの形態は、蛍光増白効果を有する固体微粒子化合物である。
【0189】
また、本発明のハロゲン化銀感光材料には、油溶性染料や顔料を含有すると白地性が改良され好ましい。油溶性染料の代表的具体例は、特開平2−842号8ページ〜9ページに記載の化合物1〜27が挙げられる。
【0190】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられる油溶性添加剤の分散や塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤として好ましい化合物は、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基またはその塩を含有するものが挙げられる。具体的には、特開昭64−26854号の記載のA−1〜A−11が挙げられる。また、アルキル基に弗素原子を置換した界面活性剤も好ましく用いられる。これらの分散液は、通常ハロゲン化銀乳剤を含有する塗布液に添加されるが、分散後塗布液に添加されるまでの時間、および塗布液に添加した後塗布までの時間は短いほうがよく、各々10時間以内が好ましく、3時間以内、20分以内がより好ましい。
【0191】
本発明のハロゲン化銀感光材料には、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じて他のゼラチン、例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0192】
これらバインダーに対する硬膜剤としては、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。特開昭61−249054号、同61−245153号に記載の化合物を使用することが好ましい。また、写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐため、コロイド層中に特開平3−157646号に記載のような防腐剤および抗カビ剤を添加することが好ましい。また、ハロゲン化銀感光材料または処理後のハロゲン化銀感光材料表面の物性を改良するため、保護層に、例えば、特開平6−118543号や特開平2−73250号に記載の滑り剤やマット剤を添加することが好ましい。
【0193】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いる支持体としては、どのような材質を用いてもよく、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることができる。なかでも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としては、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートまたはそれらのコポリマーが好ましい。
【0194】
紙の表面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体は、通常、50〜300g/m2の質量を有する表面の平滑なものが用いられるが、プルーフ画像を得る目的においては、取り扱い感覚を印刷用紙に近づけるため、130g/m2以下の原紙が好ましく用いられ、更に70〜120g/m2の原紙が好ましく用いられる。
【0195】
本発明に用いられる支持体としては、ランダムな凹凸を有するものであっても平滑なものであっても好ましく用いることができる。
【0196】
支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/または有機の白色顔料を用いることができ、好ましくは無機の白色顔料が用いられ、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。白色顔料として好ましくは、硫酸バリウム、酸化チタンである。
【0197】
支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良する観点からは13質量%以上が好ましく、更には15質量%以上が好ましい。
【0198】
紙支持体の両面を被覆する耐水性樹脂層における白色顔料の分散度は、特開平2−28640号公報に記載の方法で測定することができる。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が、前記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0199】
本発明に用いられる両面に耐水性樹脂層を有する紙支持体の樹脂層は、1層であってもよいし、複数層からなってもよい。樹脂層を複数層とし、ハロゲン化銀乳剤層と接する面側に白色顔料を高濃度で含有させると鮮鋭性の向上効果が大きく、プルーフ用画像を形成するのに好ましい形態の1つである。
【0200】
また、支持体の中心面平均粗さ(SRa)の値としては0.15μm以下、更には0.12μm以下でことが、光沢性がよいという効果が得られる観点から好ましい。
【0201】
本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は、必要に応じて支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/またはその他の特性を付与するための1または2以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0202】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、ハロゲン化銀乳剤層は支持体上に積層塗布されるが、支持体からの順番はどのような順番でもよい。この他に必要に応じ中間層、フィルター層、保護層等を配置することができる。
【0203】
支持体上へのハロゲン化銀乳剤層の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。塗布法としては2種以上の層を同時に塗布することの出来るエクストルージョンコーティング及びカーテンコーティングが特に有用である。
【0204】
ハロゲン化銀感光材料の幅としては、用途に応じて任意の幅の物を用いることができるが、プルーフの用途では400mm以上の幅が好ましく用いられる。800mmあるいはそれ以上の幅の感光材料も好ましく用いられる。
【0205】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料を面積階調画像の形成に用いる場合には、通常、面積階調露光であればY、M、C、墨の発色をさせることで目的を達することもできるが、墨に加えてM、C等の単色が発色したことを識別するために、3値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。印刷においては、特別な色の版を用いることがあるが、これを再現するためには、4値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。
【0206】
本発明に用いられる露光装置において、露光光源は、公知のものをいずれも好ましく用いることができるが、レーザーまたは発光ダイオード(以下、LEDと記す)がより好ましく用いられる。
【0207】
レーザーとしては、半導体レーザー(以下、LDと記す)がコンパクトであること、光源の寿命が長いことから好ましく用いられる。また、LDはDVD、音楽用CDの光ピックアップ、POSシステム用バーコードスキャナ等の用途や光通信等の用途に用いられており、安価であり、かつ比較的高出力のものが得られるという長所を有している。LDの具体的な例としては、アルミニウム・ガリウム・インジウム・ヒ素(650nm)、インジウム・ガリウム・リン(〜700nm)、ガリウム・ヒ素・リン(610〜900nm)、ガリウム・アルミニウム・ヒ素(760〜850nm)等を挙げることができる。最近では、青光を発振するレーザーも開発されているが、現状では、610nmよりも長波の光源としては、LDを用いるのが有利である。
【0208】
SHG素子を有するレーザー光源としては、LD、YAGレーザーから発振される光をSHG素子により半分の波長の光に変換して放出させるものであり、可視光が得られることから適当な光源がない緑〜青の領域の光源として用いられる。この種の光源の例としては、YAGレーザーにSHG素子を組み合わせたもの(532nm)等がある。
【0209】
ガスレーザーとしては、ヘリウム・カドミウムレーザー(約442nm)、アルゴンイオンレーザー(約514nm)、ヘリウムネオンレーザー(約544nm、633nm)等が挙げられる。
【0210】
LEDとしては、LDと同様の組成を有するものが知られているが、青〜赤外まで種々のものが実用化されている。
【0211】
本発明に用いられる露光光源としては、各レーザーを単独で用いてもよいし、これらを組合せ、マルチビームとして用いてもよい。LDの場合には、例えば、10個のLDを並べることにより10本の光束からなるビームが得られる。一方、ヘリウムネオンレーザーのような場合、レーザーから発した光をビームセパレーターで、例えば、10本の光束に分割する。
【0212】
露光用光源の強度変化は、LD、LEDのような場合には、個々の素子に流れる電流値を変化させる直接変調を行うことができる。直接変調の場合には、電流値の調整により発光光量を変化させてもよいし、パルス状に発光させ、パルスの幅(発光時間)を変化させるパルス幅変調方式を用いてもよいし、パルス数を変化させるパルス数変調方式をとってもよい。LDの場合には、AOM(音響光学変調器)のような素子を用いて強度を変化させてもよい。ガスレーザーの場合には、AOM、EOM(電気光学変調器)等のデバイスを用いるのが一般である。
【0213】
光源としてLEDを用いる場合には、光量が弱ければ、複数の素子で同一の画素を重複して露光する方法を用いてもよい。
【0214】
光源の発光波長は、感光材料が十分な感度を有している波長領域であればいずれでも好ましく用いることができるが、色濁りを防止する意味で他の感光層と十分な感度差を有する波長領域を用いることが好ましい。感光材料のコントラストにも依存するが露光量の常用対数として0.6以上、好ましくは1.0以上の感度差があることが好ましい。この他に、光源の置かれた環境条件、動作条件などにより発光波長が変動するような場合には、分光感度のピーク波長に合わせることが理論上好ましく、これに関わってくる着色物質の分光吸収との関係も考慮して波長を選択することが好ましい。そのような例としては、特開平6−75342号、特開2001−83663号などが挙げられる。また、発光波長だけでなく発光強度が変動する場合にも、分光感度との関係で発光波長を選択することが好ましく、その例としては、特開2002−72367号、及び日経ニューマテリアル1987年9月14日号54ページ等に記載されている。
【0215】
レーザー光源の場合には、ビーム径は25μm以下であることが好ましく、6〜22μmがより好ましい。6μmより小さいと画質的には好ましいが、調整が困難であったり、処理速度が低下したりする。一方、25μmより大きいとムラが大きくなり、画像の鮮鋭性も劣化する。ビーム径を最適化することによってムラのない高精細の画像の書き込みを高速で行うことができる。
【0216】
このような光で画像を描くには、ハロゲン化銀感光材料上を光束が走査する必要があるが、ハロゲン化銀感光材料を円筒状のドラムに巻き付け、これを高速に回転しながら回転方向に直角な方向に光束を動かす、いわゆる円筒外面走査方式をとってもよく、円筒状の窪みにハロゲン化銀感光材料を密着させて露光する、いわゆる円筒内面走査方式も好ましく用いることができる。多面体ミラーを高速で回転させ、これによって搬送されるハロゲン化銀感光材料を搬送方向に対して直角に光束を移動して露光する、いわゆる平面走査方式をとってもよい。高画質であり、かつ大きな画像を得る観点から、円筒外面走査方式がより好ましく用いられる。
【0217】
円筒外面走査方式で露光を行うには、ハロゲン化銀感光材料を正確に円筒状のドラムに密着されなければならない。この密着を確実に行なうためには、正確に位置合わせして搬送する必要がある。本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は、露光する側の面(ハロゲン化銀乳剤層塗設面側)が外側に巻かれたものがより的確に位置合わせでき、好ましく用いることができる。同様な観点から、本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料に用いられる支持体としては、適正な剛度があり、テーバー剛度で0.8〜4.0が好ましい。
【0218】
露光ドラム径は、露光するハロゲン化銀感光材料の大きさに適合させて任意に設定することができる。露光ドラムの回転数も任意に設定できるが、レーザー光のビーム径、エネルギー強度、書き込みパターンやハロゲン化銀感光材料の感度などにより、適切な回転数を選択することができる。生産性の観点からは、より高速な回転で走査露光できる方が好ましいが、具体的には1分間に200〜3000回転が好ましく用いられる。
【0219】
露光ドラムへのハロゲン化銀感光材料の固定方法は、機械的な手段によって固定させてもよいし、ドラム表面に吸引できる微小な穴をハロゲン化銀感光材料の大きさに応じて多数設けておき、ハロゲン化銀感光材料を吸引して密着させることもできる。ハロゲン化銀感光材料を露光ドラムにできるだけ密着させることが、画像ムラ等のトラブルを防ぐには重要である。
【0220】
画像形成に用いる装置としては、複数のハロゲン化銀感光材料を予めセットしておき、適宜ハロゲン化銀感光材料を選択して使用する方式を好ましく用いることができる。この場合、2種類のハロゲン化銀感光材料は、例えば、幅の違うハロゲン化銀感光材料であったり、面質(支持体の凹凸)が異なるハロゲン化銀感光材料であったりすることができる。ハロゲン化銀感光材料の選択は、画像形成装置のスイッチなどで設定する方式であっても、画像データとともに設定情報を送信し、それに基づいて選択されるのでもよい。また画像データのサイズに応じて最適なハロゲン化銀感光材料のサイズを自動的に選択することも有利に用いることができる。特別な場合には、同じ種類のハロゲン化銀感光材料を装填しておき、一方のハロゲン化銀感光材料が使い終わったとき、自動的に他方のハロゲン化銀感光材料を使うようにすることもでき、連続無人運転が可能となり有利に用いることができる。
【0221】
次いで、現像処理について説明する。
本発明において、発色現像処理で用いられる芳香族一級アミン現像主薬としては、公知の化合物を用いることができる。これらの化合物の例として下記の化合物を挙げることができる。
【0222】
CD−1:N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2:2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3:2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4:4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5:2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン
CD−7:N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8:N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明においては、発色現像液は任意のpH域で使用できるが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0223】
本発明に係る発色現像の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上、60℃以下で処理することがより好ましい。
【0224】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが更に好ましい。発色現像液には、前記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することができる。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。
【0225】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、発色現像後、漂白処理及び定着処理を施される。なお、漂白処理は定着処理と同時に行なってもよい。定着処理の後は、通常は水洗処理が行なわれる。また、水洗処理の代替として、安定化処理を行なってもよい。
【0226】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーにハロゲン化銀感光材料を挟んで搬送するローラートランスポートタイプであっても、ベルトにハロゲン化銀感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともにハロゲン化銀感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量にハロゲン化銀感光材料を処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが通常であるが、この際、処理量に応じて補充を行う補充液量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、この方法としては、公開技報94−16935号に記載の方法が最も好ましい。
【0227】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0228】
実施例1
《ハロゲン化銀感光材料の作製》
〔試料101の作製〕
片面に高密度ポリエチレンを、もう一方の面にアナターゼ型酸化チタンを15質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートした、平米当たりの質量が115gのポリエチレンラミネート紙反射支持体(テーバー剛度=3.5、PY値=2.7μm)上に、下記表1に示す構成からなる各層を酸化チタンを含有するポリエチレン層の側に塗設し、更に裏面側にはゼラチン6.00g/m2、シリカマット剤0.65g/m2を含有する層を塗設した多層ハロゲン化銀感光材料試料である試料101を作製した。
【0229】
カプラーは高沸点溶媒に溶解して超音波分散し、分散物として添加したが、この時、界面活性剤として(SU−1)を用いた。又、硬膜剤として(H−1)、(H−2)を添加した。塗布助剤としては、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。また各層に(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。
【0230】
【表1】
【0231】
上記試料101の作製に用いた各添加剤の詳細は、以下の通りである。
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム塩
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)・ナトリウム塩
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ((1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)ハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノンと2,5−ジ−secテトラデシルハイドロキノンと2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノンの質量比1:1:2の混合物
HQ−4:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン
SO−1:トリオクチルホスフィンオキサイド
SO−2:ジ(i−デシル)フタレート
SO−3:オレイルアルコール
SO−4:トリクレジルホスフェート
PVP:ポリビニルピロリドン
【0232】
【化51】
【0233】
【化52】
【0234】
【化53】
【0235】
上記試料101の作製において、各感光性層で用いたハロゲン化銀乳剤は、以下の手順に従って調製した。
【0236】
(青感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)をpAg=7.3、pH=3.0に制御しつつ同時添加し、更に下記(C液)及び(D液)をpAg=8.0、pH=5.5に制御しつつ同時添加した。この時、pAgの制御は特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0237】
〈A液〉
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200mlに仕上げた
〈B液〉
硝酸銀 10g
水を加えて 200mlに仕上げた
〈C液〉
塩化ナトリウム 102.7g
例示化合物(I−2) 4×10−8モル
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600mlに仕上げた
〈D液〉
硝酸銀 300g
水を加えて 600mlに仕上げた
添加終了後、花王アトラス社製のデモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液とを用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体の乳剤EMP−101を得た。
【0238】
上記乳剤EMP−101に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B101を得た。
【0239】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10−4モル/モルAgX
臭化カリウム 0.2g/モルAgX
次いで、上記乳剤EMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間とをそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体の乳剤EMP−102を得た。
【0240】
上記青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B101の調製において、乳剤EMP−101に代えて、乳剤EMP−102を用いた以外同様にして、青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B102を調製し、Em−B101とEm−B102の1:1の混合物を第7層で用いる青感光性ハロゲン化銀乳剤とした。
【0241】
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
上記乳剤EMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間とをそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体の乳剤EMP−103を得た。
【0242】
上記乳剤EMP−102に対し、下記化合物を用い55℃にて最適に化学増感を行い、緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G101を得た。
【0243】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−2 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−3 2×10−4モル/モルAgX
塩化ナトリウム 0.5g/モルAgX
次いで、上記乳剤EMP−103の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体の乳剤EMP−104を得た。
【0244】
上記緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G101の調製において、EMP−103に代えてEMP−104を用いた以外同様にして緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G102を調製し、Em−G101とEm−G102の1:1の混合物を第5層で用いた緑感光性ハロゲン化銀乳剤とした。
【0245】
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記調製した乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R101を得た。
【0246】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10−4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10−4モル/モルAgX
次に、前記調製した乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R102を得た。
【0247】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 2×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 2×10−4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10−4モル/モルAgX
上記調製した赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R101と赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R102の1:1の混合物を、第3層の赤感光性ハロゲン化銀乳剤として用いた。
【0248】
上記各感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0249】
STAB−1:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾールSTAB−3:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−4:p−トルエンチオスルホン酸
【0250】
【化54】
【0251】
【化55】
【0252】
〔試料102の作製〕
上記試料101の作製で、第7層で用る青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製を下記の様に変更した以外は同様にして、試料102を作製した。
【0253】
試料101の作製に用いた乳剤Em−B101及び乳剤Em−B102の調製において、各ハロゲン化銀乳剤粒子の調製に用いたC液に、例示化合物(dopt−2)を1×10−8モルを添加した以外は同様にして、乳剤Em−B111及び乳剤Em−B112を調製し、これを青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた。
【0254】
〔試料103の作製〕
上記試料101の作製で、第7層で用る青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製を下記の様に変更した以外は同様にして、試料103を作製した。
【0255】
試料101の作製に用いた乳剤Em−B101及び乳剤Em−B102の調製において、各ハロゲン化銀乳剤粒子の調製に用いたC液に、RhCl6を1×10−8モルを添加した以外は同様にして、乳剤Em−B113及び乳剤Em−B114を調製し、これを青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた。
【0256】
〔試料104の作製〕
上記試料101の作製で、第7層で用る青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製を下記の様に変更した以外は同様にして、試料103を作製した。
【0257】
試料101の作製に用いた乳剤Em−B101及び乳剤Em−B102の調製において、各ハロゲン化銀乳剤粒子の調製に用いたC液から例示化合物(I−2)を除いた以外は同様にして、乳剤Em−B115及び乳剤Em−B116を調製し、これを青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた。
【0258】
〔試料111〜112の作製〕
上記試料101〜104の作製において、第7層(青感光性層)で用いたイエローカプラーY−1、Y−2を、0.8モル倍の例示イエローカプラー(3)に変更し、更に第7層の青感光性ハロゲン化銀乳剤の使用量を0.8倍に変更した以外は同様にして、試料111〜112を作製した。
【0259】
《画像の形成》
〔露光装置〕
露光装置として、光源としてBのLEDを主走査方向に10個並べ、露光のタイミングを少しづつ遅延させることによって同じ場所を10個のLEDで露光出来るように調整し、また、副走査方向にも10個のLEDを並べ隣接する10画素分の露光が1度に出来る露光ヘッドを準備した。G、Rも同様にLEDを組み合わせて露光ヘッドを準備した。各ビームの径は約10μmで、この間隔でビームを配列し、副走査のピッチは約100μmとした。1画素当たりの露光時間は約100ナノ秒であった。
【0260】
〔現像処理〕
現像処理は以下に示す条件で行った。
【0261】
処理工程 処理温度 処理時間 補充量(ml/m2)
発色現像 38.0±0.3℃ 120秒 80ml
漂白定着 38.0±0.5℃ 90秒 120ml
安定化 30〜34℃ 60秒 150ml
乾燥 60〜80℃ 30秒
上記各処理工程で使用した処理液は、以下の通りである。
【0262】
〈発色現像液タンク液と補充液〉
水を加えて全量を1リットルとし、タンク液はpH=10.0に、補充液はpH=10.6に調整した。
【0263】
〈漂白定着液タンク液及び補充液〉
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpH=5.0に調整した。
【0264】
〈安定化液タンク液及び補充液〉
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
硫酸亜鉛 0.5g
硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g
PVP(ポリビニルピロリドン) 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpH=7.5に調整した。
【0265】
〔感度及び感度変動の測定〕
各試料をそれぞれ2部用意し、1部は冷蔵保存し、もう一は、60℃の条件に6時間、25℃に18時間の処理サイクルを20回繰り返した後、室温に戻してから、上記露光装置により適宜露光量を変化させて幅10mmのステップウエッジ状に露光を行い、上記の現像処理を行った。得られた色素画像をエックスライト社製の508型反射濃度計を用いてB(ブルー)濃度を測定した。分光特性はステータスTを用い、感度は濃度1.0を与える露光量の逆数で定義した。
【0266】
感度は、冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0267】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0268】
【表2】
【0269】
表2の結果より、感度変動においては、試料101は2%の感度変動しか起こしていないのに対し、試料111では、14%増感していることが分かる。この試料の相違点は、イエローカプラーの種類の違いだけである。これに対し、試料111と試料114を比較すると、試料114においてはこうした現象は起こしておらず、イリジウム化合物を含有したハロゲン化銀と特定の構造のカプラーの組み合わせによって引き起こされた現象であることが分かる。ただし、試料114では、得られる階調が軟調過ぎて、実用には適さない特性であった。
【0270】
これに対し、試料112、113は感度変動は小さく、特にdopt−2を用いた112の感度変動が小さいことが分かる。RhCl6を用いた試料113の感度変動は相対的には小さいが、試料112に比較すると感度変動を抑制する効果は小さく、また、劣化条件で保存していない試料で大幅な感度低下を引き起こしており、実用上問題を抱えていることが分かる。
【0271】
実施例2
上記実施例1で作製した試料101、102、111、112を用いて、下記の保存条件A〜Eで保存し、これを実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0272】
条件A:冷蔵
条件B:60℃の条件に6時間、25℃に18時間のサイクルを20回繰り返した
条件C:60℃の条件に5日間、その後冷蔵
条件D:60℃の条件に12時間、25℃に12時間のサイクルを20回繰り返した
条件E:60℃の条件に10日間、その後冷蔵
なお、感度は条件Aで得られた感度について、試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動は、各々の試料の条件Aにおける感度を100とし、条件B〜Eで得られた感度をその相対値で表示した。
【0273】
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0274】
【表3】
【0275】
表3で示す結果より、条件C、Eは、それぞれ条件B、Dと60℃での保管時間を同じにしたものであるが、本発明に係るイエローカプラーを用いた試料111では、間欠的に高温の保管を繰り返したものの方が増感の幅が大きいことが分かる。この挙動は、試料111において、高温保管の時間を延ばした条件Dの方が条件Bよりもむしろ感度変動が小さいことにも現れており、連続して高温条件においた場合は高温保管の時間が長い方が感度変動が大きいことと考えあわせると、特定の時間間隔で温度が変化した場合に特異的に起こる現象であることが分かる。この様な保存環境変化に対し、本発明の試料では改良されることが分かる。
【0276】
実施例3
実施例1に記載の試料112の作製において、例示化合物(dopt−2)を、等モルの例示化合物(dopt−1)、例示化合物(dopt−4)、例示化合物(dopt−9)、例示化合物(I−4)、例示化合物(II−4)、例示化合物(III−1)、K4[Fe(CN)6]にそれぞれ変更した以外同様にして試料301〜307を作製し、実施例1で作製した試料101、112を加えて、実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0277】
なお、感度は冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0278】
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0279】
【表4】
【0280】
実施例3は、イリジウム化合物と組み合わせて種々の金属化合物を含有したハロゲン化銀感光材料の特性を評価したが、例示化合物(I−2)と組み合わせて他のイリジウム化合物を用いた試料304〜306でも、間欠的な高温保管後の増感が顕著であり、K4[Fe(CN)6]を組み合わせた試料307でも同様の挙動が見られた。これに対し、本発明に係る化合物を用いた試料301〜303では、試料112と同様に、感動変動は非常に小さく収まっていることが分かった。
【0281】
実施例4
実施例1に記載の試料112の作製において、例示イエローカプラー(3)と例示化合物(dopt−2)を、表5に記載の様に変更して試料401〜417を作製し、実施例1で作製した試料101、112を加えて、実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0282】
なお、感度は冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0283】
以上により得られた結果を、表5に示す。
【0284】
【表5】
【0285】
表5に示す結果において、試料409、413、417はイリジウム化合物をそれぞれ変更した試料であるが、イエローカプラーとしては比較のY−1、Y−2を用いた試料である。いずれの試料も、試料101と同様に、高温保管による増感は小さいことが分かる。これらに対し、試料408、412、416は、本発明に係るイエローカプラーを用いた水準ではあるが、金属化合物が未使用であるこれらの試料は間欠的な高温保管での感度変動が著しく大きいという欠点を有していた。これに対して、本発明に係る金属化合物を組み合わせて用いたものでは、いずれも間欠的な高温保管での感動変動が小さく本発明の効果が得られていることを確認することができた。特に、一般式(II)で表されるイリジウム化合物を用いた場合には、感度自体が高く好ましい特性を有していることが分かる。一方、一般式(III)で表される化合物を有する試料では、感度変動が特に小さく好ましいことが分かる。
【0286】
実施例5
実施例1に記載の試料112の作製において、第7層で用いたイエローカプラー及びIr化合物、金属化合物を、表6のように各々変更した以外は同様にして、試料501〜522を作製し、実施例1で作製した試料101、112を加えて、実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0287】
なお、感度は冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0288】
以上により得られた結果を、表6に示す。
【0289】
【表6】
【0290】
表6の結果より明らかなように、試料101と、試料518〜522の結果より、本発明に係るイエローカプラーを用いることにより、間欠的な高温保管による増感現象がいずれの試料でも見られることが分かる。これに対して試料112、501〜517では、本発明のいずれの試料においても、間欠的な高温保管による増感が改良されていることがわかる。カプラーの種類に関しては、試料501、503、509〜513は、得られる感度が高く好ましい特性を有していることが分かる。また、試料509については、試料522で使われたカプラーは間欠的な高温保管による増感が大きいという欠点を持っているが、本発明で規定した構成をとることにより他のカプラーと差のない特性となり、本発明がカプラーの特性を活かして用いる上において、特に有用であることがわかる。
【0291】
実施例6
特開2001−133922号公報の実施例1に記載の試料101の調製において、イエローカプラー及び青感光性ハロゲン化銀乳剤を、実施例1に記載の試料101〜104、試料111〜114と同じ条件に変更した以外は同様にして試料601〜604、試料611〜614を作製した。
【0292】
この様にして作製した各試料を用いて、特開2001−133922号公報の段落番号〔0160〕以降に記載の現像処理Aにより現像を行った以外は、実施例1と同様にして評価を行った結果、試料612(試料112に相当)によって、本発明の効果が得られることを確認した。
【0293】
【発明の効果】
本発明により、イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と特定のイエローカプラーを含有するハロゲン化銀感光材料の高温条件での保管、特に反復された高温条件での保管による感度変動を抑制することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温条件下での保管、特に反復された高温条件での保管における感度安定性に優れたハロゲン化銀感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀感光材料は、高感度であること、色再現性に優れていること、連続処理に適していることから今日盛んに用いられている。従来より広く使われている一般撮影用ハロゲン化銀カラー感光材料では、例えば、カラーネガフィルムで撮影し、現像処理を介して得られた色画像を、光学系を用いて焼き付ける方式では、予めプリント条件を設定しておけば、カラーネガフィルムの濃度を測定した結果から簡単にプリント条件が決定、調整され、カラープリント感光材料(カラー印画紙)上に、1回の露光でフルカラーの優れた画質のカラープリント画像を連続的に得ることが可能であり、極めて高い生産性を有しているシステムである。また、このカラー印画紙は、最近では、デジタルカメラ等で撮影された画像データにより、レーザー、LED等の露光光源の光量を変調し、カラー画像を形成するデジタル画像形成方法にも使われている。デジタル画像露光においても、通常であれば変調されたB、G、Rの3色の光を混合し、1回の走査によってカラー画像が形成され、従来と同様の高い生産性を示していた。
【0003】
また、ハロゲン化銀感光材料を用いた記録材料は、特に低濃度においてノイズが少ないことが知られており、非常に滑らかな階調再現が可能である特徴を有していることから、露光装置が十分な階調再現容量を有する場合には、特に、ハイライトの描写性に優れるという特徴を有していた。こうした特徴から、ハロゲン化銀感光材料は、写真の分野のみではなく、印刷の分野でも、印刷の途中の段階で仕上がりの印刷物の状態をチェックするためのいわゆるカラープルーフの分野で広く用いられるようになってきている。
【0004】
プルーフの分野では、コンピュータ上で編集された色画像を印刷用フィルムに出力し、現像処理済みのフィルムを適宜交換しつつ分解露光することによって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色画像を形成させ、最終印刷物の画像をカラー印画紙上に形成させることにより、最終印刷物のレイアウトや色の適否を判断することが行われていた。
【0005】
最近では、コンピュータ上で編集された画像を直接印刷版に出力する方式が徐々に普及してきており、このような場合には、コンピュータ上のデータからフィルムを介することなく直接カラー画像を得ることが望まれていた。
【0006】
このような目的には、昇華型・溶融熱転写方式、電子写真方式、インクジェット方式等種々の方式の応用が試みられてきたが、高画質な画像が得られる方式では費用がかかり、生産性が劣るという欠点を有しており、また、費用が少なく、生産性に優れた方式では画質が劣るという欠点があった。
【0007】
ハロゲン化銀感光材料を用いたシステムでは、優れた鮮鋭性等から、正確な網点画像が形成できるなど高画質な画像形成が可能であり、一方、上述したように連続した現像処理が可能であることや、複数の色画像形成ユニットに対し同時に画像を書き込むことができる等の観点から、高い生産性を実現することが可能であった。
【0008】
近年、印刷の分野でデジタル化が進み、コンピュータ内のデータから直接画像を得る要求が強まっているが、前述のような理由によって、例えば、特開2001−235816号に開示されているようなハロゲン化銀感光材料がこの分野で有利に使われはじめている。
【0009】
ハロゲン化銀感光材料、特にカラー印画紙では、イエローの再現がオレンジ味になることが知られており、特に、プルーフ分野では改良が望まれていた。また、分子吸光係数の大きな画像色素の採用は、ハロゲン化銀感光材料のゼラチンの低減を可能とし、ひいては迅速処理が可能となることから、高い分子吸光係数を持つイエローカプラーの開発が望まれている。
【0010】
上記課題に対し、活性点に4−ピリミドン環とアニリノ基が結合したイエローカプラーを提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このイエローカプラーを用いることにより、裾切れのよいシャープな分光吸収特性が得られ、かつ耐光性、暗退色性に優れることを開示している。また、特定のイエローカプラーにより、色相が優れ、分子吸光係数が大きく、保存安定性特に光堅牢性が良好な色素を得ることができる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
これらの各公報に記載の特定の構造を有するイエローカプラーは、本発明に係るイエローカプラーに包含されるものであり、色再現的に好ましい特色を有する化合物であった。しかしながら、これらのイエローカプラーを、イリジウム化合物を含有する95モル%以上が塩化銀からなるハロゲン化銀乳剤と組み合わせて用いた場合に、保存による感度変動が大きいことが判明した。
【0012】
本発明者らがこの現象を解析した結果、合計の高温保存期間が等しい場合でも、継続して高温に保存された場合よりも、周期的に温度が変動する環境下で保存された場合の方が、よりダメージが大きいことが判明した。こうした現象に関して、特許文献1、2では何ら開示がなされてはおらず、また、その解決法に関しても示唆されていない。
【0013】
一方、VIII族金属錯体をdoping剤として含有し、第5族〜第10族の金属錯体を表面改質剤として含有するハロゲン化銀乳剤により、高感度で硬調な特性が得られる方法を開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、塩化銀含有率が95%以上で、粒子表面近傍に第5族〜第10族の金属元素を中心金属とし、6個の単座配位子のうち4回回転軸上の配位子の少なくとも一つが、他と異なった配位子である錯体を含有するハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀感光材料を用いて、低補充処理する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。低補充処理条件下でも、硬調で高い最高濃度を有するカラー画像を形成できることが記載されている。また、ハロゲン化銀粒子中に異なる電子徐放時間をもつ遷移金属錯体を3種以上含有し、該3種の遷移金属錯体が100秒以上、1/10〜100秒、1/1000〜1/10秒、1/1000秒以下のいずれかであるハロゲン化銀乳剤により、高感度、硬調で高照度不軌に優れる特性が得られる方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、これら特許文献3〜5の各公報には、特定の構造を有するカプラーを用いて、長期保存下における感度変動や、変動の温度依存性を改良する記載は一切無く、また、これを解決する手段についての示唆もない。
【0014】
一方、発色現像処理後の未露光部の濃度または色度値が特定の範囲にあり、かつイエロー色素が特定の規格化分光吸収を有するハロゲン化銀感光材料により、優れた色再現(黄色及び白)、明所あるいは暗所保存での白の安定性において優れた特性が得られることが開示されている(例えば、特許文献6参照。)。特許文献6に記載の実施例(段落番号0198〜同0204)には、イエローカプラーと組み合わせて用いられる青感光性ハロゲン化銀乳剤に、K3IrCl5(H2O)、K4Ru(CN)6、K4Fe(CN)6、六塩化イリジウムをドープしたことが記載されている。また、特許文献6の段落番号0142には、ハロゲン化銀粒子の内部及び/又は表面に金属イオンを組み込むことが好ましく、配位子としてニトロシルイオン、またはチオニトロシルイオンを用いることが好ましいことが開示されている。また、特許文献6の段落0143には、高照度相反則不軌改良の目的で、少なくとも一つの有機配位子を持つイリジウムイオンを持つことが特に好ましく、チアゾール配位子、中でも5−メチルチアゾールが特に好ましく用いられると記載している。この特許文献6の特許請求の範囲に記載の一般式(I)、(II)で表される化合物は、本発明に係る一般式(A)で表されるイエローカプラーに包含されるものであるが、特許文献6にはイリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と特定のイエローカプラーの組み合わせにより生じる長期保存による感度変動や、感度変動の温度依存性についての記載は一切なく、またこれを解決する手段についての示唆もない。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第5,455,149号明細書 (特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献2】
特開2002−296740号公報 (特許請求の範囲)
【0017】
【特許文献3】
特開平6−235994号公報 (特許請求の範囲)
【0018】
【特許文献4】
特開平7−128829号公報 (特許請求の範囲)
【0019】
【特許文献5】
特開2002−214733号公報 (特許請求の範囲)
【0020】
【特許文献6】
特開2002−351023号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と、特定の構造を有するイエローカプラーとを含有するハロゲン化銀感光材料であって、高温条件下での保管、特に反復された高温条件下での保管による感度安定性に優れたハロゲン化銀感光材料を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
【0023】
1.支持体上に、少なくとも1層の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が、イリジウム錯体化合物と、イリジウム以外の周期律表第5族〜10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体化合物とを含有するハロゲン化銀乳剤と、前記一般式(A)で表される化合物とを含有することを特徴とするハロゲン化銀感光材料。
【0024】
2.前記一般式(A)におけるBが、前記一般式(B)で表されることを特徴とする前記1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0025】
3.前記イリジウム錯体化合物が、前記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0026】
4.前記イリジウム錯体化合物が、前記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0027】
5.前記イリジウム錯体化合物が、前記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0028】
6.前記一般式(A)におけるZが、−N−C=N−部と共に3H−ピリミジン−4−オン環、または1H−ピリミジン−4−オン環を表すのに必要な原子群を表すことを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0029】
7.前記一般式(A)におけるZが、−N−C=N−部と共に2H−〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシド環、または4H−〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシド環を表すのに必要な原子群を表すことを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
【0030】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、95モル%以上が塩化銀からなるハロゲン化銀乳剤を用いることが1つの特徴である。
【0031】
この条件を満たせば、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等任意のハロゲン組成を有するものが用いられる。中でも、塩化銀を95モル%以上含有する塩臭化銀、中でも臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられ、また、表面近傍に沃化銀を0.05〜0.5モル%含有する塩沃化銀も好ましく用いられる。臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤の高濃度に臭化銀を含有する部分は、いわゆるコア・シェル乳剤であっても、完全な層を形成せず単に部分的に組成の異なる領域が存在するだけのいわゆるエピタキシー接合した領域を形成していてもよい。臭化銀が高濃度に存在する部分は、ハロゲン化銀粒子の表面の結晶粒子の頂点に形成されることが特に好ましい。また、組成は連続的に変化してもよいし不連続に変化してもよい。
【0032】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、上記の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤が、イリジウム錯体化合物を含有することが、特徴の1つである。本発明で規定する構成をとることにより、相反則不軌が改良され、高照度露光での減感が防止されたり、シャドー部領域(低濃度領域)での軟調化が防止されることが期待される。
【0033】
本発明でにおいては、イリジウム錯体化合物として、下記一般式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0034】
一般式(I)
[IrXnY6−n]m
上記一般式(I)において、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表し、mは−2または−3を表す。nは0〜5の整数を表す。
【0035】
本発明に係る上記一般式(I)で表されるイリジウム錯体化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
I−1:K3[IrCl6]
I−2:K2[IrCl6]
I−3:K3[IrBr6]
I−4:K2[IrBr6]
I−5:K3[IrBr4F2]
I−6:K3[IrI6]
I−7:(NH4)2[IrF6]
I−8:K2[IrBrCl5]
また、本発明においては、イリジウム錯体化合物として、下記一般式(II)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0037】
一般式(II)
[Ir(H2O)nXkY6−n−k]m
上記一般式(II)において、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表す。mは−2〜0の整数、kは0〜(6−n)の整数、nは1または2を表す。
【0038】
本発明に係る上記一般式(II)で表されるイリジウム錯体化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0039】
II−1:Cs2[IrBr5(H2O)]
II−2:K2[IrBr4Cl(H2O)]
II−3:K2[IrBr4Cl(H2O)]
II−4:K2[IrCl5(H2O)]
II−5:K[IrCl4(H2O)2]
II−6:K[IrBr4(H2O)2]
II−7:(NH4)2[IrCl5(H2O)]
また、本発明においては、イリジウム錯体化合物として、下記一般式(III)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0040】
一般式(III)
[IrLnXkY6−n−k]m
上記一般式(III)において、Lは有機配位子を表し、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表す。mは−2〜0の整数、kは0〜(6−n)の整数、nは1または2を表す。nが2である時は、Lは同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
Lで表される有機配位子としては、鎖式または環式の炭化水素または複素環化合物を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団によって置き換えられた化合物が好ましい。母体構造となる環式の炭化水素化合物及び複素環化合物としては、例えば、ベンゼン、フラン、チオフェン、ピラン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−または1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、2,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビチオフェン、2,2′−ビピリジン、2,2′:6′,2″−ターピリジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾリン、チアゾール、5−メチルチアゾール、トリアジン、チアジアゾール、ジチアゾール、フェナントロリン化合物等を挙げることができ、イミダゾール、チアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−メチルチアゾール、チアジアゾールが好ましく用いられる。
【0042】
本発明に係る上記一般式(III)で表されるイリジウム錯体化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
III−1:K2[Ir(thiazole)Cl5]
III−2:K2[Ir(5−methylthiazole)Cl5]
III−3:K[Ir(thiazole)2Cl4]
III−4:K[Ir(5−methylthiazole)2Cl4]
III−5:K2[Ir(thiazole)Br5]
III−6:K[Ir(thiazole)2Br4]
III−7:K2[IrBr5(1,2,4−triazole)]
III−8:K2[IrBr5([1,3,4]−thiadiazole)]
III−9:K2[IrBr5(2,5−dichrolo−[1,3,4]−thiadiazole)]
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に、上述した各イリジウム錯体化合物を含有せしめるには、イリジウム錯体化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、あるいはハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の時期で添加すればよい。
【0044】
前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、イリジウム錯体化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。また、予めこれらのイリジウム錯体化合物を含有するハロゲン化銀微粒子を形成しておいて、これを添加することによって調製することもできる。
【0045】
本発明に係るイリジウム錯体化合物のハロゲン化銀乳剤中への添加量は、ハロゲン化銀1モル当り1×10−10モル以上、1×10−5モル以下が好ましく、1×10−9モル以上、1×10−7モル以下がより好ましい。
【0046】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、ハロゲン化銀乳剤中に、上記説明したイリジウム錯体化合物と共に、イリジウム以外の周期律表第5族〜第10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体を含有することが、特徴の1つである。
【0047】
中心金属原子としては、ルテニウム、オスミウムが好ましく用いられる。ニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体として好ましく用いることのできる化合物として、下記の化合物(dopt)を挙げることができる。
【0048】
dopt−1:Cs2[Os(NO)Cl5]
dopt−2:K2[Ru(NO)Cl5]
dopt−3:K2[Fe(NO)(CN)5]
dopt−4:K2[Ru(NO)Br5]
dopt−5:K2[Ru(NO)I5]
dopt−6:K2[Re(NO)(CN)5]
dopt−7:K2[Re(NO)Cl5]
dopt−8:K[Ir(NO)Cl5]
dopt−9:K2[Ru(NS)Cl5]
dopt−10:K2[Os(NS)Br5]
dopt−11:K2[Ru(NS)(CN)5]
dopt−12:K2[Ru(NS)(SCN)5]
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に、上記の金属錯体を含有せしめるには、該金属錯体をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の時期で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、金属錯体をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。また、予めこれらの金属錯体を含有するハロゲン化銀微粒子を形成しておいて、これを添加することによって調製することもできる。
【0049】
本発明に係る上記金属錯体のハロゲン化銀乳剤への添加量は、ハロゲン化銀1モル当り5×10−11モル以上、5×10−6モル以下が好ましく、5×10−10モル以上、5×10−8モル以下がより好ましい。
【0050】
次いで、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの詳細について説明する。
【0051】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、上記特性を有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層中に、前記一般式(A)で表されるイエローカプラーを共存させることが特徴の1つである。
【0052】
前記一般式(A)において、Rは置換基を表し、Rで表される置換基としては、特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(例えば、ピリジルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、シクロヘキシルスルホニルアミノ基、ドデシルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、エチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられ、これらの基は、更に上記の同様の置換基によって置換されていてもよい。
【0053】
Rで表される基として好ましくは、アルキル基、またはアリール基であり、更に好ましくは、Rに更に置換する置換基も含めて総炭素数が2〜24のアルキル基、または同様に総炭素数が6〜24のアリール基である。Rで表される基として更に好ましくは、Rに更に置換する置換基も含めて総炭素数が2〜18のアルキル基、または同様に総炭素数が6〜18のアリール基である。ここで、Rに置換する基としては、異種原子を含んでも良く、総炭素数には異種原子の数は含まない。
【0054】
前記一般式(A)において、Aで表される脱離基は、例えば、フェノキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルホニル基、あるいは含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、あるいはヒダントイニル基等)が挙げられる。これらAで表わされる基は、置換基を有することもでき、置換基としては、例えば、前記Rで表される基を挙げることができる。更に詳しくは、特開平8−29932号公報の段落〔0033〕〜同〔0043〕に記載されているWで表される基と同義のものを挙げることができる。
【0055】
前記一般式(A)において、Bで表される置換基としては、前記一般式(B)または複素環基であることが好ましい。
【0056】
前記一般式(B)において、Xは水素原子または置換基を表し、R′は置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2〜4の整数を表すとき、R′は同じでも異なってもよい。
【0057】
一般式(B)のR′が表す置換基としては、特に制限はないが、下記一般式(1)〜一般式(5)で表される基または、一般式(A)におけるRで挙げた基と同義の基を挙げることができる。R′が表す置換基として、好ましくはアシルアミノ基、スルホニルアミノ基、オキシカルボニル基等が挙げられる。
【0058】
【化3】
【0059】
上記一般式(1)において、Arはアリール基または複素環基、R1は炭素原子数4以下の脂肪族基、もしくはアリール基または複素環基を表す。L1は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0060】
Arで表されるアリール基としては、フェニル基またはナフチル基を挙げることができる。Arで表される複素環基としては5〜7員ものが好ましく、具体的には2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−ピロリル基、1−テトラゾニル基等を挙げることができる。Arで表されるアリール基、複素環基はさらに置換基を有してもよく、これらの置換基としては特に制限はないが、代表例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基を挙げることができる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等を挙げることができる。アルキニル基としては、ビニル、アリル、オレイル、シクロヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基としては、プロパルギル、1−ペンチニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基を挙げることができる。複素環基としては、5〜7員のものが好ましく、具体的には2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−ピロリル基、1−テトラゾリジニル基等を挙げることができる。Arとして好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0061】
一般式(1)において、R1は炭素数4以下の脂肪族基を表し、またはアリール基、複素環基を表す。R1で表される脂肪族基としては、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基等を挙げることができる。アルキニル基としては、ビニル、アリル基等が挙げられる。アルケニル基としては、プロパルギル基等が挙げられる。R1で表されるアリール基、R1で表される複素環基としては、前記Arで表される基と同義の基で表すことができる。R1で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、総炭素数が4以下の範囲で、更に置換基を有してもよい。これらの置換基としては特に限定されないが、代表例としては、例えば、アルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アルケニル、シクロアルキル等の各基が挙げられるが、この他にハロゲン原子、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、スルホ等の各基、スピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基等も挙げられる。
【0062】
一般式(1)において、R1で表されるアリール基、複素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリミジニル基、チエニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基等が挙げられる。これらの基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、一般式(A)におけるRで表される基と同様の基を挙げることができる。
【0063】
R1として好ましくは、炭素数が4以下のアルキル基、もしくはアリール基であり、特に好ましくはアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等である。
【0064】
一般式(1)において、L1で表される2価の連結基は、特に制限はないが、例えば、−NHCOCH2CH2−、−NHCOCH2CH2CH2−、−COOCH2CH2−、NHSO2CH2CH2−、−COOCH2CH2CH2−、−SO2NHCH2CH2−、−NHCOCH2C(CH2)2CH2−、−COOCH2C(CH2)2CH2O−、−COOCH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2SO2CH2CH2−、−NHCOCH2CH2−Ph−CH2CH2−などが挙げられる。
【0065】
一般式(1)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(1)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0066】
次に、一般式(2)で表される置換基について詳細に説明する。
【0067】
【化4】
【0068】
上記一般式(2)において、R2は前記一般式(1)のR1と同義の基を表し、R3及びR4は各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。L2は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0069】
一般式(2)において、R3、R4は各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、これらの代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基の他、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オレイル基、ネオペンチル基、フェニル基等を例として挙げることができる。一般式(2)において、R2、R3、R4は、各々好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、無置換アルキル基であるのが最も好ましい。
【0070】
一般式(2)におけるL2で表される2価の連結基は、特に制限はなく、一般式(1)におけるL1で表される基と同様の基を挙げることができる。
【0071】
一般式(2)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(2)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして、特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0072】
次に、一般式(3)で表される置換基について説明する。
【0073】
【化5】
【0074】
上記一般式(3)において、R5は炭素原子数5以上の無置換のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基、R6は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基、J1は−O−または−NR11−を表し、R11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。L3は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0075】
R5は、炭素数5以上の無置換アルキル基、無置換アルケニル基、または無置換アルキニル基を表し、分岐であっても直鎖であってもよく、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、1,1,3−トリメチルブチル基、オレイル基、シクロヘキセニル基、アダマンチル基を挙げることができる。
【0076】
一般式(3)において、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R6及びR7の表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0077】
一般式(3)において、R6は好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは水素原子であり、R7は好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0078】
一般式(3)において、J1は好ましくは−NR11−である。R11は一般式(1)におけるR1と同義である。
【0079】
一般式(3)におけるL3で表される2価の連結基は、特に制限はなく、一般式(1)におけるL1で表される基と同様の基を挙げることができる。
【0080】
一般式(3)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(3)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして、特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0081】
次に、一般式(4)で表される置換基について説明する。
【0082】
【化6】
【0083】
上記一般式(4)において、R8、R9及びR10は各々アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基、Wは−CO−又は−SO2−を表す。L4は2価の連結基を表し、nは0または1の整数を表す。
【0084】
一般式(4)において、R8、R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R8、R9及びR10の表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0085】
J1は−O−または−NR11−を表し、R11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0086】
一般式(4)におけるL4で表される2価の連結基は、特に制限はなく、一般式(1)におけるL1で表される基と同様の基を挙げることができる。
【0087】
一般式(4)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(4)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして、特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0088】
次に、一般式(5)で表される置換基について説明する。
【0089】
【化7】
【0090】
上記一般式(5)において、R12及びR13は各々置換基を表す。mは0または1の整数を表す。L5は2価の連結基を表しnは0または1の整数を表す。
【0091】
一般式(5)において、R12及びR13で表される置換基としては、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R12及びR13の表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及び複素環基の代表例としては、一般式(1)におけるR1と同様の基を挙げることができる。
【0092】
一般式(5)において、L5は2価の連結基を表し、L5としては、例えば、−NH−、−CH2CH2CONH−、−CH2CH2CH2CONH−、−CH2CH2SO2NH−、−CH2CH2CH2SO2NH2−、−O−Ph−SO2NH−、−CH2CH2CH2OCO−、−CH2C(CH2)2CH2OCO−、−CH2CH2NHCONH−、−CH2CH2CH2NHSO2−Ph−NHSO2−などが挙げられる。
【0093】
一般式(5)において、nは0または1を表し、好ましくは1である。
一般式(5)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとしては、ピリミドンまたはチアジアジンジオキシドが結合したイエローカプラーが好ましい。一般式(5)で表される基が置換基として結合する一般式(A)で表されるカプラーとして特に好ましくは、ピリミドンが結合したイエローカプラーである。
【0094】
前記一般式(B)において、Xは水素原子または置換基を表す。Xで表される置換基としては、前記一般式(B)におけるR′で表される置換基と同様の基を挙げることができる。Xとして好ましいのは、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、またはスルホンアミド基であり、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシルアミノ基が更に好ましい。
【0095】
前記一般式(A)において、Bが表す複素環基としては、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロール、チオフェン、チアゾリル、オキサゾリル、フラン、チアゾリル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾピリミジニル、ナフトイミダゾリル、ナフトピラゾリルなどが挙げられる。Bで表される複素環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記一般式(A)におけるRで表される置換基の他、ハロゲン原子なども挙げることができる。Bで表される複素環基としてより好ましい基は、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフトイミダゾリル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、ピラゾール−2−イル、ベンゾオキサゾール−2−イル、ピロール−2−イル等であり、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフトイミダゾリル、ピラゾール−2−イルが特に好ましい。
【0096】
一般式(A)において、Zが−N−C=N−部とともに表す窒素6員環の例としては、ピリミジン−4−オン、1,3−ジアジン−4,6−ジオン、〔1,3,5〕トリアジン−2−オン、〔1,2,4〕トリアジン−5−オン、〔1,2,4〕チジアジン−1,1−ジオキシド等が挙げられる。
【0097】
Zが形成する含窒素7員環の例としては、1,3−ジアゼピン−4−オン、1,3−ジアゼピン−5−オン、〔1,2,4〕チアジアゼピン−1,1−ジオキシド、〔1,3,5〕チアジアゼピン−1,1−ジオキシド等が挙げられる。
【0098】
Zは好ましくは6員環であり、3H−ピリミジン−4−オン環、1H−ピリミジン−4−オン環もしくは1H−〔1,2,4〕チジアジン−1,1−ジオキシド環、4H−〔1,2,4〕チジアジン−1,1−ジオキシド環がより好ましい。即ち、Zは−C(−R2)=C(−R3)−CO−、または−C(−R2)=C(−R3)−SO2−のように表され、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。また、R2、R3は互いに結合して−C=C−部とともに5〜7員環を形成してもよく、このようにして形成する環としては、好ましくは5〜7員の脂環、芳香環、もしくはヘテロ環で、例えば、ベンゼン環、ピラゾール環、フラン環、チオフェン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環が挙げられる。より好ましくは、芳香族6員環であり、ベンゼン環であることが最も好ましい。なお、R2、R3が表す置換基としては、前述の一般式(B)におけるR′と同義である。
【0099】
以下に、前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの例示化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
【化8】
【0101】
【化9】
【0102】
【化10】
【0103】
【化11】
【0104】
【化12】
【0105】
【化13】
【0106】
【化14】
【0107】
【化15】
【0108】
【化16】
【0109】
【化17】
【0110】
【化18】
【0111】
【化19】
【0112】
【化20】
【0113】
【化21】
【0114】
【化22】
【0115】
【化23】
【0116】
【化24】
【0117】
【化25】
【0118】
【化26】
【0119】
【化27】
【0120】
【化28】
【0121】
【化29】
【0122】
【化30】
【0123】
【化31】
【0124】
【化32】
【0125】
【化33】
【0126】
【化34】
【0127】
【化35】
【0128】
【化36】
【0129】
【化37】
【0130】
【化38】
【0131】
【化39】
【0132】
【化40】
【0133】
【化41】
【0134】
【化42】
【0135】
【化43】
【0136】
【化44】
【0137】
【化45】
【0138】
【化46】
【0139】
【化47】
【0140】
【化48】
【0141】
【化49】
【0142】
【化50】
【0143】
次いで、本発明のハロゲン化銀感光材料の上記で説明した構成要件を除いたその他の構成要件について説明する。
【0144】
はじめに、ハロゲン化銀粒子、ハロゲン化銀乳剤について説明する。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の形状は、任意のものを用いることができる。好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21号、39ページ(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有するハロゲン化銀粒子を調製し、これを用いることもできる。更に、双晶面を有するハロゲン化銀粒子を用いてもよい。
【0145】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられるが、単分散のハロゲン化銀粒子を二種以上、同一層に添加することが特に好ましい。
【0146】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径は、特に制限はないが、迅速処理性及び得られる感度や、他の写真性能などを考慮すると、好ましくは0.1〜1.2μm、更に好ましくは、0.2〜1.0μmの範囲である。
【0147】
この粒径は、ハロゲン化銀粒子の投影面積、あるいは直径近似値を使ってこれを測定することができる。ハロゲン化銀粒子が実質的に均一形状である場合には、粒径分布はその直径か、あるいは投影面積としてかなり正確にこれを表すことができる。
【0148】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子であり、特に好ましくは変動係数0.15以下の単分散乳剤を2種以上同一層に添加することである。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0149】
変動係数=S/R
(ここに、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
ハロゲン化銀乳剤の調製装置、あるいは調製方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0150】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。該ハロゲン化銀粒子は、一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を調製した後で成長させてもよい。種粒子を調製する方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0151】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなど、いずれでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に、同時混合法の一形式として、特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0152】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許第2,921,164号等に記載されている水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化させて添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行なう装置などを用いてもよい。
【0153】
更に、必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物または増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、または、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0154】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法等を適宜組み合わせて用いることができる。カルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることができるが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としては、チオ硫酸塩、トリエチルチオ尿素、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。
【0155】
イオウ増感剤の添加量としては、適用されるハロゲン化銀乳剤の種類や期待する効果の大きさなどにより適宜変更することが好ましいが、概ねハロゲン化銀1モル当たり5×10−10〜5×10−5モルの範囲、好ましくは5×10−8〜3×10−5モルの範囲である。
【0156】
金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することができる。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることができる。金化合物の使用量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などによって一様ではないが、通常は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−4〜1×10−8モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10−5〜1×10−8モルである。これらの化合物は、増感剤としてではなく、塗布液の調製段階などで種々の目的で添加することもできる。
【0157】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いてもよい。
【0158】
本発明のハロゲン化銀感光材料には、400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含む層を有することもできる。該ハロゲン化銀乳剤は、1種または、2種以上の増感色素を組み合わせて含有する。
【0159】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、公知の化合物をいずれも用いることができるが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号28ページに記載のBS−1〜8を単独でまたは組み合わせて好ましく用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。
【0160】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。また、これらの色素の添加方法としては、水またはメタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水と混和性の有機溶媒に溶解して溶液として添加してもよいし、増感色素を密度が1.0g/mlより大きい、水混和性溶媒の溶液または、乳化物、懸濁液として添加してもよい。
【0161】
増感色素の分散方法としては、高速撹拌型分散機を用いて水系中に機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法以外に、特開昭58−105141号に記載のようにpH6〜8、60〜80℃の条件下で水系中において機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法、特公昭60−6496号に記載の表面張力を3.8×10−2N/m以下に抑える界面活性剤の存在下に分散する方法、特開昭50−80826号に記載の実質的に水を含まず、pKaが5を上回らない酸に溶解し、該溶解液を水性液に添加分散し、この分散物をハロゲン化銀乳剤に添加する方法等を用いることができる。
【0162】
分散に用いる分散媒としては水が好ましいが、少量の有機溶媒を含ませて溶解性を調整したり、ゼラチン等の親水性コロイドを添加して分散液の安定性を高めることもできる。
【0163】
分散液を調製するのに用いることのできる分散装置としては、例えば、特開平4−125631号公報の第1図に記載の高速撹拌型分散機の他、ボールミル、サンドミル、超音波分散機等を挙げることができる。
【0164】
また、これらの分散装置を用いるに際し、特開平4−125632号に記載のように、あらかじめ乾式粉砕などの前処理を施した後、湿式分散を行う等の方法をとってもよい。
【0165】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、ハロゲン化銀感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で、公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることができる。この様な目的で用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号公報の7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される含窒素複素環メルカプト化合物を挙げることができ、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、特開2000−267235号公報の8ページ右欄32〜36行目に記載の化合物、特開平9−152674号の一般式(I)で表されるメルカプトピリミジン化合物、一般式(II)で表されるハロゲン化銀への吸着促進基と置換、未置換のヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物、具体的には、(I−1)、(I−2)、(I−7)、(I−9)、(II−1)、(II−3)で表される化合物を挙げることができる。また、特開平10−31279号の(A)〜(D)で示されたスルフィド、ポリスルフィド基を有する化合物を挙げることができ、具体的には、(C−1)、(C−9)、(C−14)、(C−15)、(C−16)、(D−1)、(D−6)、α−イオウ、特開2000−122204号の(I−4)、(I−6)を挙げることができる。
【0166】
これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。これらの化合物の存在下に化学増感を行う場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−5〜5×10−4モル程度の量で好ましく用いられる。化学増感終了時に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−6〜1×10−2モル程度の量が好ましく、1×10−5〜5×10−3モルがより好ましい。塗布液調製工程において、ハロゲン化銀乳剤層に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−6〜1×10−1モル程度の量が好ましく、1×10−5〜1×10−2モルがより好ましい。またハロゲン化銀乳剤層以外の層に添加する場合には、塗布皮膜中の量が、1m2当り1×10−9〜1×10−3モル程度の量が好ましい。
【0167】
次いで、本発明のハロゲン化銀感光材料で用いる油溶性添加剤について説明する。
【0168】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられるカプラーとしては、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの他に、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得るいかなる化合物を用いることが出来るが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0169】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられるマゼンタカプラーとしては、特開平6−95283号の7ページ右欄に記載の一般式[M−1]で示される化合物が発色色素の分光吸収特性がよく好ましい。好ましい化合物の具体例としては、同号の8〜11ページに記載の化合物M−1〜M−19を挙げることができる。更に、他の具体例としては欧州公開特許第273,712号の6〜21頁に記載されている化合物M−1〜M−61及び同第235,913号の36〜92頁に記載されている化合物1〜223の中の上述の代表的具体例以外のものを挙げることができる
上記マゼンタカプラーは、他の種類のマゼンタカプラーと併用することもでき、通常ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル、好ましくは1×10−2〜8×10−1モルの範囲で用いることができる。
【0170】
本発明のハロゲン化銀感光材料において形成されるマゼンタ画像の分光吸収のλmaxは530〜560nmであることが好ましく、またλL0.2は、580〜635nmであることが好ましい。λL0.2とは、マゼンタ画像の分光吸光度曲線上において、最大吸光度が1.0を示す波長よりも長波で、吸光度が0.2を示す波長をいう。
【0171】
本発明のハロゲン化銀感光材料のマゼンタ画像形成層には、マゼンタカプラーに加えて、イエローカプラーが含有されることが好ましい。これらのカプラーのpKaの差は2以内であることが好ましく、更に好ましくは1.5以内である。本発明のマゼンタ画像形成性層に含有させる好ましいイエローカプラーは、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーの他に、特開平6−95283号の12ページ右欄に記載の一般記載一般式[Y−Ia]で表されるカプラーである。同公報の一般式[Y−1]で表されるカプラーのうち、特に好ましいものは、一般式[M−1]で表されるマゼンタカプラーと組み合わせる場合、一般式[M−1]で表されるカプラーのpKa値より、3以上低くないpKa値を有するカプラーである。
【0172】
イエローカプラーとして具体的な化合物例は、特開平6−95283号の12〜13ページ記載の化合物Y−1及びY−2の他、特開平2−139542号の13〜17ページに記載の化合物(Y−1)〜(Y−58)を好ましく使用することができるがもちろんこれらに限定されることはない。
【0173】
本発明のハロゲン化銀感光材料のイエロー画像形成層には、本発明に係る前記一般式(A)で表されるイエローカプラーと共に、上記の公知のイエローカプラーを併せて用いることができる。
【0174】
本発明のハロゲン化銀感光材料により形成されるイエロー画像の分光吸収のλmaxは425nm以上であることが好ましく、λL0.2は515nm以下であることが好ましい。
【0175】
イエロー色画像の分光吸収のλL0.2とは、特開平6−95283号21ページ右欄1行〜24行に記載の内容で定義される値であり、イエロー色素画像の分光吸収特性で長波側の不要吸収の大きさを表す。
【0176】
イエローカプラーは、通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル、好ましくは1×10−2〜8×10−1モルの範囲で用いることができる。
【0177】
本発明のハロゲン化銀感光材料において、シアン画像形成層中に含有されるシアンカプラーとしては、公知のフェノール系、ナフトール系又はイミダゾール系、アゾール系カプラーを用いることができる。例えば、アルキル基、アシルアミノ基、或いはウレイド基などを置換したフェノール系カプラー、5−アミノナフトール骨格から形成されるナフトール系カプラー、離脱基として酸素原子を導入した2当量型ナフトール系カプラーなどが代表される。このうち好ましい化合物としては、特開平6−95283号の13ページに記載の一般式[C−I]、[C−II]が挙げられる。
【0178】
シアンカプラーは、通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10−3〜1モル、好ましくは1×10−2〜8×10−1モルの範囲で用いることができる。
【0179】
該マゼンタ色画像、シアン色画像及びイエロー色画像の分光吸収特性を調整するために、色調調整作用を有する化合物を添加することが好ましい。このための化合物としては、特開平6−95283号22ページ記載の一般式[HBS−I]に記載されるリン酸エステル系化合物、[HBS−II]で示されるホスフィンオキサイド系化合物が好ましく、より好ましくは同号22ページ記載の一般式[HBS−II]で示される化合物である。また、特開平4−265,975号5ページ記載の(a−i)〜(a−x)を代表とする高級アルコール系化合物を挙げることができる。
【0180】
前記マゼンタ、シアン、イエローの各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することができる。好ましい化合物としては、特開平2−66541号の3ページに記載の一般式IおよびIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物、特開昭64−90445号記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が、特にマゼンタ色素用として好ましい。また、特開平1−196049号に記載の一般式I′で示される化合物および特開平5−11417号記載の一般式IIで示される化合物が、特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0181】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられるステイン防止剤やその他の有機化合物等の油溶性添加剤を塗布液中に添加する手段として、水中油滴型乳化分散法を用いる場合、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後、または、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。ステイン防止剤等を溶解して分散するために用いることの出来る高沸点有機溶媒としては、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリオクチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類が好ましく用いられる。また高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0であることが好ましい。また二種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0182】
本発明のハロゲン化銀感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物をハロゲン化銀乳剤層間に設けた中間層に添加して色濁りを防止したり、また、ハロゲン化銀乳剤層に直接添加してカブリ等を改良することが好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2、5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は、特開平4−133056号に記載の一般式IIで示される化合物であり、同号13〜14ページ記載の化合物II−1〜II−14および17ページ記載の化合物1が挙げられる。
【0183】
本発明のハロゲン化銀感光材料中には、紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり、色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては特開平1−250944号に記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号に記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号に記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号に記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号に記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0184】
本発明のハロゲン化銀感光材料では、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的で、公知の化合物をいずれも用いることができるが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号308ページに記載のAI−1〜11の染料および特開平6−3770号記載の染料が好ましく用いられる。
【0185】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、ハロゲン化銀乳剤層のうち最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の耐拡散性化合物で着色された親水性コロイド層を有することが好ましい。着色物質としては染料またはそれ以外の有機、無機の着色物質を用いることができる。
【0186】
本発明のハロゲン化銀感光材料では、ハロゲン化銀乳剤層のうち最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の着色された親水性コロイド層を有することが好ましく、該層に白色顔料を含有していてもよい。例えば、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、硫酸バリウム、ステアリン酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン等を用いることができるが、種々の理由から、中でも二酸化チタンが好ましい。白色顔料は処理液が浸透できるような、例えば、ゼラチン等の親水性コロイドの水溶液バインダー中に分散される。白色顔料の塗設量は、好ましくは0.1〜50g/m2の範囲であり、更に好ましくは0.2〜5g/m2の範囲である。
【0187】
また、支持体と、支持体から最も近いハロゲン化銀乳剤層との間には、白色顔料含有層の他に、必要に応じて下塗り層、あるいは任意の位置に中間層等の非感光性親水性コロイド層を設けることができる。
【0188】
本発明のハロゲン化銀感光材料中に、蛍光増白剤を添加することで、白地性をより改良でき好ましい。蛍光増白剤は、紫外線を吸収して可視光の蛍光を発する事のできる化合物であれば特に制限はないが、分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を有するジアミノスチルベン系化合物であり、これらの化合物には増感色素の感材外への溶出を促進する効果もあり好ましい。他の好ましい一つの形態は、蛍光増白効果を有する固体微粒子化合物である。
【0189】
また、本発明のハロゲン化銀感光材料には、油溶性染料や顔料を含有すると白地性が改良され好ましい。油溶性染料の代表的具体例は、特開平2−842号8ページ〜9ページに記載の化合物1〜27が挙げられる。
【0190】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いられる油溶性添加剤の分散や塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤として好ましい化合物は、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基またはその塩を含有するものが挙げられる。具体的には、特開昭64−26854号の記載のA−1〜A−11が挙げられる。また、アルキル基に弗素原子を置換した界面活性剤も好ましく用いられる。これらの分散液は、通常ハロゲン化銀乳剤を含有する塗布液に添加されるが、分散後塗布液に添加されるまでの時間、および塗布液に添加した後塗布までの時間は短いほうがよく、各々10時間以内が好ましく、3時間以内、20分以内がより好ましい。
【0191】
本発明のハロゲン化銀感光材料には、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じて他のゼラチン、例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0192】
これらバインダーに対する硬膜剤としては、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。特開昭61−249054号、同61−245153号に記載の化合物を使用することが好ましい。また、写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐため、コロイド層中に特開平3−157646号に記載のような防腐剤および抗カビ剤を添加することが好ましい。また、ハロゲン化銀感光材料または処理後のハロゲン化銀感光材料表面の物性を改良するため、保護層に、例えば、特開平6−118543号や特開平2−73250号に記載の滑り剤やマット剤を添加することが好ましい。
【0193】
本発明のハロゲン化銀感光材料に用いる支持体としては、どのような材質を用いてもよく、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることができる。なかでも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としては、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートまたはそれらのコポリマーが好ましい。
【0194】
紙の表面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体は、通常、50〜300g/m2の質量を有する表面の平滑なものが用いられるが、プルーフ画像を得る目的においては、取り扱い感覚を印刷用紙に近づけるため、130g/m2以下の原紙が好ましく用いられ、更に70〜120g/m2の原紙が好ましく用いられる。
【0195】
本発明に用いられる支持体としては、ランダムな凹凸を有するものであっても平滑なものであっても好ましく用いることができる。
【0196】
支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/または有機の白色顔料を用いることができ、好ましくは無機の白色顔料が用いられ、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。白色顔料として好ましくは、硫酸バリウム、酸化チタンである。
【0197】
支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良する観点からは13質量%以上が好ましく、更には15質量%以上が好ましい。
【0198】
紙支持体の両面を被覆する耐水性樹脂層における白色顔料の分散度は、特開平2−28640号公報に記載の方法で測定することができる。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が、前記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0199】
本発明に用いられる両面に耐水性樹脂層を有する紙支持体の樹脂層は、1層であってもよいし、複数層からなってもよい。樹脂層を複数層とし、ハロゲン化銀乳剤層と接する面側に白色顔料を高濃度で含有させると鮮鋭性の向上効果が大きく、プルーフ用画像を形成するのに好ましい形態の1つである。
【0200】
また、支持体の中心面平均粗さ(SRa)の値としては0.15μm以下、更には0.12μm以下でことが、光沢性がよいという効果が得られる観点から好ましい。
【0201】
本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は、必要に応じて支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/またはその他の特性を付与するための1または2以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0202】
本発明のハロゲン化銀感光材料においては、ハロゲン化銀乳剤層は支持体上に積層塗布されるが、支持体からの順番はどのような順番でもよい。この他に必要に応じ中間層、フィルター層、保護層等を配置することができる。
【0203】
支持体上へのハロゲン化銀乳剤層の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。塗布法としては2種以上の層を同時に塗布することの出来るエクストルージョンコーティング及びカーテンコーティングが特に有用である。
【0204】
ハロゲン化銀感光材料の幅としては、用途に応じて任意の幅の物を用いることができるが、プルーフの用途では400mm以上の幅が好ましく用いられる。800mmあるいはそれ以上の幅の感光材料も好ましく用いられる。
【0205】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料を面積階調画像の形成に用いる場合には、通常、面積階調露光であればY、M、C、墨の発色をさせることで目的を達することもできるが、墨に加えてM、C等の単色が発色したことを識別するために、3値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。印刷においては、特別な色の版を用いることがあるが、これを再現するためには、4値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。
【0206】
本発明に用いられる露光装置において、露光光源は、公知のものをいずれも好ましく用いることができるが、レーザーまたは発光ダイオード(以下、LEDと記す)がより好ましく用いられる。
【0207】
レーザーとしては、半導体レーザー(以下、LDと記す)がコンパクトであること、光源の寿命が長いことから好ましく用いられる。また、LDはDVD、音楽用CDの光ピックアップ、POSシステム用バーコードスキャナ等の用途や光通信等の用途に用いられており、安価であり、かつ比較的高出力のものが得られるという長所を有している。LDの具体的な例としては、アルミニウム・ガリウム・インジウム・ヒ素(650nm)、インジウム・ガリウム・リン(〜700nm)、ガリウム・ヒ素・リン(610〜900nm)、ガリウム・アルミニウム・ヒ素(760〜850nm)等を挙げることができる。最近では、青光を発振するレーザーも開発されているが、現状では、610nmよりも長波の光源としては、LDを用いるのが有利である。
【0208】
SHG素子を有するレーザー光源としては、LD、YAGレーザーから発振される光をSHG素子により半分の波長の光に変換して放出させるものであり、可視光が得られることから適当な光源がない緑〜青の領域の光源として用いられる。この種の光源の例としては、YAGレーザーにSHG素子を組み合わせたもの(532nm)等がある。
【0209】
ガスレーザーとしては、ヘリウム・カドミウムレーザー(約442nm)、アルゴンイオンレーザー(約514nm)、ヘリウムネオンレーザー(約544nm、633nm)等が挙げられる。
【0210】
LEDとしては、LDと同様の組成を有するものが知られているが、青〜赤外まで種々のものが実用化されている。
【0211】
本発明に用いられる露光光源としては、各レーザーを単独で用いてもよいし、これらを組合せ、マルチビームとして用いてもよい。LDの場合には、例えば、10個のLDを並べることにより10本の光束からなるビームが得られる。一方、ヘリウムネオンレーザーのような場合、レーザーから発した光をビームセパレーターで、例えば、10本の光束に分割する。
【0212】
露光用光源の強度変化は、LD、LEDのような場合には、個々の素子に流れる電流値を変化させる直接変調を行うことができる。直接変調の場合には、電流値の調整により発光光量を変化させてもよいし、パルス状に発光させ、パルスの幅(発光時間)を変化させるパルス幅変調方式を用いてもよいし、パルス数を変化させるパルス数変調方式をとってもよい。LDの場合には、AOM(音響光学変調器)のような素子を用いて強度を変化させてもよい。ガスレーザーの場合には、AOM、EOM(電気光学変調器)等のデバイスを用いるのが一般である。
【0213】
光源としてLEDを用いる場合には、光量が弱ければ、複数の素子で同一の画素を重複して露光する方法を用いてもよい。
【0214】
光源の発光波長は、感光材料が十分な感度を有している波長領域であればいずれでも好ましく用いることができるが、色濁りを防止する意味で他の感光層と十分な感度差を有する波長領域を用いることが好ましい。感光材料のコントラストにも依存するが露光量の常用対数として0.6以上、好ましくは1.0以上の感度差があることが好ましい。この他に、光源の置かれた環境条件、動作条件などにより発光波長が変動するような場合には、分光感度のピーク波長に合わせることが理論上好ましく、これに関わってくる着色物質の分光吸収との関係も考慮して波長を選択することが好ましい。そのような例としては、特開平6−75342号、特開2001−83663号などが挙げられる。また、発光波長だけでなく発光強度が変動する場合にも、分光感度との関係で発光波長を選択することが好ましく、その例としては、特開2002−72367号、及び日経ニューマテリアル1987年9月14日号54ページ等に記載されている。
【0215】
レーザー光源の場合には、ビーム径は25μm以下であることが好ましく、6〜22μmがより好ましい。6μmより小さいと画質的には好ましいが、調整が困難であったり、処理速度が低下したりする。一方、25μmより大きいとムラが大きくなり、画像の鮮鋭性も劣化する。ビーム径を最適化することによってムラのない高精細の画像の書き込みを高速で行うことができる。
【0216】
このような光で画像を描くには、ハロゲン化銀感光材料上を光束が走査する必要があるが、ハロゲン化銀感光材料を円筒状のドラムに巻き付け、これを高速に回転しながら回転方向に直角な方向に光束を動かす、いわゆる円筒外面走査方式をとってもよく、円筒状の窪みにハロゲン化銀感光材料を密着させて露光する、いわゆる円筒内面走査方式も好ましく用いることができる。多面体ミラーを高速で回転させ、これによって搬送されるハロゲン化銀感光材料を搬送方向に対して直角に光束を移動して露光する、いわゆる平面走査方式をとってもよい。高画質であり、かつ大きな画像を得る観点から、円筒外面走査方式がより好ましく用いられる。
【0217】
円筒外面走査方式で露光を行うには、ハロゲン化銀感光材料を正確に円筒状のドラムに密着されなければならない。この密着を確実に行なうためには、正確に位置合わせして搬送する必要がある。本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は、露光する側の面(ハロゲン化銀乳剤層塗設面側)が外側に巻かれたものがより的確に位置合わせでき、好ましく用いることができる。同様な観点から、本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料に用いられる支持体としては、適正な剛度があり、テーバー剛度で0.8〜4.0が好ましい。
【0218】
露光ドラム径は、露光するハロゲン化銀感光材料の大きさに適合させて任意に設定することができる。露光ドラムの回転数も任意に設定できるが、レーザー光のビーム径、エネルギー強度、書き込みパターンやハロゲン化銀感光材料の感度などにより、適切な回転数を選択することができる。生産性の観点からは、より高速な回転で走査露光できる方が好ましいが、具体的には1分間に200〜3000回転が好ましく用いられる。
【0219】
露光ドラムへのハロゲン化銀感光材料の固定方法は、機械的な手段によって固定させてもよいし、ドラム表面に吸引できる微小な穴をハロゲン化銀感光材料の大きさに応じて多数設けておき、ハロゲン化銀感光材料を吸引して密着させることもできる。ハロゲン化銀感光材料を露光ドラムにできるだけ密着させることが、画像ムラ等のトラブルを防ぐには重要である。
【0220】
画像形成に用いる装置としては、複数のハロゲン化銀感光材料を予めセットしておき、適宜ハロゲン化銀感光材料を選択して使用する方式を好ましく用いることができる。この場合、2種類のハロゲン化銀感光材料は、例えば、幅の違うハロゲン化銀感光材料であったり、面質(支持体の凹凸)が異なるハロゲン化銀感光材料であったりすることができる。ハロゲン化銀感光材料の選択は、画像形成装置のスイッチなどで設定する方式であっても、画像データとともに設定情報を送信し、それに基づいて選択されるのでもよい。また画像データのサイズに応じて最適なハロゲン化銀感光材料のサイズを自動的に選択することも有利に用いることができる。特別な場合には、同じ種類のハロゲン化銀感光材料を装填しておき、一方のハロゲン化銀感光材料が使い終わったとき、自動的に他方のハロゲン化銀感光材料を使うようにすることもでき、連続無人運転が可能となり有利に用いることができる。
【0221】
次いで、現像処理について説明する。
本発明において、発色現像処理で用いられる芳香族一級アミン現像主薬としては、公知の化合物を用いることができる。これらの化合物の例として下記の化合物を挙げることができる。
【0222】
CD−1:N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2:2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3:2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4:4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5:2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン
CD−7:N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8:N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明においては、発色現像液は任意のpH域で使用できるが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0223】
本発明に係る発色現像の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上、60℃以下で処理することがより好ましい。
【0224】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが更に好ましい。発色現像液には、前記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することができる。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。
【0225】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、発色現像後、漂白処理及び定着処理を施される。なお、漂白処理は定着処理と同時に行なってもよい。定着処理の後は、通常は水洗処理が行なわれる。また、水洗処理の代替として、安定化処理を行なってもよい。
【0226】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーにハロゲン化銀感光材料を挟んで搬送するローラートランスポートタイプであっても、ベルトにハロゲン化銀感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともにハロゲン化銀感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量にハロゲン化銀感光材料を処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが通常であるが、この際、処理量に応じて補充を行う補充液量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、この方法としては、公開技報94−16935号に記載の方法が最も好ましい。
【0227】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0228】
実施例1
《ハロゲン化銀感光材料の作製》
〔試料101の作製〕
片面に高密度ポリエチレンを、もう一方の面にアナターゼ型酸化チタンを15質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートした、平米当たりの質量が115gのポリエチレンラミネート紙反射支持体(テーバー剛度=3.5、PY値=2.7μm)上に、下記表1に示す構成からなる各層を酸化チタンを含有するポリエチレン層の側に塗設し、更に裏面側にはゼラチン6.00g/m2、シリカマット剤0.65g/m2を含有する層を塗設した多層ハロゲン化銀感光材料試料である試料101を作製した。
【0229】
カプラーは高沸点溶媒に溶解して超音波分散し、分散物として添加したが、この時、界面活性剤として(SU−1)を用いた。又、硬膜剤として(H−1)、(H−2)を添加した。塗布助剤としては、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。また各層に(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。
【0230】
【表1】
【0231】
上記試料101の作製に用いた各添加剤の詳細は、以下の通りである。
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム塩
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)・ナトリウム塩
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ((1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)ハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノンと2,5−ジ−secテトラデシルハイドロキノンと2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノンの質量比1:1:2の混合物
HQ−4:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン
SO−1:トリオクチルホスフィンオキサイド
SO−2:ジ(i−デシル)フタレート
SO−3:オレイルアルコール
SO−4:トリクレジルホスフェート
PVP:ポリビニルピロリドン
【0232】
【化51】
【0233】
【化52】
【0234】
【化53】
【0235】
上記試料101の作製において、各感光性層で用いたハロゲン化銀乳剤は、以下の手順に従って調製した。
【0236】
(青感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)をpAg=7.3、pH=3.0に制御しつつ同時添加し、更に下記(C液)及び(D液)をpAg=8.0、pH=5.5に制御しつつ同時添加した。この時、pAgの制御は特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0237】
〈A液〉
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200mlに仕上げた
〈B液〉
硝酸銀 10g
水を加えて 200mlに仕上げた
〈C液〉
塩化ナトリウム 102.7g
例示化合物(I−2) 4×10−8モル
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600mlに仕上げた
〈D液〉
硝酸銀 300g
水を加えて 600mlに仕上げた
添加終了後、花王アトラス社製のデモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液とを用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体の乳剤EMP−101を得た。
【0238】
上記乳剤EMP−101に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B101を得た。
【0239】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10−4モル/モルAgX
臭化カリウム 0.2g/モルAgX
次いで、上記乳剤EMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間とをそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体の乳剤EMP−102を得た。
【0240】
上記青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B101の調製において、乳剤EMP−101に代えて、乳剤EMP−102を用いた以外同様にして、青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B102を調製し、Em−B101とEm−B102の1:1の混合物を第7層で用いる青感光性ハロゲン化銀乳剤とした。
【0241】
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
上記乳剤EMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間とをそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体の乳剤EMP−103を得た。
【0242】
上記乳剤EMP−102に対し、下記化合物を用い55℃にて最適に化学増感を行い、緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G101を得た。
【0243】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−2 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−3 2×10−4モル/モルAgX
塩化ナトリウム 0.5g/モルAgX
次いで、上記乳剤EMP−103の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体の乳剤EMP−104を得た。
【0244】
上記緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G101の調製において、EMP−103に代えてEMP−104を用いた以外同様にして緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G102を調製し、Em−G101とEm−G102の1:1の混合物を第5層で用いた緑感光性ハロゲン化銀乳剤とした。
【0245】
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記調製した乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R101を得た。
【0246】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10−4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10−4モル/モルAgX
次に、前記調製した乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R102を得た。
【0247】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 2×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 2×10−4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10−4モル/モルAgX
上記調製した赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R101と赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R102の1:1の混合物を、第3層の赤感光性ハロゲン化銀乳剤として用いた。
【0248】
上記各感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0249】
STAB−1:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾールSTAB−3:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−4:p−トルエンチオスルホン酸
【0250】
【化54】
【0251】
【化55】
【0252】
〔試料102の作製〕
上記試料101の作製で、第7層で用る青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製を下記の様に変更した以外は同様にして、試料102を作製した。
【0253】
試料101の作製に用いた乳剤Em−B101及び乳剤Em−B102の調製において、各ハロゲン化銀乳剤粒子の調製に用いたC液に、例示化合物(dopt−2)を1×10−8モルを添加した以外は同様にして、乳剤Em−B111及び乳剤Em−B112を調製し、これを青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた。
【0254】
〔試料103の作製〕
上記試料101の作製で、第7層で用る青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製を下記の様に変更した以外は同様にして、試料103を作製した。
【0255】
試料101の作製に用いた乳剤Em−B101及び乳剤Em−B102の調製において、各ハロゲン化銀乳剤粒子の調製に用いたC液に、RhCl6を1×10−8モルを添加した以外は同様にして、乳剤Em−B113及び乳剤Em−B114を調製し、これを青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた。
【0256】
〔試料104の作製〕
上記試料101の作製で、第7層で用る青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製を下記の様に変更した以外は同様にして、試料103を作製した。
【0257】
試料101の作製に用いた乳剤Em−B101及び乳剤Em−B102の調製において、各ハロゲン化銀乳剤粒子の調製に用いたC液から例示化合物(I−2)を除いた以外は同様にして、乳剤Em−B115及び乳剤Em−B116を調製し、これを青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた。
【0258】
〔試料111〜112の作製〕
上記試料101〜104の作製において、第7層(青感光性層)で用いたイエローカプラーY−1、Y−2を、0.8モル倍の例示イエローカプラー(3)に変更し、更に第7層の青感光性ハロゲン化銀乳剤の使用量を0.8倍に変更した以外は同様にして、試料111〜112を作製した。
【0259】
《画像の形成》
〔露光装置〕
露光装置として、光源としてBのLEDを主走査方向に10個並べ、露光のタイミングを少しづつ遅延させることによって同じ場所を10個のLEDで露光出来るように調整し、また、副走査方向にも10個のLEDを並べ隣接する10画素分の露光が1度に出来る露光ヘッドを準備した。G、Rも同様にLEDを組み合わせて露光ヘッドを準備した。各ビームの径は約10μmで、この間隔でビームを配列し、副走査のピッチは約100μmとした。1画素当たりの露光時間は約100ナノ秒であった。
【0260】
〔現像処理〕
現像処理は以下に示す条件で行った。
【0261】
処理工程 処理温度 処理時間 補充量(ml/m2)
発色現像 38.0±0.3℃ 120秒 80ml
漂白定着 38.0±0.5℃ 90秒 120ml
安定化 30〜34℃ 60秒 150ml
乾燥 60〜80℃ 30秒
上記各処理工程で使用した処理液は、以下の通りである。
【0262】
〈発色現像液タンク液と補充液〉
水を加えて全量を1リットルとし、タンク液はpH=10.0に、補充液はpH=10.6に調整した。
【0263】
〈漂白定着液タンク液及び補充液〉
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpH=5.0に調整した。
【0264】
〈安定化液タンク液及び補充液〉
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
硫酸亜鉛 0.5g
硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g
PVP(ポリビニルピロリドン) 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpH=7.5に調整した。
【0265】
〔感度及び感度変動の測定〕
各試料をそれぞれ2部用意し、1部は冷蔵保存し、もう一は、60℃の条件に6時間、25℃に18時間の処理サイクルを20回繰り返した後、室温に戻してから、上記露光装置により適宜露光量を変化させて幅10mmのステップウエッジ状に露光を行い、上記の現像処理を行った。得られた色素画像をエックスライト社製の508型反射濃度計を用いてB(ブルー)濃度を測定した。分光特性はステータスTを用い、感度は濃度1.0を与える露光量の逆数で定義した。
【0266】
感度は、冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0267】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0268】
【表2】
【0269】
表2の結果より、感度変動においては、試料101は2%の感度変動しか起こしていないのに対し、試料111では、14%増感していることが分かる。この試料の相違点は、イエローカプラーの種類の違いだけである。これに対し、試料111と試料114を比較すると、試料114においてはこうした現象は起こしておらず、イリジウム化合物を含有したハロゲン化銀と特定の構造のカプラーの組み合わせによって引き起こされた現象であることが分かる。ただし、試料114では、得られる階調が軟調過ぎて、実用には適さない特性であった。
【0270】
これに対し、試料112、113は感度変動は小さく、特にdopt−2を用いた112の感度変動が小さいことが分かる。RhCl6を用いた試料113の感度変動は相対的には小さいが、試料112に比較すると感度変動を抑制する効果は小さく、また、劣化条件で保存していない試料で大幅な感度低下を引き起こしており、実用上問題を抱えていることが分かる。
【0271】
実施例2
上記実施例1で作製した試料101、102、111、112を用いて、下記の保存条件A〜Eで保存し、これを実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0272】
条件A:冷蔵
条件B:60℃の条件に6時間、25℃に18時間のサイクルを20回繰り返した
条件C:60℃の条件に5日間、その後冷蔵
条件D:60℃の条件に12時間、25℃に12時間のサイクルを20回繰り返した
条件E:60℃の条件に10日間、その後冷蔵
なお、感度は条件Aで得られた感度について、試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動は、各々の試料の条件Aにおける感度を100とし、条件B〜Eで得られた感度をその相対値で表示した。
【0273】
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0274】
【表3】
【0275】
表3で示す結果より、条件C、Eは、それぞれ条件B、Dと60℃での保管時間を同じにしたものであるが、本発明に係るイエローカプラーを用いた試料111では、間欠的に高温の保管を繰り返したものの方が増感の幅が大きいことが分かる。この挙動は、試料111において、高温保管の時間を延ばした条件Dの方が条件Bよりもむしろ感度変動が小さいことにも現れており、連続して高温条件においた場合は高温保管の時間が長い方が感度変動が大きいことと考えあわせると、特定の時間間隔で温度が変化した場合に特異的に起こる現象であることが分かる。この様な保存環境変化に対し、本発明の試料では改良されることが分かる。
【0276】
実施例3
実施例1に記載の試料112の作製において、例示化合物(dopt−2)を、等モルの例示化合物(dopt−1)、例示化合物(dopt−4)、例示化合物(dopt−9)、例示化合物(I−4)、例示化合物(II−4)、例示化合物(III−1)、K4[Fe(CN)6]にそれぞれ変更した以外同様にして試料301〜307を作製し、実施例1で作製した試料101、112を加えて、実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0277】
なお、感度は冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0278】
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0279】
【表4】
【0280】
実施例3は、イリジウム化合物と組み合わせて種々の金属化合物を含有したハロゲン化銀感光材料の特性を評価したが、例示化合物(I−2)と組み合わせて他のイリジウム化合物を用いた試料304〜306でも、間欠的な高温保管後の増感が顕著であり、K4[Fe(CN)6]を組み合わせた試料307でも同様の挙動が見られた。これに対し、本発明に係る化合物を用いた試料301〜303では、試料112と同様に、感動変動は非常に小さく収まっていることが分かった。
【0281】
実施例4
実施例1に記載の試料112の作製において、例示イエローカプラー(3)と例示化合物(dopt−2)を、表5に記載の様に変更して試料401〜417を作製し、実施例1で作製した試料101、112を加えて、実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0282】
なお、感度は冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0283】
以上により得られた結果を、表5に示す。
【0284】
【表5】
【0285】
表5に示す結果において、試料409、413、417はイリジウム化合物をそれぞれ変更した試料であるが、イエローカプラーとしては比較のY−1、Y−2を用いた試料である。いずれの試料も、試料101と同様に、高温保管による増感は小さいことが分かる。これらに対し、試料408、412、416は、本発明に係るイエローカプラーを用いた水準ではあるが、金属化合物が未使用であるこれらの試料は間欠的な高温保管での感度変動が著しく大きいという欠点を有していた。これに対して、本発明に係る金属化合物を組み合わせて用いたものでは、いずれも間欠的な高温保管での感動変動が小さく本発明の効果が得られていることを確認することができた。特に、一般式(II)で表されるイリジウム化合物を用いた場合には、感度自体が高く好ましい特性を有していることが分かる。一方、一般式(III)で表される化合物を有する試料では、感度変動が特に小さく好ましいことが分かる。
【0286】
実施例5
実施例1に記載の試料112の作製において、第7層で用いたイエローカプラー及びIr化合物、金属化合物を、表6のように各々変更した以外は同様にして、試料501〜522を作製し、実施例1で作製した試料101、112を加えて、実施例1の方法に従って露光、現像処理及び評価を行った。
【0287】
なお、感度は冷蔵保存した試料101の感度を100とした相対値で表示した。また、感度変動(ΔS)は、各々の試料について、冷蔵保存試料の感度を100とした時の保存条件を変動させた試料の感度を相対値で示した。
【0288】
以上により得られた結果を、表6に示す。
【0289】
【表6】
【0290】
表6の結果より明らかなように、試料101と、試料518〜522の結果より、本発明に係るイエローカプラーを用いることにより、間欠的な高温保管による増感現象がいずれの試料でも見られることが分かる。これに対して試料112、501〜517では、本発明のいずれの試料においても、間欠的な高温保管による増感が改良されていることがわかる。カプラーの種類に関しては、試料501、503、509〜513は、得られる感度が高く好ましい特性を有していることが分かる。また、試料509については、試料522で使われたカプラーは間欠的な高温保管による増感が大きいという欠点を持っているが、本発明で規定した構成をとることにより他のカプラーと差のない特性となり、本発明がカプラーの特性を活かして用いる上において、特に有用であることがわかる。
【0291】
実施例6
特開2001−133922号公報の実施例1に記載の試料101の調製において、イエローカプラー及び青感光性ハロゲン化銀乳剤を、実施例1に記載の試料101〜104、試料111〜114と同じ条件に変更した以外は同様にして試料601〜604、試料611〜614を作製した。
【0292】
この様にして作製した各試料を用いて、特開2001−133922号公報の段落番号〔0160〕以降に記載の現像処理Aにより現像を行った以外は、実施例1と同様にして評価を行った結果、試料612(試料112に相当)によって、本発明の効果が得られることを確認した。
【0293】
【発明の効果】
本発明により、イリジウム化合物を含有するハロゲン化銀乳剤と特定のイエローカプラーを含有するハロゲン化銀感光材料の高温条件での保管、特に反復された高温条件での保管による感度変動を抑制することができた。
Claims (7)
- 支持体上に、少なくとも1層の95モル%以上の塩化銀を含むハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層が、イリジウム錯体化合物と、イリジウム以外の周期律表第5族〜10族の金属原子を中心金属としニトロシルまたはチオニトロシル配位子を有する金属錯体化合物とを含有するハロゲン化銀乳剤と、下記一般式(A)で表される化合物とを含有することを特徴とするハロゲン化銀感光材料。
- 前記イリジウム錯体化合物が、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀感光材料。
一般式(I)
[IrXnY6−n]m
〔式中、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表し、mは−2または−3を表す。nは0〜5の整数を表す。〕 - 前記イリジウム錯体化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀感光材料。
一般式(II)
[Ir(H2O)nXkY6−n−k]m
〔式中、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表す。mは−2〜0の整数、kは0〜(6−n)の整数、nは1または2を表す。〕 - 前記イリジウム錯体化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀感光材料。
一般式(III)
[IrLnXkY6−n−k]m
〔式中、Lは有機配位子を表し、X、Yは互いに異なるハロゲン化物イオンを表す。mは−2〜0の整数、kは0〜(6−n)の整数、nは1または2を表す。nが2である時は、Lは同じであっても異なっていてもよい。〕 - 前記一般式(A)におけるZが、−N−C=N−部と共に3H−ピリミジン−4−オン環、または1H−ピリミジン−4−オン環を表すのに必要な原子群を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
- 前記一般式(A)におけるZが、−N−C=N−部と共に2H−〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシド環、または4H−〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシド環を表すのに必要な原子群を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀感光材料。
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