本発明を、添付の図面を基にする実施例により説明する。図1は多連式HSTを油圧変速式操向装置に適用した場合のスケルトン図、図2は正逆切換用ギア機構Gの内部構成を示す図1の拡大図、図3はポンプP1・P2直結型の多連式HSTの一実施例であるハウジングH1・H2・H3よりなる多連式HSTを示す正面断面図、図4は同じく右側面図、図5はポートブロックPB1の左側面図、図6は同じく右側面図、図7は同じくX−X断面図である。
図8は同じくY−Y断面図、図9は同じく平面図、図10は同じく底面図、図11は同じくZ−Z断面図、図12は同じく正面図、図13は同じく正面断面図、図14はポンプP1・P2直結型の多連式HSTの一実施例であるハウジングH1・H4・H5よりなる多連式HSTのトランスミッションケースTMへの取付構成を示す正面断面図、図15は同じく多連式HSTの正面断面図、図16は同じく右側面図である。
図17は同じく平面断面図、図18はポートブロックPB2の左側面図、図19は同じく右側面図、図20は同じくX’−X’断面図、図21は同じくY’−Y’断面図、図22は同じく正面図、図23は同じく平面図、図24はポンプP1・P2直結型の多連式HSTの一実施例であるハウジングH1・H6よりなる多連式HSTの正面断面図である。
図25は同じく右側面図、図26はポンプP1・P2並列型の多連式HSTのポンプP1・モーターM1の配列構成を示す正面断面図、図27は同じくポンプP2・モーターM2の配列構成を示す正面断面図、図28は同じく左側面図、図29は同じく平面一部断面図、図30はモーターM1・ポンプP2連動型の多連式HSTの正面断面図、図31は同じく左側面図、図32は同じく右側面図である。
図33はポンプ軸・モーター軸直交型の多連式HSTの一実施例であるポンプP1・P2直列型の多連式HSTの正面断面図、図34は同じく左側面図、図35はポンプ軸・モーター軸直交型の多連式HSTの一実施例であるポンプP1・P2並列型の多連式HSTのトランスミッションケースTMへの取付構成を示す正面断面図である。
図36は同じく多連式HSTの正面断面図、図37は同じく平面一部断面図、図38は同じく左側面図、図39はポンプ軸・モーター軸直交型の多連式HSTの一実施例であるモーターM1・ポンプP2連動型の多連式HSTの正面断面図、図40は同じく平面断面図、図41は同じく左側面図である。
まず、図1より、多連式HSTを基とする駆動系の概略構成を説明する。多連式HSTは、ポンプP1及びモーターM1よりなる第一HSTと、ポンプP2及びモーターM2よりなる第二HSTを組み合わせて構成されたものであって、この実施例では、第一HSTを走行用HSTに、第二HSTを操向用HSTに適用して、多連式HSTを油圧変速式操向装置に組み込んだ実施例を開示している。この多連式HSTを有する油圧変速式操向装置は、芯地旋回を必要とするクローラ走行装置を有する建設機械(例えばバックホー)や農業機械(例えばコンバイン)等に採用される。
機関(エンジン)の出力軸は、入力上手側である走行用HSTのポンプP1に入軸され、ポンプP1のポンプ軸を駆動し、このポンプ軸の駆動を基に走行用HSTのモーターM1が駆動され、モーターM1の出力軸を、減速ギアg1・g2の噛合を介して中央車軸MAに伝動しており、中央車軸MAの回転駆動は、正逆転切換用ギア機構Gを介して、左右に突設された左右車軸LA・RAに伝動される。図2により詳説すると、中央車軸MAの両端に、リングギア39が固設されており、各リングギア39内側のギア部には、二個の遊星ギア40・40を噛合させ、一リングギア39内の二個の遊星ギア40・40間には太陽ギア41を介設噛合させている。更に、各リングギア39内における二個の遊星ギア40・40の中心に遊嵌された軸同士を連結して構成した連結部材42に、左右車軸LA・RAの各内側端を固着しており、各左右車軸LA・RAは、各太陽ギア41の中心部に遊嵌して左右に突出させている。このようなギア機構により、モーターM1の出力軸より伝動されて回転駆動する中央車軸MAと一体に左右リングギア39・39が自転し、これによって、各リングギア39内の二個の遊星ギア40・40が太陽ギア41を動かすことなく、その周囲を公転し、この公転駆動にて連結部材42が回転し、左右車軸LA・RAが連結部材42・42と一体的に回転駆動して、走行するものである。
一方、走行用HSTの駆動(ポンプP1の駆動、或いはモーターM1の駆動)を基に、入力下手側の操向用HSTが駆動され(即ち、ポンプP2が駆動し、それを基にモーターM2が駆動され)、モーターM2の出力軸が正逆転切換用ギア機構Gに入軸されていて、この出力軸が回転駆動している場合に、その回転方向によって、正逆転切換用ギア機構Gを介して、中央車軸MAを左又は右に傾斜させて、中央車軸MA、正逆転切換用ギア機構G、及び左右車軸LA・RAを一体に左右に旋回させる。図2により詳説すると、モーターM2の出力軸端にベベルギア43が固設されていて、その両側にデフサイドギア44・44が噛合し、各デフサイドギア44のギア軸がデフヨーク軸45となっていて、その外端部に固設した小ギア46を、前記の太陽ギア41の外側に延設されて、左右車軸LA・RAを遊嵌する大ギア47に噛合させている。モーターM2の出力軸及びベベルギア43が回転すると、左右のデフサイドギア44・44は、互いに反対方向に従動回転する。従って、小ギア46・大ギア47を介して、左右の太陽ギア41・41が互いに反対方向に回転する。太陽ギア41の回転(自転)方向が、遊星ギア40・40の公転方向と同じ側では、遊星ギア40・40の公転速度が増速され、従って、その側の車軸LA又はRAの回転速度は増速される。その反対側では、太陽ギア41の回転方向が、遊星ギア40・40の公転方向の逆方向となり、遊星ギア40・40の公転速度は減速されて、この側の車軸LA又はRAの回転速度は減速される。即ち、正逆転切換用ギア機構Gは、差動装置となっている。また、遊星ギア40・40の公転方向と逆方向に自転する太陽ギア41の自転速度が、遊星ギア40・40の公転速度に比して高くなると(或いは、走行停止により遊星ギア40・40が公転停止している場合に、太陽ギア41が逆回転すると)、遊星ギア40・40が太陽ギア41の回転方向に回転して、その側の車軸LA又はRAは逆転駆動することとなる。
これにより、走行駆動中は、旋回側の車軸を減速し、反対側の車軸を増速して旋回するものであり、走行停止、或いは走行速度が一定以下の場合には、旋回側の車軸は逆転駆動し、反対側の車軸は正転駆動して、芯地旋回する構成となっている。モーターM2の出力軸が駆動されていない場合は、左右車軸LA・RAは両方等速度に正転駆動し、直進する。(後進時は、両方とも同一速度で逆転駆動していることとなる。)
前記の図42に示す従来の、単体HSTを併設して、それぞれ走行用と操向用に適用していた場合に比べると、機関(エンジン)の出力軸が一つであっても、それに対して、入力機構は、走行用HSTのポンプP1について設けるだけでよく、従来において、機関の出力系を分岐させて、操向用HSTのポンプP2に入力させる入力機構は不要となる。即ち、多連式HSTは、まず、機関(エンジン)に対しての入力機構が一つですむのである。
以下の多連式HSTの各実施例は、いずれも図1図示の駆動系を採用し、多連式HSTの入力上手側である第一HSTを走行用HSTに、入力下手側である第二HSTを操向用HSTに採用していることを前提としている。また、いずれの多連式HSTも、正逆転切換用ギア機構Gを内設し、左右車軸LA・RA及び中央車軸MAを軸支するトランスミッションTMに取り付けられている。
また、各実施例の多連式HSTについて、各ポンプP1・P2及び各モーターM1・M2の各内部構成は同様であるので、まず、これについて図3図示の多連式HSTを基に説明しておく。各ポンプP1・P2及び各モーターM1・M2とも作動油を満たしたハウジング内にて構成されており、それぞれポンプ軸PS1・PS2及びモーター軸MS1・MS2を軸支して、これにプランジャを内設するシリンダーブロックCBを環設固定し、弁板を介して、ポートブロックPB(以下のポートブロックPB1〜PB8の総称をポートブロックPBとする。)の側面に対峙させている。また、各ポンプP1・P2において、各ポンプ軸PS1・PS2には、各シリンダーブロックCBの上手側において、各々ポンプ操作レバーL1・L2にて操作される可動斜板1・2を遊嵌環設しており、各モーターM1・M2においては、各モーター軸MS1・MS2の各シリンダーブロックCB下手側部位に固定斜板3・4を遊嵌環設している。該ポンプ操作レバーL1・L2は、オペレーターが操作する変速レバー及び旋回用ハンドルに対して、各々リンク機構にて連結されている(図示せず)。
第一HSTのポンプP1は、多連式HSTにおける入力上手位置のポンプであるので、機関(エンジン)より動力を入力する。従って、ポンプ軸PS1は、ハウジングより外部に突出させ、この部位に入力プーリー5を環設固定している。また、各モーターM1・M2のモーター軸MS1・MS2は、第一・第二各HSTの出力軸として、ハウジングより突出させて、トランスミッションケースTM内に入軸させる。
以上のことを前提として、以下、多連式HSTの各実施例について説明する。まず、図3乃至図25図示のポンプP1・P2直列型の多連式HSTより説明する。図3乃至図25においては、三つの多連式HSTの実施例が開示されているが、これらの実施例の多連式HSTは、いずれも、第一HSTのポンプP1一つを内設するハウジングH1をポートブロックPBの一側面に取り付け、一方、ポートブロックPBの反対側の側面に、第二HSTのポンプP2、第一・第二HSTのモーターM1・M2の三つを取り付けた構成である。
図3乃至図13図示のものは、ポンプP2と両モーターM1・M2配設側(本実施例では右側面)において、ポンプP2一つを一つのハウジングH2に、両モーターM1・M2を前後並列状に一つのハウジングH3に内設して、図4の如く、二つのハウジングH2・H3を、ポンプP2とモーターM2同士が上下並列状となるように、ポートブロックPB1の側面に固設した構成となっており、図14乃至図23図示のものは、ポンプP2とモーターM2を上下並列状にハウジングH4に内設し、モーターM1のみをハウジングH5に内設させて、図16の如く、二つのハウジングH4・H5を、モーターM1とモーターM2同士が前後並列状となるように、ポートブロックPB2の側面に固設している。即ち、この二つの実施例における多連式HSTは、三つのハウジングより構成されている。
図3乃至図13図示の多連式HSTは、前後並列に配設されるモーターM1・M2を一つのハウジングH3に内設している分、前後幅(モーター軸MS1・MS2の軸間距離)が縮小されており、一方、図14乃至図23図示の多連式HSTは、上下並列に配設されるポンプP2とモーターM2とが、一つのハウジングH4に内設されているので、上下幅(ポンプ軸PS2とモーターMS2の軸間距離)が縮小されている。配設スペースやトランスミッションケースTMの形状を考慮して、前後の配設スペースを縮めたい場合には、前者の多連式HSTを、上下の配設スペースが限定されている場合には、後者の多連式HSTを、というように選択して配設するとよい。
図24及び図25図示のものは、ポンプP2、両モーターM1・M2の全てが一つのハウジングH6に内設され、一つのハウジングH6をポートブロックPB3の側面に固設した構成になっている。即ち、二つのハウジングH1・H6より多連式HSTが構成されている。前記の二つの多連式HSTに比べると、ポンプP2と両モーターM1・M2が一つのハウジングに内設されることから、ハウジング一つ分の部品点数が減り、更に、ポンプP2・モーターM1・モーターM2同士の間隔(ポンプ軸PS2・モーター軸MS1・モーター軸MS2の軸間距離)を縮小できるので、ハウジングH6自体の他、ポートブロックPB3もコンパクト化されており、多連式HST全体のコンパクト化に繋がる。その他、ポートブロックPB内における戻し油用の油路構成においても効果をもたらすが、これについては後に詳述する。
トランスミッションケースTMに対する取り付け構成としては、上記三つの多連式HSTのいずれの場合にも、図14に示すように、トランスミッションケースTMの一側面の上部を切り欠き、その切欠部の側面にポートブロックPBを固着するとともに、水平方向に平行状に並列配設された両モーターM1・M2のモーター軸MS1・MS2を水平方向に入軸している。
そして、いずれの実施例においても、図3、図15、図24に示す如く、ポートブロックPBを隔てて、両ポンプP1・P2は、正面視、左右に直列状に配設され、ポートブロックPB内にカップリング6が内設されており、これに両ポンプ軸PS1・PS2が嵌入されて、両ポンプ軸PS1・PS2が直結され、ポンプ軸PS1の駆動にポンプ軸PS2が従動する構成となっている。入力プーリー5を具備して、機関より直接入力駆動されるポンプ軸PS1は、カップリング6より外れたとしても、ポンプ軸PS1の駆動が絶たれることはないが、ポンプ軸PS2にとっては、カップリング6から外れることは、入力手段を絶たれることとなる。従って、駆動信頼性は、ポンプ軸PS1を有するポンプP1が、ポンプP2よりも高いので、図1の如く油圧変速式走行装置に適用する場合には、ポンプP1を有する第一HSTが、使用頻度の高い走行用HSTとして適用されるのである。
なお、図3図示の如く、ポンプ軸PS1の入力下手側の端部をハウジングH1より外部に突出させ、これをチャージポンプCPに入軸しており、こうして駆動されるチャージポンプCPより吐出された作動油は、ポートブロックPB1上端のチャージ口C等よりポートブロックPB内に供給され、チェック弁7・7を介して、後記の油路21・21、25・25内に作動油が充填され、各ハウジング内のポンプP1・P2及び各モーターM1・M2の作動油として補填される。これは、他の二つの実施例においても同様である。このように、一つのチャージポンプで第一・第二HSTの全ポンプ及びモーターに作動油補填ができる。
また、図15図示の如く、チャージポンプCPの外側において、ポンプ軸P2をスプライン8にて延長してPTO軸とし、PTOプーリー9を環設している。ポンプ軸PS2を延長して、ポンプ軸PS2に直接PTOプーリー9を環設しなかったのは、ポンプ軸2にPTOプーリーにかかるベルト機構からの曲げ荷重が伝わって、撓みが生じるのを防ぐためであり、PTOプーリー9からの曲げ荷重は、スプライン8のみにて吸収されてポンプ軸PS2には伝わらないのである。更に、チャージポンプCP外端におけるスプライン8の軸受部をPTOプーリー9の内側に遊嵌する構成にしており、PTOプーリー9の曲げを、この軸受部が規制するようにしている。ここに示したPTOプーリー9のチャージポンプCPへの取付構成は、他の二つの実施例のみならず、後記の全ての多連式HSTについて可能である。
更に、図3乃至図13図示の多連式HSTにおいて、ポンプP2内蔵のハウジングH2の側面には、平時は閉栓されている油戻し口10が開孔されている。そして、ポートブロックPB1には、図3、図6及び図13の如く、ハウジングH1・H2の内部を連通する油戻し用油路11が穿設され、更に、油戻し用油路11より垂直状の油戻し用油路12、及び水平状の油戻し用油路13を分岐穿設してハウジングH3の内部に連通させている。これによって、この多連式HSTより油を抜く際には、ハウジングH2に穿設した唯一の油戻し口10より油を抜けば、ハウジングH1・H3内の作動油も、油戻し用油路11・12・13を介してハウジングH2内に流れ込み、一括してこの油戻し口10より抜くことができる。このように油戻し口10を一つ設けるだけで、多連式HST全体の油抜きが可能となっている。
図14乃至図23図示の多連式HSTにおいては、油戻し口10はハウジングH4に設けられていて、油戻し栓が取り付けられており、ポートブロックPB2内においては、図15及び図16の如く、ハウジングH1・H4の内部を連通する油戻し用油路11’が穿設され、更に、ハウジングH4・H5間を連通する14・15・16を穿設して、ハウジングH1・H5内の油を、前記と同様に、ハウジングH4に設けた一つの油戻し口10より抜くことができる。
そして、図24及び図25図示の多連式HSTにおいては、ハウジングH6に油戻し口10が設けられて、油戻し栓が取り付けられており、ハウジングH6には、ポンプP2と両モーターM1・M2を一体に内設しているので、ポートブロックPB3には、ハウジングH1・H2を連通する油戻し用油路11”のみを穿設するだけで、この一つの油戻し口10で、全体の油抜きができる。
次に、前記三つの多連式HSTにおけるポートブロックPB1の構成について説明する。図3及び図4図示のポンプP2と両モーターM1・M2を別個のハウジングH2・H3に内設した多連式HSTのポートブロックPB1は、図5乃至図13に図示し、図15及び図16図示のポンプP2・モーターM1をハウジングH4に内設し、モーターM1のみをハウジングH5に内設した多連式HSTのポートブロックPB2は、図15乃至図23に図示している。どちらも側面視L字状で、上部には、両ポンプ軸PS1・PS2を嵌入するカップリング6を嵌挿するためのポンプ軸孔17が穿設されて、ポンプP1取付側面にキドニーポート20・20が、ポンプP2取付側面にキドニーポート21・21が、ポンプ軸孔17の周囲にて穿設されている。また、下部には、モーター軸MS1・MS2嵌挿用の各モーター軸孔18・19が穿設されており、モーターM1・M2取付側面にて、各モーター軸孔18・19の周囲に、各々キドニーポート22・22、及び23・23が穿設されている。
両多連式HSTにおける各ポートブロックPB1・PB2内の油路の穿設構造ついて説明する。まず、ポートブロックPB1においては、ハウジングH1(ポンプP1)取付側寄りのX−X断面上にて、ポンプP1のキドニーポート20・20より垂直下方に圧油を送るよう、鉛直方向の油路24・24が左右水平状に穿設されている。更に、油路24・24より左右水平方向に油路25・25が上下平行状に穿設され、各油路25・25より、直交する油路26・26を介して、油路25・25に平行状の油路27・27を分岐穿設しており、油路27・27が、モーターM1のキドニーポート22・22が連通している。即ち、油路24・25・26・27によって、ポンプP1よりモーターM1への油路(P1−M1系油路)を構成している。一方、ポンプP2よりモーターM2への油路(P2−M2系油路)としては、ポートブロックPB1内のハウジングH2・H3側寄りのY−Y断面上に、鉛直方向の油路28・28を左右平行に穿設して、ポンプP2のキドニーポート21・21とモーターM2のキドニーポート23・23を連通させている。
次に、ポートブロックPB2について説明する。まず、ポートブロックPB2の形状面において、図17や図23の如く、ハウジングH5(モーターM1)の取付面Aが、ハウジングH4(ポンプP2及びモーターM2)の取付面Bに比して内側寄り(ハウジングH1取付面側寄り)の段差状になっている。(図17において、ポートブロックPB2の横幅が、L1<L2となっている。)そして、ポートブロックPB2の、ハウジングH5取付面Aを含むハウジングH1取付面側寄りのX’−X’断面上に、P1−M1系油路である鉛直状の油路29・29、水平状の油路30・30、鉛直状の油路31・31を、左右平行状に穿設して、ポンプP1のキドニーポート20・20とモーターM1のキドニーポート22・22とを連通させている。また、モーターM1取付面Aを含まないポンプP2及びモーターM2取付面Bのみの部位におけるY’−Y’断面上に、P2−M2系油路である鉛直方向の油路32・32を穿設して、ポンプP2のキドニーポート21・21とモーターM2のキドニーポート23・23とを連通させている。
ポートブロックを構成する中で、特に加工に厳密性を要するのは、キドニーポートであって、これがあまり深くなりすぎないように油路或いはポートブロック自体の形状を工夫する必要がある。前記のPB1・PB2においては、ポンプP2とモーターM2とはポートブロックPBに対して同一側面に取り付けられているので、P2−M2系油路(油路28・28、32・32)をポンプP2及びモーターM2の取付側面に近く穿設して、ポンプP2とモーターM2のキドニーポートは浅くすることができるが、ポンプP1の取付側面とモーターM1の取付側面は、ポートブロックPBを隔てて互いに反対側になっているので、P1─M1系油路を、どちらかの側面に寄せて穿設すると、寄せた側のキドニーポートは浅くできるが、その反対側のキドニーポートが深くなってしまうという不具合が生ずる。例えば、ポンプP1寄りに穿設すれば、モーターM1のキドニーポートが深くなってしまうのである。
そこで、まず、ポートブロックPB1においては、前記の如く、ハウジングH1側寄りに穿設されている水平方向の油路25・25より、平面視L字状に油路26・26、及び油路27・27を分岐穿設し、油路27・27をモーターM1に近づけて、モーターM1のキドニーポート22・22を深くしなくてもよいようにしている。一方、ポートブロックPB2においては、前記の如く、ポートブロックPBの形状自体に段差を設けて、ハウジングH5取付面Aを、ハウジングH4取付面Bに比して、ハウジングH1取付面側寄りにしているので、P1─M1系の油路29・29、30・30、及び31・31が、モーターM1より遠くならず、モーターM1のキドニーポート22・22が浅くてすむのである。
なお、ポートブロックPB3は、油路構成等を特に図示しないが、ポートブロックPB1で、ポンプ軸孔17・モーター軸孔18・19間の間隔を縮小して構成すればよい。(ポンプ軸孔17とモーター軸孔19との間隔は、ポートブロックPB2と等しくなる。)また、ポートブロックPB2におけるモーター軸孔18・19間の間隔を縮小して構成してもよいが、この場合には、ポートブロックPB2の側面形状に合わせて、ポンプP2及び両モーターM1・M2を一体に内設するハウジングH6の内側端を段差形状に加工しておく必要がある。
次に、図26乃至図29図示のポンプP1・P2並列型多連式HSTの実施例について説明する。この多連式HSTは、ポートブロックPBの一側面に、第一HSTのポンプP1及びモーターM2、及び第二HSTのポンプP2及びモーターM2の全てを取り付けているものである。即ち、両ポンプP1・P2を左右平行状に内設するハウジングH7と、図3及び図4図示の多連式HSTにて開示した、モーターM1・M2を前後平行状に内設するハウジングH3とを、側面視略長方形状のポートブロックPB4の一側面(本実施例では左側面)に上下に取り付けられている。なお、第一HSTのポンプP1とモーターM1同士、及び第二HSTのポンプP2とモーターM2同士は、互いに垂直上下に並設されている。
この取付方法では、第一・第二HSTのどちらともポンプとモーターが同一側に取り付けられているので、ポートブロックPB4内に穿設する油路については、図28及び図29に示す如く、P1─M1系油路35・35、P2─M2系油路36・36とも、各キドニーポートが浅くすむような油路が、垂直方向に穿設するだけで構成でき、油路の構成が単純化されて加工が容易であり、また、ポートブロックPB4の厚みは、前記の多連式HSTのように、両ポンプ軸PS1・PS2を直結するカップリング6を内設するスペースが不要であり、また、P1─M1系油路35・35とP2─M2系油路36・36を前後にずらせて穿設しなくてよいので、薄くてすみ、従って横幅が縮小し、また、軽量化に繋がる。
ポートブロックPB4内には、各ポンプ軸PS1・PS2及び各モーター軸MS1・MS2が軸支されている。両モーター軸MS1・MS2は、ポートブロックPB4におけるハウジングH3取付面の反対側より突出しており、トランスミッションケースTMへの取付の際には、図26及び図27の如く、ポートブロックPB4におけるハウジングH3の取付側と反対の側面を、トランスミッションケースTMの上側部における切欠部の側面に固着するとともに、両モーター軸MS1・MS2の突出部をトランスミッションケースTMに水平方向に入軸する。
一方、ポンプ軸PS1・PS2は、ポートブロックPB4のハウジングH7取付面の反対側面に入力用ハウジングH8が取り付けられていて、両ポンプ軸PS1・PS2の延長部が、この入力用ハウジングH8内に入軸されており、この中で、図29の如く、両ポンプ軸PS1・PS2が、ギア33・34にて噛合している。ポンプ軸PS1は、図15図示の入力用プーリー5を取り付ける等して、機関からの動力を入力するための入力軸として、入力用ハウジングH8より突出させている。
ハウジングH7には、ポンプP1・P2における作動油を抜くための油戻し口10が開孔されていて、下部のハウジングH3と連通する油戻し用油路をポートブロックPB4内に穿設すれば、該油戻し口10より、第一HST全体(ポンプP1及びモーターM1)の、及び第二HST全体(ポンプP2及びモーターM2)の油を抜くことができる。
また、ハウジングH7の左側面には、チャージポンプCPが取り付けられ、ポンプ軸PS1の外側突出部が入軸されている。こうして、一本のポンプ軸PS1にて駆動される一つのチャージポンプCPより吐出される作動油は、ポートブロックPB4の各油路35・35、36・36に対して、チェックバルブを介して供給され、第一・第二HSTの各ポンプP1・P2及び各モーターM1・M2の全てに補填される。
次に、図30乃至図32図示の多連式HSTの実施例について説明する。側面視略L字状のポートブロックPB5の一面の下部に、モーターM1・M2を前後平行状に内設するハウジングH3’を取り付けており、トランスミッションケースTMへの取付においては、図30の如く、ハウジングH3’が、トランスミッションケースTM内に嵌入され(従って、ハウジングH3’は、トランスミッションケースTMへの嵌入に適した形状に加工されている。)、また、ハウジングH3’より両モーター軸MS1・MS2が突出していて、トランスミッションケースTM内に入軸される。
ポートブロックPB5におけるハウジングH3’取付面の反対側面には、上下平行状に、ポンプP1を内蔵するハウジングH1’と、ポンプP2を内蔵するハウジングH2’が取り付けられている。各ハウジングH1’・H2’には油戻し口10・10が開孔されていて、それぞれの油戻し口10より、各々第一HST全体の、又は第二HST全体の油を抜くことができる。ポンプP1においては、ポンプ軸PS1の入力側端は、ハウジングH3’より突出させて入力軸としており、ポートブロックPB5を隔てて反対側に、ポートブロックPB5を貫通させてポンプ軸PS1を突出させ、チャージポンプCPを装着している。チャージポンプCPからの吐出作動油は、ポートブロックPB5に供給されて、チェックバルブを介して、油路を通り、第一・第二HSTの全ポンプP1・P2及び全モーターM1・M2に補填される。
モーターM1とポンプP2は、ポートブロックPB5を隔てて、正面視、左右直列状に配設されており、モーター軸MS1とポンプ軸PS2とを、ポートブロックPB5内に内設したカップリング6内に嵌入して、モーター軸MS1とポンプ軸PS2とを直結させている。即ち、モーター軸MS1の駆動にポンプ軸PS2を従動させるものであって、ポンプ軸PS2は、モーター軸MS1が駆動している時にのみ、モーター軸MS1の回転方向及び回転速度で回転駆動することとなる。
ポンプ軸PS1の回転方向及び回転速度は、機関動力を入力して駆動しているので、常時一定であり、モーターM1におけるモーター軸MS1の駆動方向及び速度は、変速レバー等によるポンプP1における可動斜板1の傾斜角度の操作にて変位する。一方、ポンプP2の可動斜板2は、左旋回・中立・右旋回の三位置の切換位置が設定されていて、ポンプ軸PS2の回転速度が一定でも、モーター軸MS2の回転速度は、可動斜板2の切換位置により変化する。モーター軸MS1の回転速度に関わらずモーター軸MS2の回転速度が一定であるとすれば、走行速度はモーター軸MS1の回転速度に比例するので、走行速度が遅い場合には相対的に旋回速度が速すぎて、旋回半径が小さくなってしまったり(芯地旋回、或いは芯地旋回に近い状態となる。)、走行速度が速い場合には相対的に旋回速度が遅くなって、旋回半径が大きくなるという不具合を生じることとなる。
そこで、前記の如く、ポンプ軸PS2を、前記の如くモーター軸MS1に従動させれば、モーター軸MS2の回転速度は、モーター軸MS1の回転速度に比例することとなる。つまり旋回反応速度が走行速度に比例することとなり、走行速度が遅ければゆっくりと旋回し、走行速度が速ければ早く旋回するようになってどの速度で走行しても、同一の旋回半径が得られるようになる。従って、芯地旋回用の操向装置で、乗用車と同一感覚のハンドル操作が可能となる。また、走行停止すれば、モーター軸MS1の停止によって、必ずポンプ軸PS2が駆動停止されている。つまり、第二HSTのポンプ軸PS2が、第一HSTのモーターM1の駆動に関わらずに常時駆動している場合に生じるおそれのある、走行停止中に不測の事態で第二HSTのモーターM2が駆動してしまって芯地旋回してしまうという危険は皆無となっている。逆に言えば、この多連式HSTを用いる場合には、走行停止中の芯地旋回は不可能となる。従って、この多連式HSTは、走行停止時に芯地旋回させるような(例えばクローラ走行装置を有する構造の)走行車輌ではなく、乗用車感覚で運転する走行車輌に利用されるものである。
なお、モーター軸MS1は、前進時には正転、後進時には逆転駆動するが、ポンプ軸PS2もこれに従動するので、後進時には、モーター軸MS2は、前進時とは逆方向に回転駆動される。例えば、可動斜板2を右旋回位置に切り換えたとすると、モーター軸MS2は、前進時に回転した方向と逆の方向に回転し、正逆転切換用ギア機構Gを介して、旋回側の右車軸RAに正転駆動側の力を、反対側の左車軸LAには逆転駆動側の力を加える。しかし、両車軸の回転駆動方向は、後進方向、即ち、逆転方向であるから、右車軸RAは減速され、左車軸LAは増速されることとなり、後進しながら右旋回できることとなる。従って、後進しながら、ハンドル操作等で、旋回したいと思う方向に操向操作すれば、その方向に旋回できる構造となっている。即ち、後進中の旋回も、乗用車と同一の感覚でハンドル操作できるようになっている。なお、モーターM2における可動斜板3の操作機構は、ハンドルの左回転時、右回転時、及び停止時にそれぞれONされる3つのスイッチをハンドル近傍にセットし、スイッチの一つがONした場合に、それに基づいて、可動斜板2が、左旋回位置、右旋回位置、及び中立位置になるように構成すればよい。
これに対して、前記の図3乃至図25図示のポンプP1・P2直列型の各多連式HST、及び図26乃至図29図示のポンプP1・P2並列型の多連式HSTでは、第二HSTのポンプ軸PS2は、(カップリング6による直結、またはギア33・34の噛合により、)機関より直接伝動される第一HSTのポンプ軸PS1に従動しているので、ポンプ軸PS1が一定に駆動している限り、モーター軸MS1の回転方向、即ち、走行方向が前進か後進かに関わらず、モーターM2において可動斜板2をある位置に切り換えた場合、モーター軸MS2は、常に同一方向に回転する。従って、後進時には、例えば右旋回位置に可動斜板2をセットした場合に、右車軸RAが増速され、左車軸LAが減速されて、左旋回することとなり、前進時に操作する側と反対側に操作しないと、旋回しようとする側には旋回しない。従って、後進時の旋回操作は、通常の感覚の逆の感覚になってしまうので、旋回操作を自動車感覚と同様にするため、ポンプ軸PS1用のポンプ操作レバーL1が前進から後進に切り換わる場合に、オペレーターの操作する旋回用ハンドル(図示せず)とポンプ軸PS2の動きが逆になるよう、該ハンドルとポンプ軸PS2用のポンプ操作レバーL2との間のリンク機構を細工している(図示せず)。
また、旋回速度にしても、ポンプ軸PS1の回転速度が一定である限り、ポンプ軸PS2の回転速度が常時一定であるから、旋回速度、即ちモーター軸MS2の回転速度を変位させるには、可動斜板2の角度を変位させなければならない。例えば可動斜板2の傾斜角度をハンドルの回転速度に比例させる構成にすれば、ハンドルを急に切れば早く旋回し、遅く切れば遅く旋回する乗用車の操向感覚と同様になる。
次に、図33乃至図41図示のポンプ軸・モーター軸直交型の多連式HSTについて、三つの実施例を説明する。三つの実施例に共通して、図35の如く、トランスミッションケースTMの多連式HST取付部は、上端に形成した水平面となっており、また、ポートブロックPB(PB6・7・8)は、正面視逆T字状であり、ポートブロックPBの底面には、ポンプ軸MS1・MS2を鉛直方向に軸支して、モーターM1・M2を左右平行状に内設するハウジングH9が固設されており、このハウジングH9の底面が水平面状になっていて、一方、トランスミッションケースTMの上端が水平面状に形成されていて、このトランスミッションケースTMの上面にハウジングH9の底面を固設し、両モーター軸MS1・MS2の下端をトランスミッションケースTMの上面より鉛直方向に入軸している。
このように、多連式HSTの下部に取り付けるモーターM1・M2のハウジングH9を縦型にし、トランスミッションケースTMの上面に取り付けるので、図3乃至図32にて示したこれまでの実施例の如くトランスミッションケースTMの側面部に取り付ける構成に比べて、多連式HSTとトランスミッションケースTMの双方に取付強度があり、また、モーターM1・M2が、モーター軸MS1・MS2を鉛直方向にして、左右並列に配設されているので、トランスミッションケースTMの前後方向の幅を縮小できるのである。
以上のように、モーターM1・M2のハウジングH9の取付方法、及びトランスミッションケースTMへの取付方法を共通にする図33乃至図41の多連式HSTのうち、まず、図33及び図34図示のものについて説明する。ポンプP1・P2を各々内設するハウジングH1・H2が、ポートブロックPB6の底面部より上方位置において、ポートブロックPB6を隔てて左右直列状に配設されている。また、ポンプ軸PS1・PS2は、図3及び図4図示の多連式HSTと同様に、各ハウジングH1・H2内に水平方向に軸支されて、ポートブロックPB内に内設したカップリング6に嵌入して直結しており、ポンプ軸PS1のハウジングH1からの突出部は、機関から伝動される入力軸とし、ポンプ軸PS2のハウジングH2からの突出部はチャージポンプCPに入軸して、チャージポンプ吐出の作動油をポートブロックPB内に供給し、チェックバルブを介して各ハウジングH1・H2・H9内に補填する構成となっている。また、ハウジングH2には油戻し口10が設けられており、ポートブロックPB内にてハウジングH1・H2の内部を連通する油戻し油路と、この油戻し油路より分岐して、ハウジングH9内部に連通する油路を穿設して、ハウジングH2における一つの油戻し口10より第一HST・第二HSTの全てのポンプ及びモーターからの油抜きができるようになっている。即ち、前記のハウジングH9の取付、及びトランスミッションケースTMへの取付における効果と、図3及び図4図示のポンプP1・P2直列型の多連式HSTの効果を合わせ持つポンプ軸・モーター軸直交型多連式HSTとなっているのである。
図35乃至図38図示の多連式HSTは、ポートブロックPB7の上部部位において、一側面に両ポンプP1・P2を前後平行に内蔵するハウジングH7を固設し、反対側面に両ポンプ軸PS1・PS2を軸支して、ギア33・34にて噛合せた入力ハウジングH8を固設した構成は、図26乃至図29図示のポンプP1・P2並列型多連式HSTと同様であり、従って、この構成の多連式HSTと同様の効果を合わせ持つポンプ軸・モーター軸直交型多連式HSTとなっているのである。
図39乃至図41図示の多連式HSTは、ポートブロックPB8の上部位においては、前記の図30乃至図32図示のモーターM1・ポンプP2連動型多連式HSTと同様に、一側面にポンプP1・P2を前後平行に内蔵するハウジングH7を固設している。なお、RVはチャージリリーフバルブである。そして、ポートブロックPB8の他側面においては、ポンプ軸PS1・PS2を軸支する伝動ハウジングH10を固設している。ポンプ軸PS1の入力側端は伝動ハウジングH10より突出させて、機関動力を伝動する入力軸としているが、伝動ハウジングH10内におけるポンプ軸PS2の端部には、ベベルギア38を固設しており、更にポートブロックPB8にカップリング6を貫設して、下方より伝動ハウジングH10内にモーター軸MS1の上端部をカップリング6に嵌入し、その上方に、延長モーター軸MS1’を突出してハウジングH10内に入軸しており、その上端に固設したベベルギア37を、ポンプ軸PS2付設のベベルギア38に噛合させることで、図30乃至図32図示の実施例と同様に、第一HSTのモーター軸MS1の駆動に第二HSTのポンプ軸PS2を従動させる構成としており、この実施例と同様の効果を奏するのである。
本構成の多連式HSTにおいては、カップリング等で直結される第一HSTと第二HSTの両ポンプ軸のうち、カップリングより外れても、機関より直接入力されて、駆動が停止することのない第一HSTのポンプ軸が使用信頼度が高く、走行用と操向用に両HSTを使用する場合に、使用頻度の高い走行用としてこの第一HSTを適用しているので、この多連式HSTを搭載した走行車輌の駆動系における信頼性が高くなる。
また、本構成の多連式HSTにおいては、ポートブロックの一面に取り付けられる一ポンプ、二モーターの三つの部材が、一体のハウジングに内蔵されて取り付けられるので、部品点数が削減されてコスト低下になり、また、別個のハウジングに内蔵した場合よりも、ポンプ及びモーターの各ポンプ軸とモーター軸との間隔が狭められ、これら三つの部材の取付スペースを縮小できる。更に油戻し口は、このハウジングに一つ設けて、ポートブロックに、反対側のポンプと連通する油路さえ穿設すれば、第一・第二HSTの全ポンプ及びモーターの油抜きが、この一つの油戻し口にて可能となり、油戻し口の配設点数及び配設スペースが削減される。
また、本構成の多連式HSTにおいては、一つのハウジングに設けた一つの油戻し口より、複数個の互いに隔離された全てのハウジング内の油を、一括して抜くことができ、油抜き作業を容易化するとともに、油戻し口を設けるスペースも一箇所ですみ、部材点数を削減し、省スペース化、低コスト化を実現できる。
また、本構成の多連式HSTにおいては、一つのポンプ軸の端部に装着した一つだけのチャージポンプで、第一・第二HSTの全ポンプ及び全モーターへの作動油充填ができ、チャージポンプが一つで済むので、部材点数を削減して、省スペース化、低コスト化を実現でき、また、チャージポンプからポートブロックに一つの配管を設けるだけでよいので、配管コスト及び配管スペースの削減を実現できる。