以下、本発明の実施の形態を、作業車両としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタの側面図、図2は同走行機体の平面図、図3は同走行機体の後半部の拡大平面図、図4は同走行機体のステップフレームの周辺部の拡大平面図、図5はオペレータが操作するペダル等の斜視図、図6はミッションケース及びミッション前面ケースの断面側面図、図7はミッション前面ケースの前面説明図、図8は油圧回路図である。
図1乃至図2に示されるように、トラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて前記両後車輪4及び両前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成されている。走行機体2は、前バンパ6及び前車軸ケース7を有するエンジンフレーム8と、エンジン5から出力された動力を継断するためのメインクラッチ9を有するクラッチハウジング10と、エンジン5の回転を適宜変速して前記両後車輪4及び両前車輪3に伝達するためのミッションケース11と、クラッチハウジング10にミッションケース11を連結するためのミッション前面ケース12と、クラッチハウジング10の外側面から外向きに突出するように着脱可能に装着される左右一対のステップフレーム13とからなる。
なお、エンジンフレーム8の後端側がエンジン5の左右外側面に連結されている。エンジン5の後面側にはクラッチハウジング10の前面側が連結されている。クラッチハウジング10の後面側には、ミッション前面ケース12を介してミッションケース11の前面側が連結されている。
エンジン5はボンネット14にて覆われる。また、クラッチハウジング10の上面には、操縦コラム15が立設されている。前記両前車輪3を左右に動かすことによってかじ取りするようにした操縦ハンドル16が操縦コラム15の上面側に配置されている。ミッションケース11の上面には、操縦座席17が配置されている。左右一対のステップフレーム13の上面には、平坦な床板18がそれぞれ設けられている。両前車輪3は、前車軸ケース7を介してエンジンフレーム8に取付けられている。また、両後車輪4は、図3にも示す如く、前記ミッションケース11に対して、当該ミッションケース11の外側面から外向きに突出するように着脱可能に装着される後車軸ケース11aを介して取付けられている。なお、両後車輪4の上面側は、左右のリヤフェンダ4aにて覆われている。
前記ミッションケース11の上面には、前記走行機体2の後部に連結される耕うん機等の作業機19を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。さらに、前記ミッションケース11の後側面には、作業機19に駆動力を伝えるためのPTO軸21が後向きに突出するように設けられている。作業機19は、ミッションケース11の後部に、一対の左右のロワーリンク22及び1本のトップリンク23からなる3点リンク機構24を介して連結されている。作業機用昇降機構20の左右のリフトアーム20aが左右のロワーリンク22に連結され、作業機用昇降機構20を作動させた場合、作業機19が昇降動することになる。
ミッション前面ケース12の前側面には、後述する静油圧式無段変速機(HST)25が配置されている。静油圧式無段変速機25は、クラッチハウジング10の後部に内設されている。メインクラッチ9から後ろ向きに突出する主動軸26を介して、前記エンジン5の回転を無段変速機25に伝達し、次いで、無段変速機25からの出力を後述する副変速ギヤ機構59にて適宜変速して、後述する後車輪用差動ギヤ機構61を介して前記両後車輪4及び両前車輪3に伝達することになる。一方、主動軸26からの前記エンジン5の回転は、PTO伝動軸62a及びPTOクラッチ62bを介して後述するPTO出力用減速ギヤ機構62に伝達され、そのPTO出力用減速ギヤ機構62にて適宜減速されて、PTO軸21に伝達されることになる。
次に、図4及び図5を参照して、操縦座席8のオペレータが操作する操縦部の構造を説明する。操縦座席8の前方の床板から突出する操縦コラム15より左方には、メインクラッチ9を切断作動するためのクラッチペダル31が配置されている。クラッチペダル31には、メインクラッチ9を切断させるクラッチ切り機構31aと、メインクラッチ9を接続状態に維持するクラッチ入りバネ31bとが連結されて、クラッチ入りバネ31bによってクラッチペダル31が初期位置に維持されることになる。
一方、操縦コラム15より右方には、左右の後車輪制動用ブレーキ機構32を作動させる単一のブレーキペダル33と単一の駐車ブレーキレバー34とが配置されている。ブレーキペダル33及び駐車ブレーキレバー34には、左右のブレーキロッド32aを介して左右の後車輪制動用ブレーキ機構32が連結されて、ブレーキペダル33または駐車ブレーキレバー34のいずれか一方の操作によってブレーキ機構32が作動し、左右の後車輪4が制動されることになる。
また、操縦コラム15より右方には、無段変速機25の変速操作用トラニオンアーム35を作動させる前進ペダル36及び後進ペダル37と、前進ペダル36を操作位置に維持するクルーズレバー38とが配置されている。前進ペダル36及び後進ペダル37には、変速リンク機構35aを介してトラニオンアーム35が連結され、前進ペダル36または後進ペダル37の足踏み操作によって無段変速機25が前進側の変速動作または後進側の変速動作を行うことになる。
図6及び図7を参照して、クラッチハウジング10、ミッション前面ケース12、ミッションケース11の構造を説明する。クラッチハウジング10の内部は、前後に分割するようにハウジング内壁50にて仕切られて、クラッチハウジング10の内部にハウジング前室51及びハウジング後室52が形成されている。ミッション前面ケース12の内部は、前後に分割するように前面壁53にて仕切られて、ミッション前面ケース12の内部に前面ケース前室54及び前面ケース後室55が形成されている。ミッションケース11の内部は、前後に分割するようにミッション内壁56にて仕切られて、ミッションケース11の内部にミッション前室57及びミッション後室58が形成されている。
ハウジング後室52と前面ケース前室54とによって形成された閉鎖空間には、前面壁53の前側に配置された無段変速機25が内設されている。前面ケース後室55とミッション前室57とによって形成された閉鎖空間には、副変速ギヤ機構59及び前車輪駆動機構60が内設されている。ミッション後室58の内部には、後車輪用差動ギヤ機構61及びPTO出力用減速ギヤ機構62が内設されている。
次に、無段変速機25の主変速構造について説明する。無段変速機25は、変速用油圧ポンプ63と、この油圧ポンプ63にて作動する変速用油圧モータ64とからなる(図7参照)。ハウジング前室51には、ハウジング内壁50の貫通穴50aを介して無段変速機25の変速入力軸65の前端側が突出されている。その変速入力軸65の前端側には、カップリング66を介して主動軸26が連結されている。前面ケース後室55の内部には、無段変速機25の主変速出力軸67が突出されている。その主変速出力軸67には、主変速出力ギヤ68が被嵌されている。副変速ギヤ機構59のカウンタ軸69にはカウンタ入力ギヤ70が被嵌されている。主変速出力ギヤ68にはカウンタ入力ギヤ70が歯合されている。主変速出力軸67からの無段変速出力は、主変速出力ギヤ68及びカウンタ入力ギヤ70を介して、カウンタ軸69に伝えられることになる。
次に、副変速ギヤ機構59について説明する。カウンタ軸69には、副変速用1速(低速)カウンタギヤ71と、副変速用2速(中速)カウンタギヤ72とが一体的に形成されている。また、カウンタ軸69には、副変速用3速(高速)カウンタギヤ73が被嵌されている。また、1速カウンタギヤ71に噛合させる副変速用1速出力ギヤ74と、2速カウンタギヤ72に噛合させる副変速用2速出力ギヤ75と、3速カウンタギヤ73に噛合させる副変速用3速出力ギヤ76とが備えられている。副変速ギヤ機構59の副変速出力軸77には、1速出力ギヤ74及び3速出力ギヤ76が回転自在に被嵌されている。副変速出力軸77には、この軸線方向にスライド可能で一体的に回転する副変速スライダ78が被嵌されている。2速出力ギヤ75が副変速スライダ78に一体的に形成されている。
したがって、副変速スライダ78を副変速シフタ79の操作によって移動させることにより、2速出力ギヤ75が2速カウンタギヤ72に噛合されることになる。一方、1速出力ギヤ74または3速出力ギヤ76には、1速用クラッチ爪80または3速用クラッチ爪81を介して副変速スライダ78が選択的に連結される。即ち、副変速出力軸77の回転は、1速出力ギヤ74及び2速出力ギヤ75及び3速出力ギヤ76のいずれか一方を介して3段階に変速されることになる。
一方、副変速出力軸77の後端側は、ミッション後室58に突出されている。また、副変速出力軸77の後端側には、後車輪用差動ギヤ機構61に回転力を伝えるためのピニオンギヤ82が一体的に形成されている。副変速出力軸77からの動力は、ピニオンギヤ82及び差動ギヤ機構61を介して左右の後車輪4に伝えられることになる。
次に、前車輪駆動機構60について説明する。副変速出力軸77の前端側には、ギヤ83,84を介して前車輪駆動機構60の前車輪用出力軸85が連結されている。前面ケース後室55に突出した前車輪用出力軸85の後端側には、回転自在に被嵌させるギヤ84と、該ギヤ84を前車輪用出力軸85に係脱可能に係止するための前車輪用出力クラッチ86とが配置されている。また、前車輪用出力軸85の中間部は、玉軸受を介して前面壁53に支持されている。前車輪用出力軸85の前端側は、前面ケース前室54の内部に突出されている。
また、前車輪用出力軸85の前端側には、自在軸継ぎ手87を介して前車輪用伝動軸88の後端側が連結されている。前車輪用伝動軸88の前端側が走行機体2の前側に向けて延長されて、前車輪用伝動軸88の前端側から前車軸ケース7を介して前車輪3に駆動力が伝えられることになる。前車輪用伝動軸88には、合成樹脂パイプ製のシャフトカバー89が被嵌され、前車輪用伝動軸88がシャフトカバー89にて保護されることになる。
図8は本実施形態のトラクタ1の油圧回路200を示し、後述するように、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ94及びチャージ用油圧ポンプ95を備える。チャージ用油圧ポンプ95は、パワーステアリング用の操向制御弁201を介して操縦ハンドル16によるパワーステアリング用の複動式の操向油圧シリンダ202に接続する。また、作業機用油圧ポンプ94は、作業機用昇降機構20における単動式の昇降油圧シリンダ203に作動油を供給するための昇降用油圧切換弁204に接続している。
したがって、オペレータがポジションレバー205を操作して、昇降用油圧切換弁204を切換えて、昇降油圧シリンダ203を作動させ、リフトアーム206を回動させることにより、ロワーリンク22を介して作業機19が上昇または下降されることになる。
図8に示すように、上述した油圧無段変速機25の可変容量形の変速用油圧ポンプ63と、この油圧ポンプ63から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ64とは、閉ループ油路207を介してそれらの吸入側及び吐出側が接続されている。変速入力軸65を介して駆動される変速用油圧ポンプ63の斜板208を角度調節することにより、変速用油圧モータ64を介して駆動される主変速出力軸67の回転数が変更されることになる。
上述した油圧回路200には、図8に示すように、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。作業機用油圧ポンプ94及びチャージ用油圧ポンプ95の吸入側には、低圧ラインフィルタ209を介して、作動油タンクとしてのミッションケース11の内部のストレーナ210を接続させる。チャージ用油圧ポンプ95の吐出側には、パワーステアリング用の操向制御弁201を配置したチャージ油路211が接続されている。チャージ油路211は、操向制御弁201、及びチェック弁212,213等を介して、閉ループ油路207に接続される。チャージ用油圧ポンプ95からの作動油を閉ループ油路207に補充することになる。
パワーステアリング用の操向制御弁201のタンクポート側と閉ループ油路207とを接続させるためのチャージ油路211には、パイプ式オイルクーラ214と、当該オイルクーラ214の下流側の高圧ラインフイルタ215とを配置させている。チャージ油路211の高圧ラインフイルタ215の下流側を、リリーフ弁216を介してミッションケース11に接続させている。チャージ用油圧ポンプ95から閉ループ油路207に供給するチャージ油路211の作動油が余った場合、チャージ油路211の作動油がリリーフ弁216を介してミッションケース11に戻されることになる。
即ち、ミッションケース11の内部の作動油は、チャージ用油圧ポンプ95、パイプ式オイルクーラ214、高圧ラインフイルタ215、及びリリーフ弁216を介して、ミッションケース11の内部とチャージ油路211とに循環されることになる。したがって、ミッションケース11の内部の作動油は、チャージ油路211の途中のパイプ式オイルクーラ214によって適宜温度に冷却され、且つ高圧ラインフイルタ215によって除塵され、ミッションケース11の内部に戻されることになる。
図2に示されるように、上述した低圧ラインフイルタ209は、進行(前進)方向に向かって機体左側の左ステップフレーム13の下面側に、フィルタ取付フレーム217を介して着脱可能に配置されている。上述した高圧ラインフイルタ215は、進行(前進)方向に向かって機体右側の右ステップフレーム13の下面側に、フィルタ取付ブラケット218を介して着脱可能に配置されている。上述した作業機用油圧ポンプ94及びチャージ用油圧ポンプ95は、進行(前進)方向に向かって機体左側の左エンジンフレーム8の外側面に配置したポンプケース219に内設されている。
一方、図2に示されるように、上述した操向制御弁201は、クラッチハウジング10の上面に配置したパワーステアリング用のユニットケース220に内設されている。チャージ油路211の一部を形成するための第1高圧配管221は、機体左側の左エンジンフレーム8に沿って延設されて、チャージ用油圧ポンプ95と操向制御弁201とに接続される。一方、作業機用油圧ポンプ94及びチャージ用油圧ポンプ95の吸込み側とミッションケース11とに接続した低圧配管222は、機体左側の左エンジンフレーム8等の走行機体2の左側に沿って延設されている。低圧配管222の延設途中には低圧フィルタ209が接続されている。
他方、図2及び図8に示されるように、エンジン5の前方のエンジンフレーム8の上面には、水冷用のラジエータ223が載置されている。ラジエータ223の前面には、パイプ式オイルクーラ214がボルト等(図示省略)によって着脱可能に配置されている。チャージ油路211の一部を形成するための第2高圧配管223、第3高圧配管224、第4高圧配管225が、進行方向に向かって機体右側の右エンジンフレーム8等の走行機体2の右側に沿って延設されている。第2高圧配管223は、操向制御弁201とパイプ式オイルクーラ214とに接続される。第3高圧配管224は、パイプ式オイルクーラ214と高圧ラインフイルタ215とに接続される。第4高圧配管225は、高圧ラインフイルタ215と無断変速機25(閉ループ油路207)とに接続される。
なお、エンジン5の前面部には冷却フアン(図示省略)が配置され、当該冷却フアンの吸気作用により、走行車体2の前側の外気が、パイプ式オイルクーラ214及びラジエータ226を介して、エンジン5側に取り込まれる。即ち、パイプ式オイルクーラ214、ラジエータ226、及びエンジン5が、冷却フアンによってオイルクーラ214の前側から取り込んだ外部の空気によって冷却されることになる。
次に、図9乃至図11を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。上述したハウジング後室52及び前面ケース前室54に無段変速機25が内設され、上述したミッション前面ケース12の前面壁53に無段変速機25が複数のボルト320によって着脱可能に固設されている。また、ミッション前面ケース12の前面壁53には、前面ケース前室54と前面ケース後室55とを連通したPTO伝動用の貫通孔53aが形成されている。無段変速機25の後面側から後方の前面ケース後室55内に、前記貫通孔53aを介してPTO駆動軸231が突出されている。前面ケース後室55の内部において、PTO駆動軸231の後端側が、上述したPTO伝動軸62aの前端側に、カップリング232を介して、軸芯線方向に着脱可能に連結されている。PTO駆動軸231にスプライン231aを介してカップリング232の前半部が被嵌されることになる。
したがって、前面壁53から機体前方(進行方向)に無段変速機25を取外した場合、PTO伝動軸62aの前端側にカップリング232を残して、PTO駆動軸231の後端側がカップリング232から脱出し、PTO駆動軸231がPTO伝動軸62aから分離されることになる。なお、PTO伝動軸62aの前端側は、前面ケース後室55内の隔壁233に玉軸受234を介して回転可能に軸支されている。
一方、図9乃至図11に示されるように、上述した主変速出力軸67には、スプライン67aを介して、スプライン軸孔236bを有する略円筒形のボス体236が着脱可能に被嵌されている。ボス体236の軸芯線方向の中間部には、スプライン236aを介して、上述した主変速出力ギヤ68が着脱可能に被嵌されている。ボス体236の両端部には、主変速出力ギヤ68を両側面方向から挟むように、2つの玉軸受237,238が被嵌されている。また、ミッション前面ケース12内には軸受壁部240が一体的に形成され、一方の玉軸受237を嵌め込むための第1軸受孔240aが軸受壁部240に形成されている。
他方、上述した前面壁53には、前面ケース前室54と前面ケース後室55とを連通した主変速伝動用の貫通孔53bが形成されている。その貫通孔53bには、前面壁53の一部を形成するための軸受ホルダ241が着脱可能に嵌め込まれている。軸受ホルダ241には、主変速出力軸67を遊嵌状に挿入させる出入孔241aと、他方の玉軸受238を嵌め込むための第2軸受孔241bとがそれぞれ形成されている。出入孔241aと第2軸受孔241bとは、一端側を互いに連通させ、且つ他端側を進行(前後)方向にそれぞれ開口させて、軸受ホルダ241をドーナツ形に形成している(図11参照)。即ち、略真円形の軸受ホルダ241の外径と略真円形の貫通孔53bの内径とは略等しく形成され、貫通孔53bの内径より主変速出力ギヤ68の外径が小さく形成されている。また、玉軸受237,238の外径は、主変速出力ギヤ68の外径より小さく形成されている。
次に、上述した無段変速機25及び主変速出力ギヤ68等の組立手順を説明する。先ず、ミッションケース11の前面(進行方向前側)にミッション前面ケース12を複数のボルト(図示省略)の締結によって連結させ、予め、ミッションケース11とミッション前面ケース12とで形成された閉塞空間(前面ケース後室55とミッションケースの内部)に、PTO伝動軸62a及びカウンタ軸69等が組み込まれる。その場合、PTO伝動軸62aの前端側にカップリング232を被嵌させる。また、上述したボス体236に、主変速出力ギヤ68と、これを両側面方向から挟む2つの玉軸受237,238とを被嵌させ、且つ、軸受ホルダ241の第2軸受孔241bに一方の玉軸受238を嵌め込む。
そして、主変速用の貫通孔53bから前面ケース後室55内に主変速ギヤ68を差し込み、軸受壁部240の第1軸受孔240aに他方の玉軸受237を嵌め込み、且つ、主変速用の貫通孔53bに軸受ホルダ241を嵌め込む。したがって、主変速用の貫通孔53bに軸受ホルダ241が固設され、前面ケース後室55の内部に主変速ギヤ68が回転自在に配置される。
次いで、ミッション前面ケース12の前面壁53の前面に無段変速機25の後面を機体前方側(進行方向前側)から合体させ、前面壁53に無段変速機25をボルト230の締結によって固定させる。その場合、主変速出力軸67はボス体236のスプライン軸孔236bに差し込まれ、主変速出力軸67にスプライン67aを介してボス体236が被嵌される。また、PTO駆動軸231はカップリング232の軸孔に差し込まれ、PTO駆動軸231にスプライン231aを介してカップリング232が被嵌されて、PTO駆動軸231がカップリング232を介してPTO伝動軸62aに連結される。以上で、ミッション前面ケース12に無段変速機25及び主変速ギヤ68を組み込む組立作業が完了する。なお、軸受ホルダ241は、玉軸受237,238等を介して、無段変速機25の後面と軸受壁部240との間に挟持されることになる。
上述したように、ミッション前面ケース12に無段変速機25を合体させる場合、無段変速機25の後面から後方に突出させる主変速出力軸67の長さとPTO駆動軸231の長さを略等しい長さに形成し、且つカップリング232の前端に比べてボス体236の前端を機体前方(進行方向前側)に配置している。そのため、ミッション前面ケース12の前面に無段変速機25の後面を接近させることにより、PTO駆動軸231がカップリング232の軸孔に入る前に、主変速出力軸67がボス体236のスプライン軸孔236bに入り始める。即ち、先に、主変速出力軸67とボス体236とがスプライン67aにて係止されてから、次いで、PTO駆動軸231とカップリング232とがスプライン231aにて係止されることになる。
したがって、主変速出力軸67がボス体236に、またPTO駆動軸231がカップリング232に、略同時に差し込まれる構造に比べ、ミッション前面ケース12に無段変速機25を合体させる操作力(スプライン67a,231aの位置合せ操作力)を低減でき、無段変速機25の組立作業性及びメンテナンス作業性等を向上できる。
なお、主変速用の貫通孔53bに軸受ホルダ241を嵌め込む場合、上述の作業手順とは別の手順で実行できる。例えば、軸受壁部240の第1軸受孔240aに一方の玉軸受237を嵌め込む一方、ボス体236に、主変速出力ギヤ68と、他方の玉軸受238とを被嵌させ、且つ、軸受ホルダ241の第2軸受孔241bに他方の玉軸受238を嵌め込む。そして、主変速用の貫通孔53bから前面ケース後室55内に主変速ギヤ68を差し込み、第1軸受孔240aの玉軸受237の軸孔にボス体236を入れて、主変速用の貫通孔53bに軸受ホルダ241を組み込むこともできる。
一方、主変速用の貫通孔53bに軸受ホルダ241を嵌め込む場合、軸受壁部240の第1軸受孔240aに一方の玉軸受237を嵌め込み、一方の玉軸受237軸孔にボス体236を入れ、そのボス体236に、主変速出力ギヤ68及び他方の玉軸受238を被嵌させ、他方の玉軸受238に軸受ホルダ241を被嵌させ、主変速用の貫通孔53bに軸受ホルダ241を組み込むこともできる。
上記の記載及び図9及び図10から明らかなように、走行車輪としての前車輪3及び後車輪4を備えた走行機体2に搭載されたエンジン5と、前記エンジン5からの動力を変速する油圧式無段変速機25と、前記油圧式無段変速機25からの変速出力を変速出力軸67及び変速出力ギヤ68を介して伝えるミッションケース11とを備えてなる作業車両における動力伝達装置において、前記変速出力軸67に被嵌させる前記変速出力ギヤ68のボス体236の両端側を、前記変速出力ギヤ68の両側面から突出し、前記ミッションケース11には、2つの玉軸受237,238を介して前記ボス体236の両端側を両持ち状に軸支したものであるから、
前記ボス体236の軸孔236aに前記変速出力軸67を差し込んで前記ミッションケース11に前記無段変速機25を合体させることにより、前記ミッションケース11に前記無段変速機25を簡単に脱着でき、前記ミッションケース11に前記無段変速機25を取付ける作業を簡単にできる。したがって、前記ミッションケース11及び前記無段変速機25の組立作業性及びメンテナンス作業性等を向上できるものである。
上記の記載及び図9及び図10及び図11から明らかなように、前記ミッションケース11には軸受体241が着脱可能に固設され、前記軸受体241には、前記各玉軸受237,238のうち少なくともいずれか一方を介して、前記ボス体236が回転可能に軸支されているものであるから、前記軸受体241に少なくとも1つの玉軸受238と前記ボス体236とを予め組込み、そのボス体236に前記変速出力ギヤ68を被嵌した後、前記ミッションケース11に前記軸受体241を組込むことができる。したがって、前記軸受体241に前記変速出力ギヤ68等を配置した状態で、前記軸受体241を前記ミッションケース11に簡単に着脱でき、前記変速出力ギヤ68等の組立作業性を向上できるものである。
上記の記載及び図9及び図11から明らかなように、前記ボス体236には、スプライン236aを介して前記変速出力ギヤ68を着脱可能に被嵌したものであるから、前記変速出力ギヤ68と前記ボス体236とを各別に加工でき、異なる仕様の前記変速出力ギヤ68に前記ボス体236及び2つの玉軸受237,238などを共用でき、製造コストを簡単に低減できるものである。
上記の記載及び図9及び図10から明らかなように、前記軸受体241は、前記油圧式無段変速機25と前記ミッションケース11との間に挟まれて固設されているものであるから、前記軸受体241を前記ミッションケース11に固設するためのボルト等の固定手段を省略でき、前記軸受体241の組立作業性及びメンテナンス作業性等を向上できるものである。
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。上述した第1実施形態の軸受壁部240に代え、軸受ホルダ241に軸受壁部241cを一体的に形成する。軸受壁部241cに第1軸受孔241dを形成する。また、軸受ホルダ241の内部には、第1軸受孔241dと第2軸受孔241bの間で、主変速出力ギヤ68を出入可能に、外部に連通したギヤ装着スペース241eを形成する。即ち、軸受壁部241cの内部には、ギヤ装着スペース241eを挟んで、第1軸受孔241dと第2軸受孔241bとを対向させて形成している。
そして、上述した第1実施形態と同様に、第1軸受孔241d及び第2軸受孔241bに玉軸受237,238をそれぞれ嵌め込み、各玉軸受237,238の間のギヤ装着スペース241eの内部に、当該スペース241eの一端側の開口から主変速出力ギヤ68を挿入し、出入孔241aから軸受ホルダ241の内部にボス体236を挿入し、軸受ホルダ241に各玉軸受237,238を介してボス体236の両端側を回転自在に軸支し、そのボス体236の中間部にスプライン236aを介して主変速出力ギヤ68を被嵌している。
したがって、ギヤ装着スペース241eの開口から主変速出力ギヤ68の一部を露出させた状態で、主変速出力ギヤ68、ボス体236及び各玉軸受237,238を、軸受ホルダ241に内設したユニットとして構成できる。即ち、軸受ホルダ241に主変速出力ギヤ68等を組込んだ後、その軸受ホルダ241をミッションケース11の組立工場に搬入して、ミッションケース11に軸受ホルダ241及び無段変速機25等を組込むことができる。ミッションケース11の組立工場における取扱い部品数を削減できる。
上記の記載及び図12及び図13及び図14から明らかなように、前記ミッションケース11には軸受体241が着脱可能に固設され、前記軸受体241には、前記2つの玉軸受237,238を介して、前記ボス体236の両端側が回転可能に軸支されているものであるから、前記変速出力ギヤ68と2つの玉軸受237,238と前記ボス体236とを前記軸受体241に組み込んで単一のユニット構造に構成でき、前記変速出力ギヤ68等を有する前記軸受体241のユニットを前記ミッションケース11に着脱でき、前記変速出力ギヤ68等の組立作業性及びメンテナンス作業性等を向上できるものである。
なお、第2実施形態において、軸受ホルダ241は、ミッションケース11にボルト等によって着脱可能に固設してもよい。また、軸受ホルダ241の外周側に鍔形部等の突起を一体的に形成し、鍔形部等の突起を嵌め込む窪みを主変速伝動用の貫通孔53bに形成し、無段変速機25の後面と前面壁53の前面とによって軸受ホルダ241の一部(窪みに嵌め込んだ鍔形部等の突起)を挟んで着脱可能に固設してもよい。