JP2005042874A - 内歯歯車機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】 内歯と外歯とに発生する接触面圧や曲げ応力を低減でき、内歯と外歯との寿命差が顕著になることによって内歯歯車機構の寿命が制約を受けてしまうことを緩和する。
【解決手段】 第1の歯車要素11の内歯14及び第2の歯車要素12の外歯15のいずれとも高歯に形成する。内歯14と外歯15との噛み合い率を2.0以上とし、常時少なくとも2枚の歯の噛み合いを介して荷重を伝達する。これにより、内歯14と外歯15に発生する接触面圧や曲げ応力を低減する。
【選択図】図1

Description

本発明は、第1の歯車要素に形成される内歯と、第2の歯車要素に形成されて内歯と噛み合う外歯と、を備える内歯歯車機構に関する。
従来、第1の歯車要素に形成される内歯と、第2の歯車要素に形成されて内歯と噛み合う外歯とを備える内歯歯車機構が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。特許文献1に記載された内歯歯車機構は、風車等に用いられる遊星増速機であり、入力軸からリングギヤに伝達された回転を遊星歯車機構により増速して出力軸に伝達する。特許文献2に記載の内歯歯車機構は、建設機械の走行駆動装置等に適用される遊星歯車減速機であり、油圧モータの回転を遊星歯車機構により減速して被回転体であるハウジングに伝達してこれを回転駆動する。特許文献3に記載の内歯歯車機構は、建設機械に使用する旋回装置として用いられ、上端側に設けられる油圧モータの回転を遊星歯車減速機構により減速して出力軸を回転させ、下部走行体に対して上部旋回体を旋回駆動する。これら特許文献1〜3に記載された内歯歯車機構は、いずれも、第1の歯車要素に形成される内歯と、第2の歯車要素に形成されて内歯と噛み合う外歯とを備えており、入力される回転を増速又は減速して伝達する。
特開平10−246173号公報(第2頁、第1図) 特開平11−22789号公報(第4頁、第1図) 特開2002−97668号公報(第8−9頁、第1図)
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の内歯歯車機構は、内歯と外歯とが同一の材質であれば、内歯に比して外歯の寿命が大幅に低下し易い。即ち、外周側に位置する内歯は外歯よりも歯元側の歯厚が大きく、また、内周側に位置する外歯は歯車要素の径が内歯よりも小さく噛み合い頻度が大きくなるため、同一の材質であれば、内歯に比して外歯の寿命が低下し易い。このため、内歯と外歯との間の伝達荷重が大きくなると、発生する接触面圧や曲げ応力も大きくなり、内歯と外歯との疲労寿命の差が顕著になってしまい、外歯の寿命によって当該内歯歯車機構の寿命が制約を受けることになる。また、内歯及び外歯に発生する接触面圧や曲げ応力が大きい場合には、外歯の硬度を高めることで、外歯の寿命を緩和することも考えられるが、逆に内歯の寿命が大幅に低下してしまうことになり易く、内歯の硬度を高める必要性に迫られることになる。
本発明は、上記実情に鑑みることにより、内歯と外歯とに発生する接触面圧や曲げ応力を低減でき、内歯と外歯との寿命差が顕著になることによって内歯歯車機構の寿命が制約を受けてしまうことを緩和でき、また、内歯の硬度を高める要請を緩和することができる内歯歯車機構を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の内歯歯車機構は、第1の歯車要素に形成される内歯と、第2の歯車要素に形成されて前記内歯と噛み合う外歯と、を備えるものに関する。
そして、本発明は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。即ち、本発明は、以下の特徴を単独で、もしくは、適宜組み合わして備えている。
上記目的を達成するための本発明の内歯歯車機構のおける第1の特徴は、前記内歯及び前記外歯のいずれとも高歯に形成され、前記内歯と前記外歯との噛み合い率が2.0以上であって、前記内歯と前記外歯との間で、常時少なくとも2枚の歯の噛み合いを介して荷重を伝達することである。
この構成によれば、内歯及び外歯のいずれもが高歯でその噛み合い率が2.0以上確保されて、常時2枚の歯の噛み合いを介して荷重が伝達されるため、内歯及び外歯に加わる荷重が常時2枚以上の歯に確実に分散される。このため、内歯及び外歯に生じる接触面圧や曲げ応力を大幅に低減でき、内歯と外歯との疲労寿命の差が拡大することを抑制できる。従って、内歯と外歯との寿命差の拡大を抑制できるため、それにより内歯歯車機構の寿命が制約を受けてしまうことを緩和できる。また、内歯及び外歯に発生する接触面圧や曲げ応力を低減できるため、内歯の硬度を高める必要性が薄れ、内歯の硬度を高める要請を緩和することができる。
本発明の内歯歯車機構における第2の特徴は、2枚の歯の噛み合いにより荷重伝達が行われる際に3枚目の歯が噛み合っても、2枚の歯による荷重伝達と3枚目の歯の噛み合い動作とが干渉することがないように、前記内歯及び前記外歯の少なくともいずれかの歯先側の歯厚がインボリュート曲線に基づく歯厚よりも細くなるように形成されていることである。
この構成によれば、歯先側の歯厚がインボリュート曲線に基づく歯厚よりも細くなるように形成されて、3枚目の歯の噛み合い動作が2枚の歯による荷重伝達と干渉することがないため、内歯と外歯との間で効率よく荷重を伝達することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る内歯歯車機構1を例示したものであって、内歯と外歯との噛み合い状態を示している。図1に示すように、内歯歯車機構1は、第1の歯車要素であるリングギヤ11、第2の歯車要素である遊星歯車12、サンギヤ13などを備える遊星歯車機構として構成されている。
リングギヤ11には、内周側に内歯14が形成され、各遊星歯車12と噛み合って荷重を伝達可能となっている。遊星歯車12は、周方向に3個均等配置されており、それぞれ図示しない支持部に回転自在に支持されている。そして、各遊星歯車12の外周には外歯15が形成され、外歯15はリングギヤ11の内歯14と噛み合うようになっている。このように、内歯歯車機構1は、リングギヤ11に形成される内歯14と、遊星歯車12に形成される外歯15とを備えている。
また、サンギヤ13は、遊星歯車12の外歯15と噛み合う外周歯16が形成されており、紙面垂直方向で回転自在に支持される軸17が、中心を貫通している(サンギヤ13は、軸17とは独立して回転自在に支持されている)。なお、図1に例示する内歯歯車機構1は、複数段からなる遊星歯車機構として形成されており、図示する遊星歯車段は、最終段の遊星歯車段を構成している。
以上の構成を備える内歯歯車機構1は、例えば、減速機として用いられる。減速機として用いられる場合は、軸17から入力される回転駆動力が、図示しない1段目の遊星歯車段に伝達される。そして、1段乃至2段以上の遊星歯車段を経て減速が行われてその回転がサンギヤ13に伝達される。サンギヤ13が回転すると、図示しない支持部にそれぞれ支持されている遊星歯車15が回転し、外歯15と内歯14との噛み合いを介してリングギヤ11が回転駆動される。
また、例えば、軸17をサンギヤ13とともに回転するように連結することで、内歯歯車機構1を、増速機として用いることも可能である。この場合は、入力された回転がリングギヤ11に伝達され、外歯15と内歯14との噛み合いを介して、図示しない支持部にそれぞれ支持されている遊星歯車15が回転する。遊星歯車15が回転すると、サンギヤ13を増速して回転駆動し、サンギヤ13の回転とともに軸17が回転される。
次に、内歯14及び外歯15の構成について、さらに詳しく説明する。図2及び図3は、リングギヤ11の内歯14と遊星歯車12の外歯15との噛み合い状態を示す拡大図である。図2及び図3に示すように、内歯14及び外歯15のいずれとも、並歯でなく高歯に形成されている。そして、内歯14と外歯15との噛み合い率(ε)が2.0以上となるように形成されている。
図2と図3とでは、それぞれ異なる噛み合い状態(内歯14と外歯15との接触位置が異なる状態)を例示しており、それぞれの状態での荷重伝達が行われる作用線(a及びb)を一点鎖線で示している。なお、図2及び図3とも、減速機として用いている場合で、遊星歯車12が矢印c方向に回転し、これにより、リングギヤ11が矢印d方向に回転駆動される状態を示している。
図2の状態では、内歯14と外歯15とは2枚の歯で噛み合って荷重を伝達している。即ち、作用線a上の噛み合い点a1及びa2の2点で各歯面に対して法線方向に荷重伝達が行われている。一方、図3の状態では、内歯14と外歯15とは3枚の歯で噛み合って荷重を伝達しており、作用線b上の噛み合い点は、b1、b2、b3の3点となっている。従って、内歯14と外歯15とは、2枚の歯で噛み合って荷重伝達を行っている状態と3枚の歯で噛み合って荷重伝達を行っている状態とがあり、噛み合い率が2.5(ε=2.5)となっている。
このように、内歯14と外歯15とはいずれも高歯に形成され、両者の間では、常時少なくとも2枚の歯の噛み合いを介して荷重が伝達されており、荷重を常に2枚以上の歯に分散することができる。従って、内歯14及び外歯15に生じる接触面圧や曲げ応力を大幅に低減でき、内歯14と外歯15との疲労寿命の差が広がることを抑制できる。
図4は、内歯及び外歯ともに並歯で形成されて噛み合い率ε=1.5の場合(図4(a))と、噛み合い率ε=2.5の内歯歯車機構1の内歯14及び外歯15の場合(図4(b))とにおける、噛み合い時の1枚の歯に発生する荷重変化(歯面の法線方向に作用する荷重の変化)の様子を説明する図である。噛み合い率ε=1.5の場合、1枚の歯で噛み合っている状態が噛み合い時の全位相のうちの66%を占めており、2枚の歯で噛み合っている状態が全位相の34%(17%×2)を占めている。このように、噛み合い率が2.0未満であるため、1枚の歯で噛み合っている状態が必ず存在し、伝達荷重の最大値が大きくなってしまい(即ち、強度計算の基準となる設計荷重が大きくなる)、内歯及び外歯に過大な接触面圧や曲げ応力が発生することになる。
一方、噛み合い率ε=2.5の場合、2枚の歯で噛み合っている状態が噛み合い時の全位相のうちの60%を占め、3枚の歯で噛み合っている状態が全位相の40%(20%×2)を占めている。このように、少なくとも2枚の歯の噛み合いを介して荷重が伝達されるため、伝達荷重の最大値を大幅に低減でき、1枚の歯で噛み合って荷重を伝達する状態が存在する場合に比して、歯面の法線方向に作用する最大伝達荷重(即ち、設計荷重)を半分にすることができる。
また、図5は、内歯14の一部を拡大して示したものである。図5に示すように、内歯14の歯先側の領域eは、インボリュート曲線に基づく歯厚(図中点線fで示す歯厚)よりも細くなるように(歯の厚みが小さくなるように)形成されている。なお、図5では、最歯先側の歯厚がインボリュート曲線に基づく歯厚よりもαだけ細くなるように形成された状態を示している。
内歯歯車機構1では、内歯14の歯先側をインボリュート曲線に基づく歯厚よりも細くなるように形成することで、2枚の歯の噛み合いにより荷重伝達が行われる際に3枚目の歯が噛み合っても、2枚の歯による荷重伝達と3枚目の歯の噛み合い動作とが干渉することがないようになっている。これにより、内歯14と外歯15との間で効率よく荷重を伝達することができる。また、要求される伝達荷重が上述の干渉の発生によって上昇してしまうことも抑制でき、設計荷重も小さくすることができる。また、歯先側の歯厚をインボリュート曲線に基づく歯厚よりも細くするという簡易な構成で上述の干渉の発生を防止できる。
以上説明したように、内歯歯車機構1によると、内歯及び外歯に生じる接触面圧や曲げ応力を大幅に低減でき、内歯と外歯との寿命差の拡大を大幅に抑制できるため、それにより内歯歯車機構の寿命が制約を受けてしまうことを緩和できる。
また、内歯歯車機構1によると、内歯及び外歯に発生する接触面圧や曲げ応力を大幅に低減できるため、内歯の硬度を高める必要性が薄れ、内歯の硬度を高める要請を緩和することができる。即ち、内歯に生じる面圧や応力が低減されることで、内歯の寿命が制約となることが少なくなり、例えば、内歯に対して焼き入れ等の硬化処理を行わなくても、必要な表面硬度を十分に確保できる場合が多くなる。また、硬化処理を削減できることで、例えば、熱処理による歪の発生が無く、内歯の寸法精度の確保が容易となる。
また、内歯と外歯とがいずれも高歯でその噛み合い率が2.0以上の内歯歯車機構を増速機に適用した場合、内歯及び外歯に発生する接触面圧や曲げ応力を大幅に低減できるため、噛み合い時の内歯及び外歯の周方向の弾性変形量を低減できる。このため、高速回転で荷重を伝達することによって発生する騒音を低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)内歯と外歯とを備える内歯歯車機構であればどのようなものに対しても適用できる。例えば、遊星歯車減速機、遊星歯車増速機、建設機械等の旋回装置など種々の歯車機構に対して適用でき、本発明の効果を奏することができる。
(2)実施形態においては、複数の遊星歯車段からなる内歯歯車機構の最終段に適用された場合について説明したが、複数の遊星歯車段の最終段以外の遊星歯車段に適用されてもよい。また、1つの遊星歯車段からなる内歯歯車機構に適用されてもよい。また、遊星歯車機構以外の内歯歯車機構に適用されてもよい。
(3)実施形態においては、内歯の歯先側の歯厚が、インボリュート曲線に基づく歯厚よりも細く形成されているものを説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、外歯の歯先側の歯厚が、インボリュート曲線に基づく歯厚よりも細く形成されていてもよい。
本発明の実施形態に係る内歯歯車機構を例示したものであって、内歯と外歯との噛み合い状態を示す図である。 図1に示す内歯歯車機構におけるリングギヤの内歯と遊星歯車の外歯との噛み合い状態を示す拡大図である。 図1に示す内歯歯車機構におけるリングギヤの内歯と遊星歯車の外歯との噛み合い状態を示す拡大図である。 噛み合い時の1枚の歯に発生する荷重変化の様子を説明する図である。 図1に示す内歯歯車機構における内歯の一部を拡大して示す図である。
符号の説明
1 内歯歯車機構
11 リングギヤ(第1の歯車要素)
12 遊星歯車(第2の歯車要素)
14 内歯
15 外歯

Claims (2)

  1. 第1の歯車要素に形成される内歯と、第2の歯車要素に形成されて前記内歯と噛み合う外歯と、を備える内歯歯車機構において、
    前記内歯及び前記外歯のいずれとも高歯に形成され、
    前記内歯と前記外歯との噛み合い率が2.0以上であって、
    前記内歯と前記外歯との間で、常時少なくとも2枚の歯の噛み合いを介して荷重を伝達することを特徴とする内歯歯車機構。
  2. 2枚の歯の噛み合いにより荷重伝達が行われる際に3枚目の歯が噛み合っても、2枚の歯による荷重伝達と3枚目の歯の噛み合い動作とが干渉することがないように、前記内歯及び前記外歯の少なくともいずれかの歯先側の歯厚がインボリュート曲線に基づく歯厚よりも細くなるよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内歯歯車機構。

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