JP2005042872A - マニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置 - Google Patents

マニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 減速中のマニュアルダウンシフト時、減速又は燃費重視か再加速重視かというドライバの意図を反映し、適切なエンジンブレーキ力発生方法を選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を提供すること。
【解決手段】 複数の固定変速比による変速段を手動操作により選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、自動変速機2のみへの変速指令にしたがってダウンシフトを行う通常マニュアルダウンシフト制御手段と、エンジン1と自動変速機2との協調制御による回転同期マニュアルダウンシフト制御手段と、減速又は燃費重視か、再加速重視か、というドライバの意図を反映させるドライバ意図反映手段と、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバの意図が減速又は燃費重視の場合は、前記通常マニュアルダウンシフト制御手段を選択し、ドライバの意図が再加速重視の場合は、前記回転同期マニュアルダウンシフト制御手段を選択するダウンシフト制御選択手段と、を備えた手段とした。
【選択図】 図3

Description

本発明は、複数の固定変速比による変速段を手動操作により選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置に関するものである。
従来のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置は、スロットル開度が略全閉の状態でシフトダウンする時に、シフトダウン前よりもエンジン回転数を高くすることによって駆動力の引き込みによるショックの発生を防止すると共に、降坂制御としてのダウンシフトの場合、そうでない場合に比べ、エンジン回転数の上昇開始を促進させることにより、駆動力の引き込み現象を効果的に抑制している(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−281276号公報。
しかしながら、従来のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置にあっては、降坂制御か否かだけでエンジン回転数の上昇開始の促進が決まる構成となっていたため、減速又は燃費重視か、再加速重視か、といったドライバの意図を反映した適切なエンジンブレーキ力の発生方法の選択ができないという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、減速中のマニュアルダウンシフト時、減速又は燃費重視か再加速重視かというドライバの意図を反映し、適切なエンジンブレーキ力発生方法を選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、
複数の固定変速比による変速段を手動操作により選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、
前記マニュアルモードでのダウンシフト時に、自動変速機のみへの変速指令にしたがってダウンシフトを行う通常マニュアルダウンシフト制御手段と、
前記マニュアルモードでのダウンシフト時に、エンジン出力を増大させながらダウンシフトを行うエンジンと自動変速機との協調制御による回転同期マニュアルダウンシフト制御手段と、
減速又は燃費重視か、再加速重視か、というドライバの意図を反映させるドライバ意図反映手段と、
減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバの意図が減速又は燃費重視の場合は、前記通常マニュアルダウンシフト制御手段を選択し、ドライバの意図が再加速重視の場合は、前記回転同期マニュアルダウンシフト制御手段を選択するダウンシフト制御選択手段と、
を備えた手段とした。
よって、本発明のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置にあっては、ダウンシフト制御選択手段において、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバの意図が減速又は燃費重視の場合は、エンジンブレーキ力が大きな通常マニュアルダウンシフト制御手段が選択され、ドライバの意図が再加速重視の場合は、エンジンブレーキ力が小さな回転同期マニュアルダウンシフト制御手段が選択されるため、減速中のマニュアルダウンシフト時、減速又は燃費重視か再加速重視かというドライバの意図を反映し、適切なエンジンブレーキ力発生方法を選択することができる。
以下、本発明のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を示す全体システム図である。
実施例1のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置は、図1に示すように、エンジン1、自動変速機2、電子制御スロットル3、エアーフローメータ4、アクセル開度センサ5、インジェクタ6、エンジン回転数センサ7、シフトソレノイド8、車速センサ9、エンジンコントロールユニット10、自動変速機コントロールユニット11、セレクトレバー12、ステアリングスイッチ13(マニュアルスイッチ)、モード選択スイッチ14(ドライバ意図反映手段)、燃料残量センサ15(燃料残量検出手段)を備えている。
前記エンジン1は、エアーフローメータ4とアクセル開度センサ5とエンジン回転数センサ7と車速センサ9等からの情報を入力するエンジンコントロールユニット10によりスロットル開度制御と燃料噴射量制御とが実行される。つまり、スロットル開度制御は、基本的にアクセル開度情報に応じてアクセル開度に対応したスロットル開度となるように、電子制御スロットル3に対しフィードバック制御による制御指令を出力することでなされる。燃料噴射量制御は、基本的に吸入空気情報やエンジン回転数情報等に応じて最適な燃料噴射量となるように、インジェクタ6に対し制御指令を出力することでなされる。
前記自動変速機2は、アクセル開度センサ5と車速センサ9等からの情報を入力する自動変速機コントロールユニット11により変速制御が実行される。つまり、Dレンジ選択時には、アクセル開度と車速により決まる運転点が予め設定されている変速マップ上でのアップシフト線を超えるとアップシフトする指令をシフトソレノイド8に対し出力し、運転点が変速マップ上でのダウンシフト線を超えるとダウンシフトする指令をシフトソレノイド8に対し出力することで自動的にギヤ位置を変える自動変速制御がなされる。また、セレクトレバー12をマニュアル操作側に入れることでなされるマニュアルモード時には、セレクトレバー12をマニュアル操作側で上方に手動操作することでアップシフトが行われ、セレクトレバー12をマニュアル操作側で下方に手動操作することでダウンシフトが行われる。
前記エンジンコントロールユニット10と自動変速機コントロールユニット11とは、互いに情報を交換しあうCAN通信線等の双方向通信線により連結されている。
前記セレクトレバー12は、前記自動変速機2のレンジ位置(例えば、Nレンジ位置、Pレンジ位置、Rレンジ位置、Dレンジ位置、Lレンジ位置)を選択するレンジ位置選択操作部12aと、該レンジ位置選択操作部12aに連通し、手動によりアップシフトおよびダウンシフトを行うマニュアル操作部12bと、を有する。このマニュアル操作部12bを用いたセレクトレバー12のダウンシフト操作は、アクセル開度が略ゼロである減速中において、減速又は燃費重視というドライバの意図を反映させる手段としての機能を持つ。
前記ステアリングスイッチ13は、マニュアルシフトのために前記セレクトレバー12とは別にステアリングホイールの内側位置に設定されたスイッチで、アップシフトスイッチ13aとダウンシフトスイッチ13bにより構成される。このダウンシフトスイッチ13bに対してのスイッチ操作は、アクセル開度が略ゼロである減速中において、再加速重視というドライバの意図を反映させる手段としての機能を持つ。
前記モード選択スイッチ14は、前記自動変速機コントロールユニット11に設定された通常走行に適したノーマルモード変速マップを選択するノーマルモードと、動力性能を重視したパワーモード変速マップを選択するパワーモードと、燃費を重視したエコモード変速マップを選択するエコモードと、のうち、ドライバによる手動操作により何れかの変速モードを選択するスイッチである。なお、「パワーモード変速マップ」は、ノーマルモード変速マップに比べて高回転側に設定されていて、「エコモード変速マップ」は、ノーマルモード変速マップに比べて低回転側に設定されている。
図2は実施例1のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を説明する機能ブロック図であり、ドライバ意図反映手段20と、ダウンシフト制御選択手段21と、燃料噴射制御手段22と、変速制御手段23と、を備えている。
前記ドライバ意図反映手段20は、減速又は燃費重視か、再加速重視か、というドライバの意図を反映させる手段である。実施例1の場合、減速又は燃費重視というドライバの意図を反映させる手段が自動変速機2のレンジ位置を選択するセレクトレバー12であり、再加速重視というドライバの意図を反映させる手段が前記セレクトレバー12とは別に設定したステアリングスイッチ13である。加えて、実施例1の場合、ノーマルモードとパワーモードとエコモードとを選択することができるモード選択スイッチ14もドライバの意図を反映させる手段として用いている。
前記ダウンシフト制御選択手段21は、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバの意図が減速又は燃費重視の場合は、自動変速機2に対する変速制御のみによる通常のマニュアルダウンシフト制御を選択し、ドライバの意図が再加速重視の場合は、エンジン1と自動変速機2との協調制御による回転同期のマニュアルダウンシフト制御を選択する手段である。実施例1の場合、減速中のマニュアルダウンシフト時、ステアリングスイッチ13のダウンシフトスイッチ13bが操作された場合には、回転同期のマニュアルダウンシフト制御を選択する。また、減速中のマニュアルダウンシフト時、セレクトレバー12が操作されたにもかかわらずモード選択スイッチ14によりパワーモードが選択されている場合には、回転同期マニュアルダウンシフト制御を選択する。また、減速中のマニュアルダウンシフト時、セレクトレバー12が操作された場合で、かつ、ノーマルモードまたはエコモードが選択されている場合には、通常のマニュアルダウンシフト制御を選択する。
前記燃料噴射制御手段22と変速制御手段23とは、マニュアルモードでのダウンシフト時に、ダウンシフトで上昇するエンジン回転数を予測し、エンジン1側でダウンシフト後のエンジン回転数まで高める燃料噴射量の増量制御を行いながら、自動変速機2側でダウンシフトを行うエンジン1と自動変速機2との協調制御による回転同期マニュアルダウンシフト制御手段に相当する。また、前記変速制御手段23は、マニュアルモードでのダウンシフト時に、自動変速機2のみへの変速指令にしたがってダウンシフトを行う通常マニュアルダウンシフト制御手段に相当する。
次に、作用を説明する。
[減速中のマニュアルダウン制御処理]
実施例1装置の自動変速機コントロールユニット11により設定周期毎(例えば、10msec毎)に実行される減速中のマニュアルダウン制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS1では、減速中のマニュアルシフトダウンか否かが判断され、YESの場合はステップS2へ移行し、NOの場合はエンドへ移行する。
ここで、「減速中」か否かは、アクセル開度センサ5から得られたアクセル開度値が略ゼロか否かで判断する。
ステップS2では、マニュアルシフトダウン操作がセレクトレバー12に対する操作か否かが判断され、YESの場合(=セレクトレバー12に対する操作時)はステップS3へ移行し、NOの場合(=ダウンシフトスイッチ13bに対する操作時)はステップS5へ移行する。
ステップS3では、モード選択スイッチ14によりパワーモードが選択されているか否かが判断され、YESの場合(パワーモード選択時)はステップS5へ移行し、NOの場合(エコモード選択時、または、ノーマルモード選択時)はステップS4へ移行する。
ステップS4では、自動変速機2のシフトソレノイド8に対するダウンシフト指令による通常のマニュアルダウンシフト変速制御が実行され、エンドへ移行する。
ステップS5では、燃料残量センサ15からの燃料残量検出値が所定値以下か否かが判断され、YESの場合はステップS4へ移行し、NOの場合はステップS6へ移行する。
ステップS6では、エンジン回転数を高めながらダウンシフトを行うエンジンと自動変速機との協調制御による回転同期のマニュアルダウンシフト制御が実行され、ステップS7へ移行する。
ステップS7では、そのときの変速の種類と、車速と、エンジン出力増大量テーブル(図4)と、によりエンジン出力増大量が選択され、選択されたエンジン出力増大量を得る燃料噴射制御が実行され、エンドへ移行する。
ここで、「エンジン出力増大量テーブル」は、例えば、図4に示すように、エンジンイナーシャと変速の種類によって決まるギヤ比段差から変速時のエンジン回転数上昇に必要なトルクを、変速の種類と車速毎にテーブル化し、予め自動変速機コントロールユニット11に記憶設定しておいたものである(エンジン出力増大量テーブル設定手段)。
[減速中のマニュアルダウン制御作動]
コーナー進入時等で再加速の意図が強い場合であって、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバが再加速の意図にしたがってステアリングスイッチ13のダウンシフトスイッチ13bを操作した場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れとなり、エンジンブレーキ力が抑えられる回転同期のマニュアルダウンシフト制御が選択される。
また、ドライバが動力性能を重視した走行を希望し、モード選択スイッチ14によりパワーモードを選択している場合であって、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバがセレクトレバー12によりダウンシフト操作した場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れとなり、エンジンブレーキ力が抑えられる回転同期のマニュアルダウンシフト制御が選択される。
また、ドライバが燃費性能を重視した走行を希望し、モード選択スイッチ14によりエコモードを選択している場合、または、モード選択スイッチ14によりノーマルモードを選択している場合であって、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバがセレクトレバー12によりダウンシフト操作した場合、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進む流れとなり、エンジンブレーキ力が大きな通常のマニュアルダウンシフト制御が選択される。
なお、ステアリングスイッチ13のダウンシフトスイッチ13bを操作した場合、あるいは、モード選択スイッチ14によりパワーモードを選択している場合であり、操作条件としては回転同期のマニュアルダウンシフト制御が選択される場合であっても、燃料残量が所定値以下の場合は、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2(または、→ステップS3)→ステップS5→ステップS4へと進む流れとなり、エンジン出力を増大する制御を伴わない通常のマニュアルダウンシフト制御が選択される。
[減速中のダウンシフト制御に関する技術背景]
自動変速機を搭載した車両において、アクセル操作量が略ゼロの状態での減速走行中にエンジンブレーキ力を増大させるためにダウンシフトが行われる場合、ダウンシフトによりエンジン回転数が上昇させられる際のイナーシャトルクによってエンジンブレーキ力が一時的に増大する。そこで、例えば、特開平5−229368号公報に記載の装置では、アクセルが略全閉状態でエンジンブレーキの作用する低速段へダウンシフトされる際に、エンジン出力を増大させることにより一時的なエンジンブレーキ増大に起因する変速ショックを抑制すると共に、変速時間を短縮している。
しかしながら、特開平5−229368号公報に記載の装置では、車両状態やドライバの意図とは関係無く、常にアクセル開度が略ゼロの状態でのダウンシフト中にエンジン出力を一時的に増大させて変速時間を短縮する、という構成になっていたため、エンジン出力の一時的な増大を行わない一般的なダウンシフトに比べて減速感が損なわれると共に、エンジン出力を一時的の増大させることにより燃費が悪化する、という問題があった。
また、特開平10−47100号公報に記載の装置では、減速走行中のダウンシフト時に車両減速度に基づいてエンジンの出力上昇幅を決定することにより、ダウンシフト変速のための摩擦係合装置が作動するタイミングに合わせてエンジン出力の増大を適切な値とすることで変速ショックを好適に防している。
しかしながら、特開平10−47100号公報に記載の装置では、車両の減速度によってエンジン出力の上昇幅を決定すると言う構成となっていたため、車両の減速度が小さいほど実際の変速開始時の車速が高くなり、エンジン出力上昇幅が増大させられてより燃費が悪化する、という問題があった。
また、特開平10−281276号公報に記載の装置では、スロットル開度が略全閉の状態でシフトダウンする時に、シフトダウン前よりもエンジン回転数を高くすることによって駆動力の引き込みショックの発生を防止すると共に、降坂制御としてのダウンシフトの場合、そうでない場合に比べエンジン回転数の上昇開始を促進させることにより、駆動力の引き込み現象を効果的に抑制している。
しかしながら、特開平10−281276号公報に記載の装置では、降坂制御か否かだけでエンジン回転数の上昇開始の促進が決まる構成となっていたため、減速又は燃費重視か、再加速重視か、といったドライバの意図を反映した適切なエンジンブレーキ力の発生方法の選択ができない、という問題があった。
[減速中のマニュアルダウン制御作用]
これに対し、実施例1では、再加速重視というドライバの意図を、ステアリングスイッチ13によるマニュアルダウンシフト操作と、モード選択スイッチ14によるパワーモードの選択操作と、により反映し、コーナー進入時等でドライバの再加速意図が強い場合に、ドライバが2つの操作のうち、少なくともいずれか一方の操作を行うと、エンジンブレーキ力が抑えられる回転同期のマニュアルダウンシフト制御を選択するようにしている。
回転同期のマニュアルダウンシフト制御では、図5に示すように、例えば、t1より少し前の時点でステアリングスイッチ13によるマニュアルダウンシフト操作が行われると、t1の時点では、解放クラッチ圧の抜き圧制御が開始され、締結クラッチの入れ圧制御が開始されると共に、エンジン出力を増大する制御が開始される。そして、t2の時点では、締結クラッチ初期圧が一気に抜かれ、解放クラッチ圧も完全に抜かれる。よって、自動変速機2は、2つのクラッチが何れもほぼ解放状態、つまり、エンジン1にとっての負荷がほぼ解除されたニュートラルに近い状態となり、t2の時点からは、エンジン回転数がエンジン出力制御に伴って急激に上昇する。そして、ギヤ比がギヤ比閾値まで上昇するt3の時点になると、エンジン出力制御が停止されると共に、締結クラッチ圧の上昇制御が開始される。そして、ダウンシフト後のギヤ比に達するt4の時点では、締結クラッチ圧が一気に上昇し、締結クラッチを掴むことで、多少オーバーシュートしているエンジン回転数がダウンシフト後の適正な回転数まで少し低下してダウンシフトを終了する。
すなわち、自動変速機2がニュートラルに近い状態でエンジン回転数を上昇させる制御が行われることで、エンジン回転数が上昇させられる際のイナーシャトルクにより発生するエンジンブレーキ力は、小さく抑えられることになり、アクセル足離しによるマニュアルダウンシフトの直後に、ドライバが再加速を意図してアクセルペダルを踏み込むと、アクセル踏み込み操作に対し応答良くエンジン回転数が上昇し、高い加速性を得ることができる。
一方、実施例1では、減速又は燃費重視というドライバの意図を、セレクトレバー12によるマニュアルダウンシフト操作と、モード選択スイッチ14によるエコモードの選択操作と、により反映し、信号手前等でドライバの減速意図が強い場合には、セレクトレバー12によるマニュアルダウンシフト操作を行い、また、予め燃費を重視した走行を希望する場合には、モード選択スイッチ14によりエコモードの選択を行うことで、大きなエンジンブレーキ力が得られる通常のマニュアルダウンシフト制御を選択するようにしている。
通常のマニュアルダウンシフト制御では、図6に示すように、例えば、t1より少し前の時点でセレクトレバー12によるマニュアルダウンシフト操作が行われると、t1の時点では、解放クラッチ圧の抜き圧制御が開始され、締結クラッチ初期圧の入れ圧制御が開始される。そして、t2の時点では締結クラッチ圧の初期圧を途中まで抜いて再び上昇させる制御がt7の時点まで継続される。解放クラッチ圧は、t1の時点で締結容量を保った抜き圧とされ、これをt5の時点まで徐々に低下させながら保ち、t5の時点以降で完全に抜く制御が行われる。そして、t2の時点からt5の時点までは、解放クラッチも締結クラッチも滑り締結状態のイナーシャ相となり、t5の時点で解放クラッチが抜かれることで、締結クラッチのみによる滑り締結状態のトルク相となり、特に、エンジン1にとって負荷が小さくなりt5付近の時点からt7の時点までエンジン回転数が上昇する。そして、t6の時点でダウンシフト後のギヤ比となり、t7の時点でエンジン回転数の上昇が抑えられ、t8の時点で締結クラッチ圧を一気に上昇させて完全に掴むことで変速が完了する。
すなわち、ダウンシフト変速での相遷移により、イナーシャフェーズ相から一方の締結クラッチのみで締結容量を受け持つトルク相にかけての自動変速機2のギヤ比が変化する領域で、エンジン回転数が徐々に上昇し、このエンジン回転数が上昇させられる際のイナーシャトルクによりエンジンブレーキ力が増大するという作用を示し、例えば、信号の手前等でドライバの減速意図が強い場合には、アクセル足離し状態でのセレクトレバー12によるマニュアルダウンシフト操作で、大きなエンジンブレーキ力により減速させることができるし、また、燃費を重視した走行をドライバが希望する場合には、アクセル足離し状態でのセレクトレバー12によるマニュアルダウンシフト操作で、エンジン出力制御による無駄な燃料消費をすることなく、マニュアルダウンシフトを実行することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 複数の固定変速比による変速段を手動操作により選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、前記マニュアルモードでのダウンシフト時に、自動変速機2のみへの変速指令にしたがってダウンシフトを行う通常マニュアルダウンシフト制御手段と、前記マニュアルモードでのダウンシフト時に、エンジン回転数を高めながらダウンシフトを行うエンジン1と自動変速機2との協調制御による回転同期マニュアルダウンシフト制御手段と、減速又は燃費重視か、再加速重視か、というドライバの意図を反映させるドライバ意図反映手段と、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバの意図が減速又は燃費重視の場合は、前記通常マニュアルダウンシフト制御手段を選択し、ドライバの意図が再加速重視の場合は、前記回転同期マニュアルダウンシフト制御手段を選択するダウンシフト制御選択手段と、を備えたため、減速中のマニュアルダウンシフト時、減速又は燃費重視か再加速重視かというドライバの意図を反映し、適切なエンジンブレーキ力発生方法を選択することができる。
(2) 前記ドライバ意図反映手段は、減速又は燃費重視というドライバの意図を反映させる手段が自動変速機2のレンジ位置を選択するセレクトレバー12であり、再加速重視というドライバの意図を反映させる手段が前記セレクトレバーとは別に設定したステアリングスイッチ13であるため、減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバ意図が減速を強く望む場合やドライバ意図が燃費を強く望む場合には、セレクトレバー12によるマニュアルダウンシフト操作を選択し、また、ドライバ意図が再加速性を強く望む場合には、ステアリングスイッチ13によるマニュアルダウンシフト操作を選択することで、ドライバの意図を反映したエンジンブレーキ力の発生方法を選択することができる。
(3) 前記ドライバ意図反映手段は、少なくとも動力性能を重視する変速モードと燃費を重視する変速モードとを選択することができるモード選択スイッチ14であり、前記ダウンシフト制御選択手段は、燃費を重視するエコモードの選択時に通常マニュアルダウンシフト制御手段を選択し、動力性能を重視するパワーモードの選択時に回転同期マニュアルダウンシフト制御手段を選択するため、燃費を重視する車両において、パワーモードを選択した時にのみ回転同期マニュアルダウンシフト制御が行われることで、通常走行時の燃費の悪化を防止することができる。
(4) 燃料残量を検出する燃料残量センサ15を設け、前記ダウンシフト制御選択手段は、減速中のマニュアルダウンシフト時、燃料残量検出値が所定値以下であれば回転同期マニュアルダウンシフト制御手段の選択を禁止するため、燃料残量が少ない走行時に車両の走行可能距離を伸ばすことができる。
(5) ダウンシフトの種類と車速に応じて減速中ダウンシフト時のエンジン回転上昇に必要なエンジン出力増大量を決めたエンジン出力増大量テーブルを設定したエンジン出力増大量テーブル設定手段を設け、前記ダウンシフト制御選択手段は、回転同期マニュアルダウンシフト制御手段の選択時、エンジン出力増大量テーブルの検索により得られたエンジン出力増大量を目標値としてエンジン出力の制御を行うため、回転同期マニュアルダウンシフト制御が選択された時に、ダウンシフトの種類と車速に応じた適切なエンジン回転数の上昇量にエンジン出力を制御することができる。
以上、本発明のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1では、セレクトレバー以外のマニュアルスイッチとして、ステアリングスイッチの例を示したが、ステアリングコラムに設けられたパドルスイッチや、ドライバの手が届くインストルメントパネル等の位置に設けられたスイッチ等であっても良い。
本発明のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置は、マニュアルモード付き有段自動変速機を搭載した車両以外に、Dレンジでは無段変速制御が行われるがマニュアルモードでは複数の固定変速比から1つの固定変速比を選択することができるマニュアルモード付き無段変速機を搭載した車両にも適用できる。
実施例1のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を示す全体システム図である。 実施例1のマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置を説明する機能ブロック図である。 実施例1装置の自動変速機コントロールユニットにより設定周期毎に実行される減速中のマニュアルダウン制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1装置における回転同期のマニュアルダウンシフト制御時にエンジン出力増大量の決定に用いられるエンジン出力増大量テーブルを示す図である。 実施例1装置における回転同期のマニュアルダウンシフト制御時のタービン回転数・エンジン回転数・解放クラッチ圧・締結クラッチ圧・エンジン出力・ギヤ比の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1装置における通常のマニュアルダウンシフト制御時のタービン回転数・エンジン回転数・解放クラッチ圧・締結クラッチ圧の各特性を示すタイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 自動変速機
3 電子制御スロットル
4 エアーフローメータ
5 アクセル開度センサ
6 インジェクタ
7 エンジン回転数センサ
8 シフトソレノイド
9 車速センサ
10 エンジンコントロールユニット
11 自動変速機コントロールユニット
12 セレクトレバー
13 ステアリングスイッチ(マニュアルスイッチ)
14 モード選択スイッチ(ドライバ意図反映手段)
15 燃料残量センサ(燃料残量検出手段)

Claims (5)

  1. 複数の固定変速比による変速段を手動操作により選択することができるマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、
    前記マニュアルモードでのダウンシフト時に、自動変速機のみへの変速指令にしたがってダウンシフトを行う通常マニュアルダウンシフト制御手段と、
    前記マニュアルモードでのダウンシフト時に、エンジン回転数を高めながらダウンシフトを行うエンジンと自動変速機との協調制御による回転同期マニュアルダウンシフト制御手段と、
    減速又は燃費重視か、再加速重視か、というドライバの意図を反映させるドライバ意図反映手段と、
    減速中のマニュアルダウンシフト時、ドライバの意図が減速又は燃費重視の場合は、前記通常マニュアルダウンシフト制御手段を選択し、ドライバの意図が再加速重視の場合は、前記回転同期マニュアルダウンシフト制御手段を選択するダウンシフト制御選択手段と、
    を備えたことを特徴とするマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置。
  2. 請求項1に記載されたマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、
    前記ドライバ意図反映手段は、減速又は燃費重視というドライバの意図を反映させる手段が自動変速機のレンジ位置を選択するセレクトレバーであり、再加速重視というドライバの意図を反映させる手段が前記セレクトレバーとは別に設定したマニュアルスイッチであることを特徴とするマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載されたマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、
    前記ドライバ意図反映手段は、少なくとも動力性能を重視する変速モードと燃費を重視する変速モードとを選択することができるモード選択スイッチであり、
    前記ダウンシフト制御選択手段は、燃費を重視する変速モードの選択時に通常マニュアルダウンシフト制御手段を選択し、動力性能を重視する変速モードの選択時に回転同期マニュアルダウンシフト制御手段を選択することを特徴とするマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置。
  4. 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載されたマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、
    燃料残量を検出する燃料残量検出手段を設け、
    前記ダウンシフト制御選択手段は、減速中のマニュアルダウンシフト時、燃料残量検出値が所定値以下であれば回転同期マニュアルダウンシフト制御手段の選択を禁止することを特徴とするマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載されたマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置において、
    ダウンシフトの種類と車速に応じて減速中ダウンシフト時のエンジン回転上昇に必要なエンジン出力増大量を決めたエンジン出力増大量テーブルを設定したエンジン出力増大量テーブル設定手段を設け、
    前記ダウンシフト制御選択手段は、回転同期マニュアルダウンシフト制御手段の選択時、エンジン出力増大量テーブルの検索により得られたエンジン出力増大量を目標値としてエンジン出力の制御を行うことを特徴とするマニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置。
JP2003279571A 2003-07-25 2003-07-25 マニュアルモード付き自動変速機の変速制御装置 Abandoned JP2005042872A (ja)

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