JP2005042571A - スターリング機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】バランスマスの振動エネルギーを効率よく回収することが可能でかつ有効に活用することが可能なスターリング冷凍機を提供する。
【解決手段】スターリング冷凍機1は、作動媒体が封入されたケーシングと、ケーシング内部に配置されたシリンダ2と、シリンダ2内に位置するピストン3およびディスプレーサ4と、ケーシングに板バネ16を介して取付けられた振動吸収用のバランスマス17と、バランスマス17に巻装されたコイル18とを備える。バランスマス17は、その一部に永久磁石19を含んでいる。永久磁石19が振動することによってコイル18に生じる誘導起電力により、スターリング冷凍機1の放熱部8およびベッセル10を空冷する電動送風機21が駆動される。
【選択図】 図1
【解決手段】スターリング冷凍機1は、作動媒体が封入されたケーシングと、ケーシング内部に配置されたシリンダ2と、シリンダ2内に位置するピストン3およびディスプレーサ4と、ケーシングに板バネ16を介して取付けられた振動吸収用のバランスマス17と、バランスマス17に巻装されたコイル18とを備える。バランスマス17は、その一部に永久磁石19を含んでいる。永久磁石19が振動することによってコイル18に生じる誘導起電力により、スターリング冷凍機1の放熱部8およびベッセル10を空冷する電動送風機21が駆動される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スターリング機関に関し、特に、フリーピストン型スターリング冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の見地から、スターリング機関が注目を浴びている。スターリング機関は、外部の熱源を利用して可逆サイクルであるスターリングサイクルを実現する外燃機関であり、ガソリンなどの引火性や着火性に優れた燃料を必要とする内燃機関に比べ、低公害であるという長所を備えた熱機関である。このスターリング機関を応用した装置として、スターリング冷凍機が知られている。
【0003】
一般に、冷凍機等に使用される冷凍サイクルとしては、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが採用される場合が多い。この蒸気圧縮式の冷凍サイクルは、作動媒体としての冷媒にフロン(クロロフルオロカーボン)を用い、フロンの凝縮および蒸発を利用して所望の冷却性能を得るものである。
【0004】
しかし、冷媒として使用されるフロンは非常に化学的安定性が高く、大気中に放出された場合には、成層圏にまで達してオゾン層を破壊するとの指摘がなされている。このため、近年においては、特定のフロンの使用および生産が規制されており、フロンを用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクルに代わる次世代の冷凍サイクルとして、逆スターリングサイクルが鋭意研究されている。
【0005】
逆スターリングサイクルにおいては、作動媒体としてヘリウムガスや水素ガス、窒素ガスなどを採用することができるため、地球環境に悪影響を及ぼす心配がない。また、逆スターリングサイクルは、小型の装置構成で極低温を発生させることが可能であり、各種冷凍機器等への応用が可能である。これらの理由から、逆スターリングサイクルを用いたスターリング冷凍機の実用化が期待されている。
【0006】
スターリング冷凍機は、作動媒体である冷媒ガスをピストンを用いて圧縮・膨張する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒ガスをディスプレーサを用いて圧縮・膨張させる膨張機とを組合わせたものである。従来、これら圧縮機と膨張機とは別個に構成されたものが一般的であったが、近年においてはピストンとディスプレーサを同軸上に配置することにより、シリンダを共有化したものが一般化しつつある。さらには、ディスプレーサを直接駆動することなく、ピストンの往復動によって生じる冷媒ガスの圧力変化を受けてディスプレーサがピストンと共振するように構成された、いわゆるフリーピストン型のスターリング冷凍機が一般化しつつある。
【0007】
ところで、このスターリング冷凍機においては、ピストンおよびディスプレーサがシリンダ内を往復動することにより、その反作用によって冷凍機本体に振動が生じる。冷凍機本体に生じた振動は、騒音の原因となるとともに装置の信頼性を低下させる要因ともなる。このため、本体にコイルバネを介してバランスマス(質量部材)を取付けることにより、冷凍機本体に生じる振動の吸収が図られたスターリング冷凍機が知られている(たとえば、特許文献1または特許文献2など)。
【0008】
この特許文献1および特許文献2に開示のスターリング冷凍機では、ピストンおよびディスプレーサが往復動することによって生じる冷凍機本体の振動の基本共振周波数に相応してバランスマスが共振するように、コイルバネのバネ定数やバランスマスの質量が調整される。これにより、バランスマスが共振することによって冷凍機本体に生じる振動が吸収されるため、騒音の発生が抑制されるとともに装置の信頼性も大幅に向上するようになる。なお、冷凍機本体とバランスマスを接続する手段としては、コイルバネの他にも放射状または渦巻状の板バネ等が利用可能である。
【0009】
上記構成のスターリング冷凍機において生ずるバランスマスの振動エネルギーに着目し、この振動エネルギーの有効活用を図ったものとして、特開2000−193337号公報(特許文献3)に開示のスターリング冷凍機がある。この特許文献3に開示のスターリング冷凍機は、バランスマスに攪拌翼を取付けるか、またはバランスマス自体に攪拌翼部を形成することにより、バランスマスが振動することによって生ずる振動エネルギーを利用して攪拌翼または攪拌翼部を回転させ、送風手段として用いるように構成したものである。そして、この送風手段を用いて、吸熱部(コールドヘッド)に生ずる冷熱や放熱部(ウォームヘッド)に生ずる熱を冷凍機本体外部に伝熱させるものである。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−353361号公報
【0011】
【特許文献2】
実開平5−47760号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2000−193337号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献3に開示の技術は、回収されることなく消費されてしまうバランスマスの振動エネルギーを有効に活用しようとする点で非常に意義深いものである。しかしながら、実際にバランスマス自体を、吸熱部に生ずる冷熱や放熱部に生ずる熱の伝熱手段として活用するためには、種々の技術的困難性が伴うことが予想される。たとえば、バランスマス自体を送風手段として利用した場合には、十分な送風能力が得られず、効率よく冷熱や熱を冷凍機外部に伝熱させることが非常に困難になると思われる。また、バランスマスによる送風能力の出力が一意に決定されてしまうため、スターリング冷凍機の運転状態に応じた伝熱効率の調整も困難になると思われる。
【0014】
以上においては、スターリング機関の応用例としてスターリング冷凍機に着目して説明を行なってきたが、外燃機関としての一般的なスターリング機関においても同様のことが言える。すなわち、スターリング機関においても振動を抑制するためにバランスマスを装置本体に装着する場合があり、このバランスマスの振動エネルギーを効率よく活用することができれば、省エネルギーの観点から非常に好ましいものとなる。
【0015】
したがって、本発明は、バランスマスの振動エネルギーを効率よく回収することが可能で、かつ有効に活用することが可能なスターリング機関を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に基づくスターリング機関は、ケーシングと、シリンダと、ピストンと、ディスプレーサと、バランスマスと、コイルとを備える。ケーシング内にはシリンダが配置されており、シリンダ内にはピストンおよびディスプレーサが配置されている。ピストンおよびディスプレーサは、このシリンダ内を往復動する。バランスマスは、ケーシングに弾性部材を介して取付けられる。このバランスマスは、ピストンおよびディスプレーサが往復動することによって生じるケーシングの振動を吸収する手段である。また、バランスマスは、少なくともその一部に磁石を含んでいる。コイルは、バランスマスの周囲に巻装される。
【0017】
このように構成することにより、バランスマスの振動エネルギーを電気エネルギーとして効率よく回収することが可能になる。また、回収した電気エネルギーを電力被供給部に供給することにより、有効に活用することが可能になる。
【0018】
上記本発明に基づくスターリング機関にあっては、コイルに生じる誘導起電力により駆動する送風手段をさらに備え、スターリング機関が動作することによって発熱する部位をこの送風手段にて冷却する構成とすることが好ましい。
【0019】
このように、回収したエネルギーをスターリング機関が発熱する部位を空冷する送風手段の駆動に利用することにより、エネルギーの有効活用が可能になり、省エネルギーの観点からも優れたスターリング機関となる。
【0020】
上記本発明に基づくスターリング冷凍機関にあっては、上記バランスマスが、ピストンおよびディスプレーサの往復動方向の延長線上に位置していることが好ましい。
【0021】
このように構成することにより、振動エネルギーを無駄なく最大の効率で電気エネルギーに変換することが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、スターリング機関の応用例であるスターリング冷凍機を例示して説明を行なう。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスターリング冷凍機の構成を示す模式断面図である。
【0024】
(スターリング冷凍機の構成)
まず、図1を参照して本発明の実施の形態1におけるスターリング冷凍機の構成について説明する。図1に示すように、スターリング冷凍機1は、ヘリウムガスや水素ガス、窒素ガスなどの作動ガスが作動媒体として内部に充填されたケーシングを有している。ここで言うスターリング冷凍機のケーシングは、作動ガスを内部に密閉するすべての部材を含むものであり、後述する圧縮室や膨張室、背圧室、さらにはこれらを連通する流路からなる作動空間を覆う部材を言う。すなわち、図1に示すスターリング冷凍機1のケーシングは、ベッセル10のみならず、放熱部(ウォームヘッド)8や吸熱部(コールドヘッド)9などを含むものである。なお、ケーシングの内部には、作動ガスが充填されたシリンダ2が配置されている。
【0025】
シリンダ2内には、ピストン3およびディスプレーサ4が同軸上に嵌装されている。これらピストン3およびディスプレーサ4によってシリンダ2内の作動空間が圧縮室6と膨張室7とに区画されている。圧縮室6は、放熱部(ウォームヘッド)8によって覆われている。一方、膨張室7は、吸熱部(コールドヘッド)9によって覆われている。なお、ピストン3から見てディスプレーサ4とは反対側の空間には、ベッセル10によって囲まれた背圧室15が位置している。
【0026】
ピストン3は、板バネ12によってケーシングに固定され、駆動手段であるリニアモータ11によって駆動されて、シリンダ2内を周期的に往復動する。また、ディスプレーサ4は、ピストン3が往復動することによって生ずるガス圧の変化を受けてシリンダ2内を往復動するが、ディスプレーサロッド14および板バネ13を介してケーシングに固定されているため、周期的に往復動することになる。このピストン3の往復動とディスプレーサ4の往復動は、定常運転時において一定の位相差をもって同じ周期で行なわれる。
【0027】
圧縮室6と膨張室7との間には再生器5が配設されており、この再生器5を介してこれら両室が連通することにより、スターリング冷凍機1内に閉回路が構成されている。この閉回路内に封入された作動ガスが、ピストン3およびディスプレーサ4の動作に合わせて流動することにより、逆スターリングサイクルが実現する。
【0028】
(スターリング冷凍機の動作)
次に、上記構成のスターリング冷凍機の動作について説明する。まず、リニアモータ11を作動させ、ピストン3を駆動する。リニアモータ11によって駆動されたピストン3は、ディスプレーサ4に接近し、圧縮室6内の作動ガスを圧縮する。これにより、圧縮室6内の作動ガス温度は上昇するが、放熱部8によってこの圧縮室6内に発生した熱が外部へと放出されるため、圧縮室6内の作動ガス温度はほぼ等温に維持される。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルにおける等温圧縮過程に相当する。
【0029】
次に、ピストン3によって圧縮室6内において圧縮された作動ガスは、その圧力により再生器5内に流入し、さらに膨張室7へと送られる。その際、作動ガスの持つ熱が再生器5に蓄熱される。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルの等容冷却過程に相当する。
【0030】
つづいて、膨張室7内に流入した高圧の作動ガスは、ディスプレーサ4がピストン3側へ下がることにより、膨張する。これにより、膨張室7内の作動ガス温度は下降するが、吸熱部9によって外部の熱が膨張室7内へと伝熱されるため、膨張室7内はほぼ等温に保たれる。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルの等温膨張過程に相当する。
【0031】
やがて、ディスプレーサ4がピストン3から遠ざかる方向に上昇し始めることにより、膨張室7内の作動ガスは再生器5を通過して、再び圧縮室6側へと戻る。その際、再生器5に蓄熱されていた熱が作動ガスに与えられるため、作動ガスは昇温する。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルの等容加熱過程に相当する。
【0032】
この一連の過程(等温圧縮過程−等容冷却過程−等温膨張過程−等容加熱過程)が繰り返されることにより、逆スターリングサイクルが構成される。この結果、吸熱部9は徐々に低温になり、極低温を有するに至る。
【0033】
(振動吸収機構および発電機構)
図1に示すように、本実施の形態におけるスターリング冷凍機1は、ケーシングに弾性部材としての板バネ16を介して接続されたバランスマス17を備えている。このバランスマス17および板バネ16は、ピストン3およびディスプレーサ4が往復動することによって生じるケーシングの振動を吸収する振動吸収機構であり、ピストン3およびディスプレーサ4が往復動することによって生じるケーシングの振動の基本共振周波数に相応してバランスマス17が共振するように、板バネ16のバネ定数やバランスマス17の質量が調整されている。これにより、スターリング冷凍機1本体に生じる振動が大幅に抑制されるようになる。なお、板バネ16としては、放射状や渦巻状の板バネを利用することが好ましいが、板バネ16に代えてコイルバネを利用することも可能である。
【0034】
図1に示すように、バランスマス17は、スターリング冷凍機1のケーシング外部においてピストン3およびディスプレーサ4の往復動方向の延長線上に位置している。このように構成することにより、バランスマス17の振動方向とピストン3およびディスプレーサ4の往復動方向とが合致するように構成することが可能になるため、最も効果的にスターリング冷凍機1本体に生ずる振動を抑制することが可能になる。
【0035】
図1に示すように、バランスマス17の周囲にはコイル18が巻装されている。換言すれば、バランスマス17は、バランスマス17の直径よりも大きい内径となるようにバランスマス17の円周方向に巻き回されたコイル18の内側の中空部内に配置されており、コイル18とバランスマス17とは非接触の状態となるように構成されている。また、巻き回されたコイル18の中心軸は、バランスマス17の振動方向とほぼ一致するように構成されている。
【0036】
バランスマス17は、少なくともその一部に永久磁石19を含んでいる。すなわち、たとえば金属製のバランスマスの一部に切り欠きを設け、この切り欠いた部分にフェライト磁石を埋設した構成や、バランスマス全体をフェライト磁石で形成した構成などが考えられる。なお、本実施の形態におけるスターリング冷凍機1においては、前者を採用している。
【0037】
バランスマス17に巻装されたコイル18は、配線20を介して電力被供給部であり送風手段である電動送風機21に電気的に接続されている。電動送風機21は、スターリング冷凍機1が動作することによって発熱する部位である放熱部8およびベッセル10に対向して配置されている。この電動送風機21は、電力が供給されることによってその攪拌翼が回転し、図中矢印B方向に向かって空気を送風することにより、放熱部8やベッセル10を冷却するものである。
【0038】
以上の構成において、コイル18およびバランスマス17は、電磁誘導を利用した発電機構を構成する。すなわち、スターリング冷凍機1を動作させることによって生じるケーシングの振動をバランスマス17が吸収し、バランスマス17が図中矢印A方向に振動することにより、バランスマス17に取付けられた永久磁石19も往復動するため、コイル18の閉回路内に磁界の変化が発生し、コイル18に誘導起電力が生じて電流が誘起される。コイル18内に誘起された電流は配線20を経由して電動送風機21に入力され、電動送風機21が駆動される。この結果、電動送風機21によって放熱部8やベッセル10が強制的に空冷されるようになる。
【0039】
(作用・効果)
このように構成することにより、スターリング冷凍機1を動作させることによって生じる装置本体の振動がバランスマス17によって吸収され、騒音の発生が抑制されるとともに、バランスマス17にて消費されていた振動エネルギーの一部を、バランスマス17に取り付けられた永久磁石19と、バランスマス17の周囲に巻装されたコイル18とによって、電気エネルギーに変換されるようになる。得られた電気エネルギーは、電動送風機21の駆動に用いられるため、効率よくバランスマス17の振動エネルギーを回収し、有効に活用することが可能になる。また、別途、電動送風機21の制御を動作する制御回路を設ければ、スターリング冷凍機1の運転状態に合わせて放熱部8の冷却効率を調整することが可能になる。
【0040】
(実施例)
以下において、上述の実施の形態に基づいて実際にスターリング冷凍機を製作した場合に得られるであろう誘導起電力の大きさをシミュレーションした結果について説明する。
【0041】
本実施例では、出力200Wのスターリング冷凍機にバネ定数が約1.86×105[N/m]のコイルバネを用いて約700[g]のバランスマスを接続し、定常運転動作時のピストンの片振幅が7.0[mm]となるように運転条件を設定した場合を考える。バランスマスに取付ける永久磁石としては、残留磁束密度が0.0215[T]のフェライト磁石(直径85.0[mm]、厚さ5.0[mm])を用い、バランスマスの周囲に巻装するコイルとしては、バランスマスの円周方向に1巻きした内径100.0[mm]のコイルを用いる。なお、ピストンの片振幅が7.0[mm]となるように設定した場合のバランスマスの片振幅は3.5[mm]であり、その振動の周波数は、68.8[Hz]である。
【0042】
得られる誘導起電力Φは、1巻きされたコイルの閉回路の面積Sと磁束密度Bとにより、次式(1)で表わされる。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、コイルがフェライト磁石から感じる磁場Bは、時間tの関数として、永久磁石の残留磁束密度mを用いて次式(2)によって表わされる。
【0045】
【数2】
【0046】
ただし、コイルは、マススプリングの先端より距離a[m]だけ離れて配置されているものとする。
【0047】
式(2)を時間tで微分することにより、次式(3)が得られる。
【0048】
【数3】
【0049】
ここで、関数yを以下の式(4)の如く定義し、a=0.02[m]とした場合の関数プロットを図2(a)に示す。また、同様に関数yを定義し、a=0.05[m]とした場合の関数プロットを図2(b)に示す。
【0050】
【数4】
【0051】
コイルの閉回路の面積Sはπ×(0.05)2=7.85×10−3[m2]であり、永久磁石の残留磁束密度mは0.0215[T]であり、各速度ωは2π×68.8=432.3[rad/s]であるため、mωSは0.073となる。このため、これらの数値と上記関数プロットにより、誘導起電力Φは、a=0.02[m]の場合に約58[V]となり、a=0.05[m]の場合に約3.5[V]となることが試算される。
【0052】
これらの誘導起電力は、電動送風機等の電力被供給部を駆動するのに十分な駆動電力であり、本構成とすることにより、振動エネルギーを効率よく回収して有効に利用することが可能であることが分かる。
【0053】
なお、コイルの巻き数を増加させればそれに比例して誘導起電力が増加することになるが、回収可能なエネルギーは理論上バランスマスの仕事量よりも大きくなることはない。ここで、上記条件にてスターリング冷凍機を動作させた場合のバランスマスの仕事量は約1.14Wであり、これより大きな電気エネルギーを得ることはできない。
【0054】
(他の構成例)
上述の実施の形態においては、バランスマスおよびコイルによって回収されたエネルギーを、スターリング冷凍機が動作することによって生ずる発熱部位を冷却するための電動送風機の駆動に用いた場合を例示して説明を行なったが、回収されたエネルギーの活用方法としては他にも様々なものが考えられる。たとえば、スターリング冷凍機を冷凍冷蔵庫に適用した場合には、回収したエネルギーが供給される電力被供給部として、運転状態を表示する表示装置(液晶ディスプレイや発光ダイオードなど)や、スターリング冷凍機を制御するCPU(Central Processing Unit)冷却用の冷却装置(たとえばペルチェ素子等)、庫内灯、庫内ファン、除湿ヒータ、結露防止用ドアヒータなど、様々のものに適用することが可能である。
【0055】
また、上述の実施の形態においては、フリーピストン型スターリング冷凍機を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象は特にこのフリーピストン型スターリング冷凍機に限定されるものではない。さらには、上述の実施の形態においては、圧縮機と膨張機とが一体化されたスターリング冷凍機を例示して説明を行なったが、これに限定されるものでもない。本発明は、ピストンまたはディスプレーサが往復動することによって生じる振動を吸収するためのバランスマスが搭載されたスターリング機関であれば、どのような構成のものにも適用可能である。
【0056】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、バランスマスの振動エネルギーを効率よく回収することが可能で、かつ有効に活用することが可能なスターリング機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるスターリング冷凍機の構成を示す模式断面図である。
【図2】実施例におけるシミュレーションの関数プロット図である。
【符号の説明】
1 スターリング冷凍機、2 シリンダ、3 ピストン、4 ディスプレーサ、5 再生器、6 圧縮室、7 膨張室、8 放熱部、9 吸熱部、10 ベッセル、11 リニアモータ、12,13,16 板バネ、14 ディスプレーサロッド、15 背圧室、17 バランスマス、18 コイル、19 永久磁石、20 配線、21 電動送風機。
【発明の属する技術分野】
本発明は、スターリング機関に関し、特に、フリーピストン型スターリング冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の見地から、スターリング機関が注目を浴びている。スターリング機関は、外部の熱源を利用して可逆サイクルであるスターリングサイクルを実現する外燃機関であり、ガソリンなどの引火性や着火性に優れた燃料を必要とする内燃機関に比べ、低公害であるという長所を備えた熱機関である。このスターリング機関を応用した装置として、スターリング冷凍機が知られている。
【0003】
一般に、冷凍機等に使用される冷凍サイクルとしては、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが採用される場合が多い。この蒸気圧縮式の冷凍サイクルは、作動媒体としての冷媒にフロン(クロロフルオロカーボン)を用い、フロンの凝縮および蒸発を利用して所望の冷却性能を得るものである。
【0004】
しかし、冷媒として使用されるフロンは非常に化学的安定性が高く、大気中に放出された場合には、成層圏にまで達してオゾン層を破壊するとの指摘がなされている。このため、近年においては、特定のフロンの使用および生産が規制されており、フロンを用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクルに代わる次世代の冷凍サイクルとして、逆スターリングサイクルが鋭意研究されている。
【0005】
逆スターリングサイクルにおいては、作動媒体としてヘリウムガスや水素ガス、窒素ガスなどを採用することができるため、地球環境に悪影響を及ぼす心配がない。また、逆スターリングサイクルは、小型の装置構成で極低温を発生させることが可能であり、各種冷凍機器等への応用が可能である。これらの理由から、逆スターリングサイクルを用いたスターリング冷凍機の実用化が期待されている。
【0006】
スターリング冷凍機は、作動媒体である冷媒ガスをピストンを用いて圧縮・膨張する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒ガスをディスプレーサを用いて圧縮・膨張させる膨張機とを組合わせたものである。従来、これら圧縮機と膨張機とは別個に構成されたものが一般的であったが、近年においてはピストンとディスプレーサを同軸上に配置することにより、シリンダを共有化したものが一般化しつつある。さらには、ディスプレーサを直接駆動することなく、ピストンの往復動によって生じる冷媒ガスの圧力変化を受けてディスプレーサがピストンと共振するように構成された、いわゆるフリーピストン型のスターリング冷凍機が一般化しつつある。
【0007】
ところで、このスターリング冷凍機においては、ピストンおよびディスプレーサがシリンダ内を往復動することにより、その反作用によって冷凍機本体に振動が生じる。冷凍機本体に生じた振動は、騒音の原因となるとともに装置の信頼性を低下させる要因ともなる。このため、本体にコイルバネを介してバランスマス(質量部材)を取付けることにより、冷凍機本体に生じる振動の吸収が図られたスターリング冷凍機が知られている(たとえば、特許文献1または特許文献2など)。
【0008】
この特許文献1および特許文献2に開示のスターリング冷凍機では、ピストンおよびディスプレーサが往復動することによって生じる冷凍機本体の振動の基本共振周波数に相応してバランスマスが共振するように、コイルバネのバネ定数やバランスマスの質量が調整される。これにより、バランスマスが共振することによって冷凍機本体に生じる振動が吸収されるため、騒音の発生が抑制されるとともに装置の信頼性も大幅に向上するようになる。なお、冷凍機本体とバランスマスを接続する手段としては、コイルバネの他にも放射状または渦巻状の板バネ等が利用可能である。
【0009】
上記構成のスターリング冷凍機において生ずるバランスマスの振動エネルギーに着目し、この振動エネルギーの有効活用を図ったものとして、特開2000−193337号公報(特許文献3)に開示のスターリング冷凍機がある。この特許文献3に開示のスターリング冷凍機は、バランスマスに攪拌翼を取付けるか、またはバランスマス自体に攪拌翼部を形成することにより、バランスマスが振動することによって生ずる振動エネルギーを利用して攪拌翼または攪拌翼部を回転させ、送風手段として用いるように構成したものである。そして、この送風手段を用いて、吸熱部(コールドヘッド)に生ずる冷熱や放熱部(ウォームヘッド)に生ずる熱を冷凍機本体外部に伝熱させるものである。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−353361号公報
【0011】
【特許文献2】
実開平5−47760号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2000−193337号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献3に開示の技術は、回収されることなく消費されてしまうバランスマスの振動エネルギーを有効に活用しようとする点で非常に意義深いものである。しかしながら、実際にバランスマス自体を、吸熱部に生ずる冷熱や放熱部に生ずる熱の伝熱手段として活用するためには、種々の技術的困難性が伴うことが予想される。たとえば、バランスマス自体を送風手段として利用した場合には、十分な送風能力が得られず、効率よく冷熱や熱を冷凍機外部に伝熱させることが非常に困難になると思われる。また、バランスマスによる送風能力の出力が一意に決定されてしまうため、スターリング冷凍機の運転状態に応じた伝熱効率の調整も困難になると思われる。
【0014】
以上においては、スターリング機関の応用例としてスターリング冷凍機に着目して説明を行なってきたが、外燃機関としての一般的なスターリング機関においても同様のことが言える。すなわち、スターリング機関においても振動を抑制するためにバランスマスを装置本体に装着する場合があり、このバランスマスの振動エネルギーを効率よく活用することができれば、省エネルギーの観点から非常に好ましいものとなる。
【0015】
したがって、本発明は、バランスマスの振動エネルギーを効率よく回収することが可能で、かつ有効に活用することが可能なスターリング機関を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に基づくスターリング機関は、ケーシングと、シリンダと、ピストンと、ディスプレーサと、バランスマスと、コイルとを備える。ケーシング内にはシリンダが配置されており、シリンダ内にはピストンおよびディスプレーサが配置されている。ピストンおよびディスプレーサは、このシリンダ内を往復動する。バランスマスは、ケーシングに弾性部材を介して取付けられる。このバランスマスは、ピストンおよびディスプレーサが往復動することによって生じるケーシングの振動を吸収する手段である。また、バランスマスは、少なくともその一部に磁石を含んでいる。コイルは、バランスマスの周囲に巻装される。
【0017】
このように構成することにより、バランスマスの振動エネルギーを電気エネルギーとして効率よく回収することが可能になる。また、回収した電気エネルギーを電力被供給部に供給することにより、有効に活用することが可能になる。
【0018】
上記本発明に基づくスターリング機関にあっては、コイルに生じる誘導起電力により駆動する送風手段をさらに備え、スターリング機関が動作することによって発熱する部位をこの送風手段にて冷却する構成とすることが好ましい。
【0019】
このように、回収したエネルギーをスターリング機関が発熱する部位を空冷する送風手段の駆動に利用することにより、エネルギーの有効活用が可能になり、省エネルギーの観点からも優れたスターリング機関となる。
【0020】
上記本発明に基づくスターリング冷凍機関にあっては、上記バランスマスが、ピストンおよびディスプレーサの往復動方向の延長線上に位置していることが好ましい。
【0021】
このように構成することにより、振動エネルギーを無駄なく最大の効率で電気エネルギーに変換することが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、スターリング機関の応用例であるスターリング冷凍機を例示して説明を行なう。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスターリング冷凍機の構成を示す模式断面図である。
【0024】
(スターリング冷凍機の構成)
まず、図1を参照して本発明の実施の形態1におけるスターリング冷凍機の構成について説明する。図1に示すように、スターリング冷凍機1は、ヘリウムガスや水素ガス、窒素ガスなどの作動ガスが作動媒体として内部に充填されたケーシングを有している。ここで言うスターリング冷凍機のケーシングは、作動ガスを内部に密閉するすべての部材を含むものであり、後述する圧縮室や膨張室、背圧室、さらにはこれらを連通する流路からなる作動空間を覆う部材を言う。すなわち、図1に示すスターリング冷凍機1のケーシングは、ベッセル10のみならず、放熱部(ウォームヘッド)8や吸熱部(コールドヘッド)9などを含むものである。なお、ケーシングの内部には、作動ガスが充填されたシリンダ2が配置されている。
【0025】
シリンダ2内には、ピストン3およびディスプレーサ4が同軸上に嵌装されている。これらピストン3およびディスプレーサ4によってシリンダ2内の作動空間が圧縮室6と膨張室7とに区画されている。圧縮室6は、放熱部(ウォームヘッド)8によって覆われている。一方、膨張室7は、吸熱部(コールドヘッド)9によって覆われている。なお、ピストン3から見てディスプレーサ4とは反対側の空間には、ベッセル10によって囲まれた背圧室15が位置している。
【0026】
ピストン3は、板バネ12によってケーシングに固定され、駆動手段であるリニアモータ11によって駆動されて、シリンダ2内を周期的に往復動する。また、ディスプレーサ4は、ピストン3が往復動することによって生ずるガス圧の変化を受けてシリンダ2内を往復動するが、ディスプレーサロッド14および板バネ13を介してケーシングに固定されているため、周期的に往復動することになる。このピストン3の往復動とディスプレーサ4の往復動は、定常運転時において一定の位相差をもって同じ周期で行なわれる。
【0027】
圧縮室6と膨張室7との間には再生器5が配設されており、この再生器5を介してこれら両室が連通することにより、スターリング冷凍機1内に閉回路が構成されている。この閉回路内に封入された作動ガスが、ピストン3およびディスプレーサ4の動作に合わせて流動することにより、逆スターリングサイクルが実現する。
【0028】
(スターリング冷凍機の動作)
次に、上記構成のスターリング冷凍機の動作について説明する。まず、リニアモータ11を作動させ、ピストン3を駆動する。リニアモータ11によって駆動されたピストン3は、ディスプレーサ4に接近し、圧縮室6内の作動ガスを圧縮する。これにより、圧縮室6内の作動ガス温度は上昇するが、放熱部8によってこの圧縮室6内に発生した熱が外部へと放出されるため、圧縮室6内の作動ガス温度はほぼ等温に維持される。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルにおける等温圧縮過程に相当する。
【0029】
次に、ピストン3によって圧縮室6内において圧縮された作動ガスは、その圧力により再生器5内に流入し、さらに膨張室7へと送られる。その際、作動ガスの持つ熱が再生器5に蓄熱される。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルの等容冷却過程に相当する。
【0030】
つづいて、膨張室7内に流入した高圧の作動ガスは、ディスプレーサ4がピストン3側へ下がることにより、膨張する。これにより、膨張室7内の作動ガス温度は下降するが、吸熱部9によって外部の熱が膨張室7内へと伝熱されるため、膨張室7内はほぼ等温に保たれる。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルの等温膨張過程に相当する。
【0031】
やがて、ディスプレーサ4がピストン3から遠ざかる方向に上昇し始めることにより、膨張室7内の作動ガスは再生器5を通過して、再び圧縮室6側へと戻る。その際、再生器5に蓄熱されていた熱が作動ガスに与えられるため、作動ガスは昇温する。すなわち、本過程は、逆スターリングサイクルの等容加熱過程に相当する。
【0032】
この一連の過程(等温圧縮過程−等容冷却過程−等温膨張過程−等容加熱過程)が繰り返されることにより、逆スターリングサイクルが構成される。この結果、吸熱部9は徐々に低温になり、極低温を有するに至る。
【0033】
(振動吸収機構および発電機構)
図1に示すように、本実施の形態におけるスターリング冷凍機1は、ケーシングに弾性部材としての板バネ16を介して接続されたバランスマス17を備えている。このバランスマス17および板バネ16は、ピストン3およびディスプレーサ4が往復動することによって生じるケーシングの振動を吸収する振動吸収機構であり、ピストン3およびディスプレーサ4が往復動することによって生じるケーシングの振動の基本共振周波数に相応してバランスマス17が共振するように、板バネ16のバネ定数やバランスマス17の質量が調整されている。これにより、スターリング冷凍機1本体に生じる振動が大幅に抑制されるようになる。なお、板バネ16としては、放射状や渦巻状の板バネを利用することが好ましいが、板バネ16に代えてコイルバネを利用することも可能である。
【0034】
図1に示すように、バランスマス17は、スターリング冷凍機1のケーシング外部においてピストン3およびディスプレーサ4の往復動方向の延長線上に位置している。このように構成することにより、バランスマス17の振動方向とピストン3およびディスプレーサ4の往復動方向とが合致するように構成することが可能になるため、最も効果的にスターリング冷凍機1本体に生ずる振動を抑制することが可能になる。
【0035】
図1に示すように、バランスマス17の周囲にはコイル18が巻装されている。換言すれば、バランスマス17は、バランスマス17の直径よりも大きい内径となるようにバランスマス17の円周方向に巻き回されたコイル18の内側の中空部内に配置されており、コイル18とバランスマス17とは非接触の状態となるように構成されている。また、巻き回されたコイル18の中心軸は、バランスマス17の振動方向とほぼ一致するように構成されている。
【0036】
バランスマス17は、少なくともその一部に永久磁石19を含んでいる。すなわち、たとえば金属製のバランスマスの一部に切り欠きを設け、この切り欠いた部分にフェライト磁石を埋設した構成や、バランスマス全体をフェライト磁石で形成した構成などが考えられる。なお、本実施の形態におけるスターリング冷凍機1においては、前者を採用している。
【0037】
バランスマス17に巻装されたコイル18は、配線20を介して電力被供給部であり送風手段である電動送風機21に電気的に接続されている。電動送風機21は、スターリング冷凍機1が動作することによって発熱する部位である放熱部8およびベッセル10に対向して配置されている。この電動送風機21は、電力が供給されることによってその攪拌翼が回転し、図中矢印B方向に向かって空気を送風することにより、放熱部8やベッセル10を冷却するものである。
【0038】
以上の構成において、コイル18およびバランスマス17は、電磁誘導を利用した発電機構を構成する。すなわち、スターリング冷凍機1を動作させることによって生じるケーシングの振動をバランスマス17が吸収し、バランスマス17が図中矢印A方向に振動することにより、バランスマス17に取付けられた永久磁石19も往復動するため、コイル18の閉回路内に磁界の変化が発生し、コイル18に誘導起電力が生じて電流が誘起される。コイル18内に誘起された電流は配線20を経由して電動送風機21に入力され、電動送風機21が駆動される。この結果、電動送風機21によって放熱部8やベッセル10が強制的に空冷されるようになる。
【0039】
(作用・効果)
このように構成することにより、スターリング冷凍機1を動作させることによって生じる装置本体の振動がバランスマス17によって吸収され、騒音の発生が抑制されるとともに、バランスマス17にて消費されていた振動エネルギーの一部を、バランスマス17に取り付けられた永久磁石19と、バランスマス17の周囲に巻装されたコイル18とによって、電気エネルギーに変換されるようになる。得られた電気エネルギーは、電動送風機21の駆動に用いられるため、効率よくバランスマス17の振動エネルギーを回収し、有効に活用することが可能になる。また、別途、電動送風機21の制御を動作する制御回路を設ければ、スターリング冷凍機1の運転状態に合わせて放熱部8の冷却効率を調整することが可能になる。
【0040】
(実施例)
以下において、上述の実施の形態に基づいて実際にスターリング冷凍機を製作した場合に得られるであろう誘導起電力の大きさをシミュレーションした結果について説明する。
【0041】
本実施例では、出力200Wのスターリング冷凍機にバネ定数が約1.86×105[N/m]のコイルバネを用いて約700[g]のバランスマスを接続し、定常運転動作時のピストンの片振幅が7.0[mm]となるように運転条件を設定した場合を考える。バランスマスに取付ける永久磁石としては、残留磁束密度が0.0215[T]のフェライト磁石(直径85.0[mm]、厚さ5.0[mm])を用い、バランスマスの周囲に巻装するコイルとしては、バランスマスの円周方向に1巻きした内径100.0[mm]のコイルを用いる。なお、ピストンの片振幅が7.0[mm]となるように設定した場合のバランスマスの片振幅は3.5[mm]であり、その振動の周波数は、68.8[Hz]である。
【0042】
得られる誘導起電力Φは、1巻きされたコイルの閉回路の面積Sと磁束密度Bとにより、次式(1)で表わされる。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、コイルがフェライト磁石から感じる磁場Bは、時間tの関数として、永久磁石の残留磁束密度mを用いて次式(2)によって表わされる。
【0045】
【数2】
【0046】
ただし、コイルは、マススプリングの先端より距離a[m]だけ離れて配置されているものとする。
【0047】
式(2)を時間tで微分することにより、次式(3)が得られる。
【0048】
【数3】
【0049】
ここで、関数yを以下の式(4)の如く定義し、a=0.02[m]とした場合の関数プロットを図2(a)に示す。また、同様に関数yを定義し、a=0.05[m]とした場合の関数プロットを図2(b)に示す。
【0050】
【数4】
【0051】
コイルの閉回路の面積Sはπ×(0.05)2=7.85×10−3[m2]であり、永久磁石の残留磁束密度mは0.0215[T]であり、各速度ωは2π×68.8=432.3[rad/s]であるため、mωSは0.073となる。このため、これらの数値と上記関数プロットにより、誘導起電力Φは、a=0.02[m]の場合に約58[V]となり、a=0.05[m]の場合に約3.5[V]となることが試算される。
【0052】
これらの誘導起電力は、電動送風機等の電力被供給部を駆動するのに十分な駆動電力であり、本構成とすることにより、振動エネルギーを効率よく回収して有効に利用することが可能であることが分かる。
【0053】
なお、コイルの巻き数を増加させればそれに比例して誘導起電力が増加することになるが、回収可能なエネルギーは理論上バランスマスの仕事量よりも大きくなることはない。ここで、上記条件にてスターリング冷凍機を動作させた場合のバランスマスの仕事量は約1.14Wであり、これより大きな電気エネルギーを得ることはできない。
【0054】
(他の構成例)
上述の実施の形態においては、バランスマスおよびコイルによって回収されたエネルギーを、スターリング冷凍機が動作することによって生ずる発熱部位を冷却するための電動送風機の駆動に用いた場合を例示して説明を行なったが、回収されたエネルギーの活用方法としては他にも様々なものが考えられる。たとえば、スターリング冷凍機を冷凍冷蔵庫に適用した場合には、回収したエネルギーが供給される電力被供給部として、運転状態を表示する表示装置(液晶ディスプレイや発光ダイオードなど)や、スターリング冷凍機を制御するCPU(Central Processing Unit)冷却用の冷却装置(たとえばペルチェ素子等)、庫内灯、庫内ファン、除湿ヒータ、結露防止用ドアヒータなど、様々のものに適用することが可能である。
【0055】
また、上述の実施の形態においては、フリーピストン型スターリング冷凍機を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象は特にこのフリーピストン型スターリング冷凍機に限定されるものではない。さらには、上述の実施の形態においては、圧縮機と膨張機とが一体化されたスターリング冷凍機を例示して説明を行なったが、これに限定されるものでもない。本発明は、ピストンまたはディスプレーサが往復動することによって生じる振動を吸収するためのバランスマスが搭載されたスターリング機関であれば、どのような構成のものにも適用可能である。
【0056】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、バランスマスの振動エネルギーを効率よく回収することが可能で、かつ有効に活用することが可能なスターリング機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるスターリング冷凍機の構成を示す模式断面図である。
【図2】実施例におけるシミュレーションの関数プロット図である。
【符号の説明】
1 スターリング冷凍機、2 シリンダ、3 ピストン、4 ディスプレーサ、5 再生器、6 圧縮室、7 膨張室、8 放熱部、9 吸熱部、10 ベッセル、11 リニアモータ、12,13,16 板バネ、14 ディスプレーサロッド、15 背圧室、17 バランスマス、18 コイル、19 永久磁石、20 配線、21 電動送風機。
Claims (3)
- ケーシングと、
前記ケーシング内部に配置されたシリンダと、
前記シリンダ内を往復動するピストンと、
前記ピストンと位相差をもって前記シリンダ内を往復動するディスプレーサと、
前記ケーシングに弾性部材を介して取付けられ、前記ピストンおよび前記ディスプレーサが往復動することによって生じる前記ケーシングの振動を吸収し、少なくとも一部に磁石を含むバランスマスと、
前記バランスマスの周囲に巻装されたコイルと、を備え、
前記磁石が前記コイル内を往復動することによって前記コイルに生じる誘導起電力を出力するようにして成る、スターリング機関。 - 前記誘導起電力により駆動する送風手段をさらに備え、
当該スターリング機関が動作することによって発熱する部位を前記送風手段にて冷却して成る、請求項1に記載のスターリング機関。 - 前記バランスマスは、前記ピストンおよび前記ディスプレーサの往復動方向の延長線上に位置する、請求項1または2に記載のスターリング機関。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003201001A JP2005042571A (ja) | 2003-07-24 | 2003-07-24 | スターリング機関 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN106523183A (zh) * | 2017-01-03 | 2017-03-22 | 宁波华斯特林电机制造有限公司 | 一种风冷斯特林电机冷却装置 |
DE102016115164A1 (de) | 2016-08-16 | 2018-02-22 | Werner Schilling | Heißgasantrieb |
CN109546801A (zh) * | 2018-12-06 | 2019-03-29 | 中国电子科技集团公司第十六研究所 | 一种制冷机振动能量收集装置 |
CN112885494A (zh) * | 2021-01-26 | 2021-06-01 | 哈尔滨工程大学 | 一种基于星型斯特林发动机的反应堆电源系统 |
-
2003
- 2003-07-24 JP JP2003201001A patent/JP2005042571A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
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