JP2005041902A - 回収ゴムの高分子量化方法、高分子量化ゴムおよびそれを含むゴム組成物 - Google Patents
回収ゴムの高分子量化方法、高分子量化ゴムおよびそれを含むゴム組成物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】回収ゴムから、ゴム弾性を有し、かつ、ゴム原料としてそのまま再利用できる高分子量化ゴムを得る容易な回収ゴムの高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、高分子量化ゴムおよび加硫ゴム組成物の提供。
【解決手段】ゴム成形品から回収した、重量平均分子量10, 000〜100,000の回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で、加熱処理して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法;該方法により得られる高分子量化ゴム;およびそれを加硫して得られる加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物。
【選択図】図1
【解決手段】ゴム成形品から回収した、重量平均分子量10, 000〜100,000の回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で、加熱処理して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法;該方法により得られる高分子量化ゴム;およびそれを加硫して得られる加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収ゴムの高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、高分子量化ゴムおよびそれを含むゴム組成物に関し、詳しくは、タイヤ、ゴムチューブなどのゴム廃材、ゴム屑などの加硫または未加硫のゴム成形品から回収した回収ゴムを再利用可能なゴムとするための高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法)、高分子量化された再利用可能な高分子量化ゴム、および、それを含有する加硫ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄物処理、特に産業廃棄物からの原材料回収・再利用は重要な社会的課題である。排出量の多いタイヤなどのゴム廃材についても、原材料回収・再利用が望まれるが、加硫安定化されたゴム廃材から原料として再利用可能な品質のゴム、カーボンブラックなどを回収することは容易ではない。
【0003】
例えば、ゴム廃材から原材料を回収しようとする際には、高温分解(通常500℃以上)または高圧分解(通常2MPa以上)が一般的である。このような高温分解または加圧分解に用いるための触媒、溶媒なども種々提案されている(例えば、特許文献1〜5など)。このような高温分解または高圧分解では、ゴム成分はガス状の低分子炭化水素またはオイルとして回収することができるが、ゴム原料としてそのまま利用し得るような高分子量のゴムとして回収することは困難である。
例えば、上記のような熱分解反応により加硫ゴム製品からゴム資材類を回収した場合には、加硫ゴム中のゴム成分は、ほぼ完全に低分子量の炭化水素(C4 −ベンゼン、C4 −シクロヘキサンなど)に転換されてしまう。このような回収炭化水素は、主に軽質燃料として再利用されるに留まり、ある程度の高分子量が要求されるゴム組成物のゴム原料として再利用することはできない。
【0004】
このためタイヤ廃材などの原形利用を除く再利用では、その一割程度が再生ゴム・ゴム粉として利用されている(非特許文献1参照。)以外は、そのほとんどが燃料として直接焼却されているのが実情である。
【0005】
上記ゴムの再生方法としては、架橋ゴム粉砕物に反応剤とオイルを添加し圧力容器中で加熱処理するパン法が知られている。また、再生ゴムのゴム物性を改善するものとして、二軸押出機を用いて、天然ゴム/SBRなどの複合ゴムあるいはEPDMなどの加硫ゴム廃材に、加熱下で仕上げロールでは与えることができないような大きなせん断力をかけゴム種を微細に分散させることにより、大きなゴムドメインを残存させないようにして、ゴム分散性を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献6、7参照。)。このような脱硫・再生ゴムはカーボンブラックを含み、通常、二軸押出機から出たストランド状物をそのまま再加硫してプレス成形する。しかし、該技術においても、やはり、ゴム成分はガス状の低分子炭化水素またはオイルとして回収され、ゴム原料としてそのまま利用し得るような高分子量のゴムとして回収することは困難である。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第3,704,108号明細書
【特許文献2】
米国特許第3,996,022号明細書
【特許文献3】
欧州特許第71,789号明細書
【特許文献4】
特開昭60−40193号公報
【特許文献5】
特開平7−310076号公報
【特許文献6】
特開平10−310662号公報
【特許文献7】
特開平9−227724号公報
【非特許文献1】
タイヤリサイクルハンドブック、リサイクル状況編、(社)日本自動車タイヤ協会、日本タイヤリサイクル協会、2000年8月、p.13−14
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況のもと、特にタイヤ、ゴム屑などのゴム廃材などをケミカルリサイクルにより有効再利用すべくなされたものであって、一旦成形された加硫、未加硫ゴムから、ゴム原料としてそのまま利用可能な高分子量化ゴムを得るための回収ゴムを高分子量化する方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、この方法により高分子量化されゴム弾性を有し再加硫可能な高分子量化ゴム、および、それを含有する加硫ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0008】
より具体的には、重量平均分子量が小さく液状ゴムとして回収された回収ゴムから、ゴム弾性を有し、かつ、ゴム原料としてそのまま再利用できる高分子量化ゴムを得る容易な回収ゴムの高分子量化方法を提供することを目的とする。
また、該高分子量化ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
さらに、ゴム弾性を有し再加硫できる高分子量化ゴム、ならびに、該高分子量化ゴムを加硫して得られ、優れた物性をもち種々の用途に再利用できる加硫ゴムおよびそれを含む加硫ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
タイヤなどのゴム成形品を従来熱分解に適用されている温度よりも低温(例えば300℃程度)で加熱してもその形状は実質的に変化せず、一見して分解を確認することはできない。また加硫成形されたバルクゴムは、有機溶媒に浸漬しても膨潤する程度か実質的に変化しないことは周知である。上記のように加硫ゴムに熱とせん断とをかけゴムを再生させる方法は提案されているが、該再生ゴムから高純度ゴム材料あるいはさらにカーボンブラックを別途に回収する方法は知られていない。本発明者らは、ゴム廃材または屑ゴムなどのゴム成形品をゴムおよびカーボンブラックのいずれも再利用可能な状態で回収(ケミカルリサイクル)することを目的として検討したところ、低温で熱を加えた後有機溶媒を用いて抽出することにより、予想外にも高純度かつ中分子量(重量平均分子量100, 000程度以下)のゴムおよび高品質のカーボンブラックを回収しうることを見出し、これを先に提案した(特開2002−265664号公報)。また、本発明者らは、上記溶媒抽出の前処理としてせん断処理を組合わせれば、熱とせん断があいまって、分子切断が効率的に起こり高収率化も達成することができることを見出し、これを先に提案した(特開2003−41045号公報)。
【0010】
そして、本発明者らは、さらに検討を続け、上記方法などにより回収したゴムを加熱処理すると、該回収ゴムが高分子量化することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明者らは、上記知見に基づいて加熱処理方法をさらに具体的に検討したところ、回収ゴムの加熱処理において、回収ゴムの分解反応と高分子量化反応とのバランスを保つ条件を選定すると、該加熱処理のみで回収ゴムを高分子量化できることを見出した。また、本発明者らは、上記加熱処理により、従来のゴム回収法では得られなかった、生ゴム様のゴム弾性を有する固体状のゴムとして高分子量化ゴムが得られることも見出した。さらに、本発明者らは、該高分子量化ゴムに通常用いられる配合剤などを配合し加硫すると加硫ゴム(加硫ゴム組成物)が得られること、および、該加硫ゴム(加硫ゴム組成物)はゴム成形品と同様の優れた物性を有し、従来再利用されていた燃料、オイルなどではなくゴム原料として種々の用途に再利用できることも見出した。
本発明者らは、上記知見に基づいて本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[14]を提供する。
なお、本発明において、「分子量」とは、特に断らない限り「重量平均分子量」を意味する。
【0013】
[1]ゴム成形品から回収した、重量平均分子量が10, 000〜100,000の回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法。
【0014】
[2]前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理した後に、(II)ゲル化処理する上記[1]に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
通常、ゴムがゲル化するとその後は該ゴムを加硫してゴム組成物などとして利用することはできないが、本発明の加熱処理(I)の後に得られたゴムをゲル化処理する(ゲル化させる)と、より高分子量化したゴムが得られ、さらに加硫も可能でゴム組成物などとして利用できる。
【0015】
[3]前記回収ゴムを、(III)加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤と配合した後、前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理する上記[1]または[2]に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
上記配合剤を用いることにより、より高分子量化したゴムを得ることができる。
【0016】
[4]前記回収ゴムが、(IV)該回収ゴムを貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別して得られる該回収ゴムの高分子量成分である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の回収ゴムの高分子量化方法。
本発明において、「貧有機溶媒」とは、回収ゴムの一部分子量成分を不溶とするため、その不溶分子量成分を析出させるに至る有機溶媒をいい、具体的には、例えば、トルエン−メタノール混合溶媒、ベンゼン−メタノール混合溶媒等が挙げられる。
本発明者らは、本発明の加熱処理(I)において、回収ゴムの低分子量成分(例えば、重量平均分子量500〜1,000程度のゴム成分)が、回収ゴムの高分子量化を妨げる大きな要因の1つであることを見出した。したがって、該低分子量成分をろ別(分別)して本発明の加熱処理(I)を行うと、回収ゴムの高分子量化が速やかに進行しより高分子量化したゴムが得られ、ゴム弾性を発現する。
【0017】
[5]前記(IV)および前記(I)の少なくとも一方を2回以上行う上記[4]に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
本発明の回収ゴムの高分子量化方法(以下、「本発明の方法」という。)の好ましい態様の1つとして、
[4’]ゴム成形品から回収した、重量平均分子量30,000〜100,000の回収ゴムを、
(IV)貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別し、
(I) 不活性ガス雰囲気下、加熱処理した後に、
(II)ゲル化処理
して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法が挙げられる。
【0018】
[6]ゴム成形品から回収した、重量平均分子量が10, 000〜100,000の回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して高分子量化された回収ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)。
【0019】
[7]前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理した後に、(II)ゲル化処理する上記[6]に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0020】
[8]前記回収ゴムを、(III)加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤と配合した後、前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理する上記[6]または[7]に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0021】
[9]前記回収ゴムが、(IV)該回収ゴムを、貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別して得られる該回収ゴムの高分子量成分である上記[6]〜[8]のいずれかに記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0022】
[10]前記(IV)および前記(I)の少なくとも一方を2回以上行う上記[9]に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0023】
[11]上記[6]〜[10]のいずれかに記載の高分子量化ゴムの製造方法により得られる高分子量化ゴム。
【0024】
本発明の方法および本発明の製造方法において、前記加熱処理(I)は、加熱温度が150〜290℃で加熱時間が10〜120分の加熱条件で行うのが好ましい。
ゴム成形品から回収した回収ゴムの重量平均分子量は、30,000〜100,000が好ましく、50,000〜100,000が特に好ましい。
前記回収ゴムは、イソプレン原料からなるゴム成形品から回収したゴムであるのが好ましく、前記高分子量化ゴムがイソプレンゴム(高分子量化イソプレンゴム)であるのが好ましい。
【0025】
本発明の方法および本発明の製造方法により、従来のゴム回収法では得られなかった、生ゴム様のゴム弾性を有する固体状のゴムとして、または再加硫可能なゴムとして、高分子量化ゴムを得ることができる。
【0026】
[12]上記[11]に記載の高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴム。
[13]上記[11]に記載の高分子量化ゴムに、加硫剤、あるいは、加硫剤および加硫促進剤または加硫助剤を配合して加硫することにより得られる加硫ゴム。
[14]上記[12]または[13]に記載の加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物。
上記[11](本発明の方法および本発明の製造方法)により得られる高分子量化ゴムを、通常の条件で加硫しても、ゴム弾性を損わず、加硫された高分子量化ゴムはゴム成形品と同様の優れた物性を有し、従来再利用されていた燃料、オイルなどではなくゴム原料として種々の用途に再利用できる。
【0027】
本発明において、「高分子量化」とは、下記方法または他の公知の方法などにより回収された回収ゴムに、上記本発明の方法を施して得られるゴム(本発明の製造方法により得られるゴム)が、該回収ゴムの分子量より大きくなることをいう。
【0028】
本発明で用いる回収ゴムは、いかなる回収法により得られるゴムであってもよいが、以下の低温熱分解またはせん断熱分解により得られる回収ゴムであるのが、回収される回収ゴムの重量平均分子量がより大きいため好ましい。
【0029】
低温熱分解法は、具体的には、以下の方法である。
(V)ゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、
(VI)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより、液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法。
【0030】
上記(V)において、イソプレンゴム原料からなるゴム成形品を処理する場合には、熱処理温度は220〜300℃(常圧下温度)であることが好ましい。
上記(VI)において、有機溶媒抽出は前記(V)で熱処理されたゴム成形品を0〜40℃のトルエン中に浸漬することにより行うことができる。
【0031】
せん断熱分解法は、具体的には、以下の方法である。
(IX)ゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、
(VI)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより、液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法。
【0032】
上記(IX)において、せん断処理を220〜400℃の加熱下で行えば、高純度ゴムの回収率を高めることができる。該加熱温度(常圧下温度)は、イソプレンゴム原料からなるゴム成形品を処理する場合には、220〜300℃であることが好ましい。
上記(VI)において、有機溶媒抽出は前記(IX)で熱処理されたゴム成形品を0〜40℃のトルエン中に浸漬することにより行うことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明は、回収ゴムの高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、該方法により高分子量化され、ゴム弾性を有し再加硫可能な高分子量化ゴム、該高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴム、およびそれを含有する加硫ゴム組成物を提供する。
以下、本発明の方法を図1および図2に模式的に示すプロセスフローを参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明の好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図であり、図2は、本発明のより好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図である。
【0034】
[本発明の方法]
本発明の方法は、後述するゴムの回収方法により回収された回収ゴムを、
(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法である。
ここで、(I)加熱処理の後に、(II)ゲル化処理するのが好ましく(図1)、また、(I)加熱処理の前に、(IV)該ゴムを、貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別するのが好ましい (図2)。さらに、該(IV)および(I)の少なくとも一方を2回以上行うのが好ましい(図2破線ルートaまたはb)。
【0035】
<回収ゴム>
本発明で用いる回収ゴムの回収方法(以下、「材料回収方法」という)は、ゴム成分を液状炭化水素として回収できる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
高純度でより高分子量の液状ゴムが回収できる点で、低温で熱分解する方法(本明細書において、「低温熱分解法」という。)および熱とせん断力とを同時に加える方法 (本明細書において、「せん断熱分解法」という。)が好ましい。低温熱分解法およびせん断熱分解法は後述する。
【0036】
これらの材料回収方法により回収される回収ゴムは、重量平均分子量が10,000〜100,000であるのが好ましく、(I)加熱処理による高分子量化ゴムの重量平均分子量が大きくなる点、後述する(IV)ろ別処理を省ける場合がある点で、その重量平均分子量が30,000〜100,000であるのがより好ましく、50,000〜100,000であるのが特に好ましい。本発明においては、回収ゴムの重量平均分子量が大きければ、得られる高分子量化ゴムの重量平均分子量も大きくなる傾向がある。
後述する低温熱分解法およびせん断熱分解法によれば、上記重量平均分子量を有する回収ゴムが容易に得られる。回収ゴムの重量平均分子量が上記範囲内に含まれない場合は、後述する(IV)低分子量成分の分別など、通常行われる方法により、回収ゴムの重量平均分子量を調整すればよい。
【0037】
回収ゴムの分子量分布は、該ゴムの重量平均分子量が上記10,000〜100,000の範囲内であれば特に限定されない。なお、分子量分布が広い場合には、後述する(IV)低分子量成分の分別など、通常行われる方法により分子量分布を調整してもよい。
【0038】
これらの材料回収方法により回収される回収ゴムは、ゴム成形品に含まれる各種配合剤などを含有していてもよい。該配合剤は好ましくは後述するものであり、配合剤の含有量なども特に限定されない。
【0039】
以下、本発明の方法の各処理について、説明する。
<(I)不活性ガス雰囲気下における加熱処理>
加熱処理は、回収ゴムの熱分解反応を抑制して高分子量化反応を促進し、高純度の高分子量化ゴムが得られる点で、150〜290℃の温度範囲で行われるのが好ましい。加熱温度は、加熱原料(回収ゴム)、処理雰囲気などによっても異なるが、上記温度範囲内で、回収ゴムの分解反応と高分子量化反応とのバランス、加熱時間との関係、所望の重量平均分子量(以下、「Mw」と略記する場合がある。)、収率などにより適宜選択される。
回収ゴムのゴム成分がイソプレンゴムであるときは、回収ゴムの分解反応を抑制でき、より高分子量化したゴムが得られる点で180〜280℃が好ましく、220〜250℃が特に好ましい。
なお、上記加熱温度は常圧下での温度である。加熱処理を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
【0040】
加熱処理は上記温度範囲で10〜120分行われれば、回収ゴムの熱分解反応を抑制し高分子量化反応を促進でき、高純度で高分子量化ゴムを回収することができる。加熱時間は、加熱原料(回収ゴム)、加熱温度、処理雰囲気などによっても異なるが、上記範囲内で、回収ゴムの分解反応と高分子量化反応とのバランス、加熱温度との関係、所望の重量平均分子量、収率などにより適宜選択される。加熱時間は、回収ゴムの分解反応を抑制でき、より高分子量化したゴムが得られる点で、10〜60分であるのが好ましい。
【0041】
加熱処理による回収ゴムの高分子量化は、加熱時間よりも加熱温度の影響をより受けやすい傾向がある。具体的には、上記温度範囲の低温側(例えば、230℃以下)では、比較的長く加熱処理しても回収ゴムの分解反応が抑えられ、高温側(例えば、250℃以上)では、次第に回収ゴムの分解反応が進行する。特に300℃以上では、回収ゴムの分解反応が著しく促進され高分子量化反応は抑えられる傾向にある。
【0042】
したがって、本発明の加熱処理条件を上記範囲(加熱温度150〜290℃、加熱時間10〜120分)とすれば、回収ゴムの熱分解反応と高分子量化反応とのバランスがよく、高分子量化ゴムが得られる。より高分子量の高分子量化ゴムが得られる点で、加熱処理条件は、加熱温度180〜280℃で加熱時間10〜60分であるのがより好ましく、加熱温度220〜250℃で加熱時間10〜60分であるのが特に好ましい。
【0043】
本発明の方法では、空気中で加熱処理を行うと、回収ゴムが酸化され、または分解され、所望の高分子量化ゴムが得られない場合があるため、加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行われるのが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどが挙げられる。加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行われればよく、例えば、不活性ガス密閉条件、不活性ガス気流下などの条件を適宜選択して行われる。
【0044】
加熱処理に用いられる装置は、特に限定されないが、例えば、熱プレス機、加熱混合機、管状炉などが挙げられる。
加熱処理は、上記加熱装置において、強いせん断力でなければ攪拌下行うこともできる。強いせん断をかけると回収ゴムの熱分解反応が促進され、高分子量化ゴムを回収できない場合がある。
【0045】
本発明においては、該加熱処理を複数回行うこともでき、所望のMwを有する高分子量化ゴムが得られるまで何回行ってもよい。例えば、図2において、破線ルートbに従い複数回加熱処理してもよい。
該加熱処理において、後述する、(II)ゲル化 (図1)、(III)加硫剤等の配合剤添加、(IV)低分子量成分の分離などの処理を行うことにより(図2)、より確実に所望の高分子量化ゴムを得ることができ、またさらに高分子量化した高分子量化ゴムを得ることができる。
【0046】
回収ゴムに加熱処理を行うことにより、ゴム弾性を有する高分子量化ゴムが得られる。
該ゴムは、加熱処理後加熱装置から取り出され、塊状またはストランド状などとして得られる。取り出された高分子量化ゴムは常法に従い乾燥処理、精製処理等されてもよい。
【0047】
<(III)配合剤添加>
上記加熱処理(I)において、加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤を配合すると、より高分子量化した高分子量化ゴムが得られるため好ましい。
本発明に用いる配合剤としては、特に限定されず、一般的に用いられるものを使用できる。これらの配合剤の含量なども、特に限定されない。
【0048】
<(II)ゲル化処理>
本発明の方法では、上記加熱処理(I)により高分子量化ゴムを得ることができるが、上記加熱処理(I)により得られる高分子量化ゴムを、さらに(II)ゲル化処理するのが好ましい態様の1つである。
通常、ゴムがゲル化すると3次元架橋が密になるため、ゴム弾性に劣りゴム組成物などとして利用できない。しかし、本発明者らは、本発明の(I)加熱処理により得られる高分子量化ゴムがゲル化しても、通常の加硫条件で容易に加硫し加硫ゴムを与えること、さらに、該高分子量化ゴムが有するゴム弾性を失わず組成物としたときの物性に優れ、ゴム組成物として好適に再利用できることを見出した。すなわち、上記加熱処理(I)の後にゲル化させると、より高分子量化したゴムが得られ、また該ゴムは加硫できる上、さらにゴム組成物としたときの物性にも優れる。
【0049】
本発明の(II)ゲル化処理は、加熱処理により得られる高分子量化ゴムを有機溶媒中で、または、大気圧下で放置することにより行われるが、有機溶媒中で行われるのが好ましい。
有機溶媒は、加熱処理により得られる高分子量化ゴムを十分に浸漬しうる程度の量を用いることが好ましく、通常は1kgの該高分子量化ゴムに対して有機溶媒8〜10リットル程度である。
【0050】
ゲル化処理に用いられる有機溶媒としては、飽和または不飽和の炭化水素が好ましく挙げられ、該炭化水素は芳香族、脂肪族、脂環族など特に限定されない。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)、シクロヘキサンなどが挙げられる。またこれらを複数組合わせてもよい。
これらのうちでも、ヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましい。
【0051】
ゲル化処理後、有機溶媒中でゲル化処理された高分子量化ゴムと該有機溶媒とを、遠心分離、ろ過、デカンテーションなどの汎用の分離手段により分離する。
ゲル化処理のその他の条件、例えば、温度、時間、攪拌の有無などは、特に限定されず、適宜任意の条件を選択することができる。
なお、ゲル化処理された高分子量化ゴムは常法に従い乾燥処理、精製処理等されてもよい。
【0052】
<(IV)低分子量成分のろ別>
(IV)低分子量成分(低重量平均分子量成分)のろ別は、回収ゴムの低分子量成分を分別し、高分子量成分を高分子量化してより高分子量のゴムを得るために行われる。
本発明者らは、本発明の方法において、回収ゴムに含まれる低分子量成分が、加熱処理における高分子量化反応を妨げることおよび加熱処理で得られる高分子量化ゴムのゴム弾性の低下に大きく影響することを見出した。つまり、回収ゴムに含まれる高分子量成分(高重量平均分子量成分)は加熱されると高分子量化しゴム弾性が発現するが、低分子量成分に加硫剤などを加えて加熱しても高分子量化(加硫)せずゴム弾性も発現しないことを見出した。
したがって、回収ゴムの高分子量化反応を促進させ、優れたゴム弾性を発現させるためには、回収ゴムの低分子量成分をろ別するのが好ましい。
該ろ別は、適宜必要に応じて行われるが、高分子量化反応が促進されるため、(I)加熱処理の前に行われるのが好ましい (図2)。
なお、本発明の方法において、上記低分子量成分とは、例えば、重量平均分子量500〜1,000程度のゴム成分をいう。
【0053】
(IV)ろ別処理に用いられる貧有機溶媒は、回収ゴムの一部分子量成分を不溶とするため、その不溶分子量成分を析出させるに至る有機溶媒をいう。
具体的には、上記(II)ゲル化処理で用いる、飽和または不飽和の炭化水素を使用することができ、また、これらの炭化水素にアルコール類などの極性溶媒を混合して使用することもできる。
ろ別処理に用いられる貧有機溶媒は、炭化水素系溶媒としてヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましく、また、極性溶媒としてメタノール、エタノールなどのアルコール類などが好ましく、混合溶媒として、例えば、トルエン−メタノール混合溶媒、ベンゼン−メタノール混合溶媒等が好ましい。貧有機溶媒として混合溶媒を用いる場合は、その混合比は、特に限定されず、低分子量成分がろ別できる混合比とすればよい。
上記貧有機溶媒の使用量は、回収ゴムの重量平均分子量、分子量分布、低分子量成分の含量などにより、一概には決定できないが、低分子量成分がろ別できる程度の量を用いるのが好ましい。
【0054】
高分子量成分と上記貧有機溶媒とのろ別は、遠心分離、ろ過、デカンテーションなどの汎用の分離手段により行われる。
該ろ別処理は、複数回行われれてもよいが、上記した重量平均分子量を満たす回収ゴムを用いる場合は1回で十分である。
【0055】
本発明の方法において、より確実に所望の高分子量化ゴムが得られ、さらに高分子量化したゴムが得られる点で、該ろ別処理および該加熱処理のいずれか一方を複数回行うのが好ましい。
その他の条件、方法、例えば、温度、時間、攪拌の有無などは、特に限定されず、適宜選択して行うことができる。
【0056】
本発明の方法においては、低分子量成分のろ別(IV)は、上記加熱処理(I)により得られる高分子量化ゴムの低分子量成分を分別するために行われてもよい。
【0057】
以上説明したように、本発明の方法により、回収ゴムを高分子量化することができる。
【0058】
[本発明の製造方法]
本発明は、また、後述するゴムの回収方法により回収された回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して高分子量化された回収ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法を提供する。
ここで、(I)加熱処理の後に、(II)ゲル化処理するのが好ましく(図1)、また、(I)加熱処理の前に、(IV)該ゴムを、貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別するのが好ましい (図2)。さらに、該(IV)および(I)の少なくとも一方を2回以上行うのが好ましい(図2破線ルートaまたはb)。
【0059】
本発明の製造方法は、上記した本発明の方法と基本的に同様であるので詳細は省略する。
本発明の方法および本発明の製造方法により高分子量化された高分子量化ゴムは、(I)加熱処理後、または、(II)ゲル化処理後に、各処理に応じた常法にしたがって分離される。
分離された高分子量化ゴムは常法に従い乾燥処理、精製処理等されてもよい。
【0060】
[材料回収方法]
本発明で用いる回収ゴムの好ましい材料回収方法について説明する。
<ゴム成形品>
本発明で回収処理に供されるゴム成形品は、ゴムを一旦成形したものであればよく、その形状は何ら限定されず、ゴム以外の成分も特に限定されない。またゴム成形品は、加硫ゴムに限らず、加硫されていなくても、部分的に加硫されたゴム、加硫ゴムと未加硫ゴムの混合物などであってもよく、さらには他の構成材料との複合体であってもよい。
【0061】
このようなゴム成形品を形成する原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などを挙げることができる。好ましくは天然ゴム(NR)またはイソプレンゴム(IR)であり、より好ましくは天然ゴム(NR)である。
【0062】
ゴム成形品は、充填剤を含有していてもよく、充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどの充填剤として公知のものを特に限定することなく挙げることができる。
【0063】
またゴム成形品は、例えば、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ニトロソ化合物とジイソシアナート混合物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、トリエチレンテトラミン、メチレンジアニリン、ジフェニルグアニジン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エチレンジアミンカルバメート、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンカルバメート、ステアリン酸、オレイン酸などの加硫系(加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤など)により加硫されたものであってもよい。
【0064】
ゴム成形品は、ゴム、加硫系、充填剤の各成分を2種以上含むものであってもよく、これらに加えて、公知の樹脂、他のエラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤などを含有していてもよい。
また複合体構成材料としては、スチールコードなどの鋼材、ポリエステルカーカスコードなどの繊維などが挙げられる。
ゴム成形品に含まれる各成分の量も特に限定されないが、例えば、ゴム成形品がタイヤである場合には、通常、上記ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを通常50質量部程度、他の配合剤は合計で10質量部程度含有してもよい。
【0065】
上記のようなゴム成形品としては、具体的に天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどのゴム製品、および精錬屑、加工屑などの成形屑ゴムなどを挙げることができる。これらのゴム成形品は、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることが望ましい。
例えば、未使用のゴム廃材としては、タイヤなどのゴム製品を製造する際に、混練り、成形工程などで排出される早期加硫、加硫むら(焼け、スコーチ)を起こしたゴム破材、加硫工程で排出されるいわゆるだれなどを起こした不良ゴム製品、加硫部分と未加硫部分とが混在したもの、全体的に架橋の程度が低いもの、鋼材、有機繊維などの他部材が付着したものなどの様々な形態の成形屑を挙げることができる。
これらのうちでも、タイヤあるいはその成形屑ゴムは、天然ゴムおよびイソプレンを高純度で回収しうるゴム廃材であり、好ましい。
ゴム成形品は、熱効率および抽出効率を向上させるため切断などにより細分化し供することが好ましい。
【0066】
材料回収方法は、低温熱分解法またはせん断熱分解法であるのが、高純度でより高分子量の液状ポリマーが回収できる点で、また、上記重量平均分子量10,000〜100,000を有する回収ゴムが容易に得られる点で好ましい。
以下、低温熱分解法およびせん断熱分解法について説明する。
【0067】
<低温熱分解法>
低温熱分解法は、(V)ゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、
(VI)有機溶媒抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより、液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0068】
<(V)熱処理>
本発明では、上記ゴム成形品に(V)220〜400℃での熱処理を加えるが、この熱処理は、実質的に加熱前の外形を保持しうるように行われる。
なお本明細書において、実質的に加熱前の外形を保持するとは、外見上の分解変形を生じないことを意味し、例えば、立方体形状のゴム成形品は熱処理しても略立方体形状を保持している。これに対し、固形物が熱分解あるいは溶剤への溶解などの液状化またはガス化により、少なくともその一部が元の形状を保持しないように崩れることを成形品の分解と称する。
【0069】
熱処理装置としては、オーブン、管状炉などを用いることができる。
加熱は、空気中、窒素ガス中などの不活性雰囲気いずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記温度範囲での加熱を続けても外観上、分解を確認することは困難であるが、空気中で加熱した場合には、わずかではあるが回収ゴムに酸化がみられる。なお、この酸化はIRスペクトルで確認できるが、実用上はほとんど支障はない。また空気中で熱処理を行った場合には、不活性雰囲気中で熱処理した場合に比べ、後述する(VII)ゴム回収工程で、重量平均分子量の低いゴムが回収される傾向があり、また複数の分子量分布を有する傾向がある。必要に応じて例えば、高分子量成分を分離することができる。
【0070】
加熱条件は、加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気などによっても異なるが、220〜400℃の温度範囲で、回収ゴムの所望重量平均分子量、収率などにより適宜選択される。回収されるゴムの重量平均分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、高温側では高収率であるが重量平均分子量は低下する傾向がある。
【0071】
上記加熱温度は常圧下での温度である。熱処理は、通常、常圧下で行われるが、熱処理を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
加熱時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。長時間加熱してもゴム回収率は顕著に高くならず、ゴム重量平均分子量は低下する傾向がある。したがって加熱時間は最長でも40分程度、好ましくは30分程度までである。
【0072】
熱処理されるゴム成形品がイソプレンゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜300℃であることが好ましく、この範囲の温度であれば、熱処理後に、通常、重量平均分子量15000以上の高分子量のゴムを抽出回収することができる。イソプレンゴム成形品の加熱温度は好ましくは220〜280℃、より好ましくは220〜250℃である。この好ましい温度であれば、最終的に空気中でも重量平均分子量30,000以上、好ましくは50,000以上、不活性ガス雰囲気であればより高い重量平均分子量のゴムを容易に回収することができる。
【0073】
イソプレンゴム成形品についてより具体的には、例えば、管状炉(耐熱性チューブ)を用いて、2mm角の加硫ゴム(標準的なタイヤ)を7〜15kg/m3 の充填量で窒素気流中で15分間加熱した場合、250℃で15分加熱した例ではMw84,000程度のイソプレンを30%以上の回収率で、280℃では重量平均分子量76,000程度のイソプレンを70%以上の回収率で得ることができる。
なお、この回収率は、回収処理原料として既知組成のゴム成形品(加硫)を供した時、該ゴム成形品中のゴム量に対する回収率として求められる値である。
【0074】
<(VI)有機溶媒抽出工程>
上記で熱処理されたゴム成形品は、次いで溶媒抽出(溶解)分が分離される。具体的には、上記(V)で熱処理されたゴム成形品を、通常、有機溶媒に浸漬し、溶解分を抽出する。この際、有機溶媒を加熱しても構わないが、作業コスト面から、室温(通常0〜40℃程度)の有機溶媒中に浸漬することが好ましい。浸漬時間は、10時間以上が好ましく、通常一夜である。
有機溶媒は固形のゴム成形品を十分浸漬しうる程度の量で用いることが好ましく、通常は1kgのゴム成形品を8〜10リットル程度の有機溶媒に浸漬する。
【0075】
ここで有機溶媒としては、飽和または不飽和の炭化水素を用いることができ、該炭化水素は芳香族、脂肪族、脂環族などに特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)、シクロヘキサンなどを用いることができる。これらを組合わせて用いてもよい。
これらのうちでも、ヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましく用いられる。
次いで溶媒抽出分と、抽出残分(不溶分)とを、遠心分離、ろ過などの汎用の分離手段により分離する。
【0076】
<(VII)ゴム回収工程>
低温熱分解法では、上記で分離された溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する。有機溶媒は例えば、蒸留により除去することができる。
上記によりゴムを回収することができる。熱処理工程(V)の加熱条件にもよるが、例えば、イソプレンゴム成形品からは、220〜300℃での熱処理により重量平均分子量15,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは70,000以上の高分子量の液状ゴムを回収することができる。必要であれば特に90,000以上の高分子量のゴムを抽出回収することもできる。
本発明の回収ゴムは、原料ゴム成形物中に含まれていた硫黄などの加硫剤を含有していても支障ない。回収ゴムは、さらにメタノールあるいは水などで精製処理することもできる。
【0077】
上記で回収された回収ゴムは、原料として再利用可能であるが、より高分子量でゴム弾性を有するゴムとして再利用するため、上記の高分子量化方法に供される。
【0078】
<せん断熱分解法>
せん断熱分解は、(IX)ゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、
(VI)有機溶媒抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0079】
<(IX)せん断処理>
せん断熱分解法では、上記ゴム成形品からゴム材料および/またはカーボンブラックを回収するに際して、まずゴム成形品にせん断を加える。せん断処理は、常温下、せん断により発生する熱のみで行うこともでき、具体的には、摩耗試験機などを用いてせん断をかければ、最終的に熱変性の少ない高純度ゴムを回収することができる。
なお、ここで、高純度ゴムとは、IRスペクトルでミクロ構造的に酸化(C=Oピーク)が認められないか、みられても極わずかであることをいう。
【0080】
せん断処理は加熱下に行うこともでき、高分子量ゴムを高収率で回収することができる。この際、220〜400℃に加熱して行えば、熱変性を抑制し、高純度ゴムを回収することができる。加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気などによっても異なるが、上記温度範囲で、回収ゴムの所望重量平均分子量、収率などにより適宜選択される。上記予備加熱温度は常圧下での温度である。予備加熱を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
【0081】
このような予備処理を行うための装置は特に限定されないが、例えば、一軸または二軸押出機、ひきうす機、磨耗試験機、バフ機などを用いれば加熱とせん断とを同時にかけることができる。
上記せん断処理後にゴム成形品は、粉末状、塊状あるいはストランド状などで得られる。
【0082】
加熱は、空気中、窒素ガス中などの不活性雰囲気いずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記温度範囲での加熱を続けても外観上、分解を確認することは困難であるが、空気中で加熱した場合には、わずかではあるが回収ゴムに酸化がみられる。なお、この酸化はIRスペクトルで確認できるが、実用上はほとんど支障はない。また空気中で予備加熱を行った場合には、不活性雰囲気中で加熱した場合に比べ、後工程(VII)では、重量平均分子量の低いゴムが回収される傾向があり、また複数の分子量分布を有する傾向がある。必要に応じて例えば、高分子量成分を分離することができる。
【0083】
加熱条件は、回収されるゴムの重量平均分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、高温側では高収率であるが重量平均分子量は低下する傾向がある。
加熱時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。長時間加熱してもゴム回収率は顕著に高くならず、ゴム分子量は低下する傾向がある。したがって加熱時間は最長でも40分程度、好ましくは30分程度までである。
【0084】
予備処理されるゴム成形品がイソプレンゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜300℃であることが好ましく、この範囲の温度であれば、予備加熱後に、通常、重量平均分子量15,000以上の高分子量のゴムを抽出回収することができる。
イソプレンゴム成形品の予備加熱温度は好ましくは250〜280℃であり、この好ましい温度であれば、最終的に空気中でもMw30,000以上、好ましくは50,000以上、不活性ガス雰囲気であればより高い重量平均分子量のゴムを容易に回収することができる。
【0085】
上記のようにせん断と加熱とを同時に行う予備処理によれば、熱処理時にせん断を加えずに予備処理する場合に加え、抽出予備処理に必要な加熱温度を低下させることができる。
【0086】
<(VI)有機溶媒抽出工程>
上記、低温熱分解法における有機溶媒抽出工程と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
<(VII)ゴム回収工程>
せん断熱分解法では、上記で分離された溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する。有機溶媒は例えば、蒸留により除去することができる。
上記により高分子量のゴムを回収することができる。予備処理工程(IX)の加熱条件にもよるが、例えば、イソプレンゴム成形品からは、220〜300℃での予備処理により重量平均分子量15,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは70,000以上の高分子量の液状ゴムを回収することができる。必要であれば特に90,000以上の高分子量のゴムを抽出回収することもできる。
本発明の回収ゴムは、原料ゴム成形物中に含まれていた硫黄などの加硫剤を含有していても支障ない。回収ゴムは、さらにメタノールあるいは水などで精製処理することもできる。
【0088】
[高分子量化ゴム]
本発明の方法および本発明の製造方法により高分子量化ゴムが得られる。
回収ゴムの重量平均分子量、分子量分布、各処理条件などにもよるが、例えば、回収イソプレンゴムからは、(I)加熱処理のみで重量平均分子量80,000以上の高分子量化ゴムが得られ、さらに(II)ゲル化処理すると重量平均分子量180,000以上の高分子量化ゴムが得られる。必要であれば、高分子量成分を分別することにより百万以上の高分子量ゴムを得ることも可能である。
本発明の高分子量化ゴムは、ゴム成形品中に含まれていたイオウなどの加硫剤を含有していても支障ない。高分子量化ゴムは、さらにメタノールあるいは水などで精製処理することもできる。
【0089】
このようにして得られた高分子量化ゴムは、固形でありゴム弾性を有する。
従来回収されるゴムは、重量平均分子量が小さく液状であるが、本発明の方法および本発明の製造方法により得られる高分子量化ゴムは、加熱処理におけるゴムの分解反応が抑えられ高分子量化反応が促進されるため、分子量が大きくなりゴム弾性を発現する。
また、本発明の高分子量化ゴムは、加硫することもでき、加硫してもゴム弾性を失わない。したがって、該高分子量化ゴムを加硫して加硫ゴムとしたときにも優れた物性を有し、該加硫ゴムは通常のゴム製品用原料として再び利用することができ、さらに、高分子量であるためゴム製品の原料としても有用である。
【0090】
このようにして得られた高分子量化ゴムは、原料として再利用可能であり、本発明では、後述するように該高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムを含む加硫ゴム組成物を提供することもできる。加硫ゴム(それを含むゴム組成物)では、該ゴム(組成物)中のゴム成分の少なくとも一部が上記高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムであればよく、高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムとバージンゴムとの混合比は目的などに応じて適宜に選択することができ、また全部が高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムであってもよい。
なお、本発明において、ゴムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で定法に従い測定することができる(重量平均分子量はポリスチレン換算分子量である)。
【0091】
[加硫ゴム組成物]
次に、本発明の方法および本発明の製造方法により得られる高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物について説明する。
上記本発明の方法および本発明の製造方法により得られる高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムは、一般に用いられる配合剤などを含有するゴム組成物とすることができる。
該ゴム組成物は、ゴム、加硫系(加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤など)、充填剤の各成分を2種以上含むものであってもよく、これらに加えて、公知の樹脂、他のエラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤などを含有していてもよい。
また、これらの配合剤などの含量は、配合剤の種類、組成物の用途などに応じて、適宜調整することができる。
【0092】
ゴム組成物の製造は、特に限定されず、例えば、一軸または二軸押出機、ロール、ニーダ―、押出し機、万能攪拌機などにより混合し製造することができる。
加硫方法も、特に限定されず、例えば、プレス加硫などにより行うことができる。
【0093】
本発明の高分子量化ゴムは、その分子量が大きく加硫でき、さらに、加硫しても該高分子量化ゴムのゴム弾性を失わないため、該高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物は優れた物性を有する。したがって、該ゴム組成物は通常のゴム製品として種々の用途に再利用することができる。
【0094】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[回収ゴムの高分子量化]
<参考例1:せん断熱分解によるゴムの回収>
組成既知のタイヤベント(成形縁)を用いて、天然ゴム(NR)およびカーボンブラック材料回収を行った。
(1)タイヤベントを、二軸押出機(スクリュー径44mm、L/D=50)に投入し混練した。混練条件(フィード量、シリンダー内温度、混練時間等)を第1表に示す。
(2)上記二軸押出機から押出されたストランドを冷却後5mm角のサイコロ状に切断した。その30gをトルエン270mL中に浸漬し、24時間室温でゆっくり撹拌した後遠心分離し、トルエン抽出分と抽出残物とを分離した。
(3)トルエン抽出分は、エバポレータでトルエンを除去し、ゴムを回収した。
(4)抽出残物は、窒素雰囲気中、600℃で30分熱処理して、カーボンブラックを回収した。
【0095】
上記(3)のゴム回収結果を第1表に示す。回収されたゴム(回収ゴム)をGPC(ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は74,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.1であった。
また回収ゴムのIRスペクトルを測定したところイソプレンゴムであることを確認した。
【0096】
【表1】
【0097】
<参考例2:低温熱分解によるゴムの回収>
NR(天然ゴム)100質量部、カーボンブラック(ASTMコードN118)50質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸3質量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)1質量部、加硫促進剤(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)1.2質量部およびイオウ1.8質量部からなるゴム配合物を148℃で10分加熱して得られた加硫ゴムを用いて、ゴムの回収を行った。
【0098】
(1)上記で得られた加硫ゴムを2mm角に切断してサイコロ状ゴム成形品とし、これを耐熱性チューブ1cm3 あたり7〜15mg充填した。
石英ガラス管状炉を用いて、窒素雰囲気下、280℃の温度で15分間、予備加熱した。
(2)上記で加熱されたサイコロ状ゴム成形品30gをトルエン270mL中に浸漬し、24時間室温でゆっくり撹拌した後遠心分離し、トルエン抽出分と抽出残物とを分離した。
(3)トルエン抽出分は、エバポレータでトルエンを除去し、ゴムを回収した。
(4)抽出残物は、窒素雰囲気中、600℃で30分熱処理して、カーボンブラックを回収した。
【0099】
上記(3)で回収されたゴムをGPCで測定したところ、重量平均分子量は76,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.9であった。
【0100】
<参考例3:低温熱分解による回収ゴム>
加硫ゴムに組成既知のタイヤトレッドを用い、分解温度を250℃に変更した以外は、参考例2と同様に行い、重量平均分子量が56,000、分子量分布が2.4のゴムを回収した。
【0101】
<実施例1および比較例1(実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3)>
参考例1で得た回収ゴム(Mw:74,000、Mw/Mn:3.1)を、窒素気流下、第2表に示す加熱処理条件で加熱処理(I)した。加熱処理して得られた高分子量化ゴムのMw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第2表に示す。
なお、加熱装置は、石英ガラス管状炉を用い攪拌はしなかった。以下、加熱処理(I)について同様である。
【0102】
【表2】
【0103】
図3は、上記加熱処理(I)の加熱処理温度と、該処理して得られる高分子量化ゴムの分子量との関係を示すグラフである。
第2表および図3に示すとおり、本発明の方法および製造方法により回収ゴムの高分子量化が達成できた。
また、加熱処理において、回収ゴムが高分子量化される温度範囲と、回収ゴムが分解される温度範囲があることが分かる。高分子量化ゴムを得るには、ゴムの分解反応を抑え高分子量化反応を促進する、本発明の温度範囲で行うことが重要である。
【0104】
<実施例1および比較例1(実施例1−7〜1−12および比較例1−4)>
参考例1で得た回収ゴム(Mw:74,000、Mw/Mn:3.1)を、窒素気流下、第3表に示す条件で、加熱処理(I)した。加熱処理して得られた高分子量化ゴムのMw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第3表に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
図4は、上記加熱処理(I)の加熱処理時間と、該処理して得られる高分子量化ゴムの分子量との関係を示すグラフである。
第3表および図4に示すとおり、本発明の方法および製造方法により回収ゴムの高分子量化が達成できた。
また、加熱処理において、回収ゴムの高分子量化反応がまず起こり高分子量化ゴムが生成するが、加熱を続けると次第に分解反応が起こりゴムの重量平均分子量が小さくなる傾向がある。加熱時間にも好ましい範囲があることが分かる。高温、例えば、300℃では、ごく短時間後には高分子量化反応が起こり一部高分子量化ゴムが生成するが、15分後には分解反応が優勢で重量平均分子量が減少したと考えられる。
【0107】
<実施例1(高分子量ゴムの確認)>
本発明の方法により、回収ゴムが高分子量化されていることを確認するため、(I)加熱処理して得た高分子量化ゴムの重量平均分子量を確認した。
実施例1−4で得た高分子量化ゴム1−4(Mw:134,000、Mw/Mn:5.7)5gを、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/60(質量比))100mLで、低分子量成分をろ別し高分子量成分1および低分子量成分1を得た。
さらに、この高分子量成分1(4g)を、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/40(質量比))80mLで、低分子量成分をろ別し高分子量成分2および低分子量成分2を得た。図5は、実施例1(高分子量ゴムの確認)における、上記プロセスフローを模式的に示した。
参考例1で得た回収ゴム、高分子量化ゴム1−4、高分子量成分1、2および低分子量成分1、2の収率、MwおよびMw/MnをGPCにより測定した。その結果を第4表に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
図6に参考例1で得た回収ゴム、高分子量化ゴム1−4および高分子量成分1、2のGPCチャートを示した。
図6(a)は参考例1で得た回収ゴムのGPCチャートであり、図6(b)は高分子量化ゴム1−4のGPCチャートであり、図6(c)は高分子量成分1のGPCチャートであり、図6(d)は高分子量成分2のGPCチャートであり、図6(e)は高分子量成分3(ゲル化が一部進み溶解した部分のみ)のGPCチャートである。図6 (a) 〜(d)を比較すると、 (a) 〜(d)にしたがって、GPCの保持時間が20分以下の部分(高分子量成分)の増加が見られるため、加熱処理により、回収ゴムが高分子量化されていることが確認できた。
また、図6(a)〜(d)のGPCチャートで保持時間の最も短い部分の重量平均分子量は、順に、(a)1,557,000、(b)2,651,000、(c)2,835,000、(d)2,994,000であり、本発明の方法により高分子量化されたゴムには、分子量が2〜3百万のオーダーのゴム分子も含まれており、優れたゴム弾性が発現すると考えられる。
なお、トルエン−メタノール混合溶媒におけるろ別操作では、ゴムが高分子量化しないことを確認している。
【0110】
上記操作で得られた高分子量成分2(3g)を、さらにトルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/30(質量比))60mLで低分子量成分3をろ別して高分子量成分3(ゲル化した成分を少量含む)を得た。次に、高分子量成分3(2g)を、トルエン40mLに浸漬し、1ヶ月放置(時折攪拌)することにより、ゲル化させ、トルエンを除去して高分子量化ゴム1−5を得た。高分子量成分3からの収率は67%であり、該ゴム1−5はTHFに溶解しなかったので、GPCの測定はできなかった。
しかし、高分子量成分2、3、高分子量化ゴム1−5の順に、弾性が増加していることが、指で引き伸ばしたときの感触で確認できた。
なお、高分子量成分3および低分子量成分3の収率、MwおよびMw/MnをGPCにより測定した。その結果を第4表に示す。高分子量成分3(ゲル化が一部進み溶解した部分のみ)のGPCチャートを、図6(e)に示す。
【0111】
<実施例2および比較例2(実施例2−1〜2−3および比較例2−1)>
参考例1で得られた回収ゴム(Mw:74,000、Mw/Mn:3.1)5gを、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/30(質量比))100mLで、(IV)低分子量成分をろ別して、高分子量成分と低分子量成分を得た。得られた高分子量成分を、窒素気流下、第5表に示す条件で、加熱処理した。加熱処理後の高分子量化ゴムのMw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第5表に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
図7は、実施例2(実施例2−1〜2−3および比較例2−1)における加熱処理温度と得られる高分子量化ゴムの分子量との関係を、実施例1(実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3)における加熱処理温度と得られる高分子量化ゴムの分子量との関係と比較して示したグラフである。
加熱処理の適した温度範囲は、(IV)ろ別処理の有無に係わらず、ほぼ一致した。また、低温部(約230℃以下)ではろ別処理した方が得られる高分子量化ゴムの重量平均分子量が大きくなった。
【0114】
<実施例3>
参考例2で得た回収ゴム(Mw:76,000、Mw/Mn:3.9)5gを、窒素気流下、加熱温度230℃、加熱時間15分の条件で加熱処理した。収率は92%であり、加熱処理後の高分子量化ゴムのMwは122,000であり、Mw/Mnは4.1であった。
【0115】
<実施例4および比較例4(実施例4−1〜4−3および比較例4−1)>
参考例3で得た回収ゴム(Mw:56,000、Mw/Mn:2.4)5gを、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/60(質量比))100mLで、(IV)低分子量成分をろ別して、高分子量成分1と低分子量成分1を得た。さらに、高分子量成分1の一部(4g)を、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/40(質量比))80mLで、低分子量成分をろ別して、高分子量成分2と低分子量成分2を得た。
回収ゴム、高分子量成分1、2および低分子量成分1、2の収率、Mw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第6表に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
回収ゴム(実施例4−1)、高分子量成分1(実施例4−2)、2(実施例4−3)および低分子量成分2(比較例4−1)を、窒素気流下、加熱温度230℃、加熱時間15分で加熱処理して高分子量化した。得られた各ゴムのMw、Mw/Mnを測定した。その結果を第7表に示す。
【0118】
【表7】
【0119】
第7表に示したように、本発明の方法および製造方法により回収ゴムの高分子量化が達成できた。
また、回収ゴムをそのまま加熱処理して高分子量化する(実施例4−1)よりも、回収ゴムを(IV)ろ別処理した後加熱処理する方が、高分子量化反応が著しく促進されることが分かる(実施例4−2、3)。また、ろ別処理した後に加熱処理すると、得られる高分子量化ゴムが弾性に優れることも分かった。
なお、弾性の評価は、指で引き伸ばしたときの感触に基づいて、弾性が発現し弾性率が大きいものを「○」、弾性が発現しているものを「△」、弾性がまったく発現してないものを「×」とした。
【0120】
<比較例5 (比較例5−1および5−2)>
以下の合成イソプレンゴムを用いて、窒素気流下、加熱温度230℃、加熱時間15分の条件で加熱処理を行った。
1)比較例5−1;合成イソプレンゴム(クラレ社製、LIR−50)
重量平均分子量 65,000 分子量分布 1.2
2)比較例5−2;合成イソプレンゴム(クラレ社製、LIR−30)
重量平均分子量 32,000 分子量分布 1.2
その結果、いずれのゴムにおいてもイソプレンゴムの高分子量化は確認できず、分子量および分子量分布は変化しなかった。
この結果から、加熱処理によるゴムの高分子量化は、回収ゴムに特異的であることが分かった。
【0121】
[高分子量化ゴムを含有する組成物]
<実施例6(実施例6−1および6−2)>
上記実施例1でゲル化処理して得た高分子量化ゴム1−5に、第8表に示す配合割合(高分子量化ゴム100質量部に対する質量部)で各配合剤をロール配合した。該混合物を金枠内で第8表に示す条件でプレス加硫を行った。
各加硫ゴム組成物の引張りモジュラス(100%モジュラス)をJIS K 6251に準拠して測定した。その結果を第8表に示す。
【0122】
【表8】
【0123】
カーボンブラック未配合組成物 (実施例6−1) およびカーボンブラック配合組成物 (実施例6−2) ともに高分子量化ゴム1−5は加硫され、加硫ゴム組成物が得られた。また、得られたゴム組成物は、ゴム弾性を有し種々の用途に再利用できることが分かった。
実施例6で用いた配合剤は、すべて市販のものである。
カーボンブラック:N118
老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
加硫促進剤:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0124】
【発明の効果】
本発明により、重量平均分子量が小さく液状ゴムとして回収される回収ゴムを高分子量化する容易な方法および該高分子量化ゴムの安易な製造方法を提供できる。
本発明により、重量平均分子量が小さく液状ゴムとして回収される回収ゴムを、容易な方法により高分子量化し、ゴム弾性を発現する高分子量化ゴムを得ることができるため、該高分子量化ゴムは、ゴム原料としてそのまま再利用できる。
また、該高分子量化ゴムは、加硫することができ、加硫ゴムも優れた物性を有するため、加硫ゴムおよび該加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物は、種々の用途に再利用できる。
したがって、本発明により、タイヤ、ゴム屑などのゴム廃材などを有効に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明のより好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図である。
【図3】図3は、加熱処理温度と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、加熱処理時間と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1(高分子量ゴムの確認)における、プロセスフローを模式的に示す図である。
【図6】図6は、GPCチャートを示す図であり、図6(a)は参考例1で得た回収ゴムのGPCチャートであり、図6(b)は高分子量化ゴム1−4のGPCチャートであり、図6(c)は高分子量成分1のGPCチャートであり、図6(d)は高分子量成分2のGPCチャートであり、図6(e)は高分子量成分3(ゲル化が一部進み溶解した部分のみ)のGPCチャートである。
【図7】図7は、実施例2の加熱処理温度と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係を、実施例1の加熱処理温度と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係と比較して示したグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収ゴムの高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、高分子量化ゴムおよびそれを含むゴム組成物に関し、詳しくは、タイヤ、ゴムチューブなどのゴム廃材、ゴム屑などの加硫または未加硫のゴム成形品から回収した回収ゴムを再利用可能なゴムとするための高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法)、高分子量化された再利用可能な高分子量化ゴム、および、それを含有する加硫ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄物処理、特に産業廃棄物からの原材料回収・再利用は重要な社会的課題である。排出量の多いタイヤなどのゴム廃材についても、原材料回収・再利用が望まれるが、加硫安定化されたゴム廃材から原料として再利用可能な品質のゴム、カーボンブラックなどを回収することは容易ではない。
【0003】
例えば、ゴム廃材から原材料を回収しようとする際には、高温分解(通常500℃以上)または高圧分解(通常2MPa以上)が一般的である。このような高温分解または加圧分解に用いるための触媒、溶媒なども種々提案されている(例えば、特許文献1〜5など)。このような高温分解または高圧分解では、ゴム成分はガス状の低分子炭化水素またはオイルとして回収することができるが、ゴム原料としてそのまま利用し得るような高分子量のゴムとして回収することは困難である。
例えば、上記のような熱分解反応により加硫ゴム製品からゴム資材類を回収した場合には、加硫ゴム中のゴム成分は、ほぼ完全に低分子量の炭化水素(C4 −ベンゼン、C4 −シクロヘキサンなど)に転換されてしまう。このような回収炭化水素は、主に軽質燃料として再利用されるに留まり、ある程度の高分子量が要求されるゴム組成物のゴム原料として再利用することはできない。
【0004】
このためタイヤ廃材などの原形利用を除く再利用では、その一割程度が再生ゴム・ゴム粉として利用されている(非特許文献1参照。)以外は、そのほとんどが燃料として直接焼却されているのが実情である。
【0005】
上記ゴムの再生方法としては、架橋ゴム粉砕物に反応剤とオイルを添加し圧力容器中で加熱処理するパン法が知られている。また、再生ゴムのゴム物性を改善するものとして、二軸押出機を用いて、天然ゴム/SBRなどの複合ゴムあるいはEPDMなどの加硫ゴム廃材に、加熱下で仕上げロールでは与えることができないような大きなせん断力をかけゴム種を微細に分散させることにより、大きなゴムドメインを残存させないようにして、ゴム分散性を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献6、7参照。)。このような脱硫・再生ゴムはカーボンブラックを含み、通常、二軸押出機から出たストランド状物をそのまま再加硫してプレス成形する。しかし、該技術においても、やはり、ゴム成分はガス状の低分子炭化水素またはオイルとして回収され、ゴム原料としてそのまま利用し得るような高分子量のゴムとして回収することは困難である。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第3,704,108号明細書
【特許文献2】
米国特許第3,996,022号明細書
【特許文献3】
欧州特許第71,789号明細書
【特許文献4】
特開昭60−40193号公報
【特許文献5】
特開平7−310076号公報
【特許文献6】
特開平10−310662号公報
【特許文献7】
特開平9−227724号公報
【非特許文献1】
タイヤリサイクルハンドブック、リサイクル状況編、(社)日本自動車タイヤ協会、日本タイヤリサイクル協会、2000年8月、p.13−14
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況のもと、特にタイヤ、ゴム屑などのゴム廃材などをケミカルリサイクルにより有効再利用すべくなされたものであって、一旦成形された加硫、未加硫ゴムから、ゴム原料としてそのまま利用可能な高分子量化ゴムを得るための回収ゴムを高分子量化する方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、この方法により高分子量化されゴム弾性を有し再加硫可能な高分子量化ゴム、および、それを含有する加硫ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0008】
より具体的には、重量平均分子量が小さく液状ゴムとして回収された回収ゴムから、ゴム弾性を有し、かつ、ゴム原料としてそのまま再利用できる高分子量化ゴムを得る容易な回収ゴムの高分子量化方法を提供することを目的とする。
また、該高分子量化ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
さらに、ゴム弾性を有し再加硫できる高分子量化ゴム、ならびに、該高分子量化ゴムを加硫して得られ、優れた物性をもち種々の用途に再利用できる加硫ゴムおよびそれを含む加硫ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
タイヤなどのゴム成形品を従来熱分解に適用されている温度よりも低温(例えば300℃程度)で加熱してもその形状は実質的に変化せず、一見して分解を確認することはできない。また加硫成形されたバルクゴムは、有機溶媒に浸漬しても膨潤する程度か実質的に変化しないことは周知である。上記のように加硫ゴムに熱とせん断とをかけゴムを再生させる方法は提案されているが、該再生ゴムから高純度ゴム材料あるいはさらにカーボンブラックを別途に回収する方法は知られていない。本発明者らは、ゴム廃材または屑ゴムなどのゴム成形品をゴムおよびカーボンブラックのいずれも再利用可能な状態で回収(ケミカルリサイクル)することを目的として検討したところ、低温で熱を加えた後有機溶媒を用いて抽出することにより、予想外にも高純度かつ中分子量(重量平均分子量100, 000程度以下)のゴムおよび高品質のカーボンブラックを回収しうることを見出し、これを先に提案した(特開2002−265664号公報)。また、本発明者らは、上記溶媒抽出の前処理としてせん断処理を組合わせれば、熱とせん断があいまって、分子切断が効率的に起こり高収率化も達成することができることを見出し、これを先に提案した(特開2003−41045号公報)。
【0010】
そして、本発明者らは、さらに検討を続け、上記方法などにより回収したゴムを加熱処理すると、該回収ゴムが高分子量化することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明者らは、上記知見に基づいて加熱処理方法をさらに具体的に検討したところ、回収ゴムの加熱処理において、回収ゴムの分解反応と高分子量化反応とのバランスを保つ条件を選定すると、該加熱処理のみで回収ゴムを高分子量化できることを見出した。また、本発明者らは、上記加熱処理により、従来のゴム回収法では得られなかった、生ゴム様のゴム弾性を有する固体状のゴムとして高分子量化ゴムが得られることも見出した。さらに、本発明者らは、該高分子量化ゴムに通常用いられる配合剤などを配合し加硫すると加硫ゴム(加硫ゴム組成物)が得られること、および、該加硫ゴム(加硫ゴム組成物)はゴム成形品と同様の優れた物性を有し、従来再利用されていた燃料、オイルなどではなくゴム原料として種々の用途に再利用できることも見出した。
本発明者らは、上記知見に基づいて本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[14]を提供する。
なお、本発明において、「分子量」とは、特に断らない限り「重量平均分子量」を意味する。
【0013】
[1]ゴム成形品から回収した、重量平均分子量が10, 000〜100,000の回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法。
【0014】
[2]前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理した後に、(II)ゲル化処理する上記[1]に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
通常、ゴムがゲル化するとその後は該ゴムを加硫してゴム組成物などとして利用することはできないが、本発明の加熱処理(I)の後に得られたゴムをゲル化処理する(ゲル化させる)と、より高分子量化したゴムが得られ、さらに加硫も可能でゴム組成物などとして利用できる。
【0015】
[3]前記回収ゴムを、(III)加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤と配合した後、前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理する上記[1]または[2]に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
上記配合剤を用いることにより、より高分子量化したゴムを得ることができる。
【0016】
[4]前記回収ゴムが、(IV)該回収ゴムを貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別して得られる該回収ゴムの高分子量成分である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の回収ゴムの高分子量化方法。
本発明において、「貧有機溶媒」とは、回収ゴムの一部分子量成分を不溶とするため、その不溶分子量成分を析出させるに至る有機溶媒をいい、具体的には、例えば、トルエン−メタノール混合溶媒、ベンゼン−メタノール混合溶媒等が挙げられる。
本発明者らは、本発明の加熱処理(I)において、回収ゴムの低分子量成分(例えば、重量平均分子量500〜1,000程度のゴム成分)が、回収ゴムの高分子量化を妨げる大きな要因の1つであることを見出した。したがって、該低分子量成分をろ別(分別)して本発明の加熱処理(I)を行うと、回収ゴムの高分子量化が速やかに進行しより高分子量化したゴムが得られ、ゴム弾性を発現する。
【0017】
[5]前記(IV)および前記(I)の少なくとも一方を2回以上行う上記[4]に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
本発明の回収ゴムの高分子量化方法(以下、「本発明の方法」という。)の好ましい態様の1つとして、
[4’]ゴム成形品から回収した、重量平均分子量30,000〜100,000の回収ゴムを、
(IV)貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別し、
(I) 不活性ガス雰囲気下、加熱処理した後に、
(II)ゲル化処理
して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法が挙げられる。
【0018】
[6]ゴム成形品から回収した、重量平均分子量が10, 000〜100,000の回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して高分子量化された回収ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)。
【0019】
[7]前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理した後に、(II)ゲル化処理する上記[6]に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0020】
[8]前記回収ゴムを、(III)加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤と配合した後、前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理する上記[6]または[7]に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0021】
[9]前記回収ゴムが、(IV)該回収ゴムを、貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別して得られる該回収ゴムの高分子量成分である上記[6]〜[8]のいずれかに記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0022】
[10]前記(IV)および前記(I)の少なくとも一方を2回以上行う上記[9]に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
【0023】
[11]上記[6]〜[10]のいずれかに記載の高分子量化ゴムの製造方法により得られる高分子量化ゴム。
【0024】
本発明の方法および本発明の製造方法において、前記加熱処理(I)は、加熱温度が150〜290℃で加熱時間が10〜120分の加熱条件で行うのが好ましい。
ゴム成形品から回収した回収ゴムの重量平均分子量は、30,000〜100,000が好ましく、50,000〜100,000が特に好ましい。
前記回収ゴムは、イソプレン原料からなるゴム成形品から回収したゴムであるのが好ましく、前記高分子量化ゴムがイソプレンゴム(高分子量化イソプレンゴム)であるのが好ましい。
【0025】
本発明の方法および本発明の製造方法により、従来のゴム回収法では得られなかった、生ゴム様のゴム弾性を有する固体状のゴムとして、または再加硫可能なゴムとして、高分子量化ゴムを得ることができる。
【0026】
[12]上記[11]に記載の高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴム。
[13]上記[11]に記載の高分子量化ゴムに、加硫剤、あるいは、加硫剤および加硫促進剤または加硫助剤を配合して加硫することにより得られる加硫ゴム。
[14]上記[12]または[13]に記載の加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物。
上記[11](本発明の方法および本発明の製造方法)により得られる高分子量化ゴムを、通常の条件で加硫しても、ゴム弾性を損わず、加硫された高分子量化ゴムはゴム成形品と同様の優れた物性を有し、従来再利用されていた燃料、オイルなどではなくゴム原料として種々の用途に再利用できる。
【0027】
本発明において、「高分子量化」とは、下記方法または他の公知の方法などにより回収された回収ゴムに、上記本発明の方法を施して得られるゴム(本発明の製造方法により得られるゴム)が、該回収ゴムの分子量より大きくなることをいう。
【0028】
本発明で用いる回収ゴムは、いかなる回収法により得られるゴムであってもよいが、以下の低温熱分解またはせん断熱分解により得られる回収ゴムであるのが、回収される回収ゴムの重量平均分子量がより大きいため好ましい。
【0029】
低温熱分解法は、具体的には、以下の方法である。
(V)ゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、
(VI)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより、液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法。
【0030】
上記(V)において、イソプレンゴム原料からなるゴム成形品を処理する場合には、熱処理温度は220〜300℃(常圧下温度)であることが好ましい。
上記(VI)において、有機溶媒抽出は前記(V)で熱処理されたゴム成形品を0〜40℃のトルエン中に浸漬することにより行うことができる。
【0031】
せん断熱分解法は、具体的には、以下の方法である。
(IX)ゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、
(VI)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより、液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法。
【0032】
上記(IX)において、せん断処理を220〜400℃の加熱下で行えば、高純度ゴムの回収率を高めることができる。該加熱温度(常圧下温度)は、イソプレンゴム原料からなるゴム成形品を処理する場合には、220〜300℃であることが好ましい。
上記(VI)において、有機溶媒抽出は前記(IX)で熱処理されたゴム成形品を0〜40℃のトルエン中に浸漬することにより行うことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明は、回収ゴムの高分子量化方法(高分子量化ゴムの製造方法を含む)、該方法により高分子量化され、ゴム弾性を有し再加硫可能な高分子量化ゴム、該高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴム、およびそれを含有する加硫ゴム組成物を提供する。
以下、本発明の方法を図1および図2に模式的に示すプロセスフローを参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明の好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図であり、図2は、本発明のより好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図である。
【0034】
[本発明の方法]
本発明の方法は、後述するゴムの回収方法により回収された回収ゴムを、
(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法である。
ここで、(I)加熱処理の後に、(II)ゲル化処理するのが好ましく(図1)、また、(I)加熱処理の前に、(IV)該ゴムを、貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別するのが好ましい (図2)。さらに、該(IV)および(I)の少なくとも一方を2回以上行うのが好ましい(図2破線ルートaまたはb)。
【0035】
<回収ゴム>
本発明で用いる回収ゴムの回収方法(以下、「材料回収方法」という)は、ゴム成分を液状炭化水素として回収できる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
高純度でより高分子量の液状ゴムが回収できる点で、低温で熱分解する方法(本明細書において、「低温熱分解法」という。)および熱とせん断力とを同時に加える方法 (本明細書において、「せん断熱分解法」という。)が好ましい。低温熱分解法およびせん断熱分解法は後述する。
【0036】
これらの材料回収方法により回収される回収ゴムは、重量平均分子量が10,000〜100,000であるのが好ましく、(I)加熱処理による高分子量化ゴムの重量平均分子量が大きくなる点、後述する(IV)ろ別処理を省ける場合がある点で、その重量平均分子量が30,000〜100,000であるのがより好ましく、50,000〜100,000であるのが特に好ましい。本発明においては、回収ゴムの重量平均分子量が大きければ、得られる高分子量化ゴムの重量平均分子量も大きくなる傾向がある。
後述する低温熱分解法およびせん断熱分解法によれば、上記重量平均分子量を有する回収ゴムが容易に得られる。回収ゴムの重量平均分子量が上記範囲内に含まれない場合は、後述する(IV)低分子量成分の分別など、通常行われる方法により、回収ゴムの重量平均分子量を調整すればよい。
【0037】
回収ゴムの分子量分布は、該ゴムの重量平均分子量が上記10,000〜100,000の範囲内であれば特に限定されない。なお、分子量分布が広い場合には、後述する(IV)低分子量成分の分別など、通常行われる方法により分子量分布を調整してもよい。
【0038】
これらの材料回収方法により回収される回収ゴムは、ゴム成形品に含まれる各種配合剤などを含有していてもよい。該配合剤は好ましくは後述するものであり、配合剤の含有量なども特に限定されない。
【0039】
以下、本発明の方法の各処理について、説明する。
<(I)不活性ガス雰囲気下における加熱処理>
加熱処理は、回収ゴムの熱分解反応を抑制して高分子量化反応を促進し、高純度の高分子量化ゴムが得られる点で、150〜290℃の温度範囲で行われるのが好ましい。加熱温度は、加熱原料(回収ゴム)、処理雰囲気などによっても異なるが、上記温度範囲内で、回収ゴムの分解反応と高分子量化反応とのバランス、加熱時間との関係、所望の重量平均分子量(以下、「Mw」と略記する場合がある。)、収率などにより適宜選択される。
回収ゴムのゴム成分がイソプレンゴムであるときは、回収ゴムの分解反応を抑制でき、より高分子量化したゴムが得られる点で180〜280℃が好ましく、220〜250℃が特に好ましい。
なお、上記加熱温度は常圧下での温度である。加熱処理を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
【0040】
加熱処理は上記温度範囲で10〜120分行われれば、回収ゴムの熱分解反応を抑制し高分子量化反応を促進でき、高純度で高分子量化ゴムを回収することができる。加熱時間は、加熱原料(回収ゴム)、加熱温度、処理雰囲気などによっても異なるが、上記範囲内で、回収ゴムの分解反応と高分子量化反応とのバランス、加熱温度との関係、所望の重量平均分子量、収率などにより適宜選択される。加熱時間は、回収ゴムの分解反応を抑制でき、より高分子量化したゴムが得られる点で、10〜60分であるのが好ましい。
【0041】
加熱処理による回収ゴムの高分子量化は、加熱時間よりも加熱温度の影響をより受けやすい傾向がある。具体的には、上記温度範囲の低温側(例えば、230℃以下)では、比較的長く加熱処理しても回収ゴムの分解反応が抑えられ、高温側(例えば、250℃以上)では、次第に回収ゴムの分解反応が進行する。特に300℃以上では、回収ゴムの分解反応が著しく促進され高分子量化反応は抑えられる傾向にある。
【0042】
したがって、本発明の加熱処理条件を上記範囲(加熱温度150〜290℃、加熱時間10〜120分)とすれば、回収ゴムの熱分解反応と高分子量化反応とのバランスがよく、高分子量化ゴムが得られる。より高分子量の高分子量化ゴムが得られる点で、加熱処理条件は、加熱温度180〜280℃で加熱時間10〜60分であるのがより好ましく、加熱温度220〜250℃で加熱時間10〜60分であるのが特に好ましい。
【0043】
本発明の方法では、空気中で加熱処理を行うと、回収ゴムが酸化され、または分解され、所望の高分子量化ゴムが得られない場合があるため、加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行われるのが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどが挙げられる。加熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行われればよく、例えば、不活性ガス密閉条件、不活性ガス気流下などの条件を適宜選択して行われる。
【0044】
加熱処理に用いられる装置は、特に限定されないが、例えば、熱プレス機、加熱混合機、管状炉などが挙げられる。
加熱処理は、上記加熱装置において、強いせん断力でなければ攪拌下行うこともできる。強いせん断をかけると回収ゴムの熱分解反応が促進され、高分子量化ゴムを回収できない場合がある。
【0045】
本発明においては、該加熱処理を複数回行うこともでき、所望のMwを有する高分子量化ゴムが得られるまで何回行ってもよい。例えば、図2において、破線ルートbに従い複数回加熱処理してもよい。
該加熱処理において、後述する、(II)ゲル化 (図1)、(III)加硫剤等の配合剤添加、(IV)低分子量成分の分離などの処理を行うことにより(図2)、より確実に所望の高分子量化ゴムを得ることができ、またさらに高分子量化した高分子量化ゴムを得ることができる。
【0046】
回収ゴムに加熱処理を行うことにより、ゴム弾性を有する高分子量化ゴムが得られる。
該ゴムは、加熱処理後加熱装置から取り出され、塊状またはストランド状などとして得られる。取り出された高分子量化ゴムは常法に従い乾燥処理、精製処理等されてもよい。
【0047】
<(III)配合剤添加>
上記加熱処理(I)において、加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤を配合すると、より高分子量化した高分子量化ゴムが得られるため好ましい。
本発明に用いる配合剤としては、特に限定されず、一般的に用いられるものを使用できる。これらの配合剤の含量なども、特に限定されない。
【0048】
<(II)ゲル化処理>
本発明の方法では、上記加熱処理(I)により高分子量化ゴムを得ることができるが、上記加熱処理(I)により得られる高分子量化ゴムを、さらに(II)ゲル化処理するのが好ましい態様の1つである。
通常、ゴムがゲル化すると3次元架橋が密になるため、ゴム弾性に劣りゴム組成物などとして利用できない。しかし、本発明者らは、本発明の(I)加熱処理により得られる高分子量化ゴムがゲル化しても、通常の加硫条件で容易に加硫し加硫ゴムを与えること、さらに、該高分子量化ゴムが有するゴム弾性を失わず組成物としたときの物性に優れ、ゴム組成物として好適に再利用できることを見出した。すなわち、上記加熱処理(I)の後にゲル化させると、より高分子量化したゴムが得られ、また該ゴムは加硫できる上、さらにゴム組成物としたときの物性にも優れる。
【0049】
本発明の(II)ゲル化処理は、加熱処理により得られる高分子量化ゴムを有機溶媒中で、または、大気圧下で放置することにより行われるが、有機溶媒中で行われるのが好ましい。
有機溶媒は、加熱処理により得られる高分子量化ゴムを十分に浸漬しうる程度の量を用いることが好ましく、通常は1kgの該高分子量化ゴムに対して有機溶媒8〜10リットル程度である。
【0050】
ゲル化処理に用いられる有機溶媒としては、飽和または不飽和の炭化水素が好ましく挙げられ、該炭化水素は芳香族、脂肪族、脂環族など特に限定されない。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)、シクロヘキサンなどが挙げられる。またこれらを複数組合わせてもよい。
これらのうちでも、ヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましい。
【0051】
ゲル化処理後、有機溶媒中でゲル化処理された高分子量化ゴムと該有機溶媒とを、遠心分離、ろ過、デカンテーションなどの汎用の分離手段により分離する。
ゲル化処理のその他の条件、例えば、温度、時間、攪拌の有無などは、特に限定されず、適宜任意の条件を選択することができる。
なお、ゲル化処理された高分子量化ゴムは常法に従い乾燥処理、精製処理等されてもよい。
【0052】
<(IV)低分子量成分のろ別>
(IV)低分子量成分(低重量平均分子量成分)のろ別は、回収ゴムの低分子量成分を分別し、高分子量成分を高分子量化してより高分子量のゴムを得るために行われる。
本発明者らは、本発明の方法において、回収ゴムに含まれる低分子量成分が、加熱処理における高分子量化反応を妨げることおよび加熱処理で得られる高分子量化ゴムのゴム弾性の低下に大きく影響することを見出した。つまり、回収ゴムに含まれる高分子量成分(高重量平均分子量成分)は加熱されると高分子量化しゴム弾性が発現するが、低分子量成分に加硫剤などを加えて加熱しても高分子量化(加硫)せずゴム弾性も発現しないことを見出した。
したがって、回収ゴムの高分子量化反応を促進させ、優れたゴム弾性を発現させるためには、回収ゴムの低分子量成分をろ別するのが好ましい。
該ろ別は、適宜必要に応じて行われるが、高分子量化反応が促進されるため、(I)加熱処理の前に行われるのが好ましい (図2)。
なお、本発明の方法において、上記低分子量成分とは、例えば、重量平均分子量500〜1,000程度のゴム成分をいう。
【0053】
(IV)ろ別処理に用いられる貧有機溶媒は、回収ゴムの一部分子量成分を不溶とするため、その不溶分子量成分を析出させるに至る有機溶媒をいう。
具体的には、上記(II)ゲル化処理で用いる、飽和または不飽和の炭化水素を使用することができ、また、これらの炭化水素にアルコール類などの極性溶媒を混合して使用することもできる。
ろ別処理に用いられる貧有機溶媒は、炭化水素系溶媒としてヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましく、また、極性溶媒としてメタノール、エタノールなどのアルコール類などが好ましく、混合溶媒として、例えば、トルエン−メタノール混合溶媒、ベンゼン−メタノール混合溶媒等が好ましい。貧有機溶媒として混合溶媒を用いる場合は、その混合比は、特に限定されず、低分子量成分がろ別できる混合比とすればよい。
上記貧有機溶媒の使用量は、回収ゴムの重量平均分子量、分子量分布、低分子量成分の含量などにより、一概には決定できないが、低分子量成分がろ別できる程度の量を用いるのが好ましい。
【0054】
高分子量成分と上記貧有機溶媒とのろ別は、遠心分離、ろ過、デカンテーションなどの汎用の分離手段により行われる。
該ろ別処理は、複数回行われれてもよいが、上記した重量平均分子量を満たす回収ゴムを用いる場合は1回で十分である。
【0055】
本発明の方法において、より確実に所望の高分子量化ゴムが得られ、さらに高分子量化したゴムが得られる点で、該ろ別処理および該加熱処理のいずれか一方を複数回行うのが好ましい。
その他の条件、方法、例えば、温度、時間、攪拌の有無などは、特に限定されず、適宜選択して行うことができる。
【0056】
本発明の方法においては、低分子量成分のろ別(IV)は、上記加熱処理(I)により得られる高分子量化ゴムの低分子量成分を分別するために行われてもよい。
【0057】
以上説明したように、本発明の方法により、回収ゴムを高分子量化することができる。
【0058】
[本発明の製造方法]
本発明は、また、後述するゴムの回収方法により回収された回収ゴムを、(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理して高分子量化された回収ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法を提供する。
ここで、(I)加熱処理の後に、(II)ゲル化処理するのが好ましく(図1)、また、(I)加熱処理の前に、(IV)該ゴムを、貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別するのが好ましい (図2)。さらに、該(IV)および(I)の少なくとも一方を2回以上行うのが好ましい(図2破線ルートaまたはb)。
【0059】
本発明の製造方法は、上記した本発明の方法と基本的に同様であるので詳細は省略する。
本発明の方法および本発明の製造方法により高分子量化された高分子量化ゴムは、(I)加熱処理後、または、(II)ゲル化処理後に、各処理に応じた常法にしたがって分離される。
分離された高分子量化ゴムは常法に従い乾燥処理、精製処理等されてもよい。
【0060】
[材料回収方法]
本発明で用いる回収ゴムの好ましい材料回収方法について説明する。
<ゴム成形品>
本発明で回収処理に供されるゴム成形品は、ゴムを一旦成形したものであればよく、その形状は何ら限定されず、ゴム以外の成分も特に限定されない。またゴム成形品は、加硫ゴムに限らず、加硫されていなくても、部分的に加硫されたゴム、加硫ゴムと未加硫ゴムの混合物などであってもよく、さらには他の構成材料との複合体であってもよい。
【0061】
このようなゴム成形品を形成する原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などを挙げることができる。好ましくは天然ゴム(NR)またはイソプレンゴム(IR)であり、より好ましくは天然ゴム(NR)である。
【0062】
ゴム成形品は、充填剤を含有していてもよく、充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどの充填剤として公知のものを特に限定することなく挙げることができる。
【0063】
またゴム成形品は、例えば、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ニトロソ化合物とジイソシアナート混合物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、トリエチレンテトラミン、メチレンジアニリン、ジフェニルグアニジン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エチレンジアミンカルバメート、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンカルバメート、ステアリン酸、オレイン酸などの加硫系(加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤など)により加硫されたものであってもよい。
【0064】
ゴム成形品は、ゴム、加硫系、充填剤の各成分を2種以上含むものであってもよく、これらに加えて、公知の樹脂、他のエラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤などを含有していてもよい。
また複合体構成材料としては、スチールコードなどの鋼材、ポリエステルカーカスコードなどの繊維などが挙げられる。
ゴム成形品に含まれる各成分の量も特に限定されないが、例えば、ゴム成形品がタイヤである場合には、通常、上記ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを通常50質量部程度、他の配合剤は合計で10質量部程度含有してもよい。
【0065】
上記のようなゴム成形品としては、具体的に天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどのゴム製品、および精錬屑、加工屑などの成形屑ゴムなどを挙げることができる。これらのゴム成形品は、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることが望ましい。
例えば、未使用のゴム廃材としては、タイヤなどのゴム製品を製造する際に、混練り、成形工程などで排出される早期加硫、加硫むら(焼け、スコーチ)を起こしたゴム破材、加硫工程で排出されるいわゆるだれなどを起こした不良ゴム製品、加硫部分と未加硫部分とが混在したもの、全体的に架橋の程度が低いもの、鋼材、有機繊維などの他部材が付着したものなどの様々な形態の成形屑を挙げることができる。
これらのうちでも、タイヤあるいはその成形屑ゴムは、天然ゴムおよびイソプレンを高純度で回収しうるゴム廃材であり、好ましい。
ゴム成形品は、熱効率および抽出効率を向上させるため切断などにより細分化し供することが好ましい。
【0066】
材料回収方法は、低温熱分解法またはせん断熱分解法であるのが、高純度でより高分子量の液状ポリマーが回収できる点で、また、上記重量平均分子量10,000〜100,000を有する回収ゴムが容易に得られる点で好ましい。
以下、低温熱分解法およびせん断熱分解法について説明する。
【0067】
<低温熱分解法>
低温熱分解法は、(V)ゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、
(VI)有機溶媒抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより、液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0068】
<(V)熱処理>
本発明では、上記ゴム成形品に(V)220〜400℃での熱処理を加えるが、この熱処理は、実質的に加熱前の外形を保持しうるように行われる。
なお本明細書において、実質的に加熱前の外形を保持するとは、外見上の分解変形を生じないことを意味し、例えば、立方体形状のゴム成形品は熱処理しても略立方体形状を保持している。これに対し、固形物が熱分解あるいは溶剤への溶解などの液状化またはガス化により、少なくともその一部が元の形状を保持しないように崩れることを成形品の分解と称する。
【0069】
熱処理装置としては、オーブン、管状炉などを用いることができる。
加熱は、空気中、窒素ガス中などの不活性雰囲気いずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記温度範囲での加熱を続けても外観上、分解を確認することは困難であるが、空気中で加熱した場合には、わずかではあるが回収ゴムに酸化がみられる。なお、この酸化はIRスペクトルで確認できるが、実用上はほとんど支障はない。また空気中で熱処理を行った場合には、不活性雰囲気中で熱処理した場合に比べ、後述する(VII)ゴム回収工程で、重量平均分子量の低いゴムが回収される傾向があり、また複数の分子量分布を有する傾向がある。必要に応じて例えば、高分子量成分を分離することができる。
【0070】
加熱条件は、加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気などによっても異なるが、220〜400℃の温度範囲で、回収ゴムの所望重量平均分子量、収率などにより適宜選択される。回収されるゴムの重量平均分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、高温側では高収率であるが重量平均分子量は低下する傾向がある。
【0071】
上記加熱温度は常圧下での温度である。熱処理は、通常、常圧下で行われるが、熱処理を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
加熱時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。長時間加熱してもゴム回収率は顕著に高くならず、ゴム重量平均分子量は低下する傾向がある。したがって加熱時間は最長でも40分程度、好ましくは30分程度までである。
【0072】
熱処理されるゴム成形品がイソプレンゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜300℃であることが好ましく、この範囲の温度であれば、熱処理後に、通常、重量平均分子量15000以上の高分子量のゴムを抽出回収することができる。イソプレンゴム成形品の加熱温度は好ましくは220〜280℃、より好ましくは220〜250℃である。この好ましい温度であれば、最終的に空気中でも重量平均分子量30,000以上、好ましくは50,000以上、不活性ガス雰囲気であればより高い重量平均分子量のゴムを容易に回収することができる。
【0073】
イソプレンゴム成形品についてより具体的には、例えば、管状炉(耐熱性チューブ)を用いて、2mm角の加硫ゴム(標準的なタイヤ)を7〜15kg/m3 の充填量で窒素気流中で15分間加熱した場合、250℃で15分加熱した例ではMw84,000程度のイソプレンを30%以上の回収率で、280℃では重量平均分子量76,000程度のイソプレンを70%以上の回収率で得ることができる。
なお、この回収率は、回収処理原料として既知組成のゴム成形品(加硫)を供した時、該ゴム成形品中のゴム量に対する回収率として求められる値である。
【0074】
<(VI)有機溶媒抽出工程>
上記で熱処理されたゴム成形品は、次いで溶媒抽出(溶解)分が分離される。具体的には、上記(V)で熱処理されたゴム成形品を、通常、有機溶媒に浸漬し、溶解分を抽出する。この際、有機溶媒を加熱しても構わないが、作業コスト面から、室温(通常0〜40℃程度)の有機溶媒中に浸漬することが好ましい。浸漬時間は、10時間以上が好ましく、通常一夜である。
有機溶媒は固形のゴム成形品を十分浸漬しうる程度の量で用いることが好ましく、通常は1kgのゴム成形品を8〜10リットル程度の有機溶媒に浸漬する。
【0075】
ここで有機溶媒としては、飽和または不飽和の炭化水素を用いることができ、該炭化水素は芳香族、脂肪族、脂環族などに特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)、シクロヘキサンなどを用いることができる。これらを組合わせて用いてもよい。
これらのうちでも、ヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましく用いられる。
次いで溶媒抽出分と、抽出残分(不溶分)とを、遠心分離、ろ過などの汎用の分離手段により分離する。
【0076】
<(VII)ゴム回収工程>
低温熱分解法では、上記で分離された溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する。有機溶媒は例えば、蒸留により除去することができる。
上記によりゴムを回収することができる。熱処理工程(V)の加熱条件にもよるが、例えば、イソプレンゴム成形品からは、220〜300℃での熱処理により重量平均分子量15,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは70,000以上の高分子量の液状ゴムを回収することができる。必要であれば特に90,000以上の高分子量のゴムを抽出回収することもできる。
本発明の回収ゴムは、原料ゴム成形物中に含まれていた硫黄などの加硫剤を含有していても支障ない。回収ゴムは、さらにメタノールあるいは水などで精製処理することもできる。
【0077】
上記で回収された回収ゴムは、原料として再利用可能であるが、より高分子量でゴム弾性を有するゴムとして再利用するため、上記の高分子量化方法に供される。
【0078】
<せん断熱分解法>
せん断熱分解は、(IX)ゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、
(VI)有機溶媒抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、
(VII)分離された溶媒抽出分から溶媒を除去することにより液状ゴムを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0079】
<(IX)せん断処理>
せん断熱分解法では、上記ゴム成形品からゴム材料および/またはカーボンブラックを回収するに際して、まずゴム成形品にせん断を加える。せん断処理は、常温下、せん断により発生する熱のみで行うこともでき、具体的には、摩耗試験機などを用いてせん断をかければ、最終的に熱変性の少ない高純度ゴムを回収することができる。
なお、ここで、高純度ゴムとは、IRスペクトルでミクロ構造的に酸化(C=Oピーク)が認められないか、みられても極わずかであることをいう。
【0080】
せん断処理は加熱下に行うこともでき、高分子量ゴムを高収率で回収することができる。この際、220〜400℃に加熱して行えば、熱変性を抑制し、高純度ゴムを回収することができる。加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気などによっても異なるが、上記温度範囲で、回収ゴムの所望重量平均分子量、収率などにより適宜選択される。上記予備加熱温度は常圧下での温度である。予備加熱を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
【0081】
このような予備処理を行うための装置は特に限定されないが、例えば、一軸または二軸押出機、ひきうす機、磨耗試験機、バフ機などを用いれば加熱とせん断とを同時にかけることができる。
上記せん断処理後にゴム成形品は、粉末状、塊状あるいはストランド状などで得られる。
【0082】
加熱は、空気中、窒素ガス中などの不活性雰囲気いずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記温度範囲での加熱を続けても外観上、分解を確認することは困難であるが、空気中で加熱した場合には、わずかではあるが回収ゴムに酸化がみられる。なお、この酸化はIRスペクトルで確認できるが、実用上はほとんど支障はない。また空気中で予備加熱を行った場合には、不活性雰囲気中で加熱した場合に比べ、後工程(VII)では、重量平均分子量の低いゴムが回収される傾向があり、また複数の分子量分布を有する傾向がある。必要に応じて例えば、高分子量成分を分離することができる。
【0083】
加熱条件は、回収されるゴムの重量平均分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、高温側では高収率であるが重量平均分子量は低下する傾向がある。
加熱時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。長時間加熱してもゴム回収率は顕著に高くならず、ゴム分子量は低下する傾向がある。したがって加熱時間は最長でも40分程度、好ましくは30分程度までである。
【0084】
予備処理されるゴム成形品がイソプレンゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜300℃であることが好ましく、この範囲の温度であれば、予備加熱後に、通常、重量平均分子量15,000以上の高分子量のゴムを抽出回収することができる。
イソプレンゴム成形品の予備加熱温度は好ましくは250〜280℃であり、この好ましい温度であれば、最終的に空気中でもMw30,000以上、好ましくは50,000以上、不活性ガス雰囲気であればより高い重量平均分子量のゴムを容易に回収することができる。
【0085】
上記のようにせん断と加熱とを同時に行う予備処理によれば、熱処理時にせん断を加えずに予備処理する場合に加え、抽出予備処理に必要な加熱温度を低下させることができる。
【0086】
<(VI)有機溶媒抽出工程>
上記、低温熱分解法における有機溶媒抽出工程と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
<(VII)ゴム回収工程>
せん断熱分解法では、上記で分離された溶媒抽出分から有機溶媒を除去することによりゴムを回収する。有機溶媒は例えば、蒸留により除去することができる。
上記により高分子量のゴムを回収することができる。予備処理工程(IX)の加熱条件にもよるが、例えば、イソプレンゴム成形品からは、220〜300℃での予備処理により重量平均分子量15,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは70,000以上の高分子量の液状ゴムを回収することができる。必要であれば特に90,000以上の高分子量のゴムを抽出回収することもできる。
本発明の回収ゴムは、原料ゴム成形物中に含まれていた硫黄などの加硫剤を含有していても支障ない。回収ゴムは、さらにメタノールあるいは水などで精製処理することもできる。
【0088】
[高分子量化ゴム]
本発明の方法および本発明の製造方法により高分子量化ゴムが得られる。
回収ゴムの重量平均分子量、分子量分布、各処理条件などにもよるが、例えば、回収イソプレンゴムからは、(I)加熱処理のみで重量平均分子量80,000以上の高分子量化ゴムが得られ、さらに(II)ゲル化処理すると重量平均分子量180,000以上の高分子量化ゴムが得られる。必要であれば、高分子量成分を分別することにより百万以上の高分子量ゴムを得ることも可能である。
本発明の高分子量化ゴムは、ゴム成形品中に含まれていたイオウなどの加硫剤を含有していても支障ない。高分子量化ゴムは、さらにメタノールあるいは水などで精製処理することもできる。
【0089】
このようにして得られた高分子量化ゴムは、固形でありゴム弾性を有する。
従来回収されるゴムは、重量平均分子量が小さく液状であるが、本発明の方法および本発明の製造方法により得られる高分子量化ゴムは、加熱処理におけるゴムの分解反応が抑えられ高分子量化反応が促進されるため、分子量が大きくなりゴム弾性を発現する。
また、本発明の高分子量化ゴムは、加硫することもでき、加硫してもゴム弾性を失わない。したがって、該高分子量化ゴムを加硫して加硫ゴムとしたときにも優れた物性を有し、該加硫ゴムは通常のゴム製品用原料として再び利用することができ、さらに、高分子量であるためゴム製品の原料としても有用である。
【0090】
このようにして得られた高分子量化ゴムは、原料として再利用可能であり、本発明では、後述するように該高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムを含む加硫ゴム組成物を提供することもできる。加硫ゴム(それを含むゴム組成物)では、該ゴム(組成物)中のゴム成分の少なくとも一部が上記高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムであればよく、高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムとバージンゴムとの混合比は目的などに応じて適宜に選択することができ、また全部が高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムであってもよい。
なお、本発明において、ゴムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で定法に従い測定することができる(重量平均分子量はポリスチレン換算分子量である)。
【0091】
[加硫ゴム組成物]
次に、本発明の方法および本発明の製造方法により得られる高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物について説明する。
上記本発明の方法および本発明の製造方法により得られる高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムは、一般に用いられる配合剤などを含有するゴム組成物とすることができる。
該ゴム組成物は、ゴム、加硫系(加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤など)、充填剤の各成分を2種以上含むものであってもよく、これらに加えて、公知の樹脂、他のエラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤などを含有していてもよい。
また、これらの配合剤などの含量は、配合剤の種類、組成物の用途などに応じて、適宜調整することができる。
【0092】
ゴム組成物の製造は、特に限定されず、例えば、一軸または二軸押出機、ロール、ニーダ―、押出し機、万能攪拌機などにより混合し製造することができる。
加硫方法も、特に限定されず、例えば、プレス加硫などにより行うことができる。
【0093】
本発明の高分子量化ゴムは、その分子量が大きく加硫でき、さらに、加硫しても該高分子量化ゴムのゴム弾性を失わないため、該高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物は優れた物性を有する。したがって、該ゴム組成物は通常のゴム製品として種々の用途に再利用することができる。
【0094】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[回収ゴムの高分子量化]
<参考例1:せん断熱分解によるゴムの回収>
組成既知のタイヤベント(成形縁)を用いて、天然ゴム(NR)およびカーボンブラック材料回収を行った。
(1)タイヤベントを、二軸押出機(スクリュー径44mm、L/D=50)に投入し混練した。混練条件(フィード量、シリンダー内温度、混練時間等)を第1表に示す。
(2)上記二軸押出機から押出されたストランドを冷却後5mm角のサイコロ状に切断した。その30gをトルエン270mL中に浸漬し、24時間室温でゆっくり撹拌した後遠心分離し、トルエン抽出分と抽出残物とを分離した。
(3)トルエン抽出分は、エバポレータでトルエンを除去し、ゴムを回収した。
(4)抽出残物は、窒素雰囲気中、600℃で30分熱処理して、カーボンブラックを回収した。
【0095】
上記(3)のゴム回収結果を第1表に示す。回収されたゴム(回収ゴム)をGPC(ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は74,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.1であった。
また回収ゴムのIRスペクトルを測定したところイソプレンゴムであることを確認した。
【0096】
【表1】
【0097】
<参考例2:低温熱分解によるゴムの回収>
NR(天然ゴム)100質量部、カーボンブラック(ASTMコードN118)50質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸3質量部、老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)1質量部、加硫促進剤(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)1.2質量部およびイオウ1.8質量部からなるゴム配合物を148℃で10分加熱して得られた加硫ゴムを用いて、ゴムの回収を行った。
【0098】
(1)上記で得られた加硫ゴムを2mm角に切断してサイコロ状ゴム成形品とし、これを耐熱性チューブ1cm3 あたり7〜15mg充填した。
石英ガラス管状炉を用いて、窒素雰囲気下、280℃の温度で15分間、予備加熱した。
(2)上記で加熱されたサイコロ状ゴム成形品30gをトルエン270mL中に浸漬し、24時間室温でゆっくり撹拌した後遠心分離し、トルエン抽出分と抽出残物とを分離した。
(3)トルエン抽出分は、エバポレータでトルエンを除去し、ゴムを回収した。
(4)抽出残物は、窒素雰囲気中、600℃で30分熱処理して、カーボンブラックを回収した。
【0099】
上記(3)で回収されたゴムをGPCで測定したところ、重量平均分子量は76,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.9であった。
【0100】
<参考例3:低温熱分解による回収ゴム>
加硫ゴムに組成既知のタイヤトレッドを用い、分解温度を250℃に変更した以外は、参考例2と同様に行い、重量平均分子量が56,000、分子量分布が2.4のゴムを回収した。
【0101】
<実施例1および比較例1(実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3)>
参考例1で得た回収ゴム(Mw:74,000、Mw/Mn:3.1)を、窒素気流下、第2表に示す加熱処理条件で加熱処理(I)した。加熱処理して得られた高分子量化ゴムのMw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第2表に示す。
なお、加熱装置は、石英ガラス管状炉を用い攪拌はしなかった。以下、加熱処理(I)について同様である。
【0102】
【表2】
【0103】
図3は、上記加熱処理(I)の加熱処理温度と、該処理して得られる高分子量化ゴムの分子量との関係を示すグラフである。
第2表および図3に示すとおり、本発明の方法および製造方法により回収ゴムの高分子量化が達成できた。
また、加熱処理において、回収ゴムが高分子量化される温度範囲と、回収ゴムが分解される温度範囲があることが分かる。高分子量化ゴムを得るには、ゴムの分解反応を抑え高分子量化反応を促進する、本発明の温度範囲で行うことが重要である。
【0104】
<実施例1および比較例1(実施例1−7〜1−12および比較例1−4)>
参考例1で得た回収ゴム(Mw:74,000、Mw/Mn:3.1)を、窒素気流下、第3表に示す条件で、加熱処理(I)した。加熱処理して得られた高分子量化ゴムのMw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第3表に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
図4は、上記加熱処理(I)の加熱処理時間と、該処理して得られる高分子量化ゴムの分子量との関係を示すグラフである。
第3表および図4に示すとおり、本発明の方法および製造方法により回収ゴムの高分子量化が達成できた。
また、加熱処理において、回収ゴムの高分子量化反応がまず起こり高分子量化ゴムが生成するが、加熱を続けると次第に分解反応が起こりゴムの重量平均分子量が小さくなる傾向がある。加熱時間にも好ましい範囲があることが分かる。高温、例えば、300℃では、ごく短時間後には高分子量化反応が起こり一部高分子量化ゴムが生成するが、15分後には分解反応が優勢で重量平均分子量が減少したと考えられる。
【0107】
<実施例1(高分子量ゴムの確認)>
本発明の方法により、回収ゴムが高分子量化されていることを確認するため、(I)加熱処理して得た高分子量化ゴムの重量平均分子量を確認した。
実施例1−4で得た高分子量化ゴム1−4(Mw:134,000、Mw/Mn:5.7)5gを、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/60(質量比))100mLで、低分子量成分をろ別し高分子量成分1および低分子量成分1を得た。
さらに、この高分子量成分1(4g)を、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/40(質量比))80mLで、低分子量成分をろ別し高分子量成分2および低分子量成分2を得た。図5は、実施例1(高分子量ゴムの確認)における、上記プロセスフローを模式的に示した。
参考例1で得た回収ゴム、高分子量化ゴム1−4、高分子量成分1、2および低分子量成分1、2の収率、MwおよびMw/MnをGPCにより測定した。その結果を第4表に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
図6に参考例1で得た回収ゴム、高分子量化ゴム1−4および高分子量成分1、2のGPCチャートを示した。
図6(a)は参考例1で得た回収ゴムのGPCチャートであり、図6(b)は高分子量化ゴム1−4のGPCチャートであり、図6(c)は高分子量成分1のGPCチャートであり、図6(d)は高分子量成分2のGPCチャートであり、図6(e)は高分子量成分3(ゲル化が一部進み溶解した部分のみ)のGPCチャートである。図6 (a) 〜(d)を比較すると、 (a) 〜(d)にしたがって、GPCの保持時間が20分以下の部分(高分子量成分)の増加が見られるため、加熱処理により、回収ゴムが高分子量化されていることが確認できた。
また、図6(a)〜(d)のGPCチャートで保持時間の最も短い部分の重量平均分子量は、順に、(a)1,557,000、(b)2,651,000、(c)2,835,000、(d)2,994,000であり、本発明の方法により高分子量化されたゴムには、分子量が2〜3百万のオーダーのゴム分子も含まれており、優れたゴム弾性が発現すると考えられる。
なお、トルエン−メタノール混合溶媒におけるろ別操作では、ゴムが高分子量化しないことを確認している。
【0110】
上記操作で得られた高分子量成分2(3g)を、さらにトルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/30(質量比))60mLで低分子量成分3をろ別して高分子量成分3(ゲル化した成分を少量含む)を得た。次に、高分子量成分3(2g)を、トルエン40mLに浸漬し、1ヶ月放置(時折攪拌)することにより、ゲル化させ、トルエンを除去して高分子量化ゴム1−5を得た。高分子量成分3からの収率は67%であり、該ゴム1−5はTHFに溶解しなかったので、GPCの測定はできなかった。
しかし、高分子量成分2、3、高分子量化ゴム1−5の順に、弾性が増加していることが、指で引き伸ばしたときの感触で確認できた。
なお、高分子量成分3および低分子量成分3の収率、MwおよびMw/MnをGPCにより測定した。その結果を第4表に示す。高分子量成分3(ゲル化が一部進み溶解した部分のみ)のGPCチャートを、図6(e)に示す。
【0111】
<実施例2および比較例2(実施例2−1〜2−3および比較例2−1)>
参考例1で得られた回収ゴム(Mw:74,000、Mw/Mn:3.1)5gを、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/30(質量比))100mLで、(IV)低分子量成分をろ別して、高分子量成分と低分子量成分を得た。得られた高分子量成分を、窒素気流下、第5表に示す条件で、加熱処理した。加熱処理後の高分子量化ゴムのMw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第5表に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
図7は、実施例2(実施例2−1〜2−3および比較例2−1)における加熱処理温度と得られる高分子量化ゴムの分子量との関係を、実施例1(実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3)における加熱処理温度と得られる高分子量化ゴムの分子量との関係と比較して示したグラフである。
加熱処理の適した温度範囲は、(IV)ろ別処理の有無に係わらず、ほぼ一致した。また、低温部(約230℃以下)ではろ別処理した方が得られる高分子量化ゴムの重量平均分子量が大きくなった。
【0114】
<実施例3>
参考例2で得た回収ゴム(Mw:76,000、Mw/Mn:3.9)5gを、窒素気流下、加熱温度230℃、加熱時間15分の条件で加熱処理した。収率は92%であり、加熱処理後の高分子量化ゴムのMwは122,000であり、Mw/Mnは4.1であった。
【0115】
<実施例4および比較例4(実施例4−1〜4−3および比較例4−1)>
参考例3で得た回収ゴム(Mw:56,000、Mw/Mn:2.4)5gを、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/60(質量比))100mLで、(IV)低分子量成分をろ別して、高分子量成分1と低分子量成分1を得た。さらに、高分子量成分1の一部(4g)を、トルエン−メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=100/40(質量比))80mLで、低分子量成分をろ別して、高分子量成分2と低分子量成分2を得た。
回収ゴム、高分子量成分1、2および低分子量成分1、2の収率、Mw、Mw/MnをGPCにより測定した。その結果を第6表に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
回収ゴム(実施例4−1)、高分子量成分1(実施例4−2)、2(実施例4−3)および低分子量成分2(比較例4−1)を、窒素気流下、加熱温度230℃、加熱時間15分で加熱処理して高分子量化した。得られた各ゴムのMw、Mw/Mnを測定した。その結果を第7表に示す。
【0118】
【表7】
【0119】
第7表に示したように、本発明の方法および製造方法により回収ゴムの高分子量化が達成できた。
また、回収ゴムをそのまま加熱処理して高分子量化する(実施例4−1)よりも、回収ゴムを(IV)ろ別処理した後加熱処理する方が、高分子量化反応が著しく促進されることが分かる(実施例4−2、3)。また、ろ別処理した後に加熱処理すると、得られる高分子量化ゴムが弾性に優れることも分かった。
なお、弾性の評価は、指で引き伸ばしたときの感触に基づいて、弾性が発現し弾性率が大きいものを「○」、弾性が発現しているものを「△」、弾性がまったく発現してないものを「×」とした。
【0120】
<比較例5 (比較例5−1および5−2)>
以下の合成イソプレンゴムを用いて、窒素気流下、加熱温度230℃、加熱時間15分の条件で加熱処理を行った。
1)比較例5−1;合成イソプレンゴム(クラレ社製、LIR−50)
重量平均分子量 65,000 分子量分布 1.2
2)比較例5−2;合成イソプレンゴム(クラレ社製、LIR−30)
重量平均分子量 32,000 分子量分布 1.2
その結果、いずれのゴムにおいてもイソプレンゴムの高分子量化は確認できず、分子量および分子量分布は変化しなかった。
この結果から、加熱処理によるゴムの高分子量化は、回収ゴムに特異的であることが分かった。
【0121】
[高分子量化ゴムを含有する組成物]
<実施例6(実施例6−1および6−2)>
上記実施例1でゲル化処理して得た高分子量化ゴム1−5に、第8表に示す配合割合(高分子量化ゴム100質量部に対する質量部)で各配合剤をロール配合した。該混合物を金枠内で第8表に示す条件でプレス加硫を行った。
各加硫ゴム組成物の引張りモジュラス(100%モジュラス)をJIS K 6251に準拠して測定した。その結果を第8表に示す。
【0122】
【表8】
【0123】
カーボンブラック未配合組成物 (実施例6−1) およびカーボンブラック配合組成物 (実施例6−2) ともに高分子量化ゴム1−5は加硫され、加硫ゴム組成物が得られた。また、得られたゴム組成物は、ゴム弾性を有し種々の用途に再利用できることが分かった。
実施例6で用いた配合剤は、すべて市販のものである。
カーボンブラック:N118
老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
加硫促進剤:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0124】
【発明の効果】
本発明により、重量平均分子量が小さく液状ゴムとして回収される回収ゴムを高分子量化する容易な方法および該高分子量化ゴムの安易な製造方法を提供できる。
本発明により、重量平均分子量が小さく液状ゴムとして回収される回収ゴムを、容易な方法により高分子量化し、ゴム弾性を発現する高分子量化ゴムを得ることができるため、該高分子量化ゴムは、ゴム原料としてそのまま再利用できる。
また、該高分子量化ゴムは、加硫することができ、加硫ゴムも優れた物性を有するため、加硫ゴムおよび該加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物は、種々の用途に再利用できる。
したがって、本発明により、タイヤ、ゴム屑などのゴム廃材などを有効に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明のより好ましいプロセスフローの1態様を模式的に示す図である。
【図3】図3は、加熱処理温度と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、加熱処理時間と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例1(高分子量ゴムの確認)における、プロセスフローを模式的に示す図である。
【図6】図6は、GPCチャートを示す図であり、図6(a)は参考例1で得た回収ゴムのGPCチャートであり、図6(b)は高分子量化ゴム1−4のGPCチャートであり、図6(c)は高分子量成分1のGPCチャートであり、図6(d)は高分子量成分2のGPCチャートであり、図6(e)は高分子量成分3(ゲル化が一部進み溶解した部分のみ)のGPCチャートである。
【図7】図7は、実施例2の加熱処理温度と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係を、実施例1の加熱処理温度と高分子量化ゴムの分子量(Mw)との関係と比較して示したグラフである。
Claims (13)
- ゴム成形品から回収した、重量平均分子量が10, 000〜100,000の回収ゴムを、
(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理
して該回収ゴムを高分子量化する回収ゴムの高分子量化方法。 - 前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理した後に、
(II)ゲル化処理する請求項1に記載の回収ゴムの高分子量化方法。 - 前記回収ゴムを、
(III)加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤と配合した後、
前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理する請求項1または2に記載の回収ゴムの高分子量化方法。 - 前記回収ゴムが、
(IV)該回収ゴムを貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別
して得られる該回収ゴムの高分子量成分である請求項1〜3のいずれかに記載の回収ゴムの高分子量化方法。 - 前記(IV)および前記(I)の少なくとも一方を2回以上行う請求項4に記載の回収ゴムの高分子量化方法。
- ゴム成形品から回収した、重量平均分子量が10, 000〜100,000の回収ゴムを、
(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理
して高分子量化された回収ゴムを得る高分子量化ゴムの製造方法。 - 前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理した後に、
(II)ゲル化処理する請求項6に記載の高分子量化ゴムの製造方法。 - 前記回収ゴムを、
(III)加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤から選択される1種以上の配合剤と配合した後、
前記(I)不活性ガス雰囲気下で加熱処理する請求項6または7に記載の高分子量化ゴムの製造方法。 - 前記回収ゴムが、
(IV)該回収ゴムを貧有機溶媒で縣濁して低分子量成分をろ別
して得られる該回収ゴムの高分子量成分である請求項6〜8のいずれかに記載の高分子量化ゴムの製造方法。 - 前記(IV)および前記(I)の少なくとも一方を2回以上行う請求項9に記載の高分子量化ゴムの製造方法。
- 請求項6〜10のいずれかに記載の高分子量化ゴムの製造方法により得られる高分子量化ゴム。
- 請求項11に記載の高分子量化ゴムを加硫して得られる加硫ゴム。
- 請求項12に記載の加硫ゴムを含有する加硫ゴム組成物。
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JP2003199769A JP2005041902A (ja) | 2003-07-22 | 2003-07-22 | 回収ゴムの高分子量化方法、高分子量化ゴムおよびそれを含むゴム組成物 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017048339A (ja) * | 2015-09-03 | 2017-03-09 | 株式会社クラレ | ゴム組成物及びタイヤ |
-
2003
- 2003-07-22 JP JP2003199769A patent/JP2005041902A/ja not_active Withdrawn
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