JP2005068195A - 回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られるカーボンブラックおよびゴム組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゴム成形品から回収された回収カーボンブラックのゴム中における分散度を改善する方法、それにより得られる従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラック、およびそれを含有するゴム組成物の提供。
【解決手段】回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られるカーボンブラック、および、それを含むゴム組成物。
【選択図】なし
【解決手段】回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られるカーボンブラック、および、それを含むゴム組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られるカーボンブラックおよび該カーボンブラックを含有するゴム組成物に関し、詳しくは、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られる、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラックならびに該カーボンブラックを含有するゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄物処理、特に産業廃棄物からの原材料回収・再利用は重要な社会的課題である。排出量の多いタイヤ等のゴム廃材についても、原材料回収・再利用が望まれるが、加硫安定化されたゴム廃材から原料として再使用可能な品質のゴム、カーボンブラック等を回収することは容易ではなく、そのほとんどが燃料として直接焼却されているのが実情である。
例えば、ゴム廃材から原材料を回収しようとする際には、高温分解(通常500℃以上)または高圧分解(通常2MPa以上)によるのが一般的である。このような高温分解または加圧分解に用いるための触媒、溶媒等も種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
一般的に、ゴム廃材を上記500℃以上の高温で熱分解して得られるカーボンブラックは、該ゴム廃材に原料として使用されたカーボンブラックと比して品質が悪く再利用することは困難であり、また、上記2MPa以上の高圧で分解して得られるカーボンブラックは、分離困難な油(場合によっては未分解架橋ゴム)等と混合状態となり品質が悪く再利用は実質的に困難であるとされている。
【0004】
また、上記分解方法の他にも、ゴム廃材等からカーボンブラックを回収する方法が提案されているが、やはり、回収カーボンブラックの品質が悪く再利用は実質的に困難である(例えば、非特許文献1、2参照。)。
実際にカーボンブラックの回収方法においては、再利用に耐えうる回収カーボンブラックはこれまでのところほとんど得られてなく、また、回収カーボンブラックを再利用可能な品質に向上させる方法等についても提案されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,704,108号明細書
【特許文献2】米国特許第3,996,022号明細書
【特許文献3】欧州特許第71,789号明細書
【特許文献4】特開昭60−40193号公報
【特許文献5】特開平7−310076号公報
【非特許文献1】日本ゴム協会誌、(社)日本ゴム協会、1978年、第51巻、p.823
【非特許文献2】日本ゴム協会誌、(社)日本ゴム協会、1979年、第52巻、p.575
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、ゴム組成物から回収できるカーボンブラックであって、原料として用いられるカーボンブラックと同等程度の品質を有する回収カーボンブラックおよび該カーボンブラックの回収方法等について、提案している。
【0007】
例えば、過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せきかく拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法が挙げられる(国際公開第00/69953号パンフレット)。
【0008】
また、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法およびそれにより回収されたカーボンブラックが挙げられる(特開2002−265664号公報)。
【0009】
さらに、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法およびそれにより回収されたカーボンブラックが挙げられる(特開2003−41045号公報)。
【0010】
これらの分離方法および回収方法で回収される回収カーボンブラックは、ゴム組成物の原料として用いられたカーボンブラックにはない特異な特性を有し、また、原料として用いられたカーボンブラックと同等程度の品質を有する。
このような特性等を有する回収カーボンブラックは、産業上の利用価値が大きく、近年の廃棄物処理からの原材料回収・再利用という社会的課題を満足できるものである。
【0011】
しかし、回収カーボンブラックが再利用される用途が広がりつつある現状および回収カーボンブラックの更なる高品質化が求められる現状においては、上記方法から回収される回収カーボンブラックについても同様なことがいえる。
例えば、上記方法から回収される回収カーボンブラックは、ゴム組成物としたときの物性に特に影響するゴム中における分散度が低く再利用される用途が限られてしまう場合がある。
【0012】
回収カーボンブラックのゴムへの低分散度という問題点は、本発明者らが提案した上記回収方法等により回収される回収カーボンブラックに限られず、従来から知られているいずれの回収方法等により回収される回収カーボンブラックにおいても同様に存在し、回収カーボンブラックを広い用途に再利用する上で大きな課題となっている。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、回収カーボンブラックのゴム中における分散度を改善する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、ゴム中における分散度に優れるカーボンブラックおよびそれを含有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、回収カーボンブラックのゴム中における分散度について、種々検討したことろ、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる工程を行って得られるカーボンブラックがゴム中における分散度が著しく向上することを知見し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(1’)回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
該衝突工程により、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラックを得ることができる。また、該カーボンブラックは、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、さらには機械的特性にも優れる。
該衝突工程に用いられる回収カーボンブラックは、特に限定されず、いずれの回収方法により回収される回収カーボンブラックでもよい。好ましくは後述する回収方法により回収される回収カーボンブラックである。
【0016】
(2)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(2’)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0017】
(3)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、
前記調製工程により得られた回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(3’)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、
前記調製工程により得られた回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0018】
(4)前記衝突工程が、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置を用いて行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(4’)前記衝突工程が、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置を用いて行う上記(1’)〜(3’)のいずれかに記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0019】
(5)前記乳化分散流体または/および微粒子を得る装置が、噴流衝合装置である上記(4)に記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(5’)前記乳化分散流体または/および微粒子を得る装置が、噴流衝合装置である上記(4’)に記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0020】
(6)前記噴流衝合装置が、湿式超微粒化装置アルティマイザーシステムである上記(5)に記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(6’)前記噴流衝合装置が、湿式超微粒化装置アルティマイザーシステムである上記(5’)に記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0021】
(7)前記回収工程が、以下に示す回収方法群より選択される方法である上記(2)〜(6)のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(7’)前記回収工程が、以下に示す回収方法群より選択される方法である上記(2’)〜(6’)のいずれかに記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
<回収方法群>
方法A:カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品を、500℃以上の温度で加熱することにより、ゴム成分を分解しカーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法(本発明において、「直接熱分解法」という。)
方法B:過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せきかく拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法(本発明において、「過酸化物分解法」という。)
方法C:(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法(本発明において、「低温熱分解法」という。)
方法D:(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法(本発明において、「せん断熱分解法」という。)
【0022】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法により得られるカーボンブラック。
(8’)上記(1’)〜(7’)のいずれかに記載のカーボンブラックの製造方法により得られるカーボンブラック。
該カーボンブラックは、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れる。また、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、さらには機械的特性にも優れる。
【0023】
(9)上記(8)または上記(8’)に記載のカーボンブラックを含有するゴム組成物。
該ゴム組成物は、上記カーボンブラックを含有するため、ゴムに均一に分散し、ゴム組成物としての耐摩耗性、さらには機械的特性に優れる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明は、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法(以下、「本発明の方法」という。)、および、該衝突工程を含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)である(第1態様)。
【0025】
本発明の方法および本発明の製造方法は、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を行うことを特徴とし、これにより、回収カーボンブラックの粒子径が小さく均一(粒度分布が狭い)となるだけでなく、ゴム中における分散度が著しく改善されゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性も向上するカーボンブラックを得ることができる。
【0026】
上記衝突工程により、該工程処理後のカーボンブラック(以下、「本発明のカーボンブラック」という場合がある。)のゴム中における分散度が著しく向上する理由は詳細には不明であるが、本発明者は以下のように考えている。
回収カーボンブラックの分散液同士を高圧にて噴射し衝突させると、カーボンブラック凝集体が破砕されると共に他の物性、例えば、表面特性等も変化すると考えられる。現時点ではまだ明らかではないが、この物性変化等により、他の粉砕方法等では実現し得なかったゴム中における分散度の著しい向上が実現できるものと予想される。そして、該分散度が向上することにより、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性も向上する。
【0027】
<本発明の方法>
上記衝突工程について説明する。
該工程は、高圧の回収カーボンブラックの分散液同士を互いに衝突させる工程であり、詳しくは、回収カーボンブラックを溶剤に分散させた回収カーボンブラックの分散液を、2方向以上から、好ましくは2方向からそれぞれ高圧で噴射して噴射された分散液同士を互いに衝突させることにより該溶剤に回収カーボンブラックを乳化または該回収カーボンブラックを微粒化する工程である。
【0028】
該回収カーボンブラックの分散液の調製に用いる溶剤は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等が挙げられ、取扱いの容易性等の観点から水またはアルコール溶剤であるのがより好ましく、特に水であるのが好ましい。
該分散液の濃度は、特に限定されないが、操作容易性および本発明のカーボンブラックのゴム中における分散度に優れる点で、1〜10質量%であるのが好ましく、3〜7質量%であるのがより好ましい。
該分散液の温度は、特に限定されず、取扱い性に優れる点で、常温であるのが好ましい。
該分散液の調製方法は後述する第3態様で説明する。
【0029】
上記衝突工程は、このようにして得られる回収カーボンブラックの分散液を、2方向以上から、好ましくは2方向からそれぞれ高圧で噴射して、該分散液同士を互いに衝突させる。
このときの条件等は、特に限定されないが、操作容易性および本発明のカーボンブラックのゴム中における分散度に優れる点で、例えば、以下の条件が好ましい。
高圧で噴射されるカーボンブラックの分散液の吐出圧力は、70〜245MPaであるのが好ましく、170〜245MPaであるのがより好ましい。
分散液の噴射径(ノズルを用いる場合はノズル径)は、0.1〜0.5mmであるのが好ましく、0.2〜0.3mmであるのがより好ましい。
分散液の流量は、0.5〜14L/minであるのが好ましく、3〜6L/minであるのがより好ましい。
【0030】
衝突工程は、1回行ってもよく、同一の条件で複数回(連続して)行ってもよく、また、異なる条件で複数回(連続して)行ってもよい。また、他の工程を行った後に再度該衝突工程を行ってもよい。
衝突工程における上記した条件以外の条件は、特に制限されず、操作性等を考慮して任意に設定できる。
【0031】
衝突工程は、高圧で噴射可能な手段、例えば、ノズル手段等を有する装置であれば、特に限定されず、いずれの装置をも用いることができる。例えば、該高圧で噴射可能な手段を備える衝合装置、乳化装置、粉砕装置、混合装置等が挙げられる。
好ましくは、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置である。
該装置としては、例えば、次に示す装置が挙げられる。
少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る噴流衝合装置において、内部チャンバを有するハウジングと、前記チャンバ内に高圧流体を噴射するように前記ハウジングに取り付けられた第1と第2のノズル手段とを備え、前記第1と第2のノズル手段は、互いの噴射流同士が各々のノズル出口より先方の一点で角度を有して交差するように夫々の噴射方向が定められていることを特徴とする噴流衝合装置(特開平10−337457号公報)である。
【0032】
また、上記衝合装置の他に、例えば、特開2001−269557号公報および特開2002−177809号公報に記載されている噴流衝合装置も好適に挙げられる。
他の装置としては、例えば、次に示す装置が挙げられる。
流体の乳化分散を行う装置において、高圧容器内に、高圧容器内の流体の流路に比べて径が小さな貫通孔が形成された板状体からなる乳化部が設けられており、乳化部の貫通孔の中央には、貫通孔に垂直な流出口が乳化部の板状体の側面へと連通しており、乳化部の貫通孔の互いに反対の方向から供給された流体は、乳化部の中央部において衝突して乳化させることを特徴とした乳化装置(特開平6−47264号公報)が挙げられる。
【0033】
より好ましくは、特開平10−337457号、特開2001−269557号および特開2002−177809号の各公報に記載の噴流衝合装置(湿式超微粒化装置)である。
これらの噴流衝合装置としては、例えば、(株)スギノマシン製の湿式超微粒化装置アルティマイザーシステム(機種名HJP−25005、HJP−17007、HJP−25030、HJP−17046、HJP−25060、HJP−17090、HJP−25080およびHJP−17140)等が特に好ましく挙げられる。
【0034】
これらの装置を用いて上記衝突工程を行う場合には、該衝突工程の条件等は、上記した条件の範囲内で各装置に応じて任意に選択することができる。
【0035】
上記衝突工程後は、カーボンブラックの分散液の溶剤を除去し、乾燥する工程を行うことにより、本発明のカーボンブラックを得ることができる。
溶剤の除去および乾燥は、該溶剤に応じて常法に従い行えばよい。
【0036】
上記衝突工程に用いる回収カーボンブラックは、ゴム廃材、ゴム成形品またはゴム組成物(本明細書においては、これらは特に区別しないで用いる。)等から回収されたものであれば、特に限定されず、いずれの方法で回収されたカーボンブラックであっても用いることができる。好ましくは後述する回収方法により得られる回収カーボンブラックである。
【0037】
本発明の方法は、上記衝突工程を含む方法であれば、特に限定されず、以下の工程を含む方法も好ましい。
すなわち、ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、該回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法(第2態様)である。
【0038】
第2態様において、該回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程は、上記第1態様で説明したのと同様である。
【0039】
ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程は、特に限定されず、いずれの回収方法を選択できる。
簡便である点で、以下に説明する回収方法であるのが好ましい。
【0040】
該好ましい回収方法としては、上記非特許文献1に記載の直接熱分解法、国際公開第00/69953号パンフレットB等に記載の過酸化物分解法、特開2002−265664号公報に記載の低温熱分解法、または、特開2003−41045号公報に記載のせん断熱分解法が挙げられる。
【0041】
これらの方法について、説明する。
直接熱分解法は、カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品を、500℃以上の温度で加熱することにより、ゴム成分を分解しカーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0042】
本発明において、直接熱分解法における加熱温度は、500〜1000℃であるのが好ましく、600〜800℃であるのがより好ましい。加熱時間は、15〜60分であるのが好ましく、30〜45分であるのがより好ましい。
該方法は、不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0043】
これまで該方法に関する多くの改良技術等が提案されており、様々なバリエーションがある。しかし、その本質は、高温熱処理により加硫ゴムのゴム成分をオイル、ガスとして回収し、カーボンブラック成分をその残渣(回収カーボンブラック)として回収するものである。
【0044】
上記過酸化物分解法は、過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せきかく拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法である。
【0045】
ここで、加硫ゴムは、これらのゴムに適した公知の加硫剤で加硫されていればよく、加硫剤としては、例えば、非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛等が挙げられる。
【0046】
該方法においては、処理液として過酸化物を含有する有機溶剤を用いる。
有機溶剤としては、常圧常温下で液状であって、過酸化物を溶解しうるものであれば公知のものを広く用いることができる。具体的には炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤等を挙げることができ、炭化水素系溶剤は、飽和炭化水素系溶剤または不飽和炭化水素系溶剤いずれであってもよく、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環族炭化水素系溶剤等に特に限定されない。
上記アルコール系溶剤は、市販品のように水を含むものであってもよく、またこれをさらに水で希釈したものであってもよい。
上記のうちでも、加硫ゴム組成物を常温で膨潤しうるものが好ましく、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤が好ましく用いられる。
【0047】
過酸化物としては、公知の有機過酸化物を広く用いることができるが、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(商品名パークミルP(日本油脂社製)等)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(80%ジ−t−ブチルパーオキサイド溶液等)、p−メタンハイドロパーオキサイド(商品名パーメンタH(日本油脂社製)等)、クメンハイドロパーオキサイド(商品名パークミルH−80(日本油脂社製)等)等の有機過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミン等とのレドックス系触媒;過硫酸アンモニウム;アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル発生剤等を挙げることができる。これら過酸化物は、爆発防止のために水等を含んでいてもよい。
これらのうちでも特に過酸化ベンゾイルが好ましい。
【0048】
該方法において加硫ゴム組成物を液状化させる処理液は、上記の有機溶剤に過酸化物を0. 01〜50%、好ましくは0.1〜25%、さらに好ましくは0.5〜10%の濃度で含有するものを用いる。この範囲であると、反応が効率的に進むという利点がある。該処理液は、有機溶剤および/または過酸化物を2種以上含有していてもよい。
【0049】
該方法においては、処理液として、好ましくは過酸化ベンゾイルを0.01〜50%含有するトルエン溶液を用いることができる。また処理液は、上記過酸化物を含む有機溶剤をベースとして、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。
【0050】
該方法においては、過酸化物を含有した上記有機溶剤中にゴム組成物を浸せきまたは浸せき撹はんするが、この際、ゴム組成物と有機溶剤との比、ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)が30以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは5以下となるように浸せきまたは浸せき撹はんする。この比が100を超えると、ゴム等の分解速度が遅くなる場合があり好ましくない。
その他の条件等は、国際公開第00/69953号パンフレットに詳しく記載されている。
なお、該過酸化物分解法では、上記有機溶媒に浸せきしたまま、上記衝突工程に付してもよい。
【0051】
低温熱分解法は、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0052】
該熱処理は、ゴム成形品を220〜400℃に加熱するが、この熱処理は、実質的に加熱前の外形を保持しうるように行われる。
なお、該方法において、実質的に加熱前の外形を保持するとは、外見上の分解変形を生じないことを意味し、例えば、立方体形状のゴム成形品は熱処理しても略立方体形状を保持していることを意味する。
【0053】
加熱装置としては、オーブン、管状炉等を用いることができる。
加熱は、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。加熱条件は、加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気等によっても異なるが、220〜400℃の温度範囲で、回収ゴムの所望分子量、収率等により適宜選択される。回収されるゴムの分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、ある程度までの高温側では高収率であるが分子量は低下する傾向がある。
【0054】
上記熱処理温度は常圧下での温度である。熱処理は、通常、常圧下で行われるが、これに限られない。
熱処理時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。
その他の条件等は、特開2002−265664号公報に詳しく記載されている。
【0055】
せん断熱分解法は、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0056】
(1)予備処理工程
ゴム成形品からゴム材料および/またはカーボンブラックを回収するに際して、まずゴム成形品にせん断を加える。せん断処理は、常温下、せん断により発生する熱のみで行うこともでき、具体的に摩耗試験機等を用いてせん断をかければ、最終的に熱変性の少ない高純度ゴムおよびカーボンブラックを回収することができる。
なおここで、高純度ゴムとは、IRスペクトルでミクロ構造的に酸化(C=Oピーク)が認められないか、みられても極わずかであることをいう。
【0057】
せん断処理は加熱下に行うこともできる。この際、220〜400℃に加熱して行えば、熱変性を抑制し高純度ゴムを回収でき、またカーボンブラックも高収率で回収することができる。加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気等によっても異なるが、上記温度範囲で、回収ゴムの所望分子量、収率等により適宜選択される。上記予備加熱温度は常圧下での温度である。予備加熱を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
【0058】
このような予備処理を行うための装置は特に限定されないが、例えば、一軸または二軸押出機、ひきうす機、磨耗試験機、バフ機等を用いれば加熱とせん断とを同時にかけることができる。
上記せん断処理後にゴム成形品は、粉末状、塊状あるいはストランド状等で得られる。
【0059】
加熱は、空気中、窒素ガス中等の不活性雰囲気いずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記温度範囲での加熱を続けても外観上、分解を確認することは困難であるが、空気中で加熱した場合には、わずかではあるが回収ゴムに酸化がみられる。なおこの酸化はIRスペクトルで確認しうるが、実用上はほとんど支障はない。また空気中で予備加熱を行った場合には、不活性雰囲気中で加熱した場合に比べ、重量平均分子量(Mw)の低いゴムが回収される傾向があり、また複数の分子量分布を有する傾向がある。必要に応じて例えば、高分子量成分を分離することができる。
【0060】
加熱条件に関しては、回収されるゴムの分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、ある程度までの高温側では高収率であるが分子量は低下する傾向がある。
加熱時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。長時間加熱してもゴム回収率は顕著に高くならず、ゴム分子量は低下する傾向がある。したがって加熱時間は最長でも40分程度、好ましくは30分程度までである。
【0061】
予備処理されるゴム成形品がブチルゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜350℃であることが望ましく、好ましくは250〜330℃である。予備処理されるゴム成形品がイソプレンゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜300℃であることが望ましく、この範囲の温度であれば、予備加熱後に、通常、重量平均分子量(Mw)15000以上の高分子量のゴムを抽出回収することができ、また、カーボンブラックとの分離能にも優れる。
イソプレンゴム成形品の予備加熱温度は好ましくは250〜280℃であり、この好ましい温度であれば、最終的に空気中でもMw3万以上、好ましくは5万以上、不活性ガス雰囲気であればより高い分子量のゴムを容易に回収することができる。
【0062】
上記のようにせん断と加熱とを同時に行う予備処理によれば、熱処理時にせん断を加えずに予備処理する場合に加え、抽出予備処理に必要な加熱温度を低下させることができる。特にイソプレンゴム成形品より高温加熱が必要なブチルゴム成形品の前処理には好適であり、高純度ブチルゴムを回収することができる。
具体的に、例えば、ブラダー(ブチルゴム成形品)を二軸押出機(スクリュー径44mm、L/D=50)に投入し、回転数250rpm、シリンダー内温度300℃で7分間で送出することによりせん断をかけ予備処理した場合には、最終的にMw10万以上の高純度ブチルゴムを80%以上の回収率で得ることができ、また、カーボンブラックとの分離能にも優れる。
なお、この回収率は、回収処理原料として既知組成のゴム成形品(加硫)を供した時、該ゴム成形品中のゴム量に対する回収率として求められる値である。
【0063】
(2)有機溶媒での抽出および(4)カーボンブラックの回収工程は、上記低温熱分解法と同様であるので、特開2002−265664号公報を参照でき説明を省略する。
【0064】
上記直接熱分解法、過酸化物分解法、低温熱分解法およびせん断熱分解法に用いられるゴム組成物は、ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物であるが、各種添加剤等を含有する組成物であってもよい。
該ゴム組成物は、特に制限されず、加硫されていても、加硫されていなくてもよく、部分的に加硫されているもの、加硫度が充分でないものも含まれる。また、該ゴム組成物は成形されたものであってもよい。
【0065】
該ゴム組成物に含有されるゴムとしては、ジエン系ゴムが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR、NIR、NBIR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
上記ゴムは、1種を用いても、2種以上を併用して用いても、また、これらをブレンドして用いてもよい。
【0066】
該ゴム組成物は、上記ゴム、本発明のカーボンブラックの他に、充填剤、加硫剤、樹脂、エラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、各種配合剤として、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤等が挙げられる。
上記ゴム副資材としては、例えば、スチールコード等の鋼材、ポリエステルカーカスコード等の繊維等が挙げられる。
これらの各成分の含有量も特に限定されない。
【0067】
該分解されるゴム組成物中のカーボンブラックの含量は、特に限定されないが、上記ゴム100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。
【0068】
上記ゴム組成物が成形されたものとしては、具体的に、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナー等の自動車用ゴム部品;ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキン等のゴム製品;および精錬屑、加工屑等の成形屑ゴム等を挙げることができる。これらは、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることが望ましい。
未使用のゴム廃材としては、例えば、タイヤ等のゴム製品を製造する際に、混練り、成形工程等で排出される早期加硫、加硫むら(焼け、スコーチ)を起こしたゴム破材、加硫工程で排出されるいわゆるだれ等を起こした不良ゴム製品、加硫部分と未加硫部分とが混在したもの、全体的に架橋の程度が低いもの、鋼材、有機繊維等の他部材が付着したもの等の様々な形態の成形屑を挙げることができる。
これらのうちでも、タイヤあるいはその成形屑ゴムは、天然ゴムおよびイソプレンを高純度で回収しうるゴム廃材であり、好ましい。またブチルゴム原料の自動車用ゴム部品廃材等も好ましい。
【0069】
上記分解されるゴム等の形状は、特に限定されないが、分解処理による分解効率等を考慮して適当な大きさに切断し細分化するのが好ましい。
【0070】
さらに、本発明のゴム中における分散度改善方法は、以下の工程を含むゴム中における分散度改善方法も好ましい。
すなわち、ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させてカーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、前記調製工程により得られたカーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法(本発明の第3態様)である。
【0071】
該第3態様において、回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程は、上記第1態様で説明した溶剤に、回収カーボンブラックを分散させる工程であり、常法にしたがって、行うことができる。分散液は上記衝突工程の前に予め調製しておくのが好ましい。
なお、回収カーボンブラックを均一に分散させにくいときは、各種分散機、例えば、超音波分散機等を用いて行ってもよい。
【0072】
第3態様の回収工程は、上記第2態様の回収工程と同様であり、第3態様の衝突工程は、上記第1態様の衝突工程と同様である。
【0073】
<本発明の製造方法>
本発明は、また、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法を提供する。
本発明の製造方法において、衝突工程は上記本発明の方法で説明した衝突工程と基本的に同様であるので、詳細は省略する。
本発明の製造方法においては、上記衝突工程を行った後の処理(例えば、カーボンブラック分散液の溶剤除去、乾燥処理工程)等を本発明の方法で説明した処理と同様にしてゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックを製造できる。
【0074】
本発明の製造方法において、好ましい態様等も上記本発明の方法と基本的に同様であるので、詳細は省略する。
【0075】
本発明は、また、上記本発明の方法および本発明の製造方法により得られるカーボンブラックを提供する。
該カーボンブラックは、上記衝突工程を経て得られるので、粒子径が小さく粒子分布も狭くなる。また、該カーボンブラックは、ゴム中における分散度が高くなり、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性にも優れる。
【0076】
本発明は、さらに、本発明のカーボンブラックを含有するゴム組成物(以下、「本発明の組成物」という。)を提供する。
本発明の組成物は、上記本発明のカーボンブラックを1種以上含有する組成物であれば、それ以外の添加剤およびゴム等は特に限定されない。
該添加剤として、例えば、充填剤、加硫剤、樹脂、エラストマー、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤等が挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、特に限定されず、該組成物が用いられる用途、または該組成物に要求される特性等を考慮して一般的な配合量とすることができる。
【0077】
ゴム組成物に含有されるゴムとしては、特に限定されず、一般に用いられる各種ゴムを挙げることができ、好ましくは上記したジエン系ゴムが挙げられる。
本発明のゴム組成物中の本発明のカーボンブラックの含有量は、特に限定されず、該組成物が用いられる用途、または該組成物に要求される特性等を考慮して任意に調整できる。例えば、ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。その上限は、130質量部であるのが好ましく、100質量部であるのがより好ましい。
【0078】
本発明の組成物は、上記本発明のカーボンブラック1種以上と、ゴムと、所望により上記添加剤とを混合し通常の方法、例えば、一軸または二軸押出機、バンバリミキサー、ニーダー等を用いて、50℃〜180℃程度に加熱下、混練して製造することができる。
【0079】
本発明のカーボンブラックはゴムに均一に分散できゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性に優れるため、該カーボンブラックを含有する本発明の組成物は、ゴム組成物が用いられる用途であれば特に限定されず種々の用途に用いることができる。例えば、上記特性を生かして自動車等のタイヤ、ケーブル、シート、パッキン、成形屑ゴム、ホース、ベルト等の各種ゴム製品等として利用できる。これらの用途に用いられる際には、さらに他の構成材料と複合化されていてもよい。
なお、本発明の組成物の用途は、上記した用途に限定されないのはもちろんである。
【0080】
【実施例】
次に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
[分散度改善方法およびカーボンブラックの製造方法]
[実施例1]
<カーボンブラックの回収工程>
(回収カーボンブラック1:せん断熱分解法>
(1)組成既知のタイヤベント(TBSトレッド部)を、二軸押出機(スクリュー径44mm、L/D=50)に投入し混練した。混練条件は、フィード量260kg/時間、回転数250rpm、入口部温度120℃、シリンダー内温度290℃、出口部温度210℃、混練時間7分であった。
(2)該二軸押出機から出たストランドを冷却後5mm角のサイコロ状に切断した。その30gをトルエン270mL中に浸せきし、24時間室温でゆっくりかく拌した後、遠心分離し、トルエン抽出分と抽出残物とを分離した。
(4)抽出残物は、窒素雰囲気中、800℃で30分熱処理して、カーボンブラックを回収した(せん断熱分解法)。該せん断熱分解法により回収されたカーボンブラックを回収カーボンブラック1とする。
なお、トルエン抽出分はエバポレータでトルエンを除去しゴムを回収した。
【0082】
<回収カーボンブラックの分散液の調製工程>
上記回収カーボンブラック1を、カーボンブラック濃度10質量%になるように水に投入しかく拌して均一に分散させ、カーボンブラックの分散液を得た。
【0083】
<回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程>
(株)スギノマシン製商品名アルティマイザーシステム(型番HJP−25030)および該カーボンブラックの分散液1を用いて、下記の条件にて衝突工程を10回繰り返して行った。
衝突工程条件:吐出圧力245MPa、流量3L/min、ノズル径0.17mm
上記衝突工程の後、カーボンブラックの分散液の水を除去し、自然乾燥および真空乾燥させて、本発明のカーボンブラック1を得た。
【0084】
[実施例2]
<カーボンブラックの回収工程>
(回収カーボンブラック2:直接熱分解法>
組成既知のTBSトレッド部と同様の組成を有する加硫ゴム組成物を用いて、カーボンブラックの回収工程を行った。具体的には、該加硫ゴム組成物を管状炉に投入し窒素雰囲気中800℃で30分熱処理し、カーボンブラックを回収した(直接熱分解法)。該直接熱分解法により回収されたカーボンブラックを回収カーボンブラック2とする。
なお、上記加硫ゴム組成物に含まれるカーボンブラックはN118のカーボンブラックであり、ゴムは天然ゴムであった。
【0085】
<回収カーボンブラックの分散液の調製工程>
上記回収カーボンブラック2を用いて、実施例1と同様にして、カーボンブラックの分散液2を得た。
【0086】
<回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程>
該カーボンブラックの分散液2を用いて、上記実施例1と同様にして、本発明のカーボンブラック2を得た。
【0087】
[比較例1]
実施例1で用いたタイヤベントに含まれていたカーボンブラックと同じ種類の原料カーボンブラック(N118)を準備した。
【0088】
[粒子径の測定]
上記実施例および比較例で得られた回収カーボンブラック1および2、本発明のカーボンブラック1および2、ならびに、原料カーボンブラックについて、それらの粒子径を、粒度分析計(LA−910W型、堀場製作所製)を用いて測定し、粒子径(メジアン径)を算出した。分散液は、溶媒として水を用い、各カーボンブラックを超音波で3分間分散させて調製した。
その結果を、第1表および図1〜5に示す。
図1は本発明のカーボンブラック1の粒度分布グラフであり、図2は本発明のカーボンブラック2の粒度分布グラフであり、図3は回収カーボンブラック1の粒度分布グラフであり、図4は回収カーボンブラック2の粒度分布グラフであり、図5は原料カーボンブラックN118の粒度分布グラフである。
【0089】
【表1】
【0090】
[ゴム組成物]
[実施例3、4および比較例2〜5]
上記実施例1、2および比較例1で得られた各種カーボンブラックをそれぞれ用いて加硫ゴム組成物を得た。
すなわち、本発明のカーボンブラック1(実施例3)、回収カーボンブラック1(比較例2)、および原料カーボンブラック(比較例3)をそれぞれ用いて、下記組成のゴム組成物とし、B型バンバリミキサー(型番BB−2)を用いて混合した後加硫して、加硫ゴム組成物を得た。
また、本発明のカーボンブラック2(実施例4)、回収カーボンブラック2(比較例4)、および原料カーボンブラック(比較例5)をそれぞれ用いて、下記組成物のゴム組成物とし、ブラベンダー(型番PL2000)を用いて混合した後加硫して、加硫ゴム組成物を得た。
【0091】
<組成>
・天然ゴム 100質量部
・上記カーボンブラック(正味) 50質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・ステアリン酸 3質量部
・老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン) 1質量部
・加硫促進剤(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド) 1.2質量部
・イオウ 1.8質量部
【0092】
上記で得られた各ゴム組成物について、カーボンブラックの分散度、ランボーン摩耗、機械的特性および損失正接(tanδ)を測定した。結果を第2表および第3表および図6〜図9に示す。
【0093】
<ゴム中におけるカーボンブラックの分散度>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物について、ASTM D−2663に準拠した方法にて測定した。
詳しくは、光学顕微鏡反射法により、加硫ゴム断面に見える未分散カーボンブラックの存在を統計処理することにより分散カーボンブラック量の測定を行った。数値が大きい方がゴムへの分散性に優れる。
【0094】
図6は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック1を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック1を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
図7は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック2を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック2を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
各図の撮影は、光学顕微鏡にPMG3(オリンパス社製)、カメラにC1000(浜松フォトニクス社製)を用いて行った。
【0095】
本発明のカーボンブラック1はゴム中によく分散しているのが、図6(a)において、黒色のカーボンブラック凝集体が白色のゴムに点在し、原料カーボンブラックを用いた図6(c)の状態に近いことから分かる。対して、回収カーボンブラック1はゴム中に分散していないことが、図6(b)において、黒色のカーボンブラック凝集体が写真の大部分を占めていることから分かる。
同様の結果が、図7から分かる。
【0096】
<耐摩耗性(ランボーン摩耗)>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物について、ランボーン摩耗を測定することにより、ゴム組成物の耐摩耗性を評価した。
ランボーン摩耗は、JIS K6264−1993に記載の方法に準拠して測定した。
なお、試験結果は、混合方法に対応して比較例3または比較例5で得られたゴム組成物の測定値を100とした場合の相対値で示した。数値が大きい方が耐摩耗性に優れる。
【0097】
<機械的特性>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物を、厚さ1mmのダンベル状試験片(JIS3号)に切り出し、JIS K6251−1993に準拠して、300%モジュラス、破断強度、破断伸びおよびS−S(応力−歪)特性を測定した。
S−S(応力−歪)特性を示すグラフは、混合方法に対応して作成した。図8は実施例3、比較例2および比較例3で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフであり、図9は実施例4、比較例4および比較例5で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフである。
【0098】
<損失正接(tanδ)>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物を、長さ100mm、幅5mm、厚さ1mmの短冊状試験片に切り出し、JIS K6394に準拠する方法(初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、60℃)により測定した。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
第1表〜第3表および図1〜図9から明らかなように、衝突工程を行うことを特徴とする本発明の方法および本発明の製造方法により得られる本発明のカーボンブラック1および2は、それぞれ対応する該衝突工程前の回収カーボンブラック1および2に対して、ゴム中における分散度が著しく改善された。また、本発明のカーボンブラック1および2を用いたゴム組成物(実施例3および4)は、耐摩耗性、さらには機械的特性にも優れた。そして、これらの特性が原料カーボンブラックを用いた場合と同等程度であることが確認されたことから、本発明のカーボンブラックは、原料カーボンブラックが用いられる種々の用途に特に制限なく再利用可能である。
対して、回収カーボンブラック1および2をそのまま用いた場合(比較例2および4)は、ゴムの分散性に極めて劣り、また、耐摩耗性にも劣った。このとき、ブラベンダー混合よりバンバリー混合の方が、分散性および耐摩耗性の悪さは顕著であった。したがって、これらの回収カーボンブラックは、再利用される用途が限定される可能性がある。
【0102】
【発明の効果】
本発明により、ゴム中における分散度に劣る回収カーボンブラックのゴム中における分散度を改善する方法を提供できる。
また、本発明により、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法を提供できる。
さらに、本発明により、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラックおよびそれを含有するゴム組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のカーボンブラック1の粒度分布グラフである。
【図2】図2は、本発明のカーボンブラック2の粒度分布グラフである。
【図3】図3は、回収カーボンブラック1の粒度分布グラフである。
【図4】図4は、回収カーボンブラック2の粒度分布グラフである。
【図5】図5は、原料カーボンブラックN118の粒度分布グラフである。
【図6】図6は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック1を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック1を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
【図7】図7は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック2を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック2を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
【図8】図8は、実施例3、比較例2および比較例3で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例4、比較例4および比較例5で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られるカーボンブラックおよび該カーボンブラックを含有するゴム組成物に関し、詳しくは、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法、それにより得られる、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラックならびに該カーボンブラックを含有するゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄物処理、特に産業廃棄物からの原材料回収・再利用は重要な社会的課題である。排出量の多いタイヤ等のゴム廃材についても、原材料回収・再利用が望まれるが、加硫安定化されたゴム廃材から原料として再使用可能な品質のゴム、カーボンブラック等を回収することは容易ではなく、そのほとんどが燃料として直接焼却されているのが実情である。
例えば、ゴム廃材から原材料を回収しようとする際には、高温分解(通常500℃以上)または高圧分解(通常2MPa以上)によるのが一般的である。このような高温分解または加圧分解に用いるための触媒、溶媒等も種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
一般的に、ゴム廃材を上記500℃以上の高温で熱分解して得られるカーボンブラックは、該ゴム廃材に原料として使用されたカーボンブラックと比して品質が悪く再利用することは困難であり、また、上記2MPa以上の高圧で分解して得られるカーボンブラックは、分離困難な油(場合によっては未分解架橋ゴム)等と混合状態となり品質が悪く再利用は実質的に困難であるとされている。
【0004】
また、上記分解方法の他にも、ゴム廃材等からカーボンブラックを回収する方法が提案されているが、やはり、回収カーボンブラックの品質が悪く再利用は実質的に困難である(例えば、非特許文献1、2参照。)。
実際にカーボンブラックの回収方法においては、再利用に耐えうる回収カーボンブラックはこれまでのところほとんど得られてなく、また、回収カーボンブラックを再利用可能な品質に向上させる方法等についても提案されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,704,108号明細書
【特許文献2】米国特許第3,996,022号明細書
【特許文献3】欧州特許第71,789号明細書
【特許文献4】特開昭60−40193号公報
【特許文献5】特開平7−310076号公報
【非特許文献1】日本ゴム協会誌、(社)日本ゴム協会、1978年、第51巻、p.823
【非特許文献2】日本ゴム協会誌、(社)日本ゴム協会、1979年、第52巻、p.575
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、ゴム組成物から回収できるカーボンブラックであって、原料として用いられるカーボンブラックと同等程度の品質を有する回収カーボンブラックおよび該カーボンブラックの回収方法等について、提案している。
【0007】
例えば、過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せきかく拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法が挙げられる(国際公開第00/69953号パンフレット)。
【0008】
また、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法およびそれにより回収されたカーボンブラックが挙げられる(特開2002−265664号公報)。
【0009】
さらに、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法およびそれにより回収されたカーボンブラックが挙げられる(特開2003−41045号公報)。
【0010】
これらの分離方法および回収方法で回収される回収カーボンブラックは、ゴム組成物の原料として用いられたカーボンブラックにはない特異な特性を有し、また、原料として用いられたカーボンブラックと同等程度の品質を有する。
このような特性等を有する回収カーボンブラックは、産業上の利用価値が大きく、近年の廃棄物処理からの原材料回収・再利用という社会的課題を満足できるものである。
【0011】
しかし、回収カーボンブラックが再利用される用途が広がりつつある現状および回収カーボンブラックの更なる高品質化が求められる現状においては、上記方法から回収される回収カーボンブラックについても同様なことがいえる。
例えば、上記方法から回収される回収カーボンブラックは、ゴム組成物としたときの物性に特に影響するゴム中における分散度が低く再利用される用途が限られてしまう場合がある。
【0012】
回収カーボンブラックのゴムへの低分散度という問題点は、本発明者らが提案した上記回収方法等により回収される回収カーボンブラックに限られず、従来から知られているいずれの回収方法等により回収される回収カーボンブラックにおいても同様に存在し、回収カーボンブラックを広い用途に再利用する上で大きな課題となっている。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、回収カーボンブラックのゴム中における分散度を改善する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、ゴム中における分散度に優れるカーボンブラックおよびそれを含有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、回収カーボンブラックのゴム中における分散度について、種々検討したことろ、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる工程を行って得られるカーボンブラックがゴム中における分散度が著しく向上することを知見し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(1’)回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
該衝突工程により、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラックを得ることができる。また、該カーボンブラックは、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、さらには機械的特性にも優れる。
該衝突工程に用いられる回収カーボンブラックは、特に限定されず、いずれの回収方法により回収される回収カーボンブラックでもよい。好ましくは後述する回収方法により回収される回収カーボンブラックである。
【0016】
(2)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(2’)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0017】
(3)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、
前記調製工程により得られた回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(3’)ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、
前記調製工程により得られた回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0018】
(4)前記衝突工程が、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置を用いて行う上記(1)〜(3)のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(4’)前記衝突工程が、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置を用いて行う上記(1’)〜(3’)のいずれかに記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0019】
(5)前記乳化分散流体または/および微粒子を得る装置が、噴流衝合装置である上記(4)に記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(5’)前記乳化分散流体または/および微粒子を得る装置が、噴流衝合装置である上記(4’)に記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0020】
(6)前記噴流衝合装置が、湿式超微粒化装置アルティマイザーシステムである上記(5)に記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(6’)前記噴流衝合装置が、湿式超微粒化装置アルティマイザーシステムである上記(5’)に記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
【0021】
(7)前記回収工程が、以下に示す回収方法群より選択される方法である上記(2)〜(6)のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
(7’)前記回収工程が、以下に示す回収方法群より選択される方法である上記(2’)〜(6’)のいずれかに記載のゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法。
<回収方法群>
方法A:カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品を、500℃以上の温度で加熱することにより、ゴム成分を分解しカーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法(本発明において、「直接熱分解法」という。)
方法B:過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せきかく拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法(本発明において、「過酸化物分解法」という。)
方法C:(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法(本発明において、「低温熱分解法」という。)
方法D:(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法(本発明において、「せん断熱分解法」という。)
【0022】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法により得られるカーボンブラック。
(8’)上記(1’)〜(7’)のいずれかに記載のカーボンブラックの製造方法により得られるカーボンブラック。
該カーボンブラックは、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れる。また、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、さらには機械的特性にも優れる。
【0023】
(9)上記(8)または上記(8’)に記載のカーボンブラックを含有するゴム組成物。
該ゴム組成物は、上記カーボンブラックを含有するため、ゴムに均一に分散し、ゴム組成物としての耐摩耗性、さらには機械的特性に優れる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明は、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法(以下、「本発明の方法」という。)、および、該衝突工程を含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)である(第1態様)。
【0025】
本発明の方法および本発明の製造方法は、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を行うことを特徴とし、これにより、回収カーボンブラックの粒子径が小さく均一(粒度分布が狭い)となるだけでなく、ゴム中における分散度が著しく改善されゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性も向上するカーボンブラックを得ることができる。
【0026】
上記衝突工程により、該工程処理後のカーボンブラック(以下、「本発明のカーボンブラック」という場合がある。)のゴム中における分散度が著しく向上する理由は詳細には不明であるが、本発明者は以下のように考えている。
回収カーボンブラックの分散液同士を高圧にて噴射し衝突させると、カーボンブラック凝集体が破砕されると共に他の物性、例えば、表面特性等も変化すると考えられる。現時点ではまだ明らかではないが、この物性変化等により、他の粉砕方法等では実現し得なかったゴム中における分散度の著しい向上が実現できるものと予想される。そして、該分散度が向上することにより、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性も向上する。
【0027】
<本発明の方法>
上記衝突工程について説明する。
該工程は、高圧の回収カーボンブラックの分散液同士を互いに衝突させる工程であり、詳しくは、回収カーボンブラックを溶剤に分散させた回収カーボンブラックの分散液を、2方向以上から、好ましくは2方向からそれぞれ高圧で噴射して噴射された分散液同士を互いに衝突させることにより該溶剤に回収カーボンブラックを乳化または該回収カーボンブラックを微粒化する工程である。
【0028】
該回収カーボンブラックの分散液の調製に用いる溶剤は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等が挙げられ、取扱いの容易性等の観点から水またはアルコール溶剤であるのがより好ましく、特に水であるのが好ましい。
該分散液の濃度は、特に限定されないが、操作容易性および本発明のカーボンブラックのゴム中における分散度に優れる点で、1〜10質量%であるのが好ましく、3〜7質量%であるのがより好ましい。
該分散液の温度は、特に限定されず、取扱い性に優れる点で、常温であるのが好ましい。
該分散液の調製方法は後述する第3態様で説明する。
【0029】
上記衝突工程は、このようにして得られる回収カーボンブラックの分散液を、2方向以上から、好ましくは2方向からそれぞれ高圧で噴射して、該分散液同士を互いに衝突させる。
このときの条件等は、特に限定されないが、操作容易性および本発明のカーボンブラックのゴム中における分散度に優れる点で、例えば、以下の条件が好ましい。
高圧で噴射されるカーボンブラックの分散液の吐出圧力は、70〜245MPaであるのが好ましく、170〜245MPaであるのがより好ましい。
分散液の噴射径(ノズルを用いる場合はノズル径)は、0.1〜0.5mmであるのが好ましく、0.2〜0.3mmであるのがより好ましい。
分散液の流量は、0.5〜14L/minであるのが好ましく、3〜6L/minであるのがより好ましい。
【0030】
衝突工程は、1回行ってもよく、同一の条件で複数回(連続して)行ってもよく、また、異なる条件で複数回(連続して)行ってもよい。また、他の工程を行った後に再度該衝突工程を行ってもよい。
衝突工程における上記した条件以外の条件は、特に制限されず、操作性等を考慮して任意に設定できる。
【0031】
衝突工程は、高圧で噴射可能な手段、例えば、ノズル手段等を有する装置であれば、特に限定されず、いずれの装置をも用いることができる。例えば、該高圧で噴射可能な手段を備える衝合装置、乳化装置、粉砕装置、混合装置等が挙げられる。
好ましくは、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置である。
該装置としては、例えば、次に示す装置が挙げられる。
少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る噴流衝合装置において、内部チャンバを有するハウジングと、前記チャンバ内に高圧流体を噴射するように前記ハウジングに取り付けられた第1と第2のノズル手段とを備え、前記第1と第2のノズル手段は、互いの噴射流同士が各々のノズル出口より先方の一点で角度を有して交差するように夫々の噴射方向が定められていることを特徴とする噴流衝合装置(特開平10−337457号公報)である。
【0032】
また、上記衝合装置の他に、例えば、特開2001−269557号公報および特開2002−177809号公報に記載されている噴流衝合装置も好適に挙げられる。
他の装置としては、例えば、次に示す装置が挙げられる。
流体の乳化分散を行う装置において、高圧容器内に、高圧容器内の流体の流路に比べて径が小さな貫通孔が形成された板状体からなる乳化部が設けられており、乳化部の貫通孔の中央には、貫通孔に垂直な流出口が乳化部の板状体の側面へと連通しており、乳化部の貫通孔の互いに反対の方向から供給された流体は、乳化部の中央部において衝突して乳化させることを特徴とした乳化装置(特開平6−47264号公報)が挙げられる。
【0033】
より好ましくは、特開平10−337457号、特開2001−269557号および特開2002−177809号の各公報に記載の噴流衝合装置(湿式超微粒化装置)である。
これらの噴流衝合装置としては、例えば、(株)スギノマシン製の湿式超微粒化装置アルティマイザーシステム(機種名HJP−25005、HJP−17007、HJP−25030、HJP−17046、HJP−25060、HJP−17090、HJP−25080およびHJP−17140)等が特に好ましく挙げられる。
【0034】
これらの装置を用いて上記衝突工程を行う場合には、該衝突工程の条件等は、上記した条件の範囲内で各装置に応じて任意に選択することができる。
【0035】
上記衝突工程後は、カーボンブラックの分散液の溶剤を除去し、乾燥する工程を行うことにより、本発明のカーボンブラックを得ることができる。
溶剤の除去および乾燥は、該溶剤に応じて常法に従い行えばよい。
【0036】
上記衝突工程に用いる回収カーボンブラックは、ゴム廃材、ゴム成形品またはゴム組成物(本明細書においては、これらは特に区別しないで用いる。)等から回収されたものであれば、特に限定されず、いずれの方法で回収されたカーボンブラックであっても用いることができる。好ましくは後述する回収方法により得られる回収カーボンブラックである。
【0037】
本発明の方法は、上記衝突工程を含む方法であれば、特に限定されず、以下の工程を含む方法も好ましい。
すなわち、ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、該回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法(第2態様)である。
【0038】
第2態様において、該回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程は、上記第1態様で説明したのと同様である。
【0039】
ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程は、特に限定されず、いずれの回収方法を選択できる。
簡便である点で、以下に説明する回収方法であるのが好ましい。
【0040】
該好ましい回収方法としては、上記非特許文献1に記載の直接熱分解法、国際公開第00/69953号パンフレットB等に記載の過酸化物分解法、特開2002−265664号公報に記載の低温熱分解法、または、特開2003−41045号公報に記載のせん断熱分解法が挙げられる。
【0041】
これらの方法について、説明する。
直接熱分解法は、カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品を、500℃以上の温度で加熱することにより、ゴム成分を分解しカーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0042】
本発明において、直接熱分解法における加熱温度は、500〜1000℃であるのが好ましく、600〜800℃であるのがより好ましい。加熱時間は、15〜60分であるのが好ましく、30〜45分であるのがより好ましい。
該方法は、不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0043】
これまで該方法に関する多くの改良技術等が提案されており、様々なバリエーションがある。しかし、その本質は、高温熱処理により加硫ゴムのゴム成分をオイル、ガスとして回収し、カーボンブラック成分をその残渣(回収カーボンブラック)として回収するものである。
【0044】
上記過酸化物分解法は、過酸化物を0.01〜50%含有する有機溶剤に、加硫ゴムと少なくとも充填剤とを含有する加硫ゴム組成物を、加硫ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)比が30以下となるように浸せきまたは浸せきかく拌し、加硫ゴム組成物を液状化させ、加硫ゴム組成物中のゴム成分と充填剤成分とを分離することを特徴とする加硫ゴム組成物の分離方法である。
【0045】
ここで、加硫ゴムは、これらのゴムに適した公知の加硫剤で加硫されていればよく、加硫剤としては、例えば、非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛等が挙げられる。
【0046】
該方法においては、処理液として過酸化物を含有する有機溶剤を用いる。
有機溶剤としては、常圧常温下で液状であって、過酸化物を溶解しうるものであれば公知のものを広く用いることができる。具体的には炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤等を挙げることができ、炭化水素系溶剤は、飽和炭化水素系溶剤または不飽和炭化水素系溶剤いずれであってもよく、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環族炭化水素系溶剤等に特に限定されない。
上記アルコール系溶剤は、市販品のように水を含むものであってもよく、またこれをさらに水で希釈したものであってもよい。
上記のうちでも、加硫ゴム組成物を常温で膨潤しうるものが好ましく、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤が好ましく用いられる。
【0047】
過酸化物としては、公知の有機過酸化物を広く用いることができるが、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(商品名パークミルP(日本油脂社製)等)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(80%ジ−t−ブチルパーオキサイド溶液等)、p−メタンハイドロパーオキサイド(商品名パーメンタH(日本油脂社製)等)、クメンハイドロパーオキサイド(商品名パークミルH−80(日本油脂社製)等)等の有機過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミン等とのレドックス系触媒;過硫酸アンモニウム;アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル発生剤等を挙げることができる。これら過酸化物は、爆発防止のために水等を含んでいてもよい。
これらのうちでも特に過酸化ベンゾイルが好ましい。
【0048】
該方法において加硫ゴム組成物を液状化させる処理液は、上記の有機溶剤に過酸化物を0. 01〜50%、好ましくは0.1〜25%、さらに好ましくは0.5〜10%の濃度で含有するものを用いる。この範囲であると、反応が効率的に進むという利点がある。該処理液は、有機溶剤および/または過酸化物を2種以上含有していてもよい。
【0049】
該方法においては、処理液として、好ましくは過酸化ベンゾイルを0.01〜50%含有するトルエン溶液を用いることができる。また処理液は、上記過酸化物を含む有機溶剤をベースとして、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。
【0050】
該方法においては、過酸化物を含有した上記有機溶剤中にゴム組成物を浸せきまたは浸せき撹はんするが、この際、ゴム組成物と有機溶剤との比、ゴム組成物(mg)/有機溶剤(mL)が30以下、好ましくは15以下、さらに好ましくは5以下となるように浸せきまたは浸せき撹はんする。この比が100を超えると、ゴム等の分解速度が遅くなる場合があり好ましくない。
その他の条件等は、国際公開第00/69953号パンフレットに詳しく記載されている。
なお、該過酸化物分解法では、上記有機溶媒に浸せきしたまま、上記衝突工程に付してもよい。
【0051】
低温熱分解法は、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、220〜400℃の温度で実質的に加熱前の外形を保持しうる熱処理を加えた後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0052】
該熱処理は、ゴム成形品を220〜400℃に加熱するが、この熱処理は、実質的に加熱前の外形を保持しうるように行われる。
なお、該方法において、実質的に加熱前の外形を保持するとは、外見上の分解変形を生じないことを意味し、例えば、立方体形状のゴム成形品は熱処理しても略立方体形状を保持していることを意味する。
【0053】
加熱装置としては、オーブン、管状炉等を用いることができる。
加熱は、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。加熱条件は、加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気等によっても異なるが、220〜400℃の温度範囲で、回収ゴムの所望分子量、収率等により適宜選択される。回収されるゴムの分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、ある程度までの高温側では高収率であるが分子量は低下する傾向がある。
【0054】
上記熱処理温度は常圧下での温度である。熱処理は、通常、常圧下で行われるが、これに限られない。
熱処理時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。
その他の条件等は、特開2002−265664号公報に詳しく記載されている。
【0055】
せん断熱分解法は、(1)カーボンブラックおよびゴムを含むゴム成形品に、せん断力を加える予備処理を行った後、(2)有機溶媒で抽出して溶媒抽出分と抽出残物とを分離し、(4)分離された抽出残物を、(i)500℃以上の温度で加熱するか、または(ii)過酸化物を0.01〜50%含むゴム溶解剤に溶解することにより、ゴム成分を分解し、カーボンブラックを回収する、ゴム成形品からの材料回収方法である。
【0056】
(1)予備処理工程
ゴム成形品からゴム材料および/またはカーボンブラックを回収するに際して、まずゴム成形品にせん断を加える。せん断処理は、常温下、せん断により発生する熱のみで行うこともでき、具体的に摩耗試験機等を用いてせん断をかければ、最終的に熱変性の少ない高純度ゴムおよびカーボンブラックを回収することができる。
なおここで、高純度ゴムとは、IRスペクトルでミクロ構造的に酸化(C=Oピーク)が認められないか、みられても極わずかであることをいう。
【0057】
せん断処理は加熱下に行うこともできる。この際、220〜400℃に加熱して行えば、熱変性を抑制し高純度ゴムを回収でき、またカーボンブラックも高収率で回収することができる。加熱原料(ゴム成形品)、処理雰囲気等によっても異なるが、上記温度範囲で、回収ゴムの所望分子量、収率等により適宜選択される。上記予備加熱温度は常圧下での温度である。予備加熱を常圧以外の圧力条件で行う場合には、選択される圧力下での上記常圧下での加熱温度に相当する温度が選択される。
【0058】
このような予備処理を行うための装置は特に限定されないが、例えば、一軸または二軸押出機、ひきうす機、磨耗試験機、バフ機等を用いれば加熱とせん断とを同時にかけることができる。
上記せん断処理後にゴム成形品は、粉末状、塊状あるいはストランド状等で得られる。
【0059】
加熱は、空気中、窒素ガス中等の不活性雰囲気いずれでもよいが、ゴムの変性(酸化)を避ける必要がある場合には不活性雰囲気で行うことが好ましい。上記温度範囲での加熱を続けても外観上、分解を確認することは困難であるが、空気中で加熱した場合には、わずかではあるが回収ゴムに酸化がみられる。なおこの酸化はIRスペクトルで確認しうるが、実用上はほとんど支障はない。また空気中で予備加熱を行った場合には、不活性雰囲気中で加熱した場合に比べ、重量平均分子量(Mw)の低いゴムが回収される傾向があり、また複数の分子量分布を有する傾向がある。必要に応じて例えば、高分子量成分を分離することができる。
【0060】
加熱条件に関しては、回収されるゴムの分子量および収率は、加熱時間よりも温度の影響を受ける傾向があり、具体的に上記温度範囲のうちでも低温側ではより高分子量のゴムを回収可能であるが収率は低下し、ある程度までの高温側では高収率であるが分子量は低下する傾向がある。
加熱時間は加熱環境にもよるが、通常10分程度であればよく、好ましくは15分程度である。長時間加熱してもゴム回収率は顕著に高くならず、ゴム分子量は低下する傾向がある。したがって加熱時間は最長でも40分程度、好ましくは30分程度までである。
【0061】
予備処理されるゴム成形品がブチルゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜350℃であることが望ましく、好ましくは250〜330℃である。予備処理されるゴム成形品がイソプレンゴムを原料とするものの場合には、上記加熱温度範囲のうちでも220〜300℃であることが望ましく、この範囲の温度であれば、予備加熱後に、通常、重量平均分子量(Mw)15000以上の高分子量のゴムを抽出回収することができ、また、カーボンブラックとの分離能にも優れる。
イソプレンゴム成形品の予備加熱温度は好ましくは250〜280℃であり、この好ましい温度であれば、最終的に空気中でもMw3万以上、好ましくは5万以上、不活性ガス雰囲気であればより高い分子量のゴムを容易に回収することができる。
【0062】
上記のようにせん断と加熱とを同時に行う予備処理によれば、熱処理時にせん断を加えずに予備処理する場合に加え、抽出予備処理に必要な加熱温度を低下させることができる。特にイソプレンゴム成形品より高温加熱が必要なブチルゴム成形品の前処理には好適であり、高純度ブチルゴムを回収することができる。
具体的に、例えば、ブラダー(ブチルゴム成形品)を二軸押出機(スクリュー径44mm、L/D=50)に投入し、回転数250rpm、シリンダー内温度300℃で7分間で送出することによりせん断をかけ予備処理した場合には、最終的にMw10万以上の高純度ブチルゴムを80%以上の回収率で得ることができ、また、カーボンブラックとの分離能にも優れる。
なお、この回収率は、回収処理原料として既知組成のゴム成形品(加硫)を供した時、該ゴム成形品中のゴム量に対する回収率として求められる値である。
【0063】
(2)有機溶媒での抽出および(4)カーボンブラックの回収工程は、上記低温熱分解法と同様であるので、特開2002−265664号公報を参照でき説明を省略する。
【0064】
上記直接熱分解法、過酸化物分解法、低温熱分解法およびせん断熱分解法に用いられるゴム組成物は、ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物であるが、各種添加剤等を含有する組成物であってもよい。
該ゴム組成物は、特に制限されず、加硫されていても、加硫されていなくてもよく、部分的に加硫されているもの、加硫度が充分でないものも含まれる。また、該ゴム組成物は成形されたものであってもよい。
【0065】
該ゴム組成物に含有されるゴムとしては、ジエン系ゴムが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR、NIR、NBIR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
上記ゴムは、1種を用いても、2種以上を併用して用いても、また、これらをブレンドして用いてもよい。
【0066】
該ゴム組成物は、上記ゴム、本発明のカーボンブラックの他に、充填剤、加硫剤、樹脂、エラストマー、各種配合剤、ゴム副資材を広く含有していてもよく、各種配合剤として、例えば、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤等が挙げられる。
上記ゴム副資材としては、例えば、スチールコード等の鋼材、ポリエステルカーカスコード等の繊維等が挙げられる。
これらの各成分の含有量も特に限定されない。
【0067】
該分解されるゴム組成物中のカーボンブラックの含量は、特に限定されないが、上記ゴム100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。
【0068】
上記ゴム組成物が成形されたものとしては、具体的に、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナー等の自動車用ゴム部品;ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキン等のゴム製品;および精錬屑、加工屑等の成形屑ゴム等を挙げることができる。これらは、必ずしも使用されたものでなくてもよいが、ゴム廃材であることが望ましい。
未使用のゴム廃材としては、例えば、タイヤ等のゴム製品を製造する際に、混練り、成形工程等で排出される早期加硫、加硫むら(焼け、スコーチ)を起こしたゴム破材、加硫工程で排出されるいわゆるだれ等を起こした不良ゴム製品、加硫部分と未加硫部分とが混在したもの、全体的に架橋の程度が低いもの、鋼材、有機繊維等の他部材が付着したもの等の様々な形態の成形屑を挙げることができる。
これらのうちでも、タイヤあるいはその成形屑ゴムは、天然ゴムおよびイソプレンを高純度で回収しうるゴム廃材であり、好ましい。またブチルゴム原料の自動車用ゴム部品廃材等も好ましい。
【0069】
上記分解されるゴム等の形状は、特に限定されないが、分解処理による分解効率等を考慮して適当な大きさに切断し細分化するのが好ましい。
【0070】
さらに、本発明のゴム中における分散度改善方法は、以下の工程を含むゴム中における分散度改善方法も好ましい。
すなわち、ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させてカーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、前記調製工程により得られたカーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程とを含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法(本発明の第3態様)である。
【0071】
該第3態様において、回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程は、上記第1態様で説明した溶剤に、回収カーボンブラックを分散させる工程であり、常法にしたがって、行うことができる。分散液は上記衝突工程の前に予め調製しておくのが好ましい。
なお、回収カーボンブラックを均一に分散させにくいときは、各種分散機、例えば、超音波分散機等を用いて行ってもよい。
【0072】
第3態様の回収工程は、上記第2態様の回収工程と同様であり、第3態様の衝突工程は、上記第1態様の衝突工程と同様である。
【0073】
<本発明の製造方法>
本発明は、また、回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法を提供する。
本発明の製造方法において、衝突工程は上記本発明の方法で説明した衝突工程と基本的に同様であるので、詳細は省略する。
本発明の製造方法においては、上記衝突工程を行った後の処理(例えば、カーボンブラック分散液の溶剤除去、乾燥処理工程)等を本発明の方法で説明した処理と同様にしてゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックを製造できる。
【0074】
本発明の製造方法において、好ましい態様等も上記本発明の方法と基本的に同様であるので、詳細は省略する。
【0075】
本発明は、また、上記本発明の方法および本発明の製造方法により得られるカーボンブラックを提供する。
該カーボンブラックは、上記衝突工程を経て得られるので、粒子径が小さく粒子分布も狭くなる。また、該カーボンブラックは、ゴム中における分散度が高くなり、ゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性にも優れる。
【0076】
本発明は、さらに、本発明のカーボンブラックを含有するゴム組成物(以下、「本発明の組成物」という。)を提供する。
本発明の組成物は、上記本発明のカーボンブラックを1種以上含有する組成物であれば、それ以外の添加剤およびゴム等は特に限定されない。
該添加剤として、例えば、充填剤、加硫剤、樹脂、エラストマー、活性剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、発泡助剤、補強剤、老化防止剤、着色剤、顔料、難燃剤、離型剤等が挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、特に限定されず、該組成物が用いられる用途、または該組成物に要求される特性等を考慮して一般的な配合量とすることができる。
【0077】
ゴム組成物に含有されるゴムとしては、特に限定されず、一般に用いられる各種ゴムを挙げることができ、好ましくは上記したジエン系ゴムが挙げられる。
本発明のゴム組成物中の本発明のカーボンブラックの含有量は、特に限定されず、該組成物が用いられる用途、または該組成物に要求される特性等を考慮して任意に調整できる。例えば、ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。その上限は、130質量部であるのが好ましく、100質量部であるのがより好ましい。
【0078】
本発明の組成物は、上記本発明のカーボンブラック1種以上と、ゴムと、所望により上記添加剤とを混合し通常の方法、例えば、一軸または二軸押出機、バンバリミキサー、ニーダー等を用いて、50℃〜180℃程度に加熱下、混練して製造することができる。
【0079】
本発明のカーボンブラックはゴムに均一に分散できゴム組成物としたときの耐摩耗性、機械的特性に優れるため、該カーボンブラックを含有する本発明の組成物は、ゴム組成物が用いられる用途であれば特に限定されず種々の用途に用いることができる。例えば、上記特性を生かして自動車等のタイヤ、ケーブル、シート、パッキン、成形屑ゴム、ホース、ベルト等の各種ゴム製品等として利用できる。これらの用途に用いられる際には、さらに他の構成材料と複合化されていてもよい。
なお、本発明の組成物の用途は、上記した用途に限定されないのはもちろんである。
【0080】
【実施例】
次に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
[分散度改善方法およびカーボンブラックの製造方法]
[実施例1]
<カーボンブラックの回収工程>
(回収カーボンブラック1:せん断熱分解法>
(1)組成既知のタイヤベント(TBSトレッド部)を、二軸押出機(スクリュー径44mm、L/D=50)に投入し混練した。混練条件は、フィード量260kg/時間、回転数250rpm、入口部温度120℃、シリンダー内温度290℃、出口部温度210℃、混練時間7分であった。
(2)該二軸押出機から出たストランドを冷却後5mm角のサイコロ状に切断した。その30gをトルエン270mL中に浸せきし、24時間室温でゆっくりかく拌した後、遠心分離し、トルエン抽出分と抽出残物とを分離した。
(4)抽出残物は、窒素雰囲気中、800℃で30分熱処理して、カーボンブラックを回収した(せん断熱分解法)。該せん断熱分解法により回収されたカーボンブラックを回収カーボンブラック1とする。
なお、トルエン抽出分はエバポレータでトルエンを除去しゴムを回収した。
【0082】
<回収カーボンブラックの分散液の調製工程>
上記回収カーボンブラック1を、カーボンブラック濃度10質量%になるように水に投入しかく拌して均一に分散させ、カーボンブラックの分散液を得た。
【0083】
<回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程>
(株)スギノマシン製商品名アルティマイザーシステム(型番HJP−25030)および該カーボンブラックの分散液1を用いて、下記の条件にて衝突工程を10回繰り返して行った。
衝突工程条件:吐出圧力245MPa、流量3L/min、ノズル径0.17mm
上記衝突工程の後、カーボンブラックの分散液の水を除去し、自然乾燥および真空乾燥させて、本発明のカーボンブラック1を得た。
【0084】
[実施例2]
<カーボンブラックの回収工程>
(回収カーボンブラック2:直接熱分解法>
組成既知のTBSトレッド部と同様の組成を有する加硫ゴム組成物を用いて、カーボンブラックの回収工程を行った。具体的には、該加硫ゴム組成物を管状炉に投入し窒素雰囲気中800℃で30分熱処理し、カーボンブラックを回収した(直接熱分解法)。該直接熱分解法により回収されたカーボンブラックを回収カーボンブラック2とする。
なお、上記加硫ゴム組成物に含まれるカーボンブラックはN118のカーボンブラックであり、ゴムは天然ゴムであった。
【0085】
<回収カーボンブラックの分散液の調製工程>
上記回収カーボンブラック2を用いて、実施例1と同様にして、カーボンブラックの分散液2を得た。
【0086】
<回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程>
該カーボンブラックの分散液2を用いて、上記実施例1と同様にして、本発明のカーボンブラック2を得た。
【0087】
[比較例1]
実施例1で用いたタイヤベントに含まれていたカーボンブラックと同じ種類の原料カーボンブラック(N118)を準備した。
【0088】
[粒子径の測定]
上記実施例および比較例で得られた回収カーボンブラック1および2、本発明のカーボンブラック1および2、ならびに、原料カーボンブラックについて、それらの粒子径を、粒度分析計(LA−910W型、堀場製作所製)を用いて測定し、粒子径(メジアン径)を算出した。分散液は、溶媒として水を用い、各カーボンブラックを超音波で3分間分散させて調製した。
その結果を、第1表および図1〜5に示す。
図1は本発明のカーボンブラック1の粒度分布グラフであり、図2は本発明のカーボンブラック2の粒度分布グラフであり、図3は回収カーボンブラック1の粒度分布グラフであり、図4は回収カーボンブラック2の粒度分布グラフであり、図5は原料カーボンブラックN118の粒度分布グラフである。
【0089】
【表1】
【0090】
[ゴム組成物]
[実施例3、4および比較例2〜5]
上記実施例1、2および比較例1で得られた各種カーボンブラックをそれぞれ用いて加硫ゴム組成物を得た。
すなわち、本発明のカーボンブラック1(実施例3)、回収カーボンブラック1(比較例2)、および原料カーボンブラック(比較例3)をそれぞれ用いて、下記組成のゴム組成物とし、B型バンバリミキサー(型番BB−2)を用いて混合した後加硫して、加硫ゴム組成物を得た。
また、本発明のカーボンブラック2(実施例4)、回収カーボンブラック2(比較例4)、および原料カーボンブラック(比較例5)をそれぞれ用いて、下記組成物のゴム組成物とし、ブラベンダー(型番PL2000)を用いて混合した後加硫して、加硫ゴム組成物を得た。
【0091】
<組成>
・天然ゴム 100質量部
・上記カーボンブラック(正味) 50質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・ステアリン酸 3質量部
・老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン) 1質量部
・加硫促進剤(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド) 1.2質量部
・イオウ 1.8質量部
【0092】
上記で得られた各ゴム組成物について、カーボンブラックの分散度、ランボーン摩耗、機械的特性および損失正接(tanδ)を測定した。結果を第2表および第3表および図6〜図9に示す。
【0093】
<ゴム中におけるカーボンブラックの分散度>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物について、ASTM D−2663に準拠した方法にて測定した。
詳しくは、光学顕微鏡反射法により、加硫ゴム断面に見える未分散カーボンブラックの存在を統計処理することにより分散カーボンブラック量の測定を行った。数値が大きい方がゴムへの分散性に優れる。
【0094】
図6は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック1を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック1を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
図7は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック2を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック2を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
各図の撮影は、光学顕微鏡にPMG3(オリンパス社製)、カメラにC1000(浜松フォトニクス社製)を用いて行った。
【0095】
本発明のカーボンブラック1はゴム中によく分散しているのが、図6(a)において、黒色のカーボンブラック凝集体が白色のゴムに点在し、原料カーボンブラックを用いた図6(c)の状態に近いことから分かる。対して、回収カーボンブラック1はゴム中に分散していないことが、図6(b)において、黒色のカーボンブラック凝集体が写真の大部分を占めていることから分かる。
同様の結果が、図7から分かる。
【0096】
<耐摩耗性(ランボーン摩耗)>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物について、ランボーン摩耗を測定することにより、ゴム組成物の耐摩耗性を評価した。
ランボーン摩耗は、JIS K6264−1993に記載の方法に準拠して測定した。
なお、試験結果は、混合方法に対応して比較例3または比較例5で得られたゴム組成物の測定値を100とした場合の相対値で示した。数値が大きい方が耐摩耗性に優れる。
【0097】
<機械的特性>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物を、厚さ1mmのダンベル状試験片(JIS3号)に切り出し、JIS K6251−1993に準拠して、300%モジュラス、破断強度、破断伸びおよびS−S(応力−歪)特性を測定した。
S−S(応力−歪)特性を示すグラフは、混合方法に対応して作成した。図8は実施例3、比較例2および比較例3で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフであり、図9は実施例4、比較例4および比較例5で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフである。
【0098】
<損失正接(tanδ)>
実施例3、4および比較例2〜5の各ゴム組成物を、長さ100mm、幅5mm、厚さ1mmの短冊状試験片に切り出し、JIS K6394に準拠する方法(初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、60℃)により測定した。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
第1表〜第3表および図1〜図9から明らかなように、衝突工程を行うことを特徴とする本発明の方法および本発明の製造方法により得られる本発明のカーボンブラック1および2は、それぞれ対応する該衝突工程前の回収カーボンブラック1および2に対して、ゴム中における分散度が著しく改善された。また、本発明のカーボンブラック1および2を用いたゴム組成物(実施例3および4)は、耐摩耗性、さらには機械的特性にも優れた。そして、これらの特性が原料カーボンブラックを用いた場合と同等程度であることが確認されたことから、本発明のカーボンブラックは、原料カーボンブラックが用いられる種々の用途に特に制限なく再利用可能である。
対して、回収カーボンブラック1および2をそのまま用いた場合(比較例2および4)は、ゴムの分散性に極めて劣り、また、耐摩耗性にも劣った。このとき、ブラベンダー混合よりバンバリー混合の方が、分散性および耐摩耗性の悪さは顕著であった。したがって、これらの回収カーボンブラックは、再利用される用途が限定される可能性がある。
【0102】
【発明の効果】
本発明により、ゴム中における分散度に劣る回収カーボンブラックのゴム中における分散度を改善する方法を提供できる。
また、本発明により、ゴム中における分散度が改善されたカーボンブラックの製造方法を提供できる。
さらに、本発明により、従来ではなし得なかったゴム中における分散度に極めて優れるカーボンブラックおよびそれを含有するゴム組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のカーボンブラック1の粒度分布グラフである。
【図2】図2は、本発明のカーボンブラック2の粒度分布グラフである。
【図3】図3は、回収カーボンブラック1の粒度分布グラフである。
【図4】図4は、回収カーボンブラック2の粒度分布グラフである。
【図5】図5は、原料カーボンブラックN118の粒度分布グラフである。
【図6】図6は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック1を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック1を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
【図7】図7は、ゴム中への各カーボンブラックの分散状態を示す写真であり、(a)は本発明のカーボンブラック2を用いた分散状態、(b)は回収カーボンブラック2を用いた分散状態、(c)は原料カーボンブラックを用いた分散状態をそれぞれ示す写真である。
【図8】図8は、実施例3、比較例2および比較例3で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例4、比較例4および比較例5で得られたゴム組成物のS−S(応力−歪)特性を示すグラフである。
Claims (9)
- 回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
- ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程と
を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。 - ゴムとカーボンブラックとを含有するゴム組成物からカーボンブラックを回収する回収工程と、
前記回収工程により回収された回収カーボンブラックを溶剤に分散させて回収カーボンブラックの分散液を調製する調製工程と、
前記調製工程により得られた回収カーボンブラックの分散液同士を衝突させる衝突工程と
を含む、回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。 - 前記衝突工程が、少なくとも一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体または/および微粒子を得る装置を用いて行う請求項1〜3のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
- 前記乳化分散流体または/および微粒子を得る装置が、噴流衝合装置である請求項4に記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
- 前記噴流衝合装置が、湿式超微粒化装置アルティマイザーシステムである請求項5に記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
- 前記回収工程が、以下に示す回収方法群より選択される方法である請求項2〜6のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法。
<回収方法群>
方法A:直接熱分解法
方法B:過酸化物分解法
方法C:低温熱分解法
方法D:せん断熱分解法 - 請求項1〜7のいずれかに記載の回収カーボンブラックのゴム中における分散度改善方法により得られるカーボンブラック。
- 請求項8に記載のカーボンブラックを含有するゴム組成物。
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JP2011500886A (ja) * | 2007-10-09 | 2011-01-06 | シービーピー・カーボン・インダストリーズ・インコーポレーテッド | 再生されたフィラー材料を有するエラストマー組成物 |
JP2012001682A (ja) * | 2010-06-21 | 2012-01-05 | Bridgestone Corp | ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ |
CN116082862A (zh) * | 2023-01-09 | 2023-05-09 | 中国矿业大学 | 一种废弃轮胎裂解炭黑降灰提纯的方法 |
-
2003
- 2003-08-27 JP JP2003208978A patent/JP2005068195A/ja not_active Withdrawn
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