JP2005041900A - 粉体塗料組成物 - Google Patents

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奈緒之 清家
Koichi Yamaguchi
浩一 山口
Tetsuro Agawa
哲朗 阿河
Kazuo Yamamura
和夫 山村
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Abstract

【課題】特に低温硬化性に優れ、更には耐熱性の低いプラスティック基材にも適用可能な粉体塗料組成物を提供すること。
【解決手段】一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基とを併有する化合物(A)、及び、特定のテトラメチルピペリジン誘導体とフッ素置換有機スルフォン酸から形成される塩(B)を含有してなる粉体塗料組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性に優れ、耐酸性などの諸特性に優れる硬化塗膜を与えることができる新規な粉体塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料組成物は、塗装時に有機溶剤を大気中に揮散することのない、環境調和型塗料として金属塗装全般に広く使用されている。なかでも、エポキシ基含有ビニル共重合体やポリエステル樹脂を樹脂成分とした形の粉体塗料組成物が、とりわけ、加工性、耐溶剤性など諸物性に優れた塗膜を形成し得るものであるという処から、広範に適用、利用されている。
【0003】
粉体塗料組成物は、塗装時に有機溶剤を大気中に揮散することのない、環境調和型塗料として金属塗装全般に広く使用されている。なかでも、エポキシ基含有ビニル共重合体やポリエステル樹脂を樹脂成分とした形の粉体塗料組成物が、とりわけ、加工性、耐溶剤性など諸物性に優れた塗膜を形成し得るものであるという処から、広範に適用、利用されている。
【0004】
また、近年は省エネルギー化によるエネルギーロスの低減化の観点から低温硬化可能な粉体塗料組成物に対する市場の要求が高まっている。 更に、溶剤系塗料に代わり、環境調和型の粉体塗料組成物を広く普及させるためには耐熱性の低いプラスティック、木材など従来粉体塗料組成物の適用が困難であった基材でも焼き付け可能な低温硬化粉体塗料組成物が望まれている。
【0005】
しかしながら、従来の粉体塗料組成物、とりわけ熱硬化型粉体塗料組成物は溶剤系塗料と比較して、一般に高い焼き付け温度を必要とする。具体的には溶剤系塗料では一般にアミノ樹脂硬化タイプのように低温硬化性に優れるものであれば、120℃以下の乾燥、焼き付け条件で用いられている。しかし、粉体塗料組成物の場合、アミノ樹脂硬化タイプは粉体塗料組成物の耐ブロッキング性(数10μmの粉末とし作られる粉体塗料組成物が、粉同士がブロッキングすることなく粉体として安定して存在できること。)の問題から殆ど使用されておらず、低温硬化タイプで粉体塗料組成物の耐ブロッキングに有利な固形で軟化点の高い硬化剤は知られていない。
【0006】
そのため、現在、粉体塗料組成物として一般的に使用されている硬化系としては、水酸基含有ポリエステルとブロックイソシアネートとの組合せ、酸基含有ポリエステルとエポキシ化合物との組合せ、酸基含有ポリエステルとトリグリシジルイソシアヌレートとの組合せ、エポキシ基含有ビニル共重合体と二塩基酸との組合せ等が採用されており、それらを使用した粉体塗料組成物の焼き付け条件は180℃程度が一般的であり、中でも比較的低温硬化可能なエポキシ基含有ビニル共重合体と二塩基酸の硬化系ですら、焼き付け条件は140℃以上とすることが必要である。
【0007】
また、プラスティックや木材に使用可能とするために120℃以下で硬化する粉体塗料組成物が望まれているが、UV硬化などエネルギー線硬化型粉体塗料組成物を除き、熱硬化型粉体塗料組成物で適用可能なものは知られていない。
【0008】
一方、低温硬化が可能な硬化系として特定のアミントリフレートが、ノリルアルコールなどの1価のアルコールと1−フェニルブタン酸などの1価の酸とのエステル化や、1−フェニルブタン酸メチルなどのアルコキシモノエステルと1価のアルコールとのエステル交換反応において、80〜110℃という比較的低温条件下において反応性向上に効果が有ることが見いだされてはいるが(例えば、非特許文献1)、多官能化合物の硬化反応や、ましてや粉体塗料組成物について研究された例はかつて無かった。
【0009】
以上のように、従来の粉体塗料組成物で低温硬化性の充分なものは無く、高温の焼き付け炉が必要であった。このように、比較的耐熱性の低い基材には粉体塗料組成物の使用が困難であり、粉体塗料組成物の適用範囲が限られていた。
【0010】
【非特許文献1】
テトラヘドロンレターズ(2000),41(27),5249−5252
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、特に低温硬化性に優れ、更には耐熱性の低いプラスティック基材にも適用可能な粉体塗料組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した課題を解決するべく、鋭意、研究を重ねた結果、水酸基とカルボン酸エステル基を有する化合物、及び特定の硬化触媒を含んでなる粉体塗料組成物が低温硬化性に優れ、なおかつ、塗膜硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐屈曲性といった粉体塗料組成物に要求される一般的特性も良好であることを見出すに及んで、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基を有する化合物(A)、一般式(I)で示されるテトラメチルピペリジン誘導体とフッ素置換有機スルフォン酸から形成される塩(B)を含有してなる粉体塗料組成物を提供するものである。
【0014】
【化3】
Figure 2005041900
【0015】
(式中、Yは水素原子、炭素数=1〜5のアルキル基、炭素数=1〜10のアルコキシ基又は炭素数=2〜5のアルカノイル基を表し、Z=−(CH)n−(n=1〜10)のアルキレン基を表す。)
【0016】
また本発明は、前記粉体塗料組成物を基材に塗装し、塗装された該粉体塗料組成物を硬化させて得られる硬化物を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳述する。
まず、本発明において使用する、一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基とを併有する化合物(A)は、一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基とを併有する化合物であればいずれも使用することができ、かかる化合物(A)として代表的なものとしては、水酸基・カルボン酸エステル基併有低分子化合物、及び水酸基・カルボン酸エステル基併有重合体が挙げられる。
【0018】
水酸基・カルボン酸エステル基併有低分子化合物として特に代表的なものを例示すると、ジヒドロキシマロン酸ジメチル、ジヒドロキシマロン酸ジエチル、の如きジヒドロキシアルカンジカルボン酸ジエステル類;
【0019】
ジヒドロキシフマル酸ジメチル、ジヒドロキシフマル酸ジエチル、の如きジヒドロキシアルケンジカルボン酸ジエステル類;
【0020】
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジメチル、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジ酢酸ジメチル、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジ酢酸ジエチル、の如きジヒドロキシ芳香族ジカルボン酸ジエステル類などが挙げられ、得られる粉体塗料の塗料安定性を損なわない範囲で使用できる。
【0021】
これらは、ジヒドロキシアルカンジカルボン酸、ジヒドロキシアルケンジカルボン酸、ジヒドロキシ芳香族ジカルボン酸など、各種の、ジヒドロキシジカルボン酸類と、アルコールとのジエステル類である。
【0022】
そして前記した水酸基・カルボン酸エステル基含有重合体としては、水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリエステル、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリウレタン等が挙げられる。
【0023】
これらのうち、水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体としては、水酸基・カルボン酸エステル基含有アクリル系重合体、水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニルエステル系重合体、水酸基・カルボン酸エステル基含有α−オレフィン系重合体、水酸基・カルボン酸エステル基含有フルオロオレフィン系重合体などが挙げられる。
【0024】
かかる水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体は、水酸基含有ビニル系単量体とカルボン酸エステル基含有ビニル系単量体を共重合するとか、あるいは、該単量体と、さらにこれらと共重合可能な他のビニル系単量体とを共重合させる事によって得られるものが代表的なるものである。
【0025】
その際に使用することができる水酸基含有ビニル系単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル若しくは2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、さらには、これら各種の水酸基含有ビニル単量体と、ε−カプロラクトンとを反応させて得られるような、各種の水酸基含有ビニル系単量体などが挙げられる。
【0026】
一方のカルボン酸エステル基含有ビニル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートの如き、C1〜C22なる各種のアルキル(メタ)アクリレート類;
【0027】
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、の如き各種の脂環式アルキル(メタ)アクリレート類;
【0028】
ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;
【0029】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−メトキシエチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、の如き各種のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0030】
2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−フルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、の如き各種のハロゲン置換アルキル(メタ)アクリレート類;
【0031】
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、の如きクロトン酸の各種のアルキルエステル類;
【0032】
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート、の如き各種の不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル類;
【0033】
あるいは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類と、1価アルコール類との、各種のハーフエステル類;
などを使用することができる。
【0034】
これらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量対としては、スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、の如き各種の芳香族ビニル系単量体類;
【0035】
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、の如き各種の(メタ)アクリルアミド類;
【0036】
(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリル、の如き各種のシアノ基含有ビニル系単量体類;
【0037】
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、の如き各種のハロオレフィン類;
【0038】
エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、の如き各種のα−オレフィン類;
【0039】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサテイック酸ビニル、の如き各種のカルボン酸ビニルエステル類;
【0040】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、の如き各種の不飽和カルボン酸類;
【0041】
コハク酸、アヂピン酸、セバシン酸、の如き各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;
【0042】
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、の如き各種の不飽和ジカルボン酸類;
【0043】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートで代表されるような水酸基含有単量体類と、無水コハク酸ないしは無水フタル酸、の如き各種の酸無水物との付加反応物のような種々のカルボキシル基含有単量体類;
【0044】
2−フォスフォリルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルスルフォン酸、アリールスルフォン酸、などの如き、カルボキシル基以外の酸基を有する、種々の単量体類;
【0045】
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、の如き各種のアルキル−、ないしは、シクロアルキルビニルエーテル類などを使用することができる。
【0046】
そして、前記した水酸基含ビニル系有単量体とカルボン酸エステル基含ビニル系有単量体を用いて、あるいは該単量体と、さらにこれらと共重合可能な他のビニル系単量体類とを用いて、本発明で使用する化合物(A)としての水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体ビニル系重合体を調製するには、公知慣用の重合法を適用することができる。
【0047】
即ち、溶液重合法、溶液分散重合法または塊状重合法などのような常法に従い、ラジカル重合、イオン重合または光重合によって、目的とする水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体を調製することができるが、とりわけ、溶液ラジカル重合法によるのが、最も簡便である。
【0048】
このようにして得られた水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体は必要に応じ溶剤を除去し、最終的には固形物として使用する。
【0049】
次に、化合物(A)として使用することができる、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリエステル、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリウレタンなどのような、いわゆる水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体以外の、一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基とを併有する重合体類は、公知慣用の方法で調整することができる。
【0050】
例えば、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリエステルとしては、下記するような多価カルボン酸と多価アルコールとを必須成分として使用して、これらを縮合せしめることによって得られるものなどを使用することができる。
【0051】
前記多価カルボン酸類としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族二塩基酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式ジカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;また、トリメリット酸やピロメリット酸等の3官能以上のカルボン酸、さらにP−オキシ安息香酸、酒石酸などのヒドロキシカルボン酸などを使用することができる。
【0052】
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、などを使用することができる。
【0053】
また、例えば水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリウレタンについては、
(イ)下記に例示するようなポリイソシアネートと2官能以上のポリエステルポリオールとをポリイソシアネートのイソシアネート基がポリオールの水酸基に対して過剰となるよう反応せしめたもの、
(ロ)ジイソシアネートのイソシアヌレート化物などで代表されるポリイソシアネートなどの、各種のポリイソシアネートと、前記した水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリエステルなどの水酸基・カルボン酸エステル基含有重合体などのポリオールとを、
ポリオールの水酸基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対して過剰となるような条件で反応せしめることによって得られるものなどを使用することができる。
【0054】
前記(イ)でいうポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートやこれらの水添物、そして、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどのポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0055】
これら水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリエステル、水酸基・カルボン酸エステル基含有ポリウレタンなどのような、いわゆる水酸基・カルボン酸エステル基含有ビニル系重合体以外の、一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基とを併有する重合体類の調製方法は、溶液反応法、固層反応法など公知慣用な方法を用いることができるが、溶剤を用いた場合には、脱溶剤除去するなどして、重合体類は本発明の粉体塗料組成物に用いるために最終的には固形物として使用する。
【0056】
かくして、調製される水酸基とカルボン酸エステル基とを併有する化合物(A)が重合体である場合には、それぞれの官能基の導入量としては、重合体固形分の1,000グラム当たり、水酸基と、カルボン酸エステル基との合計が、0.2〜12.0モルなる範囲が好ましく、さらにまた、0.4〜8.0モルがより好ましい。
【0057】
また、当該、水酸基とカルボン酸エステル基とを併有する化合物が重合体である場合の数平均分子量としては、300〜300,000なる範囲が好ましく、さらに好ましくは、500〜100,000なる範囲であり、さらにより好ましくは、1000〜5,000なる範囲である。
【0058】
さらに、当該水酸基とカルボン酸エステル基とを併有する化合物(A)が重合体類である場合における、こうした重合体類の軟化点としては、50℃〜130℃なる範囲が好ましく、より好ましくは、90℃〜120℃の範囲である。
【0059】
本発明の化合物(A)が重合体類である場合において、かかる分子量、軟化点が上記範囲であれば、得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性(耐ブロッキング性)及び溶融時の流動性が良好であり、塗膜の平滑性が優れたものとなる。
【0060】
次に、本発明の粉体塗料組成物において使用する、下記一般式(I)で示されるテトラメチルピペリジン誘導体とフッ素置換有機スルフォン酸から形成される塩(B)について説明する。
【0061】
【化4】
Figure 2005041900
【0062】
(式中、Yは水素原子、炭素数=1〜5のアルキル基、炭素数=1〜10のアルコキシ基又は炭素数=2〜5のアルカノイル基を表し、Z=−(CH)n−(n=1〜10)のアルキレン基を表す。)
【0063】
かかる塩(B)は、本発明の粉体塗料組成物に含有される水酸基とカルボン酸エステル基のエステル交換反応を促進する機能を有する。即ち、塩(B)は本発明の粉体塗料組成物の硬化触媒として働くものである。
【0064】
かかる塩(B)を調製する際に使用することができる一般式(I)で示されるテトラメチルピペリジン誘導体中のYは、水素原子、炭素数=1〜5のアルキル基、炭素数=1〜10のアルコキシ基又は炭素数=2〜5のアルカノイル基である。中でも触媒活性の点から、メチル基又はアセチル基が好ましい。
また、一般式(I)で示されるテトラメチルピペリジン誘導体中のZは、Z=−(CH)n−(n=1〜10)のアルキレン基である。
【0065】
塩(B)の形成に使用することができるフッ素置換有機スルフォン酸としては、CHFSOH、CFSOH、CSOH、CSOH及びCSOHなどが挙げられる。
【0066】
このようにして調製される塩(B)は、下記の式(II)で示される構造を有するものである。
【0067】
【化5】
Figure 2005041900
【0068】
(式中、XはCHFSO 、CFSO 、CSO 、CSO あるいはCSO を表し、Yは水素原子、炭素数=1〜5のアルキル基、炭素数=1〜10のアルコキシ基又は炭素数=2〜5のアルカノイル基を表し、Z=−(CH)n−(n=1〜10)のアルキレン基を表す。)
【0069】
次に、本発明で使用する化合物(A)、硬化触媒として機能する塩(B)の配合比率について詳述する。
【0070】
塩(B)は化合物(A)の固形分の合計量(固形分総量)100グラムに対して、0.3〜60ミリモルなる範囲内が好ましく、より好ましくは、0.35〜50ミリモルなる範囲内である。
【0071】
ここにおいて、化合物(A)成分は、塗料の保存安定性を考慮する場合、重合体を主成分とすることが好ましい。
【0072】
次に各成分を用いて本発明の粉体塗料組成物を製造する方法について述べる。本発明の粉体塗料組成物を製造するには、たとえば公知慣用の種々の方法がそのまま利用できる。
【0073】
すなわち、種々の粉体塗料組成物構成成分を混合し、溶融混練せしめたのちに、さらに微粉砕せしめるという、いわゆる機械的粉砕方式や、種々の粉体塗料組成物構成成分を含む溶液を噴霧乾燥し粉体塗料組成物を得る方法などを採用することにより、本発明の粉体塗料組成物を製造することができる。
【0074】
かくして得られる、本発明の粉体塗料組成物は、そのままで、クリヤー組成物として使用することもできるし、さらに、顔料が配合された形で以て、着色組成物として使用することもできる。
【0075】
さらにまた、本発明の粉体塗料組成物には、必要に応じて、レベリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン型光安定剤によって代表されるような種々の光安定剤、酸化防止剤または顔料分散剤のような、公知慣用の各種の添加剤類などをも配合せしめることができる。
【0076】
さらにまた、本発明の目的を逸脱しないような範囲内で、あるいは、本発明の特徴や効果を損なわない範囲内で、公知慣用の種々の硬化剤を含ませた形で以て、本発明の粉体塗料組成物を使用することが可能である。
【0077】
その際に併用できる硬化剤としては、水酸基と反応し得るものであれば、いずれのものでもよく、それらのうちでも特に代表的な硬化剤としては、
【0078】
トリレンジイソシアネートなどによって代表される種々の芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートなどによって代表される脂肪族ジイソシアネート類、またはイソホロンジイソシアネートなどによって代表される脂環式(環状脂肪族)ジイソシアネート類などの種々のジイソシアネート類またはポリイソシアネート類;
【0079】
前記した如き、ジ−ないしはポリイソシアネート類から誘導される、種々のイソシアネート・プレポリマー類や種々のブロックイソシアネート・プレポリマー類;
【0080】
メラミン樹脂や、尿素樹脂等の、種々のアミノ樹脂類;シリコン樹脂類やエポキシ樹脂などがある。
【0081】
本発明の粉体塗料組成物を、公知慣用の種々の方法によって、被塗物基材上に塗装し、塗装された該粉体塗料組成物を焼き付けて硬化させることにより、硬化塗膜を被塗物基材上に形成し目的とする硬化物を得ることができる。
【0082】
ここにおいて、上記した被塗物基材としては、鉄、アルミニウム、ステンレス・スチール、クロム・メッキ、トタン板、ブリキ板の如き、各種の金属素材または金属製品類;瓦類;ガラス類;各種の無機質建材類;耐熱性のあるプラスチック、木材などがあり、具体的には、自動車車体または自動車(用)部品類;二輪車または二輪車(用)部品類;門扉またはフェンス類の如き、各種の建材類;アルミサッシ類の如き、各種の建築内外装用資材類;アルミホイールなどのような種々の鉄ないしは非鉄金属類の緒素材ないしはプラスチック製品、木工緒製品類などがある。また、それらに化成処理、リン酸亜鉛処理、クロメート処理などの表面処理したものや、電着塗装を施されたものも含まれる。
【0083】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明する。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて重量基準であるものとする。
【0084】
〔水酸基価〕 ;無水酢酸とピリジンとの混合溶液に共重合体及び樹脂試料を溶解して、100℃で一時間加熱環流し、水酸基をアセチル化し、次いでイオン交換水を加えてさらに加熱環流した後、冷却し、水酸化カリウムのトルエン/メタノール溶液で逆滴定して求めた。
【0085】
〔酸価〕 ;シクロヘキサノンに樹脂試料を溶解して、0.1規定の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求めた。
【0086】
〔軟化点〕 ;環球式自動軟化点試験機(明峰社製作所(株)製)を用い、グリセリンの加熱浴で3℃/分の昇温速度で昇温し、試料が軟化し始め、球が落下した時の温度を測定した(単位:℃)。
【0087】
参考例 1 [水酸基・カルボン酸エステル基併有重合体(本発明を構成する(A)成分に相当)の調製例]
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレンの100部を仕込み、窒素雰囲気下に、135℃まで昇温した。
【0088】
次いで、同温度で、スチレン30部、メチルメタクリレート27部、ブチルアクリレート18部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート35部と、TBO3部とからなる混合物を、6時間に亘って滴下した。
【0089】
滴下終了後も、同温度に、15時間のあいだ保持して、反応を完結せしめた後、さらに、得られた共重合体溶液を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって軟化点111℃、水酸基価148のビニル系共重合体を得た。以下、これを重合体(A−1)と略記する。
【0090】
参考例 2[水酸基・カルボン酸エステル基併有重合体(本発明を構成する(A)成分に相当)の調製例]
参考例1と同様の反応容器に、キシレンの100部を仕込み、窒素雰囲気下に、135℃まで昇温した。
【0091】
次いで、同温度で、スチレン30部、メチルメタクリレート28部、ブチルアクリレート17部、「プラクセルFM−1」(ダイセル化学製2ヒドロキシエチルメタクリレートのεカプロラクタム付加物)25部と、TBO2.4部とからなる混合物を、6時間に亘って滴下した。
【0092】
滴下終了後も、同温度に、15時間のあいだ保持して、反応を完結せしめた後、さらに、得られた共重合体溶液を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって軟化点96℃、水酸基価57のビニル系共重合体を得た。以下、これを重合体(A−2)と略記する。
【0093】
参考例 3 [水酸基・カルボン酸エステル基含有重合体(本発明を構成する(A)成分に相当)の調製例]
参考例1と同様の反応容器に、キシレンの100部を仕込み、窒素雰囲気下に、135℃まで昇温した。
【0094】
次いで、同温度で、スチレン46部、ジブチルフマレート26部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート28部と、TBO4部とからなる混合物を、6時間に亘って滴下した。
【0095】
滴下終了後も、同温度に、15時間のあいだ保持して、反応を完結せしめた後、さらに、得られた共重合体溶液を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって軟化点108℃、水酸基価107のビニル系共重合体を得た。以下、これを重合体(A−3)と略記する。
【0096】
参考例 4 [水酸基・カルボン酸エステル基含有重合体(本発明を構成する(A)成分に相当)の調製例]
参考例1と同様の反応容器に、キシレンの100部とノルマルブタノールの50部を仕込み、窒素雰囲気下に、114℃まで昇温した。
【0097】
次いで、同温度で、スチレン20部、メタクリル酸メチル20部、2−ヒドロキエチルメタクリレート60部と、TBO7部とからなる混合物を、6時間に亘って滴下した。
【0098】
滴下終了後も、同温度に、15時間のあいだ保持して、反応を完結せしめた後、さらに、得られた共重合体溶液に100部のトルエンを加えた後、減圧蒸留を行い、そして、約20Torrの減圧下に保持し、溶剤を除去することによって軟化点120℃、水酸基価259のビニル系共重合体を得た。以下、これを重合体(A−4)と略記する。
【0099】
参考例 5 [水酸基・カルボン酸エステル基併有ポリエステル樹脂(本発明を構成する(A)成分に相当)の調製例]
攪拌機、温度計、精留塔及び窒素ガス導入口を備えた反応容器にネオペンチルグリコール160部、エチレングリコール210部トリメチロールプロパン60部、テレフタル酸450部、イソフタル酸300部及びジブチル錫オキサイド0.5部を仕込んで、窒素雰囲気中で攪拌を行いながら240℃まで5時間を要して昇温した。240℃で脱水縮合反応を続行せしめて、酸価5mgKOH/g、水酸基価102mgKOH/g、軟化点115℃のポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂(A−5)と略記する。
【0100】
参考例 6[エポキシ基含有ビニル重合体(C)の調製例]
参考例1と同様の反応容器に、キシレンの100部を仕込み、窒素雰囲気下に、135℃まで昇温した。
【0101】
次いで、同温度で、スチレン25部、メチルメタクリレート20部、ブチルメタクリレート25部、グリシジルメタクリレート30部と、TBO4部とからなる混合物を、6時間に亘って滴下した。
【0102】
滴下終了後も、同温度に、15時間のあいだ保持して、反応を完結せしめた後、さらに、得られた共重合体溶液を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって軟化点110℃、エポキシ当量535のビニル系共重合体を得た。以下、これを重合体(C−1)と略記する。
【0103】
参考例 7[テトラメチルピペリジン誘導体とフッ素置換有機スルフォン酸から形成される塩(B)の調製例]
攪拌機、滴下漏斗および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバセートの48部と、トルエンの90部、メタノールの10部を仕込んだ。窒素雰囲気下に攪拌し、反応容器の内容物を約5℃に冷却した。ついで、同温度で、トリフルオロメタンスルフォン酸の30部を1時間に亘って滴下した。
【0104】
滴下終了後、さらに5時間のあいだ反応を継続した。反応後、トルエンとメタノールを減圧下で留去して、78部の白色粉末状化合物を得た。収率=100%。融点= 73〜76℃。これを塩(B―1)と略記する。
【0105】
実施例1〜4および比較例1〜2
(粉体塗料組成物の調製)
それぞれ、第1表及び第2表に示す割合で配合して得られた、それぞれの組成物を、「APVニーダー・MP−2015型」(ツバコー横浜販売(株)製2軸押し出し混練機)を使用して、90から100℃で溶融混練せしめたのちに、微粉砕し、さらに200メッシュの金網で分級せしめることによって、平均粒径が30〜40μmなる、各種の粉体塗料組成物を調製した。これらの各粉体塗料組成物を(P−1)〜(P−4)、(p−1)、(p−2)と略記する。
【0106】
また、参考例7で得られた塩(B―1)を第1、2表中における、(B)成分として用いた。塩(B―1)化合物は、次の通りのものである。
(B−1)……ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバセート・トリフルオロメタンスルフォン酸のモル比1:2の塩
【0107】
【表1】
Figure 2005041900
【0108】
【表2】
Figure 2005041900
【0109】
1)DDA:ドデカンジ酸(宇部興産製)
2)EX−570:表面調整剤(トロイ製)
【0110】
次いで、得られた粉体塗料組成物(P−1)〜(P−4)、(p−1)、(p−2)を使用して、下記の塗膜形成方法に従って各種の塗膜を作製した後、それぞれの塗膜について塗膜性能試験を行なった。結果を第3表及び第4表に示す
【0111】
被塗物として使用する基材としては、0.8mm(厚さ)×70mm×150mmの燐酸亜鉛処理鋼板を用いた。
【0112】
粉体塗料組成物(P−1)〜(P−4)、(p−1)、(p−2)を、それぞれ、基材に焼き付けた後の膜厚が60〜70μmとなるようにして静電粉体塗装せしめた後、120℃/20分間なる条件下に焼き付けを行ない、粉体塗料組成物からなる塗膜(以下、粉体塗膜と略記する。)を有する被塗物を得た。
【0113】
【表3】
Figure 2005041900
【0114】
【表4】
Figure 2005041900
【0115】
硬度・・・鉛筆(三菱ユニ)硬度。塗膜に鉛筆をあて、その際に傷が残らない鉛筆の硬さ
【0116】
耐溶剤性・・・キシレンを染み込ませたフエルトで以って、塗膜を、10往復に及ぶラビングを行ったのちの塗膜を、目視により判定した。
◎・・・塗膜に光沢感があり、塗膜に目立った損傷はない
○・・・塗膜に光沢感はあるが、溶剤によりエッチングされている
×・・・塗膜が溶剤により溶解し光沢感なし
【0117】
耐酸性・・・・塗膜表面に、10%硫酸水溶液の0.1ミリ・リットルを載せたパネルを、70℃の熱風乾燥機中に、30分間のあいだ保持したのち、塗膜表面を水洗し乾燥せしめてから、その塗膜の表面の状態を、目視により判定した。
◎・・・エッチングなし
○・・・ややエッチング有り
×・・・エッチングにより塗膜が溶解
【0118】
耐屈曲性・・・・25℃で塗膜面を上にして90°に折り曲げた部分の塗膜のワレを判定した。
◎・・・まったくワレが認められない。
○・・・一部にワレが認められる。
×・・・全面にワレが認められる。
【0119】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料組成物によれば、とりわけ、低温硬化性などに優れた、実用性の高い硬化塗膜を提供することができる。

Claims (5)

  1. 一分子中に平均して1.5個以上の水酸基と平均して1.5個以上のカルボン酸エステル基とを併有する化合物(A)、及び、下記一般式(I)で示されるテトラメチルピペリジン誘導体とフッ素置換有機スルフォン酸から形成される塩(B)を含有してなる粉体塗料組成物。
    Figure 2005041900
    (式中、Yは水素原子、炭素数=1〜5のアルキル基、炭素数=1〜10のアルコキシ基又は炭素数=2〜5のアルカノイル基を表し、Z=−(CH)n−(n=1〜10)のアルキレン基を表す。)
  2. 前記した一般式(I)で示されるテトラメチルピペリジン誘導体中のYが、水素原子、メチル基及びアセチル基からなる群より選ばれる一種である請求項1に記載の粉体塗料組成物。
  3. 前記したフッ素置換有機スルフォン酸が、CHFSOH、CFSOH、CSOH、CSOH及びCSOHからなる群より選ばれる一種である請求項1に記載の粉体塗料組成物。
  4. 前記した塩(B)が、下記一般式(II)で示される構造を有するものである、請求項1に記載の粉体塗料組成物。
    Figure 2005041900
    (式中、XはCHFSO 、CFSO 、CSO 、CSO 又はCSO を表し、Yは水素原子、炭素数=1〜5のアルキル基、炭素数=1〜10のアルコキシ基又は炭素数=2〜5のアルカノイル基を表し、Z=−(CH)n−(n=1〜10)のアルキレン基を表す。)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の粉体塗料組成物を基材に塗装し、塗装された該粉体塗料組成物を硬化させて得られる硬化物。
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