JP2005041288A - 車両用シートベルト装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】後席における中央席乗員用のシートベルト装置がリトラクタを有する場合に、ヘッドクリアランスの確保と後席回りの車体デザインに制約を与えないようにする。
【解決手段】最後列シート4の中央席用のシートベルト装置SBがリトラクタ33を有する。リトラクタ33は、上記中央席乗員Jの前方において、ル−フ9に取付けられる。より具体的には、中央席乗員Jの前方において、左右のル−フレール11同士が車幅方向に伸びる第1レインフォースメント41によって連結され、この第1レインフォースメント41とリアヘッダー10とが前後方向に伸びる第2レインフォースメント4によって連結される。第1レインフォースメント41にリトラクタ33が取付けられる。リトラクタ33から引き出されたシートベルト35は、リアヘッダー10内に配設されたシートベルトアンカ34を経由するように配設される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用シートベルト装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の中には、運転席(運転席および助手席)の後方に位置される後席(後席シート)が、車幅方向において複数名の乗員が着座可能とされたものがあり、この中には、後席の中央が中央席とされて、この中央席の左右にそれぞれ乗員が着座される左右席とされて、合計3名が着座可能とされたいわゆる3人掛けのものもある。
【0003】
シートに着座される乗員に対しては、シートベルト装置が個々に設けられる。前述した3人掛けとされた後席のうち、中央席に着座する乗員に対してもシートベルト装置が設けられるが、最近では、この中央席用のシートベルト装置を、運転席や助手席さらには後席の左右席と同じように、いわゆる3点式とすることが望まれるようになっている。
【0004】
3点式のシートベルト装置にあっては、通常、次のような構成となっている。すなわち、リトラクタから引き出されたシートベルトが、車体高所にあるシートベルトアンカを経由した後、その先端部が前記中央席の左右いずれか一方側において車体への固定部となる第1取付部に常時連結され、シートベルトのうち前記シートベルトアンカと第1取付部との間においてスライド可能に設けられた係合部材が、前記中央席の左右他方側において車体への固定部となる第2取付部に対して着脱自在に係合されるようになっている。シートベルトアンカは、拘束すべき乗員の後方でかつ車幅方向にずれた位置とされる(通常は車体のセンタピラーやリアピラー等の車幅方向端部に位置する車体側壁部材に取付けられる)。そして、シートベルトアンカの位置に対応して、リトラクタも車幅方向端部(車体側壁部材)に取付けられるのが一般的である。さらに、シートベルトの先端部が常時連結される前記第1取付部は、通常、車体側壁部材側に位置され、前記第2取付部が車体内方側に位置されることになる。
【0005】
ところで、中央席の乗員に対するシートベルト装置を3点式とした場合、リトラクタをどの位置に配置するかが問題となる。すなわち、中央席に着座している中央乗員の左右の近くには、左右席が存在して、リトラクタの取付位置として一般的な車体側壁部材が存在しないことになる。特許文献1には、車両の最後方に配置された後席の中央席用として、リトラクタを、リアピラーの上端部近くにある角部(の車室空間)に配設することが提案されている。すなわち、ル−フの側縁部を構成するル−フレールの後端部とル−フの後縁部を構成するリアヘッダーの車幅方向端部とに跨ってブラケットを取付け、このブラケットに中央席用のリトラクタを取付けるものが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−1156号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した特許文献1に開示のものは、リアピラーの上端部付近の角部に十分な車室内空間が存在する車両においては、デッドスペースの有効利用となる。しかしながら、デザイン等の観点から、リアピラー上端部付近の角部に大きな車室内空間を確保できないような車両にあっては、この位置にリトラクタを配設することが難しいものとなる。とりわけ、リトラクタから引き出されたシートベルトは、後席の中央席用として好適な位置に設定されたシートベルトアンカに向けて引き回す必要があるために、単にリトラクタを配設できるばかりでなく、シートベルトのうちリトラクタから引き出されてシートベルトアンカに向かう部分の配設スペースをも考慮する必要があり、したがって、上記角部に十分な車室内空間が確保できない車両にあっては、ヘッドクリアランス確保等の観点からしても、当該角部にリトラクタを配設することが事実上不可能となる。換言すれば、特許文献1に記載の技術を利用した場合は、車体デザイン特に後席付近からその後方のデザインと、ヘッドクリアランスの確保との両方を共に満足させることが難しいものとなる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、後席における中央席用のリトラクタの配設位置を工夫することにより、後席の乗員に対するヘッドクリアランスの確保と後席回りの車体デザイン上に大きな制約を与えないようにすることとの両方を共に高い次元で満足できるようにした車両用シートベルト装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
運転席の後方に位置する後席が、車幅方向において複数名の乗員が着座可能とされると共に少なくとも車幅方向中央側において乗員が着座可能な中央席を有し、
前記中央席に着座される中央乗員用のシートベルト装置が、シートベルト巻き取り用のリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、
前記リトラクタが、前記中央席に着座している中央乗員の頭部よりも前方においてル−フに取付けられている、ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、リトラクタは、中央席に着座される中央乗員の頭部よりも前方でかつ高い位置にあるル−フに配設してあるので、後席の乗員に対するヘッドクリアランスをリトラクタが阻害してしまうことがなく、また後席付近からその後方に渡っての車体デザインに大きな制約を与えてしまうこともないものとなる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。
前記ル−フのうち前記リトラクタの配置位置が部分的に、上方に向けて膨出された凸部として形成されている、ようにすることができる(請求項2対応)。この場合、ル−フに設けた凸部の下方空間をリトラクタの収納スペースとして利用できて、ヘッドクリアランスをより十分に確保する上で好ましいものとなる。
【0012】
前記リトラクタからまっすぐ引き出されたシートベルトが、車幅方向において傾斜するように該リトラクタが車幅方向に傾斜して配設されている、ようにすることができる(請求項3対応)。この場合、シートベルトアンカを中央乗員に対して車幅方向にずれた好適な位置としたときに、リトラクタから引き出されたシートベルトを無理に曲げる等のことなくシートベルトアンカに向かわせることができ、リトラクタからのシートベルトのスムーズな引き出しおよびリトラクタによるシートベルトのスムーズな巻き取りを確保する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記ル−フの左右側縁部を構成して車体前後方向に伸びる左右一対のル−フレール同士が、車体前後方向のうち前記リトラクタの配設位置において、車幅方向に伸びる第1レインフォースメントによって連結され、
前記第1レインフォースメントに、前記リトラクタが取付けられている、
ようにすることができる(請求項4対応)。この場合、第1レインフォースメントによってル−フを補強して、前後方向の衝突時においてリトラクタに対するシートベルトからの大きな引張力に十分対抗する上で好ましいものとなる。勿論、リトラクタの取付部位そのものも十分に強度の強いものとする上で好ましいものとなる。
【0014】
車体前後方向に伸びて、前記第1レインフォースメントと前記ル−フの後縁部を構成するリアヘッダーとを連結する第2レインフォースメントが設けられている、ようにすることができる(請求項5対応)。この場合、第2レインフォースメントによって、ル−フをさらに補強することができる。とりわけ、前後方向の衝突時において、第2レインフォースメントによって、シートベルトからの前後方向の大きな引張力に対抗することができる。
【0015】
前記リトラクタからのシートベルトの引き出し方向が車幅方向に傾斜するように、該リトラクタが車幅方向に傾斜して配設され、
前記第2レインフォースメントが、前記リトラクタに対して、該リトラクタからの前記シートベルトの引き出し方向とは車幅方向反対側において配設されている、ようにすることができる(請求項6対応)。この場合、リトラクタからシートベルトアンカに向かうシートベルトと第2レインフォースメントとが、リトラクタを挟んで車幅方向両側に分散して配設されることになるので、シートベルトと第2レインフォースメントとの干渉を避けて、ヘッドクリアランスを大きく確保する上で好ましいものとなる。
【0016】
前記リトラクタを車室内側から覆うル−フトリムが設けられている、ようにすることができる(請求項7対応)。この場合、リトラクタを車室内から目視できないようにして、体裁上好ましいものとなる。
【0017】
前記ル−フトリムとリトラクタとの間に、襲撃吸収材が配設されている、ようにすることができる(請求項8対応)。この場合、乗員が不用意に立ち上がる等によってリトラクタの位置において頭部をル−フトリムにぶつけたとしても、衝撃吸収材によって乗員の頭部が保護されることになる。
【0018】
前記リトラクタが、車幅方向略中心部に設けられ、
前記リトラクタから引き出されたシートベルトを折り返すためのシートベルトアンカが、ル−フのうち前記中央席に着座している中央乗員の後方でかつ車幅方向中心位置よりも車幅方向一方側にずれた位置に配設され、
前記リトラクタからのシートベルトの引き出し方向が、前記シートベルトアンカに指向するように車幅方向に傾斜されている、ようにすることができる(請求項9対応)。この場合、リトラクタを車幅方向略中心部として、後席乗員に対するヘッドクリアランスを十二分に確保しつつ、シートベルトアンカを中央乗員に対して好適な位置設定とし、しかもリトラクタから引き出されたシートベルトを無理に曲げる等のことなくスムーズにシートベルトアンカに導くことができる。
【0019】
前記中央席用のシートベルト装置が、車体側への固定部として、前記中央席の左右に位置されて、車幅方向において前記シートベルトアンカ側に位置する第1取付部と、該シートベルトアンカとは車幅方向反対側に位置する第2取付部とを有し、
前記リトラクタから引き出されたシートベルトが、前記シートベルトアンカを経由した後、その先端部が第1取付部に常時連結され、
前記シートベルトのうち前記シートベルトアンカと第1取付部との間においてスライド可能に設けられた係合部材が、前記第2取付部に対して着脱自在に係合される、ようにすることができる(請求項10対応)。この場合、3点式シートベルト装置としてより具体的な構造のものが提供される。
【0020】
前記後席が、車両の最後方に位置する最後列シートとされている、ようにすることができる(請求項11対応)。この場合、車両後端部付近の車体デザインに制約を与えないようにする上で好ましいものとなる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、後席中央乗員用のシートベルト装置としてリトラクタを有するものとしつつ、ヘッドクリアランス確保と、後席付近の車体デザインに大きな制約を与えないようにすることとを、それぞれ高い次元で満足させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1において、車両Aは、1.5ボックスタイプ(いわゆるミニバンタイプ)とされ、そのフロアパネルが符号1で示される。フロアパネル1上に構成される車室2内には、運転席と助手席(それぞれ図示略)の後方に位置する2列目シート3と、2列目シート3の後方に位置する最後列シートとしての3列目シート4とを有する。2列目シート3は、左右独立した形式とされて、車幅方向に2人がかけられるようになっている。2列目シート3は、シートクッション3Aと、シートバック3Bと、ヘッドレスト3Cとを有する。
【0023】
上記3列目シート4は、ベンチ式とされて、車幅方向中央の中央席の他に、その左側の左席と、右側の右席との3席を有する3人掛けとされている。この3列目シート4は、シートクッション4Aと、シートバック3Bと、3人分のヘッドレスト3Cとを有する。図1中、5はBピラー、6はCピラー、7は最後方に位置するDピラー(リアピラー)である。また、8はバックドア、9はル−フ(ルーフパネル)であり、ル−フ9の後縁部を構成するリアヘッダーが符号10で示され、ル−フ9の側縁部を構成するル−フレールが符号11で示される。
【0024】
図3に示すように、後輪用のホイールハウジング18の付近において、車幅方向一方側の車体側壁部には、後席用の空調ユニット15が装備されている。この空調ユニット15からの空調エアを車室2内に供給するための空調ダクトが符号16で示される。この空調ダクト16は、Dピラー9に沿って上下方向に伸びるダクト部16Aを有する。このダクト部16Aは、その下端部が空調ユニット15に接続されている。
【0025】
ダクト部16Aの上端部からは、2本の分岐ダクト部16Bに、16Cに分岐されている。一方の分岐ダクト部16Bは、ル−フ9の車幅方向一方側(空調ユニット15が配設されいる側)において車体前後方向に伸びるル−フレール11に沿って車体前方に向けて伸び、その前端は、2列目シート3のシートクッション3Aの前端付近に位置されている。また、他方の分岐ダクト部16Cは、前記リアヘッダー10に沿って車幅方向に伸びて、ル−フ9の車幅方向他方側にあるル−フレール11の部分で前方に向けて直角に曲げられてル−フレール11に沿って前方へ向けて伸び、その前端は2列目シート3のシートクッション3Aの前端付近に位置されている。各分岐ダクト部16B、16Cには、ル−フレール11に沿った部分において、複数の空調エア吹き出し口17が形成されている。
【0026】
ダクト部16AのDピラー7に沿った配設構造が、図4に示される。この図4において、Dピラー7は、インナパネル7Aとアウタパネル7Bとによって閉断面状に形成されている。そして、Dピラー7の車室2内側面には、略直角とされた角部が形成されて、閉断面状とされたダクト部16Aがこの角部に沿うようにしてつまりDピラー7との間に極力隙間のないようにして配設されている。そして、ダクト部16Aは、ファスナ13によってDピラー7に固定されている。なお、ダクト部16A部分は、トリム材14によって車室2内側から覆われて、車室2内からは目視できないようにされている。
【0027】
ル−フレール11に沿って伸びる分岐ダクト部16B(分岐ダクト部16Cのうちル−フレール11に沿う部分も同じ)の配設構造が、図5に示される。この図5において、ル−フレール11は、閉断面状に構成されているが、前後のサイドドアのうち後席用(2列目シート3、3列目シート4用)のサイドドア20がスライド式とされている関係上、このスライドドア20を前後方向に移動して開閉する際にガイドするためのガイド溝部11Cを有する。図5では、このガイド溝部11C部分での断面となっている関係上、ル−フレール11の閉断面構造部として、互いに接合された上下2つの閉断面構造部11Aと11Bとを有して、この上下の閉断面構造部11Aと11Bとの間にガイド溝部11Cが構成されている。このガイド溝部11C内に配設された前後方向に伸びるガードレール11Dが、閉断面構造部11Aに対して固定されている。そして、スライドドア20から車幅方向内方側に伸ばしたブラケット21に対してガイドローラ22が保持されて、このガイドローラ22が、上記ガードレール11Dによってガイドされるようになっている。
【0028】
前後方向に伸びるダクト部16Bは、ル−フ9とル−フレール11との角部に極力隙間を形成しないように配設されている。そして、ダクト部16Bは、車室2内側からトリム材23によって覆われて、車室2からはダクト部16Bが目視できないようにされている。なお、ダクト部16Bは、下方が大きく開口された断面略コ字状とされて、その下方に向けて開口された吹き出し口17部分を除いて、上記トリム材23によってダクト部16Bの底壁部が実質的に構成されている。そして、ダクト部16Bとトリム材23との間から空調エアが漏れないように、ダクト部16Bとトリム材13とが接着剤によって接着されると共に気密が確保されている。なお、吹き出し口17は、実質的に、トリム材23に接着剤によって接着された短い筒状の飾り部材24によって構成されている。
【0029】
分岐ダクト部16Cのうちリアヘッダー10に沿って伸びる部分の構造が図6に示される。この図6において、分岐ダクト部16Cは、閉断面状とされて、リアヘッダー10に沿って車幅方向に伸びるが、ル−フ9に対しては上下方向に若干離間して配設されている。そして、分岐ダクト部16Cは、車室2側からトリム材47によって覆われて、車室2から分岐ダクト部16Cが目視できないようにされている。なお、このリアヘッダー10に沿って伸びる分岐ダクト部16Cと他の部材との関係については、後にさらに詳述する。
【0030】
車室後部に設けられた図示を略す操作部を操作することによって、空調ユニット15から、適度の湿度、温度および風量とされた空調エアが、複数の吹き出し口17から車室2内に吹き出される。なお、空調ユニット15そのものに対する冷風や温風そのもの供給は、エンジンのある車体前部からダクトを介して行われるようになっている。
【0031】
図1、図2、図6において、3列目シート4の中央席に着座している乗員つまり中央乗員が、符号Jで示される。この中央乗員Jに対する3点式シートベルト装置SBについて説明する。まず、シートベルト装置SBは、中央席の左右直近位置(中央乗員Jの左右側方位置)に設けた左右一対の第1取付部31、第2取付部32と、リトラクタ33と、シートベルトアンカ34と、シートベルト35と、係合部材としてのタング36とを有する。左右一対の取付部31、32は、車体側固定部となるもので、シートクッション4Aを介してあるいは直接的に車体(のフロアパネル1)に対して取付けられる。
【0032】
リトラクタ33は、ル−フ9に車室2側から取付けられる。リトラクタ33の取付位置は、車幅方向略中央部で、かつ中央乗員Jの頭部の前方位置とされる(実施形態ではシートクッション4Aの前後方向略中間部付近に位置設定されている)。リトラクタ33は、2列目シート3はもとより、3列目シート4に着座した全ての乗員に対して、ヘッドクリアランスを阻害しない位置に位置設定されている。このような位置設定のためには、リトラクタ33は、その前後方向位置として、3列目シート4のシートクッション4Aの前後方向略中間部から、前方にある2列目シート3における起立位置(通常使用姿勢位置)にあるシートバック3B(ヘッドレスト3C)の上端部の間に設定すればよく、実施形態で示す場合よりも若干前方位置となるシートクッション4Aの前端部付近に位置設定することもできる。そして、リトラクタ33の車幅方向位置は、中央席の車幅方向略中心部とすればよい。
【0033】
シートベルトアンカ34は、リアヘッダー10内に装備される。すなわち、リアヘッダー10は、インナパネル10Aとアウタパネル10Bとによって閉断面状に構成されて、このリアヘッダー11の閉断面状の空間内に、実質的にピン状の部材によって構成されたシートベルトアンカ34が配置される(図7、図11、図12をも参照)。より具体的には、シートベルトアンカ34は、リアヘッダー10内においてリアヘッダー10に固定された取付ブラケット37に保持されている。シートベルトアンカ34の車幅方向位置は、中央乗員Jの左右一方側に偏った(オフセットされた)位置に位置設定されている。すなわち、シートベルトアンカ34は、車幅方向において、左右一対の取付部31、32のうち、一方側の第1取付部31とほぼ同じ位置に位置設定されている。
【0034】
シートベルト35は、リトラクタ33から引き出されて、シートベルトアンカ34に向けて一旦後方に向けて伸び、シートベルトアンカ34部分で折り返されて車室2内に向かっている。そして、車室2内に伸びているシートベルト35の先端部は、上記一方側の取付部31に常時固定されている。シートベルト35のうち第1取付部31とシートベルトアンカ34との間において、係合部材となるタング36がスライド可能に取付けられている。このタング36は、他方側の第2取付部32に対して着脱自在に係合される。タング36を第2取付部32に係合させた状態が、シートベルト装置SBの装着状態となる。そして、第2取付部32に設けた係合解除ボタンをマニュアル操作することによって、タング36を第2取付部32から取外すことが可能となる。
【0035】
前記取付ブラケット37は、そのフランジ部37aがリアヘッダー11のインナパネル11Aに対して例えばボルト等の固定具によって固定され、その固定部が符号37bで示される(図12参照)。リトラクタ33から引き出されたシートベルト35をリアヘッダー10内に受け入れるための入り口開口10aが、リアヘッダー10(のインナパネル10A)に形成されている(図6、図11、図12参照)。また、シートベルトアンカ34を経由したシートベルト35をリアヘッダー10から引き出すための出口開口10bが、リアヘッダー10(のインナパネル10A)に形成されている(図6、図11参照)。リアヘッダー10を車室2側から覆うトリム材47には、シートベルトアンカ34から伸びるシートベルト34を車室2側に導く開口47aが形成されている(図6参照)。
【0036】
リトラクタ33は、車幅方向中央部に位置される一方、シートベルトアンカ34は、車幅方向中央位置から車幅方向一方側に若干オフセット(ずれた)位置関係となっている。このため、リトラクタ33は、これからまっすぐ引き出されたシートベルト35がシートベルトアンカ34に指向するように、車幅方向に若干傾斜するように配置されている(図2、図7参照)。また、シートベルトアンカ34は、その軸線が、リトラクタ33からまっすぐ引き出されたシートベルト35に対して直交するように車幅方向に傾斜して配置されて、シートベルト35がシートベルトアンカ34でもってスムーズに折り返されるようになっている(図6、図7、図12参照)。
【0037】
中央乗員Jに対してシートベルト装置SBを装着した状態では、第1取付部31と第2取付部32との間において車幅方向に伸びるシートベルト35によって、中央乗員Jの腰部付近が拘束される。また、第2取付部32とシートベルトアンカ34との間にあるシートベルト35によって、中央乗員Jの胸部が拘束される。
【0038】
ここで、リトラクタ33をル−フ9に設けたことに伴う特別な構造について、特に図6〜図10を参照しつつ説明する。まず、ル−フ9の下面には、車幅方向に伸びる第1レインフォースメント41が接合されている。この第1レインフォースメント41は、左右のル−フレール11同士を連結している。そして、リトラクタ33は、この第1レインフォースメント41の下面に対して、ボルト等の固定具42によって固定されている(図6参照)。また、第1レインフォースメント41とリアヘッダー10とが、前後方向に伸びる第2レインフォースメント43によって連結されている。第2レインフォースメント43の第1レインフォースメント41に対する接合部位が図10に示され、第2レインフォースメント43のリアヘッダー10(のインナパネル10A)に対する接合部位が図9に示される。各レインフォースメント41、43はそれぞれ金属板を加工することによって上下方向に極力薄くなるように形成されている。
【0039】
ル−フ9には、リトラクタ33が位置する部分において、上方に若干盛り上げられた(膨出された)凸部9aが形成されている(図1、図6参照)。この凸部9aに対応して、第1レインフォースメント41にも部分的に、上方に向けて若干盛り上げられた(膨出された)凸部41aが形成されている(図6、図7参照)。そして、この凸部41aは、ル−フ9の凸部9a内に突出している。そして、リトラクタ33は、第1レインフォースメント41の凸部41a内にその上部が位置(収納)されている。これにより、リトラクタ33が極力高い位置に位置設定されて、ヘッドクリアランス確保のためにより好ましいものとなっている。
【0040】
前後方向に伸びる前記第2レインフォースメント43は、車幅方向中央位置に対して、車幅方向に若干オフセットされている。より具体的には、第2レインフォースメント43は、リトラクタ33つまり車幅方向略中心位置を境にして、シートベルトアンカ34(第1取付部31)とは車幅方向反対側に位置されている。これにより、リトラクタ33とシートベルトアンカ34との間にあるシートベルト35と、第2レインフォースメント43とが干渉するのを防止することができる。図6では、リトラクタ33とシートベルトアンカ34との間のシートベルト35が、第2レインフォースメント43の下方に位置する場合を示してあるが、これは第2レインフォースメント43の存在を示すためのものであり、リトラクタ33とシートベルトアンカ34との間のシートベルト35を、第2レインフォースメント43に対して上下方向ほぼ同じ位置に設定することができる。
【0041】
リトラクタ33とシートベルトアンカ34との間のシートベルト35は、リアヘッダー11に沿う分岐ダクト部16Cの上方を通るように配設される。そして、リトラクタ33とシートベルトアンカ34との間のシートベルト35は、分岐ダクト部16Cの上面に形成されたガイド部45にガイドされている(図7、図8参照)。すなわち、ガイド45は、分岐ダクト部16Cの上面から突設されて、断面略L字状とされた左右一対のガイド突起部45Aと45Bを有して、この左右一対のガイド突起部45Aと45Bの間に、リトラクタ33とシートベルトアンカ35との間のシートベルト35がスライド可能に挿通されている。これにより、リトラクタ33とシートベルトアンカ34との間のシートベルト35は、リトラクタ33とシートベルトアンカ35とを結ぶ線上から上下方向および車幅方向に大きくずれてしまうことが防止される。
【0042】
前述したリアヘッダー10、分岐ダクト部16Cのうちリアヘッダー11に沿う部分、リトラクタ33、第1レインフォースメント41、第2レインフォースメント43は、車室2内側から前述のトリム材47によって覆われている。このトリム材47は、分岐ダクト部16Cに対しては密着されているが(分岐ダクト部16Cの下面に対して接着剤によって接着されている)、リトラクタ33に対しては若干下方に位置されている。そして、リトラクタ33とトリム材47との間の空間には、スポンジ材やゴム材等の弾性部材からなる衝撃吸収部材48が配設されている。この衝撃吸収部材48は、例えばリトラクタ33の下面に対して接着剤によって接着されて、リトラクタ33に対する位置づれが防止されている。この衝撃吸収材48によって、乗員がリトラクタ33に向けて不用意に立ち上がったときでも、乗員の頭部が保護されることになる。
【0043】
以上実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば次のような場合をも含むものである。リトラクタ33をレインフォースメントを介することなくル−フ9に取付けるようにしてもよい。シートベルトアンカ34を、リアヘッダー11の外部に位置させることもできる。本発明は、2列目のシート3を3人掛けとした場合に、2列目シート3の中央席用のシートベルト装置とすることもできる。中央席としては、3人掛け以上であれば、例えば4人掛けであってもよく、この場合、中央席としては、左右の端部に位置する左右席以外の車幅方向内方側に位置する席をいうものである(例えば4人掛けの場合、中央側の2つの席が中央席となる)。車両が前後2列のシートのみを有する場合に、2列目のシートの中央席用としても本発明を適用することができる。勿論、4列以上のシートを有する場合でも2列目以後の各列のシートにおける中央席用として本発明を適用することができる。ル−フ9に、リトラクタ33の位置に対応した凸部9aを形成しないようにすることもできる。
【0044】
空調ダクト16のうち車幅方向に伸びる部分も、底壁部を有しないで下方に開口された形状として、この下方開口をル−フトリム47で覆うようにしてもよい。また、車幅方向に伸びる空調ダクトをレインフォースメント43によって支持するようにしてもよく、図6ではボルト46によって空調ダクトをレインフォースメント43に固定した場合を示してある。本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。さらに、本発明は、方法として表現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、車両の後部付近を示す簡略側面断面図。
【図2】図1に示される後席とその中央席用のシートベルト装置との関係を上方から見た簡略平面図。
【図3】後席用の空調ユニットと空調ダクトとを車室内側から見た要部斜視図。
【図4】図3のX4−X4線相当断面図。
【図5】図3のX5−X5線相当断面図。
【図6】中央席用シートベルト装置のうち、リトラクタとシートベルトアンカとの間の部分の詳細を示す側面断面図。
【図7】リアヘッダーと第1レインフォースメントと第2レインフォースメントと空調ダクトとリトラクタとシートベルトアンカとの関係を示す要部平面図。
【図8】図7のX8−X8線相当断面図。
【図9】第2レインフォースメントとリアヘッダーとの接合部位を示す斜視図。
【図10】第1レインフォースメントと第2レインフォースメントとの接合部位を示す斜視図。
【図11】シートベルトのシートベルトアンカに対する取り回しの様子を示す斜視図。
【図12】シートベルトアンカをその取付ブラケットと共に示す平面図。
【符号の説明】
3:2列目シート
4:3列目シート(最後列シート)
4A:シートクッション
4B:シートバック
4C:ヘッドレスト
7:Dピラー(リアピラー)
9:ル−フ
9a:凸部
10:リアヘッダー
10A:インナパネル
10B:アウタパネル
11:ル−フレール
15:空調ユニット
16:空調ダクト
16A:ダクト部
16B:分岐ダクト部
16C:分岐ダクト部
17:吹き出し口
31:第1取付部
32:第2取付部
33:リトラクタ
34:シートベルトアンカ
35:シートベルト
36:タング(係合部材)
37:取付ブラケット
41:第1レインフォースメント
41a:凸部
43:第2レインフォースメント
45:ガイド部
47:トリム材
48:衝撃吸収材
A:車両
J:中央乗員
SB:シートベルト装置

Claims (11)

  1. 運転席の後方に位置する後席が、車幅方向において複数名の乗員が着座可能とされると共に少なくとも車幅方向中央側において乗員が着座可能な中央席を有し、
    前記中央席に着座される中央乗員用のシートベルト装置が、シートベルト巻き取り用のリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、
    前記リトラクタが、前記中央席に着座している中央乗員の頭部よりも前方においてル−フに取付けられている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  2. 請求項1において、
    前記ル−フのうち前記リトラクタの配置位置が部分的に、上方に向けて膨出された凸部として形成されている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記リトラクタからまっすぐ引き出されたシートベルトが、車幅方向において傾斜するように該リトラクタが車幅方向に傾斜して配設されている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  4. 請求項1または請求項2において、
    前記ル−フの左右側縁部を構成して車体前後方向に伸びる左右一対のル−フレール同士が、車体前後方向のうち前記リトラクタの配設位置において、車幅方向に伸びる第1レインフォースメントによって連結され、
    前記第1レインフォースメントに、前記リトラクタが取付けられている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  5. 請求項4において、
    車体前後方向に伸びて、前記第1レインフォースメントと前記ル−フの後縁部を構成するリアヘッダーとを連結する第2レインフォースメントが設けられている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  6. 請求項5において、
    前記リトラクタからのシートベルトの引き出し方向が車幅方向に傾斜するように、該リトラクタが車幅方向に傾斜して配設され、
    前記第2レインフォースメントが、前記リトラクタに対して、該リトラクタからの前記シートベルトの引き出し方向とは車幅方向反対側において配設されている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
    前記リトラクタを車室内側から覆うル−フトリムが設けられている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  8. 請求項7において、
    前記ル−フトリムとリトラクタとの間に、襲撃吸収材が配設されている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  9. 請求項1において、
    前記リトラクタが、車幅方向略中心部に設けられ、
    前記リトラクタから引き出されたシートベルトを折り返すためのシートベルトアンカが、ル−フのうち前記中央席に着座している中央乗員の後方でかつ車幅方向中心位置よりも車幅方向一方側にずれた位置に配設され、
    前記リトラクタからのシートベルトの引き出し方向が、前記シートベルトアンカに指向するように車幅方向に傾斜されている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  10. 請求項9において、
    前記中央席用のシートベルト装置が、車体側への固定部として、前記中央席の左右に位置されて、車幅方向において前記シートベルトアンカ側に位置する第1取付部と、該シートベルトアンカとは車幅方向反対側に位置する第2取付部とを有し、
    前記リトラクタから引き出されたシートベルトが、前記シートベルトアンカを経由した後、その先端部が第1取付部に常時連結され、
    前記シートベルトのうち前記シートベルトアンカと第1取付部との間においてスライド可能に設けられた係合部材が、前記第2取付部に対して着脱自在に係合される、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、
    前記後席が、車両の最後方に位置する最後列シートとされている、ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
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