JP2005040799A - 圧延機のロールネック用オイルシール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サイドリップ26は金属環20と一体に形成されて、かつ金属環20の弾性でもって確実にリテーナ2に装着されているため、サイドリップ26が接触した状態で油切11A,11Bがロール17とともに軸心回りに高速回転した場合でも、サイドリップ26の油切11A,11Bに対する接触状態が安定して所定のシール性を確保でき、シール部材12Aを交換する場合、広幅部5の外周面と延長部24の径方向外端側との間に形成されている環状空間29に取外し用の治具を挿入して金属環20の延長部24に引掛け、軸方向へ引くといった作業で、シール部材12Aを容易にリテーナ2から取外すことができる。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延機のロールネック用オイルシールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の線材圧延機のロールネック用のシールには、例えば特許文献1に示す技術がある。これは、図4および図5に示すように、シール50が、ロールネック51に外嵌された一組の油切52,52とハウジング53に設けたシールリテーナ54との間の空間に配置される。
【0003】
このシール50は、径方向外方開放形の環状に形成されており、図5に示すように、シールリテーナ54の内周面にゴムの弾性によって筒状の組付け部55を嵌合し、この組付け部55の両側に形成したシールリップ56を両油切52の側面に接触させている。そして、一方のシールリップ56により軸受側からの潤滑剤の漏洩を防止し、他方のシールリップ56により外部から水などの異物が軸受側に侵入するのを防止している。
【0004】
このシール50では、軸方向からスチールバンド57を取付け部55の内周面に組付けるようにし、スチールバンド57の径方向外方への弾性力によって、シールリテーナ54の取付けを確実にしている。したがって、このようなシール50では、スチールバンド57を取付け部55の内周面に軸方向から組付けるための治具が必要になるとともに、スチールバンド57の組付けの際、シール50が片側に押圧されるため適正な取付け状態を確保しにく、シール性が低下することが考えられる。
【0005】
ところで圧延機のうち、線材圧延機ではロールは高速回転するもので、冷却水が使用されるなど厳しい使用環境にある。特に異物の侵入を防止する側のシールリップ部分は無潤滑であり寿命が短く、このため、シール50は定期的に交換する必要がある。しかしこのシール50では、取付け部55の両側にシールリップ56を一体に形成しているため、一方のシールリップ56部分のみの交換はできず、交換不要な部分を含めシール50そのものを交換する必要があり、ランニングコストが嵩む。
【0006】
そこで図6に示すように、シールリテーナ54の両側面に溝60を形成し、それぞれの溝60にゴム製のシール61を嵌合し、場合に応じて必要なシール61のみを交換できる技術が提案されている。
【0007】
このシール61は、その取付けに際して、ゴムの弾性により溝60の径方向内方壁面に所定のしめしろをもって外嵌装着させるようにしており、径方向外方側は溝60の径方向外方壁面に形成した係止部62に係止して、軸方向の抜止めをされている。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−271617号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記図6に示す従来技術によれば、シールリテーナ54の両側面に形成した溝60にシール61を嵌合するようにしたので、必要なシール61のみを交換することが可能になる。
【0010】
しかしこのシール61は、溝60の径方向内方壁面に外嵌装着させるようにし、かつ径方向外方側を環状凹部63に入込まなければならないため、取付け作業が難しい。そして取外しの際には、治具でもってシール61の全周をかき出すようにするといった、難しく煩雑な作業を行わなければならない。
【0011】
またシール61は、溝60の径方向内方壁面に外嵌装着させるようにし、かつ径方向外方側を環状凹部63に入込ませているので、シールリテーナ54との間に隙間が形成される寸法とならざるを得なく、このような隙間の存在に加え、シール自体がゴム材のみで形成されていることにより、ロールネック51とともに油切52が回転する使用状態において適正な姿勢が保持されにくい。このように使用状態の姿勢が適正でないと、シール61の寿命が短くなってしまう。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明における圧延機のロールネック用オイルシールは、圧延機のハウジング側部材の内周面に嵌合するよう組付けられ、ハウジング側部材に対する所定の嵌合力を有する金属環と、この金属環に一体に設けられて、ロールネックの外周面に嵌合されるロール側部材の径方向に沿う側面に軸方向から接触するシールリップとを有し、金属環は、ハウジング側部材の内周面へ嵌合される円筒部と、この円筒部からハウジング側部材の径方向側面に沿うよう径方向外方に向けて延長された延長部とを備えている。
【0013】
上記構成のオイルシールでは、シールリップがロール側部材に接触することでロールネック部分でその軸方向内外領域を密封する。
【0014】
またオイルシールの組付けに際し、所定の治具を用いてオイルシールの金属環、特に延長部を軸方向に押圧することで、オイルシールは容易にハウジング側部材に嵌合され、金属環、特に円筒部の剛性(弾性)により、オイルシールはハウジング側部材に確実に装着される。
【0015】
そして、シールリップは金属環に確実に支持されているため、オイルシールのシールリップがロール側部材に接触した状態でロールが軸心回りに回転した場合に、シールリップの接触状態が安定しており、したがって所定のシール性が確保されるとともに、オイルシールそのものの寿命が延長される。
【0016】
なお、上記構成における円筒部の嵌合に際しては、直接的または弾性部材を介して間接的にハウジング側部材に組付けられる双方の場合を含むものとする。
【0017】
本発明の実施形態として、ロールネック用オイルシールは、ハウジング側部材に軸方向一組で背中合わせに組付けられる。
【0018】
この構成によれば、同じ構成を有するオイルシールを製造すればよいため、複数種の型を準備する必要がなく、製造コストの上昇が抑えられる。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態として、金属環の延長部は、ハウジング側部材の径方向内方に形成した軸方向幅広部と径方向外方に形成された軸方向狭幅部との境界段付面を径方向外方に越える所定長さを有している。
【0020】
この種の圧延機では、その使用環境が厳しいため、オイルシールは定期的に交換する必要がある。そこで上記構成のように金属環の延長部の長さを設定することにより、特にオイルシールの取外しの際に、所定の治具をハウジング側部材の境界段付面と延長部とで形成される空間に挿入して例えば軸方向に引くようにすれば、オイルシールは容易にハウジング側部材から取外される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係るオイルシールを、図面を参照して説明する。図1はオイルシールの使用状態を示す半断面図、図2は油切を含むオイルシール装置の単体断面図、図3はオイルシールの単体断面図である。本発明の実施形態に係るオイルシールは、線材圧延機のロールネックに用いられて、ロールの外周部を軸方向内外で密封するものである。
【0022】
図1を参照して、1は非回転のハウジング、2はハウジング1の軸方向端部内周面に嵌着されるハウジング側部材としてのリテーナを示す。このリテーナ2は、環状に形成された狭幅の本体4の径方向内方部に、軸方向に拡径された環状の広幅部5とを有する。なお、本体4外周面に形成した外周溝6にOリング7嵌着されている。広幅部5それぞれの内周面に一条の内周溝5aが形成されている。
【0023】
図2に示すようにオイルシール装置10は、前記リテーナ2と、ロール側部材としての一対の油切(「フリンガ」ともいう)11A,11Bと、シール部材12A,12Bとから構成されている。油切11A,11Bそれぞれは、ロールネック13の外周面に圧入される嵌着部14と、この嵌着部14の軸方向端部から径方向外方に延長される遮蔽部15とから断面略L字形に形成される。嵌着部14の内周面に内周溝9が形成され、内周溝9それぞれにOリング8が嵌着され。一方の油切11Aの径方向外方部位に、他方の油切11側に向けて突出された環状の突出部16が一体的に形成されている。なお、一方の油切11Aの側面がロール17の大径部端面18に当接されている。
【0024】
図3に示すように、シール部材12A,12Bそれぞれは同一構成を有し、金属環(「芯金」ともいう)20と、この金属環20に加硫成型によって一体に形成される弾性体(「パッキン」ともいう)21とから構成される。図1に示すように、これらシール部材12A,12Bは、リテーナ2に背中合わせとなるよう軸方向一対で組付けられる。したがって、これらシール部材12A,12Bは、使用時に互いに線対称となるようリテーナ2に組付けられる。
【0025】
各シール部材12A,12Bの金属環20は、リテーナ2の内径側で径方向に沿う環状部22と、この環状部22の軸方向端部から軸方向に沿うよう延長される筒状部23と、この筒状部23の軸方向端部から径方向外方に沿うよう設けられた延長部24とから一体的に形成されている。
【0026】
弾性体21は、合成ゴムなどの所定の弾性を有する合成樹脂材料から形成されている。弾性体21は、金属環20に固着される取付け部25と、この取付け部25に一体形成されるサイドリップ26とからなる。取付け部25は、環状部22の側面および筒状部23の外周面に固着される。
【0027】
金属環20は、筒状部23に固着された取付け部25aを介してリテーナ2に嵌着される。サイドリップ26は、環状部22の径方向内方端部から軸方向に延長された腰部27と、この腰部27から順次拡径するよう設けられた円錐状の接触部28とから一体的に形成されている。
【0028】
環状部22および延長部24の径方向の所定長さはほぼ等しく形成されている。図1に示すように、特に延長部24は、シール部材12をリテーナ2に嵌着した状態でリテーナ2の広幅部5からなお径方向外方に突出する長さを有する。したがって、広幅部5の境界段付部である外周面5bと延長部24の径方向外端側との間に環状空間29が形成される。
【0029】
さらに、一方の金属環20の径方向外端部と前記一方の油切11Aにおける突出部16の内周面との間にわずかな隙間30が設けられており、この隙間30がラビリンスシールの機能を有している。
【0030】
次に、上記構成のオイルシール装置10の組付け手順を説明する。まず、リテーナ2の中心装着孔35の中心に、シール部材12A,12Bの中心を位置合わせし、金属環20をその筒状部23が取付け部25aを介してリテーナ2の広幅部5に内嵌するよう図示しない所定の治具を用いてシール部材12を弾性体21の弾性力に抗して軸方向に押圧する。
【0031】
このとき金属環20は延長部24を有するので、この延長部24を押圧することにより、シール部材12A,12Bを容易にリテーナ2に装着することができる。なお、シール部材12A,12Bは同時あるいはそれぞれ別個にリテーナ2に装着してよい。
【0032】
このように、リテーナ2の中心とシール部材12A,12Bの中心とを位置合わせし、所定の治具を用いて延長部24を押圧することにより、シール部材12A,12Bをリテーナ2に容易に装着することができる。
【0033】
そして、シール部材12A,12Bは金属環20を有しており、シール部材12A,12Bはその筒状部23が取付け部25aを介してリテーナ2に嵌合されるので、金属の弾性嵌合力がシール部材12A,12Bの嵌合力に付加される。したがって、従来のようにゴム材のみからなるシール部材に比べてリテーナ2への装着を確実に行うことができる。
【0034】
また、リテーナ2に直接嵌合する部分は弾性体21の取付け部25aである。このため、取付け部25aの一部が広幅部5の内周溝5aに弾性復元力によって入り込み、シール部材12A,12Bはいっそう確実にリテーナ2に保持される。このようにしてシール部材12A,12Bを装着したリテーナ2をハウジング1に装着する。
【0035】
これとは別に、ロールネック13に一方の油切11Aを嵌着し、ロール17を軸方向一方側から一方の油切11Aの中心穴にロールネック13を一方の油切11Aとともに挿通し、サイドリップ26の接触部28が所定の緊迫力となる予め設定されている位置までロール17を移動する。この場合、一方の金属環20の径方向外端部と一方の油切11Aにおける突出部16の内周面との間にわずかな隙間30が形成される。
【0036】
また、ロール17の他方側からロールネック13に他方の油切11Bを、その軸方向端面が一方の油切11Aに当接するまで外嵌挿入する。このようにすることにより、既にリテーナ2に組付けられているシール部材12Bのサイドリップ26の接触部28が所定の緊迫力でもって油切11Aの側面に接触する。
【0037】
オイルシール装置10は以上のようにして組付けられるものであり、ロール17の軸方向一方側において、冷却水などの異物が軸受(例えば油膜軸受)側に侵入しないよう密封し、軸方向他方側において、軸受に供される潤滑油が一方側に漏れ出るのを防止することができる。
【0038】
具体的には、一方の金属環20の径方向外端部と一方の油切11Aにおける突出部16の内周面との間に形成されるわずかな隙間30、すなわちラビリンスシールによって径方向外方で異物がシールされ、サイドリップ26によって隙間30よりも径方向内方位置で異物がシールされ、異物が軸受側に侵入するのを効果的に防止する。シール部材12B側では、サイドリップ26によって潤滑油がロール17の一方側に漏れ出るのを防止する。
【0039】
シール部材12A,12Bは、リテーナ2の中心に形成した中心装着孔35に環状部22および筒状部23が入り込むようにして背中合わせで組付けられている。このため、油切11A,11Bの大きさが従来と同じであれば、サイドリップ26の軸方向幅を従来に比べて大きく設定することができる。
【0040】
したがって、サイドリップ26に充分な軸方向長さを有する腰部27を設けることができ、この腰部27によって接触部27を充分な緊迫力でもって油切11A,11Bそれぞれの側面に接触することができるため、従来に比べてシール性能の向上を図ることができる。
【0041】
上記線材圧延機では、ロール17が軸心回りに回転し、これに伴なってサイドリップ26が油切11A,11Bの側面に接触した状態でこれが軸心回りに回転する。ここで、サイドリップ26は金属環20と一体に形成されて、かつ金属環20の弾性でもって確実にリテーナ2に装着されている。
【0042】
したがって、サイドリップ26が接触した状態で油切11A,11Bがロール17とともに軸心回りに高速回転した場合でも、サイドリップ26の油切11A,11Bに対する接触状態は安定する。このため、所定のシール性を確保できるとともに、サイドリップ26の寿命を従来に比べて延長することができる。
【0043】
ところで、この種の線材圧延機のロールネックに使用されるシール部分は、使用環境が厳しいために定期的に交換する必要がある。この場合、冷却水などの侵入を防ぐ目的から、他方側のシール部材12Bに比べて一方側のシール部材12Aの方が、寿命が短いことが一般的である。
【0044】
そこで本発明の実施形態によれば、シール部材12A,12Bは一方側と他方側とに分割されているものを組合わせて用いているので、必要に応じて何れかのシール部材12A,12Bのみを交換すればよいため、従来に比べてランニングコストの上昇を抑えることができる。
【0045】
そして例えば、一方側のシール部材12Aを交換する場合、広幅部5の外周面と延長部24の径方向外端側との間に形成されている環状空間29に取外し用の治具を挿入して金属環20の延長部24に引掛け、軸方向へ引く作業によってシール部材12Aを容易にリテーナ2から取外すことができる。なお、他方側のシール部材12Bについても同様にしてリテーナ2から取外すことができる。
【0046】
このように本発明の実施形態によれば、ランニングコストの低減を図り得るとともに、取付けおよび取外しといったメンテナンスが極めて容易なシール部材12A,12Bを提供することができる。
【0047】
さらに、各シール部材12A,12Bは同一の構成であるので、背中合わせに使用することができるといった汎用性を有し、製造に際して多種類の型を準備する必要がないため生産性が良好となる。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明によれば、金属環により密封姿勢が安定してシール性能を向上させることができるとともに、ハウジング側への着脱が極めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すオイルシールの使用状態半断面図
【図2】同じく油切を含むオイルシール装置の単体断面図
【図3】同じくオイルシールの単体断面図
【図4】従来のオイルシールの使用状態断面図
【図5】同じく使用状態を示す拡大断面図
【図6】別の従来例を示す使用状態断拡大断面図
【符号の説明】
1 ハウジング
2 リテーナ
4 リテーナの本体
5 リテーナの広幅部
10 オイルシール装置
11A,11B 油切
12A,12B シール部材
13 ロールネック
20 金属環
22 環状部
23 筒状部
24 延長部
26 サイドリップ
Claims (3)
- 圧延機のロールネック部分に配置されて、前記圧延機のハウジング側部材の内周面に嵌合するよう組付けられるオイルシールにおいて、
前記ハウジング側部材に対する所定の嵌合力を有する金属環と、この金属環に一体に設けられて、ロールネックの外周面に嵌合されるロール側部材の径方向に沿う側面に軸方向から接触するシールリップとを有し、
前記金属環は、ハウジング側部材の内周面へ嵌合される円筒部と、この円筒部からハウジング側部材の径方向側面に沿うよう径方向外方に向けて延長された延長部とを備えている、ことを特徴とする圧延機のロールネック用オイルシール。 - 請求項1記載の圧延機のロールネック用オイルシールにおいて、
前記ハウジング側部材に軸方向一組で背中合わせに組付けられる、ことを特徴とする圧延機のロールネック用オイルシール。 - 請求項1または請求項2記載の圧延機のロールネック用オイルシールにおいて、
前記延長部は、前記ハウジング側部材の径方向内方に形成した軸方向幅広部と径方向外方に形成された軸方向狭幅部との境界段付面を径方向外方に越える所定長さを有している、ことを特徴とする圧延機のロールネック用オイルシール。
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