JP2005039325A - スピーカ装置およびその調整方法 - Google Patents

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勝弘 佐々木
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Abstract

【課題】ブリッジ検出によるMFBスピーカ装置において、ブリッジ回路からの検出電圧が鋭いディップを示すことがなく、ブリッジの平衡条件の調整が容易なスピーカ装置を提供する。
【解決手段】ブリッジ検出によるMFBスピーカ装置において、ブリッジ回路11が、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成され、ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値がスピーカ10のボイスコイルの直流抵抗値とされ、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値が、
Rb2k=1.12・Rb1・Rdt/Rvdc
の式に基づいて設定される。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブリッジ検出によるモーショナル・フィードバック(Motional Feed Back)方式のスピーカ装置およびこのスピーカ装置の調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
モーショナル・フィードバック(以下、MFBという)方式のスピーカ装置には、ブリッジ回路をスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出する検出器として用いて、ボイスコイルからの逆起電圧を検出することにより、ダイナミック・スピーカの振動系の運動制御を行うものがある。
【0003】
図1は、このブリッジ検出による従来のMFBスピーカ装置の構成を示すブロック図である。
【0004】
この図1において、MFBスピーカ装置のブリッジ回路は、スピーカ1のボイスコイル・インピーダンスRvcおよびボイスコイル電流検出抵抗Rdt,ブリッジ抵抗Rb1,ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2によって構成されており、スピーカの駆動によってブリッジの平衡条件がくずれた際に発生するA−B間の電圧(ブリッジ平衡電圧)をスピーカ1の振動系の速度に比例するMFB電圧として検出するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、このMFBスピーカ装置におけるブリッジ回路は、従来は、ボイスコイル・インピーダンスRvcの最小値とボイスコイル電流検出抵抗Rdtに対して、ブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2の二つの抵抗値が平衡するように、その平衡ポイントが調整されている。
【0006】
なお、図1中、2はスピーカ1の駆動アンプであり、3は駆動アンプ2にブリッジ回路からの検出電圧を帰還させる帰還回路であり、4は帰還電圧の帰還部である。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−99698号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなブリッジ検出によるMFBスピーカ装置において、ブリッジ回路によって検出されるMFB電圧は、ボイスコイルのインピーダンス特性そのものであり、スピーカの駆動時に、このボイスコイルのインピーダンスが周波数によって変化するとともに、低音共振周波数fo付近で容量性から誘導性へと変化し、位相も大きく変化する。
【0009】
このため、従来のブリッジ検出によるMFBスピーカ装置は、ブリッジ回路からの検出電圧が、図2に示されるように、位相がゼロ度となるインピーダンス最小点において鋭いディップを示すようになり、この部分において大きなレベル変化を生じてしまうために、例えば、このブリッジ回路からの検出電圧に対して微積分による波形整形処理などを行う場合に不都合な不連続な特性を有するようになってしまう。
【0010】
また、上記のような従来のMFBスピーカ装置においては、ボイスコイル・インピーダンスRvcの値を設定する際に、ボイスコイル・インピーダンスが周波数によって変化するので、その最小値を測定をするのが難しく高度な測定技術を必要とし、このために、位相の変化と相まって、ブリッジの平衡条件を調整するのが非常に難しいという問題がある。
【0011】
このため、従来は、ブリッジ検出によるMFBスピーカ装置の商品化が困難であった。
【0012】
この発明は、上記のような従来のブリッジ検出によるMFBスピーカ装置における問題点を解決することを解決課題の一つとしている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明(請求項1に記載の発明)によるスピーカ装置は、上記目的を達成するために、ブリッジ回路からスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出してこの検出電圧を駆動アンプに帰還させることによりスピーカの振動特性制御を行うスピーカ装置において、前記ブリッジ回路が、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成され、前記ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値がスピーカのボイスコイルの直流抵抗値とされ、前記ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値が、任意の係数kを用いた式
Rb2k=k・Rb1・Rdt/Rvdc
に基づいて設定されていることを特徴としている。
【0014】
さらに、第2の発明(請求項4に記載の発明)によるスピーカ装置の調整方法は、上記目的を達成するために、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成されたブリッジ回路からスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出して、この検出電圧を駆動アンプに帰還させることによりスピーカの振動特性制御を行うスピーカ装置の調整方法であって、前記ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値をスピーカのボイスコイルの直流抵抗値とし、前記ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値を、任意の係数kを用いた式
Rb2k=k・Rb1・Rdt/Rvdc
に基づいて設定することを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の最も好適と思われる実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
【0016】
図3は、この発明によるスピーカ装置の実施形態における一を示すブロック図である。
【0017】
この図3において、ダイナミック・スピーカ10からこのスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出するためのブリッジ回路11は、スピーカ10のボイスコイル・インピーダンスRvdcと、ボイスコイル電流検出抵抗Rdtと、ブリッジ抵抗Rb1と、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成されている。
【0018】
このブリッジ回路11のボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとの間の接点A1と、ブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとの間の接点B1とに、この接点A1とB1との間に発生する電位差を検出する帰還回路12が接続されている。
【0019】
この帰還回路12は、スピーカ装置が振幅方MFBである場合には、差動回路と積分回路によって構成され、速度形MFBである場合には差動回路によって構成され、加速度形MFBである場合には差動回路と微分回路によって構成される。
【0020】
そして、この帰還回路12は、スピーカ10を駆動する駆動アンプ13の入力ラインに設けられた帰還部14に接続されて、後述するように、帰還部14を介して帰還電圧を駆動アンプ13に帰還させるようになっている。
【0021】
上記ブリッジ回路11は、その平衡ポイントが従来のMFBスピーカ装置のブリッジ回路の平衡ポイントよりも所要の値だけずれるように設定されている。
【0022】
すなわち、従来のMFBスピーカ装置は、図1において接点Aの電位をEdとし接点Bの電位をEbとすると、そのブリッジ平衡条件は、
Ed=Eb
Rb2/(Rb1+Rb2)=Rdt/(Rvc+Rdt)
Rb1・Rdt=Rb2・Rvc
∴ Rb2=Rb1・Rdt/Rvc …(1)
となるが、この例のMFBスピーカ装置においては、ボイスコイル・インピーダンスRvdcの値としてスピーカ10のボイスコイルの直流抵抗の値が用いられ、そして、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値が、実験係数kを用いることによって求められて、そのブリッジ平衡条件が設定される。
この実験係数kは、以下のようにして求められる。
【0023】
すなわち、ブリッジ回路からの検出電圧に大きなディップが形成されることなく、同じ条件を有するMFBスピーカ装置の何れにおいても安定した電圧特性を示すことができる平衡ポイントを調べるために、ボイスコイルのインピーダンスの変化に伴う位相変化を考慮して実験を行ったところ、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの値は、式(1)によって求められる平衡ポイントにおけるブリッジ平衡度調整抵抗Rb2の値の1.344(±20%)倍の値が最適であるという結果が得られた。
【0024】
そして、ボイスコイル・インピーダンスRvcは、ボイスコイル直流抵抗値の約1.2倍であることから、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの値は、
Figure 2005039325
となり、実験係数k=1,12が求められる。
従って、実験係数kは、この値の±20パーセントの範囲の
k=0.9〜1.34
が好適となる。
【0025】
図4は、ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値としてインピーダンスの直流抵抗値を用い、実験係数kをk=1.12として、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値の設定を行った場合のブリッジ回路11からの検出電圧の特性を示すグラフである。
【0026】
この図4から分かるように、上記例のMFBスピーカ装置によれば、ブリッジ回路11からの検出電圧が、位相がゼロ度となるインピーダンス最小点においても従来のような鋭いディップを示すことがなく、この部分におけるレベル変化が小さくなるので、例えば、このブリッジ回路からの検出電圧に対して微積分による波形整形処理などを行う場合にも不都合を生じない連続した特性を有するようになる。
【0027】
そして、上記例のMFBスピーカ装置によれば、ボイスコイル・インピーダンスRvdcの値として、ボイスコイルの直流抵抗値を用いることによりブリッジの平衡条件が設定されるので、テスタによるボイスコイルの直流抵抗の検出値をそのまま使用することができ、ブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kも、実験係数kを用いて、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtの比率に対応した値を求めて設定すれば良いので、従来と比べて極めて容易に設定することが出来るようになる。
【0028】
上記例におけるスピーカ装置は、ブリッジ回路からスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出してこの検出電圧を駆動アンプに帰還させることによりスピーカの振動特性制御を行うスピーカ装置において、前記ブリッジ回路が、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成され、前記ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値がスピーカのボイスコイルの直流抵抗値とされ、前記ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値が、任意の係数kを用いた式
Rb2k=k・Rb1・Rdt/Rvdc
に基づいて設定されているスピーカ装置の実施形態を、その上位概念の実施形態としている。
【0029】
この上位概念を構成するスピーカ装置の実施形態は、MFBスピーカ装置において、このブリッジ回路を構成するブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値が、ブリッジ平衡条件式によりボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値としてスピーカのボイスコイルの直流抵抗値を用いて求められる値に、係数kを乗じた値に設定される。
【0030】
このスピーカ装置によれば、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの設定の際に、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとしてスピーカのボイスコイルの直流抵抗値を用いることによって、テスタによるボイスコイルの直流抵抗の検出値をそのまま使用することができ、ブリッジ回路の平衡条件を従来と比べて極めて容易に設定することが出来るようになる。
【0031】
そして、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの設定を、任意の係数kを用いて従来の平衡ポイントよりもずれるように行うことによって、係数kの選択により、ブリッジ回路からの検出電圧が、位相がゼロ度となるインピーダンス最小点においても従来のような鋭いディップが現れることがなく、この検出電圧に対して微積分による波形整形処理などを行う場合でも不都合を生じない連続した特性を有するようにすることが出来る。
【0032】
上記例におけるスピーカ装置の調整方法は、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成されたブリッジ回路からスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出して、この検出電圧を駆動アンプに帰還させることによりスピーカの振動特性制御を行うスピーカ装置の調整方法であって、前記ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値をスピーカのボイスコイルの直流抵抗値とし、前記ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値を、任意の係数kを用いた式
Rb2k=k・Rb1・Rdt/Rvdc
に基づいて設定するスピーカ装置の調整方法の実施形態を、その上位概念の実施形態としている。
【0033】
この上位概念を構成するスピーカ装置の調整方法の実施形態は、MFBスピーカ装置のブリッジ回路の平衡条件を調整する際に、このブリッジ回路を構成するブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値としてスピーカのボイスコイルの直流抵抗値を用い、そして、ブリッジ平衡条件式から求められる値に、係数kを乗じた値をボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値として設定する。
【0034】
このスピーカ装置の調整方法によれば、MFBスピーカ装置のブリッジ回路の平衡条件を調整する際に、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの設定が、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとしてスピーカのボイスコイルの直流抵抗値を用いることによって行われるので、テスタによるボイスコイルの直流抵抗の検出値をそのまま使用することができ、従来と比べてブリッジ回路の平衡条件の調整を極めて容易に行うことが出来るようになる。
【0035】
そして、ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの設定が、任意の係数kを用いることによって、従来の平衡ポイントよりもずれるように行われるので、係数kの選択により、ブリッジ回路からの検出電圧が、位相がゼロ度となるインピーダンス最小点においても従来のような鋭いディップが現れることがなく、この検出電圧に対して微積分による波形整形処理などを行う場合でも不都合を生じない連続した特性を有するようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のスピーカ装置を示すブロック図である。
【図2】この従来のスピーカ装置の検出器出力特性を示すグラフである。
【図3】この発明の実施形態におけるスピーカ装置の一例を示すブロック図である。
【図4】同例におけるスピーカ装置の検出器出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10 …スピーカ
11 …ブリッジ回路
12 …帰還回路
13 …駆動アンプ
14 …帰還部
Rvdc …ボイスコイル・インピーダンス
Rdt …ボイスコイル電流検出抵抗
Rb1 …ブリッジ抵抗
Rb2k …ブリッジ平衡度調整抵抗
k …実験係数(係数)

Claims (6)

  1. ブリッジ回路からスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出してこの検出電圧を駆動アンプに帰還させることによりスピーカの振動特性制御を行うスピーカ装置において、
    前記ブリッジ回路が、ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成され、
    前記ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値がスピーカのボイスコイルの直流抵抗値とされ、
    前記ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値が、任意の係数kを用いた式
    Rb2k=k・Rb1・Rdt/Rvdc
    に基づいて設定されていることを特徴とするスピーカ装置。
  2. 前記係数kが0.9〜1.34である請求項1に記載のスピーカ装置。
  3. 前記係数kが1.12である請求項1に記載のスピーカ装置。
  4. ボイスコイル・インピーダンスRvdcとボイスコイル電流検出抵抗Rdtとブリッジ抵抗Rb1とブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kとによって構成されたブリッジ回路からスピーカの振動系の運動に比例した電圧を検出して、この検出電圧を駆動アンプに帰還させることによりスピーカの振動特性制御を行うスピーカ装置の調整方法であって、
    前記ボイスコイル・インピーダンスRvdcの抵抗値をスピーカのボイスコイルの直流抵抗値とし、
    前記ブリッジ平衡度調整抵抗Rb2kの抵抗値を、任意の係数kを用いた式
    Rb2k=k・Rb1・Rdt/Rvdc
    に基づいて設定することを特徴とするスピーカ装置の調整方法。
  5. 前記係数kを0.9〜1.34に設定する請求項4に記載のスピーカ装置の調整方法。
  6. 前記係数kを1.12に設定する請求項4に記載のスピーカ装置の調整方法。
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