JP2005036658A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】NOx保持剤の前段にSOx保持剤を有する排気浄化装置において、NOx保持剤を効率良く再生処理できる排気浄化装置を提供する。
【解決手段】SOx保持剤担持フィルタ50と、フィルタバイパス通路44と、フィルタを通る排気ガス量を制御する弁48と、フィルタ上流から還元剤を供給する第1供給手段と、NOx保持剤51と、NOx保持剤バイパス通路44と、NOx保持剤を通る排気ガス量を制御する弁53と、NOx保持剤を通る排気ガスに還元剤を供給する第2供給手段56とを具備し、NOx保持剤51を再生処理すべき時には、低負荷なら上記第1供給手段で還元剤を供給すると共に排気ガスがNOx保持剤51に直接流入するようにし、高負荷なら排気ガスがフィルタ50を通るようにすると共にNOx保持剤51を通る排気ガス量を調整しつつ上記第2供給手段56で還元剤を供給する、排気浄化装置が提供される。
【選択図】 図5
【解決手段】SOx保持剤担持フィルタ50と、フィルタバイパス通路44と、フィルタを通る排気ガス量を制御する弁48と、フィルタ上流から還元剤を供給する第1供給手段と、NOx保持剤51と、NOx保持剤バイパス通路44と、NOx保持剤を通る排気ガス量を制御する弁53と、NOx保持剤を通る排気ガスに還元剤を供給する第2供給手段56とを具備し、NOx保持剤51を再生処理すべき時には、低負荷なら上記第1供給手段で還元剤を供給すると共に排気ガスがNOx保持剤51に直接流入するようにし、高負荷なら排気ガスがフィルタ50を通るようにすると共にNOx保持剤51を通る排気ガス量を調整しつつ上記第2供給手段56で還元剤を供給する、排気浄化装置が提供される。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等に搭載される筒内噴射型の内燃機関、例えばディーゼル機関では、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去することが要求されている。そしてこのような要求に対し、NOx保持剤を内燃機関の排気通路に配置する方式の排気浄化装置が提案されている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられるNOx保持剤は、流入排気ガスの空燃比がリーンの時にはその排気ガス中のNOxを保持し、排気ガス中の空燃比が小さくなり、且つ排気ガス中にHCやCO等の還元剤が存在していれば保持していたNOxを離脱させ還元浄化する作用(NOxの保持離脱及び還元浄化作用)を有する。そして、この作用を利用して、排気ガスの空燃比がリーンの時には排気ガス中のNOxをNOx保持剤に保持させ、一定期間使用してNOx保持剤の保持能力が低下した時または低下する前にNOx保持剤に保持したNOxを還元浄化する、すなわちNOx保持剤をNOx再生処理するようにしている。
【0004】
なお、本明細書において「保持」という語は「吸収」及び「吸着」の両方の意味を含むものとして用いる。したがって、「NOx保持剤」は、「NOx吸収剤」と「NOx吸着剤」の両方を含み、前者はNOxを硝酸塩等の形で蓄積し、後者はNO2等の形で吸着する。また、NOx保持剤からの「離脱」という語についても、「吸収」に対応する「放出」の他、「吸着」に対応する「脱離」の意味も含むものとして用いる。
【0005】
ところで、内燃機関の燃料には硫黄(S)成分が含まれている場合があり、この場合には排気ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれることとなる。排気ガス中にSOxが存在するとNOx保持剤はNOxの保持作用を行うのと全く同じメカニズムで排気ガス中のSOxを保持する。
【0006】
ところが、NOx保持剤に保持されたSOxは比較的安定であり、一般にNOx保持剤に蓄積されやすい傾向がある。NOx保持剤のSOx蓄積量が増大すると、NOx保持剤のNOx保持容量が減少して排気ガス中のNOxの除去を十分に行うことができなくなるため、NOxの浄化効率が低下するいわゆる硫黄被毒(S被毒)の問題が生じる。特に、燃料として比較的硫黄成分を多く含む軽油を使用するディーゼルエンジンにおいてはこの硫黄被毒の問題が生じやすい。
【0007】
そこで、上記NOx保持剤のNOx保持能力を長期にわたって高く維持するために、NOx保持剤よりも上流に、排気ガス中のSOxを保持するSOx保持剤を配置し、NOx保持剤にSOxが流れ込まないようにして硫黄被毒の防止を図った排気浄化装置が開発されている。
【0008】
このようなSOx保持剤は、流入排気ガスの空燃比がリーンの時にはその排気ガス中のSOxを保持し、排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになると保持したSOxを離脱させるというものである。しかし、このSOx保持剤のSOx保持容量にも限界があるため、SOx保持剤が飽和する前にSOx保持剤から積極的に硫黄分を離脱させる処理、すなわちSOx再生処理を実行する必要がある。そのため、NOx保持剤の上流側にSOx保持剤を配置した構成の上記のような排気浄化装置には、通常、NOx保持剤をバイパスするバイパス通路が設けられており、SOx保持剤のSOx再生処理中には排気ガスがバイパス通路を通ってNOx保持剤をバイパスするようにされ、SOx保持剤のSOx再生処理に伴うNOx保持剤の硫黄被毒を防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このように、NOx保持剤の上流側にSOx保持剤を配置した構成の上記のような排気浄化装置においては、理想的には下流のNOx保持剤にSOxが流入することがなく硫黄被毒されることはない。しかしながら、実際には、例えばSOx保持剤の保持能力を超える大量のSOxが一気にSOx保持剤に流入した場合等、様々な理由でSOxがNOx保持剤に流入する場合がある。したがって、頻度は少ないものの、NOx保持剤についてもSOx再生処理を行う必要がある。
【0010】
NOx保持剤に保持されているSOxについても、NOxと同じメカニズムで離脱させることが可能である。しかし、SOxは比較的安定した形でNOx保持剤に保持されるため、通常のNOxの還元浄化制御が行われる温度(例えば250℃程度以上)ではNOx保持剤に保持されたSOxを放出等させることは困難である。このため、NOx保持剤のSOx再生処理を行うためには、NOx保持剤を通常のNOx還元浄化制御時より高い温度、すなわち硫黄分放出温度(例えば600℃以上)に昇温し、且つ流入する排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比またはリッチにする必要がある。
【0011】
以上、説明したように、上記NOx保持剤はNOx再生処理及びSOx再生処理の必要がある。そして、これらを効率的に実施する方法としては内燃機関における燃料噴射制御や燃焼制御を利用する方法が知られている。すなわち例えば、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって、あるいはいわゆる低温燃焼をほぼ理論空燃比またはリッチ空燃比のもとで行うことによって上記NOx再生処理または上記SOx再生処理を行うようにする。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−274230号公報
【特許文献2】
特開2002−13413号公報
【特許文献3】
特開2000−328928号公報
【特許文献4】
特開2001−166089号公報
【特許文献5】
特開平11−36923号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、NOx保持剤の上流側にSOx保持剤を配置した構成の上記のような排気浄化装置においては、これらの方法によって下流側のNOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理しようとすると様々な不都合が生じる。すなわち例えば、これらの方法によってNOx保持剤をNOx再生処理しようとすると、上流側にあるSOx保持剤からSOxの離脱が起こり、そのSOxがNOx保持剤に流入してNOx保持剤が硫黄被毒されてしまう可能性がある。そしてこのような硫黄被毒を避けようとすると、NOx保持剤のNOx再生処理の実施可能時期が上流側にあるSOx保持剤からのSOxの離脱が少ないと考えられるSOx保持剤のSOx再生処理完了直後に限られてしまう。また、上記の方法によってNOx保持剤をSOx再生処理しようとした場合には、上流側にSOx保持剤があるために下流側にあるNOx保持剤の昇温が不充分になり、充分なSOx再生処理を行うことが困難となる。
【0014】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、NOx保持剤の硫黄被毒防止用のSOx保持剤を有する排気浄化装置において、NOx保持剤を効率良くNOx再生処理及びSOx再生処理できる排気浄化装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【0016】
請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路内に配置されたSOx保持剤が担持されたパティキュレートフィルタと、該パティキュレートフィルタをバイパスするように構成された第1バイパス通路と、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガス量と上記第1バイパス通路を流通する排気ガス量との割合を制御する第1制御弁と、上記第1バイパス通路の始端よりも上流において還元剤を供給する第1還元剤供給手段と、上記第1バイパス通路の終端よりも下流において排気通路内に配置されたNOx保持剤と、該NOx保持剤をバイパスするように構成された第2バイパス通路と、上記NOx保持剤を流通する排気ガス量と上記第2バイパス通路を流通する排気ガス量との割合を制御する第2制御弁と、上記NOx保持剤へ流入する排気ガスへ還元剤を供給する第2還元剤供給手段と、を具備する内燃機関の排気浄化装置において、上記NOx保持剤に保持されたNOxを離脱させ還元すべき時または上記NOx保持剤に保持された硫黄分を離脱させるべき時には、機関運転状態が検出され、検出された機関運転状態が予め定めた負荷よりも低負荷の場合には、上記第1還元剤供給手段によって還元剤が供給されると共に上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第1バイパス通路を流通するようにされ、且つ、上記第2制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記NOx保持剤を流通するようにされる一方、検出された機関運転状態が予め定めた負荷よりも高負荷の場合には、上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記パティキュレートフィルタを流通するようにされると共に、上記第2制御弁によって上記NOx保持剤を流通する排気ガス量を調整しつつ上記第2還元剤供給手段によって還元剤が供給される、内燃機関の排気浄化装置が提供される。
【0017】
NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合、例えば内燃機関における燃料噴射制御や燃焼制御を利用して、還元剤を機関本体から供給するようにすると、これらの処理を効率的に実施できる。そして、このような方法によるNOx再生処理またはSOx再生処理は、発生する排気ガス量が少なく、また燃料噴射量の少ない低負荷時に良好に実施できることがわかっている。
【0018】
一方、NOx保持剤の硫黄被毒対策等のためにSOx保持剤がNOx保持剤の上流側に配置されている構成においては、上記のような方法で下流側のNOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理しようとすると、排気ガスがSOx保持剤を通過してからNOx保持剤に流入することになるために様々な不都合が生じる。すなわち、例えば上流側にあるSOx保持剤から離脱したSOxによってNOx保持剤が硫黄被毒されてしまったり、NOx保持剤の昇温が不充分になってしまう場合がある。
【0019】
これに対し、請求項1に記載の発明では、上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第1バイパス通路を流通するようにすることができるので、低負荷時(すなわち、機関運転状態が上記予め定めた負荷よりも低負荷の場合)において、上記のような不都合を生じることなく、効率的に上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。
【0020】
また、請求項1に記載の発明では、機関運転状態が予め定めた負荷よりも高負荷の場合には、上記第2還元剤供給手段により還元剤を供給することによって上記NOx保持剤のNOx再生処理またはSOx再生処理が図られる。したがって、請求項1に記載の発明によれば、広範な機関運転状態において上記NOx保持剤のNOx再生処理またはSOx再生処理を行うことができる。更に、この高負荷時において上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理すべく還元剤を供給する際には、上記第2制御弁によって上記NOx保持剤を流通する排気ガス量が調整され、燃費悪化が抑制される。
【0021】
請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記内燃機関は、燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと煤がほとんど発生しなくなる機関からなり、上記第1還元剤供給手段は、燃焼室内における平均空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになるようにすると共に燃焼室内の不活性ガス量が煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くなるようにすることによって還元剤を供給する。
【0022】
燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと煤がほとんど発生しなくなる内燃機関においては、燃焼室内の不活性ガス量を煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くするといわゆる低温燃焼を行うことができる。
【0023】
そしてこの低温燃焼は、その性質上、燃料噴射量が少なく燃焼による発熱量が比較的少ない低負荷時に良好に実施することが可能なのであるが、この低温燃焼を利用して排気通路内に配置されたNOx保持剤を効率的にNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。すなわち、上記低温燃焼をほぼ理論空燃比またはリッチ空燃比のもとで行うことによって還元剤を供給し、上記NOx再生処理または上記SOx再生処理を行うことが可能である。
【0024】
以上のことから、請求項2に記載の発明によれば、低負荷時(すなわち、機関運転状態が上記予め定めた負荷よりも低負荷の場合)において、効率的に上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。
なお、請求項2に記載の発明では、上記低負荷時に上記NOx保持剤のNOx再生処理またはSOx再生処理を行う場合に、排気ガスが上記パティキュレートフィルタをバイパスするが、低温燃焼時の排気ガス中には特に排気微粒子が少ないので、上記パティキュレートフィルタをバイパスしても大きな問題とはならない。
【0025】
請求項3に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記第1還元剤供給手段は、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって還元剤を供給する。
請求項3に記載の発明によっても請求項2に記載の発明と同様、低負荷時(すなわち、機関運転状態が上記予め定めた負荷よりも低負荷の場合)において、効率的に上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明では請求項1から3の何れか一項に記載の発明において、更に、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流通方向を反転できる流通方向反転手段を有している。
請求項4に記載の発明によれば、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流通方向を反転することができる。これにより、通常使用時において、上記パティキュレートフィルタ内の位置による排気微粒子捕集量及びSOx保持量の偏りを緩和して、パティキュレートフィルタ及びそれに担持されているSOx保持剤を効率的に利用することができる。また、排気ガスの流通方向を反転することにより、フィルタの詰まりを防止する効果もある。
【0027】
また、上記SOx保持剤のSOx再生処理を行う場合に関しても、SOx再生処理中に、もしくはSOx再生処理毎に、排気ガスの流通方向を反転することによって、SOx再生処理の偏りを緩和して担持されているSOx保持剤の総てを効率的にSOx再生処理できる。
【0028】
請求項5に記載の発明では請求項1から4の何れか一項に記載の発明において、上記SOx保持剤に保持された硫黄分を離脱させるべき時には、上記第2制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第2バイパス通路を流通するようにされる。
請求項5に記載の発明のようにすることによって、上記SOx保持剤から離脱された硫黄分(例えばSOx等)によって上記NOx保持剤が硫黄被毒されるのを回避することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明はNOx保持剤であるNOx吸収剤とNOx吸着剤のどちらを用いても実施可能であるが、以下ではNOx吸収剤を用いた場合について説明する。
【0030】
図1は本発明を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明は火花点火式内燃機関に適用することもできる。
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートをそれぞれ示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介して排気ターボチャージャ14のコンプレッサ15に連結される。吸気ダクト13内にはステップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配置され、更に吸気ダクト13周りには吸気ダクト13内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置18が配置される。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却装置18内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0031】
一方、排気ポート10は排気マニホルド19及び排気管20を介して排気ターボチャージャ14の排気タービン21に連結される。排気タービン21の出口には排気浄化装置100が連結されるが、この排気浄化装置100については後に図3から図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
排気マニホルド19とサージタンク12とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路24を介して互いに連結され、EGR通路24内には電気制御式EGR制御弁25が配置される。また、EGR通路24周りにはEGR通路24内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置26が配置される。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却装置26内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管6aを介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール27に連結される。このコモンレール27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された燃料は各燃料供給管6aを介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の吐出量が制御される。
【0033】
電子制御ユニット(ECU)30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁6、スロットル弁駆動用ステップモータ16、EGR制御弁25及び燃料ポンプ28等に接続される。
【0034】
図2(A)は要求トルクTQと、アクセルペダル40の踏込み量Lと、機関回転数Nとの関係を示している。なお、図2(A)において各曲線は等トルク曲線を表しており、TQ=0で示される曲線はトルクが零であることを示しており、残りの曲線はTQ=a、TQ=b、TQ=c、TQ=dの順に次第に要求トルクが高くなる。図2(A)に示される要求トルクTQは図2(B)に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。本実施形態では図2(B)に示すマップからアクセルペダル40の踏込み量L及び機関回転数Nに応じた要求トルクTQがまず初めに算出され、この要求トルクTQに基づいて燃料噴射量等が算出される。
【0035】
電子制御ユニット30は、このように内燃機関の各構成要素と信号をやり取りして燃料噴射量制御等の機関の基本制御を行う他、本実施形態においては、排気浄化装置100の各構成要素(後述する第1制御弁48、第2制御弁53、還元剤供給装置56等)とも信号のやり取りを行い、後述する排気浄化装置100についての制御(例えば、NOx吸収剤のNOx再生処理やSOx再生処理のための制御等)も行う。
【0036】
次に排気浄化装置100について説明する。図3から図5は、排気浄化装置100の構成を説明するための図であり、排気浄化装置100の内部の排気ガスの流れが示されている。図3に示されているように、排気浄化装置100は、基幹通路44と、基幹通路44に接続された第1環状通路45と第2環状通路46とを有している。排気浄化装置100に流入した排気ガスは、後に説明するように必ず基幹通路44を通り、選択的に第1環状通路45及び第2環状通路46を通る。
【0037】
第1環状通路45にはNOx吸収剤49が担持されたパティキュレートフィルタ(以下、「NOx吸収剤担持フィルタ」という)50が配置されている。また、第2環状通路46にはNOx吸収剤51がハニカム状の担持体に担持されて配置されている(以下、「後段NOx吸収剤51」という)。更に基幹通路44の終端の近くには酸化触媒52がハニカム状の担持体に担持されて配置されている。
【0038】
基幹通路44と第1環状通路45との接続部分には、第1制御弁48が配置されている。第1制御弁48にはステップモータ47が接続される。ステップモータ47は対応する駆動回路38を介して出力ポート36に接続される。そして、この第1制御弁48を制御することによって、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガスの流通方向を反転することができる。また、第1制御弁48を制御することによって上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガス量とこれをバイパスする排気ガス量との割合を制御することができ、結果としてこれら排気ガス量を制御することができる。次にこのような第1制御弁48の作用について詳細に説明する。
【0039】
すなわち、第1制御弁48が図3に示されている第1動作位置に位置決めされると、排気ガスはまず基幹通路44から第1環状通路45の部分環状通路45aに流入する。そして、排気ガスはNOx吸収剤担持フィルタ50を介して第1環状通路45の部分環状通路45bに流出する。更に、排気ガスは第1制御弁48のところへと戻り基幹通路44内に流入する。
【0040】
一方、第1制御弁48が図4に示されている第2動作位置に位置決めされると、排気ガスはまず基幹通路44から部分環状通路45bに流入する。そして、排気ガスはNOx吸収剤担持フィルタ50を介して部分環状通路45aに流出する。更に、排気ガスは第1制御弁48のところへと戻り基幹通路44内に流入する。
このように、第1制御弁48の動作位置を図3に示した第1動作位置と図4に示した第2動作位置との間で切替えることによって、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガスの流通方向を反転することができる。
【0041】
更に、第1制御弁48の動作位置が図5に示されている中立動作位置に位置決めされると、排気ガスは部分環状通路45aおよび45bにはほとんど流入せず、ほとんど全ての排気ガスが第1制御弁48下流の基幹通路44に流入する。すなわち、この場合、排気ガスは上記NOx吸収剤担持フィルタ50(もしくは第1環状通路45)をバイパスすることとなる。
【0042】
そして、以上の説明からも明らかなように、上記第1及び第2動作位置と上記中立動作位置との間で第1制御弁48を制御することにより、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガス量とこれをバイパスする排気ガス量との割合を制御することができ、結果としてこれら排気ガス量を制御することができる。
【0043】
第1環状通路45を通って、または第1環状通路45をバイパスして第1制御弁48下流の基幹通路44に流入した排気ガスは、次いで基幹通路44と第2環状通路46との接続部分に到達する。図3に示されているように、この基幹通路44と第2環状通路45との接続部分には、第2制御弁53が配置されている。第2制御弁53にはステップモータ54が接続される。ステップモータ54は対応する駆動回路38を介して出力ポート36に接続される。そして、この第2制御弁53を制御することによって、上記後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量とこれをバイパスする排気ガス量との割合を制御することができ、結果としてこれら排気ガス量を制御することができる。次にこの第2制御弁53の作用について詳細に説明する。
【0044】
すなわち、第2制御弁53が図3に示されている第1動作位置に位置決めされると、排気ガスは基幹通路44から第2環状通路46の部分環状通路46aに流入する。そして、排気ガスは後段NOx吸収剤51を介して第2環状通路46の部分環状通路46bに流出する。更に、排気ガスは第2制御弁53のところへと戻り基幹通路44内に流入する。そして、排気ガスは更に下流に配置されている酸化触媒52へ流入する。
【0045】
一方、第2制御弁53が図4に示されている第2動作位置に位置決めされると、排気ガスは第2環状通路46(すなわち部分環状通路46a)にはほとんど流入せず、ほとんど全ての排気ガスが第2制御弁53下流の基幹通路44に流入する。すなわち、この場合、排気ガスは上記後段NOx吸収剤51(もしくは第2環状通路46)をバイパスすることとなる。
【0046】
なお、第2環状通路46の部分環状通路46aには、還元剤供給装置56が設けられている。還元剤供給装置56はECU30によって制御され、必要に応じて排気通路内へ、すなわち上記後段NOx吸収剤51へ流入する排気ガスへ還元剤を供給する。本実施形態においては、貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるため、還元剤として内燃機関の燃料である軽油を使用している。
【0047】
図6にNOx吸収剤担持フィルタ50の拡大断面図を示す。図6を参照すると、フィルタ50は多孔質セラミックから成り、排気ガスは矢印で示されるように図中左から右に向かって流れる。フィルタ50内には、上流側に栓57が施された第1通路58と下流側に栓59が施された第2通路60とが交互に配置されハニカム状をなしている。排気ガスが図中左から右に向かって流れると、排気ガスは第2通路60から多孔質セラミックの隔壁を通過して第1通路58に流入し、下流側に流れる。この時、排気ガス中の排気微粒子(パティキュレート)は多孔質セラミックによって捕集されて排気ガス中から除去され、排気微粒子の大気への放出が防止される。
【0048】
第1通路58及び第2通路60の隔壁の表面及び内部の細孔内にはNOx吸収剤49が担持されている。このNOx吸収剤49は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。NOx吸収剤49は流通する排気ガス(以下「吸収剤流通排気ガス」という)の空燃比がリーンの時にはNOxを吸収し、吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸収したNOxを放出して還元浄化する作用(NOxの吸収放出及び還元浄化作用)を有する。
【0049】
図1に示されるような圧縮着火式内燃機関では、通常時の排気ガス空燃比はリーンでありNOx吸収剤49は排気ガス中のNOxの吸収を行う。しかし、NOx吸収剤49のNOx吸収容量にも限界があるため、一定期間使用してNOx吸収剤49の吸収能力が低下した時または低下する前に、内燃機関の燃焼制御等、何らかの手段により吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると共に還元剤の存在する状態にし、吸収剤46に吸収されていたNOxを放出し還元浄化する(すなわち、NOx再生処理する)必要がある。
【0050】
この吸収放出及び還元浄化作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もあるが、この吸収放出及び還元浄化作用は図7に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0051】
すなわち、吸収剤流通排気ガスの空燃比がかなりリーンになると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が大幅に増大し、図7(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 −またはO2−の形で白金Ptの表面に付着する。一方、吸収剤流通排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 −またはO2−と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ吸収剤46内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、図7(A)に示されるように硝酸イオンNO3 −の形でNOx吸収剤49内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤49内に吸収される。
【0052】
吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2が生成され、NOx吸収剤49のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2がNOx吸収剤49内に吸収されて硝酸イオンNO3 −が生成される。これに対して吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 −→NO2)に進み、斯くしてNOx吸収剤49内の硝酸イオンNO3 −がNO2の形でNOx吸収剤49から放出される。すなわち、吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下するとNOx吸収剤49からNOxが放出されることになる。吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いが低くなれば吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下し、したがって吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いを低くすればNOx吸収剤46からNOxが放出されることになる。
【0053】
一方、この時吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると、HC、COは白金Pt上の酸素O2 −またはO2−と反応して酸化せしめられる。また、吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するためにNOx吸収剤46からNO2が放出され、このNO2は図7(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元浄化せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2が存在しなくなるとNOx吸収剤49から次から次へとNO2が放出される。したがって吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくし、且つ還元剤が存在する状態にすると短時間のうちにNOx吸収剤49からNOxが放出されて還元浄化されることになる。
【0054】
なお、ここでいう排気ガスの空燃比とは、そこよりも上流側の排気通路と燃焼室5または吸気通路に供給された空気と燃料との比率をいうものとする。したがって排気通路に空気や還元剤が供給されていない時には排気ガスの空燃比は機関の運転空燃比(機関の燃焼室5内の燃焼空燃比)に等しくなる。
【0055】
次にNOx吸収剤49の硫黄被毒のメカニズムについて説明する。排気ガス中にSOx成分が含まれていると、NOx吸収剤49は上述のNOxの吸収と同じメカニズムで排気ガス中のSOxを吸収する。すなわち、排気ガスの空燃比がリーンの時、排気ガス中のSOx(例えばSO2)は白金Pt上で酸化されてSO3 −、SO4 −となり、酸化バリウムBaOと結合してBaSO4を形成する。BaSO4は比較的安定であり、また、結晶が粗大化しやすいため一旦生成されると分解放出されにくい。このため、NOx吸収剤49中のBaSO4の生成量が増大するとNOxの吸収に関与できるBaOの量が減少してしまいNOxの吸収能力が低下してしまう。
【0056】
この硫黄被毒を解消するためには、NOx吸収剤49中に生成されたBaSO4を高温で分解するとともに、これにより生成されるSO3 −、SO4 −の硫酸イオンをスライトリーンを含むほぼ理論空燃比またはリッチ雰囲気(以下、単に「リッチ雰囲気」という)下で還元し、気体状のSO2に転換してNOx吸収剤49から放出する(すなわち、SOx再生処理する)必要がある。したがってSOx再生処理を行うためには、NOx吸収剤49を高温且つリッチ雰囲気の状態にすることが必要とされる。
【0057】
なお、第2環状通路内に配置されている後段NOx吸収剤51も上述したNOx吸収剤49と同様のものを使用しており、上述したようなメカニズムによりNOxを吸収放出、還元浄化すると共にSOxを吸収、放出する。すなわち、後段NOx吸収剤51についても、NOx吸収剤49と同様、NOx再生処理及びSOx再生処理を行う必要がある。
【0058】
次に、以上のような構成を有する排気浄化装置100の作動について説明する。まず、通常使用時において排気浄化装置100は、第1制御弁48が第1動作位置または第2動作位置に位置決めされ、第2制御弁53が第1動作位置に位置決めされた状態で排気ガスの浄化を行う。図3は、通常使用時において第1制御弁48が第1動作位置に位置決めされている場合を示している。
【0059】
通常使用時において排気浄化装置100に流入した排気ガスは、まずNOx吸収剤担持フィルタ50を通過する。そしてこの際、排気ガス中からNOx、SOx及び排気微粒子が除去される。排気ガスは次いで後段NOx吸収剤51を通過する。そして、ここでは主にNOxが除去される。これはSOxについては、通常、先のNOx吸収剤担持フィルタ50においてほとんど除去されているためである。すなわち、ここでNOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)は、後段NOx吸収剤51が硫黄被毒するのを防止するためのSOx吸収剤(SOx保持剤)として作用している。後段NOx吸収剤51を流出した排気ガスは最後に酸化触媒52を通過する。そしてここで、排気ガス中の未燃HC、CO等が酸化されて浄化される。
【0060】
また、通常使用時においては第1制御弁48が、例えば定期的にあるいは機関運転状態が低負荷になった時に、第1動作位置と第2動作位置との間で切替えられる。この切替えにより、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガスの流通方向が反転されるが、こうすることによって、NOx吸収剤担持フィルタ50内の位置による排気微粒子捕集量及びNOx及びSOx吸収量の偏りを緩和して、フィルタ及びフィルタに担持されているNOx吸収剤49を効率的に利用することができる。また、排気ガスの流通方向を反転することにより、フィルタの詰まりを防止する効果もある。
【0061】
次に、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をNOx再生処理する場合について説明する。この場合、NOx吸収剤49を流通する排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比もしくはリッチにする必要があるが、本実施形態において、これは第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めした状態で、膨張行程または排気行程中に燃焼室5内へ補助燃料を噴射することによって実現される。あるいは、第1制御弁48を同様な動作位置とし、いわゆる低温燃焼をほぼ理論空燃比もしくはリッチ空燃比のもとで行うことによって(すなわち、燃焼室5内における平均空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになるようにして低温燃焼を実施することによって)実現するようにしてもよい。
【0062】
ここで低温燃焼について簡単に説明しておく。低温燃焼は、内燃機関の排気側から吸気側へ極めて大量の排気ガスを再循環させ、この再循環ガス(EGRガス)の吸熱作用によって燃料及びその周囲のガス温を比較的低温に保った状態で燃焼を行わせ、煤(スモーク)の発生を抑えるというものである。
【0063】
すなわち、図1に示される内燃機関ではEGR率(EGRガス量/(EGRガス量+吸入空気量))を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、更にEGR率を高めていくと今度は煤の発生量が急激に低下する。この煤の発生量がピークとなるEGR率より高いEGR率で行われる燃焼が低温燃焼である。
【0064】
また、低温燃焼はEGRガスに限らず、吸熱作用を有するその他の不活性ガスを用いることによっても同様に行わせることができることから、以上のことを言い換えれば、低温燃焼とは燃焼室5の不活性ガス量を煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くした時に行われる燃焼であると言える。
【0065】
なお、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をNOx再生処理する場合の第1制御弁48の動作位置は、排気ガス流通方向によって生じ得るNOx再生処理の偏りを緩和して担持されたNOx吸収剤49の総てを効率的にNOx再生処理すべく、NOx再生処理中に、もしくはNOx再生処理毎に第1動作位置と第2動作位置とで切替えられてもよい。
【0066】
次に、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をSOx再生処理する場合について説明する。この場合、NOx吸収剤49を流通する排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比もしくはリッチにすると共に、NOx吸収剤49を硫黄分の放出が可能となる温度(すなわち、硫黄分放出温度)以上に昇温する必要がある。
【0067】
本実施形態において、NOx吸収剤49をSOx再生処理する場合には、第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めし、第2制御弁53を第2動作位置に位置決めした状態で、膨張行程または排気行程中に燃焼室5内へ補助燃料が噴射される。この燃料噴射制御は、上述のNOx再生処理の場合と同様の制御であるが、詳細には上記補助燃料の量を上述のNOx再生処理の場合よりも増量することによってNOx吸収剤49の昇温を図るようにする。
【0068】
あるいは、第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めし、第2制御弁53を第2動作位置に位置決めした状態で、いわゆる低温燃焼をほぼ理論空燃比もしくはリッチ空燃比のもとで行うようにしてもNOx吸収剤49をSOx再生処理することができる。この燃焼制御も、上述のNOx再生処理の場合と同様の制御であるが、低温燃焼が行われると排気ガス中に還元剤(HC、CO等)が多くなり、その反応によってNOx吸収剤49が昇温されるため、SOx再生処理を良好に行うことができる。
【0069】
なお、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をSOx再生処理する場合の第1制御弁48の動作位置は、排気ガス流通方向によって生じ得るSOx再生処理の偏りを緩和して担持されたNOx吸収剤49の総てを効率的にSOx再生処理すべく、SOx再生処理中に、もしくはSOx再生処理毎に第1動作位置と第2動作位置とで切替えられてもよい。
【0070】
その一方、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をSOx再生処理する場合において、第2制御弁53の動作位置は第2動作位置に固定される。これは、排気ガスが後段NOx吸収剤51をバイパスするようにして、NOx吸収剤49から放出された硫黄分(SO2等)によって後段NOx吸収剤51が硫黄被毒するのを避けるためである。図4は、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)のSOx再生処理時において第1制御弁48が第1動作位置に位置決めされている場合を示している。
【0071】
次に、後段NOx吸収剤51をNOx再生処理する場合またはSOx再生処理する場合について説明する。この二つの場合における制御は、詳細には排気通路内に供給される還元剤の量等が相異する(後述する)が、全体としてはほぼ同様であるので以下で一緒に説明する。
【0072】
本実施形態において後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合には、内燃機関の運転状態に応じて以下で説明する二つの方法のうちの何れかが選択され、その選択された方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理が行われる。
【0073】
まず一つ目の方法は、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合に選択される方法であり、低温燃焼を利用する方法である。すなわち、この方法は、第1制御弁48を中立位置に位置決めし、第2制御弁53を第2動作位置に位置決めした状態で、低温燃焼をほぼ理論空燃比もしくはリッチ空燃比のもとで行うようにして後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理しようとするものである(図5参照)。
【0074】
このようにすると、後段NOx吸収剤51に流入する排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比もしくはリッチになることは勿論であるが、排気ガスがNOx吸収剤担持フィルタ50をバイパスして直接後段NOx吸収剤51に流入することになるので、後段NOx吸収剤51の昇温が容易になる。このため、この方法によりSOx再生処理も充分に行うことができる。また、NOx吸収剤49から放出されたSOxによって後段NOx吸収剤51が硫黄被毒されること等も回避できる。なお、この方法では、排気ガスがNOx吸収剤担持フィルタ50をバイパスするが、低温燃焼時の排気ガス中には排気微粒子が少ないので、上記NOx吸収剤担持フィルタ50をバイパスしても大きな問題とはならない。
【0075】
そして二つ目の方法は、内燃機関の運転状態が比較的高負荷の場合に選択される方法であり、還元剤供給装置56による還元剤の供給を利用する方法である。すなわち、この方法は、第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めした状態で、第2制御弁53を制御して後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量を調整しつつ上記還元剤供給装置56によって排気通路内に還元剤を供給するというものである(図8参照)。
【0076】
ここでの上記排気ガス量の調整は、総排気ガス量の多い高負荷時において後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量を低減することを目的としたものである。これにより、後段NOx吸収剤51を流通する排気ガスの空燃比を所望の空燃比まで低下させるのに必要な還元剤量を低減することができ、燃費の悪化が抑制される。また、流通する排気ガス量が多いと、後段NOx吸収剤51の上流において還元剤を添加する方法では、後段NOx吸収剤51内に大きな温度差が生じ易い。このため、特にSOx再生処理を行う場合には、後段NOx吸収剤51のうちの上流側部分で昇温が不充分である一方、下流側部分が過昇温されてしまう場合が生じる。後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量を低減すれば、このような不都合も回避することができる。
【0077】
また、この還元剤の供給を利用する方法において上記還元剤供給装置56から供給される還元剤の量やその供給方法(例えば添加パターン)は、一般にNOx再生処理を実施する場合とSOx再生処理を実施する場合とで異なっている。すなわち、NOx再生処理を実施する場合には後段NOx吸収剤51を流通する排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比もしくはリッチになるような量及び方法とされる一方、SOx再生処理を実施する場合には、排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比もしくはリッチにすると共に、後段NOx吸収剤51を硫黄分放出温度以上に昇温することができるような量及び方法とされる。したがって、通常、還元剤供給量はSOx再生処理を実施する場合の方が多くなる。
【0078】
以上、説明したように、本実施形態においては、後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合には低温燃焼を利用する方法を採り、比較的高負荷の場合には排気通路への還元剤の供給を利用する方法を採るようにしている。これは、低温燃焼は、後段NOx吸収剤51を効率的にNOx再生処理またはSOx再生処理する上で好ましいのであるが、その性質上、燃料噴射量が少なく燃焼による発熱量が比較的少ない低負荷運転時に良好に実施することが可能であるためである。すなわち、本実施形態は、上述の二つの方法を選択的に用いることで、効率的にNOx再生処理またはSOx再生処理を行うことと、広範な機関運転状態においてNOx再生処理またはSOx再生処理を行うこととの両立を図っている。
【0079】
ここで、どちらの方法でNOx再生処理またはSOx再生処理するかの判定については、例えば図9に示したようなマップに基づいて行われる。図9において、横軸は機関回転数Nであり、縦軸はアクセル踏込み量Lである。つまり、その時の運転状態が図9に示した機関回転数Nが比較的大きく且つアクセル踏込み量Lが比較的大きい領域Hにある場合には還元剤の供給を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理するようにする。逆に、その時の運転状態が図9において領域Sにある場合には低温燃焼を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理するようにする。図9のマップは低温燃焼を良好に実施できる範囲に基づいて予め作成しROM32に記憶させておく。
【0080】
なお、他の実施形態においては、上述したようなNOx再生処理またはSOx再生処理の方法を機関運転状態に応じて選択するという方法を、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)のNOx再生処理またはSOx再生処理についても適用してよい。すなわち、例えば、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合にはNOx吸収剤49に関して上述した低温燃焼を利用する方法を採り、比較的高負荷の場合にはNOx吸収剤49に関して上述した補助燃料噴射を利用する方法を採るようにする。
【0081】
また、上述の実施形態では、後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合には低温燃焼を利用してNOx再生処理またはSOx再生処理が実施されたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、他の実施形態においては上記低温燃焼を実施することの代わりに、例えば、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理するようにしてもよい。なお、この場合における第1制御弁48及び第2制御弁53の動作位置は上述した低温燃焼を利用してNOx再生処理またはSOx再生処理する場合と同様である。
【0082】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、NOx保持剤の硫黄被毒防止用のSOx保持剤を有する排気浄化装置において、NOx保持剤を効率良くNOx再生処理及びSOx再生処理できる排気浄化装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示す図である。
【図2】図2は、機関の要求トルクを示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の排気浄化装置を示した説明図であり、通常使用時(排気ガス浄化時)における排気ガスの流れの一例を示している。
【図4】図4は、図3と同様の図であって、NOx吸収剤担持フィルタのSOx再生処理時における排気ガスの流れの一例を示している。
【図5】図5は、図3及び図4と同様の図であって、第2環状通路にあるNOx吸収剤を、低温燃焼を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理する場合の排気ガスの流れの一例を示している。
【図6】図6は、NOx吸収剤が担持されたパティキュレートフィルタの拡大断面図である。
【図7】図7は、NOxの吸収放出及び還元浄化作用を説明するための図である。
【図8】図8は、図3から図5と同様の図であって、第2環状通路にあるNOx吸収剤を、排気通路への還元剤の供給を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理する場合の排気ガスの流れの一例を示している。
【図9】図9は、第2環状通路にあるNOx吸収剤をNOx再生処理またはSOx再生処理する方法を決定するために使用され得るマップである。
【符号の説明】
1…機関本体
5…燃焼室
6…電気制御式燃料噴射弁
30…電子制御ユニット
45…第1環状通路
46…第2環状通路
48…第1制御弁
50…NOx吸収剤担持フィルタ
51…NOx吸収剤
52…酸化触媒
53…第2制御弁
56…還元剤供給装置
100…排気浄化装置
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等に搭載される筒内噴射型の内燃機関、例えばディーゼル機関では、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去することが要求されている。そしてこのような要求に対し、NOx保持剤を内燃機関の排気通路に配置する方式の排気浄化装置が提案されている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられるNOx保持剤は、流入排気ガスの空燃比がリーンの時にはその排気ガス中のNOxを保持し、排気ガス中の空燃比が小さくなり、且つ排気ガス中にHCやCO等の還元剤が存在していれば保持していたNOxを離脱させ還元浄化する作用(NOxの保持離脱及び還元浄化作用)を有する。そして、この作用を利用して、排気ガスの空燃比がリーンの時には排気ガス中のNOxをNOx保持剤に保持させ、一定期間使用してNOx保持剤の保持能力が低下した時または低下する前にNOx保持剤に保持したNOxを還元浄化する、すなわちNOx保持剤をNOx再生処理するようにしている。
【0004】
なお、本明細書において「保持」という語は「吸収」及び「吸着」の両方の意味を含むものとして用いる。したがって、「NOx保持剤」は、「NOx吸収剤」と「NOx吸着剤」の両方を含み、前者はNOxを硝酸塩等の形で蓄積し、後者はNO2等の形で吸着する。また、NOx保持剤からの「離脱」という語についても、「吸収」に対応する「放出」の他、「吸着」に対応する「脱離」の意味も含むものとして用いる。
【0005】
ところで、内燃機関の燃料には硫黄(S)成分が含まれている場合があり、この場合には排気ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれることとなる。排気ガス中にSOxが存在するとNOx保持剤はNOxの保持作用を行うのと全く同じメカニズムで排気ガス中のSOxを保持する。
【0006】
ところが、NOx保持剤に保持されたSOxは比較的安定であり、一般にNOx保持剤に蓄積されやすい傾向がある。NOx保持剤のSOx蓄積量が増大すると、NOx保持剤のNOx保持容量が減少して排気ガス中のNOxの除去を十分に行うことができなくなるため、NOxの浄化効率が低下するいわゆる硫黄被毒(S被毒)の問題が生じる。特に、燃料として比較的硫黄成分を多く含む軽油を使用するディーゼルエンジンにおいてはこの硫黄被毒の問題が生じやすい。
【0007】
そこで、上記NOx保持剤のNOx保持能力を長期にわたって高く維持するために、NOx保持剤よりも上流に、排気ガス中のSOxを保持するSOx保持剤を配置し、NOx保持剤にSOxが流れ込まないようにして硫黄被毒の防止を図った排気浄化装置が開発されている。
【0008】
このようなSOx保持剤は、流入排気ガスの空燃比がリーンの時にはその排気ガス中のSOxを保持し、排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになると保持したSOxを離脱させるというものである。しかし、このSOx保持剤のSOx保持容量にも限界があるため、SOx保持剤が飽和する前にSOx保持剤から積極的に硫黄分を離脱させる処理、すなわちSOx再生処理を実行する必要がある。そのため、NOx保持剤の上流側にSOx保持剤を配置した構成の上記のような排気浄化装置には、通常、NOx保持剤をバイパスするバイパス通路が設けられており、SOx保持剤のSOx再生処理中には排気ガスがバイパス通路を通ってNOx保持剤をバイパスするようにされ、SOx保持剤のSOx再生処理に伴うNOx保持剤の硫黄被毒を防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このように、NOx保持剤の上流側にSOx保持剤を配置した構成の上記のような排気浄化装置においては、理想的には下流のNOx保持剤にSOxが流入することがなく硫黄被毒されることはない。しかしながら、実際には、例えばSOx保持剤の保持能力を超える大量のSOxが一気にSOx保持剤に流入した場合等、様々な理由でSOxがNOx保持剤に流入する場合がある。したがって、頻度は少ないものの、NOx保持剤についてもSOx再生処理を行う必要がある。
【0010】
NOx保持剤に保持されているSOxについても、NOxと同じメカニズムで離脱させることが可能である。しかし、SOxは比較的安定した形でNOx保持剤に保持されるため、通常のNOxの還元浄化制御が行われる温度(例えば250℃程度以上)ではNOx保持剤に保持されたSOxを放出等させることは困難である。このため、NOx保持剤のSOx再生処理を行うためには、NOx保持剤を通常のNOx還元浄化制御時より高い温度、すなわち硫黄分放出温度(例えば600℃以上)に昇温し、且つ流入する排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比またはリッチにする必要がある。
【0011】
以上、説明したように、上記NOx保持剤はNOx再生処理及びSOx再生処理の必要がある。そして、これらを効率的に実施する方法としては内燃機関における燃料噴射制御や燃焼制御を利用する方法が知られている。すなわち例えば、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって、あるいはいわゆる低温燃焼をほぼ理論空燃比またはリッチ空燃比のもとで行うことによって上記NOx再生処理または上記SOx再生処理を行うようにする。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−274230号公報
【特許文献2】
特開2002−13413号公報
【特許文献3】
特開2000−328928号公報
【特許文献4】
特開2001−166089号公報
【特許文献5】
特開平11−36923号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、NOx保持剤の上流側にSOx保持剤を配置した構成の上記のような排気浄化装置においては、これらの方法によって下流側のNOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理しようとすると様々な不都合が生じる。すなわち例えば、これらの方法によってNOx保持剤をNOx再生処理しようとすると、上流側にあるSOx保持剤からSOxの離脱が起こり、そのSOxがNOx保持剤に流入してNOx保持剤が硫黄被毒されてしまう可能性がある。そしてこのような硫黄被毒を避けようとすると、NOx保持剤のNOx再生処理の実施可能時期が上流側にあるSOx保持剤からのSOxの離脱が少ないと考えられるSOx保持剤のSOx再生処理完了直後に限られてしまう。また、上記の方法によってNOx保持剤をSOx再生処理しようとした場合には、上流側にSOx保持剤があるために下流側にあるNOx保持剤の昇温が不充分になり、充分なSOx再生処理を行うことが困難となる。
【0014】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、NOx保持剤の硫黄被毒防止用のSOx保持剤を有する排気浄化装置において、NOx保持剤を効率良くNOx再生処理及びSOx再生処理できる排気浄化装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【0016】
請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路内に配置されたSOx保持剤が担持されたパティキュレートフィルタと、該パティキュレートフィルタをバイパスするように構成された第1バイパス通路と、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガス量と上記第1バイパス通路を流通する排気ガス量との割合を制御する第1制御弁と、上記第1バイパス通路の始端よりも上流において還元剤を供給する第1還元剤供給手段と、上記第1バイパス通路の終端よりも下流において排気通路内に配置されたNOx保持剤と、該NOx保持剤をバイパスするように構成された第2バイパス通路と、上記NOx保持剤を流通する排気ガス量と上記第2バイパス通路を流通する排気ガス量との割合を制御する第2制御弁と、上記NOx保持剤へ流入する排気ガスへ還元剤を供給する第2還元剤供給手段と、を具備する内燃機関の排気浄化装置において、上記NOx保持剤に保持されたNOxを離脱させ還元すべき時または上記NOx保持剤に保持された硫黄分を離脱させるべき時には、機関運転状態が検出され、検出された機関運転状態が予め定めた負荷よりも低負荷の場合には、上記第1還元剤供給手段によって還元剤が供給されると共に上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第1バイパス通路を流通するようにされ、且つ、上記第2制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記NOx保持剤を流通するようにされる一方、検出された機関運転状態が予め定めた負荷よりも高負荷の場合には、上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記パティキュレートフィルタを流通するようにされると共に、上記第2制御弁によって上記NOx保持剤を流通する排気ガス量を調整しつつ上記第2還元剤供給手段によって還元剤が供給される、内燃機関の排気浄化装置が提供される。
【0017】
NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合、例えば内燃機関における燃料噴射制御や燃焼制御を利用して、還元剤を機関本体から供給するようにすると、これらの処理を効率的に実施できる。そして、このような方法によるNOx再生処理またはSOx再生処理は、発生する排気ガス量が少なく、また燃料噴射量の少ない低負荷時に良好に実施できることがわかっている。
【0018】
一方、NOx保持剤の硫黄被毒対策等のためにSOx保持剤がNOx保持剤の上流側に配置されている構成においては、上記のような方法で下流側のNOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理しようとすると、排気ガスがSOx保持剤を通過してからNOx保持剤に流入することになるために様々な不都合が生じる。すなわち、例えば上流側にあるSOx保持剤から離脱したSOxによってNOx保持剤が硫黄被毒されてしまったり、NOx保持剤の昇温が不充分になってしまう場合がある。
【0019】
これに対し、請求項1に記載の発明では、上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第1バイパス通路を流通するようにすることができるので、低負荷時(すなわち、機関運転状態が上記予め定めた負荷よりも低負荷の場合)において、上記のような不都合を生じることなく、効率的に上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。
【0020】
また、請求項1に記載の発明では、機関運転状態が予め定めた負荷よりも高負荷の場合には、上記第2還元剤供給手段により還元剤を供給することによって上記NOx保持剤のNOx再生処理またはSOx再生処理が図られる。したがって、請求項1に記載の発明によれば、広範な機関運転状態において上記NOx保持剤のNOx再生処理またはSOx再生処理を行うことができる。更に、この高負荷時において上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理すべく還元剤を供給する際には、上記第2制御弁によって上記NOx保持剤を流通する排気ガス量が調整され、燃費悪化が抑制される。
【0021】
請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記内燃機関は、燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと煤がほとんど発生しなくなる機関からなり、上記第1還元剤供給手段は、燃焼室内における平均空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになるようにすると共に燃焼室内の不活性ガス量が煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くなるようにすることによって還元剤を供給する。
【0022】
燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと煤がほとんど発生しなくなる内燃機関においては、燃焼室内の不活性ガス量を煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くするといわゆる低温燃焼を行うことができる。
【0023】
そしてこの低温燃焼は、その性質上、燃料噴射量が少なく燃焼による発熱量が比較的少ない低負荷時に良好に実施することが可能なのであるが、この低温燃焼を利用して排気通路内に配置されたNOx保持剤を効率的にNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。すなわち、上記低温燃焼をほぼ理論空燃比またはリッチ空燃比のもとで行うことによって還元剤を供給し、上記NOx再生処理または上記SOx再生処理を行うことが可能である。
【0024】
以上のことから、請求項2に記載の発明によれば、低負荷時(すなわち、機関運転状態が上記予め定めた負荷よりも低負荷の場合)において、効率的に上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。
なお、請求項2に記載の発明では、上記低負荷時に上記NOx保持剤のNOx再生処理またはSOx再生処理を行う場合に、排気ガスが上記パティキュレートフィルタをバイパスするが、低温燃焼時の排気ガス中には特に排気微粒子が少ないので、上記パティキュレートフィルタをバイパスしても大きな問題とはならない。
【0025】
請求項3に記載の発明では請求項1に記載の発明において、上記第1還元剤供給手段は、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって還元剤を供給する。
請求項3に記載の発明によっても請求項2に記載の発明と同様、低負荷時(すなわち、機関運転状態が上記予め定めた負荷よりも低負荷の場合)において、効率的に上記NOx保持剤をNOx再生処理またはSOx再生処理することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明では請求項1から3の何れか一項に記載の発明において、更に、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流通方向を反転できる流通方向反転手段を有している。
請求項4に記載の発明によれば、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流通方向を反転することができる。これにより、通常使用時において、上記パティキュレートフィルタ内の位置による排気微粒子捕集量及びSOx保持量の偏りを緩和して、パティキュレートフィルタ及びそれに担持されているSOx保持剤を効率的に利用することができる。また、排気ガスの流通方向を反転することにより、フィルタの詰まりを防止する効果もある。
【0027】
また、上記SOx保持剤のSOx再生処理を行う場合に関しても、SOx再生処理中に、もしくはSOx再生処理毎に、排気ガスの流通方向を反転することによって、SOx再生処理の偏りを緩和して担持されているSOx保持剤の総てを効率的にSOx再生処理できる。
【0028】
請求項5に記載の発明では請求項1から4の何れか一項に記載の発明において、上記SOx保持剤に保持された硫黄分を離脱させるべき時には、上記第2制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第2バイパス通路を流通するようにされる。
請求項5に記載の発明のようにすることによって、上記SOx保持剤から離脱された硫黄分(例えばSOx等)によって上記NOx保持剤が硫黄被毒されるのを回避することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明はNOx保持剤であるNOx吸収剤とNOx吸着剤のどちらを用いても実施可能であるが、以下ではNOx吸収剤を用いた場合について説明する。
【0030】
図1は本発明を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明は火花点火式内燃機関に適用することもできる。
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートをそれぞれ示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介して排気ターボチャージャ14のコンプレッサ15に連結される。吸気ダクト13内にはステップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配置され、更に吸気ダクト13周りには吸気ダクト13内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置18が配置される。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却装置18内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0031】
一方、排気ポート10は排気マニホルド19及び排気管20を介して排気ターボチャージャ14の排気タービン21に連結される。排気タービン21の出口には排気浄化装置100が連結されるが、この排気浄化装置100については後に図3から図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
排気マニホルド19とサージタンク12とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路24を介して互いに連結され、EGR通路24内には電気制御式EGR制御弁25が配置される。また、EGR通路24周りにはEGR通路24内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置26が配置される。図1に示される実施形態では機関冷却水が冷却装置26内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管6aを介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール27に連結される。このコモンレール27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された燃料は各燃料供給管6aを介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の吐出量が制御される。
【0033】
電子制御ユニット(ECU)30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁6、スロットル弁駆動用ステップモータ16、EGR制御弁25及び燃料ポンプ28等に接続される。
【0034】
図2(A)は要求トルクTQと、アクセルペダル40の踏込み量Lと、機関回転数Nとの関係を示している。なお、図2(A)において各曲線は等トルク曲線を表しており、TQ=0で示される曲線はトルクが零であることを示しており、残りの曲線はTQ=a、TQ=b、TQ=c、TQ=dの順に次第に要求トルクが高くなる。図2(A)に示される要求トルクTQは図2(B)に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。本実施形態では図2(B)に示すマップからアクセルペダル40の踏込み量L及び機関回転数Nに応じた要求トルクTQがまず初めに算出され、この要求トルクTQに基づいて燃料噴射量等が算出される。
【0035】
電子制御ユニット30は、このように内燃機関の各構成要素と信号をやり取りして燃料噴射量制御等の機関の基本制御を行う他、本実施形態においては、排気浄化装置100の各構成要素(後述する第1制御弁48、第2制御弁53、還元剤供給装置56等)とも信号のやり取りを行い、後述する排気浄化装置100についての制御(例えば、NOx吸収剤のNOx再生処理やSOx再生処理のための制御等)も行う。
【0036】
次に排気浄化装置100について説明する。図3から図5は、排気浄化装置100の構成を説明するための図であり、排気浄化装置100の内部の排気ガスの流れが示されている。図3に示されているように、排気浄化装置100は、基幹通路44と、基幹通路44に接続された第1環状通路45と第2環状通路46とを有している。排気浄化装置100に流入した排気ガスは、後に説明するように必ず基幹通路44を通り、選択的に第1環状通路45及び第2環状通路46を通る。
【0037】
第1環状通路45にはNOx吸収剤49が担持されたパティキュレートフィルタ(以下、「NOx吸収剤担持フィルタ」という)50が配置されている。また、第2環状通路46にはNOx吸収剤51がハニカム状の担持体に担持されて配置されている(以下、「後段NOx吸収剤51」という)。更に基幹通路44の終端の近くには酸化触媒52がハニカム状の担持体に担持されて配置されている。
【0038】
基幹通路44と第1環状通路45との接続部分には、第1制御弁48が配置されている。第1制御弁48にはステップモータ47が接続される。ステップモータ47は対応する駆動回路38を介して出力ポート36に接続される。そして、この第1制御弁48を制御することによって、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガスの流通方向を反転することができる。また、第1制御弁48を制御することによって上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガス量とこれをバイパスする排気ガス量との割合を制御することができ、結果としてこれら排気ガス量を制御することができる。次にこのような第1制御弁48の作用について詳細に説明する。
【0039】
すなわち、第1制御弁48が図3に示されている第1動作位置に位置決めされると、排気ガスはまず基幹通路44から第1環状通路45の部分環状通路45aに流入する。そして、排気ガスはNOx吸収剤担持フィルタ50を介して第1環状通路45の部分環状通路45bに流出する。更に、排気ガスは第1制御弁48のところへと戻り基幹通路44内に流入する。
【0040】
一方、第1制御弁48が図4に示されている第2動作位置に位置決めされると、排気ガスはまず基幹通路44から部分環状通路45bに流入する。そして、排気ガスはNOx吸収剤担持フィルタ50を介して部分環状通路45aに流出する。更に、排気ガスは第1制御弁48のところへと戻り基幹通路44内に流入する。
このように、第1制御弁48の動作位置を図3に示した第1動作位置と図4に示した第2動作位置との間で切替えることによって、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガスの流通方向を反転することができる。
【0041】
更に、第1制御弁48の動作位置が図5に示されている中立動作位置に位置決めされると、排気ガスは部分環状通路45aおよび45bにはほとんど流入せず、ほとんど全ての排気ガスが第1制御弁48下流の基幹通路44に流入する。すなわち、この場合、排気ガスは上記NOx吸収剤担持フィルタ50(もしくは第1環状通路45)をバイパスすることとなる。
【0042】
そして、以上の説明からも明らかなように、上記第1及び第2動作位置と上記中立動作位置との間で第1制御弁48を制御することにより、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガス量とこれをバイパスする排気ガス量との割合を制御することができ、結果としてこれら排気ガス量を制御することができる。
【0043】
第1環状通路45を通って、または第1環状通路45をバイパスして第1制御弁48下流の基幹通路44に流入した排気ガスは、次いで基幹通路44と第2環状通路46との接続部分に到達する。図3に示されているように、この基幹通路44と第2環状通路45との接続部分には、第2制御弁53が配置されている。第2制御弁53にはステップモータ54が接続される。ステップモータ54は対応する駆動回路38を介して出力ポート36に接続される。そして、この第2制御弁53を制御することによって、上記後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量とこれをバイパスする排気ガス量との割合を制御することができ、結果としてこれら排気ガス量を制御することができる。次にこの第2制御弁53の作用について詳細に説明する。
【0044】
すなわち、第2制御弁53が図3に示されている第1動作位置に位置決めされると、排気ガスは基幹通路44から第2環状通路46の部分環状通路46aに流入する。そして、排気ガスは後段NOx吸収剤51を介して第2環状通路46の部分環状通路46bに流出する。更に、排気ガスは第2制御弁53のところへと戻り基幹通路44内に流入する。そして、排気ガスは更に下流に配置されている酸化触媒52へ流入する。
【0045】
一方、第2制御弁53が図4に示されている第2動作位置に位置決めされると、排気ガスは第2環状通路46(すなわち部分環状通路46a)にはほとんど流入せず、ほとんど全ての排気ガスが第2制御弁53下流の基幹通路44に流入する。すなわち、この場合、排気ガスは上記後段NOx吸収剤51(もしくは第2環状通路46)をバイパスすることとなる。
【0046】
なお、第2環状通路46の部分環状通路46aには、還元剤供給装置56が設けられている。還元剤供給装置56はECU30によって制御され、必要に応じて排気通路内へ、すなわち上記後段NOx吸収剤51へ流入する排気ガスへ還元剤を供給する。本実施形態においては、貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるため、還元剤として内燃機関の燃料である軽油を使用している。
【0047】
図6にNOx吸収剤担持フィルタ50の拡大断面図を示す。図6を参照すると、フィルタ50は多孔質セラミックから成り、排気ガスは矢印で示されるように図中左から右に向かって流れる。フィルタ50内には、上流側に栓57が施された第1通路58と下流側に栓59が施された第2通路60とが交互に配置されハニカム状をなしている。排気ガスが図中左から右に向かって流れると、排気ガスは第2通路60から多孔質セラミックの隔壁を通過して第1通路58に流入し、下流側に流れる。この時、排気ガス中の排気微粒子(パティキュレート)は多孔質セラミックによって捕集されて排気ガス中から除去され、排気微粒子の大気への放出が防止される。
【0048】
第1通路58及び第2通路60の隔壁の表面及び内部の細孔内にはNOx吸収剤49が担持されている。このNOx吸収剤49は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。NOx吸収剤49は流通する排気ガス(以下「吸収剤流通排気ガス」という)の空燃比がリーンの時にはNOxを吸収し、吸収剤流通排気ガスの空燃比が小さくなり、且つ還元剤が存在していれば吸収したNOxを放出して還元浄化する作用(NOxの吸収放出及び還元浄化作用)を有する。
【0049】
図1に示されるような圧縮着火式内燃機関では、通常時の排気ガス空燃比はリーンでありNOx吸収剤49は排気ガス中のNOxの吸収を行う。しかし、NOx吸収剤49のNOx吸収容量にも限界があるため、一定期間使用してNOx吸収剤49の吸収能力が低下した時または低下する前に、内燃機関の燃焼制御等、何らかの手段により吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると共に還元剤の存在する状態にし、吸収剤46に吸収されていたNOxを放出し還元浄化する(すなわち、NOx再生処理する)必要がある。
【0050】
この吸収放出及び還元浄化作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もあるが、この吸収放出及び還元浄化作用は図7に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0051】
すなわち、吸収剤流通排気ガスの空燃比がかなりリーンになると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が大幅に増大し、図7(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 −またはO2−の形で白金Ptの表面に付着する。一方、吸収剤流通排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 −またはO2−と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ吸収剤46内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、図7(A)に示されるように硝酸イオンNO3 −の形でNOx吸収剤49内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤49内に吸収される。
【0052】
吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2が生成され、NOx吸収剤49のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2がNOx吸収剤49内に吸収されて硝酸イオンNO3 −が生成される。これに対して吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 −→NO2)に進み、斯くしてNOx吸収剤49内の硝酸イオンNO3 −がNO2の形でNOx吸収剤49から放出される。すなわち、吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下するとNOx吸収剤49からNOxが放出されることになる。吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いが低くなれば吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が低下し、したがって吸収剤流通排気ガスのリーンの度合いを低くすればNOx吸収剤46からNOxが放出されることになる。
【0053】
一方、この時吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると、HC、COは白金Pt上の酸素O2 −またはO2−と反応して酸化せしめられる。また、吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくすると吸収剤流通排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するためにNOx吸収剤46からNO2が放出され、このNO2は図7(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元浄化せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2が存在しなくなるとNOx吸収剤49から次から次へとNO2が放出される。したがって吸収剤流通排気ガスの空燃比を小さくし、且つ還元剤が存在する状態にすると短時間のうちにNOx吸収剤49からNOxが放出されて還元浄化されることになる。
【0054】
なお、ここでいう排気ガスの空燃比とは、そこよりも上流側の排気通路と燃焼室5または吸気通路に供給された空気と燃料との比率をいうものとする。したがって排気通路に空気や還元剤が供給されていない時には排気ガスの空燃比は機関の運転空燃比(機関の燃焼室5内の燃焼空燃比)に等しくなる。
【0055】
次にNOx吸収剤49の硫黄被毒のメカニズムについて説明する。排気ガス中にSOx成分が含まれていると、NOx吸収剤49は上述のNOxの吸収と同じメカニズムで排気ガス中のSOxを吸収する。すなわち、排気ガスの空燃比がリーンの時、排気ガス中のSOx(例えばSO2)は白金Pt上で酸化されてSO3 −、SO4 −となり、酸化バリウムBaOと結合してBaSO4を形成する。BaSO4は比較的安定であり、また、結晶が粗大化しやすいため一旦生成されると分解放出されにくい。このため、NOx吸収剤49中のBaSO4の生成量が増大するとNOxの吸収に関与できるBaOの量が減少してしまいNOxの吸収能力が低下してしまう。
【0056】
この硫黄被毒を解消するためには、NOx吸収剤49中に生成されたBaSO4を高温で分解するとともに、これにより生成されるSO3 −、SO4 −の硫酸イオンをスライトリーンを含むほぼ理論空燃比またはリッチ雰囲気(以下、単に「リッチ雰囲気」という)下で還元し、気体状のSO2に転換してNOx吸収剤49から放出する(すなわち、SOx再生処理する)必要がある。したがってSOx再生処理を行うためには、NOx吸収剤49を高温且つリッチ雰囲気の状態にすることが必要とされる。
【0057】
なお、第2環状通路内に配置されている後段NOx吸収剤51も上述したNOx吸収剤49と同様のものを使用しており、上述したようなメカニズムによりNOxを吸収放出、還元浄化すると共にSOxを吸収、放出する。すなわち、後段NOx吸収剤51についても、NOx吸収剤49と同様、NOx再生処理及びSOx再生処理を行う必要がある。
【0058】
次に、以上のような構成を有する排気浄化装置100の作動について説明する。まず、通常使用時において排気浄化装置100は、第1制御弁48が第1動作位置または第2動作位置に位置決めされ、第2制御弁53が第1動作位置に位置決めされた状態で排気ガスの浄化を行う。図3は、通常使用時において第1制御弁48が第1動作位置に位置決めされている場合を示している。
【0059】
通常使用時において排気浄化装置100に流入した排気ガスは、まずNOx吸収剤担持フィルタ50を通過する。そしてこの際、排気ガス中からNOx、SOx及び排気微粒子が除去される。排気ガスは次いで後段NOx吸収剤51を通過する。そして、ここでは主にNOxが除去される。これはSOxについては、通常、先のNOx吸収剤担持フィルタ50においてほとんど除去されているためである。すなわち、ここでNOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)は、後段NOx吸収剤51が硫黄被毒するのを防止するためのSOx吸収剤(SOx保持剤)として作用している。後段NOx吸収剤51を流出した排気ガスは最後に酸化触媒52を通過する。そしてここで、排気ガス中の未燃HC、CO等が酸化されて浄化される。
【0060】
また、通常使用時においては第1制御弁48が、例えば定期的にあるいは機関運転状態が低負荷になった時に、第1動作位置と第2動作位置との間で切替えられる。この切替えにより、上記NOx吸収剤担持フィルタ50を流通する排気ガスの流通方向が反転されるが、こうすることによって、NOx吸収剤担持フィルタ50内の位置による排気微粒子捕集量及びNOx及びSOx吸収量の偏りを緩和して、フィルタ及びフィルタに担持されているNOx吸収剤49を効率的に利用することができる。また、排気ガスの流通方向を反転することにより、フィルタの詰まりを防止する効果もある。
【0061】
次に、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をNOx再生処理する場合について説明する。この場合、NOx吸収剤49を流通する排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比もしくはリッチにする必要があるが、本実施形態において、これは第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めした状態で、膨張行程または排気行程中に燃焼室5内へ補助燃料を噴射することによって実現される。あるいは、第1制御弁48を同様な動作位置とし、いわゆる低温燃焼をほぼ理論空燃比もしくはリッチ空燃比のもとで行うことによって(すなわち、燃焼室5内における平均空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになるようにして低温燃焼を実施することによって)実現するようにしてもよい。
【0062】
ここで低温燃焼について簡単に説明しておく。低温燃焼は、内燃機関の排気側から吸気側へ極めて大量の排気ガスを再循環させ、この再循環ガス(EGRガス)の吸熱作用によって燃料及びその周囲のガス温を比較的低温に保った状態で燃焼を行わせ、煤(スモーク)の発生を抑えるというものである。
【0063】
すなわち、図1に示される内燃機関ではEGR率(EGRガス量/(EGRガス量+吸入空気量))を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、更にEGR率を高めていくと今度は煤の発生量が急激に低下する。この煤の発生量がピークとなるEGR率より高いEGR率で行われる燃焼が低温燃焼である。
【0064】
また、低温燃焼はEGRガスに限らず、吸熱作用を有するその他の不活性ガスを用いることによっても同様に行わせることができることから、以上のことを言い換えれば、低温燃焼とは燃焼室5の不活性ガス量を煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くした時に行われる燃焼であると言える。
【0065】
なお、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をNOx再生処理する場合の第1制御弁48の動作位置は、排気ガス流通方向によって生じ得るNOx再生処理の偏りを緩和して担持されたNOx吸収剤49の総てを効率的にNOx再生処理すべく、NOx再生処理中に、もしくはNOx再生処理毎に第1動作位置と第2動作位置とで切替えられてもよい。
【0066】
次に、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をSOx再生処理する場合について説明する。この場合、NOx吸収剤49を流通する排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比もしくはリッチにすると共に、NOx吸収剤49を硫黄分の放出が可能となる温度(すなわち、硫黄分放出温度)以上に昇温する必要がある。
【0067】
本実施形態において、NOx吸収剤49をSOx再生処理する場合には、第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めし、第2制御弁53を第2動作位置に位置決めした状態で、膨張行程または排気行程中に燃焼室5内へ補助燃料が噴射される。この燃料噴射制御は、上述のNOx再生処理の場合と同様の制御であるが、詳細には上記補助燃料の量を上述のNOx再生処理の場合よりも増量することによってNOx吸収剤49の昇温を図るようにする。
【0068】
あるいは、第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めし、第2制御弁53を第2動作位置に位置決めした状態で、いわゆる低温燃焼をほぼ理論空燃比もしくはリッチ空燃比のもとで行うようにしてもNOx吸収剤49をSOx再生処理することができる。この燃焼制御も、上述のNOx再生処理の場合と同様の制御であるが、低温燃焼が行われると排気ガス中に還元剤(HC、CO等)が多くなり、その反応によってNOx吸収剤49が昇温されるため、SOx再生処理を良好に行うことができる。
【0069】
なお、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をSOx再生処理する場合の第1制御弁48の動作位置は、排気ガス流通方向によって生じ得るSOx再生処理の偏りを緩和して担持されたNOx吸収剤49の総てを効率的にSOx再生処理すべく、SOx再生処理中に、もしくはSOx再生処理毎に第1動作位置と第2動作位置とで切替えられてもよい。
【0070】
その一方、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)をSOx再生処理する場合において、第2制御弁53の動作位置は第2動作位置に固定される。これは、排気ガスが後段NOx吸収剤51をバイパスするようにして、NOx吸収剤49から放出された硫黄分(SO2等)によって後段NOx吸収剤51が硫黄被毒するのを避けるためである。図4は、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)のSOx再生処理時において第1制御弁48が第1動作位置に位置決めされている場合を示している。
【0071】
次に、後段NOx吸収剤51をNOx再生処理する場合またはSOx再生処理する場合について説明する。この二つの場合における制御は、詳細には排気通路内に供給される還元剤の量等が相異する(後述する)が、全体としてはほぼ同様であるので以下で一緒に説明する。
【0072】
本実施形態において後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合には、内燃機関の運転状態に応じて以下で説明する二つの方法のうちの何れかが選択され、その選択された方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理が行われる。
【0073】
まず一つ目の方法は、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合に選択される方法であり、低温燃焼を利用する方法である。すなわち、この方法は、第1制御弁48を中立位置に位置決めし、第2制御弁53を第2動作位置に位置決めした状態で、低温燃焼をほぼ理論空燃比もしくはリッチ空燃比のもとで行うようにして後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理しようとするものである(図5参照)。
【0074】
このようにすると、後段NOx吸収剤51に流入する排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比もしくはリッチになることは勿論であるが、排気ガスがNOx吸収剤担持フィルタ50をバイパスして直接後段NOx吸収剤51に流入することになるので、後段NOx吸収剤51の昇温が容易になる。このため、この方法によりSOx再生処理も充分に行うことができる。また、NOx吸収剤49から放出されたSOxによって後段NOx吸収剤51が硫黄被毒されること等も回避できる。なお、この方法では、排気ガスがNOx吸収剤担持フィルタ50をバイパスするが、低温燃焼時の排気ガス中には排気微粒子が少ないので、上記NOx吸収剤担持フィルタ50をバイパスしても大きな問題とはならない。
【0075】
そして二つ目の方法は、内燃機関の運転状態が比較的高負荷の場合に選択される方法であり、還元剤供給装置56による還元剤の供給を利用する方法である。すなわち、この方法は、第1制御弁48を第1動作位置または第2動作位置に位置決めした状態で、第2制御弁53を制御して後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量を調整しつつ上記還元剤供給装置56によって排気通路内に還元剤を供給するというものである(図8参照)。
【0076】
ここでの上記排気ガス量の調整は、総排気ガス量の多い高負荷時において後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量を低減することを目的としたものである。これにより、後段NOx吸収剤51を流通する排気ガスの空燃比を所望の空燃比まで低下させるのに必要な還元剤量を低減することができ、燃費の悪化が抑制される。また、流通する排気ガス量が多いと、後段NOx吸収剤51の上流において還元剤を添加する方法では、後段NOx吸収剤51内に大きな温度差が生じ易い。このため、特にSOx再生処理を行う場合には、後段NOx吸収剤51のうちの上流側部分で昇温が不充分である一方、下流側部分が過昇温されてしまう場合が生じる。後段NOx吸収剤51を流通する排気ガス量を低減すれば、このような不都合も回避することができる。
【0077】
また、この還元剤の供給を利用する方法において上記還元剤供給装置56から供給される還元剤の量やその供給方法(例えば添加パターン)は、一般にNOx再生処理を実施する場合とSOx再生処理を実施する場合とで異なっている。すなわち、NOx再生処理を実施する場合には後段NOx吸収剤51を流通する排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比もしくはリッチになるような量及び方法とされる一方、SOx再生処理を実施する場合には、排気ガスの空燃比をほぼ理論空燃比もしくはリッチにすると共に、後段NOx吸収剤51を硫黄分放出温度以上に昇温することができるような量及び方法とされる。したがって、通常、還元剤供給量はSOx再生処理を実施する場合の方が多くなる。
【0078】
以上、説明したように、本実施形態においては、後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合には低温燃焼を利用する方法を採り、比較的高負荷の場合には排気通路への還元剤の供給を利用する方法を採るようにしている。これは、低温燃焼は、後段NOx吸収剤51を効率的にNOx再生処理またはSOx再生処理する上で好ましいのであるが、その性質上、燃料噴射量が少なく燃焼による発熱量が比較的少ない低負荷運転時に良好に実施することが可能であるためである。すなわち、本実施形態は、上述の二つの方法を選択的に用いることで、効率的にNOx再生処理またはSOx再生処理を行うことと、広範な機関運転状態においてNOx再生処理またはSOx再生処理を行うこととの両立を図っている。
【0079】
ここで、どちらの方法でNOx再生処理またはSOx再生処理するかの判定については、例えば図9に示したようなマップに基づいて行われる。図9において、横軸は機関回転数Nであり、縦軸はアクセル踏込み量Lである。つまり、その時の運転状態が図9に示した機関回転数Nが比較的大きく且つアクセル踏込み量Lが比較的大きい領域Hにある場合には還元剤の供給を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理するようにする。逆に、その時の運転状態が図9において領域Sにある場合には低温燃焼を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理するようにする。図9のマップは低温燃焼を良好に実施できる範囲に基づいて予め作成しROM32に記憶させておく。
【0080】
なお、他の実施形態においては、上述したようなNOx再生処理またはSOx再生処理の方法を機関運転状態に応じて選択するという方法を、NOx吸収剤担持フィルタ50(より正確にはNOx吸収剤49)のNOx再生処理またはSOx再生処理についても適用してよい。すなわち、例えば、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合にはNOx吸収剤49に関して上述した低温燃焼を利用する方法を採り、比較的高負荷の場合にはNOx吸収剤49に関して上述した補助燃料噴射を利用する方法を採るようにする。
【0081】
また、上述の実施形態では、後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理する場合、内燃機関の運転状態が比較的低負荷の場合には低温燃焼を利用してNOx再生処理またはSOx再生処理が実施されたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、他の実施形態においては上記低温燃焼を実施することの代わりに、例えば、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって後段NOx吸収剤51をNOx再生処理またはSOx再生処理するようにしてもよい。なお、この場合における第1制御弁48及び第2制御弁53の動作位置は上述した低温燃焼を利用してNOx再生処理またはSOx再生処理する場合と同様である。
【0082】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、NOx保持剤の硫黄被毒防止用のSOx保持剤を有する排気浄化装置において、NOx保持剤を効率良くNOx再生処理及びSOx再生処理できる排気浄化装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明を筒内噴射型の圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示す図である。
【図2】図2は、機関の要求トルクを示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の排気浄化装置を示した説明図であり、通常使用時(排気ガス浄化時)における排気ガスの流れの一例を示している。
【図4】図4は、図3と同様の図であって、NOx吸収剤担持フィルタのSOx再生処理時における排気ガスの流れの一例を示している。
【図5】図5は、図3及び図4と同様の図であって、第2環状通路にあるNOx吸収剤を、低温燃焼を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理する場合の排気ガスの流れの一例を示している。
【図6】図6は、NOx吸収剤が担持されたパティキュレートフィルタの拡大断面図である。
【図7】図7は、NOxの吸収放出及び還元浄化作用を説明するための図である。
【図8】図8は、図3から図5と同様の図であって、第2環状通路にあるNOx吸収剤を、排気通路への還元剤の供給を利用する方法によってNOx再生処理またはSOx再生処理する場合の排気ガスの流れの一例を示している。
【図9】図9は、第2環状通路にあるNOx吸収剤をNOx再生処理またはSOx再生処理する方法を決定するために使用され得るマップである。
【符号の説明】
1…機関本体
5…燃焼室
6…電気制御式燃料噴射弁
30…電子制御ユニット
45…第1環状通路
46…第2環状通路
48…第1制御弁
50…NOx吸収剤担持フィルタ
51…NOx吸収剤
52…酸化触媒
53…第2制御弁
56…還元剤供給装置
100…排気浄化装置
Claims (5)
- 内燃機関の排気通路内に配置されたSOx保持剤が担持されたパティキュレートフィルタと、
該パティキュレートフィルタをバイパスするように構成された第1バイパス通路と、
上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガス量と上記第1バイパス通路を流通する排気ガス量との割合を制御する第1制御弁と、
上記第1バイパス通路の始端よりも上流において還元剤を供給する第1還元剤供給手段と、
上記第1バイパス通路の終端よりも下流において排気通路内に配置されたNOx保持剤と、
該NOx保持剤をバイパスするように構成された第2バイパス通路と、
上記NOx保持剤を流通する排気ガス量と上記第2バイパス通路を流通する排気ガス量との割合を制御する第2制御弁と、
上記NOx保持剤へ流入する排気ガスへ還元剤を供給する第2還元剤供給手段と、
を具備する内燃機関の排気浄化装置において、
上記NOx保持剤に保持されたNOxを離脱させ還元すべき時または上記NOx保持剤に保持された硫黄分を離脱させるべき時には、機関運転状態が検出され、
検出された機関運転状態が予め定めた負荷よりも低負荷の場合には、上記第1還元剤供給手段によって還元剤が供給されると共に上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第1バイパス通路を流通するようにされ、且つ、上記第2制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記NOx保持剤を流通するようにされる一方、
検出された機関運転状態が予め定めた負荷よりも高負荷の場合には、上記第1制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記パティキュレートフィルタを流通するようにされると共に、上記第2制御弁によって上記NOx保持剤を流通する排気ガス量を調整しつつ上記第2還元剤供給手段によって還元剤が供給される、内燃機関の排気浄化装置。 - 上記内燃機関は、燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと煤がほとんど発生しなくなる機関からなり、
上記第1還元剤供給手段は、燃焼室内における平均空燃比がほぼ理論空燃比またはリッチになるようにすると共に燃焼室内の不活性ガス量が煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも多くなるようにすることによって還元剤を供給する、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。 - 上記第1還元剤供給手段は、膨張行程または排気行程中に燃焼室内へ補助燃料を噴射することによって還元剤を供給する、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 更に、上記パティキュレートフィルタを流通する排気ガスの流通方向を反転できる流通方向反転手段を有している、請求項1から3の何れか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 上記SOx保持剤に保持された硫黄分を離脱させるべき時には、上記第2制御弁によってほぼ総ての排気ガスが上記第2バイパス通路を流通するようにされる、請求項1から4の何れか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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JP2009013970A (ja) * | 2007-07-09 | 2009-01-22 | Toyota Motor Corp | 内燃機関の排気浄化装置 |
JP2010144557A (ja) * | 2008-12-17 | 2010-07-01 | Isuzu Motors Ltd | 排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法 |
-
2003
- 2003-07-15 JP JP2003197396A patent/JP2005036658A/ja active Pending
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