JP2005036453A - 遮水水域浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遮水水域内の清浄水の割合を一定の比率範囲内に維持でき、且つ、海水や海生動物や魚類の自由な交流を可能にする安価な遮水水域浄化装置を提供する。
【解決手段】上端縁部を水面に浮かぶブイ5aに結合させ下端縁部を自重あるいは重りによって垂下させた垂下式フェンス5と、上端縁部を通常は水中に位置するブイ6aに結合させ下端縁部を水底あるいは水底から所定距離以内の高さに位置するように固定した自立式フェンス6とを有し、遮水水域を区画形成する遮水フェンス3と、
清浄水を輸送する管路4aを有し、遮水水域2中に清浄水を放出する開放端部4bを有する清浄水供給手段4と、を備えた。
【選択図】 図2
【解決手段】上端縁部を水面に浮かぶブイ5aに結合させ下端縁部を自重あるいは重りによって垂下させた垂下式フェンス5と、上端縁部を通常は水中に位置するブイ6aに結合させ下端縁部を水底あるいは水底から所定距離以内の高さに位置するように固定した自立式フェンス6とを有し、遮水水域を区画形成する遮水フェンス3と、
清浄水を輸送する管路4aを有し、遮水水域2中に清浄水を放出する開放端部4bを有する清浄水供給手段4と、を備えた。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、区画形成した閉鎖性のある水域(遮水水域)内に水質処理した清浄水を放水して該水域内の水を浄化する遮水水域浄化装置に関する。
【0002】
特に、遮水水域の内外の生物や水の交流を許容し、且つ、潮の干満など水位の変化によっても遮水水域内の清浄水の割合を所定の比率範囲内に維持することができる遮水水域浄化装置に関する。
【0003】
なお、本発明は水位に変化がある遮水水域に広く適用可能であって海岸に限定されたものではないが、以下の説明では理解が容易なために海岸を念頭に説明する。
【0004】
【従来の技術】
都市に近い海岸などに遊泳や磯遊び等が可能な環境を作り出すということが要求されることがある。
【0005】
しかし、海につながる広大な水域の水をすべて浄化することは巨大な浄化能力の浄化装置を設けることが必要であり現実的ではない。
【0006】
そこで、一定の水域を遮水性のある堤等の構造物で囲んで遮水水域を形成し、該遮水水域の中の水を浄化することが従来から行われていた。
【0007】
しかし、堤等の構造物によって遮水水域を区画形成する場合、遮水水域の内外の生物や水の交流を完全に遮断することになり、例えば生育に伴って海岸と沖の間を移動するような海生動物や魚類は海岸に近づくことができなくなり、海生動物や魚類が正常に生育することができないという問題があった。
【0008】
これに対して、堤自体をある程度生物が流通可能なようにしたものが提案されているが、生物の自由な流通を許容する程度には至っていない。
【0009】
また、区画された遮水水域の内部は水の流れが淀む部分が生じ、藻や付着生物が発生し、汚濁が生じやすい環境が形成されるという問題もあった。
【0010】
このような問題に対しては、遮水水域内の浚渫や、酸素の注入等の方法が採られていた。
【0011】
また、上記遮水水域の閉鎖性を改善するために、潮の干満に応じて構造物の一部に設けた水門等を開閉制御して遮水水域内に海水を汲み入れたり、堤の一部を開放構造としたりすることが行われていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−228930号公報 (図1)
【特許文献2】
特開平8−144236号公報 (図1)
【特許文献3】
特開平9−158152号公報 (図2)
【特許文献4】
特開平10−76287号公報 (図1)
【特許文献5】
特開2000−54353号公報 (図1)
【特許文献6】
特開2002−262707号公報 (図1)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の遮水水域浄化装置において、遮水水域を区画形成するためにコンクリート建造物を使用する場合は工事が困難且つコストが高くなるという問題があった。
【0014】
また、コンクリート建造物に限らず、堤等の海底から築き上げる構造物によって遮水水域を区画形成する場合は、海生動物や魚類の交流が完全にあるいは相当程度阻害されるという問題があった。
【0015】
上記特開平6−228930号公報に記載されたように、構造物の一部を開放状態にすることによって当該開放部から海水や海生動物や魚類が自由に交流することができるようにしたものは、海水や海生動物や魚類の自由な交流は可能になるが、人間が該開放部から沖に出てゆく可能性があり、安全上好ましくないという問題があった。
【0016】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、構造が単純・簡単であり、遮水水域内の清浄水の割合を一定の比率範囲内に維持でき、海水や海生動物や魚類の自由な交流を安全な状態で可能にし、低いコストで設置・維持することが可能な遮水水域浄化装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る遮水水域浄化装置は、上端縁部を水面に浮かぶブイに結合させ下端縁部を自重あるいは重りによって垂下させた垂下式フェンスと、上端縁部を通常は水中に位置するブイに結合させ下端縁部を水底あるいは水底から所定距離以内の高さに位置するように固定した自立式フェンスとを有し、遮水水域を区画形成する遮水フェンスと、清浄水を輸送する管路を有し、前記遮水水域中に前記清浄水を放出する開放端部を有する清浄水供給手段と、を有することを特徴とするものである。
【0018】
前記垂下式フェンスと自立式フェンスは、組み合わさってある程度遮水性を有するとともに、水や海生動物等の交流を許容する遮水フェンスを形成する。前記遮水フェンスによって遮水水域を区画形成してその遮水水域中に前記清浄水供給手段によって清浄水を供給することにより、遮水水域中の清浄水の割合を一定の範囲に維持することができる。また、前記遮水フェンスは水や海生動物等の交流を許容するので、遮水水域中に自然な環境を実現することができる。
【0019】
前記垂下式フェンスは連続して遮水水域を区画し、前記自立式フェンスは一定の長さの複数個の自立式フェンスからなり、前記自立式フェンスは前記垂下式フェンスに沿って少なくとも一部が千鳥状に設置されていることが好ましい。
【0020】
前記遮水フェンスは、水位が上昇したときに前記自立式フェンスの上端縁部が上昇した水面より低く、前記垂下式フェンスの下端縁部が前記自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置するように構成することが好ましい。
【0021】
水位が上昇したときに前記垂下式フェンスの下端縁部が前記自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置することが好ましい。
【0022】
垂下式フェンスの下端縁部が自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置することにより、水位が上昇したときにおいても遮水フェンスの遮水性を維持することができる。
【0023】
前記自立式フェンスは、ブイが水底に錨着されていることが好ましい。また、前記自立式フェンスはその下端縁部が水底に錨着されているようにすることができる。
【0024】
前記垂下式フェンスのブイは、水底に錨着された位置決め用ブイに連結されているようにすることができる。
【0025】
前記位置決め用ブイは水底に錨着されていることにより一定の位置に位置し、垂下式フェンスのブイはその位置決め用ブイに連結されていることにより一定の移動範囲内に位置することができる。
【0026】
前記清浄水供給手段は前記開放端部は一定の長さを有し管壁に多数の放出孔を有する少なくとも1本の管からなることが好ましい。
【0027】
前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されていることが好ましい。また、その上にフィルターシートと砂利あるいは砂が被せられるようにしてもよい。
【0028】
前記開放端部が蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されていることにより、水の放出によって開放端部の周辺の土が掘削されることがなく、開放端部が支持されずに自重によって破損することを防止することができる。
【0029】
本発明に係る遮水水域浄化装置は、水が流通可能な間隙を有するように配置されたブロックまたは石からなる堤本体と、前記堤本体の少なくとも両側面を含む表面を覆う護岸ブロックとを有し、遮水水域を区画形成する遮水堤と、清浄水を輸送する管路を有し、前記遮水水域中に前記清浄水を放出する開放端部を有する清浄水供給手段と、を有することを特徴とするものである。
【0030】
前記堤本体と護岸ブロックは、水が流通可能に構成されているため、ある程度遮水性を有するとともに、水や海生動物等の交流を許容することができる。前記堤本体と護岸ブロックによって区画形成された遮水水域中に前記清浄水供給手段によって清浄水を供給することにより、遮水水域中の清浄水の割合を一定の範囲に維持することができる。また、前記堤本体と護岸ブロックを通じて水や海生動物等が遮水水域の内外を交流するので、遮水水域中に自然な環境を実現することができる。
【0031】
前記遮水堤は基礎部を有し、前記堤本体は前記基礎部上に築かれ、少なくとも水位の変化の高さ範囲の一部に前記堤本体が位置するようにすることができる。
【0032】
前記基礎部は、遮水堤の構造を堅固にし、水の流れによって破損するのを防止することができる。また、堤本体を前記基礎部の上に築くようにすることにより、遮水堤の建設工事が容易になる。
【0033】
前記遮水堤は、前記堤本体中に清浄水を放出する管をさらに有しているようにすることができる。
【0034】
堤本体中に清浄水を放出する管をさらに有することにより、前記管から清浄水を放出し、堤本体を洗浄し、堤本体に付着生物が付着するのを防止して堤本体の水の流通性を維持することができる。
【0035】
前記清浄水供給手段は前記開放端部は一定の長さを有し管壁に多数の放出孔を有する少なくとも1本の管からなるようにすることができる。
【0036】
前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されているようにすることができる。また、その上にフィルターシートと砂利あるいは砂が被せられているようにすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
次に本発明による遮水水域浄化装置の実施形態について以下に説明する。
【0038】
図1は海岸の湾部に設けた本発明の一実施形態による遮水水域浄化装置を上空から見たところを概略的に示したものである。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の遮水水域浄化装置1は、遮水水域2を区画形成する遮水フェンス3と、遮水水域2に清浄水(水質処理を行った後の水)を導入する清浄水供給手段4とを有している。
【0040】
図2は、図1に示した矢印A−A方向に見た本実施形態の遮水水域浄化装置1を示している。
【0041】
図1と図2とを合わせて見て明らかなように、遮水水域浄化装置1の遮水フェンス3は、2重のフェンス、すなわち外側の垂下式フェンス5と内側の自立式フェンス6とを有している。
【0042】
また、図1と図2とから明らかなように、本実施形態の清浄水供給手段4は管からなり、清浄水を輸送する管路4aと遮水水域2内に清浄水を放出する開放端部4bとを有する。なお、開放端部4bは管路4aから分岐した2本の管からなり、それぞれは管壁に複数の孔を有している。管路4aは図示しない水処理装置から遮水水域2内の所定の場所まで配設され、その先端は前記開放端部4bに接続されている。
【0043】
遮水水域2内の清浄水供給手段4(開放端部4bと管路4aの一部)は、遮水水域2内での遊泳や磯遊びのじゃまにならないように好ましくは埋設されている。
【0044】
図3は遮水フェンス3の詳しい構造とその作用を示している。
【0045】
遮水フェンス3は垂下式フェンス5と自立式フェンス6とを有している。
【0046】
垂下式フェンス5は、好ましくは円柱状のブイ5aと、上端縁部をブイ5aに接続したフェンス本体5bとを有している。
【0047】
本実施形態では、フェンス本体5bの下端縁部は重り5cに接続されている。しかし、フェンス本体5bが自重によって垂れ下がるような場合、すなわちフェンス本体5bが水に沈む重い材料によって形成されている場合は、重り5cを省略することができる。
【0048】
垂下式フェンス5のブイ5aは、水面上に浮かぶように設置する。ブイ5aは、ロープ等を介して同じく水面に浮かぶ位置決め用ブイ7,8に接続されている。位置決め用ブイ7,8は、さらにロープ等を介して海底のアンカー9,10に接続されている。
【0049】
一方、自立式フェンス6は、水中に位置する円柱状のブイ6aと、上端縁部をブイ6aに接続したフェンス本体6bとを有している。
【0050】
ブイ6aは浮力を有しているが、フェンス本体6bによって浮上が制限されて水中に留まっている。本実施形態では、自立式フェンス6のフェンス本体6bの下端縁部は重り6cに接続されている。重り6cはロープ等によってアンカー10に接続されている。なお、重り6cを省略してフェンス本体6bの下端縁部をロープ等によってアンカー10に接続してもよい。さらに、フェンス本体6bの下端縁部を直接アンカー10に結びつけてもよい。
【0051】
垂下式フェンス5と自立式フェンス6は、好ましくは図1に示すように連続して設置され、遮水フェンス3の長さ方向に隙間ない連続したフェンスを形成している。
【0052】
垂下式フェンス5は、直接的には海底に錨着されていないが、潮流に拘わらず位置決め用ブイ7,8によって一定の位置に維持される。たとえば、図3において左側から右側に水が流れている場合、位置決め用ブイ7はアンカー9との間で一定の長さのロープによって接続されているので、ブイ5aが一定距離以上右側に流されると位置決め用ブイ7はロープに引っ張られて水中に沈もうとするが、浮力によって水面に浮かぶので、水面の高さとロープの長さで規定される一定距離以上は右側に移動することができない。ブイ5aは位置決め用ブイ7に接続されているので、同様に一定距離以上は右側に移動することができない。反対側に向かう潮流の場合も位置決め用ブイ8が同様の働きをしてブイ5aを一定距離以上は左側に移動させない。このように垂下式フェンス5は位置決め用ブイ7,8によって一定範囲内の位置に維持される。位置決め用ブイ7,8とアンカー9,10の間のロープの長さによって垂下式フェンス5の移動の自由度を変えることができる。
【0053】
水位の高低(潮の干満)に対しては垂下式フェンス5は自由に上下に平行移動することができる。
【0054】
自立式フェンス6のブイ6aは、位置決め用ブイを有していないが、水中に位置しているので常に上向きの力が働き、緩やかな潮流中では直立状態を維持し、一定の位置を維持することができる。
【0055】
垂下式フェンス5と自立式フェンス6の間の距離は、維持しようとする遮水フェンス3内の清浄水と海水の割合によって決定され、潮流の速さ、海生動物や魚類の交流の容易さを考慮して適宜設定される。
【0056】
垂下式フェンス5の下端縁部と自立式フェンス6の上端縁部は、水位の高低時(ここでは潮の干満で説明する)において以下に説明するように高さ方向に重なっている。
【0057】
図3(a)は満潮の時の垂下式フェンス5と自立式フェンス6の状態を示している。
【0058】
満潮時には、垂下式フェンス5は水面の上昇に応じて上昇し、位置決め用ブイ7,8とアンカー9,10とをそれぞれ結ぶロープは延びた状態になる。一方、自立式フェンス6はブイ6aの浮力によって常に一定位置に位置する。
【0059】
図3(a)中の矢印に示すように、干潮から満潮に向かうときは、遮水水域2外部の水面が遮水水域2内部の水面より高くなるので、海水は垂下式フェンス5の下端をくぐり、さらに自立式フェンス6の上端を越えて遮水水域2内に流入する。自立式フェンス6の下端部は海底から所定距離上がった位置に位置しているので、自立式フェンス6の下端からも多少海水が遮水水域2内に流入する。
【0060】
海生動物あるいは魚類も同様の経路をたどって遮水水域2に自由に出入りすることができる。特に、海底に生息する生物は自立式フェンス6の下端の隙間から自由に遮水水域2に自由に出入りすることができる。
【0061】
これに対して図3(b)は干潮時の垂下式フェンス5と自立式フェンス6の状態を示している。
【0062】
干潮時には、垂下式フェンス5は水面の下降に応じて下降し、位置決め用ブイ7,8とアンカー9,10とをそれぞれ結ぶロープは弛んだ状態になる。なお自立式フェンス6はブイ6aの浮力によって一定位置に位置する。
【0063】
満潮から干潮に向かうときは、遮水水域2内部の水面が遮水水域2外部の水面より高くなるので、図3(b)の矢印に示すように、遮水水域2の海水は自立式フェンス6の下端と海底の間の隙間と、垂下式フェンス5の下端と海底の間の隙間とを通って遮水水域2の外部に流出する。
【0064】
干潮時でも、海生動物あるいは魚類も上述した海水流通経路をたどって遮水水域2に自由に出入りすることができる。
【0065】
上述した説明から明らかなように、遮水水域2の閉鎖性を維持するために、満潮時において垂下式フェンス5のフェンス本体5bの下端は自立式フェンス6のフェンス本体6bの上端(ブイ6aの上端)より所定距離低くなるように、垂下式フェンス5と自立式フェンス6のフェンス本体5b,6bの高さ方向の幅を設定するのが好ましい。垂下式フェンス5のフェンス本体5bの下端は図3(b)に示すように、干潮時でも海底から所定距離離れた高さに位置するように、垂下式フェンス5と自立式フェンス6のフェンス本体5b,6bの高さ方向の幅を設定するのが好ましい。
【0066】
なお、垂下式フェンス5のフェンス本体5bの高さ方向の幅は、干潮時においてその下端が上述のように海底から所定の高さに位置するように設定されてもよいが、図3(b)と相違して海底に接する長さ以上でもよい。干潮は一時的なものであるので、その時間のみ海生動物の遮水水域2への出入りを制限してもほとんど問題がなく、且つ、満潮から干潮になる時は海水の圧力によって海水が垂下式フェンス5のフェンス本体5bの下端を押し開けて遮水水域2の外部に支障なく流出するからである。
【0067】
本実施形態の遮水フェンス3によれば、垂下式フェンス5と自立式フェンス6とを接近させて設置することによって、遮水フェンス3内の水の流出をかなりの程度防止することができ遮水水域2の閉鎖性を高めることができる。る、すなわち、本実施形態の遮水フェンス3を設置し、清浄水供給手段4によって遮水水域2内に清浄水を供給し続けることにより、遮水水域2内の清浄水の割合を高くして遊泳、磯遊びに適した環境を作り出すことができる。
【0068】
一方、干潮から満潮にかけては、その水位差における遮水水域2内の水の容積分だけ海水が流入し、遮水水域2内の水と混合する。
【0069】
反対に、満潮から干潮にかけては、同じ容積の遮水水域2内の水が遮水水域2の外部に流出する。
【0070】
このように、本実施形態によれば、潮の干満に応じて、水位差における遮水水域2内の容積の水が入れ替わる。この入れ替わる水の容積と清浄水供給手段4によって供給する水の容積との関係を管理することによって、遮水水域2内の水の清浄水の割合を一定範囲内に維持することができ、遮水水域2内の水質を一定水準に維持することができる。
【0071】
つまり、水位の変化を考慮して遮水水域2の大きさ、遮水フェンス3における垂下式フェンス5と自立式フェンス6の距離や重なりの程度、自立式フェンス6の下縁の隙間、清浄水供給手段4の清浄水供給量を調整することによって、遮水水域2内の水質を一定水準に維持することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、遮水水域2は自然の水位の変化によって常に水が入れ替わるので、遮水水域2内に有機物の発生や、付着生物の発生を防止することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、上記遮水水域2の水の入れ替えや海生動物の自由な交流を実現する一方、遮水フェンス3の垂下式フェンス5が遮水水域2を隙間なく囲むので、人間が遮水水域2の外部に出ることがなく、安全な遮水水域2を実現することができる。
【0074】
さらに、本実施形態によれば、既述したように海生動物や魚類が自由に遮水水域2に出入りすることができるので、生物の正常な生育と海岸等の自然環境を維持することができる。特に、本実施形態によれば、海底を這って移動する海生動物も、遮水フェンス3の下端をくぐって自由に遮水水域2に出入りすることができるのは、水底から築き上げる堤に比して強調すべき点である。
【0075】
図4は、清浄水供給手段4の開放端部4bの埋設構造を横断面で示している。
【0076】
本実施形態における開放端部4bは、管壁に多数の孔を開けた管からなる。図1の例では、開放端部4bは2本敷設されているが、開放端部4bの本数は2本に限定されず、任意の数とすることができる。
【0077】
開放端部4bは遮水水域2内の遊泳や磯遊びを考慮すると、図1,4に示すように、遮水水域2内の水底に埋設されているのが好ましい。しかし、開放端部4bからは常に清浄水が放出されているので、水底の砂の堆積部にそのまま埋めると清浄水の水圧によって開放端部4bの周囲の砂や土が掘削され、開放端部4bが掘削された穴に突出したような状態になって自重によってそれを支持する管部が破損することがある。
【0078】
そこで、本実施形態の遮水水域浄化装置1では、図4に示すように、開放端部4bを埋設しようとする場所の水底部11を開放端部4bより大きく掘削し、その掘削穴に開放端部4bを配置した後に、開放端部4bの周りに割栗石ぐり12を敷き詰めている。さらに、割栗石ぐり12の上面にはフィルターシート13を被せ、フィルターシート13の上面に砂利あるいは砂14を被せている。
【0079】
割栗石ぐり12は、敷き詰めた状態でもそれらの間に水の流通が自由な空間を有する。フィルターシート13は、砂利や砂14が割栗石ぐり12の間に入り込むのを防止できる程度の網目粗さを有するが、広い面積を介して開放端部4bから放出された水を低い抵抗で通過させることができる。砂利や砂14は好ましくは遮水水域2の水底のものを使用し、砂利や砂14を被せることによって開放端部4bの埋設部分が他の水底と区別できないようなものを使用する。開放端部4bは、好ましくは孔径3mm〜10mmの吹き出し孔を管壁に多数設けた管からなる。
【0080】
図4の開放端部4bの埋設構造によれば、開放端部4bから放出された清浄水は割栗石ぐり12の間を通り、さらにフィルターシート13と砂利や砂14を通り、遮水水域2に放出される。
【0081】
本実施形態によれば、開放端部4bの周囲は割栗石ぐり12が詰められているので、清浄水の圧力によって開放端部4bの周囲の土が掘削されることがない。また、フィルターシート13は砂利や砂14が割栗石ぐり12の間に入り込むのを防止し、割栗石ぐり12の通水性を長期間にわたって維持することができる。また、開放端部4bの埋設部は砂利や砂14によって覆われているので、埋設部以外の水底部と区別されず、利用者にとって好ましいばかりではなく、海生動物にとっても好ましい環境を提供することができる。
【0082】
なお、上記実施形態では割栗石ぐり12を用いたが、水の流通が可能であり、水の圧力によって掘削されない限りにおいて、蛇篭(細石をネットに詰めたもの)、細石、割石、割栗石を用いることができる。
【0083】
また、フィルターシート13は水底に固定し、上面を露出した状態で設置してもむろんよい。
【0084】
図5は、自立式フェンス6の他の実施形態を示している。図5において、図3と同一の部分には図3と同一の符号を付して示している。
【0085】
図5の実施形態は自立式フェンス6の繋留の方法に関する。
【0086】
図5(a)はブイ6aを水底に錨着するものに関し、図の例ではブイ6aとアンカー10をロープ等によって接続している。この場合、自立式フェンス6の下端は重り6cを有している。
【0087】
図5(b)は、自立式フェンス6のフェンス本体6bの下端縁部を水底に錨着するものに関し、図の例ではフェンス本体6bの下端縁部自体をアンカー10に接続している。
【0088】
なお、複数のブイ6aをつなげた自立式フェンス6において、個々の自立式フェンス6を異なる方法によって繋留してもよいし、一部の自立式フェンス6は下端が水底から浮き上がった状態であり、他の自立式フェンス6は下端が水底との間に隙間を有していないようにしてもよい。
【0089】
図6は、さらに他の自立式フェンス6の実施形態を示している。図6において、図1と同一の部分には図1と同一の符号を付して示している。
【0090】
図6の自立式フェンス6は、複数の自立式フェンス6からなり、垂下式フェンス5に沿ってそれらの自立式フェンス6が千鳥状設置されたものである。
【0091】
本実施形態は、フェンス本体の下端縁部が水底に接している自立式フェンス6用いる場合に特に好ましい。フェンス本体の下端縁部が水底に接している自立式フェンス6用いる場合、水底を這って移動する海生動物の移動を妨げることになるが、本実施形態のように千鳥状に自立式フェンス6を配置することにより、海生動物の移動を容易にすることができる。
【0092】
さらに、このように自立式フェンス6を千鳥状に配置しても、遮水水域2は垂下式フェンス5によって隙間なく囲まれているので、人間が遮水水域2の外部に出ることを防止でき、安全な遮水水域2を提供することができる。
【0093】
次に、築堤方式による本発明の他の実施形態の遮水水域浄化装置について説明する。
【0094】
図7は、築堤方式による本発明の遮水水域浄化装置を上空から見たところを概略示している。
【0095】
図7に示すように、本実施形態の遮水浄化装置15は、遮水水域16を区画形成する遮水堤17と、遮水水域16に清浄水を導入する清浄水供給手段18とを有している。
【0096】
清浄水供給手段18は図1〜図6の清浄水供給手段4と変わらないので、ここでの重複する説明は省略する。
【0097】
図8は、図7に示した矢印B−B方向に見た本実施形態の遮水堤17の横断面を示している。
【0098】
図8に示すように、遮水堤17は石19で築いた堤本体17aと、堤本体17aの少なくとも両側面(図8の例では堤本体17aの両側面と頂面)を覆う護岸ブロック20とを有している。
【0099】
図8の例では、遮水堤17はさらに水(清浄水または海水のいずれでもよい)を放出する放水管21をさらに有している。
【0100】
石19は、堤本体17aを構成した状態で海水が流通可能な間隙を有する大きさと形状のものを使用する。たとえば、平均粒径が10cm〜30cmの角がないれきを使用することができる。また、石の代わりにブロックを使用してもよい。護岸ブロック20も積み上げた状態で海水が流通可能な大きさと形状のものを使用する。図8の例では臼状で下部の角がない護岸ブロックを使用している。また、好ましくは貫通孔を有する護岸ブロック20を使用する。
【0101】
放水管21は、管壁に3mm〜10mmの放水口を有する管とすることができる。放水する水は遮水水域16に導入する清浄水の一部を使用してもよいし、海水を使用してもよい。遮水堤17を流通する水が所定の速度が、たとえば付着生物が付着しにくい速度以上で流通する場合は、放水管21は省略することができる。
【0102】
図8の矢印に示すように、本実施形態によれば、堤本体17aと護岸ブロック20は積み上げた状態で水が流通可能であるので、遮水堤17はある程度遮水性を有するのと同時に流通性も有する。清浄水供給手段18によって遮水水域16内に清浄水を供給することにより、遮水水域16内の清浄水の割合が上昇し、遊泳や磯遊びに適した水質・環境を実現することができる。一方、海水が遮水堤17を通って遮水水域16内に流入し、あるいは遮水水域16外に流出することにより、遮水水域16内の水が一部交換される。また、小さな海生動物や魚類が遮水堤17を通って遮水水域16を自由に出入りすることができるので、遮水水域16内に通常の海岸と変わらない環境を実現することができる。
【0103】
また、本実施形態では、放水管21を用いて遮水堤17内に加圧した清浄水または海水を噴出させることができる。放水管21から放出された水は、石19や護岸ブロック20を洗浄することができる。これにより、石19や護岸ブロック20に付着生物が付着して目詰まりの状態になるのを防止し、長期間遮水堤17の水の流通性を維持することができる。もっとも、前述したように、遮水堤17を流通する水が常に所定の速度を有する場合には、付着生物が付着するのが困難であるので、放水管21を省略した遮水堤17とすることもできる。
【0104】
図9は遮水堤17の変形例を示している。図9において、図8と同一部分には図8と同一の符号を付す。
【0105】
図9に示すように、遮水堤17は基礎部17bを有してもよい。基礎部17bは、コンクリートやレンガによって形作られた強固な構造とするのが好ましい。
【0106】
基礎部17bは、海水による遮水堤17の崩壊を防止するとともに、堤本体17aの工事を簡単にすることができる。
【0107】
ただし、基礎部17bは、海水の流通性を有していないので、図9に示すように、少なくとも水位の変化の高さ範囲、たとえば満潮と干潮の水位の変化の一部に、水の流通性を有する堤本体17aが位置するようにする。
【0108】
これにより、少なくとも満潮時には水が基礎部17bの上縁部より高くなり、堤本体17aの石19の間を通って流通することができる。
【0109】
基礎部17bを有する遮水堤17においても、遮水と遮水水域16の水の交換と海生動物や魚類の交流等の効果を有する。同時に基礎部17bを有する遮水堤17は基礎部17bによって遮水堤17が強固になるという効果を有する。
【0110】
なお、図9の例では、遮水堤17中に放水管を備えていないが、放水管を適宜設けることができる。
【0111】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は遮水フェンスあるいは遮水堤という単純・簡単な構造により、自然の水位の変化によって遮水水域内の水の一部を入れ替えることができ、清浄水の放流量との関係で遮水水域内の清浄水の割合を一定の比率範囲内に維持して遮水領域内の水の汚濁を防止することができる。
【0112】
また、遮水フェンスや遮水堤の構造により、閉鎖性を有する遮水水域に対しても海生動物や魚類の自由な出入りを実現することができる。特に、水底との間に隙間を有する遮水フェンスを有する本発明による遮水水域浄化装置によれば、水底を這って移動する海生動物も自由に遮水水域を出入りでき、遮水水域内で自然な環境を実現することができる。
【0113】
さらに、本発明はコンクリート建造物用いた構造物に比して極めて設置工事が簡単であり、低いコストで設置維持することができる遮水水域浄化装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による遮水水域浄化装置を適用した遮水水域を示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態による遮水水域浄化装置の断面図。
【図3】本発明の一実施形態の遮水フェンスの断面と作用を示した説明図。
【図4】本発明の一実施形態の開放端部の設置構造を示した断面図。
【図5】本発明の他の実施形態の遮水フェンスの断面図。
【図6】本発明の他の実施形態による遮水水域浄化装置を適用した遮水水域を示す平面図。
【図7】本発明の他の実施形態による遮水水域浄化装置を適用した遮水水域を示す平面図。
【図8】本発明の一実施形態の遮水堤の断面図。
【図9】本発明の他の実施形態の遮水堤の断面図。
【符号の説明】
1 遮水水域浄化装置
2 遮水水域
3 遮水フェンス
4 清浄水供給手段
4a 管路
4b 開放端部
5 垂下式フェンス
5a ブイ
5b フェンス本体
5c 重り
6 自立式フェンス
6a ブイ
6b フェンス本体
6c 重り
7 位置決め用ブイ
8 位置決め用ブイ
9 アンカー
10 アンカー
11 水底部
12 割栗石ぐり
13 フィルターシート
14 砂利や砂
15 遮水浄化装置
16 遮水水域
17 遮水堤
17a 堤本体
17b 基礎部
18 清浄水供給手段
19 石
20 護岸ブロック
21 放水管
【発明の属する技術分野】
本発明は、区画形成した閉鎖性のある水域(遮水水域)内に水質処理した清浄水を放水して該水域内の水を浄化する遮水水域浄化装置に関する。
【0002】
特に、遮水水域の内外の生物や水の交流を許容し、且つ、潮の干満など水位の変化によっても遮水水域内の清浄水の割合を所定の比率範囲内に維持することができる遮水水域浄化装置に関する。
【0003】
なお、本発明は水位に変化がある遮水水域に広く適用可能であって海岸に限定されたものではないが、以下の説明では理解が容易なために海岸を念頭に説明する。
【0004】
【従来の技術】
都市に近い海岸などに遊泳や磯遊び等が可能な環境を作り出すということが要求されることがある。
【0005】
しかし、海につながる広大な水域の水をすべて浄化することは巨大な浄化能力の浄化装置を設けることが必要であり現実的ではない。
【0006】
そこで、一定の水域を遮水性のある堤等の構造物で囲んで遮水水域を形成し、該遮水水域の中の水を浄化することが従来から行われていた。
【0007】
しかし、堤等の構造物によって遮水水域を区画形成する場合、遮水水域の内外の生物や水の交流を完全に遮断することになり、例えば生育に伴って海岸と沖の間を移動するような海生動物や魚類は海岸に近づくことができなくなり、海生動物や魚類が正常に生育することができないという問題があった。
【0008】
これに対して、堤自体をある程度生物が流通可能なようにしたものが提案されているが、生物の自由な流通を許容する程度には至っていない。
【0009】
また、区画された遮水水域の内部は水の流れが淀む部分が生じ、藻や付着生物が発生し、汚濁が生じやすい環境が形成されるという問題もあった。
【0010】
このような問題に対しては、遮水水域内の浚渫や、酸素の注入等の方法が採られていた。
【0011】
また、上記遮水水域の閉鎖性を改善するために、潮の干満に応じて構造物の一部に設けた水門等を開閉制御して遮水水域内に海水を汲み入れたり、堤の一部を開放構造としたりすることが行われていた。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−228930号公報 (図1)
【特許文献2】
特開平8−144236号公報 (図1)
【特許文献3】
特開平9−158152号公報 (図2)
【特許文献4】
特開平10−76287号公報 (図1)
【特許文献5】
特開2000−54353号公報 (図1)
【特許文献6】
特開2002−262707号公報 (図1)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の遮水水域浄化装置において、遮水水域を区画形成するためにコンクリート建造物を使用する場合は工事が困難且つコストが高くなるという問題があった。
【0014】
また、コンクリート建造物に限らず、堤等の海底から築き上げる構造物によって遮水水域を区画形成する場合は、海生動物や魚類の交流が完全にあるいは相当程度阻害されるという問題があった。
【0015】
上記特開平6−228930号公報に記載されたように、構造物の一部を開放状態にすることによって当該開放部から海水や海生動物や魚類が自由に交流することができるようにしたものは、海水や海生動物や魚類の自由な交流は可能になるが、人間が該開放部から沖に出てゆく可能性があり、安全上好ましくないという問題があった。
【0016】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、構造が単純・簡単であり、遮水水域内の清浄水の割合を一定の比率範囲内に維持でき、海水や海生動物や魚類の自由な交流を安全な状態で可能にし、低いコストで設置・維持することが可能な遮水水域浄化装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る遮水水域浄化装置は、上端縁部を水面に浮かぶブイに結合させ下端縁部を自重あるいは重りによって垂下させた垂下式フェンスと、上端縁部を通常は水中に位置するブイに結合させ下端縁部を水底あるいは水底から所定距離以内の高さに位置するように固定した自立式フェンスとを有し、遮水水域を区画形成する遮水フェンスと、清浄水を輸送する管路を有し、前記遮水水域中に前記清浄水を放出する開放端部を有する清浄水供給手段と、を有することを特徴とするものである。
【0018】
前記垂下式フェンスと自立式フェンスは、組み合わさってある程度遮水性を有するとともに、水や海生動物等の交流を許容する遮水フェンスを形成する。前記遮水フェンスによって遮水水域を区画形成してその遮水水域中に前記清浄水供給手段によって清浄水を供給することにより、遮水水域中の清浄水の割合を一定の範囲に維持することができる。また、前記遮水フェンスは水や海生動物等の交流を許容するので、遮水水域中に自然な環境を実現することができる。
【0019】
前記垂下式フェンスは連続して遮水水域を区画し、前記自立式フェンスは一定の長さの複数個の自立式フェンスからなり、前記自立式フェンスは前記垂下式フェンスに沿って少なくとも一部が千鳥状に設置されていることが好ましい。
【0020】
前記遮水フェンスは、水位が上昇したときに前記自立式フェンスの上端縁部が上昇した水面より低く、前記垂下式フェンスの下端縁部が前記自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置するように構成することが好ましい。
【0021】
水位が上昇したときに前記垂下式フェンスの下端縁部が前記自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置することが好ましい。
【0022】
垂下式フェンスの下端縁部が自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置することにより、水位が上昇したときにおいても遮水フェンスの遮水性を維持することができる。
【0023】
前記自立式フェンスは、ブイが水底に錨着されていることが好ましい。また、前記自立式フェンスはその下端縁部が水底に錨着されているようにすることができる。
【0024】
前記垂下式フェンスのブイは、水底に錨着された位置決め用ブイに連結されているようにすることができる。
【0025】
前記位置決め用ブイは水底に錨着されていることにより一定の位置に位置し、垂下式フェンスのブイはその位置決め用ブイに連結されていることにより一定の移動範囲内に位置することができる。
【0026】
前記清浄水供給手段は前記開放端部は一定の長さを有し管壁に多数の放出孔を有する少なくとも1本の管からなることが好ましい。
【0027】
前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されていることが好ましい。また、その上にフィルターシートと砂利あるいは砂が被せられるようにしてもよい。
【0028】
前記開放端部が蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されていることにより、水の放出によって開放端部の周辺の土が掘削されることがなく、開放端部が支持されずに自重によって破損することを防止することができる。
【0029】
本発明に係る遮水水域浄化装置は、水が流通可能な間隙を有するように配置されたブロックまたは石からなる堤本体と、前記堤本体の少なくとも両側面を含む表面を覆う護岸ブロックとを有し、遮水水域を区画形成する遮水堤と、清浄水を輸送する管路を有し、前記遮水水域中に前記清浄水を放出する開放端部を有する清浄水供給手段と、を有することを特徴とするものである。
【0030】
前記堤本体と護岸ブロックは、水が流通可能に構成されているため、ある程度遮水性を有するとともに、水や海生動物等の交流を許容することができる。前記堤本体と護岸ブロックによって区画形成された遮水水域中に前記清浄水供給手段によって清浄水を供給することにより、遮水水域中の清浄水の割合を一定の範囲に維持することができる。また、前記堤本体と護岸ブロックを通じて水や海生動物等が遮水水域の内外を交流するので、遮水水域中に自然な環境を実現することができる。
【0031】
前記遮水堤は基礎部を有し、前記堤本体は前記基礎部上に築かれ、少なくとも水位の変化の高さ範囲の一部に前記堤本体が位置するようにすることができる。
【0032】
前記基礎部は、遮水堤の構造を堅固にし、水の流れによって破損するのを防止することができる。また、堤本体を前記基礎部の上に築くようにすることにより、遮水堤の建設工事が容易になる。
【0033】
前記遮水堤は、前記堤本体中に清浄水を放出する管をさらに有しているようにすることができる。
【0034】
堤本体中に清浄水を放出する管をさらに有することにより、前記管から清浄水を放出し、堤本体を洗浄し、堤本体に付着生物が付着するのを防止して堤本体の水の流通性を維持することができる。
【0035】
前記清浄水供給手段は前記開放端部は一定の長さを有し管壁に多数の放出孔を有する少なくとも1本の管からなるようにすることができる。
【0036】
前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されているようにすることができる。また、その上にフィルターシートと砂利あるいは砂が被せられているようにすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
次に本発明による遮水水域浄化装置の実施形態について以下に説明する。
【0038】
図1は海岸の湾部に設けた本発明の一実施形態による遮水水域浄化装置を上空から見たところを概略的に示したものである。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の遮水水域浄化装置1は、遮水水域2を区画形成する遮水フェンス3と、遮水水域2に清浄水(水質処理を行った後の水)を導入する清浄水供給手段4とを有している。
【0040】
図2は、図1に示した矢印A−A方向に見た本実施形態の遮水水域浄化装置1を示している。
【0041】
図1と図2とを合わせて見て明らかなように、遮水水域浄化装置1の遮水フェンス3は、2重のフェンス、すなわち外側の垂下式フェンス5と内側の自立式フェンス6とを有している。
【0042】
また、図1と図2とから明らかなように、本実施形態の清浄水供給手段4は管からなり、清浄水を輸送する管路4aと遮水水域2内に清浄水を放出する開放端部4bとを有する。なお、開放端部4bは管路4aから分岐した2本の管からなり、それぞれは管壁に複数の孔を有している。管路4aは図示しない水処理装置から遮水水域2内の所定の場所まで配設され、その先端は前記開放端部4bに接続されている。
【0043】
遮水水域2内の清浄水供給手段4(開放端部4bと管路4aの一部)は、遮水水域2内での遊泳や磯遊びのじゃまにならないように好ましくは埋設されている。
【0044】
図3は遮水フェンス3の詳しい構造とその作用を示している。
【0045】
遮水フェンス3は垂下式フェンス5と自立式フェンス6とを有している。
【0046】
垂下式フェンス5は、好ましくは円柱状のブイ5aと、上端縁部をブイ5aに接続したフェンス本体5bとを有している。
【0047】
本実施形態では、フェンス本体5bの下端縁部は重り5cに接続されている。しかし、フェンス本体5bが自重によって垂れ下がるような場合、すなわちフェンス本体5bが水に沈む重い材料によって形成されている場合は、重り5cを省略することができる。
【0048】
垂下式フェンス5のブイ5aは、水面上に浮かぶように設置する。ブイ5aは、ロープ等を介して同じく水面に浮かぶ位置決め用ブイ7,8に接続されている。位置決め用ブイ7,8は、さらにロープ等を介して海底のアンカー9,10に接続されている。
【0049】
一方、自立式フェンス6は、水中に位置する円柱状のブイ6aと、上端縁部をブイ6aに接続したフェンス本体6bとを有している。
【0050】
ブイ6aは浮力を有しているが、フェンス本体6bによって浮上が制限されて水中に留まっている。本実施形態では、自立式フェンス6のフェンス本体6bの下端縁部は重り6cに接続されている。重り6cはロープ等によってアンカー10に接続されている。なお、重り6cを省略してフェンス本体6bの下端縁部をロープ等によってアンカー10に接続してもよい。さらに、フェンス本体6bの下端縁部を直接アンカー10に結びつけてもよい。
【0051】
垂下式フェンス5と自立式フェンス6は、好ましくは図1に示すように連続して設置され、遮水フェンス3の長さ方向に隙間ない連続したフェンスを形成している。
【0052】
垂下式フェンス5は、直接的には海底に錨着されていないが、潮流に拘わらず位置決め用ブイ7,8によって一定の位置に維持される。たとえば、図3において左側から右側に水が流れている場合、位置決め用ブイ7はアンカー9との間で一定の長さのロープによって接続されているので、ブイ5aが一定距離以上右側に流されると位置決め用ブイ7はロープに引っ張られて水中に沈もうとするが、浮力によって水面に浮かぶので、水面の高さとロープの長さで規定される一定距離以上は右側に移動することができない。ブイ5aは位置決め用ブイ7に接続されているので、同様に一定距離以上は右側に移動することができない。反対側に向かう潮流の場合も位置決め用ブイ8が同様の働きをしてブイ5aを一定距離以上は左側に移動させない。このように垂下式フェンス5は位置決め用ブイ7,8によって一定範囲内の位置に維持される。位置決め用ブイ7,8とアンカー9,10の間のロープの長さによって垂下式フェンス5の移動の自由度を変えることができる。
【0053】
水位の高低(潮の干満)に対しては垂下式フェンス5は自由に上下に平行移動することができる。
【0054】
自立式フェンス6のブイ6aは、位置決め用ブイを有していないが、水中に位置しているので常に上向きの力が働き、緩やかな潮流中では直立状態を維持し、一定の位置を維持することができる。
【0055】
垂下式フェンス5と自立式フェンス6の間の距離は、維持しようとする遮水フェンス3内の清浄水と海水の割合によって決定され、潮流の速さ、海生動物や魚類の交流の容易さを考慮して適宜設定される。
【0056】
垂下式フェンス5の下端縁部と自立式フェンス6の上端縁部は、水位の高低時(ここでは潮の干満で説明する)において以下に説明するように高さ方向に重なっている。
【0057】
図3(a)は満潮の時の垂下式フェンス5と自立式フェンス6の状態を示している。
【0058】
満潮時には、垂下式フェンス5は水面の上昇に応じて上昇し、位置決め用ブイ7,8とアンカー9,10とをそれぞれ結ぶロープは延びた状態になる。一方、自立式フェンス6はブイ6aの浮力によって常に一定位置に位置する。
【0059】
図3(a)中の矢印に示すように、干潮から満潮に向かうときは、遮水水域2外部の水面が遮水水域2内部の水面より高くなるので、海水は垂下式フェンス5の下端をくぐり、さらに自立式フェンス6の上端を越えて遮水水域2内に流入する。自立式フェンス6の下端部は海底から所定距離上がった位置に位置しているので、自立式フェンス6の下端からも多少海水が遮水水域2内に流入する。
【0060】
海生動物あるいは魚類も同様の経路をたどって遮水水域2に自由に出入りすることができる。特に、海底に生息する生物は自立式フェンス6の下端の隙間から自由に遮水水域2に自由に出入りすることができる。
【0061】
これに対して図3(b)は干潮時の垂下式フェンス5と自立式フェンス6の状態を示している。
【0062】
干潮時には、垂下式フェンス5は水面の下降に応じて下降し、位置決め用ブイ7,8とアンカー9,10とをそれぞれ結ぶロープは弛んだ状態になる。なお自立式フェンス6はブイ6aの浮力によって一定位置に位置する。
【0063】
満潮から干潮に向かうときは、遮水水域2内部の水面が遮水水域2外部の水面より高くなるので、図3(b)の矢印に示すように、遮水水域2の海水は自立式フェンス6の下端と海底の間の隙間と、垂下式フェンス5の下端と海底の間の隙間とを通って遮水水域2の外部に流出する。
【0064】
干潮時でも、海生動物あるいは魚類も上述した海水流通経路をたどって遮水水域2に自由に出入りすることができる。
【0065】
上述した説明から明らかなように、遮水水域2の閉鎖性を維持するために、満潮時において垂下式フェンス5のフェンス本体5bの下端は自立式フェンス6のフェンス本体6bの上端(ブイ6aの上端)より所定距離低くなるように、垂下式フェンス5と自立式フェンス6のフェンス本体5b,6bの高さ方向の幅を設定するのが好ましい。垂下式フェンス5のフェンス本体5bの下端は図3(b)に示すように、干潮時でも海底から所定距離離れた高さに位置するように、垂下式フェンス5と自立式フェンス6のフェンス本体5b,6bの高さ方向の幅を設定するのが好ましい。
【0066】
なお、垂下式フェンス5のフェンス本体5bの高さ方向の幅は、干潮時においてその下端が上述のように海底から所定の高さに位置するように設定されてもよいが、図3(b)と相違して海底に接する長さ以上でもよい。干潮は一時的なものであるので、その時間のみ海生動物の遮水水域2への出入りを制限してもほとんど問題がなく、且つ、満潮から干潮になる時は海水の圧力によって海水が垂下式フェンス5のフェンス本体5bの下端を押し開けて遮水水域2の外部に支障なく流出するからである。
【0067】
本実施形態の遮水フェンス3によれば、垂下式フェンス5と自立式フェンス6とを接近させて設置することによって、遮水フェンス3内の水の流出をかなりの程度防止することができ遮水水域2の閉鎖性を高めることができる。る、すなわち、本実施形態の遮水フェンス3を設置し、清浄水供給手段4によって遮水水域2内に清浄水を供給し続けることにより、遮水水域2内の清浄水の割合を高くして遊泳、磯遊びに適した環境を作り出すことができる。
【0068】
一方、干潮から満潮にかけては、その水位差における遮水水域2内の水の容積分だけ海水が流入し、遮水水域2内の水と混合する。
【0069】
反対に、満潮から干潮にかけては、同じ容積の遮水水域2内の水が遮水水域2の外部に流出する。
【0070】
このように、本実施形態によれば、潮の干満に応じて、水位差における遮水水域2内の容積の水が入れ替わる。この入れ替わる水の容積と清浄水供給手段4によって供給する水の容積との関係を管理することによって、遮水水域2内の水の清浄水の割合を一定範囲内に維持することができ、遮水水域2内の水質を一定水準に維持することができる。
【0071】
つまり、水位の変化を考慮して遮水水域2の大きさ、遮水フェンス3における垂下式フェンス5と自立式フェンス6の距離や重なりの程度、自立式フェンス6の下縁の隙間、清浄水供給手段4の清浄水供給量を調整することによって、遮水水域2内の水質を一定水準に維持することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、遮水水域2は自然の水位の変化によって常に水が入れ替わるので、遮水水域2内に有機物の発生や、付着生物の発生を防止することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、上記遮水水域2の水の入れ替えや海生動物の自由な交流を実現する一方、遮水フェンス3の垂下式フェンス5が遮水水域2を隙間なく囲むので、人間が遮水水域2の外部に出ることがなく、安全な遮水水域2を実現することができる。
【0074】
さらに、本実施形態によれば、既述したように海生動物や魚類が自由に遮水水域2に出入りすることができるので、生物の正常な生育と海岸等の自然環境を維持することができる。特に、本実施形態によれば、海底を這って移動する海生動物も、遮水フェンス3の下端をくぐって自由に遮水水域2に出入りすることができるのは、水底から築き上げる堤に比して強調すべき点である。
【0075】
図4は、清浄水供給手段4の開放端部4bの埋設構造を横断面で示している。
【0076】
本実施形態における開放端部4bは、管壁に多数の孔を開けた管からなる。図1の例では、開放端部4bは2本敷設されているが、開放端部4bの本数は2本に限定されず、任意の数とすることができる。
【0077】
開放端部4bは遮水水域2内の遊泳や磯遊びを考慮すると、図1,4に示すように、遮水水域2内の水底に埋設されているのが好ましい。しかし、開放端部4bからは常に清浄水が放出されているので、水底の砂の堆積部にそのまま埋めると清浄水の水圧によって開放端部4bの周囲の砂や土が掘削され、開放端部4bが掘削された穴に突出したような状態になって自重によってそれを支持する管部が破損することがある。
【0078】
そこで、本実施形態の遮水水域浄化装置1では、図4に示すように、開放端部4bを埋設しようとする場所の水底部11を開放端部4bより大きく掘削し、その掘削穴に開放端部4bを配置した後に、開放端部4bの周りに割栗石ぐり12を敷き詰めている。さらに、割栗石ぐり12の上面にはフィルターシート13を被せ、フィルターシート13の上面に砂利あるいは砂14を被せている。
【0079】
割栗石ぐり12は、敷き詰めた状態でもそれらの間に水の流通が自由な空間を有する。フィルターシート13は、砂利や砂14が割栗石ぐり12の間に入り込むのを防止できる程度の網目粗さを有するが、広い面積を介して開放端部4bから放出された水を低い抵抗で通過させることができる。砂利や砂14は好ましくは遮水水域2の水底のものを使用し、砂利や砂14を被せることによって開放端部4bの埋設部分が他の水底と区別できないようなものを使用する。開放端部4bは、好ましくは孔径3mm〜10mmの吹き出し孔を管壁に多数設けた管からなる。
【0080】
図4の開放端部4bの埋設構造によれば、開放端部4bから放出された清浄水は割栗石ぐり12の間を通り、さらにフィルターシート13と砂利や砂14を通り、遮水水域2に放出される。
【0081】
本実施形態によれば、開放端部4bの周囲は割栗石ぐり12が詰められているので、清浄水の圧力によって開放端部4bの周囲の土が掘削されることがない。また、フィルターシート13は砂利や砂14が割栗石ぐり12の間に入り込むのを防止し、割栗石ぐり12の通水性を長期間にわたって維持することができる。また、開放端部4bの埋設部は砂利や砂14によって覆われているので、埋設部以外の水底部と区別されず、利用者にとって好ましいばかりではなく、海生動物にとっても好ましい環境を提供することができる。
【0082】
なお、上記実施形態では割栗石ぐり12を用いたが、水の流通が可能であり、水の圧力によって掘削されない限りにおいて、蛇篭(細石をネットに詰めたもの)、細石、割石、割栗石を用いることができる。
【0083】
また、フィルターシート13は水底に固定し、上面を露出した状態で設置してもむろんよい。
【0084】
図5は、自立式フェンス6の他の実施形態を示している。図5において、図3と同一の部分には図3と同一の符号を付して示している。
【0085】
図5の実施形態は自立式フェンス6の繋留の方法に関する。
【0086】
図5(a)はブイ6aを水底に錨着するものに関し、図の例ではブイ6aとアンカー10をロープ等によって接続している。この場合、自立式フェンス6の下端は重り6cを有している。
【0087】
図5(b)は、自立式フェンス6のフェンス本体6bの下端縁部を水底に錨着するものに関し、図の例ではフェンス本体6bの下端縁部自体をアンカー10に接続している。
【0088】
なお、複数のブイ6aをつなげた自立式フェンス6において、個々の自立式フェンス6を異なる方法によって繋留してもよいし、一部の自立式フェンス6は下端が水底から浮き上がった状態であり、他の自立式フェンス6は下端が水底との間に隙間を有していないようにしてもよい。
【0089】
図6は、さらに他の自立式フェンス6の実施形態を示している。図6において、図1と同一の部分には図1と同一の符号を付して示している。
【0090】
図6の自立式フェンス6は、複数の自立式フェンス6からなり、垂下式フェンス5に沿ってそれらの自立式フェンス6が千鳥状設置されたものである。
【0091】
本実施形態は、フェンス本体の下端縁部が水底に接している自立式フェンス6用いる場合に特に好ましい。フェンス本体の下端縁部が水底に接している自立式フェンス6用いる場合、水底を這って移動する海生動物の移動を妨げることになるが、本実施形態のように千鳥状に自立式フェンス6を配置することにより、海生動物の移動を容易にすることができる。
【0092】
さらに、このように自立式フェンス6を千鳥状に配置しても、遮水水域2は垂下式フェンス5によって隙間なく囲まれているので、人間が遮水水域2の外部に出ることを防止でき、安全な遮水水域2を提供することができる。
【0093】
次に、築堤方式による本発明の他の実施形態の遮水水域浄化装置について説明する。
【0094】
図7は、築堤方式による本発明の遮水水域浄化装置を上空から見たところを概略示している。
【0095】
図7に示すように、本実施形態の遮水浄化装置15は、遮水水域16を区画形成する遮水堤17と、遮水水域16に清浄水を導入する清浄水供給手段18とを有している。
【0096】
清浄水供給手段18は図1〜図6の清浄水供給手段4と変わらないので、ここでの重複する説明は省略する。
【0097】
図8は、図7に示した矢印B−B方向に見た本実施形態の遮水堤17の横断面を示している。
【0098】
図8に示すように、遮水堤17は石19で築いた堤本体17aと、堤本体17aの少なくとも両側面(図8の例では堤本体17aの両側面と頂面)を覆う護岸ブロック20とを有している。
【0099】
図8の例では、遮水堤17はさらに水(清浄水または海水のいずれでもよい)を放出する放水管21をさらに有している。
【0100】
石19は、堤本体17aを構成した状態で海水が流通可能な間隙を有する大きさと形状のものを使用する。たとえば、平均粒径が10cm〜30cmの角がないれきを使用することができる。また、石の代わりにブロックを使用してもよい。護岸ブロック20も積み上げた状態で海水が流通可能な大きさと形状のものを使用する。図8の例では臼状で下部の角がない護岸ブロックを使用している。また、好ましくは貫通孔を有する護岸ブロック20を使用する。
【0101】
放水管21は、管壁に3mm〜10mmの放水口を有する管とすることができる。放水する水は遮水水域16に導入する清浄水の一部を使用してもよいし、海水を使用してもよい。遮水堤17を流通する水が所定の速度が、たとえば付着生物が付着しにくい速度以上で流通する場合は、放水管21は省略することができる。
【0102】
図8の矢印に示すように、本実施形態によれば、堤本体17aと護岸ブロック20は積み上げた状態で水が流通可能であるので、遮水堤17はある程度遮水性を有するのと同時に流通性も有する。清浄水供給手段18によって遮水水域16内に清浄水を供給することにより、遮水水域16内の清浄水の割合が上昇し、遊泳や磯遊びに適した水質・環境を実現することができる。一方、海水が遮水堤17を通って遮水水域16内に流入し、あるいは遮水水域16外に流出することにより、遮水水域16内の水が一部交換される。また、小さな海生動物や魚類が遮水堤17を通って遮水水域16を自由に出入りすることができるので、遮水水域16内に通常の海岸と変わらない環境を実現することができる。
【0103】
また、本実施形態では、放水管21を用いて遮水堤17内に加圧した清浄水または海水を噴出させることができる。放水管21から放出された水は、石19や護岸ブロック20を洗浄することができる。これにより、石19や護岸ブロック20に付着生物が付着して目詰まりの状態になるのを防止し、長期間遮水堤17の水の流通性を維持することができる。もっとも、前述したように、遮水堤17を流通する水が常に所定の速度を有する場合には、付着生物が付着するのが困難であるので、放水管21を省略した遮水堤17とすることもできる。
【0104】
図9は遮水堤17の変形例を示している。図9において、図8と同一部分には図8と同一の符号を付す。
【0105】
図9に示すように、遮水堤17は基礎部17bを有してもよい。基礎部17bは、コンクリートやレンガによって形作られた強固な構造とするのが好ましい。
【0106】
基礎部17bは、海水による遮水堤17の崩壊を防止するとともに、堤本体17aの工事を簡単にすることができる。
【0107】
ただし、基礎部17bは、海水の流通性を有していないので、図9に示すように、少なくとも水位の変化の高さ範囲、たとえば満潮と干潮の水位の変化の一部に、水の流通性を有する堤本体17aが位置するようにする。
【0108】
これにより、少なくとも満潮時には水が基礎部17bの上縁部より高くなり、堤本体17aの石19の間を通って流通することができる。
【0109】
基礎部17bを有する遮水堤17においても、遮水と遮水水域16の水の交換と海生動物や魚類の交流等の効果を有する。同時に基礎部17bを有する遮水堤17は基礎部17bによって遮水堤17が強固になるという効果を有する。
【0110】
なお、図9の例では、遮水堤17中に放水管を備えていないが、放水管を適宜設けることができる。
【0111】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は遮水フェンスあるいは遮水堤という単純・簡単な構造により、自然の水位の変化によって遮水水域内の水の一部を入れ替えることができ、清浄水の放流量との関係で遮水水域内の清浄水の割合を一定の比率範囲内に維持して遮水領域内の水の汚濁を防止することができる。
【0112】
また、遮水フェンスや遮水堤の構造により、閉鎖性を有する遮水水域に対しても海生動物や魚類の自由な出入りを実現することができる。特に、水底との間に隙間を有する遮水フェンスを有する本発明による遮水水域浄化装置によれば、水底を這って移動する海生動物も自由に遮水水域を出入りでき、遮水水域内で自然な環境を実現することができる。
【0113】
さらに、本発明はコンクリート建造物用いた構造物に比して極めて設置工事が簡単であり、低いコストで設置維持することができる遮水水域浄化装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による遮水水域浄化装置を適用した遮水水域を示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態による遮水水域浄化装置の断面図。
【図3】本発明の一実施形態の遮水フェンスの断面と作用を示した説明図。
【図4】本発明の一実施形態の開放端部の設置構造を示した断面図。
【図5】本発明の他の実施形態の遮水フェンスの断面図。
【図6】本発明の他の実施形態による遮水水域浄化装置を適用した遮水水域を示す平面図。
【図7】本発明の他の実施形態による遮水水域浄化装置を適用した遮水水域を示す平面図。
【図8】本発明の一実施形態の遮水堤の断面図。
【図9】本発明の他の実施形態の遮水堤の断面図。
【符号の説明】
1 遮水水域浄化装置
2 遮水水域
3 遮水フェンス
4 清浄水供給手段
4a 管路
4b 開放端部
5 垂下式フェンス
5a ブイ
5b フェンス本体
5c 重り
6 自立式フェンス
6a ブイ
6b フェンス本体
6c 重り
7 位置決め用ブイ
8 位置決め用ブイ
9 アンカー
10 アンカー
11 水底部
12 割栗石ぐり
13 フィルターシート
14 砂利や砂
15 遮水浄化装置
16 遮水水域
17 遮水堤
17a 堤本体
17b 基礎部
18 清浄水供給手段
19 石
20 護岸ブロック
21 放水管
Claims (15)
- 上端縁部を水面に浮かぶブイに結合させ下端縁部を自重あるいは重りによって垂下させた垂下式フェンスと、上端縁部を通常は水中に位置するブイに結合させ下端縁部を水底あるいは水底から所定距離以内の高さに位置するように固定した自立式フェンスとを有し、遮水水域を区画形成する遮水フェンスと、
清浄水を輸送する管路を有し、前記遮水水域中に前記清浄水を放出する開放端部を有する清浄水供給手段と、
を有することを特徴とする遮水水域浄化装置。 - 前記垂下式フェンスは連続して遮水水域を区画し、
前記自立式フェンスは一定の長さの複数個の自立式フェンスからなり、
前記自立式フェンスは前記垂下式フェンスに沿って少なくとも一部が千鳥状に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の遮水水域浄化装置。 - 前記遮水フェンスは、水位が上昇したときに前記垂下式フェンスの下端縁部が前記自立式フェンスの上端縁部より低く水底より所定距離以内の高さに位置するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の遮水水域浄化装置。
- 前記自立式フェンスは、ブイが水底に錨着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮水水域浄化装置。
- 前記自立式フェンスは、その下端縁部が水底に錨着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遮水水域浄化装置。
- 前記垂下式フェンスのブイは、水底に錨着された位置決め用ブイに連結されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遮水水域浄化装置。
- 前記清浄水供給手段は前記開放端部は一定の長さを有し管壁に多数の放出孔を有する少なくとも1本の管からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遮水水域浄化装置。
- 前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されていることを特徴とする請求項7に記載の遮水水域浄化装置。
- 前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設され、その上にフィルターシートと砂利あるいは砂が被せられていることを特徴とする請求項7に記載の遮水水域浄化装置。
- 水が流通可能な間隙を有するように配置されたブロックまたは石からなる堤本体と、前記堤本体の少なくとも両側面を含む表面を覆う護岸ブロックとを有し、遮水水域を区画形成する遮水堤と、
清浄水を輸送する管路を有し、前記遮水水域中に前記清浄水を放出する開放端部を有する清浄水供給手段と、
を有することを特徴とする遮水水域浄化装置。 - 前記遮水堤は基礎部を有し、前記堤本体は前記基礎部上に築かれ、少なくとも水位の変化の高さ範囲の一部に前記堤本体が位置することを特徴とする請求項10に記載の遮水水域浄化装置。
- 前記遮水堤は、前記堤本体中に清浄水を放出する管をさらに有していることを特徴とする請求項10または11に記載の遮水水域浄化装置。
- 前記清浄水供給手段は前記開放端部は一定の長さを有し管壁に多数の放出孔を有する少なくとも1本の管からなることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の遮水水域浄化装置。
- 前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設されていることを特徴とする請求項13に記載の遮水水域浄化装置。
- 前記清浄水供給手段の前記開放端部は、蛇篭あるいは割石あるいは割栗石あるいは細石の中に埋設され、その上にフィルターシートと砂利あるいは砂が被せられていることを特徴とする請求項13に記載の遮水水域浄化装置。
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