JP2005036254A - フィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤及びフィン材 - Google Patents
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Abstract
【課題】クロムやクロム代替金属を含有せず、しかもクロメート処理と実質的に同等の防食性を示す、アルミニウム材料用のノンクロム被膜型防食剤を提供する。
【解決手段】四元共重合体(A)と、複素環系有機化合物(B)とを含有し、四元共重合体(A)が、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の塩基が防食剤(c)で中和されたものであり、複素環系有機化合物(B)が、1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であることを特徴とするフィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤。
【選択図】なし
【解決手段】四元共重合体(A)と、複素環系有機化合物(B)とを含有し、四元共重合体(A)が、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の塩基が防食剤(c)で中和されたものであり、複素環系有機化合物(B)が、1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であることを特徴とするフィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤および該防食処理剤で処理されてなるフィン材に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムやアルミニウム合金の材料(以下アルミニウム材料という)は、軽量で、加工性、熱伝導性に優れるため、エアコンディショナー、工業用熱交換器などの熱交換器の各部材に広く使用されており、特に熱交換部には、アルミ材料製フィンを使用することが多い。フィンは、(冷)熱媒配管の表面にろう付け材で取り付けられている。
エアコンディショナーを冷房運転すると、大気中の水分がフィン材表面で凝縮して熱交換器のフィン水滴として付着すると通風抵抗の増加、熱交換器の熱交換効率の低下をもたらすため、フィン材の表面に親水性を付与することが行われている。
アルミニウム材料は本来耐蝕性に優れているが、フィン材表面の親水化処理により、フィン表面は常に凝縮水で濡れた状態となる。凝縮水がフィン表面に長期間滞留すると、親水化処理で形成された親水性皮膜を透過した水分によって、フィン材とろう付け材との間で酸素濃淡電池を形成したり、大気中の汚染性分が付着・濃縮されて水和反応が生じたりして金属腐蝕が促進される。この腐蝕生成物はフィン表面に堆積し、熱交換特性を低下させるとともに、冬季の暖房運転時には白い微粉となって温風とともに送風機から排出される。
【0003】
従来、アルミニウム材料の腐食防止のため、クロメート処理が広く行われていた。しかし、クロメート処理部品の被膜に残存する6価クロムが人体に長時間接触すると、クロムアレルギーやクロム潰瘍の原因になるだけでなく、被膜に含まれるクロムに発癌性の疑いがあるとの理由から、クロメート処理品を排除する動きが特にヨーロッパにおいて起こっている。この動向は米国を巻き込み、いずれは日本にも上陸するのは時間の問題と考えられている。
また、クロメート処理から出る排水には、クロムが含まれており、環境汚染のおそれがある。実際、クロメート処理剤を使用している工場では、3価クロムイオン3000〜5000ppm及び6価クロムイオン1000〜3000ppmを含有する有害排水が、月平均約200m3程度排出されているのが通常である。
【0004】
そこで、ノンクロム型化成処理として、アルミニウム材料を化成処理する工程において、ジルコニウムイオン、リン酸イオン、アルミニウムイオン、遊離フッ素イオンを特定量含有し、特定のpHの化成処理液で処理して化成皮膜を形成し、この化成皮膜の上に水性樹脂による親水性皮膜を形成するフィン材の製造方法の提案がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、アルミニウム材料よりなる製品または素材の表面を、その表面張力が特定の値以上になるまで特定温度範囲で加熱した後、水溶性ジルコン化合物等とタンニン物質と水溶性または水分散性有機高分子物質を含有する表面処理液を該アルミニウム材料表面に塗布し、乾燥する表面処理法の提案がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、アクリル酸樹脂とタンニンとを腐食防止に有効な量含み、クロムを含まないアルミニウム用塗料組成物およびこれを用いたアルミニウム表面処理方法の提案もある(例えば、特許文献3参照。)。
なお、腐食の発生や進行速度には、様々な因子が作用する。防食とは、この因子を変化させ、腐蝕を抑制する方向に向かわせることを言う。
金属の防食法には、原則的に下記の4つがある。
1)金属の表面を被覆して腐食の原因となる環境物質を遮断する防食法。
2)腐食の原因となる環境中の腐食性物質を除去するか、腐食反応を起こしにくくさせるような化学物質を加える防食法。
3)陰極(カソード)防食法。
4)陽極(アノード)防食法。
特許文献1、2に記載の方法は2)に属する防食法であり、特許文献3に記載の方法は1)に属する防食法である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−234352号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開昭58−101767号公報(請求項1)
【特許文献3】
特開昭57−135872号公報(請求項1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の処理液にはジルコニウムが含まれており、ジルコニウムは高度の毒性を有している。また、この処理液にはフッ化水素酸等として処理の困難なフッ素イオンが含まれており、この排液処理も環境汚染の点で問題となる。
特許文献2にもジルコンフッ化水素酸の塩が含まれており、上記と同様の問題を有している。
防食性能を発揮させるためには、腐食の原因となる環境物質を遮断することが必要最小限であるにも拘わらず、特許文献3に記載の塗料組成物は、アクリル酸樹脂とタンニンとともに燐酸やフッ化水素酸など配合すると腐食の原因となる無機酸を配合して、pHを酸性側することにより防食効果を妨げている。
更に、防食成分であるタンニン単独では、アルミニウム金属及び合金材料への防食効果は殆ど認められないが、アクリル酸樹脂とタンニンが燐酸またはフッ化水素酸の作用で架橋して皮膜形成を図り、金属の表面を被覆して腐食の原因となる環境物質を遮断するとしているが、アクリル酸樹脂とタンニンとの架橋反応の反応機構については説明がなく、タンニンのアクリル酸樹脂との架橋反応を生じさせると推定される反応基は、フェノ−ル性水酸基が殆どであり、架橋反応性に乏しい。
【0009】
しかし、これまで、上述の方法を含め、クロメート処理と同等の耐食性、アルミニウム材料および親水性皮膜への密着性に優れ、排水による環境問題のない防食剤は知られていない。
このような状況に鑑み、本発明は、クロムやクロム代替金属を含有せず、しかもクロメート処理と実質的に同等の防食性を示す、アルミニウム材料用のノンクロム被膜型防食剤を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のフィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤は、四元共重合体(A)と、複素環系有機化合物(B)とを含有し、四元共重合体(A)が、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の塩基が防食剤(c)で中和されたものであり、複素環系有機化合物(B)が、下記一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であることを特徴とする。
【0011】
【化5】
【0012】
[一般式(1)において、R1、R2は各々独立にHまたは直鎖あるいは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
【0013】
また、本発明のフィン材は、防食処理剤からなる皮膜を内層とし、親水性樹脂からなる皮膜を外層とする積層皮膜をその表面に形成してなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の防食処理剤につき説明する。
本発明において用いられる四元共重合体は、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の塩基が防食剤(c)で中和されたものである。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを指す。
【0015】
本発明において用いられる四元共重合体(a)の構成成分であるグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)が有するグルコピラノシル基は、本発明の最も重要な役割である親水性能と耐汚染性能を発揮する官能基であり、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)のホモポリマーが水に溶解する性質を有していることからも判るように、四元共重合体(a)に高い親水性能を与える。
また、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)は、皮膜自体に耐汚染性能を発揮させる極性の高い物質(即ち、油性の低い性質)であり、一方、フロワーワックス、蚊取り線香、防臭剤及びてんぷら油などの微粒子の汚染物質は、油性の高い物質、(即ち、極性の低い性質)であるため、皮膜にこれらの汚染物質の難付着性を付与する。
また、このグルコピラノシル基は、本発明の四元共重合体(A)が複素環系有機化合物(B)と反応して形成する架橋構造によって、防食性皮膜をアルミニウム材料表面に形成する重要な役割を有する。
【0016】
更に、グルコピラノシル基に存在する多数の水酸基と、多数の酸素原子に存在する電子により、アルミニウム材料表面に形成された皮膜の極性を高める結果、アルミニウム材料表面への密着性を向上させる。
本発明において用いられるグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)における、グルコピラノシルアルキルのアルキル部分の炭素数は2〜3が好ましい。アルキル部分の炭素数を上記上限以下にすることにより、防食剤の親水性を良好なものとすることができる。
グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)の具体例としては、例えば、グルコピラノシルエチル(メタ)アクリレート、グルコピラノシルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、グルコピラノシルエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、これらは、単独又は複数種組み合わせて用いられる。
なお、グルコピラノシル基とは、下記構造の基である。
【0017】
【化6】
【0018】
本発明において用いられる四元共重合体(a)の構成成分であるジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)は、防食剤(c)との塩の形成により、優れた防食性を発揮する。また、求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)との塩を形成しているイオン結合は、四元共重合体塩(A)の親水性を高める役割も非常に大きいものである。
本発明において用いられるジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド(a2)のアルキル基は、互いに独立に炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。
ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド(a2)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等を例示できる。これらの中ではジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミドが好ましく、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミドがより好ましい。
【0019】
本発明において用いられる四元共重合体(a)の構成成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)は、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物(B)と反応する。
これは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)の分子中に有するヒドロキシ基と、複素環系有機化合物(B)の分子中に有する1,3−ジオキサン環の開裂架橋反応によってエーテル結合を生じ、このエ−テル結合を介して、四元共重合体(a)の分子内または分子間と、新たなエ−テル環を形成しながら反応するものである。
このエ−テル環は、エ−テル結合に有する酸素原子の2個の不対電子の効果で、極性の高い強固な皮膜をアルミニウム材料表面に形成させる役割を有し、架橋反応を起こすことにより、アルミニウム合金材料との密着性、機械的強度(強靭性)、可撓性などの特性に優れた塗膜を構成するものとなる。
【0020】
また、この塗膜は、後述の求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)とによって、特異な防食処理性能を有する防食処理剤を形成する第一の成分役割である。
求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)単独ではクロメート処理剤に匹敵するほどの防食性能は得られない。また、上記の四元共重合体(a)の塗膜単独でも同様にクロメート処理剤に匹敵する防食性能は得られない。
しかし、金属の表面を被覆して腐食の原因となる環境物質を遮断させるため、四元共重合体塩(A)を構成するグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレートが有する糖類系及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが有する脂肪族系水酸基と、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物(B)を加熱によって、1,3−ジオキサン環の開裂を生じさせ、両ヒドロキシ基とのエーテル結合を形成させると、四元共重合体塩(A)中の求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)が先ず、アルミニウム材料表面のアルミと強固なキレート結合を生じさせ、その上に、四元共重合体塩(A)と、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物(B)からなる皮膜が、極性が高く、アルミニウム金属表面との密着性が良好で、腐食の原因となる環境物質を遮断する強固な防食性能を有する皮膜で覆うという特異な防食処理剤が得られるのである。
【0021】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレートが好ましい。
【0022】
四元共重合体(a)の代わりに上記単量体(a1)、(a2)及び(a3)のみによって構成された樹脂はガラス転移温度が高すぎるものとなり、アルミニウム合金材への密着性が劣り、更に強靭性及び柔軟性に劣ることによってプレス加工時に割れなどのトラブルの発生要因となる。
そこで、上記四元共重合体(a)の構成成分であるアルキル(メタ)アクリレート(a4)は、本発明の四元共重合体(a)のガラス転移温度を調整させるために用いられるものである。即ち、この単量体(a4)を用いることによって、アルミニウム合金材への密着性、強靭性及び柔軟性の特徴が向上し、塗膜性が高まると共に、形成される皮膜のプレス加工が良好となる。
四元共重合体(a)の構成成分であるアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数を上記上限以下にすることにより、四元共重合体のガラス転移温度を過度に低下させることがないようにすることができる。
このようなアルキル(メタ)アクリレート(a4)の具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n又はi又はt−ブチル(メタ)アクリレート、n又はi−ペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−i−プロピルが好ましい一例であり、これらは単独又は複数種組み合わせて用いられる。
【0023】
本発明において、四元共重合体(a)としては、これを構成する単量体(a1)/(a2)/(a3)/(a4)の比率が、質量比で16〜55/31〜70/2〜8/2〜6であることが好ましく、25〜45/50〜60/5〜7/3〜5であることがより好ましい。
単量体(a1)の比率が、質量比で、16未満であると四元共重合体(a)から形成される皮膜の極性を高める効果が不足し、アルミニウム材料表面との密着性が劣りトラブルの発生要因となる。更に、55を超えると四元共重合体(a)自体のガラス転移温度が高すぎるもととなり、皮膜の強靭性及び柔軟性が劣ることによって、アルミニウム合金材への密着性が劣り、更にプレス加工時に割れなどのトラブルの発生要因となる。
単量体(a2)の比率が、質量比で、31未満であると防食剤(c)の含有量が減少することとなり防食性の不足となって防食性のトラブルの発生要因となる。70を越すと、四元共重合体(a)の親水性が高くなり過ぎてアルミニウム材料への塗布・焼付条件、特に焼付温度が高くなり過ぎて皮膜の着色が生じ製品の外観不良というトラブルの発生要因となる。
【0024】
単量体(a3)の比率が、質量比で、2未満であると複素環系有機化合物(B)と反応し、強固な皮膜を形成させる役割と架橋反応を起こす反応基が不足し、アルミニウム合金材料表面との密着性、機械的強度及び可とう性不足となり、塗膜の性能不足というトラブルの発生要因となる。 8を越すと、四元共重合体(a)自体の極性が減少し、塗膜の密着性の不足や機械的強度の不足等となり、プレス加工時に割れなどのトラブルの発生要因となる。
単量体(a4)の比率が、質量比で、3未満となると、四元共重合体(a)ガラス転移温度の調整不足によって、プレス加工時での成型性トラブルの発生要因となる。6を超えると、ガラス転移温度の調整過度や極性不足を生じ、プレス加工時での成型性トラブルの発生要因となる。その上四元共重合体(a)の親水性能の不足が生じることから皮膜の性能不良というトラブルの発生要因となる。
【0025】
四元共重合体(a)の数平均分子量が8,000〜350,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。
この分子量が8,000未満であると、複素環系有機化合物(B)と架橋反応して形成された皮膜は、アルミニウム材料表面との密着性は良好であるも、機械的強度(強靭性)が不足すると共に、樹脂の分子量から引起される柔軟性や可撓性が不足しプレス加工工程でのトラブルの要因となる。更に、複素環系有機化合物(B)と架橋反応によって生じる架橋密度が過度に高くなり過ぎて、反応吸湿時の膨潤が極端に押さえられ吸湿時に内部圧力が必要以上に高くなる。これにより、本来水蒸気以外の物質を殆ど吸収しなくなるように皮膜を形成されているのが、逆に水蒸気も吸収できなくなって親水性自体も不良となって、親水性不足なるトラブルの要因となる傾向にある。
一方、350,000を超えると、複素環系有機化合物(B)と架橋反応して形成された皮膜は、樹脂の分子量から引起される柔軟性や可とう性が過剰となって、皮膜がプレス加工工程における潤滑性の不足からくるプレス不良なるトラブルの要因となる。
更に、複素環系有機化合物(B)と架橋反応によって生じる架橋密度の不足を招き反応吸湿時の膨潤が押さえにくくなって吸湿時に内部圧力が高くならなくなり、これも逆に水蒸気も吸収できなくなって親水性自体も不良となって、親水性不足なるトラブルの要因なる傾向にある。
【0026】
この四元共重合体(a)は、通常の既知の重合方法で製造することができる。重合方法としては、レドックス重合法が好ましく、重合触媒は特に限定されるものではないが、望ましくは、得られる塗料の防食性を考慮すると、ハロゲン系化合物やイオン、硫酸などの強酸性化合物やイオンが配合されていない触媒が好ましい。特に、過酸化水素水―有機酸系レドックス触媒が良好である。
【0027】
本発明で用いられる求電子基含有アゾール系誘導体(c)は、下記一般式(2)で表される、ベンゾトリアゾール系有機化合物(c1)、
【0028】
【化7】
【0029】
[一般式(2)において、R4 はニトロ基またはハロゲン原子を示し、R5 は水素原子またはメチル基を示す。]、
【0030】
下記一般式(3)で表される、トリアゾールまたはテトラゾール系有機化合物(c2)、
【0031】
【化8】
【0032】
[一般式(3)において、R6 はNまたはC−X(Xは水素原子またはハロゲン原子を示す。)を示し、R7 はニトロ基またはハロゲン原子を示し、R6 がC−Xの場合は、R7 はニトロ基を示し、R8はR6がNの場合はニトロ基を示し、R6がC−Xの場合は水素原子を示す。]、
および下記一般式(4)で表される、イミダゾール系有機化合物(c3)からなる化合物群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0033】
【化9】
【0034】
[一般式(4)において、R9はニトロ基またはハロゲン原子を示す。]
【0035】
アゾール基は、アルミと弱いキレート結合を生じるが、アゾール基を有する複素環に対し求電子基、例えば、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基などを複素環や芳香環に付与すれば、その複素環や芳香環の対応する環の位置にあるアゾール基に有する1及び3の位置の窒素は活性化され、アルミとのキレート結合が強くなる。例えば、ベンゾトリアゾールのN−H結合は、金属イオンと常温で、その塩を生成させることは既知である。更にこの芳香環に求電子基を対応する位置に付与すれば一層この作用は強くなる。例えば求電子基に、塩素基を導入してやれば、芳香環に置換した塩素は電子を吸引し、アゾール分子上の電子の分布に影響を与え、塩素化ベンゾトリアゾールのN−H結合のH原子の電子が放出され、H原子はプロトンH+ となり、このアゾール分子は酸性度を向上させ、NとALとの結合を促進するとともに、N−Alキレートの結合力を強くさせる。
また、アゾール系化合物は、一般的に単独では、塩素などと反応しアゾール系化合物の活性を大きく落とすことが知られている。
そこで、本発明の四元共重合体(a)と、求電子基で置換したアゾール形誘導体(c)からなる四元共重合体塩(A)と、2個以上の1,3−ジオキサン環を有する複素環系有機化合物(B)からなる防食処理剤は求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)が、アルミニウム材料のアルミとキレート結合し、このキレート結合は、四元共重合体と複素環系有機化合物との強固な架橋皮膜によって覆いつくされ、アルミニウム材料の表面を腐食環境から遮断することで防食性を二重に発揮する。
【0036】
この一般式(2)で表されるベンゾトリアゾール系有機化合物(c1)の具体例としては、例えば、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリルトリアゾール、4−または5−または6−または7−クロロベンゾトリアゾール、4−または6−または7−クロロトリルトリアゾール等を挙げることができる。
【0037】
上記一般式(3)で表されるトリまたはテトラアゾール系有機化合物(c2)の具体例としては、例えば、3−クロロ−1,2,4−トリアゾール、5−ニトロ−1H−テトラゾール等が挙げられる。
この一般式(4)で表されるイミダゾール系有機化合物(c3)の具体例としては、例えば、5−クロロイミダゾール、5−ニトロイミダゾール等を挙げることができる。
【0038】
本発明において、複素環系有機化合物(B)は、上記一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であり、該カルボン酸(b)とジオール、トリオール、テトラオール等の多価アルコールからのジエステル、トリエステル、テトラエステル等を例示できる。
【0039】
本発明において、一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)としては、5−メチル−5−オキシカルボニルー1,3−ジオキサン、5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン,2,2−ジメチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、2,2−ジメチル−5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、2−メチル−2−エチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン,2−メチル−2−エチル−5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、2−メチル−2−イソブチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン,2−メチル−2−イソブチル−5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン等を例示できる。
【0040】
本発明において、複素環系有機化合物(B)の分子量が400〜2,000であることが好ましい。複素環系有機化合物(B)の分子量が400以上とすることで、四元共重合体塩(A)と架橋構造が形成された皮膜の架橋密度が適度となり、強靭かつ柔軟な皮膜が得られ、プレス加工時に成型加工不良などのトラブルの発生を抑制することができる。複素環有機化合物(B)は、四元共重合体(A)中のグリコピラノシル基との反応により架橋構造を形成するが、複素環有機化合物(B)の分子量を2,000以下とすると、架橋密度の高い架橋構造を形成し、皮膜の密着性を高度に維持することができ、水による剥離から生じる防食性の不足やプレス加工時の皮膜の剥離によって成型加工不良のトラブルの発生を抑制することができる。更に、架橋密度の高い架橋構造を形成しながら高度の親水性を保持し、水で流出することなく、塗布・焼付け後の加工において優れた潤滑特性を発揮する。
【0041】
この複素環系有機化合物(B)の具体例としては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量200〜600のポリエチレングリコールなどのジオール、ジグリセリンやトリグリセリンなどのポリオールと、上述のカルボン酸(b)のジエステル、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンジヒドロキシエチル化物、2,4,6−sym−トリアジントリオンのトリヒドロキシエチル化物と上述のカルボン酸(b)のジエステル等を例示できる。
これらのうち、好ましいものとしては、ポリエチレングリコール400#―ジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリグリセリンージ[α―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリヒドロキシエチルトリメチロールエタンージ[α―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンージ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、テトラヒドキシエチルペンタエリスリトールージ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、2,4、6―トリヒドロキシエチル−sym−トリアジントリオン−ジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕プロピオネート、及びこれらの各ジオキサンの2位のHが2つメチル基で置換されたもの等を示すことができ、この中では、ポリエチレングリコール400#―ジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンージ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、2,4,6―トリヒドロキシエチルジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕プロパノイルオキシエチル]−sym−トリアジントリオン、及びこれらの各ジオキサンの2位のHが2つメチル基で置換されたものが特に好ましい。
【0042】
本発明においては、四元共重合体(A)と複素環系有機化合物(B)の質量比が100:20〜130であることが好ましく、100:50〜90であることがより好ましい。この質量比をこの範囲内に保つことにより、防食剤として良好な架橋構造を形成することができ、アルミニウム材料表面への密着性、機械的強度(強靭性)、可撓性などの特性に優れた皮膜を形成し防食性が良好となる。
【0043】
本発明の防食処理剤は、その成分中にグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)に由来する成分と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)に由来する成分を含有するので、皮膜形成時において、複素環系有機化合物(B)との反応によって架橋密度の高い架橋構造を形成し、これによって反応吸湿時の膨潤を押さえることにより吸湿により内部圧力が非常に高くなり。これにより水蒸気以外の物質を殆ど吸収しなくなる。グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)に由来する成分は、その化学構造から、更に親水性発揮の役割も果たす。
複素環系有機化合物(B)は、架橋密度の高い架橋構造の形成に寄与すると共に、本発明の防食処理剤により得られる親水性皮膜が水により流失するのを防止する役割も果たす。
従って、本発明の防食処理剤は、高度の親水性を有しながら、水で流出することなく、水蒸気のみを吸着して臭気性分を吸着しない皮膜を与えるという特徴を有する。又、塗布焼き付け後の加工において優れた潤滑特性を発揮する。
【0044】
次に本発明のフィン材につき、説明する。
本発明のフィン材は、アルミニウム材料(すなわち、アルミニウムまたはアルミニウム合金)からなり、上記の防食処理剤からなる皮膜を内層とし、親水性樹脂からなる皮膜を外層とする積層皮膜をその表面に形成してなる。
【0045】
上記の防食処理剤からなる皮膜は、アルミニウム材料表面全面に形成されていることが好ましく、皮膜は、固形分換算で0.05〜0.2g/m2 であることが好ましく、0.1〜0.15g/m2 であることがより好ましい。皮膜厚みを上記下限以上にすることにより、充分な防食性を発揮することができ、上記上限以下にすることにより、フィンとしての伝熱効率を良好に維持することができる。
【0046】
本発明のフィンに用いられる積層皮膜の外層に用いられる親水性樹脂としては、汎用のものを用いることができるが、一般に建築物用塗料において親水性樹脂と呼ばれている樹脂や、これを用いた塗料はフィン用の性能が得られないため使用しないことが好ましい。
フィン用塗料に用いられる親水性樹脂の例としては、カルボキシル基および/または水酸基を含有するビニル単量体の(共)重合体をアルカリ金属などで中和してなる水溶性樹脂などを挙げることができる。また、必要により、これらの樹脂とともに架橋剤を併用することもできる。さらに、水溶性エポキシ樹脂や水溶性ホルマリン系縮合樹脂類も必要に応じて併用できる。
【0047】
上記カルボキシル基および/または水酸基を含有するビニル単量体の(共)重合体の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン・ポリ(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル酸系重合体;、ポリ酢酸ビニル樹脂の部分ケン化物;ポリビニルピロリドン;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物等が挙げられる。これらは、水溶性とならないように架橋性単量体との共重合体とすることが好ましい。
【0048】
水溶性ホルマリン系縮合樹脂の例としては、尿素、メラミン等と、ホルマリン、グリオキザールとの重縮合系樹脂が挙げられる。
【0049】
上記親水性皮膜形成用の親水性樹脂には、親水性樹脂の膜形成に影響を与えない範囲で各種添加剤を加えることができる。その例としては、潤滑剤、防腐剤、防カビ剤、防バクテリア剤、界面活性剤、顔料、染料が挙げられる。
【0050】
親水性皮膜の膜厚は、好ましくは0.5〜1.5g/m2 、より好ましくは0.6〜1g/m2 である。皮膜の膜厚を上記下限以上とすることにより、フィン材の親水持続性および加工性を良好なものとすることができる。
【0051】
本発明のフィン材は、アルミニウム材料からなるフィン材の表面に、四元共重合体(A)と、複素環系有機化合物(B)を水に溶解した水溶液を塗布し、乾燥・焼き付けして防食処理剤からなる架橋皮膜をフィン材表面に形成し、次いでその上に親水性樹脂の水溶液を塗布し、乾燥・焼き付けして親水性皮膜を形成することにより得られる。防食処理剤及び親水性樹脂の塗装方法としては、特に限定されるものではないが、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー法、刷毛塗り法などを例示できる。
本発明のフィン材は、その表面に積層皮膜を形成した後、フィン加工によりフィンを製造することができる。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
(参考例1)〔グルコピラノシルエチル(メタ)アクリレートの製造〕
攪拌器、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた1Lの四ツ口フラスコに、ブドウ糖、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレートを各々1モル投入し、重合禁止剤として、ハイドロキノンを各成分の総量の1%質量部を加えて攪拌しながらフラスコ内液に空気を少量ずつバブリングしながら、105〜110℃で3時間反応させて2−グルコピラノシルエチルアクリレートまたはメタクリレートを得た。
【0053】
(参考例2)〔四元共重合体(a)の製造〕
攪拌器、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えた1Lの五つ口フラスコに、280gのイオン交換水と、表1記載の各成分を表1に記載の量投入し、レドックス助触媒として、L−アスコルビン酸を各成分総量の0.005%質量部を加えて攪拌しながらフラスコ内を窒素置換し、窒素を少量ずつ流しながら、滴下ロートから重合触媒として35%過酸化水素水を各成分総量の0.1%質量部滴下し30〜40℃で14時間反応をさせて、樹脂濃度が20質量%の四元共重合体(a01)〜(a10)、及び三元共重合体(a11)〜(a14)を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
(但し、表中のGEAはグルコノピラノシルエチルアクリレ−ト、GEMAはグルコノピラノシルエチルメタクリレ−ト、DMMAは、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルDM)、DMADはジメチルアミノエチルアクリルアミド(コウジン社製)、HEAは2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト(大阪有機工業社製)、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルHO)、DHPAは2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレ−ト(日本油脂社製)、MMAはメチルメタクリレ−ト(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルM)、及びMPMAはイソプロピルメタクリレ−ト(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルIP)を示す。)
【0056】
(参考例3)〔四元共重合体(A)の製造〕
参考例2で得た四元共重合体(a01)〜(a10)、三元共重合体(a11)〜(a14)を表2に示す防食剤(c01)〜(c03)を用いて中和し、四元共重合体(A01)〜(A15)、三元共重合体(A16)〜(A19)を得た。また、四元共重合体(a01)の燐酸塩も、比較のため作成した。それらのpH及び粘度を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(但し、表中の5CBは5−クロルベンゾトリアゾ−ル、5NBは5−ニトロベンゾトリアゾ−ル、4CTは4−クロル−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、5CTは5−クロル−4−メチルベンゾトリアゾ−ル、4NTは、4−ニトロ−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、5NTは5−ニトロ−4−メチルベンゾトリアゾ−ル、3CTAは3−クロル−1H−トリアゾ−ル、5NTAは5−ニトロ−1H−テトラゾ−ル、5CIDは5−クロルインダゾ−ル及び5NIDは5−ニトロインダゾ−ルを示す。)
【0059】
(参考例4)[5−クロルベンゾトリアゾールの製造]
撹拌器及び温度計を付した1000ml容のビーカーに、2,3−ジアミノクロルベンゼン142.5g(1モル)を氷酢酸60g(1モル)と水500mlの液に溶解し、更に、氷酢酸90g(1.5モル)を加えた。この溶液を0℃に冷却し、よくかきまぜながら、30%亜硝酸ソーダ水溶液230g(1モル)を加えた。この間、温度は5℃以下に保った。ジアゾ化中、液はコンゴーレッド試験紙が酸性を示すpHに維持した。亜硝酸ソーダ水溶液はヨウ化カリデンプン紙試験で5分間青色を呈して亜硝酸の過剰が認められるまでを加え、直ちに水を加えて含水アルコールから再結晶して、5−クロルベンゾトリアゾールを得た。
【0060】
(参考例5〜9)
同様にして、2,3−ジアミノニトロベンゼンからは5−ニトロベンゾトリアゾール(参考例5)、2−クロル−3,4−ジアミノトルエンからは4−クロル−5−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例6)、2,3−ジアミノ−6−クロルトルエンからは5−クロル−4−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例7)、2−ニトロ−3,4−ジアミノトルエンからは4−ニトロ−5−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例8)、2,3−ジアミノ−6−ニトロトルエンからは5−ニトロ−4−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例9)を得た。
【0061】
(参考例10)[3−クロロ−1,2,4−トリアゾ−ルの製造]
3−アミノ−1,2,4−トリアゾールと亜硝酸ソーダ水溶液から、ジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩に濃塩酸を加え反応させ、燐酸水溶液でジアゾニウム化合物を分解させた。得られた反応生成物をカセイソーダ水溶液でpH2.5にした後、この溶液をエバポレーターで濃縮して得られた残査を熱酢酸エチルで抽出した。抽出液の酢酸エチルを濃縮した後、再度酢酸エチルで再結晶して、淡黄色針状結晶の3−クロル−1,2,4−トリアゾール)を得た。
【0062】
(参考例11)[5−ニトロ−テトラゾ−ルの製造]
5−アミノテトラゾール・1水和物と亜硝酸ソーダ水溶液から、ジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩に亜硝酸を加えて反応させ、燐酸水溶液でジアゾニウム化合物を分解させた。得られた反応生成物をカセイソーダ水溶液でpH2.5にしたのち、この溶液をエバポレーターで濃縮して得られた残査をエチルアルコール−アセトン混合溶媒で抽出して、5−ニトロ−テトラゾールのナトリウム塩を得た。これを銅塩として分離した後、硫化水素で処理し、酢酸エチルで抽出して、淡黄色針状結晶の5−ニトロ−テトラゾールを得た。
【0063】
(参考例12)[5−クロルインダゾ−ルの製造]
2−アミノ−5−クロルトルエンの酢酸溶液と、亜硝酸ソーダ水溶液とからジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩をを水から精製し乾燥させて、粗製の5−クロルインダゾールを得た。これをメタノールから再結晶して、淡白色針状結晶の5−クロルインダゾールを得た。
【0064】
(参考例13)[5−ニトロインダゾ−ルの製造]
2−アミノ−5−ニトロトルエンの酢酸溶液と、亜硝酸ソーダ水溶液とからジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩をを水から精製し乾燥させて、粗製の5−ニトロインダゾールを得た。これをメタノールから再結晶して、微黄色針状結晶の5−ニトロインダゾ−ルを得た。
【0065】
(参考例14)[1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸の製造]
α、α−ジメチロールプロピオン酸1モルとα−パラオキシメチレン1.35モル又はアセトン(試薬1級、和光純薬社製)1.8モル、p−トルエンスルホン酸12gを触媒として8時間反応させて、α−〔5−(1,3−ジオキサニル)〕プロピオン酸(b01)、α−〔2,2−ジメチル−5−(1,3−ジオキサニル)〕プロピオン酸(b02)を得た。
又、α,α−ジメチロールプロピオン酸の代わりに同モルのα,α−ジメチロールブタン酸を用いて前記と同様にして、ともに淡黄色粘性液体のα−〔5−(1,3−ジオキサニル)〕ブタン酸(b03)、α−〔2,2−ジメチル−5−(1,3−ジオキサニル)〕ブタン酸(b04)を得た。
【0066】
(参考例15)[1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸からの複素環系有機化合物(B)の製造]
表3に記載の各成分を用い、エステル化反応を行い、複素環系有機化合物(B01)〜(B10)の20%水溶液を得た。
【0067】
【表3】
【0068】
(但し、表中のMOCは5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、DOCは2,2−ジメチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、TEGはトリエチレングリコール(日本乳化剤社製)、DHGはジヒドロキシエチルグリセリルエーテル、THPはトリヒドロキシエチルトリメチロ−ルプロパニルエーテル、PEGはポリエチレングリコ−ル400#(ライオン社製)、THAは2,4,6−トリヒドロキシエチル−sym−トリアジントリオンを示す。
【0069】
(参考例16)[ジヒドロキシエチルグリセリルエーテルの製造]
触媒として水酸化カリウムを使用し、オートクレーブ中で140〜150℃で、グリセリン1モルにエチレンオキサイド2モルを付加させて、殆ど定量的に無色液状のジヒドロキシエチルグリセリルエーテルを得た。
【0070】
(参考例17)[トリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンの製造]
(参考例16)と同様にして、トリメチロールプロパン1モルとエチレンオキサイド3モルから、無色液状のトリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンを得た。
【0071】
(参考例18)[2,4,6―トリヒドロキシエチル―sym−トリアジントリオンの製造]
(参考例16)と同様にして、トリアジントリオン1モルとエチレンオキサイド3モルから、淡黄色液状の2,4,6−トリヒドロキシエチル−sym−トリアジントリオンを得た。
【0072】
(実施例1〜27、比較例1〜7)
表2に示す四元共重合体(A01)〜(A15)、三元共重合体(A16)〜(A19)、四元共重合体(a01)の燐酸塩(A20)、5−クロル−ベンゾトリアゾール及び5−ニトロベンゾトリアゾール各々のモノエタノールアミン塩(5−CTZおよび5−NTZ)と、表3に示す複素環系有機化合物(B01)〜(B08)の20%水溶液と、イオン交換水とを表4に記載の配合で混合して10%濃度の防食処理剤を得た。
これらの防食処理剤をそれぞれアルミニウム合金材の表面に固形分塗布量が0.2g/m2 となるように塗布し、250℃、30秒で乾燥・焼き付けた。次いで、表4、表5に記載の親水性樹脂の10質量%水溶液を固形分塗布量が1g/m2となるように塗布し、250℃、30秒で乾燥・焼き付けし、このアルミ合金材からドローレスプレス加工でフィンを製造し、熱交換器に組み込んだ。
このフィン表面の水濡性(親水性接触角)、塗膜の密着性、潤滑性、耐汚染性及びプレス加工性について評価した。その結果を表6、表7に示す。
実施例1〜27で得られた被膜からは有害物質にあたるものは検出されなかった。また、各実施例で塗布用に作成した塗料で、余った分の廃棄処理においても有害物質排出の問題は生じなかった。
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
(但し、表中の「5CTZ」及び「5NTZ」は5−クロル−ベンゾトリアゾール及び5−ニトロベンゾトリアゾール各々のモノエタノールアミン塩20%水溶液を、更に「A01P」はA01の燐酸塩を示す。)
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
なお、評価及びその基準を以下に示す。
*親水性接触角A:試料を240時間水道流水に浸漬した後、水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
*親水性接触角B:試料を240時間蒸留水中に浸漬した後、水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
*親水性接触角C:試料を揮発性プレス油(RF−190)に60秒間浸漬した後、150℃で3分間熱処理したものの水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
*親水性接触角D:試料を水道流水に8時間浸漬した後、80℃のオーブンで16時間乾燥する工程を14回繰り返し行い、その後、水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
【0079】
*塗膜の密着性:試料表面に揮発性プレス油を塗布後、トリクレンで脱脂した後、JIS H4001に準拠した碁盤目試験を行った。
○;剥離全く無し、△;一部は剥離有り、×;全面的に剥離
*潤滑性;試料表面に揮発性プレス油を塗布し、バウデン式摩擦試験器で表面の動摩擦係数を測定した。
○;動摩擦係数0.1未満、×;動摩擦係数0.1以上
*塩水噴霧試験:試料をJISZ2371に準拠した塩水噴霧試験を行った。
○;白錆が全く無し、△;一部白錆有り、×;全面に白錆有り
*湿潤試験:試料をJISH4001に準拠した湿潤試験を行った。
○;白錆が全く無し、△;一部白錆有り、×;全面に白錆有り。
*プレス加工性 ;成型品の良・不良具合と金型への焼付を観察した。
○;製品不良率5%以下であり、金型への焼付無し
△;製品不良率5を越え、15%未満であり、金型への焼付無し
×;製品不良率15%以上、又は金型への焼付けが発生したもの
【0080】
以上から明らかなように、本発明の塗料組成物は優れた親水性、塗膜密着性を示し、熱交換器を稼動させた場合にも、汚染性物質の付着による親水性の低下もなく、優れた潤滑性、加工性を示すことがわかる。これはクロメート処理とほぼ同等の耐食性を有していることを示す。
これに対し、本発明の範囲から外れるものは、各比較例に示すように、親水性や耐汚染性が不良であり、配合によっては、密着性も不良となることがわかる。
先に述べたように、クロメート処理では排水など、環境に悪影響を与えるのに対し、各実施例ではいずれも環境に悪影響を与えるものはなかった。
【0081】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明になる塗料組成物は水濡性に富み、従って水滴が付着しても、水滴は拡がり、塗膜としたときに通風抵抗を高めることはない。
また、塗膜の密着性が良いので耐久性に富み、このことは水濡れ性の耐久性にも富むことにつながる。
また、四元共重合体が防食剤(c)で中和されているので、防食剤(c)がキレート結合等でアルミニウム表面に結合し、腐食性物質の侵入を遮断するのでクロメート処理と同等の耐食性を示す。
また、汚染性物質の付着による熱交換器の熱交換効率の低下が無い。
また、クロムやその代替金属を使用していないので、排水による環境汚染の心配がない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤および該防食処理剤で処理されてなるフィン材に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムやアルミニウム合金の材料(以下アルミニウム材料という)は、軽量で、加工性、熱伝導性に優れるため、エアコンディショナー、工業用熱交換器などの熱交換器の各部材に広く使用されており、特に熱交換部には、アルミ材料製フィンを使用することが多い。フィンは、(冷)熱媒配管の表面にろう付け材で取り付けられている。
エアコンディショナーを冷房運転すると、大気中の水分がフィン材表面で凝縮して熱交換器のフィン水滴として付着すると通風抵抗の増加、熱交換器の熱交換効率の低下をもたらすため、フィン材の表面に親水性を付与することが行われている。
アルミニウム材料は本来耐蝕性に優れているが、フィン材表面の親水化処理により、フィン表面は常に凝縮水で濡れた状態となる。凝縮水がフィン表面に長期間滞留すると、親水化処理で形成された親水性皮膜を透過した水分によって、フィン材とろう付け材との間で酸素濃淡電池を形成したり、大気中の汚染性分が付着・濃縮されて水和反応が生じたりして金属腐蝕が促進される。この腐蝕生成物はフィン表面に堆積し、熱交換特性を低下させるとともに、冬季の暖房運転時には白い微粉となって温風とともに送風機から排出される。
【0003】
従来、アルミニウム材料の腐食防止のため、クロメート処理が広く行われていた。しかし、クロメート処理部品の被膜に残存する6価クロムが人体に長時間接触すると、クロムアレルギーやクロム潰瘍の原因になるだけでなく、被膜に含まれるクロムに発癌性の疑いがあるとの理由から、クロメート処理品を排除する動きが特にヨーロッパにおいて起こっている。この動向は米国を巻き込み、いずれは日本にも上陸するのは時間の問題と考えられている。
また、クロメート処理から出る排水には、クロムが含まれており、環境汚染のおそれがある。実際、クロメート処理剤を使用している工場では、3価クロムイオン3000〜5000ppm及び6価クロムイオン1000〜3000ppmを含有する有害排水が、月平均約200m3程度排出されているのが通常である。
【0004】
そこで、ノンクロム型化成処理として、アルミニウム材料を化成処理する工程において、ジルコニウムイオン、リン酸イオン、アルミニウムイオン、遊離フッ素イオンを特定量含有し、特定のpHの化成処理液で処理して化成皮膜を形成し、この化成皮膜の上に水性樹脂による親水性皮膜を形成するフィン材の製造方法の提案がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、アルミニウム材料よりなる製品または素材の表面を、その表面張力が特定の値以上になるまで特定温度範囲で加熱した後、水溶性ジルコン化合物等とタンニン物質と水溶性または水分散性有機高分子物質を含有する表面処理液を該アルミニウム材料表面に塗布し、乾燥する表面処理法の提案がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、アクリル酸樹脂とタンニンとを腐食防止に有効な量含み、クロムを含まないアルミニウム用塗料組成物およびこれを用いたアルミニウム表面処理方法の提案もある(例えば、特許文献3参照。)。
なお、腐食の発生や進行速度には、様々な因子が作用する。防食とは、この因子を変化させ、腐蝕を抑制する方向に向かわせることを言う。
金属の防食法には、原則的に下記の4つがある。
1)金属の表面を被覆して腐食の原因となる環境物質を遮断する防食法。
2)腐食の原因となる環境中の腐食性物質を除去するか、腐食反応を起こしにくくさせるような化学物質を加える防食法。
3)陰極(カソード)防食法。
4)陽極(アノード)防食法。
特許文献1、2に記載の方法は2)に属する防食法であり、特許文献3に記載の方法は1)に属する防食法である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−234352号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開昭58−101767号公報(請求項1)
【特許文献3】
特開昭57−135872号公報(請求項1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の処理液にはジルコニウムが含まれており、ジルコニウムは高度の毒性を有している。また、この処理液にはフッ化水素酸等として処理の困難なフッ素イオンが含まれており、この排液処理も環境汚染の点で問題となる。
特許文献2にもジルコンフッ化水素酸の塩が含まれており、上記と同様の問題を有している。
防食性能を発揮させるためには、腐食の原因となる環境物質を遮断することが必要最小限であるにも拘わらず、特許文献3に記載の塗料組成物は、アクリル酸樹脂とタンニンとともに燐酸やフッ化水素酸など配合すると腐食の原因となる無機酸を配合して、pHを酸性側することにより防食効果を妨げている。
更に、防食成分であるタンニン単独では、アルミニウム金属及び合金材料への防食効果は殆ど認められないが、アクリル酸樹脂とタンニンが燐酸またはフッ化水素酸の作用で架橋して皮膜形成を図り、金属の表面を被覆して腐食の原因となる環境物質を遮断するとしているが、アクリル酸樹脂とタンニンとの架橋反応の反応機構については説明がなく、タンニンのアクリル酸樹脂との架橋反応を生じさせると推定される反応基は、フェノ−ル性水酸基が殆どであり、架橋反応性に乏しい。
【0009】
しかし、これまで、上述の方法を含め、クロメート処理と同等の耐食性、アルミニウム材料および親水性皮膜への密着性に優れ、排水による環境問題のない防食剤は知られていない。
このような状況に鑑み、本発明は、クロムやクロム代替金属を含有せず、しかもクロメート処理と実質的に同等の防食性を示す、アルミニウム材料用のノンクロム被膜型防食剤を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のフィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤は、四元共重合体(A)と、複素環系有機化合物(B)とを含有し、四元共重合体(A)が、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の塩基が防食剤(c)で中和されたものであり、複素環系有機化合物(B)が、下記一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であることを特徴とする。
【0011】
【化5】
【0012】
[一般式(1)において、R1、R2は各々独立にHまたは直鎖あるいは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
【0013】
また、本発明のフィン材は、防食処理剤からなる皮膜を内層とし、親水性樹脂からなる皮膜を外層とする積層皮膜をその表面に形成してなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の防食処理剤につき説明する。
本発明において用いられる四元共重合体は、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の塩基が防食剤(c)で中和されたものである。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを指す。
【0015】
本発明において用いられる四元共重合体(a)の構成成分であるグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)が有するグルコピラノシル基は、本発明の最も重要な役割である親水性能と耐汚染性能を発揮する官能基であり、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)のホモポリマーが水に溶解する性質を有していることからも判るように、四元共重合体(a)に高い親水性能を与える。
また、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)は、皮膜自体に耐汚染性能を発揮させる極性の高い物質(即ち、油性の低い性質)であり、一方、フロワーワックス、蚊取り線香、防臭剤及びてんぷら油などの微粒子の汚染物質は、油性の高い物質、(即ち、極性の低い性質)であるため、皮膜にこれらの汚染物質の難付着性を付与する。
また、このグルコピラノシル基は、本発明の四元共重合体(A)が複素環系有機化合物(B)と反応して形成する架橋構造によって、防食性皮膜をアルミニウム材料表面に形成する重要な役割を有する。
【0016】
更に、グルコピラノシル基に存在する多数の水酸基と、多数の酸素原子に存在する電子により、アルミニウム材料表面に形成された皮膜の極性を高める結果、アルミニウム材料表面への密着性を向上させる。
本発明において用いられるグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)における、グルコピラノシルアルキルのアルキル部分の炭素数は2〜3が好ましい。アルキル部分の炭素数を上記上限以下にすることにより、防食剤の親水性を良好なものとすることができる。
グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)の具体例としては、例えば、グルコピラノシルエチル(メタ)アクリレート、グルコピラノシルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、グルコピラノシルエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、これらは、単独又は複数種組み合わせて用いられる。
なお、グルコピラノシル基とは、下記構造の基である。
【0017】
【化6】
【0018】
本発明において用いられる四元共重合体(a)の構成成分であるジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)は、防食剤(c)との塩の形成により、優れた防食性を発揮する。また、求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)との塩を形成しているイオン結合は、四元共重合体塩(A)の親水性を高める役割も非常に大きいものである。
本発明において用いられるジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド(a2)のアルキル基は、互いに独立に炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。
ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド(a2)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等を例示できる。これらの中ではジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミドが好ましく、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミドがより好ましい。
【0019】
本発明において用いられる四元共重合体(a)の構成成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)は、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物(B)と反応する。
これは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)の分子中に有するヒドロキシ基と、複素環系有機化合物(B)の分子中に有する1,3−ジオキサン環の開裂架橋反応によってエーテル結合を生じ、このエ−テル結合を介して、四元共重合体(a)の分子内または分子間と、新たなエ−テル環を形成しながら反応するものである。
このエ−テル環は、エ−テル結合に有する酸素原子の2個の不対電子の効果で、極性の高い強固な皮膜をアルミニウム材料表面に形成させる役割を有し、架橋反応を起こすことにより、アルミニウム合金材料との密着性、機械的強度(強靭性)、可撓性などの特性に優れた塗膜を構成するものとなる。
【0020】
また、この塗膜は、後述の求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)とによって、特異な防食処理性能を有する防食処理剤を形成する第一の成分役割である。
求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)単独ではクロメート処理剤に匹敵するほどの防食性能は得られない。また、上記の四元共重合体(a)の塗膜単独でも同様にクロメート処理剤に匹敵する防食性能は得られない。
しかし、金属の表面を被覆して腐食の原因となる環境物質を遮断させるため、四元共重合体塩(A)を構成するグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレートが有する糖類系及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが有する脂肪族系水酸基と、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物(B)を加熱によって、1,3−ジオキサン環の開裂を生じさせ、両ヒドロキシ基とのエーテル結合を形成させると、四元共重合体塩(A)中の求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)が先ず、アルミニウム材料表面のアルミと強固なキレート結合を生じさせ、その上に、四元共重合体塩(A)と、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物(B)からなる皮膜が、極性が高く、アルミニウム金属表面との密着性が良好で、腐食の原因となる環境物質を遮断する強固な防食性能を有する皮膜で覆うという特異な防食処理剤が得られるのである。
【0021】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレートが好ましい。
【0022】
四元共重合体(a)の代わりに上記単量体(a1)、(a2)及び(a3)のみによって構成された樹脂はガラス転移温度が高すぎるものとなり、アルミニウム合金材への密着性が劣り、更に強靭性及び柔軟性に劣ることによってプレス加工時に割れなどのトラブルの発生要因となる。
そこで、上記四元共重合体(a)の構成成分であるアルキル(メタ)アクリレート(a4)は、本発明の四元共重合体(a)のガラス転移温度を調整させるために用いられるものである。即ち、この単量体(a4)を用いることによって、アルミニウム合金材への密着性、強靭性及び柔軟性の特徴が向上し、塗膜性が高まると共に、形成される皮膜のプレス加工が良好となる。
四元共重合体(a)の構成成分であるアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数を上記上限以下にすることにより、四元共重合体のガラス転移温度を過度に低下させることがないようにすることができる。
このようなアルキル(メタ)アクリレート(a4)の具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n又はi−プロピル(メタ)アクリレート、n又はi又はt−ブチル(メタ)アクリレート、n又はi−ペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−i−プロピルが好ましい一例であり、これらは単独又は複数種組み合わせて用いられる。
【0023】
本発明において、四元共重合体(a)としては、これを構成する単量体(a1)/(a2)/(a3)/(a4)の比率が、質量比で16〜55/31〜70/2〜8/2〜6であることが好ましく、25〜45/50〜60/5〜7/3〜5であることがより好ましい。
単量体(a1)の比率が、質量比で、16未満であると四元共重合体(a)から形成される皮膜の極性を高める効果が不足し、アルミニウム材料表面との密着性が劣りトラブルの発生要因となる。更に、55を超えると四元共重合体(a)自体のガラス転移温度が高すぎるもととなり、皮膜の強靭性及び柔軟性が劣ることによって、アルミニウム合金材への密着性が劣り、更にプレス加工時に割れなどのトラブルの発生要因となる。
単量体(a2)の比率が、質量比で、31未満であると防食剤(c)の含有量が減少することとなり防食性の不足となって防食性のトラブルの発生要因となる。70を越すと、四元共重合体(a)の親水性が高くなり過ぎてアルミニウム材料への塗布・焼付条件、特に焼付温度が高くなり過ぎて皮膜の着色が生じ製品の外観不良というトラブルの発生要因となる。
【0024】
単量体(a3)の比率が、質量比で、2未満であると複素環系有機化合物(B)と反応し、強固な皮膜を形成させる役割と架橋反応を起こす反応基が不足し、アルミニウム合金材料表面との密着性、機械的強度及び可とう性不足となり、塗膜の性能不足というトラブルの発生要因となる。 8を越すと、四元共重合体(a)自体の極性が減少し、塗膜の密着性の不足や機械的強度の不足等となり、プレス加工時に割れなどのトラブルの発生要因となる。
単量体(a4)の比率が、質量比で、3未満となると、四元共重合体(a)ガラス転移温度の調整不足によって、プレス加工時での成型性トラブルの発生要因となる。6を超えると、ガラス転移温度の調整過度や極性不足を生じ、プレス加工時での成型性トラブルの発生要因となる。その上四元共重合体(a)の親水性能の不足が生じることから皮膜の性能不良というトラブルの発生要因となる。
【0025】
四元共重合体(a)の数平均分子量が8,000〜350,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。
この分子量が8,000未満であると、複素環系有機化合物(B)と架橋反応して形成された皮膜は、アルミニウム材料表面との密着性は良好であるも、機械的強度(強靭性)が不足すると共に、樹脂の分子量から引起される柔軟性や可撓性が不足しプレス加工工程でのトラブルの要因となる。更に、複素環系有機化合物(B)と架橋反応によって生じる架橋密度が過度に高くなり過ぎて、反応吸湿時の膨潤が極端に押さえられ吸湿時に内部圧力が必要以上に高くなる。これにより、本来水蒸気以外の物質を殆ど吸収しなくなるように皮膜を形成されているのが、逆に水蒸気も吸収できなくなって親水性自体も不良となって、親水性不足なるトラブルの要因となる傾向にある。
一方、350,000を超えると、複素環系有機化合物(B)と架橋反応して形成された皮膜は、樹脂の分子量から引起される柔軟性や可とう性が過剰となって、皮膜がプレス加工工程における潤滑性の不足からくるプレス不良なるトラブルの要因となる。
更に、複素環系有機化合物(B)と架橋反応によって生じる架橋密度の不足を招き反応吸湿時の膨潤が押さえにくくなって吸湿時に内部圧力が高くならなくなり、これも逆に水蒸気も吸収できなくなって親水性自体も不良となって、親水性不足なるトラブルの要因なる傾向にある。
【0026】
この四元共重合体(a)は、通常の既知の重合方法で製造することができる。重合方法としては、レドックス重合法が好ましく、重合触媒は特に限定されるものではないが、望ましくは、得られる塗料の防食性を考慮すると、ハロゲン系化合物やイオン、硫酸などの強酸性化合物やイオンが配合されていない触媒が好ましい。特に、過酸化水素水―有機酸系レドックス触媒が良好である。
【0027】
本発明で用いられる求電子基含有アゾール系誘導体(c)は、下記一般式(2)で表される、ベンゾトリアゾール系有機化合物(c1)、
【0028】
【化7】
【0029】
[一般式(2)において、R4 はニトロ基またはハロゲン原子を示し、R5 は水素原子またはメチル基を示す。]、
【0030】
下記一般式(3)で表される、トリアゾールまたはテトラゾール系有機化合物(c2)、
【0031】
【化8】
【0032】
[一般式(3)において、R6 はNまたはC−X(Xは水素原子またはハロゲン原子を示す。)を示し、R7 はニトロ基またはハロゲン原子を示し、R6 がC−Xの場合は、R7 はニトロ基を示し、R8はR6がNの場合はニトロ基を示し、R6がC−Xの場合は水素原子を示す。]、
および下記一般式(4)で表される、イミダゾール系有機化合物(c3)からなる化合物群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0033】
【化9】
【0034】
[一般式(4)において、R9はニトロ基またはハロゲン原子を示す。]
【0035】
アゾール基は、アルミと弱いキレート結合を生じるが、アゾール基を有する複素環に対し求電子基、例えば、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン酸基などを複素環や芳香環に付与すれば、その複素環や芳香環の対応する環の位置にあるアゾール基に有する1及び3の位置の窒素は活性化され、アルミとのキレート結合が強くなる。例えば、ベンゾトリアゾールのN−H結合は、金属イオンと常温で、その塩を生成させることは既知である。更にこの芳香環に求電子基を対応する位置に付与すれば一層この作用は強くなる。例えば求電子基に、塩素基を導入してやれば、芳香環に置換した塩素は電子を吸引し、アゾール分子上の電子の分布に影響を与え、塩素化ベンゾトリアゾールのN−H結合のH原子の電子が放出され、H原子はプロトンH+ となり、このアゾール分子は酸性度を向上させ、NとALとの結合を促進するとともに、N−Alキレートの結合力を強くさせる。
また、アゾール系化合物は、一般的に単独では、塩素などと反応しアゾール系化合物の活性を大きく落とすことが知られている。
そこで、本発明の四元共重合体(a)と、求電子基で置換したアゾール形誘導体(c)からなる四元共重合体塩(A)と、2個以上の1,3−ジオキサン環を有する複素環系有機化合物(B)からなる防食処理剤は求電子基で置換したアゾール系誘導体(c)が、アルミニウム材料のアルミとキレート結合し、このキレート結合は、四元共重合体と複素環系有機化合物との強固な架橋皮膜によって覆いつくされ、アルミニウム材料の表面を腐食環境から遮断することで防食性を二重に発揮する。
【0036】
この一般式(2)で表されるベンゾトリアゾール系有機化合物(c1)の具体例としては、例えば、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリルトリアゾール、4−または5−または6−または7−クロロベンゾトリアゾール、4−または6−または7−クロロトリルトリアゾール等を挙げることができる。
【0037】
上記一般式(3)で表されるトリまたはテトラアゾール系有機化合物(c2)の具体例としては、例えば、3−クロロ−1,2,4−トリアゾール、5−ニトロ−1H−テトラゾール等が挙げられる。
この一般式(4)で表されるイミダゾール系有機化合物(c3)の具体例としては、例えば、5−クロロイミダゾール、5−ニトロイミダゾール等を挙げることができる。
【0038】
本発明において、複素環系有機化合物(B)は、上記一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であり、該カルボン酸(b)とジオール、トリオール、テトラオール等の多価アルコールからのジエステル、トリエステル、テトラエステル等を例示できる。
【0039】
本発明において、一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)としては、5−メチル−5−オキシカルボニルー1,3−ジオキサン、5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン,2,2−ジメチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、2,2−ジメチル−5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、2−メチル−2−エチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン,2−メチル−2−エチル−5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、2−メチル−2−イソブチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン,2−メチル−2−イソブチル−5−エチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン等を例示できる。
【0040】
本発明において、複素環系有機化合物(B)の分子量が400〜2,000であることが好ましい。複素環系有機化合物(B)の分子量が400以上とすることで、四元共重合体塩(A)と架橋構造が形成された皮膜の架橋密度が適度となり、強靭かつ柔軟な皮膜が得られ、プレス加工時に成型加工不良などのトラブルの発生を抑制することができる。複素環有機化合物(B)は、四元共重合体(A)中のグリコピラノシル基との反応により架橋構造を形成するが、複素環有機化合物(B)の分子量を2,000以下とすると、架橋密度の高い架橋構造を形成し、皮膜の密着性を高度に維持することができ、水による剥離から生じる防食性の不足やプレス加工時の皮膜の剥離によって成型加工不良のトラブルの発生を抑制することができる。更に、架橋密度の高い架橋構造を形成しながら高度の親水性を保持し、水で流出することなく、塗布・焼付け後の加工において優れた潤滑特性を発揮する。
【0041】
この複素環系有機化合物(B)の具体例としては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量200〜600のポリエチレングリコールなどのジオール、ジグリセリンやトリグリセリンなどのポリオールと、上述のカルボン酸(b)のジエステル、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンジヒドロキシエチル化物、2,4,6−sym−トリアジントリオンのトリヒドロキシエチル化物と上述のカルボン酸(b)のジエステル等を例示できる。
これらのうち、好ましいものとしては、ポリエチレングリコール400#―ジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリグリセリンージ[α―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリヒドロキシエチルトリメチロールエタンージ[α―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンージ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、テトラヒドキシエチルペンタエリスリトールージ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、2,4、6―トリヒドロキシエチル−sym−トリアジントリオン−ジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕プロピオネート、及びこれらの各ジオキサンの2位のHが2つメチル基で置換されたもの等を示すことができ、この中では、ポリエチレングリコール400#―ジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、トリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンージ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕]プロピオネート、2,4,6―トリヒドロキシエチルジ[α―〔5―(1,3−ジオキサニル)〕プロパノイルオキシエチル]−sym−トリアジントリオン、及びこれらの各ジオキサンの2位のHが2つメチル基で置換されたものが特に好ましい。
【0042】
本発明においては、四元共重合体(A)と複素環系有機化合物(B)の質量比が100:20〜130であることが好ましく、100:50〜90であることがより好ましい。この質量比をこの範囲内に保つことにより、防食剤として良好な架橋構造を形成することができ、アルミニウム材料表面への密着性、機械的強度(強靭性)、可撓性などの特性に優れた皮膜を形成し防食性が良好となる。
【0043】
本発明の防食処理剤は、その成分中にグルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)に由来する成分と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)に由来する成分を含有するので、皮膜形成時において、複素環系有機化合物(B)との反応によって架橋密度の高い架橋構造を形成し、これによって反応吸湿時の膨潤を押さえることにより吸湿により内部圧力が非常に高くなり。これにより水蒸気以外の物質を殆ど吸収しなくなる。グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)に由来する成分は、その化学構造から、更に親水性発揮の役割も果たす。
複素環系有機化合物(B)は、架橋密度の高い架橋構造の形成に寄与すると共に、本発明の防食処理剤により得られる親水性皮膜が水により流失するのを防止する役割も果たす。
従って、本発明の防食処理剤は、高度の親水性を有しながら、水で流出することなく、水蒸気のみを吸着して臭気性分を吸着しない皮膜を与えるという特徴を有する。又、塗布焼き付け後の加工において優れた潤滑特性を発揮する。
【0044】
次に本発明のフィン材につき、説明する。
本発明のフィン材は、アルミニウム材料(すなわち、アルミニウムまたはアルミニウム合金)からなり、上記の防食処理剤からなる皮膜を内層とし、親水性樹脂からなる皮膜を外層とする積層皮膜をその表面に形成してなる。
【0045】
上記の防食処理剤からなる皮膜は、アルミニウム材料表面全面に形成されていることが好ましく、皮膜は、固形分換算で0.05〜0.2g/m2 であることが好ましく、0.1〜0.15g/m2 であることがより好ましい。皮膜厚みを上記下限以上にすることにより、充分な防食性を発揮することができ、上記上限以下にすることにより、フィンとしての伝熱効率を良好に維持することができる。
【0046】
本発明のフィンに用いられる積層皮膜の外層に用いられる親水性樹脂としては、汎用のものを用いることができるが、一般に建築物用塗料において親水性樹脂と呼ばれている樹脂や、これを用いた塗料はフィン用の性能が得られないため使用しないことが好ましい。
フィン用塗料に用いられる親水性樹脂の例としては、カルボキシル基および/または水酸基を含有するビニル単量体の(共)重合体をアルカリ金属などで中和してなる水溶性樹脂などを挙げることができる。また、必要により、これらの樹脂とともに架橋剤を併用することもできる。さらに、水溶性エポキシ樹脂や水溶性ホルマリン系縮合樹脂類も必要に応じて併用できる。
【0047】
上記カルボキシル基および/または水酸基を含有するビニル単量体の(共)重合体の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン・ポリ(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル酸系重合体;、ポリ酢酸ビニル樹脂の部分ケン化物;ポリビニルピロリドン;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物等が挙げられる。これらは、水溶性とならないように架橋性単量体との共重合体とすることが好ましい。
【0048】
水溶性ホルマリン系縮合樹脂の例としては、尿素、メラミン等と、ホルマリン、グリオキザールとの重縮合系樹脂が挙げられる。
【0049】
上記親水性皮膜形成用の親水性樹脂には、親水性樹脂の膜形成に影響を与えない範囲で各種添加剤を加えることができる。その例としては、潤滑剤、防腐剤、防カビ剤、防バクテリア剤、界面活性剤、顔料、染料が挙げられる。
【0050】
親水性皮膜の膜厚は、好ましくは0.5〜1.5g/m2 、より好ましくは0.6〜1g/m2 である。皮膜の膜厚を上記下限以上とすることにより、フィン材の親水持続性および加工性を良好なものとすることができる。
【0051】
本発明のフィン材は、アルミニウム材料からなるフィン材の表面に、四元共重合体(A)と、複素環系有機化合物(B)を水に溶解した水溶液を塗布し、乾燥・焼き付けして防食処理剤からなる架橋皮膜をフィン材表面に形成し、次いでその上に親水性樹脂の水溶液を塗布し、乾燥・焼き付けして親水性皮膜を形成することにより得られる。防食処理剤及び親水性樹脂の塗装方法としては、特に限定されるものではないが、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー法、刷毛塗り法などを例示できる。
本発明のフィン材は、その表面に積層皮膜を形成した後、フィン加工によりフィンを製造することができる。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
(参考例1)〔グルコピラノシルエチル(メタ)アクリレートの製造〕
攪拌器、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた1Lの四ツ口フラスコに、ブドウ糖、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレートを各々1モル投入し、重合禁止剤として、ハイドロキノンを各成分の総量の1%質量部を加えて攪拌しながらフラスコ内液に空気を少量ずつバブリングしながら、105〜110℃で3時間反応させて2−グルコピラノシルエチルアクリレートまたはメタクリレートを得た。
【0053】
(参考例2)〔四元共重合体(a)の製造〕
攪拌器、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えた1Lの五つ口フラスコに、280gのイオン交換水と、表1記載の各成分を表1に記載の量投入し、レドックス助触媒として、L−アスコルビン酸を各成分総量の0.005%質量部を加えて攪拌しながらフラスコ内を窒素置換し、窒素を少量ずつ流しながら、滴下ロートから重合触媒として35%過酸化水素水を各成分総量の0.1%質量部滴下し30〜40℃で14時間反応をさせて、樹脂濃度が20質量%の四元共重合体(a01)〜(a10)、及び三元共重合体(a11)〜(a14)を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
(但し、表中のGEAはグルコノピラノシルエチルアクリレ−ト、GEMAはグルコノピラノシルエチルメタクリレ−ト、DMMAは、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルDM)、DMADはジメチルアミノエチルアクリルアミド(コウジン社製)、HEAは2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト(大阪有機工業社製)、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルHO)、DHPAは2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレ−ト(日本油脂社製)、MMAはメチルメタクリレ−ト(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルM)、及びMPMAはイソプロピルメタクリレ−ト(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルIP)を示す。)
【0056】
(参考例3)〔四元共重合体(A)の製造〕
参考例2で得た四元共重合体(a01)〜(a10)、三元共重合体(a11)〜(a14)を表2に示す防食剤(c01)〜(c03)を用いて中和し、四元共重合体(A01)〜(A15)、三元共重合体(A16)〜(A19)を得た。また、四元共重合体(a01)の燐酸塩も、比較のため作成した。それらのpH及び粘度を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
(但し、表中の5CBは5−クロルベンゾトリアゾ−ル、5NBは5−ニトロベンゾトリアゾ−ル、4CTは4−クロル−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、5CTは5−クロル−4−メチルベンゾトリアゾ−ル、4NTは、4−ニトロ−5−メチルベンゾトリアゾ−ル、5NTは5−ニトロ−4−メチルベンゾトリアゾ−ル、3CTAは3−クロル−1H−トリアゾ−ル、5NTAは5−ニトロ−1H−テトラゾ−ル、5CIDは5−クロルインダゾ−ル及び5NIDは5−ニトロインダゾ−ルを示す。)
【0059】
(参考例4)[5−クロルベンゾトリアゾールの製造]
撹拌器及び温度計を付した1000ml容のビーカーに、2,3−ジアミノクロルベンゼン142.5g(1モル)を氷酢酸60g(1モル)と水500mlの液に溶解し、更に、氷酢酸90g(1.5モル)を加えた。この溶液を0℃に冷却し、よくかきまぜながら、30%亜硝酸ソーダ水溶液230g(1モル)を加えた。この間、温度は5℃以下に保った。ジアゾ化中、液はコンゴーレッド試験紙が酸性を示すpHに維持した。亜硝酸ソーダ水溶液はヨウ化カリデンプン紙試験で5分間青色を呈して亜硝酸の過剰が認められるまでを加え、直ちに水を加えて含水アルコールから再結晶して、5−クロルベンゾトリアゾールを得た。
【0060】
(参考例5〜9)
同様にして、2,3−ジアミノニトロベンゼンからは5−ニトロベンゾトリアゾール(参考例5)、2−クロル−3,4−ジアミノトルエンからは4−クロル−5−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例6)、2,3−ジアミノ−6−クロルトルエンからは5−クロル−4−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例7)、2−ニトロ−3,4−ジアミノトルエンからは4−ニトロ−5−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例8)、2,3−ジアミノ−6−ニトロトルエンからは5−ニトロ−4−メチルベンゾトリアゾ−ル(参考例9)を得た。
【0061】
(参考例10)[3−クロロ−1,2,4−トリアゾ−ルの製造]
3−アミノ−1,2,4−トリアゾールと亜硝酸ソーダ水溶液から、ジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩に濃塩酸を加え反応させ、燐酸水溶液でジアゾニウム化合物を分解させた。得られた反応生成物をカセイソーダ水溶液でpH2.5にした後、この溶液をエバポレーターで濃縮して得られた残査を熱酢酸エチルで抽出した。抽出液の酢酸エチルを濃縮した後、再度酢酸エチルで再結晶して、淡黄色針状結晶の3−クロル−1,2,4−トリアゾール)を得た。
【0062】
(参考例11)[5−ニトロ−テトラゾ−ルの製造]
5−アミノテトラゾール・1水和物と亜硝酸ソーダ水溶液から、ジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩に亜硝酸を加えて反応させ、燐酸水溶液でジアゾニウム化合物を分解させた。得られた反応生成物をカセイソーダ水溶液でpH2.5にしたのち、この溶液をエバポレーターで濃縮して得られた残査をエチルアルコール−アセトン混合溶媒で抽出して、5−ニトロ−テトラゾールのナトリウム塩を得た。これを銅塩として分離した後、硫化水素で処理し、酢酸エチルで抽出して、淡黄色針状結晶の5−ニトロ−テトラゾールを得た。
【0063】
(参考例12)[5−クロルインダゾ−ルの製造]
2−アミノ−5−クロルトルエンの酢酸溶液と、亜硝酸ソーダ水溶液とからジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩をを水から精製し乾燥させて、粗製の5−クロルインダゾールを得た。これをメタノールから再結晶して、淡白色針状結晶の5−クロルインダゾールを得た。
【0064】
(参考例13)[5−ニトロインダゾ−ルの製造]
2−アミノ−5−ニトロトルエンの酢酸溶液と、亜硝酸ソーダ水溶液とからジアゾ化反応によりジアゾニウム塩を得た。得られたジアゾニウム塩をを水から精製し乾燥させて、粗製の5−ニトロインダゾールを得た。これをメタノールから再結晶して、微黄色針状結晶の5−ニトロインダゾ−ルを得た。
【0065】
(参考例14)[1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸の製造]
α、α−ジメチロールプロピオン酸1モルとα−パラオキシメチレン1.35モル又はアセトン(試薬1級、和光純薬社製)1.8モル、p−トルエンスルホン酸12gを触媒として8時間反応させて、α−〔5−(1,3−ジオキサニル)〕プロピオン酸(b01)、α−〔2,2−ジメチル−5−(1,3−ジオキサニル)〕プロピオン酸(b02)を得た。
又、α,α−ジメチロールプロピオン酸の代わりに同モルのα,α−ジメチロールブタン酸を用いて前記と同様にして、ともに淡黄色粘性液体のα−〔5−(1,3−ジオキサニル)〕ブタン酸(b03)、α−〔2,2−ジメチル−5−(1,3−ジオキサニル)〕ブタン酸(b04)を得た。
【0066】
(参考例15)[1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸からの複素環系有機化合物(B)の製造]
表3に記載の各成分を用い、エステル化反応を行い、複素環系有機化合物(B01)〜(B10)の20%水溶液を得た。
【0067】
【表3】
【0068】
(但し、表中のMOCは5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、DOCは2,2−ジメチル−5−メチル−5−オキシカルボニル−1,3−ジオキサン、TEGはトリエチレングリコール(日本乳化剤社製)、DHGはジヒドロキシエチルグリセリルエーテル、THPはトリヒドロキシエチルトリメチロ−ルプロパニルエーテル、PEGはポリエチレングリコ−ル400#(ライオン社製)、THAは2,4,6−トリヒドロキシエチル−sym−トリアジントリオンを示す。
【0069】
(参考例16)[ジヒドロキシエチルグリセリルエーテルの製造]
触媒として水酸化カリウムを使用し、オートクレーブ中で140〜150℃で、グリセリン1モルにエチレンオキサイド2モルを付加させて、殆ど定量的に無色液状のジヒドロキシエチルグリセリルエーテルを得た。
【0070】
(参考例17)[トリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンの製造]
(参考例16)と同様にして、トリメチロールプロパン1モルとエチレンオキサイド3モルから、無色液状のトリヒドロキシエチルトリメチロールプロパンを得た。
【0071】
(参考例18)[2,4,6―トリヒドロキシエチル―sym−トリアジントリオンの製造]
(参考例16)と同様にして、トリアジントリオン1モルとエチレンオキサイド3モルから、淡黄色液状の2,4,6−トリヒドロキシエチル−sym−トリアジントリオンを得た。
【0072】
(実施例1〜27、比較例1〜7)
表2に示す四元共重合体(A01)〜(A15)、三元共重合体(A16)〜(A19)、四元共重合体(a01)の燐酸塩(A20)、5−クロル−ベンゾトリアゾール及び5−ニトロベンゾトリアゾール各々のモノエタノールアミン塩(5−CTZおよび5−NTZ)と、表3に示す複素環系有機化合物(B01)〜(B08)の20%水溶液と、イオン交換水とを表4に記載の配合で混合して10%濃度の防食処理剤を得た。
これらの防食処理剤をそれぞれアルミニウム合金材の表面に固形分塗布量が0.2g/m2 となるように塗布し、250℃、30秒で乾燥・焼き付けた。次いで、表4、表5に記載の親水性樹脂の10質量%水溶液を固形分塗布量が1g/m2となるように塗布し、250℃、30秒で乾燥・焼き付けし、このアルミ合金材からドローレスプレス加工でフィンを製造し、熱交換器に組み込んだ。
このフィン表面の水濡性(親水性接触角)、塗膜の密着性、潤滑性、耐汚染性及びプレス加工性について評価した。その結果を表6、表7に示す。
実施例1〜27で得られた被膜からは有害物質にあたるものは検出されなかった。また、各実施例で塗布用に作成した塗料で、余った分の廃棄処理においても有害物質排出の問題は生じなかった。
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
(但し、表中の「5CTZ」及び「5NTZ」は5−クロル−ベンゾトリアゾール及び5−ニトロベンゾトリアゾール各々のモノエタノールアミン塩20%水溶液を、更に「A01P」はA01の燐酸塩を示す。)
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
なお、評価及びその基準を以下に示す。
*親水性接触角A:試料を240時間水道流水に浸漬した後、水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
*親水性接触角B:試料を240時間蒸留水中に浸漬した後、水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
*親水性接触角C:試料を揮発性プレス油(RF−190)に60秒間浸漬した後、150℃で3分間熱処理したものの水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
*親水性接触角D:試料を水道流水に8時間浸漬した後、80℃のオーブンで16時間乾燥する工程を14回繰り返し行い、その後、水滴の接触角を測定した。
○;30°未満、×;30°以上
【0079】
*塗膜の密着性:試料表面に揮発性プレス油を塗布後、トリクレンで脱脂した後、JIS H4001に準拠した碁盤目試験を行った。
○;剥離全く無し、△;一部は剥離有り、×;全面的に剥離
*潤滑性;試料表面に揮発性プレス油を塗布し、バウデン式摩擦試験器で表面の動摩擦係数を測定した。
○;動摩擦係数0.1未満、×;動摩擦係数0.1以上
*塩水噴霧試験:試料をJISZ2371に準拠した塩水噴霧試験を行った。
○;白錆が全く無し、△;一部白錆有り、×;全面に白錆有り
*湿潤試験:試料をJISH4001に準拠した湿潤試験を行った。
○;白錆が全く無し、△;一部白錆有り、×;全面に白錆有り。
*プレス加工性 ;成型品の良・不良具合と金型への焼付を観察した。
○;製品不良率5%以下であり、金型への焼付無し
△;製品不良率5を越え、15%未満であり、金型への焼付無し
×;製品不良率15%以上、又は金型への焼付けが発生したもの
【0080】
以上から明らかなように、本発明の塗料組成物は優れた親水性、塗膜密着性を示し、熱交換器を稼動させた場合にも、汚染性物質の付着による親水性の低下もなく、優れた潤滑性、加工性を示すことがわかる。これはクロメート処理とほぼ同等の耐食性を有していることを示す。
これに対し、本発明の範囲から外れるものは、各比較例に示すように、親水性や耐汚染性が不良であり、配合によっては、密着性も不良となることがわかる。
先に述べたように、クロメート処理では排水など、環境に悪影響を与えるのに対し、各実施例ではいずれも環境に悪影響を与えるものはなかった。
【0081】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明になる塗料組成物は水濡性に富み、従って水滴が付着しても、水滴は拡がり、塗膜としたときに通風抵抗を高めることはない。
また、塗膜の密着性が良いので耐久性に富み、このことは水濡れ性の耐久性にも富むことにつながる。
また、四元共重合体が防食剤(c)で中和されているので、防食剤(c)がキレート結合等でアルミニウム表面に結合し、腐食性物質の侵入を遮断するのでクロメート処理と同等の耐食性を示す。
また、汚染性物質の付着による熱交換器の熱交換効率の低下が無い。
また、クロムやその代替金属を使用していないので、排水による環境汚染の心配がない。
Claims (6)
- 四元共重合体塩(A)と、複素環系有機化合物(B)とを含有し、四元共重合体塩(A)が、グルコピラノシルアルキル(メタ)アクリレート(a1)と、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、アルキル(メタ)アクリレート(a4)とから構成された四元共重合体(a)の求電子基含有アゾール系誘導体(c)による中和物であり、複素環系有機化合物(B)が、下記一般式(1)で表される1,3−ジオキサン環を有するカルボン酸(b)から誘導される、1,3−ジオキサン環を2個以上有する複素環系有機化合物であることを特徴とするフィン材用ノンクロム皮膜型防食処理剤。
- 四元共重合体(A)を構成する(a1)と、(a2)と、(a3)と、(a4)の比率が、質量比で16〜55/31〜70/2〜8/2〜6であり、四元共重合体(A)の数平均分子量が8,000〜350,000であることを特徴とする請求項1記載の防食処理剤。
- 求電子基含有アゾール系誘導体(c)が、下記一般式(2)で表される、ベンゾトリアゾール系有機化合物(c1)
および下記一般式(4)で表される、イミダゾール系有機化合物(c3)
- 複素環系有機化合物(B)の分子量が400〜2,000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防食処理剤。
- 四元共重合体(A)と複素環系有機化合物(B)の質量比が100:20〜130であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防食処理剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の防食処理剤からなる皮膜を内層とし、親水性樹脂からなる皮膜を外層とする積層皮膜をその表面に形成してなるフィン材。
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