JP2005036073A - 熱収縮性ポリエステル系フィルム及びそれを用いたラベル - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルム及びそれを用いたラベル Download PDF

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Abstract

【課題】特に表面に紙のような外観を有し、特に溶剤による接着性に優れ、特に収縮によるシワ、収縮斑、歪みの発生が極めて少ない和紙の外観を有するラベルに用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】フィルムの主収縮方向及び主収縮方向と直行する方向の長さ1cmあたりのフィルム厚み差が3μm以上であり、フィルム内部に空洞を含有し少なくともフィルム厚み方向の片面表層部の空洞径が5μm未満であり、フィルム厚み方向中央部の空洞径が5μm以上であり、フィルムの少なくとも片面の表面の濡れ張力が45mN/m以上であり、フィルムの少なくとも片面の表面の窒素原子含有量が0.2%以上4.0%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル系フィルムに関し、特にラベル用途に好適な和紙のような外観を有するポリエステル系フィルムに関する。さらに詳しくは、和紙のような外観を有し、且つ熱収縮によるシワ、収縮斑、歪みの発生が極めて少ない熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱収縮性フィルム、特にボトルの胴部のラベル用の熱収縮性フィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等からなるフィルムが主として用いられている。しかし、ポリ塩化ビニルについては、近年、廃棄時に焼却する際の塩素系ガス発生が問題となり、ポリスチレンについては、耐溶剤性が十分でないことから印刷が困難である等の問題がある。さらに、PETボトルの回収リサイクルにあたっては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等のPET以外の樹脂のラベルはPETボトルと分別する必要がある。このため、これらの問題の無いポリエステル系の熱収縮性フィルムが注目を集めている。
【0003】
特に、PETボトルのラベルに用いる場合、新たな機能を付与することは求められており、その一つとして、和紙調の外観を有することが要望されている。
【0004】
そのために、例えばセルロース繊維をコートするといった特殊なコーティングが考えられるが、均一なコーティングが容易ではない、コート膜の耐久性に劣る、といった問題がある。
【0005】
また、非相溶な樹脂あるいは無機粒子を配合させ、空洞を含有させたフィルムもあるが、単に空洞を含有させるだけではフィルムの隠蔽性が高くなるものフィルム表面は比較的平滑であり、和紙調の外観が得られないなどの課題を有する。
【0006】
例えば、結晶性ポリプロピレンを3〜40重量%含有する微細気泡含有ポリエステルフィルムが開示されている(特許文献1参照。)が、これはホワイトボードなどの基材に用いられるもので、フィルム表面は比較的平滑性に優れるものであり、和紙のような外観は得られない。
また、ポリオレフィン系重合体を2〜30wt%含有する微小気泡を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムが開示されている(特許文献2参照。)が、これは例えばトレーシングペーパーのような外観となり、和紙のような外観は得られない。
また、白色無機粒子を5〜30wt%含有し、ボイド率が5〜30%である白色ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている(特許文献3参照。)が、これもテレホンカードなどの基材に用いられるもので、フィルム表面は比較的平滑性に優れ、和紙のような外観は得られない。
さらに、非相溶な樹脂と無機粒子を配合させた和紙風模様を形成したフィルムが開示されている(特許文献4参照。)が、筆記性を目的とするため和紙のような外観としては十分にならない。
また、非相溶な樹脂を加えることにより、ラベル状に加工する際の溶剤接着性が不足となりやすい、などの課題を有する。
【0007】
このように、外観を和紙のように仕上げるラベル用途の場合、従来のポリエステル系フィルムあるいは熱収縮性ポリエステル系フィルムでは性能が不十分であった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−16130号公報
【特許文献2】
特開昭63−193822号公報
【特許文献3】
特開昭63−235338号公報
【特許文献4】
特開平2−180933号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、その目的とするところは、ポリエステル系フィルムであって、ボトルのラベル用、特に表面に紙のような外観を有し、特に溶剤による接着性に優れ、特に収縮によるシワ、収縮斑、歪みの発生が極めて少ない和紙の外観を有するラベルに用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルム、さらにフィルム同士のブロッキングの生じにくい和紙の外観を有するラベルに用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステル系フィルムは、フィルムの主収縮方向及び主収縮方向と直行する方向の長さ1cmあたりのフィルム厚み差が3μm以上であり、フィルム内部に空洞を含有し少なくともフィルム厚み方向の片面表層部の空洞径が5μm未満であり、フィルム厚み方向中央部の空洞径が5μm以上であり、フィルムの少なくとも片面の表面の濡れ張力が45mN/m以上であり、フィルムの少なくとも片面の表面の窒素原子含有量が0.2%以上4.0%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
そのことにより上記課題が解決される。
【0011】
この場合において、前記ポリエステル系フィルムの見掛け比重が、1.0未満であることが好適である。
【0012】
この場合において、前記ポリエステル系フィルムの温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度85℃・処理時間10秒で30%以上であり、主収縮方向と直交する方向において、85℃・10秒で10%以下であることが好適である。
【0013】
この場合において、前記ポリエステル系フィルムが非相溶な熱可塑性樹脂を含むことが好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0015】
本発明で使用するポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ジカルボン酸(例えばアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
【0017】
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0018】
本発明で使用するポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられる。
【0019】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは炭素数3〜6個を有するジオール(例えばプロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうち1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60〜75℃に調整したポリエステルが好ましい。
【0020】
また、収縮仕上り性が特に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムとするためには、ネオペンチルグリコールをジオール成分の1種として用いることが好ましい。
【0021】
炭素数8個以上のジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は、含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0022】
ジエチレングリコール、トリエチレングリコールはできるだけ含有させないことが好ましい。特にジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在しやすいが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明の酸成分、ジオール成分の含有率は、2種以上のポリエステルを混合して使用する場合、ポリエステル全体の酸成分、ジオール成分に対する含有率である。混合後にエステル交換がなされているかどうかにはかかわらない.
さらに、熱収縮性フィルムの易滑性を向上させるために、例えば、二酸化チタン、微粒子状シリカ、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機滑剤、また例えば、長鎖脂肪酸エステルなどの有機滑剤を含有させるのも好ましい。また、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0024】
上記ポリエステルは、いずれも従来の方法により重合して製造され得る。例えば、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などを用いて、ポリエステルが得られる。重合は、回分式および連続式のいずれの方法で行われてもよい。
【0025】
また、紙のような外観を有するためには、例えば、少なくとも片面に空洞を含有する層を設けることが有効である。該空洞含有層には上記ポリエステルと非相溶である特定の熱可塑性樹脂を少なくとも1種以上配合させることが好ましい。
上記ポリエステルと非相溶な特定の熱可塑性樹脂を配合し、混合、押出し、延伸することでフィルム内部に空洞が出来あがり、その空洞の影響で紙のような外観を有するフィルム得られると考えられる。
以下は推定であるが、上記ポリエステルと非相溶な特定の熱可塑性樹脂を配合し、特定の条件で混合、押出しすることによって、前記従来の空洞含有ポリエステルフィルムより大きな空洞が形成され、光の散乱が低下するとともに、形成した空洞径の差異が部分的に生じ、表面の凹凸がおおきくなり和紙のような外観になるものと考えられる。
【0026】
上記ポリエステルと非相溶な特定の熱可塑性樹脂の例としてはポリメチルペンテン系樹脂、アイオノマー系樹脂などが挙げられる。
【0027】
上記ポリエステルと非相溶な熱可塑性樹脂の配合量は空洞含有層全体の11重量%以上が好ましく、さらに好ましくは13重量%以上である。該熱可塑性樹脂が11%重量未満であるとフィルム内部の空洞が不完全で、紙のような外観とならず好ましくない。
【0028】
また空洞含有層に空洞を含有しない層を積層しても良い。その際は空洞含有層の厚みを40μm以上にすることが好ましい。空洞含有層の厚みが40μm未満であると隠蔽性に劣り和紙調の外観となりにくい。
【0029】
フィルムの厚み差は、フィルムの主収縮方向及び主収縮方向と直行する方向の長さ1cmあたり3μm以上が好ましく、さらに好ましくは5μm以上である。フィルムの厚み差が3μ未満であると和紙のような外観とならず好ましくない。
【0030】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、ラベル用熱収縮性フィルムとして40〜200μmが好ましく、50〜100μmがさらに好ましい。
【0031】
フィルム表面の濡れ張力は少なくとも片面が45mN/m以上であることが好ましい。該フィルム表面の濡れ張力が45mN/m未満であると、例えば、溶剤接着性が不充分となる等二次加工適性に劣る。本発明の好ましい実施様態は該フィルム表面の濡れ張力が少なくとも片面において47mN/m以上、さらに好ましい実施様態は該フィルム表面の濡れ張力が48mN/m以上である。また、該フィルム表面の濡れ張力の上限は特に制限されるものではない。
【0032】
上記要件を満足する熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法を説明する。熱収縮性ポリエステル系フィルムのみならず、フィルムの製膜時あるいは製膜後に、フィルム表面の片面あるいは両面に空気雰囲気下でコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理等を実施して二次加工適性を向上させることが行われている。中でも工業生産においては空気雰囲気下でのコロナ処理による表面処理が最も広く行われている。熱収縮性ポリエステル系フィルムにコロナ処理を行うと他のフィルムと同様に、表面の濡れ張力が増加して溶剤接着性等の二次加工適性が向上する。
【0033】
このとき、コロナ処理によって溶剤接着性等の二次加工適性は向上するが、熱収縮性ポリエステル系フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生しやすくなることを本発明者らは見出した。
熱収縮性ポリエステル系フィルムはポリエチレンテレフタレートを最多構成モノマー成分として、必要な熱収縮率を得るために、ポリマーの結晶性を低下させ、非晶化する1,4−シクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコール等のモノマー成分や、ガラス転移温度(Tg)を低下させて低温での熱収縮率を発現させるための1,4−ブタンジオールや1,3−プロパンジオール等の低Tgモノマー成分を含有させており、特に前者のに非晶化させる成分の効果によって、フイルム表面処理の無い状態(未処理状態)では未処理のPETフィルムよりも溶剤接着性は優れている。
【0034】
しかしながら、一般のPETフィルムで実施されているエネルギーレベルのコロナ処理を熱収縮性フィルムに施すと、特に前者の非晶化させる成分の効果によって、また、表面が過度に酸化処理されることによって、例えば、表面張力が必要以上に増加して前述のフィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生しやすくなる。また、フィルム表面の滑性がより滑りにくい状態へ変化することにより、例えば、フィルムの加工性が悪化したり、フィルムをロール巻きの状態で保管した際にフィルム同士のブロッキングが発生する等の悪さを生じやすく弱処理でのコロナ処理を施す必要がある。このような弱処理を行う場合には、熱収縮性フィルムの中でも特に非晶化させる成分の多いものでは通常のPETフィルム用のコロナ処理設備では達成することが難しいために、弱処理用の特殊な電源や電極設備を新たに導入する必要が生じる。
このような弱処理でのコロナ処理を行うと、溶剤接着性を向上させることロール巻きの状態で保管した際にフィルム同士のブロッキングを抑制することは可能であるが、実用上必要な溶剤接着性のレベルまでコロナ処理を行うと、例えば、フィルムをラベルカットする際の融着やブロッキングの発生まで抑えることは難しいという問題がありこの両方の特性を両立することは困難である。
【0035】
溶剤接着性を確保し、かつフィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングを発生させないためには、フィルム表面に窒素原子を含有させることが効果的であることを本発明者らは見出した。フィルム表面に窒素原子を所定の量含有させることによって上記効果を達成することができる。該フィルム表面の窒素原子の含有量が0.1%未満では本発明の目的とする、溶剤接着性が不充分となる。
また、該フィルム表面の窒素原子の含有量が4.0%を超える場合には、ラベルカット後の融着、ブロッキングが発生し、又、フィルムの表面性状の変化による滑性の低下が発生する。本発明での好ましい実施様態は、該フィルム表面の窒素原子含有量が0.15%以上3.9%以下、さらに好ましい実施様態は、該フィルム表面の窒素原子含有量が0.2%以上3.8%以下である。なお、本発明でのフィルム表面の窒素原子の形態としては、窒素原子(N)の形態でもよく、又、窒素イオン(N)の形態のいずれでもよい。
【0036】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法を説明する。
フィルムの少なくとも片面の表面に窒素原子を含有させる方法としては、該フィルム表面を窒素雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理をする方法が好ましい。窒素雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理をすることにより、窒素原子は窒素原子(N)の形態か、窒素イオン(N)の形態でフィルム表面に存在する。又、フィルム表面の窒素原子量をコントロールする方法としては、コロナ処理又はプラズマ処理での設備や処理条件を変更することが挙げられる。設備面では例えばコロナ処理設備においては電源の周波数や放電電極の材質、形状、本数、処理ロールの材質、放電電極とフィルム処理面とのギャップ、窒素雰囲気下での窒素ガス濃度が挙げられ、条件面ではフィルム走行速度、雰囲気温度や処理時のロール表面温度等が挙げられる。
【0037】
例えばコロナ処理において好ましい設備を例示すると、電源の周波数としては、8KHzから60KHzの範囲が好ましい。放電電極の材質としては、アルミニウム又はステンレスが好ましく、放電電極の形状はナイフエッジ状、バー状、又はワイヤー状であることが好ましい。また、放電電極の本数はフィルム表面を均一処理する為に、2本以上であることが好ましい。処理ロールは、コロナ放電を行う場合の対極となるものであるが、少なくとも表面の材質は誘電体である必要がある。誘電体材質としては、シリコンゴム、ハイパロンゴム、EPTゴム等を用いることが好ましく、少なくとも処理ロール表面を1mm厚以上の厚さで被覆することが好ましい。また、放電電極とフィルム処理面のギャップは0.2mm〜5mm程度の範囲内であることが好ましい。
【0038】
また、条件面ではフィルムの走行速度(処理速度)は設備能力の範囲内で任意の速度で処理を行うことができる。
本発明において、窒素雰囲気下でのコロナ処理時のフィルム表面温度を20〜50℃の範囲内に制御し、かつ、窒素雰囲気下中の酸素濃度を500ppm以下に制御しかつ、フィルム表面の窒素原子含有量を本発明の範囲内に制御することにより、フィルム表面の窒素原子の形態をできるだけ(N)の形態とし、窒素イオン(N)の発生を抑制することにより、長期間保管時の経時物性変化を抑制できるので好ましい。
また、処理ロール表面は温調設備により温度制御することが好ましい。処理ロール表面は30℃から60℃の範囲内にあることがさらに好ましい。また、必要に応じて処理ロールの前又は後に調温ロールを配置することもできる。
【0039】
本発明の前述の要件を満足し、表面の窒素原子含有量をコントロールするための手法を説明する。
フィルム表面の窒素原子含有量が変動する要因の1つとしては、コロナ処理又はプラズマ処理を行う際の雰囲気の窒素濃度の変動が挙げられる。コロナ処理又はプラズマ処理設備を囲い込み、窒素で内部の空気を置換して、窒素雰囲気ととしてその内部にフィルムを走行させる際、走行フィルムの随伴流により、空気が流れ込んで窒素雰囲気の濃度が変動する現象が発生するのでこれを抑制することが好ましい。その方法として、第1にフィルムと囲い込み装置間のギャップをを0.4mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下として、さらにプラスチックフィルムや布で該ギャップを覆って随伴流をカットすることが挙げられる。さらに、囲い込みを2層以上の構造にして外層側で随伴流カットのための窒素を別途供給することも有効な手段である。本発明においてコロナ処理又はプラズマ処理を行う窒素雰囲気中の酸素濃度は、前述のごとく、500ppm以下、より好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下である。連続的に長尺のフィルムロールを生産する場合においては、ロールの巻き始めから巻き終わりまでの窒素雰囲気中の酸素濃度の変動巾としては、好ましくは平均酸素濃度±100ppm以下の範囲内、さらに好ましくは平均酸素濃度±70ppm以下の範囲内である。
【0040】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温水中で無荷重状態で処理して収縮前後の長さから、熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%)の式で算出したフィルムの温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度85℃・処理時間10秒で30%以上であり、好ましくは35以上であり、主収縮方向と直交する方向において、85℃・10秒で10%以下であり、好ましくは6%以下である。
【0041】
主収縮方向の温湯収縮率が85℃・10秒で30%未満の場合は、ボトルのラベルとして使用する際に収縮不足が発生しやすく好ましくない。
【0042】
主収縮方向と直交する方向の温湯収縮率が10%を越えるとラベルの高さにズレが生じ易く好ましくない。
【0043】
次に本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造法について、具体例を説明するが、この製造法に限定されるものではない。
【0044】
本発明に用いるポリエステル樹脂をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際してはTダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用して構わない。押し出し後、急冷して未延伸フィルムを得る。
【0045】
次に、得られた未延伸フィルムを、横方向に3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上延伸する。
【0046】
次に、必要により、70〜100℃の温度で熱処理して、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。
【0047】
さらに必要に応じて、横方向に再延伸を行ってもよい。
特に下記条件で製膜することより、和紙調の外観を有するフィルムを安定的に得ることが出来る。
【0048】
本発明に用いるポリエステル樹脂と非相溶な熱可塑性樹脂は出来る限り押出機の直前で混合することが好ましい。直前に混合する事でポリエステル樹脂との偏析等が発生しにくく、より安定した外観のフィルムが得られる。
【0049】
押出樹脂温度は260℃から300℃が好ましい。押出樹脂温度が260℃未満であると、ポリエステル樹脂と非相溶な熱可塑性樹脂による空洞が比較的小さくなり和紙のような外観が得られにくい。また、押出樹脂温度が300℃以上であると該熱可塑性樹脂が押出機内で分散不良となりやすく、その結果安定した外観のフィルムが得られなかったり、製膜が不安定になりやすい。
【0050】
なお、本発明の目的を達成するには、主収縮方向としては横方向が実用的であるので、以上では、主収縮方向が横方向である場合の製膜法の例を示したが、主収縮方向を縦方向とする場合も、上記方法における延伸方向を90度変えるほかは、上記方法の操作に準じて製膜することができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
本発明のフィルムの評価方法は下記の通りである。
【0053】
(1)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で所定時間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従いそれぞれ熱収縮率を求めた。該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
【0054】
熱収縮率=((収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%)… (1)
【0055】
(2)収縮仕上り性
熱収縮性フィルムに、あらかじめ東洋インキ製造(株)の草・金・白色のインキで3色印刷し、印刷を施した面が外側になるようにして、折り径10.8cm×高さ6.1cmのラベルを熱シールを用いて作製した。
【0056】
Fuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間2.5秒、ゾーン温度85℃で、500mlのガラス瓶(高さ20.6cm、中央部直径6.5cm)((株)吉野工業所製でキリンビバレッジ(株)の午後の紅茶に使用されているボトル)を用いてテストした(測定数=20)。
【0057】
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
シワ、飛び上り、収縮不足の何れも未発生 : ○
シワ、飛び上り、又は収縮不足が発生 : ×
【0058】
(3)厚み差
アンリツ(株)製の接触厚み計(形式:KG60/A)を用いて、a.縦方向5cm・横方向50cm、b.縦方向5cm・横方向50cmのサンプルのそれぞれ長手方向に厚みを測定し(測定数20)、得られたチャートよりそれぞれ長さ1cm毎に最大厚みと最小厚みの差を読み取り平均した結果を厚み差とした。
【0059】
(4)空洞径
サンプルの観察面をミクロトームにて平滑に切り出し、Ion Sputter(日立製作所製 E−1030)を用いてプラチナ蒸着を150秒間かけて施した。該蒸着サンプルを電解放射形走査電子顕微鏡(日立製作所 S−800)を用いてフィルムの厚み方向の断面写真を撮影し(倍率2000倍)、縦(サンプル厚み)×横(54μm)について空洞径(直径)0.5μm以上の空洞について、空洞径を求めた。空洞径の平均値を平均空洞径とした。空洞径は、断面撮影された空洞のフィルム表面に平行の方向の長さである。
【0060】
(5)見掛け比重
フィルムを5.00cm×5.00cmの正方形に正確に切り出して、その厚みを50点測定し、平均厚みをtμmとした。このフィルムの重さを0.1mgまで測定してこれをwgとし、見掛け比重を下記(2)式によって計算した。
【0061】
見掛け比重=w/5×5×t×10000…(2)
(6)極限粘度
オストワルド粘度計を用いて、試料200mgをフェノール/テトラクロロエタン=50/50の混合溶媒20mlに加え、110℃で1時間加熱した後、30℃で測定した。
【0062】
(7)和紙調外観
得られたフィルムの外観を目視にて観察し以下の基準で判定した。
和紙調の風合いあり:○
和紙調の風合いなし:×
【0063】
(8)フィルム表面の窒素原子含有量
X線光電子分光法測定装置(ESCAスペクトロメーター ES―200型(国際電気株式会社製))によりフィルム表面の全元素量に対する窒素元素量の比率を定量して求めた。
【0064】
(9)フィルム表面の濡れ張力
JIS K6768の方法にてフィルム表面の濡れ張力を測定した。
【0065】
(10)溶剤接着性
得られたフィルムを1.3−ジオキソランを使用して接着加工を行い接着性を以下の基準で評価した。
○:接着強い
△:接着弱い
×:接着しない
【0066】
(11)ラベルカット後の開口性
熱収縮性フィルムをスリットし、続いて、センターシールマシンを用いて1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り、二つ折り状態で巻き取った。裁断機で連続的に裁断して(裁断ラベル数200)、熱収縮性フィルムラベルを作成後、手で全数開口して裁断部の開口性を判定した。
○:裁断部が抵抗なく開口できる
△:裁断部が軽い抵抗ある場合あるが開口可能である
×:裁断部が開口不可能な部分あり
【0067】
(12)表面処理のフィルム面積当りエネルギー換算値
表面処理のフィルム面積当りエネルギー換算値(KW/m/min)=高周波電源装置電流値(A)×電圧(KV)÷電極幅(m)÷フィルム走行速度(m/min)
として求めた。
【0068】
実施例に用いたポリエステルは以下の通りである。
【0069】
ポリエステルA:ポリエチレンテレフタレート(極限粘度(IV)0.75dl/g)
ポリエステルB:エチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール30モル%とテレフタル酸とからなるポリエステル(IV 0.72dl/g)
【0070】
(実施例1)
ポリエステルA7.25重量%、ポリエステルB74.6重量%、ポリメチルペンテン(三井化学(株)「TPX DX845」)18重量%を混合したポリエステル系樹脂とポリエチレングリコール(分子量1000)0.15重量%とを混合した樹脂を、280℃で溶融し、Tダイより押出しを行い、チルロールで急冷して積層未延伸フィルムを得た。
【0071】
該未延伸フィルムを、フィルム温度が80℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に76℃で4倍に延伸し、厚み80μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0072】
続いて該フィルムを、処理電極及び処理部分を2重に囲い込み窒素を連続的に供給して窒素雰囲気に置換したコロナ処理装置に導き、表2の条件で窒素雰囲気下でのコロナ処理を施した。このとき、高周波電源装置は春日電機社装置置を使用し、発信周波数は45KHz±3KHz、処理電極はアルミニウム製のバー型電極、処理電極とフィルム間のギャップは0.4mm、処理ロールは表面材質がシリコンゴム製のものを使用し、処理雰囲気温度と処理ロール表面温度は共に40℃とし、処理時のフィルム表面温度も40℃であった。表面エネルギー換算値は0.30(kw/m/min)とした。フィルムと囲い込み装置間のギャップは0.3mmとし、ギャップの部分は綿製の布(別珍)で被覆した。このフィルムを製造したときの窒素雰囲気中の酸素濃度は120ppmであった。
【0073】
(実施例2)
処理雰囲気温度と処理ロール表面温度を共に55℃とし、表面エネルギー換算値を0.50(kw/m/min)とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ80μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0074】
(比較例1)
表面処理を行わない以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、厚み80μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0075】
(比較例2)
表面処理として空気雰囲気下でのコロナ処理とした以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、厚み80μmの積層熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0076】
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られたフィルムの評価結果を表1、2に示す。
【0077】
【表1】
Figure 2005036073
【0078】
【表2】
Figure 2005036073
【0079】
表1から明らかなように、実施例1〜2で得られたフィルムはいずれも収縮仕上り性が良好であり、且つフィルムは和紙のような外観を有し、二次加工適正に優れ、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは高品質で実用性が高く、特に和紙のような外観を求められる収縮ラベル用として好適である。
【0080】
一方、比較例1〜2で得られた熱収縮性系フィルムは和紙のような外観は有するものの二次加工適性に劣る。このように比較例で得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムはいずれも品質が劣り、実用性が低いものであった。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、ボトルのラベル用、特に和紙のような外観を求められるラベル用に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムが得られる。
【0082】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ボトルのラベルとして使用する場合、熱収縮によるシワ、収縮斑、歪み及び収縮不足の発生が極めて少ない良好な仕上がり性が可能であり、且つ和紙のような外観を求められるラベル用途として極めて有用である。

Claims (5)

  1. フィルムの主収縮方向及び主収縮方向と直行する方向の長さ1cmあたりのフィルム厚み差が5μm以上であり、フィルム内部に空洞を含有し少なくともフィルム厚み方向の片面表層部の平均空洞径が5μm未満であり、フィルム厚み方向中央部の平均空洞径が15μm以上であり、かつフィルムの少なくとも片面の表面の濡れ張力が45mN/m以上であり、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上4.0%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  2. 請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、見掛け比重が1.0未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  3. 請求項1あるいは2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度85℃・処理時間10秒で30%以上であり、主収縮方向と直交する方向において、85℃・10秒で10%以下であることを特徴と熱収縮性するポリエステル系フィルム。
  4. 請求項1、2あるいは3に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、ポリエステル系樹脂が非相溶な熱可塑性樹脂を含むことを特徴とするポリエステル系フィルム。
  5. 請求項1、2、3あるいは4に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて作成されたラベル。
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