JP2004042605A - 熱収縮性ポリエステル系フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】様々なタイプのインクに対する優れた密着性を有し、かつアルカリ脱離タイプのインクに対してアルカリ脱離性に優れ、かつラベルカット後のラベルの開口性に優れ、かつその性能が経時後も持続する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】フィルムを、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中15分間に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上である熱収縮性フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】フィルムを、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中15分間に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上である熱収縮性フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくは印刷時のインク密着性に優れ、かつアルカリ水溶液で脱離するタイプのインクに対して優れた脱離性を有し、かつフィルムをラベル状とする際のラベルカット後の開口性に優れ、かつ長期間保管後の経時変化が少なくその性能を維持する熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱収縮性フィルムは加熱により収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベル等の用途に広く用いられている。なかでも、塩化ビニル系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
これらの熱収縮性フィルムは、製造後、各種図柄の印刷工程を経て、印刷終了後は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベル等のサイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着等の手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にされ、チューブ状体のものを裁断して、ラベル、袋等の形態に加工される。そして、ラベルや袋状のものを開口させつつ容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
【0004】
ところで、前述の工程のうち、印刷工程においてインクのフィルムに対する密着性が悪いとインクの脱落、剥がれ等が発生して商品としての価値を損なうものとなる。特に、近年ではPETボトル用ラベル等においてリサイクルを目的とした、アルカリ水溶液中で脱離するタイプのインキや環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を削減あるいは使用しない水性タイプのインク等が開発されているが、これらのインクは所定の目的とする各々の性状を達成する為に、インクのフィルムに対する密着性等の性能が従来タイプのものよりも低下している場合がある。これらのの様々なインクに対して優れた密着性を有し、かつアルカリ水溶液中で良好な脱離性を発現でき、かつ前述のフィルムをラベル状とする際のラベルカット後の開口性に優れた熱収縮性フィルムが望まれていた。
【0005】
前述の様々なタイプのインク密着性を向上させる為には、例えばフィルム表面に通常の空気雰囲気下でのコロナ処理等の表面処理を施してフィルム表面の濡れ張力を高くする方法が考えられるが、これらの表面処理によってフィルム表面の濡れ張力を高めるとラベルカットした際にカット部分でフィルムが融着、ブロッキングを起こしてラベル装着時に開口不良を発生する問題が発生し、さらにテトラヒドロフランや1,3−ジオキソランによって溶剤接着してチューブ状にする際にフィルムの耐溶剤性が低下して、溶剤接着部分が平面性を失い、いわゆるワカメ状になったり、チューブの溶剤接着部分が他のフィルム部分とブロッキングを発生する問題があった。さらに、熱収縮性フィルムは、特に高速で製膜、加工を行う際や長尺で巻き取る場合には、フィルムの巻き取り性や滑り性が要求される。この滑り性が不十分な場合、高速での製膜、加工工程や長尺での巻き取り時にハンドリングの不良が発生し、フィルムの走行時にガイドロールとの接触において滑り性不良により、張力が増大し、フィルム表面に擦り傷を発生する走行性の悪化が見られたり、長尺で巻き取った場合にシワやニキビ状の欠点が発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような様々なタイプのインクに対する優れた密着性を有し、かつアルカリ脱離タイプのインクに対してアルカリ脱離性に優れ、かつラベルカット後のラベルの開口性に優れ、かつその性能が経時後も持続する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムを、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中15分間に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上である。
【0008】
又、フィルムの少なくとも片面の3次元表面粗さSΔa(3次元平均傾斜勾配)が0.01以上、0.04以下の範囲であり、かつ実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起がなく、フィルムの少なくとも片面同士を75℃でヒートシール後の剥離強度が5N/15mm巾以下、かつフィルムの少なくとも片面の濡れ張力が45mN/m以上であることが好ましい。
【0009】
上記の特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、優れた収縮加工性を有し、また、様々なタイプのインクに対する印刷加工性、密着性等の印刷適性に優れ、かつアルカリ脱離タイプのインクに対してはアルカリ脱離性に優れ、かつラベルカット後の開口性においてもカット部分の融着やブロッキングが発生せずラベル装着での加工性に優れており、かつ高速での製膜、加工性やハンドリング性を改善することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性フィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、20%以上である熱収縮性フィルムである。フィルムの熱収縮率が20%未満であると、フィルムの熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。より好ましい熱収縮率は30%以上、さらに好ましくは40%以上である。
【0011】
ここで、最大収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、最大収縮方向は、正方形の縦方向または横方向の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である(以下、この条件で測定した最大収縮方向の熱収縮率を、単に「熱収縮率」と省略する)。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0012】
また、本発明のフィルムは、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上である熱収縮性フィルムである。
フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下とすることで、アルカリ脱離タイプのインクに対する密着性とある程度のアルカリ脱離性を付与することができるが、85℃の1.5%NaOH水溶液中に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%未満であると、アルカリ脱離処理を行う際に完全にインクが脱離するまでに長時間を要するため、アルカリ脱離処理でのインク脱離不良が発生する。フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量は0.25%以上4.5%以下がより好ましく、0.3%以上4.3%以下であることがさらに好ましく、85℃の1.5%NaOH水溶液中に浸漬後の窒素原子含有量の低下率は60%以上がより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、少なくとも片面の3次元表面粗さSΔa(3次元平均傾斜勾配)が、0.01以上0.04以下の範囲であり、かつ実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起がないことにより、特に高速での製膜性・加工性に優れ、長尺フィルムで巻き取ることができる。SΔaが0.01未満では高速での製膜性・加工性が不良となり、また、長尺でフィルムを巻き取ることが困難となる。また、SΔaが0.04を超えるとフィルムの透明性が損なわれ、また、耐削れ性が不良となる。さらに、本発明のフィルムロールにおいて、実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起高さがないことが好ましい。1.89μm以上の突起があると透明性が不良になるだけでなく、耐削れ性不良のため発生した白粉や突起自身が原因となる印刷抜けが発生する。前記の3次元粗さSΔa及び突起高さを所定の範囲にすることにより高速での製膜性、加工性、ハンドリング性が良好となるが、フィルムのヘイズを12以下とすることによりさらに好ましいものとなる。
【0014】
また、本発明の熱収縮性フィルムはフィルムの同一面同士を75℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに5N/15mm巾以下であることが好ましい。該フィルム表面同士の75℃でヒートシール後の剥離強度が5N/15mm巾を超えると、特に、高速Sラベルカット後の融着、ブロッキングが発生する。本発明での好ましい実施様態は、該フィルム表面同士の75℃でヒートシール後の剥離強度が4.5N/15mm巾以下、さらに好ましい実施様態は、該フィルム表面同士の75℃でヒートシール後の剥離強度が4N/15mm巾以下である。さらに本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムの同一面同士を85℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに7N/15mm巾以下であることが好ましい。さらに好ましくは、フィルムの同一面同士を85℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに6N/15mm巾以下、特に好ましくはフィルムの同一面同士を85℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに5N/15mm巾以下である。
また、本発明ではフィルム表面の濡れ張力が45mN/m以上であることが必要である。該フィルム表面の濡れ張力が45mN/m未満であると、様々なタイプのインクに対する密着性が不充分となる。本発明の好ましい実施様態は該フィルム表面の濡れ張力が47mN/m以上、さらに好ましい実施様態は該フィルム表面の濡れ張力が48mN/m以上である。また、該フィルム表面の濡れ張力の上限は特に制限されるものではないが、ラベルカット後の融着、ブロッキングの発生やフィルム滑性の点からは58mN/m以下である。
【0015】
上記要件を満足する熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法を説明する。熱収縮性ポリエステル系フィルムのみならず、フィルムの製膜時あるいは製膜後に、フィルム表面の片面あるいは両面に空気雰囲気下でコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理等を実施して様々なインクに対する密着性を向上させることが行われている。中でも工業生産においては空気雰囲気下でのコロナ処理による表面処理が最も広く行われている。熱収縮性ポリエステル系フィルムにコロナ処理を行うと他のフィルムと同様に、表面の濡れ張力が増加して前述の様々なタイプのインクに対する密着性が向上する。そして、コロナ処理によってアルカリで脱離するタイプのインクに対するアルカリ脱離性は向上するが、熱収縮性ポリエステル系フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生しやすくなることを本発明者らは見出した。
【0016】
熱収縮性ポリエステル系フィルムはポリエチレンテレフタレートを最多構成モノマー成分として、必要な熱収縮率を得るために、ポリマーの結晶性を低下させ、非晶化する1,4−シクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコール等のモノマー成分や、ガラス転移温度(Tg)を低下させて低温での熱収縮率を発現させるための1,4−ブタンジオールや1,3−プロパンジオール等の低Tgモノマー成分を含有させており、特に前者のに非晶化させる成分の効果によって、フイルム表面処理の無い状態(未処理状態)では未処理のPETフィルムよりもインクに対する密着性は優れている。しかしながら、一般のPETフィルムで実施されているエネルギーレベルのコロナ処理を熱収縮性フィルムに施すと、特に前者のに非晶化させる成分の効果によって、表面が過度に酸化処理されることによって、表面張力が必要以上に増加して前述のフィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生しやすくなり、また、フィルム表面の滑性がより滑りにくい状態へ変化することにより、フィルムの加工性が悪化したり、又、例えばフィルムをロール巻きの状態で保管した際にフィルム同士のブロッキングが発生する悪さを生じるので弱処理でのコロナ処理を施す必要がある。このような弱処理を行う場合には、熱収縮性フィルムの中でも特に非晶化させる成分の多いものでは通常のPETフィルム用のコロナ処理設備では達成することが難しいために、弱処理用の特殊な電源や電極設備を新たに導入する必要が生じる。
【0017】
このような弱処理でのコロナ処理において、インクに対する密着性を向上させることは可能であるが、実用上必要なインク密着性のレベルまでコロナ処理を行うと、フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生する問題がありこの両方の特性を両立することはできない。
【0018】
これらのインク密着性とアルカリ脱離タイプのインクに対する脱離性を確保し、かつフィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングを発生させないためには、フィルム表面に窒素原子を含有させることが効果的であることを本発明者らは見出した。フィルム表面に窒素原子を所定の量含有させることによって上記効果を達成することができる。該フィルム表面の窒素原子の含有量が0.2%未満では本発明の目的とする、様々なタイプのインクに対する密着性が不充分となる。また、該フィルム表面の窒素原子の含有量が5.0%を超える場合には、ラベルカット後の融着、ブロッキングが発生し、又、フィルムの表面性状の変化による滑性の低下が発生する。
【0019】
本発明での好ましい実施様態は、該フィルム表面の窒素原子含有量が0.25%以上4.9%以下、さらに好ましい実施様態は、該フィルム表面の窒素原子含有量が0.3%以上4.8%以下である。なお、本発明でのフィルム表面の窒素原子の形態としては、窒素原子(N)の形態でもよく、又、窒素イオン(N+)の形態のいずれでもよい。さらに、該アルカリ浸漬処理後のフィルム表面の窒素原子含有量の低下率を50%以上とすることは、アルカリ脱離タイプのインキ自体のアルカリ脱離するする作用に加えて、フィルム側表面の窒素原子が脱離する作用を示し、両者の作用によりインクのアルカリ脱離作用をより高めるものである。85℃の1.5%NaOH水溶液中に15分間浸漬後の窒素原子含有量の低下率を50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。
【0020】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法を説明する。
フィルムの少なくとも片面の表面に窒素原子を含有させる方法としては、該フィルム表面を窒素雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理をする方法が好ましい。窒素雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理をすることにより、窒素原子は窒素原子(N)の形態か、窒素イオン(N+)の形態でフィルム表面に存在する。
又、フィルム表面の窒素原子量をコントロールする方法としては、コロナ処理又はプラズマ処理での設備や処理条件を変更することが挙げられる。設備面では例えばコロナ処理設備においては電源の周波数や放電電極の材質、形状、本数、処理ロールの材質、放電電極とフィルム処理面とのギャップ、窒素雰囲気下での窒素ガス濃度が挙げられ、条件面ではフィルム走行速度、雰囲気温度や処理時のロール表面温度等が挙げられる。
【0021】
例えばコロナ処理において好ましい設備を例示すると、電源の周波数としては、8KHzから60KHzの範囲が好ましい。放電電極の材質としては、アルミニウム又はステンレスが好ましく、放電電極の形状はナイフエッジ状、バー状、又はワイヤー状であることが好ましい。また、放電電極の本数はフィルム表面を均一処理する為に、2本以上であることが好ましい。処理ロールは、コロナ放電を行う場合の対極となるものであるが、少なくとも表面の材質は誘電体である必要がある。誘電体材質としては、シリコンゴム、ハイパロンゴム、EPTゴム等を用いることが好ましく、少なくとも処理ロール表面を1mm厚以上の厚さで被覆することが好ましい。また、放電電極とフィルム処理面のギャップは0.2mm〜5mm程度の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、条件面ではフィルムの走行速度(処理速度)は設備能力の範囲内で任意の速度で処理を行うことができる。
【0023】
本発明において、窒素雰囲気下でのコロナ処理時のフィルム表面温度を20〜50℃の範囲内に制御し、かつ、窒素雰囲気下中の酸素濃度を300ppm以下に制御しかつ、フィルム表面の窒素原子含有量を本発明の範囲内に制御することにより、フィルム表面の窒素原子の形態をできるだけ(N)の形態とし、窒素イオン(N+)の発生を抑制することにより、85℃の1.5%NaOH水溶液中に15分間浸漬後の窒素原子含有量の低下率を制御することができる。
【0024】
また、処理ロール表面は温調設備により温度制御することが好ましい。処理ロール表面は30℃から40℃の範囲内にあることがさらに好ましい。また、必要に応じて処理ロールの前又は後に調温ロールを配置することもできる。
【0025】
本発明の前述の要件を満足し、表面の窒素原子含有量をコントロールするための手法を説明する。
【0026】
フィルム表面の窒素原子含有量が変動する要因の1つとしては、コロナ処理又はプラズマ処理を行う際の雰囲気の窒素濃度の変動が挙げられる。コロナ処理又はプラズマ処理設備を囲い込み、窒素で内部の空気を置換して、窒素雰囲気ととしてその内部にフィルムを走行させる際、走行フィルムの随伴流により、空気が流れ込んで窒素雰囲気の濃度が変動する現象が発生するのでこれを抑制することが好ましい。その方法として、第1にフィルムと囲い込み装置間のギャップをを0.4mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下として、さらにプラスチックフィルムや布で該ギャップを覆って随伴流をカットすることが挙げられる。さらに、囲い込みを2層以上の構造にして外層側で随伴流カットのための窒素を別途供給することも有効な手段である。本発明においてコロナ処理又はプラズマ処理を行う窒素雰囲気中の酸素濃度は、前述のごとく、300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。連続的に長尺のフィルムロールを生産する場合においては、ロールの巻き始めから巻き終わりまでの窒素雰囲気中の酸素濃度の変動巾としては、好ましくは平均酸素濃度±80ppm以下の範囲内、さらに好ましくは平均酸素濃度±60ppm以下の範囲内である。
【0027】
本発明の熱収縮性フィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸の1種以上を用い、多価アルコール成分と重縮合した公知の(共重合)ポリエステルを用いることができる。芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられる。また、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0028】
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、多価アルコールではないが、ε−カプロラクトンも使用可能である。
【0029】
ポリエステル系熱収縮性フィルムを構成するポリエステル原料は、単独でもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。単独の場合は、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステルが好ましい。ポリエチレンテレフタレート単独では、熱収縮性が発現しないからである。
【0030】
熱収縮特性の点からは、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステル(2種以上であってもよい)を混合して使用することが好ましいが、共重合ポリエステル同士の組み合わせであってもよい。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート同士を組み合わせたり、これらと他の共重合ポリエステルを組み合わせて用いることもできる。最も熱収縮特性的に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレート、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとの混合ジオール成分とテレフタル酸とからなる共重合ポリエステルとの3種類のブレンドタイプである。2種以上のポリエステルを併用する場合は、前記したように、それぞれのポリマーのチップをホッパ内でブレンドすることが、生産効率の点からは好ましい。
【0031】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.3〜1.3dl/gのものが好ましい。
【0032】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルモニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
上記重合触媒以外の金属イオンの総量がポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを超えるとポリマーの着色が顕著になるのみならず、ポリマーの耐熱性や耐加水分解性が著しく低下するため好ましくない。
このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、総P量(P)と総金属イオン量(M)とのモル原子比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。モル原子比(P/M)が0.4未満または1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
上記金属イオンおよびリン酸及びその誘導体の添加時期は特に限定しないが、一般的には、金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。
【0033】
本発明熱収縮性ポリエステル系フィルムは滑剤として無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子を添加することができる。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リオチウム等が挙げられる。
特に、良好なハンドリング性を得た上に更にヘイズの低いフィルムを得るためには無機粒子としては1次粒子が凝集してできた凝集体のシリカ粒子が好ましい。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独又は共重合体が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
【0034】
上記滑剤の添加方法としては、フィルム原料として使用するポリエステルの重合工程中で該滑剤を分散する方法、又は重合後のポリエステルを再度溶融させて添加する方法等が挙げられる。フィルムロール中に均一に該滑剤を分散させるためには、前述のいずれかの方法でポリエステル中に滑剤を分散させたあと、滑剤を分散させたポリマーチップの形状を合わせて前記ホッパー内での原料偏析の現象を抑止することが好ましい。ポリエステルを例にとると、重合後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出され、直ちに水冷された後ストランドカッターでカットされたポリエステルのチップは底面を楕円形とする円筒状の形状となるが、楕円状底面の長径、短径及び円筒状の高さのそれぞれの平均サイズが、最も使用比率の高い原料種のチップサイズ±20%以内の範囲である異種の原料チップをもちいることが好ましく、前記サイズが±15%以内の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
前記の3次元表面粗さSΔa及び突起高さは、前述の滑剤粒子およびフィルムの製膜条件によって調整される。滑剤粒子の種類及び添加量は3次元表面粗さSΔaおよび突起高さが所定の範囲内に入るならば特に限定されるものではないが、滑剤の平均粒径は0.01μm以上4μm以下、特に0.05μm以上3μm以下が好ましく、添加量としては滑剤を0.02質量%以上、0.5質量%以下、特に0.03μm以上0.4質量%以下である。
滑剤の粒径が0.01μm未満では3次元粗さSΔaを0.01以上にすることが難しく、4μmより大きいと実質的に突起高さ1.89μm以上の突起を無くすことが困難となる。また添加量は0.02質量%未満では3次元粗さSΔaを0.01以上にすることが難しく、0.5質量%より大きいと3次元表面粗さSΔaを0.04以下にすることが困難となる。
延伸条件については添加する滑剤によっても変化し、その組み合わせによって3次元表面粗さSΔa、及び突起高さが所定の範囲内に入るなるば特に制限されるものではないが、最大延伸方向の延伸倍率が2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍延伸するのがよい。延伸倍率が前記範囲を外れると表面突起の形成が不十分となる。
【0036】
また、本発明の熱収縮性フィルムに対して使用するアルカリ脱離性を有するタイプのインクとは、例えば熱収縮フィルム上にインク層を積層した試料1gを1cm角に切断して100ccのNaOH3%水溶液(90℃)中で30分撹拌した後、水洗乾燥しインク除去率が90%以上であるインクを意味する。除去されるのは、インク層がアルカリ性温湯中で主として膨潤又は溶解されることによる。実用的には弱アルカリ性温湯による洗浄は通常20〜30分前後行われ、その間にインク層が脱落するものであればよい。
【0037】
インク層に上記特性を持たせる方法としては特に制約はないが、例えばアルカリ性温湯中で可溶な又は膨潤性の化合物を通常使用されるインク、例えば顔料又は染料からなる着色体、バインダー、揮発性有機溶剤を構成成分とするインクに添加する方法が挙げられる。アルカリ性温湯中で可溶又は膨潤性の化合物としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の無機塩、アスコルビン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の有機酸又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等の高分子ポリエーテル、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸又はそれらの金属塩並びにそれらの共重合体、例えばポリスチレンとポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸等のアクリル系化合物との共重合体等が挙げられる。
【0038】
また、上記化合物としては常温で液体のものも挙げられ、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのモノエチル、モノプロピル、モノブチルエーテルあるいはモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノブチルエーテル或いはモノメチル、モノエチルエステル等、その他、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。中でもインク層中に残存することが必要であることから高沸点であることが好ましく、具体的には沸点が50℃以上のものが好ましく、さらにアルカリ性温湯への可溶性から多価アルコールのモノアルキルエーテルが特に好ましい。
【0039】
なお、本発明の熱収縮性フィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性フィルムとしては、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0041】
(1)熱収縮率
試料フイルムを主収縮方向およびその直交方向に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。
【0042】
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とした。
【0043】
(2)フィルム表面の窒素原子含有量
X線光電子分光法測定装置(ESCAスペクトロメーター ES―200型(国際電気株式会社製))により試料フィルム表面の全元素量に対する窒素元素量の比率を定量して求めた。
【0044】
(3)85℃の1.5%NaOH水溶液浸漬後の窒素原子含有量低下率
試料フイルムを主収縮方向およびその直交方向に沿うように15cm×10cmのながい方形に裁断し、85℃±0.5℃の1.5%NaOH水溶液中に、無荷重状態で15分間浸漬後取りだし、表面を蒸留水で洗浄した。該フィルムを(2)の方法にしたがって表面窒素原子含有量を測定し、
窒素原子の含有量低下率(%)=100×(処理前の窒素原子含有量−処理前の窒素原子含有量)÷(処理前の窒素原子含有量)
として求めた。
【0045】
(4)フィルム表面の濡れ張力
JIS K6768の方法にてフィルム表面の濡れ張力を測定した。
【0046】
(5)インク密着性
大日精化工業(株)製インク「ダイエコロSRF915紅」と「SRF希釈溶剤No.2」を100:10の重量比で混合後、マイヤーバー#5を使用してフィルム上に塗布後、ただちにドライヤーの室温風にて15秒間乾燥した。該サンプルにセロハンテープを貼りつけた後に該テープを剥離して剥離後のインクピンホールの発生状況を以下に従い評価した。
○:インクピンホールの発生なし
△:インクピンホール発生するが全て1mm未満のサイズ
×:インクピンホールが発生して1mm以上のサイズのものあり
【0047】
(6)インクのアルカリ脱離性
(4)の方法にてフィルム表面にインクを塗布後、該サンプルを2cm×20cmのサイズに裁断し、温度を85℃±2℃の範囲内に制御した1.5%NaOH水溶液中に20分間浸漬後取りだして直ちに25℃±2℃の範囲内に20秒間浸漬して取りだし、インク層の脱離状態を目視で判定した。
○:インク層が全て脱離
△:インク層が部分的に脱離、または取りだし後に綿棒でインク層をこすると容易に剥離
可能
×:インク層が脱離せず、かつ取りだし後に綿棒でインク層をこすっても剥離不可能
【0048】
(7)ラベルカット後の開口性
熱収縮性フィルムをスリットし、続いて、センターシールマシンを用いて1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り、二つ折り状態で巻き取った。裁断機で連続的に裁断して(裁断ラベル数200)、熱収縮性フィルムラベルを作成後、手で全数開口して裁断部の開口性を判定した。
○:裁断部が抵抗なく開口できる
△:裁断部が軽い抵抗ある場合あるが開口可能である
×:裁断部が開口不可能な部分あり
【0049】
(8)ヒートシール性
ヒートシーラーにて、シールバーの表面温度が評価温度±0.5℃の範囲内で、圧力40N/cm2、時間300秒にてフィルム面同士をヒートシール後、15mm巾のサンプルを切り出し、引張試験機にて剥離強度を測定した。
【0050】
(9)表面処理のフィルム面積当りエネルギー換算値
表面処理のフィルム面積当りエネルギー換算値(KW/m2/min)=高周波電源装置電流値(A)×電圧(KV)÷電極幅(m)÷フィルム走行速度(m/min)
として求めた。
【0051】
(10)3次元表面粗さSΔa
フィルム表面を触針式3次元粗さ計(SE−3AK、株式会社小坂製作所製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmに亘って測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを3次元粗さ解析装置(SPA−11)に取りこませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に、解析装置を用いて、SΔaを求めた。SΔaは3次元平均傾斜勾配で、以下のように定義する。表面形状の(平均面基準による)の各切断面により切断して求まるパーテイクルの面積と個数の平均円半径rの変化をΔrとしてΔZ/Δrを各レベルの切断平面で求め、各値を平均して3次元平均傾斜勾配とする。
【0052】
(11)フィルム表面の突起数
フィルム表面に真空下でアルミ蒸着を施し、二光束干渉顕微鏡に波長0.54μmのフィルターを装着して観察される突起の周りに出来た7重リング以上(突起高さ1.89μm以上に相当)のリング数1.3mm2にわたって計測し、単位面積当りの個数として求めた。
【0053】
(12)フィルムの走行性、耐削れ性
フィルムを細幅にスリットしたテープ状とし、これを金属製ガイドロールにこすり付けて高速でかつ長時間走行させ、このガイドロール擦過後のテープ張力の大小及びガイドロールの表面に発生する白粉量の多少を、それぞれ以下に示すように5段階評価し、ランク付けした。
(イ)走行性
1級:張力大(擦り傷多い)
2級:張力やや大(擦り傷がかなり多い)
3級:張力中(擦り傷ややあり)
4級:張力やや小(擦り傷ほとんどなし)
5級:張力小(擦り傷発生なし)
(ロ)耐削れ性
1級:白粉の発生非常に多い
2級:白粉の発生多い
3級:白粉の発生ややあり
4級:白粉の発生ほぼなし
5級:白粉の発生なし
【0054】
[合成例1(ポリエステルの合成)]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分として、エチレングリコール(EG)72モル%とネオペンチルグリコール(NPG)30モル%を、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル(酸成分に対して)と、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル(酸成分に対して)添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件の下で重縮合反応を行い、固有粘度0.73dl/gのポリエステル(A)を得た。
なお、無機滑剤を添加する場合は、全てポリエステルB中に使用する無機滑剤をポリエステルB中に0.7質量%添加したマスターバッチを作成して必要量使用した。該滑剤の添加方法は、あらかじめエチレングリコール中に該滑剤を分散し、上記方法にて重合する方法を採った
【0055】
[合成例2および3]
合成例1と同様な方法により、表1に示すポリエステル原料チップ(B)および(C)を得た。なお、表中、BDは、1,4−ブタンジオールである。それぞれのポリエステルの固有粘度は、チップBが0.72dl/g、チップCが1.20dl/gであった。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例1)
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表1に示したように、チップAを53質量%、チップBを37質量%、チップCを10質量%を、押出機直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。 上記未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。
【0058】
続いて該フィルムを、処理電極及び処理部分を2重に囲い込み窒素を連続的に供給して窒素雰囲気に置換したコロナ処理装置に導き、表2の条件で窒素雰囲気下でのコロナ処理を施した。このとき、高周波電源装置は春日電機社装置置を使用し、発信周波数は45KHz±3KHz、処理電極はアルミニウム製のバー型電極、処理電極とフィルム間のギャップは0.4mm、処理ロールは表面材質がシリコンゴム製のものを使用し、処理雰囲気温度と処理ロール表面温度は共に40℃とし、処理時のフィルム表面温度も40℃であった。フィルムと囲い込み装置間のギャップは0.3mmとし、ギャップの部分は綿製の布(別珍)で被覆した。このフィルムを製造したときの窒素雰囲気中の酸素濃度は270ppmであった。
得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0059】
(比較例1)
実施例1で、製膜後に窒素雰囲気下でのコロナ処理を施さない以外は、実施例1と同様の方法で厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同じ方法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。続いて該フィルムを、処理電極及び処理部分を囲い込み窒素を連続的に供給して窒素雰囲気に置換したコロナ処理装置に導き、表2の条件で窒素雰囲気下でのコロナ処理を施した。このときの処理設備は実施例1と同じものを使用し、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0061】
(比較例2)
実施例1と同じ方法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。続いて該フィルムを、空気雰囲気下のコロナ処理装置に導き、表2の条件でコロナ処理を施した。このときの処理設備は実施例1と同じものを使用した。熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0062】
(比較例3)
実施例1と同じ方法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。続いて該フィルムを、窒素雰囲気下のコロナ処理装置に導き、表面処理エネルギー換算値は0.15(KW/m2/min)の条件でコロナ処理を施した。このときコロナ処理設備は実施例1のものを使用し、囲い込みの設備は、フィルムと囲い込み装置間のギャップは0.8mmとし、ギャップの部分の被覆はなしとした。このときの窒素雰囲気中の酸素濃度は2100ppmであった。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性フィルムは、様々なタイプのインクに対するインク密着性に優れ、かつアルカリ水溶液で脱離するタイプのインクに対して優れた脱離性を有し、かつフィルムをラベル状とする際のラベルカット後の開口性に優れ、かつハンドリング性に優れるため工業生産上において非常に有用なものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくは印刷時のインク密着性に優れ、かつアルカリ水溶液で脱離するタイプのインクに対して優れた脱離性を有し、かつフィルムをラベル状とする際のラベルカット後の開口性に優れ、かつ長期間保管後の経時変化が少なくその性能を維持する熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱収縮性フィルムは加熱により収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベル等の用途に広く用いられている。なかでも、塩化ビニル系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
これらの熱収縮性フィルムは、製造後、各種図柄の印刷工程を経て、印刷終了後は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベル等のサイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着等の手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にされ、チューブ状体のものを裁断して、ラベル、袋等の形態に加工される。そして、ラベルや袋状のものを開口させつつ容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
【0004】
ところで、前述の工程のうち、印刷工程においてインクのフィルムに対する密着性が悪いとインクの脱落、剥がれ等が発生して商品としての価値を損なうものとなる。特に、近年ではPETボトル用ラベル等においてリサイクルを目的とした、アルカリ水溶液中で脱離するタイプのインキや環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を削減あるいは使用しない水性タイプのインク等が開発されているが、これらのインクは所定の目的とする各々の性状を達成する為に、インクのフィルムに対する密着性等の性能が従来タイプのものよりも低下している場合がある。これらのの様々なインクに対して優れた密着性を有し、かつアルカリ水溶液中で良好な脱離性を発現でき、かつ前述のフィルムをラベル状とする際のラベルカット後の開口性に優れた熱収縮性フィルムが望まれていた。
【0005】
前述の様々なタイプのインク密着性を向上させる為には、例えばフィルム表面に通常の空気雰囲気下でのコロナ処理等の表面処理を施してフィルム表面の濡れ張力を高くする方法が考えられるが、これらの表面処理によってフィルム表面の濡れ張力を高めるとラベルカットした際にカット部分でフィルムが融着、ブロッキングを起こしてラベル装着時に開口不良を発生する問題が発生し、さらにテトラヒドロフランや1,3−ジオキソランによって溶剤接着してチューブ状にする際にフィルムの耐溶剤性が低下して、溶剤接着部分が平面性を失い、いわゆるワカメ状になったり、チューブの溶剤接着部分が他のフィルム部分とブロッキングを発生する問題があった。さらに、熱収縮性フィルムは、特に高速で製膜、加工を行う際や長尺で巻き取る場合には、フィルムの巻き取り性や滑り性が要求される。この滑り性が不十分な場合、高速での製膜、加工工程や長尺での巻き取り時にハンドリングの不良が発生し、フィルムの走行時にガイドロールとの接触において滑り性不良により、張力が増大し、フィルム表面に擦り傷を発生する走行性の悪化が見られたり、長尺で巻き取った場合にシワやニキビ状の欠点が発生する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような様々なタイプのインクに対する優れた密着性を有し、かつアルカリ脱離タイプのインクに対してアルカリ脱離性に優れ、かつラベルカット後のラベルの開口性に優れ、かつその性能が経時後も持続する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムを、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中15分間に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上である。
【0008】
又、フィルムの少なくとも片面の3次元表面粗さSΔa(3次元平均傾斜勾配)が0.01以上、0.04以下の範囲であり、かつ実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起がなく、フィルムの少なくとも片面同士を75℃でヒートシール後の剥離強度が5N/15mm巾以下、かつフィルムの少なくとも片面の濡れ張力が45mN/m以上であることが好ましい。
【0009】
上記の特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、優れた収縮加工性を有し、また、様々なタイプのインクに対する印刷加工性、密着性等の印刷適性に優れ、かつアルカリ脱離タイプのインクに対してはアルカリ脱離性に優れ、かつラベルカット後の開口性においてもカット部分の融着やブロッキングが発生せずラベル装着での加工性に優れており、かつ高速での製膜、加工性やハンドリング性を改善することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の熱収縮性フィルムは、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が、20%以上である熱収縮性フィルムである。フィルムの熱収縮率が20%未満であると、フィルムの熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。より好ましい熱収縮率は30%以上、さらに好ましくは40%以上である。
【0011】
ここで、最大収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、最大収縮方向は、正方形の縦方向または横方向の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である(以下、この条件で測定した最大収縮方向の熱収縮率を、単に「熱収縮率」と省略する)。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0012】
また、本発明のフィルムは、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上である熱収縮性フィルムである。
フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下とすることで、アルカリ脱離タイプのインクに対する密着性とある程度のアルカリ脱離性を付与することができるが、85℃の1.5%NaOH水溶液中に浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%未満であると、アルカリ脱離処理を行う際に完全にインクが脱離するまでに長時間を要するため、アルカリ脱離処理でのインク脱離不良が発生する。フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量は0.25%以上4.5%以下がより好ましく、0.3%以上4.3%以下であることがさらに好ましく、85℃の1.5%NaOH水溶液中に浸漬後の窒素原子含有量の低下率は60%以上がより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、少なくとも片面の3次元表面粗さSΔa(3次元平均傾斜勾配)が、0.01以上0.04以下の範囲であり、かつ実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起がないことにより、特に高速での製膜性・加工性に優れ、長尺フィルムで巻き取ることができる。SΔaが0.01未満では高速での製膜性・加工性が不良となり、また、長尺でフィルムを巻き取ることが困難となる。また、SΔaが0.04を超えるとフィルムの透明性が損なわれ、また、耐削れ性が不良となる。さらに、本発明のフィルムロールにおいて、実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起高さがないことが好ましい。1.89μm以上の突起があると透明性が不良になるだけでなく、耐削れ性不良のため発生した白粉や突起自身が原因となる印刷抜けが発生する。前記の3次元粗さSΔa及び突起高さを所定の範囲にすることにより高速での製膜性、加工性、ハンドリング性が良好となるが、フィルムのヘイズを12以下とすることによりさらに好ましいものとなる。
【0014】
また、本発明の熱収縮性フィルムはフィルムの同一面同士を75℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに5N/15mm巾以下であることが好ましい。該フィルム表面同士の75℃でヒートシール後の剥離強度が5N/15mm巾を超えると、特に、高速Sラベルカット後の融着、ブロッキングが発生する。本発明での好ましい実施様態は、該フィルム表面同士の75℃でヒートシール後の剥離強度が4.5N/15mm巾以下、さらに好ましい実施様態は、該フィルム表面同士の75℃でヒートシール後の剥離強度が4N/15mm巾以下である。さらに本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムの同一面同士を85℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに7N/15mm巾以下であることが好ましい。さらに好ましくは、フィルムの同一面同士を85℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに6N/15mm巾以下、特に好ましくはフィルムの同一面同士を85℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに5N/15mm巾以下である。
また、本発明ではフィルム表面の濡れ張力が45mN/m以上であることが必要である。該フィルム表面の濡れ張力が45mN/m未満であると、様々なタイプのインクに対する密着性が不充分となる。本発明の好ましい実施様態は該フィルム表面の濡れ張力が47mN/m以上、さらに好ましい実施様態は該フィルム表面の濡れ張力が48mN/m以上である。また、該フィルム表面の濡れ張力の上限は特に制限されるものではないが、ラベルカット後の融着、ブロッキングの発生やフィルム滑性の点からは58mN/m以下である。
【0015】
上記要件を満足する熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法を説明する。熱収縮性ポリエステル系フィルムのみならず、フィルムの製膜時あるいは製膜後に、フィルム表面の片面あるいは両面に空気雰囲気下でコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理等を実施して様々なインクに対する密着性を向上させることが行われている。中でも工業生産においては空気雰囲気下でのコロナ処理による表面処理が最も広く行われている。熱収縮性ポリエステル系フィルムにコロナ処理を行うと他のフィルムと同様に、表面の濡れ張力が増加して前述の様々なタイプのインクに対する密着性が向上する。そして、コロナ処理によってアルカリで脱離するタイプのインクに対するアルカリ脱離性は向上するが、熱収縮性ポリエステル系フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生しやすくなることを本発明者らは見出した。
【0016】
熱収縮性ポリエステル系フィルムはポリエチレンテレフタレートを最多構成モノマー成分として、必要な熱収縮率を得るために、ポリマーの結晶性を低下させ、非晶化する1,4−シクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコール等のモノマー成分や、ガラス転移温度(Tg)を低下させて低温での熱収縮率を発現させるための1,4−ブタンジオールや1,3−プロパンジオール等の低Tgモノマー成分を含有させており、特に前者のに非晶化させる成分の効果によって、フイルム表面処理の無い状態(未処理状態)では未処理のPETフィルムよりもインクに対する密着性は優れている。しかしながら、一般のPETフィルムで実施されているエネルギーレベルのコロナ処理を熱収縮性フィルムに施すと、特に前者のに非晶化させる成分の効果によって、表面が過度に酸化処理されることによって、表面張力が必要以上に増加して前述のフィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生しやすくなり、また、フィルム表面の滑性がより滑りにくい状態へ変化することにより、フィルムの加工性が悪化したり、又、例えばフィルムをロール巻きの状態で保管した際にフィルム同士のブロッキングが発生する悪さを生じるので弱処理でのコロナ処理を施す必要がある。このような弱処理を行う場合には、熱収縮性フィルムの中でも特に非晶化させる成分の多いものでは通常のPETフィルム用のコロナ処理設備では達成することが難しいために、弱処理用の特殊な電源や電極設備を新たに導入する必要が生じる。
【0017】
このような弱処理でのコロナ処理において、インクに対する密着性を向上させることは可能であるが、実用上必要なインク密着性のレベルまでコロナ処理を行うと、フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生する問題がありこの両方の特性を両立することはできない。
【0018】
これらのインク密着性とアルカリ脱離タイプのインクに対する脱離性を確保し、かつフィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングを発生させないためには、フィルム表面に窒素原子を含有させることが効果的であることを本発明者らは見出した。フィルム表面に窒素原子を所定の量含有させることによって上記効果を達成することができる。該フィルム表面の窒素原子の含有量が0.2%未満では本発明の目的とする、様々なタイプのインクに対する密着性が不充分となる。また、該フィルム表面の窒素原子の含有量が5.0%を超える場合には、ラベルカット後の融着、ブロッキングが発生し、又、フィルムの表面性状の変化による滑性の低下が発生する。
【0019】
本発明での好ましい実施様態は、該フィルム表面の窒素原子含有量が0.25%以上4.9%以下、さらに好ましい実施様態は、該フィルム表面の窒素原子含有量が0.3%以上4.8%以下である。なお、本発明でのフィルム表面の窒素原子の形態としては、窒素原子(N)の形態でもよく、又、窒素イオン(N+)の形態のいずれでもよい。さらに、該アルカリ浸漬処理後のフィルム表面の窒素原子含有量の低下率を50%以上とすることは、アルカリ脱離タイプのインキ自体のアルカリ脱離するする作用に加えて、フィルム側表面の窒素原子が脱離する作用を示し、両者の作用によりインクのアルカリ脱離作用をより高めるものである。85℃の1.5%NaOH水溶液中に15分間浸漬後の窒素原子含有量の低下率を50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。
【0020】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法を説明する。
フィルムの少なくとも片面の表面に窒素原子を含有させる方法としては、該フィルム表面を窒素雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理をする方法が好ましい。窒素雰囲気下でコロナ処理又はプラズマ処理をすることにより、窒素原子は窒素原子(N)の形態か、窒素イオン(N+)の形態でフィルム表面に存在する。
又、フィルム表面の窒素原子量をコントロールする方法としては、コロナ処理又はプラズマ処理での設備や処理条件を変更することが挙げられる。設備面では例えばコロナ処理設備においては電源の周波数や放電電極の材質、形状、本数、処理ロールの材質、放電電極とフィルム処理面とのギャップ、窒素雰囲気下での窒素ガス濃度が挙げられ、条件面ではフィルム走行速度、雰囲気温度や処理時のロール表面温度等が挙げられる。
【0021】
例えばコロナ処理において好ましい設備を例示すると、電源の周波数としては、8KHzから60KHzの範囲が好ましい。放電電極の材質としては、アルミニウム又はステンレスが好ましく、放電電極の形状はナイフエッジ状、バー状、又はワイヤー状であることが好ましい。また、放電電極の本数はフィルム表面を均一処理する為に、2本以上であることが好ましい。処理ロールは、コロナ放電を行う場合の対極となるものであるが、少なくとも表面の材質は誘電体である必要がある。誘電体材質としては、シリコンゴム、ハイパロンゴム、EPTゴム等を用いることが好ましく、少なくとも処理ロール表面を1mm厚以上の厚さで被覆することが好ましい。また、放電電極とフィルム処理面のギャップは0.2mm〜5mm程度の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、条件面ではフィルムの走行速度(処理速度)は設備能力の範囲内で任意の速度で処理を行うことができる。
【0023】
本発明において、窒素雰囲気下でのコロナ処理時のフィルム表面温度を20〜50℃の範囲内に制御し、かつ、窒素雰囲気下中の酸素濃度を300ppm以下に制御しかつ、フィルム表面の窒素原子含有量を本発明の範囲内に制御することにより、フィルム表面の窒素原子の形態をできるだけ(N)の形態とし、窒素イオン(N+)の発生を抑制することにより、85℃の1.5%NaOH水溶液中に15分間浸漬後の窒素原子含有量の低下率を制御することができる。
【0024】
また、処理ロール表面は温調設備により温度制御することが好ましい。処理ロール表面は30℃から40℃の範囲内にあることがさらに好ましい。また、必要に応じて処理ロールの前又は後に調温ロールを配置することもできる。
【0025】
本発明の前述の要件を満足し、表面の窒素原子含有量をコントロールするための手法を説明する。
【0026】
フィルム表面の窒素原子含有量が変動する要因の1つとしては、コロナ処理又はプラズマ処理を行う際の雰囲気の窒素濃度の変動が挙げられる。コロナ処理又はプラズマ処理設備を囲い込み、窒素で内部の空気を置換して、窒素雰囲気ととしてその内部にフィルムを走行させる際、走行フィルムの随伴流により、空気が流れ込んで窒素雰囲気の濃度が変動する現象が発生するのでこれを抑制することが好ましい。その方法として、第1にフィルムと囲い込み装置間のギャップをを0.4mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下として、さらにプラスチックフィルムや布で該ギャップを覆って随伴流をカットすることが挙げられる。さらに、囲い込みを2層以上の構造にして外層側で随伴流カットのための窒素を別途供給することも有効な手段である。本発明においてコロナ処理又はプラズマ処理を行う窒素雰囲気中の酸素濃度は、前述のごとく、300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。連続的に長尺のフィルムロールを生産する場合においては、ロールの巻き始めから巻き終わりまでの窒素雰囲気中の酸素濃度の変動巾としては、好ましくは平均酸素濃度±80ppm以下の範囲内、さらに好ましくは平均酸素濃度±60ppm以下の範囲内である。
【0027】
本発明の熱収縮性フィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸の1種以上を用い、多価アルコール成分と重縮合した公知の(共重合)ポリエステルを用いることができる。芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられる。また、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0028】
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、多価アルコールではないが、ε−カプロラクトンも使用可能である。
【0029】
ポリエステル系熱収縮性フィルムを構成するポリエステル原料は、単独でもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。単独の場合は、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステルが好ましい。ポリエチレンテレフタレート単独では、熱収縮性が発現しないからである。
【0030】
熱収縮特性の点からは、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステル(2種以上であってもよい)を混合して使用することが好ましいが、共重合ポリエステル同士の組み合わせであってもよい。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート同士を組み合わせたり、これらと他の共重合ポリエステルを組み合わせて用いることもできる。最も熱収縮特性的に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレート、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとの混合ジオール成分とテレフタル酸とからなる共重合ポリエステルとの3種類のブレンドタイプである。2種以上のポリエステルを併用する場合は、前記したように、それぞれのポリマーのチップをホッパ内でブレンドすることが、生産効率の点からは好ましい。
【0031】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.3〜1.3dl/gのものが好ましい。
【0032】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルモニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
上記重合触媒以外の金属イオンの総量がポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを超えるとポリマーの着色が顕著になるのみならず、ポリマーの耐熱性や耐加水分解性が著しく低下するため好ましくない。
このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、総P量(P)と総金属イオン量(M)とのモル原子比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。モル原子比(P/M)が0.4未満または1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
上記金属イオンおよびリン酸及びその誘導体の添加時期は特に限定しないが、一般的には、金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。
【0033】
本発明熱収縮性ポリエステル系フィルムは滑剤として無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子を添加することができる。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リオチウム等が挙げられる。
特に、良好なハンドリング性を得た上に更にヘイズの低いフィルムを得るためには無機粒子としては1次粒子が凝集してできた凝集体のシリカ粒子が好ましい。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独又は共重合体が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
【0034】
上記滑剤の添加方法としては、フィルム原料として使用するポリエステルの重合工程中で該滑剤を分散する方法、又は重合後のポリエステルを再度溶融させて添加する方法等が挙げられる。フィルムロール中に均一に該滑剤を分散させるためには、前述のいずれかの方法でポリエステル中に滑剤を分散させたあと、滑剤を分散させたポリマーチップの形状を合わせて前記ホッパー内での原料偏析の現象を抑止することが好ましい。ポリエステルを例にとると、重合後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出され、直ちに水冷された後ストランドカッターでカットされたポリエステルのチップは底面を楕円形とする円筒状の形状となるが、楕円状底面の長径、短径及び円筒状の高さのそれぞれの平均サイズが、最も使用比率の高い原料種のチップサイズ±20%以内の範囲である異種の原料チップをもちいることが好ましく、前記サイズが±15%以内の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
前記の3次元表面粗さSΔa及び突起高さは、前述の滑剤粒子およびフィルムの製膜条件によって調整される。滑剤粒子の種類及び添加量は3次元表面粗さSΔaおよび突起高さが所定の範囲内に入るならば特に限定されるものではないが、滑剤の平均粒径は0.01μm以上4μm以下、特に0.05μm以上3μm以下が好ましく、添加量としては滑剤を0.02質量%以上、0.5質量%以下、特に0.03μm以上0.4質量%以下である。
滑剤の粒径が0.01μm未満では3次元粗さSΔaを0.01以上にすることが難しく、4μmより大きいと実質的に突起高さ1.89μm以上の突起を無くすことが困難となる。また添加量は0.02質量%未満では3次元粗さSΔaを0.01以上にすることが難しく、0.5質量%より大きいと3次元表面粗さSΔaを0.04以下にすることが困難となる。
延伸条件については添加する滑剤によっても変化し、その組み合わせによって3次元表面粗さSΔa、及び突起高さが所定の範囲内に入るなるば特に制限されるものではないが、最大延伸方向の延伸倍率が2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍延伸するのがよい。延伸倍率が前記範囲を外れると表面突起の形成が不十分となる。
【0036】
また、本発明の熱収縮性フィルムに対して使用するアルカリ脱離性を有するタイプのインクとは、例えば熱収縮フィルム上にインク層を積層した試料1gを1cm角に切断して100ccのNaOH3%水溶液(90℃)中で30分撹拌した後、水洗乾燥しインク除去率が90%以上であるインクを意味する。除去されるのは、インク層がアルカリ性温湯中で主として膨潤又は溶解されることによる。実用的には弱アルカリ性温湯による洗浄は通常20〜30分前後行われ、その間にインク層が脱落するものであればよい。
【0037】
インク層に上記特性を持たせる方法としては特に制約はないが、例えばアルカリ性温湯中で可溶な又は膨潤性の化合物を通常使用されるインク、例えば顔料又は染料からなる着色体、バインダー、揮発性有機溶剤を構成成分とするインクに添加する方法が挙げられる。アルカリ性温湯中で可溶又は膨潤性の化合物としては、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の無機塩、アスコルビン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の有機酸又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等の高分子ポリエーテル、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸又はそれらの金属塩並びにそれらの共重合体、例えばポリスチレンとポリアクリル酸及び/又はポリメタクリル酸等のアクリル系化合物との共重合体等が挙げられる。
【0038】
また、上記化合物としては常温で液体のものも挙げられ、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのモノエチル、モノプロピル、モノブチルエーテルあるいはモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノブチルエーテル或いはモノメチル、モノエチルエステル等、その他、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。中でもインク層中に残存することが必要であることから高沸点であることが好ましく、具体的には沸点が50℃以上のものが好ましく、さらにアルカリ性温湯への可溶性から多価アルコールのモノアルキルエーテルが特に好ましい。
【0039】
なお、本発明の熱収縮性フィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性フィルムとしては、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
【0040】
【実施例】
以下、以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0041】
(1)熱収縮率
試料フイルムを主収縮方向およびその直交方向に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、85℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。
【0042】
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とした。
【0043】
(2)フィルム表面の窒素原子含有量
X線光電子分光法測定装置(ESCAスペクトロメーター ES―200型(国際電気株式会社製))により試料フィルム表面の全元素量に対する窒素元素量の比率を定量して求めた。
【0044】
(3)85℃の1.5%NaOH水溶液浸漬後の窒素原子含有量低下率
試料フイルムを主収縮方向およびその直交方向に沿うように15cm×10cmのながい方形に裁断し、85℃±0.5℃の1.5%NaOH水溶液中に、無荷重状態で15分間浸漬後取りだし、表面を蒸留水で洗浄した。該フィルムを(2)の方法にしたがって表面窒素原子含有量を測定し、
窒素原子の含有量低下率(%)=100×(処理前の窒素原子含有量−処理前の窒素原子含有量)÷(処理前の窒素原子含有量)
として求めた。
【0045】
(4)フィルム表面の濡れ張力
JIS K6768の方法にてフィルム表面の濡れ張力を測定した。
【0046】
(5)インク密着性
大日精化工業(株)製インク「ダイエコロSRF915紅」と「SRF希釈溶剤No.2」を100:10の重量比で混合後、マイヤーバー#5を使用してフィルム上に塗布後、ただちにドライヤーの室温風にて15秒間乾燥した。該サンプルにセロハンテープを貼りつけた後に該テープを剥離して剥離後のインクピンホールの発生状況を以下に従い評価した。
○:インクピンホールの発生なし
△:インクピンホール発生するが全て1mm未満のサイズ
×:インクピンホールが発生して1mm以上のサイズのものあり
【0047】
(6)インクのアルカリ脱離性
(4)の方法にてフィルム表面にインクを塗布後、該サンプルを2cm×20cmのサイズに裁断し、温度を85℃±2℃の範囲内に制御した1.5%NaOH水溶液中に20分間浸漬後取りだして直ちに25℃±2℃の範囲内に20秒間浸漬して取りだし、インク層の脱離状態を目視で判定した。
○:インク層が全て脱離
△:インク層が部分的に脱離、または取りだし後に綿棒でインク層をこすると容易に剥離
可能
×:インク層が脱離せず、かつ取りだし後に綿棒でインク層をこすっても剥離不可能
【0048】
(7)ラベルカット後の開口性
熱収縮性フィルムをスリットし、続いて、センターシールマシンを用いて1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り、二つ折り状態で巻き取った。裁断機で連続的に裁断して(裁断ラベル数200)、熱収縮性フィルムラベルを作成後、手で全数開口して裁断部の開口性を判定した。
○:裁断部が抵抗なく開口できる
△:裁断部が軽い抵抗ある場合あるが開口可能である
×:裁断部が開口不可能な部分あり
【0049】
(8)ヒートシール性
ヒートシーラーにて、シールバーの表面温度が評価温度±0.5℃の範囲内で、圧力40N/cm2、時間300秒にてフィルム面同士をヒートシール後、15mm巾のサンプルを切り出し、引張試験機にて剥離強度を測定した。
【0050】
(9)表面処理のフィルム面積当りエネルギー換算値
表面処理のフィルム面積当りエネルギー換算値(KW/m2/min)=高周波電源装置電流値(A)×電圧(KV)÷電極幅(m)÷フィルム走行速度(m/min)
として求めた。
【0051】
(10)3次元表面粗さSΔa
フィルム表面を触針式3次元粗さ計(SE−3AK、株式会社小坂製作所製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmに亘って測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを3次元粗さ解析装置(SPA−11)に取りこませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に、解析装置を用いて、SΔaを求めた。SΔaは3次元平均傾斜勾配で、以下のように定義する。表面形状の(平均面基準による)の各切断面により切断して求まるパーテイクルの面積と個数の平均円半径rの変化をΔrとしてΔZ/Δrを各レベルの切断平面で求め、各値を平均して3次元平均傾斜勾配とする。
【0052】
(11)フィルム表面の突起数
フィルム表面に真空下でアルミ蒸着を施し、二光束干渉顕微鏡に波長0.54μmのフィルターを装着して観察される突起の周りに出来た7重リング以上(突起高さ1.89μm以上に相当)のリング数1.3mm2にわたって計測し、単位面積当りの個数として求めた。
【0053】
(12)フィルムの走行性、耐削れ性
フィルムを細幅にスリットしたテープ状とし、これを金属製ガイドロールにこすり付けて高速でかつ長時間走行させ、このガイドロール擦過後のテープ張力の大小及びガイドロールの表面に発生する白粉量の多少を、それぞれ以下に示すように5段階評価し、ランク付けした。
(イ)走行性
1級:張力大(擦り傷多い)
2級:張力やや大(擦り傷がかなり多い)
3級:張力中(擦り傷ややあり)
4級:張力やや小(擦り傷ほとんどなし)
5級:張力小(擦り傷発生なし)
(ロ)耐削れ性
1級:白粉の発生非常に多い
2級:白粉の発生多い
3級:白粉の発生ややあり
4級:白粉の発生ほぼなし
5級:白粉の発生なし
【0054】
[合成例1(ポリエステルの合成)]
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分として、エチレングリコール(EG)72モル%とネオペンチルグリコール(NPG)30モル%を、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル(酸成分に対して)と、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル(酸成分に対して)添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件の下で重縮合反応を行い、固有粘度0.73dl/gのポリエステル(A)を得た。
なお、無機滑剤を添加する場合は、全てポリエステルB中に使用する無機滑剤をポリエステルB中に0.7質量%添加したマスターバッチを作成して必要量使用した。該滑剤の添加方法は、あらかじめエチレングリコール中に該滑剤を分散し、上記方法にて重合する方法を採った
【0055】
[合成例2および3]
合成例1と同様な方法により、表1に示すポリエステル原料チップ(B)および(C)を得た。なお、表中、BDは、1,4−ブタンジオールである。それぞれのポリエステルの固有粘度は、チップBが0.72dl/g、チップCが1.20dl/gであった。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例1)
上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表1に示したように、チップAを53質量%、チップBを37質量%、チップCを10質量%を、押出機直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。 上記未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。
【0058】
続いて該フィルムを、処理電極及び処理部分を2重に囲い込み窒素を連続的に供給して窒素雰囲気に置換したコロナ処理装置に導き、表2の条件で窒素雰囲気下でのコロナ処理を施した。このとき、高周波電源装置は春日電機社装置置を使用し、発信周波数は45KHz±3KHz、処理電極はアルミニウム製のバー型電極、処理電極とフィルム間のギャップは0.4mm、処理ロールは表面材質がシリコンゴム製のものを使用し、処理雰囲気温度と処理ロール表面温度は共に40℃とし、処理時のフィルム表面温度も40℃であった。フィルムと囲い込み装置間のギャップは0.3mmとし、ギャップの部分は綿製の布(別珍)で被覆した。このフィルムを製造したときの窒素雰囲気中の酸素濃度は270ppmであった。
得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0059】
(比較例1)
実施例1で、製膜後に窒素雰囲気下でのコロナ処理を施さない以外は、実施例1と同様の方法で厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同じ方法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。続いて該フィルムを、処理電極及び処理部分を囲い込み窒素を連続的に供給して窒素雰囲気に置換したコロナ処理装置に導き、表2の条件で窒素雰囲気下でのコロナ処理を施した。このときの処理設備は実施例1と同じものを使用し、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0061】
(比較例2)
実施例1と同じ方法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。続いて該フィルムを、空気雰囲気下のコロナ処理装置に導き、表2の条件でコロナ処理を施した。このときの処理設備は実施例1と同じものを使用した。熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0062】
(比較例3)
実施例1と同じ方法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜した。続いて該フィルムを、窒素雰囲気下のコロナ処理装置に導き、表面処理エネルギー換算値は0.15(KW/m2/min)の条件でコロナ処理を施した。このときコロナ処理設備は実施例1のものを使用し、囲い込みの設備は、フィルムと囲い込み装置間のギャップは0.8mmとし、ギャップの部分の被覆はなしとした。このときの窒素雰囲気中の酸素濃度は2100ppmであった。得られたフィルムの物性値を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性フィルムは、様々なタイプのインクに対するインク密着性に優れ、かつアルカリ水溶液で脱離するタイプのインクに対して優れた脱離性を有し、かつフィルムをラベル状とする際のラベルカット後の開口性に優れ、かつハンドリング性に優れるため工業生産上において非常に有用なものである。
Claims (3)
- フィルムを、10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上であり、フィルムの少なくとも片側表面の窒素原子含有量が0.2%以上5.0%以下であり、かつ85℃の1.5%NaOH水溶液中に15分間浸漬後の窒素原子含有量の低下率が50%以上であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 該フィルムの少なくとも片面の3次元表面粗さSΔa(3次元平均傾斜勾配)が0.01以上、0.04以下の範囲であり、かつ実質的に表面の突起高さが1.89μm以上の突起がないことを特徴とする請求項1記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
- 該フィルムの同一面同士を75℃でヒートシール後の剥離強度がフィルムの両面ともに5N/15mm巾以下、かつフィルムの少なくとも片面の表面の濡れ張力が45mN/m以上であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
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JP2003104062A Pending JP2004042605A (ja) | 2002-05-17 | 2003-04-08 | 熱収縮性ポリエステル系フィルム |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004042605A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011503339A (ja) * | 2007-11-19 | 2011-01-27 | コーロン インダストリーズ,インコーポレイテッド | 熱収縮性ポリエステル系フィルム |
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2003
- 2003-04-08 JP JP2003104062A patent/JP2004042605A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2011503339A (ja) * | 2007-11-19 | 2011-01-27 | コーロン インダストリーズ,インコーポレイテッド | 熱収縮性ポリエステル系フィルム |
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