JP2005034058A - 微生物または細胞の試験方法及び該方法に使用する粘着シート - Google Patents
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Abstract
【課題】粘着層表面上に捕集した微生物または細胞の濃度が、その検出に使用する検出手法に適した濃度よりも過剰もしくは希薄と予想される場合、または、実際に過剰もしくは希薄であった場合に、簡単に検出手法に適した検体濃度に調整でき、それによって微生物または細胞の検出操作のやり直しを解消もしくは軽減できる、微生物または細胞の試験方法を提供する。
【解決手段】基材上に粘着層を積層してなる粘着シートの該粘着層を被験体の表面に圧着、剥離して該粘着層の表面に微生物または細胞を捕集後、該粘着シートを延伸または収縮させ、しかる後、前記捕集した微生物または細胞の検出を行うことを含む、被験体中に存在する微生物または細胞の試験方法。
【選択図】なし
Description
本発明は微生物または細胞の試験方法に関し、より詳しくは、粘着シートを被験体に圧着、剥離して、被験体の表面(被験面)の微生物または細胞を粘着シートの粘着層表面に捕集後、該捕集した微生物または細胞の検出を行う、微生物または細胞の試験方法に関する。
従来より、被験面上に存在する肉眼では観察することのできない細菌等の微生物を観察および計数するには、培養法、すなわち、寒天などで賦形した固形の平板培地を被験面に押し当てることにより、被験面上の微生物を平板培地上に転写し、該微生物をそのまま平板培地上で至適環境下に培養することにより出現するコロニーを肉眼または実体顕微鏡等で見定めながら計測する方法が一般的に利用されている。例えば、フードスタンプ(日水製薬(株)製)を使用したアガースタンプ法等が挙げられる。
また、微生物捕捉能力のあるメンブレンフィルタ等を用いるメンブレンフィルタ法は、被験面を生理食塩水やリン酸緩衝液等を用いて十分に拭き取りながら集積することにより微生物を洗い出し、この洗い出した集積液をメンブレンフィルタで濾過することによって、メンブレンフィルタ上に微生物を捕集した後、微生物と液体培地とを十分に接触させて該フィルタ上にコロニーを形成させ、コロニー数を計測する方法である。メンブレンフィルタ法はまた、フィルタ上に捕集した微生物を適当な染色液と接触させて、発色した菌体数を顕微鏡等で計数することにより、培養を行わずに微生物を検出する方法としても利用することができる。
しかしながら、アガースタンプ法等では、通常、一つの被験面に対して一度しか使用できなかったり、寒天培地の含水率によって捕集効率が変化し、再現性に劣るなど、微生物の捕集効率において不都合を来たす場合があった。また、培養法の共通の課題として、微生物間のコンタミネーションが起こり、培地上での微生物間の相互作用により純粋培養ができないために、その後の判定に不都合を来たす場合があった。加えて、培養法では当然のことながら、生菌のみに限定されるという制約があり、検出もれが起こるという問題があった。さらに、培養法では少なくとも1〜2日の培養時間を必要とするので、リアルタイムでの微生物のモニタリングができないという重大な制約があった。
また、メンブレンフィルタ法では、被験体が水溶液等の液状物であればそのまま濾過できるが、非液状の被験体では、綿棒でのサンプリング、洗い出し液の調製などを含め微生物の集積に多大な労力がかかるという欠点があった。さらに、洗い出しおよび濾過操作により微生物以外の捕集物が膨潤して、後の観察・測定の妨げになるという問題もあった。
そこで、本願出願人は、先に、上述の各方法における諸欠点を解消し得る方法として、被験面に粘着シートの粘着層を圧着、剥離して、該粘着層上に微生物を捕集(集積)した後、微生物を染色し得る1種以上の発色性物質を含有する水溶液を粘着層表面に接触させ、染色された菌体を観察・計数(画像解析)することで、被験体中に存在する微生物を検出できる試験方法を提案した(下記特許文献1)。この試験方法は、粘着シート(の粘着層)を微生物の捕集手段として用いることによって、特に固体状の被験体の表面(固体表面)に存在する微生物を迅速かつ簡便に検出できるようにしたものであるが、粘着層表面に捕集した微生物を検出する際、粘着層表面における検体濃度(すなわち、一定面積当たりの微生物の存在数)は必ずしも使用する検出手法にとって最適なシグナル数が得られる適切な濃度にはなっておらず、そのために、粘着層表面上の検体濃度を適切な濃度に調整し直してから、再度検出操作を行わなければならない場合がある。
すなわち、粘着層表面における検体濃度が適切な濃度よりも希薄であった場合は、例えば、被験面への粘着シート(粘着層)の圧着、剥離を繰り返し行ってその濃度を高め、また、粘着層表面における検体濃度が適切な濃度よりも過剰であった場合は、例えば、再度検体を綿棒等で拭き取った後、緩衝液にけん濁してその濃度を低下させる必要があり、試験の迅速性を阻害することとなっていた。
特開2002−142797号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、粘着層を被験面に圧着、剥離して粘着層表面上に捕集した検体(微生物または細胞)の濃度が、その検出に使用する検出手法に適した濃度よりも過剰もしくは希薄と予想される場合、または、実際に過剰もしくは希薄であった場合に、粘着層を被験面に再度圧着、剥離することなく、粘着層表面上の検体濃度を、検出手法に適した検体濃度に簡単に調整でき、それによって微生物または細胞の検出操作のやり直しを解消もしくは軽減できる、微生物または細胞の試験方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、当該方法の実施に特に好適な微生物または細胞の試験用粘着テープを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、粘着シートを延伸または収縮させることによる粘着層面積の拡大または縮小によって、粘着層表面に捕集した微生物または細胞の濃度(単位面積当たりの存在数)を変化させることができ、しかも、その変化量は粘着シートの延伸もしくは収縮度合いと相関することを知見し、該知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に粘着層を積層してなる粘着シートの該粘着層を被験体の表面に圧着、剥離して該粘着層の表面に微生物または細胞を捕集後、該粘着シートを延伸または収縮し、しかる後、前記捕集した微生物または細胞の検出を行うことを含む、被験体中に存在する微生物または細胞の試験方法、
(2)粘着シートの基材が50%モジュラスが5〜15N/mm2で、50%伸長時の応力残存率が50%以下のプラスチックシートからなり、当該粘着シートを少なくとも延伸した後、微生物または細胞の検出を行う方法である、上記(1)記載の方法、
(3)粘着シートの基材が50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上のプラスチックシートからなり、当該粘着シートを少なくとも収縮させた後、微生物または細胞の検出を行う方法である、上記(1)記載の方法、
(4)微生物または細胞の検出が、発色性物質で微生物または細胞を染色することによるものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)粘着シートの粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層であり、該非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層の表面に発色性物質を含有する水溶液を接触して、微生物または細胞を染色する、上記(4)記載の方法、
(6)微生物または細胞の検出が、微生物または細胞を培養することによるものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(7)上記(1)記載の方法に使用する粘着シートであって、50%モジュラスが5〜15N/mm2で、50%伸長時の応力残存率が50%以下のプラスチックシート上に粘着層を積層してなる、微生物または細胞の試験用粘着シート、
(8)粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層からなる、上記(7)記載の粘着シート、
(9)上記(1)記載の方法に使用する粘着シートであって、50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上のプラスチックシート上に粘着層を積層してなる、微生物または細胞の試験用粘着シート、及び
(10)粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層からなる、上記(9)記載の粘着シート、に関する。
(1)基材上に粘着層を積層してなる粘着シートの該粘着層を被験体の表面に圧着、剥離して該粘着層の表面に微生物または細胞を捕集後、該粘着シートを延伸または収縮し、しかる後、前記捕集した微生物または細胞の検出を行うことを含む、被験体中に存在する微生物または細胞の試験方法、
(2)粘着シートの基材が50%モジュラスが5〜15N/mm2で、50%伸長時の応力残存率が50%以下のプラスチックシートからなり、当該粘着シートを少なくとも延伸した後、微生物または細胞の検出を行う方法である、上記(1)記載の方法、
(3)粘着シートの基材が50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上のプラスチックシートからなり、当該粘着シートを少なくとも収縮させた後、微生物または細胞の検出を行う方法である、上記(1)記載の方法、
(4)微生物または細胞の検出が、発色性物質で微生物または細胞を染色することによるものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)粘着シートの粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層であり、該非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層の表面に発色性物質を含有する水溶液を接触して、微生物または細胞を染色する、上記(4)記載の方法、
(6)微生物または細胞の検出が、微生物または細胞を培養することによるものである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(7)上記(1)記載の方法に使用する粘着シートであって、50%モジュラスが5〜15N/mm2で、50%伸長時の応力残存率が50%以下のプラスチックシート上に粘着層を積層してなる、微生物または細胞の試験用粘着シート、
(8)粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層からなる、上記(7)記載の粘着シート、
(9)上記(1)記載の方法に使用する粘着シートであって、50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上のプラスチックシート上に粘着層を積層してなる、微生物または細胞の試験用粘着シート、及び
(10)粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層からなる、上記(9)記載の粘着シート、に関する。
本発明の微生物または細胞の試験方法によれば、微生物等の検出手法に応じて、それに適した検体濃度を粘着層の表面上に簡単に実現することができるので、効率良く、かつ、高い検出精度で微生物または細胞の検出を行うことができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の試験方法(以下、単に「方法」ともいう。)は、基材上に粘着層を積層してなる粘着シートの該粘着層を被験体の表面に圧着、剥離して該粘着層の表面に微生物または細胞を捕集後、該粘着シートを延伸または収縮し、しかる後、前記捕集した微生物または細胞の検出を行うことが特徴である。
すなわち、本発明の方法は、基本的には、被験面に粘着シートを圧着、剥離して微生物等を捕集後、粘着シートを延伸して粘着層の表面上の微生物等の濃度(検体濃度:単位面積当たりの微生物等の存在数)を希釈する操作(第1の操作)か、もしくは、粘着シートを収縮して粘着層の表面上の微生物等の濃度を濃縮する操作(第2の操作)を行って、使用する微生物等の検出手法に適した検体濃度を粘着層の表面に実現するものである。
本発明の方法では、粘着シートの粘着層表面に微生物または細胞(以下、「微生物等」と呼ぶことがある。)を捕集後、粘着シートを延伸または収縮することにより、粘着層表面における単位面積当たりの微生物等の存在数(検体濃度)を希釈もしくは濃縮するので、微生物等の検出手法(例えば、染色した微生物等の顕微鏡もしくは光学機器を用いての発色状態や発色量の観察、微生物等の培養によるコロニーの肉眼での目視判定等)に応じて、それに適した検体濃度を粘着層の表面上に簡単に実現することができ、その結果、効率良くかつ高い検出精度で微生物または細胞の検出を行うことができる。なお、本発明における「微生物または細胞の検出」とは「微生物または細胞の存在を認知することまたは/及びその存在数を計数すること」を意味する。
本発明で使用する粘着シートは、粘着性の高分子化合物(粘着剤)を主成分とする粘着層を基材の少なくとも片面上に積層したものである。
粘着層における高分子化合物(粘着剤)には、被験面上の微生物等を捕獲するのに十分な粘着性を有するものであればよく、公知の粘着シートに使用されている種々の粘着性を示す高分子化合物(粘着剤)を使用できるが、後述するように、粘着シートの粘着層表面に染色用水溶液を接触させ、粘着層表面上に捕集した微生物等を染色してその検出を行う場合、発色性物質の粘着層への含浸や、粘着層の水溶液中への溶け出しによる微生物等の移動を防止する観点から、高分子化合物(粘着剤)には非水溶性高分子化合物(非水溶性粘着剤)を使用するのが好ましい。
かかる非水溶性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合物、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル等が挙げられ、これらの中でも、微生物等を染色して顕微鏡等でその画像取得を行う場合の光学特性に影響が少ないという観点から、透明性が高いアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等が好ましく、アクリル系粘着剤が特に好ましい。また、特に微生物等を蛍光標識してその検出を行う場合には、透明性が高く、しかも、無蛍光性である点からアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤が好ましい。
アクリル系粘着剤の好適な具体例としては、アルキル基の炭素数が2〜13の直鎖又は分岐のアルキル基である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル及び(メタ)アクリル酸デシル等から選ばれる1種または2種以上を主モノマーとし、これに(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールといった親水性のモノマーを1種または2種以上共重合させた共重合体が挙げられる。
また、粘着特性(特に粘着力)の改善のために、上記の共重合体に、イソシアネート化合物、有機過酸化物、エポキシ基含有化合物といった熱架橋剤による処理や、紫外線、γ線、電子線等の照射処理等を行って、架橋を施したものも好ましく使用される。
シリコーン系粘着剤の好適な具体例としては、主成分がジメチルシロキサンからなるものが挙げられる。
ゴム系粘着剤の具体例としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブテン、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体等の主ポリマーに、粘着付与樹脂としてロジン系樹脂やテルペン系樹脂、クロマン−インデン系樹脂、石油系樹脂を配合したもの等が挙げられる。
本発明において、粘着層に使用する高分子化合物(粘着剤)は1種の高分子化合物(粘着剤)であっても、2種以上の高分子化合物の混合物であってもよい。また、粘着層には、粘着剤とともに、必要に応じて、粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、架橋剤など、常用の添加剤を配合することができる。
本発明で使用する粘着シートにおける粘着層の厚みは、被験体の被験面に対する接着性、追従性、微生物捕獲性等の観点から、5〜100μmとするのが好ましく、特に好ましくは20〜50μmである。すなわち、厚みが100μmを超える場合は、粘着シートの被検面への、圧着、剥離操作等がしにくくなり、また、厚みが5μmより小さい場合、十分な塗工精度が得られにくく、粘着層の接着性等に悪影響を及ぼし、その結果として微生物捕獲性が低下するため、好ましくない。
また、粘着層表面に捕集した微生物等を顕微鏡等で観察する場合、その粘着層の表面の平滑度(凹凸差)は20μm以下であるのが好ましく、特に好ましくは15μm以下である。平滑度が20μm以下であれば、顕微鏡の焦点の合致範囲が広くなり、検出が容易となり、特に、蛍光顕微鏡等の蛍光画像取得手段による画像解析を行う場合に、より正確な画像処理を行うことができる。なお、粘着層の平滑度は表面粗さ計あるいは電子顕微鏡等で粘着シートの断面を観察し、粘着層表面の凸部の頂点から凹部の最深部までの高度差を測定して求めることができる。
本発明において、粘着シートの基材は、粘着層表面に大きな凹凸を形成させず、また、曲面や狭所表面にも自在に圧着させ得る柔軟な材質からなる基材であれば、特に制限なく使用でき、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタン−アクリルハイブリッド樹脂等からなるプラスチックシート、布、不織布、紙、ポリエチレンラミネート紙等が挙げられる。これらの中でも、粘着層表面に微生物を捕集した後の粘着シートの延伸または収縮をスムーズに行え、粘着層表面を平滑性に優れたものにでき、しかも、粘着層表面に染色用水溶液を接触させて微生物または細胞を染色してその検出を行う場合に、染色用水溶液中の発色性物質が基材に含浸し難い等の点から、プラスチックシートが好ましい。
上記のウレタン−アクリルハイブリッド樹脂とは、ウレタンプレポリマーとアクリルポリマーとの複合体であり、水分散体として調製できるものである。当該ウレタン−アクリルハイブリッド樹脂については、例えば特開2000−248236号公報に詳しく記載されているが、これによれば、(a)ウレタン−アクリルハイブリッド水分散物を調整した後、(b)これに鎖式または脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とするポリマーのガラス転移温度が273K以上となる非粘着化用単量体を加えて、重合処理をすることにより、室温で非粘着性のウレタン−アクリルポリマーの水分散体が得られる。上記(a)工程では、(1)カルボキシル基含有ウレタンプレポリマ―に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を混合し、これを上記プレポリマーのカルボキシル基を中和して水に分散させ、イソシアネート基の反応による上記プレポリマ―の主鎖延長と上記単量体の重合を行う方法により、または、(2)ポリオ―ルに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分としこれにカルボキシル基含有単量体を加えた単量体混合物を共重合させてなる分子内にカルボキシル基と水酸基を有する重合体を混合し、これにポリイソシアネートを反応させてイソシアネートプレポリマ―を合成し、このプレポリマーを上記カルボキシル基を中和して水に分散させ、イソシアネート基の反応による主鎖延長を行う方法により、ウレタン−アクリルハイブリツド水分散物を調製する。上記(a)工程において、ウレタンを構成させるためのポリオールとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどが好ましく、ポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式のものを使用でき、水との反応性の低い脂環式のものを使用するのが特に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜14の範囲にあるものが好ましい。カルボキシル基含有単量体には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などがある。また、上記(b)工程における非粘着化用単量体には、脂肪または脂環族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とし、ポリマーのガラス転移温度が273K以上、好ましくは300K以上となるものが用いられる。アクリル成分としては、これら以外の共重合可能な単量体を使用することもできる。
このようなウレタン−アクリルハイブリッド水分散体の製造に際し、(a)工程のウレタン−アクリルハイブリッド水分散体の固形物20〜90重量%、(b)工程の非粘着化用単量体80〜10重量%とし、最終的にポリオール成分10〜50重量%、ポリイソシアネート成分2〜20重量%、アクリル成分40〜90重量%となるように配合組成を調整することで、その物性を任意に変更できる。このようにして調製された、水分散体は、例えば、剥離処理したポリエステルフィルム上にアプリケーター等で直接塗工し、55〜120℃で乾燥することによって基材用シートに形成される。
本発明の試験方法は、前記の通り、被験面に粘着シートを圧着、剥離して微生物等を捕集後、粘着シートを延伸して粘着層の表面上の微生物等の濃度(検体濃度)を希釈する操作(第1の操作)によって検体濃度の調整を行い、その後に微生物等の検出を行う第1の態様と、被験面に粘着シートを圧着、剥離して微生物等を捕集後、粘着シートを収縮して粘着層の表面上の微生物等の濃度(検体濃度)を濃縮する操作(第2の操作)によって検体濃度の調整を行い、その後に微生物等の検出を行う第2の態様とがある。
第1の態様で使用する粘着シートとしては、良好な希釈効果を得るために、基材が適度な50%モジュラスと高い応力緩和性を有することが重要である。すなわち、50%モジュラスとは基材を50%伸長するのに必要な応力であり、第1の態様で使用する粘着シートの基材は50%モジュラスが5〜15N/mm2の範囲にあるのものが好ましく、5〜10N/mm2の範囲にあるものがより好ましい。基材の50%モジュラスが5N/mm2未満である場合、そのような基材を用いた粘着シートを使用した場合、粘着シートの使用前まで形状保持性に問題が生じる可能性があり、また、基材の50%モジュラスが15N/mm2を超える場合、そのような基材を用いた粘着シートを使用した場合、延伸操作に必ず延伸治具が必要となり、操作性が悪くなるため、好ましくない。また、基材の応力残存率とは、50%伸長状態を維持するときに、初期応力N1を5分後の応力N2で割った値(%)であり、第1の態様で使用する粘着シートの基材は応力緩残存率が50%以下のものが好ましく、応力残存率が40%以下のものがより好ましい。基材の応力残存率が50%を超える場合、そのような基材を用いた粘着シートを使用した場合、微生物等の検出作業中に粘着シートが元の大きさに戻ろうとし、希釈効果が軽減又は消失してしまう。
上記の好ましい機械的特性(物理的特性)を有する基材は、例えば、ポリ塩化ビニルシート、ウレタン−アクリルハイブリッド樹脂のシート等によって実現でき、中でもウレタン−アクリルハイブリッド樹脂のシートは特に好ましいものである。
一方、第2の態様で使用する粘着シートとしては、良好な濃縮効果を得るために、応力緩和性が比較的乏しい基材を用いた粘着シートを使用することが重要であり、50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上(より好ましくは180秒以上)の基材を使用した粘着シートが好適である。すなわち、基材の応力緩和時間が60秒未満の粘着シートを使用した場合、濃縮効果が十分に得られなくなる他、予め粘着シートを延伸し、カバー材で固定した状態で保持しておくことが困難となるため、好ましくない。
上記の好ましい機械的特性(物理的特性)を示す基材は、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンシート、ポリウレタンシート、エチレン−酢酸ビニル共重合体シート等によって実現でき、中でもポリエチレンシートが特に好ましいものである。
なお、該第2の態様に使用する粘着シートは、通常、基材の上に粘着層を形成後、延伸し、その状態でカバー材を貼り合わせる等してその延伸状態を保持したものであり、該延伸状態でその粘着層を被験面に圧着、剥離した後、カバー材を剥がす等してシートを収縮させる。なお、シートの収縮動作が完了する(収縮が止まる)までの途上で適時にシートに再度カバー材を貼り合わせる等して収縮動作を中断させることで、その収縮度合いを調節することができる。
本発明で使用する粘着シートにおいて、基材の厚みは、粘着シートの支持体としての十分な強度が得られる厚みであれば特に制限されるのものではないが、一般的には5〜40μm程度が好ましく、より好ましくは10〜20μm程度である。
基材の作製方法としては、各種基材用シートの製造方法として知られている公知の方法で行うことができる。例えば、プラスチックシートの場合には、原料樹脂の分散液ないし溶液を離型処理した基材上に塗布、乾燥してシートを剥離して作製する方法や、原料樹脂を押出成形、カレンダー成形等によりシート状に成形する方法等が挙げられる。なお、押出成形、カレンダー成形等で成形したプラスチックシートには適宜延伸処理を施してもよい。
なお、本発明で使用する粘着シートにおいて、基材のその上に粘着層を積層する面とは反対面に、基材の強度を上げたり、光学的な散乱防止や発色性物質を用いて発色した微生物等の視認性を向上させるバックグランド色を形成するために、さらにバッキング層を積層してもよい。
本発明で使用する粘着シートは、自体既知の方法で製造される。例えば、粘着層に用いる高分子化合物を含有する溶液を基材上に塗布し、室温から100℃で乾燥させることによって製造される。他に、カレンダー法、キャスティング法や押出し成形法などの方法を用いることもできる。かくして得られた粘着シートは任意の形状に裁断して、使用することができる。
本発明においては、粘着シートの粘着層を被験面に圧着する前に、粘着シートに電子線あるいはγ線などの放射線を照射することにより、滅菌することと同時に粘着層に用いる高分子化合物に架橋を施すこともできる。また、エチレンオキサイドなどのガスによる滅菌を施すこともでき、滅菌した状態で微生物遮断性包材に封入することなどにより、無菌状態を保持した形態をとることができる。
本発明の試験方法における、試験対象の微生物には、例えば、細菌や放線菌などの原核生物、酵母やカビなどの真核生物、下等藻類、ウイルス等が挙げられ、また、細胞には、動植物由来の培養細胞、スギやヒノキなどの花粉等が挙げられる。
本発明において、微生物等を検出するための方法(検出手法)は、微生物及び細胞の検出手法として知られている公知の方法を採用でき、特に限定されないが、検出に要する時間短縮、簡便性等の点から、発色性物質により微生物等を染色することにより、その発色状態や発色量を観察する方法が好ましい。なお、発色性物質は、検出対象である微生物または細胞に作用して発色するものであれば特に限定されないが、その代表例としては、核酸やタンパク質を染色する蛍光染色液が挙げられる。さらに具体的な発色性物質としては、微生物一般を対象とする場合には、蛍光性核酸塩基類似体、核酸を染色する蛍光染色剤、タンパク質を染色する染色液、タンパク質等の構造解析に用いられる環境性蛍光プローブ、細胞膜や膜電位の解析に使用される染色液、蛍光体の標識に用いられる染色液等が、真核微生物を対象とする場合は、ミトコンドリアを染色する染色液、ゴルジ体を染色する染色液、小胞体を染色する染色液、細胞内エステラーゼと反応する染色液及びその修飾化合物等が、高等動物細胞を対象とする場合は、骨組織の観察に使用される染色液、神経細胞トレーサである染色液等が挙げられ、これらは蛍光顕微鏡で観察することができる。
これらの発色性物質の種類を選択することによって、すべて微生物を検出する全菌数測定、呼吸活性を持つ微生物のみを染色し計数する検定、エステラーゼ活性を持つ微生物のみを染色し計数する検定、あるいは複数の発色性物質を組み合わせた二重染色法を用いることにより特定の属や種の微生物を染色し計数する検定などの、幅広い分野での適用が可能である。
上記のような方法で蛍光染色した微生物または細胞の蛍光観察像を得る事例としては、以下のようなものがある。粘着シートで捕集した微生物または細胞にエステラーゼ活性によって蛍光化する試薬、例えば、カルボキシフツオセインジアセテート(以下、CFDAと略す)を反応させ、得られた蛍光像から、微生物または細胞を認識、検出する。
微生物または細胞を染色してその検出を行う場合、微生物または細胞を捕集した粘着層の表面に、発色性物質を含有する水溶液を接触させて粘着層の表面上で微生物または細胞を染色し、その発色状態や発色量を顕微鏡もしくは光学機器を用いて観察するのが好ましく、このようにすることで、被験体中に存在する微生物または細胞をリアルタイムで検出することができる。なお、粘着層表面に発色性物質を含有する水溶液を接触させて、微生物または細胞を染色する場合、前述したように、粘着シートはプラスチックシートからなる基材上に非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層を積層した粘着シートが好ましく、を使用するのが好ましい。
本発明において、微生物または細胞の検出はそれらの培養によっても行うことができる。すなわち、粘着シートの粘着層を被験面に圧着、剥離して、粘着層の表面に微生物等を捕集し、さらに粘着シートを延伸または収縮して微生物等の濃度調整を行った後、粘着層表面の微生物等を寒天平板培地上に転写し、微生物等をそのまま平板培地上で適当な環境のもとで培養し、それによって出現するコロニーを肉眼または実体顕微鏡等で見定めながら計測する。なお、特定菌を検出したい場合には、特定菌特異的な基質を培地に加えることにより、コロニーの着色化も可能である。
本発明の試験方法は、被験体の種類、被験体をとりまく環境等に応じて、その被験体中(表面)に存在する微生物または細胞の濃度(単位面積当たりの存在数)を予測し、使用する検出手法に最適な検体濃度となるように、粘着シートの粘着層の表面上の微生物または細胞の濃度を粘着シートの延伸または収縮によって調整してから、微生物または細胞の検出を行えるので、1回の検出操作で、微生物または細胞の検出を精度良く行うことができる。
本発明の試験方法では、粘着シートの粘着層を、例えば、床、壁、食材等の被験面に圧着して、被験面上に付着している微生物及び細胞を粘着層の表面の転写、集積(捕集)する。すなわち、本発明の試験方法は、固体状の被験体中に存在する微性物等の検出に特に有利である。なお、第2の態様の方法では、被験面に存在する微生物または細胞を粘着層表面に捕集後、粘着シートを収縮させて、粘着層表面における単位面積当たりの検体密度を高める(検体濃度を濃縮する)が、特に、微生物または細胞が少ないと考えられる被験面に対しては、粘着シートの粘着層表面(同一面)を複数回圧着、剥離して、微生物または細胞を捕集してから、粘着シートを収縮させてもよい。また、本発明の試験方法は、液状の被験体中の微生物等をメンブレンフィルタで濾過することでフィルタ上に捕集した微生物等を、該フィルタ面に粘着シートの粘着層を圧着、剥離することによって粘着層表面に転写、集積し、その後粘着シートを延伸または収縮して粘着層表面上の微生物等の濃度(検体濃度)を調整してから、微生物等の検出を行うというような利用も可能である。
本発明において、粘着シートの延伸(すなわち、「第1の態様の試験方法での被験面へ粘着シートを圧着、剥離した後の延伸」及び「第2の態様の試験方法での粘着シートを予め延伸状態に保持しておく際の延伸」)は、粘着シートをその面積が拡大するように基材表面と平行に均一に延伸することであり、第2の態様の試験方法での、粘着シートを被験面へ圧着、剥離した後の「粘着シートの収縮」は、延伸した粘着シートが延伸前の元の状態に弾性復帰する際の粘着シートの収縮を意味する。なお、粘着シートの延伸の形態は特に限定されないが、通常、基材表面内の任意の一方向(基材表面と平行な任意の一方向)か、若しくは、基材表面内の互いに直交する任意の二方向(基材表面と平行で、かつ、互いに直交する任意の二方向)であり、また、延伸は手による粘着シートの引き伸ばしによって行ってもよいが、機器を用いて行うのが好ましく、特に粘着シートを基材表面内の互いに直交する任意の二方向に延伸する場合には機器を使用するのが好ましい。粘着シートの延伸に使用する機器としては、例えば、二軸延伸機等が挙げられる。
また、一軸または二軸の延伸処理を経て製造されたプラスチックシートを基材に用いた粘着シートは、加熱することで、基材が前記の一軸または二軸方向に収縮し得る。従って、このような延伸処理を経て製造されたプラスチックシートを基材に用いた粘着シートを使用する場合、被験面へ粘着シートの粘着層を圧着する前に粘着シートを予め延伸しておかなくとも、粘着シートの粘着層を被験面に圧着、剥離した後、粘着シートを加熱することによって粘着シートを収縮させることができるので、粘着シートの粘着層を被験面に圧着、剥離後、粘着シートを加熱することで、粘着層表面上の検体(微生物または細胞)の濃度を調整することができる。よって、第2の態様による方法で試験を行う場合に、延伸処理を経て製造されたプラスチックシートを基材に用いた粘着シートは有用である。
本発明において、前記したように、粘着シートの粘着層表面に発色性物質を含有する水溶液を接触させて粘着層表面上の微生物または細胞を染色することによってその検出を行う場合、余剰な発色性物質を除去する必要があれば、無菌水などで微生物を集積した面を濯いで洗浄してもよい。また、微生物を染色後に微生物を集積した面を乾燥する必要がある場合は、風乾、自然乾燥、減圧乾燥などにより乾燥することができる。また、発色性物質が蛍光染料の場合は、励起光下で顕微鏡観察することにより、検出機能が付与され、微生物を直接カウントすることができる。
また、微生物の検出は、肉眼による目視判定により、または自動焦点機能を有する光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー顕微鏡などの顕微鏡もしくは他の適当な光学機器を用いて光学的画像を形成させ、この像を画像解析することにより行うことができる。ここで、他の光学機器としては、微生物をレーザー光で高速スキャンニングし、個々の微生物から得られたシグナルをグラフィカル表示するレーザースキャンニングサイトメーターが例示される。粘着シートの粘着層の表面上に捕集した微生物を光学機器を用いた光学的画像の画像解析にって検出する場合、数分〜十数分以内に検出できる。
本明細書中の主な特性及び物性値は以下の方法で測定した。
(1)基材の50%モジュラス
縦50mm×横20mm×厚み50μmのサンプルシート(試験片)につき、伸び25mmのひずみを与えたときの応力を測定した。測定装置は、オートグラフAGS−100D(島津製作所社製)を使用し、温度23℃、相対湿度65%、荷重9.8N、引張り速度300mm/min、チャック間距離20mmの条件で測定した。
(2)応力残存率及び応力緩和時間
上記のサンプルシート(試験片)につき、50%の伸長を維持するときの最初の応力N1と5分後の応力N2とを測定し、N2/N1×100=(%)を応力残存率とした。
応力緩和時間はN1が1/eに減少するのに要する時間で表す。
測定装置と測定条件は上記と同様とした。
(1)基材の50%モジュラス
縦50mm×横20mm×厚み50μmのサンプルシート(試験片)につき、伸び25mmのひずみを与えたときの応力を測定した。測定装置は、オートグラフAGS−100D(島津製作所社製)を使用し、温度23℃、相対湿度65%、荷重9.8N、引張り速度300mm/min、チャック間距離20mmの条件で測定した。
(2)応力残存率及び応力緩和時間
上記のサンプルシート(試験片)につき、50%の伸長を維持するときの最初の応力N1と5分後の応力N2とを測定し、N2/N1×100=(%)を応力残存率とした。
応力緩和時間はN1が1/eに減少するのに要する時間で表す。
測定装置と測定条件は上記と同様とした。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、以下の記載中、「部」は「重量部」を意味する。
〔実施例1〕
(1)粘着シートの作製
重量平均分子量(Mw)が3,000のポリプロピレングリコール/アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸(100部/45部/45部/10部)からなる単量体混合物に水酸基を有する連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール2部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて、窒素気流下、60℃で4時間重合反応を行い、上記ポリプロピレングリコールと数平均分子量7,500の重合体(アクリルポリマー)との混合物からなる粘稠液体を得た。イソホロンジイソシアネート23.5部を加え。65℃で3時間反応させ、イソシアネートプレポリマーを合成した。このイソシアネートプレポリマーに、トリエチルアミン14部(カルボキシル基に対して等当量)を水16.2部で希釈した溶液を加えて、65℃で3時間反応させ、主鎖延長を行った。このようにして得たウレタン−アクリルハイブリッド水分散物に、攪拌しながら、アクリル酸イソボルニル113.7部からなる非粘着化用単量体(該アクリル酸イソボルニルのホモポリマー(ポリアクリル酸イソボルニル)のガラス転移温度は367K)を加えて、上記水分散物のウレタン−アクリル核ポリマー粒子に吸収させた。ついで、2,2−アゾビズ〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)〕プロパン0.11部を加えて、重合反応を開始し、60℃で4時間保持した後、70℃に昇温して1時間保持し、冷却した。このような重合処理によって、ポリオール成分29重量%、ポリイソシアネート成分7重量%、アクリル成分63重量%(残りの成分には中和剤やウレタンの主鎖延長剤などが含まれる)からなる室温で非粘着性のウレタン−アクリルポリマーが水に安定に分散されたウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を得た。そして、このウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を、支持体形成用のポリマー分散体とした。この水分散体を剥離処理したポリエステルフィルム上に塗布し、110℃で5分乾燥して、厚さが30μmの均一なフィルムを作製した。このフィルムの50%モジュラスは8N/mm2、50%応力残存率は30%であった。
(1)粘着シートの作製
重量平均分子量(Mw)が3,000のポリプロピレングリコール/アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸(100部/45部/45部/10部)からなる単量体混合物に水酸基を有する連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール2部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて、窒素気流下、60℃で4時間重合反応を行い、上記ポリプロピレングリコールと数平均分子量7,500の重合体(アクリルポリマー)との混合物からなる粘稠液体を得た。イソホロンジイソシアネート23.5部を加え。65℃で3時間反応させ、イソシアネートプレポリマーを合成した。このイソシアネートプレポリマーに、トリエチルアミン14部(カルボキシル基に対して等当量)を水16.2部で希釈した溶液を加えて、65℃で3時間反応させ、主鎖延長を行った。このようにして得たウレタン−アクリルハイブリッド水分散物に、攪拌しながら、アクリル酸イソボルニル113.7部からなる非粘着化用単量体(該アクリル酸イソボルニルのホモポリマー(ポリアクリル酸イソボルニル)のガラス転移温度は367K)を加えて、上記水分散物のウレタン−アクリル核ポリマー粒子に吸収させた。ついで、2,2−アゾビズ〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)〕プロパン0.11部を加えて、重合反応を開始し、60℃で4時間保持した後、70℃に昇温して1時間保持し、冷却した。このような重合処理によって、ポリオール成分29重量%、ポリイソシアネート成分7重量%、アクリル成分63重量%(残りの成分には中和剤やウレタンの主鎖延長剤などが含まれる)からなる室温で非粘着性のウレタン−アクリルポリマーが水に安定に分散されたウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を得た。そして、このウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を、支持体形成用のポリマー分散体とした。この水分散体を剥離処理したポリエステルフィルム上に塗布し、110℃で5分乾燥して、厚さが30μmの均一なフィルムを作製した。このフィルムの50%モジュラスは8N/mm2、50%応力残存率は30%であった。
イソノニルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/アクリル酸(65/30/5(仕込み重量比))にアゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として重合して得られたゲル分率40%(w/w)の共重合物トルエン溶液を得た。この溶液を、上記ウレタン−ハイブリッドフィルムの片面に30μm厚に塗布し。130℃で5分乾燥した。さらに、エチレンオキサイドによる滅菌を行って粘着シートを得た。
(2)微生物の捕集および染色
Staphylococcus epidermidis IF03762培養液を無菌水で100倍希釈した溶液0.1mLを0.4μmの直径を有するポリカーボネート膜で濾過し、無菌リン酸緩衝液で洗浄した平膜上の微生物を検体とし、(1)で作製した粘着シートを濾過面に押し付けた後に剥離した。そして、該剥離した粘着シートを両方向(互いに直交する二方向)にそれぞれ1.5倍に均一に延伸したもの(サンプルA)と、それぞれ2倍に均一に延伸したもの(サンプルB)を作成した。
Staphylococcus epidermidis IF03762培養液を無菌水で100倍希釈した溶液0.1mLを0.4μmの直径を有するポリカーボネート膜で濾過し、無菌リン酸緩衝液で洗浄した平膜上の微生物を検体とし、(1)で作製した粘着シートを濾過面に押し付けた後に剥離した。そして、該剥離した粘着シートを両方向(互いに直交する二方向)にそれぞれ1.5倍に均一に延伸したもの(サンプルA)と、それぞれ2倍に均一に延伸したもの(サンプルB)を作成した。
次に6−CFDAを0.1%含むリン酸緩衝液を染色液として、上記サンプルA、Bの粘着層表面(微生物捕集面)に滴下し、3分間室温に放置して染色した後、さらにリン酸緩衝液で粘着層表面(微生物捕集面)を洗浄した。
(3)検出(計測)
蛍光顕微鏡(オリンパス社製、BX51−43−FL−2)により、β励起光を照射し、倍率400倍にて、サンプルの粘着層表面(微生物捕集面)を観察し、緑色に染色された菌数を測定した。
蛍光顕微鏡(オリンパス社製、BX51−43−FL−2)により、β励起光を照射し、倍率400倍にて、サンプルの粘着層表面(微生物捕集面)を観察し、緑色に染色された菌数を測定した。
〔比較例1〕
実施例1で使用した粘着シートを用い、粘着シートの延伸を行わなかった以外は同様にして、菌数の計測を行った。
実施例1で使用した粘着シートを用い、粘着シートの延伸を行わなかった以外は同様にして、菌数の計測を行った。
実施例1と比較例1とも菌数の計測は3個のサンプルについて行い、その平均値を求めた。結果を表1及び図1に示す。
図1に示すように、粘着シートの延伸倍率と蛍光顕微鏡カウント値の低下の割合に相関性が認められた。よって、粘着シートの延伸により検体濃度を定量的に希釈できることを確認できた。
〔実施例2〕
(1)粘着シートの作製
イソノニルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/アクリル酸(65/30/5(仕込み重量比))にアゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として重合して得られたゲル分率40%(w/w)の共重合物トルエン溶液を得た。この溶液を、乾燥時の厚みが20μmとなるように25μm厚の透明ポリエチレンフィルム(応力緩和時間:300秒、50%モジュラス:10N/mm2、応力残存率:30%)の片面に塗布し、130℃で5分乾燥し、さらに、線量25kグレイのγ線滅菌を行って、粘着シートを得た。そして、該粘着シートを両方向(互いに直交する二方向)にそれぞれ均一に2倍延伸し、そのままの状態でカバー材を貼り、固定した。
(1)粘着シートの作製
イソノニルアクリレート/2−メトキシエチルアクリレート/アクリル酸(65/30/5(仕込み重量比))にアゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として重合して得られたゲル分率40%(w/w)の共重合物トルエン溶液を得た。この溶液を、乾燥時の厚みが20μmとなるように25μm厚の透明ポリエチレンフィルム(応力緩和時間:300秒、50%モジュラス:10N/mm2、応力残存率:30%)の片面に塗布し、130℃で5分乾燥し、さらに、線量25kグレイのγ線滅菌を行って、粘着シートを得た。そして、該粘着シートを両方向(互いに直交する二方向)にそれぞれ均一に2倍延伸し、そのままの状態でカバー材を貼り、固定した。
(2)微生物の捕集
微生物をE.coliDH5αとし、実施例1と同様の微生物の捕集操作を行った。染色は行わず、粘着シートのカバー材を剥がして粘着シートを収縮させ、粘着シートを延伸前の元の大きさに戻した。そして、この粘着シートの粘着層表面(微生物捕集面)をLB培地へ転写し、一晩(16時間)培養した。
微生物をE.coliDH5αとし、実施例1と同様の微生物の捕集操作を行った。染色は行わず、粘着シートのカバー材を剥がして粘着シートを収縮させ、粘着シートを延伸前の元の大きさに戻した。そして、この粘着シートの粘着層表面(微生物捕集面)をLB培地へ転写し、一晩(16時間)培養した。
(3)計測
コロニー数を目視でカウントした。
コロニー数を目視でカウントした。
〔比較例2〕
実施例2と同様にして粘着シートを作製し、粘着シートを延伸せずに、そのままの大きさで、実施例2と同様にして微生物の捕集を行い、コロニー数を目視で観察した。
実施例2と同様にして粘着シートを作製し、粘着シートを延伸せずに、そのままの大きさで、実施例2と同様にして微生物の捕集を行い、コロニー数を目視で観察した。
実施例2と比較例2ともコロニー数の計測は3個のサンプルについて行い、その平均値を求めた。実施例2と比較例2の結果を表2に示す。
表2より、実施例2の、両方向(互いに直交する二方向)へそれぞれ均一に2倍に延伸してカバー材を固定した粘着シートのカバー材を剥がして転写したプレートは1cm2当たりのコロニー生育数が約2倍となっていることが分かる。よって、〔シートの延伸→カバー材固定→捕集→シートの収縮〕による濃縮効果が明らかになった。
以上の実施例1、2で確認した、粘着シートの希釈または延伸度合いと検体濃度との相関性に基づき、身の回りの物を被験物として、菌を人為的に添加することなく、自然環境中における微生物数についての検出試験を行った(実施例3)。以下、かかる実施例3とその結果を比較例のそれと併せて記載する。
〔実施例3〕
(1)粘着シートの作製
アクリル酸2−エチルヘキシル70部、エトキシエチルアクリレート25部、アクリル酸5部、酢酸エチル150部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部を重合反応容器内に仕込み、反応容器内を窒素置換しながら攪拌を行った。その後、内浴温度を55〜65℃に保持し、約10時間重合を行った。次いで、内浴温度を70度に上昇させて、約2時間攪拌を続けた。得られた共重合物のガラス転移温度は212Kであり、ゲル分率は31.5%であった。次に、この粘着剤を表面シリコーン処理した剥離紙に乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、130℃で5分間乾燥した。この粘着剤を含む剥離紙の粘着剤面に、片面コロナ処理を施した厚み75μmのポリエステルフィルムを貼付圧着して、有効粘着面が約14cm2になるように裁断した。
(1)粘着シートの作製
アクリル酸2−エチルヘキシル70部、エトキシエチルアクリレート25部、アクリル酸5部、酢酸エチル150部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部を重合反応容器内に仕込み、反応容器内を窒素置換しながら攪拌を行った。その後、内浴温度を55〜65℃に保持し、約10時間重合を行った。次いで、内浴温度を70度に上昇させて、約2時間攪拌を続けた。得られた共重合物のガラス転移温度は212Kであり、ゲル分率は31.5%であった。次に、この粘着剤を表面シリコーン処理した剥離紙に乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、130℃で5分間乾燥した。この粘着剤を含む剥離紙の粘着剤面に、片面コロナ処理を施した厚み75μmのポリエステルフィルムを貼付圧着して、有効粘着面が約14cm2になるように裁断した。
(2)微生物の捕集・計測
上記作製した粘着シートの剥離紙を剥がして、粘着層の表面をドアノブに対し3回圧着・剥離を繰り返し、菌を集積した。二軸延伸機を用いて該粘着シートを両方向(互いに直交する二方向)にそれぞれ1.2倍に均一に延伸したものと、それぞれ1.6倍に均一に延伸したものを作成した。次に、菌を集積した粘着剤面を、減菌脱イオン水で1万倍に希釈した SYBR Green II(SYBR Green II RNA Gel Stain, Molecular Probes Inc.製)を滴下した後、自然乾燥し、490nmの励起波長の蛍光顕微鏡(倍率400倍)を用いて緑色に染色された菌数を計測した。
上記作製した粘着シートの剥離紙を剥がして、粘着層の表面をドアノブに対し3回圧着・剥離を繰り返し、菌を集積した。二軸延伸機を用いて該粘着シートを両方向(互いに直交する二方向)にそれぞれ1.2倍に均一に延伸したものと、それぞれ1.6倍に均一に延伸したものを作成した。次に、菌を集積した粘着剤面を、減菌脱イオン水で1万倍に希釈した SYBR Green II(SYBR Green II RNA Gel Stain, Molecular Probes Inc.製)を滴下した後、自然乾燥し、490nmの励起波長の蛍光顕微鏡(倍率400倍)を用いて緑色に染色された菌数を計測した。
〔比較例3〕
実施例3の(2)の試験で集菌したエリアに相当するエリアを拭き取り法、すなわち、滅菌含水綿棒(商品名:ふきふきチェック、栄研器材社製)で拭き取り、減菌生理食塩水に懸濁した。一般生菌用培地にまき、二晩(48時間)培養した後、コロニー数を目視で測定した。
実施例3の(2)の試験で集菌したエリアに相当するエリアを拭き取り法、すなわち、滅菌含水綿棒(商品名:ふきふきチェック、栄研器材社製)で拭き取り、減菌生理食塩水に懸濁した。一般生菌用培地にまき、二晩(48時間)培養した後、コロニー数を目視で測定した。
以下の表3に実施例3と比較例3の結果を示す。
表3に示すように、実施例3ではほぼ延伸倍率に比例した菌数測定結果となった。比較例3の拭き取り培養結果と比較してやや低めの予測菌数であるが、サンプルの誤差内であり、延伸による希釈効果を確認することができた。
Claims (10)
- 基材上に粘着層を積層してなる粘着シートの該粘着層を被験体の表面に圧着、剥離して該粘着層の表面に微生物または細胞を捕集後、該粘着シートを延伸または収縮し、しかる後、前記捕集した微生物または細胞の検出を行うことを含む、被験体中に存在する微生物または細胞の試験方法。
- 粘着シートの基材が、50%モジュラスが5〜15N/mm2で、50%伸長時の応力残存率が50%以下のプラスチックシートからなり、当該粘着シートを少なくとも延伸した後、微生物または細胞の検出を行う方法である、請求項1記載の方法。
- 粘着シートの基材が50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上のプラスチックシートからなり、当該粘着シートを少なくとも収縮させた後、微生物または細胞の検出を行う方法である、請求項1記載の方法。
- 微生物または細胞の検出が、発色性物質で微生物または細胞を染色することによるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 粘着シートの粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層であり、該非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層の表面に発色性物質を含有する水溶液を接触して、微生物または細胞を染色する、請求項4記載の方法。
- 微生物または細胞の検出が、微生物または細胞を培養することによるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 請求項1記載の方法に使用する粘着シートであって、50%モジュラスが5〜15N/mm2で、50%伸長時の応力残存率が50%以下のプラスチックシート上に粘着層を積層してなる、微生物または細胞の試験用粘着シート。
- 粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層からなる、請求項7記載の粘着シート。
- 請求項1記載の方法に使用する粘着シートであって、50%伸長時の応力緩和時間が60秒以上のプラスチックシート上に粘着層を積層してなる、微生物または細胞の試験用粘着シート。
- 粘着層が非水溶性高分子化合物を主成分とする粘着層からなる、請求項9記載の粘着シート。
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