JP2005032984A - コイル部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明はコイル部品に関し、特に小型化が容易で、優れた特性のコイル部品を提供することを目的とする。
【解決手段】素体1上にコイル導体2の両端の少なくとも一方に露出部3を有し、さらにコイル導体2の一対の端子と電気的に接続した端面電極4を設けた構成で、このコイル導体2の両端の少なくとも一方に露出部3を有することによって、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた特性を発揮するコイル部品となる。
【選択図】 図1
【解決手段】素体1上にコイル導体2の両端の少なくとも一方に露出部3を有し、さらにコイル導体2の一対の端子と電気的に接続した端面電極4を設けた構成で、このコイル導体2の両端の少なくとも一方に露出部3を有することによって、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた特性を発揮するコイル部品となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器、通信機器などに利用されるコイル部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コイル部品は各種電子機器、通信機器などに多用されており、近年は小型あるいは薄型、さらには多機能なコイル部品がますます要求されており、しかも、回路の高周波化、高速信号化やデジタル化に伴ってノイズ対策部品としてのコイル部品もますます重要になってきている。
【0003】
従来これらの要望を満たすコイル部品としては、ガラスセラミック材料あるいはフェライト磁性材料からなる素体内に螺旋状や直線状などのコイル導体を埋設したコイル部品やガラスセラミック材料あるいはフェライト磁性材料からなる基板上にスパイラル状のコイル導体を有したコイル部品などが提案されている。さらに、セラミック材料あるいはフェライト磁性材料からなる素体表面に螺旋状のコイル導体を設けたコイル部品なども提案されている。
【0004】
以上のコイル部品を実現するための製造方法としては、フェライト磁性層とコイル用導体層を交互に積層して得る方法や、あるいはフェライト磁性層にコイル用導体層を形成し、これらを積層する方法、さらには素体に導体層を形成し、螺旋状に切断してコイル部品を得る方法など種々提案されている。
【0005】
素体表面に螺旋状のコイル導体を設けたコイル部品としては、素体全面に形成した導体の一部を螺旋状に除去してコイル部品化するために螺旋状導体とそれらに隣接して端面電極部を有する構成のコイル部品が知られている。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−335526号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のように、素体表面に螺旋状のコイル導体を設けるとともに、その両隣り合う位置に端面電極部を設けることによって、表面実装を可能にしたコイル部品は、比較的に容易かつ低工数で実現することができるが、その特性は不十分なものであった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決し、コイル導体が発生する磁束を適切化することによって、優れた特性のコイル部品を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
本発明の請求項1記載の発明は、柱状の素体と、前記素体の外周面に被覆した導体からなる螺旋状のコイル導体と、前記コイル導体の端部と引出電極を介して接続し、前記素体の両端部に形成した端面電極とを備え、前記導体の端部と前記端面電極との間には、前記引出電極を除いて、少なくとも前記素体の一部を露出させた露出部を設けた構成である。上記構成により、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた電気特性を有するコイル部品を得ることができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をセラミック材料にした構成である。上記構成により、素体の耐熱性や機械的強度は優れたものになる。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をガラス材料にした構成である。上記構成により、素体の耐熱性や機械的強度さらには表面平滑性が優れるため、その表面に形成した導体も平坦性が優れたものになる。
【0014】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をフェライト磁性材料にした構成である。上記構成により、素体が磁性を有するため、電気特性が優れたものになる。
【0015】
本発明の請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をガラスとセラミックの混合体にした構成である。上記構成により、素体の耐熱性、機械的強度が優れ、さらに素体形成が比較的低温度で作製可能なため、容易に得ることができる構成となる。
【0016】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をAl2O3を含有した絶縁材料とした構成である。上記構成により、素体の耐熱性、機械的強度が優れ、さらには安価な構成となる。
【0017】
本発明の請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体を誘電体とした構成である。上記構成により、優れた電気特性を有する構成となる。
【0018】
本発明の請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体を有機材料とした構成である。上記構成により、素体の軽量化や薄型化が容易で、しかも優れた電気特性が得られる構成となる。
【0019】
本発明の請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体を金属材料の表面に絶縁層を有する構成である。上記構成により、素体の機械的強度が優れ、さらに絶縁層の形成が容易な構成となる。また、磁性を有する場合は、さらに優れた電気特性となる。
【0020】
本発明の請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、特に、絶縁層を金属材料からなる素体の少なくとも一部表面を絶縁化した導体絶縁化層とした構成である。上記構成により、絶縁層の形成が容易な単純な構成となる。
【0021】
本発明の請求項11記載の発明は、請求項1記載の発明において、コイル導体と端面電極の一部分は共通の導体材料からなる構成である。上記構成により、コイル導体と端面電極の接続信頼性が優れた構成となる。
【0022】
本発明の請求項12記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、コイル導体と素体の露出部の少なくとも一部の表面を外装材で覆った構成である。上記構成により、絶縁性の優れた構成となる。
【0023】
本発明の請求項13記載の発明は、請求項15記載の発明において、特に、外装材を導体を絶縁化した導体絶縁化層とした構成である。上記構成により、厚みなどの均一性の優れた構成となる。
【0024】
本発明の請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、外装材の少なくとも一部の表面をさらに第2外装材で覆った構成である。上記構成により、絶縁性の優れた構成となる。
【0025】
本発明の請求項15記載の発明は、請求項12記載の発明において、特に、外装材をガラスとセラミックの混合体とした構成である。上記構成により、絶縁性と機械的強度の優れた構成となる。
【0026】
本発明の請求項16記載の発明は、請求項12記載の発明において、特に、外装材をフェライト磁性材料からなる構成である。上記構成により、電気特性や磁気シールド性の優れた構成となる。
【0027】
本発明の請求項17記載の発明は、請求項12記載の発明において、特に、外装材を有機材料と無機材料の混合体とした構成である。上記構成により、被覆性や機械的強度の優れた構成となる。
【0028】
本発明の請求項18記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、絶縁層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とするとともに、導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体との付着性が優れた外装材を有する。
【0029】
本発明の請求項19記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、絶縁層はCu系金属を絶縁化した絶縁化Cu系金属層とするとともに、導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体との付着性が優れた外装材を有する。
【0030】
本発明の請求項20記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、外装材は2層からなり、素体側を第1層とするとともに外装材側を第2層としており、前記第1層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とするとともに、前記第2層はCu系金属を絶縁化した絶縁化Cu系金属層とし、前記導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体層と外装材との形成性や付着性が優れた構成となる。
【0031】
本発明の請求項21記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、外装材は3層からなり、素体側を第1層とするとともに外装材側を第3層とし、さらにこれらの間に第2層としており、前記第1層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とするとともに、前記第2層はCu系金属を絶縁化した絶縁化Cu系金属層とし、さらに前記第3層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とし、前記導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体層と外装材との形成性や付着性さらには熱的安定性の優れた構成となる。
【0032】
本発明の請求項22記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、コイル導体と素体の露出部の少なくとも一部の表面に外装材を覆い、前記素体のくびれにおける外径寸法と前記素体のくびれ以外における外径寸法とを略同等になるようにした構成である。上記構成により、表面実装部品としての優れた平坦性を有する構成となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
(実施の形態)
以下、図1〜図4を用いて、本発明の請求項に記載の発明について図面を参照しながら説明する。図1〜図4は、本発明の一実施の形態を示す代表的な2つの例を示したものである。図1は本発明のコイル部品の正面図であり、素体1の表面にコイル導体2、露出部3さらに端面電極4を有したものを示す。図2は同コイル部品にさらに外装材5を有したものの断面図である。同様に、図3は別の本発明の一実施の形態におけるコイル部品の正面図であり、素体1の表面にコイル導体2、露出部3さらに端面電極4を有したものを示す。図4は同コイル部品にさらに外装材5を有したものの断面図である。両者の差異は素体1の形状の違いと、外装材5の有する部分である。
【0034】
図1に示すように、本発明のコイル部品は、素体1の表面はコイル導体2を有する部分と露出部3および端面電極4に大きく分けることができる。コイル導体2が本発明のコイル部品の電気特性を左右する本体部分に相当し、コイル導体2の1対の2つの端部は引出電極6に電気的に接続されており、この引出電極6はさらに端面電極4とさらに電気的に接続されている。コイル導体2の螺旋コイル軸方向に対して素体1の露出部3と引出電極6はほぼ同じ位置に有する。つまり、本発明のコイル部品を螺旋コイルの軸方向に対してコイル中心から外側に向いて、コイル導体2、露出部3と引出電極6、端面電極4が存在し、図1および図2の例では、図に向かって左右対称にこれらが前記の順で対称的に存在する。図2の例では外装材5はコイル導体2、素体1の露出部3、引出電極6および端面電極4の一部の表面上に存在する。一方、図4の例では外装材5はコイル導体2、素体1の露出部3および引出電極6の表面上に存在する。
【0035】
このように、外装材5を絶縁性の向上として利用する構成なら図2のような方が望ましく、外装材5をコイル導体2が発生する磁束の磁路形成として活用するならば、図4の例の方が望ましい。さらに、図4の例では、端面電極4は最終的に必要な端面電極4としての面積を既に確保しているが、図2の例では外装材5の一部の表面上に所定の面積になるように、再度構成する必要がある。つまり、図2に示した図では端面電極4は下地層を示しており、この上にさらに端面電極を形成して図4に示したような形状にするのが一般的である。
【0036】
図2および図4に示した例では外装材5を単層の例を示したが、図5および図6の例に示したように、複層で構成されていてもよく、特にコイル導体2や素体1側の外装材5は導体を絶縁化した導体絶縁化層から構成することによって、優れた厚み精度の外装材5を構成することが可能である。例えば、素体1をフェライト磁性材料からなる磁性体で構成し、素体1側の外装材5をNi系金属やCu系金属を絶縁化した絶縁化金属層で構成し、さらにその表面にフェライト材料からなるフェライト磁性体で構成した第2外装材7を有することによって、素体1とフェライト磁性体からなる第2外装材7で構成される磁気回路に精度の優れた磁気ギャップ層を前記の絶縁化金属層からなる外装材5で形成することが可能となる。
【0037】
図7は図4または図6に示した本発明のコイル部品の外観斜視図である。このように両端に端面電極4を有し、中央部に外装材5あるいは第2外装材7で覆われている。
【0038】
上記の図1から図7に示したコイル部品は、縦横が0.1〜1mm程度、長さが0.2〜2mm程度の非常に小さな外形寸法である。例えば、縦横を0.8mm、長さを1.6mmにした場合、コイル導体2を有する部分の幅は900μm程度、露出部3の幅は80μm程度、コイル導体2のピッチは40μmで25ターン程度として使用したり、コイル導体2を有する部分の幅を840μm、ピッチを45μmで21ターン程度として使用したりするとよい。
【0039】
露出部3の幅は最低でもコイル導体2の幅と略同等の寸法があればよく、幅を広げれば磁束が通りやすくなり、インダクタンスを向上することができる。
【0040】
次に、図8を用いて図6に示したコイル部品の形成方法について説明する。
【0041】
まず、図8(a)に示すように、中央部がくびれた段付き形状の素体1を形成する。次に、図8(b)に示すように、素体1の全面に導体を形成する。さらに、図8(c)に示すように、導体の中央部を螺旋状にしてコイル導体2を形成し、それらの両端に露出部3および引出電極6を形成し、さらにこれらに隣接して端面電極4を形成する。次に、図8(d)に示すように、これらの表面にNi系金属を絶縁化した絶縁化金属層からなる外装材5を形成する。これはNi系金属を形成した後、大気中で熱処理することによって絶縁化金属層を得ることができる。次に、図8(e)に示すように、端面電極形成部に位置する絶縁化金属層の一部を除去して端面電極4を露出する。さらに、図8(f)に示すように、絶縁化金属層の表面でくびれ部に第2外装材7を形成する。以上の方法によって、図6に示すような本発明のコイル部品を得ることができる。
【0042】
なお、端面電極4は一般に知られるように、ニッケル電極層とはんだ電極層または錫電極層などの複層構造が一般的であり、形成方法はめっき法での形成が通常一般的に多用されている。外装材5や第2外装材7を形成した場合は、このめっき法による端面電極4の形成が有利であるが、他の方法として、電極ペーストの塗布や蒸着、スパッタあるいはイオンプレーティングなどの乾式による電極形成法などがある。
【0043】
以上の方法は、本発明のコイル部品を得る代表的な製造方法である。素体1の全面に形成した導体の一部を螺旋状のコイル導体2や露出部3を形成するときに、加工変質が発生する場合がある。これは加工前後で絶縁性の劣化をまねく場合もある。コイル導体2や露出部3を形成した後、熱処理を施すことにより、コイル部品として重要な電気特性を確保あるいは回復させることが重要な場合もある。前述した加工変質部は場合によっては、絶縁抵抗が小さい物質が生成されることがあり、熱処理を施すことによって絶縁抵抗が加工前の問題のないレベルに回復可能である。
【0044】
例えば、素体1としてNiZnCu系フェライトを用い、導体として銀電極層を用い、螺旋状に切断してコイル導体2および電極層を除去して露出部3を形成する方法としてYAGレーザーを用いた場合、熱処理温度としては200℃以上の温度でコイル部品を得るのに必要な絶縁抵抗レベルに回復する。さらに、トランスのコイル間などのように十分な絶縁抵抗を確保するためには、さらに高温度の熱処理を施すことによって、例えばYAGレーザー加工前のレベルに回復可能である。銀電極を用いた場合は、熱処理の限界温度としては、銀の融点である約960℃までの温度が限界となる。
【0045】
素体1を得る方法としては、粉体成型法による方法やセラミックグリーンシートあるいは積層したものを切断して形成する方法などが一般的である。素体1を形成するためのペーストないしスラリーは、各粉末とブチルカルビトール、テルピネオール、アルコールなどの溶剤、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、エチレン−酢酸ビニルなどの結合剤、さらに、各種の酸化物あるいはガラス類などの焼結助剤を添加し、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、グリセリンなどの可塑剤あるいはさらに分散剤等を添加してもよい。
【0046】
これらを混合した混練物を用いて各層を形成する。グリーンシートを作製する場合のスラリーとしては、前記の溶剤に替えて蒸発性の優れた各種の溶剤、例えば酢酸ブチル、メチルエチルケトン、トルエン、アルコールなどが望ましい。素体1を形成するときの焼成温度範囲としては約800℃から1600℃の範囲である。
【0047】
コイル導体2、端面電極4あるいは引出電極6を形成する方法としては、各種のめっき(単一金属めっき、合金めっき、複合めっきあるいは分散めっきなど)、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、塗布、転写、印刷、ディピング、溶射、吹き付け、描画などで形成し、螺旋状へのパターンニングにはカット、マスキング、エッチングなどを用いて行うことができる。
【0048】
コイル導体2として螺旋状にする方法にはレーザーを用いた切断や砥石や刃物を用いた切断、砥粒などを高速でワークにあてた加工など様々な方法がある。生産性を考慮するとレーザーを用いる方法が望ましい。螺旋状に導体を形成する方法には、全面形成したものを螺旋状に切断する方法以外に、マスキングとマスキングを施していない部分の導体を除去する方法などがある。さらに、別な方法としては、素体1の露出部3およびコイル導体2の素体1が露出している導体が存在しない部分にマスキングし、マスキングを施していない部分に導体層を形成する方法や、逆に素体1全面に導体層を形成した後、前記とは逆のパターンをマスキングして、マスキングしていない部分の導体層をエッチングなどで除去する方法などもある。さらには、螺旋状あるいは露出部3を形成する方法としては、水、炭酸ガス、砥粒などを吹き付けてのパターン形成あるいは刃物や砥石を用いたパターン形成などや、金型やめっき等で所定形状に予め形成した導体を転写する方法、マスキングしたものへの滴下、ポッティングあるいは溶射などの方法などでもよい。さらには、素体1の表面形状をねじ状にし、その表面に導体層を形成して、ねじ山を排除する程度削り落すことによって、素体1の表面の一部に螺旋状導体からなるコイル導体2を形成することも可能である。
【0049】
コイル導体2および素体1の露出部3などを覆うように外装材5を設けることにより、コイル導体2の保護や絶縁さらには電気特性の改善も可能になる。外装材5を樹脂とした場合、この樹脂にセラミック粉末を含有させると外装材5の強度は向上する。また、セラミック粉末を磁性粉末にすれば、磁気シールド性や電気特性の向上が可能になる。当然、樹脂系の外装材5を用い、外装材5を形成した後、熱処理を行う場合は、熱処理温度の限界温度はその耐熱温度となる。外装材5を形成した後、熱処理する方法では、例えば素体1にフェライト磁性体を用い、外装材5にもフェライト磁性体を用いることで、熱処理と外装材5の焼結も兼ねることができ、外装材5形成後は、磁気回路的には閉磁路構成となり、優れた電気特性のコイル部品を得ることができる。しかも、この場合は、磁気シールド性もさらに向上する。また、外装材5を非磁性体とし、第2外装材7を磁性体とすると磁束の流れをコントロールしたり、磁気キャップ層として外装材5を活用し、直流重畳特性の制御も可能になる。例えば、磁気キャップ層の一例としては、図6に示したように、磁性体からなる素体1の表面にコイル導体2、露出部3、引出電極6および端面電極4を有しており、コイル導体2、引出電極6および露出部3には非磁性材料からなる外装材5が設けられており、さらに外装材5を覆うように磁性体からなる第2外装材7を設けた構成である。外装材5は導体絶縁化層からなることにすることによって、厚み精度の高い磁気キャップ層を容易に実現することができ、しかも素体1の表面上にコイル導体2などが存在する導体存在の有無による凸凹表面にも高い精度の厚みで形成できる。
【0050】
素体1、外装材5や第2外装材7は、非磁性体であっても磁性体であってもいずれでもよい。必要なコイル部品特性を確保するために適宜選択すればよい。当然のことながら、コイル導体2などの導体と直接接触する部分は絶縁性が要求される。非磁性体としては、エポキシ、ポリイミドなどの有機系の絶縁材料、各種のガラス材料、さらにはガラスとセラミックを混合したガラスセラミックス、CuZn系フェライトあるいはアルミナに代表されるようなセラミックなどの無機系の絶縁材料などがある。磁性体としては、NiZn系やNiZnCu系、MnZn系などのスピネル系や六方晶系などのフェライト材料などがある。金属系としてはFe系、Co基やセンダストやパーマロイなどがある。
【0051】
素体1、外装材5や第2外装材7を誘電率の低いもので構成することによって、コイル間の浮遊容量を低減することができ、コイルの自己共振周波数を高めることやコイルの高周波特性を改善することが可能になる。逆に、誘電率の高い材料でこれらを構成することによって、浮遊容量とコイルの共振周波数を適宜調整することによって、様々な電気特性のコイル部品を得ることも可能である。これはある周波数帯域で大きなインピーダンスを有するコイル部品を得ることができ、L値や素体1の誘電率の変更により周波数調整が可能である。
【0052】
非磁性体からなる外装材5を形成する方法としては、ニッケルや銅などの金属層をまず形成する。これらはめっき法で形成する方法が古くから十分に確立されている。これらの金属層は単層または複層であってもよい。これを大気中で約300℃以上の温度で熱処理することによって、酸化絶縁化処理が可能で、導体絶縁化層を得ることができる。また、金属層の材料としてニッケルを用いた場合、例えば大気中の熱処理で導体を絶縁化した導体絶縁化層を形成すると、導体の一部を残すことができる。導体の一部を残したくない場合は、ニッケル層を薄くしたりすることが必要である。
【0053】
コイル導体2、引出電極6および端面電極4の材料としては、電気的に良導体であれば何でもよいが、大気中で焼成しても金属を維持できる銀、銀とパラジウムの合金や銀と白金の合金あるいは白金などが一般的で望ましい。しかし、外装材5あるいは端面電極4を焼成などを行わずに形成するのであれば、コイル導体2、引出電極6および端面電極4の材料としては、銅や銅合金などを用いることが可能である。つまり、後工程で温度を上げる必要があるかによって、コイル導体として優れた導電性を誇る銀や銅を使い分ければよい。
【0054】
コイル導体2、引出電極6および端面電極4さらには導体を絶縁化した導体絶縁化層で構成する外装材5の絶縁化前の導体としては、前述したCuやNi以外に、Al,Fe,Sn,Ta,Nb,Ti,Si,Znなどがある。さらに、導体層3としては、前述したように、AgやAg系合金以外にAu,Pt,Pd,Rdなどがある。例えば、外装材5としてTiを用いれば、絶縁化処理により誘電特性を有する酸化チタンとなり、絶縁性と誘電特性を併せ持たせることも可能になる。
【0055】
これらのコイル導体2、引出電極6および端面電極4をめっき法で形成する場合、素体1に無電解めっき法でまず下地導体層を薄く形成し、この導体層を電極にして他の電極材を電気めっき法で形成する方法などで複数層の導体層を容易に形成することができる。この場合に、最も一般的な組み合わせは下地としてNiまたはCuあるいはこれらの複層とし、コイル導体2、引出電極6および端面電極4としてはAgである。また、無電解めっき法は様々な溶液処理が不可欠で工程も長いため、この下地電極形成を乾式方法で行ってもよい。
【0056】
端面電極4としては前述したように、導電性材料であればよいが、一般的には単一層でなく複数層から構成されることが望ましい。表面実装用とした場合にはプリント配線板への実装時の実装強度あるいは実装時の半田濡れ性、半田くわれなどを配慮する必要があり、具体的には最下層はコイル導体2や引出電極6と同じ導体材料を用い、中間層には半田くわれを防止するニッケル電極を用い、最外層には半田に対して濡れ性の良い半田電極あるいは錫電極などを用いる。
【0057】
しかしながら、これは一例であり、必ずしもこの構成を採用する必要はなく、金属等の導電性に優れた材料以外に導電性樹脂材料、銀と白金の合金や銀とパラジウムの合金などでもよい。
【0058】
コイル導体2、引出電極6と端面電極4の一部の層を一体にすることによって、これらの接続信頼性を優れたものにすることができる。例えば、図8(a)から図8(f)を用いて示した方法のように、素体1の表面全面に導体を、例えば銀で構成し、導体は連続的な銀で構成され、それらはコイル導体2、引出電極6および端面電極4に分けられる。端面電極4は銀を下地にして、さらにニッケルと錫の積層構造とすることによって、接続信頼性を高めるとともに、チップ部品としての実装性も優れたコイル部品になる。
【0059】
また、アルミナやフェライトなどのセラミック基板に所定の配線パターンを形成し、セラミック基板に窓を設けてコイル部品を挿入し、配線パターンとコイル部品の端面電極4を接続させ、厚膜形成プロセスを用いて焼成して電気的に結線してもよい。
【0060】
端面電極4は、外装材5を形成した後、形成するか、またはコイル導体2や引出電極6にマスキングを施し、露出した部分にニッケルめっきおよび半田めっきあるいは錫めっきを行う方法もあるが、前述したように、外装材5をマスキングに使うのが望ましい。
【0061】
本発明のコイル部品は、図1〜図4に示したように、素体1の外周面に被覆した導体を溝切加工して形成したコイル導体2と、このコイル導体2の端部と引出電極6を介して接続し、素体1の両端部に形成した端面電極4とを備え、コイル導体2の端部と端面電極4との間には、引出電極6を除いて、素体1の一部を露出させた露出部3を設けた構成である。露出部3はコイル導体2の一方の端部と端面電極4との間だけに設けてもよい。
【0062】
このように素体1に露出部3を設けることによって、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた特性を発揮するコイル部品となる。
【0063】
また、素体1と外装材5を磁性体で構成した場合は、露出部3により、ギャップ層を設けたりすることによって、種々の電気特性を有するコイル部品にすることができる。
【0064】
上記実施の形態においては、面実装タイプとして両端等に端面電極4を設けたものについてのみ説明してきたが、素体1にピン端子を埋設したものや、端面電極4の代わりに端子を有するキャップ状電極を素体1の両端に嵌合結合したリードタイプのコイル部品とすることも容易にできる。
【0065】
次に本発明の更に具体的なコイル部品の製造方法における実施例について説明する。
【0066】
(実施例1)
NiZnCuフェライト粉末100gに対してブチラール樹脂が8g、ブチルベンジルフタレートが4g、メチルエチルケトンが24gおよび酢酸ブチルが24g混合し、ポットミルを用いて混練して磁性体スラリーを作製する。
【0067】
このスラリーを使い、コータを用いて乾燥後厚み0.2mmの磁性体グリーンシートを作製する。なおグリーンシートはPETフィルム上に形成する。
【0068】
絶縁体グリーンシートを用いて、図1に示すような形状の素体1になるように成型および切断加工するとともに、プレス成型は室温で行い、成型圧力は1000kgf/cm2としている。
【0069】
この成型によって作製した素体1を900℃で2時間保持する条件で焼成する。
【0070】
焼成した素体1の全面には湿式めっき法で、銀電極を形成する。さらに図1に示すような螺旋状の溝部と引出電極6を残して露出部3を形成する。なお、溝部や露出部3の形成にはYAGレーザーを用いている。そして、850℃の温度において熱処理を施す。
【0071】
以上の方法で得られたコイル部品には剥離、割れ、反りなどの欠陥を生じない。また、インピーダンスアナライザを用いて、コイル特性を測定しても、優れた特性を有するものである。
【0072】
(実施例2)
NiZnCuフェライト粉末100gに対してエチルセルロースが3g、α−テルピネオールが40gを混合し、3本ロールを用いて混練してフェライトペーストを作製する。
【0073】
実施例1で作製した図1、図2に示したようなコイル導体2と引出電極6を残して露出部3さらには引出電極6を形成した部分に外装材5としてこのフェライトペーストを塗布し、乾燥する。
【0074】
この外装材5を形成した素体1を900℃で2時間保持する条件で熱処理を行う。
【0075】
以上の方法で作製したコイル部品には剥離、割れ、反りなどの欠陥は生じない。また、インピーダンスアナライザなどを用いて、実施例1と同様に各種の電気特性を測定しても、優れた特性を有するものである。
【0076】
(実施例3)
NiZnCuフェライト粉末100gに対してブチラール樹脂が6g、ブチルベンジルフタレートが4g、メチルエチルケトンが24gおよび酢酸ブチルが24g混合し、ポットミルを用いて混練して磁性体スラリーを作製する。
【0077】
このスラリーを使い、コータを用いて乾燥後厚み0.2mmの磁性体グリーンシートを作製した。なおグリーンシートはPETフィルム上に形成する。
【0078】
磁性体グリーンシートを用いて、図3、図4に示したような段付き形状の素体1になるように金型プレス成型加工した。プレス成型は室温で行い成型圧力は1500kgf/cm2で行う。
【0079】
この成型によって作製した素体1を900℃で2時間保持する条件で焼成する。なお、焼成後の素体1は図8(a)に示すような中央部にくびれを有した段付き形状で、長さは1.6mm、くびれ部の長さは0.8mm、で太さは0.5mmであり、最終的には長さは1.6mmで、0.8mm角のチップ部品になる。
【0080】
つまり、素体1のくびれにおける外径寸法と素体1のくびれ以外における外径寸法とが同等となる。
【0081】
焼成した素体1に図8(b)に示すように湿式めっき法で、素体1全面に銀電極を形成し、図8(c)に示すように実施例1と同様にYAGレーザーを用いて、コイル導体2、引出電極6さらに端面電極4を形成した。図8(d)に示すように、無電解のニッケルめっきを施して、全面にニッケル電極を形成した後、この電極上にさらに銅電極さらにニッケル電極を形成した。図8(e)に示したように、端面電極上のニッケル電極と銅電極を剥離除去して、下地の銀電極を露出させた。次に、図8(f)に示したように、素体1のくびれ部にフェライトペーストをコートして、ほぼ直方体形状になるまで外装材5を形成した。次に、900℃で2時間保持する焼成を行った。
【0082】
以上の方法で得られたコイル部品には剥離、割れ、反りなどの欠陥は生じず、焼成することによって、銀電極上に形成したニッケルや銅電極は絶縁体化している。また、インピーダンスアナライザを用いて、コイル特性を測定しても、優れた特性を有するものである。
【0083】
このように、表面の凹凸が著しいこのような試料でもニッケルおよび銅電極層を焼成酸化処理することによって、優れた直流重畳特性を有するコイル部品を得ることができる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、素体の外周面に被覆した導体からなるコイル導体と、このコイル導体の端部と引出電極を介して接続し、素体の両端部に形成した端面電極とを備え、コイル導体の端部と端面電極との間には、引出電極を除いて、素体の一部を露出させた露出部を設けることによって、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた特性を発揮するコイル部品となる。
【0085】
また、素体と外装材を磁性体で構成した場合は、素体の露出部により、ギャップ層を設けたりすることによって、種々の電気特性を有するコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の正面図
【図2】同コイル部品の断面図
【図3】本発明の一実施の形態における他のコイル部品の正面図
【図4】同コイル部品の断面図
【図5】第2外装材を設けた本発明の一実施の形態におけるコイル部品の断面図
【図6】第2外装材を設けた本発明の一実施の形態における他のコイル部品の断面図
【図7】同コイル部品の斜視図
【図8】本発明の一実施の形態における他のコイル部品の製造工程を示す工程図
【符号の説明】
1 素体
2 コイル導体
3 露出部
4 端面電極
5 外装材
6 引出電極
7 第2外装材
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器、通信機器などに利用されるコイル部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コイル部品は各種電子機器、通信機器などに多用されており、近年は小型あるいは薄型、さらには多機能なコイル部品がますます要求されており、しかも、回路の高周波化、高速信号化やデジタル化に伴ってノイズ対策部品としてのコイル部品もますます重要になってきている。
【0003】
従来これらの要望を満たすコイル部品としては、ガラスセラミック材料あるいはフェライト磁性材料からなる素体内に螺旋状や直線状などのコイル導体を埋設したコイル部品やガラスセラミック材料あるいはフェライト磁性材料からなる基板上にスパイラル状のコイル導体を有したコイル部品などが提案されている。さらに、セラミック材料あるいはフェライト磁性材料からなる素体表面に螺旋状のコイル導体を設けたコイル部品なども提案されている。
【0004】
以上のコイル部品を実現するための製造方法としては、フェライト磁性層とコイル用導体層を交互に積層して得る方法や、あるいはフェライト磁性層にコイル用導体層を形成し、これらを積層する方法、さらには素体に導体層を形成し、螺旋状に切断してコイル部品を得る方法など種々提案されている。
【0005】
素体表面に螺旋状のコイル導体を設けたコイル部品としては、素体全面に形成した導体の一部を螺旋状に除去してコイル部品化するために螺旋状導体とそれらに隣接して端面電極部を有する構成のコイル部品が知られている。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−335526号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のように、素体表面に螺旋状のコイル導体を設けるとともに、その両隣り合う位置に端面電極部を設けることによって、表面実装を可能にしたコイル部品は、比較的に容易かつ低工数で実現することができるが、その特性は不十分なものであった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決し、コイル導体が発生する磁束を適切化することによって、優れた特性のコイル部品を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
本発明の請求項1記載の発明は、柱状の素体と、前記素体の外周面に被覆した導体からなる螺旋状のコイル導体と、前記コイル導体の端部と引出電極を介して接続し、前記素体の両端部に形成した端面電極とを備え、前記導体の端部と前記端面電極との間には、前記引出電極を除いて、少なくとも前記素体の一部を露出させた露出部を設けた構成である。上記構成により、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた電気特性を有するコイル部品を得ることができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をセラミック材料にした構成である。上記構成により、素体の耐熱性や機械的強度は優れたものになる。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をガラス材料にした構成である。上記構成により、素体の耐熱性や機械的強度さらには表面平滑性が優れるため、その表面に形成した導体も平坦性が優れたものになる。
【0014】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をフェライト磁性材料にした構成である。上記構成により、素体が磁性を有するため、電気特性が優れたものになる。
【0015】
本発明の請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をガラスとセラミックの混合体にした構成である。上記構成により、素体の耐熱性、機械的強度が優れ、さらに素体形成が比較的低温度で作製可能なため、容易に得ることができる構成となる。
【0016】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体をAl2O3を含有した絶縁材料とした構成である。上記構成により、素体の耐熱性、機械的強度が優れ、さらには安価な構成となる。
【0017】
本発明の請求項7記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体を誘電体とした構成である。上記構成により、優れた電気特性を有する構成となる。
【0018】
本発明の請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体を有機材料とした構成である。上記構成により、素体の軽量化や薄型化が容易で、しかも優れた電気特性が得られる構成となる。
【0019】
本発明の請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、素体を金属材料の表面に絶縁層を有する構成である。上記構成により、素体の機械的強度が優れ、さらに絶縁層の形成が容易な構成となる。また、磁性を有する場合は、さらに優れた電気特性となる。
【0020】
本発明の請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、特に、絶縁層を金属材料からなる素体の少なくとも一部表面を絶縁化した導体絶縁化層とした構成である。上記構成により、絶縁層の形成が容易な単純な構成となる。
【0021】
本発明の請求項11記載の発明は、請求項1記載の発明において、コイル導体と端面電極の一部分は共通の導体材料からなる構成である。上記構成により、コイル導体と端面電極の接続信頼性が優れた構成となる。
【0022】
本発明の請求項12記載の発明は、請求項1記載の発明において、特に、コイル導体と素体の露出部の少なくとも一部の表面を外装材で覆った構成である。上記構成により、絶縁性の優れた構成となる。
【0023】
本発明の請求項13記載の発明は、請求項15記載の発明において、特に、外装材を導体を絶縁化した導体絶縁化層とした構成である。上記構成により、厚みなどの均一性の優れた構成となる。
【0024】
本発明の請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、外装材の少なくとも一部の表面をさらに第2外装材で覆った構成である。上記構成により、絶縁性の優れた構成となる。
【0025】
本発明の請求項15記載の発明は、請求項12記載の発明において、特に、外装材をガラスとセラミックの混合体とした構成である。上記構成により、絶縁性と機械的強度の優れた構成となる。
【0026】
本発明の請求項16記載の発明は、請求項12記載の発明において、特に、外装材をフェライト磁性材料からなる構成である。上記構成により、電気特性や磁気シールド性の優れた構成となる。
【0027】
本発明の請求項17記載の発明は、請求項12記載の発明において、特に、外装材を有機材料と無機材料の混合体とした構成である。上記構成により、被覆性や機械的強度の優れた構成となる。
【0028】
本発明の請求項18記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、絶縁層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とするとともに、導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体との付着性が優れた外装材を有する。
【0029】
本発明の請求項19記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、絶縁層はCu系金属を絶縁化した絶縁化Cu系金属層とするとともに、導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体との付着性が優れた外装材を有する。
【0030】
本発明の請求項20記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、外装材は2層からなり、素体側を第1層とするとともに外装材側を第2層としており、前記第1層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とするとともに、前記第2層はCu系金属を絶縁化した絶縁化Cu系金属層とし、前記導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体層と外装材との形成性や付着性が優れた構成となる。
【0031】
本発明の請求項21記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、外装材は3層からなり、素体側を第1層とするとともに外装材側を第3層とし、さらにこれらの間に第2層としており、前記第1層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とするとともに、前記第2層はCu系金属を絶縁化した絶縁化Cu系金属層とし、さらに前記第3層はNi系金属を絶縁化した絶縁化Ni系金属層とし、前記導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした構成である。上記構成により、導体層と外装材との形成性や付着性さらには熱的安定性の優れた構成となる。
【0032】
本発明の請求項22記載の発明は、請求項13記載の発明において、特に、コイル導体と素体の露出部の少なくとも一部の表面に外装材を覆い、前記素体のくびれにおける外径寸法と前記素体のくびれ以外における外径寸法とを略同等になるようにした構成である。上記構成により、表面実装部品としての優れた平坦性を有する構成となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
(実施の形態)
以下、図1〜図4を用いて、本発明の請求項に記載の発明について図面を参照しながら説明する。図1〜図4は、本発明の一実施の形態を示す代表的な2つの例を示したものである。図1は本発明のコイル部品の正面図であり、素体1の表面にコイル導体2、露出部3さらに端面電極4を有したものを示す。図2は同コイル部品にさらに外装材5を有したものの断面図である。同様に、図3は別の本発明の一実施の形態におけるコイル部品の正面図であり、素体1の表面にコイル導体2、露出部3さらに端面電極4を有したものを示す。図4は同コイル部品にさらに外装材5を有したものの断面図である。両者の差異は素体1の形状の違いと、外装材5の有する部分である。
【0034】
図1に示すように、本発明のコイル部品は、素体1の表面はコイル導体2を有する部分と露出部3および端面電極4に大きく分けることができる。コイル導体2が本発明のコイル部品の電気特性を左右する本体部分に相当し、コイル導体2の1対の2つの端部は引出電極6に電気的に接続されており、この引出電極6はさらに端面電極4とさらに電気的に接続されている。コイル導体2の螺旋コイル軸方向に対して素体1の露出部3と引出電極6はほぼ同じ位置に有する。つまり、本発明のコイル部品を螺旋コイルの軸方向に対してコイル中心から外側に向いて、コイル導体2、露出部3と引出電極6、端面電極4が存在し、図1および図2の例では、図に向かって左右対称にこれらが前記の順で対称的に存在する。図2の例では外装材5はコイル導体2、素体1の露出部3、引出電極6および端面電極4の一部の表面上に存在する。一方、図4の例では外装材5はコイル導体2、素体1の露出部3および引出電極6の表面上に存在する。
【0035】
このように、外装材5を絶縁性の向上として利用する構成なら図2のような方が望ましく、外装材5をコイル導体2が発生する磁束の磁路形成として活用するならば、図4の例の方が望ましい。さらに、図4の例では、端面電極4は最終的に必要な端面電極4としての面積を既に確保しているが、図2の例では外装材5の一部の表面上に所定の面積になるように、再度構成する必要がある。つまり、図2に示した図では端面電極4は下地層を示しており、この上にさらに端面電極を形成して図4に示したような形状にするのが一般的である。
【0036】
図2および図4に示した例では外装材5を単層の例を示したが、図5および図6の例に示したように、複層で構成されていてもよく、特にコイル導体2や素体1側の外装材5は導体を絶縁化した導体絶縁化層から構成することによって、優れた厚み精度の外装材5を構成することが可能である。例えば、素体1をフェライト磁性材料からなる磁性体で構成し、素体1側の外装材5をNi系金属やCu系金属を絶縁化した絶縁化金属層で構成し、さらにその表面にフェライト材料からなるフェライト磁性体で構成した第2外装材7を有することによって、素体1とフェライト磁性体からなる第2外装材7で構成される磁気回路に精度の優れた磁気ギャップ層を前記の絶縁化金属層からなる外装材5で形成することが可能となる。
【0037】
図7は図4または図6に示した本発明のコイル部品の外観斜視図である。このように両端に端面電極4を有し、中央部に外装材5あるいは第2外装材7で覆われている。
【0038】
上記の図1から図7に示したコイル部品は、縦横が0.1〜1mm程度、長さが0.2〜2mm程度の非常に小さな外形寸法である。例えば、縦横を0.8mm、長さを1.6mmにした場合、コイル導体2を有する部分の幅は900μm程度、露出部3の幅は80μm程度、コイル導体2のピッチは40μmで25ターン程度として使用したり、コイル導体2を有する部分の幅を840μm、ピッチを45μmで21ターン程度として使用したりするとよい。
【0039】
露出部3の幅は最低でもコイル導体2の幅と略同等の寸法があればよく、幅を広げれば磁束が通りやすくなり、インダクタンスを向上することができる。
【0040】
次に、図8を用いて図6に示したコイル部品の形成方法について説明する。
【0041】
まず、図8(a)に示すように、中央部がくびれた段付き形状の素体1を形成する。次に、図8(b)に示すように、素体1の全面に導体を形成する。さらに、図8(c)に示すように、導体の中央部を螺旋状にしてコイル導体2を形成し、それらの両端に露出部3および引出電極6を形成し、さらにこれらに隣接して端面電極4を形成する。次に、図8(d)に示すように、これらの表面にNi系金属を絶縁化した絶縁化金属層からなる外装材5を形成する。これはNi系金属を形成した後、大気中で熱処理することによって絶縁化金属層を得ることができる。次に、図8(e)に示すように、端面電極形成部に位置する絶縁化金属層の一部を除去して端面電極4を露出する。さらに、図8(f)に示すように、絶縁化金属層の表面でくびれ部に第2外装材7を形成する。以上の方法によって、図6に示すような本発明のコイル部品を得ることができる。
【0042】
なお、端面電極4は一般に知られるように、ニッケル電極層とはんだ電極層または錫電極層などの複層構造が一般的であり、形成方法はめっき法での形成が通常一般的に多用されている。外装材5や第2外装材7を形成した場合は、このめっき法による端面電極4の形成が有利であるが、他の方法として、電極ペーストの塗布や蒸着、スパッタあるいはイオンプレーティングなどの乾式による電極形成法などがある。
【0043】
以上の方法は、本発明のコイル部品を得る代表的な製造方法である。素体1の全面に形成した導体の一部を螺旋状のコイル導体2や露出部3を形成するときに、加工変質が発生する場合がある。これは加工前後で絶縁性の劣化をまねく場合もある。コイル導体2や露出部3を形成した後、熱処理を施すことにより、コイル部品として重要な電気特性を確保あるいは回復させることが重要な場合もある。前述した加工変質部は場合によっては、絶縁抵抗が小さい物質が生成されることがあり、熱処理を施すことによって絶縁抵抗が加工前の問題のないレベルに回復可能である。
【0044】
例えば、素体1としてNiZnCu系フェライトを用い、導体として銀電極層を用い、螺旋状に切断してコイル導体2および電極層を除去して露出部3を形成する方法としてYAGレーザーを用いた場合、熱処理温度としては200℃以上の温度でコイル部品を得るのに必要な絶縁抵抗レベルに回復する。さらに、トランスのコイル間などのように十分な絶縁抵抗を確保するためには、さらに高温度の熱処理を施すことによって、例えばYAGレーザー加工前のレベルに回復可能である。銀電極を用いた場合は、熱処理の限界温度としては、銀の融点である約960℃までの温度が限界となる。
【0045】
素体1を得る方法としては、粉体成型法による方法やセラミックグリーンシートあるいは積層したものを切断して形成する方法などが一般的である。素体1を形成するためのペーストないしスラリーは、各粉末とブチルカルビトール、テルピネオール、アルコールなどの溶剤、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、エチレン−酢酸ビニルなどの結合剤、さらに、各種の酸化物あるいはガラス類などの焼結助剤を添加し、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、グリセリンなどの可塑剤あるいはさらに分散剤等を添加してもよい。
【0046】
これらを混合した混練物を用いて各層を形成する。グリーンシートを作製する場合のスラリーとしては、前記の溶剤に替えて蒸発性の優れた各種の溶剤、例えば酢酸ブチル、メチルエチルケトン、トルエン、アルコールなどが望ましい。素体1を形成するときの焼成温度範囲としては約800℃から1600℃の範囲である。
【0047】
コイル導体2、端面電極4あるいは引出電極6を形成する方法としては、各種のめっき(単一金属めっき、合金めっき、複合めっきあるいは分散めっきなど)、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、塗布、転写、印刷、ディピング、溶射、吹き付け、描画などで形成し、螺旋状へのパターンニングにはカット、マスキング、エッチングなどを用いて行うことができる。
【0048】
コイル導体2として螺旋状にする方法にはレーザーを用いた切断や砥石や刃物を用いた切断、砥粒などを高速でワークにあてた加工など様々な方法がある。生産性を考慮するとレーザーを用いる方法が望ましい。螺旋状に導体を形成する方法には、全面形成したものを螺旋状に切断する方法以外に、マスキングとマスキングを施していない部分の導体を除去する方法などがある。さらに、別な方法としては、素体1の露出部3およびコイル導体2の素体1が露出している導体が存在しない部分にマスキングし、マスキングを施していない部分に導体層を形成する方法や、逆に素体1全面に導体層を形成した後、前記とは逆のパターンをマスキングして、マスキングしていない部分の導体層をエッチングなどで除去する方法などもある。さらには、螺旋状あるいは露出部3を形成する方法としては、水、炭酸ガス、砥粒などを吹き付けてのパターン形成あるいは刃物や砥石を用いたパターン形成などや、金型やめっき等で所定形状に予め形成した導体を転写する方法、マスキングしたものへの滴下、ポッティングあるいは溶射などの方法などでもよい。さらには、素体1の表面形状をねじ状にし、その表面に導体層を形成して、ねじ山を排除する程度削り落すことによって、素体1の表面の一部に螺旋状導体からなるコイル導体2を形成することも可能である。
【0049】
コイル導体2および素体1の露出部3などを覆うように外装材5を設けることにより、コイル導体2の保護や絶縁さらには電気特性の改善も可能になる。外装材5を樹脂とした場合、この樹脂にセラミック粉末を含有させると外装材5の強度は向上する。また、セラミック粉末を磁性粉末にすれば、磁気シールド性や電気特性の向上が可能になる。当然、樹脂系の外装材5を用い、外装材5を形成した後、熱処理を行う場合は、熱処理温度の限界温度はその耐熱温度となる。外装材5を形成した後、熱処理する方法では、例えば素体1にフェライト磁性体を用い、外装材5にもフェライト磁性体を用いることで、熱処理と外装材5の焼結も兼ねることができ、外装材5形成後は、磁気回路的には閉磁路構成となり、優れた電気特性のコイル部品を得ることができる。しかも、この場合は、磁気シールド性もさらに向上する。また、外装材5を非磁性体とし、第2外装材7を磁性体とすると磁束の流れをコントロールしたり、磁気キャップ層として外装材5を活用し、直流重畳特性の制御も可能になる。例えば、磁気キャップ層の一例としては、図6に示したように、磁性体からなる素体1の表面にコイル導体2、露出部3、引出電極6および端面電極4を有しており、コイル導体2、引出電極6および露出部3には非磁性材料からなる外装材5が設けられており、さらに外装材5を覆うように磁性体からなる第2外装材7を設けた構成である。外装材5は導体絶縁化層からなることにすることによって、厚み精度の高い磁気キャップ層を容易に実現することができ、しかも素体1の表面上にコイル導体2などが存在する導体存在の有無による凸凹表面にも高い精度の厚みで形成できる。
【0050】
素体1、外装材5や第2外装材7は、非磁性体であっても磁性体であってもいずれでもよい。必要なコイル部品特性を確保するために適宜選択すればよい。当然のことながら、コイル導体2などの導体と直接接触する部分は絶縁性が要求される。非磁性体としては、エポキシ、ポリイミドなどの有機系の絶縁材料、各種のガラス材料、さらにはガラスとセラミックを混合したガラスセラミックス、CuZn系フェライトあるいはアルミナに代表されるようなセラミックなどの無機系の絶縁材料などがある。磁性体としては、NiZn系やNiZnCu系、MnZn系などのスピネル系や六方晶系などのフェライト材料などがある。金属系としてはFe系、Co基やセンダストやパーマロイなどがある。
【0051】
素体1、外装材5や第2外装材7を誘電率の低いもので構成することによって、コイル間の浮遊容量を低減することができ、コイルの自己共振周波数を高めることやコイルの高周波特性を改善することが可能になる。逆に、誘電率の高い材料でこれらを構成することによって、浮遊容量とコイルの共振周波数を適宜調整することによって、様々な電気特性のコイル部品を得ることも可能である。これはある周波数帯域で大きなインピーダンスを有するコイル部品を得ることができ、L値や素体1の誘電率の変更により周波数調整が可能である。
【0052】
非磁性体からなる外装材5を形成する方法としては、ニッケルや銅などの金属層をまず形成する。これらはめっき法で形成する方法が古くから十分に確立されている。これらの金属層は単層または複層であってもよい。これを大気中で約300℃以上の温度で熱処理することによって、酸化絶縁化処理が可能で、導体絶縁化層を得ることができる。また、金属層の材料としてニッケルを用いた場合、例えば大気中の熱処理で導体を絶縁化した導体絶縁化層を形成すると、導体の一部を残すことができる。導体の一部を残したくない場合は、ニッケル層を薄くしたりすることが必要である。
【0053】
コイル導体2、引出電極6および端面電極4の材料としては、電気的に良導体であれば何でもよいが、大気中で焼成しても金属を維持できる銀、銀とパラジウムの合金や銀と白金の合金あるいは白金などが一般的で望ましい。しかし、外装材5あるいは端面電極4を焼成などを行わずに形成するのであれば、コイル導体2、引出電極6および端面電極4の材料としては、銅や銅合金などを用いることが可能である。つまり、後工程で温度を上げる必要があるかによって、コイル導体として優れた導電性を誇る銀や銅を使い分ければよい。
【0054】
コイル導体2、引出電極6および端面電極4さらには導体を絶縁化した導体絶縁化層で構成する外装材5の絶縁化前の導体としては、前述したCuやNi以外に、Al,Fe,Sn,Ta,Nb,Ti,Si,Znなどがある。さらに、導体層3としては、前述したように、AgやAg系合金以外にAu,Pt,Pd,Rdなどがある。例えば、外装材5としてTiを用いれば、絶縁化処理により誘電特性を有する酸化チタンとなり、絶縁性と誘電特性を併せ持たせることも可能になる。
【0055】
これらのコイル導体2、引出電極6および端面電極4をめっき法で形成する場合、素体1に無電解めっき法でまず下地導体層を薄く形成し、この導体層を電極にして他の電極材を電気めっき法で形成する方法などで複数層の導体層を容易に形成することができる。この場合に、最も一般的な組み合わせは下地としてNiまたはCuあるいはこれらの複層とし、コイル導体2、引出電極6および端面電極4としてはAgである。また、無電解めっき法は様々な溶液処理が不可欠で工程も長いため、この下地電極形成を乾式方法で行ってもよい。
【0056】
端面電極4としては前述したように、導電性材料であればよいが、一般的には単一層でなく複数層から構成されることが望ましい。表面実装用とした場合にはプリント配線板への実装時の実装強度あるいは実装時の半田濡れ性、半田くわれなどを配慮する必要があり、具体的には最下層はコイル導体2や引出電極6と同じ導体材料を用い、中間層には半田くわれを防止するニッケル電極を用い、最外層には半田に対して濡れ性の良い半田電極あるいは錫電極などを用いる。
【0057】
しかしながら、これは一例であり、必ずしもこの構成を採用する必要はなく、金属等の導電性に優れた材料以外に導電性樹脂材料、銀と白金の合金や銀とパラジウムの合金などでもよい。
【0058】
コイル導体2、引出電極6と端面電極4の一部の層を一体にすることによって、これらの接続信頼性を優れたものにすることができる。例えば、図8(a)から図8(f)を用いて示した方法のように、素体1の表面全面に導体を、例えば銀で構成し、導体は連続的な銀で構成され、それらはコイル導体2、引出電極6および端面電極4に分けられる。端面電極4は銀を下地にして、さらにニッケルと錫の積層構造とすることによって、接続信頼性を高めるとともに、チップ部品としての実装性も優れたコイル部品になる。
【0059】
また、アルミナやフェライトなどのセラミック基板に所定の配線パターンを形成し、セラミック基板に窓を設けてコイル部品を挿入し、配線パターンとコイル部品の端面電極4を接続させ、厚膜形成プロセスを用いて焼成して電気的に結線してもよい。
【0060】
端面電極4は、外装材5を形成した後、形成するか、またはコイル導体2や引出電極6にマスキングを施し、露出した部分にニッケルめっきおよび半田めっきあるいは錫めっきを行う方法もあるが、前述したように、外装材5をマスキングに使うのが望ましい。
【0061】
本発明のコイル部品は、図1〜図4に示したように、素体1の外周面に被覆した導体を溝切加工して形成したコイル導体2と、このコイル導体2の端部と引出電極6を介して接続し、素体1の両端部に形成した端面電極4とを備え、コイル導体2の端部と端面電極4との間には、引出電極6を除いて、素体1の一部を露出させた露出部3を設けた構成である。露出部3はコイル導体2の一方の端部と端面電極4との間だけに設けてもよい。
【0062】
このように素体1に露出部3を設けることによって、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた特性を発揮するコイル部品となる。
【0063】
また、素体1と外装材5を磁性体で構成した場合は、露出部3により、ギャップ層を設けたりすることによって、種々の電気特性を有するコイル部品にすることができる。
【0064】
上記実施の形態においては、面実装タイプとして両端等に端面電極4を設けたものについてのみ説明してきたが、素体1にピン端子を埋設したものや、端面電極4の代わりに端子を有するキャップ状電極を素体1の両端に嵌合結合したリードタイプのコイル部品とすることも容易にできる。
【0065】
次に本発明の更に具体的なコイル部品の製造方法における実施例について説明する。
【0066】
(実施例1)
NiZnCuフェライト粉末100gに対してブチラール樹脂が8g、ブチルベンジルフタレートが4g、メチルエチルケトンが24gおよび酢酸ブチルが24g混合し、ポットミルを用いて混練して磁性体スラリーを作製する。
【0067】
このスラリーを使い、コータを用いて乾燥後厚み0.2mmの磁性体グリーンシートを作製する。なおグリーンシートはPETフィルム上に形成する。
【0068】
絶縁体グリーンシートを用いて、図1に示すような形状の素体1になるように成型および切断加工するとともに、プレス成型は室温で行い、成型圧力は1000kgf/cm2としている。
【0069】
この成型によって作製した素体1を900℃で2時間保持する条件で焼成する。
【0070】
焼成した素体1の全面には湿式めっき法で、銀電極を形成する。さらに図1に示すような螺旋状の溝部と引出電極6を残して露出部3を形成する。なお、溝部や露出部3の形成にはYAGレーザーを用いている。そして、850℃の温度において熱処理を施す。
【0071】
以上の方法で得られたコイル部品には剥離、割れ、反りなどの欠陥を生じない。また、インピーダンスアナライザを用いて、コイル特性を測定しても、優れた特性を有するものである。
【0072】
(実施例2)
NiZnCuフェライト粉末100gに対してエチルセルロースが3g、α−テルピネオールが40gを混合し、3本ロールを用いて混練してフェライトペーストを作製する。
【0073】
実施例1で作製した図1、図2に示したようなコイル導体2と引出電極6を残して露出部3さらには引出電極6を形成した部分に外装材5としてこのフェライトペーストを塗布し、乾燥する。
【0074】
この外装材5を形成した素体1を900℃で2時間保持する条件で熱処理を行う。
【0075】
以上の方法で作製したコイル部品には剥離、割れ、反りなどの欠陥は生じない。また、インピーダンスアナライザなどを用いて、実施例1と同様に各種の電気特性を測定しても、優れた特性を有するものである。
【0076】
(実施例3)
NiZnCuフェライト粉末100gに対してブチラール樹脂が6g、ブチルベンジルフタレートが4g、メチルエチルケトンが24gおよび酢酸ブチルが24g混合し、ポットミルを用いて混練して磁性体スラリーを作製する。
【0077】
このスラリーを使い、コータを用いて乾燥後厚み0.2mmの磁性体グリーンシートを作製した。なおグリーンシートはPETフィルム上に形成する。
【0078】
磁性体グリーンシートを用いて、図3、図4に示したような段付き形状の素体1になるように金型プレス成型加工した。プレス成型は室温で行い成型圧力は1500kgf/cm2で行う。
【0079】
この成型によって作製した素体1を900℃で2時間保持する条件で焼成する。なお、焼成後の素体1は図8(a)に示すような中央部にくびれを有した段付き形状で、長さは1.6mm、くびれ部の長さは0.8mm、で太さは0.5mmであり、最終的には長さは1.6mmで、0.8mm角のチップ部品になる。
【0080】
つまり、素体1のくびれにおける外径寸法と素体1のくびれ以外における外径寸法とが同等となる。
【0081】
焼成した素体1に図8(b)に示すように湿式めっき法で、素体1全面に銀電極を形成し、図8(c)に示すように実施例1と同様にYAGレーザーを用いて、コイル導体2、引出電極6さらに端面電極4を形成した。図8(d)に示すように、無電解のニッケルめっきを施して、全面にニッケル電極を形成した後、この電極上にさらに銅電極さらにニッケル電極を形成した。図8(e)に示したように、端面電極上のニッケル電極と銅電極を剥離除去して、下地の銀電極を露出させた。次に、図8(f)に示したように、素体1のくびれ部にフェライトペーストをコートして、ほぼ直方体形状になるまで外装材5を形成した。次に、900℃で2時間保持する焼成を行った。
【0082】
以上の方法で得られたコイル部品には剥離、割れ、反りなどの欠陥は生じず、焼成することによって、銀電極上に形成したニッケルや銅電極は絶縁体化している。また、インピーダンスアナライザを用いて、コイル特性を測定しても、優れた特性を有するものである。
【0083】
このように、表面の凹凸が著しいこのような試料でもニッケルおよび銅電極層を焼成酸化処理することによって、優れた直流重畳特性を有するコイル部品を得ることができる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、素体の外周面に被覆した導体からなるコイル導体と、このコイル導体の端部と引出電極を介して接続し、素体の両端部に形成した端面電極とを備え、コイル導体の端部と端面電極との間には、引出電極を除いて、素体の一部を露出させた露出部を設けることによって、インダクタンスの高周波域の周波数特性を改善できるとともに、周波数に対する抵抗の増加を抑制して損失も小さくでき、優れた特性を発揮するコイル部品となる。
【0085】
また、素体と外装材を磁性体で構成した場合は、素体の露出部により、ギャップ層を設けたりすることによって、種々の電気特性を有するコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコイル部品の正面図
【図2】同コイル部品の断面図
【図3】本発明の一実施の形態における他のコイル部品の正面図
【図4】同コイル部品の断面図
【図5】第2外装材を設けた本発明の一実施の形態におけるコイル部品の断面図
【図6】第2外装材を設けた本発明の一実施の形態における他のコイル部品の断面図
【図7】同コイル部品の斜視図
【図8】本発明の一実施の形態における他のコイル部品の製造工程を示す工程図
【符号の説明】
1 素体
2 コイル導体
3 露出部
4 端面電極
5 外装材
6 引出電極
7 第2外装材
Claims (22)
- 柱状の素体と、前記素体の外周面に被覆した導体からなる螺旋状のコイル導体と、前記コイル導体の端部と引出電極を介して接続し、前記素体の両端部に形成した端面電極とを備え、前記導体の端部と前記端面電極との間には、前記引出電極を除いて、少なくとも前記素体の一部を露出させた露出部を設けたコイル部品。
- 前記素体は、セラミック材料からなる請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、ガラス材料からなる請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、フェライト磁性材料からなる磁性体とした請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、ガラスとセラミックの混合体からなる請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、Al2O3を含有した絶縁材料からなる絶縁体とした請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、誘電体材料からなる誘電体とした請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、有機材料からなる請求項1記載のコイル部品。
- 前記素体は、金属材料の表面に絶縁層を有したものからなる請求項1記載のコイル部品。
- 前記絶縁層は、金属材料からなる前記素体の少なくとも一部表面を絶縁化した導体絶縁化層からなる請求項9記載のコイル部品。
- 前記コイル導体と前記端面電極の一部分は共通の導体材料からなる請求項1記載のコイル部品。
- 前記コイル導体と前記素体の露出部の少なくとも一部の表面が外装材で覆われた請求項1記載のコイル部品。
- 前記外装材は、導体を絶縁化した導体絶縁化層とした請求項12記載のコイル部品。
- 前記導体を絶縁化した導体絶縁化層からなる外装材の少なくとも一部の表面は、第2外装材で覆った請求項13記載のコイル部品。
- 前記外装材は、ガラスとセラミックの混合体とした請求項12または14記載のコイル部品。
- 前記外装材は、フェライト磁性材料からなる磁性体とした請求項12または14記載のコイル部品。
- 前記外装材は、有機材料と無機材料の混合体とした請求項12または14記載のコイル部品。
- 前記導体絶縁化層は、Ni系金属を絶縁化した絶縁化金属層とするとともに、導体はAg系金属からなるAg系導体とした請求項13記載のコイル部品。
- 前記導体絶縁化層は、Cu系金属を絶縁化した絶縁化金属層とするとともに、導体層はAg系金属からなるAg系導体とした請求項13記載のコイル部品。
- 前記導体絶縁化層は2層からなり、前記素体側を第1層とするとともに前記外装材側を第2層としており、前記第1層はNi系金属を絶縁化した絶縁化金属層とするとともに、前記第2層はCu系金属を絶縁化した絶縁化金属層とし、前記導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした請求項13記載のコイル部品。
- 前記導体絶縁化層は3層からなり、前記素体側を第1層とするとともに前記外装材側を第3層としさらに第1層と第3層の間に第2層としており、前記第1層はNi系金属を絶縁化した絶縁化金属層としており、前記第2層はCu系金属を絶縁化した絶縁化金属層とし、前記第3層はNi系金属を絶縁化した絶縁化金属層とするとともに、前記導体層はAg系金属からなるAg系導体層とした請求項13記載のコイル部品。
- 前記素体にくびれを設け、前記コイル導体と前記素体の露出部の少なくとも一部の表面に前記外装材を覆い、前記素体のくびれにおける外径寸法と前記素体のくびれ以外における外径寸法とを略同等になるようにした請求項12記載のコイル部品。
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JP2007103447A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-19 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | チップコイル |
-
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- 2003-07-14 JP JP2003196391A patent/JP2005032984A/ja active Pending
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