JP2005032327A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Takuchu Yo
澤中 余
Kazunari Motohashi
一成 本橋
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Abstract

【課題】MRヘッドに対応した高記録密度の磁気記録媒体であって、磁性層の腐蝕が防止され、各種の磁気特性の制御が可能である磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性支持体2と、非磁性支持体上に形成された非磁性材料からなる耐腐蝕下地層3と、耐腐蝕下地層上に形成された非磁性材料からなる島状構造層72と、島状構造層72上に形成された厚さ100nm以下の磁性層と、磁性層上に形成された保護層5とを有する磁気記録媒体71。
【選択図】 図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体に関し、特に、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が形成された高記録密度の磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体の記録密度の向上に伴い、磁気テープは塗布型から蒸着型に移行している。塗布型の磁気テープは、磁性粉末を結合剤樹脂に分散させた磁性塗料を、非磁性支持体上に塗布して形成された磁性層を有する。一方、蒸着型の磁気テープ(蒸着テープ、金属薄膜型磁気テープ)は真空薄膜形成技術によって形成された磁性層を有する。真空薄膜形成技術としては蒸着、スパッタリング等の物理的蒸着法(PVD;physical vapor deposition)の他、化学気相成長(CVD;chemical vapor deposition)やエピタキシャル成長でも実施されている。
【0003】
蒸着テープの磁性層は、塗布型の磁気テープに比較して極めて薄く形成されているため、短波長領域での電磁変換特性に優れる。さらに、蒸着テープは記録減磁が著しく小さいこと等、塗布型の磁気テープに比較して多くの利点を有するため、高密度記録に適している。近年、さらに高記録密度の磁気テープの開発が進められている。
【0004】
蒸着テープの磁性層は、可撓性を有する非磁性支持体を走行させながら、非磁性支持体上に磁性材料を堆積させて形成される。非磁性支持体としては、通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリアミドフィルム等の高分子フィルムが用いられる。
【0005】
蒸着テープの磁性層は、微視的には、磁性金属の微粒子がカラム状に連なり、このようなカラムが磁性層全面に整列した構造(斜方柱状構造)を有する。このカラムは非磁性支持体表面の法線から斜めに傾いた方向に成長する。カラムの成長方向は、磁性金属の微粒子が連なる方向である。非磁性支持体表面の法線とカラムの成長方向は例えば30°程度の角度をなす。蒸着テープの斜方柱状構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
強磁性体(例えばコバルト(Co))の微粒子を主成分とし、非磁性体(例えば酸化コバルト(CoO))の微粒子を含む磁性層の場合、非磁性体の存在比を変化させることにより、磁性層の保磁力をある程度、調節できる。記録密度をさらに高くするには、磁気記録媒体と磁気ヘッドの両方の性能を向上させることが重要である。したがって、磁気記録媒体の磁性層の保磁力を高くするだけでなく、磁気ヘッドの設計に合わせて、保磁力以外の磁気特性、例えば飽和磁化と磁性層の厚さの積や、残留磁化と磁性層の厚さの積などを制御できることが望ましい。
【0007】
磁気抵抗(MR;Magneto−Resistive)ヘッドは、磁性層からの微小な漏洩磁束を高感度に検出できる。蒸着テープは、磁性層を極めて薄くできるため、記録波長が短い領域での電磁変換特性に優れ、高記録密度化が可能である。MRヘッドは、このような極めて薄い磁性層からの信号の検出に用いることができ、磁気テープの記録密度をさらに高くするのに有効である。また、磁性層を薄くすることにより、記録密度を高くできるだけでなく、磁性材料のコストの低減や、磁性層の堆積に要する時間の短縮も可能となる。
【0008】
【特許文献1】
特開2003−59040号公報
【特許文献2】
特開平5−20662号公報
【特許文献3】
特開平4−335206号公報(特許第3093818号)
【特許文献4】
特開昭56−16939号公報
【特許文献5】
特公平7−60503号公報(特許第2071714号)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
磁性層を100nmより薄くした場合、可撓性の非磁性支持体を介して磁性層の腐蝕が進行する問題が起こることが明らかとなった。この問題は、特に磁気テープをしばらく使用した後で顕著となる。したがって、腐蝕に対する耐性を有する磁気テープを製造することが非常に重要となる。
【0010】
蒸着テープで磁性層の腐蝕を防止する方法として、非磁性支持体と磁性層の間に金属下地膜を形成する方法が知られている(特許文献2および3参照)。特許文献2記載の磁気記録媒体によれば、磁性層が好適には厚さ120〜300nm程度のCo−Ni合金膜、あるいはCrが添加されたCo合金膜であり、金属下地膜は50〜150nm、さらに好適には80〜120nmの厚さで形成される。
【0011】
特許文献3記載の磁気記録媒体によれば、表面に金属酸化物を有する金属膜が下地膜として用いられるが、磁性層の厚さは好適には120〜300nm程度であり、金属下地膜は50〜200nmの厚さで形成される。磁気記録媒体をMRヘッド、あるいはさらに高感度の巨大磁気抵抗(GMR;Giant Magneto−Resistive)ヘッドに対応させるには、磁性層を例えば厚さ100nm以下に薄くする必要がある。磁性層を厚さ100nm以下、特に50nm以下に薄くした場合、このような厚膜の金属下地膜を形成すると、金属下地膜および磁性層の表面粗さが大きくなり、所望の電磁変換特性を得られなくなる。
【0012】
また、特許文献4および5には、非磁性支持体の磁性層が形成される側と反対側の面に、金属または金属酸化物の薄膜が形成された磁気記録媒体が開示されている。しかしながら、これらの金属(または金属酸化物)薄膜は、非磁性支持体のカール防止や曲げ剛性の調整を目的としたものであり、磁性層の腐蝕を防止する効果は得られない。
【0013】
磁性層が薄い磁気テープにおける別の問題は、磁性層を薄くすることによる磁気特性の低下である。磁性層を薄くすることにより、保磁力だけでなく、飽和磁化Msと磁性層の厚さtの積Ms・tや、残留磁化Mrと磁性層の厚さtの積Mr・tも減少する。そこで、磁性層において、薄膜が積層されたヘテロ構造が不可欠となる。このようなヘテロ構造により、保磁力を高くすることができる。また、磁性層のヘテロ構造を制御することによって保磁力などの磁気特性を調整できれば、有用である。
【0014】
磁気記録媒体製造のスループットの観点からは、磁性層が薄い磁気記録媒体は、材料コストと成膜所要時間の両方で有効である。
蒸着テープの磁性層の上には、例えば化学気相成長(CVD;chemical vapor deposition)により保護層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC;diamond−like carbon)膜などが形成される。
【0015】
保護層が厚すぎる場合、磁気テープの電磁変換特性が悪化するため、保護層の厚さは、磁性層が保護される範囲内で薄くすることが望ましい。磁性層を保護する機能を損なわずに、保護層を薄くできるようにするため、磁気記録媒体のヘテロ構造を最適化することが望ましい。保護層を薄くできれば、保護層の成膜所要時間が短縮され、磁気テープ製造のスループットがさらに向上する。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、MRヘッドやGMRヘッド(以下MRヘッドという)に対応した高記録密度の磁気記録媒体であって、磁性層の腐蝕が防止され、各種の磁気特性の制御が可能である磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と、前記非磁性支持体上に形成された、非磁性酸化物を含む耐腐蝕下地層と、前記耐腐蝕下地層上に真空薄膜形成技術によって形成された厚さ100nm以下の磁性層と、前記磁性層上に形成された保護層とを有することを特徴とする。
【0018】
好適には、前記耐腐蝕下地層と前記磁性層の間に形成された、非磁性材料からなる島状構造層をさらに有する。好適には、前記耐腐蝕下地層と前記島状構造層の少なくとも一方は導電性材料を含む。さらに好適には、前記耐腐蝕下地層はアルミニウムおよび酸化アルミニウムを含み、前記島状構造層は銅を含む。
【0019】
これにより、非磁性支持体を透過する酸素等に起因した磁性層の腐蝕が防止される。また、耐腐蝕下地層および島状構造層の成膜条件や、耐腐蝕下地層の酸化状態を制御することにより、磁性層とその下地層の界面の状態(粗さ等)を調整でき、磁性層の保磁力などの磁気特性を所望の値に制御することが可能となる。本発明の磁気記録媒体によれば、磁性層を薄くした場合にも磁性層の腐蝕が防止されるため、磁性層を薄くできる。したがって、磁気記録媒体の記録密度をさらに高くすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の磁気記録媒体の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態の磁気記録媒体1の断面図である。図1に示すように、非磁性支持体2上に耐腐蝕下地層3が形成されている。非磁性支持体2は例えば高分子フィルムからなり、可撓性を有する。耐腐蝕下地層3は非磁性で酸化されにくい層である必要がある。耐腐蝕下地層3としては、例えば酸化アルミニウム(Al−O)層を用いることができるが、酸化シリコン(SiO)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)等を耐腐蝕下地層3の材料とすることもできる。
【0021】
磁気記録層である磁性層4はCoおよびCoOからなり、耐腐蝕下地層3の表面に蒸着によって形成される。磁性層4は、例えばDLCからなる保護層5によって保護される。保護層6を設けることにより、磁気記録媒体1の耐久性が向上する。磁気記録媒体1の最表層には潤滑剤層6が形成されている。非磁性支持体2の磁性層4と反対側の面には、バックコート層7が形成されている。バックコート層7を形成しても、非磁性支持体2側から磁性層4に酸素や水分が侵入するため、耐腐蝕下地層3が設けられる。
【0022】
次に、上記の本実施形態の磁気記録媒体1を構成する各層について詳細に説明する。非磁性支持体2としては、従来の磁気テープに用いられている公知の非磁性支持体をいずれも使用できる。非磁性支持体2の材料として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック類等が挙げられる。
【0023】
耐腐蝕下地層3は非磁性支持体2と磁性層4の間に形成される。耐腐蝕下地層3として例えばAl−O層を設けた場合、非磁性支持体2側からの磁性層4の腐蝕が効果的に防止される。また、Al−O層の成膜条件等を適宜選択することにより、磁気記録媒体の保磁力、残留磁化、飽和磁化を所望の値に調整できる。
【0024】
Al−O層は、例えばスパッタリングにより形成されたAl層を自然酸化させることにより得られる。Al層の酸化は、磁性層の磁気特性を制御する上で重要なプロセスである。Al−O層はAl層の自然酸化の他、プラズマ酸化、熱酸化などによっても形成できる。但し、自然酸化によれば、Al層を効果的に酸化することができ、酸化用の装置を特に必要としない。磁性層の酸化防止のためには、Al−O層は非磁性支持体を完全に覆う必要がある。
【0025】
図2は、耐腐蝕下地層3となるAl層の形成に適用できるスパッタリング装置の一例を示す概略図である。図2に示すマグネトロンスパッタリング装置11の真空室12内は、真空ポンプ13により減圧される。真空室12から真空ポンプ13への排気速度は、バルブ14によって調節される。ガス導入管15から例えばアルゴン(Ar)ガスが導入され、真空室12内が所定の真空度に制御される。
【0026】
真空室12内には冷却キャン16が設けられ、冷却キャン16は矢印Aで示す方向に定速で回転する。冷却キャン16と対向するように、例えばAlからなるターゲット17が配置される。ターゲット17は電極18に支持される。電極18の裏側には、磁場を形成するマグネット19が配置されている。ターゲット17は自由に位置を変更することができる。
【0027】
非磁性支持体2は供給ロール20から図中矢印Bで示す方向に送り出され、冷却キャン16の周面に沿って走行した後、巻き取りロール21に巻き取られる。巻き取りロール21の軸は図示しない駆動源によって回転駆動される。供給ロール20と冷却キャン16の間のガイドロール22と、冷却キャン16と巻き取りロール21の間のガイドロール23により、非磁性支持体2の張力が調整される。
【0028】
冷却キャン16と電極18の間に電圧を印加すると、Arガスがプラズマ化する。電離されたイオンをターゲット17に衝突させ、ターゲット17からはじき出された原子を非磁性支持体2上に堆積させ、Al層を形成する。Al層の厚さは、好適には3〜20nmである。
【0029】
Al層は上記のスパッタリング以外の真空薄膜形成技術によって形成してもよい。真空薄膜形成技術としては真空蒸着やイオンプレーティング等の物理的蒸着(PVD;physical vapor deposition)やCVD、さらに分子線エピタキシャル成長などが挙げられる。
【0030】
図1の磁性層4は、例えば図3に示すような真空蒸着装置を用いて形成される。図3に示す真空蒸着装置31の真空室32内は、排気口33a、33bを介して排気される。真空室32内には非磁性支持体2を供給する供給ロール34とそれを巻き取る巻き取りロール35がそれぞれ配置されている。非磁性支持体2は矢印Aで示す方向に定速で送り出され、冷却キャン36の周面に沿って走行した後、巻き取りロール35に巻き取られる。
【0031】
冷却キャン36は、矢印Bで示す方向に定速で回転する。冷却キャン36の内部に設けられた冷却装置により、冷却キャン36は例えば−20℃程度に冷却される。これにより、非磁性支持体2の熱変形等が防止される。非磁性支持体2の走行経路に設けられたガイドロール37、38によって非磁性支持体2の張力が調整される。
【0032】
真空室32内には冷却キャン36と対向するように蒸着源39が配置されている。蒸着源39は磁性層を形成するための金属磁性材料であり、るつぼ40内に充填されている。真空室32の側壁には、蒸着源39を加熱し、蒸発させるための電子銃41が取り付けられている。電子銃41から放出された電子線42が蒸着源39に照射される。電子線42の照射により蒸着源39から蒸発した金属磁性材料が、冷却キャン36上の非磁性支持体2に堆積することにより、磁性層が形成される。
【0033】
冷却キャン36と蒸着源39との間の冷却キャン36近傍には、シャッタ43が設けられている。これにより、金属磁性材料の非磁性支持体2に対する入射角が所定の範囲に制限される。真空室32には酸素ガス導入口44から酸素が導入される。蒸着源39がCoの場合、蒸着雰囲気に酸素を導入することによりCoとCoOからなる磁性層が形成される。なお、シャッタ43や酸素ガス導入口44の位置および個数は図3の例に限定されない。蒸着源の加熱には、上記のような電子線による加熱手段の他、例えば抵抗加熱手段、高周波加熱手段、レーザ加熱手段等の公知の手段を使用できる。
【0034】
本実施形態の磁気記録媒体によれば、磁性層の下地にAl−O層を形成することにより、磁性層の保磁力を84〜120kA/m、飽和磁化Mrと磁性層の厚さtの積Mr・tを11〜17mA、飽和磁化Msと磁性層の厚さtの積Ms・tを15〜21mA、残留磁化/飽和磁化で定義される角形比Rsを約0.72〜0.8、表面電気抵抗を30〜2600Ω/mにできる。
【0035】
AlまたはAl−O層の厚さを調整することにより、Al−O層の表面形態および構造が変化するため、上記の範囲で各磁気特性を所望の値に制御できる。上記の各磁気特性は、Al−O層の酸化条件を変更することによっても制御できる。磁性層の磁気特性は、Al−O層と磁性層の界面の状態に依存する。また、磁性層を上記のような真空蒸着以外の真空薄膜形成技術によって形成してもよい。
【0036】
図1に示すように、磁性層4の上層には保護層5が形成されるが、保護層5の強度や被覆性を良好とするには、保護層5としてDLC膜をCVDにより形成することが好ましい。CVDによるDLC膜の形成では、非磁性支持体2上に耐腐蝕下地層3および磁性層4が形成された積層体が電極の一部として用いられる。
【0037】
Co−CoO磁性層を有するMRヘッド用の磁気記録媒体は、例えばCo−Ni合金等の磁性層を有する従来のインダクティブ型ヘッド用の蒸着テープ(例えばデジタルビデオカセット(DVC))等に比較すると、磁性層の厚さが著しく薄く、磁性層の酸化度が高い。したがって、従来の磁気記録媒体に比較して導電性が低いことが問題となる。DLC膜が形成される上記の積層体の導電率が低い場合、CVDによりDLC膜を効率よく堆積させることができない。
【0038】
図4に、DLC膜を形成するためのCVD装置の一例を示す。図4に示すCVD装置51の真空室52の内部は、真空排気系53によって高真空状態にされる。磁性層が形成された非磁性支持体2は、供給ロール54から図中矢印Aで示す方向に送り出され、図中矢印Bで示す方向に定速で回転する対向電極用キャン56の周面に沿って走行し、巻き取りロール55に巻き取られる。供給ロール54、巻き取りロール55および対向電極用キャン56は、それぞれ非磁性支持体2の幅と同程度の長さの軸を有する円筒状である。
【0039】
供給ロール54と対向電極用キャン56の間に設けられたガイドロール57と、対向電極用キャン56と巻き取りロール55の間に設けられたガイドロール58によって、非磁性支持体2の張力が調節される。対向電極用キャン56の下方に、耐熱ガラスまたはプラスチック等からなる反応管59が設けられている。真空室52の外部に設けられた反応管端部60から反応管59に、保護層の成膜ガスとして炭化水素系ガスが導入される。炭化水素系ガスにケトンやアルコールが含まれていてもよい。炭化水素系ガスにアルゴンガスや水素ガスを混合することにより、プラズマ状態での炭化水素系ガスの分解を促進させることもできる。
【0040】
反応管59内の中間部分に金属メッシュ等からなる電極61が取り付けられ、電極61は真空室52の外部に設けられた直流電源62と接続される。電極61に例えば500〜2000Vの電圧を印加すると、電極61と対向電極用キャン56の間にグロー放電が生じ、反応管59に導入された成膜ガスが分解する。これにより、非磁性支持体2上に保護層としてDLC膜が堆積する。
【0041】
このとき、対向電極用キャン56に接する非磁性支持体2上の磁性層が電極の一部として作用し、DLC膜が形成される積層体の導電率が低い場合、DLC膜を効率よく堆積させることができない。本実施形態では磁性層が薄いために導電性が低下し、導電性の低下により保護層形成のスループットが低下する。スループットの低下に対する対策として、本実施形態の磁気記録媒体は、耐腐蝕下地層3を導電層性材料で形成している。このように耐腐蝕下地層を導電層とすることにより磁性層が薄い場合にも高スループットで保護層を形成できる。
【0042】
図1の潤滑剤層6は、例えばフッ素系潤滑剤、好適にはパーフルオロポリエーテル構造を有するフッ素系潤滑剤を溶剤に溶解させ、保護層5上に塗布することにより形成できる。潤滑剤層6を設けることにより、磁気記録媒体1の耐久性や走行性が良好となる。
【0043】
図1のバックコート層7は、粉末成分と結合剤を有機溶媒に混合分散させたバックコート用塗料を、非磁性支持体2の磁性層4と反対側の面に塗布して形成される。粉末成分としては、導電性を付与するためのカーボンブラックや、表面粗さの調整と耐久性向上のためのフィラー粒子(例えばα−酸化鉄、α−アルミナ、酸化クロム等)が挙げられる。バックコート用塗料に潤滑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0044】
図5〜図8は、耐腐蝕下地層3(Al−O層)の厚さを変化させたときの耐腐蝕下地層3と磁性層4の界面の状態を模式的に示す断面図である。図5〜図8は図1の非磁性支持体2と磁性層4の間の部分の拡大図であり、図1に示すように、非磁性支持体2の表面は微視的には一定の粗さを有する。
【0045】
図5に示すように、耐腐蝕下地層3を設けない場合、表面粗さが大きい非磁性支持体2の上に磁性層4が直接形成され、磁性層4の耐腐蝕性が著しく低い。したがって、非磁性支持体2との界面近傍の磁性層4は容易に腐蝕する(腐蝕部分4a)。この場合の磁気記録媒体は、磁性層4の腐蝕が進んでいることと、耐腐蝕下地層としてAl層が形成されていないことから、電気抵抗が高い。
【0046】
図6に示すように、耐腐蝕下地層3としてAl層が極めて薄く形成された場合(例えば厚さ3nm)、Al層はほとんど自然酸化されてAl−O層となる。また、非磁性支持体2の表面粗さは耐腐蝕下地層(Al−O層)3により緩和されるが、完全には解消されない状態で磁性層4が形成される。
【0047】
耐腐蝕下地層3は非磁性支持体2から磁性層4への酸素や水分の拡散を防止するが、耐腐蝕下地層3による非磁性支持体2の被覆が完全ではないため、磁性層4の一部が酸素や水分から保護されない。この場合、磁性層の腐蝕部分4aの厚さは、図5の場合に比較して薄くなる。磁性層の腐蝕部分4が減少することと、Al層が形成されることから、図5の場合に比較すれば、磁気記録媒体の電気抵抗は低くなる。
【0048】
図7に示すように、耐腐蝕下地層3としてAl層が適度な厚さで形成された場合(例えば厚さ6nm)、Al層の大部分は自然酸化されるが、酸化されていないAlも耐腐蝕下地層3に含まれる。非磁性支持体2に近い側の耐腐蝕下地層3は主にAl−Oからなり、磁性層4に近い側の耐腐蝕下地層は、酸化されていないAlと磁性層のCoおよびCoOの合金を含む非酸化部分3aとなる。耐腐蝕下地層3が非磁性支持体2を完全に被覆するため、磁性層4の腐蝕が防止される。
【0049】
非磁性支持体2の表面粗さが耐腐蝕下地層3によって平坦化されるため、耐腐蝕下地層3と磁性層4の界面は、図5〜図8のうち最も平滑となる。しかしながら、耐腐蝕下地層3と磁性層4の界面が平滑となることから、磁性層の保磁力Hcは低くなる。図5および図6の場合に比較して、磁性層4の腐蝕が抑制されることと、耐腐蝕下地層3が厚く、酸化されないAlが増加することから、磁気記録媒体の電気抵抗はより低くなる。
【0050】
図8に示すように、耐腐蝕下地層3として厚いAl層が形成された場合(例えば厚さ20nm)、耐腐蝕下地層3の非磁性支持体2に近い側は酸化され、Al−O層となるが、磁性層4側にはAl、CoおよびCoOの合金を含む非酸化部分3aが比較的厚く残る。Al層を厚く形成した場合、AlまたはAl−O層中に比較的大きい粒子(グレイン)が成長し、これにより非酸化部分3aを含む耐腐蝕下地層3の表面が粗くなる。したがって、図7の場合に比較すると、磁性層の保磁力Hcは増大する。また、非酸化部分3aが厚いことから、この場合の磁気記録媒体の電気抵抗は明らかに低くなる。
【0051】
以上のように、本実施形態の磁気記録媒体によれば、非磁性支持体と磁性層の間に耐腐蝕下地層を設けることにより、磁性層の腐蝕が防止される。また、耐腐蝕下地層の厚さや酸化条件を制御することにより、磁性層の保磁力等の磁気特性を調整できる。
【0052】
(実施形態2)
図9は、本実施形態2の磁気記録媒体71の断面図である。図9に示すように、非磁性支持体2上に耐腐蝕下地層3が形成されている。非磁性支持体2は例えば高分子フィルムからなり、可撓性を有する。非磁性支持体2は実施形態1と同様に選択できる。
【0053】
耐腐蝕下地層3は非磁性で酸化されにくい層である必要がある。耐腐蝕下地層3としては、例えば厚さ3〜20nmのAl−O層など、実施形態1と同様の層を用いることができる。また、耐腐蝕下地層3は実施形態1と同様に、スパッタリング等の方法で形成され、必要に応じて自然酸化などの方法で酸化し、以後酸化されにくい層とする。磁性層4の腐蝕を防止するため、耐腐蝕下地層3は非磁性支持体2の表面を完全に覆う必要がある。
【0054】
耐腐蝕下地層3上に島状構造層72が形成されている。島状構造層72も非磁性層であり、導電性が高いことが望ましい。島状構造層72としては、例えば厚さ3〜20nmの銅(Cu)層を用いることができる。島状構造層72は、スパッタリング等の真空薄膜形成技術により、耐腐蝕下地層3を完全に被覆しない程度の厚さで形成される。島状構造層72の表面に、例えばCoおよびCoOからなる厚さ25〜40nmの磁性層4が形成されている。磁性層4は実施形態1と同様に、蒸着等の方法によって形成される。
【0055】
磁性層4は、例えばDLCからなる保護層5によって保護される。保護層5を設けることにより、磁気記録媒体1の耐久性が向上する。磁気記録媒体1の最表層には潤滑剤層6が形成されている。非磁性支持体2の磁性層4と反対側の面には、バックコート層7が形成されている。
【0056】
本実施形態2の磁気記録媒体において、耐腐蝕下地層3としてAlを堆積させた場合は、図9に示す磁気記録媒体71の島状構造形成前、または磁性層形成前に、自然酸化、熱酸化、プラズマ酸化等によりA1層を酸化させ、A1−O層にする。または、磁気記録媒体71全体を形成した後に、自然酸化によりA1層を酸化させ、A1−O層にする。耐腐蝕下地層3としてAl−O層またはSiO層などの酸化物を堆積させた場合には、このような酸化プロセスは不要である。
【0057】
また、耐腐蝕下地層と島状構造層は連続的に形成することも可能である。図10は、耐腐蝕下地層と島状構造層を連続的に形成する方法を示す模式図である。図10に示すように、ドラム81を矢印Aで示す方向に回転させ、非磁性支持体2を矢印Bで示す方向に走行させる。
【0058】
ドラム81上の非磁性支持体2に、まず、耐腐蝕下地層3をスパッタリングにより堆積させる(スパッタリングI)。スパッタリングIでは、例えばAl、Al−Oまたは酸化シリコン(SiO)を堆積させる。続いて、耐腐蝕下地層3の上に島状構造層72をスパッタリングにより堆積させる(スパッタリングII)。スパッタリングIIでは、例えばCu、Al、白金(Pt)等を島状に堆積させる。例えば図2に示すスパッタリング装置において、非磁性支持体2の走行経路に沿った2箇所にターゲットを配置することにより、上記のスパッタリングIおよびIIを行うことができる。
【0059】
島状構造層72として例えばCuを堆積させる場合、スパッタリングでのArガス圧を比較的高くして、電力を高くしないと、島状構造が得られない。図11に、磁性層下地にCuの島状構造層が形成された磁気記録媒体の断面の高解像度電子顕微鏡像を示す。図11において、丸で囲まれた部分に島状にCuが堆積し、磁性層の下層に島状構造層が形成されているのが確認できる。なお、図11のCo+CoO磁性層上の層は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察の試料作製に用いられる保護剤であり、実際の磁気記録媒体を構成する保護層とは異なる。
【0060】
非磁性支持体2上に耐腐蝕下地層3と島状構造層72を形成した後、実施形態1と同様に、真空蒸着装置において磁性層4が形成される。島状構造層72を形成することにより、島状構造層72と磁性層4の界面は非常に粗くなる。これにより、磁性層4の保磁力Hcを高くすることができる。島状構造層72と磁性層4の界面の粗さを変化させることにより、保磁力Hcを調節できる。この界面の粗さは、島状構造層72の成膜条件や厚さを変化させることにより調節できる。図9に示す本実施形態2の磁気記録媒体71の保護層5、潤滑剤層6およびバックコート層7は、実施形態1と同様に形成できる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の磁気記録媒体の具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
(実施例1)
以下のように、実施形態1の磁気記録媒体を作製し、各種の試験を行った。非磁性支持体としてPETフィルムを用い、試料1ではAl層を形成せず、試料2〜5では非磁性支持体上に3nm、6nm、12nmまたは20nmの厚さのAl層をスパッタリングにより形成した。試料1は比較例である。
【0062】
Al層の形成では、スパッタリング装置の真空室内の真空到達度を10−4Paオーダーとし、Arガス圧力を2.3×10−1Paとした。直流(DC)マグネトロンスパッタリングの出力を127mm×250mm当たり1.5kWとし、厚さ6nmのA1を非磁性支持体の送り速度を約10.3m/分として成膜した。非磁性支持体2の送り速度を変化させることにより、Al層の厚さを所望の値に制御した。
【0063】
磁性層を形成する前にAl層を自然酸化させるため、Al層を堆積させた非磁性支持体を、室温の環境で約1日放置した。図3に示すような真空蒸着装置において、真空到達度を10−3Paとし、厚さ33nmの磁性層を非磁性支持体の送り速度117.5m/分で成膜した。磁性層の成膜は、酸素を導入量0.7L/分で導入しながら行った。
【0064】
磁性層の耐久性と耐腐蝕性を高めるため、磁性層の上層に保護層として厚さ10nmのDLC膜を形成した。DLC膜はプラズマDC電極を用いるCVD法(図4参照)により形成した。さらに、非磁性支持体の磁性層と反対側の面に、厚さ0.5μmのバックコート層を形成した。バックコート層は、カーボン粒子とポリウレタン樹脂を含む塗料を塗布して形成した。
【0065】
図1に示すすべての層を形成した後、Al層をさらに自然酸化させるため、磁気記録媒体1を室温環境に放置した。まず、酸素がPETフィルムを透過し、Al層を化学的に安定なAl−Oに酸化する。これにより、磁性層を酸化から保護するAl−O層が形成される。
【0066】
Al(またはAl−O)層からなる耐腐蝕下地層の厚さが異なり、磁性層の厚さが一定(33nm)の試料で腐蝕試験を行った。腐蝕試験では、試料を65℃、相対湿度90%の恒温室に6日間保存した。その後、腐蝕した試料の飽和磁化Msを測定した。これらの磁気記録媒体の磁気特性、物理的性質、耐腐蝕性、および磁気記録媒体としての性能について、表1にまとめた。
【0067】
耐腐蝕下地層の厚さは堆積時のAl層の厚さで表した。このため、Al層が完全に酸化されてAl−O層に変化した場合、あるいはAl層の酸化が完全ではない場合、その厚さが若干変化するが単純化のため、対応するAl層の厚さで表した。磁気特性は、試料振動型磁力計(VSM)を用いて室温で測定した。磁化劣化率は、腐蝕試験前の飽和磁化Msと、腐蝕試験後の飽和磁化Msaから、{(Ms−Msa)/Ms}×100によって求めた。抵抗減少率は、試料1の表面抵抗との差が、試料1の表面抵抗の何%であるかを示す。
【0068】
【表1】
Figure 2005032327
【0069】
保磁力Hcは、厚さ3nmのAl層を形成した試料2で、Al層のない試料1よりも低下した。Al層を厚さ6nmにすると、保磁力Hcはさらに低下したが、Al層を厚さ6nmより厚くするにつれて、保磁力Hcは増加した。模式的には、試料1の断面は図5のようになり、試料2の断面は図6のようになる。また、試料3の断面は図7のようになり、試料5の断面は図8のようになる。
【0070】
非磁性支持体2であるPETフィルム表面の平均粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた観察によれば、5×5μm当たり約2.9nmであった。厚さ6nm以下のAl層をPETフィルム上に堆積させた場合(図6および図7参照)、Al層の表面粗さがPETフィルムの表面粗さより小さく、Al層が酸化されたAl−O層と磁性層との界面が比較的滑らかになることにより、磁性層の保磁力が低下した。
【0071】
しかしながら、厚さ6nmを超える厚いAl層をPETフィルム上に堆積させた場合(図8参照)、Al層の表面粗さ、すなわちAl−O層の表面粗さは、大きいAl粒子(グレイン)が形成されることにより、再び増加する。したがって、磁性層の保磁力Hcも、Al層の厚さが約6nm以上では、Al層が厚くなるにつれて増加する。Al層の厚さを20nmより厚くした場合、保磁力Hcはさらに増加することが予想される。
【0072】
飽和磁化と磁性層の厚さの積Ms・tと、残留磁化と磁性層の厚さの積Mr・tのいずれも、Al層を設けることにより増加した。積Ms・tと積Mr・tはAl層の厚さが6nmの試料で最大となった。Al層の厚さが6nmを超える試料では、積Ms・tと積Mr・tが減少する傾向が見られた。積Ms・tの増加は、Al−O層の腐蝕防止効果によるものと考えられる。これは、Al−O層がない場合(図5参照)は、磁性層の非磁性支持体との界面近傍の部分が容易に酸化され、飽和磁化Msが低くなるためである。Al−O層を設けた場合には、Al−O層の厚さによらず、磁性層の酸化が抑制され、飽和磁化Msが維持される。
【0073】
Al層が厚い試料での積Ms・tと積Mr・tの減少は、磁性層の飽和磁化Msを低下させるAl、CoおよびCoの混相が界面に生成するためと考えられる。Al層を設けることによる他の効果として、残留磁化Mrと飽和磁化Msの比Mr/Msで定義される角形比Rsの増加が挙げられる。Al層の厚さが6nmのとき、最大で11%を超える角形比Rsの増加が見られた。
【0074】
Al層を設けなかった試料1では、磁化劣化率が最大となり、磁性層の腐蝕が最も進行したとみなされる。すなわち、Al(またはAl−O)層はその厚さに応じて、腐蝕試験での磁性層の腐蝕を防止する効果を示した。厚さ3nmと6nmのAl層を形成した試料2および3では、わずかに腐蝕が見られたが、Al層を設けなかった試料1に比較すると、腐蝕は少なかった。
【0075】
Al層の厚さが12nm以上の試料4および5では、腐蝕試験後の飽和磁化Msが増大し、磁化劣化率がマイナスとなった。これは、自然酸化が不完全である厚いAl層に、磁性層から酸素が拡散したためと考えられる。磁性層が還元されることにより、磁性層の飽和磁化Msが増加したと考えられる。
【0076】
Al層を厚くすると、磁気記録媒体の試料の表面電気抵抗は低下した。図12に示すように、Al層の厚さに対して導電率をプロットすると、Al層の厚さが6nmを超える試料で、導電率が著しく増大することがわかる。また、Al層の厚さが6nm以上のとき、導電率はAl層の厚さにほぼ比例する。
【0077】
Al層の厚さが6nmを超えたとき、導電率がAl層の厚さにほぼ比例して増大することから、腐蝕試験前の自然酸化によって形成されるAl−Oの量はほぼ一定であり、厚いAl層の酸化は完全でないことが示唆される。一方、厚さ6nm以下のAl層は完全またはほぼ完全に酸化され、これにより、試料1〜3の導電性が試料4および5の導電性より低くなっている(表1参照)。
【0078】
試料2の磁気記録媒体は、ノイズが低く、高感度MRヘッドでの使用に適していると考えられる。試料3〜5の磁気記録媒体は、角形比Rsと積Mr・tが高いことから、高出力が得られ、中程度の感度のMRヘッドでの使用に適している。さらに、試料4と5の磁気記録媒体は、表面抵抗が低いため、保護層のDLC膜をCVDにより形成する際の電流を大きくでき、生産性が高い。
【0079】
(実施例2)
以下のように、実施形態2の磁気記録媒体を作製し、各種の試験を行った。島状構造層72として、スパッタリングでCu層を形成した。このときの成膜条件は、スパッタリング装置の真空室内の真空到達度を10−4Paオーダーとし、Arガス圧力を2.0×10−1Paとした。直流(DC)マグネトロンスパッタリングの出力を127mm×250mm当たり2.0kWとし、厚さ約10nmのCuを非磁性支持体の送り速度を約11.4m/分として成膜した。非磁性支持体の送り速度を変化させることにより、Cu層の厚さを所望の値に制御した。
【0080】
島状構造層72と磁性層4の間の粗い界面の効果を明らかにするため、Cuの島状構造層の厚さを変化させた一連の試料について、実験を行った。島状構造層72の単独の効果を確認するため、これらの試料には耐腐蝕下地層を形成しなかった。これらの試料の磁性層4の厚さは30nmとした。これらの試料の保磁力を表2にまとめた。保磁力増加率は試料6を100%として表した。表2に示すように、磁性層を厚さ30nmに薄くした場合であっても、島状構造層を設けることにより、保磁力は37%以上、著しく増大した。
【0081】
【表2】
Figure 2005032327
【0082】
耐腐蝕下地層と島状構造層の少なくとも一方が導電性の場合、磁気記録媒体の表面の電気抵抗を著しく低減できる。単純な例を考えると、磁性層のCoの導電率は17.9×10/Ωm、島状構造層のCuの導電率は60.7×10/Ωm、厚い耐腐蝕下地層のAlの導電率は37.7×10/Ωmであり、これらの3層が平行に積層されている場合、多層構造の合計の電気抵抗は磁性層単層の場合に比較して小さくなる。Al−OとAlが混在する耐腐蝕下地層の厚さを増加させたときの磁気記録媒体表面の電気抵抗の低下は、表1に示したようになる。Cuの島状構造層の厚さを増加させたときの磁気記録媒体表面の電気抵抗の低下を、表3にまとめた。抵抗減少率は、試料9の表面抵抗との差が、試料9の表面抵抗の何%であるかを示す。
【0083】
【表3】
Figure 2005032327
【0084】
表3に示すように、非磁性支持体と磁性層の間に耐腐蝕下地層と島状構造層が設けられた磁気記録媒体では、島状構造層を設けない場合(試料9)に比較して、電気抵抗が最大99%まで低減する。したがって、CVDによる保護層の形成のスループットを上げることができる。
【0085】
上記の本発明の実施形態の磁気記録媒体は、AlとAl−Oを含む耐腐蝕下地層とCuの島状構造層を有し、高い耐腐蝕性を示すため、データの長期保存に適している。さらに、Al層(Al−O層)やCu層の厚さや成膜条件等に応じて磁性層の界面の状態が変化するため、磁性層の界面の状態に依存する磁気特性等を調節することが可能となる。また、耐腐蝕下地層や島状構造層を形成することにより、磁気記録媒体の導電性も調節できる。
【0086】
磁気記録媒体の磁気特性等の制御が可能となることにより、設計が異なる多様なMRヘッドに対して、磁気特性等が最適化された磁気記録媒体を提供することが可能となる。したがって、MRヘッドを用いた、より高記録密度の記録再生システムを実現できる。本発明の磁気記録媒体の実施形態は、上記の説明に限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0087】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体によれば、MRヘッドに対応した高密度記録が可能であり、磁性層の腐蝕を防止でき、各種の磁気特性の制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態1に係る磁気記録媒体の断面図である。
【図2】図2は本発明の磁気記録媒体の耐腐蝕下地層の形成に用いられるスパッタリング装置の概略図である。
【図3】図3は本発明の磁気記録媒体の磁性層の形成に用いられる真空蒸着装置の概略図である。
【図4】図4は本発明の磁気記録媒体の保護層の形成に用いられるCVD装置の概略図である。
【図5】図5は本発明の磁気記録媒体の比較例の断面図である。
【図6】図6は本発明の磁気記録媒体の断面図である。
【図7】図7は本発明の磁気記録媒体の断面図である。
【図8】図8は本発明の磁気記録媒体の断面図である。
【図9】図9は本発明の実施形態2に係る磁気記録媒体の断面図である。
【図10】図10は本発明の実施形態2に係る磁気記録媒体の製造方法を示す図である。
【図11】図11は本発明の実施形態2に係る磁気記録媒体の高解像度TEM像である。
【図12】図12は本発明の実施例に係り、Al層の厚さと磁気記録媒体表面の導電率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…磁気記録媒体、2…非磁性支持体、3…耐腐蝕下地層、3a…非酸化部分、4…磁性層、4a…腐蝕部分、5…保護層、6…潤滑剤層、7…バックコート層、11…マグネトロンスパッタリング装置、12…真空室、13…真空ポンプ、14…バルブ、15…ガス導入管、16…冷却キャン、17…ターゲット、18…電極、19…マグネット、20…供給ロール、21…巻き取りロール、22、23…ガイドロール、31…真空蒸着装置、32…真空室、33a、33b…排気口、34…供給ロール、35…巻き取りロール、36…冷却キャン、37、38…ガイドロール、39…蒸着源、40…るつぼ、41…電子銃、42…電子線、43…シャッタ、44…酸素ガス導入口、51…CVD装置、52…真空室、53…真空排気系、54…供給ロール、55…巻き取りロール、56…対向電極用キャン、57、58…ガイドロール、59…反応管、60…反応管端部、61…電極、62…直流電源、71…磁気記録媒体、72…島状構造層、81…ドラム。

Claims (6)

  1. 非磁性支持体と、
    前記非磁性支持体上に形成された、非磁性材料からなる耐腐蝕下地層と、
    前記耐腐蝕下地層上に真空薄膜形成技術によって形成された厚さ100nm以下の磁性層と、
    前記磁性層上に形成された保護層とを有する
    磁気記録媒体。
  2. 前記耐腐蝕下地層と前記磁性層の間に形成された、非磁性材料からなる島状構造層をさらに有する
    請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 前記耐腐蝕下地層は導電性材料を含む
    請求項1記載の磁気記録媒体。
  4. 前記耐腐蝕下地層はアルミニウムおよび酸化アルミニウムを含む
    請求項3記載の磁気記録媒体。
  5. 前記島状構造層は導電性材料を含む
    請求項2記載の磁気記録媒体。
  6. 前記島状構造層は銅を含む
    請求項5記載の磁気記録媒体。
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