JP2005028719A - 自動車用内装部品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内装部品(ドアトリムアッパー)20は、軽量で保形性を有する発泡樹脂基材21と、その内面側に積層一体化される樹脂リブ22とから構成する。従って、軽量な発泡樹脂基材21を使用するとともに、樹脂リブ22の投影面積を低減化することで軽量化並びにコストダウンを図る。発泡樹脂基材21は、成形金型41,42の1次加圧処理で成形し、更に1次加圧よりも高い加圧力の2次加圧処理により発泡樹脂基材21を圧縮した状態で発泡樹脂基材21の裏面に溶融樹脂M1を射出充填して、発泡樹脂基材21の弾性反発力を利用して、シール性を高めた状態で樹脂リブ22を成形する。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品及びその製造方法に係り、特に、軽量で、かつ所望の剛性を備えるとともに、樹脂漏れを確実に回避できることで、型設備費を低減でき、コストダウンに寄与できる自動車用内装部品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車用内装部品の構成について、ドアトリムを例示して図21,図22を基に説明する。ドアトリム1は、保形性及び車体パネルへの取付剛性を備え、製品面のほぼ全体にいきわたっている樹脂芯材2の表面に、表面外観に優れた表皮3を積層一体化して構成されている。
【0003】
上記樹脂芯材2としては、タルクを混入したポリプロピレン系樹脂を素材としており、また、表皮3は、それ自体保形性を備えておらず、塩ビシート等の合成樹脂シートの裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が使用され、最近では、環境面やリサイクル面を考慮して、TPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等のエラストマーシートの裏面にポリエチレンフォーム等のクッション材が積層された積層シート材料が多用される傾向にある。
【0004】
次に、上記ドアトリム1の成形方法における従来例について図23を基に説明する。まず、ドアトリム1を成形する成形金型4は、所定ストローク上下動可能な成形上型5と、成形上型5と対をなす固定側の成形下型6と、成形下型6と接続される射出機7とから大略構成されている。
【0005】
そして、成形上下型5,6を型締めした際、ドアトリム1の製品形状を形造るために成形上型5にはキャビティ部5aが形成され、成形下型6にはコア部6aが設けられている。上記成形上型5を所定ストローク上下動作させるために、昇降シリンダ5bが連結され、成形下型6には射出機7からの溶融樹脂の通路となるマニホールド6b、ゲート6cが設けられている。
【0006】
また、上下動作する成形上型5は、適正姿勢を維持させるために、成形下型6の4隅部にガイドポスト6dが設けられ、このガイドポスト6dに対応して成形上型5にはガイドブッシュ5cが設けられている。
【0007】
従って、成形上下型5,6が型開き状態にあるとき、表皮3を金型内にセットし、その後、成形上下型5,6を型締めした後、両金型間の製品キャビティ内に射出機7からマニホールド6b、ゲート6cを通じて溶融樹脂Mを射出充填することにより、樹脂芯材2を所要の曲面形状に成形するとともに、樹脂芯材2の表面に表皮3を一体成形している(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
尚、図23では、説明の便宜上、コア部6aの型面にオープン状態で溶融樹脂Mが供給されているが、溶融樹脂Mは成形上下型5,6の型締め後にキャビティ内に射出充填されても良い。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−138268号公報 (第2頁、図3、図4)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のドアトリム1においては、樹脂芯材2の投影面積が大きいため、材料コストが高く、かつ製品が重量化するという問題点が指摘されている。
【0011】
また、樹脂芯材2の投影面積が大きいことから、成形時における射出圧を高く設定せざるを得ず、高い射出圧に耐え得る金型構造が必要となり、金型の作製費用も嵩み、しかも、大量の溶融樹脂を冷却固化させるため、成形サイクルが長期化し、生産性を低下させる大きな要因となっている。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量化を促進でき、高剛性でコストダウンを図れる自動車用内装部品を提供でき、かつ成形金型費用を低減できるとともに、成形性をアップさせることができる自動車用内装部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究の結果、従来から表皮として使用していた発泡樹脂シートに保形性を付与することで、芯材としての機能をもたせ、より以上に剛性が必要な箇所、すなわち製品の周縁部分やパネル、あるいは部品取付箇所並びに荷重がかかる部位には、剛性に優れた樹脂リブを配置することで、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ軽量で、かつコストが廉価な内装トリム部品を提供するとともに、発泡樹脂基材の弾性反発力を利用すれば、樹脂リブ成形時のシール性を高めることが可能となることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る自動車用内装部品は、所望の曲面形状に成形され、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に積層一体化される補強機能を有する樹脂リブとから構成され、上記発泡樹脂基材は、加熱軟化処理された発泡樹脂シートを成形金型間で1次加圧処理することにより絞り成形されているとともに、上記1次加圧時のプレス圧よりも高圧の2次加圧処理により、発泡樹脂基材を成形金型間で圧縮保持した状態で、樹脂バリの発生を回避するように発泡樹脂基材の裏面に溶融樹脂を射出充填することにより、樹脂リブが発泡樹脂基材の裏面に一体化されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、自動車用内装部品としては、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等に適用できる。
【0016】
保形性を有する発泡樹脂基材は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内で所望の曲面形状に成形することで、リブ等の補強材がなくても、成形後、型から脱型しても形状を保持する程度の剛性(保形性)を有している。また、製品形状が高展開率部分を含む場合には、発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型に真空吸引機構を配設して成形金型の内面に沿って発泡樹脂シートに真空吸引力を作用させるようにしても良い。
【0017】
上記発泡樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した素材を使用する。尚、熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂などが使用できる。
【0018】
また、発泡剤としては、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤、あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤の使用が可能である。
【0019】
上記発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に成形して得た発泡樹脂基材は、製品の重量と強度とのバランスを考慮した場合、2〜10倍の発泡倍率が好ましい。そのときの発泡樹脂基材のセル径は、0.1μm〜2.0mmの範囲であることが好ましく、厚みは0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmのものが良い。
【0020】
また、外観意匠性を高めるために、発泡樹脂基材の表面に加飾材を積層しても良い。加飾材としては、織布、不織布、編布、シート、フィルム、発泡体、網状物などが使用できる。これら加飾材を構成する材料は特に限定されないが、織布、不織布、編布等、通気性を有する素材を使用したほうが、発泡樹脂基材の吸音性能を生かす上で好ましい。
【0021】
一方、樹脂リブとして使用する熱可塑性樹脂材料は、広範な熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。通常好ましく使用できるものとして、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できる。
【0022】
また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子などがある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
【0023】
そして、本発明に係る自動車用内装部品によれば、保形性を有する発泡樹脂基材の裏面側に剛性を補強する意味で樹脂リブが積層一体化されるという構成であるため、従来の樹脂芯材を廃止することができる。従って、従来の投影面積の非常に広い樹脂芯材を廃止することで、製品の軽量化を図ることができ、しかも、樹脂材料を節約できることから、材料コストの低減化も同時に達成できる。
【0024】
尚、発泡樹脂基材の多孔質吸音機能により、吸音性能に優れた内装部品が得られるとともに、発泡樹脂基材及び樹脂リブの素材として、ポリオレフィン系樹脂を使用した場合、オールオレフィン系樹脂に統一されるため、分離工程が廃止でき、リサイクル作業を簡素化できる。
【0025】
更に、樹脂リブのリブ厚みは、例えば製品に外力が大きく加わる部位などはリブ厚みを厚く設定し、比較的外力が加わりにくい部位はリブ厚みを薄肉にするなど、リブ厚みを適宜可変させることができる。従って、必要最小限度の樹脂材料を使用すれば足り、製品の軽量化やコストダウンに寄与できる。また、樹脂リブにクリップ座、あるいは各種エスカッション部品を取り付けるための取付座を一体に形成することもできる。
【0026】
また、発泡樹脂基材の裏面に積層一体化される樹脂リブは、樹脂リブの成形時には、発泡樹脂基材が圧縮状態で成形金型内に保持されているため、樹脂リブ縁部のシール性が高まり、樹脂漏れによるバリ発生等を可及的に防止できる。従って、樹脂リブの流動長も長く設定できることから、ゲート点数を削減でき、型構造を簡素化でき、型設備費を低減することができる。
【0027】
次いで、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、所望の曲面形状に成形され、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面に積層一体化される補強機能をもつ樹脂リブとからなる自動車用内装部品の製造方法において、上記発泡樹脂基材の素材である発泡樹脂シートを加熱軟化処理した後、成形金型内にセットする発泡樹脂シートのセット工程と、成形金型同士を型締めして、成形金型の1次加圧処理を行ない、成形金型のキャビティ形状に沿わせて発泡樹脂基材を所要形状に成形する発泡樹脂基材の成形工程と、上記発泡樹脂基材の成形工程後、1次加圧よりも高圧の2次加圧処理を行ない、発泡樹脂基材を圧縮状態で成形金型間に保持するとともに、成形金型のキャビティ内に射出機から溶融樹脂を射出充填して、樹脂リブを発泡樹脂基材の裏面側に積層一体化する樹脂リブの成形工程とからなることを特徴とする。
【0028】
ここで、自動車用内装部品の成形方法に使用する成形金型は、上下動可能な成形上型と、成形上型の下方側に位置する固定側である成形下型と、成形下型に連結される射出機とから構成され、射出機から供給される溶融樹脂は、成形下型に設けられたマニホールド、ゲート等の樹脂通路を通じて成形下型の型面に穿設されている溝部内に供給される。
【0029】
また、所望ならば、成形上型に真空吸引機構が付設されていても良く、発泡樹脂基材の絞り成形時、成形上型から真空吸引力を作用させることで、製品形状の賦形性を高めるとともに、絞模様等の転写に有利である。一方、成形下型にエアブロー機構を付設しても良く、エアブロー機構は、発泡樹脂基材の成形時に冷却用エアを吹き付けることで、冷却サイクルを短縮化できる。
【0030】
ところで、本発明方法の特徴は、発泡樹脂基材を所要形状に成形する成形金型における1次加圧状態と、樹脂リブを射出充填する際、発泡樹脂基材を成形金型内で挟持プレスする2次加圧状態との間で1次加圧に比べ2次加圧にかかるプレス圧を高く設定することにより、発泡樹脂基材の弾性反発力を利用して、樹脂リブ成形時のシール性を高めるというものであり、この1次加圧と2次加圧の加圧力を変更させるために、成形金型に型クリアランス調整機構が配設されている。
【0031】
例えば、型クリアランス調整機構として、成形金型周縁のガイドポスト間にガイドシムを進退自在に介装させ、ガイドシムを介装させた状態では、型クリアランスが大きくなり、ガイドシムを後退させてガイドポストを直接接触させた状態では、型クリアランスが小さくなるようにシリンダ駆動されるガイドシムを用いても良く、また、成形上型の下降ストローク量をプログラミングにより制御することで、プレス圧を可変させるようにしても良い。
【0032】
従って、本発明方法によれば、従来の投影面積の広い樹脂芯材に比べ、樹脂リブだけを成形すれば良いため、射出圧力を従来に比べて低く設定することにより、成形上型の負荷が少なくて済むとともに、樹脂量も少なく、材料費を節約でき、従来の樹脂芯材に比べ冷却時間も少ないため、成形サイクルを大幅に短縮化できる。
【0033】
更に、本発明方法によれば、発泡樹脂基材の弾性反発力を利用して、1次加圧力に比べ2次加圧力を大きく設定して、発泡樹脂基材を成形金型により圧縮した状態を維持しつつ成形金型内に溶融樹脂を射出充填するというものであるから、樹脂リブ成形時におけるシール性が高まり、樹脂漏れが生じることがなく、バリ発生等の成形不良が回避できることから、成形性を高めることができるとともに、リブ流動長を長く設定できるため、ゲート点数を削減できるなど、型設備を簡素化できる。
【0034】
そして、発泡樹脂基材は脱型後、正規の厚みに復元する。よって隣接する部品とのクリアランスは設計時に設定した寸法関係(ゼロも含む)に落ちつく。また、発泡樹脂基材の板厚が復元することにより、所定板厚の強度、剛性を確保できる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る自動車用内装部品及びその製造方法の好適な実施の形態について、自動車用ドアトリム及びその製造方法を例示して説明する。
【0036】
図1乃至図17は本発明をツートンタイプのドアトリム及びその製造方法に適用した実施形態を示し、図1はツートンタイプの自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同自動車用ドアトリムにおけるドアトリムアッパーの発泡樹脂基材を省略した樹脂リブとドアトリムロアを示す正面図である。また、図4乃至図7は同自動車用ドアトリムの製造方法に使用する成形金型を示し、図4は成形金型の全体図、図5は同成形金型における型クリアランス調整機構を示す構成説明図、図6は同成形金型に付設される真空吸引機構、エアブロー機構を示す構成説明図、図7は同成形金型における成形下型を示す平面図である。更に、図8は同ドアトリムの製造方法における成形金型のタイムチャート図、図9乃至図14は同ドアトリムの製造方法における各工程を示し、図9は予熱工程、図10はセット工程、図11は発泡樹脂基材の成形工程、図12,図13は発泡樹脂基材の冷却工程、図14は樹脂リブの成形工程をそれぞれ示す各説明図である。そして、図15は加飾材を省略した発泡樹脂シートを使用した際の型クリアランス調整機構の動作を示す説明図、図16は型クリアランス調整機構の変形例を示す成形下型の平面図、図17は図16に示す型クリアランス調整機構の動作を示す説明図である。
【0037】
更に、図18乃至図20は本発明を一体型の自動車用ドアトリムに適用したもので、図18は一体型の自動車用ドアトリムの正面図、図19は同ドアトリムの断面図、図20は同ドアトリムにおける発泡樹脂基材を省略した樹脂リブのパターンを示す説明図である。
【0038】
まず、図1,図2において、ツートンタイプの自動車用ドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と樹脂単体品からなるドアトリムロア30との上下2分割体から構成されている。ドアトリム10に装着される機能部品としては、ドアトリムアッパー20にインサイドハンドルエスカッション11、パワーウインドウスイッチフィニッシャー12が取り付けられている。ドアトリムロア30には、ドアポケット用開口13が開設され、その背面側には、図2に示すように、ポケットバックカバー(樹脂成形体からなる)14が取り付けられており、ドアトリムロア30のフロント側にスピーカグリル15が一体形成されている。
【0039】
ところで、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、積層構造体であるドアトリムアッパー20の構造に本発明を適用し、製品の軽量化を図るとともに、ドアトリムアッパー20の成形性を高めたことが特徴である。
【0040】
すなわち、ドアトリムアッパー20は、所望の曲面形状に成形され、保形性を有する発泡樹脂基材21と、この発泡樹脂基材21の裏面側に積層一体化される樹脂リブ22と、発泡樹脂基材21の表面側に積層一体化される加飾機能をもつ加飾材23とから大略構成されている。
【0041】
上記発泡樹脂基材21は、保形性を備えるように発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、所要形状に熱成形、例えば、所望の型面を有する成形金型でコールドプレス成形されるが、更に高展開率部分については、真空成形のアシスト作用により発泡樹脂基材21の成形性を高めるようにしても良い。
【0042】
上記発泡樹脂シートは、汎用の熱可塑性樹脂に発泡剤を添加した構成であり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤や重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤が使用できる。この実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に発泡剤として重炭酸ナトリウムを適宜添加した発泡樹脂シートを使用している。また、この発泡樹脂基材21の発泡倍率は、2〜10倍に設定され、厚みは0.5〜30mm、特に好ましくは1〜10mmの範囲に設定されている。
【0043】
次いで、樹脂リブ22は、発泡樹脂基材21の裏面側に配設され、特に、図3に示すように、縦横方向、あるいは斜め方向等に延びる格子状パターンに設定されている。この樹脂リブ22は、汎用の合成樹脂成形体からなり、通常好ましく使用できる合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アイオノマー系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂等から適宜選択されて良く、本実施形態では、環境面、リサイクル面を考慮してポリプロピレン系樹脂が使用されている。
【0044】
また、この樹脂リブ22には、上記熱可塑性樹脂中に適宜フィラー、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子等の充填剤が混入されていても良い。
【0045】
このように、図1乃至図3に示すドアトリム10は、積層構造体からなるドアトリムアッパー20と、合成樹脂単体のドアトリムロア30とから構成され、外観上のアクセント効果により、優れた外観意匠性を備えている。更にドアトリムアッパー20は、保形性を有する発泡樹脂基材21と、発泡樹脂基材21の裏面に積層一体化される樹脂リブ22と、加飾性を有する加飾材23とから構成されているため、従来のように製品の全面に亘り占有していた樹脂芯材を廃止でき、かつ軽量な発泡樹脂基材21を使用する一方、樹脂リブ22は、骨状であり、荷重が加わる部位、例えばクリップ座、ウエスト部上面、アームレスト部上面等を除いた部位は肉抜き構造となっている関係で、製品の重量について、従来例に比し40%以上の軽量化を図ることができるとともに、樹脂材料も大幅に節約でき、コストダウンにも貢献できる。
【0046】
更に、発泡樹脂基材21は、多孔質構造であるため、ドアトリムアッパー20は、吸音性能に優れ、車室内外の騒音を低減することができる。また、発泡樹脂基材21における車室内騒音を対象とした吸音性能を高めるために、発泡樹脂基材21の表面に積層一体化される加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性を備えたシート材料が好ましい。尚、加飾材23は、織布、不織布、編布等の通気性シート以外にも塩ビシートやTPO(サーモプラスチックオレフィン)シート等の合成樹脂シート(TPOシートを使用すればリサイクルが可能)、合成樹脂フィルム、発泡体、網状体等を使用することができる。尚、廉価構成として、加飾材23を省略し、発泡樹脂基材21の表面に塗装や印刷処理を施すようにしても良い。
【0047】
ところで、本発明に係る自動車用内装部品を適用したドアトリム10は、特に、ドアトリムアッパー20が上述したように軽量で機能性に富むとともに、発泡樹脂基材21の裏面に一体化される樹脂リブ22成形時における樹脂漏れを確実に防止することができ、成形性を高め、かつ成形時の型設備を簡素化できる利点を備えている。以下にその製造方法について説明する。
【0048】
まず、図4乃至図7に基づき、成形金型40の構成について説明し、図8で成形金型40における成形上型41のプレスチャート図を示し、図9乃至図14に基づいて各工程について説明する。
【0049】
図4において、ドアトリム10の成形に使用する成形金型40は、所定ストローク上下動可能な成形上型41と、成形上型41と対をなす固定側の成形下型42と、成形下型42に接続される2基の射出機43a,43bとから大略構成されている。
【0050】
更に詳しくは、成形上型41は、製品形状に合致したキャビティ部411が形成されており、成形上型41の上面に連結された昇降シリンダ412により所定ストローク上下駆動される。また、成形上型41の4隅部には、ガイドポスト413が設けられている。
【0051】
一方、成形下型42には、成形上型41のキャビティ部411に対応するコア部421が設けられている。また、このコア部421の型面に溶融樹脂を供給するために、マニホールド422a,422b、ゲート423a,423bが設けられており、このマニホールド422a,422b、ゲート423a,423bの樹脂通路を経て射出機43a,43bから供給される溶融樹脂M1,M2がコア部421の上面に供給される。尚、樹脂リブ22を形成するために、コア部421上面に溶融樹脂M1が供給される溝部424が穿設される一方、ドアトリムロア30を形成するために、成形上下型41,42間に所定クリアランスのキャビティ425が設定されている。
【0052】
また、成形下型42の4隅部には、ガイド機構となるガイドポスト426が突設され、このガイドポスト426は、成形上下型41,42が型締めされる際、成形上型41のガイドポスト413のガイド軸414がガイドポスト426のガイド孔426a内に案内されることで成形上型41のプレス姿勢を適正に維持できる。
【0053】
そして、成形金型40の4隅部に設けられているガイドポスト413,426に型クリアランス調整機構44が付設されている。この型クリアランス調整機構44の一実施形態としては、ガイドポスト413,426間に介装できるように、図5中矢印方向に進退可能なガイドシム441がシム駆動用シリンダ442のピストンロッド443に取付用ブラケット444をビス445を介して取り付けられており、シム駆動用シリンダ442の伸縮動作により、ガイドシム441がガイドポスト413,426間に侵入、あるいは回避を行なう。尚、シム駆動用シリンダ442は、成形下型42のガイドポスト426の側壁から外方に延設された台座446上に支持されている。
【0054】
従って、ガイドポスト413,426間にガイドシム441を介装させて成形金型41,42を型締めした場合、型クリアランスが大きく設定できるとともに、逆に、ガイドポスト413,426からガイドシム441を回避させて直接ガイドポスト413,426を接触させた場合には、型クリアランスが小さく規制できる。
【0055】
更に、本発明方法に使用する成形金型40は、図6に示すように、成形上型41に真空吸引機構45が付設されている。すなわち、真空吸引ポンプ451に接続する真空吸引管452が成形上型41の空気室415と連通しており、真空吸引管452に設けられている開閉バルブ453の開閉操作により、空気室415内の空気を抜気することができ、成形上型41の型面には、適宜ピッチ間隔で真空吸引孔416が開設されている。
【0056】
同様に、この真空吸引機構45が作用するエリアにおいて、成形下型42には、エアブロー機構46が付設されている。すなわち、圧空ブロワ461に接続するエアブロー管462が成形下型42の空気室427と連通しており、ドアトリムアッパー20対応箇所における成形下型42の型面には、図7に示すように、孔径が10φ程度のエアブロー孔428が適宜ピッチ間隔で多数開設されている。
【0057】
以上のように、成形金型40が構成されており、この成形金型40を使用して、図1乃至図3に示すドアトリム10の製造方法について説明する。その前に、図8に基づいて、成形上型41のプレスチャートについて簡単に説明すると、成形金型40内に材料をセットした後、成形上型41は上限位置から下限位置の手前である1次加圧地点(ガイドシム441のイン位置)まで降下して、この1次加圧地点で10秒間1次加圧処理が行なわれ、発泡樹脂基材21が成形される。
【0058】
そして、1次加圧後、成形上型41が1mm程度上昇し、成形下型42に設けられているエアブロー機構46から冷却用エアが発泡樹脂基材21の裏面側に吹き付けられ、約10秒間強制冷却が行なわれる。このとき、型クリアランス調整機構44の駆動により、ガイドシム441は、型外に回避している。
【0059】
更に、発泡樹脂基材21の冷却工程が完了すれば、成形上型41が再度下降する。このとき、成形上下型41,42のガイドポスト413,426が直接接触するまで、すなわち2次加圧地点(ガイドシム441のアウト位置)まで成形上型41が下降し、樹脂部分の投影面積にもよるが、1次加圧時の加圧力に比べ大きな加圧力(200t)が約25秒間加わる2次加圧処理が行なわれ、この2次加圧時に樹脂リブ22の成形が行なわれる。
【0060】
以下、本発明方法の各工程について説明する。まず、図9に示すように、ヒーター装置50により発泡樹脂シートSの一方面に加飾材23をラミネートしたものを所定温度に加熱軟化させる。この実施形態では、発泡樹脂シートSとして、ポリプロピレン製発泡シート(住化プラステック製、商品名:スミセラー発泡PPシート、発泡倍率=3倍、厚み3mm)が使用されている。
【0061】
次いで、図10に示すように、加熱軟化処理した発泡樹脂シートS(加飾材23をラミネートしている)をドアトリムアッパー20対応箇所における成形上型41のキャビティ部411と成形下型42のコア部421で画成されるキャビティの上半部分にセットする。
【0062】
そして、発泡樹脂シートSをセットした後、成形上型41の昇降シリンダ412が動作して、成形上型41が所定ストローク下降して、成形上下型41,42が型締めされて発泡樹脂シートSが所望の型面形状に沿って賦形される1次加圧処理が行なわれる。
【0063】
このとき、図11に示すように、シム駆動用シリンダ442の駆動により、成形金型41,42におけるガイドポスト413,426間にガイドシム441が挿入されているため、型クリアランスが6mmに調整されている。尚、1次加圧時間は10秒程度である。
【0064】
次いで、1次加圧が行なわれた後、図12,図13に示すように、成形上型41が上昇するが、このとき、型クリアランス調整機構44におけるガイドシム441は、シム駆動用シリンダ442の収縮作用により型外に回避するシムアウト状態となっており、成形上型41の上昇動作に伴ない、真空吸引機構45の駆動により成形上型41の型面に発泡樹脂基材21が保持されている。
【0065】
そして、この成形上型41の上昇時間は10秒程度で、この上昇時に成形下型42に付設されているエアブロー機構46から冷却用エアが成形下型42の空気室427からエアブロー孔428を通じて発泡樹脂基材21の裏面に吹き付けられ、このときの冷却用エアの吹き付けブロー圧は、1〜20kgf/cm2 程度である。従って、エアブロー機構46によるエアブロー作用により、発泡樹脂基材21の成形に伴なう冷却時間を短縮化できる。
【0066】
その後、図14に示すように、成形上型41が再度下降し、このときには、ガイドシム441は型外に回避しており、成形上下型41,42におけるガイドポスト413,426が直接接触するまで、成形上型41が下降し、型クリアランスが3〜5mmのように、狭められた状態で2次加圧処理が行なわれる。
【0067】
そして、この2次加圧は、25秒程度行なわれ、この2次加圧時に第1の射出機43aからマニホールド422a、ゲート423aを通じてドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を形成するために、溶融樹脂M1が溝部424内に射出充填され、樹脂リブ22が形成される。
【0068】
同時に、ドアトリムロアを成形するために、第2の射出機43bからマニホールド422b、ゲート423bを通じてキャビティの略下半部分に溶融樹脂M2が射出充填され、ドアトリムロア30が所要形状に成形される。尚、この溶融樹脂M1,M2としては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=80g/10分)でタルクが適宜割り合いで混入されている。
【0069】
従って、第1の射出機43aから溶融樹脂M1を溝部424内に射出充填する一方、第2の射出機43bから溶融樹脂M2をキャビティ425内に射出充填することにより、ドアトリムアッパー20における樹脂リブ22を所要形状に成形するとともに、これと一体にドアトリムロア30が一体に成形される。
【0070】
そして、本発明方法においては、ガイドシム441を使用した型クリアランス調整機構44により、樹脂リブ22の成形時には、発泡樹脂基材21が2次加圧状態で圧縮されているため、発泡樹脂基材21の弾性反発力を利用できることで成形下型42の溝部424のコーナー部と発泡樹脂基材21との間のシール性を良好に維持でき、樹脂リブ22の成形性を高めることができるとともに、樹脂漏れが原因となるバリ発生をなくすことができ、樹脂リブ22の流動長を長く設定できるなど、ゲート423aの個数を低減することができ、型設備を簡素化することができる。
【0071】
また、製品は脱型後、正規の厚みに復元する。よって隣接する部品とのクリアランスは設計時に設定した寸法関係(ゼロも含む)に落ちつく。また、板厚が復元することにより、所定板厚の強度、剛性を確保できる。
【0072】
更に、本発明方法に使用する型クリアランス調整機構44の種々の対応について、以下に説明する。まず、上述した実施形態は、発泡樹脂シートSの一面に加飾材23として薄手仕様のものを使用したが、例えば、図15(a)に示すように、加飾材23を省略した発泡樹脂シートSのみを使用する場合は、上述した実施形態同様、図15(b)に示すように、成形上型41と成形下型42との型締めによる1次加圧工程で発泡樹脂シートSが所要形状に成形される。その際、成形上型41のガイドポスト413と成形下型42のガイドポスト426間にガイドシム441Aが介装され、このことにより、1次加圧工程における成形上下型41,42の型クリアランスが比較的大きく保たれている。
【0073】
次いで、2次加圧及び樹脂射出工程においては、図15(c)に示すように、型クリアランス調整機構44におけるガイドシム441Aが後退し、成形上下型41,42のそれぞれのガイドポスト413,426が直当たりすることで、型クリアランスが狭められることにより、1次加圧工程において所要形状に成形された発泡樹脂基材21は、圧縮状態となり、良好なシール性をもって溶融樹脂M1の射出がなされることになる。
【0074】
そして、樹脂リブ22の成形後は、型開きすれば、発泡樹脂基材21は、正規の厚みに復元するため、所定板厚の発泡樹脂基材21が得られる。
【0075】
更に、図16,図17に基づいて、発泡樹脂シートSの一面に比較的厚手仕様の加飾材23をラミネートした実施形態について説明する。このときには、図16に示す型クリアランス調整機構44を使用する。すなわち、成形下型42の4隅部に位置するガイドポスト426に対して、それぞれ2方向からガイドシム441が介装される構成が採用されている。
【0076】
そして、この場合、一方側の型クリアランス調整機構44においては、ガイドシム441は、2枚のガイドシム441A,441Bを重ね合わせたものが使用されている。すなわち、1枚目のガイドシム441Aは、図15で使用したタイプと同一構成であり、発泡樹脂シートSの圧縮可能な厚み寸法にほぼ相当する厚みであり、2枚目のガイドシム441Bは、加飾材23の厚みか、それよりやや薄目の厚み寸法に設定されている。
【0077】
また、他方側の型クリアランス調整機構44´では、駆動用シリンダ442の収縮作用により、ガイドシム441Cが進退可能に駆動されるが、このガイドシム441Cの厚み寸法は、加飾材23が圧縮されたときの厚み寸法とほぼ同一の寸法に調整されている。
【0078】
従って、図17(a)に示すように、比較的厚手の加飾材23を発泡樹脂シートSにラミネートした素材を使用する際には、図17(b)に示すように、成形上下型41,42の型締めによる1次加圧工程においては、成形上下型41,42の各ガイドポスト413,426間に型クリアランス調整機構44のガイドシム441A,441Bが進入し、成形上下型41,42の型クリアランスが比較的大きく確保された状態で1次加圧がなされ、発泡樹脂基材21、加飾材23が成形される。
【0079】
その後、成形上型41が上昇するとともに、一方側の型クリアランス調整機構44が後退し、代わりに他方側の型クリアランス調整機構44´が動作する。
【0080】
すなわち、ガイドシム441A,441Bが後退するとともに、ガイドシム441Cがガイドポスト426側に進入し、成形上下型41,42の型締めにより、ガイドポスト413,426間にガイドシム441Cが介装され、図17(b)に比べ図17(c)のほうが型クリアランスが小さくなっているため、1次加圧で所要形状に成形された発泡樹脂基材21、加飾材23が圧縮された状態で樹脂リブ22の成形がなされる。
【0081】
また、図16に示す型クリアランス調整機構44,44´を採用した成形金型40を使用して、加飾材23を省略した図15(a)に示す発泡樹脂シートSの場合にも応用できる。その場合は、一方側の型クリアランス調整機構44には、ガイドシム441Aのみを使用し、ガイドシム441Bは取り外しておき、1次加圧工程でガイドシム441Aをガイドポスト413,426間に介装するとともに、2次加圧工程においては、他方側の型クリアランス調整機構44´を動作させず、ガイドポスト413,426を直当たりするように調整すれば良い。
【0082】
このように、本発明方法では、型クリアランス調整機構44,44´及びガイドシム441A,441B,441Cを適宜組み合わせることにより、加飾材23がない場合や、加飾材23の仕様が薄手仕様、厚手仕様であっても有効に対応することができる。
【0083】
次いで、図18乃至図20は、一体型の自動車用ドアトリム100に本発明を適用したもので、このドアトリム100は、所望の曲面形状に成形された発泡樹脂基材21の裏面に樹脂リブ22が一体化され、かつ発泡樹脂基材21の表面に加飾材23が一体化されているという構成は、上述実施形態と同一である。
【0084】
そして、本発明においては、ドアトリム100の製品面全体に亘り発泡樹脂基材21が使用され、かつ樹脂リブ22の配設パターンは、ドアトリム100の製品面全体に亘っており、この変形例におけるドアトリム100においても、発泡樹脂シートSを1次加圧処理で成形し、かつ樹脂リブ22の成形時には、成形された発泡樹脂基材21を更に圧縮した2次加圧処理が行なわれ、樹脂リブ22のシール性を高めた状態で成形するという趣旨は同一であり、樹脂リブ22の成形性を高め、かつ成形金型40の型構造を簡素化できるという作用効果は上述実施形態と同様である。
【0085】
また、本発明における型クリアランス調整機構44は、ガイドシム441をシム駆動用シリンダ442により進退動作させる構成の他に、成形上型41の昇降シリンダ412のプレスチャートを1次加圧時と2次加圧時で昇降ストローク量をプログラミング制御することで行なうようにすれば、成形金型40の型構造をより簡素化することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品は、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材と、この発泡樹脂基材の裏面で、かつ製品の外周縁など、剛性が要求される部位に積層一体化される樹脂リブと、発泡樹脂基材の表面に積層される加飾材とから構成されるため、従来の重量の嵩む樹脂芯材を廃止できることから、軽量で低コスト、しかも、多孔質素材であるため、吸音性能に優れた自動車用内装部品を提供できるという効果を有する。
【0087】
更に、本発明に係る自動車用内装部品の製造方法は、成形金型のキャビティ形状に沿って、発泡樹脂基材を所要形状に成形すると同時に発泡樹脂基材の裏面側に樹脂リブを成形するという工程を採用すれば、樹脂成形体である樹脂リブの投影面積が少ないため、従来の樹脂芯材に比べ、成形金型にかかる負荷も少なく、かつ冷却時間も短縮化でき、歩留まりを高めることができることから、作業能率を高めることができるとともに、大幅なコストダウンを招来できるという効果を有する。
【0088】
更に、本発明に係る自動車用内装部品及びその製造方法は、発泡樹脂シートを加熱軟化処理後、成形金型の1次加圧処理により発泡樹脂基材を成形し、冷却後、発泡樹脂基材を成形金型で1次加圧より大きな加圧力で2次加圧処理し、発泡樹脂基材の2次加圧処理により、圧縮状態の発泡樹脂基材裏面に溶融樹脂を射出充填して、樹脂リブを一体化するというものであるから、発泡樹脂基材の弾性反発力を利用して、樹脂リブ成形時におけるシール性を良好に維持できるため、樹脂漏れが原因となるバリ発生をなくし、成形性を高めることができるとともに、樹脂リブの流動長を長く設定できることから、ゲート点数を低減でき、成形金型の型加工費を低減できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動車用内装部品をツートンタイプの自動車用ドアトリムに適用した実施形態を示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示す自動車用ドアトリムにおけるドアトリムアッパーの発泡樹脂基材を取り外した後のドアトリムアッパーの樹脂リブとドアトリムロアとを示す正面図である。
【図4】図1に示すドアトリムを成形する際に使用する成形金型の構成を示す全体図である。
【図5】図4に示す成形金型における型クリアランス調整機構を示す要部断面図である。
【図6】図4中VI−VI線断面図であり、成形金型に付設した真空吸引機構、エアブロー機構をそれぞれ示す説明図である。
【図7】図4中A矢視図であり、成形下型の平面図である。
【図8】図1に示すドアトリムの製造方法における成形上型のプレスチャート図である。
【図9】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートの予熱工程を示す説明図である。
【図10】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂シートのセット工程を示す説明図である。
【図11】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材の成形工程を示す説明図である。
【図12】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材の冷却工程を示す説明図である。
【図13】図1に示すドアトリムの製造方法における発泡樹脂基材の冷却工程を示す説明図である。
【図14】図1に示すドアトリムの製造方法における樹脂リブ並びにドアトリムロアの成形工程を示す説明図である。
【図15】加飾材を省略した発泡樹脂シート単体に適用した型クリアランス調整機構の動作を示す説明図である。
【図16】型クリアランス調整機構の変形例を示す成形下型の平面図である。
【図17】図16に示す型クリアランス調整機構の動作を示す説明図である。
【図18】本発明に係る内装部品を適用した一体型のドアトリムを示す正面図である。
【図19】図18中XIX −XIX 線断面図である。
【図20】図18に示すドアトリムにおける発泡樹脂基材を省略した樹脂リブのパターンを示す説明図である。
【図21】従来の自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図22】図21中XXII−XXII線断面図である。
【図23】従来のドアトリムを成形する際に使用する成形金型の説明図である。
【符号の説明】
10 ツートンタイプの自動車用ドアトリム
100 一体型の自動車用ドアトリム
20 ドアトリムアッパー
21 発泡樹脂基材
22 樹脂リブ
23 加飾材
30 ドアトリムロア
40 成形金型
41 成形上型
413 ガイドポスト
42 成形下型
426 ガイドポスト
43a,43b 射出機
44,44´ 型クリアランス調整機構
441(441A,441B,441C) ガイドシム
442 シム駆動用シリンダ
45 真空吸引機構
46 エアブロー機構
50 ヒーター装置
S 発泡樹脂シート
M1,M2 溶融樹脂
Claims (7)
- 所望の曲面形状に成形され、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に積層一体化される補強機能を有する樹脂リブ(22)とから構成され、上記発泡樹脂基材(21)は、加熱軟化処理された発泡樹脂シート(S)を成形金型(41,42)間で1次加圧処理することにより絞り成形されているとともに、上記1次加圧時のプレス圧よりも高圧の2次加圧処理により、発泡樹脂基材(21)を成形金型(41,42)間で圧縮保持した状態で、樹脂バリの発生を回避するように発泡樹脂基材(21)の裏面に溶融樹脂(M1)を射出充填することにより、樹脂リブ(22)が発泡樹脂基材(21)の裏面に一体化されていることを特徴とする自動車用内装部品。
- 所望の曲面形状に成形され、軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、この発泡樹脂基材(21)の裏面に積層一体化される補強機能をもつ樹脂リブ(22)とからなる自動車用内装部品(20)の製造方法において、
上記発泡樹脂基材(21)の素材である発泡樹脂シート(S)を加熱軟化処理した後、成形金型(41,42)内にセットする発泡樹脂シート(S)のセット工程と、
成形金型(41,42)同士を型締めして、成形金型(41,42)の1次加圧処理を行ない、成形金型(41,42)のキャビティ形状に沿わせて発泡樹脂基材(21)を所要形状に成形する発泡樹脂基材(21)の成形工程と、
上記発泡樹脂基材(21)の成形工程後、1次加圧よりも高圧の2次加圧処理を行ない、発泡樹脂基材(21)を圧縮状態で成形金型(41,42)間に保持するとともに、成形金型(41,42)のキャビティ内に射出機(43a)から溶融樹脂(M1)を射出充填して、樹脂リブ(22)を発泡樹脂基材(21)の裏面側に積層一体化する樹脂リブ(22)の成形工程と、
からなることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。 - 前記発泡樹脂基材(21)の成形工程は、成形金型(41,42)間で1次加圧力を加え、成形金型(41,42)のキャビティ形状に沿わせて発泡樹脂基材(21)を賦形した後、成形上型(41)に付設した真空吸引機構(45)を動作させて、発泡樹脂基材(21)を成形上型(41)の型面に保持した状態で成形上型(41)を上昇させるとともに、発泡樹脂基材(21)の裏面側に、成形下型(42)に付設したエアブロー機構(46)から冷却用エアを吹き付けて、発泡樹脂基材(21)を強制的に冷却することを特徴とする請求項2に記載の自動車用内装部品の製造方法。
- 前記成形金型(41,42)における1次加圧力と2次加圧力を調整する機構は、成形金型(41,42)に設けられた型クリアランス調整機構(44)により行なわれることを特徴とする請求項2又は3に記載の自動車用内装部品の製造方法。
- 前記型クリアランス調整機構(44)は、成形金型(41,42)のガイドポスト(413,426)間に進退自在に介装されるガイドシム(441)と、このガイドシム(441)を進退動作させるシム駆動用シリンダ(442)とからなることを特徴とする請求項4に記載の自動車用内装部品の製造方法。
- 前記型クリアランス調整機構(44)は、成形上型(41)における昇降シリンダ(412)の昇降ストローク量を制御することにより達成されることを特徴とする請求項4に記載の自動車用内装部品の製造方法。
- 軽量で、かつ保形性を有する発泡樹脂基材(21)と、該発泡樹脂基材(21)の裏面に積層一体化される樹脂リブ(22)とからなる自動車用内装部品(20)を成形する成形金型(40)であって、
前記成形金型(40)は、相互に型締め、型開き可能な成形上型(41)、並びに成形下型(42)と、成形下型(42)に連結され、樹脂リブ(22)の素材である溶融樹脂(M1)を供給する射出機(43)とから構成され、成形上型(41)に発泡樹脂基材(21)を保持できるように真空吸引機構(45)が付設されるとともに、成形下型(42)には、発泡樹脂基材(21)を強制冷却できるようにエアブロー機構(46)が付設され、かつ成形金型(41,42)における1次加圧と2次加圧を実現するために、成形金型(40)に型クリアランス調整機構(44)が設けられていることを特徴とする成形金型。
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