JP2005028388A - 溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】亜鉛めっき鋼板の重ね合わせ部をレーザービームを用いて溶接する亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法において、ワイヤー内部に酸化物を含有し、かつ該酸化物の充填率が3%超〜15%であるフィラーワイヤーを送給しつつ溶接し、好ましくは、前記酸化物として、酸化鉄、酸化すず、酸化銅、または酸化ビスマスの何れか1種の酸化物を用いることを特徴とする溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車の外板などに用いられる亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法に関し、特に、自動車の外板などの溶接時の亜鉛めっき蒸気の発生による溶融金属の爆飛やそれに起因する溶接部欠陥の発生を抑制する亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に自動車の車体、足廻り部材などの構造部材として鋼板表面に亜鉛めっきを施した耐食性に優れた亜鉛を主成分とするめっき鋼板が多用されている。また、車体や自動車の構造体を組み立てる際には、通常、鋼板を所望の形状にプレス成形後、その鋼板の一部を重ね合わせてレーザーで溶接する重ねレーザー溶接を採用することが最も一般的である。
【0003】
亜鉛めっき鋼板をレーザーにより重ね溶接する場合、鋼板表面の亜鉛は鋼板母材に比べて沸点が低いため、鋼板溶融直前或いは溶融中に鋼板表面の亜鉛が蒸発して亜鉛蒸気を発生し、溶融金属中に全部または一部残留することにより、ブローホールまたはピットなどの溶接欠陥となったり、特に、鋼板重ね合わせ部が密着された状態で溶接した場合には、溶融金属中に吹き出した亜鉛蒸気の圧力により溶融金属を爆飛させることがあり、何れも溶接ビード形状、継ぎ手特性などの溶接品質を劣化させることになる。
【0004】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1では、スペーサーなどを用いて亜鉛めっき鋼板の重ね合わせ部に所定の隙間を設けて溶接時に発生する亜鉛蒸気を溶融金属の周囲の隙間から逃す方法が従来から知られている。しかしながら、上述した溶接時に鋼板重ね合わせ部に所定の隙間を設け、保持する方法は、自動車用構造部品などの複雑な形状および剛性の高いプレス成形材を重ね合わせて溶接する場合には、溶接時に常に所定の隙間を保持することは非常に困難である。このため、重ね合わせ部の隙間が非常に狭くなる場合には、その部位にブローホール等の溶接欠陥が発生する。一方、重ね合わせ部の隙間が非常に広くなる場合も、重ね合わせ部の上板と下板の溶融部が分離したり、溶融金属が下板側に陥没する等の溶接不良が生じる。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、特許文献2では、脱酸材を含有するフラックス入りワイヤを溶加材として用いることによって健全な溶接継ぎ手を得る方法が知られている。この特許文献2に開示された方法では、重ね合わせ部の隙間が広い場合はフィラーワイヤによって供給される金属で隙間を埋めることが可能となり、また隙間が狭い場合は脱酸フラックスで溶融金属の粘性およびスラグの発生を調整することでピットやブローホールの発生を抑制することができるとされている。しかしながら、本発明者らの検討では、脱酸材を含有するフラックス入りワイヤの効果において、めっき鋼板重ね合わせ部の隙間が無い完全密着の状態では多量のスパッタが発生し欠陥抑制効果が確認されなかった。レーザ溶接のようなエネルギー密度の高い熱源で溶接すると、めっき金属は瞬時に蒸気となり極めて高い圧力が発生する。めっき重ね合わせ部に隙間が存在しない場合は、蒸気の逃げ道が無いため、溶鋼の粘性が多少変化してもめっき金属による高い蒸気圧により溶融金属がスパッタとして吹き飛ばされてしまったと考えられる。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−288986号公報
【特許文献2】
特開平3−230880号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、主として自動車の外板などに用いられる亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法において、重ね合わせ部が密着またはその隙間が非常に狭い状態でレーザー溶接しても健全な溶接継ぎ手を得ることができ、また、溶接時の亜鉛めっき蒸気の発生による溶融金属の爆飛やそれに起因する溶接部欠陥の発生を抑制するための亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その要旨は、亜鉛めっき鋼板の重ね合わせ部をレーザービームを用いて溶接する亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法において、ワイヤー内部に酸化物を含有し、かつ該酸化物の充填率が3%超〜15%であるフィラーワイヤーを送給しつつ溶接することを特徴とする溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法で、好ましくは、前記酸化物として、酸化鉄、酸化すず、酸化銅、または酸化ビスマスの何れか1種の酸化物を用いる溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法、である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、溶鋼の粘性および表面張力に着目し、亜鉛めっき鋼板の重ね溶接性向上策を検討した。溶鋼の粘性および表面張力を変えるには溶鋼の酸素量が重要な要素となる。すなわち、脱酸材の添加により溶鋼の酸素量が少ない場合は粘性および表面張力が高くなり、逆に溶鋼に酸化物を添加することにより粘性および表面張力を下げることができる。上述の特許文献2に開示された脱酸材を含有するフラックス入りワイヤを溶加材として用いる方法では、溶接部の溶鋼の粘性および表面張力を高めることにより、めっき蒸気の成長を抑制し、気孔欠陥の低減が期待できるが、本発明者らの検討では、レーザなどの高エネルギー密度の熱源で溶接する際に、めっき金属が瞬時に高圧の蒸気が発生する際に起きやすい溶融金属の爆飛またはスパッタの発明を抑制するためには、この方法では十分な結果を得ることができなかった。そこで、溶鋼の粘性および表面張力低下によるめっき蒸気の排出促進の効果を期待して、フィラーワイヤから酸化物の添加を検討した。図1に示すように、フィラーワイヤ1の内部に、酸化物2として、酸化鉄、酸化すず、酸化銅、または酸化ビスマスの何れか1種の酸化物2を充填した。特に、本発明においては、これらの中から最も反応性の高い酸化鉄を選択し、溶接性を調査した。ここで、前記酸化物としての酸化鉄の充填率をフィラーワイヤ1の断面積の比率で、約3〜15%の範囲の充填率で充填した。併せて、TiOなどのスラグ材と共にAl等の脱酸材を含む市販のフラックス入りワイヤを使用してレーザー溶接性を比較評価した。
【0010】
図2に、溶接継ぎ手の引張試験結果を示す。酸化鉄を充填したフィラーワイヤはその充填率が3%を超えると改善が見られ、7%以上ではほぼ母材同等の強度となるが、15%以上の脱酸材を充填したフィラーワイヤは何れの充填率でも改善効果を見ることができなかった。従って、本発発明では、上記脱酸材の充填率をフィラーワイヤの断面積で3%超〜15%とする。また、より安定した効果をえるためには、その充填率を5%〜15%とするのが好ましい。特に改善効果が著しい範囲は10〜15%である。また、酸化鉄以外の酸化物の効果を検証するために、安全で入手容易な酸化物として、酸化すず、酸化銅、および酸化ビスマスを充填したフィラーワイヤを用いた溶接継ぎ手の引張試験を行ったが何れも酸化鉄と同等の効果が得られた。
【0011】
【実施例】
板厚:0.8mm、亜鉛付着量:60g/m2 の亜鉛めっき鋼板を重ね合わせ、HAAS社製の最大出力4kWのYAGレーザー発振器(波長:1.06μm)を用い、出力4kW、溶接速度3mpm で重ねレーザー溶接を行った。フィラーワイヤは外径:1.2mmφとし、酸化物2として酸化鉄(鉄粉)を図1に示すように、フィラーワイヤ1のほぼ中心内部に3〜15%の充填率で充填した。なお、酸化物として、酸化鉄の他にも、酸化すず、酸化銅、酸化タングステン、酸化ビスマス等も評価した。フィラーワイヤの外皮部分の成分組成は、C:0.04%,Si:0.01%,Mn:0.24%,P:0.02%,S:0.01%とした。重ねレーザー溶接方法としては、図3に示すように、重ね溶接する亜鉛めっき鋼板3,4を上下に重ねあわせ、鋼板幅方向両端5,6を拘束し、板幅中央部を鋼板長手方向にレーザービーム7をレンズ10で集光して上方から照射してレーザー溶接した。レーザー溶接部8の加工点9の前方からフィラーワイヤ1を加工点9を目指して送給した。また、溶接線の両サイド10mmの位置を拘束することによって重ね合わせ部が密着した状態、および金属箔を挟むことによって所定隙間の開いた状態に固定し溶接を行った。被溶接亜鉛めっき鋼板間に隙間のない状態でレーザー溶接を行った場合の引張試験結果を表1に示した。また、被溶接亜鉛めっき鋼板間に隙間を開けた状態でレーザー溶接を行った場合の引張試験結果を表2に示した。表1および表2から分かるように、フィラーワイヤに5〜15%の充填率で酸化物を充填した本発明によるフィラーワイヤは、従来の比較例として挙げたような充填率が低いものや、従来のソリッドワイヤ、或いは溶接ワイヤを用いることのない単なるレーザー溶接に比較し、母材に対する引張り強さ、溶接部外観が何れも優れた結果を示していることが分かる。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接において、溶接時に重ね合わせ部が密着した状態で溶接しなければならない場合でも、従来の重ねレーザー溶接に比較して大幅に溶融金属の爆飛および溶接欠陥(ポロシティ)を低減できると共に、溶接継ぎ手強度などの機械的特性を向上させることができ、特に自動車の外板などに用いられる亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法に多いに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重ねレーザー溶接方法に用いるフィラーワイヤの模式図である。
【図2】本発明の重ねレーザー溶接方法に用いるフィラーワイヤにおける酸化物の充填率と母材に対する引張強さの比との関係を示す図である。
【図3】本発明の重ねレーザー溶接方法の模式図である。
【符号の説明】
1…フィラーワイヤ
2…酸化物
3…亜鉛めっき鋼板(上)
4…亜鉛めっき鋼板(下)
5…鋼板幅方向両端
6…鋼板幅方向両端
7…レーザービーム
8…溶接部
9…加工点
10…レンズ
Claims (2)
- 亜鉛めっき鋼板の重ね合わせ部をレーザービームを用いて溶接する亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法において、ワイヤー内部に酸化物を含有し、かつ該酸化物の充填率が3%超〜15%であるフィラーワイヤーを送給しつつ溶接することを特徴とする溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法。
- 前記酸化物として、酸化鉄、酸化すず、酸化銅、または酸化ビスマスの何れか1種を用いることを特徴とする請求項1記載の溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法。
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JP2003194316A JP2005028388A (ja) | 2003-07-09 | 2003-07-09 | 溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法 |
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JP2003194316A JP2005028388A (ja) | 2003-07-09 | 2003-07-09 | 溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法 |
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JP2005028388A true JP2005028388A (ja) | 2005-02-03 |
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JP2003194316A Pending JP2005028388A (ja) | 2003-07-09 | 2003-07-09 | 溶接部欠陥の少ない亜鉛めっき鋼板の重ねレーザー溶接方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2005028388A (ja) |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000084694A (ja) * | 1998-09-09 | 2000-03-28 | Kobe Steel Ltd | 亜鉛めっき鋼板溶接用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
-
2003
- 2003-07-09 JP JP2003194316A patent/JP2005028388A/ja active Pending
Patent Citations (1)
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JP2000084694A (ja) * | 1998-09-09 | 2000-03-28 | Kobe Steel Ltd | 亜鉛めっき鋼板溶接用ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
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