JP2005028218A - パターニング方法及びそれに使用する液体 - Google Patents
パターニング方法及びそれに使用する液体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005028218A JP2005028218A JP2003193271A JP2003193271A JP2005028218A JP 2005028218 A JP2005028218 A JP 2005028218A JP 2003193271 A JP2003193271 A JP 2003193271A JP 2003193271 A JP2003193271 A JP 2003193271A JP 2005028218 A JP2005028218 A JP 2005028218A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- liquid
- phosphor
- paste
- discharge
- electrode
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
- Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)
- Gas-Filled Discharge Tubes (AREA)
Abstract
【課題】電界ジェット法で液体を吐出した後、乾燥、焼成工程を経て目的物質をパターニングする場合に、吐出量や吐出方向を安定させ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないためのパターニング方法を提供すること。
【解決手段】吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体Gとの間に電圧を印加しながら液体Pを吐出し、この液体Pを前記基体Gに付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体Pが、液体Pの電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴とする。電界ジェット法で吐出する液体の吐出量や吐出方向を安定させることができ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないようにして所望のパターンを形成することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体Gとの間に電圧を印加しながら液体Pを吐出し、この液体Pを前記基体Gに付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体Pが、液体Pの電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴とする。電界ジェット法で吐出する液体の吐出量や吐出方向を安定させることができ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないようにして所望のパターンを形成することができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界ジェット、すなわち液体吐出口近傍の電極と基体との間に電圧を印加して液体を前記基体に付着させる方法、により液体を吐出、付着させ、さらに乾燥、焼成を行い所望のパターンを得る方法およびそれに使用する液体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ノズル状或いはスリット状の開口部から液状の物質を吐出し、媒体上に付着せしめる所謂「ノンコンタクト」記録方法は、装置およびプロセスの簡便性が図れ、また媒体の選択範囲が広がることから、従来の印刷法、転写法、電子写真法などの「コンタクト」記録方式に代わる新規な方式としてグラフィックスやエレクトロニクス分野における各種パターニング、マーキングに幅広く用いられるようになってきている。インクジェット法、ディスペンサー法に代表されるこれらの方式は、微細化、高精細化の改良が進んでおり、最近では従来フォトリソ法で行われていたような液晶カラーフィルター等の微細パターニングへの適用も提案されている。
【0003】
インクジェット記録方式は、微細なノズルからインクの小滴を吐出、飛翔させ、直接紙などの記録部材に付着させることで画線を形成する記録方式である。吐出の原理としては、圧電素子の振動によりインキ流路を変形させインクを吐出させるピエゾ方式、インク流路内の発熱体からの熱によりインク内に気泡を生成せしめ、その圧力によりインクを吐出させるサーマル方式、インクに静電吸引力を作用させ吐出させる静電方式などが提案されているが、特に静電方式は記録ヘッドの構造が簡単でマルチノズル化が容易となることや、パルス幅変調により階調表現が可能である点が他の方式と異なり注目されている。
【0004】
しかし、これらのインクジェット方式の大きな問題として、粘度20cps以下のごく低粘度のインクしか吐出できない点がある。このため、フィルム等のインク吸収性のない基材への吐出記録や、高粘度インクを用いた厚みのあるパターン形成などは困難であった。また、粘度にかかわらず、粒子径が数百nm以上の粒子を分散したインクを吐出する場合、出口付近で乾燥等による目詰まりが起こり易くなり、安定した吐出ができなかった。このため、インクジェット法による厚膜のパターニング、高濃度、高粘度液体の吐出或いは速乾性液体の吐出は極めて困難であった。また、蛍光体顔料や、光輝性顔料、磁性体などは、粒子を小さくするとその光学的或いは磁気的性質が大きく損なわれるため、インクジェットで吐出できるような微粒子分散タイプのインキを作製することは機能面から好ましくなく、結果としてインクジェット法が適用できずにいた。
【0005】
一方、ディスペンサー方式は、高粘度の物質を線状或いはドット状に吐出・付着せしめることが可能であり、インクジェット方式では困難であった厚膜のパターニング、高濃度、高粘度液体の吐出や数μm〜10数μmの粗大粒子を含む液体の吐出に用いることができる。ディスペンサー方式においては、ノズル内径を小さくするほど細かい線或いは点を吐出記録できるが、液体にもよるが、内径が200μm以下になると孔の詰まりが頻繁に発生するため実用上好ましくない。また、吐出記録される線の幅或いはドット径はノズル内径よりも大きくなるため、線幅或いはドット径が300μm以下の微細なパターニングへの使用は困難であった。
【0006】
このように、従来の方式では、線幅或いはドット径が300μm以下、かつ膜厚が数μm〜10数μmの微細な厚膜のパターニングは困難であった。このようなパターニングを必要とする例としてプラズマディスプレイパネル(PDP)の蛍光体やリブ、電極の形成がある。
【0007】
一般にPDPは、2枚の対向するガラス基板にそれぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、その間にNe,Xe等を主体とするガスを封入した構造になっている。そして、これらの電極間に電圧を印加し、電極周辺の微小なセル内で放電を発生させることにより、各セルを発光させて表示を行うようにしている。情報表示をするためには、規則的に並んだセルを選択的に放電発光させる。このPDPには、電極が放電空間に露出している直流型(DC型)と絶縁層で覆われている交流型(AC型)の2タイプがあり、双方とも表示機能や駆動方法の違いによって、さらにリフレッシュ駆動方式とメモリー駆動方式とに分類される。
【0008】
図1にAC型PDPの一構成例を示してある。この図は前面板と背面板を離した状態で示したもので、図示のように2枚のガラス基板1,2が互いに平行に且つ対向して配設されており、両者は背面板となるガラス基板2上に互いに平行に設けられたストライプ状のリブ3により一定の間隔に保持されるようになっている。前面板となるガラス基板1の背面側には維持電極4である透明電極とバス電極5である金属電極とで構成される複合電極が互いに平行に形成され、これを覆って誘電体層6が形成されており、さらにその上に保護層7(MgO層)が形成されている。また、背面板となるガラス基板2の前面側には前記複合電極と直交するようにリブ3の間に位置してアドレス電極8が互いに平行に形成され、必要に応じてその上に誘電体層9が形成されており、さらにリブ3の壁面とセル底面を覆うようにして蛍光体層10が設けられている。このAC型PDPは面放電型であって、前面板上の複合電極間に交流電圧を印加し、空間に漏れた電界で放電させる構造である。この場合、交流をかけているために電界の向きは周波数に対応して変化する。そしてこの放電により生じる紫外線により蛍光体層10を発光させ、前面板を透過する光を観察者が視認するようになっている。
【0009】
上記の如きPDPにおける背面板は、ガラス基板2の上にアドレス電極8を形成し、必要に応じてそれを覆うように誘電体層9を形成した後、リブ3を形成してそのリブ3の間に蛍光体層10を設けることで製造される。電極8の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、厚膜法等によってガラス基板2上に電極材料の膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法によってパターニングする方法と、厚膜ペーストを用いたスクリーン印刷法によりパターニングする方法とが知られている。また、誘電体層9はスクリーン印刷等により形成される。リブ3はスクリーン印刷による重ね刷り、或いはサンドブラスト法等によってパターン形成される。
【0010】
蛍光体層10は、スクリーン印刷法によってパターニングされるのが一般的であるが、その他にフォトリソグラフィー法や、最近ではディスペンス法によるパターニングも提案されている。
【0011】
スクリーン印刷法で蛍光体をパターニングする場合、バインダーを溶解した分散媒に3本ロール等で蛍光体粉末を分散せしめたRGBのペーストを、各色用の3枚のスクリーン版を用いて、リブ間のセル位置に合わせて3回印刷を行い、各色用のセル内に各色の蛍光体ペーストを塗布する。スクリーン印刷は製造装置が比較的安価であり、製造工程数も少ないことから量産化には適しているが、スクリーン版の変形や経時変化のため十分なパターン精度が得にくい問題がある。PDPは今後さらに大面積化および高解像度化が進むと考えられ、このようなスクリーン印刷法で蛍光体層を形成することは技術的、コスト的に益々困難となることが予想される。
【0012】
一方、フォトリソグラフィー法でパターニングするには、リブ間のセル中に感光性の蛍光体ペーストを圧入し、露光及び現像後に焼成して圧入された感光性組成物中の有機物を焼失させ、セル表面に蛍光体層を形成する。この場合、使用するペーストが蛍光体粉を含有しているため、紫外線の透過が阻害され、紫外線が底部まで達することが困難となる。すなわち、蛍光体ペーストの感度が極端に低い。したがって、パターニング、焼成後の蛍光体層の膜厚を10μm以上にすることが難しく、得られる蛍光面の輝度が十分でないという問題がある。そこで、蛍光体ペーストの感度を上げるために感光性樹脂の量を多くすることが考えられる。しかし、樹脂量が比較的多い蛍光体ペーストを用いると、焼成時の収縮率が大きくなるため、焼成時に蛍光体層の剥離、ひび割れを起こしやすく、ひどい場合には蛍光面のカール等を起こすという問題が生じる。また、各色毎の蛍光体パターンを形成する上で露光及び現像工程が必須であり、そのために感光性樹脂として常に現像可能な樹脂、特にアルカリ現像が可能な感光性樹脂を使用せねばならないという制約があり、そのために焼失性に優れた感光性樹脂の選択が困難であった。さらに、現像除去される層にも高価な蛍光体が高濃度で含まれており、現像除去された蛍光体の回収が困難であることから、蛍光体の有効利用率は30重量%弱であり、この点がコスト的に大きなデメリットになっていた。
【0013】
本発明者らは、高粘度或いは粗大粒子を含むようなインクを微小なパターンとして吐出形成できる方法について種々の検討を行い、電界ジェット法の発明に至った。電界ジェット法とは、典型的には吐出口近傍に電極を配置したノズル状或いはスリット状の開口部を有する吐出ヘッドにインキを供給し、続いて前記電極へ交流又は直流の電圧を印加することによって前記インクを開口部から連続的或いは間欠的に吐出するパターン形成方法である。
【0014】
電界ジェット法によれば、ディスペンサーの如く数万cpsといった高粘度のインクを吐出可能であるだけでなく、数cps以下の低粘度インクについても同様に吐出が可能である。電界ジェット法の最大の特徴として、電界の効果によって開口部の径よりも吐出されるインク先端の径を細くできることが挙げられる。インク、ヘッドの組合せによっては、パターニングされる線或いはドットのサイズを開口部の1/10以下まで小さくすることができる。同時に、目的の記録サイズに対して比較的開口部を大きくできることから、粗大粒子を含むインクが目詰まりなく安定してかつ高解像度で吐出される。
【0015】
ディスペンサー法或いは電界ジェット法によるPDP用蛍光体ペーストの塗布を図2に模式的に示した。
【0016】
図2においてGはリブ3までが形成された基板であり、複数個の塗布ヘッドHを備えた塗布装置をこの基板Gに対して相対的に移動させることで蛍光体ペーストをリブ間に一度で充填するように構成されている。すなわち、4つの塗布ヘッドHrは赤色用の蛍光体ペーストを吐出するもので、主フレームFmに跨がる第1の副フレームF1 の前後に2つずつが交互に取り付けられ、各塗布ヘッドHrにおける複数の吐出孔が基板Gの幅方向に連続するようになっている。同様に、4つの塗布ヘッドHgは緑色用の蛍光体ペーストを吐出するもので、主フレームFmに跨がる第2の副フレームF2 の前後に2つずつが交互に取り付けられ、各塗布ヘッドHgにおける複数の吐出孔が基板の幅方向に連続するようになっている。また同様に、4つの塗布ヘッドHbは青色用の蛍光体ペーストを吐出するもので、主フレームFmに跨がる第3の副フレームF3 の前後に2つずつが交互に取り付けられ、各塗布ヘッドHbにおける複数の吐出孔が基板の幅方向に連続するようになっている。したがって、複数の吐出孔から蛍光体ペーストを吐出しながらそれぞれの塗布ヘッドHが一体となって基板と相対的に移動することで、一度の塗布工程で3色の蛍光体ペーストが所定のリブ間に充填される。
【0017】
図3は電界ジェット法による液体付着装置の概念図である。図示のように、液体Pは予めタンクTに投入される。そして、エアによりタンクT内に圧力をかけることで、塗布ヘッドHに液体Pが供給され、この塗布ヘッドHでもエアによりマニホールド内に一定の圧力をかけることで、先端の吐出孔から液体Pが吐出される。したがって、所定間隔を保って基体Gと塗布ヘッドHを相対的に移動させながら、液体として蛍光体ペーストを塗布ヘッドHの吐出孔から吐出させることで所定のリブ間に充填することができる。
【0018】
この場合、図3に示すように、塗布ヘッドHと基体Gとの間に高圧パルス発生器Aからの高圧パルスを印加して電界を生じさせると、所定のリブ間に蛍光体ペーストをスムースに充填することができることが経験的に分かっている。高圧パルスを印加するには塗布ヘッドHに電極を取り付ける必要があり、図4に塗布ヘッドへの電極の取付け例を示している。この図4(a)の例では塗布ヘッドHの先端外側に一対の電極Eを取り付けており、また図4(b)の例では塗布ヘッドHの内部に電極Eを取り付けている。また、高圧パルス発生器Aから出す高圧パルスは図5に示すようであり、通常、パルス間隔aは0.01〜10kHz程度に、またパルス幅bは3〜10kV程度に設定する。
【0019】
このように電界ジェット法で蛍光体を充填する方法では、ペーストが電気的な推進力で基板に引き寄せられるため、単純なディスペンス法に比べてヘッド−基板間距離を大きくとることができ、かつ吐出される液柱が絞られる効果があるため吐出孔の径をリブ開口幅よりも広くすることができる。この場合、蛍光体ペーストは片側のリブのみに触れながら塗布されやすくなるが、基板の種類によっては右寄り左寄りの違いによりムラが生じる場合がある。この塗布ムラを抑えるためには、図6に示すようにペーストを両側のリブに触れさせながら塗布する必要がある。同図は充填する状態を進行方向の正面から見たものである。そして、3色同時塗布を行った後では図7(a)に示すように、所定のリブ3間にそれぞれ赤用の蛍光体ペーストPr、緑用の蛍光体ペーストPg、青色用の蛍光体ペーストPbが充填された状態となる。また、乾燥工程を経て図7(b)に示す如く蛍光体ペーストが凹んだ状態になる。この乾燥工程の後、焼成工程を経て蛍光面が形成される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような電界ジェット法により蛍光体ペーストの塗布を行うと、蛍光体ペーストを所定の位置のみに塗布するので、材料の利用効率が高いという利点があり、また3色を一括して乾燥させるので、各色毎の乾燥が不要で工程数が少ないという利点もある。
【0021】
しかしながら、電界ジェット法により複数の液体を隣接して塗布する際、先に塗布した液体に後から塗布する液体が引かれる(塗布時)現象が起こり、正規の位置にパターニングできないという問題がある。PDPの蛍光面形成において電界ジェット法を用いた場合においても、蛍光体ペーストの塗布時に同様の現象が起こり、既に他色のペーストが塗布されているセルへの混色を招いてしまう。
【0022】
この対策として、電気伝導率の低い液体から順に塗布することが考えられる。例えば、先に吐出する液体の電気伝導率(a)と、その直後に吐出する液体の電気伝導率(b)の比(a/b)が1/2以下であるようにする。電界ジェット法によりRGB3色の蛍光体ペーストを所定のパターンに吐出形成する蛍光面形成方法においてもこの条件を満たせばよいが、より好ましくは、最初に吐出するペーストの電気伝導率を1×10−9〜1×10−6Ω−1・cm−1の範囲、2番目に吐出するペーストの電気伝導率を1×10−8〜1×10−5Ω−1・cm−1の範囲、3番目に吐出するペーストの電気伝導率を1×10−7〜1×10−4Ω−1・cm−1の範囲に調整することが考えられる。
【0023】
また、単一の液体のみを塗布する場合でも、吐出する液体の電伝導率が1×10−10 〜1×10−4Ω−1・cm−1でないと電界ジェット法で良好な吐出が行われないという問題があり、いずれのケースにおいても、電界ジェット法で正確な吐出を行うためには、液体の電気伝導率の調整が必要不可欠であった。
【0024】
このように液体の電気伝導率を調整するには、溶媒の種類、配合の選定が重要となるが、1×10−6Ω−1・cm−1以上の電気伝導率を達成するには、溶媒の最適化だけでは不足な場合が多く、さらにイオン化合物等の電気伝導率調整物質を添加する方法が行われていた。しかし、電気伝導率調整物質は液体を吐出、乾燥或いは焼成させた後に残存する場合が多く、特に機能性物質を吐出・パターニングする場合にはその機能に影響を及ぼさないものを選定する必要があった。
【0025】
PDP用蛍光体ペーストは、焼成後に100分の1ppm程度の微量の不純物が残存していても励起紫外線の吸収や発光の吸収、発光波長のシフト、或いは蛍光体の変質を引き起こす可能性があり、さらに蛍光体の寿命を短くする可能性がある。このため、焼成後に不純物を残存させないことは、必要な特性を得るための重要な課題であった。しかし、電界ジェット用の電気伝導率調整物質は塩化ナトリウムや硝酸リチウム、硝酸銅などの金属塩が多く、これらは蛍光体ペーストの焼成後に何らかの形態で必ず残存していた。
【0026】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであって、その目的とするところは、電界ジェット法で液体を吐出した後、乾燥、焼成工程を経て目的物質をパターニングする場合に、吐出量や吐出方向を安定させ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないためのパターニング方法、特にPDP蛍光面の形成方法を提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、電界ジェット法で安定した吐出ができるような液体、特にPDP用の蛍光体ペーストを提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電界ジェット法により吐出する液体の電気伝導率を調整するにあたり、吐出、乾燥後の焼成工程で熱分解し焼失する電気伝導率調整物質を用いることにより上記目的を達成できることを知見し本発明を完成させた。
【0028】
そして、本発明のパターニング方法は、吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体との間に電圧を印加しながら液体を吐出し、この液体を前記基体に付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体が、液体の電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴とするものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
1.電界ジェット
本発明の電界ジェット法とは、液体の吐出口またはその近傍に電極を設け、液体を付着させる基体と間に電圧を印加して液体を吐出する方法を意味し、様々な態様を包含することができる。図3は前述したように電界ジェット法による液体付着装置の概念図であり、複数の吐出口を備えたヘッドH中の液体Pをエアー或いは機械的に加圧する一方、任意波形発生装置により発生した波形を高圧電源を介してノズルに印加し、液体Pを基体Gに付着させている。
【0030】
2.電極
電界ジェット法においては、吐出口の出口近傍に電極を配置する。その電極の形態、素材は次のようである。
【0031】
(電極の形態)
電極としては様々な形態のものを用いることができるが、例えば次のようなものを挙げることができる。
(1)ノズル、スリット自身を電極材料で構成する。
(2)ノズル、スリットの内壁に電極を配置する。
(3)ノズル、スリットの内部に電極を配置する。
(4)ノズル、スリットの外側に電極を配置する。
(5)ノズル、スリットの壁内部に電極を配置する。
【0032】
上記のうち(2)〜(5)の場合、吐出口先端から電極までの距離は、印加する電圧が高いほど広くとることができる。そのため、電圧強度によっては、広い範囲内が自由に電極を配置することが可能である。実用的な印加電圧強度の観点から、吐出口先端から電極までの距離は100mm以内であることが好ましく、30mm以内であることがさらに好ましい。
【0033】
記録媒体の導電性が高い場合や、複数のノズルをアレイ状に配列し、隣接するノズルに別々の信号を与えるような場合には、放電またはクロストークを抑制するために、吐出口から電極までの距離は0.5mm以上離れた部位に配置するのがよく、より好ましくは1mmから100mm、さらに好ましくは1mmから30mmの範囲に配置するのがよい。
【0034】
電極をノズル、スリットの外側に配置する場合には、ノズル壁またはスリット壁の厚みは1〜1000μmであることが好ましい。
【0035】
(電極の素材)
電極の素材としては、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Alなどの金属やステンレス、真鍮などの合金、ITOなどの導電性セラミックスが好ましく用いられる。流路内部に電極を配置する場合には、電極の変質、磨耗を防止する目的で、電極表面にハードコートを施す場合もある。
【0036】
電界ジェット法においては、電極と前記基体との間に電圧を印加する。この場合、交流と直流のいずれであってもよいが、基本的には交流が好ましい。また、電極には直接電気的に接続するが、基体は電気的に接続した状態でも接続しない状態であることもできる。付着させる液体が電着を起こす可能性がある場合は、電着を防ぐ目的から特に交流が好ましい。
【0037】
図8は電界ジェット法における電圧印加の効果を模式的に示した説明図である。図8(a)は電圧印加のない従来の方法で吐出が少量の場合であり、連続で吐出しようとしても、大きさの一定しない液滴が不連続に吐出されるだけである。図8(b)は吐出量を増加させた場合であり、連続吐出はなされるが、吐出口の開口より太い液柱となって吐出される。図8(c)は少量吐出で電圧を印加した場合であり、先の細い線で連続的に吐出される。図8(d)は多量吐出で電圧を印加させた場合であり、吐出量の増加に伴ってや太くなった線で連続的に吐出される。
【0038】
3.印加電圧
連続吐出の場合と間欠吐出の場合で好ましい電圧印加の方法が異なる。
【0039】
(連続吐出の場合)
連続吐出の場合は、交流又は直流で吐出が可能である。好ましくは図9に示すような交流である。電圧強度としては、Vp −(−Vp )=100V〜10kVであることが好ましく、電圧制御や吐出の安定性の観点から、1〜7kVの範囲にあるのがさらに好ましい。
【0040】
液体の粘度や材料組成にもよるが、電気伝導率が異なると最適な印加電圧周波数も変動する。多くの場合、電気伝導率の上昇につれて、最適な印加電圧周波数は高くなる。周波数が低いと、電極への析出等が発生し易く好ましくない。また、周波数が高いと、電源の性能上制御が難しくなるという問題もある。好ましい周波数の範囲は1Hz〜10kHzである。吐出の連続性と電圧制御の観点から、100Hz〜4kHzであることがさらに好ましい。直流の場合は±100V〜10kV(極性はどちらでも同様)が好ましい。
【0041】
(間欠吐出の場合)
間欠吐出(ON−OFF吐出)の場合は、図10に示すように印加電圧の絶対値がV1 以上で吐出が生じることを利用する。すなわち、図10でパルス1、2は吐出するが3は吐出しない。したがって、電圧強度で吐出量が制御できる。閾値となるV1 の大きさは液体や電極配置にもよるが、100V〜3kVの範囲であることが好ましい。吐出電圧は連続吐出の場合と同様100V〜10kVであることが好ましく、1〜7kVの範囲にあるのがさらに好ましい。
【0042】
4.基体
本発明において基体とは、液体を付着させる対象物を意味し、被吐出液体を付着させるものであれば材質的には特に限定されるものではなく、粘度100cps以上の液体又は固体表面であれば吐出可能となる。低粘度の液体表面などへの吐出は、液体が記録電極側に吸引される場合があり難しい。また、凹凸が数百μm以上もあるものへの連続吐出は、ギャップ変動により吐出量が安定しないため好ましくない。
【0043】
表面の導電性は、基体に付着させる液体の基体への吸引力に影響する。数値に関係なく、基体の導電性が均一であれば、正確な位置に液体を付着させることができるが、同一の基体に導電性の異なる部分が存在すると、液体は導電性の高い部位に着弾しようとする。このような場合は、液体の導電率を上げ、印加電圧の周波数を高くすることで正確な吐出が可能となる。また、金属のように導電性の高い基体の場合には、電極との間で放電が生じたり、被吐出液体を通じて過剰な電流が流れる場合があるので、電極を吐出口からの距離を離して配置する。或いは、可能な範囲で被吐出液体の電気伝導率を下げることが好ましい。
【0044】
5.ノズル
本発明でノズルとは、そこから被吐出液体を出すことができるものであればどのようなものであってもよい。図11に液体のノズルを有するヘッドの構造例を示す。図11(a)は全体の断面図であり、ヘッドH中の被吐出液体タンクHtには被吐出液体Pが充填され、電極Eと基体との間に電圧が加えらる。図11(b)はこのヘッド吐出口部分の拡大図であり、ヘッドHの内部に電極Eが配置され、ヘッドHの先端にはテーパー部Ta、ノズル部N、開口部hが設けられている。図11(c)はヘッドHの吐出口方向から見た図であり、この場合は7個の開口部hが設けられている。
【0045】
(ノズルを形成する材料)
ノズルを形成する材料は、特に限定されないが、例えば導電性材料としては、ステンレス鋼、真鍮、Al、Cu、Feなどが挙げられ、絶縁体(或いは半導体)材料としては、ガラス、雲母、酸化ジルコニウム、アルミナ、窒化珪素などのセラミック材料、PEEK、フッ素樹脂、ポリアミドなどのプラスチック材料などが挙げられる。
【0046】
ノズルの先端面は、被吐出液体が濡れ広がってしまわないようにフッ素樹脂等の表面自由エネルギーの低いもので被覆されることが好ましい。被吐出液体が濡れ広がってしまうと開口部でのメニスカスの形状が不安定になる他、吐出停止時に汚れとして残存し、後の記録に悪影響を与える。
【0047】
(ノズルの形状)
ノズルの開口形状は、円、楕円又は多角形のいずれであってもよい。開口径は50〜2000μmの範囲であることが好ましく、メニスカスの安定性や詰まり防止の観点から100〜1000μmであることがさらに好ましい。
【0048】
電界ジェット法によりPDPのリブ間のセル内に蛍光体ペーストを塗布する場合、片側のリブのみに触れながら塗布すると、右寄り左寄りの違いによりムラが生じる。このムラを抑えるためには、ペーストを両側のリブに触れさせながら塗布する必要があるが、図12に示すように、液体Pとしてのペーストがノズル底面Bにある円形状の開口部hから吐出された場合、その吐出断面形状は略円形と考えられるため、この円の直径がリブ3の間隔よりも小さいと、ペーストを両側のリブ3に触れさせることができない。吐出量が一定のままでこれを可能にするには、図13に示すように、吐出されるペーストの形状を横長にする必要がある。つまり、塗布ヘッドの開口部hの孔形状を横長にする必要がある。
【0049】
しかし、電界ジェット法で使用する塗布ヘッドの先端部分はセラミック材料等の絶縁物で出来ているので、放電加工等によりその材料に横長の孔を開けることは非常に困難である。そこで、2分割した部材の片面を削って複数の溝を形成し、その後貼り合わせる、若しくはクランプする方法が考えられるが、貼り合わせるための接着剤の選定や接着剤が孔を塞がないようにするにはどうすればよいかという問題が残り、またクランプする場合は、特にヘッド先端部の長さが長くなればそれだけ全面均一にクランプするのが困難であるし、内側の印加エアに耐えられるだけの力で押さえ込まなければならない等、様々な問題が生じる。
【0050】
そこで、例えば先端部分が図14に示すタイプの塗布ヘッドを用いることが考えられる。この塗布ヘッドは、図14(a)に示すように先端に横長の開口部hを備えている。具体的には、図14(b)の底面図に示すように、1つのセルに2つの孔が対応するように複数の孔を横方向に並べて形成し、それぞれ2つの孔の間をノズル部の底面側から所定の深さまで削り取ることにより、その一対の孔からのペーストの吐出断面形状を横長にしている。
【0051】
すなわち、開口部hは、図14(c)に示すように2つの孔11,12とそれらを繋ぐ連結部13とからなっており、2つの孔11,12はこのペアが1つのセルに対応するようにして横方向に並んで形成され、連結部13は2つの孔11,12の先端付近を接続した形状になっている。孔11,12は塗布ヘッド先端部のマニホールド側から底面までを貫通することで形成され、連結部13は2つの孔11,12の間の底面側を切削加工することで形成されている。連結部13の深さは、孔11,12から出た液体が底面に至るまでに繋がることができるように決めればよい。このような孔11,12と連結部13はセラミック材料でも加工することができる。
【0052】
(記録ギャップ)
吐出口から基体までの距離は適宜設定できるが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.2〜2mmの範囲に設定される。距離が0.1mmより狭いと安定なメニスカスが形成できず、さらに記録媒体の微妙な凹凸に追従できなくなるためドットが繋がったり抜けが生じたりして好ましくない。一方、10mmより広くなると吐出の直線性が損なわれ好ましくない。
【0053】
6.吐出
本発明の方法における液体の吐出では液体を加圧または減圧することができる。液体の圧力を減圧するか或いは加圧の程度を低めた場合は、液体の吐出量を減らすだけでなく、細かいパターンの形成が容易にできる。また、液体を加圧した場合は、液体の吐出量を容易に増やすだけではなく、太いパターンの形成ができる。
【0054】
また、液体の吐出は、間欠的なものであっても連続的なものであってもよい。吐出のON・OFFは、例えば、液体の加圧と減圧および/または印加電圧の変化によって行うことができる。
【0055】
図15はPDPのリブ内へのペースト塗布の説明図であり、基板G上に形成されたリブの間に3色(RGB)の蛍光体ペーストを塗布する場合を示している。ここでは、図14に示すタイプの開口部hを有する塗布ヘッドを使用し、リブ間のセルに蛍光体ペーストを塗布する。そして、図15に示すように、後に塗布する色の蛍光体ペーストの着弾位置を塗布ヘッドHの位置をずらして調整し、蛍光体ペーストをセルの中央に塗布するのが好ましい。具体的には、図示の如く、2色目の開口部hの位置をセル中心oよりも1色目と反対方向にずらして塗布する。そうすることで、2色目の蛍光体ペーストは、1色目の蛍光体ペーストに引かれる力でセル中央に塗布される。ずれ量xは、セル幅sに対して1/30〜1/2である。すなわち、ずれ量xがセル幅sの1/30より小さいと1色目への混色が発生し、逆にずれ量xがセル幅sの1/2より大きいと形状が偏ってセル中央に塗布できなくなる。3色目が1,2色目のどちらかに引かれる場合はその3色目は開口部の位置をセル中心よりずらして塗布する。この場合、引かれる側とは反対側に所定量だけずらす。
【0056】
7.付着させる液体
(液体の電気伝導率)
本発明において、電界ジェットにより付着させる被吐出液体は、電気伝導率が1×10−10 〜1×10−4Ω−1・cm−1に調整される。この範囲であれば、電圧印加による効果として、液体が基体方向に吸引され、吐出口から吐出される液体が、基体付近で細く伸び安定して細線状に液体を付着させることができる。すなわち、液体の電気伝導率が低い場合には、脈動が大きくなって吐出量が安定せず、大きな液滴が断続的に吐出されるようになり、着弾位置も安定しないといった問題点が生じやすい。一方、液体の電気伝導率が高い場合は、既に吐出された物質や電極などに吸引されやすく、吐出の方向が安定しない、断続的な吐出になりやすく、吐出量が安定しないといった問題点が生じやすい。
【0057】
なお、電気伝導率は、測定時あるいは本発明の実施時における印加電圧の周波数によって異なり得るが、本発明においては吐出時の印加電圧の周波数における電気伝導率を示す。
【0058】
(液体の電気伝導率の求め方)
本発明において液体の電気伝導率の測定は、例えば以下の方法で行うことができる。この求め方においては、本発明の液体には、ペースト状のものなど不均一系の液体も含むため、抵抗成分以外にキャパシタ成分を考慮したモデルを用いて電気伝導率を求める。
【0059】
図16はこの電気伝導率を求めるためのCとRの並列回路モデルである。測定・解析の単純化を図るために、印加電圧として、交流電圧にsin波を用いると印加電圧Vは以下のように表される。
【0060】
V=Vo・sinωt
Vo:電圧の振幅
ω :角周波数
t :時間
これにより、抵抗Rに流れる電流irは、
ir=V/R=(Vo/R)sinωt
キャパシタCに流れる電流icは、
ic=C(dV/dt)=Vo・ω・C・cosωt
と表され、流れる電流Iは、
I=ir+ic=Vo{(1/R)sinωt+ω・C・cosωt}
と表される。
【0061】
ここで、電流Iは、
I/Vo=(1/R)sinωt+ω・C・cosωt
より、
I/Vo=√{(1/R2 )+(ωC)2 }・sin(ωt+α’)
α’=tan−1(ωC/(1/R))=tan−1(ωCR)
tanα=ωC/(1/R)=ωCR
α’:電圧Vと電流Iの位相差
と書き換えられ、図17のように表される。
【0062】
ここで、rは、
r2 =Imax /Vo=I/R2 +(ωC)2
Imax :最大電流値
である。これにより抵抗RとキャパシタCは、
I/R=r・cosα’
R=(1/r)cosα’=(Vo/Imax )cos2παf
ωC=r/sinα’
C=(r/ω)sinα’=(Imax /Vo・2παf)cos2παf
α :電圧Vと電流Iの位相差(測定値[s])
f :印加電圧の周波数
となる。Vo、fは測定条件であるため既知であり、Imax 、αを測定することより抵抗RとキャパシタCが求められる。
【0063】
よって、求められた抵抗Rから電気伝導率σは、
σ=I/(R・a)
I :被測定物の長さ
a :被測定物の面積
により求められる。
【0064】
(液体の電気伝導率の測定方法)
図18に液体の電気伝導率を測定する装置の測定電極を構成するガラス板の平面図を、また図19に電気伝導率を測定する装置の概念図を示す。
【0065】
測定電極20としては、図18に示すようにITO21をパターニングしたガラス板22を2枚用いる。そして、図19に示すように2枚のガラス板22のITO21の部分が互いに向き合うようにし、間にスペーサー23(厚さ3mm)を入れた状態で固定して測定電極20とする。ITO21の10mm角部分21aは試料24に入れられ、5mm角部分21bの一方はアンプ31と接続し、他方は測定抵抗41と接続する。測定電極20を試料24に入れる際には、ITO21の10mm角部分21aがちょうど浸かる程度が望ましい。全体が浸かりきっていないのはもちろん、細長部分21cまであまり深く浸かりすぎているのも測定誤差の原因となる。
【0066】
測定は、ファンクションジェネレータ32で印加電圧の波形(sin波)を作り、振幅および周波数を調整する。ファンクションジェネレータ32で作られたパルス(電圧)は、一つはオシロスコープ33でモニターし、もう一つはアンプ31に送られる。そして、アンプ31に送られたパルスは、ここで100倍(1000倍)に増幅されて出力され、測定電極20を介して試料24である液体に印加される。
【0067】
測定電極間に流れた電流は、測定抵抗41を介してオシロスコープ33で観測される。このとき用いる抵抗は、試料24である液体によって選択される。使用抵抗は、1Ω、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩ、1MΩから選択する。また、大きな電流が流れた際の装置の保護抵抗42は、測定抵抗41の5倍の抵抗値を持ったものを用いる。
【0068】
オシロスコープ33上に得られた印加電圧波形と電流波形をコンピュータ34で解析し、印加電圧、最大電流値、位相差を求め、電気伝導率を求める。
【0069】
この方法は、測定電極の構造が簡単であるため洗浄が容易であり、任意の周波数の電気伝導率が測定できる点、電気伝導率と同時に誘電率の測定ができる点、ならびに測定抵抗を選択することにより広い範囲の電気伝導率が測定できる点で有利である。
【0070】
(電気伝導率調整物質)
本発明においては、電気伝導率調整物質を用いて、被吐出液体の電気伝導率を調整する。電気伝導率調整物質は、被吐出液体の電気伝導率が所望の数値よりも低い場合に、電気伝導率を上昇させるために使用される。
【0071】
各種の電気伝導率調整物質をブチルカルビトールに溶解させた場合の電気伝導率を表1に示した。これより、電気伝導率調整物質の種類によって得られる電気伝導率に差が生じることが分かる。電気伝導率調整物質は、より少量の添加で高い電気伝導率を得られるものが好ましく、表1における硝酸リチウム、塩化リチウム、硝酸アンモニウムなどがこれに該当する。また、可能であれば、少量の水の添加は電気伝導率調整物質の解離を促進するため電気伝導率を大きく上昇させる。
【0072】
【表1】
【0073】
被吐出液体に添加することにより電気伝導率を上昇させる物質としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、希土類金属塩などの各種金属塩をはじめとするイオン化合物が好ましく用いられる。酸やアルカリも用いることができるが、関連する部材を腐食する恐れがある点や、塩類に比べて電気伝導率が上がりにくい問題があり、使用されるケースは稀である。一方、金属塩は化学的に安定で使用しやすく、高い電気伝導率を達成できる利点があるが、これらは吐出、乾燥後に残存し、そのまま焼成すると金属酸化物等の形態で塗膜中に残ってしまう。
【0074】
一般に、塗布乾燥後、焼成することで目的のパターンを得る場合には、焼成後のパターンは必要機能を達成するために不純物が存在しないよう注意する必要がある。特にPDP蛍光体のようにごく微量の不純物が輝度低下をもたらす場合は、前記の金属塩を用いることが難しい。そこで本発明においては、吐出、乾燥後の焼成工程で熱分解し、消失するようなイオン化合物を用いる。そのようなイオン化合物としては、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、コハク酸アンモニウムなどのアンモニウム塩が好ましく用いられ、その中でも、分解温度が低いことと高い電気伝導率を達成できる点から、硝酸アンモニウムが最も好ましい。硝酸アンモニウムは、210℃付近で「NH4 NO3 →N2 O+2H2 O」のように分解するため、PDP蛍光体の比較的低い(500℃前後)焼成温度でも分解して消失する。
【0075】
(被吐出液体)
本発明により付着させる被吐出液体は、電界ジェット法により基体に吐出、付着せしめた後に乾燥、焼成してパターンを形成するものであって、単一相の液体であっても、懸濁液、分散液、エマルジョンなどと呼ばれる複数相からなる液体であってもよい。例えば、被吐出液体は吐出温度で液状(流動性を持つ)である必要があるため、有機又は無機溶剤を主成分とし、前記の電気伝導率調整物質の他に、用途に応じてパターニングしたい成分(目的物質)を溶解、分散させたものを用いることができる。通常は、溶剤と電気伝導率調整物質とバインダーと目的物質を含む組成が被吐出液体が構成されるが、さらに必要に応じて、分散剤、消泡剤、揺変剤などの各種添加物を、焼成後に残存しないものに限り自由に混合することができる。
【0076】
被吐出液体の電気伝導率は、前記の電気伝導率調整物質と有機または無機溶剤の組み合わせで決定される。電気伝導率は電気伝導率調整物質の溶解、解離の状態が大きく影響するため、同一の電気伝導率調整物質を用いた場合でも溶剤の種類により電気伝導率は変化する。
【0077】
本発明に用いられる溶剤の例として、無機液体としては、水、COCl2 、HBr、HNO3 、H3 PO3 、H2 SO4 、SOCl2 、SO2 Cl2 、FSO3 H等が上げられる。
【0078】
有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセン等の炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモタン、トリブロモタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
【0079】
電気伝導率調整物質は溶解しないと効果が発揮できないため、選択した溶剤が単独で電気伝導率調整物質を溶解できない場合や、電気伝導率を制御しにくい場合には、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。また、電気伝導率調整物質が溶解しない場合でも、界面活性剤と共に水溶液をエマルジョン的に添加して電気伝導率を調整することができる。ただし、界面活性剤は焼成後残存しないものを選定する必要がある。
【0080】
先に挙げた溶剤のうち、室温下で固体のものは、その融点以上に加熱してからヘッドに供給することで吐出できる。このような方式は例えばホットメルトタイプのインクジェット記録方式で一般的なものであるが、記録装置にヒーター部を設ける必要がある点と、ウォーミングアップに時間がかかる欠点があるが、速乾性を必要とするような用途に有用である。
【0081】
溶剤の沸点は開口部での目詰まりの程度に影響するため重要である。好ましい沸点の範囲は150〜300℃であり、さらに好ましくは180〜250℃である。150℃より低いと乾燥による目詰まりが発生しやすく、300℃より高いと記録後の乾燥に時間がかかり好ましくない。このような高沸点の溶剤は、被吐出液体中の全溶剤量のうち50重量%以上を占めることが好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。
【0082】
粘度は0.1〜100万cpsの広い範囲で吐出が可能であるが、より安定して吐出を行うためには、100〜10万cpsの範囲であることが好ましい。粘度を調整するためには、適当な樹脂を添加し、さらにその濃度や分子量を変化させればよい。また、増粘剤などの添加剤を併用してもよい。
【0083】
(目的物質)
電界ジェット法の被吐出液体に含まれる目的物質(パターニングしたい物質)は、ノズルで詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限なく液体に溶解又は分散させることができる。本発明では、目的物質は焼成後残存するものでなくてはならない。そのような物質としては、金属単体やセラミックス、耐熱高分子などが挙げられる。具体的には、Ag、Au、Al、Cu、などの金属粉;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、などの酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒化物;石英、ソーダガラスなどのガラス類、カオリナイト、モンモリロナイト、ハロサイト、白雲母、タルクなどの粘度鉱物;ZnS:Ag、ZnS:Cu、ZnS:Mn、ZnS:Cu,Al、Zn2 SiO4 :Mn、ZnO:Zn、Y2 O2 S:Eu、Y2 O2 S:Tb、Y2 O3 S:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6 Cl2 :Euなどの無機蛍光体;Fe、Co、Niなどの金属磁性体;Fe3 O4 、γ−Fe2 O3 などの酸化物磁性体;各種フェライト、Sm、Euなどの希土類磁性体;チタン酸バリウム、PZTなどの強誘電体材料;ITO、SnO2 などの導電性セラミックス;黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタン黄、オーカー、カドミウムレッド、ベンガラ、銀朱、鉛丹、アンチモン朱、群青、細管、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの無機顔料;ポリイミド、メラミン樹脂などの耐熱性樹脂がある。
【0084】
(PDP蛍光体ペースト)
本発明で被吐出液体として用いられるPDP蛍光体ペーストは、目的物質として蛍光体粉末を含む。蛍光体としては、従来よりPDP用として知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO3 :Eu、YO3 :Euなど、緑色蛍光体として、ZnSiO4 :Mn、BaAl12O19:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al2 O3 :Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl10O17:Euなどが挙げられる。
【0085】
蛍光体は塗布、乾燥後にセル内壁に付着させておく必要があり、このために蛍光体ペーストにはバインダーを含有させる。バインダーは400〜550℃の焼成で分解或いは燃焼する必要があり、そのようなバインダーとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂、PVA、ブチラール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0086】
蛍光体ペーストの電気伝導率は3色の塗布順に応じて調整する必要がある。すなわち、1,2,3色目の電気伝導率を、1色目<2色目<3色目とし、かつ先に塗布するペーストの電気伝導率(a)と続いて塗布するペーストの電気伝導率(b)の比(a/b)が1/2以下であるようにする。この関係を満たすことにより、各色のペーストが正規のセルに正しく充填されるようになるが、この関係を満たさない場合には、先に塗布したペーストに後から塗布するペーストが引かれ、混色してしまう。ただし、ペーストの電気伝導率が5×10−6Ω−1・cm−1以上であれば、(先に塗布する液体の電気伝導率)≦(後に塗布する液体の電気伝導率)の条件を満たせば、混色することはない。各ペーストのより好ましい電気伝導率は、最初に塗布するペーストが1×10−9〜1×10−6Ω−1・cm−1の範囲内、2番目に吐出するペーストが1×10−8〜1×10−5Ω−1・cm−1の範囲内、3番目に吐出するペーストが1×10−7〜1×10−4Ω−1・cm−1の範囲に調整される。
【0087】
【実施例】
(実施例1:塗布適性の評価)
リブまでを形成したPDP用背面板に、RGB3色の蛍光体ペーストの塗布を行った。使用した3色の蛍光体ペーストは次のようである。
【0088】
〔青色蛍光体ペースト1〕
エチルセルロース(ダウケミカルズ社製「STD−100」)15部とブチルカルビトール300部からなる組成物を加熱還流機構を有する容器に入れ、60℃で12時間攪拌をし溶解した後、室温まで冷却した。この樹脂溶液150部に青色蛍光体(化成オプトロニクス社製)95部を加え、攪拌により混合した後、3本ロールミルで3回処理した。続いて、得られた組成物100部に2%LiNO3 ブチルカルビトール溶液(2wt%)を2部添加し、攪拌脱泡機にて5分処理し、青色蛍光体ペースト1を得た。得られたペーストの粘度は150poiseで、電気伝導率は2.20×10−5Ω−1・cm−1であった。
【0089】
〔青色蛍光体ペースト2〕
青色蛍光体ペースト1におけるLiNO3 を、等量のNH4 NO3 とした以外は同様にして青色蛍光体ペースト2を得た。得られたペーストの粘度は150poiseで、電気伝導率は1.80×10−5Ω−1・cm−1であった。
【0090】
〔緑色蛍光体ペースト1〕
青色蛍光体ペーストにおける蛍光体を緑色蛍光体(化成オプトロニクス社製)100部とした以外は同様にして緑色蛍光体ペースト1を得た。得られたペーストの粘度は160poiseで、電気伝導率は1.30×10−6Ω−1・cm−1であった。
【0091】
〔赤色蛍光体ペースト1〕
青色蛍光体ペーストにおける樹脂溶液の組成物を、エチルセルロース(ダウケミカルズ社製「STD−100」)18部とブチルカルビトール105部とターピネオール295部に変更し、蛍光体を赤色蛍光体(化成オプトロニクス社製)95部とした以外は同様にして赤色蛍光体ペースト1を得た。得られたペーストの粘度は140poiseで、電気伝導率は6.75×10−9Ω−1・cm−1であった。
【0092】
このようにして調整した3色の蛍光体ペーストに対し、それぞれ図14に示すタイプの塗布ヘッドを使用してリブ間のセルへの塗布を行った。使用した塗布ヘッドにおける孔の数は100個で、材質はマセライトである。塗布順序はR→G→Bとし、塗布速度は70mm/秒、塗布ヘッドと基板の距離は400μmとした。そして、R(赤色蛍光体ペースト1)→G(緑色蛍光体ペースト1)→B(青色蛍光体ペースト1)の場合と、R(赤色蛍光体ペースト1)→G(緑色蛍光体ペースト1)→B(青色蛍光体ペースト2)の場合の2通りを行った。塗布ヘッドと基板の間の印加電圧は表2の通りである。
【0093】
【表2】
【0094】
塗布ヘッドにおけるマニホールド内の圧力(背圧)は、吐出される蛍光体ペーストがリブ間のセルを100%充填するように調整した。また、充填量の確認は、塗布直後にレーザー顕微鏡で充填形状を観察することで行った。
【0095】
塗布後の基板を80℃のオーブンで60分乾燥した後、ピーク温度500℃で60分間焼成することによりRGBの蛍光体層を形成した。その結果、青色蛍光体ペーストの添加剤の種類による塗布性能の違いは認められず、いずれの場合でも得られた蛍光面は混色や塗布ムラ等の不良は見られなかった。
【0096】
(実施例2:輝度特性評価)
続いて、R,Gについても添加剤の影響を見るため、次のようにして添加剤含有ペーストを作製した。
【0097】
〔青色ベースペースト〕
緑色蛍光体ペースト1における蛍光体を青色蛍光体(化成オプトロニクス社製)100部とした以外は同様にして青色ベースペーストを得た。得られたペーストの粘度は160poiseで、電気伝導率は1.46×10−6Ω−1・cm−1であった。
【0098】
〔緑色ベースペースト〕
緑色蛍光体ペースト1をそのまま用いた。
【0099】
〔赤色ベースペースト〕
緑色蛍光体ペースト1における樹脂溶液の組成物を、エチルセルロース(ダウケミカルズ社製「STD−100」)185部とブチルカルビトール400部に変更し、蛍光体を赤色蛍光体(化成オプトロニクス社製)100部とした以外は同様にして赤色ベースペーストを得た。
【0100】
上記各ベースペースト100部に対して、2%LiNo3 ブチルカルビトール溶液、又は2%NH4 NO3 ブチルカルビトール溶液を2部添加し、攪拌脱泡機にて5分処理し、添加剤含有蛍光体ペーストを得た。得られたペーストの電気伝導率は表3に示す通りである。
【0101】
【表3】
【0102】
各ペーストは単色のみを基板に塗布した。塗布の電圧条件は、ベースペーストについては表2のGの条件、添加剤含有ペーストについては表2のBの条件とした。そして、実施例1と同様の条件で乾燥、焼成した後の基板を2cm角に切り出し、輝度評価用サンプルとした。
【0103】
上記サンプルを、0.01MPaの窒素雰囲気のチャンバー内にセットし、紫外線照射ランプ「USHIO UER20H−146(V)」により波長146nmの紫外線を基板平面に対し45度の方向から照射した。輝度は基板の垂直方向にトプコン分光放射計「SR−1」を設置し、測定した。その測定結果を表4に示す。表中のxとyは、CIE(国際照明委員会)から提案されているCIE色度座標値のx,y値を示す。
【0104】
【表4】
【0105】
表4に示すように、添加剤がLiNO3 の場合、Rでは問題ないが、Gで輝度劣化、Bで色相変化が発生した。これに対し、NH4 NO3 の場合は、蛍光体の種類に関わらず、輝度劣化や色相変化を生じなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明のパターニング方法は、吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体との間に電圧を印加しながら液体を吐出し、この液体を前記基体に付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体が、液体の電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴としているので、電界ジェット法で吐出する液体の吐出量や吐出方向を安定させることができ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないようにして所望のパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AC型プラズマディスプレイパネルの一構成例をその前面板と背面板を離間した状態で示す構造図である。
【図2】塗布ヘッドを組み込んだ塗布装置を用いて行われる蛍光体ペーストの3色同時塗布方法の模式図である。
【図3】電界ジェット法による液体付着装置の概念図である。
【図4】塗布ヘッドへの電極の取付け例を示す説明図である。
【図5】塗布ヘッドと基板の間にかける高圧パルスの波形図である。
【図6】蛍光体ペーストをリブ間に充填する様子を示す説明図である。
【図7】3色それぞれの蛍光体ペーストが充填された状態と乾燥工程を経た後の状態を示す説明図である。
【図8】電界ジェット法における電圧印加の効果を模式的に示した説明図である。
【図9】連続吐出の場合の印加電圧の一例を示すグラフである。
【図10】間欠吐出の場合の印加電圧の一例を示すグラフである。
【図11】液体のノズルを有するヘッドの構造例を示す説明図である。
【図12】塗布ヘッドの吐出孔が円形状の場合のリブ間への塗布状況を説明するための説明図である。
【図13】塗布ヘッドの吐出孔が横長状の場合のリブ間への塗布状況を説明するための説明図である。
【図14】横長の吐出孔を備えたノズル部の説明図である。
【図15】PDPの蛍光体ペースト塗布の説明図である。
【図16】電気伝導率を求めるためのCとRの並列回路モデルである。
【図17】電流を表す説明図である。
【図18】電気伝導率を測定する装置の測定電極を構成するガラス板の平面図である。
【図19】電気伝導率を測定する装置の概念図である。
【符号の説明】
1 前面板
2 背面板
3 リブ
4 維持電極
5 バス電極
6 誘電体層
7 保護層(MgO層)
8 アドレス電極
9 誘電体層
10 蛍光体層
11,12 孔
13 連結部
20 測定電極
21 ITO
22 ガラス板
23 スペーサー
24 試料
31 アンプ
32 ファンクションジェネレータ
33 オシロスコープ
34 コンピュータ
41 測定抵抗
42 保護抵抗
G 基体
H ヘッド
h 開口部
P 液体
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界ジェット、すなわち液体吐出口近傍の電極と基体との間に電圧を印加して液体を前記基体に付着させる方法、により液体を吐出、付着させ、さらに乾燥、焼成を行い所望のパターンを得る方法およびそれに使用する液体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ノズル状或いはスリット状の開口部から液状の物質を吐出し、媒体上に付着せしめる所謂「ノンコンタクト」記録方法は、装置およびプロセスの簡便性が図れ、また媒体の選択範囲が広がることから、従来の印刷法、転写法、電子写真法などの「コンタクト」記録方式に代わる新規な方式としてグラフィックスやエレクトロニクス分野における各種パターニング、マーキングに幅広く用いられるようになってきている。インクジェット法、ディスペンサー法に代表されるこれらの方式は、微細化、高精細化の改良が進んでおり、最近では従来フォトリソ法で行われていたような液晶カラーフィルター等の微細パターニングへの適用も提案されている。
【0003】
インクジェット記録方式は、微細なノズルからインクの小滴を吐出、飛翔させ、直接紙などの記録部材に付着させることで画線を形成する記録方式である。吐出の原理としては、圧電素子の振動によりインキ流路を変形させインクを吐出させるピエゾ方式、インク流路内の発熱体からの熱によりインク内に気泡を生成せしめ、その圧力によりインクを吐出させるサーマル方式、インクに静電吸引力を作用させ吐出させる静電方式などが提案されているが、特に静電方式は記録ヘッドの構造が簡単でマルチノズル化が容易となることや、パルス幅変調により階調表現が可能である点が他の方式と異なり注目されている。
【0004】
しかし、これらのインクジェット方式の大きな問題として、粘度20cps以下のごく低粘度のインクしか吐出できない点がある。このため、フィルム等のインク吸収性のない基材への吐出記録や、高粘度インクを用いた厚みのあるパターン形成などは困難であった。また、粘度にかかわらず、粒子径が数百nm以上の粒子を分散したインクを吐出する場合、出口付近で乾燥等による目詰まりが起こり易くなり、安定した吐出ができなかった。このため、インクジェット法による厚膜のパターニング、高濃度、高粘度液体の吐出或いは速乾性液体の吐出は極めて困難であった。また、蛍光体顔料や、光輝性顔料、磁性体などは、粒子を小さくするとその光学的或いは磁気的性質が大きく損なわれるため、インクジェットで吐出できるような微粒子分散タイプのインキを作製することは機能面から好ましくなく、結果としてインクジェット法が適用できずにいた。
【0005】
一方、ディスペンサー方式は、高粘度の物質を線状或いはドット状に吐出・付着せしめることが可能であり、インクジェット方式では困難であった厚膜のパターニング、高濃度、高粘度液体の吐出や数μm〜10数μmの粗大粒子を含む液体の吐出に用いることができる。ディスペンサー方式においては、ノズル内径を小さくするほど細かい線或いは点を吐出記録できるが、液体にもよるが、内径が200μm以下になると孔の詰まりが頻繁に発生するため実用上好ましくない。また、吐出記録される線の幅或いはドット径はノズル内径よりも大きくなるため、線幅或いはドット径が300μm以下の微細なパターニングへの使用は困難であった。
【0006】
このように、従来の方式では、線幅或いはドット径が300μm以下、かつ膜厚が数μm〜10数μmの微細な厚膜のパターニングは困難であった。このようなパターニングを必要とする例としてプラズマディスプレイパネル(PDP)の蛍光体やリブ、電極の形成がある。
【0007】
一般にPDPは、2枚の対向するガラス基板にそれぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、その間にNe,Xe等を主体とするガスを封入した構造になっている。そして、これらの電極間に電圧を印加し、電極周辺の微小なセル内で放電を発生させることにより、各セルを発光させて表示を行うようにしている。情報表示をするためには、規則的に並んだセルを選択的に放電発光させる。このPDPには、電極が放電空間に露出している直流型(DC型)と絶縁層で覆われている交流型(AC型)の2タイプがあり、双方とも表示機能や駆動方法の違いによって、さらにリフレッシュ駆動方式とメモリー駆動方式とに分類される。
【0008】
図1にAC型PDPの一構成例を示してある。この図は前面板と背面板を離した状態で示したもので、図示のように2枚のガラス基板1,2が互いに平行に且つ対向して配設されており、両者は背面板となるガラス基板2上に互いに平行に設けられたストライプ状のリブ3により一定の間隔に保持されるようになっている。前面板となるガラス基板1の背面側には維持電極4である透明電極とバス電極5である金属電極とで構成される複合電極が互いに平行に形成され、これを覆って誘電体層6が形成されており、さらにその上に保護層7(MgO層)が形成されている。また、背面板となるガラス基板2の前面側には前記複合電極と直交するようにリブ3の間に位置してアドレス電極8が互いに平行に形成され、必要に応じてその上に誘電体層9が形成されており、さらにリブ3の壁面とセル底面を覆うようにして蛍光体層10が設けられている。このAC型PDPは面放電型であって、前面板上の複合電極間に交流電圧を印加し、空間に漏れた電界で放電させる構造である。この場合、交流をかけているために電界の向きは周波数に対応して変化する。そしてこの放電により生じる紫外線により蛍光体層10を発光させ、前面板を透過する光を観察者が視認するようになっている。
【0009】
上記の如きPDPにおける背面板は、ガラス基板2の上にアドレス電極8を形成し、必要に応じてそれを覆うように誘電体層9を形成した後、リブ3を形成してそのリブ3の間に蛍光体層10を設けることで製造される。電極8の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、厚膜法等によってガラス基板2上に電極材料の膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法によってパターニングする方法と、厚膜ペーストを用いたスクリーン印刷法によりパターニングする方法とが知られている。また、誘電体層9はスクリーン印刷等により形成される。リブ3はスクリーン印刷による重ね刷り、或いはサンドブラスト法等によってパターン形成される。
【0010】
蛍光体層10は、スクリーン印刷法によってパターニングされるのが一般的であるが、その他にフォトリソグラフィー法や、最近ではディスペンス法によるパターニングも提案されている。
【0011】
スクリーン印刷法で蛍光体をパターニングする場合、バインダーを溶解した分散媒に3本ロール等で蛍光体粉末を分散せしめたRGBのペーストを、各色用の3枚のスクリーン版を用いて、リブ間のセル位置に合わせて3回印刷を行い、各色用のセル内に各色の蛍光体ペーストを塗布する。スクリーン印刷は製造装置が比較的安価であり、製造工程数も少ないことから量産化には適しているが、スクリーン版の変形や経時変化のため十分なパターン精度が得にくい問題がある。PDPは今後さらに大面積化および高解像度化が進むと考えられ、このようなスクリーン印刷法で蛍光体層を形成することは技術的、コスト的に益々困難となることが予想される。
【0012】
一方、フォトリソグラフィー法でパターニングするには、リブ間のセル中に感光性の蛍光体ペーストを圧入し、露光及び現像後に焼成して圧入された感光性組成物中の有機物を焼失させ、セル表面に蛍光体層を形成する。この場合、使用するペーストが蛍光体粉を含有しているため、紫外線の透過が阻害され、紫外線が底部まで達することが困難となる。すなわち、蛍光体ペーストの感度が極端に低い。したがって、パターニング、焼成後の蛍光体層の膜厚を10μm以上にすることが難しく、得られる蛍光面の輝度が十分でないという問題がある。そこで、蛍光体ペーストの感度を上げるために感光性樹脂の量を多くすることが考えられる。しかし、樹脂量が比較的多い蛍光体ペーストを用いると、焼成時の収縮率が大きくなるため、焼成時に蛍光体層の剥離、ひび割れを起こしやすく、ひどい場合には蛍光面のカール等を起こすという問題が生じる。また、各色毎の蛍光体パターンを形成する上で露光及び現像工程が必須であり、そのために感光性樹脂として常に現像可能な樹脂、特にアルカリ現像が可能な感光性樹脂を使用せねばならないという制約があり、そのために焼失性に優れた感光性樹脂の選択が困難であった。さらに、現像除去される層にも高価な蛍光体が高濃度で含まれており、現像除去された蛍光体の回収が困難であることから、蛍光体の有効利用率は30重量%弱であり、この点がコスト的に大きなデメリットになっていた。
【0013】
本発明者らは、高粘度或いは粗大粒子を含むようなインクを微小なパターンとして吐出形成できる方法について種々の検討を行い、電界ジェット法の発明に至った。電界ジェット法とは、典型的には吐出口近傍に電極を配置したノズル状或いはスリット状の開口部を有する吐出ヘッドにインキを供給し、続いて前記電極へ交流又は直流の電圧を印加することによって前記インクを開口部から連続的或いは間欠的に吐出するパターン形成方法である。
【0014】
電界ジェット法によれば、ディスペンサーの如く数万cpsといった高粘度のインクを吐出可能であるだけでなく、数cps以下の低粘度インクについても同様に吐出が可能である。電界ジェット法の最大の特徴として、電界の効果によって開口部の径よりも吐出されるインク先端の径を細くできることが挙げられる。インク、ヘッドの組合せによっては、パターニングされる線或いはドットのサイズを開口部の1/10以下まで小さくすることができる。同時に、目的の記録サイズに対して比較的開口部を大きくできることから、粗大粒子を含むインクが目詰まりなく安定してかつ高解像度で吐出される。
【0015】
ディスペンサー法或いは電界ジェット法によるPDP用蛍光体ペーストの塗布を図2に模式的に示した。
【0016】
図2においてGはリブ3までが形成された基板であり、複数個の塗布ヘッドHを備えた塗布装置をこの基板Gに対して相対的に移動させることで蛍光体ペーストをリブ間に一度で充填するように構成されている。すなわち、4つの塗布ヘッドHrは赤色用の蛍光体ペーストを吐出するもので、主フレームFmに跨がる第1の副フレームF1 の前後に2つずつが交互に取り付けられ、各塗布ヘッドHrにおける複数の吐出孔が基板Gの幅方向に連続するようになっている。同様に、4つの塗布ヘッドHgは緑色用の蛍光体ペーストを吐出するもので、主フレームFmに跨がる第2の副フレームF2 の前後に2つずつが交互に取り付けられ、各塗布ヘッドHgにおける複数の吐出孔が基板の幅方向に連続するようになっている。また同様に、4つの塗布ヘッドHbは青色用の蛍光体ペーストを吐出するもので、主フレームFmに跨がる第3の副フレームF3 の前後に2つずつが交互に取り付けられ、各塗布ヘッドHbにおける複数の吐出孔が基板の幅方向に連続するようになっている。したがって、複数の吐出孔から蛍光体ペーストを吐出しながらそれぞれの塗布ヘッドHが一体となって基板と相対的に移動することで、一度の塗布工程で3色の蛍光体ペーストが所定のリブ間に充填される。
【0017】
図3は電界ジェット法による液体付着装置の概念図である。図示のように、液体Pは予めタンクTに投入される。そして、エアによりタンクT内に圧力をかけることで、塗布ヘッドHに液体Pが供給され、この塗布ヘッドHでもエアによりマニホールド内に一定の圧力をかけることで、先端の吐出孔から液体Pが吐出される。したがって、所定間隔を保って基体Gと塗布ヘッドHを相対的に移動させながら、液体として蛍光体ペーストを塗布ヘッドHの吐出孔から吐出させることで所定のリブ間に充填することができる。
【0018】
この場合、図3に示すように、塗布ヘッドHと基体Gとの間に高圧パルス発生器Aからの高圧パルスを印加して電界を生じさせると、所定のリブ間に蛍光体ペーストをスムースに充填することができることが経験的に分かっている。高圧パルスを印加するには塗布ヘッドHに電極を取り付ける必要があり、図4に塗布ヘッドへの電極の取付け例を示している。この図4(a)の例では塗布ヘッドHの先端外側に一対の電極Eを取り付けており、また図4(b)の例では塗布ヘッドHの内部に電極Eを取り付けている。また、高圧パルス発生器Aから出す高圧パルスは図5に示すようであり、通常、パルス間隔aは0.01〜10kHz程度に、またパルス幅bは3〜10kV程度に設定する。
【0019】
このように電界ジェット法で蛍光体を充填する方法では、ペーストが電気的な推進力で基板に引き寄せられるため、単純なディスペンス法に比べてヘッド−基板間距離を大きくとることができ、かつ吐出される液柱が絞られる効果があるため吐出孔の径をリブ開口幅よりも広くすることができる。この場合、蛍光体ペーストは片側のリブのみに触れながら塗布されやすくなるが、基板の種類によっては右寄り左寄りの違いによりムラが生じる場合がある。この塗布ムラを抑えるためには、図6に示すようにペーストを両側のリブに触れさせながら塗布する必要がある。同図は充填する状態を進行方向の正面から見たものである。そして、3色同時塗布を行った後では図7(a)に示すように、所定のリブ3間にそれぞれ赤用の蛍光体ペーストPr、緑用の蛍光体ペーストPg、青色用の蛍光体ペーストPbが充填された状態となる。また、乾燥工程を経て図7(b)に示す如く蛍光体ペーストが凹んだ状態になる。この乾燥工程の後、焼成工程を経て蛍光面が形成される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような電界ジェット法により蛍光体ペーストの塗布を行うと、蛍光体ペーストを所定の位置のみに塗布するので、材料の利用効率が高いという利点があり、また3色を一括して乾燥させるので、各色毎の乾燥が不要で工程数が少ないという利点もある。
【0021】
しかしながら、電界ジェット法により複数の液体を隣接して塗布する際、先に塗布した液体に後から塗布する液体が引かれる(塗布時)現象が起こり、正規の位置にパターニングできないという問題がある。PDPの蛍光面形成において電界ジェット法を用いた場合においても、蛍光体ペーストの塗布時に同様の現象が起こり、既に他色のペーストが塗布されているセルへの混色を招いてしまう。
【0022】
この対策として、電気伝導率の低い液体から順に塗布することが考えられる。例えば、先に吐出する液体の電気伝導率(a)と、その直後に吐出する液体の電気伝導率(b)の比(a/b)が1/2以下であるようにする。電界ジェット法によりRGB3色の蛍光体ペーストを所定のパターンに吐出形成する蛍光面形成方法においてもこの条件を満たせばよいが、より好ましくは、最初に吐出するペーストの電気伝導率を1×10−9〜1×10−6Ω−1・cm−1の範囲、2番目に吐出するペーストの電気伝導率を1×10−8〜1×10−5Ω−1・cm−1の範囲、3番目に吐出するペーストの電気伝導率を1×10−7〜1×10−4Ω−1・cm−1の範囲に調整することが考えられる。
【0023】
また、単一の液体のみを塗布する場合でも、吐出する液体の電伝導率が1×10−10 〜1×10−4Ω−1・cm−1でないと電界ジェット法で良好な吐出が行われないという問題があり、いずれのケースにおいても、電界ジェット法で正確な吐出を行うためには、液体の電気伝導率の調整が必要不可欠であった。
【0024】
このように液体の電気伝導率を調整するには、溶媒の種類、配合の選定が重要となるが、1×10−6Ω−1・cm−1以上の電気伝導率を達成するには、溶媒の最適化だけでは不足な場合が多く、さらにイオン化合物等の電気伝導率調整物質を添加する方法が行われていた。しかし、電気伝導率調整物質は液体を吐出、乾燥或いは焼成させた後に残存する場合が多く、特に機能性物質を吐出・パターニングする場合にはその機能に影響を及ぼさないものを選定する必要があった。
【0025】
PDP用蛍光体ペーストは、焼成後に100分の1ppm程度の微量の不純物が残存していても励起紫外線の吸収や発光の吸収、発光波長のシフト、或いは蛍光体の変質を引き起こす可能性があり、さらに蛍光体の寿命を短くする可能性がある。このため、焼成後に不純物を残存させないことは、必要な特性を得るための重要な課題であった。しかし、電界ジェット用の電気伝導率調整物質は塩化ナトリウムや硝酸リチウム、硝酸銅などの金属塩が多く、これらは蛍光体ペーストの焼成後に何らかの形態で必ず残存していた。
【0026】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであって、その目的とするところは、電界ジェット法で液体を吐出した後、乾燥、焼成工程を経て目的物質をパターニングする場合に、吐出量や吐出方向を安定させ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないためのパターニング方法、特にPDP蛍光面の形成方法を提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、電界ジェット法で安定した吐出ができるような液体、特にPDP用の蛍光体ペーストを提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電界ジェット法により吐出する液体の電気伝導率を調整するにあたり、吐出、乾燥後の焼成工程で熱分解し焼失する電気伝導率調整物質を用いることにより上記目的を達成できることを知見し本発明を完成させた。
【0028】
そして、本発明のパターニング方法は、吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体との間に電圧を印加しながら液体を吐出し、この液体を前記基体に付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体が、液体の電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴とするものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
1.電界ジェット
本発明の電界ジェット法とは、液体の吐出口またはその近傍に電極を設け、液体を付着させる基体と間に電圧を印加して液体を吐出する方法を意味し、様々な態様を包含することができる。図3は前述したように電界ジェット法による液体付着装置の概念図であり、複数の吐出口を備えたヘッドH中の液体Pをエアー或いは機械的に加圧する一方、任意波形発生装置により発生した波形を高圧電源を介してノズルに印加し、液体Pを基体Gに付着させている。
【0030】
2.電極
電界ジェット法においては、吐出口の出口近傍に電極を配置する。その電極の形態、素材は次のようである。
【0031】
(電極の形態)
電極としては様々な形態のものを用いることができるが、例えば次のようなものを挙げることができる。
(1)ノズル、スリット自身を電極材料で構成する。
(2)ノズル、スリットの内壁に電極を配置する。
(3)ノズル、スリットの内部に電極を配置する。
(4)ノズル、スリットの外側に電極を配置する。
(5)ノズル、スリットの壁内部に電極を配置する。
【0032】
上記のうち(2)〜(5)の場合、吐出口先端から電極までの距離は、印加する電圧が高いほど広くとることができる。そのため、電圧強度によっては、広い範囲内が自由に電極を配置することが可能である。実用的な印加電圧強度の観点から、吐出口先端から電極までの距離は100mm以内であることが好ましく、30mm以内であることがさらに好ましい。
【0033】
記録媒体の導電性が高い場合や、複数のノズルをアレイ状に配列し、隣接するノズルに別々の信号を与えるような場合には、放電またはクロストークを抑制するために、吐出口から電極までの距離は0.5mm以上離れた部位に配置するのがよく、より好ましくは1mmから100mm、さらに好ましくは1mmから30mmの範囲に配置するのがよい。
【0034】
電極をノズル、スリットの外側に配置する場合には、ノズル壁またはスリット壁の厚みは1〜1000μmであることが好ましい。
【0035】
(電極の素材)
電極の素材としては、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Alなどの金属やステンレス、真鍮などの合金、ITOなどの導電性セラミックスが好ましく用いられる。流路内部に電極を配置する場合には、電極の変質、磨耗を防止する目的で、電極表面にハードコートを施す場合もある。
【0036】
電界ジェット法においては、電極と前記基体との間に電圧を印加する。この場合、交流と直流のいずれであってもよいが、基本的には交流が好ましい。また、電極には直接電気的に接続するが、基体は電気的に接続した状態でも接続しない状態であることもできる。付着させる液体が電着を起こす可能性がある場合は、電着を防ぐ目的から特に交流が好ましい。
【0037】
図8は電界ジェット法における電圧印加の効果を模式的に示した説明図である。図8(a)は電圧印加のない従来の方法で吐出が少量の場合であり、連続で吐出しようとしても、大きさの一定しない液滴が不連続に吐出されるだけである。図8(b)は吐出量を増加させた場合であり、連続吐出はなされるが、吐出口の開口より太い液柱となって吐出される。図8(c)は少量吐出で電圧を印加した場合であり、先の細い線で連続的に吐出される。図8(d)は多量吐出で電圧を印加させた場合であり、吐出量の増加に伴ってや太くなった線で連続的に吐出される。
【0038】
3.印加電圧
連続吐出の場合と間欠吐出の場合で好ましい電圧印加の方法が異なる。
【0039】
(連続吐出の場合)
連続吐出の場合は、交流又は直流で吐出が可能である。好ましくは図9に示すような交流である。電圧強度としては、Vp −(−Vp )=100V〜10kVであることが好ましく、電圧制御や吐出の安定性の観点から、1〜7kVの範囲にあるのがさらに好ましい。
【0040】
液体の粘度や材料組成にもよるが、電気伝導率が異なると最適な印加電圧周波数も変動する。多くの場合、電気伝導率の上昇につれて、最適な印加電圧周波数は高くなる。周波数が低いと、電極への析出等が発生し易く好ましくない。また、周波数が高いと、電源の性能上制御が難しくなるという問題もある。好ましい周波数の範囲は1Hz〜10kHzである。吐出の連続性と電圧制御の観点から、100Hz〜4kHzであることがさらに好ましい。直流の場合は±100V〜10kV(極性はどちらでも同様)が好ましい。
【0041】
(間欠吐出の場合)
間欠吐出(ON−OFF吐出)の場合は、図10に示すように印加電圧の絶対値がV1 以上で吐出が生じることを利用する。すなわち、図10でパルス1、2は吐出するが3は吐出しない。したがって、電圧強度で吐出量が制御できる。閾値となるV1 の大きさは液体や電極配置にもよるが、100V〜3kVの範囲であることが好ましい。吐出電圧は連続吐出の場合と同様100V〜10kVであることが好ましく、1〜7kVの範囲にあるのがさらに好ましい。
【0042】
4.基体
本発明において基体とは、液体を付着させる対象物を意味し、被吐出液体を付着させるものであれば材質的には特に限定されるものではなく、粘度100cps以上の液体又は固体表面であれば吐出可能となる。低粘度の液体表面などへの吐出は、液体が記録電極側に吸引される場合があり難しい。また、凹凸が数百μm以上もあるものへの連続吐出は、ギャップ変動により吐出量が安定しないため好ましくない。
【0043】
表面の導電性は、基体に付着させる液体の基体への吸引力に影響する。数値に関係なく、基体の導電性が均一であれば、正確な位置に液体を付着させることができるが、同一の基体に導電性の異なる部分が存在すると、液体は導電性の高い部位に着弾しようとする。このような場合は、液体の導電率を上げ、印加電圧の周波数を高くすることで正確な吐出が可能となる。また、金属のように導電性の高い基体の場合には、電極との間で放電が生じたり、被吐出液体を通じて過剰な電流が流れる場合があるので、電極を吐出口からの距離を離して配置する。或いは、可能な範囲で被吐出液体の電気伝導率を下げることが好ましい。
【0044】
5.ノズル
本発明でノズルとは、そこから被吐出液体を出すことができるものであればどのようなものであってもよい。図11に液体のノズルを有するヘッドの構造例を示す。図11(a)は全体の断面図であり、ヘッドH中の被吐出液体タンクHtには被吐出液体Pが充填され、電極Eと基体との間に電圧が加えらる。図11(b)はこのヘッド吐出口部分の拡大図であり、ヘッドHの内部に電極Eが配置され、ヘッドHの先端にはテーパー部Ta、ノズル部N、開口部hが設けられている。図11(c)はヘッドHの吐出口方向から見た図であり、この場合は7個の開口部hが設けられている。
【0045】
(ノズルを形成する材料)
ノズルを形成する材料は、特に限定されないが、例えば導電性材料としては、ステンレス鋼、真鍮、Al、Cu、Feなどが挙げられ、絶縁体(或いは半導体)材料としては、ガラス、雲母、酸化ジルコニウム、アルミナ、窒化珪素などのセラミック材料、PEEK、フッ素樹脂、ポリアミドなどのプラスチック材料などが挙げられる。
【0046】
ノズルの先端面は、被吐出液体が濡れ広がってしまわないようにフッ素樹脂等の表面自由エネルギーの低いもので被覆されることが好ましい。被吐出液体が濡れ広がってしまうと開口部でのメニスカスの形状が不安定になる他、吐出停止時に汚れとして残存し、後の記録に悪影響を与える。
【0047】
(ノズルの形状)
ノズルの開口形状は、円、楕円又は多角形のいずれであってもよい。開口径は50〜2000μmの範囲であることが好ましく、メニスカスの安定性や詰まり防止の観点から100〜1000μmであることがさらに好ましい。
【0048】
電界ジェット法によりPDPのリブ間のセル内に蛍光体ペーストを塗布する場合、片側のリブのみに触れながら塗布すると、右寄り左寄りの違いによりムラが生じる。このムラを抑えるためには、ペーストを両側のリブに触れさせながら塗布する必要があるが、図12に示すように、液体Pとしてのペーストがノズル底面Bにある円形状の開口部hから吐出された場合、その吐出断面形状は略円形と考えられるため、この円の直径がリブ3の間隔よりも小さいと、ペーストを両側のリブ3に触れさせることができない。吐出量が一定のままでこれを可能にするには、図13に示すように、吐出されるペーストの形状を横長にする必要がある。つまり、塗布ヘッドの開口部hの孔形状を横長にする必要がある。
【0049】
しかし、電界ジェット法で使用する塗布ヘッドの先端部分はセラミック材料等の絶縁物で出来ているので、放電加工等によりその材料に横長の孔を開けることは非常に困難である。そこで、2分割した部材の片面を削って複数の溝を形成し、その後貼り合わせる、若しくはクランプする方法が考えられるが、貼り合わせるための接着剤の選定や接着剤が孔を塞がないようにするにはどうすればよいかという問題が残り、またクランプする場合は、特にヘッド先端部の長さが長くなればそれだけ全面均一にクランプするのが困難であるし、内側の印加エアに耐えられるだけの力で押さえ込まなければならない等、様々な問題が生じる。
【0050】
そこで、例えば先端部分が図14に示すタイプの塗布ヘッドを用いることが考えられる。この塗布ヘッドは、図14(a)に示すように先端に横長の開口部hを備えている。具体的には、図14(b)の底面図に示すように、1つのセルに2つの孔が対応するように複数の孔を横方向に並べて形成し、それぞれ2つの孔の間をノズル部の底面側から所定の深さまで削り取ることにより、その一対の孔からのペーストの吐出断面形状を横長にしている。
【0051】
すなわち、開口部hは、図14(c)に示すように2つの孔11,12とそれらを繋ぐ連結部13とからなっており、2つの孔11,12はこのペアが1つのセルに対応するようにして横方向に並んで形成され、連結部13は2つの孔11,12の先端付近を接続した形状になっている。孔11,12は塗布ヘッド先端部のマニホールド側から底面までを貫通することで形成され、連結部13は2つの孔11,12の間の底面側を切削加工することで形成されている。連結部13の深さは、孔11,12から出た液体が底面に至るまでに繋がることができるように決めればよい。このような孔11,12と連結部13はセラミック材料でも加工することができる。
【0052】
(記録ギャップ)
吐出口から基体までの距離は適宜設定できるが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.2〜2mmの範囲に設定される。距離が0.1mmより狭いと安定なメニスカスが形成できず、さらに記録媒体の微妙な凹凸に追従できなくなるためドットが繋がったり抜けが生じたりして好ましくない。一方、10mmより広くなると吐出の直線性が損なわれ好ましくない。
【0053】
6.吐出
本発明の方法における液体の吐出では液体を加圧または減圧することができる。液体の圧力を減圧するか或いは加圧の程度を低めた場合は、液体の吐出量を減らすだけでなく、細かいパターンの形成が容易にできる。また、液体を加圧した場合は、液体の吐出量を容易に増やすだけではなく、太いパターンの形成ができる。
【0054】
また、液体の吐出は、間欠的なものであっても連続的なものであってもよい。吐出のON・OFFは、例えば、液体の加圧と減圧および/または印加電圧の変化によって行うことができる。
【0055】
図15はPDPのリブ内へのペースト塗布の説明図であり、基板G上に形成されたリブの間に3色(RGB)の蛍光体ペーストを塗布する場合を示している。ここでは、図14に示すタイプの開口部hを有する塗布ヘッドを使用し、リブ間のセルに蛍光体ペーストを塗布する。そして、図15に示すように、後に塗布する色の蛍光体ペーストの着弾位置を塗布ヘッドHの位置をずらして調整し、蛍光体ペーストをセルの中央に塗布するのが好ましい。具体的には、図示の如く、2色目の開口部hの位置をセル中心oよりも1色目と反対方向にずらして塗布する。そうすることで、2色目の蛍光体ペーストは、1色目の蛍光体ペーストに引かれる力でセル中央に塗布される。ずれ量xは、セル幅sに対して1/30〜1/2である。すなわち、ずれ量xがセル幅sの1/30より小さいと1色目への混色が発生し、逆にずれ量xがセル幅sの1/2より大きいと形状が偏ってセル中央に塗布できなくなる。3色目が1,2色目のどちらかに引かれる場合はその3色目は開口部の位置をセル中心よりずらして塗布する。この場合、引かれる側とは反対側に所定量だけずらす。
【0056】
7.付着させる液体
(液体の電気伝導率)
本発明において、電界ジェットにより付着させる被吐出液体は、電気伝導率が1×10−10 〜1×10−4Ω−1・cm−1に調整される。この範囲であれば、電圧印加による効果として、液体が基体方向に吸引され、吐出口から吐出される液体が、基体付近で細く伸び安定して細線状に液体を付着させることができる。すなわち、液体の電気伝導率が低い場合には、脈動が大きくなって吐出量が安定せず、大きな液滴が断続的に吐出されるようになり、着弾位置も安定しないといった問題点が生じやすい。一方、液体の電気伝導率が高い場合は、既に吐出された物質や電極などに吸引されやすく、吐出の方向が安定しない、断続的な吐出になりやすく、吐出量が安定しないといった問題点が生じやすい。
【0057】
なお、電気伝導率は、測定時あるいは本発明の実施時における印加電圧の周波数によって異なり得るが、本発明においては吐出時の印加電圧の周波数における電気伝導率を示す。
【0058】
(液体の電気伝導率の求め方)
本発明において液体の電気伝導率の測定は、例えば以下の方法で行うことができる。この求め方においては、本発明の液体には、ペースト状のものなど不均一系の液体も含むため、抵抗成分以外にキャパシタ成分を考慮したモデルを用いて電気伝導率を求める。
【0059】
図16はこの電気伝導率を求めるためのCとRの並列回路モデルである。測定・解析の単純化を図るために、印加電圧として、交流電圧にsin波を用いると印加電圧Vは以下のように表される。
【0060】
V=Vo・sinωt
Vo:電圧の振幅
ω :角周波数
t :時間
これにより、抵抗Rに流れる電流irは、
ir=V/R=(Vo/R)sinωt
キャパシタCに流れる電流icは、
ic=C(dV/dt)=Vo・ω・C・cosωt
と表され、流れる電流Iは、
I=ir+ic=Vo{(1/R)sinωt+ω・C・cosωt}
と表される。
【0061】
ここで、電流Iは、
I/Vo=(1/R)sinωt+ω・C・cosωt
より、
I/Vo=√{(1/R2 )+(ωC)2 }・sin(ωt+α’)
α’=tan−1(ωC/(1/R))=tan−1(ωCR)
tanα=ωC/(1/R)=ωCR
α’:電圧Vと電流Iの位相差
と書き換えられ、図17のように表される。
【0062】
ここで、rは、
r2 =Imax /Vo=I/R2 +(ωC)2
Imax :最大電流値
である。これにより抵抗RとキャパシタCは、
I/R=r・cosα’
R=(1/r)cosα’=(Vo/Imax )cos2παf
ωC=r/sinα’
C=(r/ω)sinα’=(Imax /Vo・2παf)cos2παf
α :電圧Vと電流Iの位相差(測定値[s])
f :印加電圧の周波数
となる。Vo、fは測定条件であるため既知であり、Imax 、αを測定することより抵抗RとキャパシタCが求められる。
【0063】
よって、求められた抵抗Rから電気伝導率σは、
σ=I/(R・a)
I :被測定物の長さ
a :被測定物の面積
により求められる。
【0064】
(液体の電気伝導率の測定方法)
図18に液体の電気伝導率を測定する装置の測定電極を構成するガラス板の平面図を、また図19に電気伝導率を測定する装置の概念図を示す。
【0065】
測定電極20としては、図18に示すようにITO21をパターニングしたガラス板22を2枚用いる。そして、図19に示すように2枚のガラス板22のITO21の部分が互いに向き合うようにし、間にスペーサー23(厚さ3mm)を入れた状態で固定して測定電極20とする。ITO21の10mm角部分21aは試料24に入れられ、5mm角部分21bの一方はアンプ31と接続し、他方は測定抵抗41と接続する。測定電極20を試料24に入れる際には、ITO21の10mm角部分21aがちょうど浸かる程度が望ましい。全体が浸かりきっていないのはもちろん、細長部分21cまであまり深く浸かりすぎているのも測定誤差の原因となる。
【0066】
測定は、ファンクションジェネレータ32で印加電圧の波形(sin波)を作り、振幅および周波数を調整する。ファンクションジェネレータ32で作られたパルス(電圧)は、一つはオシロスコープ33でモニターし、もう一つはアンプ31に送られる。そして、アンプ31に送られたパルスは、ここで100倍(1000倍)に増幅されて出力され、測定電極20を介して試料24である液体に印加される。
【0067】
測定電極間に流れた電流は、測定抵抗41を介してオシロスコープ33で観測される。このとき用いる抵抗は、試料24である液体によって選択される。使用抵抗は、1Ω、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩ、1MΩから選択する。また、大きな電流が流れた際の装置の保護抵抗42は、測定抵抗41の5倍の抵抗値を持ったものを用いる。
【0068】
オシロスコープ33上に得られた印加電圧波形と電流波形をコンピュータ34で解析し、印加電圧、最大電流値、位相差を求め、電気伝導率を求める。
【0069】
この方法は、測定電極の構造が簡単であるため洗浄が容易であり、任意の周波数の電気伝導率が測定できる点、電気伝導率と同時に誘電率の測定ができる点、ならびに測定抵抗を選択することにより広い範囲の電気伝導率が測定できる点で有利である。
【0070】
(電気伝導率調整物質)
本発明においては、電気伝導率調整物質を用いて、被吐出液体の電気伝導率を調整する。電気伝導率調整物質は、被吐出液体の電気伝導率が所望の数値よりも低い場合に、電気伝導率を上昇させるために使用される。
【0071】
各種の電気伝導率調整物質をブチルカルビトールに溶解させた場合の電気伝導率を表1に示した。これより、電気伝導率調整物質の種類によって得られる電気伝導率に差が生じることが分かる。電気伝導率調整物質は、より少量の添加で高い電気伝導率を得られるものが好ましく、表1における硝酸リチウム、塩化リチウム、硝酸アンモニウムなどがこれに該当する。また、可能であれば、少量の水の添加は電気伝導率調整物質の解離を促進するため電気伝導率を大きく上昇させる。
【0072】
【表1】
【0073】
被吐出液体に添加することにより電気伝導率を上昇させる物質としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、希土類金属塩などの各種金属塩をはじめとするイオン化合物が好ましく用いられる。酸やアルカリも用いることができるが、関連する部材を腐食する恐れがある点や、塩類に比べて電気伝導率が上がりにくい問題があり、使用されるケースは稀である。一方、金属塩は化学的に安定で使用しやすく、高い電気伝導率を達成できる利点があるが、これらは吐出、乾燥後に残存し、そのまま焼成すると金属酸化物等の形態で塗膜中に残ってしまう。
【0074】
一般に、塗布乾燥後、焼成することで目的のパターンを得る場合には、焼成後のパターンは必要機能を達成するために不純物が存在しないよう注意する必要がある。特にPDP蛍光体のようにごく微量の不純物が輝度低下をもたらす場合は、前記の金属塩を用いることが難しい。そこで本発明においては、吐出、乾燥後の焼成工程で熱分解し、消失するようなイオン化合物を用いる。そのようなイオン化合物としては、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、コハク酸アンモニウムなどのアンモニウム塩が好ましく用いられ、その中でも、分解温度が低いことと高い電気伝導率を達成できる点から、硝酸アンモニウムが最も好ましい。硝酸アンモニウムは、210℃付近で「NH4 NO3 →N2 O+2H2 O」のように分解するため、PDP蛍光体の比較的低い(500℃前後)焼成温度でも分解して消失する。
【0075】
(被吐出液体)
本発明により付着させる被吐出液体は、電界ジェット法により基体に吐出、付着せしめた後に乾燥、焼成してパターンを形成するものであって、単一相の液体であっても、懸濁液、分散液、エマルジョンなどと呼ばれる複数相からなる液体であってもよい。例えば、被吐出液体は吐出温度で液状(流動性を持つ)である必要があるため、有機又は無機溶剤を主成分とし、前記の電気伝導率調整物質の他に、用途に応じてパターニングしたい成分(目的物質)を溶解、分散させたものを用いることができる。通常は、溶剤と電気伝導率調整物質とバインダーと目的物質を含む組成が被吐出液体が構成されるが、さらに必要に応じて、分散剤、消泡剤、揺変剤などの各種添加物を、焼成後に残存しないものに限り自由に混合することができる。
【0076】
被吐出液体の電気伝導率は、前記の電気伝導率調整物質と有機または無機溶剤の組み合わせで決定される。電気伝導率は電気伝導率調整物質の溶解、解離の状態が大きく影響するため、同一の電気伝導率調整物質を用いた場合でも溶剤の種類により電気伝導率は変化する。
【0077】
本発明に用いられる溶剤の例として、無機液体としては、水、COCl2 、HBr、HNO3 、H3 PO3 、H2 SO4 、SOCl2 、SO2 Cl2 、FSO3 H等が上げられる。
【0078】
有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセン等の炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモタン、トリブロモタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
【0079】
電気伝導率調整物質は溶解しないと効果が発揮できないため、選択した溶剤が単独で電気伝導率調整物質を溶解できない場合や、電気伝導率を制御しにくい場合には、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。また、電気伝導率調整物質が溶解しない場合でも、界面活性剤と共に水溶液をエマルジョン的に添加して電気伝導率を調整することができる。ただし、界面活性剤は焼成後残存しないものを選定する必要がある。
【0080】
先に挙げた溶剤のうち、室温下で固体のものは、その融点以上に加熱してからヘッドに供給することで吐出できる。このような方式は例えばホットメルトタイプのインクジェット記録方式で一般的なものであるが、記録装置にヒーター部を設ける必要がある点と、ウォーミングアップに時間がかかる欠点があるが、速乾性を必要とするような用途に有用である。
【0081】
溶剤の沸点は開口部での目詰まりの程度に影響するため重要である。好ましい沸点の範囲は150〜300℃であり、さらに好ましくは180〜250℃である。150℃より低いと乾燥による目詰まりが発生しやすく、300℃より高いと記録後の乾燥に時間がかかり好ましくない。このような高沸点の溶剤は、被吐出液体中の全溶剤量のうち50重量%以上を占めることが好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。
【0082】
粘度は0.1〜100万cpsの広い範囲で吐出が可能であるが、より安定して吐出を行うためには、100〜10万cpsの範囲であることが好ましい。粘度を調整するためには、適当な樹脂を添加し、さらにその濃度や分子量を変化させればよい。また、増粘剤などの添加剤を併用してもよい。
【0083】
(目的物質)
電界ジェット法の被吐出液体に含まれる目的物質(パターニングしたい物質)は、ノズルで詰まりを発生するような粗大粒子を除けば、特に制限なく液体に溶解又は分散させることができる。本発明では、目的物質は焼成後残存するものでなくてはならない。そのような物質としては、金属単体やセラミックス、耐熱高分子などが挙げられる。具体的には、Ag、Au、Al、Cu、などの金属粉;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、などの酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒化物;石英、ソーダガラスなどのガラス類、カオリナイト、モンモリロナイト、ハロサイト、白雲母、タルクなどの粘度鉱物;ZnS:Ag、ZnS:Cu、ZnS:Mn、ZnS:Cu,Al、Zn2 SiO4 :Mn、ZnO:Zn、Y2 O2 S:Eu、Y2 O2 S:Tb、Y2 O3 S:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6 Cl2 :Euなどの無機蛍光体;Fe、Co、Niなどの金属磁性体;Fe3 O4 、γ−Fe2 O3 などの酸化物磁性体;各種フェライト、Sm、Euなどの希土類磁性体;チタン酸バリウム、PZTなどの強誘電体材料;ITO、SnO2 などの導電性セラミックス;黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタン黄、オーカー、カドミウムレッド、ベンガラ、銀朱、鉛丹、アンチモン朱、群青、細管、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの無機顔料;ポリイミド、メラミン樹脂などの耐熱性樹脂がある。
【0084】
(PDP蛍光体ペースト)
本発明で被吐出液体として用いられるPDP蛍光体ペーストは、目的物質として蛍光体粉末を含む。蛍光体としては、従来よりPDP用として知られているものを特に制限なく用いることができる。例えば、赤色蛍光体として、(Y,Gd)BO3 :Eu、YO3 :Euなど、緑色蛍光体として、ZnSiO4 :Mn、BaAl12O19:Mn、(Ba,Sr,Mg)O・α−Al2 O3 :Mnなど、青色蛍光体として、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl10O17:Euなどが挙げられる。
【0085】
蛍光体は塗布、乾燥後にセル内壁に付着させておく必要があり、このために蛍光体ペーストにはバインダーを含有させる。バインダーは400〜550℃の焼成で分解或いは燃焼する必要があり、そのようなバインダーとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂、PVA、ブチラール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0086】
蛍光体ペーストの電気伝導率は3色の塗布順に応じて調整する必要がある。すなわち、1,2,3色目の電気伝導率を、1色目<2色目<3色目とし、かつ先に塗布するペーストの電気伝導率(a)と続いて塗布するペーストの電気伝導率(b)の比(a/b)が1/2以下であるようにする。この関係を満たすことにより、各色のペーストが正規のセルに正しく充填されるようになるが、この関係を満たさない場合には、先に塗布したペーストに後から塗布するペーストが引かれ、混色してしまう。ただし、ペーストの電気伝導率が5×10−6Ω−1・cm−1以上であれば、(先に塗布する液体の電気伝導率)≦(後に塗布する液体の電気伝導率)の条件を満たせば、混色することはない。各ペーストのより好ましい電気伝導率は、最初に塗布するペーストが1×10−9〜1×10−6Ω−1・cm−1の範囲内、2番目に吐出するペーストが1×10−8〜1×10−5Ω−1・cm−1の範囲内、3番目に吐出するペーストが1×10−7〜1×10−4Ω−1・cm−1の範囲に調整される。
【0087】
【実施例】
(実施例1:塗布適性の評価)
リブまでを形成したPDP用背面板に、RGB3色の蛍光体ペーストの塗布を行った。使用した3色の蛍光体ペーストは次のようである。
【0088】
〔青色蛍光体ペースト1〕
エチルセルロース(ダウケミカルズ社製「STD−100」)15部とブチルカルビトール300部からなる組成物を加熱還流機構を有する容器に入れ、60℃で12時間攪拌をし溶解した後、室温まで冷却した。この樹脂溶液150部に青色蛍光体(化成オプトロニクス社製)95部を加え、攪拌により混合した後、3本ロールミルで3回処理した。続いて、得られた組成物100部に2%LiNO3 ブチルカルビトール溶液(2wt%)を2部添加し、攪拌脱泡機にて5分処理し、青色蛍光体ペースト1を得た。得られたペーストの粘度は150poiseで、電気伝導率は2.20×10−5Ω−1・cm−1であった。
【0089】
〔青色蛍光体ペースト2〕
青色蛍光体ペースト1におけるLiNO3 を、等量のNH4 NO3 とした以外は同様にして青色蛍光体ペースト2を得た。得られたペーストの粘度は150poiseで、電気伝導率は1.80×10−5Ω−1・cm−1であった。
【0090】
〔緑色蛍光体ペースト1〕
青色蛍光体ペーストにおける蛍光体を緑色蛍光体(化成オプトロニクス社製)100部とした以外は同様にして緑色蛍光体ペースト1を得た。得られたペーストの粘度は160poiseで、電気伝導率は1.30×10−6Ω−1・cm−1であった。
【0091】
〔赤色蛍光体ペースト1〕
青色蛍光体ペーストにおける樹脂溶液の組成物を、エチルセルロース(ダウケミカルズ社製「STD−100」)18部とブチルカルビトール105部とターピネオール295部に変更し、蛍光体を赤色蛍光体(化成オプトロニクス社製)95部とした以外は同様にして赤色蛍光体ペースト1を得た。得られたペーストの粘度は140poiseで、電気伝導率は6.75×10−9Ω−1・cm−1であった。
【0092】
このようにして調整した3色の蛍光体ペーストに対し、それぞれ図14に示すタイプの塗布ヘッドを使用してリブ間のセルへの塗布を行った。使用した塗布ヘッドにおける孔の数は100個で、材質はマセライトである。塗布順序はR→G→Bとし、塗布速度は70mm/秒、塗布ヘッドと基板の距離は400μmとした。そして、R(赤色蛍光体ペースト1)→G(緑色蛍光体ペースト1)→B(青色蛍光体ペースト1)の場合と、R(赤色蛍光体ペースト1)→G(緑色蛍光体ペースト1)→B(青色蛍光体ペースト2)の場合の2通りを行った。塗布ヘッドと基板の間の印加電圧は表2の通りである。
【0093】
【表2】
【0094】
塗布ヘッドにおけるマニホールド内の圧力(背圧)は、吐出される蛍光体ペーストがリブ間のセルを100%充填するように調整した。また、充填量の確認は、塗布直後にレーザー顕微鏡で充填形状を観察することで行った。
【0095】
塗布後の基板を80℃のオーブンで60分乾燥した後、ピーク温度500℃で60分間焼成することによりRGBの蛍光体層を形成した。その結果、青色蛍光体ペーストの添加剤の種類による塗布性能の違いは認められず、いずれの場合でも得られた蛍光面は混色や塗布ムラ等の不良は見られなかった。
【0096】
(実施例2:輝度特性評価)
続いて、R,Gについても添加剤の影響を見るため、次のようにして添加剤含有ペーストを作製した。
【0097】
〔青色ベースペースト〕
緑色蛍光体ペースト1における蛍光体を青色蛍光体(化成オプトロニクス社製)100部とした以外は同様にして青色ベースペーストを得た。得られたペーストの粘度は160poiseで、電気伝導率は1.46×10−6Ω−1・cm−1であった。
【0098】
〔緑色ベースペースト〕
緑色蛍光体ペースト1をそのまま用いた。
【0099】
〔赤色ベースペースト〕
緑色蛍光体ペースト1における樹脂溶液の組成物を、エチルセルロース(ダウケミカルズ社製「STD−100」)185部とブチルカルビトール400部に変更し、蛍光体を赤色蛍光体(化成オプトロニクス社製)100部とした以外は同様にして赤色ベースペーストを得た。
【0100】
上記各ベースペースト100部に対して、2%LiNo3 ブチルカルビトール溶液、又は2%NH4 NO3 ブチルカルビトール溶液を2部添加し、攪拌脱泡機にて5分処理し、添加剤含有蛍光体ペーストを得た。得られたペーストの電気伝導率は表3に示す通りである。
【0101】
【表3】
【0102】
各ペーストは単色のみを基板に塗布した。塗布の電圧条件は、ベースペーストについては表2のGの条件、添加剤含有ペーストについては表2のBの条件とした。そして、実施例1と同様の条件で乾燥、焼成した後の基板を2cm角に切り出し、輝度評価用サンプルとした。
【0103】
上記サンプルを、0.01MPaの窒素雰囲気のチャンバー内にセットし、紫外線照射ランプ「USHIO UER20H−146(V)」により波長146nmの紫外線を基板平面に対し45度の方向から照射した。輝度は基板の垂直方向にトプコン分光放射計「SR−1」を設置し、測定した。その測定結果を表4に示す。表中のxとyは、CIE(国際照明委員会)から提案されているCIE色度座標値のx,y値を示す。
【0104】
【表4】
【0105】
表4に示すように、添加剤がLiNO3 の場合、Rでは問題ないが、Gで輝度劣化、Bで色相変化が発生した。これに対し、NH4 NO3 の場合は、蛍光体の種類に関わらず、輝度劣化や色相変化を生じなかった。
【0106】
【発明の効果】
本発明のパターニング方法は、吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体との間に電圧を印加しながら液体を吐出し、この液体を前記基体に付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体が、液体の電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴としているので、電界ジェット法で吐出する液体の吐出量や吐出方向を安定させることができ、かつ吐出された液体を乾燥、焼成して得られる最終的なパターンの材料特性を損なわないようにして所望のパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AC型プラズマディスプレイパネルの一構成例をその前面板と背面板を離間した状態で示す構造図である。
【図2】塗布ヘッドを組み込んだ塗布装置を用いて行われる蛍光体ペーストの3色同時塗布方法の模式図である。
【図3】電界ジェット法による液体付着装置の概念図である。
【図4】塗布ヘッドへの電極の取付け例を示す説明図である。
【図5】塗布ヘッドと基板の間にかける高圧パルスの波形図である。
【図6】蛍光体ペーストをリブ間に充填する様子を示す説明図である。
【図7】3色それぞれの蛍光体ペーストが充填された状態と乾燥工程を経た後の状態を示す説明図である。
【図8】電界ジェット法における電圧印加の効果を模式的に示した説明図である。
【図9】連続吐出の場合の印加電圧の一例を示すグラフである。
【図10】間欠吐出の場合の印加電圧の一例を示すグラフである。
【図11】液体のノズルを有するヘッドの構造例を示す説明図である。
【図12】塗布ヘッドの吐出孔が円形状の場合のリブ間への塗布状況を説明するための説明図である。
【図13】塗布ヘッドの吐出孔が横長状の場合のリブ間への塗布状況を説明するための説明図である。
【図14】横長の吐出孔を備えたノズル部の説明図である。
【図15】PDPの蛍光体ペースト塗布の説明図である。
【図16】電気伝導率を求めるためのCとRの並列回路モデルである。
【図17】電流を表す説明図である。
【図18】電気伝導率を測定する装置の測定電極を構成するガラス板の平面図である。
【図19】電気伝導率を測定する装置の概念図である。
【符号の説明】
1 前面板
2 背面板
3 リブ
4 維持電極
5 バス電極
6 誘電体層
7 保護層(MgO層)
8 アドレス電極
9 誘電体層
10 蛍光体層
11,12 孔
13 連結部
20 測定電極
21 ITO
22 ガラス板
23 スペーサー
24 試料
31 アンプ
32 ファンクションジェネレータ
33 オシロスコープ
34 コンピュータ
41 測定抵抗
42 保護抵抗
G 基体
H ヘッド
h 開口部
P 液体
Claims (9)
- 吐出口の出口近傍に電極を配置して、この電極と前記吐出口に対向して設けられた基体との間に電圧を印加しながら液体を吐出し、この液体を前記基体に付着させた後、乾燥、焼成する工程を含むパターニング方法であって、前記液体が、液体の電気伝導率を調整すると共に、焼成により除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴とするパターニング方法。
- 液体の電気伝導率が電気伝導率調整物質により1×10−10 〜1×10−4Ω−1・cm−1に調整される請求項1に記載のパターニング方法。
- 電気伝導率調整物質がアンモニウム化合物である請求項1に記載のパターニング方法。
- 液体が少なくとも蛍光体と溶剤とからなる蛍光体ペーストである請求項1に記載のパターニング方法。
- 基体がプラズマディスプレイの背面板である請求項4に記載のパターニング方法。
- 請求項1に記載のパターニング方法に用いる液体であって、液体の電気伝導率を調整すると共に、焼成により分解除去可能な電気伝導率調整物質を含むことを特徴とする液体。
- 電気伝導率調整物質がアンモニウム化合物である請求項6に記載の液体。
- 電気伝導率調整物質が硝酸アンモニウムである請求項6に記載の液体。
- 電気伝導率調整物質の他に、少なくとも蛍光体と、前記電気伝導率調整物質が可溶である溶剤を含む請求項6に記載の液体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003193271A JP2005028218A (ja) | 2003-07-08 | 2003-07-08 | パターニング方法及びそれに使用する液体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003193271A JP2005028218A (ja) | 2003-07-08 | 2003-07-08 | パターニング方法及びそれに使用する液体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005028218A true JP2005028218A (ja) | 2005-02-03 |
Family
ID=34204782
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003193271A Pending JP2005028218A (ja) | 2003-07-08 | 2003-07-08 | パターニング方法及びそれに使用する液体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005028218A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008010301A1 (fr) * | 2006-07-19 | 2008-01-24 | Hitachi Plasma Display Limited | Panneau d'affichage à plasma |
JP2009277405A (ja) * | 2008-05-13 | 2009-11-26 | Panasonic Corp | プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法 |
JP2015192962A (ja) * | 2014-03-31 | 2015-11-05 | ナガセテクノエンジニアリング株式会社 | 液塗布方法、及び、液塗布装置 |
JP2019083278A (ja) * | 2017-10-31 | 2019-05-30 | Jnc株式会社 | 有機半導体溶液の塗布方法および有機半導体層の製造方法 |
-
2003
- 2003-07-08 JP JP2003193271A patent/JP2005028218A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008010301A1 (fr) * | 2006-07-19 | 2008-01-24 | Hitachi Plasma Display Limited | Panneau d'affichage à plasma |
JP2009277405A (ja) * | 2008-05-13 | 2009-11-26 | Panasonic Corp | プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法 |
JP2015192962A (ja) * | 2014-03-31 | 2015-11-05 | ナガセテクノエンジニアリング株式会社 | 液塗布方法、及び、液塗布装置 |
JP2019083278A (ja) * | 2017-10-31 | 2019-05-30 | Jnc株式会社 | 有機半導体溶液の塗布方法および有機半導体層の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4834981B2 (ja) | パターン形成体の製造方法 | |
US7665829B2 (en) | Liquid solution ejecting apparatus | |
KR100966673B1 (ko) | 정전 흡인형 액체 토출 헤드의 제조 방법, 노즐 플레이트의제조 방법, 정전 흡인형 액체 토출 헤드의 구동 방법,정전 흡인형 액체 토출 장치 및 액체 토출 장치 | |
JP2001301154A (ja) | 電圧印加により表面張力が低下する液体の電界ジェットによる付着方法 | |
US6280799B1 (en) | Viscous substance discharging method using a viscous substance dispenser and pattern forming method using a viscous substance dispenser | |
JP3956224B2 (ja) | 液体吐出装置 | |
US20070097162A1 (en) | Liquid ejection apparatus, liquid ejection method, and method for forming wiring pattern of circuit board | |
JP2001088306A (ja) | 電界ジェットによる特定の電気伝導率を有する液体の付着方法 | |
JP4218949B2 (ja) | 静電吸引型液体吐出ヘッドの製造方法、ノズルプレートの製造方法、静電吸引型液体吐出ヘッドの駆動方法及び静電吸引型液体吐出装置 | |
JP2000246887A (ja) | 高粘度物質用ディスペンサーの吐出方法及びそれを用いたパターン形成方法 | |
KR100939584B1 (ko) | 액체 토출 장치 | |
JP2005028218A (ja) | パターニング方法及びそれに使用する液体 | |
US7703870B2 (en) | Liquid ejection apparatus | |
JP2006315232A (ja) | 液体吐出装置 | |
JP4218948B2 (ja) | 液体吐出装置 | |
JP2002126615A (ja) | 流動性物質吐出方法及びそれを用いた蛍光体形成方法 | |
Lee et al. | Fabrication of high aspect ratio insulating nozzle using glass reflow process and its electrohydrodynamic printing characteristics | |
JP3956223B2 (ja) | 液体吐出装置 | |
JP2005067046A (ja) | 液体吐出方法及び液体吐出装置 | |
JP4923293B2 (ja) | 微細ラインの形成方法 | |
JP4335612B2 (ja) | 液体吐出方法及び配線パターン形成方法 | |
JP2006035585A (ja) | 液体吐出装置 | |
JP2011126282A (ja) | 液体吐出装置及び液体吐出方法 | |
JP2007216461A (ja) | 液体吐出装置及び液体吐出方法 | |
JP2005059301A (ja) | 液体吐出方法及び着弾物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20060602 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20081210 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20081215 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090417 |