JP2005027599A - 植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法 - Google Patents

植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005027599A
JP2005027599A JP2003272607A JP2003272607A JP2005027599A JP 2005027599 A JP2005027599 A JP 2005027599A JP 2003272607 A JP2003272607 A JP 2003272607A JP 2003272607 A JP2003272607 A JP 2003272607A JP 2005027599 A JP2005027599 A JP 2005027599A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gpt
nucleotide sequence
sequence
gene
acetylglucosamine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003272607A
Other languages
English (en)
Inventor
Nozomi Koizumi
望 小泉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nara Institute of Science and Technology NUC
Original Assignee
Nara Institute of Science and Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nara Institute of Science and Technology NUC filed Critical Nara Institute of Science and Technology NUC
Priority to JP2003272607A priority Critical patent/JP2005027599A/ja
Publication of JP2005027599A publication Critical patent/JP2005027599A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】 安全性に関する懸念のない選択マーカーおよび/または迅速に形質転換体を選択し得る選択マーカーならびにこの選択マーカーを用いた形質転換細胞の作出方法を提供すること。
【解決手段】 UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列を含む、選択マーカー。UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、核酸分子。
【選択図】 なし

Description

本発明は、遺伝子工学分野における選択マーカーおよびその使用に関する。より詳細には、本発明は、植物由来の選択マーカーおよびその使用に関する。
現在、遺伝子組換え技術により、人類に有用な形質転換細胞および形質転換個体の創出が盛んに行われている。遺伝子組換え技術は、植物、動物および微生物を含む多種多様な生物に適用されている。中でも、食用作物の形質転換は、今後の食料確保の見地から重要な位置をしめることが明白である。地球上の人口増加、中国経済の飛躍的発展等に伴い、近い将来の世界規模での食糧不足が我が国に波及すると予想される。現在、我が国は食糧の多くを輸入に頼っているが、食糧輸出国である米国等では遺伝子組換え作物の栽培割合が増加の一途を辿っており、我が国もその加工品をすでに輸入している。
細胞の遺伝子組換えを行って形質転換細胞を得る過程では、目的の遺伝子を含む形質転換細胞を特異的に選択する必要がある。そのため、現状では、通常、目的の遺伝子とともに、細菌由来のマーカー遺伝子を用い、細菌由来のマーカー遺伝子が導入されて形質が改変された生物と、形質が改変されていない生物とのマーカー遺伝子の違いによる形質の差を指標として選抜が行われ、マーカー遺伝子が導入された生物が選択される。例えば、マーカー遺伝子として抗生物質抵抗性遺伝子を用いた場合、抗生物質存在下で増殖する細胞が、この抗生物質抵抗性遺伝子が導入された細胞として選択される。マーカー遺伝子としては、薬剤抵抗性遺伝子が用いられることが多い。よく使われる遺伝子としては、カナマイシン抵抗性遺伝子、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子などの抗生物質抵抗性遺伝子、およびビアラホスなどの除草剤に対する抵抗性遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は細菌由来の遺伝子である。それゆえ、従来の形質転換方法で選択することにより得られる細胞は、細菌由来のマーカー遺伝子を含む。
しかし、このような、従来得られる形質転換細胞およびその細胞から得られる形質転換個体が、細菌由来の遺伝子を含むことに対して、一般消費者は、安全性の面で不安を抱いており、社会的に形質転換細胞および形質転換生物が受入れられにくい状況にある。安全性に対するこのような不安は、特に、形質転換された食用作物に対して強い。
遺伝子組換え植物を食したヒトおよび腸内細菌に細菌由来遺伝子が移動する可能性は非常に低く、科学的には安全性に大きな問題は無いとされている。しかし、絶対に安全であるという確証が無いことと、心理的な抵抗感から遺伝子組換え植物が忌避される大きな要因となっている。
遺伝子組換え植物がネガティブに受け取られる他の要因として、現行の遺伝子組換え植物の多くが、除草剤抵抗性、殺虫性などの形質を付与された生物であり、このような形質が環境に与える潜在的な危険性が挙げられる。また、これらの形質は生産者にとっては有益であるが、消費者にはとってはメリットがないことも、遺伝子組換え植物が受け入れられ難い要因である。
米国をはじめとする遺伝子組換え作物が比較的受け入れられている諸外国では、遺伝子組換え植物における細菌由来の遺伝子の存在による安全性に対する不安はそれほど懸念されていない。そのため、このような諸外国では、細菌遺伝子を選択マーカーとする従来型の遺伝子組換え作物が広く栽培されており、その栽培面積は5000万ヘクタールを越えている。しかし、我が国および欧州諸国では、安全性に対する不安が強く、特に、形質転換された食用作物由来の生産品が受け入れられにくい状況を呈している。
遺伝子組換え生物(いわゆるGMO)は、我が国でネガティブに受け取られているため、遺伝子組換え植物の栽培は、試験的なものに限られている。このように、形質転換生物に対してネガティブな社会的風潮があり、組換え生物(特に、組換え植物)由来の食品が敬遠される一因となっている。
このような不安を解消するために、形質転換細胞から細菌由来遺伝子を除去する方法が開発されているが、実用化されていない。例えば、我が国では、形質転換植物から選択マーカー遺伝子を取り除く技術として、MATベクターが日本製紙(株)により開発されている。この方法は、細菌由来のサイトカイニン合成酵素を選択マーカーに使用するが、細菌由来遺伝子を除くための工夫がなされている。このベクターはタバコおよびポプラでは有効に働く。しかし、サイトカイニンにより多芽体が形成されない植物には利用できないという大きな欠点がある。即ち、適応できる植物種が限られる。実際に、イチゴにおいてはMATベクターによる選抜は可能ではない。
従来型遺伝子組換え作物への抵抗感の強い我が国での食糧作物の栽培および欧州への食糧作物の輸出を考慮し、植物由来遺伝子をマーカーとして用いるための研究開発も行われている。植物由来の遺伝子は安全性が高いと考えられ、かつ消費者の抵抗感がなくなると考えられるからである。これまでに、植物由来の変異型アセト酪酸合成酵素遺伝子を用いた遺伝子組換え植物の選抜法の報告が数例ある。しかし、これまでに報告された植物由来遺伝子をマーカーとして用いる方法では、除草剤抵抗性遺伝子と除草剤との組合せによって遺伝子組換え植物を選択している。除草剤抵抗性遺伝子を含む遺伝子組換え植物に関しては、この遺伝子組換え植物が有する除草剤抵抗性遺伝子が環境に流出および拡散するとの懸念(例えば、除草剤抵抗性遺伝子が雑草に伝播して雑草が除草剤抵抗性になるのではないかとの懸念)がある。細菌由来遺伝子を用いない代替的な遺伝子組換え方法についても検討されているが、有望な代替法は開発されていない。
それゆえ、依然として、形質転換生物に対するネガティブな社会的風潮があり、例えば、遺伝子組換えトマトに対する不買運動、豆腐などの豆製品での「遺伝子組換え大豆を使用していない」旨の表示がないと売れ行きが鈍るといった社会現象が起きている。このようなネガティブな社会的風潮のために、我国の研究機関および企業の多くが、有用なシーズを有しているにもかかわらず、遺伝子組換え植物の開発研究から撤退している。その間に、特に米国等で、遺伝子組換え植物に関する応用研究が進展し、我が国が技術面で遅れを取りつつある。このことは、米国等とのこの分野での競争力の低下を意味し、国益上からも憂慮すべき問題である。
地球上の人口増加、中国経済の飛躍的発展等の世界情勢を考慮すれば、我が国でも遺伝子組換え作物の受け入れ、開発を進める必要が近い将来に生ずることは疑いない。
本発明者らは、シロイヌナズナの糖鎖生合成に関わる酵素UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPTと省略する)の遺伝子を単離し、シロイヌナズナにおいて過剰発現させた場合、シロイヌナズナがツニカマイシン抵抗性になることを報告した(非特許文献1)。しかし、非特許文献1は、GPT遺伝子を選択マーカーとして使用することができるか否かについては言及していない。
また、従来選択マーカーとして用いられているカナマイシンを用いた系では、形質転換されたサンプルも形質転換されていないサンプルも、形質転換作業後、一定期間は増殖、生長(成長)することから、選択に非常に時間がかかるという欠点がある。
Nozomu Koizumiら著、"Plant Physiology"、October 1999,Vol.121,pp.353−361
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、安全性に関する懸念のない選択マーカーおよび/または迅速に選択が可能な選択マーカーならびにこの選択マーカーを用いた形質転換細胞の作出方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、植物由来のタンパク質糖鎖合成酵素の遺伝子が選択マーカーとして使用され得ることを見出し、これに基づいて本発明を完成した。このタンパク質糖鎖合成遺伝子は、植物由来の遺伝子であるので、高度な安全性を有する。この選択マーカーは、ツニカミニルウラシルを用いると、従来では到底達成し得なかった速度で形質転換生物を選択することが可能となった。
本発明者らは、植物由来の遺伝子を選択マーカーとして遺伝子組換え生物を作出する方法の開発に成功した。
本発明の選択マーカーは、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列を含む。
1つの実施形態では、上記GPT必須配列は、上記GPTの全長をコードし得る。
1つの実施形態では、上記GPT必須配列は、
(a)配列番号1の58位〜1350位に示されるヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列と比較して、1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、GPT活性を有するヌクレオチド配列;
(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;ならびに
(d)(a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;
からなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、本発明の選択マーカーは、調節エレメントをさらに含み得る。
1つの実施形態では、上記調節エレメントは、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーからなる群より選択される少なくとも1つのエレメントを含み得る。
本発明の核酸分子は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
1つの実施形態では、上記GPT必須配列は、上記GPTの全長をコードし得る。
1つの実施形態では、上記GPT必須配列は、
(a)配列番号1の58位〜1350位に示されるヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列と比較して、1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、GPT活性を有するヌクレオチド配列;
(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;ならびに
(d)(a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;
からなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、調節エレメントをさらに含み得る。
1つの実施形態では、上記調節エレメントは、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーからなる群より選択される少なくとも1つのエレメントを含み得る。
1つの実施形態では、上記目的のヌクレオチド配列は、タンパク質コード配列またはアンチセンスコード配列であり得る。
本発明のベクターは、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
本発明の細胞は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
本発明の組織は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
本発明の器官は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
本発明の生物体は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
1つの実施形態では、上記生物体は植物であり得る。
本発明の方法は、目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞の作出方法であって、該方法は、以下の工程:
UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードする配列および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子と、目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置する工程;ならびに
該配置された目的の細胞をツニカミニルウラシル存在下で培養して、該配置された目的の細胞のうちの増殖する細胞を形質転換細胞として選択する工程
を包含する。
1つの実施形態では、上記ツニカミニルウラシルは、形質転換されていない前記目的の細胞が生存し得ない濃度で存在し得る。
1つの実施形態では、上記ツニカミニルウラシルは、0.3μg/mL〜2μg/mLであり得る。
1つの実施形態では、上記ツニカミニルウラシルは、ツニカマイシンであり得る。
1つの実施形態では、上記目的のヌクレオチド配列は、タンパク質コード配列またはアンチセンスコード配列であり得る。
本発明の生物体またはその一部は、上記の方法によって作出された細胞を含む。
本発明のキットは、目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞を作出するためのキットであって:
UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードする配列および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子;
ツニカミニルウラシル;および
指示書、
を備え、該指示書は、
目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置すること;および
該配置された目的の細胞をツニカミニルウラシル存在下で培養して、該配置された目的の細胞のうちの増殖する細胞を形質転換細胞として選択すること、
を指示するを記載する。
本発明の使用は、目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞を迅速に作出するための、GPTコード配列またはその改変体および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用である。
本発明の別の使用は、GPTコード配列またはその改変体の、選択マーカーとしての使用である。
本発明により、植物由来の選択マーカーとしてGPT遺伝子またはその改変体が提供される。GPT遺伝子またはその改変体は、既存の選択マーカー遺伝子とは異なり植物由来の遺伝子であることから、遺伝子組換え植物へ応用する際にパブリックアクセプタンスが得られやすいという利点を有する。
GPT遺伝子またはその改変体とツニカマイシンとを組み合わせて選抜を行うことにより、従来のカナマイシンによる選抜と比べ、野生型と形質転換体との違いが明瞭となり、形質転換体のより早い見極めが可能となる。
本発明の利点の例をまとめると以下のとおりである:
(i)ツニカマイシン選択培地で発芽した植物は全てGPT形質転換体となり、選択効率が非常に高い、そして
(ii)発芽の時点で形質転換体の選抜が可能であり、それゆえ、予想外に早期に選抜できる、という極めて有利な効果を有する。さらに、
(iii)植物由来遺伝子であるGPTを用いるゆえに、この遺伝子の導入された組換え生物に対する一般消費者の心理的抵抗が解消される。そして
(iv)シロイヌナズナ以外の動植物にも応用可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(1.選択マーカー)
本発明の選択マーカーは、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列を含む。
本明細書中では、「選択マーカー」とは、選択遺伝子と同義であり、その選択マーカーがコードする産物の発現によって、選択マーカーが存在する細胞と存在しない細胞とを識別することができる、ヌクレオチドをいう。
ウリジンジホスホ−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)とは、UDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)からドリコリルホスフェート(dolichyl−P)へとN−アセチルグルコサミン−1−P(GlcNAc1P)が転移されてN−アセチルグルコサミン−ジホスフェート−ドリコリル(GlcNAc−PP−dolichyl)が形成される反応またはその逆反応を触媒する酵素である。GPTは、糖タンパク質のN−グリコシル化に必須の酵素である。GPTは、糖鎖修飾の初発酵素である。
本明細書中では、「GPT活性」とは、UDP−GlcNAcからdolichyl−PへとGlcNAc1Pが転移されてGlcNAc−PP−dolichylが形成される反応またはその逆反応を触媒する活性をいう。GPT活性は、当該分野で公知の方法によって測定され得る。GPT活性は例えば、非特許文献1に記載の方法に従って測定され得る。
GPTは、全ての真核生物に含まれる。GPTは、好ましくは、導入すべき対象生物と同じ綱に属する生物に由来することが好ましく、同じ科に属する生物に由来することがより好ましく、同じ種に属する生物に由来することが最も好ましい。1つの実施形態では、本発明では、植物由来の任意のGPTが使用され得る。植物由来の遺伝子には安全性に懸念がないからである。好ましくは、GPTは、単子葉植物および双子葉植物からなる群より選択される植物に由来する。GPTを含む植物の例としては、シロイヌナズナ、タバコ、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガム、ピーマン、ナス、メロン、トマト、イチゴ、サツマイモ、アブラナ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ダイズ、アルファルファ、アマ、ニンジン、キウリ、柑橘類、ハクサイ、レタス、モモ、ジャガイモ、ムラサキ、オウレン、ポプラおよびリンゴが挙げられるがこれらに限定されない。GPTを植物に導入する場合、GPTは、細胞内での生理機能に対する悪影響を回避するために、同じ綱に属する植物に由来することが好ましく、同じ目に属する植物に由来することがより好ましく、同じ科に属する植物に由来することがさらに好ましく、同じ種に属する植物に由来することが最も好ましい。すなわち、シロイヌナズナに導入するGPTは、シロイヌナズナ由来であることが最も好ましい。シロイヌナズナ由来のGPTをコードするヌクレオチド配列およびGPTのアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1および2に示す。種々のGPTのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は当該分野で公知であり、当業者によって容易に入手され得る。GPTとしてはまた、迅速な選択を目的とする場合、その遺伝子産物がツニカミニルウラシル(例えば、ツニカマイシン)と結合することができるGPTであれば、植物由来以外の生物(例えば、動物、細菌など)由来のGPTもまた使用され得る。GPTがツニカミニルウラシルと結合するかどうかは、その遺伝子産物とツニカミニルウラシルとを混合して結合体が形成しているかどうかを物理的、化学的または生化学的に調べればよい。あるいは、GPTがツニカミニルウラシルと結合するかどうかは、そのGPTをコードする遺伝子を宿主細胞に形質転換して、その形質転換体がツニカミニルウラシルと結合するかどうかを物理的、化学的または生化学的に調べればよい。
「GPT必須配列」とは、GPTの基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、かつ、このポリペプチドがGPT活性を示す、ヌクレオチド配列をいう。GPT必須配列は、GPTの全長コード配列であってもよく、GPTの一部が欠失または置換されたポリペプチドのコード配列であってもよく、またはGPTの一部にアミノ酸配列が付加されたポリペプチドのコード配列であってもよい。
「GPTの基質結合領域」とは、GPTのアミノ酸配列のうちの、基質と結合する領域である。例えば、シロイヌナズナ由来のGPTは、小胞体膜に存在する、10回膜貫通タンパク質であり、GPT活性を発揮する領域は、細胞質側に露出していると考えられている。この露出した領域は、6個あると予想され、これらの露出領域全体またはその一部で基質結合領域を形成していると考えられている。当業者は、GPT活性を実質的に低下させない限り、三次元的構造を考えながら、基質結合領域の改変を適切に行い得る。
本明細書においてGPTの「基質」とは、UDP−GlcNAcおよびドリコール−1−リン酸をいう。従って、GPTの基質結合領域であるかどうかは、候補となる領域がUDP−GlcNAcまたはドリコール−1−リン酸と結合し得るかどうかを測定することによって判定することができる。そのような判定方法では、候補領域とUDP−GlcNAcまたはドリコール−1−リン酸とを混合して結合体が形成しているかどうかを物理的、化学的または生化学的に調べればよい。
「GPTの膜結合領域」とは、GPTのアミノ酸配列のうちの、膜に結合する領域である。一般に、膜結合領域は、膜の中に埋め込まれている。例えば、シロイヌナズナ由来のGPTは、10個の膜結合領域を有する。膜結合領域は、膜内に埋め込まれるという特性を保持し、かつ、GPT活性を実質的に低下させない限り、任意に改変され得る。
「GPT活性を実質的に低下させない」とは、改変前のGPT活性の少なくとも約50%以上、より好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上、なおさらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の活性を保持することをいう。
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
一般に、特定のポリペプチド配列のうちのあるアミノ酸は、そのポリペプチドが有する生物学的活性の明らかな低下または消失なしに、他のアミノ酸に置換され得る。あるポリペプチドの生物学的活性を規定するのは、ポリペプチドの相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がそのポリペプチドのアミノ酸配列において、またはそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するポリペプチド質が生じ得る。従って、生物学的活性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたポリペプチドまたはこのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するヌクレオチドにおいて行われ得る。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたは核酸分子)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。本明細書では、GPTについて言及するとき、生物学的活性は、GPT活性を包含する。
本明細書中では一般に、ポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換、付加、欠失または修飾を行うことができる。アミノ酸の置換とは、1つのアミノ酸を別の1つのアミノ酸に置き換えることをいう。アミノ酸の付加とは、もとのアミノ酸配列中のどこかの位置に、1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を挿入することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのアミノ酸配列から1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を除去することをいう。アミノ酸修飾の例としては、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、ペプチド合成方法によって合成されてもよく、このような場合、置換または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログであってもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
全長ヌクレオチドから一部のヌクレオチドが欠失したヌクレオチドおよび全長ポリペプチドから一部のアミノ酸が欠失したポリペプチドは、フラグメントとも呼ばれる。本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここに具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
ポリペプチドは、そのポリペプチド特有の生物学的活性を有する、ポリペプチドアナログであってもよい。特にそのポリペプチドが酵素である場合、ポリペプチドは、酵素アナログであってもよい。本明細書において使用される用語「酵素アナログ」とは、天然の酵素とは異なる化合物であるが、天然の酵素と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、酵素アナログには、もとの天然の酵素に対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。酵素アナログは、その機能(例えば、α−ホスホリラーゼ活性または耐熱性)が、もとの天然の酵素の機能と実質的に同様またはそれよりも良好であるように、このような付加または置換がされている。そのような酵素アナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、酵素アナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。本明細書において「酵素」(すなわち、GPTを含む)は、特に言及しない限り、この酵素アナログを包含する。
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のアミノ酸であっても、非天然アミノ酸であっても、誘導体アミノ酸であっても、アミノ酸アナログであってもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
用語「誘導体アミノ酸」とは、アミノ酸を誘導体化することによって得られるアミノ酸をいう。
用語「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
目的の改変に加えて、天然のポリペプチドのアミノ酸配列に対して1もしくは数個またはそれを超える複数のアミノ酸の置換、付加または欠失による改変を含む改変ポリペプチドは、本発明の範囲内にある。そのような1もしくは数個またはそれを超えるアミノ酸の置換、付加または欠失を含む改変ポリペプチドは、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
目的のポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。部位特異的変異誘発の手法は、当該分野では周知である。例えば、Nucl.Acid Research,Vol.10,pp.6487−6500(1982)を参照のこと。
本明細書において、生物学的活性を有する特定のポリペプチドに関して用いられるとき「1もしくは数個またはそれを超える複数のアミノ酸の置換、付加または欠失」または「少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加または欠失」とは、この特定のポリペプチドが有する生物学的活性のうちの少なくとも1つの活性が喪失しない、好ましくはその活性が基準となるもの(例えば、天然のその特定のポリペプチド)と同等以上となるような程度の数の置換、付加または欠失をいう。当業者は、所望の性質を有する改変ポリペプチドを容易に選択することができる。
このようにして作製された特定の改変ポリペプチドは、改変前のポリペプチドのアミノ酸配列に対して、好ましくは約40%、より好ましくは約45%、より好ましくは約50%、より好ましくは約55%、より好ましくは約60%、より好ましくは約65%、より好ましくは約70%、より好ましくは約75%、より好ましくは約80%、より好ましくは約85%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%、そして最も好ましくは約99%の同一性を有する。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。ポリペプチドの生物学的機能に関するアミノ酸の疎水性指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したポリペプチドの二次構造に寄与し、次いでそのポリペプチドと他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。各アミノ酸に割り当てられた疎水性指数は以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))。
あるポリペプチド中のあるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然としてこのポリペプチドと同様の生物学的機能を有するポリペプチド(例えば、酵素活性が等価なポリペプチド)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
本明細書においては、タンパク質の設計および性質の検討の際には、親水性指数もまた考慮され得る。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。あるポリペプチド中のあるアミノ酸が、このアミノ酸と同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的活性を与え得る別のアミノ酸に置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
GPT必須配列は、例えば、(a)配列番号1の58位〜1350位に示されるヌクレオチド配列;(b)(a)のヌクレオチド配列と比較して、1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、GPT活性を有するヌクレオチド配列;(c)(a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;ならびに(d)(a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列からなる群より選択され得る。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが意図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1もしくは数個、またはより多数の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
本明細書において、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列の「置換、欠失または付加」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、取り除かれることまたは付け加わることをいう。このような置換、欠失または付加の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、欠失または付加は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、欠失または付加を有する改変体において目的とする機能(例えば、GPTの触媒機能、目的のヌクレオチド配列の場合、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体、グリコシル化改変体、脂質化改変体、複合分子による改変体などが挙げられる。好ましくは、改変体は、改変のもととなる物質(例えば、酵素)の特性(例えば、生物学的特性)を少なくとも1つ、より好ましくは複数保持している。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、当該分野で周知である。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが、ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。また、システインプロテアーゼインヒビターである、ヒトのシスタチンAと、イネのオリザシスタチンとを比較すると、標的となるプロテアーゼとの相互作用に重要と考えられる3箇所の短いアミノ酸モチーフが保存されているだけで、他の部分のアミノ酸の共通性は非常に低い。しかし、両者はともにシスタチン遺伝子スーパーファミリーに属し、共通祖先遺伝子を持つとされていることから、単に全体的なアミノ酸の相同性に限らず、局所的に高い相同性を持つアミノ酸配列が共通して存在する場合も、オルソログたり得る。このように、オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のGPTのオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
「保存的(に改変された)改変体」は、ポリペプチド配列およびヌクレオチド配列の両方に適用される。特定のヌクレオチド配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列をいう。アンチセンスコード配列のように、ヌクレオチド配列がポリペプチド配列をコードしない場合には、保存的に改変された改変体とは、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一なヌクレオチド配列が任意の所定のポリペプチドをコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCT(GCU)はすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このようなヌクレオチド配列の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべてのヌクレオチド配列はまた、そのヌクレオチド配列の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、ヌクレオチド配列中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるATG(AUG)、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
GPTをコードするヌクレオチド配列は、導入される生物におけるコドンの使用頻度にあわせて変更され得る。コドン使用頻度は、その生物において高度に発現される遺伝子での使用頻度を反映する。例えば、大腸菌において発現させることを意図する場合、公開されたコドン使用頻度表(例えば、Sharpら,Nucleic Acids Research 16 第17号,8207頁(1988))に従って大腸菌での発現のために最適にすることができる。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。
本明細書においてヌクレオチド配列(またはポリペプチド配列)の「同一性」とは、2以上のヌクレオチド配列(またはポリペプチド配列)の間で同一のヌクレオチド(ポリペプチド配列を比較する場合はアミノ酸)の出現する程度をいう。同一性は一般に、2以上のヌクレオチド配列(またはポリペプチド酸配列)を比較して、付加または欠失を含み得る最適な様式で整列されたこれら2以上の配列を比較することによって決定される。同一性パーセントは、ヌクレオチド(ポリペプチド配列を比較する場合はアミノ酸)がこの2以上の配列間で同一である位置の数を決定し、比較した位置の総数で同一の位置の数を除算し、そしてこれら2つの配列間の同一性パーセントを得るために、得られた結果に100を掛けることによって算出される。2以上の遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は同一性を有する。
本明細書において、ヌクレオチド配列(またはポリペプチド配列)の「類似性」とは、上記同一性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上のヌクレオチド配列(またはポリペプチド配列)の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では塩基配列の類似性および同一性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
2以上のヌクレオチド配列の同一性または類似性の程度に関しては、配列の直接比較以外にも、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションを調べることによって確認され得る。
本明細書中で使用する用語「ストリンジェントな条件」とは、特異的な配列にはハイブリダイズするが、非特異的な配列にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件の設定は、当業者に周知であり、例えば、Moleculer Cloning(Sambrookら、前出)に記載される。具体的には、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液(0.2% BSA、0.2% Ficoll 400および0.2%ポリビニルピロリドン)、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄するという条件を用いることにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。
本発明の選択マーカーは、調節エレメントをさらに含み得る。本明細書中では、「調節エレメント」とは、コード配列の発現に直接的または間接的に影響を与えるエレメントをいう。調節エレメントの例としては、例えば、プロモーター、イントロン、ターミネーター、エンハンサー、サイレンサー、転写終止配列、翻訳終止配列、転写起点、イントロン配列などが挙げられるがそれらに限定されない。調節エレメントは好ましくは、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーからなる群より選択される少なくとも1つのエレメントを含み得る。
本明細書中では、「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、また転写頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモーター領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。本発明で用いられ得るプロモーターの例としては、CaMV35Sプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、ユビキチンプロモーターなど、およびそれらの改変プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。本発明では、目的の生物においてプロモーターの活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列でも使用することができる。プロモーターは、部位特異的プロモーターであっても、時期特異的プロモーターであっても、構成的プロモーターであっても、ストレス(または刺激)応答性プロモーターであっても、ストレス(または刺激)誘導性プロモーターであっても、ストレス(または刺激)減少性プロモーターであってもよい。構成的プロモーターの例としては、CaMV35Sプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーターおよびユビキチンプロモーターが挙げられる。特異的プロモーターの例としては、組織特異的プロモーターおよび器官特異的プロモーターが挙げられる。本発明においては、プロモーターは、形質転換体の選抜時に(例えば、カルスの状態で選択する場合はカルスにおいて)強力なプロモーターであることが好ましい。本発明で用いられるプロモーターは、GPTが導入される生物内に内在するGPT(本明細書中では内在性GPTともいう)よりも多量のGPTを発現させることが可能なプロモーターである。本発明で用いられるプロモーターは、内在性のGPTの発現量の約1.5倍以上多くのGPTを発現させ得ることが好ましく、約2倍以上多くのGPTを発現させ得ることがより好ましく、約3倍以上多くのGPTを発現させ得ることがより好ましく、約4倍以上多くのGPTを発現させ得ることが特に好ましく、そして約5倍以上多くのGPTを発現させ得ることが最も好ましい。このような強力なプロモーターの例としては、植物細胞に関しては、CaMV35Sプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、ユビキチンプロモーターおよびナタネ(Brassica napus)由来のフェニルアラニンtRNAシンテターゼプロモーター(Plant Molecular Biology 52:52−68、2003に記載)が挙げられ、動物細胞に関しては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター(特にSRαプロモーター)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、βアクチンプロモーター、EF1αプロモーター、NSEプロモーター、CAGプロモーターが挙げられる。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
本明細書において、遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異性」とは、生物(例えば、植物)の部位(例えば、植物の場合、プロテインボディー、根、茎、幹、葉、花、種子、胚乳、胚芽、胚、果実など;動物の場合、肝臓、心臓、四肢、脳、神経など)におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。「時期特異性」とは、生物(例えば、植物、動物など)の発達段階(例えば、植物であれば生長段階(例えば、プロテインボディの形成の特定の時期、発芽後の芽生えの日数);動物であれば成長段階(例えば、胚、乳児(仔)、成体など、あるいは出生後の日数など))に応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。そのような特異性は、適切なプロモーターを選択することによって、所望の生物に導入することができる。
本明細書において、本発明のプロモーターの発現が「構成的」であるとは、生物のすべての組織において、その生物の生長の幼若期または成熟期のいずれにあってもほぼ一定の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノーザンブロット分析したとき、例えば、任意の時点で(例えば、2点以上(例えば、植物の場合、発芽5日目および15日目))の同一または対応する部位のいずれにおいても発現がみられるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモーターは、通常の生育環境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。
本発明のプロモーターの発現が「ストレス(または刺激)応答性」であるとは、少なくとも1つのストレス(または刺激)が生物体に与えられたとき、その発現量が変化する性質をいう。特に、発現量が増加する性質を「ストレス(または刺激)誘導性」といい、発現量が減少する性質を「ストレス(または刺激)減少性」という。「ストレス(または刺激)減少性」の発現は、正常時において、発現が見られることを前提としているので、「構成的」な発現と重複する概念である。これらの性質は、生物の任意の部分からRNAを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析することまたは発現されたポリペプチドをウェスタンブロットにより定量することにより決定することができる。ストレス(または刺激)誘導性のプロモーターを本発明の選択マーカーおよび目的のヌクレオチド配列とともに組み込んだベクターで形質転換された生物(例えば、植物または植物の部分(特定の細胞、組織など)、動物または動物の部分(特定の細胞、組織など)、細菌など)は、そのプロモーターの誘導活性をもつ刺激因子を用いることにより、ある条件下でのみ選択マーカーおよび目的のヌクレオチド配列の発現を行うことができる。
本明細書中では、「エキソン」とは、RNAに転写され、かつポリペプチドへと翻訳されるヌクレオチド配列をいう。
本明細書中では、「ターミネーター」とは、タンパク質コード領域の下流に位置し、ヌクレオチド配列がmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターは、任意の生物由来のターミネーターであり得るが、好ましくは、選択マーカーが導入されるべき生物由来のターミネーターである。本発明で用いられ得るターミネーターの例としては、CaMV35Sターミネーター、ノパリンシンターゼのターミネーター(Tnos)、タバコPR1a遺伝子のターミネーター、Tmlターミネーター、10KDaプロラミンターミネーターなど、およびそれらの改変ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、目的の生物においてターミネーターの活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列でも使用することができる。
本明細書において使用される「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。エンハンサーは、任意の生物由来のエンハンサーであり得るが、好ましくは、選択マーカーが導入されるべき生物由来のエンハンサーである。本発明では、目的の生物においてエンハンサーの活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列でも使用することができる。植物において使用する場合、エンハンサーとしては、例えば、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好ましい。
本明細書において「サイレンサー」とは、遺伝子発現を抑制し静止する機能を有する配列をいう。本発明では、サイレンサーとしてはその機能を有する限り、どのようなものを用いてもよく、サイレンサーを用いなくてもよい。
調節配列は、好ましくは、GPT必須配列と作動可能に連結される。本明細書中では「作動可能に連結される(た)」とは、所望のヌクレオチド配列が、発現(すなわち、作動)をもたらす転写調節配列(例えば、プロモーター、ターミネーター、サイレンサー、エンハンサーなど)または翻訳調節配列(例えば、イントロン、スプライスドナー、スプライスアクセプターなど)の制御下に配置されることをいう。例えば、プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
ヌクレオチド配列を、上記調節配列に作動可能に連結するために、目的のヌクレオチド配列を加工すべき場合がある。例えば、プロモーターとコード領域との間が長すぎて転写効率の低下が予想される場合、またはリボゾーム結合部位と翻訳開始コドンとの間隔が適切でない場合などである。加工の手段としては、制限酵素による消化、Bal31、ExoIIIなどのエキソヌクレアーゼによる消化、あるいはM13などの一本鎖DNAまたはPCRを使用した部位特異的変異誘発の導入が挙げられる。
本発明の選択マーカーは、単離されたヌクレオチドであることが好ましい。本明細書中では「単離された」ヌクレオチドとは、そのヌクレオチドが、天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、ヌクレオチド以外の因子および目的とするヌクレオチド以外のヌクレオチド)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」ヌクレオチドには、標準的な精製方法によって精製されたヌクレオチドが含まれる。したがって、単離されたヌクレオチドは、化学的に合成したヌクレオチドを包含する。また、標準的な精製方法によって精製した後に、他の物質と混合したヌクレオチドおよび緩衝液中に溶解したヌクレオチドなども、本明細書でいう単離されたヌクレオチドに該当する。
本明細書において「精製された」ヌクレオチドとは、そのヌクレオチドに天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製されたヌクレオチドにおけるそのヌクレオチドの純度は、そのヌクレオチドが通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の選択マーカーは、GPTコード必須配列が、GPTの基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードし、このポリペプチドが、天然のGPTと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにそのヌクレオチド配列の一部が欠失していても、一部が他のヌクレオチドにより置換されていてもよく、または他のヌクレオチド配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、天然のGPTポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、天然のGPTポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列でもよい。このようなヌクレオチド配列は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような選択マーカーは、周知のPCR法を利用して調製することができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変異誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
(2.核酸分子)
本発明の核酸分子は、GPTの基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本明細書において、用語「核酸分子」はまた、本明細書において、核酸、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。核酸分子の例としては、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどが挙げられる。本明細書では、核酸および核酸分子は、その核酸および核酸分子がタンパク質をコードするときなどは、用語「遺伝子」の概念に含まれる。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体」および「スプライス改変体」を包含する。スプライス変異体とスプライス改変体とは同義である。同様に、核酸によりコードされる特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
目的のヌクレオチド配列は、導入を目的とするヌクレオチド配列であれば、任意のヌクレオチド配列であり得る。目的のヌクレオチド配列は、例えば、タンパク質コード配列、アンチセンスコード配列、解析を目的とするヌクレオチド配列などであり得る。目的のヌクレオチド配列は好ましくは、タンパク質コード配列またはアンチセンスコード配列であり得る。目的のヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列であってもよく、天然に存在するヌクレオチド配列を改変したものであってもよく、人工的に合成した遺伝子であってもよく、それらの複合体(例えば、融合体)であってもよい。
人工的に合成したヌクレオチド配列を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書中の目的のヌクレオチド配列は、目的の生物において発現し得るものであれば、どのようなものでもよい。例えば、特定の植物において発現させることを目的とするのであれば、その特定の植物において発現し得るのであればよい。特定の動物において発現させることを目的とするのであれば、その特定の動物において発現し得るのであればよい。特定の細菌において発現させることを目的とするのであれば、その特定の細菌において発現し得るのであればよい。
1つの実施形態において、目的のヌクレオチド配列は、タンパク質コード配列である。タンパク質コード配列は、大量に発現されることが意図される有用なタンパク質をコードするものであれば、どのようなものでもよく、そのようなものもまた、本発明の範囲内に含まれる。タンパク質コード配列の例としては、例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:医薬活性のあるペプチド(例えば、サイトカイン類(インターフェロン類、インターロイキン類、ケモカイン類、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、multi−CSF(IL−3)、エリスロポエチン(EPO)、白血病抑制因子(LIF)、c−kitリガンド(SCF)のような造血因子、腫瘍壊死因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)など);ホルモン類(インスリン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなど));ワクチン抗原;血液製剤;農業生産上有用なペプチド(例えば、抗菌タンパク質);生理作用または薬理作用を持つ2次代謝産物を合成する様々な酵素および加水分解酵素;酵素反応を調節するインヒビター;血圧効果作用を持つとされるダイズグリシニン;あるいは消化管内で酵素分解を受けることで生理活性ペプチドが切り出されるようにデザインされた人工タンパク質。また栄養学的に意義のある物質としては、カゼイン、マメ類のアルブミンおよびグロブリン、ビタミン類の合成酵素、糖合成酵素、脂質合成酵素などがあげられるがそれらに限定されない。さらに様々な加工食品の原料として加工特性に関与するタンパク質として、例えばコムギグルテニン(製パン)、ダイズグロブリン群(豆腐)、ミルクカゼイン群(チーズ)などが挙げられる。食品の嗜好性または機能性を強化するタンパク質(例えば、シクロデキストリン、オリゴ糖、γアミノ酢酸などの特殊な糖またはアミノ酸類の合成酵素群、外観を良くする色素合成酵素、および味覚成分合成に関与するタンパク質群)、あるいは、消化管内で酵素消化を受けることによって生理作用をもつペプチド(例えば血圧効果作用をもつ、アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドなど)が切り出されるようにデザインされた人工タンパク質などが挙げられるがこれらに限定されない。
1つの実施形態において、目的のヌクレオチド配列は、アンチセンスコード配列であり得る。アンチセンスコード配列は、発現を抑制または阻止することが意図される特定の遺伝子のアンチセンス配列をコードし、かつ、アンチセンス活性を有するものであれば、どのようなものでもよく、そのようなものもまた、本発明の範囲内に含まれる。アンチセンス配列とは、コード配列(センス配列ともいう)に相補的な配列をいう。
本明細書において「アンチセンス活性」とは、標的となる遺伝子の発現を特異的に抑制または減少させることができる活性をいう。より具体的には細胞内に導入したあるヌクレオチド配列に依存して、その配列と相補的なヌクレオチド配列領域をもつ遺伝子のmRNA量を特異的に低下させることで、タンパク発現量を減少させ得る活性をいう。手法としては、標的となる遺伝子からつくられるmRNAに相補的なRNA分子を直接的に細胞に導入する方法と、細胞内に目的遺伝子と相補的なRNAを発現させ得る構築ベクターを導入する方法に大別される。植物においては、後者が一般的である。
アンチセンス活性は、通常、発現を抑制または阻止することが意図される遺伝子のコード配列と相補的な、少なくとも約8ヌクレオチド長のヌクレオチド配列によって達成される。アンチセンスコード配列は、好ましくは少なくとも約9ヌクレオチド長であり、より好ましく約10ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約11ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約12ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約13ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約14ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約15ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約20ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約25ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約30ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約40ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約50ヌクレオチド長であり得る。好ましくは、目的とする遺伝子のコード配列と相補的な配列は、アンチセンスコード配列中にとびとびに存在するのではなく、連続して存在する。
本明細書において、ヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の長さは、それぞれヌクレオチドまたはアミノ酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
アンチセンスコード配列は、発現を抑制または阻止することが意図される遺伝子のアンチセンス鎖(コード鎖の相補鎖)の配列に対して、好ましくは少なくとも約70%同一な、より好ましくは少なくとも約80%同一な、さらに好ましくは約90%同一な、そして最も好ましくは約95%同一なヌクレオチド配列を含む。アンチセンスコード配列は、目的とする遺伝子の核酸配列の5’末端の配列に対して相補的であることが好ましい。上述のようなアンチセンスコード配列に対して、1つまたは数個あるいは1つ以上のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有するものもまた、アンチセンスコード配列に含まれる。本明細書において、「アンチセンス活性」には、遺伝子の発現量の減少が含まれるがそれらに限定されない。
一般的なアンチセンス技術については、教科書に記載されている(Murray,JAH eds.,Antisense RNA and DNA,Wiley−Liss Inc,1992)。さらに最新の研究でRNA干渉(RNA interference;RNAi)と呼ばれる現象が明らかになり、アンチセンス技術の発展をもたらした。RNAiは、標的遺伝子に相同な配列をもつ短い長さの2本鎖RNA(20ベース程度)を細胞内に導入すると、そのRNA配列に相同な標的遺伝子のmRNAが特異的に分解されて発現レベルが低下する現象である。当初線虫において発見されたこの現象は、植物を含めて生物に普遍的な現象であることがわかってきている。アンチセンス技術で標的遺伝子の発現が抑制される分子レベルのメカニズムは、このRNAiと同様のプロセスを経ることが解明された。従来のアンチセンス技術では、標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的である1つのDNA配列を適切なプロモーターに連結して、その制御下に人工mRNAを発現させるような発現ベクターを構築して、細胞内に導入することが行われた。RNAiを利用した最近のアンチセンス技術においては、細胞内に2本鎖RNAを構成できるようにデザインされた発現ベクターが用いられる場合が多い。RNAiを利用したアンチセンス技術では、アンチセンスコード配列の基本構造は、ある標的遺伝子に相補的な1種のDNA配列をプロモーター下に1つを連結し、それと同じ物をさらに逆向きにもう1つ連結してつくられる。この基本構造を有するアンチセンスコード配列から転写された1本鎖のmRNAでは、逆向きにつながれた1種類のヌクレオチド配列部分が相補的な関係にあるため、この相補的な部分が対合してヘアピン様の2次構造を持つ2本鎖RNA状態をとり、これがRNAiのメカニズムに従って標的遺伝子のmRNA分解を引き起こすわけである。植物においてはシロイヌナズナで用いられた例が報告されている(Smith,N.A.ら,Nature 407.319−320,2000)。またRNAi全般については、最近の総説にまとめられている(森田と吉田、蛋白質・核酸・酵素47、1939−1945、2002)。これらの文献に記載された内容は、本明細書おいてその全体を参考として援用する。
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体を構成できるようにデザインされた発現ベクターが挙げられるがそれに限定されない。
目的のヌクレオチド配列としては、天然に存在するタンパク質コード配列、天然に存在するアンチセンスコード配列などのいずれかと同一性のある配列が使用され得る。そのような同一性を有するヌクレオチド配列としては、例えば、Blastのデフォルトパラメータを用いて比較した場合に、比較対照のヌクレオチド配列に対して、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%の同一性または類似性を有するヌクレオチド配列、または比較対照のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が挙げられるがそれらに限定されない。
目的のヌクレオチド配列は、好ましくは、GPT必須配列に対して異種の配列である。2つの配列に関して「異種」とは、これらの2つの配列が、異なる遺伝子に由来するか、または異なる種に由来することをいう。異種との用語は、GPT必須配列と調節配列との関係、複数の調節配列間の関係、調節配列と目的のヌクレオチド配列との関係、GPT必須配列と目的のヌクレオチド配列との関係などに適用される。例えば、シロイヌナズナのGPT必須配列は、シロイヌナズナのアクチン遺伝子に対して異種である。同様に、シロイヌナズナのGPT必須配列は、ヒトのインターフェロン遺伝子に対して異種である。異種ヌクレオチド配列が遺伝子であってかつ異種由来する場合、外来遺伝子とも呼ばれる。「外来遺伝子」とは、ある生物において、その生物には天然には存在しない遺伝子をいう。
(3.ベクター)
本発明のベクターは、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本明細書において「ベクター」とは、目的のヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができる核酸分子をいう。そのようなベクターとしては、目的の細胞において自律複製が可能であるか、または目的の細胞の染色体中への組込みが可能で、かつ改変された塩基配列の転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。目的の細胞は、原核生物細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞であり得る。本明細書において、ベクターはプラスミド、発現ベクター、組換えベクターなどであり得る。
本明細書において使用される「発現ベクター」とは、GPT必須配列および目的のヌクレオチド配列を目的の細胞中で発現し得るベクターをいう。発現ベクターは、GPT必須配列および目的のヌクレオチド配列に加えて、その発現を調節するプロモーターのような種々の調節エレメント、および必要に応じて、目的の細胞中での複製および組換え体の選択に必要な因子(例えば、複製起点(ori)、および薬剤抵抗性遺伝子のような選択マーカー)を含む。発現ベクター中では、改変された塩基配列は、転写および翻訳されるように作動可能に連結されている。調節エレメントとしては、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーが挙げられる。調節エレメントの定義は、上記の通りである。また、発現された酵素を細胞外へ分泌させることが意図される場合は、分泌シグナルペプチドをコードする塩基配列が、改変された塩基配列の上流に正しいリーディングフレームで結合される。特定の生物(例えば、細菌)に導入するために使用される発現ベクターのタイプ、その発現ベクター中で使用される調節エレメントおよび他の因子の種類が、目的の細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本明細書においてベクターの例としては、遺伝子実験に用いられる一般的な細菌(代表的なものとして大腸菌K12株由来の大腸菌株)で複製可能かつ単離精製可能なベクターがあげられる。これは、目的の生物(例えば、植物)に導入する目的の核酸分子を構築するために必要である。具体的には、例えば大腸菌のpBR322プラスミド、pUC18、pUC19、pBluescript、pGEM−Tといった市販の構築プラスミドがある。エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、パーティクルガン法といった直接的に遺伝子断片を植物細胞に導入して形質転換する場合には、このような市販されている一般的なプラスミドを用いて、導入する遺伝子の構築を行えばよい。また、ベクターの特殊な例として、アグロバクテリウムを介した遺伝子導入法を用いて植物細胞を形質転換する場合は、大腸菌とアグロバクテリウム双方の複製開始点、および植物に導入され得る境界領域を示すT−DNA由来の境界配列(Left borderおよび Right Border)に相当するヌクレオチド配列を有する「バイナリーベクター」と呼ばれるプラスミドを用いる必要がある。例えばpBI101(Clontech社より市販)、pBIN(Bevan,N.,Nucleic Acid Research 12,8711−8721,1984)、pBINPlus(van Engelen,FAら,Tranegenic Research 4,288−290、1995)、pTNまたはpTH(Fukuoka Hら,Plant Cell Reports 19,2000)、pPZP(Hajdukiewicz P et al.,Plant Molecular Biology 25,989−994,1994)などが挙げられるがそれらに限定されない。このほか、植物に利用され得るベクターとしては、タバコモザイクウイルスベクターも例示されるが、このタイプのベクターは目的遺伝子を植物染色体に導入するわけではないので、遺伝子導入した植物を種子を介して増殖させること必要がない場合に用途が限定されるが、本発明に使用され得る。
発現ベクターは、発現カセットの中に、本発明の選択マーカーを含み得る。「発現カセット」とは、ある発現すべきヌクレオチド配列(例えば、構造遺伝子)と、その発現を調節するプロモーター配列、mRNA転写を終結させるターミネーター配列および必要に応じて他の種々の調節エレメントとを、目的の細胞中でその発現すべきヌクレオチド配列が作動し得る状態で連結してある、人工構築遺伝子の1単位を示す。発現カセットの代表例としては、目的の細胞のうちの形質転換された細胞のみを選択するための選択マーカー(例えばハイグロマイシン抵抗性遺伝子)発現カセット、および宿主細胞内に発現させたい有用タンパク質コード配列の発現カセットが挙げられる。準備するべき発現カセットの種類、構造および数については、生物、宿主細胞および目的に応じて使い分けられるべきであり、その組み合わせは当業者には周知である。
「発現ベクター」は、上記の「発現カセット」を1つ以上含み得る「ベクター」としても定義され得る。目的の細胞に導入をすべき発現カセットごとに別々のベクター上に配置してもよいし、1つのベクター上に全ての発現カセットを連結してもよい。例えば、本発明において、GPT必須配列を含む発現カセットと、目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットとは、別の発現ベクター上に存在してもよく、同じ発現ベクター上に存在してもよい。同じ発現ベクター上に存在することが好ましい。より好ましくは、GPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とは、同じ発現カセット中に含まれる。本発明においては、植物用の発現ベクターとして、バイナリーベクタータイプの発現ベクターを用い得る。
(4.細胞)
本発明の細胞は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(例えば、任意の種類の多細胞生物(例えば、植物(例えば、単子葉植物、双子葉植物など)、動物(例えば、脊椎動物、無脊椎動物)など))でもよい。
植物の場合、好ましくは、顕花植物(単子葉または双子葉)由来の細胞が用いられ、より好ましくはイネ科、ナス科、ウリ科、アブラナ科、セリ科、バラ科、マメ科、ムラサキ科の植物由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガム、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、イチゴ、サツマイモ、アブラナ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ダイズ、アルファルファ、アマ、ニンジン、キウリ、柑橘類、ハクサイ、レタス、モモ、ジャガイモ、ムラサキ、オウレン、ポプラおよびリンゴ由来の細胞が用いられる。最も好ましくはイチゴ由来の細胞が用いられる。
動物の場合、好ましくは、脊椎動物(例えば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
本発明の細胞は、これらの細胞を用いて、以下の「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出され得る。あるいは、本発明の細胞は、「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子孫から得られる細胞であり得る。
(5.組織)
本発明の組織は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本明細書において、生物の「組織」とは、細胞の集団であって、その集団において一定の同様の作用を有するものをいう。従って、組織は、器官の一部であり得る。器官内では、同じ働きを有する細胞を有することが多いが、微妙に異なる働きを有するものが混在することもあることから、本明細書において組織は、一定の特性を共有する限り、種々の細胞を混在して有していてもよい。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。植物では、構成細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われている。動物の組織は、形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。
本発明の組織は、以下の「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を用いて、当該分野で公知の方法に従って組織分化させることによって入手され得る。あるいは、本発明の組織は、「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子孫から得られる組織であり得る。
(6.器官)
本発明の器官は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本明細書において、「器官」とは、1つ独立した形態をもち、1種以上の組織が組み合わさって特定の機能を営む構造体を形成したものをいう。植物では、カルス、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実、胚乳などが挙げられるがそれらに限定されない。動物の場合、器官は、臓器とも呼ばれる。
本発明が対象とする臓器はどのような臓器でもよく、また本発明が対象とする組織または細胞は、生物のどの臓器または器官に由来するものでもよい。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明の多能性細胞から分化した細胞としては、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明の器官は、以下の「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を用いて、当該分野で公知の方法に従って組織分化させ、そして器官を形成させることによって入手され得る。あるいは、本発明の組織は、「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子孫から得られる器官であり得る。
(7.生物体)
本発明の生物体は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本明細書において「生物体」(または、植物の場合「植物体」)とは、当該分野における最も広義に用いられ、生命現象を営むもの(または植物)をいい、代表的には、細胞構造、増殖(自己再生産)、成長、調節性、物質代謝、修復能力など種々の特性を有し、通常、核酸のつかさどる遺伝と、タンパク質のつかさどる代謝の関与する増殖を基本的な属性として有する。生物には、原核生物、真核生物(植物、動物など)などが包含される。好ましくは、本発明では、生物は、植物であり得る。本明細書では、好ましくは、そのような植物体は稔性であり得る。より好ましくは、そのような植物体は、種子を生産し得る。本明細書において生物体の「一部」とは、生物体を構成する部分をいい、例えば、器官(臓器)、組織、細胞の集団、細胞、細胞の一部などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明の生物体は、以下の「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を用いて、当該分野で公知の方法に従って再分化させることによって入手され得る。あるいは、本発明の生物体は、「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子孫から得られる生物体であり得る。
本明細書において用いられる「植物」とは、植物界に属する生物の総称であり、クロロフィル、かたい細胞壁、豊富な永続性の胚的組織の存在、および運動する能力がない生物により特徴付けられる。代表的には、植物とは、細胞壁の形成・クロロフィルによる同化作用をもつ顕花植物をいう。植物は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。好ましい植物としては、例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガムなどのイネ科に属する単子葉植物が挙げられる。植物は、食用作物または薬用植物であることが好ましい。好ましい植物の他の例としては、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、イチゴ、サツマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ニンジン、キウリ、柑橘類、ハクサイ、レタス、モモ、ジャガイモ、ムラサキ、オウレンおよびリンゴが挙げられる。より好ましくは、植物は、タバコ、イネ、トマト、イチゴ、ムラサキまたはオウレンであり得る。好ましい植物は作物に限られず、花、樹木、芝生、雑草なども含まれる。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
イネ科の植物の例としては、Oryza、Hordenum、Secale、Scccharum、Echinochloa、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
異種ヌクレオチド配列を含む植物は、天然では発現しない遺伝子産物を発現し得る。
好ましい実施形態において、本発明の生物体には、本発明の核酸分子は、両側の染色体に導入され得るが、一対のみに導入されたものもまた有用であり得る。
(8.形質転換細胞の作出方法)
本発明の方法の1つは、目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞の作出方法である。本発明の方法は、UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードする配列および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子と、目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置する工程;ならびに該配置された目的の細胞をツニカミニルウラシル存在下で培養して、該配置された目的の細胞のうちの増殖する細胞を形質転換細胞として選択する工程を包含する。
GPT、GPTの基質結合領域、GPTの膜結合領域、GPT必須配列、調節エレメントなどについては、上記の1に記載したとおりである。
本発明で用いられる目的細胞は、どの生物由来の細胞(例えば、任意の種類の多細胞生物(例えば、植物(例えば、単子葉植物、双子葉植物など)、動物(例えば、脊椎動物、無脊椎動物)など))でもよい。
植物の場合、好ましくは、顕花植物(単子葉または双子葉)由来の細胞が用いられ、より好ましくはイネ科、ナス科、ウリ科、アブラナ科、セリ科、バラ科、マメ科、ムラサキ科の植物由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガム、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、イチゴ、サツマイモ、アブラナ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ダイズ、アルファルファ、アマ、ニンジン、キウリ、柑橘類、ハクサイ、レタス、モモ、ジャガイモ、ムラサキ、オウレン、ポプラおよびリンゴ由来の細胞が用いられる。最も好ましくはイチゴ由来の細胞が用いられる。
動物の場合、好ましくは、脊椎動物(例えば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、霊長類(例えば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
核酸分子と、目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置する方法は、核酸分子を生物細胞に導入する技術として、当該分野で周知である。そのような技術は、本発明において引用した文献などに十分記載されている。核酸分子の生物細胞への導入は、一過的であっても恒常的であってもよい。一過性または恒常性の遺伝子導入の技術はそれぞれ当該分野において周知である。本発明において用いられる細胞を分化させて形質転換植物を作出する技術もまた当該分野において周知であり、そのような技術は、本発明において引用した文献などに十分記載されていることが理解される。形質転換植物から種子を得る技術もまた、当該分野において周知であり、そのような技術は、本発明において引用した文献などに記載されている。
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
核酸分子と、目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置する方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であれば、本明細書において他の場所で詳述したように、いずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等が例示される。これらの方法のうち、物理的手法の例としては、ポリエチレングリコール法(PEG法)、電子穿孔(エレクトロポレーション)法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法が挙げられる。これらの方法は、単子葉、双子葉の両植物体に適用できる点で有用性が高い。しかし、ポリエチレングリコール法とエレクトロポレーション法では、細胞壁が障害となるため、プロトプラストを用いなければならない上、導入された遺伝子の植物細胞の染色体DNAへの組込み頻度が低いことが問題である。また、プロトプラストを用いずに、カルスや組織を用いたマイクロインジェクション法では、針の太さや組織の固定等に関して困難が多い。組織を用いたパーティクルガン法でも、変異がキメラの形で出現してくる等の問題がある。また、これら物理的手法では、一般に、導入された外来遺伝子が核ゲノムに不完全な状態で多コピーの遺伝子として組込まれやすい。外来遺伝子が多コピー導入されると、その遺伝子が不活化されやすいことが知られている。
他方、生物を利用して単離遺伝子を導入する方法には、アグロバクテリウム法、ウイルスベクター法、および近年開発されている、花粉をベクターとして用いる方法がある。これらの方法は、プロトプラストを用いず植物のカルス、組織または植物体を用いて遺伝子導入を行うため、培養が長期間に及ぶことがなく、またソマクローナル変異等の障害を受けにくいという長所を有している。これらのうち花粉をベクターとして用いる方法は、まだ実験例も少なく、植物の形質転換法としては未知数の部分が多い。ウイルスベクター法は、ウイルスに感染した植物体全体に導入すべき遺伝子が広がるという利点はあるものの、各細胞内で増幅されて発現されるだけで、次世代に伝えられるという保証がないという点、および長いDNA断片を導入できないという点に問題がある。アグロバクテリウム法は、約20kbp以上のDNAを大きな再編成なしに染色体に導入できること、導入される遺伝子のコピー数が、数コピーと少ないこと、および再現性が高いこと等、多くの利点がある。イネ科植物等の単子葉植物にとってアグロバクテリウムは宿主範囲外であるため、イネ科植物への外来遺伝子導入は、従来は、先に述べたような物理的手法により行われてきた。しかしながら、近年、単子葉植物でもイネ等、培養系が確立されている植物においては、アグロバクテリウム法が適用されるようになっており、むしろ現在ではアグロバクテリウム法が好んで用いられている。
アグロバクテリウム法による外来遺伝子の導入では、TiプラスミドVir領域に植物が合成するアセトシリンゴン等の低分子フェノール化合物が作用すると、TiプラスミドからT−DNA領域が切り出され、幾つかの過程を経て植物細胞の核染色体DNAに組み込まれる。双子葉植物では、植物自身がそのようなフェノール化合物の合成機構を備えているため、リーフディスク法等により容易に外来遺伝子を導入することができ、再現性も高い。これに対し、単子葉植物では、そのようなフェノール化合物を植物自身が合成しないため、アグロバクテリウムによる形質転換植物の作出は困難であった。しかし、アグロバクテリウムの感染時にアセトシリンゴンを添加することで、単子葉植物への外来遺伝子導入も現在では可能となっている。
本発明を植物において利用する場合、植物細胞への植物発現ベクターの導入には、当業者に周知の方法、例えば、アグロバクテリウムを介する方法および直接細胞に導入する方法、が用いられ得る。アグロバクテリウムを介する方法としては、例えば、Nagelらの方法(Nagelら(1990)、Microbiol.Lett.,67,325)が用いられ得る。この方法は、まず、例えば植物に適切な発現ベクターでエレクトロポレーションによってアグロバクテリウムを形質転換し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをGelvinら(Gelvinら編(1994)、Plant Molecular Biology Manual(Kluwer Academic Press Publishers))に記載の方法で植物細胞に導入する方法である。植物発現ベクターを直接細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法(Shimamotoら(1989)、Nature、338:274−276;およびRhodesら(1989)、Science、240: 204−207を参照のこと)、パーティクルガン法(Christouら(1991)、Bio/Technology 9:957−962を参照のこと)ならびにポリエチレングリコール(PEG)法(Dattaら(1990)、Bio/Technology 8:736−740を参照のこと)が挙げられる。これらの方法は、当該分野において周知であり、形質転換する植物に適した方法が、当業者により適宜選択され得る。
本発明において、形質転換体では、目的とする核酸分子(導入遺伝子)は、染色体に導入されていても導入されていなくてもよい。好ましくは、目的とする核酸分子(導入遺伝子)は、染色体に導入されており、より好ましくは、2つの染色体の両方に導入されている。
核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に核酸分子とともに配置された目的細胞は、GPT抵抗性に基づいて選択される。すなわち、この配置された目的の細胞は、ツニカミニルウラシル存在下で培養されて、この配置された目的の細胞のうちの増殖する細胞が形質転換細胞として選択される。次いで、当該分野で周知の方法により、植物組織、植物器官および/または植物体に再分化され得る。
植物細胞、植物組織および植物体の培養、分化および再生のためには、当該分野で公知の手法および培地が用いられる。このような培地には、例えば、Murashige−Skoog(MS)培地、Gamborg B5(B)培地、White培地、Nitsch&Nitsch(Nitsch)培地などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの培地は、通常、植物生長調節物質(植物ホルモン)などが適当量添加されて用いられる。
本明細書において、植物の場合、その植物を「再分化」するとは、個体の一部分から個体全体が復元される現象を意味する。例えば、再分化により、細胞(葉、根など)のような組織片から器官または植物体が形成される。
形質転換体を植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのような方法としては、Rogersら,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabataら,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);Shimamotoら,Nature 338:274(1989);Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995)などに記載されるものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、当業者は、上記周知方法を目的とする形質転換植物に応じて適宜使用して、再分化させることができる。このようにして得られた形質転換植物には、目的の遺伝子が導入されており、そのような遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
さらに、得られた形質転換植物体から種子が取得され得る。導入した遺伝子の発現は、ノーザンブロット法またはPCR法により、検出し得る。必要に応じて、遺伝子産物たるタンパク質の発現を、例えば、ウェスタンブロット法により確認し得る。
本明細書中では、「ツニカミニルウラシル(tunicaminyluracil)」とは、β−ガラクトサミンとα−ガラクトサミンと炭素鎖12〜19の脂肪酸残基とが結合した化合物、α−ガラクトサミンとβ−グルコサミンと炭素鎖12〜19の脂肪酸残基とが結合した化合物およびこれらに類似した構造を有する化合物をいう。ツニカミニルウラシルは、ツニカマイシン、コリネトキシンおよび類似の構造を有する化合物の総称である。
本明細書中では、「ツニカマイシン」とは、以下の式1の基本構造を有し、ここで、Rが、通常、炭素数10〜20の脂肪酸残基である化合物をいう。なお、ツニカマイシン中のRの炭素数は、通常はこの数字範囲であるが、炭素数がより少ない(例えば、7、8、9など)または炭素数がより多い(例えば、21、22、23など)化合物であっても、炭素数10〜20のツニカマイシンと実質的に同等のGPT阻害活性を有する化合物は、本明細書でいうツニカマイシンの範囲に含まれる。式1からわかるように、ツニカマイシンでは、糖の組合せが、β−ガラクトサミンとα−ガラクトサミンとである。
ツニカマイシンは、最初に放線菌(Streptomyces lysosuperficus)から単離された抗生物質である。ツニカマイシンは、糖鎖合成の初発酵素であるGPTが、UDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)からドリコリルホスフェート(dolichyl−P)へとN−アセチルグルコサミン−1−P(GlcNAc1P)を転移させてN−アセチルグルコサミン−ジホスフェート−ドリコリル(GlcNAc−PP−dolichyl)を形成する反応を特異的に阻害する。タンパク質糖鎖は、グラム陽性細菌および真核生物の細胞機能に必須である。従って、ツニカマイシン処理により糖鎖の合成阻害が起こると、これらの生物は生育できない。ツニカマイシンが、GPTの活性を阻害するのは、ツニカマイシンが、N−アセチルグルコサミンの立体構造と類似した立体構造を有するため、GPTと結合して、GPTの活性を阻害するためであると考えられる(Heifetz,A.ら、Biochem.,18、1979、pp.2186−2192)。
本明細書中では、「コリネトキシン」とは、以下の式2の基本構造を有し、ここで、Rが、通常、炭素数11〜19の脂肪酸残基である化合物をいう。なお、ツニカマイシン中のRの炭素数は、通常はこの数字範囲であるが、炭素数がより少ない(例えば、8、9、10など)または炭素数がより多い(例えば、20、21、22など)化合物であっても、炭素数10〜20のコリネトキシンと実質的に同等のGPT阻害活性を有する化合物は、本明細書でいうコリネトキシンの範囲に含まれる。式2からわかるように、コリネトキシンでは、糖の組合せが、α−ガラクトサミンとβ−グルコサミンとである。
コリネトキシンも、ツニカマイシンと同様に、GPTの活性を阻害する(Jago,M.V.ら、Chem.Biol.Interactions,45、1983、pp.223−234)。
ツニカミニルウラシルは、好ましくはツニカマイシンであり、より好ましくはRが炭素数12〜16の脂肪酸残基であるツニカマイシンであり、さらに好ましくはRが炭素数13〜15の脂肪酸残基であるツニカマイシンである。
本発明の方法において、ツニカミニルウラシルは、形質転換されていない目的の細胞が生存し得ない濃度で存在することが好ましい。このような濃度は、目的の細胞に依存して、当業者によって適切に設定され得る。このような濃度は、好ましくは、0.3μg/mL〜2μg/mLであり、より好ましくは0.3μg/mL〜1μg/mLであり、さらに好ましくは0.3μg/mL〜0.5μg/mLである。
本発明は、植物において特に有用であることが示されているが、他の生物においても利用することができる。本発明において使用される分子生物学技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら (1987)Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版およびその第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。
(9.使用)
本発明の核酸分子は、目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞を迅速に作出するために好適に使用され得る。
本発明においては、GPTコード配列は、選択マーカーとして使用され得る。
本発明の作出方法によって得られた形質転換細胞は、当該分野で公知の方法に従って利用され得る。例えば、目的のヌクレオチドとしてタンパク質コード配列を用いる場合、この形質転換細胞によって発現されるこのタンパク質を分離し、精製して用いることができる。
そのようなタンパク質の分離技術は当該分野において周知であり、タンパク質を分離することができる技術であれば、どのような技術を用いてもよい。本発明の形質転換細胞の培養物から、タンパク質コード配列によってコードされるタンパク質(例えば、有用タンパク質)を単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常のタンパク質の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明の形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本明細書において「単離された」ポリペプチドとは、そのポリペプチドが天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、ポリペプチド以外の因子および目的とするポリペプチド以外のポリペプチドなど)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」ポリペプチドには、標準的な精製方法によって精製されたポリペプチドが含まれる。したがって、単離されたポリペプチドは、化学的に合成したポリペプチドを包含する。また、標準的な精製方法によって精製した後に、他の物質と混合したポリペプチドおよび緩衝液中に溶解したポリペプチドなども、本明細書でいう単離されたポリペプチドに該当する。
本明細書において「精製された」ポリペプチドとは、そのポリペプチドに天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製されたポリペプチドにおけるそのポリペプチドの純度は、そのポリペプチドが通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
目的のタンパク質が本発明の形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース(Sepharose)、DIAION HPA−75(三菱化学)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
目的のタンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法によりそのタンパク質を回収後、そのタンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。この可溶化液を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、目的のタンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。また、細胞内の特定のオルガネラ、例えば、プロテインボディに蓄積され得る場合には、そのオルガネラを分離後、目的のタンパク質を精製することもできる。
通常のタンパク質の精製方法(J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458)に準じて精製できる。例えば、目的のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法(Larsenら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Kukowska−Latallo JF、Genes Dev.,4,1288(1990))に記載の方法に準じて、目的のタンパク質をプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、目的のタンパク質をFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる(Larsenら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Kukowska−Latallo JF、Genes Dev.,4,1288(1990))。
さらに、目的のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のタンパク質は、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
本発明は、本発明の方法によって生産された、目的のヌクレオチドの翻訳産物を含む組成物を提供する。そのような組成物が含む翻訳産物は、使用される目的のヌクレオチドに応じて変動するが、好ましくはタンパク質であり得る。
本発明の遺伝子構築物、因子(agent)、組成物および方法は、単子葉植物だけでなく双子葉植物および動物を含む他の生物において機能することが企図される。
本明細書において、「トランスジェニック」とは、特定の遺伝子がある生物に組み込むことまたは組み込まれた生物(例えば、植物(イネなど)を含む)をいう。
好ましい実施形態において、本発明の植物体には、本発明の核酸分子は、両側の染色体に導入され得るが、一対のみに導入されたものもまた有用であり得る。
本明細書では、植物の栽培は当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。植物の栽培方法は、例えば、モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;イネの栽培法(奥野員敏)pp.28−32、およびアラビドプシスの栽培法(丹羽康夫)pp.33−40(監修 島本功、岡田清孝)に例示されており、当業者であれば容易に実施することができることから本明細書では詳述する必要はない。例えば、シロイヌナズナの栽培は土耕、ロックウール耕、水耕いずれでも行うことができる。白色蛍光灯(6000ルクス程度)の下、恒明条件で栽培すれば播種後4週間程度で最初の花が咲き、開花後16日程度で種子が完熟する。1さやで40〜50粒の種子が得られ、播種後2〜3ケ月で枯死するまでの間に10000粒程度の種子が得られる。種子の休眠期間は短く、完熟種子は1週間程度乾燥させれば吸水後2〜3日で発芽する。ただし、吸水・播種後2〜4日間4℃で低温処理を行うと発芽が斉一化される。イネの栽培は主に土耕で行い、10000ルクス以上の光条件下で生育させる。播種後40日程度以後に短日条件とすることで出穂が誘導され、出穂誘導後30日程度で開花し、開花後40日程度で完熟種子が得られる。
本発明は、本発明の植物体または本発明の種子から生産された外来遺伝子の遺伝子産物を含む組成物を提供する。そのような外来遺伝子の遺伝子産物は、本発明のシステムを用いることによって効率よく食用部分の中に生産されることから、食用として、医薬としてまたは他の用途として用いるのに非常に好ましい。
以下に、本発明の好ましい実施形態である実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
(実施例1:形質転換細胞の調製)
(1.1 材料および方法)
(1.1.1 GPT cDNAの単離)
シロイヌナズナ以外の生物由来のGPTの間で保存されたアミノ酸配列(プライマー1および2については、NI(LI)AG(VI)NG(VL)E(VA)GQ(配列番号3)、そしてプライマー3および4についてはVFVGD(ST)(FY)(TC)YFAG(TM)(TV)(MLF)(配列番号4))に基づいて、以下の縮重プライマーを合成した:
プライマー1:5’−AT(ACT)(ACT)TIGCIGGI(AG)TIAA(CT)GG−3’(配列番号5);
プライマー2:5’−GGGGATCCAA(CT)GGI(CGT)TIGA(AG)G(CT)IGG(ACGT)CA−3’(配列番号6);
プライマー3:5’−GGGAATTCAI(CG)(AT)(AG)TCICCIAC(ACGT)AA(AG)AC(配列番号7);および
プライマー4:5’−A(AGT)I(AG)(CT)I(AG)TICCIGC(AG)AA(AG)TA(配列番号8)。
上記配列において、括弧で囲まれる部分の配列は、その中に含まれる核酸またはアミノ酸のうちから任意のものが選択されることが意図される。
BamHIについての制限部位を、プライマー2の5’末端に付加した。EcoRIについての制限部位をプライマー3に付加した。最初に、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana;エコタイプLandsberg erecta)のゲノムDNAを、プライマー1およびプライマー4を用いたPCRに供して、種々の大きさのDNAフラグメントを得た。このときのPCR反応条件は、以下のとおりであった:
94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を1サイクルとして、30サイクル行った後、72℃で5分間のPCR反応条件。
続いて、このPCR産物をテンプレートとして用い、プライマー2および3を用いてPCRを行うことにより、さらなる増幅を行った。このときのPCR反応条件は、以下のとおりであった:
94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を1サイクルとして、30サイクル行った後、72℃で5分間のPCR反応条件。
2回目のPCRにおいて、0.4kbのDNAフラグメントが再現可能に増幅された。このDNAフラグメントを、pBluescript II SK+(Stratagene,La Jolla,CA)中にクローニングし、そしてシロイヌナズナの植物体の地上部から調製されたポリ(A)RNAから構築したLambda ZAP II(Stratagene)cDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用した。このスクリーニングによって、ポジティブなクローンを選択した。プラスミドを、このポジティブなクローンからインビボでの切り出しによって回収した。エキソヌクレアーゼIIIを用いて一連の欠失クローンを作製し、そしてこれらの欠失クローンを、DNAシークエンサー(モデル373、PE Biosystems,Foster City,CA)を用いて配列決定した。
(1.1.2 GPT遺伝子の分析)
シロイヌナズナのゲノムDNAを、臭化セチルトリメチルアンモニウム沈澱法(MurrayおよびThompson,Nucleic Acids Res 8、1980、pp.4321−4325)によって調製した。ゲノムのサザン分析のために、5μgのDNAを、適切な制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動に供し、そしてキャピラリーブロッティングによってナイロンメンブレンにトランスファーした。32P標識GPT cDNAでプローブした後、このブロットを、0.1%(w/w)SDSを含む0.2×SSC中で65℃で洗浄し、そしてX線フィルムに曝露した。GPT遺伝子の配列を得るために、シロイヌナズナのゲノムDNAを、以下のプライマー5〜8を用いて増幅した:
プライマー5:5’−AAGATGACCCGAAAGACG−3’(配列番号9);
プライマー6:5’−TGTGACTTCTCTGAGATTGCAG−3’(配列番号10);
プライマー7:5’−CAGAGAAGGTATAGATAGAGCG−3’(配列番号11)および
プライマー8:5’−TCGATTCTAATTAACGCGGGG−3’(配列番号12)。
GPTの構造遺伝子のコード領域を、プライマー5およびプライマー6を用いて増幅した。5’上流領域を、プライマー7およびプライマー8を用いたインバースPCRによって増幅した。インバースPCRのために、HindIIIで消化し、続いて自己連結したゲノムDNAを、テンプレートとして用いた。増幅したゲノムDNAを、GPT cDNAの配列に対応する合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて直接配列決定した。
(1.1.3 RNAブロットハイブリダイゼーション)
種々の器官におけるGPT mRNAの発現レベルを調べるために、総RNAを、1ヶ月にわたって温室で成長させた成熟シロイヌナズナ植物体の根、葉、茎および花からFrommら(EMBO J 4、1985、pp.291−295)の方法に従って調製した。各器官からの10μgのRNAを、ホルムアルデヒドアガロースゲル中で分離し、そしてキャピラリーブロッティングによってナイロンメンブレンにトランスファーした。このブロットを、32P標識した全長GPT cDNAでプローブし、0.1%(w/v)SDSを含む0.2×SSC中で65℃で洗浄し、そしてX線フィルムに曝露した。BiP誘導を分析するために、野生型シロイヌナズナおよびGPT過剰発現シロイヌナズナ(T3)(エコタイプColumbia)の播種10日目の芽生えを、液体培地(MurashigeおよびSkoog塩、Gamborg B5ビタミン、1g/L MESおよび1%(w/v)スクロース、pH5.6)に移植し、そして穏やかに振盪しながら4℃で22時間成長させた。植物を、ツニカマイシンの添加の5時間後に回収した。RNAの単離およびRNAブロットを、シロイヌナズナのBiP cDNA(Koizumi,Plant Cell Physiol 37、1996、pp.862−865)をプローブとして用いて、上記のとおりに行った。アミノ酸アナログであるアゼチジン−2−カルボキシレートを5mMの濃度で用いて同様の実験を行って、アゼチジン−2−カルボキシレートの効果を決定した。
(1.1.4 GPTの過剰発現およびツニカマイシン感受性)
CaMV 35Sプロモーターの後ろにGPT cDNAが作動可能に連結されたバイナリープラスミドを構築した。このプラスミドを作製するために、KlenowフラグメントおよびXhoIリンカーを用いて、pBI121(CLONTECH Laboratories,Palo Alto,CA)のSacI部位を、XhoI部位によって置換し、そしてXbaIおよびXhoIを用いて切断することによって、このプラスミドからGUS遺伝子を除去した。次いで、GPT cDNAを、プライマー9(5’−TCTAGAAACGAGCCAACAAATCCGCC−3’(配列番号13))およびプライマー10(5’−CTCGAGTGACTTCTCTGATTGCAGAC−3’(配列番号14))を用いたPCRによって増幅した。最終的に、このGPT cDNAを、pBI121ベクターに連結し、そしてGUS遺伝子を置換した。このバイナリープラスミドを用いて、標準的な手順(Bechtoldら,C R Acad Sci Ser III Sci Vie 316、1993、pp.1194−1199)に従って、シロイヌナズナ(エコタイプColumbia)の植物内(in planta)Agrobacterium tumefaciens媒介形質転換を行った。形質転換シロイヌナズナのツニカマイシン感受性を決定するために、このバイナリープラスミドで形質転換したシロイヌナズナのT3種子および野生型シロイヌナズナの種子およびpBI121のみで形質転換したシロイヌナズナの種子を、0、0.3または1.0μg/mLのツニカマイシンを補充した寒天プレート(1×MurashigeおよびSkoog塩、1×Gamborg B5ビタミン、1g/L MES、1%(w/v)スクロース、および0.8%(w/v))寒天、pH5.6)に播種し、そして22℃でインキュベートした。
(1.1.5 GPTアッセイ)
ミクロソーム画分を調製するために、野生型植物およびGPT過剰発現植物の播種4日目の芽生えを、液体培地(1×MurashigeおよびSkoog塩、1×Gamborg B5ビタミン、1g/L MES、および1%(w/v)スクロース、pH5.6)に移植し、そして穏やかに振盪しながら、暗所で22℃で12日間培養した。植物を回収し、そして緩衝化培地(80mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTAおよび10mM β−メルカプトエタノール)中の12%(w/v)スクロース(3容量)中でホモジナイズし、そしてホモジネートを4℃で10分間、7,700gで遠心分離した。上清を16%(w/v)スクロースクッション(同じ緩衝液中のスクロース)に重層し、そしてローター(モデル50Ti,Beckman Instruments,Fullerton,CA)を用いて4℃で60分間、40,000rpmで遠心分離した。上清を捨て、そしてペレットを、16%(w/v)スクロースを含む同じ緩衝化培地中に懸濁して、ミクロソーム画分として用いた。GPT活性に関する反応混合物は、100μLのTBS(50mM Tris−HCl、pH7.5および150mM NaCl)中、20μLのミクロソーム画分、2μgのドリコール−Pおよび10mM MgClからなっていた。反応を、0.1μCiのUDP−[H]GlcNAcの添加によって開始し、そして12分間までの種々の時間にわたる、25℃でのインキュベーションの後に、てクロロホルムの添加によって停止した。脂質相を、KausalおよびElbein(J Biol Chem 260、1985,pp.16303−16309)によって記載されたとおりに抽出し、そして液体シンチレーションカウンターを用いて放射能を測定した。小胞体のマーカー酵素であるNADH Cyt cレダクターゼの活性を、Lordら(J Cell Biol 57、1973、pp.659−667)の方法に従って測定した。GPT活性を、等しい量のNADH Cyt cレダクターゼを含むミクロソーム画分において測定した。
(1.1.6 複合グリカンの検出)
野生型シロイヌナズナ、pBI121のみを有するシロイヌナズナおよびGPT過剰発現シロイヌナズナの播種後2週間育てた芽生えを、100mM Tris−HCl、pH7.5(10mM β−メルカプトエタノールを含む)(4容量)中でホモジナイズした。遠心分離後、上清をSDS−PAGEに供し、そして複合グリカンに対する血清(Lauriereら,Plant Physiol 90、1989、pp.1182−1188)を用いて免疫ブロットした。
(1.2 結果)
(1.2.1 シロイヌナズナからのGPT cDNAの単離)
約0.4kbのDNAフラグメントが、シロイヌナズナのゲノムDNAおよび他の生物のGPT間で保存されたアミノ酸配列に従って設計された縮重プライマーを用いるPCRによって再現可能に増幅された。このフラグメントをクローニングし、配列決定し(データは示さず)、そしてこのフラグメントをプローブとして用いて、シロイヌナズナのcDNAライブラリーをスクリーニングした。3つのcDNAクローンが単離され、そして同一の制限マップを有することが見出された。1,482bpのヌクレオチド配列(DDBJ、EMBLおよびGenBankヌクレオチド配列データベースにおける登録番号D88036)は、431アミノ酸のポリペプチドをコードするORFを含む(図1)。このポリペプチドは、マウスのGPT(Rajputら,Biochem J 285、1992、pp.985−992)、Saccharomyces cerevisiaeのGPT(HartogおよびBishop,Nucleic Acids Res 15、1987、p.3627)およびLeishmania amazonesis GPT(LiuおよびChang,Mol Cell Biol 12、1992、pp.4112−4122)と、それぞれ、38%、33%および34%の配列同一性を有する(図2)。KyteおよびDoolittle(J Mol Biol 157、1982、pp.105−132)のアルゴリズムによる推定アミノ酸配列の疎水性は、このアミノ酸配列が、10回膜貫通ドメインを有し、非常に疎水性であることを示す(データは示さず)。
(1.2.2 GPTのゲノム組成および遺伝子発現)
GPT cDNAプローブを用いた場合、シロイヌナズナのゲノムDNAをEcoRIおよびBglIIで消化することによって、1本のハイブリダイゼーションシグナルが得られ、HindIIIで消化することによって2本のシグナルが観察された(図3)。このGPTプローブは、HindIII部位を含むが、EcoRI部位もBglII部位も含まない。図3に示す結果は、GPTが、シロイヌナズナにおいて単一の遺伝子によってコードされるという結論と一致する。シロイヌナズナのGPT遺伝子の構造を分析するために、ゲノムDNAをPCRによって増幅し、そして直接配列決定した(DDBJ、EMBLおよびGenBankヌクレオチド配列データベースにおける登録番号D88036)。cDNAとゲノムDNAとの配列比較は、シロイヌナズナのGPT遺伝子が、11個のエキソンおよび10個のイントロンからなり、そしてイントロンの連結境界配列がGT−AG規則を満たすことを示す。総RNAを、シロイヌナズナの成熟植物の根、葉、茎および花から調製し、そしてRNAブロット分析のために用いた。全ての器官がGPT mRNAを含むことが見出された(図4)。
(1.2.3 GPTの過剰発現およびツニカマイシン抵抗性)
得られたcDNAが活性なGPT酵素をコードすることを確認するために、本発明者らは、GPT cDNAおよびCaMV 35Sプロモーターからなるキメラ遺伝子でシロイヌナズナを形質転換し、そしてコントロール植物(野生型植物)および形質転換植物におけるGPT酵素活性を決定した。ミクロソーム画分を、野生型シロイヌナズナおよび形質転換シロイヌナズナから単離し、そしてこれを用いて、12分間にわたって経時的に、UDP−GlcNAcからの[H]GlcNAc−1−Pの、クロロホルム−メタノール抽出可能分子への転移を測定した(図5)。形質転換シロイヌナズナ由来のミクロソーム(図5中のGPT−Tm)は、野生型植物由来のミクロソーム(図5中、WT−Tm)よりも約10倍高い放射能取り込み活性を有した。等しい量の小胞体マーカー酵素NADH−Cyt cレダクターゼを含むミクロソーム画分を用いてこれらのアッセイを実施した。ツニカマイシンは、野生型ミクロソームおよびGPTミクロソームによる反応をほぼ完全に阻害した。GPT形質転換植物由来のミクロソームからの脂質画分へのGlcNAc−Pのより多くの取り込みおよびツニカマイシンによる阻害は、GPT cDNAが活性なトランスフェラーゼをコードすることを示す。
より高レベルのGPTを発現する細胞は、ツニカマイシンに抵抗性である。ツニカマイシンは、GPT活性の強力なインヒビターである(Rineら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80、1983、pp.6750−6754;ZengおよびElbein,Eur J Biochem 233、1995、pp.458−466)。それゆえ、本発明者らは、野生型植物および形質転換植物のツニカマイシン抵抗性をチェックした。図6に示すように、野生型植物および空のプラスミド(pBI121)で形質転換した植物は、0.3μg/mLツニカマイシンの存在下で増殖できなかった。しかし、GPTを過剰発現する形質転換シロイヌナズナは、1.0μg/mLツニカマイシンの存在下でさえも増殖した。このことが観察されたので、このcDNAが活性なGPT酵素をコードすることがさらに証明された。
(1.2.4 形質転換植物のN結合型グリカン)
ツニカマイシンは致死的である。なぜなら、ツニカマイシンは、Asn結合型グリカンの合成を妨害し、そしてこのようなグリカンのないタンパク質は、不安定であると考えられるからである。1.0μg/mLツニカマイシンの存在下で増殖させたGPT形質転換植物のタンパク質が、グリカンを有するか否かを調べた。これを調べるために、GPT形質転換植物からタンパク質を抽出し、そして多くの植物糖タンパク質に見出される複合グリカンのキシロシル残基に特異的な抗血清を用いた免疫ブロットによって分析した。図7に示すように、常にツニカマイシンの存在下で増殖させた、GPTを発現する形質転換シロイヌナズナから抽出されたタンパク質(レーン4およびレーン5)は、ツニカマイシンの非存在下で増殖させたGPT過剰発現植物(レーン3)と同じパターンの、複合グリカンを有する糖タンパク質を有した。この結果は、GPT過剰発現植物が、複合グリカンを有する糖タンパク質をツニカマイシン存在下で産生することを示す。
(1.2.5 形質転換植物におけるBiPの誘導)
ツニカマイシンは、細胞の全体的UPRの一部として、小胞体に存在する分子シャペロン(例えば、BiP)の発現を誘導する。本発明者らは、GPT過剰発現シロイヌナズナにおいてBiP誘導が観察されるか否かを調べた。このような誘導は、短期実験においてのみ観察され得る。なぜなら、ツニカマイシンは、細胞死を引き起こすからである。野生型シロイヌナズナおよびGPT過剰発現シロイヌナズナを、最初にツニカマイシンなしで成長させ、次いでツニカマイシンで5時間処理し、その後RNAを抽出した。図8に示すように、野生型植物では、BiP mRNAの蓄積が、ツニカマイシンの濃度と相関し、そしておそらくストレスの重篤度に相関した。最強の誘導は、野生型シロイヌナズナにとって致死的である濃度のツニカマイシンにおいて観察された(図6を参照のこと)。BiP mRNAは、GPT過剰発現植物においては、この植物が増殖し得る最高濃度である1.0μg/mLのツニカマイシンでさえ誘導されなかった。
これらの植物がUPRし得るか否かを確認するために、野生型植物およびGPT形質転換植物を、1.0μg/mLツニカマイシンまたは5mM濃度のアミノ酸アナログであるアゼチジン−2−カルボキシレートのいずれかに曝露した。野生型植物では、アゼチジン−2−カルボキシレートは、ツニカマイシンによって誘導されるレベルよりも充分多くのBiP mRNAの蓄積を誘導した。GPT形質転換植物では、アゼチジン−2−カルボキシレートは、同様に大量のBiP mRNAの蓄積を誘導した(図9)。この結果は、GPT形質転換植物が、UPRを開始し得るが、ツニカマイシンによってUPRは誘導されないことを示す。より高いレベルのGPTは、ツニカマイシンの存在下で通常経験するUPRを植物から明らかに取り除く。より高いレベル(1μg/mLを超える)のツニカマイシンもまた、GPT発現植物においてUPRを誘導することが可能である。
(実施例2:選択マーカーとしてのGPTの使用)
(2.1 材料および方法)
(2.1.1 植物材料および形質転換)
シロイヌナズナ(エコタイプColumbia)を、植物材料として用いた。シロイヌナズナのGPT cDNAを過剰発現するためのキメラ構築物を、上記1.1.4に記載したようにpBI121中のGUS遺伝子をGPT cDNAで置換することによって得た。この構築物においては、Nos(ノパリンシンターゼ)プロモーターの下流にカナマイシン抵抗性遺伝子を連結したキメラ遺伝子と、CaMV35Sプロモーターの下流にGPT遺伝子を連結したキメラ遺伝子との両方が組込まれている(図10)。この構築物を、Agrobacterium tumefaciensを用いた植物内形質転換法(浸潤法とも呼ばれる;Clough,S.J.およびBent A.F.,Plant J 16,735−743(1998))によってシロイヌナズナに導入した。T1種子を、50μg/mLセファトキシンおよび0.3μg/mLツニカマイシンを補充した1/2×MAプレート(0.8%寒天および1%スクロースを含む、1/2濃度のMS塩)で選択した。本葉を展開した芽生えを土壌に移植し、そして温室内で成長させてT2種子を収穫した。
(2.1.2 抗生物質に対する形質転換植物の感受性)
カナマイシン抵抗性を調べるために、T2種子を、25μg/mLのカナマイシンを補充した1/2×MSプレートに播種した。発根後死んだ植物を、カナマイシン感受性とみなし、そして本葉を展開した植物をカナマイシン抵抗性と考えた。種子のツニカマイシン感受性を以下のとおりに観察した。種子を、種々の濃度のツニカマイシンを補充した1/2×MSプレートに播種した。本葉を展開した芽生えを、抵抗性と決定した。
(2.1.3 ゲノムのサザン分析)
ゲノムDNAを、植物DNA単離キットNucleon PhytopureTM(Amersham Life Science)を製造業者の指示に従って用いて、野生型植物およびT4形質転換植物から単離した。DNAを、制限酵素で消化し、アガロースゲルで分離し、そしてナイロンメンブレン(Hybond N;Pharmacia Amersham)にトランスファーした。このメンブレンを、32P標識GPT cDNAまたはネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子のいずれかでプローブした。ハイブリダイゼーション後、メンブレンを、0.1% SDSを含む0.1×SSCで68℃で洗浄し、そしてX線フィルムに曝露した。
(2.2 結果)
(2.1.1 ツニカマイシンを用いた形質転換植物の選択)
シロイヌナズナを、植物内Agrobacterium媒介形質転換法を用いて、CaMV35Sプロモーターによって駆動されるGPT cDNAおよびカナマイシンの無毒化を触媒するネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子を保有するバイナリープラスミドで形質転換した。形質転換処理を行ったシロイヌナズナから種子(T0種子)を採取した。約500個のT0種子を、ツニカマイシン(0.3μg/mL)を含むプレートに播種した。ほとんどの芽生えの成長は、発根の直後に停止したが、5個体の植物が本葉を展開した。これらのおそらくT1である植物を土壌に移植し、そして成長させて種子(T2種子)を採取した。1個体の植物は、ごくわずかな種子しかつけなかったので、以後の実験を、他の4つの系統を用いて行った。これらの系統が形質転換体であるか否かを確認するために、T2種子を、カナマイシンを含むプレートに播種した。以下の表1に示すように、4つの系統(系統1〜系統4)はいずれも、カナマイシン抵抗性を示した。抵抗性の個体数と感受性の個体数との分離比から判断して、系統1、系統2および系統3は、1遺伝子座に遺伝子が挿入されていると考えられる。系統4のゲノムには、1コピーよりも多く挿入されたと考えられる。
(2.1.2 GPT cDNAおよびNPTII遺伝子の遺伝)
GPT cDNAおよびNPTII遺伝子が1遺伝子座に挿入されたと予測されたので、系統1を、その後の分析に用いた。12個体のT2植物を成長させ、そしてこれらのT2植物の種子T3を採取した。T3種子を、ツニカマイシンまたはカナマイシンのいずれかを含むプレートに播種することによって、3つのホモ接合体の系統を同定した。ホモ接合性系統を、GPT過剰発現に因んで、GPT−OXと命名し、そしてさらに分析した。このGPT−OXは、ツニカマイシンおよびカナマイシンの両方に対して顕著な抵抗性を示した。このことは、GPT cDNAおよびNPTII遺伝子が、メンデル遺伝で遺伝したことを示す(図12)。
GPT cDNAおよびNPTII遺伝子が子孫シロイヌナズナに遺伝したことを確認するために、T4世代のGPT−OXシロイヌナズナのゲノムを、ゲノムサザン分析に供した。図14に示すように、内在遺伝子に付加的な導入GPT遺伝子およびNPTII遺伝子についてのシグナルが、GPT−OXのゲノムにおいて検出され、そしてこれらのシグナルは野生型シロイヌナズナには存在しなかった。EcoRIでゲノムDNAを消化した場合、導入GPT遺伝子およびNPTII遺伝子についてのシグナルがこのゲルと同じ位置に観察された。なぜなら、用いたベクター構築物中のNPTII遺伝子とGPT遺伝子との間にEcoRI部位は存在しないからである。NPTII遺伝子および導入GPT遺伝子についての2本のバンドは、GPT−OX植物が、T−DNA媒介形質転換ではしばしば観察されるように、NPTII遺伝子および導入GPT遺伝子のタンデムコピーを含むことを示した。この結果は、GPT cDNAおよびNPTII遺伝子が、少なくともT4世代のGPT−OXシロイヌナズナに遺伝したことを明らかに示す。
(2.1.3 抗生物質に対する応答)
ツニカマイシン感受性を、野生型シロイヌナズナとGPT−OXシロイヌナズナとの間で比較した。野生型シロイヌナズナはいずれも、0.5μg/mLのツニカマイシンの存在下で発根後子葉を展開できなかったが、90%を超えるGPT−OXシロイヌナズナがこの条件で子葉を展開した(図11および12)。ツニカマイシンについてのI50は、野生型シロイヌナズナにおいては約0.15μg/mLであり、そしてGPT−OXシロイヌナズナにおいては約1.3μg/mLであった。すなわち、GPT−OXは、ツニカマイシンに対して野生型よりもほぼ10倍抵抗性であった。
続いて、ツニカマイシン抵抗性の成長表現型を、カナマイシン抵抗性の成長表現型と比較した。カナマイシンは、シロイヌナズナおよびタバコのような他の多くの植物の選択に最も一般的に用いられる。T1世代の選択を模倣するために、GPT−OX(T4世代)の種子を、野生型の種子(約5%)と混合し、そしてこの混合物を、ツニカマイシンまたはカナマイシンを含むプレートに播種した。ツニカマイシン(0.3μg/mL)を用いてスクリーニングを行った場合、野生型は、子葉も根も展開せず、一方、GPT−OXは、この抗生物質(ツニカマイシン)なしの植物と同様に成長した(図13)。形質転換シロイヌナズナは、発芽後2〜3日で同定され得る。対照的に、カナマイシン(25μg/mL)を含むプレートでは、野生型シロイヌナズナもまた子葉を展開し、そして野生型シロイヌナズナと形質転換シロイヌナズナとの間の違いは、この初期段階(発芽後約1週間)では明確ではなかった。発芽約10日後、野生型シロイヌナズナの子葉は徐々に黄色になり、そして本葉は展開しなかった(図13)。一方、形質転換シロイヌナズナは、子葉が緑色のままであり、そして成長し続けた(図13)。カナマイシンを用いた場合、形質転換シロイヌナズナを同定するには子葉の展開後少なくとも約1週間〜2週間必要であった。従って、本発明のGPTを用いた選択系では、従来の植物分野では達成できなかった1週間以内の形質転換体の選択を可能にした。
(2.1.4 GPTの過剰発現の効果)
GPT−OXシロイヌナズナはツニカマイシンに対して明確な抵抗性を示したので、GPT−OXの表現型は、野生型の表現型とは異なる。GPTの過剰発現が、植物の成長または形態に影響をもたらすか否かを調べるために、それぞれ12個体の野生型シロイヌナズナおよびGPT−OXシロイヌナズナを、並べて育て、そして同じ処理に曝した。これらの2つの群の間には、成長についても形態についても差が見られなかった。代表的な植物の写真を図15に示す。GPTの過剰発現は、通常の条件下では、目に見える表現型の差を生じないことがわかった。
これらの実験から、GPTとツニカマイシンとの組合せが、シロイヌナズナにおける、ひいては、生物における選択マーカーとして用いられ得ることが明らかに示された。図11に示すように、特に、0.3μg/mL〜0.5μg/mLの濃度でのツニカマイシンの選択は、形質転換体と野生型とを識別するに好適である。GPT−OXは、野生型よりも約10倍ツニカマイシン抵抗性が高かった。このツニカマイシン感受性の差は、おそらく、GPT活性の差を反映すると考えられる。なぜなら、本発明者らは、形質転換シロイヌナズナにおいては、野生型シロイヌナズナよりもGPT活性が約10倍高いことを観察したからである。
抗生物質に対する植物の応答は、ツニカマイシンとカナマイシンとでは全く異なっている。ツニカマイシンが過剰であると、野生型植物は、発根直後に死ぬが、形質転換体は、成長し続ける。一方、カナマイシンを用いた場合、野生型および形質転換体の両方とも最初は同様に成長し、そして発芽後約10日で、野生型と形質転換体との間の差が明確になる。すなわち、ツニカマイシンを用いると、従来よりも迅速な、形質転換体の選択が可能である。これらの結果は、この系が、しばしば複数の遺伝子の導入が必要とされるシロイヌナズナの系において、さらには多数の生物系において、さらなる形質転換系として有用であることを示す。この選択マーカーの最も有益な点は、GPT遺伝子を、シロイヌナズナのゲノムから得たということである。これは、NPTII遺伝子が細菌由来であることとは異なる。遺伝子組換え植物がネガティブに受け取られる最大の理由は、遺伝子組換え植物のゲノム中に細菌の遺伝子が存在することである。また、ツニカマイシンは除草剤ではないので、GPT遺伝子を含む植物を野外で栽培したとしても、除草剤耐性の遺伝子が野外の近縁植物に拡散する恐れはない。従って、GPT遺伝子を選択マーカーとして用いれば、形質転換植物には、細菌の遺伝子を含まなくてもよい。これは、ネガティブな社会的風潮を回避し、そして研究者が多様な形質転換作物を作製する可能性を与える、非常に大きな利点である。この目的のために、GPTおよびツニカマイシンの系を他の植物(特に、重要な作物)に応用することが必要である。
(実施例3:GPTを選択マーカーとして用いた、イチゴの形質転換)
平成13年度の日本国でのイチゴ品種の栽培面積占有率は、とよのか(36.9%)、とちおとめ(27.2%)、女峰(9.0%)、さちのか(7.7%)、章姫(7.6%)である(JA全農調べ)。数年前は西のとよのか東の女峰と日本のイチゴ品種は二分されていたが、現在の特色は、品種の変化が進んでいる点である。また、従来のイチゴは日持ちが悪く、輸送性に弱かったため、「その日のイチゴはその日に食べろ」と言われていた。しかし、現在では、大玉、固さ、日持ち、甘さの4つをクリアしたものが良いイチゴと言われ、産地のブランド化に成功した産地のみが生き残る状況になっている。そこで、以前、食味が良く風味があり有望品種であったが、日持ちや輸送性の問題で消えていった品種が再び見直されようとしている。本実施例では、食味および風味の点で優れる奈良県ブランド品種のアスカルビーの日持ち性を改善(親株と比して収穫後2日以上の日持ちを想定)する。日持ち性の改善により、店頭での賞味保証期間が延び、これまで破棄されていたイチゴが無駄にならずにすむと考えられる。
本実施例では、GPTを選択マーカーとして用いるという原理をイチゴに適用し、細菌の抗生物質抵抗性遺伝子を含まない遺伝子組換え作物の作出をおこなう。
そこで、本実施例では、イチゴ由来の遺伝子のみを用いて遺伝子の改変をおこなうことによって、消費者にとってメリットのある遺伝子組換え作物の作出を目指す。具体的には、日持ちの良いイチゴ品種の開発をおこなう。そのために、イチゴ果実の熟成を制御するRin遺伝子の発現をRNA干渉法を用いて抑制することで、収穫後の果実の熟成遅延を実現する。
まず、イチゴの遺伝子ライブラリーを作製し、GPT遺伝子と、カルスにおいて強い発現を示すPSK遺伝子のプロモーターとを選択する。これらの遺伝子を組み合せ、選択マーカー用のベクターを構築する。並行して、果実の日持ち性を制御するRin遺伝子のホモログ遺伝子を抑制するためのRNA干渉法用ベクターを構築する。
イチゴの葉切片を、この構築したベクターを用い、そして野生型のイチゴ葉切片が耐えられない濃度のツニカマイシンを含むプレートでこれらの細胞を選択すること以外は、Asao H.ら,Plant Biotechnology,1997,14(3),pp.145−149に記載の方法に従って形質転換植物体を得る。この形質転換植物体の葉から常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、イチゴの形質転換細胞由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型イチゴには存在しない導入GPT遺伝子を含んでいることがわかる。この方法により、100系統以上の独立した形質転換イチゴ植物を作出する。
作出した遺伝子組換え植物の特性を評価および検定する。Rin遺伝子の下流にあると考えられるガラクタナーゼ遺伝子の発現レベルが親株より50%以下に低下している系統を選抜し、最終的には、親株よりも収穫後の日持ちが2日以上良い形質を持った系統を取得する。
(実施例4:GPTを選択マーカーとして用いた、タバコの形質転換)
GPTを選択マーカーとして用いることを、産業用作物であるタバコに応用する。
タバコの葉切片を、シロイヌナズナ由来のGPT遺伝子を選択マーカーとして用い、そして野生型タバコが耐えられない濃度のツニカマイシンを含有するツニカマイシン含有培地を用いること以外は、岩淵雅樹・志村令郎編「ラボマニュアル 植物遺伝子の機能解析」、丸善株式会社、1992年、pp.43−45に記載の方法に従って形質転換植物体を得る。この形質転換植物体の葉から常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、タバコの形質転換細胞由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型タバコには存在しない導入GPT遺伝子を含んでいることがわかる。
本実施例により、GPTの選択マーカーとしての利用が、タバコにおいても応用できることが示される。
(実施例5:GPTを選択マーカーとして用いた、イネの形質転換)
GPTを選択マーカーとして用いることを、食糧作物であるイネに応用する。
イネを、選択マーカーとしてシロイヌナズナ由来GPTを用い、野生型イネが耐えられない濃度のツニカマイシンを用いて選択したこと以外は、島本功および岡田清孝監修「新版 モデル植物の実験プロトコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで」、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ15、2001、pp.93−98に記載の方法に従って形質転換を得る。このようにして得られる形質転換イネ個体の葉から、常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、形質転換体のイネの葉由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型イネには存在しないさらなるコピーのGPT遺伝子を含んでいることがわかる。
本実施例により、GPTの選択マーカーとしての利用が、イネにおいても応用できることが示される。
(実施例6:GPTを選択マーカーとして用いた、トマトの形質転換)
GPTを選択マーカーとして用いることを、食糧作物であるトマトに応用する。
トマトの葉を、選択マーカーとしてシロイヌナズナ由来GPT遺伝子を用いてタバコと同様の方法で形質転換し、そして野生型トマトが耐えられない濃度のツニカマイシンを含有するツニカマイシン含有培地を用いて形質転換体を選択する。得られるトマト形質転換体の葉から常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、形質転換体のトマトの葉由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型トマトには存在しないさらなるコピーのGPT遺伝子を含んでいることがわかる。
本実施例により、GPTの選択マーカーとしての利用が、トマトにおいても応用できることが示される。
(実施例7:GPTを選択マーカーとして用いた、ムラサキの形質転換)
GPTを選択マーカーとして用いることを、薬用植物であるムラサキに応用する。
ムラサキを、選択マーカーとしてシロイヌナズナ由来GPT遺伝子を用い、そしてYazaki,K.ら,Plant Cell Reports,1998,第18巻,pp.214−219に記載の方法に従って形質転換し、そして野生型ムラサキ細胞が耐えられない濃度のツニカマイシンを含有する培地を用いて形質転換細胞を選択する。この形質転換細胞から常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、ムラサキの形質転換細胞由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型ムラサキには存在しない導入GPT遺伝子を含んでいることがわかる。
本実施例により、GPTの選択マーカーとしての利用が、ムラサキにおいても応用できることが示される。
(実施例8:GPTを選択マーカーとして用いた、オウレンの形質転換)
GPTを選択マーカーとして用いることを、薬用植物であるオウレンに応用する。
オウレンを、選択マーカーとしてシロイヌナズナ由来GPT遺伝子を用い、そしてSato,F.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98(1),2001,pp.367−372に記載の方法に従って形質転換し、そして野生型オウレン細胞が耐えられない濃度のツニカマイシンを含有する培地を用いて形質転換体を選択する。この形質転換体から常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、オウレンの形質転換体由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型オウレンには存在しない導入GPT遺伝子を含んでいることがわかる。
本実施例により、GPTの選択マーカーとしての利用が、オウレンにおいても応用できることが示される。
(実施例9:GPTを選択マーカーとして用いた、ナタネの形質転換)
GPTを選択マーカーとして用いることを、油糧作物であるナタネ(Brassica napus)に応用する。
ナタネを、選択マーカーとしてシロイヌナズナ由来GPT遺伝子を用い、そしてBade,J.B.およびDamm,B.,Agrobacterium−mediated transformation of rapeseed (Brassica napus).In:I.Potrykus and G.Spangenberg(編)Gene Transfer to Plants,Springer−Verlog,Berlin,1995,pp.32−38に記載の方法に従って形質転換し、そして野生型ナタネが耐えられない濃度のツニカマイシンを含有する培地を用いて形質転換体を選択する。この形質転換体から常法に従ってゲノムDNAを採取し、上記2.1.3と同様にして、サザン分析を行う。その結果、ナタネの形質転換体由来のゲノムは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子(カナマイシン抵抗性遺伝子)および野生型ナタネには存在しない導入GPT遺伝子を含んでいることがわかる。
本実施例により、GPTの選択マーカーとしての利用が、ナタネにおいても応用できることが示される。
(実施例10:従来の抗生物質耐性系との比較)
次に、上述のようにして得られた形質転換生物の選択の速度を、従来の抗生物質耐性系であるカナマイシンと比較する。他の生物においても、通常使用される選択系と比較して形質転換体を迅速に選択できる。
このように、いずれの生物において、本発明のGPT選択マーカーを使用した場合、カナマイシン耐性系を使用した場合に比べて、顕著に迅速な選択を達成した。
本技術の確立により、細菌由来の遺伝子を用いずに、植物由来の遺伝子のみを用いた遺伝子組換え植物の作成が可能となる。この技術は、遺伝子組換え作物の作成に広く適用可能である.この適用により、遺伝子組換え作物が受け入れられやすい世論が形成され、世論を考慮し研究開発が中断している遺伝子組換え作物の開発研究の活性化が期待できる。
本発明の選択マーカーは、必要に応じて、既存の選択マーカーと併用して利用することも可能である。即ち、すでに遺伝子を導入した組換え植物に新たに遺伝子を導入する際、あるいは一度に複数の遺伝子を導入する際の付加的な選択マーカーとしても利用できる。
また、それぞれの生物が本来有している糖鎖付加関連遺伝子とその糖鎖付加阻害剤とを組み合わせて用いることにより、安全性および信頼性が高く、パブリックアクセプタンスが得られやすい、新規形質転換選択マーカーの利用技術が確立される。本法の確立により、遺伝子組換え植物が食糧増産、医薬品の生産、環境浄化などへの積極的に応用されると考えられる。本選択マーカーが幅広い種に共通して用いられ得るので、細菌遺伝子の利用が懸念されている欧州、我国などで研究の主たる作製法になり得る。植物だけでなく動物への応用も可能である。本発明の方法によれば、通常の細菌遺伝子を用いる方法と異なり、個々の生物が有している遺伝子を選択マーカーとして用いることが可能である。本発明の選択マーカーは、個々の生物(本提案では植物が中心)由来の遺伝子を用い、広く、有用植物(食用作物、薬用植物など)の遺伝子組換えに適用できる。
植物由来遺伝子を選抜マーカーとして用いる遺伝子細換え植物作製法としては、本法は世界初のものであり、水準は高いと言える。上述のようにモデル植物では、その有効性を確認済みであり、有用植物への応用実験により、優位性が大きく向上すると考えられる。
本研究は植物の組換えDNA実験を中心とするものであるが、植物由来の機能既知の遺伝子を用いるものであり、文部科学省の組換えDNAの実験指針の範疇で十分に実施が可能である。また、本技術を利用して形質転換性を確認した植物等を食用する等の実利用に当たっては、国の安全規制基準に十分応じられるよう必要な措置を講ずる。
本法の適用は、従来のネガティブパブリックアクセプタンスを打破し、我が国の植物バイオテクノロジー関連企業が持つ有用技術の活性化につながると考えられる。
本発明の次世代形質転換選抜マーカーは、植物と動物との壁を超えた種汎用性があると考えられ、治療法・薬品の研究開発に不可欠な動物細胞・個体への遺伝子導入の評価を可能にするものであり、健康医療面・産業面での波及効果が極めて大きい。
図1は、シロイヌナズナのGPT cDNAのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を示す図である。 図2は、シロイヌナズナ(配列番号1)、マウス(配列番号15)、S.cerevisiae(配列番号16)およびL.amazonensis(配列番号17)のGPTのアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。このアラインメントは、Clustal Wマルチプルアラインメントソフトウェアを用いて作製し、マニュアルで微調整した。2より多くの配列間で保存されたアミノ酸を影部で示す。mraYにおいても保存されたアミノ酸をまた、配列の上のアスタリスクで示す。シロイヌナズナ遺伝子およびマウス遺伝子においてイントロンによって中断されるトリプレットによってコードされるアミノ酸に二重下線を付す。 図3は、シロイヌナズナにおけるGPT遺伝子のゲノムDNAブロット分析の結果を示す電気泳動写真である。ゲノムDNAを、BglII(レーン1)、EcoRI(レーン2)およびHindIII(レーン3)で消化してから電気泳動した。 図4は、シロイヌナズナにおけるGPT mRNAの相対量を示す電気泳動写真である。総RNAを、成熟シロイヌナズナ植物の根(レーン1)、葉(レーン2)、茎(レーン3)および花(レーン4)から調製し、ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動によって分画し、そしてナイロンメンブレンにトランスファーした。全長cDNAを、ハイブリダイゼーションプローブとして用いた。 図5は、野生型(WT)シロイヌナズナおよびGPT過剰発現シロイヌナズナのミクロソーム中のGPTの活性を示すグラフである。UDP−[H]GlcNAcから脂質可溶性分子への放射能の取り込みを、4分後、8分後および12分後に測定した。これらの画分は、等しい量の小胞体マーカー酵素Cyt cレダクターゼを含んでいた。ツニカマイシンを、10μg/mLになるように添加し、コントロールにおいては等量のエタノールを添加した。 図6は、野生型シロイヌナズナおよび形質転換シロイヌナズナのツニカマイシン感受性を示す植物の形態を示す写真である。野生型(WT)シロイヌナズナ、pBI121保有シロイヌナズナおよびGPT過剰発現シロイヌナズナの種子を、種々の濃度(0、0.3および1.0μg/mL)のツニカマイシンを含む寒天プレートに播種した。この写真を、播種3週間後に撮影した。 図7は、複合グリカンの免疫ブロット分析を示す免疫ブロット写真である。播種後3週間の野生型シロイヌナズナの芽生え(レーン1)、pBI121保有シロイヌナズナの芽生え(レーン2)およびGPT過剰発現シロイヌナズナの芽生え(レーン3)からの抽出物を用いた。ツニカマイシンなしで成長させたシロイヌナズナおよび常に0.3μg/mL(レーン4)または1.0μg/mL(レーン5)のツニカマイシン存在下で成長させたGPT過剰発現シロイヌナズナ(図6を参照のこと)を、SDS−PAGE(12.5%)に供し、続いて複合グリカンに対する抗血清を用いて免疫ブロットした。画レーンに、7.5μgのタンパク質をローディングした。 図8は、BiP mRNAの相対量に対するツニカマイシンの影響を示す電気泳動写真である。種々の濃度のツニカマイシンで処理した野生型シロイヌナズナおよびGPT過剰発現シロイヌナズナからの総RNAを、BiP cDNAをプローブとして用いたノーザンブロット分析に供した。10μgのRNAを各レーンにローディングした。 図9は、BiP mRNAおよびGPT mRNAの相対量に対するアゼチジン2−カルボキシレート(AZC)の影響を示す電気泳動写真である。植物を、1μg/mLのツニカマイシン(Tm)または5mMのアゼチジン2−カルボキシレートで10時間処理し、そして抽出されたRNAをBiP cDNAまたはGPT cDNAでプローブした。「Cont」は、コントロールを示す。 図10は、形質転換に用いたバイナリーベクターの構造を示す模式図である。LBはレフトボーダーを示し、RBはライトボーダーを示す。NOS−proは、ノパリンシンターゼのプロモーターを示す。NPTIIは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子を示す。CaMV35S−proは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを示す。GPTは、GPT遺伝子を示す。このバイナリーベクターは、pBI121のGUS遺伝子をGPT遺伝子で置き換えたものである。 図11は、野生型シロイヌナズナ植物およびGPT−OXシロイヌナズナ植物の発芽率を示すグラフである。野生型シロイヌナズナ植物(黒四角)およびGPT−OX(白三角)の種子それぞれ約100個を、種々の濃度のツニカマイシンを含む1/2 MSプレートに播種した。播種10日後に、本葉を展開させた芽生えを、発芽したと数えた。 図12は、野生型シロイヌナズナおよびGPT−OXシロイヌナズナのカナマイシンおよびツニカマイシンに対する感受性を示す写真である。種子を、抗生物質を含まない1/2 MSプレート(コントロール)、25μg/mLカナマイシンを含む1/2 MSプレート、または0.3μg/mLツニカマイシンを含む1/2 MSプレートに播種した。播種2週間後に写真を撮影した。 図13は、GPT−OXシロイヌナズナに5%の野生型シロイヌナズナを混合して、カナマイシンまたはツニカマイシンで選択した場合の、子葉を示す写真である。この写真は、形質転換体のスクリーニングを示す。GPT−OXシロイヌナズナの種子(約5%)と野生型シロイヌナズナの種子との混合物を、25μg/mLのカナマイシンまたは0.3μg/mLのツニカマイシンを含む1/2 MSプレートに播種した。播種後10日目に写真を撮影した。 図14は、野生型シロイヌナズナ植物(WT)およびGPT−OXシロイヌナズナ植物のゲノムサザン分析を示す写真である。EcoRI(E)またはXbaI(X)で消化したゲノムDNAを、アガロースゲルで分離し、そしてブロッティングした。同じブロットを、GPT cDNA(左のパネル)またはNPTII遺伝子(右のパネル)でプローブした。 図15は、野生型シロイヌナズナ植物およびGPT−OXシロイヌナズナ植物の成長を示す写真である。野生型シロイヌナズナおよびGPT−OXシロイヌナズナの種子を、ロックウールに直接は種した。これらの植物体に、ハイポネックスを施肥し、そして16時間明/8時間暗の光周期条件で21℃で40日間成長させた。
(配列表の説明)
配列番号1:シロイヌナズナのGPTをコードするヌクレオチド配列;
配列番号2:シロイヌナズナのGPTのアミノ酸配列;
配列番号3:プライマー1および2の設計に用いた、GPTの共通アミノ酸配列;
配列番号4:プライマー3および5の設計に用いた、GPTの共通アミノ酸配列;
配列番号5:プライマー1のヌクレオチド配列;
配列番号6:プライマー2のヌクレオチド配列;
配列番号7:プライマー3のヌクレオチド配列;
配列番号8:プライマー4のヌクレオチド配列;
配列番号9:プライマー5のヌクレオチド配列;
配列番号10:プライマー6のヌクレオチド配列;
配列番号11:プライマー7のヌクレオチド配列;
配列番号12:プライマー8のヌクレオチド配列;
配列番号13:プライマー9のヌクレオチド配列;
配列番号14:プライマー10のヌクレオチド配列;
配列番号15:マウスのGPTのアミノ酸配列;
配列番号16:Saccharomyces cerevisiaeのGPTのアミノ酸配列;
配列番号17:Leishmania amazonesisのGPTのアミノ酸配列。

Claims (26)

  1. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列を含む、選択マーカー。
  2. 前記GPT必須配列が、前記GPTの全長をコードする、請求項1に記載の選択マーカー。
  3. 前記GPT必須配列が、
    (a)配列番号1の58位〜1350位に示されるヌクレオチド配列;
    (b)(a)のヌクレオチド配列と比較して、1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、GPT活性を有するヌクレオチド配列;
    (c)(a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;ならびに
    (d)(a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;
    からなる群より選択される、請求項1に記載の選択マーカー。
  4. 調節エレメントをさらに含む、請求項1に記載の選択マーカー。
  5. 前記調節エレメントが、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーからなる群より選択される少なくとも1つのエレメントを含む、請求項4に記載の選択マーカー。
  6. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、核酸分子。
  7. 前記GPT必須配列が、前記GPTの全長をコードする、請求項6に記載の核酸分子。
  8. 前記GPT必須配列が、
    (a)配列番号1の58位〜1350位に示されるヌクレオチド配列;
    (b)(a)のヌクレオチド配列と比較して、1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、GPT活性を有するヌクレオチド配列;
    (c)(a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;ならびに
    (d)(a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつGPT活性を有するヌクレオチド配列;
    からなる群より選択される、請求項6に記載の核酸分子。
  9. 調節エレメントをさらに含む、請求項6に記載の核酸分子。
  10. 前記調節エレメントが、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーからなる群より選択される少なくとも1つのエレメントを含む、請求項9に記載の核酸分子。
  11. 前記目的のヌクレオチド配列が、タンパク質コード配列またはアンチセンスコード配列である、請求項6に記載の核酸分子。
  12. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、ベクター。
  13. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、細胞。
  14. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、組織。
  15. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、器官。
  16. UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードするGPT必須配列と、目的のヌクレオチド配列とを含む、生物体。
  17. 前記生物体が植物である、請求項16に記載の生物体。
  18. 目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞の作出方法であって、該方法は、以下の工程:
    UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードする配列および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子と、目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置する工程;ならびに
    該配置された目的の細胞をツニカミニルウラシル存在下で培養して、該配置された目的の細胞のうちの増殖する細胞を形質転換細胞として選択する工程
    を包含する、方法。
  19. 前記ツニカミニルウラシルが、形質転換されていない前記目的の細胞が生存し得ない濃度で存在する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記ツニカミニルウラシルが、0.3μg/mL〜2μg/mLである、請求項18に記載の方法。
  21. 前記ツニカミニルウラシルが、ツニカマイシンである、請求項18に記載の方法。
  22. 前記目的のヌクレオチド配列が、タンパク質コード配列またはアンチセンスコード配列である、請求項18に記載の方法。
  23. 請求項18に記載の方法によって作出された細胞を含む、生物体またはその一部。
  24. 目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞を作出するためのキットであって:
    UDP−N−アセチルグルコサミン:ドリコールホスフェートN−アセチルグルコサミン−1−Pトランスフェラーゼ(GPT)の基質結合領域および膜結合領域を含むポリペプチドをコードする配列および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子;
    ツニカミニルウラシル;および
    指示書、
    を備え、該指示書は、
    目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置すること;および
    該配置された目的の細胞をツニカミニルウラシル存在下で培養して、該配置された目的の細胞のうちの増殖する細胞を形質転換細胞として選択すること、
    を指示するを記載する、
    キット。
  25. 目的のヌクレオチド配列を有する形質転換細胞を迅速に作出するための、GPTコード配列またはその改変体および目的のヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用。
  26. GPTコード配列またはその改変体の、選択マーカーとしての使用。
JP2003272607A 2003-07-09 2003-07-09 植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法 Pending JP2005027599A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003272607A JP2005027599A (ja) 2003-07-09 2003-07-09 植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003272607A JP2005027599A (ja) 2003-07-09 2003-07-09 植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005027599A true JP2005027599A (ja) 2005-02-03

Family

ID=34210110

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003272607A Pending JP2005027599A (ja) 2003-07-09 2003-07-09 植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005027599A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170055481A (ko) * 2014-08-19 2017-05-19 리제너론 파마슈티칼스 인코포레이티드 재조합 단백질의 효율적인 선택성

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170055481A (ko) * 2014-08-19 2017-05-19 리제너론 파마슈티칼스 인코포레이티드 재조합 단백질의 효율적인 선택성
JP2017525368A (ja) * 2014-08-19 2017-09-07 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドRegeneron Pharmaceuticals, Inc. 組み換え型タンパク質の効率的な選択性
US10457959B2 (en) 2014-08-19 2019-10-29 Regeneron Pharmaceuticals, Inc. Efficient selectivity of recombinant proteins
JP2020174681A (ja) * 2014-08-19 2020-10-29 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドRegeneron Pharmaceuticals, Inc. 組み換え型タンパク質の効率的な選択性
US11085053B2 (en) 2014-08-19 2021-08-10 Regeneron Pharmaceuticals, Inc. Efficient selectivity of recombinant proteins
KR102406976B1 (ko) 2014-08-19 2022-06-10 리제너론 파마슈티칼스 인코포레이티드 재조합 단백질의 효율적인 선택성
KR20220080215A (ko) * 2014-08-19 2022-06-14 리제너론 파마슈티칼스 인코포레이티드 재조합 단백질의 효율적인 선택성
JP7260510B2 (ja) 2014-08-19 2023-04-18 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 組み換え型タンパク質の効率的な選択性
KR102556383B1 (ko) 2014-08-19 2023-07-17 리제너론 파마슈티칼스 인코포레이티드 재조합 단백질의 효율적인 선택성

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2114125B1 (en) Acetyl-coa carboxylase herbicide resistant sorghum
WO2009021448A1 (en) A plant height regulatory gene and uses thereof
KR20130137620A (ko) 식물계에서의 중금속 감소
JP2009502175A (ja) 野生型krpによる活性サイクリン−cdk複合体阻害の、優性ネガティブ変異krpタンパク質の防御
JP2019533436A (ja) 腺毛状突起(glandular trichome)におけるカンナビノイドおよび他の化合物のマニピュレーションのための毛状突起特異的プロモーター
KR20180089518A (ko) 형질전환 유전자를 효율적으로 표적화하기 위한 조성물 및 방법
US10072271B2 (en) Methods for improving crop yield
JP6191996B2 (ja) 単為結果制御遺伝子およびその利用
US7968768B2 (en) Generation of plants with improved drought tolerance
EP0967278A2 (en) Flowering regulating gene and its use
US7105654B1 (en) Ethylene receptor gene from Glycine max and its use
CN110241130B (zh) 控制植物粒数和粒重的gsn1基因、编码蛋白及其应用
JPH10512451A (ja) グルタチオンs−トランスフェラーゼをコードするデオキシリボ核酸およびその使用
CN109750008B (zh) 陆地棉光信号途径调节因子GhCOP1及其应用
JP2005027599A (ja) 植物由来遺伝子を用いた遺伝子導入植物の選抜法
JPWO2008120410A1 (ja) エンドリデュプリケーション促進活性を有する遺伝子
CN117210474B (zh) 晚疫病抗性基因、生物材料及应用
RU2235778C2 (ru) Выделенный полинуклеотид, способный придавать растению устойчивость или толерантность к глифосатному гербициду, вектор, способ получения растений, толерантных или устойчивых к глифосатному гербициду, способ регенерации трансформированного растения и способ селективной борьбы с сорняками
KR102025257B1 (ko) 벼 유래의 v p 유전자의 수확량 및 환경 스트레스 조절자로서의 용도
WO2002000697A2 (en) Bonsai, a phospholipid binding protein, is required for thermal tolerance in arabidopsis
KR101546727B1 (ko) 벼 유래의 잎 발달 관련 유전자 및 이의 용도
WO2023052561A1 (en) Plants with improved properties
JPWO2005001088A1 (ja) 植物培養細胞で糖欠乏により働くプロモーターの有用タンパク質の分泌生産への適用
EP1339857A2 (en) Enhancement of freezing tolerance in transgenic plants
CA2426948A1 (en) Enhancement of freezing tolerance in transgenic plants

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060421

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060620

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060816

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20061213