JP2005026505A - 電子線描画装置、電子線描画装置の測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料に電子線を照射してパターン回路等を描画する電子線描画装置において、電子線が試料に照射されているかどうかを描画中に判定できる電子線描画装置または描画方法を提供すること。
【解決手段】電子線描画装置の描画中に、電子線照射を受けた試料が放出するX線を測定して、照射物質の種類を判別する。
【選択図】 図1
【解決手段】電子線描画装置の描画中に、電子線照射を受けた試料が放出するX線を測定して、照射物質の種類を判別する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線を用いて回路パターン等を半導体ウェハ等に描画する電子線描画装置、およびその電子線描画装置の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁レンズ等を用い細く絞った電子線を用いて回路パターン等を半導体ウェハ等に描画する電子線描画装置の課題の一つに、描画効果の測定がある。描画効果、すなわち電子線が試料に対して描画を行うにあたって、電子線が試料のどの部位に、どれだけの量照射されたかについては、現状、照射後に電子顕微鏡等で観察する方法が主に用いられている。
【0003】
電子線の照射中に、電子線の線量の変動、電子銃の不調等による一時的な照射の停止等を時宜的にモニターする方法としては、二次電子または反射電子を用いる方法が考えられる。
【0004】
特開2003−051435号公報(特許文献1)に見られるように、試料から放出される電子または試料によって反射される電子を観測して試料上のマークを検出し、照射位置補正に使用する方法であるが、これらの電子を照射モニターとして活用するには、電子検出器を試料の近くに配置する必要がある。
【0005】
このため、電子線モニターとして使用するために描画中に電子を検出しようとすると、検出器による電子の再反射により、試料へダメージを与えてしまう場合がある(「かぶり」と呼ばれる)。このため、一般には電子検出器は描画中に用いることは困難である。
【0006】
試料を構成する原子は、電子線の照射によって、反射電子、二次電子のほかX線を放射している。電子線照射によるX線の利用については、特許第3143325号特許公報(特許文献2)に記載されているようにX線を用いて試料の組成を測定する装置があるが、電子線描画装置においては同様のX線放出があるにもかかわらず、これまで積極的に利用されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−051435号公報
【特許文献2】
特許第3143325号特許公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、試料に電子線を照射してパターン回路等を描画する電子線描画装置において、電子線が試料に適正に照射されているかどうかを描画中に判定できる電子線描画装置およびその電子線描画装置の測定方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子線描画装置の描画中に、電子線の照射で前記試料から放出されるX線を検出するX線検出手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに具体的には、電子線照射を受けた試料が放出するX線を測定して電子線の照射を受けている物質やその位置の特定をすることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図面を引用して以下に説明する。
【0012】
図1は、電子線描画装置の実施形態の概略構成を表す縦断面図である。図1において、6は電子線を生成、収束させる機能を持つ電子光学系である。電子銃101(電子発生源)によって生成された電子線3は、陽極102との電位差によってエネルギー数十キロ電子ボルトに加速され、絞り104、106および電磁レンズ103、105、107(ビーム収束手段)によって成形、縮小され、偏向器108(偏向手段)によって偏向を受けて、試料1(半導体ウェハ等)に照射され、電子回路パターン等を含む図柄が描画される。
【0013】
また、試料1は試料室7の中で、試料移動機構110(載置手段)の試料保持機構109に固定され、試料移動機構110の上で水平方向に移動可能である。試料は試料交換室8内に置かれた別の試料111と自動的に交換可能で、複数の試料について連続して描画を行うことができる。これらの電子光学系6、試料室7、試料交換室8等を含む電子線描画装置は、制御用計算機9によってコントロールされ、無人動作が可能になっている。
【0014】
ここで、電子線3の照射によって、試料1からX線4が放出されている。このX線4はX線検出器2(X線検出手段)によって検出され、エネルギースペクトル弁別装置5によりX線観測信号をエネルギー分布に変換し、得られた情報を制御用計算機9に送り出している。なお、X線検出器2は、試料1から反射した電子線がX線検出器2にあたって試料に跳ね返る再反射の電子線による試料へのかぶり現象が生じない程度に離間したところに設けられる。
【0015】
次に、描画中におけるX線の検出手段について説明する。図2は電子線が照射された原子の模式図である。
【0016】
図2において、原子201は試料を構成する原子であり、原子核202の周囲に電子203、204が配置されている。このように模式化した場合、もっとも原子核に近い軌道205をK殻と呼び、この軌道205を回る電子203をK殻電子という。以下、原子核202に遠い順にL殻、M殻等と名づけられている。図にはL殻206およびL殻電子204まで書かれている。
【0017】
ここに試料1に照射されている電子線3の一部である高速電子208が入射する。電子線描画装置においては、一般に照射された高速電子208は、原子201をその種類によらず励起させ、X線を放出させるに十分なエネルギーを持つ。
【0018】
さらに、このエネルギーは、ウラン原子など特に重い幾つかの原子をのぞくほとんどの種類の原子について、K殻電子203を反跳させるために十分なエネルギーである。入射する高速電子208の衝突によってK殻電子203を一つ、二次電子209の形で失った原子207は、まもなく周辺のいずれかの電子213を空いたK殻211に捕獲し、差のエネルギーを電磁波の形で放出する。これがX線212である。原子から放出されるX線のうち、K殻のような内殻電子を原因として発生するX線をその原子の特性X線という。
【0019】
図3は、観測されるX線のエネルギースペクトルを模式的に示した概念図である。物質に電子線を照射して得られるX線スペクトルは、電子線の制動輻射等による連続したエネルギーをもつ連続X線301と、鋭いピークを持つ302、303のような特性X線からなっている。上で説明した特性X線の発生機構から、この特性X線のエネルギーまたは波長は原子の種類によって特徴的であり、特性X線の波長を測定することで、X線を放出している原子の種類を知ることができる。特性X線は、エネルギースペクトル弁別装置5や制御用計算機9を含む特性X線測定手段で測定される。
【0020】
したがって、電子線描画装置においては、得られた特性X線の波長と試料を構成する原子の原子番号とを照合することで、電子線が試料に照射されているかどうか、またどれくらいの強度で照射されているかがわかり、二次電子や反射電子のモニター手段を備えていない電子線描画装置においても、描画中に描画状況を知ることが可能になる。
【0021】
以上のように、本実施例によれば、電子線描画装置において、試料への電子線照射量を時宜的にモニターすることができ、描画ミスの少ない、精度の高い電子線描画装置または描画方法を提供することができる。
【0022】
X線の透過力が電子線に比べて高いため、X線を用いた観測は、二次電子、反跳電子を用いた観測よりも遠方で、一定の厚みの金属等を隔てても観測が可能である。また照射位置の原子の種類を簡単に知ることができる利点もある。このため、装置の設計を簡単にすることができ、装置価格および描画精度を同時に向上させることが可能になる。
【0023】
また、特性X線の応用例として、図4、図5に示すようなより詳しい情報を得ることができる。図4は、シリコンウェハ(半導体ウェハ)上にレジストが塗布され、このレジストのみを電子線描画装置によって除去する工程を示した模式図である。
【0024】
シリコンウェハ401の上にレジスト402が塗布され、そこに電子線が照射されている。407に示す位置に電子線が照射されると、放出されるX線406のエネルギースペクトルは、408のようにレジストを構成する原子に依存する、ある特徴的なスペクトルとなる。
【0025】
一方、404に示す位置に電子線が照射されると、放出されるX線403のエネルギースペクトルはシリコンウェハを構成する原子を示す405に変化し、これは特に特性X線の波長によってそれぞれ区別することが可能である。このことによって、電子線の照射位置を時宜的に得ることができる。
【0026】
また図5は、試料に標識となる元素を少量ドーピングし、エッチング等の技術を用いてその濃度を段階的に変化させた試料に電子線を照射する様子を模式的にあらわしたものである。
【0027】
試料501は少量の標識元素がドーピングされ、図で左から右に向かって濃度が増している。標識元素濃度が薄いところの、ある位置502に電子線505が照射された場合は506に示すようなエネルギースペクトルのX線504が放出される。
【0028】
一方、標識元素濃度が濃い位置503に電子線508が照射された場合は509に示すようなエネルギースペクトルのX線507が放出される。それぞれのエネルギースペクトル506、509において、試料を主に構成する原子からの特性X線によるスペクトル511に加え、微量の標識元素からの特性X線によって作られる小さいピーク510が観測される。このピークの高さを測定することによって、試料内の標識元素の濃度、すなわち、この場合には試料上での電子線の照射位置を時宜的に知ることが可能である。
【0029】
これらの情報により、照射中に電子線描画装置が、電子線の照射位置について得られる知識は飛躍的に向上し、より精度の高い電子線描画装置または描画方法を得ることができる。
【0030】
上記実施例の主な作用/効果を以下にまとめて述べる。
【0031】
1.X線は、二次電子、反跳電子よりも遠方で、観測/測定が可能であるので、X線検出器2は離間したところに設けることができる。X線検出器2が離間したところに置かれるため、従来のような電子検出器から再反射した二次電子、反跳電子よる再照射で試料がダメージ(かぶり)を受けることがなく、良質の描画を提供できる。
【0032】
2.描画中にX線検出器2により、電子線が試料上のどこに照射されているかを常に測定でき、偏向器108およびステージ110の微調整をより正確に行うことができる。
【0033】
3.特性X線の測定(エネルギースペクトル弁別装置5/制御用計算機9)により、電子線が照射されているところのレジストの有無が判断でき、描画完了を知ることができる(現状、これは多数の照射条件で実験を行って適切な照射総量を求めて実地に描画するという方法で行われている)。
【0034】
4.X線検出器2を用いることにより、従来の電子検出器を出したり入れたり(抜き差し)する構成にする必要がないので、構造が簡略化され、かつX線検出器が固定設置になるため位置精度(出し入れによる位置精度の狂いが生じない)も向上する。
【0035】
また、電子検出器を電子線描画装置に抜き差しを行う必要がある従来のものとは違い、X線検出器は最初から描画位置から離して置くことが可能であるので、設計の自由度が増し、製造原価も低減できる。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、試料に電子線を照射してパターン回路等を描画する電子線描画装置において、電子線が試料に照射されているかどうかを描画中に判定できる電子線描画装置または測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、電子線描画装置の概略を示す縦断面図。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、電子線の照射を受けた原子が特性X線を放出する経過を説明した模式図。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、X線検出器で得られるX線のX線エネルギースペクトルを示す概念図。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、シリコンウェハ上等にレジスト等が塗布された形式の試料において得られるX線のX線エネルギースペクトルを示す概念図。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、標識元素濃度を段階的に変化させた試料から得られるX線のX線エネルギースペクトルを示す概念図。
【符号の説明】
1…試料、2…X線検出器、3…電子線、4…X線、5…X線エネルギースペクトル弁別器、6…電子光学系、7…試料室、8…試料交換室、9…制御用計算機、101…電子銃、102…陽極、103…電磁レンズ、104…絞り、105…電磁レンズ、106…絞り、107…電磁レンズ、108…電子線偏向器、109…試料保持機構、110…試料移動機構、111…交換用試料、201…試料を構成する原子、202…原子核、203…K殻電子、204…L殻電子、205…K殻、206…L殻、207…X線によって励起された原子、208…高速電子、209…二次電子、210…特性X線を放出する原子、211…K殻の空位、212…放出される特性X線、213…空位を埋める電子、301…特性X線ピーク(Kα)、302…特性X線ピーク(Kβ)、303…連続X線、401…シリコンウェハ、402…レジスト、403…シリコンウェハからのX線、404…シリコンウェハに照射される電子線、405…シリコンウェハから得られるエネルギースペクトル、406…レジストからのX線、407…レジストに照射される電子線、408…レジストから得られるエネルギースペクトル、501…標識元素をドーピングされた試料、502…標識元素濃度が薄い試料上の位置、503…標識濃度が濃い試料上の位置、504…標識元素濃度が薄い部分への電子線照射によって放出されるX線、505…標識元素濃度が薄い部分へ照射される電子線、506…標識元素濃度が薄い部分から得られるエネルギースペクトル、507…標識元素濃度が濃い部分への電子線照射によって放出されるX線、508…標識元素濃度が濃い部分へ照射される電子線、509…標識元素濃度が濃い部分から得られるエネルギースペクトル、510…標識元素の特性X線、511…試料を構成する原子の特性X線。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線を用いて回路パターン等を半導体ウェハ等に描画する電子線描画装置、およびその電子線描画装置の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁レンズ等を用い細く絞った電子線を用いて回路パターン等を半導体ウェハ等に描画する電子線描画装置の課題の一つに、描画効果の測定がある。描画効果、すなわち電子線が試料に対して描画を行うにあたって、電子線が試料のどの部位に、どれだけの量照射されたかについては、現状、照射後に電子顕微鏡等で観察する方法が主に用いられている。
【0003】
電子線の照射中に、電子線の線量の変動、電子銃の不調等による一時的な照射の停止等を時宜的にモニターする方法としては、二次電子または反射電子を用いる方法が考えられる。
【0004】
特開2003−051435号公報(特許文献1)に見られるように、試料から放出される電子または試料によって反射される電子を観測して試料上のマークを検出し、照射位置補正に使用する方法であるが、これらの電子を照射モニターとして活用するには、電子検出器を試料の近くに配置する必要がある。
【0005】
このため、電子線モニターとして使用するために描画中に電子を検出しようとすると、検出器による電子の再反射により、試料へダメージを与えてしまう場合がある(「かぶり」と呼ばれる)。このため、一般には電子検出器は描画中に用いることは困難である。
【0006】
試料を構成する原子は、電子線の照射によって、反射電子、二次電子のほかX線を放射している。電子線照射によるX線の利用については、特許第3143325号特許公報(特許文献2)に記載されているようにX線を用いて試料の組成を測定する装置があるが、電子線描画装置においては同様のX線放出があるにもかかわらず、これまで積極的に利用されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2003−051435号公報
【特許文献2】
特許第3143325号特許公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、試料に電子線を照射してパターン回路等を描画する電子線描画装置において、電子線が試料に適正に照射されているかどうかを描画中に判定できる電子線描画装置およびその電子線描画装置の測定方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電子線描画装置の描画中に、電子線の照射で前記試料から放出されるX線を検出するX線検出手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに具体的には、電子線照射を受けた試料が放出するX線を測定して電子線の照射を受けている物質やその位置の特定をすることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図面を引用して以下に説明する。
【0012】
図1は、電子線描画装置の実施形態の概略構成を表す縦断面図である。図1において、6は電子線を生成、収束させる機能を持つ電子光学系である。電子銃101(電子発生源)によって生成された電子線3は、陽極102との電位差によってエネルギー数十キロ電子ボルトに加速され、絞り104、106および電磁レンズ103、105、107(ビーム収束手段)によって成形、縮小され、偏向器108(偏向手段)によって偏向を受けて、試料1(半導体ウェハ等)に照射され、電子回路パターン等を含む図柄が描画される。
【0013】
また、試料1は試料室7の中で、試料移動機構110(載置手段)の試料保持機構109に固定され、試料移動機構110の上で水平方向に移動可能である。試料は試料交換室8内に置かれた別の試料111と自動的に交換可能で、複数の試料について連続して描画を行うことができる。これらの電子光学系6、試料室7、試料交換室8等を含む電子線描画装置は、制御用計算機9によってコントロールされ、無人動作が可能になっている。
【0014】
ここで、電子線3の照射によって、試料1からX線4が放出されている。このX線4はX線検出器2(X線検出手段)によって検出され、エネルギースペクトル弁別装置5によりX線観測信号をエネルギー分布に変換し、得られた情報を制御用計算機9に送り出している。なお、X線検出器2は、試料1から反射した電子線がX線検出器2にあたって試料に跳ね返る再反射の電子線による試料へのかぶり現象が生じない程度に離間したところに設けられる。
【0015】
次に、描画中におけるX線の検出手段について説明する。図2は電子線が照射された原子の模式図である。
【0016】
図2において、原子201は試料を構成する原子であり、原子核202の周囲に電子203、204が配置されている。このように模式化した場合、もっとも原子核に近い軌道205をK殻と呼び、この軌道205を回る電子203をK殻電子という。以下、原子核202に遠い順にL殻、M殻等と名づけられている。図にはL殻206およびL殻電子204まで書かれている。
【0017】
ここに試料1に照射されている電子線3の一部である高速電子208が入射する。電子線描画装置においては、一般に照射された高速電子208は、原子201をその種類によらず励起させ、X線を放出させるに十分なエネルギーを持つ。
【0018】
さらに、このエネルギーは、ウラン原子など特に重い幾つかの原子をのぞくほとんどの種類の原子について、K殻電子203を反跳させるために十分なエネルギーである。入射する高速電子208の衝突によってK殻電子203を一つ、二次電子209の形で失った原子207は、まもなく周辺のいずれかの電子213を空いたK殻211に捕獲し、差のエネルギーを電磁波の形で放出する。これがX線212である。原子から放出されるX線のうち、K殻のような内殻電子を原因として発生するX線をその原子の特性X線という。
【0019】
図3は、観測されるX線のエネルギースペクトルを模式的に示した概念図である。物質に電子線を照射して得られるX線スペクトルは、電子線の制動輻射等による連続したエネルギーをもつ連続X線301と、鋭いピークを持つ302、303のような特性X線からなっている。上で説明した特性X線の発生機構から、この特性X線のエネルギーまたは波長は原子の種類によって特徴的であり、特性X線の波長を測定することで、X線を放出している原子の種類を知ることができる。特性X線は、エネルギースペクトル弁別装置5や制御用計算機9を含む特性X線測定手段で測定される。
【0020】
したがって、電子線描画装置においては、得られた特性X線の波長と試料を構成する原子の原子番号とを照合することで、電子線が試料に照射されているかどうか、またどれくらいの強度で照射されているかがわかり、二次電子や反射電子のモニター手段を備えていない電子線描画装置においても、描画中に描画状況を知ることが可能になる。
【0021】
以上のように、本実施例によれば、電子線描画装置において、試料への電子線照射量を時宜的にモニターすることができ、描画ミスの少ない、精度の高い電子線描画装置または描画方法を提供することができる。
【0022】
X線の透過力が電子線に比べて高いため、X線を用いた観測は、二次電子、反跳電子を用いた観測よりも遠方で、一定の厚みの金属等を隔てても観測が可能である。また照射位置の原子の種類を簡単に知ることができる利点もある。このため、装置の設計を簡単にすることができ、装置価格および描画精度を同時に向上させることが可能になる。
【0023】
また、特性X線の応用例として、図4、図5に示すようなより詳しい情報を得ることができる。図4は、シリコンウェハ(半導体ウェハ)上にレジストが塗布され、このレジストのみを電子線描画装置によって除去する工程を示した模式図である。
【0024】
シリコンウェハ401の上にレジスト402が塗布され、そこに電子線が照射されている。407に示す位置に電子線が照射されると、放出されるX線406のエネルギースペクトルは、408のようにレジストを構成する原子に依存する、ある特徴的なスペクトルとなる。
【0025】
一方、404に示す位置に電子線が照射されると、放出されるX線403のエネルギースペクトルはシリコンウェハを構成する原子を示す405に変化し、これは特に特性X線の波長によってそれぞれ区別することが可能である。このことによって、電子線の照射位置を時宜的に得ることができる。
【0026】
また図5は、試料に標識となる元素を少量ドーピングし、エッチング等の技術を用いてその濃度を段階的に変化させた試料に電子線を照射する様子を模式的にあらわしたものである。
【0027】
試料501は少量の標識元素がドーピングされ、図で左から右に向かって濃度が増している。標識元素濃度が薄いところの、ある位置502に電子線505が照射された場合は506に示すようなエネルギースペクトルのX線504が放出される。
【0028】
一方、標識元素濃度が濃い位置503に電子線508が照射された場合は509に示すようなエネルギースペクトルのX線507が放出される。それぞれのエネルギースペクトル506、509において、試料を主に構成する原子からの特性X線によるスペクトル511に加え、微量の標識元素からの特性X線によって作られる小さいピーク510が観測される。このピークの高さを測定することによって、試料内の標識元素の濃度、すなわち、この場合には試料上での電子線の照射位置を時宜的に知ることが可能である。
【0029】
これらの情報により、照射中に電子線描画装置が、電子線の照射位置について得られる知識は飛躍的に向上し、より精度の高い電子線描画装置または描画方法を得ることができる。
【0030】
上記実施例の主な作用/効果を以下にまとめて述べる。
【0031】
1.X線は、二次電子、反跳電子よりも遠方で、観測/測定が可能であるので、X線検出器2は離間したところに設けることができる。X線検出器2が離間したところに置かれるため、従来のような電子検出器から再反射した二次電子、反跳電子よる再照射で試料がダメージ(かぶり)を受けることがなく、良質の描画を提供できる。
【0032】
2.描画中にX線検出器2により、電子線が試料上のどこに照射されているかを常に測定でき、偏向器108およびステージ110の微調整をより正確に行うことができる。
【0033】
3.特性X線の測定(エネルギースペクトル弁別装置5/制御用計算機9)により、電子線が照射されているところのレジストの有無が判断でき、描画完了を知ることができる(現状、これは多数の照射条件で実験を行って適切な照射総量を求めて実地に描画するという方法で行われている)。
【0034】
4.X線検出器2を用いることにより、従来の電子検出器を出したり入れたり(抜き差し)する構成にする必要がないので、構造が簡略化され、かつX線検出器が固定設置になるため位置精度(出し入れによる位置精度の狂いが生じない)も向上する。
【0035】
また、電子検出器を電子線描画装置に抜き差しを行う必要がある従来のものとは違い、X線検出器は最初から描画位置から離して置くことが可能であるので、設計の自由度が増し、製造原価も低減できる。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、試料に電子線を照射してパターン回路等を描画する電子線描画装置において、電子線が試料に照射されているかどうかを描画中に判定できる電子線描画装置または測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、電子線描画装置の概略を示す縦断面図。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、電子線の照射を受けた原子が特性X線を放出する経過を説明した模式図。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、X線検出器で得られるX線のX線エネルギースペクトルを示す概念図。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、シリコンウェハ上等にレジスト等が塗布された形式の試料において得られるX線のX線エネルギースペクトルを示す概念図。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、標識元素濃度を段階的に変化させた試料から得られるX線のX線エネルギースペクトルを示す概念図。
【符号の説明】
1…試料、2…X線検出器、3…電子線、4…X線、5…X線エネルギースペクトル弁別器、6…電子光学系、7…試料室、8…試料交換室、9…制御用計算機、101…電子銃、102…陽極、103…電磁レンズ、104…絞り、105…電磁レンズ、106…絞り、107…電磁レンズ、108…電子線偏向器、109…試料保持機構、110…試料移動機構、111…交換用試料、201…試料を構成する原子、202…原子核、203…K殻電子、204…L殻電子、205…K殻、206…L殻、207…X線によって励起された原子、208…高速電子、209…二次電子、210…特性X線を放出する原子、211…K殻の空位、212…放出される特性X線、213…空位を埋める電子、301…特性X線ピーク(Kα)、302…特性X線ピーク(Kβ)、303…連続X線、401…シリコンウェハ、402…レジスト、403…シリコンウェハからのX線、404…シリコンウェハに照射される電子線、405…シリコンウェハから得られるエネルギースペクトル、406…レジストからのX線、407…レジストに照射される電子線、408…レジストから得られるエネルギースペクトル、501…標識元素をドーピングされた試料、502…標識元素濃度が薄い試料上の位置、503…標識濃度が濃い試料上の位置、504…標識元素濃度が薄い部分への電子線照射によって放出されるX線、505…標識元素濃度が薄い部分へ照射される電子線、506…標識元素濃度が薄い部分から得られるエネルギースペクトル、507…標識元素濃度が濃い部分への電子線照射によって放出されるX線、508…標識元素濃度が濃い部分へ照射される電子線、509…標識元素濃度が濃い部分から得られるエネルギースペクトル、510…標識元素の特性X線、511…試料を構成する原子の特性X線。
Claims (7)
- 電子線を放出する電子発生源と、放出されて来る電子線を細く絞るビーム収束手段と、絞られた電子線を偏向する偏向手段と、電子線の照射で電子回路パターンを含む図柄が描画されるところの半導体ウェハを含めた試料を載置する載置手段とを有する電子線描画装置において、
電子線の照射で前記試料から放出されるX線を検出するX線検出手段を設けたことを特徴とする電子線描画装置。 - 請求項1記載の電子線描画装置において、
前記X線検出手段が検出するX線中の特性X線を計測して電子線を照射しているところの物質や位置の特定をする特性X線測定手段を有することを特徴とする電子線描画装置。 - 請求項2記載の電子線描画装置において、
前記特性X線測定手段は、エネルギー弁別装置や制御計算機を含むことを特徴とする電子線描画装置。 - 請求項1〜3の何れか一つに記載された電子線描画装置において、
前記X線検出手段は、前記試料から反射した電子線が前記X線検出手段にあたって前記試料に跳ね返る再反射の電子線による前記試料へのかぶり現象が生じない程度に離間して設けたことを特徴とする電子線描画装置。 - 電子線を放出する電子発生源と、放出されて来る電子線を細く絞るビーム収束手段と、絞られた電子線を偏向する偏向手段と、電子線の照射で電子回路パターンを含む図柄が描画されるところの半導体ウェハを含めた試料を載置する載置手段とを有する電子線描画装置において、
電子線の照射で前記試料から放出されるX線中の特性X線を測定することを特徴とする電子線描画装置の測定方法。 - 電子線を放出する電子発生源と、放出されて来る電子線を細く絞るビーム収束手段と、絞られた電子線を偏向する偏向手段と、電子線の照射で電子回路パターンを含む図柄が描画されるところの半導体ウェハを含めた試料を載置する載置手段とを有する電子線描画装置において、
電子線の照射で前記試料から放出されるX線中の特性X線を測定して、電子線を照射しているところの物質や位置の特定をすることを特徴とする電子線描画装置の測定方法。 - 電子線を放出する電子発生源と、放出されて来る電子線を細く絞るビーム収束手段と、絞られた電子線を偏向する偏向手段と、電子線の照射で電子回路パターンを含む図柄が描画されるところの半導体ウェハを含めた試料を載置する載置手段とを有する電子線描画装置において、
電子線の照射で前記試料から放出されるX線中の特性X線を測定して、電子線を照射しているところの物質や位置の特定をしながら、電子線の照射による描画を実行することを特徴とする電子線描画装置の描画方法。
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JP2003191010A JP2005026505A (ja) | 2003-07-03 | 2003-07-03 | 電子線描画装置、電子線描画装置の測定方法 |
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- 2003-07-03 JP JP2003191010A patent/JP2005026505A/ja active Pending
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