JPH095263A - 微量元素の検出方法 - Google Patents
微量元素の検出方法Info
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- JPH095263A JPH095263A JP7172919A JP17291995A JPH095263A JP H095263 A JPH095263 A JP H095263A JP 7172919 A JP7172919 A JP 7172919A JP 17291995 A JP17291995 A JP 17291995A JP H095263 A JPH095263 A JP H095263A
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- proton beam
- energy
- ray
- rays
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 試料の表面に存在する微量元素を高感度に検
出できる方法を提供すること。さらに真空にしないで試
料の表面元素の検出のできる方法を提供することが目的
である。 【構成】 3.5MeV以下のエネルギ−の陽子線を、
試料面に対して1°以下の低角度で照射し、内殻電子を
励起しその電子が基底状態に戻る時に発生する特性X線
を検出することによって、試料面に存在する微量元素の
種類、存在量を求める。
出できる方法を提供すること。さらに真空にしないで試
料の表面元素の検出のできる方法を提供することが目的
である。 【構成】 3.5MeV以下のエネルギ−の陽子線を、
試料面に対して1°以下の低角度で照射し、内殻電子を
励起しその電子が基底状態に戻る時に発生する特性X線
を検出することによって、試料面に存在する微量元素の
種類、存在量を求める。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鏡面試料表面に存在す
る微量元素または鏡面試料表面の近傍に存在する微量元
素を高感度に検出する方法に関する。
る微量元素または鏡面試料表面の近傍に存在する微量元
素を高感度に検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】試料表面の元素の存在量を調べるために
多くの方法が提案されている。何らかのビームを試料に
照射し、試料から発生する何らかのビームのエネルギ
ー、強度や分布を測定して微量元素の量を検出する。入
射ビームとしては、光、X線、電子線、イオンビームな
どがある。出射ビームとしては、光、X線、電子線、イ
オンビームなどがある。これらを組み合わせて様々な方
法が試みられている。それぞれに利点や欠点がある。試
料に対する適性もある。試料の何を知りたいかという事
により、どの検査方法が適当であるかという事が決ま
る。光とX線は何れも電磁波であるから区別しないこと
もある。
多くの方法が提案されている。何らかのビームを試料に
照射し、試料から発生する何らかのビームのエネルギ
ー、強度や分布を測定して微量元素の量を検出する。入
射ビームとしては、光、X線、電子線、イオンビームな
どがある。出射ビームとしては、光、X線、電子線、イ
オンビームなどがある。これらを組み合わせて様々な方
法が試みられている。それぞれに利点や欠点がある。試
料に対する適性もある。試料の何を知りたいかという事
により、どの検査方法が適当であるかという事が決ま
る。光とX線は何れも電磁波であるから区別しないこと
もある。
【0003】イオンを当てた時に出てくるイオンを調べ
る場合もある。この場合でも入射イオンが散乱されたも
のを検出する事もあるし(RBS:Rutherford Backsca
ttering Spectroscopy, ラザフォード後方散乱法)、二
次イオンを検出することもある(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectroscopy,2次イオン質量分析法)。
る場合もある。この場合でも入射イオンが散乱されたも
のを検出する事もあるし(RBS:Rutherford Backsca
ttering Spectroscopy, ラザフォード後方散乱法)、二
次イオンを検出することもある(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectroscopy,2次イオン質量分析法)。
【0004】イオンビームを当てる場合でも、水素イオ
ン(プロトン、陽子)の場合は他のイオンの場合と区別
する。水素イオンビームはプロトンビーム或いは陽子線
という。この場合も、散乱されたプロトンビーム自体の
エネルギー分布を観測するものもあれば(PELS:Pr
oton Energy Loss Spectroscopy,陽子エネルギー損失分
光法)、或いはこれによって出てくる二次電子を観測す
る方法もある。又、これによって発生するX線を観測す
る方法も可能である。本発明はこのX線を観測する方法
に関する。
ン(プロトン、陽子)の場合は他のイオンの場合と区別
する。水素イオンビームはプロトンビーム或いは陽子線
という。この場合も、散乱されたプロトンビーム自体の
エネルギー分布を観測するものもあれば(PELS:Pr
oton Energy Loss Spectroscopy,陽子エネルギー損失分
光法)、或いはこれによって出てくる二次電子を観測す
る方法もある。又、これによって発生するX線を観測す
る方法も可能である。本発明はこのX線を観測する方法
に関する。
【0005】[PIXE](Perticle Induced X-ray Em
ission, 粒子励起X線分光法) 陽子線を試料に照射し、発生した特性X線から元素濃度
を測定する方法は、PIXEとして広く知られている。
PIXEは例えば、「表面分析図鑑(日本表面科学会
編、共立出版)」に詳しく紹介されている。高速の陽子
線(水素イオン)を測定したい試料に照射する。陽子線
のエネルギ−は数MeVである。内殻の電子が陽子線に
よって叩き上げられる。
ission, 粒子励起X線分光法) 陽子線を試料に照射し、発生した特性X線から元素濃度
を測定する方法は、PIXEとして広く知られている。
PIXEは例えば、「表面分析図鑑(日本表面科学会
編、共立出版)」に詳しく紹介されている。高速の陽子
線(水素イオン)を測定したい試料に照射する。陽子線
のエネルギ−は数MeVである。内殻の電子が陽子線に
よって叩き上げられる。
【0006】この電子が励起準位にある時間は極短い。
やがて元の内殻準位に戻る。この時にX線を放出する。
このX線のエネルギ−は、励起準位と元の準位のエネル
ギ−の差に等しい。つまり原子状態によって決まるエネ
ルギ−である。固有のエネルギ−を持つX線であって、
原子の構造を反映しているので、特性X線と呼ぶ。X線
のエネルギ−は波長の逆数であるから、波長をしればエ
ネルギ−が分かる。
やがて元の内殻準位に戻る。この時にX線を放出する。
このX線のエネルギ−は、励起準位と元の準位のエネル
ギ−の差に等しい。つまり原子状態によって決まるエネ
ルギ−である。固有のエネルギ−を持つX線であって、
原子の構造を反映しているので、特性X線と呼ぶ。X線
のエネルギ−は波長の逆数であるから、波長をしればエ
ネルギ−が分かる。
【0007】これに対して、制動輻射、散乱などによっ
て誘起されるX線は特別なエネルギ−を取らない。広い
波長範囲に平坦に分布する。それ故、これらは白色X線
という。陽子線のエネルギ−によってどの内殻電子を励
起するかということが決まる。数MeVの高いエネルギ
−の陽子線を当てるということは、K殻電子を叩き励起
するということである。
て誘起されるX線は特別なエネルギ−を取らない。広い
波長範囲に平坦に分布する。それ故、これらは白色X線
という。陽子線のエネルギ−によってどの内殻電子を励
起するかということが決まる。数MeVの高いエネルギ
−の陽子線を当てるということは、K殻電子を叩き励起
するということである。
【0008】質量の大きい陽子を使うので、電子を使う
場合に比べて制動輻射を受け難い。ために白色ノイズが
少ないという長所がある。このために微量分析に向いて
いる。数mgの試料であっても元素濃度を分析すること
ができる。ppmオ−ダで不純物の濃度を測定できる。
波長ごとに対応元素が違うことを利用し、全元素の濃度
を同時に決定できる。ために極めて短時間に全元素量を
分析することができる。
場合に比べて制動輻射を受け難い。ために白色ノイズが
少ないという長所がある。このために微量分析に向いて
いる。数mgの試料であっても元素濃度を分析すること
ができる。ppmオ−ダで不純物の濃度を測定できる。
波長ごとに対応元素が違うことを利用し、全元素の濃度
を同時に決定できる。ために極めて短時間に全元素量を
分析することができる。
【0009】質量の大きい陽子線を使うので、質量の小
さい元素(原子番号が10以下)に対して感度が悪い。
陽子線が、原子核そのものを弾き飛ばすこともあるし、
内殻電子のエネルギ−がそれほど低くないから、励起さ
れにくいということもある。
さい元素(原子番号が10以下)に対して感度が悪い。
陽子線が、原子核そのものを弾き飛ばすこともあるし、
内殻電子のエネルギ−がそれほど低くないから、励起さ
れにくいということもある。
【0010】通常は陽子線を試料面に対して45°に照
射する。照射角=45°である。分厚い試料にはむかな
い測定方法である。陽子線が内部で散乱され、散乱陽子
によるX線が発生しバックグラウンドが大きくなるから
である。従来は対象試料の微小量を有機薄膜に付着する
ことで分析試料としていた。このバッキング材として使
用する有機薄膜には、不純物濃度が低いこと、取り扱い
を容易にするための強度、陽子線照射による熱ダメージ
に耐え得る耐熱性が必要であり、全てを満足する有機薄
膜はいまだ開発されていない。
射する。照射角=45°である。分厚い試料にはむかな
い測定方法である。陽子線が内部で散乱され、散乱陽子
によるX線が発生しバックグラウンドが大きくなるから
である。従来は対象試料の微小量を有機薄膜に付着する
ことで分析試料としていた。このバッキング材として使
用する有機薄膜には、不純物濃度が低いこと、取り扱い
を容易にするための強度、陽子線照射による熱ダメージ
に耐え得る耐熱性が必要であり、全てを満足する有機薄
膜はいまだ開発されていない。
【0011】X線を測定対象にするから試料が真空中に
なくても良い。大気圧下でも可能な方法である。RBS
やPELSなど、反跳イオンの角度分布を利用するもの
は、GaとAsのように質量数の似通った元素を区別す
ることが難しい。しかしPIXEは特性X線を用いるか
ら質量数の近似した元素を容易に識別することができ
る。
なくても良い。大気圧下でも可能な方法である。RBS
やPELSなど、反跳イオンの角度分布を利用するもの
は、GaとAsのように質量数の似通った元素を区別す
ることが難しい。しかしPIXEは特性X線を用いるか
ら質量数の近似した元素を容易に識別することができ
る。
【0012】[全反射蛍光X線法]強力な単色のX線を
試料に当てると、試料から蛍光X線が出る。蛍光X線の
波長毎の強度を測定すると、試料の構成元素を同定する
ことができる。入射X線によって試料の上の元素が励起
される。励起準位から元の準位に下がる時にX線を発生
する。これが蛍光X線である。蛍光X線の量を、半導体
検出器(Si(Li)など)によって測定する。
試料に当てると、試料から蛍光X線が出る。蛍光X線の
波長毎の強度を測定すると、試料の構成元素を同定する
ことができる。入射X線によって試料の上の元素が励起
される。励起準位から元の準位に下がる時にX線を発生
する。これが蛍光X線である。蛍光X線の量を、半導体
検出器(Si(Li)など)によって測定する。
【0013】蛍光X線の波長から、このX線はどの元素
から放出されたかということが分かる。その波長のX線
の強度からその元素の存在量が分かる。X線は試料の内
部まで入り、かなり深い部分の元素の分析も可能であ
る。普通は試料に対して直角にX線を照射し、蛍光X線
はいずれかの角度に出るものを検出するようになってい
る。
から放出されたかということが分かる。その波長のX線
の強度からその元素の存在量が分かる。X線は試料の内
部まで入り、かなり深い部分の元素の分析も可能であ
る。普通は試料に対して直角にX線を照射し、蛍光X線
はいずれかの角度に出るものを検出するようになってい
る。
【0014】特に試料の表面近くだけの元素分析のため
に新しく登場したのが、全反射蛍光X線分析法である。
これはX線を平行ビ−ムにして、試料の表面スレスレに
(低角度で)照射する。散乱X線は、反対側に試料スレ
スレの角度で出て行く。X線は試料の内部に入らない。
X線のすべては反射(散乱)されて外部に出て行く。低
角度入射であって全部が反射するので全反射蛍光X線法
と呼ぶ(TotalReflection X−ray
Fluorescence)。
に新しく登場したのが、全反射蛍光X線分析法である。
これはX線を平行ビ−ムにして、試料の表面スレスレに
(低角度で)照射する。散乱X線は、反対側に試料スレ
スレの角度で出て行く。X線は試料の内部に入らない。
X線のすべては反射(散乱)されて外部に出て行く。低
角度入射であって全部が反射するので全反射蛍光X線法
と呼ぶ(TotalReflection X−ray
Fluorescence)。
【0015】試料の内部に散乱X線が入らないのでバッ
クグラウンドが小さい、或いは、試料の内部にX線が入
り込まないから表面近くのみの測定ができる、などの特
徴がある。また試料の表面にスレスレの角度でビ−ムを
入射するから、試料の表面は平滑でなければならない。
クグラウンドが小さい、或いは、試料の内部にX線が入
り込まないから表面近くのみの測定ができる、などの特
徴がある。また試料の表面にスレスレの角度でビ−ムを
入射するから、試料の表面は平滑でなければならない。
【0016】入射X線のエネルギ−は数keVから数十
keVの程度である。蛍光X線は面と直角に出たものを
測定する。この測定方法はTRXRFと略記される。p
pb〜ppm程度の感度を発揮する事ができるとされ
る。しかしX線によるK殻のイオン化断面積は小さい。
TRXRFは全反射条件を満足するほどに低照射角でX
線を入射する手法であるからここに記載する。低角度で
試料に当たるから表面の元素のみを測定できる。
keVの程度である。蛍光X線は面と直角に出たものを
測定する。この測定方法はTRXRFと略記される。p
pb〜ppm程度の感度を発揮する事ができるとされ
る。しかしX線によるK殻のイオン化断面積は小さい。
TRXRFは全反射条件を満足するほどに低照射角でX
線を入射する手法であるからここに記載する。低角度で
試料に当たるから表面の元素のみを測定できる。
【0017】その他にも、微量元素を高感度に分析する
方法として、二次イオン質量分析法(SIMS)があ
る。超高真空に保持した装置内で、試料にイオンビーム
を当てて表面から発生する二次イオンを測定して、表面
に存在する元素の量を求めるものである。これはppb
〜ppmの感度を有する。
方法として、二次イオン質量分析法(SIMS)があ
る。超高真空に保持した装置内で、試料にイオンビーム
を当てて表面から発生する二次イオンを測定して、表面
に存在する元素の量を求めるものである。これはppb
〜ppmの感度を有する。
【0018】さらに低照射角度で試料にビ−ムを照射す
るものとしては、低いエネルギ−の電子線を面スレスレ
に当て、その回折線を検出するものもある。LEEDと
いう。これは電子がプロ−ブになっているが、その回折
によって試料の表面構造の回折パタ−ンを調べるもので
ある。電子線をプロ−ブとするがX線を観測するEPM
Aとは違う。測定原理は本発明とも異なるが、低照射角
度でビ−ムを照射するのでここに記載する。
るものとしては、低いエネルギ−の電子線を面スレスレ
に当て、その回折線を検出するものもある。LEEDと
いう。これは電子がプロ−ブになっているが、その回折
によって試料の表面構造の回折パタ−ンを調べるもので
ある。電子線をプロ−ブとするがX線を観測するEPM
Aとは違う。測定原理は本発明とも異なるが、低照射角
度でビ−ムを照射するのでここに記載する。
【0019】このように数多くの測定方法がある。励起
手段は光、X線、電子、陽子、イオン、中性子などであ
り、検出対象は光、X線、電子、陽子、イオン、中性子
などである。入射ビ−ムと出射ビ−ムの組合せによって
実に多様な測定方法がある。入射角度も最適の範囲とい
うものがある。これらの測定技術は全て目的、原理、手
段、具体的な装置構成において異なっている。最適の測
定を行うには、それぞれの方法を厳密に区別する必要が
ある。
手段は光、X線、電子、陽子、イオン、中性子などであ
り、検出対象は光、X線、電子、陽子、イオン、中性子
などである。入射ビ−ムと出射ビ−ムの組合せによって
実に多様な測定方法がある。入射角度も最適の範囲とい
うものがある。これらの測定技術は全て目的、原理、手
段、具体的な装置構成において異なっている。最適の測
定を行うには、それぞれの方法を厳密に区別する必要が
ある。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】SIMSは高感度に微
量元素を検出する事ができる。しかしこれは超高真空を
必要とする。ために、試料の交換などに大きな手間と時
間がかかる。これが測定のコストを押し上げる。RBS
やPELSなど散乱ビ−ムが観測の対象になるものは全
て真空を必要とする。また二次イオンや二次電子を測定
の対象にするものも、高真空が必要である。イオンや電
子のエネルギ−が測定の対象になるが、大気圧中では衝
突によってイオンや電子は検出器に至るまでにエネルギ
−を失ってしまうからである。
量元素を検出する事ができる。しかしこれは超高真空を
必要とする。ために、試料の交換などに大きな手間と時
間がかかる。これが測定のコストを押し上げる。RBS
やPELSなど散乱ビ−ムが観測の対象になるものは全
て真空を必要とする。また二次イオンや二次電子を測定
の対象にするものも、高真空が必要である。イオンや電
子のエネルギ−が測定の対象になるが、大気圧中では衝
突によってイオンや電子は検出器に至るまでにエネルギ
−を失ってしまうからである。
【0021】近年新たに開発された全反射蛍光X線分析
法(TRXRF)は表面近傍の元素状態を測定するもの
として高感度である、と言われている。しかしX線自体
のエネルギ−が低いし、高密度のビ−ムが得られない。
W、Mo、Cuなどを対陰極とするX線管によってはな
かなか強力なX線が発生しない。
法(TRXRF)は表面近傍の元素状態を測定するもの
として高感度である、と言われている。しかしX線自体
のエネルギ−が低いし、高密度のビ−ムが得られない。
W、Mo、Cuなどを対陰極とするX線管によってはな
かなか強力なX線が発生しない。
【0022】陽子やイオンはク−ロン力によって電子と
相互作用する。だから陽子線やイオンビ−ムによるK殻
イオン化断面積は大きい。しかしX線と電子はク−ロン
力のようなロングレンジの相互作用をしない。だからK
殻のイオン化断面積が小さい。測定に時間をかけるか、
光輝度の光源を使う必要がある。強力なX線を発生する
ものとしてシンクロトロン放射光(SO−ring)が
ある。しかしこれは巨大な設備が必要である。簡単に実
施できるものではない。
相互作用する。だから陽子線やイオンビ−ムによるK殻
イオン化断面積は大きい。しかしX線と電子はク−ロン
力のようなロングレンジの相互作用をしない。だからK
殻のイオン化断面積が小さい。測定に時間をかけるか、
光輝度の光源を使う必要がある。強力なX線を発生する
ものとしてシンクロトロン放射光(SO−ring)が
ある。しかしこれは巨大な設備が必要である。簡単に実
施できるものではない。
【0023】超高真空を不要とする微量元素の検出方法
を提供する事が本発明の第1の目的である。大型の設備
を要しない微量元素の検出方法を提供する事が本発明の
第2の目的である。試料表面のみの元素検出が出来る微
量元素の検出方法を提供する事が本発明の第3の目的で
ある。より高感度の微量元素の検出方法を提供する事が
本発明の第4の目的である。
を提供する事が本発明の第1の目的である。大型の設備
を要しない微量元素の検出方法を提供する事が本発明の
第2の目的である。試料表面のみの元素検出が出来る微
量元素の検出方法を提供する事が本発明の第3の目的で
ある。より高感度の微量元素の検出方法を提供する事が
本発明の第4の目的である。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明は励起源として、
陽子を用いる。陽子線を鏡面研磨した試料表面或いは鏡
面に付着した試料の表面に照射し、試料表面、表面近傍
の原子を励起させる。図4に示すように、励起原子が基
底状態に戻るときに特性X線を発生させる。この特性X
線を観測して、試料表面、表面近傍の微量元素の存在量
を測定する。陽子線のエネルギーは、3.5MeV以下
とする。試料に対する、陽子線の照射角は、1°以下と
する。さらには0.3°以下とするのが望ましい。
陽子を用いる。陽子線を鏡面研磨した試料表面或いは鏡
面に付着した試料の表面に照射し、試料表面、表面近傍
の原子を励起させる。図4に示すように、励起原子が基
底状態に戻るときに特性X線を発生させる。この特性X
線を観測して、試料表面、表面近傍の微量元素の存在量
を測定する。陽子線のエネルギーは、3.5MeV以下
とする。試料に対する、陽子線の照射角は、1°以下と
する。さらには0.3°以下とするのが望ましい。
【0025】
【作用】本発明は試料原子の励起源として、陽子線を用
いる。しかも陽子線のエネルギーが3.5MeV以下と
し、入射角は1°以下とする。本発明は陽子線を使うの
で、他の励起手段つまり光子、電子線に比べて励起効率
が100倍〜1000倍高い。本発明に係る微量元素の
検出方法の概念図を図3に示す。
いる。しかも陽子線のエネルギーが3.5MeV以下と
し、入射角は1°以下とする。本発明は陽子線を使うの
で、他の励起手段つまり光子、電子線に比べて励起効率
が100倍〜1000倍高い。本発明に係る微量元素の
検出方法の概念図を図3に示す。
【0026】本発明は3.5MeV以下の陽子線を利用
する。この理由をまず説明する。陽子線のエネルギーが
3.5MeVを越えると、核反応断面積が急激に高くな
り、(p,n)反応などで放射性同位元素が大量に発生
する。大量にできた放射性同位元素が壊変するが、この
時に大量のγ線、X線を発生する。
する。この理由をまず説明する。陽子線のエネルギーが
3.5MeVを越えると、核反応断面積が急激に高くな
り、(p,n)反応などで放射性同位元素が大量に発生
する。大量にできた放射性同位元素が壊変するが、この
時に大量のγ線、X線を発生する。
【0027】このγ線、X線がバックグラウンドとな
り、S/N比が悪くなってしまう。核反応断面積をある
程度の値以下に制限するために、入射陽子線のエネルギ
ーを3.5MeV以下とするのである。本発明は核反応
を避け、電子を励起するために陽子線を使うのである。
このため、高すぎるエネルギ−の陽子線は役に立たな
い。
り、S/N比が悪くなってしまう。核反応断面積をある
程度の値以下に制限するために、入射陽子線のエネルギ
ーを3.5MeV以下とするのである。本発明は核反応
を避け、電子を励起するために陽子線を使うのである。
このため、高すぎるエネルギ−の陽子線は役に立たな
い。
【0028】しかし余りに陽子線のエネルギーが低い
と、反対に試料が励起され難くなるから、陽子線のエネ
ルギーは1.5MeV以上とするのが良い。さらに本発
明は、低入射角で陽子線を試料に当てる。この理由は次
のようである。
と、反対に試料が励起され難くなるから、陽子線のエネ
ルギーは1.5MeV以上とするのが良い。さらに本発
明は、低入射角で陽子線を試料に当てる。この理由は次
のようである。
【0029】高入射角で試料表面に陽子線を入射させる
と、試料の内部深くまで陽子が侵入する。ために散乱が
激しく起こり、散乱陽子がX線を発生しこれがバックグ
ラウンドとなる。反対に低入射角で陽子線を当てると、
陽子は1回だけ対象の原子に衝突しすぐに外部に散乱さ
れる。試料内部での散乱が小さくバックグラウンドが抑
えられる。
と、試料の内部深くまで陽子が侵入する。ために散乱が
激しく起こり、散乱陽子がX線を発生しこれがバックグ
ラウンドとなる。反対に低入射角で陽子線を当てると、
陽子は1回だけ対象の原子に衝突しすぐに外部に散乱さ
れる。試料内部での散乱が小さくバックグラウンドが抑
えられる。
【0030】鏡面研磨された試料、或いは鏡面の上に付
着した試料を対象にする理由は以下のようである。試料
の表面に凹凸があると、陽子線が凸部によって散乱され
る。散乱陽子線によってさらにX線が発生するのでこれ
がバックグラウンドとなる。陽子線と対象原子との核反
応が1回だけ起こる事が望ましい。そこで試料表面に凹
凸がない方が良い。
着した試料を対象にする理由は以下のようである。試料
の表面に凹凸があると、陽子線が凸部によって散乱され
る。散乱陽子線によってさらにX線が発生するのでこれ
がバックグラウンドとなる。陽子線と対象原子との核反
応が1回だけ起こる事が望ましい。そこで試料表面に凹
凸がない方が良い。
【0031】試料の形状は、表面で陽子線の散乱が起こ
らないものである必要がある。鏡面の固体の試料であれ
ばそのまま測定の対象にできる。溶液の場合は、鏡面支
持体の上に溶液を滴下して、乾燥したものを試料とする
ことができる。鏡面支持体としては、高純度で鏡面の得
やすい材料を選ぶべきである。例えばSi、GaAsな
どの半導体ウエハ−が好適である。
らないものである必要がある。鏡面の固体の試料であれ
ばそのまま測定の対象にできる。溶液の場合は、鏡面支
持体の上に溶液を滴下して、乾燥したものを試料とする
ことができる。鏡面支持体としては、高純度で鏡面の得
やすい材料を選ぶべきである。例えばSi、GaAsな
どの半導体ウエハ−が好適である。
【0032】陽子線のエネルギーが3.5MeV以下で
あるべきであるという事は既に述べた。エネルギーの上
限が3.5MeVであるという事である。陽子線のエネ
ルギーは1MeVでも0.5MeVでも良い。しかし
1.5MeV以上であるとさらに良い。その理由は次の
通りである。
あるべきであるという事は既に述べた。エネルギーの上
限が3.5MeVであるという事である。陽子線のエネ
ルギーは1MeVでも0.5MeVでも良い。しかし
1.5MeV以上であるとさらに良い。その理由は次の
通りである。
【0033】特性X線の放出確率は、陽子線による原子
のK殻電子の励起確率に比例する。この確率は、元素に
よって大きな差はない。しかしこの励起確率は陽子線の
エネルギーに強く依存する。1.5MeV以上のエネル
ギーの陽子線を用いると、K殻電子の励起確率が高い。
さらに1.5MeV以上のエネルギーの陽子線によって
励起すると、元素による励起確率のばらつきが少ない。
全元素に渡って高感度の分析を行うことができる。1.
5MeV以上の陽子線を用いると、励起確率が光子の場
合より100倍〜1000倍高い。
のK殻電子の励起確率に比例する。この確率は、元素に
よって大きな差はない。しかしこの励起確率は陽子線の
エネルギーに強く依存する。1.5MeV以上のエネル
ギーの陽子線を用いると、K殻電子の励起確率が高い。
さらに1.5MeV以上のエネルギーの陽子線によって
励起すると、元素による励起確率のばらつきが少ない。
全元素に渡って高感度の分析を行うことができる。1.
5MeV以上の陽子線を用いると、励起確率が光子の場
合より100倍〜1000倍高い。
【0034】さらに、1.5MeV以下のエネルギーの
陽子線によって原子を励起すると、多電子の同時励起が
起こり易くなる。するとサテライト線と呼ばれるX線の
ピークが複数本発生し、X線強度の決定の妨げになる。
1.5MeV以上のエネルギーであると多電子励起が起
こり難く、陽子一つが電子一つの励起を引き起こす。従
って対象元素の分布量を正しく検出することができる。
陽子線によって原子を励起すると、多電子の同時励起が
起こり易くなる。するとサテライト線と呼ばれるX線の
ピークが複数本発生し、X線強度の決定の妨げになる。
1.5MeV以上のエネルギーであると多電子励起が起
こり難く、陽子一つが電子一つの励起を引き起こす。従
って対象元素の分布量を正しく検出することができる。
【0035】低角度入射が良いという事は既に述べた。
試料の表面に殆ど平行に陽子線ビームが入射する。照射
角度が1°以下であれば、散乱が少なくバックグラウン
ドを抑制できるから、ppmレベルの高感度検出が可能
である。
試料の表面に殆ど平行に陽子線ビームが入射する。照射
角度が1°以下であれば、散乱が少なくバックグラウン
ドを抑制できるから、ppmレベルの高感度検出が可能
である。
【0036】陽子線の照射角度をさらに小さくして0.
3°以下にすると、照射陽子線が全反射を起こし試料の
内部に殆ど入らない。ために試料中での散乱が殆ど起こ
らず、散乱によるバックグラウンドをさらに小さくでき
る。全反射条件を巧みに利用すれば、バックグラウンド
を抑制し、精度の高い微量元素の測定を行うことができ
る。
3°以下にすると、照射陽子線が全反射を起こし試料の
内部に殆ど入らない。ために試料中での散乱が殆ど起こ
らず、散乱によるバックグラウンドをさらに小さくでき
る。全反射条件を巧みに利用すれば、バックグラウンド
を抑制し、精度の高い微量元素の測定を行うことができ
る。
【0037】全反射の起こる条件は陽子線エネルギーに
強く依存している。エネルギーへの依存性は物質によっ
て違う。図1にSi、GaAsの場合の陽子線エネルギ
ーと、全反射臨界角の関係を示す。横軸は入射陽子線の
エネルギーである。縦軸は全反射の起こる最大の照射角
度である。
強く依存している。エネルギーへの依存性は物質によっ
て違う。図1にSi、GaAsの場合の陽子線エネルギ
ーと、全反射臨界角の関係を示す。横軸は入射陽子線の
エネルギーである。縦軸は全反射の起こる最大の照射角
度である。
【0038】GaAsが試料の場合は、同じ陽子線エネ
ルギーであっても、全反射が起こる角度が大きいので余
裕がある。陽子線エネルギーが1MeVで0.3°、2
MeVで0.2°、3MeVで0.16°の程度であ
る。
ルギーであっても、全反射が起こる角度が大きいので余
裕がある。陽子線エネルギーが1MeVで0.3°、2
MeVで0.2°、3MeVで0.16°の程度であ
る。
【0039】Siが試料の場合は、陽子線エネルギーが
1MeVで0.19°、2MeVで0.13°の程度で
ある。照射角が0.3°以下とすると、GaAsの場合
は、陽子線エネルギーが1MeV以上であれば、全反射
条件を満足できる。Siの場合は、陽子線エネルギーが
0.5MeV以上であれば全反射条件を満たす。陽子線
エネルギーが高い方が、全反射条件が厳しくなる。これ
は当然のことである。エネルギーが高いと結晶の内部に
進入する力が強くなるからである。陽子線エネルギーが
1.5MeVで、Siは0.14°以下で、GaAsは
0.24°以下で陽子線を全反射させることができる。
1MeVで0.19°、2MeVで0.13°の程度で
ある。照射角が0.3°以下とすると、GaAsの場合
は、陽子線エネルギーが1MeV以上であれば、全反射
条件を満足できる。Siの場合は、陽子線エネルギーが
0.5MeV以上であれば全反射条件を満たす。陽子線
エネルギーが高い方が、全反射条件が厳しくなる。これ
は当然のことである。エネルギーが高いと結晶の内部に
進入する力が強くなるからである。陽子線エネルギーが
1.5MeVで、Siは0.14°以下で、GaAsは
0.24°以下で陽子線を全反射させることができる。
【0040】
【実施例】高エネルギーの陽子線によるK殻のイオン化
断面積は、陽子線エネルギーが1MeV以下では元素に
よる依存性が少ない。K殻のイオン化断面積は陽子線と
電子とのクーロン相互作用から計算されている(D.D.Co
hen and M.Harrigan, ATOMIC DATA AND
NUCLEAR DATA TABLES 33,2
55−343(1985))。
断面積は、陽子線エネルギーが1MeV以下では元素に
よる依存性が少ない。K殻のイオン化断面積は陽子線と
電子とのクーロン相互作用から計算されている(D.D.Co
hen and M.Harrigan, ATOMIC DATA AND
NUCLEAR DATA TABLES 33,2
55−343(1985))。
【0041】これにX線の放出確率を掛けたものがX線
発生断面積である。図2に、鉄(Fe)と硫黄(S)の
陽子線によるK殻のイオン化断面積を、エネルギーの関
数として示す。横軸は陽子線のエネルギーである(Me
V)。ここでは0〜3.5MeVの範囲のエネルギーを
示す。縦軸はイオン化断面積(10-24 c m-2) であ
る。陽子線のエネルギーが増えると、鉄、硫黄のイオン
化断面積が増大する。
発生断面積である。図2に、鉄(Fe)と硫黄(S)の
陽子線によるK殻のイオン化断面積を、エネルギーの関
数として示す。横軸は陽子線のエネルギーである(Me
V)。ここでは0〜3.5MeVの範囲のエネルギーを
示す。縦軸はイオン化断面積(10-24 c m-2) であ
る。陽子線のエネルギーが増えると、鉄、硫黄のイオン
化断面積が増大する。
【0042】中央に横線が引いてある。これは、全反射
蛍光X線分析で通常用いられるタングステンのX線管球
によるK殻イオン化断面積である。この方法はX線とし
てタングステンのLα線を利用している。これのイオン
化断面積は1.0×10-23c m-2 である。
蛍光X線分析で通常用いられるタングステンのX線管球
によるK殻イオン化断面積である。この方法はX線とし
てタングステンのLα線を利用している。これのイオン
化断面積は1.0×10-23c m-2 である。
【0043】本発明の場合、硫黄のK殻、鉄のK殻とも
に、陽子線エネルギーが0.5MeV以上であれば、全
反射蛍光X線よりもイオン化断面積が大きくなる。イオ
ン化断面積が大きいということは感度が良いということ
である。つまり、微量元素の測定方法として良く使われ
る全反射蛍光X線分析よりも、陽子線エネルギーを0.
5MeV以上にすることにより、本発明の方が感度が高
くなるということである。
に、陽子線エネルギーが0.5MeV以上であれば、全
反射蛍光X線よりもイオン化断面積が大きくなる。イオ
ン化断面積が大きいということは感度が良いということ
である。つまり、微量元素の測定方法として良く使われ
る全反射蛍光X線分析よりも、陽子線エネルギーを0.
5MeV以上にすることにより、本発明の方が感度が高
くなるということである。
【0044】いずれも、K殻電子が弾き飛ばされるので
あるが、本発明は陽子線で、全反射蛍光X線はX線(光
子)で弾き飛ばすという違いがある。K殻電子がなくな
るのですぐに外殻電子がK殻に落ちる。この時に特性X
線を発生する。特性X線のエネルギー(波長)は物質に
よって固有であるから、X線のエネルギーからどの物質
から生じたX線かということが分かる。またその波長の
X線の強度(ピ−クの高さ)からその物質の存在量を知
ることができる。
あるが、本発明は陽子線で、全反射蛍光X線はX線(光
子)で弾き飛ばすという違いがある。K殻電子がなくな
るのですぐに外殻電子がK殻に落ちる。この時に特性X
線を発生する。特性X線のエネルギー(波長)は物質に
よって固有であるから、X線のエネルギーからどの物質
から生じたX線かということが分かる。またその波長の
X線の強度(ピ−クの高さ)からその物質の存在量を知
ることができる。
【0045】励起源としての陽子線は、カ−ボンのコリ
メータ(Φ2×20)を用いてビーム位置のずれをなく
してから試料に照射するようにした。試料から発生する
特性X線の検出は、Si(Li)半導体検出器を用いて
行った。この検出器は全反射蛍光X線分析法においても
用いられる検出器である。
メータ(Φ2×20)を用いてビーム位置のずれをなく
してから試料に照射するようにした。試料から発生する
特性X線の検出は、Si(Li)半導体検出器を用いて
行った。この検出器は全反射蛍光X線分析法においても
用いられる検出器である。
【0046】試料は、鉄、銅、硫黄を含む次の12の試
料である。いずれも試料の台としてGaAsウエハを用
いる。試料1〜試料6は、GaAsウエハに、硫酸銅水
溶液(CuSO4 ) を滴下し、乾燥したものである。従
って測定対象になる元素は、銅Cuと硫黄Sである。表
面濃度は5.35×108 個/cm2 〜5.35×10
11個/cm2 である。検出限界を調べるために、元素の
表面濃度は番号が大きくなるにしたがって高くなるよう
にしてある。
料である。いずれも試料の台としてGaAsウエハを用
いる。試料1〜試料6は、GaAsウエハに、硫酸銅水
溶液(CuSO4 ) を滴下し、乾燥したものである。従
って測定対象になる元素は、銅Cuと硫黄Sである。表
面濃度は5.35×108 個/cm2 〜5.35×10
11個/cm2 である。検出限界を調べるために、元素の
表面濃度は番号が大きくなるにしたがって高くなるよう
にしてある。
【0047】試料7〜試料12はGaAsウエハに、F
e(acac)3 液を滴下し乾燥したものである。表面
鉄濃度は、5.18×108 個/cm2 〜5.18×1
011個/cm2 である。表1に試料1〜12の、測定対
象元素、元素の表面濃度、基板、試料作製方法を示す。
e(acac)3 液を滴下し乾燥したものである。表面
鉄濃度は、5.18×108 個/cm2 〜5.18×1
011個/cm2 である。表1に試料1〜12の、測定対
象元素、元素の表面濃度、基板、試料作製方法を示す。
【0048】
【表1】
【0049】これらの試料に対して、本発明の方法に従
い、陽子線を照射して、これによって発生する特性X線
を測定した。測定条件は次のようである。 陽子線エネルギー 3 MeV ビーム電流 10 nA 測定時間 30 分 陽子線照射角 0.2°、0.5°、1.0°、2.0° 測定の結果を表2に示す。比較のために、全反射蛍光X
線分析法により30分測定したものの結果も表2に示
す。
い、陽子線を照射して、これによって発生する特性X線
を測定した。測定条件は次のようである。 陽子線エネルギー 3 MeV ビーム電流 10 nA 測定時間 30 分 陽子線照射角 0.2°、0.5°、1.0°、2.0° 測定の結果を表2に示す。比較のために、全反射蛍光X
線分析法により30分測定したものの結果も表2に示
す。
【0050】
【表2】
【0051】表2において、試料番号、対象元素、陽子
線の照射角度(面と陽子線のなす角度)、全反射蛍光X
線法による結果を順に示している。その評価を、二重丸
◎、丸○、三角△、ぺけ×によって表す。それぞれの意
味は次のようである。
線の照射角度(面と陽子線のなす角度)、全反射蛍光X
線法による結果を順に示している。その評価を、二重丸
◎、丸○、三角△、ぺけ×によって表す。それぞれの意
味は次のようである。
【0052】×:ピークを確認できない。 △:ピークを確認できるが、検量線が直線関係を示さな
い。 ○:ピ−クを確認でき、検量線が直線関係を示し、定量
可能である。 ◎:定量可能であってかつ測定時間を短縮できる。
い。 ○:ピ−クを確認でき、検量線が直線関係を示し、定量
可能である。 ◎:定量可能であってかつ測定時間を短縮できる。
【0053】対象がどの原子であっても、照射角度が低
いほど測定可能性が高まる。硫黄の検出について言え
ば、照射角度が0.2°では試料3(5.35×109
/cm2 )から定量測定可能である。角度が0.5°、
1.0°の時は、試料4(5.35×1010/cm2 )
から定量測定できる。全反射蛍光X線法では、試料4か
ら定量測定が可能である。0.5°、1.0°の場合
は、全反射X線法と大体同等か、それ以上の性能を持
つ。しかし0.2°の場合は全反射法よりも優れてい
て、より微量の元素をも検出することができる。硫黄は
軽い元素であるから比較的検出し難いのである。
いほど測定可能性が高まる。硫黄の検出について言え
ば、照射角度が0.2°では試料3(5.35×109
/cm2 )から定量測定可能である。角度が0.5°、
1.0°の時は、試料4(5.35×1010/cm2 )
から定量測定できる。全反射蛍光X線法では、試料4か
ら定量測定が可能である。0.5°、1.0°の場合
は、全反射X線法と大体同等か、それ以上の性能を持
つ。しかし0.2°の場合は全反射法よりも優れてい
て、より微量の元素をも検出することができる。硫黄は
軽い元素であるから比較的検出し難いのである。
【0054】銅(Cu)が対象の場合は、照射角が0.
2°の時に試料2から定量分析可能である。角度が0.
5°、1.0°の場合は、試料3(5.35×109 /
cm2 )から定量性が得られる。公知の全反射法は試料
4(5.35×1010/cm2 )から測定できる。つま
り銅の検出においても、低角度照射の場合、本発明の方
が公知技術よりも優れているということである。
2°の時に試料2から定量分析可能である。角度が0.
5°、1.0°の場合は、試料3(5.35×109 /
cm2 )から定量性が得られる。公知の全反射法は試料
4(5.35×1010/cm2 )から測定できる。つま
り銅の検出においても、低角度照射の場合、本発明の方
が公知技術よりも優れているということである。
【0055】鉄(Fe)が対象の場合は、角度が0.2
°の時には試料8(1.55×109 /cm2 )から定
量測定可能である。角度が0.5°、1.0°の時は試
料9(5.18×109 /cm2 )から検出可能であ
る。一方全反射蛍光X線法では試料10(5.18×1
010/cm2 )から測定できる。本発明の方法がより高
感度で、優れていることがわかる。
°の時には試料8(1.55×109 /cm2 )から定
量測定可能である。角度が0.5°、1.0°の時は試
料9(5.18×109 /cm2 )から検出可能であ
る。一方全反射蛍光X線法では試料10(5.18×1
010/cm2 )から測定できる。本発明の方法がより高
感度で、優れていることがわかる。
【0056】これらの結果から次のようなことが分か
る。原子番号の小さい硫黄Sは、検出限界が高い。原子
番号の大きい鉄や銅は検出限界が低い。つまり検出しや
すい。これは何れの角度、方法でも同じことである。照
射角が0.2°以下の場合は109 /cm2 のオ−ダ−
の定量が可能である。照射角が1.0°以下の場合は1
010/cm2 のオ−ダ−の測定が可能である。入射陽子
線の照射角が1°程度で全反射蛍光分析法と同等の測定
が可能である。これ以下では本発明の方法の方が優越す
る。
る。原子番号の小さい硫黄Sは、検出限界が高い。原子
番号の大きい鉄や銅は検出限界が低い。つまり検出しや
すい。これは何れの角度、方法でも同じことである。照
射角が0.2°以下の場合は109 /cm2 のオ−ダ−
の定量が可能である。照射角が1.0°以下の場合は1
010/cm2 のオ−ダ−の測定が可能である。入射陽子
線の照射角が1°程度で全反射蛍光分析法と同等の測定
が可能である。これ以下では本発明の方法の方が優越す
る。
【0057】
【発明の効果】本発明はエネルギ−の高い陽子線を1.
0°以下の低照射角度で対象に当て、試料表面から出て
くる特性X線を観測する。微量元素の検出にはX線を当
てて電子を励起し、これから発生するX線を測定して元
素の量を求める全反射蛍光X線法が用いられてきた。本
発明はこれよりもイオン化断面積が大きいので、より高
感度で試料表面の元素の存在、存在量を求めることがで
きる。
0°以下の低照射角度で対象に当て、試料表面から出て
くる特性X線を観測する。微量元素の検出にはX線を当
てて電子を励起し、これから発生するX線を測定して元
素の量を求める全反射蛍光X線法が用いられてきた。本
発明はこれよりもイオン化断面積が大きいので、より高
感度で試料表面の元素の存在、存在量を求めることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】GaAs、Siを対象とする場合、照射陽子線
エネルギ−とその陽子線の全反射角の関係を示すグラ
フ。
エネルギ−とその陽子線の全反射角の関係を示すグラ
フ。
【図2】陽子線を照射して、鉄のK殻電子、硫黄のK殻
電子を励起してイオン化する際の、陽子線エネルギ−に
対するイオン化断面積の関係を示すグラフ。
電子を励起してイオン化する際の、陽子線エネルギ−に
対するイオン化断面積の関係を示すグラフ。
【図3】本発明に係る微量元素の検出方法の概念図。
【図4】陽子線によって内殻電子が励起され、基底状態
に戻るときに特性X線を発生させることを説明する図。
に戻るときに特性X線を発生させることを説明する図。
Claims (5)
- 【請求項1】 3.5MeV以下のエネルギーを有する
陽子線を鏡面を持つ試料に対して1°以下の低角度で照
射し、陽子線によって対象原子のK殻電子を励起し、励
起電子が元の準位に戻るときに発生する特性X線の波長
と強度を測定することによって、試料表面近傍の元素の
種類を同定しその濃度を定量することを特徴とする微量
元素の検出方法。 - 【請求項2】 対象となる試料を、鏡面の支持体に付着
させて、陽子線を照射し、特性X線の波長毎の強度を測
定することを特徴とする請求項1に記載の微量元素の検
出方法。 - 【請求項3】 鏡面の支持体としてSiまたはGaAs
の半導体ウエハ−を用いる事を特徴とする請求項1また
は2に記載の微量元素の検出方法。 - 【請求項4】 陽子線のエネルギーが1.5MeV以上
である事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の微
量元素の検出方法。 - 【請求項5】 陽子線の照射角度が0.3°以下である
事を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微量元素
の検出方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7172919A JPH095263A (ja) | 1995-06-14 | 1995-06-14 | 微量元素の検出方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7172919A JPH095263A (ja) | 1995-06-14 | 1995-06-14 | 微量元素の検出方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH095263A true JPH095263A (ja) | 1997-01-10 |
Family
ID=15950791
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7172919A Pending JPH095263A (ja) | 1995-06-14 | 1995-06-14 | 微量元素の検出方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH095263A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006258671A (ja) * | 2005-03-18 | 2006-09-28 | National Institute For Materials Science | 低エネルギーイオン照射による導電体試料中の元素分析・評価方法とその装置 |
JP2006260995A (ja) * | 2005-03-18 | 2006-09-28 | National Institute For Materials Science | 低エネルギーイオン照射による導電体物質からの特性x線発生方法とその装置 |
JP2010016042A (ja) * | 2008-07-01 | 2010-01-21 | Panasonic Corp | 元素分析方法および半導体装置の製造方法 |
CN116754431A (zh) * | 2023-08-18 | 2023-09-15 | 中国工程物理研究院激光聚变研究中心 | 一种瞬态质子荧光检测系统 |
-
1995
- 1995-06-14 JP JP7172919A patent/JPH095263A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006258671A (ja) * | 2005-03-18 | 2006-09-28 | National Institute For Materials Science | 低エネルギーイオン照射による導電体試料中の元素分析・評価方法とその装置 |
JP2006260995A (ja) * | 2005-03-18 | 2006-09-28 | National Institute For Materials Science | 低エネルギーイオン照射による導電体物質からの特性x線発生方法とその装置 |
JP4665143B2 (ja) * | 2005-03-18 | 2011-04-06 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 低エネルギーイオン照射による導電体試料中の元素分析・評価方法とその装置 |
JP4735805B2 (ja) * | 2005-03-18 | 2011-07-27 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 低エネルギーイオン照射による導電体物質からの特性x線発生方法とその装置 |
JP2010016042A (ja) * | 2008-07-01 | 2010-01-21 | Panasonic Corp | 元素分析方法および半導体装置の製造方法 |
CN116754431A (zh) * | 2023-08-18 | 2023-09-15 | 中国工程物理研究院激光聚变研究中心 | 一种瞬态质子荧光检测系统 |
CN116754431B (zh) * | 2023-08-18 | 2023-11-17 | 中国工程物理研究院激光聚变研究中心 | 一种瞬态质子荧光检测系统 |
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