JPH095263A - 微量元素の検出方法 - Google Patents

微量元素の検出方法

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JPH095263A
JPH095263A JP7172919A JP17291995A JPH095263A JP H095263 A JPH095263 A JP H095263A JP 7172919 A JP7172919 A JP 7172919A JP 17291995 A JP17291995 A JP 17291995A JP H095263 A JPH095263 A JP H095263A
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proton beam
energy
ray
rays
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JP7172919A
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Inventor
Junji Iihara
順次 飯原
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 試料の表面に存在する微量元素を高感度に検
出できる方法を提供すること。さらに真空にしないで試
料の表面元素の検出のできる方法を提供することが目的
である。 【構成】 3.5MeV以下のエネルギ−の陽子線を、
試料面に対して1°以下の低角度で照射し、内殻電子を
励起しその電子が基底状態に戻る時に発生する特性X線
を検出することによって、試料面に存在する微量元素の
種類、存在量を求める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鏡面試料表面に存在す
る微量元素または鏡面試料表面の近傍に存在する微量元
素を高感度に検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】試料表面の元素の存在量を調べるために
多くの方法が提案されている。何らかのビームを試料に
照射し、試料から発生する何らかのビームのエネルギ
ー、強度や分布を測定して微量元素の量を検出する。入
射ビームとしては、光、X線、電子線、イオンビームな
どがある。出射ビームとしては、光、X線、電子線、イ
オンビームなどがある。これらを組み合わせて様々な方
法が試みられている。それぞれに利点や欠点がある。試
料に対する適性もある。試料の何を知りたいかという事
により、どの検査方法が適当であるかという事が決ま
る。光とX線は何れも電磁波であるから区別しないこと
もある。
【0003】イオンを当てた時に出てくるイオンを調べ
る場合もある。この場合でも入射イオンが散乱されたも
のを検出する事もあるし(RBS:Rutherford Backsca
ttering Spectroscopy, ラザフォード後方散乱法)、二
次イオンを検出することもある(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectroscopy,2次イオン質量分析法)。
【0004】イオンビームを当てる場合でも、水素イオ
ン(プロトン、陽子)の場合は他のイオンの場合と区別
する。水素イオンビームはプロトンビーム或いは陽子線
という。この場合も、散乱されたプロトンビーム自体の
エネルギー分布を観測するものもあれば(PELS:Pr
oton Energy Loss Spectroscopy,陽子エネルギー損失分
光法)、或いはこれによって出てくる二次電子を観測す
る方法もある。又、これによって発生するX線を観測す
る方法も可能である。本発明はこのX線を観測する方法
に関する。
【0005】[PIXE](Perticle Induced X-ray Em
ission, 粒子励起X線分光法) 陽子線を試料に照射し、発生した特性X線から元素濃度
を測定する方法は、PIXEとして広く知られている。
PIXEは例えば、「表面分析図鑑(日本表面科学会
編、共立出版)」に詳しく紹介されている。高速の陽子
線(水素イオン)を測定したい試料に照射する。陽子線
のエネルギ−は数MeVである。内殻の電子が陽子線に
よって叩き上げられる。
【0006】この電子が励起準位にある時間は極短い。
やがて元の内殻準位に戻る。この時にX線を放出する。
このX線のエネルギ−は、励起準位と元の準位のエネル
ギ−の差に等しい。つまり原子状態によって決まるエネ
ルギ−である。固有のエネルギ−を持つX線であって、
原子の構造を反映しているので、特性X線と呼ぶ。X線
のエネルギ−は波長の逆数であるから、波長をしればエ
ネルギ−が分かる。
【0007】これに対して、制動輻射、散乱などによっ
て誘起されるX線は特別なエネルギ−を取らない。広い
波長範囲に平坦に分布する。それ故、これらは白色X線
という。陽子線のエネルギ−によってどの内殻電子を励
起するかということが決まる。数MeVの高いエネルギ
−の陽子線を当てるということは、K殻電子を叩き励起
するということである。
【0008】質量の大きい陽子を使うので、電子を使う
場合に比べて制動輻射を受け難い。ために白色ノイズが
少ないという長所がある。このために微量分析に向いて
いる。数mgの試料であっても元素濃度を分析すること
ができる。ppmオ−ダで不純物の濃度を測定できる。
波長ごとに対応元素が違うことを利用し、全元素の濃度
を同時に決定できる。ために極めて短時間に全元素量を
分析することができる。
【0009】質量の大きい陽子線を使うので、質量の小
さい元素(原子番号が10以下)に対して感度が悪い。
陽子線が、原子核そのものを弾き飛ばすこともあるし、
内殻電子のエネルギ−がそれほど低くないから、励起さ
れにくいということもある。
【0010】通常は陽子線を試料面に対して45°に照
射する。照射角=45°である。分厚い試料にはむかな
い測定方法である。陽子線が内部で散乱され、散乱陽子
によるX線が発生しバックグラウンドが大きくなるから
である。従来は対象試料の微小量を有機薄膜に付着する
ことで分析試料としていた。このバッキング材として使
用する有機薄膜には、不純物濃度が低いこと、取り扱い
を容易にするための強度、陽子線照射による熱ダメージ
に耐え得る耐熱性が必要であり、全てを満足する有機薄
膜はいまだ開発されていない。
【0011】X線を測定対象にするから試料が真空中に
なくても良い。大気圧下でも可能な方法である。RBS
やPELSなど、反跳イオンの角度分布を利用するもの
は、GaとAsのように質量数の似通った元素を区別す
ることが難しい。しかしPIXEは特性X線を用いるか
ら質量数の近似した元素を容易に識別することができ
る。
【0012】[全反射蛍光X線法]強力な単色のX線を
試料に当てると、試料から蛍光X線が出る。蛍光X線の
波長毎の強度を測定すると、試料の構成元素を同定する
ことができる。入射X線によって試料の上の元素が励起
される。励起準位から元の準位に下がる時にX線を発生
する。これが蛍光X線である。蛍光X線の量を、半導体
検出器(Si(Li)など)によって測定する。
【0013】蛍光X線の波長から、このX線はどの元素
から放出されたかということが分かる。その波長のX線
の強度からその元素の存在量が分かる。X線は試料の内
部まで入り、かなり深い部分の元素の分析も可能であ
る。普通は試料に対して直角にX線を照射し、蛍光X線
はいずれかの角度に出るものを検出するようになってい
る。
【0014】特に試料の表面近くだけの元素分析のため
に新しく登場したのが、全反射蛍光X線分析法である。
これはX線を平行ビ−ムにして、試料の表面スレスレに
(低角度で)照射する。散乱X線は、反対側に試料スレ
スレの角度で出て行く。X線は試料の内部に入らない。
X線のすべては反射(散乱)されて外部に出て行く。低
角度入射であって全部が反射するので全反射蛍光X線法
と呼ぶ(TotalReflection X−ray
Fluorescence)。
【0015】試料の内部に散乱X線が入らないのでバッ
クグラウンドが小さい、或いは、試料の内部にX線が入
り込まないから表面近くのみの測定ができる、などの特
徴がある。また試料の表面にスレスレの角度でビ−ムを
入射するから、試料の表面は平滑でなければならない。
【0016】入射X線のエネルギ−は数keVから数十
keVの程度である。蛍光X線は面と直角に出たものを
測定する。この測定方法はTRXRFと略記される。p
pb〜ppm程度の感度を発揮する事ができるとされ
る。しかしX線によるK殻のイオン化断面積は小さい。
TRXRFは全反射条件を満足するほどに低照射角でX
線を入射する手法であるからここに記載する。低角度で
試料に当たるから表面の元素のみを測定できる。
【0017】その他にも、微量元素を高感度に分析する
方法として、二次イオン質量分析法(SIMS)があ
る。超高真空に保持した装置内で、試料にイオンビーム
を当てて表面から発生する二次イオンを測定して、表面
に存在する元素の量を求めるものである。これはppb
〜ppmの感度を有する。
【0018】さらに低照射角度で試料にビ−ムを照射す
るものとしては、低いエネルギ−の電子線を面スレスレ
に当て、その回折線を検出するものもある。LEEDと
いう。これは電子がプロ−ブになっているが、その回折
によって試料の表面構造の回折パタ−ンを調べるもので
ある。電子線をプロ−ブとするがX線を観測するEPM
Aとは違う。測定原理は本発明とも異なるが、低照射角
度でビ−ムを照射するのでここに記載する。
【0019】このように数多くの測定方法がある。励起
手段は光、X線、電子、陽子、イオン、中性子などであ
り、検出対象は光、X線、電子、陽子、イオン、中性子
などである。入射ビ−ムと出射ビ−ムの組合せによって
実に多様な測定方法がある。入射角度も最適の範囲とい
うものがある。これらの測定技術は全て目的、原理、手
段、具体的な装置構成において異なっている。最適の測
定を行うには、それぞれの方法を厳密に区別する必要が
ある。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】SIMSは高感度に微
量元素を検出する事ができる。しかしこれは超高真空を
必要とする。ために、試料の交換などに大きな手間と時
間がかかる。これが測定のコストを押し上げる。RBS
やPELSなど散乱ビ−ムが観測の対象になるものは全
て真空を必要とする。また二次イオンや二次電子を測定
の対象にするものも、高真空が必要である。イオンや電
子のエネルギ−が測定の対象になるが、大気圧中では衝
突によってイオンや電子は検出器に至るまでにエネルギ
−を失ってしまうからである。
【0021】近年新たに開発された全反射蛍光X線分析
法(TRXRF)は表面近傍の元素状態を測定するもの
として高感度である、と言われている。しかしX線自体
のエネルギ−が低いし、高密度のビ−ムが得られない。
W、Mo、Cuなどを対陰極とするX線管によってはな
かなか強力なX線が発生しない。
【0022】陽子やイオンはク−ロン力によって電子と
相互作用する。だから陽子線やイオンビ−ムによるK殻
イオン化断面積は大きい。しかしX線と電子はク−ロン
力のようなロングレンジの相互作用をしない。だからK
殻のイオン化断面積が小さい。測定に時間をかけるか、
光輝度の光源を使う必要がある。強力なX線を発生する
ものとしてシンクロトロン放射光(SO−ring)が
ある。しかしこれは巨大な設備が必要である。簡単に実
施できるものではない。
【0023】超高真空を不要とする微量元素の検出方法
を提供する事が本発明の第1の目的である。大型の設備
を要しない微量元素の検出方法を提供する事が本発明の
第2の目的である。試料表面のみの元素検出が出来る微
量元素の検出方法を提供する事が本発明の第3の目的で
ある。より高感度の微量元素の検出方法を提供する事が
本発明の第4の目的である。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明は励起源として、
陽子を用いる。陽子線を鏡面研磨した試料表面或いは鏡
面に付着した試料の表面に照射し、試料表面、表面近傍
の原子を励起させる。図4に示すように、励起原子が基
底状態に戻るときに特性X線を発生させる。この特性X
線を観測して、試料表面、表面近傍の微量元素の存在量
を測定する。陽子線のエネルギーは、3.5MeV以下
とする。試料に対する、陽子線の照射角は、1°以下と
する。さらには0.3°以下とするのが望ましい。
【0025】
【作用】本発明は試料原子の励起源として、陽子線を用
いる。しかも陽子線のエネルギーが3.5MeV以下と
し、入射角は1°以下とする。本発明は陽子線を使うの
で、他の励起手段つまり光子、電子線に比べて励起効率
が100倍〜1000倍高い。本発明に係る微量元素の
検出方法の概念図を図3に示す。
【0026】本発明は3.5MeV以下の陽子線を利用
する。この理由をまず説明する。陽子線のエネルギーが
3.5MeVを越えると、核反応断面積が急激に高くな
り、(p,n)反応などで放射性同位元素が大量に発生
する。大量にできた放射性同位元素が壊変するが、この
時に大量のγ線、X線を発生する。
【0027】このγ線、X線がバックグラウンドとな
り、S/N比が悪くなってしまう。核反応断面積をある
程度の値以下に制限するために、入射陽子線のエネルギ
ーを3.5MeV以下とするのである。本発明は核反応
を避け、電子を励起するために陽子線を使うのである。
このため、高すぎるエネルギ−の陽子線は役に立たな
い。
【0028】しかし余りに陽子線のエネルギーが低い
と、反対に試料が励起され難くなるから、陽子線のエネ
ルギーは1.5MeV以上とするのが良い。さらに本発
明は、低入射角で陽子線を試料に当てる。この理由は次
のようである。
【0029】高入射角で試料表面に陽子線を入射させる
と、試料の内部深くまで陽子が侵入する。ために散乱が
激しく起こり、散乱陽子がX線を発生しこれがバックグ
ラウンドとなる。反対に低入射角で陽子線を当てると、
陽子は1回だけ対象の原子に衝突しすぐに外部に散乱さ
れる。試料内部での散乱が小さくバックグラウンドが抑
えられる。
【0030】鏡面研磨された試料、或いは鏡面の上に付
着した試料を対象にする理由は以下のようである。試料
の表面に凹凸があると、陽子線が凸部によって散乱され
る。散乱陽子線によってさらにX線が発生するのでこれ
がバックグラウンドとなる。陽子線と対象原子との核反
応が1回だけ起こる事が望ましい。そこで試料表面に凹
凸がない方が良い。
【0031】試料の形状は、表面で陽子線の散乱が起こ
らないものである必要がある。鏡面の固体の試料であれ
ばそのまま測定の対象にできる。溶液の場合は、鏡面支
持体の上に溶液を滴下して、乾燥したものを試料とする
ことができる。鏡面支持体としては、高純度で鏡面の得
やすい材料を選ぶべきである。例えばSi、GaAsな
どの半導体ウエハ−が好適である。
【0032】陽子線のエネルギーが3.5MeV以下で
あるべきであるという事は既に述べた。エネルギーの上
限が3.5MeVであるという事である。陽子線のエネ
ルギーは1MeVでも0.5MeVでも良い。しかし
1.5MeV以上であるとさらに良い。その理由は次の
通りである。
【0033】特性X線の放出確率は、陽子線による原子
のK殻電子の励起確率に比例する。この確率は、元素に
よって大きな差はない。しかしこの励起確率は陽子線の
エネルギーに強く依存する。1.5MeV以上のエネル
ギーの陽子線を用いると、K殻電子の励起確率が高い。
さらに1.5MeV以上のエネルギーの陽子線によって
励起すると、元素による励起確率のばらつきが少ない。
全元素に渡って高感度の分析を行うことができる。1.
5MeV以上の陽子線を用いると、励起確率が光子の場
合より100倍〜1000倍高い。
【0034】さらに、1.5MeV以下のエネルギーの
陽子線によって原子を励起すると、多電子の同時励起が
起こり易くなる。するとサテライト線と呼ばれるX線の
ピークが複数本発生し、X線強度の決定の妨げになる。
1.5MeV以上のエネルギーであると多電子励起が起
こり難く、陽子一つが電子一つの励起を引き起こす。従
って対象元素の分布量を正しく検出することができる。
【0035】低角度入射が良いという事は既に述べた。
試料の表面に殆ど平行に陽子線ビームが入射する。照射
角度が1°以下であれば、散乱が少なくバックグラウン
ドを抑制できるから、ppmレベルの高感度検出が可能
である。
【0036】陽子線の照射角度をさらに小さくして0.
3°以下にすると、照射陽子線が全反射を起こし試料の
内部に殆ど入らない。ために試料中での散乱が殆ど起こ
らず、散乱によるバックグラウンドをさらに小さくでき
る。全反射条件を巧みに利用すれば、バックグラウンド
を抑制し、精度の高い微量元素の測定を行うことができ
る。
【0037】全反射の起こる条件は陽子線エネルギーに
強く依存している。エネルギーへの依存性は物質によっ
て違う。図1にSi、GaAsの場合の陽子線エネルギ
ーと、全反射臨界角の関係を示す。横軸は入射陽子線の
エネルギーである。縦軸は全反射の起こる最大の照射角
度である。
【0038】GaAsが試料の場合は、同じ陽子線エネ
ルギーであっても、全反射が起こる角度が大きいので余
裕がある。陽子線エネルギーが1MeVで0.3°、2
MeVで0.2°、3MeVで0.16°の程度であ
る。
【0039】Siが試料の場合は、陽子線エネルギーが
1MeVで0.19°、2MeVで0.13°の程度で
ある。照射角が0.3°以下とすると、GaAsの場合
は、陽子線エネルギーが1MeV以上であれば、全反射
条件を満足できる。Siの場合は、陽子線エネルギーが
0.5MeV以上であれば全反射条件を満たす。陽子線
エネルギーが高い方が、全反射条件が厳しくなる。これ
は当然のことである。エネルギーが高いと結晶の内部に
進入する力が強くなるからである。陽子線エネルギーが
1.5MeVで、Siは0.14°以下で、GaAsは
0.24°以下で陽子線を全反射させることができる。
【0040】
【実施例】高エネルギーの陽子線によるK殻のイオン化
断面積は、陽子線エネルギーが1MeV以下では元素に
よる依存性が少ない。K殻のイオン化断面積は陽子線と
電子とのクーロン相互作用から計算されている(D.D.Co
hen and M.Harrigan, ATOMIC DATA AND
NUCLEAR DATA TABLES 33,2
55−343(1985))。
【0041】これにX線の放出確率を掛けたものがX線
発生断面積である。図2に、鉄(Fe)と硫黄(S)の
陽子線によるK殻のイオン化断面積を、エネルギーの関
数として示す。横軸は陽子線のエネルギーである(Me
V)。ここでは0〜3.5MeVの範囲のエネルギーを
示す。縦軸はイオン化断面積(10-24 c m-2) であ
る。陽子線のエネルギーが増えると、鉄、硫黄のイオン
化断面積が増大する。
【0042】中央に横線が引いてある。これは、全反射
蛍光X線分析で通常用いられるタングステンのX線管球
によるK殻イオン化断面積である。この方法はX線とし
てタングステンのLα線を利用している。これのイオン
化断面積は1.0×10-23c m-2 である。
【0043】本発明の場合、硫黄のK殻、鉄のK殻とも
に、陽子線エネルギーが0.5MeV以上であれば、全
反射蛍光X線よりもイオン化断面積が大きくなる。イオ
ン化断面積が大きいということは感度が良いということ
である。つまり、微量元素の測定方法として良く使われ
る全反射蛍光X線分析よりも、陽子線エネルギーを0.
5MeV以上にすることにより、本発明の方が感度が高
くなるということである。
【0044】いずれも、K殻電子が弾き飛ばされるので
あるが、本発明は陽子線で、全反射蛍光X線はX線(光
子)で弾き飛ばすという違いがある。K殻電子がなくな
るのですぐに外殻電子がK殻に落ちる。この時に特性X
線を発生する。特性X線のエネルギー(波長)は物質に
よって固有であるから、X線のエネルギーからどの物質
から生じたX線かということが分かる。またその波長の
X線の強度(ピ−クの高さ)からその物質の存在量を知
ることができる。
【0045】励起源としての陽子線は、カ−ボンのコリ
メータ(Φ2×20)を用いてビーム位置のずれをなく
してから試料に照射するようにした。試料から発生する
特性X線の検出は、Si(Li)半導体検出器を用いて
行った。この検出器は全反射蛍光X線分析法においても
用いられる検出器である。
【0046】試料は、鉄、銅、硫黄を含む次の12の試
料である。いずれも試料の台としてGaAsウエハを用
いる。試料1〜試料6は、GaAsウエハに、硫酸銅水
溶液(CuSO4 ) を滴下し、乾燥したものである。従
って測定対象になる元素は、銅Cuと硫黄Sである。表
面濃度は5.35×108 個/cm2 〜5.35×10
11個/cm2 である。検出限界を調べるために、元素の
表面濃度は番号が大きくなるにしたがって高くなるよう
にしてある。
【0047】試料7〜試料12はGaAsウエハに、F
e(acac)3 液を滴下し乾燥したものである。表面
鉄濃度は、5.18×108 個/cm2 〜5.18×1
11個/cm2 である。表1に試料1〜12の、測定対
象元素、元素の表面濃度、基板、試料作製方法を示す。
【0048】
【表1】
【0049】これらの試料に対して、本発明の方法に従
い、陽子線を照射して、これによって発生する特性X線
を測定した。測定条件は次のようである。 陽子線エネルギー 3 MeV ビーム電流 10 nA 測定時間 30 分 陽子線照射角 0.2°、0.5°、1.0°、2.0° 測定の結果を表2に示す。比較のために、全反射蛍光X
線分析法により30分測定したものの結果も表2に示
す。
【0050】
【表2】
【0051】表2において、試料番号、対象元素、陽子
線の照射角度(面と陽子線のなす角度)、全反射蛍光X
線法による結果を順に示している。その評価を、二重丸
◎、丸○、三角△、ぺけ×によって表す。それぞれの意
味は次のようである。
【0052】×:ピークを確認できない。 △:ピークを確認できるが、検量線が直線関係を示さな
い。 ○:ピ−クを確認でき、検量線が直線関係を示し、定量
可能である。 ◎:定量可能であってかつ測定時間を短縮できる。
【0053】対象がどの原子であっても、照射角度が低
いほど測定可能性が高まる。硫黄の検出について言え
ば、照射角度が0.2°では試料3(5.35×109
/cm2 )から定量測定可能である。角度が0.5°、
1.0°の時は、試料4(5.35×1010/cm2
から定量測定できる。全反射蛍光X線法では、試料4か
ら定量測定が可能である。0.5°、1.0°の場合
は、全反射X線法と大体同等か、それ以上の性能を持
つ。しかし0.2°の場合は全反射法よりも優れてい
て、より微量の元素をも検出することができる。硫黄は
軽い元素であるから比較的検出し難いのである。
【0054】銅(Cu)が対象の場合は、照射角が0.
2°の時に試料2から定量分析可能である。角度が0.
5°、1.0°の場合は、試料3(5.35×109
cm2 )から定量性が得られる。公知の全反射法は試料
4(5.35×1010/cm2 )から測定できる。つま
り銅の検出においても、低角度照射の場合、本発明の方
が公知技術よりも優れているということである。
【0055】鉄(Fe)が対象の場合は、角度が0.2
°の時には試料8(1.55×109 /cm2 )から定
量測定可能である。角度が0.5°、1.0°の時は試
料9(5.18×109 /cm2 )から検出可能であ
る。一方全反射蛍光X線法では試料10(5.18×1
10/cm2 )から測定できる。本発明の方法がより高
感度で、優れていることがわかる。
【0056】これらの結果から次のようなことが分か
る。原子番号の小さい硫黄Sは、検出限界が高い。原子
番号の大きい鉄や銅は検出限界が低い。つまり検出しや
すい。これは何れの角度、方法でも同じことである。照
射角が0.2°以下の場合は109 /cm2 のオ−ダ−
の定量が可能である。照射角が1.0°以下の場合は1
10/cm2 のオ−ダ−の測定が可能である。入射陽子
線の照射角が1°程度で全反射蛍光分析法と同等の測定
が可能である。これ以下では本発明の方法の方が優越す
る。
【0057】
【発明の効果】本発明はエネルギ−の高い陽子線を1.
0°以下の低照射角度で対象に当て、試料表面から出て
くる特性X線を観測する。微量元素の検出にはX線を当
てて電子を励起し、これから発生するX線を測定して元
素の量を求める全反射蛍光X線法が用いられてきた。本
発明はこれよりもイオン化断面積が大きいので、より高
感度で試料表面の元素の存在、存在量を求めることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】GaAs、Siを対象とする場合、照射陽子線
エネルギ−とその陽子線の全反射角の関係を示すグラ
フ。
【図2】陽子線を照射して、鉄のK殻電子、硫黄のK殻
電子を励起してイオン化する際の、陽子線エネルギ−に
対するイオン化断面積の関係を示すグラフ。
【図3】本発明に係る微量元素の検出方法の概念図。
【図4】陽子線によって内殻電子が励起され、基底状態
に戻るときに特性X線を発生させることを説明する図。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3.5MeV以下のエネルギーを有する
    陽子線を鏡面を持つ試料に対して1°以下の低角度で照
    射し、陽子線によって対象原子のK殻電子を励起し、励
    起電子が元の準位に戻るときに発生する特性X線の波長
    と強度を測定することによって、試料表面近傍の元素の
    種類を同定しその濃度を定量することを特徴とする微量
    元素の検出方法。
  2. 【請求項2】 対象となる試料を、鏡面の支持体に付着
    させて、陽子線を照射し、特性X線の波長毎の強度を測
    定することを特徴とする請求項1に記載の微量元素の検
    出方法。
  3. 【請求項3】 鏡面の支持体としてSiまたはGaAs
    の半導体ウエハ−を用いる事を特徴とする請求項1また
    は2に記載の微量元素の検出方法。
  4. 【請求項4】 陽子線のエネルギーが1.5MeV以上
    である事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の微
    量元素の検出方法。
  5. 【請求項5】 陽子線の照射角度が0.3°以下である
    事を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微量元素
    の検出方法。
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