JPH10111261A - 化学状態の分析方法 - Google Patents

化学状態の分析方法

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JPH10111261A
JPH10111261A JP8283294A JP28329496A JPH10111261A JP H10111261 A JPH10111261 A JP H10111261A JP 8283294 A JP8283294 A JP 8283294A JP 28329496 A JP28329496 A JP 28329496A JP H10111261 A JPH10111261 A JP H10111261A
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intensity
rays
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JP8283294A
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Junji Iihara
順次 飯原
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 原子A、B、Cが存在する試料において、原
子AがAB結合しているかAC結合しているか?あるい
は結合ABがどれだけの割合で存在するか?を求めるこ
と、さらに表面だけでなく試料の内部までの化学状態を
調べる。 【構成】 X線、陽子線を試料に照射し、外殻軌道内殻
軌道間の遷移によるX線強度を測定しこれによってAB
結合の存在確率を求めることができる。内殻軌道間の遷
移によるX線強度によって割る事によりX線発生装置、
分光器の特性によらない相対値を得る事ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも3種類
の元素を含む試料において、ある着目して居る元素が他
のどの元素とどの程度の割合で化学結合しているかを分
析する方法に関する。3種類の元素、A、B、Cがある
として、元素Aが作る結合A−B、A−Cの存在する割
合を測定する方法である。例えば、GaAs化合物半導
体表面近傍のGaおよびAsの化学状態を分析する。純
粋にAsとGaしかな存在しなければ化学結合はGa−
Asだけであるから、化学状態を問題にする必要はな
い。だからここで化学状態を問題にするのは、それ以外
の不純物があってそれがどれほどこれらの主要な元素を
結合しているのかということである。だから化学状態を
調べるというのは、GaとAsの他に元素が存在しGa
とAsの結合に代えて、他の元素とGa、Asの化学結
合が形成されておりそれがどのような比率で存在するの
かを調べることである。不純物によってGaAsウエハ
−の表面が汚染される場合汚染の状態を正確に知るには
化学状態を調べなければならない。
【0002】特に重要なのは酸素である。真空中であっ
ても酸素はウエハ−に付着する。また大気中では酸素と
の化学反応が自然に起こり自然酸化膜のようなものがで
きることもある。その場合ウエハ−の品質を評価するた
めに化学状態を調べる事は有用である。
【0003】通常基板としてのウエハ−そのものや、エ
ピタキシャル成長させたウエハ−の品質を評価する場
合、結晶構造等物理的な性質を調べる事が多い。これは
X線回折法などが使われる。これは不純物等を問題にし
ない測定である。大気中では試料表面には必ず酸素や水
素、水などが付着する。これらの付着物の存在、非存在
や、その量を調べるためにはSIMSなどがある。これ
はイオンを試料の表面に当てて出てくる二次イオンの種
類と数を測定して不純物の存在、量を求めることができ
る。しかしこれらは表面におけるそのような汚染物、不
純物と構成元素との間の化学的な結合状態を調べること
ができない。
【0004】
【従来の技術】本発明は固体表面の化学状態を調べる方
法に関する。対象の固体は真空中になくても良い。大気
中にあるもの、さらに液体の中にあるものでも本発明は
有効である。GaAsに限らず固体表面の化学状態を分
析する方法は、X線光電子分光法(XPS、X-ray Phot
oelectron Spectroscopy)、赤外分光法、広域X線吸収
端スペクトル、ラマン分光法などが知られている。これ
らは例えば「表面分析図鑑(日本表面化学会編、共立出
版)」に紹介されている。
【0005】XPSはX線を試料に照射し電子を発生さ
せる方法である。XPSでは化学結合による電子状態の
変化を捉えることができる。XPSは他の方法よりも敏
感に試料表面の化学状態の分析を行うことが出来る。し
かしこれは質量が小さい荷電粒子である電子を格子から
飛び出させるという方法であるから、極浅い部分からの
信号しかえられない。XPSでの分析は表面から1nm
深さが限度である。それ以上の深さの化学状態を検出す
るためには全く無力である。
【0006】特開平6−235707号「表面・界面
構造解析方法」は、GaAsを硫黄によって表面処理し
た場合、表面に存在する酸化硫黄と非酸化硫黄の位置を
求める。硫黄のKα線に近いエネルギーのX線を(11
1)GaAsにブラッグ回折条件を満たすように入射
し、ブラッグ回折角の近傍での蛍光X線の強度分布を調
べる。2482eVのX線は酸化硫黄の蛍光X線であ
る。2472eVのX線は未酸化硫黄の蛍光X線に等し
い。ブラッグ角の近くでの回折X線の強度が対称である
と、その硫黄は規則正しい位置にあることになる。2種
類のX線を照射し酸化硫黄と未酸化硫黄を区別しそれぞ
れの回折強度分布をはかり、位置のズレをしる。
【0007】これはしかし二つの波長のX線が必要であ
る。また位置ずれをもとめることができるが、未酸化硫
黄、酸化硫黄の量は分からない、しかもその波長のX線
を(111)面に対してブラッグ条件を満たすように照
射しなければならない。これは方位を合わせるのが難し
い。
【0008】しかも単結晶にしか応用できない。このよ
うに多くの技術的な困難がある。特性X線が硫黄からで
るというのではなくてあくまで回折X線を測定している
から硫黄自体の物性をきわだたせることができないので
ある。これは結局物理的な方法にすぎない。化学状態を
明確に求めるには不適である。
【0009】特開平5−119001号は鉛ガラスの
ガラス網目構成体とガラス網目修飾体の比を求めるため
に、X線をガラスに照射し電子を飛び出させてエネルギ
ー分布を調べ分布強度から鉛原子のどの軌道の電子をど
れほど叩きだしたかということがわかる。これから鉛が
網目を構成しているか、修飾しているかということがわ
かる。これはX線が入力プローブであり、光電子が比測
定物である。先述のように軽い荷電粒子なので奥深くか
ら出てくることはない。浅い構造しか分からない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】XPSでは電子を見る
ので、試料の最表面の化学状態を分析することは出来る
が、表面近傍の数nmオーダー深さの分析は不可能であ
る。また、試料表面の化学状態分析は可能であるが大気
中ではできない。電子を放出するのであるから高真空中
でないといけない。通常試料が取り扱われる大気中、水
溶液中などでの表面近傍の化学状態をXPSで測定する
ことは不可能となる。より深く、しかも大気中でも結晶
表面の元素の化学状態を検出できる機構が要求される。
本発明はそのような要請に答えるものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、試料の化学状
態を検出するプローブとして特性X線を利用する。特性
X線を発生させるために、試料にエネルギーの高いX線
を照射し、内殻電子を励起する。励起された電子の殆ど
はそのまま外部に放出される。この時生じた空孔に外殻
電子が遷移する。このときレベルの差に応じたX線を発
生する。これが特性X線である。特性X線のエネルギー
はレベル差に対応する。
【0012】原子は原子番号に応じた数の電子を持つ。
それぞれは離散的なエネルギーレベルにある。原子のレ
ベルは既知であるから、特性X線のエネルギーも既知で
ある。化学結合によって外殻電子のエネルギーが多少変
わる事があるが、内殻電子レベルは殆ど変わらない。原
子の最外殻のバンドを価電子帯という。これよりエネル
ギーの高いバンドは伝導帯という。半導体の場合は、価
電子帯まで電子が詰まっている。化学結合は価電子帯と
その少し内側の電子によってなされる。
【0013】試料の表面から数μm程度或いは、数十μ
m程度の深さまでの化学結合の状態を知るには、プロー
ブとして入射するものはX線でなければならない。それ
だけではいけない。試料の原子電子と相互作用したあと
検出されるべき対象が電子のような荷電粒子であっては
ならない。結晶の内部深くから外部まで出てくる事がで
きないからである。だとすれば、入射プローブもX線、
出射するデータをになう線もX線でなければならない。
X線は、陽子、電子などよりもはるかに浸透力に優れて
いるからである。
【0014】入射線がX線で、出射線が電子であるのが
XPSであるが、本発明は出射線もX線とするのであ
る。入射X線のエネルギーが十分に高いと、内殻電子を
叩き出しその軌道を空にできる。内殻が空孔になった励
起状態になる。励起状態は安定でないから、いずれかの
外殻電子が空になっていた内殻に落ちる。この時にX線
を放出する。内殻軌道のレベルをE1 、外殻軌道のレベ
ルをE2 とすると、X線の波長λは
【0015】hc/λ=E2 −E1 (1)
【0016】によって与えられる。分光器によってX線
波長を測定するとλがわかる。原子の内殻電子レベルが
既知であるので、λの値から両方のレベルE2 、E1
同定することができる。原子の軌道エネルギーを反映す
るX線であるから特性X線という。これだけなら化学状
態を知る手段として使えるとは思えないかも知れない。
【0017】しかし本発明者は特性X線の強さを図るこ
とによって化学状態を知ることができることに気づい
た。これは本発明者の全くの独創であって、これまでに
特性X線の強度から、化学状態を検出できることを示唆
したものはない。化学結合は最外殻の電子が閉殻を構成
するように隣接原子と電子を共有することによってなさ
れる。すると最外殻電子軌道が当然に歪む。結合の相手
によって、電子軌道の歪が異なる。軌道エネルギーが変
わり、さらに電子がそこに存在するかどうかという確率
は変動するかも知れない。本発明者は後者の可能性に着
目した。
【0018】X線によって内殻電子を外部に叩きだし、
外殻軌道から空になった内殻軌道に電子が落ちるときに
X線を出す。この時、結合の相手に違いにより、生成さ
れるX線の強度が異なってくるかも知れない。本発明者
はそのような発想にもとづきX線を照射することによっ
て出てくる特性X線の強度の違いによって、原子の化学
結合の相手の違いを検出できるかどうか確かめた。繰り
返し実験によって予想通りの結果が得られた。
【0019】生成される特性X線の強度が結合相手によ
って異なるのである。外殻軌道準位E2 から内殻軌道準
位E1 へ落ちたことによる特性X線の強度をΣ12とす
る。これは対象となる原子Aが、原子Bと結合している
ときと原子Cと結合しているときで値が違う。つまり結
合ABを持つときと、結合ACと持つ場合で、特性X線
の強度Σ12が異なる。これは本発明者の発見である。結
合の形態自体をパラメータとして、Σ(AB)、Σ(A
C)とすると、軌道1、2間の遷移による特性X線強度
が異なる。これが新たな知見である。
【0020】Σ12(AB)≠Σ12(AC) (2)
【0021】もしもΣの絶対値を測定できれば、これだ
けで原子Aの結合の比率を求めることができる。本発明
の骨子はここにある。
【0022】外殻−内殻遷移特性X線の強度を測定し、
ABが100%のときの値Σ12(AB)と、ACが10
0%の時の値Σ12(AC)を予め求めておく。そして、
任意の試料に対してΣ12遷移X線の強度を求めて、線形
結合の係数b,c(b+c=1)によって、
【0023】 Σ12=bΣ12(AB)+cΣ12(AC) (3)
【0024】と表現されるはずであるから、ここから
b,cをもとめる。AB結合がb、AC結合がcの割合
で含まれるという事である。本発明の思想は実にここに
ある。単純で簡明な思想である。
【0025】しかしX線の強度や、試料の寸法などがそ
のつど異なるから絶対値を求めることは難しいという場
合がある。そのような場合は相対値による比較をする。
本発明者は異なるふたつの波長の特性X線の強度を比較
して、比較値によって結合AB、ACの比率を求めるこ
とができるのではないかと考えた。他の軌道準位E4
ら他の内殻準位E3 へ落ちたときに他の特性X線を出
す。振動数はhν=E4−E3 を満たす。その強度をΣ
34とする。これも結合原子がBかCであるかによって異
なるはずであるが、上の方の軌道4が内殻軌道であれば
化学結合に無関係である。すると結合の種類によらず同
一値を取るはずである。
【0026】 Σ34(AB)=Σ34(AC) (3’) である。この値の絶対値の測定も難しい。
【0027】しかし試料、装置を特定すればこの値は決
まる。そこで二つの特性X線の強度を測定しその相対比
から、相手原子の違いを検出することにした。相対値を
知るためには2回X線照射実験をする必要があるが、同
じ装置で行うので、定数が打ち消されて、結合相手を正
しく同定する事ができるのである。発明者はさらに実験
を重ねて、結合が同じであれば、異なる軌道間の特性X
線強度の比がつねに一定であることを見いだした。つま
りAB結合に対して
【0028】 Σ12(AB)/Σ34(AB)=一定 (4)
【0029】である。これはどの軌道間の遷移によるX
線強度の比について成り立つことを確かめた。さらにこ
の比の値がAC結合の場合はまた異なっているというこ
とも確かめた。もちろん特性X線の波長(エネルギー)
は少し変化する。変化してもどの特性X線がどれだけの
波長になるかということは分かる。だから特性X線の波
長と遷移レベルの関係は簡単に特定できる。特性X線の
強度を測定するが強度その物ではなく比を取る。比をと
るから入射X線強度ばらつき、試料大きさによるばらつ
き、装置によるばらつきなどが消えてしまう。そうする
と比の値を違わせているものは化学結合の違いだけであ
る。全ての軌道間の特性X線の比をAB結合、AC結合
について求めておけば、特性X線強度比からAB結合か
AC結合かが分かるはずである。つまり
【0030】 Σ12(AB)/Σ34(AB)=γ1234(AB) (5) Σ12(AC)/Σ34(AC)=γ1234(AC) (6)
【0031】の値を全ての遷移2→1、3→4について
測定する。これは一定値である。12の遷移を外殻−内
殻遷移、34の遷移を内殻同士に選ぶ。その理由を述べ
る。化学結合は最外殻準位の軌道で起こるので、1、
2、3、4の準位の何れかが最外殻、或いはその一つ内
側の準位で結合の影響を受ける準位である事が必要であ
る。そうする事によって、γ1234(AB)≠γ1234(A
C)という条件を実現できる。以下の記述では、最外殻
準位という場合そのような次点の準位をも含めるものと
する。
【0032】100%のAB結合か、100%のAC結
合か?という二者択一であれば、それだけで十分であ
る。本発明者はしかしそれだけでは満足できない。さら
に進んで、中間状態をも正確に把握したいものである。
AB結合がb、AC結合がcの割合で存在する(b+c
=1)という場合、その混合比率b、cを求めたい。
【0033】そのような場合は、最外殻準位を含まない
遷移を規準(Σ34)に選ぶとよい。つまり分子が最外殻
準位を含む遷移であり、分母が内殻準位どうしの遷移と
するのである。これは化学結合の影響を受けないから、
混合比b、cによらず一定である。それに反して最外殻
準位を含む分子の確率は、混合比b、cによってその特
性X線強度が著しく変わる。
【0034】最外殻準位の電子が内殻に落ちて発生する
特性X線は、化学結合の混合比の違いをそのまま反映す
る。つまり線形性があるはずである。AB結合の割合を
b,AC結合の割合とcとする(b+c=1)と、この
場合のX線強度比は、AB結合の比と、AC結合の比の
線形結合によって与えられる。最外殻準位を含む遷移を
12、最外殻準位を含まず中間準位だけの遷移を34と
すると、後者はAB、ACに関わらず一定値を取り、前
者は混合比に比例するはずである。
【0035】 Σ12=bΣ12(AB)+cΣ12(AC) (7) Σ34=Σ34(AB)=Σ34(AC)=一定値 (8)
【0036】これらの値の絶対値が不明であるとして
も、その比はわかる。比の値は(7)の線形性をそのま
ま引き継ぐはずである。すなわち γ1234=Σ12/Σ34=bγ1234(AB)+cγ1234(AC) (9) によって与えられる。異なる遷移12、34に対する特
性X線強度の測定によって左辺が分かる。右辺において
γ1234(AB)、γ1234(AC)は既知である。右辺は
一つのパラメータ(b+c=1だから)しか含まないの
でこれによってパラメータの値が決まる。簡単の為12
34というサフィクスを除くと、
【0037】 b=(γ−γ(AC))/(γ(AB)−γ(AC)) (10) c=(γ(AB)−γ)/(γ(AB)−γ(AC)) (11) となり、AB結合とAC結合の比が求まる。
【0038】以上が本発明の骨子である。まったく新規
な着想に基づくものである。斬新な技術思想であって、
このようなことをほのめかした先行技術は存在しない。
しかも本発明はどのような物質にも適用できる。その用
途は極めて広い。しかし本発明の当面の目的は、GaA
sの表面の酸素との結合状態を調べることである。そこ
で、以下の説明はGaAsにおいて、GaがAs或いは
Oと結合しているか、AsがGa或いはOと結合してい
るのかという化学状態の検出に絞って説明する。本発明
はさまざまのX線を利用する。これらのX線に付いて正
確に定義しなければならない。まずGaの特性X線にど
のようなものがあるのかについて説明する。
【0039】図1は4p3/2 レベルまでの電子準位を示
す図である。Ga(原子番号31)の電子配列は、(1
s)2 (2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (3
d)10(4S)2 (4p)1 である。基底状態では電子
は電子準位を低い方から満たして行くのでこのような配
列になる。これらの電子の準位は図1のようになる。最
低の準位は1s1/2 である。一つ目の数字は主量子数、
s、p、dは角運動量子数をしめす。分数は角運動とス
ピンの和j=l+sを示す。全角運動量jによってエネ
ルギーが異なる。しかし方位量子数mに関しては縮退し
ている。j(j+1)が多重度である。多重度だけの電
子が同じレベルに入る。j=1/2の場合はスピンの違
う二つの電子がその準位に入る。p軌道では角運動量が
1であるから、スピン1/2の和が1/2の場合(反平
行)と、3/2の場合(平行)がある。j=3/2の場
合は多重度が4であるから、方位量子数の違う(m=
1、−1)二組の電子(スピンが逆)がはいる。
【0040】d電子はl=2、s=1/2であるから、
j=3/2とj=5/2の場合がある。多重度はそれぞ
れ4、6である。3d5/2 のレベルには6個の電子が入
る。スピンが逆向きの3組の電子がある。方位量子数が
違うだけでエネルギーは同じである。4p電子は一つで
あるから、4p1/2 のレベルにひとつ入る。これが最外
殻の電子である。Gaは基底状態ではそのレベルに一つ
の電子が存在する。以上はGaの電子準位である。基底
状態では4p1/2 の半分まで詰まるが、励起状態では下
方のどれかの電子が上の準位に上がっている。
【0041】As原子(原子番号33)のレベルを説明
する。これはGaより二つ電子が多い。4p1/2 に電子
がふたつ入り、4p3/2 に電子が一つはいる。これらの
準位は磁場がない場合の原子のレベルである。磁場が掛
かるとさらにレベルは細分化される。
【0042】以上の表記は、主量子数、角運動量子数、
jを並べたものであるが、同じレベルを別の方法で表記
することもある。主量子数nが1、2、3、4…の場合
を慣用的に、K、L、M、N…と表現する。つまりKか
らひとつづつ増えるような記号をつける。K殻、L殻、
M殻という。たとえばM殻はn=3のことである。殻運
動量子数の違いについては、エネルギーの低い方から順
にI、II、III…などの番号をつける。これの番号
は1、2、3、…とすることもある。ここでは1、2、
3…の数字を使う。例えばNI =N1 というのは、4s
1/2 のことである。表記が一定しないが、これらの表記
は分光学において古くから用いられており人によって異
なるものが使われる。
【0043】図1において縦線はレベル間遷移を示して
いる。X線の作用によって内殻電子が飛ばされ、外殻軌
道の電子がその内殻軌道に落ちることによって、レベル
差に等しいエネルギーのX線が放出される。X線の波長
はレベルE1 、E2 の差によって決まる。 電子一つの
遷移によってホトン(光子)が一つ放出される。ホトン
数によってX線強度が決まる。X線は電界を与え、電界
は双極子遷移を引き起こすので、遷移確率は、軌道運動
の座標Xの状態1と状態2の行列成分X12の二乗に比
例する。つまり角運動量の変化ΔL=0は禁止される。
2s→1s、3p→2pなどの遷移は起こらない。電界
はスピンを持たないからスピンは不変である。つまりΔ
s=0。このような関係を選択則という。
【0044】図1には8本の遷移線が描いてある。いず
れも励起状態から最低準位への遷移を示す。もちろん、
中間状態L殻レベルへの遷移もあるが、ここでは書いて
いない。この場合はLとギリシャ文字の組み合わせによ
って遷移を表す。最低準位はK殻であるから、最低準位
に落ちるX線はKによって表す。相手の準位はα、β等
によって区別する。
【0045】Kα1 =L3 →K、Kα2 =L2 →K、K
β1 =M3 →K、Kβ3 =M2 →K、 Kβ2 =N2 →K=N3 →K、Kβ5 =M4 →K=M5
→K
【0046】である。Kβ2 とKβ5 はGaの場合ふた
つの準位が縮退しているから同じエネルギーになるので
ある。
【0047】Lレベルへの遷移も用いる事があるので定
義を述べる。 Lα1 =Lα2 =M4 →L3 =M5 →L3 Lβ1 =M4 →L2 、Lβ3 =M3 →L1 Lβ4 =M
2 →L1 Lη=M1 →L2 、 Lι=M1 →L3
【0048】である。高いレベルから低いレベルに落ち
るときにX線が出るから、高いレベル→低いレベルと表
記するべきであるが、X線表記は低いレベル(K,Lの
ように)を規準に命名しているから、「低い準位−高い
準位」というような表記をすることもある。
【0049】特性X線を表す記号(Siegbahn記号)は慣
習的な命名法であって、必ずしも規則性があるとはいえ
ない。これらのレベル間遷移とこの記号の対応はどの原
子でも同じである。しかし同じ記号のX線でも原子が違
えば異なる。だから特性X線というのである。表1にG
aの特性X線の波長とエネルギーを示す。
【0050】
【表1】
【0051】レベルの高さがそれぞれの元素によって異
なるから特性X線のエネルギーも元素によって違う。遷
移準位と特性X線記号の対応はどの元素でも同じであ
る。つぎにAsの特性X線波長、エネルギーを表2に示
す。
【0052】
【表2】
【0053】これらのX線のいづれかふたつΣ12、Σ34
を利用し、ふたつの特性X線Σ12、Σ34の強度を測定
し、その比の値Σ12/Σ34を求める。AB、ACの結合
の違いと、その比の値の違いが対応しているから、比の
値からAB結合であるか、AC結合であるか、或いは両
者が混合したものであるか?混合している場合はその比
は幾らであるのか?ということがわかる。
【0054】GaにおいてもAsにおいても、最外殻準
位はN2 、N3 準位である。これに継ぐ外殻の準位はM
4 である。つまり (1) 化学結合の影響をうけやすい……N2 、N3 、M4 、M5 (2) 化学結合の影響を受けにくい……M1 、L3 、L2 、L1 、K などである。M2 、M3 は中間のレベルである。最外殻
準位N2 、N3 と最低準位Kの遷移Kβ2 が結合状態を
最も強く反映するから使いやすい遷移である。それ以外
の遷移も利用できる。内殻どうしの遷移としてもいくつ
もの候補がありうる。
【0055】実際にはピーク強度がかなり高くないと、
強度比を正確に決める事が難しい。原子状態のGa特性
X線スペクトル、As特性X線スペクトルを図2に示
す。エネルギーが9keV〜12keVの部分である。
Ga原子の場合、Kα1 のピークが最も高い。ついでK
α2 が高いが、分解能が不十分であるのでこの図では両
者が重なっている。さらにKβ1 が高い。As原子の場
合も、Kα1 のピークが最も抜きんでている。その次が
Kα2 である。Kβ1 が三番目に高い。この図はエネル
ギーの高い部分だけを示しているのでL殻より上への遷
移線は現れない。
【0056】図3はGaの10.2keV〜10.4k
eVの領域にあるKβ線の近傍の拡大図を示す。実線は
分光器によって分光されたX線のスペクトルである。破
線は、Kβ3 、Kβ1 、Kβ2 、Kβ5 を分離したスペ
クトルである。図4はAsの11.7keV〜11.9
keVの範囲のKβ1 〜Kβ5 のピークの拡大図であ
る。破線はこれらを分離したグラフである。分光器の分
解能が十分であればこれらのKβ線をも分離しその強度
を求める事ができる。次に候補となるレベル間遷移の組
について述べる。前がΣ12(化学結合の影響を受け易
い)遷移、後者がΣ34(結合の影響を受けない)遷移で
ある。
【0057】 Σ12 Σ34 1.Ga:K−N2,3 (Kβ2 ) K−L2,3 (Kα1,2 ) 2.As:K−N2,3 (Kβ2 ) K−L2,3 (Kα1,2 ) 3.Ga:L2 −M4 (Lβ1 ) L2 −M1 (Lη) 4.As:L2 −M4 (Lβ1 ) L2 −M1 (Lη) 5.Ga:L3 −M4,5 (Lα1,2 ) L2 −M1 (Lη) 6.As:L3 −M4,5 (Lα1,2 ) L2 −M1 (Lη)
【0058】このほかにもいくつかの選択枝がありう
る。内殻遷移としてKβ1,3 を利用することも可能であ
る。上の場合の1、3、5はGa原子の電子遷移に基づ
く特性X線である。Ga−Oの場合と、Ga−Asの場
合がある。2、4、6はAs原子の特性X線である。こ
の場合はAs−O結合とAs−Ga結合の場合がある。
前者(Σ12)を後者で割った値γ1234は次のような値に
なる。
【0059】 1.Ga−As 3.7×10-2 Ga−O 2.1×10-2 2.As−Ga 4.8×10-2 As−O 2.4×10-2 3.Ga−As 20 Ga−O 12 4.As−Ga 39 As−O 18 5.Ga−As 49 Ga−O 29 6.As−Ga 83 As−O 40 そのほかの場合もそれぞれの特性X線の強度を測定して
同様の比率をうることができる。
【0060】
【発明の実施の形態】
[実施例1:Ga特性X線におけるKβ2 とKα1,2
比]化学状態の変化による特性X線への影響は化学結合
に関与している電子の遷移による特性X線で特に大きく
なる。GaおよびAsの場合、結合電子は4p電子とな
る。
【0061】この実施例ではGa原子の特性X線を問題
にする。4p電子軌道はN2,3 であるので K−N2,3
(Kβ2 )線において最も大きな強度変化が観測され
る。そこで外殻軌道の電子遷移Σ12としてK−N2,3
採用する。Nのレベルは縮退しており重なっているから
両方のレベルのなすピークの面積を計測し強度とする。
Kβ2 という命名も、両方のレベルからの遷移を纏めた
線を意味する。これを分子とし、内殻準位間の遷移によ
る特性X線強度Σ34を分母とする。ここでは内殻準位遷
移としK−L2,3 (Kα1,2 )を採用する。L2,3 レベ
ルも縮退しており両方を加えたピークの面積を強度とし
て計算する。
【0062】Σ12=Σ(K−N2,3 )=Σ(Kβ2 ) Σ34=Σ(K−L2,3 )=Σ(Kα1,2
【0063】図5はこれを図示したものである。外殻遷
移強度を内殻遷移強度で割った比をΥ1 とする。1は実
施例1の番号に合わせたものである。
【0064】 Υ1 =Σ(K−N2,3 )/Σ(K−L2,3 )=Σ(Kβ2,3 )/Σ(Kα2,3 ) (12) によって外/内X線強度比を定義する。GaAs、Ga
O結合に対する比率は、 Υ1 (GaAs)=3.7×10-2 (13) Υ1 (GaO) =2.1×10-2 (14)
【0065】強度比が10-2のオーダーになるのは図2
に示すようにKα線のピークが極めて高いからである。
入射X線によってK殻電子が弾き飛ばされたとき、空席
を満たすためにすぐ上のL殻電子が落ちてくるという確
率が多いのは当然である。摂動論から、遷移の確率は電
場つまり変位Xの行列要素X12の二乗をエネルギー差
(E1 −E2 )によって割ったものであるから、エネル
ギー差の小さいレベル間での遷移が優勢であるのは当然
である。これに反してKβのようにエネルギー差の大き
い遷移は確率が小さくなる。
【0066】ここで問題にするのは、Ga原子が表面近
くに於いてAsと結合しているかOと結合しているかと
いうことである。Kαのように内殻準位間の遷移は結合
によって影響を受けない。Kβ2 のように結合に寄与す
るN2 、N3 からK殻への遷移は結合によって強度が変
わる。実際上記のように約2倍程度の違いがある。
【0067】表面ちかくといっても表面の1層とか2層
というオーダーではなく数十層の内部でも本発明によっ
て検出する事はできる。結晶から出てくるX線が吸収さ
れないで外部に出てくる事のできる深さまで検出できる
のである。100%GaAs結合であれば、比の値Υ1
は3.7×10-2になる。100%GaOであれば比の
値Υ1 は2.1×10-2となる。
【0068】それだけではない。中間の場合も本発明の
方法によって分かる。GaAs結合がb,GaO結合が
cの割合(b+c=1)で含まれる場合、Υ1
【0069】 Υ1 =3.7×10-2b+2.1×10-2c (15) となるのである。ここからb、cの値を簡単に求める事
ができる。
【0070】[実施例2:As特性X線におけるKβ2
とKα1,2 の比]今度はAs原子の特性X線スペクトル
に着目する。先述のようなKβ2 とKα1,2 の特性X線
の比を用いる。Gaの場合と同じように、Asの場合も
K−N2,3 (Kβ2 )線において最も大きな強度変化が
観測される。そこで外殻軌道の電子遷移Σ12としてK−
2,3 を採用する。Nのレベルは縮退しており重なって
いるから両方のレベルのなすピークの面積を計測し強度
Kβ2 とする。ここでも内殻準位遷移としK−L2,3
(Kα1,2 )を採用する。
【0071】Σ12=Σ(K−N2,3 )=Σ(Kβ2 ) Σ34=Σ(K−L2,3 )=Σ(Kα1,2
【0072】図6はこれを図示したものである。図5と
似ているがレベル間のエネルギーが違う。外殻遷移強度
を内殻遷移強度で割った比をΥ2 とする。2は実施例2
の番号に合わせたものである。
【0073】 Υ2 =Σ(K−N2,3 )/Σ(K−L2,3 )=Σ(Kβ2,3 )/Σ(Kα2,3 ) (16) によって外/内X線強度比を定義する。
【0074】As−Ga、As−O結合に対する比率
は、 Υ2 (AsGa)=4.8×10-2 (17) Υ2 (AsO) =2.4×10-2 (18)
【0075】実施例1と同じ理由でKα線のピークが極
めて高いから強度比は小さい。100%AsGa結合で
あれば、比の値Υ2 は4.8×10-2になる。100%
GaOであれば比の値Υ2 は2.4×10-2となる。
【0076】中間の場合も本発明の方法によって分か
る。As−Ga結合がb,As−O結合がcの割合(b
+c=1)で含まれるばあい、Υ2 は Υ2 =4.8×10-2b+2.4×10-2c (19) となるのである。ここからb、cの値を簡単に求める事
ができる。
【0077】[実施例3:Ga特性X線におけるLβ1
とLηの比]Gaの外殻準位はN2 、N3 だけではな
い。Gaの3d3/2 (M4 )や3d5/2 (M5 )はやは
り化学結合に関係する軌道である。M4 からL2 への遷
移はLβ1 線であるがこれもΣ12線として用いることが
できる。その場合内殻遷移Σ34としてM1 からL2 への
遷移を用いる。遷移後のレベルをL2 に合わせている。
もちろん他の内殻遷移線を用いても良い。但しL2 −M
2,3 の遷移は選択則を満たさないから禁止される。
【0078】Σ12=Σ(L2 −M4 )=Σ(Lβ1 ) Σ34=Σ(L2 −M1 )=Σ(Lη)
【0079】遷移線を図7に示す。これらの比をΥ3
する。 Υ3 =Σ(Lβ1 )/Σ(Lη) (20)
【0080】Ga−As結合に対する比Υ3 (GaA
s)、Ga−O結合に対する比Υ3 (GaO)は
【0081】 Υ3 (GaAs)=20 (21) Υ3 (GaO) =12 (22)
【0082】である事が測定の結果分かった。Ga−A
s結合の割合をb、Ga−O結合の割合をcとする(b
+c=1)。Υ3 の測定値は
【0083】 Υ3 =20b+12c (23) を満足する。Υ3 からb、cの値が分かる。
【0084】[実施例4:As特性X線に於けるLβ1
とLηの比]Asの外殻準位もN2 、N3 だけではな
い。3d3/2 (M4 )や3d5/2 (M5 )はやはり化学
結合に関係する軌道である。M4 からL2 への遷移はL
β1 線であるがこれもΣ12線として用いることができ
る。その場合内殻遷移Σ34としてM1 からL2 への遷移
を用いる。遷移後のレベルをL2 に合わせている。もち
ろん他の内殻遷移線を用いても良い。但しL2 −M2,3
の遷移は選択則を満たさないから禁止される。
【0085】 Σ12=Σ(L2 −M4 )=Σ(Lβ1 ) Σ34=Σ(L2 −M1 )=Σ(Lη) 遷移線を図8に示す。これらの比をΥ4 とする。
【0086】 Υ4 =Σ(Lβ1 )/Σ(Lη) (24)
【0087】As−Ga結合に対する比Υ4 (AsG
a)、As−O結合に対する比Υ4 (As−O)は Υ4 (AsGa)=39 (25) Υ4 (AsO) =18 (26)
【0088】である事が測定の結果分かった。As−G
a結合の割合をb、As−O結合の割合をcとする(b
+c=1)。Υ4 の測定値は
【0089】 Υ4 =39b+18c (27) を満足する。Υ4 からb、cの値が分かる。
【0090】[実施例5:Ga特性X線におけるLα
1 、2とLηの比]Gaの外殻準位はN2 、N3 だけで
なく、3d3/2 (M4 )や3d5/2 (M5 )はやはり化
学結合に関係する外殻の軌道であると先に述べた。実施
例3はM4 からL2 (2p1/2 )の遷移を使っている。
4 、M5 からL3 (2p3/2 )への遷移線をもΣ12
として利用できる。M5 からL3 への遷移はLα2 線、
4 からL3 への遷移はLα1 線である。これは重なっ
ているから両方を含むピークの強度を測定する。Σ12
として用いることができる。内殻遷移Σ34としてM1
らL2 への遷移を用いる。前例と同じLη遷移である。
もちろん他の内殻遷移線を用いても良い。つまりこの実
施例ではつぎのような割当を行う。
【0091】 Σ12=Σ(L3 −M4,5 )=Σ(Lα1,2 ) Σ34=Σ(L2 −M1 )=Σ(Lη) 遷移線を図9に示す。これらの比をΥ5 とする。
【0092】 Υ5 =Σ(Lα1,2 )/Σ(Lη) (28)
【0093】Ga−As結合に対する比Υ5 (GaA
s)、Ga−O結合に対する比Υ5 (GaO)は Υ5 (GaAs)=49 (29) Υ5 (GaO) =29 (30)
【0094】である事が測定の結果分かった。Ga−A
s結合の割合をb、Ga−O結合の割合をcとする(b
+c=1)。Υ5 の測定値は
【0095】 Υ5 =49b+29c (31) を満足する。Υ5 からb、cの値が分かる。
【0096】[実施例6:As特性X線におけるLα
1 、2とLηの比]Asの外殻準位はN2 、N3 だけで
なく、3d3/2 (M4 )や3d5/2 (M5)はやはり化
学結合に関係する外殻軌道であると先に述べた。M4
5 からL3 (2p3/2 )への遷移線をもΣ12線として
利用できる。M5 からL3 への遷移はLα2 線、M4
らL3 への遷移はLα1 線である。これは重なっている
から両方を含むピークの強度を測定する。Σ12線として
用いることができる。内殻遷移Σ34としてM1 からL2
への遷移を用いる。前例と同じLη遷移である。もちろ
ん他の内殻遷移線を用いても良い。つまりこの実施例で
はつぎのような割当を行う。
【0097】 Σ12=Σ(L3 −M4,5 )=Σ(Lα1,2 ) Σ34=Σ(L2 −M1 )=Σ(Lη) 遷移線を図10に示す。これらの比をΥ6 とする。 Υ6 =Σ(Lα1,2 )/Σ(Lη) (32)
【0098】As−Ga結合に対する比Υ6(AsG
a)、As−O結合に対する比Υ6 (AsO)は Υ6 (AsGa)=83 (33) Υ6 (AsO) =40 (34)
【0099】である事が測定の結果分かった。Ga−A
s結合の割合をb、Ga−O結合の割合をcとする(b
+c=1)。Υ6 の測定値は
【0100】 Υ6 =83b+40c (35) を満足する。Υ6 からb、cの値が分かる。
【0101】以上が本発明の実施の形態を示す例であ
る。以下に述べるものは本発明を実施するために必要な
装置などに付いての説明である。本発明の技術思想では
ない。X線源はX線管球、放射光(シンクロトロン放
射:SR)、陽子線等を用いることができる。
【0102】通常のX線管球は使いやすいがパワーが弱
い。パワー不足を補うために照射時間を長くする必要が
ある。放射光は光速近くにまで加速した電子を磁場によ
って曲げるときに出す輻射X線のことである。小さいエ
ミッタンスの強力なX線が得られる。測定時間も大幅に
短縮される。高輝度のX線であるのでバックグランドと
の比(S/N比)が大きくなり高精度の測定が可能であ
る。
【0103】しかしこれは放射光装置を用いる必要があ
るから装置コストが高くなる。これらはもともとX線を
出すものである。X線が試料に当たって電子を励起し、
電子が内殻に落ちたときに発する特性X線を測定する。
つまり入力がX線であって、出力もX線である。この場
合一つのホトン(光子)が一つのホトンを出すという
1:1の関係にある。
【0104】陽子線の場合は少し違う。これは陽子を加
速して試料にうちこむものである。陽子が試料の原子を
叩き格子構造を乱す。クーロン力によって内殻電子が外
部に放出される。内殻準位が空位になるから上方の準位
から電子が内殻レベルに落ち込む。そのときに特性X線
を出す。
【0105】測定環境は真空、大気中、液体中のいずれ
でも良い。これは、特異なことである。多くの物性測定
は真空中でなければ行えない。それは電子、低エネルギ
ーのイオンを媒体にするからである。本発明は出力がX
線であって、入力がX線、高いエネルギーの陽子線であ
るから真空を必須としない。大気中であっても良い。X
線は勿論空気によって吸収されるがパワーが大きいとさ
ほど影響はない。
【0106】さらに進んで水中にある対象についても測
定をおこなうことができる。このような測定法は殆ど他
に例がない。多くの測定は電子、イオンをプロ−ブに使
うから水の中では絶対に測定できない。本発明はX線を
入力の励起源と信号の両方に使うので水中の試料にも威
力を発揮する。勿論X線が水によって吸収されてしまっ
てはいけないから強いX線源を必要とする。陽子線を入
力励起手段とする場合でもエネルギーが低いと散乱吸収
されるがエネルギーが高ければ散乱も僅かである。
【0107】試料の表面近くの状態のみを測定したけれ
ば、表面すれすれにX線、陽子線を当てるようにする。
低入射角で当てると反射されるから奥深くまで入らな
い。全反射させるのである。
【0108】試料の奥の状態をも知りたいという場合は
試料の奥までX線、陽子線を通す必要がある。入射角を
大きくし、表面と直角にちかい角度で入射する。入射角
を連続的に変化させて特性X線の強度比の変化をしらべ
ると、化学状態の厚さ方向の変化をも求めることができ
るのである。
【0109】
【実施例】1.Ga23 2.As23 3.GaAs単結晶ウエハ 4.酸化処理したGaAsウエハ を測定対象として、X線、陽子線を当てて、発光X線ス
ペクトルを測定した。試料1(Ga23 )はGa原子
が100%酸素Oと結合しているときのX線強度比Υを
求めるためにである。試料2(As23 )はAs原子
が100%酸素Oと結合しているときのX線強度比Υを
求めるためのものである。
【0110】試料3(GaAsウエハ−)はGa原子が
殆ど100%As原子と結合している場合の強度比Υが
どのような値であるのかを知るためのものである。ただ
し表面近くでは一部のGa、As原子が酸素Oと結合し
ている。表面状態は全反射(0.1゜)入力によって調
べることができる。試料4(酸化処理したGaAs)は
1%H3 PO4 水溶液中でGaAsウエハを陽極として
1mA、10分間陽極酸化したものである。結晶の内部
までGaO結合、AsO結合が含まれるものの代表例で
ある。つまり強度比Υが中間の値を取るような例であ
る。
【0111】X線発生のための励起源にはX線管球、放
射光、陽子線を用いた。発光X線の測定には波長分散型
のX線検出器を使用した。放射光源ではエネルギー不足
のためKX線の測定は行わなかった。陽子線は3MeV
に加速したものを使用した。陽子ビーム電流は100n
Aであった。
【0112】入射角度は45゜と0.1゜とした。45
゜の場合は内部までの測定を行う。0.1゜は全反射測
定である。放射光、陽子線ともに入射角度を0.1゜と
して全反射測定が可能である。測定環境は真空中
(V)、大気中(A)、水中(W)で行った。測定を実
施した条件を表3にまとめた。
【0113】
【表3】
【0114】()内の数字は測定時間( 単位: 時間) で
ある。X線管球を線源としたものは強度が弱いから照射
時間が長くかかる。それぞれ2時間〜1時間X線露光し
ている。放射光の場合はX線源が強いので時間は短くな
る。陽子線は3MeV100nAで十分な強度があるか
ら測定時間を短くする事ができる。
【0115】実験結果を表4〜9に示す。それぞれ先述
の6つの例に対応するものである。 Σ12 Σ34 1.Ga:K−N2,3 (Kβ2 ) K−L2,3 (Kα1,2 ) 表4 2.As:K−N2,3 (Kβ2 ) K−L2,3 (Kα1,2 ) 表5 3.Ga:L2 −M4 (Lβ1 ) L2 −M1 (Lη) 表6 4.As:L2 −M4 (Lβ1 ) L2 −M1 (Lη) 表7 5.Ga:L3 −M4,5 (Lα1,2 ) L2 −M1 (Lη) 表8 6.As:L3 −M4,5 (Lα1,2 ) L2 −M1 (Lη) 表9
【0116】[実施例1:Ga:K−N2,3 (Kβ2
とK−L2,3 (Kα1,2 )]
【0117】
【表4】
【0118】Vは真空中での測定、Aは大気中での測
定、Wは水中での測定結果である。()の中の値は比の
値Υ1である。±は誤差の標準偏差をしめす。Ga2
3 のデータからGa−O結合が100%の時はKβ2
Kα1,2 の比が2.1×10-2となることが確認され
る。反対にGaAsの45゜入射のデータから、Ga−
As結合が100%であれば、Kβ2 /Kα1,2 の比が
3.7×10-2であることがわかる。
【0119】GaAsウエハの場合、真空中(V)、大
気中(A)、水中(W)の何れにおいても強度比がその
値になっている。つまりGaAsウエハ−は100%G
aAs結合であるということである。GaAsウエハ−
であっても陽子線を全反射角で入射したときには、3.
7×10-2の値よりも小さい2.58×10-2となる。
GaO結合:GaAs結合=0.7:0.3の割合で含
まれるということである。
【0120】陽極酸化GaAsの場合は45゜入射であ
っても3.7×10-2より小さい。X線管球によって測
定した場合3.3×10-2となっている。Ga−O結合
が25%あるということである。陽子線による場合は同
じ試料であるのにより低い値になる。2.9×10-2
ある。これはGa−O結合が50%含まれるということ
である。このような違いは入射角の違いによるものであ
る。管球の場合は垂直入射になりより深くまで入るから
GaAs結合が優勢になる。陽子線45゜入射の場合は
それほどの深さまで行かないから表面の比重が大きくG
a−O結合が多くなるのである。
【0121】陽子線全反射の場合、GaAsウエハ−と
陽極酸化GaAsとがあまり違わないのは、GaAsウ
エハ−でも表面ではGa−O結合が多いからであろう。
GaAsと言っても表面は酸化されているのである。X
線管球励起の場合には信号強度が小さいために放射光励
起、陽子線励起と比べて測定精度が一桁小さくなってし
まう。
【0122】Ga、Asいずれについても酸化物、単結
晶GaAs基板、酸化処理した単結晶GaAs基板でX
線強度比Υの違いを認めることが出来た。また放射光、
陽子線を利用した場合には測定時間を1/4に設定した
にも関わらず信号強度が大きいためにX線管球を用いた
測定に比べて一桁測定精度が向上する。従って測定時間
のさらなる短縮が可能である。また酸素以外の不純物と
の結合によるわずかなスペクトル変化も捉えることが出
来る。
【0123】大気中、液中の試料についても、試料−検
出器間でのX線の吸収のために信号強度の低下はあるも
のの、低下分は20%程度であり問題にはならない。更
に、全反射法を用いた場合には測定領域が表面に限られ
る。表面は酸化されているので、45度の角度で励起し
た結果と比べても酸化物割合が多くなっていることが判
る。
【0124】[実施例2:As:K−N2,3 (Kβ2
とK−L2,3 (Kα1,2 ])今度はAs原子の特性X線
によって測定を行う。Kβ2 とKα1,2 の強度の比の値
を測定する。
【0125】
【表5】
【0126】GaAsウエハ−であっても、4.6×1
-2になるからX線の到達範囲に約8%のAs−O結合
を含むのである。陽子線を全反射角で入射したときGa
Asでも値が低いのは表面にはAs−Oの結合が多いと
いうことである。酸化GaAsの場合3.3×10-2
あるから、60%程度はAs−O結合である。
【0127】[実施例3 (Ga:L2 −M4 (Lβ
1 )とL2 −M1 (Lη)の比)]次にGa原子のLβ
1 とLη線の遷移強度の比を測定した。既に説明したが
Ga−Asに対しては20、Ga−Oに対しては12で
ある。
【0128】
【表6】
【0129】この結果からAs−O結合の場合、放射光
でも陽子線でもX線管球であっても同じ比の値を与える
事が分かる。全反射放射光、全反射陽子線ともに、Ga
Asの比の値は14.5程度である。Ga−O結合が7
0%程度含まれる。酸化GaAsに対しては13.5の
程度である。Ga−O結合が80%程度になる。GaA
sに対して、45゜放射光と、X線管球、陽子線の比の
値が異なるが、これは放射光の方が深くまで入るから奥
部のGaAs結合の影響が強いためであろうと推測され
る。
【0130】[実施例4 (As:L2 −M4 (Lβ
1 )とL2 −M1 (Lη)の比)]次にAs原子のLβ
1 とLη線の遷移強度の比を測定した。既に説明したが
As−Gaに対しては39、As−Oに対しては18で
ある。
【0131】
【表7】
【0132】GaAsも酸化GaAsも全反射角で放射
光、陽子線が入射した場合は大体22程度になる。80
%はAs−O結合だということである。表面が酸化され
ているようすが良く分かる。酸化GaAsの場合45゜
入射の放射光、陽子線、X線管球に対して概略25の程
度である。これは65%のAs−O結合と言う事を意味
する。GaAsの場合はX線管に対して殆ど100%G
a−As結合である。
【0133】[実施例5 (Ga:L3 −M4,5 (Lα
1,2 )とL2 −M1 (Lη)の比)]次にGa原子のL
α1,2 とLη線の遷移強度の比を測定した。既に説明し
たがGa−Asに対しては49、Ga−Asに対しては
29である。
【0134】
【表8】
【0135】酸化GaAsは35倍の程度であるから、
70%のGa−O結合を含む事になる。全反射陽子線で
は酸化GaAsに対して31であるから90%のGa−
O結合を含む。表面が酸素によって終端されている部分
が多いのであろう。
【0136】[実施例6 (As:L3 −M4,5 (Lα
1,2 )とL2 −M1 (Lη)の比)]次にAs原子のL
α1,2 とLη線の遷移強度の比を測定した。既に説明し
たがAs−O結合に対しては83、As−Gaに対して
は40である。
【0137】
【表9】
【0138】GaAsは45゜入射のばあい、殆どGa
As結合であることが分かる。GaAsウエハ−であっ
ても全反射角入射の場合は57程度になる。約60%が
As−O結合であるということである。酸化GaAsウ
エハ−の場合全反射角入射で53程度である。70%程
度はAs−O結合ということである。
【0139】
【発明の効果】本発明は、試料をX線叉は陽子線によっ
て電子励起し、外殻内殻軌道間遷移特性X線、内殻軌道
遷移の特性X線の強度の比率を測定し、比の値から、結
合がABなのかACなのかを判定する。100%AB結
合、100%AC結合というだけでなく、中間状態も判
定することができる。
【0140】このような特性X線の強度が化学結合によ
って影響を受けて変化するということを本発明が初めて
見いだした。これは従来だれも知らなかったことであ
る。化学結合によって外殻軌道が摂動を受けて軌道が歪
むというのが一般的な描像であろう。すると外殻軌道の
エネルギーが変化するはずである。エネルギー変動から
化学結合の状態を求めるということもできるかも知れな
い。
【0141】本発明はエネルギ−によるのではなく、X
線強度の変化によって化学結合の状態を求める。図1に
説明し、表1、表2に示したエネルギーレベルは原子の
ものである。化合物を形成した原子スペクトルではな
い。しかし化合物でも同じようなX線遷移は起こりう
る。もちろんエネルギ−つまり波長は違うが、その変化
は容易に予想できる。
【0142】それではどうしてX線の強度が化合物の種
類によって違うのか?という疑問について考察する。G
a原子を中心にして考える実施例の1、3、5はこれに
あたる。どの外殻−内殻遷移をとってみても、Ga−A
s結合の方が、Ga−O結合よりも特性X線強度が強
い。つまりGa−As結合の時に外殻準位が電子によっ
て占められている確率が高いのだと考えられる。これは
酸素Oの方が、Asよりも電気陰性度が高くて電子をよ
り強く引き寄せるのでGa軌道から電子が減少する。た
めに外郭軌道から内殻へ落ちる電子の数がへり特性X線
強度が弱くなるのではないか?と推測される。
【0143】実施例1、3、5において、GaO/Ga
AsのX線強度比は大体共通で0.6の程度である。電
気陰性度の違いによりGa電子が、酸素の側により多く
偏っているのであろう。
【0144】As−Ga、As−O結合をみるとさらに
このような思想が確認される。Gaよりも酸素の方が電
気陰性度が高い。O−Asの差よりもO−Gaの差が一
層大きい。酸素がGaより強くAsの外殻電子を引き寄
せる。Asの外殻電子は酸素と結合するときさらに減少
する。ために内殻に落ち込む確率が減り特性X線が弱く
なるのであろう。
【0145】実施例2、4、6において、AsGa/A
sOのX線強度の比が大体0.47程度である。Gaを
中心とする場合の値(0.6)よりもさらに小さい。こ
れは電気陰性度のO−Asの差(1.5)よりもO−G
aの差(1.9)が大きい事に対応しているのではない
かと推測される。かように本発明は全く新規な事実の発
見と、新規な発想によっている。そのような違いがどう
して現れるのか?という点に関してははっきりしたこと
は分からない。
【0146】本発明によればX線発光強度の変化によっ
て化合物の存在確率をも的確に求めることができる。真
空中のみならず大気中、水溶液中でもGaAsウエハの
表面近傍の化学状態を分析することが可能となる。本方
法を利用することによりウエットエッチング中の表面状
態の観察を行うことにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】原子の特性X線KX線の遷移ダイヤグラム図。
【図2】9keV〜12keVの間のGaKXとAsK
X線のスペクトル図。
【図3】10keV〜10.5keVの間のGaKβ線
のスペクトル拡大図。
【図4】11.5keV〜12keVの間のAsKβ線
のスペクトル拡大図。
【図5】GaのKβ2 線(K−N2,3 遷移)とKα1,2
線(K−L2,3 遷移)の遷移レベル図。
【図6】AsのKβ2 線(K−N2,3 遷移)とKα1,2
線(K−L2,3 遷移)の遷移レベル図。
【図7】GaのLβ1 線(L2 −M4 遷移)とLη線
(L2 −M1 遷移)の遷移レベル図。
【図8】AsのLβ1 線(L2 −M4 遷移)とLη線
(L2 −M1 遷移)の遷移レベル図。
【図9】GaのLα1,2 線(L3 −M4,5 遷移)とLη
線(L2 −M1 遷移)の遷移レベル図。
【図10】AsのLα1,2 線(L3 −M4,5 遷移)とL
η線(L2 −M1 遷移)の遷移レベル図。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも3種類の原子A、B、Cを含
    む可能性のある試料において、化学結合AB、ACの存
    在比率を求める方法であって、X線又は陽子線を試料に
    照射し、原子Aの外殻準位E2 と内殻準位E1 の間の電
    子遷移によって発生する特性X線の強度を求め、100
    %AB結合の値Σ(AB)と、100%AC結合の値Σ
    (AC)を定めておき、任意の化学状態をもつ試料の特
    性X線のスペクトルから同じ特性X線の強度Σを求めて
    Σ=bΣ(AB)+cΣ(AC)から(b+c=1)、
    結合AB:結合ACの比b:cを求めるようにした事を
    特徴とする化学状態の分析方法。
  2. 【請求項2】 外殻準位−内殻準位遷移による特性X線
    としてGaもしくはAsのK−N2,3(Kβ2)、L2 −M
    4 (Lβ1 )、あるいはL3 −M4,5 (Lα1,2 )の強
    度変化を利用する請求項1に記載の化学状態の分析方
    法。
  3. 【請求項3】 少なくとも3種類の原子A、B、Cを含
    む可能性のある試料において、化学結合AB、ACの存
    在比率を求める方法であって、X線又は陽子線を試料に
    照射し、原子Aの外殻準位E2 と内殻準位E1 の間の電
    子遷移によって発生する特性X線の強度Σ12を求め、原
    子Aの内殻準位間E4 、E3 の間の電子遷移によって発
    生する特性X線の強度Σ34を求め、これらの比Υ=Σ12
    /Σ34について、100%AB結合の比の値Υ(AB)
    と、100%AC結合の比の値Υ(AC)を定めてお
    き、任意の化学状態をもつ試料の特性X線のスペクトル
    から同じ特性X線間の強度の比Υを求めてΥ=bΥ(A
    B)+cΥ(AC)から(b+c=1)、結合AB:結
    合ACの比b:cを求めるようにした事を特徴とする化
    学状態の分析方法。
  4. 【請求項4】 Ga、As、Oを含む試料にX線または
    陽子線を照射し、試料から特性X線を発生させ、試料が
    発する特性X線のスペクトルを求め、GaのK−N2,3
    (Kβ2 )の強度変化をGaのK−L2,3(Kα1,2)との
    強度比で評価し、強度比が3.7×10-2であれば10
    0%Ga−As結合であるとし、強度比が2.1×10
    -2であれば100%Ga−O結合であると判断し、強度
    比がこの間の場合にはGa−As結合をx(0≦x≦
    1)、Ga−O結合を1−xとして、強度比=3.7×
    10-2x+2.1×10-2( 1−x) としてxを求め、
    Ga−As結合/Ga−O結合比を求めることを特徴と
    する化学状態の分析方法。
  5. 【請求項5】 Ga、As、Oを含む試料にX線または
    陽子線を照射し、試料から特性X線を発生させ、試料が
    発する特性X線のスペクトルを求め、AsのK−N2,3
    (Kβ2 )の強度変化をAsのK−L2,3(Kα1,2)との
    強度比で評価し、強度比が4.8×10-2であれば10
    0%As−Ga結合であるとし、強度比が2.4×10
    -2であれば100%As−O結合であると判断し、強度
    比がこの間の場合にはAs−Ga結合を x(0≦x≦
    1)、As−O結合を1−xとして、強度比=4.8×
    10-2x+2.4×10-2( 1−x) としてxを求め、
    As−Ga結合/As−O結合比を求めることを特徴と
    する化学状態の分析方法。
  6. 【請求項6】 Ga、As、Oを含む試料にX線または
    陽子線を照射し、試料から特性X線を発生させ、試料が
    発する特性X線のスペクトルを求め、GaのL2 −M4
    (Lβ1 )の強度変化をGaのL2 −M1 (Lη)との
    強度比で評価し、強度比が20であれば100%Ga−
    As結合であるとし、強度比が12であれば100%G
    a−O結合であると判断し、強度比がこの間の場合には
    Ga−As 結合を x(0≦x≦1)、Ga−O結合
    を1−xとして、強度比=20x+12( 1−x) とし
    てxをもとめ、Ga−As結合/Ga−O結合比を求め
    ることを特徴とする化学状態の分析方法。
  7. 【請求項7】 Ga、As、Oを含む試料にX線または
    陽子線を照射し、試料から特性X線を発生させ、試料が
    発する特性X線のスペクトルを求め、AsのL2 −M4
    (Lβ1 )の強度変化をAsのL2 −M1 (Lη)との
    強度比で評価し、強度比が39であれば100%As−
    Ga結合であるとし、強度比が18であれば100%A
    s−O結合であると判断し、強度比がこの間の場合には
    As−Ga結合をx(0≦x≦1)、As−O結合を1
    −xとして、強度比=39x+18( 1−x) としてx
    を求め、As−Ga結合/As−O結合比を求めること
    を特徴とする化学状態の分析方法。
  8. 【請求項8】 Ga、As、Oを含む試料にX線または
    陽子線を照射し、試料から特性X線を発生させ、試料が
    発する特性X線のスペクトルを求め、GaのL3 −M
    4,5 (Lα1,2 )の強度変化をGaのL2 −M1 (L
    η)との強度比で評価し、強度比が49であれば100
    %Ga−As結合であるとし、強度比が29であれば1
    00%Ga−O結合であると判断し、強度比がこの間の
    場合にはGa−As 結合を x(0≦x≦1)、Ga
    −O結合を1−xとして、強度比=49x+29( 1−
    x) としてxをもとめ、Ga−As結合/Ga−O結合
    比を求めることを特徴とする化学状態の分析方法。
  9. 【請求項9】 Ga、As、Oを含む試料にX線または
    陽子線を照射し、試料から特性X線を発生させ、試料が
    発する特性X線のスペクトルを求め、AsのL3 −M
    4.5 (Lα1,2 )の強度変化をAsのL2 −M1 (L
    η)との強度比で評価し、強度比が83であれば100
    %As−Ga結合であるとし、強度比が40であれば1
    00%As−O結合であると判断し、強度比がこの間の
    場合にはAs−Ga結合をx(0≦x≦1)、As−O
    結合を1−xとして、強度比=83x+40( 1−x)
    としてxをもとめ、As−Ga結合/As−O結合比を
    求めることを特徴とする化学状態の分析方法。
  10. 【請求項10】 X線または陽子線を試料表面に対して
    平行に近い低入射角度で入射させ全反射させることによ
    って表面の化学状態のみを検出するようにしたことを特
    徴とする請求項1〜9に記載の化学状態の分析方法。
  11. 【請求項11】 液中に存在する試料にX線又は陽子線
    を照射し特性X線を観測することにより液体中の試料の
    化学状態を分析するようにしたことを特徴とする請求項
    1〜10に記載の化学状態の分析方法。
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