JP2005026285A - 熱処理方法及び熱処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】a−Siからp−Siを生成する際、結晶の大粒径化が可能な熱処理方法を提供する。
【解決手段】試料に光束を照射する際、光束を試料の表面の第1の領域A1に対してX軸方向に関して第1の光強度勾配R1で照射するとともに、試料の表面の第1の領域A1に連続する第2の領域A2に対してX軸方向に関して第1の光強度勾配R1より緩やかな第2の光強度勾配R2で照射する。
【選択図】 図1
【解決手段】試料に光束を照射する際、光束を試料の表面の第1の領域A1に対してX軸方向に関して第1の光強度勾配R1で照射するとともに、試料の表面の第1の領域A1に連続する第2の領域A2に対してX軸方向に関して第1の光強度勾配R1より緩やかな第2の光強度勾配R2で照射する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱処理方法及び熱処理装置に関し、特にアモルファスシリコンを結晶化する際に用いる熱処理方法及び熱処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイの高機能化、高精細化等を目的として、従来のアモルファスシリコン薄膜トランジスタ液晶ディスプレイとは別の、ポリシリコン薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ技術が注目されている。ポリシリコン(p−Si)はアモルファスシリコン(a−Si)を多結晶化することで生成される。多結晶化する方法として固相成長法やエキシマレーザアニール(ELA:Excimer−LaserAnneal)法等が挙げられ、このうち、低温プロセスが可能であるELA法による量産化が近年において実現されている。下記特許文献1には、ELA法によりa−Siからp−Siを生成する技術の一例が開示されている。
【0003】
ところで、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の活性領域の寸法は例えば1μm以上あるため、結晶粒径が小さいと活性領域内に多数の結晶粒界(グレインバウンダリ)が存在することになる。すると、多数の結晶粒界によりキャリア(電子)の散乱等が生じて移動度が低下し、半導体デバイスの高性能化が望めなくなる。現状の方法で得られる結晶粒径は0.1μm程度であるため、p−Siを生成するに際し、結晶の大粒径化が要求されている。
【0004】
ELA法では、基板上に設けられたa−Si膜にレーザ光束を照射し、その光束のエネルギーによりa−Si膜を溶融する。溶融したSi(溶融Si)は熱を放出して固化し、その際に核が生成され、この核を中心に結晶が成長して結晶化する。なお核が生成されない場合、溶融Siは再びアモルファス状態となる。ここで、核が高密度でランダムに生成されると、結晶は隣接する結晶と直ちに衝突(干渉)して互いの成長を妨げ合うため十分に成長されず、大粒径化しない。したがって、結晶を大粒径化するための必要因子として、生成される核の位置や数を制御することが挙げられる。また、大粒径化のための他の必要因子として、結晶の成長時間を引き延ばすこと、すなわちレーザ光束照射終了直後に成長が開始し、溶融状態を長時間持続して緩やかに冷却することが挙げられる。また、結晶を効率良く成長させるために成長方向を規定することも挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−324759号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術には以下に述べる問題が存在する。上記特許文献1に開示されている技術は、基板上のa−Si膜に対してスリット状にレーザ光束を照射し、このレーザ光束に対して基板を移動することで連続的に光束を照射しているが、核の生成位置を十分に制御できず、ランダムに生成された複数の核のそれぞれから成長した結晶が干渉し合って大粒径のp−Siを生成し難い可能性がある。また、スリット内の温度勾配は小さいため、結晶の成長方向が規定されない可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ELA法に基づいてa−Siからp−Siを生成する際、結晶の大粒径化が可能な熱処理方法及び熱処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため本発明は、実施の形態に示す図1〜図26に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の熱処理方法は、試料(P)に光束(EL)を照射する工程を有する熱処理方法において、光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射することを特徴とする。
また、本発明の熱処理方法は、基板(P)上に設けられたアモルファスシリコン膜に対して光束(EL)を照射する工程を有する熱処理方法において、光束(EL)をアモルファスシリコン膜の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、アモルファスシリコン膜の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、試料の表面の第1の領域に対して所定方向に関して急峻な第1の光強度勾配で光束を照射することにより、第1の領域を急峻な温度勾配にすることができ、これにより核の生成位置を第1の領域に規定することができる。そして、第1の領域に連続する第2の領域に、緩やかな第2の光強度勾配で光束を照射することで、第2の領域を緩やかな温度勾配にすることができ、この緩やかな温度勾配を維持しつつ固化することで、溶融状態が長時間持続された状態で冷却されるため、十分に広い成長領域を形成することができ、第1の領域に生成された核をよりどころとして(中心として)結晶を十分に成長させることができる。また、所定方向に関して第1及び第2の光強度勾配で光束を照射することで、結晶の成長方向を前記所定方向に規定することができ、結晶を効率良く成長させることができる。
【0010】
本発明の熱処理方法は、マスク(M)に光束(EL)を照射し、マスク(M)を通過した光束(EL)を試料(P)に照射する工程を有する熱処理方法において、光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射することを特徴とする。
本発明の熱処理装置(S)は、マスク(M)を支持するマスクステージ(MST)と、試料(P)を支持する試料ステージ(PST)と、マスク(M)に光束(EL)を照射する照射装置(IL)と、マスク(M)に対して試料(P)を所定方向(X)に相対移動しながら、マスク(M)を通過した光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)を所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射する制御装置(CONT)とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、パターンを有するマスクを通過した光束を試料上に照射することで、第1及び第2の光強度勾配を容易に生成することができ、結晶を円滑に大粒径化することができる。
【0012】
本発明の熱処理装置(S)は、マスク(M)を支持するマスクステージ(MST)と、試料(P)を支持する試料ステージ(PST)と、マスク(M)に光束(EL)を照射する照射装置(IL)と、マスク(M)に対して試料(P)を所定方向(X)に相対移動しながら、マスク(M)を通過した光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の勾配(R1)の積算光量で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)を所定方向(X)に関して第1の勾配(R1)より緩やかな第2の勾配(R2)の積算光量で照射する制御装置(CONT)とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、マスクを透過した光束を試料の表面上で重ね合わせ、この積算光量が第1及び第2の勾配を持つようにすることで、所望の光量分布を試料上で生成でき、結晶を円滑に大粒径化することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱処理方法及び熱処理装置について説明する。本発明は、試料としてのアモルファスシリコン膜の第1の領域に対して所定方向に関して急峻な第1の光強度勾配でレーザ光束を照射するとともに、アモルファスシリコン膜の第1の領域に連続する第2の領域に対して所定方向に関して緩やかな第2の光強度勾配で照射することにより、大粒径のポリシリコン結晶を形成するものである。まず、図1〜図3を参照しながら、本発明の原理について説明する。
図1は本発明の原理を説明するための模式図である。ポリシリコン(p−Si)結晶を成長させるための核は溶融状態(液相状態)のシリコン(Si)が固相状態に変遷するときに生成されるが、図1に示すように、アモルファスシリコン(a−Si)膜の第1の領域A1に対して所定方向(ここではX軸方向)に関して急峻な第1の光強度勾配R1で光束を照射することにより、第1の領域A1を急峻な温度勾配にすることができる。そして、急峻な温度勾配を維持しつつ冷却(固化)することで、核生成領域を比較的小さい領域に限定することができ、これにより核の生成位置を第1の領域A1に規定することができる。
【0015】
すなわち、第1の領域A1が急峻な第1の光強度勾配R1で光束を照射されることにより、図2の模式図に示すように、第1の光強度勾配R1に応じた第1の温度勾配T1で加熱されることになる。そして、時間経過とともに第1の領域A1は冷却(固化)され、核は液相状態のSiが固相状態に変遷するときに生成されるが、融点Tmを基準とした核生成可能温度範囲Taにおいて生成される。ここで、第1の温度勾配T1は急峻であるため、核生成可能温度範囲Taに対応する核生成領域を狭い領域Aaに限定することができる。一方、第1の領域A1に照射される光束の光強度勾配が緩やかであり、これに伴って第1の領域A1が緩やかな温度勾配T1’となると、核生成可能温度範囲Taに対応する核生成領域は大きくなり、広い領域Abで核がランダムに生成されることになり、これら核を中心として成長する結晶どうしが干渉し合って互いの成長を妨げることになる。したがって、急峻な第1の光強度勾配R1で第1の領域A1に光束を照射することで、急峻な温度勾配を有する比較的小さい第1の領域A1に核を生成でき、核の生成位置を制御できる。これにより、成長する結晶どうしが干渉して成長を妨げ合うといった不都合を回避できる。
【0016】
そして、第1の領域A1に連続する第2の領域A2に、緩やかな第2の光強度勾配R2で光束を照射することで、第2の領域A2を緩やかな温度勾配にすることができる。そして、図3の模式図に示すように、緩やかな温度勾配T2を維持しつつ冷却(固化)することで、溶融状態が長時間持続された状態で冷却されるため、十分に広い成長領域Bを形成することができ、第1の領域A1に生成された核をよりどころとして結晶を十分に成長させることができる。
【0017】
そして、X軸方向(所定方向)に関して第1、第2の光強度勾配で光束を照射することで、結晶の成長方向をX軸方向に規定することができ、結晶を効率良く成長させることができる。
【0018】
ここで、第1の領域A1で生成された核をよりどころとして第2の領域A2で結晶を成長させるために、第1の領域A1での最高温度と第2の領域A2での最低温度とは略同じであることが必要である。したがって、第1の光強度勾配R1における最大光強度と第2の光強度勾配R2における最小光強度とは略同じであることが好ましい。また、第1の領域A1での最高温度及び第2の領域A2での最低温度が少なくともa−Siの融点Tm以上となるように、第1の光強度勾配R1の最大光強度及び第2の光強度勾配R2の最小光強度が設定される。
【0019】
また、第1、第2の光強度勾配R1、R2で光束を照射する範囲は、生成するp−Si結晶の目標粒径に応じて設定され、少なくとも前記目標粒径より大きく設定される。そして、成長領域Bを含む第2の領域A2は第1の領域A1より大きいことが好ましい。これにより、シリコン結晶を十分に成長させることができる。
【0020】
図4は本発明の熱処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。図4において、熱処理装置Sは、パターンを有するマスクMを支持するマスクステージMSTと、試料Pを支持する試料ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMに照射光(光束)ELを照射する照射装置ILと、照射光ELを照射されたマスクMのパターンの像を試料ステージPSTに支持されている試料Pに投影する投影光学系PLと、熱処理装置Sの動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。試料Pはガラス基板上にa−Si膜を設けたものである。なお、ガラス基板とa−Si膜との間に、照射光ELが照射された際のガラス基板の熱損傷を防止するため酸化珪素(SiO2)膜を設けてもよい。
【0021】
以下の説明において、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸方向に垂直な方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0022】
照射装置ILは、光源装置100と、光源装置100から射出された光束を整形してマスクMに照射する照明光学系101とを備えている。光源装置100はエキシマレーザ装置により構成されており、光源装置100からは例えばKrFエキシマレーザ光(波長248nm)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が射出される。本実施形態において、光源装置100はKrFエキシマレーザ光を射出する。また、光源装置100は所定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を断続的に射出する。なお、光源装置100から射出される光束としては、F2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などでもよい。
【0023】
照明光学系101は、マスクステージMSTに支持されているマスクMを照射光(光束)ELで照明するものであり、光源装置100から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの光束ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び照射光ELによるマスクM上での照明領域IAを例えばスリット状に設定する視野絞り102等を有している。マスクM上の照明領域IAは照明光学系101により均一な照度分布の照射光ELで照明される。
【0024】
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡111が設けられている。移動鏡111に対向する位置にはレーザ干渉計112が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計112によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計112の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
【0025】
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで試料Pに投影露光するものであって、複数の光学素子で構成されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。
なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLの倍率は方向により異なっていてもよい。
【0026】
試料ステージPSTは、試料ホルダPHを介して試料Pを保持して移動可能であって、リニアモータ等の試料ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。試料ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。試料ステージPSTは、X軸、Y軸、及びZ軸方向に移動可能であるとともに、θX、θY、及びθZ方向にも移動可能である。試料ステージPSTは、試料Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して試料Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込むとともに、試料PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。試料ステージPST上には移動鏡113が設けられており、移動鏡113に対向する位置にはレーザ干渉計114が設けられている。試料ステージPST上の試料Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計114によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計114の計測結果に基づいて試料ステージ駆動装置PSTDを駆動することで試料ステージPSTに支持されている試料Pの位置決めを行う。
【0027】
試料ステージPST上のうち、試料Pを保持する試料ホルダPH以外の所定位置には、投影光学系PLを介した照射光ELの光強度(光量、照度)を検出する光量センサ116が設けられている。光量センサ116のディテクタ部は試料ホルダPHに保持された試料Pの表面と略同じ高さになるように設けられている。
【0028】
試料Pを支持する試料ステージPSTはアニール室115に収容されている。アニール室115内部は窒素ガス等の不活性ガスで満たされており、照射光ELの試料P上における照度低下を防止している。更に不図示ではあるが、照射装置IL、マスクステージMST、及び投影光学系PLを含む照射光ELの光路上はハウジングで覆われており、ハウジング内部も不活性ガスで満たされている。なお、アニール室115や前記ハウジング内部は真空状態にされてもよい。
【0029】
図5はマスクMの平面図である。図5において、マスクM上には所定方向(X軸方向)に並んだ複数のパターン形成領域PA1〜PA20が設定されている。パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれは矩形状であって同じ大きさに設定されている。パターン形成領域PA1〜PA20それぞれのX軸方向の幅Wは、生成するp−Siの目標粒径、つまり図1に示す第1の領域A1と第2の領域A2とを合わせた目標粒径領域A3に対応する大きさに設定されている。また、照射装置IL(照明光学系101)によるマスクM上での照明領域IAはスリット状(矩形状)に設定されており、その大きさは各パターン形成領域PA1〜PA20と略同じである。
【0030】
パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれにはクロム等の遮光性材料からなる遮光部(遮光パターン)C1〜C20が形成されており、遮光部以外は照射光ELを透過する透光部(透光パターン)K1〜K20となっている。本実施形態において、遮光部C1〜C20のそれぞれはY軸方向に延びるスリット状(ライン状)のパターンである。
【0031】
複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれの遮光部C1〜C20の割合は異なる値に設定されている。具体的には、複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれについて、ライン状の遮光部C1〜C20の幅が異なる値に設定されている。このうち、遮光部C1〜C11の幅は同じであり、C12〜C20に関しては漸次その幅が一定の割合で大きくなっている。例えば、パターン形成領域PA1〜PA20の幅Wに対して、遮光部C1〜C11の幅はW/20、C12の幅は2W/20、C13の幅は4W/20、C14の幅は6W/20、C15の幅は8W/20、C16の幅は10W/20、C17の幅は12W/20、C18の幅は14W/20、C19の幅は16W/20、C20の幅は18W/20となっている。すなわち、ライン状の遮光部C1〜C20のうち最も幅の狭い遮光部(C1〜C11)が最も多く設けられており、他のパターン形成領域PA12〜PA20に関しては漸次その幅が大きく(広く)なるように設けられている。そして、遮光部C1〜C20の幅に応じて各パターン形成領域PA1〜PA20の透光部K1〜K20の幅もそれぞれ異なっている。ここで、遮光部C1〜C20の−X側端部のそれぞれとパターン形成領域PA1〜PA20の−X側端部のそれぞれとが一致するように、遮光部C1〜C20のそれぞれは各パターン形成領域PA1〜PA20に設けられている。
【0032】
次に、上述した構成を有するマスクMを使ってa−Si膜をp−Si結晶にする方法について説明する。
制御装置CONTは、照射装置ILの光源装置100を駆動し、所定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を断続的に射出する。このパルスレーザ光の繰り返し周波数に同期させて、制御装置CONTはマスクMを支持するマスクステージMSTをX軸方向に等速で移動する。このとき、試料Pを支持する試料ステージPSTは停止している。照射装置IL(照明光学系101)の照明領域IAの大きさは各パターン形成領域PA1〜PA20と同じ大きさに設定されており、マスクMの各パターン形成領域PA1〜PA20を通過した照射光ELが投影光学系PLを介して試料P上の所定領域内において重ね合わせられるように照射されることにより、複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれのパターン(遮光部C1〜C20及び透光部K1〜K20)の像が試料P上で重ね合わせられる。
【0033】
図6は各パターン形成領域PA1〜PA20を通過した照射光ELの試料P上での積算光量(積算照射量)を示す模式図である。図6に示すように、パターン形成領域PA1〜PA11に設けられた遮光部C1〜C11の幅が同じ値に設定されているとともに、パターン形成領域PA12〜PA20の遮光部C12〜C20の幅が漸次大きくなるように設定されているので、各パターン形成領域PA1〜PA20を通過した照射光ELを試料P上で重ね合わせることにより、制御装置CONTは、試料P上で第1の光強度勾配R1と第1の光強度勾配R1より緩やかな第2の光強度勾配R2とを有する積算光量を生成することができる。
【0034】
図7は第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2で照射光ELを照射されたa−Si膜がp−Siに変遷する様子を示す模式図である。図7に示すように、急峻な第1の光強度勾配R1で照射光ELを照射されたa−Si膜の比較的狭い第1の領域A1には、一旦溶融したSiが固化することで核が生成される。そして、この核をよりどころとして、広い領域である第2の領域A2においてシリコン結晶が+X方向に成長する。
【0035】
なお、本実施形態ではパターン形成領域はPA1〜PA20の20個設定されているように説明したが、もちろん任意の数だけ設定可能である。また、各パターン形成領域PA1〜PA20の遮光部C1〜C20の幅(大きさ)の変化率も、急峻な第1の光強度勾配R1及びこれよりも緩やかな第2の光強度勾配R2を生成可能であれば任意に設定可能である。
【0036】
本実施形態では、パターン形成領域PA12〜PA20の各遮光部C12〜C20の幅が漸次大きくなるように説明したが、例えば漸次小さくなるように設けたり、あるいはランダムにその幅が変化させてもよい。つまり、試料P上での積算光量が、第1の勾配R1とこの第1の勾配R1より緩やかな第2の勾配R2とを有するように照射光ELを照射可能であれば、互いにその幅(大きさ)が異なる複数の遮光部のマスクM上での配列は任意に設定可能である。
【0037】
本実施形態では、試料Pを停止した状態でマスクMをX軸方向に移動するように説明したが、マスクMを停止した状態で試料Pを移動するようにしてもよい。この場合、照射装置ILは試料Pの移動に同期してマスクM上の各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射する。あるいは、マスクMと試料Pとの双方をX軸方向に移動するようにしてもよい。
【0038】
ところで、マスクM(あるいは試料P)を停止した状態で照射光ELを照射することにより、このマスクM(試料P)は照射光ELにより加熱される。したがって、マスクM(試料P)を冷却する冷却機構を設け、マスクM(試料P)の過剰な加熱を防止するようにしてもよい。
【0039】
本実施形態において、マスクMはX軸方向に等速で移動するように説明したが、不等速で移動してもよい。このとき、制御装置CONTは、照射装置ILによる照射光ELを照射するタイミングや光量(マスクM上での照度)を調整しつつ照射光ELを照射する。一方、マスクMを等速で移動することにより、各パターン形成領域PA1〜PA20を同じ大きさに設定して照射装置ILから一定の周波数でパルスレーザ光を射出することにより、試料P上で第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する積算光量を容易に得ることができ、マスクMの製造や照射装置ILの制御を容易に行うことができる。
【0040】
本実施形態において、照射装置ILは所定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を射出するように説明したが、連続光を射出してもよい。この場合、照射装置ILの光路上にシャッタを設け、制御装置CONTはマスクMの移動に同期して、前記シャッタを使って照射光ELの光路を遮蔽及び遮蔽解除する。
【0041】
試料P上における照射光ELの光強度(照度)の調整は、光源装置100の出力を調整することで行うこともできるし、あるいは上記シャッタの動作を制御することで行うこともできる。また、光強度の調整を行う際、試料ステージPST上に設けられた光量センサ116で照射光ELの光強度を検出し、この検出結果に基づいて調整を行うことができる。あるいは、光源装置100又は照明光学系101の光路上に照射光ELの光強度(照度)を検出可能な光量検出装置(光量モニタ)を設け、この光量モニタの検出結果に基づいて、光強度を調整するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、第1の光強度勾配R1における最大光強度と、第2の光強度勾配R2における最小光強度とを略同じにして、第1の領域A1での最高温度と第2の領域A2での最低温度とが略同じになるようにしているが、第1の領域A1での最高温度及び第2の領域A2での最低温度のそれぞれがa−Siの融点Tm以上に設定可能であれば、第1の光強度勾配R1における最大光強度と、第2の光強度勾配R2における最小光強度とは異なる値であってもよい。一方、第1の光強度勾配R1における最大光強度と第2の光強度勾配R2における最小光強度とを略同じにすることにより、第1の領域A1で生成された核をよりどころとして第2の領域A2においてシリコン結晶を円滑に成長させることができる。
【0043】
本実施形態では、マスクM上に複数のパターン形成領域PA1〜PA20を設定し、パターン形成領域PA1〜PA20それぞれの遮光部C1〜C20の割合を異なる値に設定し、これら各パターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせ、試料P上での積算光量が第1の勾配R1及び第2の勾配R2を有するように照射光ELを照射する構成であるが、例えば、図8に示すように、X軸方向に関するパターン密度変化率が急峻な第1のパターン形成領域PA1と、この第1のパターン形成領域PA1に連続するように設けられ、X軸方向に関するパターン密度変化率が緩やかで、第1のパターン形成領域PA1より大きい第2のパターン形成領域PA2とを有するマスクMを用意し、このマスクM及び試料Pを停止した状態でマスクMに照射光ELを照射し、これら第1、第2パターン形成領域PA1、PA2のパターンを一括して試料Pに投影露光するようにしてもよい。なお、ここでいうパターン密度とは、マスクM上の単位面積当たりに形成される遮光部の割合である。一方、遮光部C1〜C20の割合が異なる値に設定された複数のパターン形成領域PA1〜PA20をマスクM上に並べて配置し、マスクMに対して試料Pを相対移動しながら照射光ILを照射することにより、マスクM上には遮光部C1〜C20と透光部K1〜K20との2値的な光透過率を有するパターンを形成すればよいので、マスクMを容易に製造することができる。
【0044】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図9はマスクMの他の実施形態を示す平面図である。図9において、マスクM上に設定された複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれには、Y軸方向に延び、所定の幅を有する遮光部C1〜C20が設けられている。本実施形態において、遮光部C1〜C20のそれぞれは同じ幅(W/20)に設定されており、パターン形成領域PA1〜PA20の−X側端部のそれぞれに設けられている。そして、複数のパターン形成領域PA1〜PA20のうち一部のパターン形成領域PA12〜PA20には、試料P上で解像しない程度の細い線幅を有し、Y軸方向に延びるライン状遮光部L(L12〜L20)が、遮光部C12〜C20のそれぞれに隣接する位置に設けられている。ライン状遮光部L12〜L20の数は、複数のパターン形成領域PA12〜PA20のそれぞれについて互いに異なる値となっている。本実施形態において、ライン状遮光部Lの数は、パターン形成領域PA12〜PA20に関して漸次その数が一定の割合で増えている。例えば、パターン形成領域PA12のライン状遮光部L12は2本設けられており、パターン形成領域PA13のライン状遮光部L13は4本設けられている。以下同様に、パターン形成領域PA14〜PA20のライン状遮光部L14〜L20は、6本、8本、10本、12本、14本、16本、18本設けられている。これらライン状遮光部L12〜L20は一定の間隔で設けられている。
【0045】
制御装置CONTは、照射装置ILにより、上記マスクMのパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射し、これらパターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせることで、試料P上の第1、第2の領域A1、A2のそれぞれに第1、第2の光強度勾配R1、R2で照射光ELを照射することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに試料P上で解像する幅を有する遮光部C1〜C20が設けられ、これに付随して解像しない程度の線幅を有するライン状遮光部L12〜L20が設けられているが、遮光部C1〜C20が形成されている領域に、解像しない程度の線幅を有するライン状遮光部Lを各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれについて複数設けるようにしてもよい。つまり、各パターン形成領域PA1〜PA20に設けられる遮光部の全てを、試料P上で解像しない程度の線幅を有するライン状遮光部Lで構成することもできる。
【0047】
図10はマスクMの他の実施形態を示す平面図である。図10において、マスクM上のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれには円形状遮光部E1〜E20が形成されており、これら円形状遮光部E1〜E20それぞれの径は互いに異なる値に設定されている。このうち、円形状遮光部E1〜E11の径は同じであり、E12〜E20に関しては漸次その径が一定の割合で大きくなっている。例えば、円形状遮光部E1〜E11の直径はW/20、E12の直径は2W/20、E13の直径は4W/20、E14の直径は6W/20、E15の直径は8W/20、E16の直径は10W/20、E17の直径は12W/20、E18の直径は14W/20、E19の直径は16W/20、E20の直径は18W/20となっている。すなわち、複数の円形状遮光部E1〜E20のうち、最も径の小さい円形状遮光部(E1〜E11)が最も多く設けられており、他のパターン形成領域PA12〜PA20に関しては漸次その径が大きくなるように設けられている。ここで、各円形状遮光部E1〜E20それぞれの中心位置は、各パターン形成領域PA1〜PA20の例えば図中、左上角部に設けられた基準位置O1〜O20のそれぞれに対して同じ位置(座標)になるように設けられている。換言すれば、円形状遮光部E1〜E20は、各パターン形成領域PA1〜PA20それぞれの中心に設けられている。
【0048】
制御装置CONTは、照射装置ILにより、上記マスクMの各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射し、これら各パターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせることで、試料P上の第1、第2の領域A1、A2のそれぞれに第1、第2の光強度勾配R1、R2で照射光ELを照射することができる。本実施形態において、試料P上の第1の領域A1は円形状の小さい領域であり、第2の領域A2は、この第1の領域A1を囲む円環状の広い領域である。ここで、複数の円形状遮光部E1〜E20のうち最大径を有する円形状遮光部E20の直径が、生成するp−Si結晶の目標粒径に応じて設定されている。
【0049】
図11は円形状遮光部E1〜E20を有するマスクMを介して照射光ELが照射されたa−Si膜がp−Siに変遷する様子を示す模式図である。図11に示すように、急峻な第1の光強度勾配R1で照射光ELを照射されたa−Si膜の円形状の第1の領域A1には、一旦溶融したSiが固化することで核が生成される。そして、この核をよりどころとして、第2の領域A2においてシリコン結晶が円環状(放射状)に成長する。
【0050】
図12はマスクMの他の実施形態を示す平面図である。図12において、マスクM上のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれは同じ大きさに設定されており、その−X側端部にはY軸方向に延びるライン状の遮光部C1〜C20がそれぞれ設けられている。遮光部C1〜C20は図5を参照して説明した実施形態と同様の構成である。つまり、遮光部C1〜C11は同じ幅(W/20)を有し、遮光部C12〜C20に関しては漸次その幅が大きくなるように設けられている。そして、本実施形態において、マスクM上には、Y軸方向に所定間隔で第2遮光部H(H1、H2)が設けられている。本実施形態において、第2遮光部はH1、H2の2つ設けられている。第2遮光部H1、H2のそれぞれはX軸方向に延びるライン状遮光部であって、パターン形成領域PA1〜PA6に亘って設けられている。
【0051】
制御装置CONTは、照射装置ILにより、上記マスクMの各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射し、これら各パターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせることで、試料P上の第1、第2の領域A1、A2のそれぞれに、X軸方向に関して第1、第2の光強度勾配R1、R2で照射光ELを照射することができる。更に、第2遮光部H1、H2により、制御装置CONTは、試料Pの表面でY軸方向に関しても光強度の分布が生じるように照射光ELを照射することができる。
【0052】
図13は第2遮光部H1、H2を有するマスクMを介して照射光ELが照射されたa−Si膜がp−Siに変遷する様子を示す模式図である。第2遮光部H1、H2により、試料P上にはY軸方向に関して光強度分布に応じた温度分布が生じ、Y軸方向に関する各位置において、一旦溶融したSiが固化するタイミングが互いに異なる。ここで、第2遮光部H1、H2は、試料P上の第1の領域A1に第1の光強度勾配R1を生成するための遮光部C1〜C11を有するパターン形成領域PA1〜PA11のうち、一部のパターン形成領域PA1〜PA6に設けられている。したがって、試料P上でのY軸方向に関する光強度分布は第1の領域A1を含む領域(核生成領域)に生成されることになる。そして、第1の領域A1でのY軸方向に関する各位置において一旦溶融したSiが固化するタイミングが互いに異なるため、図13に示すように、核はX軸方向に関してずれた位置に生成される。つまり、図13中、第1の領域A1においてY軸方向に並ぶように生成される複数の核のうち、特定の核G1、G2、G3が+X方向に突出した位置に生成される。この突出した核G1、G2、G3に対して、結晶の成長方向前方側(つまり+X側)には結晶粒が存在しない。また、隣り合う特定の核G1〜G3どうしの離間距離は十分に大きい。したがって、この突出した核G1、G2、G2をよりどころとして成長する結晶は、前方(+X方向)のみならず、左右方向(±Y方向)にも成長することができ、より大きく成長することができる。
【0053】
以上説明したように、マスクM上に、X軸方向に延びる遮光部C1〜C20とともにY軸方向に延びる第2遮光部H1、H2を設けたことにより、試料P表面のXY方向(二次元方向)に光強度分布を生成することができる。特に、核生成領域である第1の領域A1において二次元方向に光強度分布を生成することにより、Y軸方向に並んで生成される核の生成位置をX軸方向に関して互いにずれた位置に設けることができる。したがって、成長方向前方側に突出した位置に生成された核G1、G2、G3どうしは互いの離間距離を大きくすることができるので、この核G1、G2、G3をよりどころとして、+X方向のみならず±Y方向にも十分に結晶が成長する。
【0054】
なお、本実施形態では、Y軸方向の光強度の分布を生成するために、Y軸方向に所定間隔で設けられた第2遮光部H1、H2を有するマスクMを使っているが、図14に示すように、マスクM上にY軸方向に関して光強度分布を干渉効果により生成可能な位相シフタを設け、このマスクMを介した照射光ELを試料Pに照射するようにしてもよい。
【0055】
図15は本発明の他の実施形態を説明するための模式図である。ライン状の遮光部Cを有するマスクMに対して照射光ELを照射し、マスクMのパターンを投影光学系PLを介して試料P上に露光するに際し、図15(a)に示すように、試料P表面が投影光学系PLの像面と合致し、マスクMのパターン形成面も試料Pに対して共役な位置(つまり物体面)と合致又は略合致している場合、試料P上における光強度分布は、ラインa1で示すように、急峻な勾配(第1の光強度勾配)を有する。一方、図15(b)に示すように、投影光学系PLの像面(あるいは物体面)に対する試料P又はマスクMの位置をずらす(デフォーカスさせる)ことにより、試料P上における光強度分布は、ラインb1で示すように、緩やかな勾配(第2の光強度勾配)を有する。したがって、これらを試料P上で合成することで、試料Pに第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2を有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。なお図15(b)には、マスクMをデフォーカスさせた状態が図示されているが、試料Pをデフォーカスさせてもよいし、マスクMと試料Pとの双方をデフォーカスさせてもよい。また、デフォーカスさせるために、アニール室115や、投影光学系PLを構成する光学素子を収容するハウジング(鏡筒)内の気体密度を変化させて光屈折率を変えることによりデフォーカスさせてもよい。あるいは、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち特定の光学素子を駆動することでデフォーカスさせてもよい。
【0056】
図16は、図15を参照して説明した実施形態の変形例を示す図である。図16において、マスクMの上面及び下面のそれぞれにライン状の遮光部Cが形成されている。マスクMの下面に設けられた遮光部Cは投影光学系PLの物体面(焦点位置)に合致又は略合致しており、マスクMの上面に設けられた遮光部Cはデフォーカスされている。ここで、マスクMの上面及び下面のそれぞれに形成されている遮光部CのXY平面内における位置は略一致している。マスクMの下面に設けられた遮光部Cの像により第1の光強度勾配R1が形成され、上面に設けられた遮光部Cの像により第2の光強度勾配R2が形成されるので、制御装置CONTは照射装置ILによりマスクMに対して照射光ELを照射することで、試料P上に第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。
【0057】
あるいは、図17に示すように、遮光部Cを有するマスクMを2枚用意し、一方のマスクMのパターン形成面(遮光部C)を投影光学系PLの焦点位置に合致させ、他方のマスクMのパターン形成面(遮光部C)をデフォーカスさせることによっても、試料P上に第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。
【0058】
また、図16及び図17を参照して説明した実施形態において、照明光学系101内に設けられた開口絞りを変更することによっても、試料P上での光強度分布を変化させることができる。この場合、互いに大きさの異なる開口部を有するターレットを照明光学系101内に設け、ターレットを回転して照射光ELの光路上に複数の開口部のうち特定の開口部を配置することにより、開口数を変更することができる。
【0059】
図18は本発明の他の実施形態を説明するための模式図である。図18において、マスクM上にはX軸方向に並んだ複数のパターン形成領域PA1〜PA20が設けられており、各パターン形成領域PA1〜PA20それぞれの中央部にライン状の遮光部Cが設けられている。なお、遮光部Cのそれぞれは同じ幅でもよいし互いに異なる幅でもよい。制御装置CONTは、パルスレーザ光の繰り返し周波数に同期して試料PをX軸方向に移動しつつ、各パターン形成領域PA1〜PA20に照射光ELを照射し、パターン形成領域PA1〜PA20それぞれのパターンの像を試料P上で重ね合わせる。ここで、制御装置CONTは、パターン形成領域PA1〜PA11のパターンを露光するときに(試料P上の所定領域がパターン形成領域PA1〜PA11に対応する位置を通過するときに)、試料Pを投影光学系PLの像面に対して合致させ、一方、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンを露光するときに、試料Pの投影光学系PLの像面に対する離間距離を漸次大きくする。換言すれば、試料Pを支持して移動する試料ステージPSTの移動軌跡を、上方あるいは下方のいずれか一方に傾斜させる。これにより、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンはデフォーカスされた状態で試料Pに露光され、試料P上に第2の光強度勾配R2が生成される。なおここでは、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンを試料Pに露光するときに、試料PのZ軸方向の位置を調整して投影光学系PLの像面と試料Pとの距離を漸次大きくしているが、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンを試料Pに露光するときに、マスクMのZ軸方向の位置を漸次変化させてもよいし、マスクMと試料Pとの双方のZ軸方向における位置を変化させてもよい。
【0060】
なお、上記各実施形態では、遮光部(遮光パターン)を有するマスクMに照射光ELを照射することで、試料P上で所望の光強度勾配を得る構成であるが、マスクMを使わずに第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2を有する光強度分布で照射光ELを照射することもできる。例えば、マスクステージMSTにマスクMを載置しない状態で照射装置ILより照射光ELを射出し、投影光学系PLを介して試料P上に照射光ELを照射する。そして、視野絞り102によって設定されるスリット状の照明領域IAに対して試料Pを照明領域IAの幅Wより小さい移動距離でX軸方向にステップ移動し、照射光ELを試料P上で重ね合わせることにより、図19に示す模式図のように、第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2で照射光ELを試料Pに照射することができる。なおここでは、照明領域IAに対して試料Pを照明領域IAの幅Wより小さい移動距離でステップ移動しているが、照明領域IAの幅と同程度の移動距離でステップ移動してもよい。あるいは、視野絞り102を可変視野絞りとし、照明領域IAの大きさ(幅)を変化させながら照射光ELを照射してもよい。あるいは、試料Pを停止した状態で視野絞り102を駆動するようにしてもよい。
【0061】
あるいは、図20に示すような傾斜部102Aを含む台形形状の開口部を有する視野絞り102を照明光学系101に設け、この台形形状の開口部を通過した照射光ELを投影光学系PLを介して試料P上に投影することで、第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。視野絞り102の開口部の傾斜部102Aの傾斜角度は、第2の光強度勾配R2に応じて設定される。ここで、視野絞り102は、投影光学系PLの像面と共役な位置に対して僅かにずれた位置に配置される。したがって、開口部の端部102Bを通過する光束により、試料P上で第1の光強度勾配R1が形成される。なお、本実施形態における結晶の成長方向はY軸方向である。
【0062】
次に、本発明の熱処理装置の他の実施形態について図21及び図22を参照しながら説明する。図21は本実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図、図22は概略構成図であって、図21に示すように、熱処理装置Sは複数並んだ投影光学系PLを有している。
図21及び図22において、熱処理装置Sは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、試料Pを支持する試料ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されたマスクMに照射光ELを照射する照射装置ILと、照射光ELを照射されたマスクMのパターンの像を試料ステージPSTに支持されている試料Pに投影する投影光学系PLとを備えている。本実施形態において、投影光学系PLは複数(5つ)の投影光学モジュールPLa〜PLeを有しており、照射装置IL(照明光学系101)も投影光学モジュールの数及び配置に対応して複数(5つ)の照明系モジュールを有している。複数の投影光学モジュールPLa〜PLeのうち、投影光学モジュールPLa、PLc、PLeと投影光学モジュールPLb、PLdとが2列に千鳥状に配列されている。
【0063】
マスクMを支持するマスクステージMSTは移動可能に設けられており、一次元の走査露光を行うべくX軸方向への長いストロークと、走査方向と直交するY軸方向への所定距離のストロークとを有している。試料ステージPSTも、マスクステージMSTと同様に、一次元の走査露光を行うべくX軸方向に長いストロークと、走査方向と直交するY軸方向にステップ移動するための長いストロークとを有している。
【0064】
図21に示すように、マスクMの走査方向両側(±X側)には複数のマーク(マーク群)を有するマーク形成領域27、28が設けられている。−X側のマーク形成領域27にはY軸方向に所定間隔で並ぶ複数のマーク30が形成されている。一方、+X側のマーク形成領域28にはY軸方向に所定間隔で並ぶ複数のマーク31が形成されている。また、試料ステージPSTの−X側の所定位置にはY軸方向に沿って延在する基準部材29が設けられており、基準部材29にはY軸方向に所定間隔で並ぶマーク40が形成されている。以下の説明において、マスクMに形成されたマーク30及び31を適宜「マスク側AISマーク」と称する。また、試料ステージPSTに形成されたマーク40を適宜「試料側AISマーク」と称する。一方、試料ステージPSTの+X側の所定位置には、Y軸方向に所定間隔で並ぶ複数の光量センサ116が設けられている。
【0065】
図22に示すように、投影光学モジュールPLdは、シフト調整機構5と、二組の反射屈折型光学系10、20と、像面調整機構6と、不図示の視野絞りと、スケーリング調整機構7とを備えている。なお、他の投影光学モジュールPLa、PLb、PLc、PLeも投影光学モジュールPLdと同様の構成である。マスクMを透過した光束は、シフト調整機構5に入射する。シフト調整機構5は、θY方向に回転可能に設けられた平行平面ガラス板5Aと、θX方向に回転可能に設けられた平行平面ガラス板5Bと有している。平行平面ガラス板5Aはモータなどの駆動装置5AdによりθY方向に回転し、平行平面ガラス板5Bはモータなどの駆動装置5BdによりθX方向に回転する。平行平面ガラス板5AがθY方向に回転することにより試料P上におけるマスクMのパターンの像はX軸方向にシフトし、平行平面ガラス板5BがθX方向に回転することにより試料P上におけるマスクMのパターンの像はY軸方向にシフトする。駆動装置5Ad,5Bdの駆動速度及び駆動量は制御装置CONTによりそれぞれ独立して制御されるようになっている。駆動装置5Ad,5Bdのそれぞれは制御装置CONTの制御に基づいて、平行平面ガラス板5A,5Bのそれぞれを所定速度で所定量(所定角度)回転する。シフト調整機構5を透過した光束は、1組目の反射屈折型光学系10に入射する。
【0066】
反射屈折型光学系10は、マスクMのパターンの中間像を形成するものであって、直角プリズム11と、レンズ12と、凹面鏡13とを備えている。直角プリズム11はθZ方向に回転可能に設けられており、モータなどの駆動装置11dによりθZ方向に回転する。直角プリズム11がθZ方向に回転することにより試料P上におけるマスクMのパターンの像はθZ方向に回転する。すなわち、直角プリズム11はローテーション調整機構としての機能を有している。駆動装置11dの駆動速度及び駆動量は制御装置CONTにより制御されるようになっている。駆動装置11dは制御装置CONTの制御に基づいて、直角プリズム11を所定速度で所定量(所定角度)回転する。反射屈折型光学系10により形成されるパターンの中間像位置には不図示の視野絞りが配置されている。視野絞りは、試料P上における投影領域を設定するものである。
【0067】
反射屈折型光学系20は、反射屈折型光学系10と同様に、ローテーション調整機構としての直角プリズム21と、レンズ22と、凹面鏡23とを備えている。直角プリズム21もモータなどの駆動装置21dの駆動によりθZ方向に回転するようになっており、回転することで試料P上におけるマスクMのパターンの像をθZ方向に回転する。駆動装置21dの駆動速度及び駆動量は制御装置CONTにより制御されるようになっており、駆動装置21dは制御装置CONTの制御に基づいて、直角プリズム21を所定速度で所定量(所定角度)回転する。
【0068】
反射屈折型光学系20から射出した光束は、スケーリング調整機構7を通り、試料P上にマスクMのパターンの像を正立等倍で結像する。スケーリング調整機構7は、図22に示すようにレンズをZ軸方向に移動させたり、又は3枚のレンズ構成で例えば、凹レンズ、凸レンズ、凹レンズから構成され、凹レンズと凹レンズとの間に位置する凸レンズをZ軸方向に移動させることにより、マスクMのパターンの像の倍率(スケーリング)調整を行うようになっている。図22に示す形態の場合、凸レンズは駆動装置7dにより移動するようになっており、駆動装置7dは制御装置CONTにより制御される。駆動装置7dは制御装置CONTの制御に基づいて、凸レンズを所定速度で所定量移動させる。なお、凸レンズは、両凸レンズでも平凸レンズでもよい。
【0069】
二組の反射屈折型光学系10,20の間の光路上には、投影光学モジュールPLdの結像位置及び像面の傾斜を調整する像面調整機構6が設けられている。像面調整機構6は反射屈折型光学系10による中間像が形成される位置近傍に設けられている。すなわち、像面調整機構6はマスクM及び試料Pに対してほぼ共役な位置に設けられている。像面調整機構6は、第1光学部材6Aと、第2光学部材6Bと、第1光学部材6A及び第2光学部材6Bを非接触状態に支持する不図示のエアベアリングと、第2光学部材6Bに対して第1光学部材6Aを移動する駆動装置6Ad、6Bdとを備えている。第1光学部材6A及び第2光学部材6Bのそれぞれはくさび状に形成され露光光ELを透過可能なガラス板であり、一対のくさび型光学部材を構成している。照射光ELはこの第1光学部材6A及び第2光学部材6Bのそれぞれを通過する。駆動装置6Ad、6Bdの駆動量及び駆動速度、すなわち第1光学部材6Aと第2光学部材6Bとの相対的な移動量及び移動速度は制御装置CONTにより制御される。第2光学部材6Bに対して第1光学部材6AがX軸方向にスライドするように移動することにより投影光学モジュールPLdの像面位置がZ軸方向に移動し、第2光学部材6Bに対して第1光学部材6AがθZ方向に回転することにより投影光学モジュールPLdの像面が傾斜する。
【0070】
上記シフト調整機構5、ローテーション調整機構11、21、スケーリング調整機構7、及び像面調整機構6により、投影光学系PLの結像特性を補正する結像特性制御装置が構成されている。なお、結像特性制御装置としては、一部の光学素子(レンズ)間を密封して内部圧力を調整する機構であってもよい。
【0071】
基準部材29に形成された試料側AISマーク40のZ軸方向における形成位置(高さ)は試料Pの表面(露光面)と略一致するように設定されている。また、マスク側AISマーク30、31はマスクMの特定位置(例えば中心位置)に対して所定の位置関係で設けられている。基準部材29の下方には、試料ステージPSTに埋設されるように、基準部材29を通過した光を受光可能なAIS受光系60が設けられている。AIS受光系60は、レンズ系61と、レンズ系61を介した光を受光するCCDからなる撮像素子62とを備えている。AIS受光系60(撮像素子62)の受光結果は制御装置CONTに出力されるようになっている。
【0072】
図23は、AIS受光系60がAISマーク検出を行っている状態を示す図である。図23に示すように、制御装置CONTは、いわゆるスルー・ザ・レンズ(TTL)方式により、AIS受光系60(撮像素子62)でマスク側AISマーク30(31)と試料側AISマーク40とを検出し、この検出結果に基づいてマスクMと試料ステージPSTとの相対位置を求める。具体的には、制御装置CONTは、撮像素子62でマスク側AISマーク30(31)の像と試料側AISマーク40の像とが一致するようにマスクステージMST及び試料ステージPSTを移動し、照明光学系ILでマスク側AISマーク30(31)を照明する。マスクMを通過した照射光ELは投影光学系PLを通過するとともに試料側AISマーク40を通過し撮像素子62に導かれる。制御装置CONTは投影光学系PLa〜PLeを介してマスク側AISマーク30(31)及び試料側AISマーク40の相対位置(位置ずれ量)を計測することにより、投影光学系PLa〜PLeの各結像特性(シフト、スケーリング、ローテーション)を計測する。制御装置CONTは求めた結像特性の計測結果に基づいて、投影光学系PLa〜PLeの結像特性が精度保証範囲内になるように補正量を求め、求めた補正量に基づいて上記結像特性制御装置5、6、7、11、21を駆動して結像特性を補正する。図23には、マスク側AISマーク30と試料側AISマーク40とを同時に検出する状態が示されているが、マスクステージMSTを移動することで、マスク側AISマーク31と試料側AISマーク40とを同時に計測することもできる。そして、マスク側AISマーク30、31のそれぞれに関する計測結果に基づいて、制御装置CONTはマスクMのマスクステージMST上における所望の位置に対する置き位置ずれ(θZ方向の位置ずれ)やマスクMの膨張量に関する情報を求めることができ、求めた前記位置ずれやマスクMの膨張に起因する像変化を補正するために、上記結像特性制御装置を使って投影光学系PLの結像特性を調整することもできる。
【0073】
なお、制御装置CONTは、試料ステージPST上に設けられた複数の光量センサ116を使って、各投影光学モジュールPLa〜PLe間での照度ムラを含む照度情報を求め、求めた照度情報に基づいて照度ムラを補正することができる。なお照度ムラを補正するために、制御装置CONTは例えば照明光学モジュールのそれぞれに設けられている光量調整フィルタを駆動する。また、制御装置CONTは、照明光学系101及び投影光学系PLを含む照射光ELの光路上に配置される光学系の透過率変化、あるいは光源装置100の光量変化を予測し、これに基づいて各投影光学モジュールPLa〜PLeを通過して試料P上に照射される照射光ELの光量(照度)を調整することもできる。
【0074】
また、制御装置CONTは、光量センサ116を使って試料P(試料ステージPST)のフォーカス調整を行うこともできる。すなわち、投影光学系PLの像面と光量センサ116のZ軸方向(フォーカス方向)の位置とが合致した状態において、光量センサ116で受光される照射光ELの光量(照度)は最大値を示すので、投影光学系PLを通過した照射光ELを光量センサ116で受光しつつ試料ステージPSTをZ軸方向に移動し、最大照度が得られる光量センサ116のZ軸方向の位置を検出することで、投影光学系PLの像面位置を求めることができる。また、干渉計114で試料ステージPSTの位置をモニタしつつ試料ステージPSTをXY方向に移動しながら、照射光ELを光量センサ116で受光することで、マスクMのパターン像のXY方向における位置も検出することができる。
【0075】
図24は試料ステージPSTに設けられた試料ホルダPHの一例を示す図であって、図24(a)は要部拡大断面図、図24(b)は平面図である。
図24において、試料ホルダPHは、試料Pの下面(被支持面)PBの一部を支持する第1支持部71と、第1支持部71に接続する第2支持部72とを備えている。第1支持部71は、試料Pの下面PBに向かって延び、下面PBの複数の所定位置のそれぞれを支持する複数の凸状部材73と、これら凸状部材73の下端に接続する板状のベース部材74を備えている。なお、図24に示す例では凸状部材73とベース部材74とは一体成形されている。
【0076】
凸状部材73は略円柱状部材であって、図24(b)に示すように平面視マトリクス状に配置されている。凸状部材73の上端面(支持面)75は略円形状の平坦面であって、この上端面75で試料Pの下面PBを支持する。試料Pの下面PBは、平面視マトリクス状に配置された凸状部材73の支持面(上端面)75のそれぞれで支持される。本実施形態では、試料Pの下面PBのうち、第1支持部1の支持面75に支持される総面積は、支持面75に支持される以外の部分のより小さく設定されている。支持面75のそれぞれには、バキューム装置90に流路91を介して接続した吸着穴(吸着部)76が設けられている。試料Pの下面PBは吸着穴76を介して吸着保持される。流路91の一端部はバキューム装置90に接続しており、他端部は分岐して分岐流路91Bとなっている。そして、分岐流路91Bが吸着穴76のそれぞれに接続されている。分岐流路91Bのそれぞれには、吸着穴76を介した単位時間当たりのガス吸引量を調整するための弁92が設けられている。弁92の動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは弁92のそれぞれの動作を制御することにより、吸着穴76それぞれによる試料Pに対する吸着力を個別に設定可能となっている。
【0077】
第2支持部72は、凸状部材73の支持面75とは異なる部分、本実施形態では、ベース部材74の上面及び凸状部材73の側面に接続するに設けられている。そして、複数の凸状部材73と第2支持部72とを接続するようにして、第1支持部71と第2支持部72とが連結されている。ここで、本実施形態では、第2支持部72は凸状部材73の側面の高さ方向中央部より下方に接続されている。したがって、図24(a)に示すように、凸状部材73の支持面75で試料Pを支持した際、第1支持部71の凸状部材73と第2支持部72と試料Pとの間で空間95が形成される。
【0078】
第1、第2支持部71、72は互いに異なる材料により形成されている。第1支持部71を形成する第1の材料は、第2支持部72を形成する第2の材料より熱伝導率の大きい材料である。また、第2の材料は、第1の材料より膨張率の小さい材料である。本実施形態において、第1支持部71はアルミニウムで形成されており、第2支持部72はセラミックスで形成されている。アルミニウムは高い熱伝導率を有する材料であり、セラミックスは低い膨張率を有する材料である。なお、第1,第2の材料は、アルミニウム及びセラミックスに限ることなく所望の機能を有する材料を用いることができる。
【0079】
試料ホルダPHに保持された試料Pに対して照射光ELが照射されると、試料Pは照射光ELの照射熱により温度上昇する。ここで、試料Pは高い熱伝導率を有する第1支持部71に接続されているので、試料Pの熱は第1支持部71の凸状部材73に素早く伝達(吸収)される。これにより、試料Pは過剰に加熱せず、したがって大きく熱変形しない。
【0080】
第1支持部71の凸状部材73に伝達した試料Pの熱はベース部材74まで伝達する。凸状部材73を熱が伝達することにより、第1支持部71に接続している第2支持部72にも熱が伝達するが(換言すれば、試料Pの熱が第1支持部71を介して第2支持部72に伝達するが)、第2支持部72は膨張率の低い材料により形成されているため、大きく膨張(変形)しない。そして、伝達する熱により凸状部材73は径方向に熱膨張しようとするが、凸状部材73の周囲はほとんど熱膨張しない第2支持部72で囲まれているため、凸状部材73の熱膨張は阻止される。したがって、第1、第2支持部71、72からなる試料ホルダPH全体は大きく熱変形しない。
【0081】
第1支持部71は試料Pを複数の凸状部材73で支持する構成であり、本実施形態においては、試料Pの下面PBのうち支持面75に支持される総面積が、支持面75に支持される以外の部分より小さく設定されている。したがって、仮に試料ホルダPH(凸状部材73)が熱変形しても、試料Pに対する影響を少なくすることができる。すなわち、凸状部材73の径(支持面75の面積)が大きいと熱膨張量(熱変形量)が大きくなるため、試料Pの下面PBを大きな支持面75を有する第1支持部71で支持した場合、試料Pは熱膨張する凸状部材73により水平方向へ引っ張られてしまい、歪み等の変形を発生する場合がある。しかしながら、試料Pの下面PBを小さな支持面75を有する凸状部材73で支持することにより、仮に凸状部材73が熱膨張しても、各凸状部材73の熱膨張量はそれぞれ小さいので、試料Pに対する水平方向への引っ張り力を小さくすることができる。
【0082】
また、試料Pの下面PBを小さい支持面75を有する凸状部材73で支持したことにより、第1の試料Pを熱処理した後、この第1の試料Pを試料ホルダPHからアンロードし、第2の試料Pを試料ホルダPHにロードした際、第1の試料Pを露光処理した際に試料ホルダPH(凸状部材73)に蓄えられた熱の第2の試料Pに対する伝達量を抑えることができる。
【0083】
ところで、結晶の生成位置や成長方向を良好に規定するために、試料ステージPSTの位置制御を精度良く行う必要があり、特に、移動する試料ステージPSTの直交度(真直度)を良好に補正する必要がある。ここで、直交度とは、2次元平面内(XY平面内)で移動する試料ステージPSTの、このXY平面内における基準座標系に対するずれ量である。例えば、試料ステージPST上に設けられている移動鏡が理想位置に対してずれて設置されたり、何らかの原因で移動鏡の反射面が湾曲している等、移動鏡の反射面の平坦度や傾きに起因して、XY平面内を移動する試料ステージPSTの真の位置を干渉計で計測できない状況が生じ、この場合、直交度誤差が生じる。直交度誤差が生じた場合、結晶の生成位置や成長方向を精度良く制御することが困難になる。そこで、移動する試料ステージPSTの直交度誤差を低減するために試料ステージPSTの位置計測を精度良く行う必要がある。
【0084】
図25はXY平面内を移動する試料ステージPSTの位置計測を行う位置計測装置150の一実施形態を示す模式図である。図25において、試料ステージPST上にはX移動鏡113X及びY移動鏡113Yが設けられ、これら各移動鏡113X、113Yに対向する位置にはレーザ干渉計114X、114Yがそれぞれ設けられている。また、図25中、試料ステージPSTの+Y側端部には第1撮像素子151が設けられ、第1撮像素子151に対して−X方向に離れた位置には、計測光を射出する投光部153及び第1撮像素子151とは別の第2撮像素子152が一体で設けられている。投光部153は第1撮像素子151に対して計測光を投射可能であるとともに、試料ステージPST上のX移動鏡113Xに対しても計測光を投射可能である。X移動鏡113Xに投射された計測光の反射光は第2撮像素子152に受光されるようになっている。ここで、投光部153は、基準座標系のX軸と平行に計測光を射出する。
【0085】
次に、図26を参照しながら、計測装置150の動作について説明する。まず、基準座標系のX軸に対する直交度誤差を計測する手順について説明する。図26(a)に示すように、計測装置150の投光部153は、X軸方向に移動する試料ステージPSTの第1撮像素子151に対して計測光を投射する。ここで、試料ステージPSTに直交度誤差がある場合、投光部153より射出された計測光は、第1撮像素子151の検出領域の基準位置に対してΔyだけずれた位置に照射される。第1撮像素子151の検出結果は制御装置CONTに出力され、制御装置CONTは前記ずれ量Δyから直交度誤差を求めることができる。そして、求めた直交度誤差に基づいて、制御装置CONTは試料ステージPSTの移動を補正するための補正量を求めることができる。
【0086】
次に、基準座標系のY軸に対する直交度誤差を計測する手順について説明する。ここで、X移動鏡113XがY軸に対して角度θ傾いているとする。図26(b)に示すように、試料ステージPSTのX移動鏡113Xと投光部153とを対向させた状態で、投光部153よりX移動鏡113Xに対して計測光を投射する。このときの試料ステージPST(X移動鏡113X)のX軸方向の位置をx1とする。X移動鏡113Xで反射した計測光の反射光は、第2撮像素子152に受光される。この反射光の第2撮像素子152によるY軸方向における検出位置をt(x1)とする。次いで、図26(b)に示した状態から試料ステージPSTを+X方向に移動して図26(c)に示す状態にし、この状態で投光部153より計測光をX移動鏡113Xに投射する。このときの試料ステージPST(X移動鏡113X)のX軸方向の位置をx2とする。X移動鏡113Xで反射した計測光の反射光は第2撮像素子152に受光される。この反射光の第2撮像素子152によるY軸方向における検出位置をt(x2)とする。以上より、
θ(y)=〔(t(x1)−t(x2)〕/(x1−X2) …(1)
となる。Y軸方向に関して試料ステージPSTを移動して同様の計算を行い、
average〔θ(y)〕 …(2)
が、Y軸に対する直交度誤差の平均値である。
θ=dx/dy …(3)
なので、
x(y)=∫θ(y)dy …(4)
により、Y軸に対する直交度を求めることができる。
【0087】
以上の方法により、投光部153から射出した1本の光束(計測光)を基準として直交度(真直度)を計測することができる。なお、この直交度計測動作は、試料ステージPSTに対して試料Pを交換する毎、あるいはロット毎など、所定の時間間隔毎に行うことができる。
【0088】
上記各実施形態において、試料ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもいい。また、ステージは、ガイドに沿って移動するタイプでもいいし、ガイドを設けないガイドレスタイプでもよい。
【0089】
ステージの駆動装置として平面モ−タを用いる場合、磁石ユニット(永久磁石)と電機子ユニットのいずれか一方をステージに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットの他方をステージの移動面側(ベース)に設ければよい。
【0090】
試料ステージPSTの移動により発生する反力は、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。マスクステージMSTの移動により発生する反力は、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0091】
以上のように、本願実施形態の熱処理装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから熱処理装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから熱処理装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの熱処理装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、熱処理装置全体としての各種精度が確保される。なお、熱処理装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0092】
上記p−Siを含む半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスクを製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の熱処理装置によりマスクのパターンを試料に露光する試料処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、ELA法に基づいてa−Siからp−Siを生成する際、核の生成位置を制御し、結晶の大粒径化が可能であるため、良好な移動度を有するなど所望の性能を有するシリコン結晶を容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱処理方法の概念を示す説明図である。
【図2】本発明の熱処理方法の概念を示す説明図である。
【図3】本発明の熱処理方法の概念を示す説明図である。
【図4】本発明の熱処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係るマスクの一実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の熱処理方法の一実施形態を示す図である。
【図7】シリコン結晶が成長する様子を示す模式図である。
【図8】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図9】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図11】シリコン結晶が成長する様子を示す模式図である。
【図12】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図13】シリコン結晶が成長する様子を示す模式図である。
【図14】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図15】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図16】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図17】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図18】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図19】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図20】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図21】本発明の熱処理装置の他の実施形態を示す概略斜視図である。
【図22】図21の概略構成図である。
【図23】熱処理装置の動作の一例を示す模式図である。
【図24】試料ステージの一実施形態を示す模式図である。
【図25】試料ステージの位置計測装置の一例を示す図である。
【図26】試料ステージの位置計測装置の動作の一例を示す図である。
【符号の説明】
100…光源装置、101…照明光学系、A1…第1の領域、
A2…第2の領域、C1〜C20…遮光部(スリット状遮光部)、
CONT…制御装置、E1〜E20…円形状遮光部、EL…照射光(光束)、
H1、H2…第2遮光部、IL…照射装置、
L12〜L20…ライン状遮光部、M…マスク、MST…マスクステージ、
P…試料、PA1〜PA20…パターン形成領域、PL…投影光学系、
PST…試料ステージ、R1…第1の光強度勾配(第1の勾配)、
R2…第2の光強度勾配(第2の勾配)、S…熱処理装置、X…所定方向
【発明の属する技術分野】
本発明は熱処理方法及び熱処理装置に関し、特にアモルファスシリコンを結晶化する際に用いる熱処理方法及び熱処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイの高機能化、高精細化等を目的として、従来のアモルファスシリコン薄膜トランジスタ液晶ディスプレイとは別の、ポリシリコン薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ技術が注目されている。ポリシリコン(p−Si)はアモルファスシリコン(a−Si)を多結晶化することで生成される。多結晶化する方法として固相成長法やエキシマレーザアニール(ELA:Excimer−LaserAnneal)法等が挙げられ、このうち、低温プロセスが可能であるELA法による量産化が近年において実現されている。下記特許文献1には、ELA法によりa−Siからp−Siを生成する技術の一例が開示されている。
【0003】
ところで、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の活性領域の寸法は例えば1μm以上あるため、結晶粒径が小さいと活性領域内に多数の結晶粒界(グレインバウンダリ)が存在することになる。すると、多数の結晶粒界によりキャリア(電子)の散乱等が生じて移動度が低下し、半導体デバイスの高性能化が望めなくなる。現状の方法で得られる結晶粒径は0.1μm程度であるため、p−Siを生成するに際し、結晶の大粒径化が要求されている。
【0004】
ELA法では、基板上に設けられたa−Si膜にレーザ光束を照射し、その光束のエネルギーによりa−Si膜を溶融する。溶融したSi(溶融Si)は熱を放出して固化し、その際に核が生成され、この核を中心に結晶が成長して結晶化する。なお核が生成されない場合、溶融Siは再びアモルファス状態となる。ここで、核が高密度でランダムに生成されると、結晶は隣接する結晶と直ちに衝突(干渉)して互いの成長を妨げ合うため十分に成長されず、大粒径化しない。したがって、結晶を大粒径化するための必要因子として、生成される核の位置や数を制御することが挙げられる。また、大粒径化のための他の必要因子として、結晶の成長時間を引き延ばすこと、すなわちレーザ光束照射終了直後に成長が開始し、溶融状態を長時間持続して緩やかに冷却することが挙げられる。また、結晶を効率良く成長させるために成長方向を規定することも挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−324759号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術には以下に述べる問題が存在する。上記特許文献1に開示されている技術は、基板上のa−Si膜に対してスリット状にレーザ光束を照射し、このレーザ光束に対して基板を移動することで連続的に光束を照射しているが、核の生成位置を十分に制御できず、ランダムに生成された複数の核のそれぞれから成長した結晶が干渉し合って大粒径のp−Siを生成し難い可能性がある。また、スリット内の温度勾配は小さいため、結晶の成長方向が規定されない可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ELA法に基づいてa−Siからp−Siを生成する際、結晶の大粒径化が可能な熱処理方法及び熱処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため本発明は、実施の形態に示す図1〜図26に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の熱処理方法は、試料(P)に光束(EL)を照射する工程を有する熱処理方法において、光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射することを特徴とする。
また、本発明の熱処理方法は、基板(P)上に設けられたアモルファスシリコン膜に対して光束(EL)を照射する工程を有する熱処理方法において、光束(EL)をアモルファスシリコン膜の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、アモルファスシリコン膜の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、試料の表面の第1の領域に対して所定方向に関して急峻な第1の光強度勾配で光束を照射することにより、第1の領域を急峻な温度勾配にすることができ、これにより核の生成位置を第1の領域に規定することができる。そして、第1の領域に連続する第2の領域に、緩やかな第2の光強度勾配で光束を照射することで、第2の領域を緩やかな温度勾配にすることができ、この緩やかな温度勾配を維持しつつ固化することで、溶融状態が長時間持続された状態で冷却されるため、十分に広い成長領域を形成することができ、第1の領域に生成された核をよりどころとして(中心として)結晶を十分に成長させることができる。また、所定方向に関して第1及び第2の光強度勾配で光束を照射することで、結晶の成長方向を前記所定方向に規定することができ、結晶を効率良く成長させることができる。
【0010】
本発明の熱処理方法は、マスク(M)に光束(EL)を照射し、マスク(M)を通過した光束(EL)を試料(P)に照射する工程を有する熱処理方法において、光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射することを特徴とする。
本発明の熱処理装置(S)は、マスク(M)を支持するマスクステージ(MST)と、試料(P)を支持する試料ステージ(PST)と、マスク(M)に光束(EL)を照射する照射装置(IL)と、マスク(M)に対して試料(P)を所定方向(X)に相対移動しながら、マスク(M)を通過した光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)を所定方向(X)に関して第1の光強度勾配(R1)より緩やかな第2の光強度勾配(R2)で照射する制御装置(CONT)とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、パターンを有するマスクを通過した光束を試料上に照射することで、第1及び第2の光強度勾配を容易に生成することができ、結晶を円滑に大粒径化することができる。
【0012】
本発明の熱処理装置(S)は、マスク(M)を支持するマスクステージ(MST)と、試料(P)を支持する試料ステージ(PST)と、マスク(M)に光束(EL)を照射する照射装置(IL)と、マスク(M)に対して試料(P)を所定方向(X)に相対移動しながら、マスク(M)を通過した光束(EL)を試料(P)の表面の第1の領域(A1)に対して所定方向(X)に関して第1の勾配(R1)の積算光量で照射するとともに、試料(P)の表面の第1の領域(A1)に連続する第2の領域(A2)を所定方向(X)に関して第1の勾配(R1)より緩やかな第2の勾配(R2)の積算光量で照射する制御装置(CONT)とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、マスクを透過した光束を試料の表面上で重ね合わせ、この積算光量が第1及び第2の勾配を持つようにすることで、所望の光量分布を試料上で生成でき、結晶を円滑に大粒径化することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱処理方法及び熱処理装置について説明する。本発明は、試料としてのアモルファスシリコン膜の第1の領域に対して所定方向に関して急峻な第1の光強度勾配でレーザ光束を照射するとともに、アモルファスシリコン膜の第1の領域に連続する第2の領域に対して所定方向に関して緩やかな第2の光強度勾配で照射することにより、大粒径のポリシリコン結晶を形成するものである。まず、図1〜図3を参照しながら、本発明の原理について説明する。
図1は本発明の原理を説明するための模式図である。ポリシリコン(p−Si)結晶を成長させるための核は溶融状態(液相状態)のシリコン(Si)が固相状態に変遷するときに生成されるが、図1に示すように、アモルファスシリコン(a−Si)膜の第1の領域A1に対して所定方向(ここではX軸方向)に関して急峻な第1の光強度勾配R1で光束を照射することにより、第1の領域A1を急峻な温度勾配にすることができる。そして、急峻な温度勾配を維持しつつ冷却(固化)することで、核生成領域を比較的小さい領域に限定することができ、これにより核の生成位置を第1の領域A1に規定することができる。
【0015】
すなわち、第1の領域A1が急峻な第1の光強度勾配R1で光束を照射されることにより、図2の模式図に示すように、第1の光強度勾配R1に応じた第1の温度勾配T1で加熱されることになる。そして、時間経過とともに第1の領域A1は冷却(固化)され、核は液相状態のSiが固相状態に変遷するときに生成されるが、融点Tmを基準とした核生成可能温度範囲Taにおいて生成される。ここで、第1の温度勾配T1は急峻であるため、核生成可能温度範囲Taに対応する核生成領域を狭い領域Aaに限定することができる。一方、第1の領域A1に照射される光束の光強度勾配が緩やかであり、これに伴って第1の領域A1が緩やかな温度勾配T1’となると、核生成可能温度範囲Taに対応する核生成領域は大きくなり、広い領域Abで核がランダムに生成されることになり、これら核を中心として成長する結晶どうしが干渉し合って互いの成長を妨げることになる。したがって、急峻な第1の光強度勾配R1で第1の領域A1に光束を照射することで、急峻な温度勾配を有する比較的小さい第1の領域A1に核を生成でき、核の生成位置を制御できる。これにより、成長する結晶どうしが干渉して成長を妨げ合うといった不都合を回避できる。
【0016】
そして、第1の領域A1に連続する第2の領域A2に、緩やかな第2の光強度勾配R2で光束を照射することで、第2の領域A2を緩やかな温度勾配にすることができる。そして、図3の模式図に示すように、緩やかな温度勾配T2を維持しつつ冷却(固化)することで、溶融状態が長時間持続された状態で冷却されるため、十分に広い成長領域Bを形成することができ、第1の領域A1に生成された核をよりどころとして結晶を十分に成長させることができる。
【0017】
そして、X軸方向(所定方向)に関して第1、第2の光強度勾配で光束を照射することで、結晶の成長方向をX軸方向に規定することができ、結晶を効率良く成長させることができる。
【0018】
ここで、第1の領域A1で生成された核をよりどころとして第2の領域A2で結晶を成長させるために、第1の領域A1での最高温度と第2の領域A2での最低温度とは略同じであることが必要である。したがって、第1の光強度勾配R1における最大光強度と第2の光強度勾配R2における最小光強度とは略同じであることが好ましい。また、第1の領域A1での最高温度及び第2の領域A2での最低温度が少なくともa−Siの融点Tm以上となるように、第1の光強度勾配R1の最大光強度及び第2の光強度勾配R2の最小光強度が設定される。
【0019】
また、第1、第2の光強度勾配R1、R2で光束を照射する範囲は、生成するp−Si結晶の目標粒径に応じて設定され、少なくとも前記目標粒径より大きく設定される。そして、成長領域Bを含む第2の領域A2は第1の領域A1より大きいことが好ましい。これにより、シリコン結晶を十分に成長させることができる。
【0020】
図4は本発明の熱処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。図4において、熱処理装置Sは、パターンを有するマスクMを支持するマスクステージMSTと、試料Pを支持する試料ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMに照射光(光束)ELを照射する照射装置ILと、照射光ELを照射されたマスクMのパターンの像を試料ステージPSTに支持されている試料Pに投影する投影光学系PLと、熱処理装置Sの動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。試料Pはガラス基板上にa−Si膜を設けたものである。なお、ガラス基板とa−Si膜との間に、照射光ELが照射された際のガラス基板の熱損傷を防止するため酸化珪素(SiO2)膜を設けてもよい。
【0021】
以下の説明において、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸方向に垂直な方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0022】
照射装置ILは、光源装置100と、光源装置100から射出された光束を整形してマスクMに照射する照明光学系101とを備えている。光源装置100はエキシマレーザ装置により構成されており、光源装置100からは例えばKrFエキシマレーザ光(波長248nm)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が射出される。本実施形態において、光源装置100はKrFエキシマレーザ光を射出する。また、光源装置100は所定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を断続的に射出する。なお、光源装置100から射出される光束としては、F2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などでもよい。
【0023】
照明光学系101は、マスクステージMSTに支持されているマスクMを照射光(光束)ELで照明するものであり、光源装置100から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの光束ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び照射光ELによるマスクM上での照明領域IAを例えばスリット状に設定する視野絞り102等を有している。マスクM上の照明領域IAは照明光学系101により均一な照度分布の照射光ELで照明される。
【0024】
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡111が設けられている。移動鏡111に対向する位置にはレーザ干渉計112が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計112によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計112の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
【0025】
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで試料Pに投影露光するものであって、複数の光学素子で構成されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。
なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLの倍率は方向により異なっていてもよい。
【0026】
試料ステージPSTは、試料ホルダPHを介して試料Pを保持して移動可能であって、リニアモータ等の試料ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。試料ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。試料ステージPSTは、X軸、Y軸、及びZ軸方向に移動可能であるとともに、θX、θY、及びθZ方向にも移動可能である。試料ステージPSTは、試料Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して試料Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込むとともに、試料PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。試料ステージPST上には移動鏡113が設けられており、移動鏡113に対向する位置にはレーザ干渉計114が設けられている。試料ステージPST上の試料Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計114によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計114の計測結果に基づいて試料ステージ駆動装置PSTDを駆動することで試料ステージPSTに支持されている試料Pの位置決めを行う。
【0027】
試料ステージPST上のうち、試料Pを保持する試料ホルダPH以外の所定位置には、投影光学系PLを介した照射光ELの光強度(光量、照度)を検出する光量センサ116が設けられている。光量センサ116のディテクタ部は試料ホルダPHに保持された試料Pの表面と略同じ高さになるように設けられている。
【0028】
試料Pを支持する試料ステージPSTはアニール室115に収容されている。アニール室115内部は窒素ガス等の不活性ガスで満たされており、照射光ELの試料P上における照度低下を防止している。更に不図示ではあるが、照射装置IL、マスクステージMST、及び投影光学系PLを含む照射光ELの光路上はハウジングで覆われており、ハウジング内部も不活性ガスで満たされている。なお、アニール室115や前記ハウジング内部は真空状態にされてもよい。
【0029】
図5はマスクMの平面図である。図5において、マスクM上には所定方向(X軸方向)に並んだ複数のパターン形成領域PA1〜PA20が設定されている。パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれは矩形状であって同じ大きさに設定されている。パターン形成領域PA1〜PA20それぞれのX軸方向の幅Wは、生成するp−Siの目標粒径、つまり図1に示す第1の領域A1と第2の領域A2とを合わせた目標粒径領域A3に対応する大きさに設定されている。また、照射装置IL(照明光学系101)によるマスクM上での照明領域IAはスリット状(矩形状)に設定されており、その大きさは各パターン形成領域PA1〜PA20と略同じである。
【0030】
パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれにはクロム等の遮光性材料からなる遮光部(遮光パターン)C1〜C20が形成されており、遮光部以外は照射光ELを透過する透光部(透光パターン)K1〜K20となっている。本実施形態において、遮光部C1〜C20のそれぞれはY軸方向に延びるスリット状(ライン状)のパターンである。
【0031】
複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれの遮光部C1〜C20の割合は異なる値に設定されている。具体的には、複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれについて、ライン状の遮光部C1〜C20の幅が異なる値に設定されている。このうち、遮光部C1〜C11の幅は同じであり、C12〜C20に関しては漸次その幅が一定の割合で大きくなっている。例えば、パターン形成領域PA1〜PA20の幅Wに対して、遮光部C1〜C11の幅はW/20、C12の幅は2W/20、C13の幅は4W/20、C14の幅は6W/20、C15の幅は8W/20、C16の幅は10W/20、C17の幅は12W/20、C18の幅は14W/20、C19の幅は16W/20、C20の幅は18W/20となっている。すなわち、ライン状の遮光部C1〜C20のうち最も幅の狭い遮光部(C1〜C11)が最も多く設けられており、他のパターン形成領域PA12〜PA20に関しては漸次その幅が大きく(広く)なるように設けられている。そして、遮光部C1〜C20の幅に応じて各パターン形成領域PA1〜PA20の透光部K1〜K20の幅もそれぞれ異なっている。ここで、遮光部C1〜C20の−X側端部のそれぞれとパターン形成領域PA1〜PA20の−X側端部のそれぞれとが一致するように、遮光部C1〜C20のそれぞれは各パターン形成領域PA1〜PA20に設けられている。
【0032】
次に、上述した構成を有するマスクMを使ってa−Si膜をp−Si結晶にする方法について説明する。
制御装置CONTは、照射装置ILの光源装置100を駆動し、所定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を断続的に射出する。このパルスレーザ光の繰り返し周波数に同期させて、制御装置CONTはマスクMを支持するマスクステージMSTをX軸方向に等速で移動する。このとき、試料Pを支持する試料ステージPSTは停止している。照射装置IL(照明光学系101)の照明領域IAの大きさは各パターン形成領域PA1〜PA20と同じ大きさに設定されており、マスクMの各パターン形成領域PA1〜PA20を通過した照射光ELが投影光学系PLを介して試料P上の所定領域内において重ね合わせられるように照射されることにより、複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれのパターン(遮光部C1〜C20及び透光部K1〜K20)の像が試料P上で重ね合わせられる。
【0033】
図6は各パターン形成領域PA1〜PA20を通過した照射光ELの試料P上での積算光量(積算照射量)を示す模式図である。図6に示すように、パターン形成領域PA1〜PA11に設けられた遮光部C1〜C11の幅が同じ値に設定されているとともに、パターン形成領域PA12〜PA20の遮光部C12〜C20の幅が漸次大きくなるように設定されているので、各パターン形成領域PA1〜PA20を通過した照射光ELを試料P上で重ね合わせることにより、制御装置CONTは、試料P上で第1の光強度勾配R1と第1の光強度勾配R1より緩やかな第2の光強度勾配R2とを有する積算光量を生成することができる。
【0034】
図7は第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2で照射光ELを照射されたa−Si膜がp−Siに変遷する様子を示す模式図である。図7に示すように、急峻な第1の光強度勾配R1で照射光ELを照射されたa−Si膜の比較的狭い第1の領域A1には、一旦溶融したSiが固化することで核が生成される。そして、この核をよりどころとして、広い領域である第2の領域A2においてシリコン結晶が+X方向に成長する。
【0035】
なお、本実施形態ではパターン形成領域はPA1〜PA20の20個設定されているように説明したが、もちろん任意の数だけ設定可能である。また、各パターン形成領域PA1〜PA20の遮光部C1〜C20の幅(大きさ)の変化率も、急峻な第1の光強度勾配R1及びこれよりも緩やかな第2の光強度勾配R2を生成可能であれば任意に設定可能である。
【0036】
本実施形態では、パターン形成領域PA12〜PA20の各遮光部C12〜C20の幅が漸次大きくなるように説明したが、例えば漸次小さくなるように設けたり、あるいはランダムにその幅が変化させてもよい。つまり、試料P上での積算光量が、第1の勾配R1とこの第1の勾配R1より緩やかな第2の勾配R2とを有するように照射光ELを照射可能であれば、互いにその幅(大きさ)が異なる複数の遮光部のマスクM上での配列は任意に設定可能である。
【0037】
本実施形態では、試料Pを停止した状態でマスクMをX軸方向に移動するように説明したが、マスクMを停止した状態で試料Pを移動するようにしてもよい。この場合、照射装置ILは試料Pの移動に同期してマスクM上の各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射する。あるいは、マスクMと試料Pとの双方をX軸方向に移動するようにしてもよい。
【0038】
ところで、マスクM(あるいは試料P)を停止した状態で照射光ELを照射することにより、このマスクM(試料P)は照射光ELにより加熱される。したがって、マスクM(試料P)を冷却する冷却機構を設け、マスクM(試料P)の過剰な加熱を防止するようにしてもよい。
【0039】
本実施形態において、マスクMはX軸方向に等速で移動するように説明したが、不等速で移動してもよい。このとき、制御装置CONTは、照射装置ILによる照射光ELを照射するタイミングや光量(マスクM上での照度)を調整しつつ照射光ELを照射する。一方、マスクMを等速で移動することにより、各パターン形成領域PA1〜PA20を同じ大きさに設定して照射装置ILから一定の周波数でパルスレーザ光を射出することにより、試料P上で第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する積算光量を容易に得ることができ、マスクMの製造や照射装置ILの制御を容易に行うことができる。
【0040】
本実施形態において、照射装置ILは所定の繰り返し周波数でパルスレーザ光を射出するように説明したが、連続光を射出してもよい。この場合、照射装置ILの光路上にシャッタを設け、制御装置CONTはマスクMの移動に同期して、前記シャッタを使って照射光ELの光路を遮蔽及び遮蔽解除する。
【0041】
試料P上における照射光ELの光強度(照度)の調整は、光源装置100の出力を調整することで行うこともできるし、あるいは上記シャッタの動作を制御することで行うこともできる。また、光強度の調整を行う際、試料ステージPST上に設けられた光量センサ116で照射光ELの光強度を検出し、この検出結果に基づいて調整を行うことができる。あるいは、光源装置100又は照明光学系101の光路上に照射光ELの光強度(照度)を検出可能な光量検出装置(光量モニタ)を設け、この光量モニタの検出結果に基づいて、光強度を調整するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、第1の光強度勾配R1における最大光強度と、第2の光強度勾配R2における最小光強度とを略同じにして、第1の領域A1での最高温度と第2の領域A2での最低温度とが略同じになるようにしているが、第1の領域A1での最高温度及び第2の領域A2での最低温度のそれぞれがa−Siの融点Tm以上に設定可能であれば、第1の光強度勾配R1における最大光強度と、第2の光強度勾配R2における最小光強度とは異なる値であってもよい。一方、第1の光強度勾配R1における最大光強度と第2の光強度勾配R2における最小光強度とを略同じにすることにより、第1の領域A1で生成された核をよりどころとして第2の領域A2においてシリコン結晶を円滑に成長させることができる。
【0043】
本実施形態では、マスクM上に複数のパターン形成領域PA1〜PA20を設定し、パターン形成領域PA1〜PA20それぞれの遮光部C1〜C20の割合を異なる値に設定し、これら各パターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせ、試料P上での積算光量が第1の勾配R1及び第2の勾配R2を有するように照射光ELを照射する構成であるが、例えば、図8に示すように、X軸方向に関するパターン密度変化率が急峻な第1のパターン形成領域PA1と、この第1のパターン形成領域PA1に連続するように設けられ、X軸方向に関するパターン密度変化率が緩やかで、第1のパターン形成領域PA1より大きい第2のパターン形成領域PA2とを有するマスクMを用意し、このマスクM及び試料Pを停止した状態でマスクMに照射光ELを照射し、これら第1、第2パターン形成領域PA1、PA2のパターンを一括して試料Pに投影露光するようにしてもよい。なお、ここでいうパターン密度とは、マスクM上の単位面積当たりに形成される遮光部の割合である。一方、遮光部C1〜C20の割合が異なる値に設定された複数のパターン形成領域PA1〜PA20をマスクM上に並べて配置し、マスクMに対して試料Pを相対移動しながら照射光ILを照射することにより、マスクM上には遮光部C1〜C20と透光部K1〜K20との2値的な光透過率を有するパターンを形成すればよいので、マスクMを容易に製造することができる。
【0044】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図9はマスクMの他の実施形態を示す平面図である。図9において、マスクM上に設定された複数のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれには、Y軸方向に延び、所定の幅を有する遮光部C1〜C20が設けられている。本実施形態において、遮光部C1〜C20のそれぞれは同じ幅(W/20)に設定されており、パターン形成領域PA1〜PA20の−X側端部のそれぞれに設けられている。そして、複数のパターン形成領域PA1〜PA20のうち一部のパターン形成領域PA12〜PA20には、試料P上で解像しない程度の細い線幅を有し、Y軸方向に延びるライン状遮光部L(L12〜L20)が、遮光部C12〜C20のそれぞれに隣接する位置に設けられている。ライン状遮光部L12〜L20の数は、複数のパターン形成領域PA12〜PA20のそれぞれについて互いに異なる値となっている。本実施形態において、ライン状遮光部Lの数は、パターン形成領域PA12〜PA20に関して漸次その数が一定の割合で増えている。例えば、パターン形成領域PA12のライン状遮光部L12は2本設けられており、パターン形成領域PA13のライン状遮光部L13は4本設けられている。以下同様に、パターン形成領域PA14〜PA20のライン状遮光部L14〜L20は、6本、8本、10本、12本、14本、16本、18本設けられている。これらライン状遮光部L12〜L20は一定の間隔で設けられている。
【0045】
制御装置CONTは、照射装置ILにより、上記マスクMのパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射し、これらパターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせることで、試料P上の第1、第2の領域A1、A2のそれぞれに第1、第2の光強度勾配R1、R2で照射光ELを照射することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに試料P上で解像する幅を有する遮光部C1〜C20が設けられ、これに付随して解像しない程度の線幅を有するライン状遮光部L12〜L20が設けられているが、遮光部C1〜C20が形成されている領域に、解像しない程度の線幅を有するライン状遮光部Lを各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれについて複数設けるようにしてもよい。つまり、各パターン形成領域PA1〜PA20に設けられる遮光部の全てを、試料P上で解像しない程度の線幅を有するライン状遮光部Lで構成することもできる。
【0047】
図10はマスクMの他の実施形態を示す平面図である。図10において、マスクM上のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれには円形状遮光部E1〜E20が形成されており、これら円形状遮光部E1〜E20それぞれの径は互いに異なる値に設定されている。このうち、円形状遮光部E1〜E11の径は同じであり、E12〜E20に関しては漸次その径が一定の割合で大きくなっている。例えば、円形状遮光部E1〜E11の直径はW/20、E12の直径は2W/20、E13の直径は4W/20、E14の直径は6W/20、E15の直径は8W/20、E16の直径は10W/20、E17の直径は12W/20、E18の直径は14W/20、E19の直径は16W/20、E20の直径は18W/20となっている。すなわち、複数の円形状遮光部E1〜E20のうち、最も径の小さい円形状遮光部(E1〜E11)が最も多く設けられており、他のパターン形成領域PA12〜PA20に関しては漸次その径が大きくなるように設けられている。ここで、各円形状遮光部E1〜E20それぞれの中心位置は、各パターン形成領域PA1〜PA20の例えば図中、左上角部に設けられた基準位置O1〜O20のそれぞれに対して同じ位置(座標)になるように設けられている。換言すれば、円形状遮光部E1〜E20は、各パターン形成領域PA1〜PA20それぞれの中心に設けられている。
【0048】
制御装置CONTは、照射装置ILにより、上記マスクMの各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射し、これら各パターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせることで、試料P上の第1、第2の領域A1、A2のそれぞれに第1、第2の光強度勾配R1、R2で照射光ELを照射することができる。本実施形態において、試料P上の第1の領域A1は円形状の小さい領域であり、第2の領域A2は、この第1の領域A1を囲む円環状の広い領域である。ここで、複数の円形状遮光部E1〜E20のうち最大径を有する円形状遮光部E20の直径が、生成するp−Si結晶の目標粒径に応じて設定されている。
【0049】
図11は円形状遮光部E1〜E20を有するマスクMを介して照射光ELが照射されたa−Si膜がp−Siに変遷する様子を示す模式図である。図11に示すように、急峻な第1の光強度勾配R1で照射光ELを照射されたa−Si膜の円形状の第1の領域A1には、一旦溶融したSiが固化することで核が生成される。そして、この核をよりどころとして、第2の領域A2においてシリコン結晶が円環状(放射状)に成長する。
【0050】
図12はマスクMの他の実施形態を示す平面図である。図12において、マスクM上のパターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれは同じ大きさに設定されており、その−X側端部にはY軸方向に延びるライン状の遮光部C1〜C20がそれぞれ設けられている。遮光部C1〜C20は図5を参照して説明した実施形態と同様の構成である。つまり、遮光部C1〜C11は同じ幅(W/20)を有し、遮光部C12〜C20に関しては漸次その幅が大きくなるように設けられている。そして、本実施形態において、マスクM上には、Y軸方向に所定間隔で第2遮光部H(H1、H2)が設けられている。本実施形態において、第2遮光部はH1、H2の2つ設けられている。第2遮光部H1、H2のそれぞれはX軸方向に延びるライン状遮光部であって、パターン形成領域PA1〜PA6に亘って設けられている。
【0051】
制御装置CONTは、照射装置ILにより、上記マスクMの各パターン形成領域PA1〜PA20のそれぞれに照射光ELを照射し、これら各パターン形成領域PA1〜PA20のパターンの像を試料P上で重ね合わせることで、試料P上の第1、第2の領域A1、A2のそれぞれに、X軸方向に関して第1、第2の光強度勾配R1、R2で照射光ELを照射することができる。更に、第2遮光部H1、H2により、制御装置CONTは、試料Pの表面でY軸方向に関しても光強度の分布が生じるように照射光ELを照射することができる。
【0052】
図13は第2遮光部H1、H2を有するマスクMを介して照射光ELが照射されたa−Si膜がp−Siに変遷する様子を示す模式図である。第2遮光部H1、H2により、試料P上にはY軸方向に関して光強度分布に応じた温度分布が生じ、Y軸方向に関する各位置において、一旦溶融したSiが固化するタイミングが互いに異なる。ここで、第2遮光部H1、H2は、試料P上の第1の領域A1に第1の光強度勾配R1を生成するための遮光部C1〜C11を有するパターン形成領域PA1〜PA11のうち、一部のパターン形成領域PA1〜PA6に設けられている。したがって、試料P上でのY軸方向に関する光強度分布は第1の領域A1を含む領域(核生成領域)に生成されることになる。そして、第1の領域A1でのY軸方向に関する各位置において一旦溶融したSiが固化するタイミングが互いに異なるため、図13に示すように、核はX軸方向に関してずれた位置に生成される。つまり、図13中、第1の領域A1においてY軸方向に並ぶように生成される複数の核のうち、特定の核G1、G2、G3が+X方向に突出した位置に生成される。この突出した核G1、G2、G3に対して、結晶の成長方向前方側(つまり+X側)には結晶粒が存在しない。また、隣り合う特定の核G1〜G3どうしの離間距離は十分に大きい。したがって、この突出した核G1、G2、G2をよりどころとして成長する結晶は、前方(+X方向)のみならず、左右方向(±Y方向)にも成長することができ、より大きく成長することができる。
【0053】
以上説明したように、マスクM上に、X軸方向に延びる遮光部C1〜C20とともにY軸方向に延びる第2遮光部H1、H2を設けたことにより、試料P表面のXY方向(二次元方向)に光強度分布を生成することができる。特に、核生成領域である第1の領域A1において二次元方向に光強度分布を生成することにより、Y軸方向に並んで生成される核の生成位置をX軸方向に関して互いにずれた位置に設けることができる。したがって、成長方向前方側に突出した位置に生成された核G1、G2、G3どうしは互いの離間距離を大きくすることができるので、この核G1、G2、G3をよりどころとして、+X方向のみならず±Y方向にも十分に結晶が成長する。
【0054】
なお、本実施形態では、Y軸方向の光強度の分布を生成するために、Y軸方向に所定間隔で設けられた第2遮光部H1、H2を有するマスクMを使っているが、図14に示すように、マスクM上にY軸方向に関して光強度分布を干渉効果により生成可能な位相シフタを設け、このマスクMを介した照射光ELを試料Pに照射するようにしてもよい。
【0055】
図15は本発明の他の実施形態を説明するための模式図である。ライン状の遮光部Cを有するマスクMに対して照射光ELを照射し、マスクMのパターンを投影光学系PLを介して試料P上に露光するに際し、図15(a)に示すように、試料P表面が投影光学系PLの像面と合致し、マスクMのパターン形成面も試料Pに対して共役な位置(つまり物体面)と合致又は略合致している場合、試料P上における光強度分布は、ラインa1で示すように、急峻な勾配(第1の光強度勾配)を有する。一方、図15(b)に示すように、投影光学系PLの像面(あるいは物体面)に対する試料P又はマスクMの位置をずらす(デフォーカスさせる)ことにより、試料P上における光強度分布は、ラインb1で示すように、緩やかな勾配(第2の光強度勾配)を有する。したがって、これらを試料P上で合成することで、試料Pに第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2を有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。なお図15(b)には、マスクMをデフォーカスさせた状態が図示されているが、試料Pをデフォーカスさせてもよいし、マスクMと試料Pとの双方をデフォーカスさせてもよい。また、デフォーカスさせるために、アニール室115や、投影光学系PLを構成する光学素子を収容するハウジング(鏡筒)内の気体密度を変化させて光屈折率を変えることによりデフォーカスさせてもよい。あるいは、投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち特定の光学素子を駆動することでデフォーカスさせてもよい。
【0056】
図16は、図15を参照して説明した実施形態の変形例を示す図である。図16において、マスクMの上面及び下面のそれぞれにライン状の遮光部Cが形成されている。マスクMの下面に設けられた遮光部Cは投影光学系PLの物体面(焦点位置)に合致又は略合致しており、マスクMの上面に設けられた遮光部Cはデフォーカスされている。ここで、マスクMの上面及び下面のそれぞれに形成されている遮光部CのXY平面内における位置は略一致している。マスクMの下面に設けられた遮光部Cの像により第1の光強度勾配R1が形成され、上面に設けられた遮光部Cの像により第2の光強度勾配R2が形成されるので、制御装置CONTは照射装置ILによりマスクMに対して照射光ELを照射することで、試料P上に第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。
【0057】
あるいは、図17に示すように、遮光部Cを有するマスクMを2枚用意し、一方のマスクMのパターン形成面(遮光部C)を投影光学系PLの焦点位置に合致させ、他方のマスクMのパターン形成面(遮光部C)をデフォーカスさせることによっても、試料P上に第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。
【0058】
また、図16及び図17を参照して説明した実施形態において、照明光学系101内に設けられた開口絞りを変更することによっても、試料P上での光強度分布を変化させることができる。この場合、互いに大きさの異なる開口部を有するターレットを照明光学系101内に設け、ターレットを回転して照射光ELの光路上に複数の開口部のうち特定の開口部を配置することにより、開口数を変更することができる。
【0059】
図18は本発明の他の実施形態を説明するための模式図である。図18において、マスクM上にはX軸方向に並んだ複数のパターン形成領域PA1〜PA20が設けられており、各パターン形成領域PA1〜PA20それぞれの中央部にライン状の遮光部Cが設けられている。なお、遮光部Cのそれぞれは同じ幅でもよいし互いに異なる幅でもよい。制御装置CONTは、パルスレーザ光の繰り返し周波数に同期して試料PをX軸方向に移動しつつ、各パターン形成領域PA1〜PA20に照射光ELを照射し、パターン形成領域PA1〜PA20それぞれのパターンの像を試料P上で重ね合わせる。ここで、制御装置CONTは、パターン形成領域PA1〜PA11のパターンを露光するときに(試料P上の所定領域がパターン形成領域PA1〜PA11に対応する位置を通過するときに)、試料Pを投影光学系PLの像面に対して合致させ、一方、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンを露光するときに、試料Pの投影光学系PLの像面に対する離間距離を漸次大きくする。換言すれば、試料Pを支持して移動する試料ステージPSTの移動軌跡を、上方あるいは下方のいずれか一方に傾斜させる。これにより、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンはデフォーカスされた状態で試料Pに露光され、試料P上に第2の光強度勾配R2が生成される。なおここでは、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンを試料Pに露光するときに、試料PのZ軸方向の位置を調整して投影光学系PLの像面と試料Pとの距離を漸次大きくしているが、パターン形成領域PA12〜PA20のパターンを試料Pに露光するときに、マスクMのZ軸方向の位置を漸次変化させてもよいし、マスクMと試料Pとの双方のZ軸方向における位置を変化させてもよい。
【0060】
なお、上記各実施形態では、遮光部(遮光パターン)を有するマスクMに照射光ELを照射することで、試料P上で所望の光強度勾配を得る構成であるが、マスクMを使わずに第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2を有する光強度分布で照射光ELを照射することもできる。例えば、マスクステージMSTにマスクMを載置しない状態で照射装置ILより照射光ELを射出し、投影光学系PLを介して試料P上に照射光ELを照射する。そして、視野絞り102によって設定されるスリット状の照明領域IAに対して試料Pを照明領域IAの幅Wより小さい移動距離でX軸方向にステップ移動し、照射光ELを試料P上で重ね合わせることにより、図19に示す模式図のように、第1の光強度勾配R1及び第2の光強度勾配R2で照射光ELを試料Pに照射することができる。なおここでは、照明領域IAに対して試料Pを照明領域IAの幅Wより小さい移動距離でステップ移動しているが、照明領域IAの幅と同程度の移動距離でステップ移動してもよい。あるいは、視野絞り102を可変視野絞りとし、照明領域IAの大きさ(幅)を変化させながら照射光ELを照射してもよい。あるいは、試料Pを停止した状態で視野絞り102を駆動するようにしてもよい。
【0061】
あるいは、図20に示すような傾斜部102Aを含む台形形状の開口部を有する視野絞り102を照明光学系101に設け、この台形形状の開口部を通過した照射光ELを投影光学系PLを介して試料P上に投影することで、第1の光強度勾配R1と第2の光強度勾配R2とを有する光強度分布で照射光ELを照射することができる。視野絞り102の開口部の傾斜部102Aの傾斜角度は、第2の光強度勾配R2に応じて設定される。ここで、視野絞り102は、投影光学系PLの像面と共役な位置に対して僅かにずれた位置に配置される。したがって、開口部の端部102Bを通過する光束により、試料P上で第1の光強度勾配R1が形成される。なお、本実施形態における結晶の成長方向はY軸方向である。
【0062】
次に、本発明の熱処理装置の他の実施形態について図21及び図22を参照しながら説明する。図21は本実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図、図22は概略構成図であって、図21に示すように、熱処理装置Sは複数並んだ投影光学系PLを有している。
図21及び図22において、熱処理装置Sは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、試料Pを支持する試料ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されたマスクMに照射光ELを照射する照射装置ILと、照射光ELを照射されたマスクMのパターンの像を試料ステージPSTに支持されている試料Pに投影する投影光学系PLとを備えている。本実施形態において、投影光学系PLは複数(5つ)の投影光学モジュールPLa〜PLeを有しており、照射装置IL(照明光学系101)も投影光学モジュールの数及び配置に対応して複数(5つ)の照明系モジュールを有している。複数の投影光学モジュールPLa〜PLeのうち、投影光学モジュールPLa、PLc、PLeと投影光学モジュールPLb、PLdとが2列に千鳥状に配列されている。
【0063】
マスクMを支持するマスクステージMSTは移動可能に設けられており、一次元の走査露光を行うべくX軸方向への長いストロークと、走査方向と直交するY軸方向への所定距離のストロークとを有している。試料ステージPSTも、マスクステージMSTと同様に、一次元の走査露光を行うべくX軸方向に長いストロークと、走査方向と直交するY軸方向にステップ移動するための長いストロークとを有している。
【0064】
図21に示すように、マスクMの走査方向両側(±X側)には複数のマーク(マーク群)を有するマーク形成領域27、28が設けられている。−X側のマーク形成領域27にはY軸方向に所定間隔で並ぶ複数のマーク30が形成されている。一方、+X側のマーク形成領域28にはY軸方向に所定間隔で並ぶ複数のマーク31が形成されている。また、試料ステージPSTの−X側の所定位置にはY軸方向に沿って延在する基準部材29が設けられており、基準部材29にはY軸方向に所定間隔で並ぶマーク40が形成されている。以下の説明において、マスクMに形成されたマーク30及び31を適宜「マスク側AISマーク」と称する。また、試料ステージPSTに形成されたマーク40を適宜「試料側AISマーク」と称する。一方、試料ステージPSTの+X側の所定位置には、Y軸方向に所定間隔で並ぶ複数の光量センサ116が設けられている。
【0065】
図22に示すように、投影光学モジュールPLdは、シフト調整機構5と、二組の反射屈折型光学系10、20と、像面調整機構6と、不図示の視野絞りと、スケーリング調整機構7とを備えている。なお、他の投影光学モジュールPLa、PLb、PLc、PLeも投影光学モジュールPLdと同様の構成である。マスクMを透過した光束は、シフト調整機構5に入射する。シフト調整機構5は、θY方向に回転可能に設けられた平行平面ガラス板5Aと、θX方向に回転可能に設けられた平行平面ガラス板5Bと有している。平行平面ガラス板5Aはモータなどの駆動装置5AdによりθY方向に回転し、平行平面ガラス板5Bはモータなどの駆動装置5BdによりθX方向に回転する。平行平面ガラス板5AがθY方向に回転することにより試料P上におけるマスクMのパターンの像はX軸方向にシフトし、平行平面ガラス板5BがθX方向に回転することにより試料P上におけるマスクMのパターンの像はY軸方向にシフトする。駆動装置5Ad,5Bdの駆動速度及び駆動量は制御装置CONTによりそれぞれ独立して制御されるようになっている。駆動装置5Ad,5Bdのそれぞれは制御装置CONTの制御に基づいて、平行平面ガラス板5A,5Bのそれぞれを所定速度で所定量(所定角度)回転する。シフト調整機構5を透過した光束は、1組目の反射屈折型光学系10に入射する。
【0066】
反射屈折型光学系10は、マスクMのパターンの中間像を形成するものであって、直角プリズム11と、レンズ12と、凹面鏡13とを備えている。直角プリズム11はθZ方向に回転可能に設けられており、モータなどの駆動装置11dによりθZ方向に回転する。直角プリズム11がθZ方向に回転することにより試料P上におけるマスクMのパターンの像はθZ方向に回転する。すなわち、直角プリズム11はローテーション調整機構としての機能を有している。駆動装置11dの駆動速度及び駆動量は制御装置CONTにより制御されるようになっている。駆動装置11dは制御装置CONTの制御に基づいて、直角プリズム11を所定速度で所定量(所定角度)回転する。反射屈折型光学系10により形成されるパターンの中間像位置には不図示の視野絞りが配置されている。視野絞りは、試料P上における投影領域を設定するものである。
【0067】
反射屈折型光学系20は、反射屈折型光学系10と同様に、ローテーション調整機構としての直角プリズム21と、レンズ22と、凹面鏡23とを備えている。直角プリズム21もモータなどの駆動装置21dの駆動によりθZ方向に回転するようになっており、回転することで試料P上におけるマスクMのパターンの像をθZ方向に回転する。駆動装置21dの駆動速度及び駆動量は制御装置CONTにより制御されるようになっており、駆動装置21dは制御装置CONTの制御に基づいて、直角プリズム21を所定速度で所定量(所定角度)回転する。
【0068】
反射屈折型光学系20から射出した光束は、スケーリング調整機構7を通り、試料P上にマスクMのパターンの像を正立等倍で結像する。スケーリング調整機構7は、図22に示すようにレンズをZ軸方向に移動させたり、又は3枚のレンズ構成で例えば、凹レンズ、凸レンズ、凹レンズから構成され、凹レンズと凹レンズとの間に位置する凸レンズをZ軸方向に移動させることにより、マスクMのパターンの像の倍率(スケーリング)調整を行うようになっている。図22に示す形態の場合、凸レンズは駆動装置7dにより移動するようになっており、駆動装置7dは制御装置CONTにより制御される。駆動装置7dは制御装置CONTの制御に基づいて、凸レンズを所定速度で所定量移動させる。なお、凸レンズは、両凸レンズでも平凸レンズでもよい。
【0069】
二組の反射屈折型光学系10,20の間の光路上には、投影光学モジュールPLdの結像位置及び像面の傾斜を調整する像面調整機構6が設けられている。像面調整機構6は反射屈折型光学系10による中間像が形成される位置近傍に設けられている。すなわち、像面調整機構6はマスクM及び試料Pに対してほぼ共役な位置に設けられている。像面調整機構6は、第1光学部材6Aと、第2光学部材6Bと、第1光学部材6A及び第2光学部材6Bを非接触状態に支持する不図示のエアベアリングと、第2光学部材6Bに対して第1光学部材6Aを移動する駆動装置6Ad、6Bdとを備えている。第1光学部材6A及び第2光学部材6Bのそれぞれはくさび状に形成され露光光ELを透過可能なガラス板であり、一対のくさび型光学部材を構成している。照射光ELはこの第1光学部材6A及び第2光学部材6Bのそれぞれを通過する。駆動装置6Ad、6Bdの駆動量及び駆動速度、すなわち第1光学部材6Aと第2光学部材6Bとの相対的な移動量及び移動速度は制御装置CONTにより制御される。第2光学部材6Bに対して第1光学部材6AがX軸方向にスライドするように移動することにより投影光学モジュールPLdの像面位置がZ軸方向に移動し、第2光学部材6Bに対して第1光学部材6AがθZ方向に回転することにより投影光学モジュールPLdの像面が傾斜する。
【0070】
上記シフト調整機構5、ローテーション調整機構11、21、スケーリング調整機構7、及び像面調整機構6により、投影光学系PLの結像特性を補正する結像特性制御装置が構成されている。なお、結像特性制御装置としては、一部の光学素子(レンズ)間を密封して内部圧力を調整する機構であってもよい。
【0071】
基準部材29に形成された試料側AISマーク40のZ軸方向における形成位置(高さ)は試料Pの表面(露光面)と略一致するように設定されている。また、マスク側AISマーク30、31はマスクMの特定位置(例えば中心位置)に対して所定の位置関係で設けられている。基準部材29の下方には、試料ステージPSTに埋設されるように、基準部材29を通過した光を受光可能なAIS受光系60が設けられている。AIS受光系60は、レンズ系61と、レンズ系61を介した光を受光するCCDからなる撮像素子62とを備えている。AIS受光系60(撮像素子62)の受光結果は制御装置CONTに出力されるようになっている。
【0072】
図23は、AIS受光系60がAISマーク検出を行っている状態を示す図である。図23に示すように、制御装置CONTは、いわゆるスルー・ザ・レンズ(TTL)方式により、AIS受光系60(撮像素子62)でマスク側AISマーク30(31)と試料側AISマーク40とを検出し、この検出結果に基づいてマスクMと試料ステージPSTとの相対位置を求める。具体的には、制御装置CONTは、撮像素子62でマスク側AISマーク30(31)の像と試料側AISマーク40の像とが一致するようにマスクステージMST及び試料ステージPSTを移動し、照明光学系ILでマスク側AISマーク30(31)を照明する。マスクMを通過した照射光ELは投影光学系PLを通過するとともに試料側AISマーク40を通過し撮像素子62に導かれる。制御装置CONTは投影光学系PLa〜PLeを介してマスク側AISマーク30(31)及び試料側AISマーク40の相対位置(位置ずれ量)を計測することにより、投影光学系PLa〜PLeの各結像特性(シフト、スケーリング、ローテーション)を計測する。制御装置CONTは求めた結像特性の計測結果に基づいて、投影光学系PLa〜PLeの結像特性が精度保証範囲内になるように補正量を求め、求めた補正量に基づいて上記結像特性制御装置5、6、7、11、21を駆動して結像特性を補正する。図23には、マスク側AISマーク30と試料側AISマーク40とを同時に検出する状態が示されているが、マスクステージMSTを移動することで、マスク側AISマーク31と試料側AISマーク40とを同時に計測することもできる。そして、マスク側AISマーク30、31のそれぞれに関する計測結果に基づいて、制御装置CONTはマスクMのマスクステージMST上における所望の位置に対する置き位置ずれ(θZ方向の位置ずれ)やマスクMの膨張量に関する情報を求めることができ、求めた前記位置ずれやマスクMの膨張に起因する像変化を補正するために、上記結像特性制御装置を使って投影光学系PLの結像特性を調整することもできる。
【0073】
なお、制御装置CONTは、試料ステージPST上に設けられた複数の光量センサ116を使って、各投影光学モジュールPLa〜PLe間での照度ムラを含む照度情報を求め、求めた照度情報に基づいて照度ムラを補正することができる。なお照度ムラを補正するために、制御装置CONTは例えば照明光学モジュールのそれぞれに設けられている光量調整フィルタを駆動する。また、制御装置CONTは、照明光学系101及び投影光学系PLを含む照射光ELの光路上に配置される光学系の透過率変化、あるいは光源装置100の光量変化を予測し、これに基づいて各投影光学モジュールPLa〜PLeを通過して試料P上に照射される照射光ELの光量(照度)を調整することもできる。
【0074】
また、制御装置CONTは、光量センサ116を使って試料P(試料ステージPST)のフォーカス調整を行うこともできる。すなわち、投影光学系PLの像面と光量センサ116のZ軸方向(フォーカス方向)の位置とが合致した状態において、光量センサ116で受光される照射光ELの光量(照度)は最大値を示すので、投影光学系PLを通過した照射光ELを光量センサ116で受光しつつ試料ステージPSTをZ軸方向に移動し、最大照度が得られる光量センサ116のZ軸方向の位置を検出することで、投影光学系PLの像面位置を求めることができる。また、干渉計114で試料ステージPSTの位置をモニタしつつ試料ステージPSTをXY方向に移動しながら、照射光ELを光量センサ116で受光することで、マスクMのパターン像のXY方向における位置も検出することができる。
【0075】
図24は試料ステージPSTに設けられた試料ホルダPHの一例を示す図であって、図24(a)は要部拡大断面図、図24(b)は平面図である。
図24において、試料ホルダPHは、試料Pの下面(被支持面)PBの一部を支持する第1支持部71と、第1支持部71に接続する第2支持部72とを備えている。第1支持部71は、試料Pの下面PBに向かって延び、下面PBの複数の所定位置のそれぞれを支持する複数の凸状部材73と、これら凸状部材73の下端に接続する板状のベース部材74を備えている。なお、図24に示す例では凸状部材73とベース部材74とは一体成形されている。
【0076】
凸状部材73は略円柱状部材であって、図24(b)に示すように平面視マトリクス状に配置されている。凸状部材73の上端面(支持面)75は略円形状の平坦面であって、この上端面75で試料Pの下面PBを支持する。試料Pの下面PBは、平面視マトリクス状に配置された凸状部材73の支持面(上端面)75のそれぞれで支持される。本実施形態では、試料Pの下面PBのうち、第1支持部1の支持面75に支持される総面積は、支持面75に支持される以外の部分のより小さく設定されている。支持面75のそれぞれには、バキューム装置90に流路91を介して接続した吸着穴(吸着部)76が設けられている。試料Pの下面PBは吸着穴76を介して吸着保持される。流路91の一端部はバキューム装置90に接続しており、他端部は分岐して分岐流路91Bとなっている。そして、分岐流路91Bが吸着穴76のそれぞれに接続されている。分岐流路91Bのそれぞれには、吸着穴76を介した単位時間当たりのガス吸引量を調整するための弁92が設けられている。弁92の動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは弁92のそれぞれの動作を制御することにより、吸着穴76それぞれによる試料Pに対する吸着力を個別に設定可能となっている。
【0077】
第2支持部72は、凸状部材73の支持面75とは異なる部分、本実施形態では、ベース部材74の上面及び凸状部材73の側面に接続するに設けられている。そして、複数の凸状部材73と第2支持部72とを接続するようにして、第1支持部71と第2支持部72とが連結されている。ここで、本実施形態では、第2支持部72は凸状部材73の側面の高さ方向中央部より下方に接続されている。したがって、図24(a)に示すように、凸状部材73の支持面75で試料Pを支持した際、第1支持部71の凸状部材73と第2支持部72と試料Pとの間で空間95が形成される。
【0078】
第1、第2支持部71、72は互いに異なる材料により形成されている。第1支持部71を形成する第1の材料は、第2支持部72を形成する第2の材料より熱伝導率の大きい材料である。また、第2の材料は、第1の材料より膨張率の小さい材料である。本実施形態において、第1支持部71はアルミニウムで形成されており、第2支持部72はセラミックスで形成されている。アルミニウムは高い熱伝導率を有する材料であり、セラミックスは低い膨張率を有する材料である。なお、第1,第2の材料は、アルミニウム及びセラミックスに限ることなく所望の機能を有する材料を用いることができる。
【0079】
試料ホルダPHに保持された試料Pに対して照射光ELが照射されると、試料Pは照射光ELの照射熱により温度上昇する。ここで、試料Pは高い熱伝導率を有する第1支持部71に接続されているので、試料Pの熱は第1支持部71の凸状部材73に素早く伝達(吸収)される。これにより、試料Pは過剰に加熱せず、したがって大きく熱変形しない。
【0080】
第1支持部71の凸状部材73に伝達した試料Pの熱はベース部材74まで伝達する。凸状部材73を熱が伝達することにより、第1支持部71に接続している第2支持部72にも熱が伝達するが(換言すれば、試料Pの熱が第1支持部71を介して第2支持部72に伝達するが)、第2支持部72は膨張率の低い材料により形成されているため、大きく膨張(変形)しない。そして、伝達する熱により凸状部材73は径方向に熱膨張しようとするが、凸状部材73の周囲はほとんど熱膨張しない第2支持部72で囲まれているため、凸状部材73の熱膨張は阻止される。したがって、第1、第2支持部71、72からなる試料ホルダPH全体は大きく熱変形しない。
【0081】
第1支持部71は試料Pを複数の凸状部材73で支持する構成であり、本実施形態においては、試料Pの下面PBのうち支持面75に支持される総面積が、支持面75に支持される以外の部分より小さく設定されている。したがって、仮に試料ホルダPH(凸状部材73)が熱変形しても、試料Pに対する影響を少なくすることができる。すなわち、凸状部材73の径(支持面75の面積)が大きいと熱膨張量(熱変形量)が大きくなるため、試料Pの下面PBを大きな支持面75を有する第1支持部71で支持した場合、試料Pは熱膨張する凸状部材73により水平方向へ引っ張られてしまい、歪み等の変形を発生する場合がある。しかしながら、試料Pの下面PBを小さな支持面75を有する凸状部材73で支持することにより、仮に凸状部材73が熱膨張しても、各凸状部材73の熱膨張量はそれぞれ小さいので、試料Pに対する水平方向への引っ張り力を小さくすることができる。
【0082】
また、試料Pの下面PBを小さい支持面75を有する凸状部材73で支持したことにより、第1の試料Pを熱処理した後、この第1の試料Pを試料ホルダPHからアンロードし、第2の試料Pを試料ホルダPHにロードした際、第1の試料Pを露光処理した際に試料ホルダPH(凸状部材73)に蓄えられた熱の第2の試料Pに対する伝達量を抑えることができる。
【0083】
ところで、結晶の生成位置や成長方向を良好に規定するために、試料ステージPSTの位置制御を精度良く行う必要があり、特に、移動する試料ステージPSTの直交度(真直度)を良好に補正する必要がある。ここで、直交度とは、2次元平面内(XY平面内)で移動する試料ステージPSTの、このXY平面内における基準座標系に対するずれ量である。例えば、試料ステージPST上に設けられている移動鏡が理想位置に対してずれて設置されたり、何らかの原因で移動鏡の反射面が湾曲している等、移動鏡の反射面の平坦度や傾きに起因して、XY平面内を移動する試料ステージPSTの真の位置を干渉計で計測できない状況が生じ、この場合、直交度誤差が生じる。直交度誤差が生じた場合、結晶の生成位置や成長方向を精度良く制御することが困難になる。そこで、移動する試料ステージPSTの直交度誤差を低減するために試料ステージPSTの位置計測を精度良く行う必要がある。
【0084】
図25はXY平面内を移動する試料ステージPSTの位置計測を行う位置計測装置150の一実施形態を示す模式図である。図25において、試料ステージPST上にはX移動鏡113X及びY移動鏡113Yが設けられ、これら各移動鏡113X、113Yに対向する位置にはレーザ干渉計114X、114Yがそれぞれ設けられている。また、図25中、試料ステージPSTの+Y側端部には第1撮像素子151が設けられ、第1撮像素子151に対して−X方向に離れた位置には、計測光を射出する投光部153及び第1撮像素子151とは別の第2撮像素子152が一体で設けられている。投光部153は第1撮像素子151に対して計測光を投射可能であるとともに、試料ステージPST上のX移動鏡113Xに対しても計測光を投射可能である。X移動鏡113Xに投射された計測光の反射光は第2撮像素子152に受光されるようになっている。ここで、投光部153は、基準座標系のX軸と平行に計測光を射出する。
【0085】
次に、図26を参照しながら、計測装置150の動作について説明する。まず、基準座標系のX軸に対する直交度誤差を計測する手順について説明する。図26(a)に示すように、計測装置150の投光部153は、X軸方向に移動する試料ステージPSTの第1撮像素子151に対して計測光を投射する。ここで、試料ステージPSTに直交度誤差がある場合、投光部153より射出された計測光は、第1撮像素子151の検出領域の基準位置に対してΔyだけずれた位置に照射される。第1撮像素子151の検出結果は制御装置CONTに出力され、制御装置CONTは前記ずれ量Δyから直交度誤差を求めることができる。そして、求めた直交度誤差に基づいて、制御装置CONTは試料ステージPSTの移動を補正するための補正量を求めることができる。
【0086】
次に、基準座標系のY軸に対する直交度誤差を計測する手順について説明する。ここで、X移動鏡113XがY軸に対して角度θ傾いているとする。図26(b)に示すように、試料ステージPSTのX移動鏡113Xと投光部153とを対向させた状態で、投光部153よりX移動鏡113Xに対して計測光を投射する。このときの試料ステージPST(X移動鏡113X)のX軸方向の位置をx1とする。X移動鏡113Xで反射した計測光の反射光は、第2撮像素子152に受光される。この反射光の第2撮像素子152によるY軸方向における検出位置をt(x1)とする。次いで、図26(b)に示した状態から試料ステージPSTを+X方向に移動して図26(c)に示す状態にし、この状態で投光部153より計測光をX移動鏡113Xに投射する。このときの試料ステージPST(X移動鏡113X)のX軸方向の位置をx2とする。X移動鏡113Xで反射した計測光の反射光は第2撮像素子152に受光される。この反射光の第2撮像素子152によるY軸方向における検出位置をt(x2)とする。以上より、
θ(y)=〔(t(x1)−t(x2)〕/(x1−X2) …(1)
となる。Y軸方向に関して試料ステージPSTを移動して同様の計算を行い、
average〔θ(y)〕 …(2)
が、Y軸に対する直交度誤差の平均値である。
θ=dx/dy …(3)
なので、
x(y)=∫θ(y)dy …(4)
により、Y軸に対する直交度を求めることができる。
【0087】
以上の方法により、投光部153から射出した1本の光束(計測光)を基準として直交度(真直度)を計測することができる。なお、この直交度計測動作は、試料ステージPSTに対して試料Pを交換する毎、あるいはロット毎など、所定の時間間隔毎に行うことができる。
【0088】
上記各実施形態において、試料ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもいい。また、ステージは、ガイドに沿って移動するタイプでもいいし、ガイドを設けないガイドレスタイプでもよい。
【0089】
ステージの駆動装置として平面モ−タを用いる場合、磁石ユニット(永久磁石)と電機子ユニットのいずれか一方をステージに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットの他方をステージの移動面側(ベース)に設ければよい。
【0090】
試料ステージPSTの移動により発生する反力は、特開平8−166475号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。マスクステージMSTの移動により発生する反力は、特開平8−330224号公報に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
【0091】
以上のように、本願実施形態の熱処理装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから熱処理装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから熱処理装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの熱処理装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、熱処理装置全体としての各種精度が確保される。なお、熱処理装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0092】
上記p−Siを含む半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスクを製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の熱処理装置によりマスクのパターンを試料に露光する試料処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、ELA法に基づいてa−Siからp−Siを生成する際、核の生成位置を制御し、結晶の大粒径化が可能であるため、良好な移動度を有するなど所望の性能を有するシリコン結晶を容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱処理方法の概念を示す説明図である。
【図2】本発明の熱処理方法の概念を示す説明図である。
【図3】本発明の熱処理方法の概念を示す説明図である。
【図4】本発明の熱処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係るマスクの一実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の熱処理方法の一実施形態を示す図である。
【図7】シリコン結晶が成長する様子を示す模式図である。
【図8】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図9】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図11】シリコン結晶が成長する様子を示す模式図である。
【図12】本発明に係るマスクの他の実施形態を示す平面図である。
【図13】シリコン結晶が成長する様子を示す模式図である。
【図14】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図15】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図16】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図17】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図18】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図19】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図20】本発明の熱処理方法の他の実施形態を示す図である。
【図21】本発明の熱処理装置の他の実施形態を示す概略斜視図である。
【図22】図21の概略構成図である。
【図23】熱処理装置の動作の一例を示す模式図である。
【図24】試料ステージの一実施形態を示す模式図である。
【図25】試料ステージの位置計測装置の一例を示す図である。
【図26】試料ステージの位置計測装置の動作の一例を示す図である。
【符号の説明】
100…光源装置、101…照明光学系、A1…第1の領域、
A2…第2の領域、C1〜C20…遮光部(スリット状遮光部)、
CONT…制御装置、E1〜E20…円形状遮光部、EL…照射光(光束)、
H1、H2…第2遮光部、IL…照射装置、
L12〜L20…ライン状遮光部、M…マスク、MST…マスクステージ、
P…試料、PA1〜PA20…パターン形成領域、PL…投影光学系、
PST…試料ステージ、R1…第1の光強度勾配(第1の勾配)、
R2…第2の光強度勾配(第2の勾配)、S…熱処理装置、X…所定方向
Claims (21)
- 試料に光束を照射する工程を有する熱処理方法において、
前記光束を前記試料の表面の第1の領域に対して所定方向に関して第1の光強度勾配で照射するとともに、前記試料の表面の前記第1の領域に連続する第2の領域に対して前記所定方向に関して前記第1の光強度勾配より緩やかな第2の光強度勾配で照射することを特徴とする熱処理方法。 - 前記第1の光強度勾配における最大光強度と前記第2の光強度勾配における最小光強度とは略同じであることを特徴とする請求項1記載の熱処理方法。
- 前記第2の領域は前記第1の領域より大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の熱処理方法。
- 前記試料の表面で前記所定方向と交差する方向の光強度に分布が生じるように前記光束を照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の熱処理方法。
- 前記所定方向と交差する方向の光強度の分布を前記第1の領域を含む領域に設けることを特徴とする請求項4記載の熱処理方法。
- 前記試料にはアモルファスシリコン膜が形成されており、前記光束を照射する工程により、前記アモルファスシリコン膜にシリコン結晶を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の熱処理方法。
- 基板上に設けられたアモルファスシリコン膜に対して光束を照射する工程を有する熱処理方法において、
前記光束を前記アモルファスシリコン膜の第1の領域に対して所定方向に関して第1の光強度勾配で照射するとともに、前記アモルファスシリコン膜の前記第1の領域に連続する第2の領域に対して前記所定方向に関して前記第1の光強度勾配より緩やかな第2の光強度勾配で照射することを特徴とする熱処理方法。 - 前記アモルファスシリコン膜上で前記所定方向と交差する方向の光強度に分布が生じるように前記光束を照射することを特徴とする請求項7記載の熱処理方法。
- マスクに光束を照射し、該マスクを通過した前記光束を試料に照射する工程を有する熱処理方法において、
前記光束を前記試料の表面の第1の領域に対して所定方向に関して第1の光強度勾配で照射するとともに、前記試料の表面の前記第1の領域に連続する第2の領域に対して前記所定方向に関して前記第1の光強度勾配より緩やかな第2の光強度勾配で照射することを特徴とする熱処理方法。 - 前記マスクに対して前記試料を相対移動しながら、前記試料上で前記第1及び第2の光強度勾配を生成することを特徴とする請求項9記載の熱処理方法。
- 前記マスク上には前記所定方向に並んだ複数のパターン形成領域が設けられており、前記複数のパターン形成領域のそれぞれの遮光部の割合は異なる値に設定されており、
前記マスクに対して前記試料を前記所定方向に相対移動しながら前記光束を照射し、前記試料上で前記複数のパターン形成領域のそれぞれのパターンを重ね合わせることで、該試料上で前記第1及び第2の光強度勾配を生成することを特徴とする請求項9記載の熱処理方法。 - 前記マスクに対して前記試料を前記所定方向に略等速で移動し、前記複数のパターン形成領域のそれぞれのパターンを前記試料上で重ね合わせることを特徴とする請求項11記載の熱処理方法。
- 前記遮光部は前記所定方向と交差する方向に延びるスリット状遮光部であり、前記複数のパターン形成領域のそれぞれについて前記スリット状遮光部の幅が異なる値に設定されていることを特徴とする請求項11又は12記載の熱処理方法。
- 前記遮光部は略円形状遮光部であり、前記複数のパターン形成領域のそれぞれについて前記円形状遮光部の径が異なる値に設定されていることを特徴とする請求項11又は12記載の熱処理方法。
- 前記マスクを通過した光束は投影光学系を介して前記試料上に投影され、前記マスクのパターン形成領域のそれぞれに前記試料上で解像しない程度の線幅のライン状遮光部を複数設け、前記複数のパターン形成領域のそれぞれについて前記ライン状遮光部の数がそれぞれ異なる値に設定されていることを特徴とする請求項11又は12記載の熱処理方法。
- 前記マスクを通過した光束は投影光学系を介して前記試料上に投影され、前記投影光学系の像面に対する前記試料及び前記マスクの少なくともいずれか一方の位置を調整することで前記第2の光強度勾配を生成することを特徴とする請求項11又は12記載の熱処理方法。
- 前記投影光学系は複数並んで設けられていることを特徴とする請求項15又は16記載の熱処理方法。
- 前記マスク上に前記所定方向と交差する方向に所定間隔で第2遮光部が設けられていることを特徴とする請求項9〜17のいずれか一項記載の熱処理方法。
- 前記試料は、基板上に形成されたアモルファスシリコン膜であることを特徴とする請求項9〜18のいずれか一項記載の熱処理方法。
- マスクを支持するマスクステージと、
試料を支持する試料ステージと、
前記マスクに光束を照射する照射装置と、
前記マスクに対して前記試料を所定方向に相対移動しながら、前記マスクを通過した前記光束を前記試料の表面の第1の領域に対して所定方向に関して第1の光強度勾配で照射するとともに、前記試料の表面の前記第1の領域に連続する第2の領域を前記所定方向に関して前記第1の光強度勾配より緩やかな第2の光強度勾配で照射する制御装置とを備えたことを特徴とする熱処理装置。 - マスクを支持するマスクステージと、
試料を支持する試料ステージと、
前記マスクに光束を照射する照射装置と、
前記マスクに対して前記試料を所定方向に相対移動しながら、前記マスクを通過した前記光束を前記試料の表面の第1の領域に対して所定方向に関して第1の勾配の積算光量で照射するとともに、前記試料の表面の前記第1の領域に連続する第2の領域を前記所定方向に関して前記第1の勾配より緩やかな第2の勾配の積算光量で照射する制御装置とを備えたことを特徴とする熱処理装置。
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JP2003187306A JP2005026285A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | 熱処理方法及び熱処理装置 |
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JP2007094389A (ja) * | 2005-09-27 | 2007-04-12 | Samsung Electronics Co Ltd | 表示基板の製造方法及びこれを製造するための製造装置 |
JP2007221062A (ja) * | 2006-02-20 | 2007-08-30 | Sharp Corp | 半導体デバイスの製造方法および製造装置 |
WO2020137400A1 (ja) * | 2018-12-27 | 2020-07-02 | 株式会社ブイ・テクノロジー | レーザアニール装置 |
-
2003
- 2003-06-30 JP JP2003187306A patent/JP2005026285A/ja not_active Withdrawn
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