JP2005026143A - 空気電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】内部抵抗を低く抑え、負極ゲル充填での作業性を確保し、乾燥環境でのパルス特性や維持率の向上可能な信頼性の高い空気電池を提供する。
【解決手段】正極活物質となる酸素を還元する正極触媒シートと、負極活物質となる金属粉末とゲル化剤との混合物にアルカリ電解液を注入してなるゲル状負極と、を有する空気電池において、正極触媒シートの厚さが0.15〜0.25mm、当該触媒シートのテフロン割合が20〜30質量%、負極金属粉末に106μm以下の粒径が少なくとも10質量%以上含み、さらにアクリル系吸水性ポリマーの粒径を10〜150μmとすることで、重負荷特性や乾燥開封維持率の高い空気電池を提供できる。
【選択図】 図1
【解決手段】正極活物質となる酸素を還元する正極触媒シートと、負極活物質となる金属粉末とゲル化剤との混合物にアルカリ電解液を注入してなるゲル状負極と、を有する空気電池において、正極触媒シートの厚さが0.15〜0.25mm、当該触媒シートのテフロン割合が20〜30質量%、負極金属粉末に106μm以下の粒径が少なくとも10質量%以上含み、さらにアクリル系吸水性ポリマーの粒径を10〜150μmとすることで、重負荷特性や乾燥開封維持率の高い空気電池を提供できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気電池に係わり、詳しくは負荷特性を改善した空気電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気電池は空気中の酸素を正極活物質としており、同型のボタン電池と比べて、正極合剤を充填する必要がなく大きな放電容量が得られるため、アルカリ電解液を用いた一次電池で、最もエネルギー密度が高いという特徴を備えている。しかし、正極缶に空気を取り込む空気孔を設けているため酸素以外の大気中の成分である二酸化炭素や水蒸気などの影響を受けやすい。つまり、他のボタン型アルカリ電池に比べて、維持率が低いことが問題となっている。また近年、小型機器の多機能化やデジタル化に伴い、空気電池の高出力、特に大電流パルス対応への要求も高まっている。
【0003】
空気電池の電流パルス特性を向上させるために、正極活物質であるマンガン酸化物に代えて、作動電圧を向上させるようにした文献は多数知られている。また、マンガン酸化物を代えて作動電圧を向上させるのではなく、素電池の内部抵抗を低下させるために、例えば特許文献1に記載されているように、触媒マットの厚さを薄肉化することで、内部抵抗を低下させて、IR抵抗分に相当する電圧ドロップを減少させることも多数知られている。
【0004】
しかしながら、触媒マットの厚さを薄肉化すると、乾燥条件化で短寿命が発生しやすいことがわかった。これは、触媒シートが薄くなると、三相界面(電解液 liquid 、触媒 solid 、酸素 gas )の存在確率が減り、空気電池は外気の環境を受けやすいため、特に乾燥条件下では電池内の電解液が蒸発し、著しく三相界面の低下することによって、放電ができなくなると考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−164262号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、空気極を薄肉化することで、内部抵抗を低下させると共に、乾燥条件下で電池の短寿命の発生を抑えるために、鋭意検討した結果、セパレータと負極組成を変更することで、空気極・負極ゲル内の電解液の保液性を向上させる必要がある。また負極活物質である亜鉛も、パルス的な大きい電流値を得るために、亜鉛粉を適当に細かい粒径のものを混ぜ合わせ、亜鉛粉の表面積を大きくすることで改善した報告例も多数あるが、負極ゲルに細かい亜鉛粉を使用すると、作業性の低下が予想され、ゲル化剤およびゲルの添加量を検討する必要がある。
【0007】
また、触媒シートを薄肉化するために、シート成形性の低下をテフロン量の割合を増加することによって成形性を確保できることが分かった。ただ、テフロン量が多いと、触媒シートの濡れ性が低下するので、透湿度の高いセパレータとしてセロハンを組み合わせて、触媒シートの濡れ性を向上させる必要がある。
【0008】
微粉亜鉛を用いた負極ゲルは、乾燥環境でのパルス特性や開封特性の維持率は向上したが、ゲル充填での作業性は低下した。これは、微粉亜鉛による亜鉛同士の接触抵抗が大きくなり、流動性の低下や、ゲル化剤の粘性が強すぎたためである。従って、パルス特性で効果のあった微粉亜鉛を用いるとともに、ゲル化剤の種類・添加量の最適化をする必要がある。なお、ゲル化剤の調整は、亜鉛と電解液が分離しないように調整する必要がある。
【0009】
また、空気電池は空気孔を設けるため外気の影響を受けやすく、水酸化カリウム水溶液を用いると、多湿下では水分の吸収、乾燥下では水分の蒸発が起こる。つまり、負極ゲル内の電解液を保持させるために、架橋型高分子ゲルの添加量と粒径について検討する必要がある。
【0010】
次に、本発明の空気電池が適用される図1を参照してその構造を説明する。
図1に示すように、本発明の空気電池は、酸素を取り入れる空気孔1を有する底面に段部を設けた正極ケース2の内面上に、拡散紙3、撥水膜4、正極触媒層5及びセパレータ6が収納されている。正極触媒層5は活性炭、マンガン酸化物、導電材、およびPTFE粉(以下テフロンとする)からなる正極触媒粉をニッケルメッキされたステンレス製ネットの正極集電体7に圧着充填により一体化して正極触媒層とし、さらに、正極触媒シートと圧着する撥水膜4とは別の撥水膜8がセパレータ6と反対面に圧着されて構成されている。セパレータ6の上部には絶縁ガスケット9を介してニッケル−ステンレス−銅の三層クラッド材を成形加工した負極ケース10が配されており、通常は絶縁ガスケット9と負極ケース10との間には苛性カリ電解液の漏液防止のために、ポリアミド樹脂等のシール剤が塗布されている。さらに負極ケース10内部にはゲル状の負極活物質11が充填され、セパレータ6に接している。なお、空気電池は、主に補聴器用に用いられているが、エネルギー密度の高い空気電池の維持率を向上させることができると、補聴器以外にも新たな用途が考えられる。
【0011】
この正極触媒粉は、活性炭、マンガン酸化物、導電材、テフロンからなる合剤で、この合剤をローラで加圧してシート状に成形したものを触媒マットと呼ぶ。空気極を薄肉化することで、裂けや切れなどが生じてしまい、シート状に成形することができない。しかし、結着剤であるテフロンを多くすることで、シートの薄肉成形性は良くなることが分かっている。黒鉛の割合を多くすることでも同様に薄肉成形性はよくなる効果がある。
【0012】
また、触媒マットを集電体となるネットと圧着充填したものを触媒シートと呼び、触媒シートをテフロンと圧着した空気極とは区別している。
また、亜鉛のデンドライトによる内部ショート防止のため、セパレータと合わせてセロハンや微多孔膜を使用する。セロハンを合わせることで(保水性が高く、イオン移動が容易なものが良い)、負荷特性を改善できる。これは、微多孔膜に比べて、保液性がよいためである。
【0013】
さらに、短寿命を起こした空気電池の負極を分析した結果、亜鉛の自己反応(亜鉛の酸化)が進み、パルス的な放電ができなくなっていた。これは亜鉛表面が酸化(不動態化)、反応阻害物の堆積(大気中の二酸化炭素との反応により炭酸カリウムの生成)、電解液の濃度の低下、電解液蒸発による液枯れによる等であることが分かった。
【0014】
そこで、亜鉛粉に細かい粒径を多く含ませることで、亜鉛表面積を大きくして反応性を高くした。また、電解液を保持するために、ゲル化剤も併わせて検討した。電池用として使われているゲル化剤は、直鎖型高分子(カルボキシビニルポリマー)、架橋型高分子(ポリアクリル酸、またはその塩)などが挙げられる。直鎖型高分子の代表例であるカルボキシビニルポリマーは、アルカリ電解液に溶解するため電解液を保持できない。架橋型高分子の代表例であるポリアクリル酸などは、架橋構造をとるため架橋内に電解液を取り込むため電解液を保持できる。つまり、架橋型高分子を用いることで、環境の影響を受けにくく、開封時でも電池の維持率が良くなることが予想される。
【0015】
また両ゲル化剤を同量の電解液に溶かし、粘度を測定してみると、カルボキシビニルポリマーの方が、ポリアクリル酸に比べて約2〜3倍粘度が高い。つまり、イオン移動から考えると、カルボキシビニルポリマーの添加量は、なるべく少なく調整した方がよい。なお、今回検討したゲル化剤以外でも、ゲル化剤の粘度や分子構造などを考慮することで、同じ効果が得られる。
なお、ここでは負極活物質の粒径106μmの亜鉛を10%以上含むものを微粉亜鉛、粒径106μmの亜鉛を5%以下含むものを通常亜鉛と定義する。
【0016】
本発明は、上記情況に対処するためになされたもので、その課題は、内部抵抗を低く抑えて、負極ゲル充填での作業性を確保し、乾燥環境でのパルス特性や維持率を向上させ、信頼性の高い空気電池を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、正極活物質となる酸素を還元する正極触媒シートと、負極活物質となる金属粉末とゲル化剤との混合物に、アルカリ電解液を注入してなるゲル状負極と、を有する空気電池において、正極触媒シートの厚さが0.15〜0.25mm、触媒シートのテフロン割合が20〜30質量%、負極金属粉末に106μm以下の粒径が少なくとも10質量%以上含まれており、またアクリル系吸水性ポリマーの粒径が10〜150μmであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気電池において、アルカリ電解液に対して、前記ゲル化剤を2〜3質量%添加したことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の空気電池において、アクリル系吸水性ポリマーの代りに、アクリル系吸水ポリマーの平均粒径が50〜150μmで、このアクリル系吸水性ポリマーを電解液に対して、0.5〜1.2質量%添加したものをゲル化剤としたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の空気電池において、隔離材にセロハンを使用したことを特徴とする。
【0019】
次に、空気電池の電池特性および開封特性の維持率を向上させる方法について説明すると、まず正極触媒マットと負極亜鉛粉とゲル化剤とを組み合わせることで、水分蒸発を抑える必要がある。
【0020】
次に、正極触媒マットを薄肉化するために、テフロン量の検討を行った。触媒マットの成形では、テフロン量の割合が多いほどシート成形はよいが、テフロン量が多いと撥水性が向上し、空気極内の濡れ性が低下すると予想されるので、セパレータをセロハンに変更することで、乾燥環境での触媒シートの濡れ性を従来並みにする。負極活物質に使用する亜鉛粉は、微粉亜鉛と通常亜鉛について検討した。
【0021】
また、カルボキシビニルポリマーは増粘性が強いが、アルカリ電解液に溶解するため、電解液を保持する効果がほとんどないと考えられる。なお、カルボキシビニルポリマーは溶解するため、粒径は検討しない。
【0022】
次に、アクリル系吸水性ポリマーに架橋型ポリアクリル酸を用いて、粒径が10μm以下、10〜50μm、50〜100μm、150μm以上の4種類のものを用いた。粒径の大きさによって、電解液の液保持性、電池特性が異なる。すなわち、粒径が小さいと膨潤性が小さいため液保持性が悪い。また粒径が大きいと、膨潤性が大きく液保持性は良いが、貯蔵時に内部抵抗が上昇しやすい傾向にあると考えられる。
なお、ここではポリアクリル酸を用いたが、ポリアクリル酸の中和物や、ナトリウム塩を用いても、ほぼ同じ効果が得られることが分かった。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1は本発明が適用されるボタン型空気電池の半分を切除した側面図、図2は図1の撥水膜部分の斜視図、図3は図2の撥水膜部分の断面図である。
【0024】
図に示すように、本実施形態の空気電池は、空気孔1を有する底面に段部を設けた正極ケース2の内側部に、拡散紙3、撥水膜8、空気極およびセパレータ6を収納している。空気極は活性炭、テフロン、導電剤、マンガン酸化物からなる正極触媒粉を、ニッケルメッキにされたステンレスネット製の正極集電体7に圧着充填により一体化して正極触媒層5とする。さらに正極触媒層5に圧着する撥水膜とは別の撥水膜が該セパレータと反対面に配置される。セパレータの上部には絶縁ガスケット9を介してニッケル−ステンレス−銅の三層クラッド材を成形加工した負極ケース10が配しており、通常は絶縁ガスケット9と負極ケース10との間には苛性カリ電解液の漏液防止をするためポリアミド樹脂等のシール材が塗布されている。さらに、負極ケース10の内部にはゲル状の負極活物質11が充填され、セパレータ6が接している。ここで好ましく用いられる負極活物質11は、安価な亜鉛が用いられているが、他の金属も使用できることは勿論である。
【0025】
触媒シートの合剤成分(活性炭、テフロン、導電剤、マンガン酸化物)において、結着剤となるテフロン量の割合を検討することで、薄肉化した触媒マットの成形性と、電池特性を確認する必要がある。また、セパレータにセロハンと微多孔膜を合わせたときの電池特性について検討した。なお、触媒マットの合剤調整1バッチを2kgとしたときの、テフロンの配合量を割合として表してある。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に触媒シートの厚さとテフロンの配合割合での空気極の成形性を示す。テフロンの配合割合が15%であると、シートの成形が著しく低下する。またテフロン量の割合が多いと、繊維化が進みすぎて、加圧ローラに粉体が付着するため、連続性には適当でなかった。表1より分かるように、テフロンの割合が25%中心であると成形性および触媒シートの厚さも0.15〜0.30mmまでの高い範囲で調整ができる。しかし、触媒シートを0.1mmにまで薄くすることはできなかった。
【0028】
また、触媒シートを製造するには、触媒マットと集電体ネットを圧着する。ここで用いた集電体ネットは、t=0.2mmであるが、集電効果が得られれば、これよりネットの厚さが薄くてもよい。集電体のメッシュや線径も、t=0.2mmに調整できるものであれば何でもよい。
【0029】
また、触媒シートと集電体ネットを圧着する際は、触媒シートと空気極の厚さが変わらないように調整した。ここでは、触媒マットのテフロン割合は25%で、空気極の厚さとセパレータの影響を確認した。
【0030】
負極ゲルには、微粉亜鉛にカルボキシビニルポリマーを亜鉛に対して、0.5質量%添加してドライ攪拌した後、電解液を亜鉛に対して25質量%加えたものを用いた。これらの条件で空気電池を作成した。
【0031】
(実施例1)
厚さが0.15mmである空気極、セパレータとセロハンを合わせたものを用いた。また、負極ゲル亜鉛には、亜鉛粉は106μm以下の粒径が少なくとも10%以上含まれているものを用い、ゲル化剤(カルボキシビニルポリマー)を亜鉛に対して0.5質量%を添加し、ドライ攪拌した後、電解液を亜鉛に対して25質量%添加した負極ゲルを用いて空気電池を作成し、実施例1とした。
【0032】
(実施例2)
厚さが0.20mmである空気極を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例2とした。
【0033】
(実施例3)
厚さが0.25mmである空気極を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例3とした。
【0034】
(実施例4)
厚さが0.30mmである空気極を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例4とした。
【0035】
(従来例)
触媒シートに占めるテフロンの割合が、30%で、かつ厚さが0.25mmである空気極、セパレータには微多孔膜を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、従来例とした。
【0036】
(比較例1)
触媒シートに占めるテフロンの割合が、25%で、かつ厚さが0.15mmである空気極、セパレータには微多孔膜を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例1とした。
【0037】
(比較例2)
厚さが0.20mmである空気極を用いた以外、比較例1と同様に空気電池を作成し、比較例2とした。
【0038】
(比較例3)
厚さが0.25mmである空気極を用いた以外、比較例1と同様に空気電池を作成し、比較例3とした。
【0039】
評価内容は、上記の各実施例、従来例及び各比較例とも、シールテープを剥いで20℃,30%RHの環境で、10day放置した後、20mA放電を行った。その結果を表2にまとめた。
【0040】
【表2】
【0041】
表2より、触媒シートの厚さを薄くすることで、内部抵抗が低下することが分かった。また、同じ触媒シートの厚さであれば、セロハンを用いると内部抵抗が低くなることが確認できた。これは、セロハンが電解液に濡れやすいために、正極に電解液が吸収されて内部抵抗が低下したと考えられる。
【0042】
しかし、長期放置において、セロハンが従来の微多孔膜(材質 PP;ポリプロピレン)に比べて、負極ゲル中の電解液を吸いやすくなったため、ゲル中の電解液量が低下し、亜鉛の利用率が低下した。その結果、実施例1〜4では、内部抵抗は下がったにも関わらず、放電時間が低下した。
【0043】
機器の電池に空気電池を使用したとき、長期にわたって放置されることが考えられる。つまり、放置での未使用時の電池特性を維持する必要がある。表2で示したように、乾燥環境下では、ドライアップによる水分の蒸発による影響が大きいと考えられる。
【0044】
そこで、保水性に優れたアクリル系高吸水性ポリアクリル酸を用いた。ポリアクリル酸の添加量は、電解液に対する割合である。また、カルボキシビニルポリマーの添加量は、亜鉛に対して添加した割合である。また、負極ゲルのゲル化剤を検討して、瞬間的なパルス電流を流すのに有利である細かい亜鉛粉を使用するとともに、負極ゲル中の改善を行う。
なお、空気極の触媒シートのテフロン割合が25%で、厚さが0.2mmを用いて、セパレータには濡れ性が良く、内部抵抗が低下したセロハンを使用した。
【0045】
(実施例5)
ポリアクリル酸の粒径が、10〜50μm以下であるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、微粉亜鉛粉を用いて、亜鉛粉と電解液と混合した負極ゲルを用いて実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例5とした。
【0046】
(実施例6)
ポリアクリル酸の粒径が、50〜100μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例6とした。
【0047】
(実施例7)
ポリアクリル酸の粒径が、100〜150μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例7とした。
【0048】
(実施例8)
ポリアクリル酸の粒径が、50〜100μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して2質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例8とした。
【0049】
(比較例4)
ポリアクリル酸の粒径が、50〜100μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して4質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例4とした。
【0050】
(比較例5)
ポリアクリル酸の粒径が、100〜150μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、亜鉛粉末の106μm粒径が少なくとも10%以上含まれている亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例5とした。
【0051】
(比較例6)
ポリアクリル酸の粒径が、10μm以下であるゲル化剤を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例6とした。
【0052】
(比較例7)
ポリアクリル酸の粒径が、150μm以上であるゲル化剤を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例7とした。
【0053】
評価内容は、実施例5〜8及び比較例4〜7とも、シールテープを剥いで20℃、30%RHの環境で、10day放置した後、内部抵抗の測定、20mA放電とした。その結果を表3にまとめた。
【0054】
【表3】
【0055】
ゲル化剤のポリアクリル酸の粒径が大きいと、内部抵抗の上昇しやすい傾向で、乾燥条件である30%RH−10dayでの放電時間が従来より長くなった。これは、カルボキシビニルポリマーはゲルの増粘性では優れているが、電解液の保液性ではポリアクリル酸の方がよいためである。つまり、電解中の水分の乾燥が抑えられたものと考える。また、ポリアクリル酸を用いたことによる亜鉛同士の接触が良くなったものと考えられる。
【0056】
またポリアクリル酸の粒径では、ゲル化粒径が10μm以下では、保液が不充分であり電解液の蒸発によって、内部抵抗の上昇が起きたと考えられる。また、ゲル化剤の粒径が150μm以上では、電解液の保持は良かったが、ゲル化剤(ポリアクリル酸が不溶のため)が空気極やセパレータ近傍に堆積して、内部抵抗が上昇するものと考えられる。
【0057】
しかし、ゲル化剤としてポリアクリル酸のみでは粘性が弱く、材料を多量に消費するため、他のゲル化剤との混合を検討する必要がある。そこで、使用材料費を低減させるとともに、増粘性の強いカルボキシビニルポリマーを少量添加して試作評価をした。
【0058】
この結果、ポリアクリル酸が少ないと離液し、多過ぎるとゲルが硬く作業性に問題があった。また、実施例の結果から、添加量は2〜3質量%が最適であることが分かった。この試作ではポリアクリル酸の粒径は、最も特性の良かった50〜100μmを使用した。増粘剤にカルボキシビニルポリマーをゲル化剤とした。
【0059】
【表4】
【0060】
表4との配合比で、ゲル状態を確認した。ゲル化剤の添加量が少ないと、負極ゲル攪拌後、亜鉛粉と電解液との離液が発生する(カルボキシビニルポリマーが少ないと離液しやすい)。また、ゲル化剤の添加量が多いと、ゲルが固くなる傾向にあり、ゲル充填でのノズルの詰まりが多発すると考えられる。
【0061】
次に、ポリアクリル酸とカルボキシビニルポリマーの添加量をそれぞれ変えて、すなわち表4の配合で電池を作成して、電池組立1day後とシールテープ開封後の30%RH−10day後の20mA放電維持率を調べた。表5に維持率の結果を示す。
【0062】
【表5】
【0063】
このように、負極ゲルのゲル化剤をポリアクリル酸とカルボキシビニルポリマーを適当な配合にして、ポリアクリル酸単体で用いたときに比べて、ゲル化剤の使用量を低減できるとともに、開封での維持率も同じレベルであることが確認できた。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、正極触媒シート及び負極ゲル組成を、最適にすることで、重負荷特性や乾燥開封維持率の高い空気電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のボタン型空気電池の一部を切除した側面図。
【図2】図1のボタン型空気電池の撥水膜部分の斜視図。
【図3】図2の撥水膜部分の断面図。
【符号の説明】
1…空気孔、2…正極ケース、3…拡散紙、4…5と圧着する撥水膜、5…正極触媒層、6…セパレータ、7…正極集電体、8…撥水膜、9…絶縁ガスケット、10…負極ケース、11…負極活物質。
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気電池に係わり、詳しくは負荷特性を改善した空気電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気電池は空気中の酸素を正極活物質としており、同型のボタン電池と比べて、正極合剤を充填する必要がなく大きな放電容量が得られるため、アルカリ電解液を用いた一次電池で、最もエネルギー密度が高いという特徴を備えている。しかし、正極缶に空気を取り込む空気孔を設けているため酸素以外の大気中の成分である二酸化炭素や水蒸気などの影響を受けやすい。つまり、他のボタン型アルカリ電池に比べて、維持率が低いことが問題となっている。また近年、小型機器の多機能化やデジタル化に伴い、空気電池の高出力、特に大電流パルス対応への要求も高まっている。
【0003】
空気電池の電流パルス特性を向上させるために、正極活物質であるマンガン酸化物に代えて、作動電圧を向上させるようにした文献は多数知られている。また、マンガン酸化物を代えて作動電圧を向上させるのではなく、素電池の内部抵抗を低下させるために、例えば特許文献1に記載されているように、触媒マットの厚さを薄肉化することで、内部抵抗を低下させて、IR抵抗分に相当する電圧ドロップを減少させることも多数知られている。
【0004】
しかしながら、触媒マットの厚さを薄肉化すると、乾燥条件化で短寿命が発生しやすいことがわかった。これは、触媒シートが薄くなると、三相界面(電解液 liquid 、触媒 solid 、酸素 gas )の存在確率が減り、空気電池は外気の環境を受けやすいため、特に乾燥条件下では電池内の電解液が蒸発し、著しく三相界面の低下することによって、放電ができなくなると考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−164262号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、空気極を薄肉化することで、内部抵抗を低下させると共に、乾燥条件下で電池の短寿命の発生を抑えるために、鋭意検討した結果、セパレータと負極組成を変更することで、空気極・負極ゲル内の電解液の保液性を向上させる必要がある。また負極活物質である亜鉛も、パルス的な大きい電流値を得るために、亜鉛粉を適当に細かい粒径のものを混ぜ合わせ、亜鉛粉の表面積を大きくすることで改善した報告例も多数あるが、負極ゲルに細かい亜鉛粉を使用すると、作業性の低下が予想され、ゲル化剤およびゲルの添加量を検討する必要がある。
【0007】
また、触媒シートを薄肉化するために、シート成形性の低下をテフロン量の割合を増加することによって成形性を確保できることが分かった。ただ、テフロン量が多いと、触媒シートの濡れ性が低下するので、透湿度の高いセパレータとしてセロハンを組み合わせて、触媒シートの濡れ性を向上させる必要がある。
【0008】
微粉亜鉛を用いた負極ゲルは、乾燥環境でのパルス特性や開封特性の維持率は向上したが、ゲル充填での作業性は低下した。これは、微粉亜鉛による亜鉛同士の接触抵抗が大きくなり、流動性の低下や、ゲル化剤の粘性が強すぎたためである。従って、パルス特性で効果のあった微粉亜鉛を用いるとともに、ゲル化剤の種類・添加量の最適化をする必要がある。なお、ゲル化剤の調整は、亜鉛と電解液が分離しないように調整する必要がある。
【0009】
また、空気電池は空気孔を設けるため外気の影響を受けやすく、水酸化カリウム水溶液を用いると、多湿下では水分の吸収、乾燥下では水分の蒸発が起こる。つまり、負極ゲル内の電解液を保持させるために、架橋型高分子ゲルの添加量と粒径について検討する必要がある。
【0010】
次に、本発明の空気電池が適用される図1を参照してその構造を説明する。
図1に示すように、本発明の空気電池は、酸素を取り入れる空気孔1を有する底面に段部を設けた正極ケース2の内面上に、拡散紙3、撥水膜4、正極触媒層5及びセパレータ6が収納されている。正極触媒層5は活性炭、マンガン酸化物、導電材、およびPTFE粉(以下テフロンとする)からなる正極触媒粉をニッケルメッキされたステンレス製ネットの正極集電体7に圧着充填により一体化して正極触媒層とし、さらに、正極触媒シートと圧着する撥水膜4とは別の撥水膜8がセパレータ6と反対面に圧着されて構成されている。セパレータ6の上部には絶縁ガスケット9を介してニッケル−ステンレス−銅の三層クラッド材を成形加工した負極ケース10が配されており、通常は絶縁ガスケット9と負極ケース10との間には苛性カリ電解液の漏液防止のために、ポリアミド樹脂等のシール剤が塗布されている。さらに負極ケース10内部にはゲル状の負極活物質11が充填され、セパレータ6に接している。なお、空気電池は、主に補聴器用に用いられているが、エネルギー密度の高い空気電池の維持率を向上させることができると、補聴器以外にも新たな用途が考えられる。
【0011】
この正極触媒粉は、活性炭、マンガン酸化物、導電材、テフロンからなる合剤で、この合剤をローラで加圧してシート状に成形したものを触媒マットと呼ぶ。空気極を薄肉化することで、裂けや切れなどが生じてしまい、シート状に成形することができない。しかし、結着剤であるテフロンを多くすることで、シートの薄肉成形性は良くなることが分かっている。黒鉛の割合を多くすることでも同様に薄肉成形性はよくなる効果がある。
【0012】
また、触媒マットを集電体となるネットと圧着充填したものを触媒シートと呼び、触媒シートをテフロンと圧着した空気極とは区別している。
また、亜鉛のデンドライトによる内部ショート防止のため、セパレータと合わせてセロハンや微多孔膜を使用する。セロハンを合わせることで(保水性が高く、イオン移動が容易なものが良い)、負荷特性を改善できる。これは、微多孔膜に比べて、保液性がよいためである。
【0013】
さらに、短寿命を起こした空気電池の負極を分析した結果、亜鉛の自己反応(亜鉛の酸化)が進み、パルス的な放電ができなくなっていた。これは亜鉛表面が酸化(不動態化)、反応阻害物の堆積(大気中の二酸化炭素との反応により炭酸カリウムの生成)、電解液の濃度の低下、電解液蒸発による液枯れによる等であることが分かった。
【0014】
そこで、亜鉛粉に細かい粒径を多く含ませることで、亜鉛表面積を大きくして反応性を高くした。また、電解液を保持するために、ゲル化剤も併わせて検討した。電池用として使われているゲル化剤は、直鎖型高分子(カルボキシビニルポリマー)、架橋型高分子(ポリアクリル酸、またはその塩)などが挙げられる。直鎖型高分子の代表例であるカルボキシビニルポリマーは、アルカリ電解液に溶解するため電解液を保持できない。架橋型高分子の代表例であるポリアクリル酸などは、架橋構造をとるため架橋内に電解液を取り込むため電解液を保持できる。つまり、架橋型高分子を用いることで、環境の影響を受けにくく、開封時でも電池の維持率が良くなることが予想される。
【0015】
また両ゲル化剤を同量の電解液に溶かし、粘度を測定してみると、カルボキシビニルポリマーの方が、ポリアクリル酸に比べて約2〜3倍粘度が高い。つまり、イオン移動から考えると、カルボキシビニルポリマーの添加量は、なるべく少なく調整した方がよい。なお、今回検討したゲル化剤以外でも、ゲル化剤の粘度や分子構造などを考慮することで、同じ効果が得られる。
なお、ここでは負極活物質の粒径106μmの亜鉛を10%以上含むものを微粉亜鉛、粒径106μmの亜鉛を5%以下含むものを通常亜鉛と定義する。
【0016】
本発明は、上記情況に対処するためになされたもので、その課題は、内部抵抗を低く抑えて、負極ゲル充填での作業性を確保し、乾燥環境でのパルス特性や維持率を向上させ、信頼性の高い空気電池を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、正極活物質となる酸素を還元する正極触媒シートと、負極活物質となる金属粉末とゲル化剤との混合物に、アルカリ電解液を注入してなるゲル状負極と、を有する空気電池において、正極触媒シートの厚さが0.15〜0.25mm、触媒シートのテフロン割合が20〜30質量%、負極金属粉末に106μm以下の粒径が少なくとも10質量%以上含まれており、またアクリル系吸水性ポリマーの粒径が10〜150μmであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気電池において、アルカリ電解液に対して、前記ゲル化剤を2〜3質量%添加したことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の空気電池において、アクリル系吸水性ポリマーの代りに、アクリル系吸水ポリマーの平均粒径が50〜150μmで、このアクリル系吸水性ポリマーを電解液に対して、0.5〜1.2質量%添加したものをゲル化剤としたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の空気電池において、隔離材にセロハンを使用したことを特徴とする。
【0019】
次に、空気電池の電池特性および開封特性の維持率を向上させる方法について説明すると、まず正極触媒マットと負極亜鉛粉とゲル化剤とを組み合わせることで、水分蒸発を抑える必要がある。
【0020】
次に、正極触媒マットを薄肉化するために、テフロン量の検討を行った。触媒マットの成形では、テフロン量の割合が多いほどシート成形はよいが、テフロン量が多いと撥水性が向上し、空気極内の濡れ性が低下すると予想されるので、セパレータをセロハンに変更することで、乾燥環境での触媒シートの濡れ性を従来並みにする。負極活物質に使用する亜鉛粉は、微粉亜鉛と通常亜鉛について検討した。
【0021】
また、カルボキシビニルポリマーは増粘性が強いが、アルカリ電解液に溶解するため、電解液を保持する効果がほとんどないと考えられる。なお、カルボキシビニルポリマーは溶解するため、粒径は検討しない。
【0022】
次に、アクリル系吸水性ポリマーに架橋型ポリアクリル酸を用いて、粒径が10μm以下、10〜50μm、50〜100μm、150μm以上の4種類のものを用いた。粒径の大きさによって、電解液の液保持性、電池特性が異なる。すなわち、粒径が小さいと膨潤性が小さいため液保持性が悪い。また粒径が大きいと、膨潤性が大きく液保持性は良いが、貯蔵時に内部抵抗が上昇しやすい傾向にあると考えられる。
なお、ここではポリアクリル酸を用いたが、ポリアクリル酸の中和物や、ナトリウム塩を用いても、ほぼ同じ効果が得られることが分かった。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1は本発明が適用されるボタン型空気電池の半分を切除した側面図、図2は図1の撥水膜部分の斜視図、図3は図2の撥水膜部分の断面図である。
【0024】
図に示すように、本実施形態の空気電池は、空気孔1を有する底面に段部を設けた正極ケース2の内側部に、拡散紙3、撥水膜8、空気極およびセパレータ6を収納している。空気極は活性炭、テフロン、導電剤、マンガン酸化物からなる正極触媒粉を、ニッケルメッキにされたステンレスネット製の正極集電体7に圧着充填により一体化して正極触媒層5とする。さらに正極触媒層5に圧着する撥水膜とは別の撥水膜が該セパレータと反対面に配置される。セパレータの上部には絶縁ガスケット9を介してニッケル−ステンレス−銅の三層クラッド材を成形加工した負極ケース10が配しており、通常は絶縁ガスケット9と負極ケース10との間には苛性カリ電解液の漏液防止をするためポリアミド樹脂等のシール材が塗布されている。さらに、負極ケース10の内部にはゲル状の負極活物質11が充填され、セパレータ6が接している。ここで好ましく用いられる負極活物質11は、安価な亜鉛が用いられているが、他の金属も使用できることは勿論である。
【0025】
触媒シートの合剤成分(活性炭、テフロン、導電剤、マンガン酸化物)において、結着剤となるテフロン量の割合を検討することで、薄肉化した触媒マットの成形性と、電池特性を確認する必要がある。また、セパレータにセロハンと微多孔膜を合わせたときの電池特性について検討した。なお、触媒マットの合剤調整1バッチを2kgとしたときの、テフロンの配合量を割合として表してある。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に触媒シートの厚さとテフロンの配合割合での空気極の成形性を示す。テフロンの配合割合が15%であると、シートの成形が著しく低下する。またテフロン量の割合が多いと、繊維化が進みすぎて、加圧ローラに粉体が付着するため、連続性には適当でなかった。表1より分かるように、テフロンの割合が25%中心であると成形性および触媒シートの厚さも0.15〜0.30mmまでの高い範囲で調整ができる。しかし、触媒シートを0.1mmにまで薄くすることはできなかった。
【0028】
また、触媒シートを製造するには、触媒マットと集電体ネットを圧着する。ここで用いた集電体ネットは、t=0.2mmであるが、集電効果が得られれば、これよりネットの厚さが薄くてもよい。集電体のメッシュや線径も、t=0.2mmに調整できるものであれば何でもよい。
【0029】
また、触媒シートと集電体ネットを圧着する際は、触媒シートと空気極の厚さが変わらないように調整した。ここでは、触媒マットのテフロン割合は25%で、空気極の厚さとセパレータの影響を確認した。
【0030】
負極ゲルには、微粉亜鉛にカルボキシビニルポリマーを亜鉛に対して、0.5質量%添加してドライ攪拌した後、電解液を亜鉛に対して25質量%加えたものを用いた。これらの条件で空気電池を作成した。
【0031】
(実施例1)
厚さが0.15mmである空気極、セパレータとセロハンを合わせたものを用いた。また、負極ゲル亜鉛には、亜鉛粉は106μm以下の粒径が少なくとも10%以上含まれているものを用い、ゲル化剤(カルボキシビニルポリマー)を亜鉛に対して0.5質量%を添加し、ドライ攪拌した後、電解液を亜鉛に対して25質量%添加した負極ゲルを用いて空気電池を作成し、実施例1とした。
【0032】
(実施例2)
厚さが0.20mmである空気極を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例2とした。
【0033】
(実施例3)
厚さが0.25mmである空気極を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例3とした。
【0034】
(実施例4)
厚さが0.30mmである空気極を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例4とした。
【0035】
(従来例)
触媒シートに占めるテフロンの割合が、30%で、かつ厚さが0.25mmである空気極、セパレータには微多孔膜を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、従来例とした。
【0036】
(比較例1)
触媒シートに占めるテフロンの割合が、25%で、かつ厚さが0.15mmである空気極、セパレータには微多孔膜を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例1とした。
【0037】
(比較例2)
厚さが0.20mmである空気極を用いた以外、比較例1と同様に空気電池を作成し、比較例2とした。
【0038】
(比較例3)
厚さが0.25mmである空気極を用いた以外、比較例1と同様に空気電池を作成し、比較例3とした。
【0039】
評価内容は、上記の各実施例、従来例及び各比較例とも、シールテープを剥いで20℃,30%RHの環境で、10day放置した後、20mA放電を行った。その結果を表2にまとめた。
【0040】
【表2】
【0041】
表2より、触媒シートの厚さを薄くすることで、内部抵抗が低下することが分かった。また、同じ触媒シートの厚さであれば、セロハンを用いると内部抵抗が低くなることが確認できた。これは、セロハンが電解液に濡れやすいために、正極に電解液が吸収されて内部抵抗が低下したと考えられる。
【0042】
しかし、長期放置において、セロハンが従来の微多孔膜(材質 PP;ポリプロピレン)に比べて、負極ゲル中の電解液を吸いやすくなったため、ゲル中の電解液量が低下し、亜鉛の利用率が低下した。その結果、実施例1〜4では、内部抵抗は下がったにも関わらず、放電時間が低下した。
【0043】
機器の電池に空気電池を使用したとき、長期にわたって放置されることが考えられる。つまり、放置での未使用時の電池特性を維持する必要がある。表2で示したように、乾燥環境下では、ドライアップによる水分の蒸発による影響が大きいと考えられる。
【0044】
そこで、保水性に優れたアクリル系高吸水性ポリアクリル酸を用いた。ポリアクリル酸の添加量は、電解液に対する割合である。また、カルボキシビニルポリマーの添加量は、亜鉛に対して添加した割合である。また、負極ゲルのゲル化剤を検討して、瞬間的なパルス電流を流すのに有利である細かい亜鉛粉を使用するとともに、負極ゲル中の改善を行う。
なお、空気極の触媒シートのテフロン割合が25%で、厚さが0.2mmを用いて、セパレータには濡れ性が良く、内部抵抗が低下したセロハンを使用した。
【0045】
(実施例5)
ポリアクリル酸の粒径が、10〜50μm以下であるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、微粉亜鉛粉を用いて、亜鉛粉と電解液と混合した負極ゲルを用いて実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例5とした。
【0046】
(実施例6)
ポリアクリル酸の粒径が、50〜100μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例6とした。
【0047】
(実施例7)
ポリアクリル酸の粒径が、100〜150μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例7とした。
【0048】
(実施例8)
ポリアクリル酸の粒径が、50〜100μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して2質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、実施例8とした。
【0049】
(比較例4)
ポリアクリル酸の粒径が、50〜100μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して4質量%、微粉亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例4とした。
【0050】
(比較例5)
ポリアクリル酸の粒径が、100〜150μmであるゲル化剤、添加量は電解液量に対して3質量%、亜鉛粉末の106μm粒径が少なくとも10%以上含まれている亜鉛粉を用いて、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例5とした。
【0051】
(比較例6)
ポリアクリル酸の粒径が、10μm以下であるゲル化剤を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例6とした。
【0052】
(比較例7)
ポリアクリル酸の粒径が、150μm以上であるゲル化剤を用いた以外、実施例1と同様に空気電池を作成し、比較例7とした。
【0053】
評価内容は、実施例5〜8及び比較例4〜7とも、シールテープを剥いで20℃、30%RHの環境で、10day放置した後、内部抵抗の測定、20mA放電とした。その結果を表3にまとめた。
【0054】
【表3】
【0055】
ゲル化剤のポリアクリル酸の粒径が大きいと、内部抵抗の上昇しやすい傾向で、乾燥条件である30%RH−10dayでの放電時間が従来より長くなった。これは、カルボキシビニルポリマーはゲルの増粘性では優れているが、電解液の保液性ではポリアクリル酸の方がよいためである。つまり、電解中の水分の乾燥が抑えられたものと考える。また、ポリアクリル酸を用いたことによる亜鉛同士の接触が良くなったものと考えられる。
【0056】
またポリアクリル酸の粒径では、ゲル化粒径が10μm以下では、保液が不充分であり電解液の蒸発によって、内部抵抗の上昇が起きたと考えられる。また、ゲル化剤の粒径が150μm以上では、電解液の保持は良かったが、ゲル化剤(ポリアクリル酸が不溶のため)が空気極やセパレータ近傍に堆積して、内部抵抗が上昇するものと考えられる。
【0057】
しかし、ゲル化剤としてポリアクリル酸のみでは粘性が弱く、材料を多量に消費するため、他のゲル化剤との混合を検討する必要がある。そこで、使用材料費を低減させるとともに、増粘性の強いカルボキシビニルポリマーを少量添加して試作評価をした。
【0058】
この結果、ポリアクリル酸が少ないと離液し、多過ぎるとゲルが硬く作業性に問題があった。また、実施例の結果から、添加量は2〜3質量%が最適であることが分かった。この試作ではポリアクリル酸の粒径は、最も特性の良かった50〜100μmを使用した。増粘剤にカルボキシビニルポリマーをゲル化剤とした。
【0059】
【表4】
【0060】
表4との配合比で、ゲル状態を確認した。ゲル化剤の添加量が少ないと、負極ゲル攪拌後、亜鉛粉と電解液との離液が発生する(カルボキシビニルポリマーが少ないと離液しやすい)。また、ゲル化剤の添加量が多いと、ゲルが固くなる傾向にあり、ゲル充填でのノズルの詰まりが多発すると考えられる。
【0061】
次に、ポリアクリル酸とカルボキシビニルポリマーの添加量をそれぞれ変えて、すなわち表4の配合で電池を作成して、電池組立1day後とシールテープ開封後の30%RH−10day後の20mA放電維持率を調べた。表5に維持率の結果を示す。
【0062】
【表5】
【0063】
このように、負極ゲルのゲル化剤をポリアクリル酸とカルボキシビニルポリマーを適当な配合にして、ポリアクリル酸単体で用いたときに比べて、ゲル化剤の使用量を低減できるとともに、開封での維持率も同じレベルであることが確認できた。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、正極触媒シート及び負極ゲル組成を、最適にすることで、重負荷特性や乾燥開封維持率の高い空気電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のボタン型空気電池の一部を切除した側面図。
【図2】図1のボタン型空気電池の撥水膜部分の斜視図。
【図3】図2の撥水膜部分の断面図。
【符号の説明】
1…空気孔、2…正極ケース、3…拡散紙、4…5と圧着する撥水膜、5…正極触媒層、6…セパレータ、7…正極集電体、8…撥水膜、9…絶縁ガスケット、10…負極ケース、11…負極活物質。
Claims (4)
- 正極活物質となる酸素を還元する正極触媒シートと、負極活物質となる金属粉末とゲル化剤との混合物にアルカリ電解液を注入してなるゲル状負極と、を有する空気電池において、前記正極触媒シートの厚さが0.15〜0.25mm、当該触媒シートのテフロン(登録商標)割合が20〜30質量%、負極金属粉末に106μm以下の粒径が少なくとも10質量%以上含まれており、またアクリル系吸水性ポリマーの粒径が10〜150μmであることを特徴とする空気電池。
- 請求項1に記載の空気電池において、アルカリ電解液に対して、前記ゲル化剤を2〜3質量%添加したことを特徴とする空気電池。
- 請求項1に記載の空気電池において、アクリル系吸水性ポリマーの代りに、アクリル系吸水性ポリマーの平均粒径が50〜150μmで、このアクリル系吸水性ポリマーを電解液に対して、0.5〜1.2質量%添加したものをゲル化剤としたことを特徴とする空気電池。
- 請求項1に記載の空気電池において、隔離材にセロハンを使用したことを特徴とする空気電池。
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