JP2005025943A - プロトン伝導体、触媒電極、触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池およびプロトン伝導体の製造方法 - Google Patents
プロトン伝導体、触媒電極、触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池およびプロトン伝導体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供する。
【解決手段】有機プロトン伝導性高分子および、無機固体酸と、当該無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とが縮合してなる無機プロトン伝導材料から、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成するように、プロトン伝導体を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】有機プロトン伝導性高分子および、無機固体酸と、当該無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とが縮合してなる無機プロトン伝導材料から、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成するように、プロトン伝導体を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロトン伝導体およびそれを用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子化合物からなるプロトン伝導膜としては、1950年代に開発された、スチレン系の陽イオン交換膜があるが、燃料電池動作環境下における安定性に乏しく、実用上充分な寿命を有する燃料電池を製造するには至っていない。
【0003】
実用的な安定性を有するプロトン伝導膜として、ナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が開発され、PEFC燃料電池をはじめとする多くの電気化学素子への応用が提案されている。
【0004】
しかし、パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、耐酸性、耐酸化性に優れているものの、製造プロセスが複雑であり、さらには非常に高価である。また、パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、高温での運転時においては、含水率の低下によりプロトン伝導度が低下するため、このようなプロトン伝導体を燃料電池用膜として使用する際には、水分管理を充分に行う必要がある。更に、含フッ素化合物は合成時および廃棄時の環境への負荷が大きく、将来的な環境問題を考慮した場合、燃料電池等の構成材料として必ずしも最適なものではない。
【0005】
このような背景から、フッ素含有量を低減したスルホン化部分フッ素化膜あるいはスルホン化芳香族系高分子膜等の非パーフルオロカーボンスルホン化プロトン伝導膜が種々提案されている。その代表的なものとしては、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリスルホン等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物や炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーからなる共重合体構造とスルホン酸基を有する芳香族系炭化水素構造とからなる、スルホン化ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体膜等が挙げられる(たとえば、特許文献1,2,3,4参照。)。また、安価で、機械的、化学的に安定な、SEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)のスルホン化体からなるプロトン伝導膜が提案されている(たとえば特許文献5参照。)。
【0006】
従来提案されている、非パーフルオロカーボンスルホン酸膜、すなわち、スルホン化部分フッ素化膜、あるいは、スルホン化芳香族系高分子膜は、製造が容易であり、低コスト化が可能であるとされている。しかしながら、燃料電池用膜として使用する場合には、膜の含水時における膨潤による激しい寸法変化や不十分な化学的安定性(耐酸化性)が知られている。
【0007】
これら有機高分子プロトン伝導体に対して、低膨潤性、耐酸化性があり、伝導性を有する無機化合物(硝子伝導体)からなるプロトン伝導体の開発もなされているが加工性や可撓性に乏しく、ハンドリングが困難であり、実用的な形状である、柔軟性のあるフィルム形成は困難である(たとえば特許文献6,7,8,9,10参照。)。
【0008】
これらの問題点を改善するために、酸化ケイ素とブレーンステッド酸とを主体とする無機化合物を、有機プロトン伝導性高分子とブレンドしたプロトン伝導体が提案されているが、ここに開示されている方法で得られるプロトン伝導体は単なるブレンド体であるため、有機プロトン伝導性高分子のわずかな膨潤度の抑制効果しか期待されず不十分である(たとえば特許文献11,12,13参照。)。
【0009】
これに対して、スルホン酸基を有する芳香族系高分子化合物を含有する溶液中で、ケイ素酸化物とリン酸誘導体とを主成分とする無機化合物を合成し、溶媒を乾燥除去することにより調製される複合プロトン伝導膜の製造方法が提案されている(たとえば特許文献14参照。)。
【0010】
この手法の場合、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とが互いに絡み合うことによる膨潤度抑制効果が期待されるが、その調製法において得られる無機プロトン伝導材料が、リン酸誘導体とケイ素化合物との反応によるものであり、ケイ素に固定されていない遊離のリン酸が存在するため燃料電池運転時に発生する水中に当該リン酸が溶け出し、プロトン伝導度の発現が不十分である。
【0011】
また、これとは別に、可撓性を有するプロトン伝導体として、末端にケイ素化合物を有するオリゴマーを出発原料とし、プロトン伝導キャリアにヘテロポリ酸であるタングストリン酸を用いた調製法も開示されている(たとえば特許文献15,16,17参照。)。しかしながら、ヘテロポリ酸は水溶性であり、文献には、金属−酸素結合と共有結合とにより固定化されていると記載されているが(たとえば特許文献15,16参照。)、引用している論文はクーロニック相互作用が記載されているのみであり、結合形成に関しては立証されているわけではない(たとえば非特許文献1参照。)。また、この場合もタングストリン酸の固定化が不十分で、プロトン伝導度の維持が困難である。さらに、有機成分として、ポリエチレン、ポリエーテル類を用いているため耐酸化性が不十分であり、加えて、これらの有機成分はプロトン伝導性を有しておらず、プロトン伝導度の発現も不十分である。
【0012】
可撓性の基材として全フッ素系スルホン酸膜を用い、リン酸ジルコニウムの微粒子を高分子膜の微細空孔中に担持させた無機材料複合高分子膜も開示されている(特許文献18参照。)。また、無機プロトン伝導体へのリン酸の固定化に対しては、ケイ素化合物以外の他の金属アルコキシドを併用する系およびプロトン伝導性を担うスルホン酸、ホスホン酸誘導体担持型のケイ素化合物を用いた伝導体の調製も検討されているが、柔軟成分である有機成分が少ないため、加工性、可撓性に乏しく、実用的な膜を得ることは困難である(たとえば特許文献19,20参照、非特許文献2参照。)。
【0013】
以上述べたように、耐酸化性・寸法安定性および優れたプロトン伝導性を示し、なおかつ可撓性に富み、成膜性のよいプロトン伝導膜は未だ見出されていない。
【0014】
【特許文献1】
特開平6−93114号公報(特許請求の範囲)
【0015】
【特許文献2】
特開平10−45913号公報(特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献3】
特開平9−245818号公報(特許請求の範囲)
【0017】
【特許文献4】
特開平9−102322号公報(特許請求の範囲)
【0018】
【特許文献5】
特表平10−503788号公報(特許請求の範囲)
【0019】
【特許文献6】
特開2001−143723号公報(特許請求の範囲)
【0020】
【特許文献7】
特開2000−272932号公報(特許請求の範囲)
【0021】
【特許文献8】
特開2000−357524号公報(特許請求の範囲)
【0022】
【特許文献9】
特開2002−80214号公報(特許請求の範囲)
【0023】
【特許文献10】
特開2002−97272号公報(特許請求の範囲)
【0024】
【特許文献11】
特開平8−249923号公報(特許請求の範囲)
【0025】
【特許文献12】
特開平10−69817号公報(特許請求の範囲)
【0026】
【特許文献13】
特開平11−203936号公報(特許請求の範囲)
【0027】
【特許文献14】
特開2001−307752号公報(特許請求の範囲)
【0028】
【特許文献15】
特開2001−307545号公報(特許請求の範囲)
【0029】
【特許文献16】
特開2001−35509号公報(特許請求の範囲)
【0030】
【特許文献17】
特開2002−309016号公報(特許請求の範囲)
【0031】
【特許文献18】
特開2002−352818号公報(段落番号0049〜0052)
【0032】
【特許文献19】
特開平8−119612号公報(段落番号0004〜0005)
【0033】
【特許文献20】
特開2002−245846号公報(段落番号0010〜0023)
【0034】
【非特許文献1】
「ソリッドステートイオニックス」(”Solid State Ionics”),1994年,第74巻,p.105
【0035】
【非特許文献2】
「ケミストリーレターズ」(”Chemistry Letters”),2000年、p.1314
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供することを目的とする。さらに、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、可撓性、製膜性のいずれかの点で優れたプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、有機プロトン伝導性高分子および、無機固体酸と、無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とが縮合してなる無機プロトン伝導材料からなり、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成しているプロトン伝導体が提供される。
【0038】
ケイ素酸化物前駆体の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドが5〜50モル部の範囲にあること、ルイス酸性金属アルコキシドを構成するルイス酸性金属として、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含むこと、ケイ素酸化物前駆体がケイ素のアルコキシド化合物であること、ケイ素のアルコキシド化合物として、プロトン解離性の官能基を含有するケイ素のアルコキシド化合物を含むこと、ケイ素のアルコキシド化合物中のプロトン解離性の官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基であること、無機固体酸としてヘテロポリ酸を含むこと無機固体酸として、ヘテロポリ酸と、リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体からなる群の内の少なくとも一つのリン酸化合物とを含み、リン酸化合物の100モル部に対しヘテロポリ酸が1〜5000モル部の範囲にあること、ヘテロポリ酸として、タングストリン酸、タングストケイ酸およびモリブドリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を含むこと、有機プロトン伝導性高分子が、側鎖末端にプロトン解離性基を有していること、有機プロトン伝導性高分子中のプロトン解離性基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基であること、有機プロトン伝導性高分子を20〜80重量%含有することが好ましい。
【0039】
本発明の他の一態様によれば、上記のプロトン伝導体よりなる膜の両側に、金属を電気伝導性微粒子よりなる担体に担持した触媒電極を配置してなる、触媒電極とプロトン伝導体の接合体が提供される。
【0040】
電気伝導性微粒子が炭素微粒子を含むこと、触媒電極が有機プロトン伝導性高分子を含むこと、触媒電極中に含まれる有機プロトン伝導性高分子が、側鎖末端にプロトン解離性基を有していること、触媒電極中に含まれる有機プロトン伝導性高分子中のプロトン解離性基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基であることが好ましい。
【0041】
本発明のさらに他の態様によれば、上記の触媒電極とプロトン伝導体の接合体を使用してなる燃料電池や、上記のプロトン伝導体を製造するにあたり、ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体と無機固体酸とを、加水分解および縮合することにより、ルイス酸性金属アルコキシドと無機固体酸とが縮合した無機プロトン伝導材料を含む第一の溶液を調製し、ついで、第一の溶液を有機プロトン伝導性高分子を含有する溶液中に添加して、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とを含む第二の溶液を調製し、第二の溶液から、流延法によりプロトン伝導体よりなる膜を製造する、プロトン伝導体の製造方法が提供される。
【0042】
本発明に係るプロトン伝導体は、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性とを有する。また、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、耐久性(耐酸化性)、可撓性、製膜性、プロトン伝導性のいずれかの点で優れたものとすることができる。従って、本発明に係るプロトン伝導体を使用した触媒電極とプロトン伝導体の接合体や燃料電池は、耐久性、発電の安定性等に優れたものとなる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を実施例等を使用して説明する。なお、これらの実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0044】
本発明に係るプロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子および、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体からなる無機プロトン伝導材料とを含んで構成され、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成している。
【0045】
本発明に係る無機プロトン伝導材料とは、たとえばリン酸シリケートのようにプロトン解離性のOH基を有し、そのホッピングによってプロトン伝導性が発現するゾルゲル製膜可能な材料を意味する。なお、本明細書において、「プロトン解離性」とは、水等の極性溶媒中において、プロトンを解離し得ること」を意味する。
【0046】
上記材料を使用し、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料との互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成することにより、水やメタノール等に対する膨潤が抑制され、高い寸法安定性が実現するとともに、可撓性のあるプロトン伝導体を得ることが可能となる。
【0047】
分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることは、必ずしも直接的に確認することができないが、これを間接的に確認する手法として以下のものが挙げられる。▲1▼有機プロトン伝導性高分子キャストフィルム作製用に用いた溶媒へ、作製したプロトン伝導体を浸漬し、再溶解試験を実施する際に、そのプロトン伝導体の溶解度が15重量%より少ないこと、▲2▼プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子の貯蔵弾性率に比して、当該有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域における緩和が抑制されること、▲3▼プロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されないことであり、これら三つの条件を同時に満たす有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導性材料からなるプロトン伝導体は分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していると考えられる。
【0048】
本発明に係る無機プロトン伝導材料は、ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体と無機固体酸とが縮合したものであり、一般的には、縮合の結果共有結合が生じていると考えられている。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体との和は450〜20000モル部の範囲にある。好ましくは500〜15000モル部の範囲内である。このような条件により、キャリア漏洩すなわち無機固体酸の溶け出しのない無機プロトン伝導体を調製することができる。
【0049】
450モル部未満であると、未反応の無機固体酸が残留し、燃料電池の運転時に発生する水により、無機プロトン伝導材料からの無機固体酸(キャリア)の漏洩が生じ、プロトン伝導度の維持が困難になる。また20000モル部を超えると、無機プロトン伝導材料におけるプロトン伝導キャリアである無機固体酸の密度が低くなるため、プロトン伝導度の発現が不十分となる場合が多い。
【0050】
本発明に係るルイス酸性金属アルコキシドとしては、任意のルイス酸性金属のアルコキシドを使用することができる。
【0051】
本発明に係るケイ素酸化物前駆体は、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドと共に縮合して無機プロトン伝導材料を形成する際に、この無機プロトン伝導材料を構成するケイ素酸化物構造を生じ得る物質であればどのようなものでもよいが、一般的にはケイ素のアルコキシド化合物が好ましい。
【0052】
このルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物等のケイ素酸化物前駆体との組み合わせを使用することにより、プロトン伝導体からの無機固体酸の漏洩を良好に防止できるようになる。
【0053】
ケイ素酸化物前駆体の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドが5〜50モル部の範囲にあることが好ましい。この範囲より小さいと未反応の無機固体酸が残留し、燃料電池運転時において発生する水により、無機プロトン伝導材料からの無機固体酸(キャリア)の漏洩が生じ、プロトン伝導度の維持が困難になる場合がある。また0.5モル部を超えると、調製したゾルにおいて沈殿が析出するため好ましくない。
【0054】
ルイス酸性金属アルコキシドを構成するルイス酸性金属としては、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含むことが好ましい。これらのルイス酸性金属のアルコキシドは本発明に係る無機固体酸との反応性が高く、ケイ素のアルコキシド化合物等のケイ素酸化物前駆体と組み合わせると、プロトン伝導体からの無機固体酸の漏洩をより効果的に防止することができる。この結果、本発明に係る無機プロトン伝導材料を使用すれば、高いプロトン伝導度が実現でき、プロトン伝導度の維持も良好なプロトン伝導体を得ることができる。
【0055】
ルイス酸性金属アルコキシドとしては、具体的には、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタンといったチタニウムアルコキシド、トリ−イソプロポキシアルミ、トリ−n−ブトキシアルミといったアルミニウムアルコキシド、テトラ−n−ブトキシジルコニウムといった加水分解速度の速いチタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドを挙げることができる。
【0056】
ケイ素のアルコキシド化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラアセチルオキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランメチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジエトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、フェニル・メチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン等を挙げることができる。これらは単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0057】
さらに、プロトン伝導性を向上させる目的で、ケイ素のアルコキシド化合物として、プロトン解離性の官能基を含有するケイ素アルコキシド化合物を含めてもよい。
【0058】
プロトン解離性の官能基としては、スルホン酸誘導体基、ホスホン酸誘導体基、スルホンアミド誘導体基もしくはスルホンイミド誘導体基が挙げられ、プロトン解離性の官能基を導入したケイ素化合物としては、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0059】
プロトン解離性の官能基であるスルホン酸基、ホスホン酸基は、無機固体酸との縮合反応の前に加水分解により生成させてもよく、縮合反応後に生成させてもよい。
【0060】
これらプロトン解離性の官能基を有するケイ素化合物は、ケイ素のアルコキシド化合物の一部として使用する。使用するケイ素のアルコキシド化合物の全量におけるモル比で80モル%以下であることが好ましい。80モル%を超えると酸触媒の作用を示し、ゲル化が生じるため製膜が行えない場合が生じ得ることがあり、好ましくない。
【0061】
こうしたルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物と上記の無機固体酸とでゾルゲル反応を行うことにより、高いプロトン伝導度を発現するプロトン伝導体を調製することが可能となる。
【0062】
本発明で使用される無機固体酸は、いわゆる無機固体酸と呼ばれるもの、すなわち、無機物であって、陽子供与体または電子受容体として働く固体、から適宜選択することができるが、ヘテロポリ酸が好ましい。中でも、タングステンとモリブデンとの少なくともいずれか一つと、ケイ素とリンとの少なくともいずれか一つとを適宜含めたヘテロポリ酸が特に好ましい。
【0063】
具体的には、タングストリン酸、タングストケイ酸、モリブドリン酸等のヘテロポリ酸を挙げることができる。これらは、単独または二種以上の組み合わせで使用してもよく、またそれらと、リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体からなる群の内の少なくとも一つのリン酸化合物とを含めるようにしてもよい。
【0064】
この際、リン酸化合物の100モル部に対しヘテロポリ酸が1〜5000モル部の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは5〜2000モル部の範囲である。5000モル部を超えると、未反応の無機固体酸が残留し、燃料電池の運転時に発生する水により、無機プロトン伝導材料からの無機固体酸の漏洩が生じ、プロトン伝導度の維持が困難になる。また1モル部未満であると、無機プロトン伝導材料におけるプロトン伝導キャリアである無機固体酸の密度が低くなるため、プロトン伝導度の発現が不十分になる。
【0065】
このようなリン酸化合物としては、下記一般式(1)で表されるリン酸またはその誘導体、あるいは下記一般式(2)で表される亜リン酸またはその誘導体が好ましい。
【0066】
PO(OR)3−Y(OH)Y・・・(1)
[但し、式中、Rは炭素数1〜6の1価の有機基を示し、yは0〜3の整数である。]
P(OR’)3−Z(OH)Z・・・(2)
[但し、式中、R’は炭素数1〜6の1価の有機基を示し、zは0〜3の整数である。]
一般式(1)における、炭素数1〜6の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等を挙げることができる。
【0067】
一般式(1)において、yは0〜3であるが、yが0の具体的な例としては、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリプロピルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル等を挙げることができる。
【0068】
また、一般式(1)において、yが1または2の具体的な例としては、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジプロピルエステル、リン酸ジブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル、リン酸メチルエステル、リン酸エチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ブチルエステル、リン酸フェニルエステル等に加え、P2O5をメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、フェノール等に溶解することにより調製されるものが挙げられる。更にyが3の具体的な例としては、オルトリン酸を挙げることができる。
【0069】
一般式(2)における、炭素数1〜6の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等を挙げることができる。
【0070】
一般式(2)において、zは0〜3であるが、zが0の具体的な例としては、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリプロピルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、亜リン酸トリフェニルエステル等を挙げることができる。
【0071】
また、一般式(2)において、zが1の具体的な例としては、亜リン酸ジメチルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジプロピルエステル、亜リン酸ジブチルエステル、亜リン酸ジフェニルエステル等、また、zが2の具体的な例としては、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸エチルエステル、亜リン酸プロピルエステル、亜リン酸ブチルエステル、亜リン酸フェニルエステル、更にzが3の具体的な例としては、亜リン酸を挙げることができる。
【0072】
次に本発明で用いる有機プロトン伝導性高分子について説明する。本発明に用いる有機プロトン伝導性高分子は、プロトン伝導性を示す有機高分子であって、後述するゾルゲル反応溶媒(たとえばアルコール)に相溶性のある溶媒に可溶なものであれば特に限定されるものではないが、側鎖にプロトン解離性基を有するポリマーが、プロトン伝導性、製膜性の観点から好ましい。この場合のプロトン解離性基としては、上記ケイ素アルコキシド化合物の場合と同様、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体を例示できる。
【0073】
そのような高分子の具体例としては、全フッ素系スルホン酸、炭化水素系プロトン伝導性高分子、具体的にはスルホン化エチレンテトラフルオロエチレン共重合体−グラフトーポリスチレン、スルホンアミド型エチレンテトラフルオロエチレン共重合体−グラフトーポリスチレン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホンアミド型ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化架橋ポリスチレン、スルホンアミド型架橋ポリスチレン、スルホン化ポリトリフルオロスチレン、スルホンアミド型ポリトリフルオロスチレン、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホンアミド型ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホンアミド型ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホン化ポリイミド、スルホンアミド型ポリイミド、スルホン化4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホンアミド型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、ホスホン酸型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホンアミド型ポリベンゾイミダゾール、ホスホン酸型ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリビフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリビフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホンアミド型ポリフェニレンスルホンなどを用いることができる。
【0074】
本発明に係るプロトン伝導体における無機プロトン伝導材料の含有量は、フィルム成形性を考慮すると20〜80重量%の範囲が好ましく、30〜70重量%の範囲がより好ましい。80重量%を超えると製膜時における乾燥工程でクラック等が生じるため好ましくない場合が多い。20重量%未満であると膨潤度抑制効果、プロトン伝導度向上効果が見られず好ましくない場合が多い。本発明に係るプロトン伝導体における有機プロトン伝導性高分子の含有量は、100重量%から上記の含有量を減じた値とすることが好ましいが、場合によっては、その他の成分を含んでいてもよい。
【0075】
このようにして、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体を実現することができる。また、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、可撓性、製膜性のいずれかの点で優れたプロトン伝導体を実現することができる。
【0076】
このプロトン伝導体よりなる膜(プロトン伝導膜)の両側に、金属を導電材に担持した触媒電極を配置してなる、触媒電極とプロトン伝導体の接合体(本明細書では、電極/膜/電極ユニットと呼称することもある。)は、片方の電極を酸化剤電極とし、他方の電極を燃料電極とし、プロトン伝導体を電解質として、燃料電池に好適に適用することができる。
【0077】
ここでの触媒電極は、触媒となる金属を導電材に担持することで作製できる。触媒電極に使用される金属としては、燃料の酸化反応および酸化剤の還元反応、たとえば、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、たとえば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、またはそれらの合金が挙げられる。特に白金が好ましい。
【0078】
触媒となる金属の形状も任意であるが、粒子状の場合には、その粒径は、100〜3000nmが一般的である。
【0079】
使用する導電材としては、電気伝導性物質であればいずれのものでもよく、たとえば各種金属や炭素材料などが挙げられる。炭素材料としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられる。これらが単独または混合して使用される。これら導電材に触媒金属を担持させる方法としては、触媒となる金属を還元法により導電材の表面に析出させる方法や、溶剤に触媒金属を懸濁させ、これを導電材表面に塗布する方法などがある。
【0080】
これらの金属は、カーボン微粒子等の電気伝導性微粒子よりなる導電材(担体)に付着等させた方が触媒としての使用量が少なく、コスト的に有利である。これらの金属の担持量は、一つの電極が形成された状態で、その片面の面積あたり0.01〜10mg/cm2が好ましい。このような電気伝導性微粒子としては、炭素微粒子が特に好ましい。
【0081】
金属を電気伝導性微粒子に担持した触媒電極に、上記で説明した有機プロトン伝導性高分子を加えると、触媒電極としての性能を保持したまま、その形状を容易に維持したり、変形したりできるようになるため、好ましい。具体的には、金属を担持した電気伝導性微粒子を、有機プロトン伝導性高分子の溶液に添加して、ペースト(電極形成用溶液)を調製し、この電極形成用溶液を、たとえばプロトン伝導体の膜の両側に塗布した後、乾燥する。このようにすると、プロトン伝導体の膜の両側に触媒電極が接合した電極/膜/電極ユニットを作製することができる。
【0082】
本発明に係る燃料電池は、以上のように形成された電極/膜/電極ユニットを使用して作製することができ、通常は、外側に燃料流路もしくは酸化剤流路を形成する溝付集電体を配したものを単セルとし、このような単セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより構成される。
【0083】
燃料として水素を使用し、酸化剤として酸素を使用する例について、発電の様子を図1を用いて説明する。図1中、単セル1は、プロトン伝導体2、酸素極3と燃料極4とよりなる電極/膜/電極ユニット5とその両側にある水素流路(燃料流路)8、酸素流路(酸化剤流路)11およびその外側にあるセパレータ6,7を構成要素としている。水素は入り口9から水素流路8に導かれ、消費されなかった水素は出口10から排出される。酸素は、入り口12から酸素流路11に導かれ、生成した水は消費されなかった酸素と共に出口13から排出される。発生した電気は、酸素極3と燃料極4とを使用して取り出される。
【0084】
燃料電池は、高い温度で作動させるほうが、電極の触媒活性があがり、電極過電圧が減少するため好ましいが、有機プロトン伝導性高分子は、水分がないと機能を発揮しないため、水分管理が可能な温度で作動させる必要がある。燃料電池の作動温度の好ましい範囲は室温〜100℃である。
【0085】
このようにして、優れたプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有する触媒電極とプロトン伝導体の接合体や燃料電池を実現することができる。
【0086】
次に本発明に係るプロトン伝導体の製造方法について説明する。本発明に係るプロトン伝導体は、上記した、ヘテロポリ酸やリン酸化合物等の無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とを、たとえば水を添加して、加水分解およびゾル−ゲル反応を行い、縮合させることにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体が縮合した無機プロトン伝導材料を含む第一の溶液(本明細書では、無機プロトン伝導材料溶液または単にゾルと呼称する場合もある。)を調製し、ついで、この第一の溶液を有機プロトン伝導性高分子を含有する溶液中に添加して、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とを含む第二の溶液を調製し、第二の溶液から、流延法によりプロトン伝導体よりなる膜を製造することで、膜として得ることができる。本発明に係るプロトン伝導体は、このように、無機プロトン伝導材料と有機プロトン伝導性高分子とを含むことから、ハイブリッドプロトン伝導体と呼称する場合もある。膜状の場合はハイブリッドプロトン伝導製膜と呼称する場合もある。
【0087】
無機プロトン伝導材料溶液の調製で使用する溶媒としては、本発明に係る無機固体酸やルイス酸性金属アルコキシドを均一に分散、溶解できる溶媒が挙げられ、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エトキシエタノール等の各種アルコール、アセトン等のケトン類、トルエン、キシレン類、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)といった塩基性溶媒が挙げられる。
【0088】
有機プロトン伝導性高分子の溶解溶媒としては、無機プロトン伝導材料溶液の調製に使用できる溶媒に相溶性のある、DMF、DMAc、NMP、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)、アセトニトリルを使用することができる。有機プロトン伝導性高分子を溶解した溶液の高分子化合物の濃度については、5〜50重量%であることが好ましい。5重量%未満では溶液粘度が低いため、膜の形成が困難になり、また50重量%より濃いと、ゲル化が生じるため膜の形成が困難になり、さらには金属成分が凝集するため、プロトン伝導膜中における無機化合物の分散状態が不均一となり、好ましくない。
【0089】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。なお、以下の処理、試験、測定を採用した。
【0090】
<プロトン伝導体前処理>
作製したプロトン伝導膜を1cmX4cmのサイズにカットし、0.1NのHClに一晩浸漬し脱溶媒を行い、ついで、イオン交換水で2時間洗浄し、表面の水をふき取り、その後2時間120℃で減圧乾燥を行った。
【0091】
<溶媒溶解試験>
前処理したプロトン伝導膜(1cmX4cm)を、20mLのNMP溶液に、室温下3日間浸漬し、その後、0.1NHClに16時間浸漬を行った。その後120℃で3時間乾燥し、浸漬前後の重量変化を測定した。
【0092】
溶解度(重量%)={[(NMP浸漬前の重量−NMP浸漬後の重量)]/(NMP浸漬前の重量)}×100
<膨潤度測定(面積変化)>
前処理後のプロトン伝導膜(1cmX4cm)を、80℃のイオン交換水中で1時間処理し、処理前後の面積変化により膨潤度を算出した。
【0093】
膨潤度(%)={[(温水処理後の面積)−(温水処理前の面積)]/(温水処理前の面積)}X100
<プロトン伝導度測定>
温度75℃、相対湿度90%で測定を実施した。インピーダンスの測定にはソーラトロン社のインピーダンスアナライザーを用い、交流法にて行った。振幅10mV、10k〜1kHzの周波数掃引を行い、得られたcole−coleプロットを直線近似し、実軸との切片を抵抗とした。
【0094】
図2に示すように、非導電性の基材21上に、上記の前処理後のプロトン伝導膜22を配置し、その上に、白金線23を0.5cm間隔で5本並行に巻き付けた非導電性電極支持基材24を配置し、白金線の間を適宜通電し、白金線間距離を0.5cm、1cm、1.5cm、2cmと変えて抵抗を測定し、得られたそれぞれの抵抗値を電極間距離に対しプロットした。このプロットは直線になった。この勾配から以下の式にて、プロトン伝導度を算出した。
【0095】
プロトン伝導度=1/[(勾配)×(試料膜厚)×(試料幅)]
<耐酸化性試験(フェントン試験)>
前処理したプロトン伝導膜を、30重量%の過酸化水素水20mLに硫酸鉄7水和物1.9mgを加え60℃に加熱して作製したフェントン試薬(鉄40重量ppmを含む)に浸漬し、プロトン伝導膜がフェントン試薬に溶解するに至るまでの時間を求めた。
【0096】
<燃料電池単セル性能評価>
電極/膜/電極ユニットを図1に示した評価セルに組み込み、燃料電池出力性能を評価した。反応ガスには水素/酸素を用い、ともに101.3kPaの圧力にて、それぞれ、70℃の水バブラーを通して加湿したあと、入り口9,12から、評価セルに供給した。ガス流量は水素60mL/分、酸素40mL/分、セル温度は75℃とした。電池出力性能はH201B充放電装置(北斗電工製)により評価した。
【0097】
<粘弾性測定>
RSA−II粘弾性測定装置を用い、50〜250℃の温度範囲で貯蔵弾性率の測定を行った。実施例1と比較例1における貯蔵弾性率の測定結果を図3に示す。ガラス転移温度(ガラス転移点)はtanδの微分より求めた。
【0098】
<無機プロトン伝導材料の調製>
[参考例1]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物とが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との合計を10300モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを24モル部とした。
【0099】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0100】
[参考例2]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌後、ケイ素のアルコキシド化合物であるフェニルトリエトキシシラン4.1gを添加し、1時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を12200モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0101】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0102】
[参考例3]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌後、プロトン解離性の官能基を有するケイ素のアルコキシド化合物である2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン5.5gを添加し、1時間撹拌を行った。反応後イオン交換水を3mL添加し、さらに1時間反応を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を12200モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0103】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0104】
[参考例4]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌後、プロトン解離性の基を有するケイ素のアルコキシド化合物であるジエチルホスフェートエチルトリエトキシシラン5.6gを添加し、1時間撹拌を行った。反応後、イオン交換水を3mL添加し、さらに1時間反応を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を12200モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0105】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0106】
[参考例5]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.0g、タングストケイ酸0.15gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加、し3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物とが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を10300モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを24モル部とした。
【0107】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0108】
[参考例6]
室温下、無機固体酸のうちのヘテロポリ酸であるタングストリン酸2.5g、リン酸0.85gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を930モル部とし、リン酸の100モル部に対しヘテロポリ酸を1000モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを24モル部とした。
【0109】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、無機固体酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0110】
[参考例7]
室温下、無機固体酸のうちのヘテロポリ酸であるタングストリン酸2.0g、タングストケイ酸0.15g、リン酸0.85gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を930モル部とし、リン酸の100モル部に対しヘテロポリ酸を1000モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0111】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、無機固体酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0112】
[比較参考例1]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。なお、ケイ素のアルコキシドは使用しなかった。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドを2000モル部とした。
【0113】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、無機固体酸が充分固定されていることが分かったが、ゾルに沈殿が見られ均一ゾルの調製が不可能であった。
【0114】
[比較参考例2]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸3.45gを溶解したエタノール5mL溶液を、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン5gをエタノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。無機固体酸の100モル部に対しケイ素のアルコキシド化合物を2000モル部とした。ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドは0(ゼロ)モル部であった。
【0115】
反応溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ3であり、タングストリン酸固定が不充分であった。
【0116】
[比較参考例3]
室温下、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン1gをイソプロパノール5mLに溶解し、無機固体酸であるタングストリン酸3.45gを溶解したイソプロパノール5mLに溶解した溶液を添加し、1時間反応を行った。なお、ケイ素のアルコキシドは使用しなかった。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドを400モル部とした。
【0117】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ3であり、無機固体酸の固定が不充分であった。
【0118】
参考例1〜7と比較参考例1〜3との比較から、無機固体酸と、当該無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とを反応させることにより、無機プロトン伝導材料中に遊離の無機固体酸がより存在しがたくなり、従来技術における無機プロトン伝導材料からの無機固体酸の漏洩によるプロトン伝導度低下の課題が解決されることが理解できる。
【0119】
<有機プロトン伝導性高分子の合成>
[参考例8]
粉砕したポリエーテルエーテルケトン10gを濃硫酸200mLに徐々に添加し、5時間スルホン化反応を行った。反応終了後、4Lのイオン交換水で3回洗浄を行い、ろ過で回収後、120℃で一晩乾燥を行い、本発明に係る有機プロトン伝導性高分子である、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。1H−NMRにより算出したスルホン化率は58モル%(EW:634)であった。
【0120】
[参考例9]
粉砕したポリエーテルスルホン10gを濃硫酸200mLに徐々に添加し、5時間スルホン化反応を行った。反応終了後、4Lのイオン交換水で3回洗浄を行いろ過で回収後120℃で一晩乾燥を行い、本発明に係る有機プロトン伝導性高分子である、スルホン化ポリエーテルスルホンを得た。1H−NMRにより算出したスルホン化率は50モル%(EW:544)であった。
【0121】
[参考例10]
参考例8で調製したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン10gをDMF20mLに溶解し、チオニルクロリド250mLを滴下した。その後、2時間還流を行い、得られた混合物を100mLの残留物になるまで蒸留し、冷却後、混合物を1.5Lのエーテル中に撹拌しながら投入した。その後、吸引ろ過で回収し、エーテルで洗浄を行った。得られたスルホンクロリド化されたポリエーテルエーテルケトン10gを、30mLのDMFに溶解し、エチルアミン5gを0℃で滴下により添加し、16時間室温で反応させ、ついで、1Lのイオン交換水に再沈殿させ、本発明に係る有機プロトン伝導性高分子である、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトンを得た。1H−NMRにより算出したスルホンアミド化率は45モル%(EW:877)であった。
【0122】
[実施例1]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0123】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が31重量%のプロトン伝導体を得た。
【0124】
得られたプロトン伝導体は均一な膜厚の良好な膜となっており、手で曲げても折れるようなことはなく、良好な可撓性を示した。このような良好な製膜性と可撓性と耐久性とは、すべての実施例で共通していた。
【0125】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0126】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度(175℃)以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0127】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0128】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0129】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.0X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0130】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0131】
[実施例2]
参考例2と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0132】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が30重量%のプロトン伝導体を得た。
【0133】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は12重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0134】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0135】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0136】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0137】
また、得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は45%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.7X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.1X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は65分であった。
【0138】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0139】
[実施例3]
参考例3と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0140】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が34重量%のプロトン伝導体を得た。
【0141】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は13重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0142】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0143】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0144】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0145】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は47%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.5X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は68分であった。
【0146】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0147】
[実施例4]
参考例4と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0148】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が35重量%のプロトン伝導体を得た。
【0149】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は9重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0150】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0151】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0152】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0153】
また、得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は52%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0154】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0155】
[実施例5]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液3gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0156】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が45重量%のプロトン伝導体を得た。
【0157】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は9重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0158】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0159】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0160】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0161】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は20%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.0X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は80分であった。
【0162】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0163】
[実施例6]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例9で調製したスルホン化率50モル%のスルホン化ポリエーテルスルホン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0164】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が31重量%のプロトン伝導体を得た。
【0165】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は9重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0166】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0167】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0168】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0169】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は62%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は1.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は68分であった。
【0170】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0171】
[実施例7]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例10で調製したスルホンアミド化率45モル%のスルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0172】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が31重量%のプロトン伝導体を得た。
【0173】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は13重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0174】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0175】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0176】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0177】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.4X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は1.9X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0178】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0179】
[実施例8]
参考例5と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0180】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が34重量%のプロトン伝導体を得た。
【0181】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0182】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0183】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0184】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0185】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0186】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0187】
[実施例9]
参考例6と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0188】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が36重量%のプロトン伝導体を得た。
【0189】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0190】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0191】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0192】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0193】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフィルムの溶解時間は70分であった。
【0194】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0195】
[実施例10]
参考例7と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例11で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0196】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が35.2重量%のプロトン伝導体を得た。
【0197】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0198】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0199】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0200】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0201】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0202】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0203】
[比較例1]
参考例8で得られた、スルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)を調製し、無機プロトン伝導材料を加えず、そのまま、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、プロトン伝導体を得た。
【0204】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は167%と、膨潤による寸法変化が激しかった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は1X10−5S/cmと、プロトン伝導度の発現も低かった。また、耐酸化性試験におけるフイルムの溶解時間は30分であった。
【0205】
無機固体酸をキャリアとして含む実施例1〜10とキャリアを含まない比較例1とを比較すると、プロトン伝導度において顕著な差が見られた。すなわち、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料との互いの分子鎖同士が相互に進入して網目構造を形成している実施例1〜10と、有機プロトン伝導性高分子のみの比較例1とを比較すると、膨潤度、プロトン伝導度、耐久性(耐酸化性)に顕著な差が見られ、本発明の効果が確認される。
【0206】
[実施例11]
40重量%の白金担持カーボンを作製し、この40重量%の白金担持カーボンに、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの10重量%のNMP溶液を、白金担持カーボンとスルホン化ポリエーテルエーテルケトンとの重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極形成用溶液)を調製した。
【0207】
この電極形成用溶液を実施例1で得られたプロトン伝導体の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の電極/膜/電極ユニットを作製した。得られた電極/膜/電極ユニットは、良好な形状保持性を示し、また、手で曲げても、ひび割れや剥離は起こらなかった。
【0208】
これを用いて、図1に示した評価セルを使用し、燃料電池単セル性能評価をしたところ37mWの出力を示し、安定に作動した。
【0209】
[実施例12]
実施例11と同様の40重量%の白金担持カーボンに、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの10重量%のNMP溶液を、白金担持カーボンとスルホン化ポリエーテルエーテルケトンとの重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極形成用溶液)を調製した。この電極形成用溶液を実施例2で得られたプロトン伝導体の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の電極/膜/電極ユニットを作製した。得られた電極/膜/電極ユニットは、良好な形状保持性を示し、また、手で曲げても、ひび割れや剥離は起こらなかった。
【0210】
これを用いて、図1に示した評価セルを使用し、燃料電池単セル性能評価をしたところ39mWの出力を示し、安定に作動した。
【0211】
[実施例13]
実施例11と同様の40重量%の白金担持カーボンに、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの10重量%のNMP溶液を、白金担持カーボンとスルホン化ポリエーテルエーテルケトンとの重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極形成用溶液)を調製した。この電極形成用溶液を実施例3で得られたプロトン伝導体の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の電極/膜/電極ユニットを作製した。得られた電極/膜/電極ユニットは、良好な形状保持性を示し、また、手で曲げても、ひび割れや剥離は起こらなかった。
【0212】
これを用いて、図1に示した評価セルを使用し、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示し、安定に作動した。
【0213】
[比較例2]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液6gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン0.28gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0214】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が85重量%のプロトン伝導体の調製を行ったが、ひび割れを生じプロトン伝導体を得ることができなかった。
【0215】
[比較例3]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液0.5gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0216】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が12重量%のプロトン伝導体を得た。
【0217】
得られたフィルムの溶媒(NMP)溶解試験において溶解度は35%であり、溶解性を示し、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の絡み合いが不充分であることが確認された。また得られたフィルムの温水処理後の面積変化は100%であった。プロトン伝導度は2.5X10−2S/cmであった。また80℃温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.0X10−2S/cmであった。すなわち、伝導度の発現は十分であるが、膨潤による寸法変化が激しかった。また耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は35分であった。
【0218】
[比較例4]
比較参考例2で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製した、スルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0219】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導体含有量35重量%のプロトン伝導体を得た。
【0220】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は45%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.5X10−2S/cmであった。また、80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は5.0X10−4S/cmであった。すなわち、膨潤度の抑制および高いプロトン伝導度の発現は可能であったが、温水処理後においてはプロトン伝導度の低減が確認された。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は60分であった。温水処理後のプロトン伝導度の低下が大きいのは、低反応性のケイ素アルコキシド化合物のみを使用していることにより遊離の無機固体酸が残留しているためと考えられる。
【0221】
比較例2においては無機プロトン伝導体の重量含有量が85重量%と高いため、ひび割れが生じプロトン伝導膜を得ることができない。
【0222】
比較例3においては無機プロトン伝導体の重量含有量が12重量%と低いため有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に進入して網目構造を形成することが不充分であり、耐酸化性向上・膨潤度抑制効果・プロトン伝導度向上効果が見られない。
【0223】
比較例4においては低反応性のケイ素化合物のみを使用していることにより遊離のタングストリン酸が残留しており温水処理前後でプロトン伝導度の維持が不可能であるが、実施例1〜10では高反応性金属アルコキシドを使用することにより遊離のタングストリン酸の残留が大幅に減少し温水処理前後でのプロトン伝導度の維持が可能である。
【0224】
【発明の効果】
本発明により、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供できる。さらに、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、可撓性、製膜性のいずれかの点で優れたプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池(単セル)を模式的に示す側断面図である。
【図2】プロトン伝導度測定用のデバイスを示す模式的側断面図である。
【図3】50〜250℃における貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 単セル
2 プロトン伝導体
3 酸素極
4 燃料極
5 電極/膜/電極ユニット
6,7セパレータ
8 水素流路
9,12入り口
10,13出口
11 酸素流路
21 非導電性の基材
22 プロトン伝導膜
23 白金線
24 非導電性電極支持基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロトン伝導体およびそれを用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子化合物からなるプロトン伝導膜としては、1950年代に開発された、スチレン系の陽イオン交換膜があるが、燃料電池動作環境下における安定性に乏しく、実用上充分な寿命を有する燃料電池を製造するには至っていない。
【0003】
実用的な安定性を有するプロトン伝導膜として、ナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が開発され、PEFC燃料電池をはじめとする多くの電気化学素子への応用が提案されている。
【0004】
しかし、パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、耐酸性、耐酸化性に優れているものの、製造プロセスが複雑であり、さらには非常に高価である。また、パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、高温での運転時においては、含水率の低下によりプロトン伝導度が低下するため、このようなプロトン伝導体を燃料電池用膜として使用する際には、水分管理を充分に行う必要がある。更に、含フッ素化合物は合成時および廃棄時の環境への負荷が大きく、将来的な環境問題を考慮した場合、燃料電池等の構成材料として必ずしも最適なものではない。
【0005】
このような背景から、フッ素含有量を低減したスルホン化部分フッ素化膜あるいはスルホン化芳香族系高分子膜等の非パーフルオロカーボンスルホン化プロトン伝導膜が種々提案されている。その代表的なものとしては、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリスルホン等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物や炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーからなる共重合体構造とスルホン酸基を有する芳香族系炭化水素構造とからなる、スルホン化ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体膜等が挙げられる(たとえば、特許文献1,2,3,4参照。)。また、安価で、機械的、化学的に安定な、SEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)のスルホン化体からなるプロトン伝導膜が提案されている(たとえば特許文献5参照。)。
【0006】
従来提案されている、非パーフルオロカーボンスルホン酸膜、すなわち、スルホン化部分フッ素化膜、あるいは、スルホン化芳香族系高分子膜は、製造が容易であり、低コスト化が可能であるとされている。しかしながら、燃料電池用膜として使用する場合には、膜の含水時における膨潤による激しい寸法変化や不十分な化学的安定性(耐酸化性)が知られている。
【0007】
これら有機高分子プロトン伝導体に対して、低膨潤性、耐酸化性があり、伝導性を有する無機化合物(硝子伝導体)からなるプロトン伝導体の開発もなされているが加工性や可撓性に乏しく、ハンドリングが困難であり、実用的な形状である、柔軟性のあるフィルム形成は困難である(たとえば特許文献6,7,8,9,10参照。)。
【0008】
これらの問題点を改善するために、酸化ケイ素とブレーンステッド酸とを主体とする無機化合物を、有機プロトン伝導性高分子とブレンドしたプロトン伝導体が提案されているが、ここに開示されている方法で得られるプロトン伝導体は単なるブレンド体であるため、有機プロトン伝導性高分子のわずかな膨潤度の抑制効果しか期待されず不十分である(たとえば特許文献11,12,13参照。)。
【0009】
これに対して、スルホン酸基を有する芳香族系高分子化合物を含有する溶液中で、ケイ素酸化物とリン酸誘導体とを主成分とする無機化合物を合成し、溶媒を乾燥除去することにより調製される複合プロトン伝導膜の製造方法が提案されている(たとえば特許文献14参照。)。
【0010】
この手法の場合、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とが互いに絡み合うことによる膨潤度抑制効果が期待されるが、その調製法において得られる無機プロトン伝導材料が、リン酸誘導体とケイ素化合物との反応によるものであり、ケイ素に固定されていない遊離のリン酸が存在するため燃料電池運転時に発生する水中に当該リン酸が溶け出し、プロトン伝導度の発現が不十分である。
【0011】
また、これとは別に、可撓性を有するプロトン伝導体として、末端にケイ素化合物を有するオリゴマーを出発原料とし、プロトン伝導キャリアにヘテロポリ酸であるタングストリン酸を用いた調製法も開示されている(たとえば特許文献15,16,17参照。)。しかしながら、ヘテロポリ酸は水溶性であり、文献には、金属−酸素結合と共有結合とにより固定化されていると記載されているが(たとえば特許文献15,16参照。)、引用している論文はクーロニック相互作用が記載されているのみであり、結合形成に関しては立証されているわけではない(たとえば非特許文献1参照。)。また、この場合もタングストリン酸の固定化が不十分で、プロトン伝導度の維持が困難である。さらに、有機成分として、ポリエチレン、ポリエーテル類を用いているため耐酸化性が不十分であり、加えて、これらの有機成分はプロトン伝導性を有しておらず、プロトン伝導度の発現も不十分である。
【0012】
可撓性の基材として全フッ素系スルホン酸膜を用い、リン酸ジルコニウムの微粒子を高分子膜の微細空孔中に担持させた無機材料複合高分子膜も開示されている(特許文献18参照。)。また、無機プロトン伝導体へのリン酸の固定化に対しては、ケイ素化合物以外の他の金属アルコキシドを併用する系およびプロトン伝導性を担うスルホン酸、ホスホン酸誘導体担持型のケイ素化合物を用いた伝導体の調製も検討されているが、柔軟成分である有機成分が少ないため、加工性、可撓性に乏しく、実用的な膜を得ることは困難である(たとえば特許文献19,20参照、非特許文献2参照。)。
【0013】
以上述べたように、耐酸化性・寸法安定性および優れたプロトン伝導性を示し、なおかつ可撓性に富み、成膜性のよいプロトン伝導膜は未だ見出されていない。
【0014】
【特許文献1】
特開平6−93114号公報(特許請求の範囲)
【0015】
【特許文献2】
特開平10−45913号公報(特許請求の範囲)
【0016】
【特許文献3】
特開平9−245818号公報(特許請求の範囲)
【0017】
【特許文献4】
特開平9−102322号公報(特許請求の範囲)
【0018】
【特許文献5】
特表平10−503788号公報(特許請求の範囲)
【0019】
【特許文献6】
特開2001−143723号公報(特許請求の範囲)
【0020】
【特許文献7】
特開2000−272932号公報(特許請求の範囲)
【0021】
【特許文献8】
特開2000−357524号公報(特許請求の範囲)
【0022】
【特許文献9】
特開2002−80214号公報(特許請求の範囲)
【0023】
【特許文献10】
特開2002−97272号公報(特許請求の範囲)
【0024】
【特許文献11】
特開平8−249923号公報(特許請求の範囲)
【0025】
【特許文献12】
特開平10−69817号公報(特許請求の範囲)
【0026】
【特許文献13】
特開平11−203936号公報(特許請求の範囲)
【0027】
【特許文献14】
特開2001−307752号公報(特許請求の範囲)
【0028】
【特許文献15】
特開2001−307545号公報(特許請求の範囲)
【0029】
【特許文献16】
特開2001−35509号公報(特許請求の範囲)
【0030】
【特許文献17】
特開2002−309016号公報(特許請求の範囲)
【0031】
【特許文献18】
特開2002−352818号公報(段落番号0049〜0052)
【0032】
【特許文献19】
特開平8−119612号公報(段落番号0004〜0005)
【0033】
【特許文献20】
特開2002−245846号公報(段落番号0010〜0023)
【0034】
【非特許文献1】
「ソリッドステートイオニックス」(”Solid State Ionics”),1994年,第74巻,p.105
【0035】
【非特許文献2】
「ケミストリーレターズ」(”Chemistry Letters”),2000年、p.1314
【0036】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供することを目的とする。さらに、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、可撓性、製膜性のいずれかの点で優れたプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、有機プロトン伝導性高分子および、無機固体酸と、無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とが縮合してなる無機プロトン伝導材料からなり、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成しているプロトン伝導体が提供される。
【0038】
ケイ素酸化物前駆体の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドが5〜50モル部の範囲にあること、ルイス酸性金属アルコキシドを構成するルイス酸性金属として、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含むこと、ケイ素酸化物前駆体がケイ素のアルコキシド化合物であること、ケイ素のアルコキシド化合物として、プロトン解離性の官能基を含有するケイ素のアルコキシド化合物を含むこと、ケイ素のアルコキシド化合物中のプロトン解離性の官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基であること、無機固体酸としてヘテロポリ酸を含むこと無機固体酸として、ヘテロポリ酸と、リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体からなる群の内の少なくとも一つのリン酸化合物とを含み、リン酸化合物の100モル部に対しヘテロポリ酸が1〜5000モル部の範囲にあること、ヘテロポリ酸として、タングストリン酸、タングストケイ酸およびモリブドリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を含むこと、有機プロトン伝導性高分子が、側鎖末端にプロトン解離性基を有していること、有機プロトン伝導性高分子中のプロトン解離性基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基であること、有機プロトン伝導性高分子を20〜80重量%含有することが好ましい。
【0039】
本発明の他の一態様によれば、上記のプロトン伝導体よりなる膜の両側に、金属を電気伝導性微粒子よりなる担体に担持した触媒電極を配置してなる、触媒電極とプロトン伝導体の接合体が提供される。
【0040】
電気伝導性微粒子が炭素微粒子を含むこと、触媒電極が有機プロトン伝導性高分子を含むこと、触媒電極中に含まれる有機プロトン伝導性高分子が、側鎖末端にプロトン解離性基を有していること、触媒電極中に含まれる有機プロトン伝導性高分子中のプロトン解離性基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基であることが好ましい。
【0041】
本発明のさらに他の態様によれば、上記の触媒電極とプロトン伝導体の接合体を使用してなる燃料電池や、上記のプロトン伝導体を製造するにあたり、ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体と無機固体酸とを、加水分解および縮合することにより、ルイス酸性金属アルコキシドと無機固体酸とが縮合した無機プロトン伝導材料を含む第一の溶液を調製し、ついで、第一の溶液を有機プロトン伝導性高分子を含有する溶液中に添加して、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とを含む第二の溶液を調製し、第二の溶液から、流延法によりプロトン伝導体よりなる膜を製造する、プロトン伝導体の製造方法が提供される。
【0042】
本発明に係るプロトン伝導体は、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性とを有する。また、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、耐久性(耐酸化性)、可撓性、製膜性、プロトン伝導性のいずれかの点で優れたものとすることができる。従って、本発明に係るプロトン伝導体を使用した触媒電極とプロトン伝導体の接合体や燃料電池は、耐久性、発電の安定性等に優れたものとなる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を実施例等を使用して説明する。なお、これらの実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0044】
本発明に係るプロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子および、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体からなる無機プロトン伝導材料とを含んで構成され、有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成している。
【0045】
本発明に係る無機プロトン伝導材料とは、たとえばリン酸シリケートのようにプロトン解離性のOH基を有し、そのホッピングによってプロトン伝導性が発現するゾルゲル製膜可能な材料を意味する。なお、本明細書において、「プロトン解離性」とは、水等の極性溶媒中において、プロトンを解離し得ること」を意味する。
【0046】
上記材料を使用し、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料との互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成することにより、水やメタノール等に対する膨潤が抑制され、高い寸法安定性が実現するとともに、可撓性のあるプロトン伝導体を得ることが可能となる。
【0047】
分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることは、必ずしも直接的に確認することができないが、これを間接的に確認する手法として以下のものが挙げられる。▲1▼有機プロトン伝導性高分子キャストフィルム作製用に用いた溶媒へ、作製したプロトン伝導体を浸漬し、再溶解試験を実施する際に、そのプロトン伝導体の溶解度が15重量%より少ないこと、▲2▼プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子の貯蔵弾性率に比して、当該有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域における緩和が抑制されること、▲3▼プロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されないことであり、これら三つの条件を同時に満たす有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導性材料からなるプロトン伝導体は分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していると考えられる。
【0048】
本発明に係る無機プロトン伝導材料は、ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体と無機固体酸とが縮合したものであり、一般的には、縮合の結果共有結合が生じていると考えられている。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体との和は450〜20000モル部の範囲にある。好ましくは500〜15000モル部の範囲内である。このような条件により、キャリア漏洩すなわち無機固体酸の溶け出しのない無機プロトン伝導体を調製することができる。
【0049】
450モル部未満であると、未反応の無機固体酸が残留し、燃料電池の運転時に発生する水により、無機プロトン伝導材料からの無機固体酸(キャリア)の漏洩が生じ、プロトン伝導度の維持が困難になる。また20000モル部を超えると、無機プロトン伝導材料におけるプロトン伝導キャリアである無機固体酸の密度が低くなるため、プロトン伝導度の発現が不十分となる場合が多い。
【0050】
本発明に係るルイス酸性金属アルコキシドとしては、任意のルイス酸性金属のアルコキシドを使用することができる。
【0051】
本発明に係るケイ素酸化物前駆体は、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドと共に縮合して無機プロトン伝導材料を形成する際に、この無機プロトン伝導材料を構成するケイ素酸化物構造を生じ得る物質であればどのようなものでもよいが、一般的にはケイ素のアルコキシド化合物が好ましい。
【0052】
このルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物等のケイ素酸化物前駆体との組み合わせを使用することにより、プロトン伝導体からの無機固体酸の漏洩を良好に防止できるようになる。
【0053】
ケイ素酸化物前駆体の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドが5〜50モル部の範囲にあることが好ましい。この範囲より小さいと未反応の無機固体酸が残留し、燃料電池運転時において発生する水により、無機プロトン伝導材料からの無機固体酸(キャリア)の漏洩が生じ、プロトン伝導度の維持が困難になる場合がある。また0.5モル部を超えると、調製したゾルにおいて沈殿が析出するため好ましくない。
【0054】
ルイス酸性金属アルコキシドを構成するルイス酸性金属としては、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含むことが好ましい。これらのルイス酸性金属のアルコキシドは本発明に係る無機固体酸との反応性が高く、ケイ素のアルコキシド化合物等のケイ素酸化物前駆体と組み合わせると、プロトン伝導体からの無機固体酸の漏洩をより効果的に防止することができる。この結果、本発明に係る無機プロトン伝導材料を使用すれば、高いプロトン伝導度が実現でき、プロトン伝導度の維持も良好なプロトン伝導体を得ることができる。
【0055】
ルイス酸性金属アルコキシドとしては、具体的には、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタンといったチタニウムアルコキシド、トリ−イソプロポキシアルミ、トリ−n−ブトキシアルミといったアルミニウムアルコキシド、テトラ−n−ブトキシジルコニウムといった加水分解速度の速いチタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドを挙げることができる。
【0056】
ケイ素のアルコキシド化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラアセチルオキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランメチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジエトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、フェニル・メチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン等を挙げることができる。これらは単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0057】
さらに、プロトン伝導性を向上させる目的で、ケイ素のアルコキシド化合物として、プロトン解離性の官能基を含有するケイ素アルコキシド化合物を含めてもよい。
【0058】
プロトン解離性の官能基としては、スルホン酸誘導体基、ホスホン酸誘導体基、スルホンアミド誘導体基もしくはスルホンイミド誘導体基が挙げられ、プロトン解離性の官能基を導入したケイ素化合物としては、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0059】
プロトン解離性の官能基であるスルホン酸基、ホスホン酸基は、無機固体酸との縮合反応の前に加水分解により生成させてもよく、縮合反応後に生成させてもよい。
【0060】
これらプロトン解離性の官能基を有するケイ素化合物は、ケイ素のアルコキシド化合物の一部として使用する。使用するケイ素のアルコキシド化合物の全量におけるモル比で80モル%以下であることが好ましい。80モル%を超えると酸触媒の作用を示し、ゲル化が生じるため製膜が行えない場合が生じ得ることがあり、好ましくない。
【0061】
こうしたルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物と上記の無機固体酸とでゾルゲル反応を行うことにより、高いプロトン伝導度を発現するプロトン伝導体を調製することが可能となる。
【0062】
本発明で使用される無機固体酸は、いわゆる無機固体酸と呼ばれるもの、すなわち、無機物であって、陽子供与体または電子受容体として働く固体、から適宜選択することができるが、ヘテロポリ酸が好ましい。中でも、タングステンとモリブデンとの少なくともいずれか一つと、ケイ素とリンとの少なくともいずれか一つとを適宜含めたヘテロポリ酸が特に好ましい。
【0063】
具体的には、タングストリン酸、タングストケイ酸、モリブドリン酸等のヘテロポリ酸を挙げることができる。これらは、単独または二種以上の組み合わせで使用してもよく、またそれらと、リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体からなる群の内の少なくとも一つのリン酸化合物とを含めるようにしてもよい。
【0064】
この際、リン酸化合物の100モル部に対しヘテロポリ酸が1〜5000モル部の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは5〜2000モル部の範囲である。5000モル部を超えると、未反応の無機固体酸が残留し、燃料電池の運転時に発生する水により、無機プロトン伝導材料からの無機固体酸の漏洩が生じ、プロトン伝導度の維持が困難になる。また1モル部未満であると、無機プロトン伝導材料におけるプロトン伝導キャリアである無機固体酸の密度が低くなるため、プロトン伝導度の発現が不十分になる。
【0065】
このようなリン酸化合物としては、下記一般式(1)で表されるリン酸またはその誘導体、あるいは下記一般式(2)で表される亜リン酸またはその誘導体が好ましい。
【0066】
PO(OR)3−Y(OH)Y・・・(1)
[但し、式中、Rは炭素数1〜6の1価の有機基を示し、yは0〜3の整数である。]
P(OR’)3−Z(OH)Z・・・(2)
[但し、式中、R’は炭素数1〜6の1価の有機基を示し、zは0〜3の整数である。]
一般式(1)における、炭素数1〜6の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等を挙げることができる。
【0067】
一般式(1)において、yは0〜3であるが、yが0の具体的な例としては、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリプロピルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル等を挙げることができる。
【0068】
また、一般式(1)において、yが1または2の具体的な例としては、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジプロピルエステル、リン酸ジブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル、リン酸メチルエステル、リン酸エチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ブチルエステル、リン酸フェニルエステル等に加え、P2O5をメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、フェノール等に溶解することにより調製されるものが挙げられる。更にyが3の具体的な例としては、オルトリン酸を挙げることができる。
【0069】
一般式(2)における、炭素数1〜6の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等を挙げることができる。
【0070】
一般式(2)において、zは0〜3であるが、zが0の具体的な例としては、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリプロピルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、亜リン酸トリフェニルエステル等を挙げることができる。
【0071】
また、一般式(2)において、zが1の具体的な例としては、亜リン酸ジメチルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジプロピルエステル、亜リン酸ジブチルエステル、亜リン酸ジフェニルエステル等、また、zが2の具体的な例としては、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸エチルエステル、亜リン酸プロピルエステル、亜リン酸ブチルエステル、亜リン酸フェニルエステル、更にzが3の具体的な例としては、亜リン酸を挙げることができる。
【0072】
次に本発明で用いる有機プロトン伝導性高分子について説明する。本発明に用いる有機プロトン伝導性高分子は、プロトン伝導性を示す有機高分子であって、後述するゾルゲル反応溶媒(たとえばアルコール)に相溶性のある溶媒に可溶なものであれば特に限定されるものではないが、側鎖にプロトン解離性基を有するポリマーが、プロトン伝導性、製膜性の観点から好ましい。この場合のプロトン解離性基としては、上記ケイ素アルコキシド化合物の場合と同様、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体を例示できる。
【0073】
そのような高分子の具体例としては、全フッ素系スルホン酸、炭化水素系プロトン伝導性高分子、具体的にはスルホン化エチレンテトラフルオロエチレン共重合体−グラフトーポリスチレン、スルホンアミド型エチレンテトラフルオロエチレン共重合体−グラフトーポリスチレン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホンアミド型ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化架橋ポリスチレン、スルホンアミド型架橋ポリスチレン、スルホン化ポリトリフルオロスチレン、スルホンアミド型ポリトリフルオロスチレン、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホンアミド型ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホンアミド型ポリ(アリールエーテルスルホン)、スルホン化ポリイミド、スルホンアミド型ポリイミド、スルホン化4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホンアミド型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、ホスホン酸型4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホンアミド型ポリベンゾイミダゾール、ホスホン酸型ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリビフェニレンスルフィド、スルホンアミド型ポリビフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホンアミド型ポリフェニレンスルホンなどを用いることができる。
【0074】
本発明に係るプロトン伝導体における無機プロトン伝導材料の含有量は、フィルム成形性を考慮すると20〜80重量%の範囲が好ましく、30〜70重量%の範囲がより好ましい。80重量%を超えると製膜時における乾燥工程でクラック等が生じるため好ましくない場合が多い。20重量%未満であると膨潤度抑制効果、プロトン伝導度向上効果が見られず好ましくない場合が多い。本発明に係るプロトン伝導体における有機プロトン伝導性高分子の含有量は、100重量%から上記の含有量を減じた値とすることが好ましいが、場合によっては、その他の成分を含んでいてもよい。
【0075】
このようにして、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体を実現することができる。また、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、可撓性、製膜性のいずれかの点で優れたプロトン伝導体を実現することができる。
【0076】
このプロトン伝導体よりなる膜(プロトン伝導膜)の両側に、金属を導電材に担持した触媒電極を配置してなる、触媒電極とプロトン伝導体の接合体(本明細書では、電極/膜/電極ユニットと呼称することもある。)は、片方の電極を酸化剤電極とし、他方の電極を燃料電極とし、プロトン伝導体を電解質として、燃料電池に好適に適用することができる。
【0077】
ここでの触媒電極は、触媒となる金属を導電材に担持することで作製できる。触媒電極に使用される金属としては、燃料の酸化反応および酸化剤の還元反応、たとえば、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、たとえば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、またはそれらの合金が挙げられる。特に白金が好ましい。
【0078】
触媒となる金属の形状も任意であるが、粒子状の場合には、その粒径は、100〜3000nmが一般的である。
【0079】
使用する導電材としては、電気伝導性物質であればいずれのものでもよく、たとえば各種金属や炭素材料などが挙げられる。炭素材料としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられる。これらが単独または混合して使用される。これら導電材に触媒金属を担持させる方法としては、触媒となる金属を還元法により導電材の表面に析出させる方法や、溶剤に触媒金属を懸濁させ、これを導電材表面に塗布する方法などがある。
【0080】
これらの金属は、カーボン微粒子等の電気伝導性微粒子よりなる導電材(担体)に付着等させた方が触媒としての使用量が少なく、コスト的に有利である。これらの金属の担持量は、一つの電極が形成された状態で、その片面の面積あたり0.01〜10mg/cm2が好ましい。このような電気伝導性微粒子としては、炭素微粒子が特に好ましい。
【0081】
金属を電気伝導性微粒子に担持した触媒電極に、上記で説明した有機プロトン伝導性高分子を加えると、触媒電極としての性能を保持したまま、その形状を容易に維持したり、変形したりできるようになるため、好ましい。具体的には、金属を担持した電気伝導性微粒子を、有機プロトン伝導性高分子の溶液に添加して、ペースト(電極形成用溶液)を調製し、この電極形成用溶液を、たとえばプロトン伝導体の膜の両側に塗布した後、乾燥する。このようにすると、プロトン伝導体の膜の両側に触媒電極が接合した電極/膜/電極ユニットを作製することができる。
【0082】
本発明に係る燃料電池は、以上のように形成された電極/膜/電極ユニットを使用して作製することができ、通常は、外側に燃料流路もしくは酸化剤流路を形成する溝付集電体を配したものを単セルとし、このような単セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより構成される。
【0083】
燃料として水素を使用し、酸化剤として酸素を使用する例について、発電の様子を図1を用いて説明する。図1中、単セル1は、プロトン伝導体2、酸素極3と燃料極4とよりなる電極/膜/電極ユニット5とその両側にある水素流路(燃料流路)8、酸素流路(酸化剤流路)11およびその外側にあるセパレータ6,7を構成要素としている。水素は入り口9から水素流路8に導かれ、消費されなかった水素は出口10から排出される。酸素は、入り口12から酸素流路11に導かれ、生成した水は消費されなかった酸素と共に出口13から排出される。発生した電気は、酸素極3と燃料極4とを使用して取り出される。
【0084】
燃料電池は、高い温度で作動させるほうが、電極の触媒活性があがり、電極過電圧が減少するため好ましいが、有機プロトン伝導性高分子は、水分がないと機能を発揮しないため、水分管理が可能な温度で作動させる必要がある。燃料電池の作動温度の好ましい範囲は室温〜100℃である。
【0085】
このようにして、優れたプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有する触媒電極とプロトン伝導体の接合体や燃料電池を実現することができる。
【0086】
次に本発明に係るプロトン伝導体の製造方法について説明する。本発明に係るプロトン伝導体は、上記した、ヘテロポリ酸やリン酸化合物等の無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とを、たとえば水を添加して、加水分解およびゾル−ゲル反応を行い、縮合させることにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体が縮合した無機プロトン伝導材料を含む第一の溶液(本明細書では、無機プロトン伝導材料溶液または単にゾルと呼称する場合もある。)を調製し、ついで、この第一の溶液を有機プロトン伝導性高分子を含有する溶液中に添加して、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とを含む第二の溶液を調製し、第二の溶液から、流延法によりプロトン伝導体よりなる膜を製造することで、膜として得ることができる。本発明に係るプロトン伝導体は、このように、無機プロトン伝導材料と有機プロトン伝導性高分子とを含むことから、ハイブリッドプロトン伝導体と呼称する場合もある。膜状の場合はハイブリッドプロトン伝導製膜と呼称する場合もある。
【0087】
無機プロトン伝導材料溶液の調製で使用する溶媒としては、本発明に係る無機固体酸やルイス酸性金属アルコキシドを均一に分散、溶解できる溶媒が挙げられ、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エトキシエタノール等の各種アルコール、アセトン等のケトン類、トルエン、キシレン類、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)といった塩基性溶媒が挙げられる。
【0088】
有機プロトン伝導性高分子の溶解溶媒としては、無機プロトン伝導材料溶液の調製に使用できる溶媒に相溶性のある、DMF、DMAc、NMP、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)、アセトニトリルを使用することができる。有機プロトン伝導性高分子を溶解した溶液の高分子化合物の濃度については、5〜50重量%であることが好ましい。5重量%未満では溶液粘度が低いため、膜の形成が困難になり、また50重量%より濃いと、ゲル化が生じるため膜の形成が困難になり、さらには金属成分が凝集するため、プロトン伝導膜中における無機化合物の分散状態が不均一となり、好ましくない。
【0089】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。なお、以下の処理、試験、測定を採用した。
【0090】
<プロトン伝導体前処理>
作製したプロトン伝導膜を1cmX4cmのサイズにカットし、0.1NのHClに一晩浸漬し脱溶媒を行い、ついで、イオン交換水で2時間洗浄し、表面の水をふき取り、その後2時間120℃で減圧乾燥を行った。
【0091】
<溶媒溶解試験>
前処理したプロトン伝導膜(1cmX4cm)を、20mLのNMP溶液に、室温下3日間浸漬し、その後、0.1NHClに16時間浸漬を行った。その後120℃で3時間乾燥し、浸漬前後の重量変化を測定した。
【0092】
溶解度(重量%)={[(NMP浸漬前の重量−NMP浸漬後の重量)]/(NMP浸漬前の重量)}×100
<膨潤度測定(面積変化)>
前処理後のプロトン伝導膜(1cmX4cm)を、80℃のイオン交換水中で1時間処理し、処理前後の面積変化により膨潤度を算出した。
【0093】
膨潤度(%)={[(温水処理後の面積)−(温水処理前の面積)]/(温水処理前の面積)}X100
<プロトン伝導度測定>
温度75℃、相対湿度90%で測定を実施した。インピーダンスの測定にはソーラトロン社のインピーダンスアナライザーを用い、交流法にて行った。振幅10mV、10k〜1kHzの周波数掃引を行い、得られたcole−coleプロットを直線近似し、実軸との切片を抵抗とした。
【0094】
図2に示すように、非導電性の基材21上に、上記の前処理後のプロトン伝導膜22を配置し、その上に、白金線23を0.5cm間隔で5本並行に巻き付けた非導電性電極支持基材24を配置し、白金線の間を適宜通電し、白金線間距離を0.5cm、1cm、1.5cm、2cmと変えて抵抗を測定し、得られたそれぞれの抵抗値を電極間距離に対しプロットした。このプロットは直線になった。この勾配から以下の式にて、プロトン伝導度を算出した。
【0095】
プロトン伝導度=1/[(勾配)×(試料膜厚)×(試料幅)]
<耐酸化性試験(フェントン試験)>
前処理したプロトン伝導膜を、30重量%の過酸化水素水20mLに硫酸鉄7水和物1.9mgを加え60℃に加熱して作製したフェントン試薬(鉄40重量ppmを含む)に浸漬し、プロトン伝導膜がフェントン試薬に溶解するに至るまでの時間を求めた。
【0096】
<燃料電池単セル性能評価>
電極/膜/電極ユニットを図1に示した評価セルに組み込み、燃料電池出力性能を評価した。反応ガスには水素/酸素を用い、ともに101.3kPaの圧力にて、それぞれ、70℃の水バブラーを通して加湿したあと、入り口9,12から、評価セルに供給した。ガス流量は水素60mL/分、酸素40mL/分、セル温度は75℃とした。電池出力性能はH201B充放電装置(北斗電工製)により評価した。
【0097】
<粘弾性測定>
RSA−II粘弾性測定装置を用い、50〜250℃の温度範囲で貯蔵弾性率の測定を行った。実施例1と比較例1における貯蔵弾性率の測定結果を図3に示す。ガラス転移温度(ガラス転移点)はtanδの微分より求めた。
【0098】
<無機プロトン伝導材料の調製>
[参考例1]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物とが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との合計を10300モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを24モル部とした。
【0099】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0100】
[参考例2]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌後、ケイ素のアルコキシド化合物であるフェニルトリエトキシシラン4.1gを添加し、1時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を12200モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0101】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0102】
[参考例3]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌後、プロトン解離性の官能基を有するケイ素のアルコキシド化合物である2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン5.5gを添加し、1時間撹拌を行った。反応後イオン交換水を3mL添加し、さらに1時間反応を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を12200モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0103】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0104】
[参考例4]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌後、プロトン解離性の基を有するケイ素のアルコキシド化合物であるジエチルホスフェートエチルトリエトキシシラン5.6gを添加し、1時間撹拌を行った。反応後、イオン交換水を3mL添加し、さらに1時間反応を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を12200モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0105】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0106】
[参考例5]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.0g、タングストケイ酸0.15gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加、し3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物とが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を10300モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを24モル部とした。
【0107】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、タングストリン酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0108】
[参考例6]
室温下、無機固体酸のうちのヘテロポリ酸であるタングストリン酸2.5g、リン酸0.85gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を930モル部とし、リン酸の100モル部に対しヘテロポリ酸を1000モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを24モル部とした。
【0109】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、無機固体酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0110】
[参考例7]
室温下、無機固体酸のうちのヘテロポリ酸であるタングストリン酸2.0g、タングストケイ酸0.15g、リン酸0.85gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。さらに、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン15gを添加し、3時間撹拌を行った。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物が縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドとケイ素のアルコキシド化合物との和を930モル部とし、リン酸の100モル部に対しヘテロポリ酸を1000モル部とし、ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドを19モル部とした。
【0111】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、無機固体酸が充分固定されていることが分かり、均一ゾルの調製が可能であった。
【0112】
[比較参考例1]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸2.5gを溶解したイソプロパノール5mL溶液を、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン5gをイソプロパノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。なお、ケイ素のアルコキシドは使用しなかった。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドを2000モル部とした。
【0113】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ6であり、無機固体酸が充分固定されていることが分かったが、ゾルに沈殿が見られ均一ゾルの調製が不可能であった。
【0114】
[比較参考例2]
室温下、無機固体酸であるタングストリン酸3.45gを溶解したエタノール5mL溶液を、ケイ素のアルコキシド化合物であるテトラエトキシシラン5gをエタノール5mLに溶解した溶液に添加し、1時間反応を行った。無機固体酸の100モル部に対しケイ素のアルコキシド化合物を2000モル部とした。ケイ素のアルコキシド化合物の100モル部に対し、ルイス酸性金属アルコキシドは0(ゼロ)モル部であった。
【0115】
反応溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ3であり、タングストリン酸固定が不充分であった。
【0116】
[比較参考例3]
室温下、ルイス酸性金属アルコキシドであるテトライソプロポキシチタン1gをイソプロパノール5mLに溶解し、無機固体酸であるタングストリン酸3.45gを溶解したイソプロパノール5mLに溶解した溶液を添加し、1時間反応を行った。なお、ケイ素のアルコキシドは使用しなかった。これにより、無機固体酸とルイス酸性金属アルコキシドとが縮合し、共有結合した無機プロトン伝導材料溶液(ゾル)が得られた。無機固体酸の100モル部に対しルイス酸性金属アルコキシドを400モル部とした。
【0117】
この無機プロトン伝導材料溶液を硝子板に塗布し、150℃で乾燥し、粉末を得た。得られた粉末0.1gを秤量し、イオン交換水20mLに4時間浸漬し、イオン交換水のpHを測定したところ3であり、無機固体酸の固定が不充分であった。
【0118】
参考例1〜7と比較参考例1〜3との比較から、無機固体酸と、当該無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とを反応させることにより、無機プロトン伝導材料中に遊離の無機固体酸がより存在しがたくなり、従来技術における無機プロトン伝導材料からの無機固体酸の漏洩によるプロトン伝導度低下の課題が解決されることが理解できる。
【0119】
<有機プロトン伝導性高分子の合成>
[参考例8]
粉砕したポリエーテルエーテルケトン10gを濃硫酸200mLに徐々に添加し、5時間スルホン化反応を行った。反応終了後、4Lのイオン交換水で3回洗浄を行い、ろ過で回収後、120℃で一晩乾燥を行い、本発明に係る有機プロトン伝導性高分子である、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。1H−NMRにより算出したスルホン化率は58モル%(EW:634)であった。
【0120】
[参考例9]
粉砕したポリエーテルスルホン10gを濃硫酸200mLに徐々に添加し、5時間スルホン化反応を行った。反応終了後、4Lのイオン交換水で3回洗浄を行いろ過で回収後120℃で一晩乾燥を行い、本発明に係る有機プロトン伝導性高分子である、スルホン化ポリエーテルスルホンを得た。1H−NMRにより算出したスルホン化率は50モル%(EW:544)であった。
【0121】
[参考例10]
参考例8で調製したスルホン化ポリエーテルエーテルケトン10gをDMF20mLに溶解し、チオニルクロリド250mLを滴下した。その後、2時間還流を行い、得られた混合物を100mLの残留物になるまで蒸留し、冷却後、混合物を1.5Lのエーテル中に撹拌しながら投入した。その後、吸引ろ過で回収し、エーテルで洗浄を行った。得られたスルホンクロリド化されたポリエーテルエーテルケトン10gを、30mLのDMFに溶解し、エチルアミン5gを0℃で滴下により添加し、16時間室温で反応させ、ついで、1Lのイオン交換水に再沈殿させ、本発明に係る有機プロトン伝導性高分子である、スルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトンを得た。1H−NMRにより算出したスルホンアミド化率は45モル%(EW:877)であった。
【0122】
[実施例1]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0123】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が31重量%のプロトン伝導体を得た。
【0124】
得られたプロトン伝導体は均一な膜厚の良好な膜となっており、手で曲げても折れるようなことはなく、良好な可撓性を示した。このような良好な製膜性と可撓性と耐久性とは、すべての実施例で共通していた。
【0125】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0126】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度(175℃)以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0127】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0128】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0129】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.0X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0130】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0131】
[実施例2]
参考例2と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0132】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が30重量%のプロトン伝導体を得た。
【0133】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は12重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0134】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0135】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0136】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0137】
また、得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は45%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.7X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.1X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は65分であった。
【0138】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0139】
[実施例3]
参考例3と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0140】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が34重量%のプロトン伝導体を得た。
【0141】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は13重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0142】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0143】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0144】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0145】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は47%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.5X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は68分であった。
【0146】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0147】
[実施例4]
参考例4と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0148】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が35重量%のプロトン伝導体を得た。
【0149】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は9重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0150】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0151】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0152】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0153】
また、得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は52%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0154】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0155】
[実施例5]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液3gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0156】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が45重量%のプロトン伝導体を得た。
【0157】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は9重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0158】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0159】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0160】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0161】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は20%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.0X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は80分であった。
【0162】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0163】
[実施例6]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例9で調製したスルホン化率50モル%のスルホン化ポリエーテルスルホン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0164】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が31重量%のプロトン伝導体を得た。
【0165】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は9重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0166】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0167】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0168】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0169】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は62%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は1.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は68分であった。
【0170】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0171】
[実施例7]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例10で調製したスルホンアミド化率45モル%のスルホンアミド型ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0172】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が31重量%のプロトン伝導体を得た。
【0173】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は13重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0174】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0175】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0176】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0177】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.4X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は1.9X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0178】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0179】
[実施例8]
参考例5と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0180】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が34重量%のプロトン伝導体を得た。
【0181】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0182】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0183】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0184】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0185】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0186】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0187】
[実施例9]
参考例6と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0188】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が36重量%のプロトン伝導体を得た。
【0189】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0190】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0191】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0192】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0193】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフィルムの溶解時間は70分であった。
【0194】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0195】
[実施例10]
参考例7と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例11で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0196】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が35.2重量%のプロトン伝導体を得た。
【0197】
得られたプロトン伝導体の溶媒溶解試験において、溶解度は10重量%であり、実質的に溶解性を示さなかった。
【0198】
また、プロトン伝導体の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が、無機プロトン伝導性材料を添加する前の有機プロトン伝導性高分子のガラス転移温度以上の領域での緩和に比して小さかった。
【0199】
さらにプロトン伝導体の電子顕微鏡観察において、無機プロトン伝導材料が、実質的にミクロンオーダ以下のサイズでしか観察されなかった。
【0200】
以上のことから当該プロトン伝導体は、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に侵入して網目構造を形成していることが確認された。
【0201】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は50%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は3.0X10−1S/cmであった。また80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.5X10−1S/cmであった。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は70分であった。
【0202】
これらの結果から、膨潤度の抑制が可能であり、高いプロトン伝導度が発現し、温水処理後においてもプロトン伝導度の維持が可能であり、また、耐久性(耐酸化性)にも優れ、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性を有することが理解される。
【0203】
[比較例1]
参考例8で得られた、スルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)を調製し、無機プロトン伝導材料を加えず、そのまま、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、プロトン伝導体を得た。
【0204】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は167%と、膨潤による寸法変化が激しかった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は1X10−5S/cmと、プロトン伝導度の発現も低かった。また、耐酸化性試験におけるフイルムの溶解時間は30分であった。
【0205】
無機固体酸をキャリアとして含む実施例1〜10とキャリアを含まない比較例1とを比較すると、プロトン伝導度において顕著な差が見られた。すなわち、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料との互いの分子鎖同士が相互に進入して網目構造を形成している実施例1〜10と、有機プロトン伝導性高分子のみの比較例1とを比較すると、膨潤度、プロトン伝導度、耐久性(耐酸化性)に顕著な差が見られ、本発明の効果が確認される。
【0206】
[実施例11]
40重量%の白金担持カーボンを作製し、この40重量%の白金担持カーボンに、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの10重量%のNMP溶液を、白金担持カーボンとスルホン化ポリエーテルエーテルケトンとの重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極形成用溶液)を調製した。
【0207】
この電極形成用溶液を実施例1で得られたプロトン伝導体の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の電極/膜/電極ユニットを作製した。得られた電極/膜/電極ユニットは、良好な形状保持性を示し、また、手で曲げても、ひび割れや剥離は起こらなかった。
【0208】
これを用いて、図1に示した評価セルを使用し、燃料電池単セル性能評価をしたところ37mWの出力を示し、安定に作動した。
【0209】
[実施例12]
実施例11と同様の40重量%の白金担持カーボンに、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの10重量%のNMP溶液を、白金担持カーボンとスルホン化ポリエーテルエーテルケトンとの重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極形成用溶液)を調製した。この電極形成用溶液を実施例2で得られたプロトン伝導体の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の電極/膜/電極ユニットを作製した。得られた電極/膜/電極ユニットは、良好な形状保持性を示し、また、手で曲げても、ひび割れや剥離は起こらなかった。
【0210】
これを用いて、図1に示した評価セルを使用し、燃料電池単セル性能評価をしたところ39mWの出力を示し、安定に作動した。
【0211】
[実施例13]
実施例11と同様の40重量%の白金担持カーボンに、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの10重量%のNMP溶液を、白金担持カーボンとスルホン化ポリエーテルエーテルケトンとの重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極形成用溶液)を調製した。この電極形成用溶液を実施例3で得られたプロトン伝導体の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の電極/膜/電極ユニットを作製した。得られた電極/膜/電極ユニットは、良好な形状保持性を示し、また、手で曲げても、ひび割れや剥離は起こらなかった。
【0212】
これを用いて、図1に示した評価セルを使用し、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示し、安定に作動した。
【0213】
[比較例2]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液6gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン0.28gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0214】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が85重量%のプロトン伝導体の調製を行ったが、ひび割れを生じプロトン伝導体を得ることができなかった。
【0215】
[比較例3]
参考例1と同様な条件で調製した無機プロトン伝導材料溶液0.5gを、参考例8で調製したスルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0216】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導材料が12重量%のプロトン伝導体を得た。
【0217】
得られたフィルムの溶媒(NMP)溶解試験において溶解度は35%であり、溶解性を示し、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の絡み合いが不充分であることが確認された。また得られたフィルムの温水処理後の面積変化は100%であった。プロトン伝導度は2.5X10−2S/cmであった。また80℃温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は2.0X10−2S/cmであった。すなわち、伝導度の発現は十分であるが、膨潤による寸法変化が激しかった。また耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は35分であった。
【0218】
[比較例4]
比較参考例2で調製した無機プロトン伝導材料溶液2gを、参考例8で調製した、スルホン化率58モル%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトン1gが溶解したNMP溶液(5.7mL)に添加し、80℃で3時間撹拌を行った。
【0219】
その後、アプリケーターを用いて、ガラス製の基材上にフィルム状に塗布し、150℃、2時間の条件で乾燥を行い、無機伝導体含有量35重量%のプロトン伝導体を得た。
【0220】
得られたプロトン伝導体の膨潤度測定では、膨潤度(%)は45%であった。プロトン伝導度測定によるプロトン伝導度は2.5X10−2S/cmであった。また、80℃、24時間温水処理後のプロトン伝導体のプロトン伝導度は5.0X10−4S/cmであった。すなわち、膨潤度の抑制および高いプロトン伝導度の発現は可能であったが、温水処理後においてはプロトン伝導度の低減が確認された。耐酸化性試験(フェントン試験)におけるフイルムの溶解時間は60分であった。温水処理後のプロトン伝導度の低下が大きいのは、低反応性のケイ素アルコキシド化合物のみを使用していることにより遊離の無機固体酸が残留しているためと考えられる。
【0221】
比較例2においては無機プロトン伝導体の重量含有量が85重量%と高いため、ひび割れが生じプロトン伝導膜を得ることができない。
【0222】
比較例3においては無機プロトン伝導体の重量含有量が12重量%と低いため有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料の互いの分子鎖同士が相互に進入して網目構造を形成することが不充分であり、耐酸化性向上・膨潤度抑制効果・プロトン伝導度向上効果が見られない。
【0223】
比較例4においては低反応性のケイ素化合物のみを使用していることにより遊離のタングストリン酸が残留しており温水処理前後でプロトン伝導度の維持が不可能であるが、実施例1〜10では高反応性金属アルコキシドを使用することにより遊離のタングストリン酸の残留が大幅に減少し温水処理前後でのプロトン伝導度の維持が可能である。
【0224】
【発明の効果】
本発明により、固体高分子型燃料電池としての使用に充分なプロトン伝導性と耐久性(耐酸化性)とを有するプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供できる。さらに、水やメタノール等による膨潤の抑制(寸法安定性)、可撓性、製膜性のいずれかの点で優れたプロトン伝導体およびそれを用いた触媒電極とプロトン伝導体の接合体、燃料電池並びにプロトン伝導体の製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池(単セル)を模式的に示す側断面図である。
【図2】プロトン伝導度測定用のデバイスを示す模式的側断面図である。
【図3】50〜250℃における貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 単セル
2 プロトン伝導体
3 酸素極
4 燃料極
5 電極/膜/電極ユニット
6,7セパレータ
8 水素流路
9,12入り口
10,13出口
11 酸素流路
21 非導電性の基材
22 プロトン伝導膜
23 白金線
24 非導電性電極支持基材
Claims (19)
- 有機プロトン伝導性高分子および、
無機固体酸と、当該無機固体酸の100モル部に対し合計で450〜20000モル部の範囲にあるルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体とが縮合してなる無機プロトン伝導材料
からなり、
当該有機プロトン伝導性高分子の分子鎖と当該無機プロトン伝導材料の分子鎖とが相互に侵入して網目構造を形成しているプロトン伝導体。 - 前記ケイ素酸化物前駆体の100モル部に対し、前記ルイス酸性金属アルコキシドが5〜50モル部の範囲にある、請求項1に記載のプロトン伝導体。
- 前記ルイス酸性金属アルコキシドを構成するルイス酸性金属として、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含む、請求項1または2に記載のプロトン伝導体。
- 前記ケイ素酸化物前駆体がケイ素のアルコキシド化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のプロトン伝導体。
- 前記ケイ素のアルコキシド化合物として、プロトン解離性の官能基を含有するケイ素のアルコキシド化合物を含む、請求項4に記載のプロトン伝導体。
- 前記ケイ素のアルコキシド化合物中のプロトン解離性の官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基である、請求項5に記載のプロトン伝導体。
- 前記無機固体酸としてヘテロポリ酸を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のプロトン伝導体。
- 前記無機固体酸として、
ヘテロポリ酸と、
リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体からなる群の内の少なくとも一つのリン酸化合物とを含み、
リン酸化合物の100モル部に対しヘテロポリ酸が1〜5000モル部の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載のプロトン伝導体。 - 前記ヘテロポリ酸として、タングストリン酸、タングストケイ酸およびモリブドリン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を含む、請求項7または8に記載のプロトン伝導体。
- 前記有機プロトン伝導性高分子が、側鎖末端にプロトン解離性基を有している、請求項1〜9のいずれかに記載のプロトン伝導体。
- 前記有機プロトン伝導性高分子中のプロトン解離性基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基である、請求項10に記載のプロトン伝導体。
- 前記有機プロトン伝導性高分子を20〜80重量%含有する、請求項1〜11のいずれかに記載のプロトン伝導体。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のプロトン伝導体よりなる膜の両側に、金属を電気伝導性微粒子よりなる担体に担持した触媒電極を配置してなる、触媒電極とプロトン伝導体の接合体。
- 前記電気伝導性微粒子が炭素微粒子を含む、請求項13に記載の触媒電極とプロトン伝導体の接合体。
- 前記触媒電極が有機プロトン伝導性高分子を含む、請求項13または14に記載の触媒電極とプロトン伝導体の接合体。
- 前記触媒電極中に含まれる有機プロトン伝導性高分子が、側鎖末端にプロトン解離性基を有している、請求項15に記載の触媒電極とプロトン伝導体の接合体。
- 前記触媒電極中に含まれる有機プロトン伝導性高分子中のプロトン解離性基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基およびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つの基である、請求項16に記載の触媒電極とプロトン伝導体の接合体。
- 請求項13〜17のいずれかに記載の触媒電極とプロトン伝導体の接合体を使用してなる燃料電池。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のプロトン伝導体を製造するにあたり、
ルイス酸性金属アルコキシドとケイ素酸化物前駆体と無機固体酸とを、加水分解および縮合することにより、当該ルイス酸性金属アルコキシドと無機固体酸とが縮合した無機プロトン伝導材料を含む第一の溶液を調製し、
ついで、第一の溶液を有機プロトン伝導性高分子を含有する溶液中に添加して、有機プロトン伝導性高分子と無機プロトン伝導材料とを含む第二の溶液を調製し、
当該第二の溶液から、流延法によりプロトン伝導体よりなる膜を製造する、
プロトン伝導体の製造方法。
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