JP2005024445A - アフィニティー電気泳動用部材及びアフィニティー電気泳動処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】分析対象物質を迅速、かつ正確に分離、検出が可能なアフィニティー電気泳動用部材、および迅速、かつ正確な電気泳動処理方法を提供すること。
【解決手段】微細な流路を有するアフィニティー電気泳動用部材であって、前記流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有し、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材、および該部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または検出する電気泳動処理方法。
【選択図】 図2
【解決手段】微細な流路を有するアフィニティー電気泳動用部材であって、前記流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有し、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材、および該部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または検出する電気泳動処理方法。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流路内壁に多孔質層を有するアフィニティー電気泳動用部材、および、泳動媒体にゲルや粘稠液体を使用しないアフィニティー電気泳動処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸や遺伝子をはじめとする微小物質を選択的に分離、検出することは生化学分野において重要なプロセスであり、これら微小物質を分離、検出する装置や検出方法については広く検討がなされている。なかでも遺伝子診断の分野においては、一塩基多型の分離、検出を迅速に行うことが重要な課題の一つとなっており、こうした要求に対し、高分解能で迅速な分析を行うことのできる電気泳動法が広く研究されている。
【0003】
電気泳動としては、分析対象物質の媒体としてゲルを使用したゲル電気泳動が主として使用されていたが、近年、取り扱いの不便なゲルを使用しない、アフィニティー・ゾル電気泳動法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)該アフィニティー・ゾル電気泳動法は、通常の電気泳動に用いられる電気泳動用キャピラリーを使用し、電気泳動の媒体として、プローブを結合したゾルを用いるものである。この技術は、分析に先立って、キャピラリー中でゲルを調製する必要はないが、微細なキャピラリーに粘稠なゾルを充填するという操作が必要であり、やはり、準備に手間と時間を要するものであった。
【0004】
また、同じ文献(非特許文献1)には、特定の物質にアフィニティーを有するプローブとアクリルアミドの共重合体を内壁にコーティングした電気泳動用キャピラリーと、それを用いた電気泳動分離方法が開示されている。該技術によれば、プローブはキャピラリー内面に固定されているので、分析に先だってゾルやゲルを導入する操作は不要である。
【0005】
しかし、本発明者らの実験によれば、該キャピラリーは乾燥すると特性が劣化し、しかも乾燥条件によって特性の劣化の程度が変化して、分析の再現性が低下するため、湿潤状態で保存する必要があった。これは、ミクロに見れば、プローブが、固相表面ではなく、アクリルアミドポリマーのコーティング層中に埋め込まれた状態で固定されているためと思われる。そのため、市場における流通や保管に手間がかかる上、使用期限も短かった。
【0006】
さらに、該文献では、該キャピラリーを用いた分離方法を「アフィニティーキャピラリー電気泳動」と称しているが、周知のアフィニティー電気泳動とは異なるものであった。即ち、通常のアフィニティー電気泳動は、分析対象物質とプローブのアフィニティーの差によって泳動速度に差を生じさせ、移動距離の差、又は溶出時間の差で分離する。それに対し、該キャピラリーを用いた分離法では、移動距離や溶出時間の差はなく、電気泳動の媒体である緩衝溶液中のMg2+イオン濃度を調節して一方の成分を吸着して溶出させなくすることによって分離する。そのため、特定の分離対象ごとに条件を設定する必要がある上、1回の電気泳動によって、混合試料中の各成分の存在の有無や存在比を測定することなどは出来なかった。
【0007】
一方、本発明者らの出願になる、基材表面の多孔質層に分子認識機能を有する成分が固定化されたセンサーが開示されている(特許文献1参照。)。該センサーは基材表面の多孔質層部分が大きな表面積を有するため、プローブ固定量を多くすることができ、その形状はキャピラリー形状であってよい旨が記載されている。しかし、アフィニティー電気泳動用部材として有効に使用できることや、そのために必要な形状については何ら示されていなかった。
【0008】
【非特許文献1】
穴田貴久、前田瑞夫,「バイオサイエンスとインダストリー」,2001年,Vol.59,No.11,p.751−754
【特許文献1】
特開2000−2705号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、分離媒体としてゾルやゲルを用いる必要がなく、分析対象物質を迅速、かつ正確に分離、検出が可能で、乾燥による性能の劣化がないアフィニティー電気泳動用部材、および流路内でのゲル形成操作や流路へのゾル充填操作が不要で、迅速、かつ正確な電気泳動処理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、アフィニティー電気泳動用部材の流路内壁面に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有することにより、流路を閉塞することなく、微細な領域においても多量のプローブ固定量を実現でき、さらに、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜100μmの範囲にあることにより、流路内部を移動する分析対象物質とプローブとの間に有効にアフィニティーが生じ、分離媒体としてゾルやゲルを用いなくとも、正確で迅速な分析が可能となる。また、多孔質の細孔表面に固定されたプローブ化合物は、ポリマー中に埋め込まれることなく、固体である多孔質層の細孔表面に固定可能であるため、乾燥させても特性が変化しない。
【0011】
すなわち本発明は微細な流路を有するアフィニティー電気泳動用部材であって、前記流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有し、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材、該アフィニティー電気泳動用部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または分析する電気泳動処理方法を提供することにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のアフィニティー電気泳動用部材(以下、単に電気泳動用部材と称する。)は、微細な流路を有しており、該流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を持ち、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にある。
【0013】
[部材]
本発明のアフィニティー電気泳動用部材の外形は任意であり、例えばチューブ状の毛細管であって良い。また、流路を塊状や板状の成形物の内部に形成してもよく、いわゆるマイクロ流体デバイス内に形成された毛細管状の流路であって良い。
【0014】
ここで、マイクロ流体デバイスとは、マイクロ・フルイディック・デバイス、マイクロ・ファブリケイテッド・デバイス、ラボ・オン・チップ、又はマイクロ・トータル・アナリティカル・システム(μ−TAS)とも呼ばれるものを指し、該流路内で、流体が温度変化をうける機構、濃度調整される機構、化学反応をうける機構、流動の流速、流動の分岐、混合若しくは分離などの制御をうける機構、又は電気的、光学的な測定をうける機構等を設けた毛細管状の流路を有するデバイスである。
【0015】
本発明の電気泳動用部材の素材は、電気絶縁性のものであれば任意であり、例えば、ガラス、水晶等の結晶、シリコンなどの半導体、セラミック、炭素、有機重合体(ポリジメチルシロキサンのように、無機元素を含有するものであってもよい。以下単に「重合体」と称する。)、又はこれらの発泡体などであることが好ましい。
【0016】
[流路]
本発明の電気泳動用部材の有する微細な流路の断面形状は、特に限定されないが、方形形状であると、流路内を泳動する分析対象物質が壁面の多孔質層に固定化されたプローブと均一に相互作用を生じるため好ましい。
【0017】
流路の断面の大きさとしては、流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離を1μm〜100μmの範囲とすることにより、分析対象物質が壁面に固定化されたプローブとあれば任意である。流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離が上記範囲を超えると、分析対象物質が、多孔質層表面に固定されたプローブと相互作用せずに前記流路内を移動する割合が無視できない量となるため、分離や検出等の分析性能が低下する。また、上記範囲未満では精度よく製造することが難しく流路が閉塞されるおそれが生じる。ただし、多孔質層が流路内壁面の一部にのみ形成されていて、対向する内壁面に形成されていない場合、特に流路断面形状が方形形状の流路内壁面の一部のみが多孔質層である場合には、流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離は、1μm〜50μmの範囲であることが好ましく、3〜30μmの範囲であることがより好ましい。流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離を該範囲内とすると、流路内に導入された分析対象物質と、多孔質層表面に固定されたプローブとの相互作用がより得られやすい。
【0018】
多孔質層が流路内壁の一部、例えば断面形状が方形形状である流路の一面のみに形成されている場合などにおいては、該流路断面内において、多孔質層から対向する内壁までの距離と直行する方向の距離が、0.5μm〜3mmの範囲内であることが好ましく、5μm〜500μmの範囲内であることがさらに好ましく、10μm〜200μmの範囲内であることが最も好ましい。この範囲とすることで、ばらつきなく製造することが容易になり、電気泳動用電流による温度上昇も少なくなる。
【0019】
なお、上記断面形状、寸法は、本発明の電気泳動を行う流路についてのものであり、その他の部分、例えば該電気泳動を行う流路部分への導入用流路部分や、他の処理を行う部分への連絡用流路については任意である。
【0020】
流路の泳動方向における長さは任意であり、用途目的により好適な長さをとり得るが、1mm〜100mmが好ましく、3mm〜30mmがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、十分な分離能を得ることができ、上記上限以下とすることで、必要な印可電圧の低下、分離時間の短縮、本発明になる電気泳動用部材の小型化が計れる。
【0021】
また流路の形態も任意であり、直線であっても、曲線であっても、それらの組み合わせであっても、分岐していても構わない。また流路の、本電気泳動用部材外への開口部(以下。単に「開口部」と称する)の位置、および個数は任意であり、一本の流路に複数の開口部があっても構わない。また、一つの部材中に掲載される独立した流路の本数も任意である。
【0022】
[多孔質層]
本発明の電気泳動用部材の流路は、その内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有する。ここでいう「多孔質層」とは、層内に、表面まで連絡し、表面に開口している多数の細孔、即ち、連通細孔を有するものをいう。細孔の形状は任意であり、例えば三次元網目状(スポンジ状)、凝集粒子状、井戸状、不織布や編織布の繊維間状等であり得る。
【0023】
前記多孔質層は、流路内壁面の少なくとも一部に形成されており、流路内部を泳動する分析対象物質が該多孔質層に固定したプローブと相互作用を生じればよい。流路内壁面に形成される多孔質層の面積が一定である場合、分析対象物の流れ方向に長く且つ内壁の一部のみが多孔質層である場合よりも、内壁の全面が多孔質層である方が、より良好な相互作用が得られるため好ましい。面積が一定で内壁の一部のみを多孔質層とする場合には、その断面の周囲の1/4以上が多孔質層であることが好ましい。多孔質層の断面の周囲に占める割合が1/4よりも小さくなる場合には、プローブと分析対象物質と間の相互作用が減少する。
【0024】
流路断面が方形である場合にも、上記したように流路内全面に多孔質層が形成されていることが好ましいが、一面のみ、特に底面のみに多孔質層を有する構造は作製が容易であるため、一面のみの多孔質層で十分な相互作用が得られる場合には、一面のみに多孔質層を有する流路が好ましい。
【0025】
流路部分の長さ方向における、多孔質層の形成部位は、流路部分の長さ方向の全体であっても、該流路形成部分が長さ方向で途切れていてもよいが、長さ方向に途切れずに形成されていることが、分離能が向上するため好ましい。
【0026】
多孔質層の厚みは、0.5μm〜30μmが好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、2μm〜10μmが最も好ましい。この下限以上とすることで、十分に多量のプローブを流路内面に固定可能であり、この上限以下とすることで、溶液中の分離対象物質が、細孔表面に固定されたプローブと相互作用する時間が短くなり分離や分析の時間短縮が計れる。
【0027】
上記多孔質層の細孔の孔径も任意であるが、0.05μm〜3μmが好ましく、0.1μm〜1μmがさらに好ましい。この下限以上とすることで、十分な量のプローブが固定可能となる。また、前記上限以下とすることで、タンパクのような巨大分子もプローブとして固定可能である上、多孔質層の深い部分と表面間の物質移動速度が高くなり、迅速な分離が可能になる。なお、前記細孔径は、多量に存在する細孔の孔径であり、必ずしも平均径とは限らない。前記孔径は分布が狭い方が、分離効率が高くなり、好ましい。
【0028】
[プローブ]
流路内壁の多孔質層表面に固定された、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブとしては、分析対象物質に応じて適宜選択すればよく、各種の触媒、酵素・抗体・抗原その他の蛋白、DNAやRNAなどのオリゴヌクレオチド、糖鎖、糖脂質、細胞などの生体組織、などが挙げられる。もちろん、これらは化学修飾体であっても良い。なかでも、プローブとしてオリゴヌクレオチドを使用した場合には、遺伝子の分離や検出が可能であり、遺伝子の一塩基変異の検出にも有効に使用できる。また、多孔質の細孔表面に固定されたプローブ化合物は、ポリマー中に埋め込まれることなく、固体である多孔質層の細孔表面に固定可能であるため、乾燥させても特性が変化しない。
【0029】
多孔質層に固定されるプローブの量は、プローブとのアフィニティーを有する分析対象物質の量に対して過剰量であることが好ましい。プローブ量が過剰量である場合には、過少量である場合と比較して、プローブとの相互作用に関与する分析対象物質の量が増え、局所的に分析対象物質濃度が高くなるために、分析対象物質を高感度に検出することが可能となる。このような理由から、多孔質層に固定されるプローブの量は多い方が好ましい。
【0030】
流路に固定されるプローブの量を増加させる方法としては、固定密度を変えずに固定面積を大きくする方法と、固定面積を変えずに固定密度を大きくする方法とがあるが、前者は固定密度に限界があるため、後者の方が、試料溶液中の前記特定の物質の濃度が高くても分離能が高く維持されるために好ましい。
【0031】
また、プローブの固定部位は多孔質層表面のみでなくともよく、多孔質層が流路の一部の面に形成されている場合には、多孔質層形成面以外の流路内壁部にもプローブが固定されていてもよい。
【0032】
このように、本発明の電気泳動用部材は、アフィニティー電気泳動用部材の流路内壁面に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有することにより、流路を閉塞することなく、微細な領域においても多量のプローブ固定量を実現でき、さらに、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜100μmの範囲にあることにより、流路内部を移動する分析対象物質とプローブとの間に有効にアフィニティーが生じるため、電気泳動媒体としてゾルやゲルを使用することなく、正確で迅速な分析が可能となる。
【0033】
特に、流路の断面形状が方形形状であり、かつ多孔質層が流路内壁面の一面にのみ形成された構成のものは、流路内部を泳動する分析対象物質が、より好適に多孔質層表面に固定されたプローブと相互作用を生じるため、該構造のアフィニティー電気泳動用部材を使用することが好ましい。
【0034】
[流路の製造]
本発明の電気泳動用部材の作製方法について、以下に好ましい例を挙げて説明する。本発明の電気泳動用部材は、例えば、以下の(1)〜(4)の工程により作製できる。
(1)支持体の表面に多数の細孔を有する多孔質層を形成する工程、
(2)多孔質層の表面に分析対象物質とアフィニティーを有するプローブを固定する工程、
(3)該多孔質層の上に活性エネルギー線重合性の化合物(a)を含有する活性エネルギー線硬化性の組成物(X)を塗工し、該組成物(X)の未硬化塗膜を形成し、流路と成すべき部分以外の前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記組成物(X)の硬化又は半硬化塗膜を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(X)を除去して、多孔質層が底面に露出した凹部を形成する工程、
(4)前記凹部を有する部材の凹部に蓋となる他の部材を固着して前記凹部を空洞状の流路と成す工程。
【0035】
工程(1)において多数の細孔を有する多孔質層を形成する方法としては、多孔質層が形成できれば任意であり、例えば下記の三つの方法を好適に使用することができる。
【0036】
多孔質層を形成する第一の方法は、支持体上に活性エネルギー線重合性の化合物(b)(以下、該化合物を重合性化合物(b)と称する。)と、重合性化合物(b)とは相溶するが、重合性化合物(b)の重合体とは相溶しない貧溶剤(R)とを含有する活性エネルギー線硬化性の製膜液(Y)(以下、該製膜液を製膜液(Y)と称する。)を塗布した後、該製膜液(Y)に活性エネルギー線を照射し、重合性化合物(b)を重合させると共に相分離を生じさせることにより、多孔質層を形成する方法(以下、該方法を反応誘発型相分離法と称する。)である。該方法では、重合性化合物(b)の重合により生成した重合体が、貧溶剤(R)と相溶しなくなり、重合体と貧溶剤(R)とが相分離を生じ、重合体内部や重合体間に貧溶剤(R)が取り込まれた状態になる。この貧溶剤(R)を除去することにより、貧溶剤(R)が占めていた領域が孔となり多孔質層を形成できる。
【0037】
重合性化合物(b)としては、重合開始剤の存在下または非存在下で活性エネルギー線により重合するものであり、付加重合性の化合物や、活性エネルギー線重合性官能基として重合性の炭素−炭素二重結合を有するものが好ましく、なかでも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物が好ましい。さらに、半硬化の状態で形状保持性を高くでき、硬化後の強度も高くできることから、重合して架橋重合体を形成する化合物であることが好ましい。そのために、1分子中に2つ以上の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、「1分子中に2つ以上の付加重合性の官能基を有する」ことを「多官能」と称する。)であることが更に好ましい。
【0038】
このような重合性化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、マレイミド系モノマー、あるいは、分子鎖に(メタ)アクリロイル基やマレイミド基を有する重合性のオリゴマー(プレポリマーともいう。)などが使用できる。
【0039】
反応誘発型相分離法で使用する貧溶剤(R)としては、重合性化合物(b)とは相溶するが、重合性化合物(b)から生成する重合体は溶解(相溶)しないものを使用する。貧溶剤(R)と重合性化合物(b)との相溶の程度は、均一な製膜液(Y)が得られればよい。貧溶剤(R)は、単一溶剤であっても混合溶剤であってもよく、混合溶剤の場合には、その構成成分単独では重合性化合物(b)と相溶しないものや、重合性化合物(b)の重合体を溶解させるものであっても良い。このような貧溶剤(R)としては、例えば、デカン酸メチル、ラウリル酸メチル、アジピン酸ジイソブチルなどの脂肪酸のアルキルエステル類;ジイソブチルケトンなどのケトン類;デカノールなどのアルコール類;2−プロパノールと水との混合物などのアルコールと水との混合物などが挙げられる。
【0040】
反応誘発型相分離法においては、製膜液(Y)に含まれる重合性化合物(b)の含有量によって、得られる多孔質層の孔径や強度が変化する。重合性化合物(b)の含有量が多いほど多孔質層の強度が向上するが、孔径は小さくなる傾向にある。重合性化合物(b)の好ましい含有量としては15〜50質量%の範囲、更に好ましくは25〜40質量%の範囲が挙げられる。重合性化合物(b)の含有量が15質量%以下になると、多孔質層の強度が低くなり、重合性化合物(b)の含有量が50質量%以上になると、多孔質部の孔径の調整が難しくなる。
【0041】
製膜液(Y)には、重合速度や重合度、あるいは孔径分布などを調整するために、重合開始剤、溶剤、界面活性剤、重合禁止剤、あるいは重合遅延剤などの各種添加剤を添加してもよい。また、塗工性、平滑性などの機能付与、フォトリソグラフィーによるパターン形成時のパターンの解像度や親水性の度合いの調整などの目的で、公知慣用の界面活性剤、疎水性化合物、増粘剤、改質剤、着色剤、蛍光色素、紫外線吸収剤、酵素、蛋白、細胞、触媒などを添加することもできる。
【0042】
反応誘発型層分離法において使用できる支持体は、活性エネルギー線硬化性の組成物(X)(以下、該組成物を組成物(X)と称する。)や使用する活性エネルギー線によって実質的に侵されず、例えば、溶解、分解、重合などが生じず、かつ、組成物(X)を実質的に侵されないものであればよい。また、製膜液(Y)によっても実質的に侵されないものを使用できる。
【0043】
このような支持体としては、例えば、重合体;ガラス;石英などの結晶;セラミック;シリコンなどの半導体;金属などが挙げられるが、これらの中でも、重合体が特に好ましい。支持体に使用する重合体は、単独重合体であっても、共重合体であっても良く、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良い。また、支持体は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、積層体その他の複合体であっても良い。更に、支持体は、改質剤、着色剤、充填材、強化材などの添加物を含有しても良い。
【0044】
反応誘発型相分離法を使用すると、直径約0.1μm〜1μmの粒子状の重合体が互いに凝集し、この粒子間の隙間が細孔となる凝集粒子構造の多孔質層や、重合体が網目状に凝集した三次元網目構造の多孔質層を形成することができる。また、該反応誘発型相分離法においては、通常、細孔の孔径が膜の厚み方向に均一な、いわゆる等方性膜が形成されるが、製膜液(Y)に揮発性の溶剤を添加し、塗布した後、活性エネルギー線照射前にその一部を揮発除去することで、膜の厚み方向に孔径の分布を有する、いわゆる不均質膜(非対称膜ともいう)を形成することもできる。このとき、揮発性の良溶剤を添加することで、製膜液(Y)を塗工する支持体との接触面に孔径の小さな層(緻密層ともいう)を形成することができ、揮発性の貧溶剤又は非溶剤を添加することで、支持体と反対の面に緻密層を形成することができる。該反応誘発型相分離法により、例えば、孔径が0.05〜5μmの多孔質層を形成できる。
【0045】
多孔質層を形成する第二の方法は、支持体と、該支持体を溶解あるいは膨潤できる溶剤(S)とを接触させた後、該支持体を溶解あるいは膨潤させないが溶剤(S)とは相溶する溶剤(T)を用いて溶剤(S)を洗浄除去し、多孔質層を形成する方法(以下、該方法を「表面膨潤法」と称する。)である。該方法では、支持体として、溶剤により溶解あるいは膨潤する重合体を使用し、該重合体の表面に溶剤を接触させて、該支持体の一部を溶解または膨潤させた後、該重合体と相溶しない溶剤で洗浄することにより、該重合体が網目状に凝集し多孔質層が形成される。
【0046】
表面膨潤法における支持体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン/マレイン酸共重合体、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体などのスチレン系重合体;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系重合体;ポリマレイミド系重合体;ビスフェノールA系ポリカーボネート、ビスフェノールF系ポリカーボネート、ビスフェノールZ系ポリカーボネートなどのポリカーボネート系重合体;酢酸セルロース、メチルセルロースなどのセルロース系重合体;ポリウレタン系重合体;ポリアミド系重合体;ポリイミド系重合体などが挙げられる。
【0047】
表面膨潤法における溶剤(S)は、前記支持体を溶解あるいは膨潤できるものであれば、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、塩化メチレンなどの塩素系溶剤が挙げられる。また、これら溶剤(S)は混合して混合溶剤として使用することもできる。
【0048】
溶剤(T)としては、溶剤(S)と相溶し、支持体を溶解しないものである。溶剤(T)としては、例えば水、プロパノールなどのアルコール類、水とアルコールの混合物などが挙げられる。
【0049】
支持体を溶剤(S)と接触させる方法としては、例えば、支持体の溶剤(S)への浸漬、溶剤(S)の支持体表面への噴霧、流延などが挙げられる。
【0050】
溶剤(T)による溶剤(S)の洗浄方法としては、例えば、溶剤(T)中への浸漬して洗浄する方法や、あるいは溶剤(T)を噴霧して洗浄する方法などが挙げられるが、支持体ごと溶剤(T)へ浸漬する方法が好ましい。
【0051】
表面膨潤法で製造された多孔質層は、支持体と一体化されており、三次元網目状構造や凝集粒子構造、あるいはマクロボイドを有する複雑な構造を形成できる。多孔質層の厚みは、支持体と溶剤(S)との接触時間によって制御でき、接触時間が短いほど、多孔質層の厚みが薄くなる。支持体と溶剤(S)との接触時間は、使用する支持体の素材や厚さ、あるいは溶剤の種類などにより適宜調整する必要がある。接触時間が短すぎると、支持体の溶解が十分に進まず孔が十分に形成されない。また、接触時間が長すぎると、支持体の強度が低下する。
【0052】
多孔質層を形成する第三の方法は、鎖状重合体を溶剤(U)に溶解してなる製膜溶液を支持体に塗布し、該支持体と、該鎖状重合体を溶解または膨潤させず、かつ溶剤(U)とは相溶する溶剤(V)とを接触させることにより、鎖状重合体を多孔質状に凝集させ、支持体表面に多孔質層を形成する方法(以下、該方法を湿式法と称する。)である。
【0053】
湿式法において使用できる鎖状重合体としては、溶剤(U)に溶解して多孔質層を形成するものが使用でき、スチレン系重合体、スルホン系重合体、ビニル系重合体、アミド系重合体、イミド系重合体、セルロース系重合体、ポリカーボネート、アクリル系重合体などの鎖状重合体がコストを低くでき、取り扱いが容易であることから好ましい。
【0054】
湿式法における溶剤(U)は前記表面膨潤法において使用し得る溶剤(S)と同様の溶剤が使用でき、溶剤(V)としては前記表面膨潤法における溶剤(T)と同様の溶剤が使用できる。
【0055】
また、必要に応じて、前記した反応誘発型相分離法において使用できる添加剤などの各種添加剤を製膜溶液に添加してもよい。
【0056】
湿式法において使用できる支持体は、鎖状重合体を溶剤(U)に溶解した製膜溶液によって実質的に侵されないものであれば、特に限定されないが、支持体の強度が極端に低下しなければ、上記製膜溶液にある程度侵されるものを使用しても、多孔質層と支持体との密着性が向上させることができる。このような支持体としては、例えば、重合体;ガラス;石英などの結晶;セラミック;シリコンなどの半導体;金属などが挙げられるが、これらの中でも、重合体が特に好ましい。
【0057】
湿式法により得られる多孔質の形状は、三次元網目状(スポンジ状)、凝集粒子状、その他、マクロボイドを有する複雑な形状であり得る。
【0058】
湿式法を使用した場合には、塗工支持体の反対の面に緻密層を有する不均質膜(非対称膜)が形成されることが多いが、製膜溶液への塩やその他の低分子化合物(孔形成剤)の添加、貧溶剤や良溶剤の沸点調整、あるいは製膜溶液中の鎖状重合体を互いに相溶しない複数種の鎖状重合体の混合物とすることなどにより、等方性膜とすることも可能である。また、鎖状重合体の濃度、溶剤の添加量などを調製することにより、孔径が0.005〜2μmの多孔質層を形成できる。
【0059】
電気泳動用部材として使用する際の多孔質層の厚さは、1〜50μmであることが好ましい。多孔質層の厚さを該範囲とすることにより、プローブを充分な量固定でき、さらに吸脱着の速度が過剰に遅くなることが無いため迅速な反応や分析を行うことができる。
【0060】
上記3つの方法において使用する支持体の形状は特に限定されず、使用目的に応じて任意の形状のものを使用できる。例えば、シート状(フィルム状、リボン状、ベルト状を含む)、板状、ロール状、球状などの形状が挙げられるが、組成物(X)をその上に塗工し易く、また、活性エネルギー線を照射し易いという観点から、塗工面が平面状または2次曲面状の形状であることが好ましい。
【0061】
支持体はまた、重合体の場合もそれ以外の素材の場合も、表面処理されていて良い。表面処理は、反応誘発型相分離法、または湿式法の製膜液による溶解防止を目的としたもの、製膜液の濡れ性向上及び多孔質層の接着性向上を目的としたものなどが挙げられる。
【0062】
支持体の表面処理方法は任意であり、例えば、重合性化合物(b)として列挙した化合物群から選ばれるものを含有する組成物を支持体の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させる処理、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理、スルホン化処理、フッ素化処理、シランカップリング剤等によるプライマー処理、表面グラフト重合、界面活性剤や離型剤等の塗布、ラビングやサンドブラストなどの物理的処理などが挙げられる。また、多孔質層の素材が有する反応性官能基や上記の表面処理方法によって導入された反応性官能基と反応して表面に固定される化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0063】
支持体は、その表面に形成された流路(マイクロ流体素子)と一体化されたものであっても良いし、必要に応じて、流路形成後、支持体を取り除く一時的なものであっても良い。
【0064】
上記に例示した方法によれば、支持体の表面に、三次元網目状、凝集粒子状、マクロボイドを有する形状、あるいはこられの混合形状を有する多孔質層を形成できる。また、得られる多孔質層は大きな表面積を有するため、触媒や酵素、あるいはDNA、糖鎖、細胞、タンパク質などを多く固定できる。
【0065】
工程(2)においては、形成した多孔質層の表面に分析対象物質とアフィニティーを有するプローブを固定する。多孔質層の細孔表面にプローブを固定する方法は公知慣用の方法を使用することが可能であり、多孔質層の細孔表面を疎水性にすると、細孔の表面に官能基を導入しなくても酵素や抗原などのタンパク質を疎水性相互作用で多孔質層の細孔表面に固定させることができる。一方、タンパク質やDNA、オリゴヌクレオチド、糖鎖などを固定させる場合には、予め多孔質層の細孔表面に反応性を有する官能基(例えばアミノ基、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、アルデヒド基、イソシアナト基、―COCl基等)を導入し、次いで、直接または他の官能基を介して、上記タンパク質やDNA、糖鎖などのアミノ基や水酸基、リン酸基、カルボキシ基を反応させることにより、共有結合で多孔質層の細孔表面に固定することができる。これらの固定化方法のなかでも、結合の安定性を考慮すると共有結合にてプローブが流路表面に固定されることが好ましい。また、プローブとの固定に関与する反応部位を複数持つ分岐状の分子を介して流路表面に固定させることにより、固定面積を変えずにプローブの固定密度を増加させることができる。
【0066】
工程(3)においては、多孔質層に組成物(X)を塗工することにより、多孔質層内に組成物(X)が含浸された形態で、多孔質層内、および多孔質層上に組成物(X)の未硬化塗膜が形成される。その後、流路と成すべき部分以外の未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射し、非照射部分の未硬化の組成物(X)を除去することにより、底面が多孔質層、壁面が組成物(X)の硬化又は半硬化塗膜からなる凹部が得られる。一方、流路となる部分以外の多孔質層は、含浸した組成物(X)の硬化または半硬化物により細孔が閉塞される。
【0067】
工程(3)において使用する活性エネルギー線重合性の化合物(a)(以下、該化合物を重合性化合物(a)と称する。)は、重合開始剤の存在下、あるいは非存在下で活性エネルギー線により重合し得る化合物であり、付加重合性の化合物や、活性エネルギー線重合性官能基として重合性の炭素−炭素二重結合を有するものが好ましい。なかでも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類や、光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物などが好ましい。
【0068】
また、重合性化合物(a)が多官能の化合物であると、重合して架橋構造となるため、硬化後の強度も高くなる。
【0069】
このような重合性化合物(a)としては、例えば、前記した反応誘発型相分離法において使用できる重合性化合物(b)と同様の化合物を使用できる。
【0070】
重合性化合物(a)は単独で、あるいは二種以上を混合して使用することができ、また、粘度の調節や、あるいは接着性、粘着性、親水性などの機能を付与するために、単官能モノマーと混合して使用してもよい。
混合できる単官能モノマーとしては、例えば前記した反応誘発型相分離法において使用できる単官能モノマーと同様の化合物を使用できる。
【0071】
組成物(X)は、少なくとも上記重合性化合物(a)を含有する。該組成物(X)は、重合性化合物(a)の他に、重合性化合物(a)と共重合可能な両親媒性の重合性化合物(以下、該両親媒性の重合性化合物を両親媒性化合物(c)と称する。)を含有することが好ましい。組成物(X)が両親媒性化合物(c)を含有することで、得られる硬化物を水に膨潤しにくくでき、かつ硬化物の表面を生体成分に対して吸着性の低い親水性にすることができる。
【0072】
両親媒性化合物(c)としては、分子内に親水基と疎水基の両者を含有し、活性エネルギー線の照射により、組成物(X)に含有される活性エネルギー線重合性化合物(a)と共重合可能な重合性官能基を有する化合物を使用できる。両親媒性化合物(c)は、重合性化合物(a)と均一に相溶するものであればよい。ここで相溶とは、巨視的に相分離しないことを言い、ミセルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。
【0073】
重合性化合物(a)が1分子中に2個以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である場合には、両親媒性化合物(c)は、1分子中に1個以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。
【0074】
両親媒性化合物(c)は、分子中に親水基と疎水基を有し、水、あるいは疎水性溶媒のそれぞれに相溶する化合物である。この場合においても、相溶とは巨視的に相分離しないことをいい、ミセルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。
【0075】
両親媒性化合物(c)は、0℃において、水に対する溶解度が0.5質量%以上で、かつ25℃のシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒(シクロヘキサン:トルエン=5:1(質量比))に対する溶解度が25質量%以上であることが好ましい。ここで言う溶解度とは、例えば、溶解度が0.5質量%以上であるとは、少なくとも0.5質量%の化合物が溶解可能であることをいう。水に対する溶解度、あるいはシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒に対する溶解度の少なくとも一方がこれらの値より低い化合物を使用すると、表面親水性と耐水性の両特性に優れる硬化物を得ることが困難となる。
【0076】
両親媒性化合物(c)は、ノニオン性親水基、特にポリエーテル系の親水基を有する場合には、親水性と疎水性のバランスが、グリフィンのHLB(エイチ・エル・ビー)値にして11〜16の範囲にあるものが好ましく、11〜15の範囲にあるものが更に好ましい。この範囲外では、高い親水性と耐水性に優れた成形物を得ることが困難であるか、それを得るための化合物の組み合わせや混合比が限定されてしまう。
【0077】
両親媒性化合物(c)が有する親水基は任意であり、例えば、アミノ基、四級アンモニウム基、ホスホニウム基などのカチオン性基;スルホン基、燐酸基、カルボニル基などのアニオン性基;水酸基、ポリエチレングリコール鎖、アミド基などのノニオン基;アミノ酸残基などの両イオン性基であってよい。両親媒性化合物(c)は、親水基としてポリエーテル鎖を有する化合物が好ましく、繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有する化合物が特に好ましい。
【0078】
両親媒性化合物(c)の疎水基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキルフェニル基、長鎖アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、シロキサン結合を有する基などが挙げられる。両親媒性化合物(c)は、疎水基として炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基は、例えば、アルキルフェニル基、アルキルフェノキシ基、アルコキシ基、フェニルアルキル基などの形で含有されていてもよい。
【0079】
両親媒性化合物(c)は、親水基として繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有し、かつ、疎水基として炭素原子数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。これらの両親媒性化合物(c)の中でも、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=8〜17)(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(n=8〜17)(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0080】
組成物(X)に含まれる、重合性化合物(a)と両親媒性化合物(c)の好ましい割合は、重合性化合物(a)及び両親媒性化合物(c)の種類や組み合わせによって異なるが、重合性化合物(a)1質量部に対して、両親媒性化合物(c)0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることが更に好ましい。重合性化合物(a)1質量部に対して、両親媒性化合物(c)が0.1質量部未満であると、高い親水性の表面を形成することが困難となり、また、5質量部よりも多いと、水に対して膨潤し、組成物(X)の重合体がゲル化するおそれがある。
【0081】
重合性化合物(a)と両親媒性化合物(c)との混合比を適宜選択することにより、湿潤状態でゲル化せず、かつ高親水性、および低吸着性を示す硬化物を製造することができる。両親媒性化合物(c)の親水性の度合いが強いほど、例えばグリフィンのHLB値が大きなものほど、両親媒性化合物(c)の添加量を少なくすることが好ましい。
【0082】
組成物(X)には、必要に応じて、光重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、溶剤、増粘剤、改質剤、着色剤などを混合して使用することができる。
【0083】
組成物(X)に添加できる光重合開始剤、重合遅延剤、および重合禁止剤としては、例えば、前記した反応誘発型相分離法において製膜液(Y)の光重合開始剤、重合遅延剤、および重合禁止剤と同様の化合物を好適に使用できる。
【0084】
溶剤としては、特に限定されないが、使用する重合性化合物(a)や組成物(X)に添加された添加剤、あるいは要求される粘度などによって溶剤の種類や添加量を適宜調整する必要があるが、例えば、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶剤、塩化メチレンなどの塩素系溶剤などが挙げられる。
【0085】
工程(2)において、多孔質層の上に組成物(X)を塗工する方法としては任意の塗工方法を用いることができ、例えば、スピンコート法、ローラーコート法、流延法、ディッピング法、スプレー法、バーコーター法、X−Yアプリケータ法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、ノズルからの押し出しや注型などの方法が挙げられる。また、組成物(X)が高粘度である場合や特に薄く塗工する場合には、組成物(X)に溶剤を含有させて塗工した後、該溶剤を揮発させる方法により塗工することもできる。
【0086】
組成物(X)を塗工する厚さは、活性エネルギー線照射後に多孔質層の上部に硬化又は半硬化塗膜が得られれば特に制限されないが、例えば底面の多孔質層に特定の物質を固定して、アフィニティークロマトグラフィーとして使用する場合には、活性エネルギー線照射後に多孔質層の上部に形成される硬化又は半硬化塗膜の厚さ、すなわち凹部の壁面高さが3〜150μmとなる範囲が好ましく、5μm〜50μmとなる範囲であれば更に好ましい。3μmより薄いと凹部に蓋となる他の部材を固着して該凹部を空洞状の流路とする際に、流路が閉塞するおそれがある。一方、150μmより厚いと、水溶液が流路内を通過しながら、水溶液中の物質が底面の多孔質層に吸脱着(相互作用)しにくくなり、アフィニティークロマトグラフィーの用途には不向きとなる。
【0087】
照射する活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、レーザー光線、放射光などの光線;エックス線、ガンマ線、放射光などの電離放射線;電子線、イオンビーム、ベータ線、重粒子線などの粒子線が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性や硬化速度の面から紫外線及び可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。硬化速度を速め、硬化を完全に行う目的で、活性エネルギー線の照射を低酸素濃度雰囲気で行うことが好ましい。低酸素濃度雰囲気としては、窒素気流中、二酸化炭素気流中、アルゴン気流中、真空又は減圧雰囲気中が好ましい。
【0088】
多孔質層を底面全体または底面の一部に形成された凹部を形成するために、上記活性エネルギー線を照射する際に、活性エネルギー線をパターニング照射する。パターニング照射の方法は任意であり、例えば、活性エネルギー線を照射しない部分をマスキングして照射する、あるいはレーザーなどの活性エネルギー線のビームを走査するなどのフォトリソグラフィーの手法が利用できる。
【0089】
組成物(X)の未硬化塗膜の硬化を半硬化とすることによって、接着剤を使用することなく蓋となる他の部材と固着することが可能であり、また、接着剤を使用する場合にも接着強度が向上する。組成物(X)の硬化状態を半硬化とした場合には、最終的なマイクロ流体素子と成す前のいずれかの工程において後硬化を行い、完全に硬化させることが好ましいが、本発明のマイクロ流体素子の機能に差し障りがなければ必ずしも完全に硬化させる必要はない。後硬化は、活性エネルギー線による硬化の場合には、半硬化させるのに使用した活性エネルギー線と同じものであっても異なるものであっても良い。後硬化はまた、活性エネルギー線による硬化の他に、熱硬化により硬化してもよい。
【0090】
工程(3)は、工程(2)において形成された凹部を有する部材の凹部に蓋となる他の部材を固着して前記凹部を空洞状の流路と成す工程である。
【0091】
蓋となる部材としては、使用目的に応じて適宜選択し得るものであり、流路に流す流体に侵されないものを使用すればよく、該部材は粘着性を有するテープやシートまたは板状のものであっても良い。
【0092】
蓋となる部材で凹部に蓋をするには、蓋部材と凹部を有する部材を貼り合わせればよい。上記したように、凹部を有する部材が半硬化塗膜で、蓋部材との接着性が良好で有れば、そのまま貼り付ければよい。また、凹部を有する部材の接着性が低いか、あるいは硬化塗膜である場合には、接着剤などを使用して両部材を貼り合わせればよい。
【0093】
また、活性エネルギー線重合性化合物を含む組成物を高分子のフィルムやシートのような支持体に塗布し、活性エネルギー線を照射して、該組成物の塗膜を半硬化させて、上記凹部を有する部材の凹部に貼り合わせて、再び活性エネルギー線を照射して完全に硬化させる方法もある。ここで使用される活性エネルギー線重合性化合物及びその組成物は、上記工程(3)で使用される重合性化合物(a)及び組成物(X)と同じものが使用できる。また、重合性化合物の塗布方法も工程(3)と同様の方法が使用できる。
【0094】
蓋部材と凹部を有する部材を貼り合わせる際の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、スチレンブタジエン樹脂系接着剤、(メタ)アクリル系接着剤などが使用できる。
【0095】
本発明の製造方法を使用すると、微細な流路の内表面に、該流路を閉塞することなく、均一な厚さの多孔質層を有するマイクロ流体素子を容易に得ることができる。また、該製造方法により、複数の微小なマイクロ流体素子を、一枚の支持体(露光現像版)上に、位置合わせする必要なく容易に作成することができることから、良好な再現性、優れた寸法安定性で多数のマイクロ流体素子を一度に生産することができる。
【0096】
本発明の製造方法により得られたマイクロ流体素子は、微細な流路内部に多孔質層を有することから、比表面積が大きく、多くの物質を固定化でき、極少量の試験液で、感度や精度の高い生化学の分析や検出を短時間で行うことができる。
【0097】
本発明のアフィニティー電気泳動処理方法(以下、「処理方法」と略称する場合がある)において、電気泳動用溶液の粘度は粘度が使用温度において、0.2〜20mP・sであり、0.8〜10mP・sが好ましい。粘度の下限は、自ずから限界はあろうが、低いことそれ自体による不都合はないため、限定することを要しないが、導電性の媒体による分析対象物質の溶液としては、通常0.2mP・s以上である。各種電解質の水溶液を電気泳動用溶液として使用することが電気泳動に効果的でるため、粘度は0.8mP・s以上であることが好ましい。該電気泳動用溶液の粘度が該上限を超えると分離性能が低下する。よって、本発明においては、上記範囲内においても、できるだけ低いことが好ましい。
【0098】
電気泳動用媒体としては公知慣用のものを使用することが可能であり、プローブと前記特定の物質とのアフィニティーを阻害しないものが好ましい。例えば、本発明で用いるプローブを含有しないものが好ましい。本発明に使用できる媒体としては、例えば、緩衝液などの水系溶液、N,N−ジメチルスルホキシドやイソプロピルカーボネートなどの導電性有機溶剤、アンモニア、二酸化炭素、水などの超臨海流体、などであり得る。また、これらに、例えばアセトンなどの低粘度の非導電性有機溶剤を混合して、粘度調節することも可能である。
【0099】
本発明の処理方法において使用する電気泳動用媒体は、従来のアフィニティー電気泳動で用いられるようなゲルやゾルではなく、これら従来法で使用される媒体に比べて、著しく低粘度の溶液を使用できる。
【0100】
本発明の処理方法は、ゲルやゾルを用いずに低粘度の媒体を使用しても分離可能であることは、予想されざる驚くべきことである。本分離方法においては、低粘度の媒体を使用できることで、該媒体を微細な電気泳動用の流路に注入することが容易になり、また、一つのマイクロ流体デバイス内に他の工程、例えば合成工程や精製工程と連結して組み込む場合にも、該反応溶液や精製溶液を電気泳動用媒体としてそのまま使用できるため、電気泳動用流路のみに専用の電気泳動分離用の媒体を充填するという困難が除去される。
【0101】
本発明の処理方法において、プローブが固定された流路に導入する試料溶液の量は任意であり、流路の一部に、移動方向に狭い「バンド」として導入し、電気泳動によって該バンドを移動及び/又は分離させることによって分離や分析などの処理を行ってもよいし、流路容積に比べて多量の試料溶液を導入して広いバンドとし、その移動する先端部において上記の処理を行ってもよい。
【0102】
流路に試料を狭いバンドとして導する方法としては、例えば、特開2001−242137号公報に記載された方法などが使用でき、4本の流路が一点にて交差している十字型の形態を持つ電気泳動用部材において、該4本の流路のうち、一本の表面のみにプローブが固定され、それ以外の3本にはプローブが固定されていない電気泳動用部材を用意し、当該すべての流路を電気泳動用溶液にて満たした後、該プローブが固定された流路に対して垂直に交わる2本の流路(サンプル導入用流路)の末端の一方にサンプルを加え、サンプルが他方の末端に泳動するように該2本の流路間に電圧を印可し、泳動したサンプルが交差点を通過している最中に、残りの2本の流路間に、サンプルが該プローブを固定した流路内部を通過する方向に電圧を印可する手法がある。
【0103】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。本実施例における紫外線照射、および蛍光特性測定は、以下の方法により行った。
【0104】
(紫外線ランプ1による照射)
3000Wメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm2の紫外線を特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0105】
(紫外線ランプ2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0106】
(蛍光強度測定方法)
ライカ株式会社製の共焦点レーザー顕微鏡TCS−NTを用いて測定した。測定条件はPMT感度520V、ピンホール1.00である。
【0107】
(実施例1)
[エネルギー線硬化性組成物(i)の調製]
平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)72質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬株式会社製の「R−684」)18質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)10質量部、デカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を150質量部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10質量部、紫外線重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュア184」)3質量部を、均一に混合して組成物(i)を調製した。
【0108】
[エネルギー線硬化性組成物(ii)の調製]
活性エネルギー線架橋重合性化合物として、「ユニディックV−4263」を80質量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製の「ニューフロンティアHDDA」)を20質量部、光重合開始剤として「イルガキュア184」を5質量部を均一に混合して組成物(ii)を調製した。
【0109】
[エネルギー線硬化性組成物(iii)の調製]
活性エネルギー線架橋重合性化合物として、「ユニディックV−4263」を60部、「ニューフロンティアHDDA」40部、光重合開始剤として「イルガキュア184」5部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5部を均一に混合して組成物(iii)を調製した。
【0110】
[塗膜層(2)の形成]
下基材(1)としてポリアクリレート(三菱レイヨン社製の「アクリライトL 000番」)製の板を用い、これに2000rpm、50秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(ii)を塗布し、紫外線ランプ1により紫外線を3秒照射して、塗膜(2)を半硬化させた。
【0111】
[多孔質塗膜(3)の形成]
この半硬化状態の塗膜(2)の上に、500rpm、30秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(i)を塗布し、該組成物(i)に紫外線ランプ1により紫外線を40秒間照射して組成物(i)を硬化させ、n−ヘキサンでデカン酸メチルを洗浄除去して多孔質塗膜(3)を形成した。
【0112】
[プローブ固定用部分多孔質塗膜の形成]
上記多孔質塗膜(3)に、2000rpm、30秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(iii)を染みこませ、該組成物(iii)の未硬化塗膜を形成し、フォトマスク(A)を通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒間行って前記組成物(iii)の半硬化塗膜を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(iii)をエタノールで除去して、多孔質塗膜(3)が一部分に存在するプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)を支持体上に形成した。
【0113】
[多孔質層を底面に持つ凹部(流路)の形成]
上記プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)の上に、500rpm、30秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(iii)を塗工し、該組成物(iii)の未硬化塗膜を形成し、フォトマスク(B)を通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒間行い前記組成物(iii)の半硬化塗膜(5)を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(iii)をエタノールで除去して、プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)が底面に露出した多孔質層を底面に持つ凹部を支持体上に形成した。
【0114】
[プローブ導入のためのプローブ固定用部分多孔質塗膜前処理1]
上記工程で作製した凹部を有する支持体を、10%ポリアリルアミン溶液(日東紡製のPAA−10C)を純水にて希釈し得られる5質量%ポリアリルアミン水溶液と接触させ、50℃にて2時間反応させた(ポリアリルアミン中の一部のアミノ基をプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)中のエポキシ基と反応させた)後、流水で30分間洗浄することによって、該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)へのアミノ基の導入を行った。
【0115】
[プローブ導入のためのプローブ固定用部分多孔質塗膜前処理2]
上記工程にてアミノ基を導入した凹部を有する支持体を、25質量%グルタルアルデヒド溶液(和光純薬工業製の25%グルタルアルデヒド溶液)をリン酸緩衝液(和光純薬工業製の「りん酸緩衝剤粉末」を1リットルの滅菌水に溶かしたもの)にて5倍希釈して作製した5質量%グルタルアルデヒド水溶液中に入れ、50℃、2時間反応させた(該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)中に導入されたほぼ全てのアミノ基を、該グルタルアルデヒド中の片方のアルデヒド基と反応させた)後、流水で5分洗浄して、該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)へのアルデヒド基の導入を行った。
【0116】
[プローブの調製]
5’末端にアミノ基を修飾した500μMのDNA鎖A(5’−GTTCGACGTCATCGTCTCGATCTCG−3’)を1μL、該DNA鎖Aの遺伝子配列に相補的な500μMのDNA鎖B(5’−CGAGATCGAGACGATGACGTCGAAC−3’)を1μL、PCR用10X緩衝液(宝酒造株式会社製の10X Ex Taq Buffer)を1μL、滅菌水を7μL加えたPCR用反応チューブを、PCR反応用サーマルサイクラーを用いて95℃2分、80℃2分、70℃2分、60℃2分、50℃2分、40℃2分、30℃2分、4℃2分の温度変化を与えることにより、DNA鎖AとBをハイブリダイゼーションさせてDNA鎖Cを形成し、該DNA鎖Cを50μM含むDNA溶液(C)を10μL調製した。
【0117】
[プローブの固定1]
前記工程にてアルデヒド基を導入した凹部を有する支持体の底面にあるプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)に、上記方法にて調製したDNA溶液(C)を5μL滴下して、湿度100%、50℃にて15時間反応(DNAの末端アミノ基を多孔質層のアルデヒド基と反応)させた後、0.2質量%のテトラヒドロ硼酸ナトリウム水溶液中に入れ、5分間還元反応させ、次いで、0.2×SSC/0.1%SDS溶液でリンスし、次に、0.2×SSCでリンスし、該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)への前記DNA鎖Cの導入を行った。
【0118】
[プローブの固定2]
上記工程にてDNA溶液(C)を導入した凹部を有する支持体を、10×TBE緩衝液(和光純薬工業製の「10XTBE粉末」を1リットルの滅菌水に溶かしたもの)を滅菌水にて100倍し作製した0.1XTBE緩衝液中に入れ、95℃にて5分間煮沸しプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)に導入されたDNA鎖Cから前記DNA鎖Bを解離させ、前記DNA鎖Aのみがプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)上に固定された凹部を有する支持体を得、該DNA鎖Aをプローブとした。
【0119】
[蓋の固着]
組成物(ii)を、一時的な支持体である7.5cm×2.5cm×30μmのポリプロピレンフィルム(二村化学工業社製の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム「太閤」FOR 30番」)のコロナ放電処理された面上に、127μmのバーコーターを用いて塗工した。該組成物(ii)の未硬化塗膜に、紫外線ランプ1により紫外線を3秒照射し、前記組成物の半硬化塗膜(6)を形成し、上記工程で作製した凹部に張り合わせ、紫外線ランプ1により、紫外線を40秒間照射して完全に硬化させた後、該一時的な支持体であるポリプロピレンフィルムを剥離し、多孔質層が底面に露出した流路(10)を形成した。
【0120】
この後、前記工程において凹部上に張り合わせ完全に硬化した塗膜(6)上に組成物(i)を塗布して塗膜(7)を形成し、さらにその上に上基材(8)として、下基材(1)と同じポリアクリレート製(三菱レイヨン社製の「アクリライトL 000番」)の7.5cm×2.5cm×1mmの板を重ね合わせ、50mW/cm2の紫外線を窒素雰囲気中にて塗膜全面に40秒間照射し、塗膜(7)を硬化させた。これにより塗膜(6)上に塗膜(7)および上基板(8)が接着一体化された。
[開口部の形成]
次いで、上基板(8)、塗膜(7)および塗膜(6)を通過し流路(10)に通じる直径1mmの孔を、ドリルを使用して流路の両末端に形成し、さらにこれら2つの孔にそれぞれ内径3mm、高さ5mmのポリ塩化ビニル管を接着して開口部(11)、(12)とし、アフィニティー電気泳動用部材(20)を製造した。
【0121】
[アフィニティー電気泳動用サンプル調製]
5’末端をFITCにて修飾し、プローブであるDNA鎖Aに完全に相補的な配列を持つ500μMのDNA鎖D(5’−CGAGATCGAGACGATGACGTCGAAC−3’)と、5’末端をFITCにて修飾し、DNA鎖Aと相同な配列を持つ500μMのDNA鎖E(5’−GTTCGACGTCATCGTCTCGATCTCG−3’)とをそれぞれ1μLずつ、10×TBE溶液を5μL、さらに滅菌水を93μL加え、アフィニティー電気泳動用サンプルとした。
【0122】
[アフィニティー電気泳動方法]
電気泳動用溶液として10×TBE緩衝液を滅菌水にて20倍希釈して作製した0.5XTBE緩衝液中を使用した。該電気泳動用溶液をアフィニティー電気泳動用部材(20)の開口部(11)より注入し、開口部(11)と流路(10)を該電気泳動溶液にて充填し、次に開口部(12)を前記アフィニティー電気泳動用サンプルにて充填した後、開口部(11)及び(12)に白金電極を挿入した。開口部(11)側の白金電極をパワーサプライの陽極に、開口部(12)側の白金電極をパワーサプライの陰極に接続した後、白金電極間に500Vを印加し、電気泳動を行った。泳動されるDNA鎖の検出は、ライカ株式会社製の共焦点レーザー顕微鏡TCS−NTを用い、プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)から開口部(12)側に5mm離れた位置(13)にて行った。
その結果、流路(10)の底面に存在するプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)上に固定されたDNA鎖Aとのアフィニティーを持つDNA鎖Dは、アフィニティーを有さないDNA鎖Eよりも遅れて検出位置(13)を通過した。
【0123】
【発明の効果】
本発明のアフィニティー電気泳動用部材は、流路内壁面に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有することにより、流路を閉塞することなく、微細な領域においても多量のプローブ固定量を実現でき、さらに、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にあるため、流路内部を移動する分析対象物質とプローブとの間に有効にアフィニティーを生じさせることができることから、本発明のアフィニティー電気泳動用部材を使用すると、正確で迅速な分析が可能となる。
【0124】
また、流路の断面形状が方形形状のアフィニティー電気泳動用部材、該流路内における多孔質層が流路内壁面の一面にのみ形成されたアフィニティー電気泳動用部材はその形成が容易である。さらに前記多孔質層の層厚さが1〜50μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材や、多孔質層の平均孔径が0.05〜3μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材はプローブの担持量を十分多くできるため、より正確な分析が可能となる。なかでも、プローブ化合物がオリゴヌクレオチドである本発明のアフィニティー電気泳動用部材はDNA分析に好適に利用できる。
【0125】
さらに、本発明のアフィニティー電気泳動用部材は、電気泳動媒体として、ゾルやゲルを使用しなくても分析が可能であるため、使用に先立ち煩雑な準備操作が不要で、市場流通時の性能劣化も少なく、また、乾燥状態での保存も可能であるため、保存や市場の流通も容易である。
【0126】
本発明のアフィニティー電気泳動用部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または検出できることから、該処理方法を使用するとゲルやゾルを使用することなく、分離対象物質の溶媒を媒体に使用して分析が可能である。このため、流路中でゲルを調製したり、粘稠なゾルを流路に充填するという煩雑な準備操作が不要で、迅速な分析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に使用した本発明のアフィニティー電気泳動用部材の模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】図1中のI−I線に沿う断面図である。
【図3】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すアフィニティー電気泳動用部材を製造する際に用いるフォトマスク(A)を示した平面図である。
【図5】図1に示すアフィニティー電気泳動用部材を製造する際に用いるフォトマスク(B)を示した平面図である。
【符号の説明】
1…下基材、2…塗膜、3多孔質塗膜、4部分多孔質塗膜、
5…半硬化塗膜、6…半硬化塗膜、7…塗膜、8…上基材
10…流路(欠損部)、11…開口部、12…開口部、13、検出位置
20…アフィニティー電気泳動用部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、流路内壁に多孔質層を有するアフィニティー電気泳動用部材、および、泳動媒体にゲルや粘稠液体を使用しないアフィニティー電気泳動処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸や遺伝子をはじめとする微小物質を選択的に分離、検出することは生化学分野において重要なプロセスであり、これら微小物質を分離、検出する装置や検出方法については広く検討がなされている。なかでも遺伝子診断の分野においては、一塩基多型の分離、検出を迅速に行うことが重要な課題の一つとなっており、こうした要求に対し、高分解能で迅速な分析を行うことのできる電気泳動法が広く研究されている。
【0003】
電気泳動としては、分析対象物質の媒体としてゲルを使用したゲル電気泳動が主として使用されていたが、近年、取り扱いの不便なゲルを使用しない、アフィニティー・ゾル電気泳動法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)該アフィニティー・ゾル電気泳動法は、通常の電気泳動に用いられる電気泳動用キャピラリーを使用し、電気泳動の媒体として、プローブを結合したゾルを用いるものである。この技術は、分析に先立って、キャピラリー中でゲルを調製する必要はないが、微細なキャピラリーに粘稠なゾルを充填するという操作が必要であり、やはり、準備に手間と時間を要するものであった。
【0004】
また、同じ文献(非特許文献1)には、特定の物質にアフィニティーを有するプローブとアクリルアミドの共重合体を内壁にコーティングした電気泳動用キャピラリーと、それを用いた電気泳動分離方法が開示されている。該技術によれば、プローブはキャピラリー内面に固定されているので、分析に先だってゾルやゲルを導入する操作は不要である。
【0005】
しかし、本発明者らの実験によれば、該キャピラリーは乾燥すると特性が劣化し、しかも乾燥条件によって特性の劣化の程度が変化して、分析の再現性が低下するため、湿潤状態で保存する必要があった。これは、ミクロに見れば、プローブが、固相表面ではなく、アクリルアミドポリマーのコーティング層中に埋め込まれた状態で固定されているためと思われる。そのため、市場における流通や保管に手間がかかる上、使用期限も短かった。
【0006】
さらに、該文献では、該キャピラリーを用いた分離方法を「アフィニティーキャピラリー電気泳動」と称しているが、周知のアフィニティー電気泳動とは異なるものであった。即ち、通常のアフィニティー電気泳動は、分析対象物質とプローブのアフィニティーの差によって泳動速度に差を生じさせ、移動距離の差、又は溶出時間の差で分離する。それに対し、該キャピラリーを用いた分離法では、移動距離や溶出時間の差はなく、電気泳動の媒体である緩衝溶液中のMg2+イオン濃度を調節して一方の成分を吸着して溶出させなくすることによって分離する。そのため、特定の分離対象ごとに条件を設定する必要がある上、1回の電気泳動によって、混合試料中の各成分の存在の有無や存在比を測定することなどは出来なかった。
【0007】
一方、本発明者らの出願になる、基材表面の多孔質層に分子認識機能を有する成分が固定化されたセンサーが開示されている(特許文献1参照。)。該センサーは基材表面の多孔質層部分が大きな表面積を有するため、プローブ固定量を多くすることができ、その形状はキャピラリー形状であってよい旨が記載されている。しかし、アフィニティー電気泳動用部材として有効に使用できることや、そのために必要な形状については何ら示されていなかった。
【0008】
【非特許文献1】
穴田貴久、前田瑞夫,「バイオサイエンスとインダストリー」,2001年,Vol.59,No.11,p.751−754
【特許文献1】
特開2000−2705号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、分離媒体としてゾルやゲルを用いる必要がなく、分析対象物質を迅速、かつ正確に分離、検出が可能で、乾燥による性能の劣化がないアフィニティー電気泳動用部材、および流路内でのゲル形成操作や流路へのゾル充填操作が不要で、迅速、かつ正確な電気泳動処理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、アフィニティー電気泳動用部材の流路内壁面に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有することにより、流路を閉塞することなく、微細な領域においても多量のプローブ固定量を実現でき、さらに、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜100μmの範囲にあることにより、流路内部を移動する分析対象物質とプローブとの間に有効にアフィニティーが生じ、分離媒体としてゾルやゲルを用いなくとも、正確で迅速な分析が可能となる。また、多孔質の細孔表面に固定されたプローブ化合物は、ポリマー中に埋め込まれることなく、固体である多孔質層の細孔表面に固定可能であるため、乾燥させても特性が変化しない。
【0011】
すなわち本発明は微細な流路を有するアフィニティー電気泳動用部材であって、前記流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有し、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材、該アフィニティー電気泳動用部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または分析する電気泳動処理方法を提供することにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のアフィニティー電気泳動用部材(以下、単に電気泳動用部材と称する。)は、微細な流路を有しており、該流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を持ち、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にある。
【0013】
[部材]
本発明のアフィニティー電気泳動用部材の外形は任意であり、例えばチューブ状の毛細管であって良い。また、流路を塊状や板状の成形物の内部に形成してもよく、いわゆるマイクロ流体デバイス内に形成された毛細管状の流路であって良い。
【0014】
ここで、マイクロ流体デバイスとは、マイクロ・フルイディック・デバイス、マイクロ・ファブリケイテッド・デバイス、ラボ・オン・チップ、又はマイクロ・トータル・アナリティカル・システム(μ−TAS)とも呼ばれるものを指し、該流路内で、流体が温度変化をうける機構、濃度調整される機構、化学反応をうける機構、流動の流速、流動の分岐、混合若しくは分離などの制御をうける機構、又は電気的、光学的な測定をうける機構等を設けた毛細管状の流路を有するデバイスである。
【0015】
本発明の電気泳動用部材の素材は、電気絶縁性のものであれば任意であり、例えば、ガラス、水晶等の結晶、シリコンなどの半導体、セラミック、炭素、有機重合体(ポリジメチルシロキサンのように、無機元素を含有するものであってもよい。以下単に「重合体」と称する。)、又はこれらの発泡体などであることが好ましい。
【0016】
[流路]
本発明の電気泳動用部材の有する微細な流路の断面形状は、特に限定されないが、方形形状であると、流路内を泳動する分析対象物質が壁面の多孔質層に固定化されたプローブと均一に相互作用を生じるため好ましい。
【0017】
流路の断面の大きさとしては、流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離を1μm〜100μmの範囲とすることにより、分析対象物質が壁面に固定化されたプローブとあれば任意である。流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離が上記範囲を超えると、分析対象物質が、多孔質層表面に固定されたプローブと相互作用せずに前記流路内を移動する割合が無視できない量となるため、分離や検出等の分析性能が低下する。また、上記範囲未満では精度よく製造することが難しく流路が閉塞されるおそれが生じる。ただし、多孔質層が流路内壁面の一部にのみ形成されていて、対向する内壁面に形成されていない場合、特に流路断面形状が方形形状の流路内壁面の一部のみが多孔質層である場合には、流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離は、1μm〜50μmの範囲であることが好ましく、3〜30μmの範囲であることがより好ましい。流路内部に有する多孔質層から対向する内壁までの距離を該範囲内とすると、流路内に導入された分析対象物質と、多孔質層表面に固定されたプローブとの相互作用がより得られやすい。
【0018】
多孔質層が流路内壁の一部、例えば断面形状が方形形状である流路の一面のみに形成されている場合などにおいては、該流路断面内において、多孔質層から対向する内壁までの距離と直行する方向の距離が、0.5μm〜3mmの範囲内であることが好ましく、5μm〜500μmの範囲内であることがさらに好ましく、10μm〜200μmの範囲内であることが最も好ましい。この範囲とすることで、ばらつきなく製造することが容易になり、電気泳動用電流による温度上昇も少なくなる。
【0019】
なお、上記断面形状、寸法は、本発明の電気泳動を行う流路についてのものであり、その他の部分、例えば該電気泳動を行う流路部分への導入用流路部分や、他の処理を行う部分への連絡用流路については任意である。
【0020】
流路の泳動方向における長さは任意であり、用途目的により好適な長さをとり得るが、1mm〜100mmが好ましく、3mm〜30mmがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、十分な分離能を得ることができ、上記上限以下とすることで、必要な印可電圧の低下、分離時間の短縮、本発明になる電気泳動用部材の小型化が計れる。
【0021】
また流路の形態も任意であり、直線であっても、曲線であっても、それらの組み合わせであっても、分岐していても構わない。また流路の、本電気泳動用部材外への開口部(以下。単に「開口部」と称する)の位置、および個数は任意であり、一本の流路に複数の開口部があっても構わない。また、一つの部材中に掲載される独立した流路の本数も任意である。
【0022】
[多孔質層]
本発明の電気泳動用部材の流路は、その内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有する。ここでいう「多孔質層」とは、層内に、表面まで連絡し、表面に開口している多数の細孔、即ち、連通細孔を有するものをいう。細孔の形状は任意であり、例えば三次元網目状(スポンジ状)、凝集粒子状、井戸状、不織布や編織布の繊維間状等であり得る。
【0023】
前記多孔質層は、流路内壁面の少なくとも一部に形成されており、流路内部を泳動する分析対象物質が該多孔質層に固定したプローブと相互作用を生じればよい。流路内壁面に形成される多孔質層の面積が一定である場合、分析対象物の流れ方向に長く且つ内壁の一部のみが多孔質層である場合よりも、内壁の全面が多孔質層である方が、より良好な相互作用が得られるため好ましい。面積が一定で内壁の一部のみを多孔質層とする場合には、その断面の周囲の1/4以上が多孔質層であることが好ましい。多孔質層の断面の周囲に占める割合が1/4よりも小さくなる場合には、プローブと分析対象物質と間の相互作用が減少する。
【0024】
流路断面が方形である場合にも、上記したように流路内全面に多孔質層が形成されていることが好ましいが、一面のみ、特に底面のみに多孔質層を有する構造は作製が容易であるため、一面のみの多孔質層で十分な相互作用が得られる場合には、一面のみに多孔質層を有する流路が好ましい。
【0025】
流路部分の長さ方向における、多孔質層の形成部位は、流路部分の長さ方向の全体であっても、該流路形成部分が長さ方向で途切れていてもよいが、長さ方向に途切れずに形成されていることが、分離能が向上するため好ましい。
【0026】
多孔質層の厚みは、0.5μm〜30μmが好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、2μm〜10μmが最も好ましい。この下限以上とすることで、十分に多量のプローブを流路内面に固定可能であり、この上限以下とすることで、溶液中の分離対象物質が、細孔表面に固定されたプローブと相互作用する時間が短くなり分離や分析の時間短縮が計れる。
【0027】
上記多孔質層の細孔の孔径も任意であるが、0.05μm〜3μmが好ましく、0.1μm〜1μmがさらに好ましい。この下限以上とすることで、十分な量のプローブが固定可能となる。また、前記上限以下とすることで、タンパクのような巨大分子もプローブとして固定可能である上、多孔質層の深い部分と表面間の物質移動速度が高くなり、迅速な分離が可能になる。なお、前記細孔径は、多量に存在する細孔の孔径であり、必ずしも平均径とは限らない。前記孔径は分布が狭い方が、分離効率が高くなり、好ましい。
【0028】
[プローブ]
流路内壁の多孔質層表面に固定された、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブとしては、分析対象物質に応じて適宜選択すればよく、各種の触媒、酵素・抗体・抗原その他の蛋白、DNAやRNAなどのオリゴヌクレオチド、糖鎖、糖脂質、細胞などの生体組織、などが挙げられる。もちろん、これらは化学修飾体であっても良い。なかでも、プローブとしてオリゴヌクレオチドを使用した場合には、遺伝子の分離や検出が可能であり、遺伝子の一塩基変異の検出にも有効に使用できる。また、多孔質の細孔表面に固定されたプローブ化合物は、ポリマー中に埋め込まれることなく、固体である多孔質層の細孔表面に固定可能であるため、乾燥させても特性が変化しない。
【0029】
多孔質層に固定されるプローブの量は、プローブとのアフィニティーを有する分析対象物質の量に対して過剰量であることが好ましい。プローブ量が過剰量である場合には、過少量である場合と比較して、プローブとの相互作用に関与する分析対象物質の量が増え、局所的に分析対象物質濃度が高くなるために、分析対象物質を高感度に検出することが可能となる。このような理由から、多孔質層に固定されるプローブの量は多い方が好ましい。
【0030】
流路に固定されるプローブの量を増加させる方法としては、固定密度を変えずに固定面積を大きくする方法と、固定面積を変えずに固定密度を大きくする方法とがあるが、前者は固定密度に限界があるため、後者の方が、試料溶液中の前記特定の物質の濃度が高くても分離能が高く維持されるために好ましい。
【0031】
また、プローブの固定部位は多孔質層表面のみでなくともよく、多孔質層が流路の一部の面に形成されている場合には、多孔質層形成面以外の流路内壁部にもプローブが固定されていてもよい。
【0032】
このように、本発明の電気泳動用部材は、アフィニティー電気泳動用部材の流路内壁面に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有することにより、流路を閉塞することなく、微細な領域においても多量のプローブ固定量を実現でき、さらに、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜100μmの範囲にあることにより、流路内部を移動する分析対象物質とプローブとの間に有効にアフィニティーが生じるため、電気泳動媒体としてゾルやゲルを使用することなく、正確で迅速な分析が可能となる。
【0033】
特に、流路の断面形状が方形形状であり、かつ多孔質層が流路内壁面の一面にのみ形成された構成のものは、流路内部を泳動する分析対象物質が、より好適に多孔質層表面に固定されたプローブと相互作用を生じるため、該構造のアフィニティー電気泳動用部材を使用することが好ましい。
【0034】
[流路の製造]
本発明の電気泳動用部材の作製方法について、以下に好ましい例を挙げて説明する。本発明の電気泳動用部材は、例えば、以下の(1)〜(4)の工程により作製できる。
(1)支持体の表面に多数の細孔を有する多孔質層を形成する工程、
(2)多孔質層の表面に分析対象物質とアフィニティーを有するプローブを固定する工程、
(3)該多孔質層の上に活性エネルギー線重合性の化合物(a)を含有する活性エネルギー線硬化性の組成物(X)を塗工し、該組成物(X)の未硬化塗膜を形成し、流路と成すべき部分以外の前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記組成物(X)の硬化又は半硬化塗膜を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(X)を除去して、多孔質層が底面に露出した凹部を形成する工程、
(4)前記凹部を有する部材の凹部に蓋となる他の部材を固着して前記凹部を空洞状の流路と成す工程。
【0035】
工程(1)において多数の細孔を有する多孔質層を形成する方法としては、多孔質層が形成できれば任意であり、例えば下記の三つの方法を好適に使用することができる。
【0036】
多孔質層を形成する第一の方法は、支持体上に活性エネルギー線重合性の化合物(b)(以下、該化合物を重合性化合物(b)と称する。)と、重合性化合物(b)とは相溶するが、重合性化合物(b)の重合体とは相溶しない貧溶剤(R)とを含有する活性エネルギー線硬化性の製膜液(Y)(以下、該製膜液を製膜液(Y)と称する。)を塗布した後、該製膜液(Y)に活性エネルギー線を照射し、重合性化合物(b)を重合させると共に相分離を生じさせることにより、多孔質層を形成する方法(以下、該方法を反応誘発型相分離法と称する。)である。該方法では、重合性化合物(b)の重合により生成した重合体が、貧溶剤(R)と相溶しなくなり、重合体と貧溶剤(R)とが相分離を生じ、重合体内部や重合体間に貧溶剤(R)が取り込まれた状態になる。この貧溶剤(R)を除去することにより、貧溶剤(R)が占めていた領域が孔となり多孔質層を形成できる。
【0037】
重合性化合物(b)としては、重合開始剤の存在下または非存在下で活性エネルギー線により重合するものであり、付加重合性の化合物や、活性エネルギー線重合性官能基として重合性の炭素−炭素二重結合を有するものが好ましく、なかでも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物が好ましい。さらに、半硬化の状態で形状保持性を高くでき、硬化後の強度も高くできることから、重合して架橋重合体を形成する化合物であることが好ましい。そのために、1分子中に2つ以上の重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、「1分子中に2つ以上の付加重合性の官能基を有する」ことを「多官能」と称する。)であることが更に好ましい。
【0038】
このような重合性化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、マレイミド系モノマー、あるいは、分子鎖に(メタ)アクリロイル基やマレイミド基を有する重合性のオリゴマー(プレポリマーともいう。)などが使用できる。
【0039】
反応誘発型相分離法で使用する貧溶剤(R)としては、重合性化合物(b)とは相溶するが、重合性化合物(b)から生成する重合体は溶解(相溶)しないものを使用する。貧溶剤(R)と重合性化合物(b)との相溶の程度は、均一な製膜液(Y)が得られればよい。貧溶剤(R)は、単一溶剤であっても混合溶剤であってもよく、混合溶剤の場合には、その構成成分単独では重合性化合物(b)と相溶しないものや、重合性化合物(b)の重合体を溶解させるものであっても良い。このような貧溶剤(R)としては、例えば、デカン酸メチル、ラウリル酸メチル、アジピン酸ジイソブチルなどの脂肪酸のアルキルエステル類;ジイソブチルケトンなどのケトン類;デカノールなどのアルコール類;2−プロパノールと水との混合物などのアルコールと水との混合物などが挙げられる。
【0040】
反応誘発型相分離法においては、製膜液(Y)に含まれる重合性化合物(b)の含有量によって、得られる多孔質層の孔径や強度が変化する。重合性化合物(b)の含有量が多いほど多孔質層の強度が向上するが、孔径は小さくなる傾向にある。重合性化合物(b)の好ましい含有量としては15〜50質量%の範囲、更に好ましくは25〜40質量%の範囲が挙げられる。重合性化合物(b)の含有量が15質量%以下になると、多孔質層の強度が低くなり、重合性化合物(b)の含有量が50質量%以上になると、多孔質部の孔径の調整が難しくなる。
【0041】
製膜液(Y)には、重合速度や重合度、あるいは孔径分布などを調整するために、重合開始剤、溶剤、界面活性剤、重合禁止剤、あるいは重合遅延剤などの各種添加剤を添加してもよい。また、塗工性、平滑性などの機能付与、フォトリソグラフィーによるパターン形成時のパターンの解像度や親水性の度合いの調整などの目的で、公知慣用の界面活性剤、疎水性化合物、増粘剤、改質剤、着色剤、蛍光色素、紫外線吸収剤、酵素、蛋白、細胞、触媒などを添加することもできる。
【0042】
反応誘発型層分離法において使用できる支持体は、活性エネルギー線硬化性の組成物(X)(以下、該組成物を組成物(X)と称する。)や使用する活性エネルギー線によって実質的に侵されず、例えば、溶解、分解、重合などが生じず、かつ、組成物(X)を実質的に侵されないものであればよい。また、製膜液(Y)によっても実質的に侵されないものを使用できる。
【0043】
このような支持体としては、例えば、重合体;ガラス;石英などの結晶;セラミック;シリコンなどの半導体;金属などが挙げられるが、これらの中でも、重合体が特に好ましい。支持体に使用する重合体は、単独重合体であっても、共重合体であっても良く、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良い。また、支持体は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、積層体その他の複合体であっても良い。更に、支持体は、改質剤、着色剤、充填材、強化材などの添加物を含有しても良い。
【0044】
反応誘発型相分離法を使用すると、直径約0.1μm〜1μmの粒子状の重合体が互いに凝集し、この粒子間の隙間が細孔となる凝集粒子構造の多孔質層や、重合体が網目状に凝集した三次元網目構造の多孔質層を形成することができる。また、該反応誘発型相分離法においては、通常、細孔の孔径が膜の厚み方向に均一な、いわゆる等方性膜が形成されるが、製膜液(Y)に揮発性の溶剤を添加し、塗布した後、活性エネルギー線照射前にその一部を揮発除去することで、膜の厚み方向に孔径の分布を有する、いわゆる不均質膜(非対称膜ともいう)を形成することもできる。このとき、揮発性の良溶剤を添加することで、製膜液(Y)を塗工する支持体との接触面に孔径の小さな層(緻密層ともいう)を形成することができ、揮発性の貧溶剤又は非溶剤を添加することで、支持体と反対の面に緻密層を形成することができる。該反応誘発型相分離法により、例えば、孔径が0.05〜5μmの多孔質層を形成できる。
【0045】
多孔質層を形成する第二の方法は、支持体と、該支持体を溶解あるいは膨潤できる溶剤(S)とを接触させた後、該支持体を溶解あるいは膨潤させないが溶剤(S)とは相溶する溶剤(T)を用いて溶剤(S)を洗浄除去し、多孔質層を形成する方法(以下、該方法を「表面膨潤法」と称する。)である。該方法では、支持体として、溶剤により溶解あるいは膨潤する重合体を使用し、該重合体の表面に溶剤を接触させて、該支持体の一部を溶解または膨潤させた後、該重合体と相溶しない溶剤で洗浄することにより、該重合体が網目状に凝集し多孔質層が形成される。
【0046】
表面膨潤法における支持体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン/マレイン酸共重合体、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体などのスチレン系重合体;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系重合体;ポリマレイミド系重合体;ビスフェノールA系ポリカーボネート、ビスフェノールF系ポリカーボネート、ビスフェノールZ系ポリカーボネートなどのポリカーボネート系重合体;酢酸セルロース、メチルセルロースなどのセルロース系重合体;ポリウレタン系重合体;ポリアミド系重合体;ポリイミド系重合体などが挙げられる。
【0047】
表面膨潤法における溶剤(S)は、前記支持体を溶解あるいは膨潤できるものであれば、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、塩化メチレンなどの塩素系溶剤が挙げられる。また、これら溶剤(S)は混合して混合溶剤として使用することもできる。
【0048】
溶剤(T)としては、溶剤(S)と相溶し、支持体を溶解しないものである。溶剤(T)としては、例えば水、プロパノールなどのアルコール類、水とアルコールの混合物などが挙げられる。
【0049】
支持体を溶剤(S)と接触させる方法としては、例えば、支持体の溶剤(S)への浸漬、溶剤(S)の支持体表面への噴霧、流延などが挙げられる。
【0050】
溶剤(T)による溶剤(S)の洗浄方法としては、例えば、溶剤(T)中への浸漬して洗浄する方法や、あるいは溶剤(T)を噴霧して洗浄する方法などが挙げられるが、支持体ごと溶剤(T)へ浸漬する方法が好ましい。
【0051】
表面膨潤法で製造された多孔質層は、支持体と一体化されており、三次元網目状構造や凝集粒子構造、あるいはマクロボイドを有する複雑な構造を形成できる。多孔質層の厚みは、支持体と溶剤(S)との接触時間によって制御でき、接触時間が短いほど、多孔質層の厚みが薄くなる。支持体と溶剤(S)との接触時間は、使用する支持体の素材や厚さ、あるいは溶剤の種類などにより適宜調整する必要がある。接触時間が短すぎると、支持体の溶解が十分に進まず孔が十分に形成されない。また、接触時間が長すぎると、支持体の強度が低下する。
【0052】
多孔質層を形成する第三の方法は、鎖状重合体を溶剤(U)に溶解してなる製膜溶液を支持体に塗布し、該支持体と、該鎖状重合体を溶解または膨潤させず、かつ溶剤(U)とは相溶する溶剤(V)とを接触させることにより、鎖状重合体を多孔質状に凝集させ、支持体表面に多孔質層を形成する方法(以下、該方法を湿式法と称する。)である。
【0053】
湿式法において使用できる鎖状重合体としては、溶剤(U)に溶解して多孔質層を形成するものが使用でき、スチレン系重合体、スルホン系重合体、ビニル系重合体、アミド系重合体、イミド系重合体、セルロース系重合体、ポリカーボネート、アクリル系重合体などの鎖状重合体がコストを低くでき、取り扱いが容易であることから好ましい。
【0054】
湿式法における溶剤(U)は前記表面膨潤法において使用し得る溶剤(S)と同様の溶剤が使用でき、溶剤(V)としては前記表面膨潤法における溶剤(T)と同様の溶剤が使用できる。
【0055】
また、必要に応じて、前記した反応誘発型相分離法において使用できる添加剤などの各種添加剤を製膜溶液に添加してもよい。
【0056】
湿式法において使用できる支持体は、鎖状重合体を溶剤(U)に溶解した製膜溶液によって実質的に侵されないものであれば、特に限定されないが、支持体の強度が極端に低下しなければ、上記製膜溶液にある程度侵されるものを使用しても、多孔質層と支持体との密着性が向上させることができる。このような支持体としては、例えば、重合体;ガラス;石英などの結晶;セラミック;シリコンなどの半導体;金属などが挙げられるが、これらの中でも、重合体が特に好ましい。
【0057】
湿式法により得られる多孔質の形状は、三次元網目状(スポンジ状)、凝集粒子状、その他、マクロボイドを有する複雑な形状であり得る。
【0058】
湿式法を使用した場合には、塗工支持体の反対の面に緻密層を有する不均質膜(非対称膜)が形成されることが多いが、製膜溶液への塩やその他の低分子化合物(孔形成剤)の添加、貧溶剤や良溶剤の沸点調整、あるいは製膜溶液中の鎖状重合体を互いに相溶しない複数種の鎖状重合体の混合物とすることなどにより、等方性膜とすることも可能である。また、鎖状重合体の濃度、溶剤の添加量などを調製することにより、孔径が0.005〜2μmの多孔質層を形成できる。
【0059】
電気泳動用部材として使用する際の多孔質層の厚さは、1〜50μmであることが好ましい。多孔質層の厚さを該範囲とすることにより、プローブを充分な量固定でき、さらに吸脱着の速度が過剰に遅くなることが無いため迅速な反応や分析を行うことができる。
【0060】
上記3つの方法において使用する支持体の形状は特に限定されず、使用目的に応じて任意の形状のものを使用できる。例えば、シート状(フィルム状、リボン状、ベルト状を含む)、板状、ロール状、球状などの形状が挙げられるが、組成物(X)をその上に塗工し易く、また、活性エネルギー線を照射し易いという観点から、塗工面が平面状または2次曲面状の形状であることが好ましい。
【0061】
支持体はまた、重合体の場合もそれ以外の素材の場合も、表面処理されていて良い。表面処理は、反応誘発型相分離法、または湿式法の製膜液による溶解防止を目的としたもの、製膜液の濡れ性向上及び多孔質層の接着性向上を目的としたものなどが挙げられる。
【0062】
支持体の表面処理方法は任意であり、例えば、重合性化合物(b)として列挙した化合物群から選ばれるものを含有する組成物を支持体の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させる処理、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理、スルホン化処理、フッ素化処理、シランカップリング剤等によるプライマー処理、表面グラフト重合、界面活性剤や離型剤等の塗布、ラビングやサンドブラストなどの物理的処理などが挙げられる。また、多孔質層の素材が有する反応性官能基や上記の表面処理方法によって導入された反応性官能基と反応して表面に固定される化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0063】
支持体は、その表面に形成された流路(マイクロ流体素子)と一体化されたものであっても良いし、必要に応じて、流路形成後、支持体を取り除く一時的なものであっても良い。
【0064】
上記に例示した方法によれば、支持体の表面に、三次元網目状、凝集粒子状、マクロボイドを有する形状、あるいはこられの混合形状を有する多孔質層を形成できる。また、得られる多孔質層は大きな表面積を有するため、触媒や酵素、あるいはDNA、糖鎖、細胞、タンパク質などを多く固定できる。
【0065】
工程(2)においては、形成した多孔質層の表面に分析対象物質とアフィニティーを有するプローブを固定する。多孔質層の細孔表面にプローブを固定する方法は公知慣用の方法を使用することが可能であり、多孔質層の細孔表面を疎水性にすると、細孔の表面に官能基を導入しなくても酵素や抗原などのタンパク質を疎水性相互作用で多孔質層の細孔表面に固定させることができる。一方、タンパク質やDNA、オリゴヌクレオチド、糖鎖などを固定させる場合には、予め多孔質層の細孔表面に反応性を有する官能基(例えばアミノ基、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、アルデヒド基、イソシアナト基、―COCl基等)を導入し、次いで、直接または他の官能基を介して、上記タンパク質やDNA、糖鎖などのアミノ基や水酸基、リン酸基、カルボキシ基を反応させることにより、共有結合で多孔質層の細孔表面に固定することができる。これらの固定化方法のなかでも、結合の安定性を考慮すると共有結合にてプローブが流路表面に固定されることが好ましい。また、プローブとの固定に関与する反応部位を複数持つ分岐状の分子を介して流路表面に固定させることにより、固定面積を変えずにプローブの固定密度を増加させることができる。
【0066】
工程(3)においては、多孔質層に組成物(X)を塗工することにより、多孔質層内に組成物(X)が含浸された形態で、多孔質層内、および多孔質層上に組成物(X)の未硬化塗膜が形成される。その後、流路と成すべき部分以外の未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射し、非照射部分の未硬化の組成物(X)を除去することにより、底面が多孔質層、壁面が組成物(X)の硬化又は半硬化塗膜からなる凹部が得られる。一方、流路となる部分以外の多孔質層は、含浸した組成物(X)の硬化または半硬化物により細孔が閉塞される。
【0067】
工程(3)において使用する活性エネルギー線重合性の化合物(a)(以下、該化合物を重合性化合物(a)と称する。)は、重合開始剤の存在下、あるいは非存在下で活性エネルギー線により重合し得る化合物であり、付加重合性の化合物や、活性エネルギー線重合性官能基として重合性の炭素−炭素二重結合を有するものが好ましい。なかでも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類や、光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物などが好ましい。
【0068】
また、重合性化合物(a)が多官能の化合物であると、重合して架橋構造となるため、硬化後の強度も高くなる。
【0069】
このような重合性化合物(a)としては、例えば、前記した反応誘発型相分離法において使用できる重合性化合物(b)と同様の化合物を使用できる。
【0070】
重合性化合物(a)は単独で、あるいは二種以上を混合して使用することができ、また、粘度の調節や、あるいは接着性、粘着性、親水性などの機能を付与するために、単官能モノマーと混合して使用してもよい。
混合できる単官能モノマーとしては、例えば前記した反応誘発型相分離法において使用できる単官能モノマーと同様の化合物を使用できる。
【0071】
組成物(X)は、少なくとも上記重合性化合物(a)を含有する。該組成物(X)は、重合性化合物(a)の他に、重合性化合物(a)と共重合可能な両親媒性の重合性化合物(以下、該両親媒性の重合性化合物を両親媒性化合物(c)と称する。)を含有することが好ましい。組成物(X)が両親媒性化合物(c)を含有することで、得られる硬化物を水に膨潤しにくくでき、かつ硬化物の表面を生体成分に対して吸着性の低い親水性にすることができる。
【0072】
両親媒性化合物(c)としては、分子内に親水基と疎水基の両者を含有し、活性エネルギー線の照射により、組成物(X)に含有される活性エネルギー線重合性化合物(a)と共重合可能な重合性官能基を有する化合物を使用できる。両親媒性化合物(c)は、重合性化合物(a)と均一に相溶するものであればよい。ここで相溶とは、巨視的に相分離しないことを言い、ミセルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。
【0073】
重合性化合物(a)が1分子中に2個以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である場合には、両親媒性化合物(c)は、1分子中に1個以上の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。
【0074】
両親媒性化合物(c)は、分子中に親水基と疎水基を有し、水、あるいは疎水性溶媒のそれぞれに相溶する化合物である。この場合においても、相溶とは巨視的に相分離しないことをいい、ミセルを形成して安定的に分散している状態も含まれる。
【0075】
両親媒性化合物(c)は、0℃において、水に対する溶解度が0.5質量%以上で、かつ25℃のシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒(シクロヘキサン:トルエン=5:1(質量比))に対する溶解度が25質量%以上であることが好ましい。ここで言う溶解度とは、例えば、溶解度が0.5質量%以上であるとは、少なくとも0.5質量%の化合物が溶解可能であることをいう。水に対する溶解度、あるいはシクロヘキサンとトルエンの混合溶媒に対する溶解度の少なくとも一方がこれらの値より低い化合物を使用すると、表面親水性と耐水性の両特性に優れる硬化物を得ることが困難となる。
【0076】
両親媒性化合物(c)は、ノニオン性親水基、特にポリエーテル系の親水基を有する場合には、親水性と疎水性のバランスが、グリフィンのHLB(エイチ・エル・ビー)値にして11〜16の範囲にあるものが好ましく、11〜15の範囲にあるものが更に好ましい。この範囲外では、高い親水性と耐水性に優れた成形物を得ることが困難であるか、それを得るための化合物の組み合わせや混合比が限定されてしまう。
【0077】
両親媒性化合物(c)が有する親水基は任意であり、例えば、アミノ基、四級アンモニウム基、ホスホニウム基などのカチオン性基;スルホン基、燐酸基、カルボニル基などのアニオン性基;水酸基、ポリエチレングリコール鎖、アミド基などのノニオン基;アミノ酸残基などの両イオン性基であってよい。両親媒性化合物(c)は、親水基としてポリエーテル鎖を有する化合物が好ましく、繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有する化合物が特に好ましい。
【0078】
両親媒性化合物(c)の疎水基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキルフェニル基、長鎖アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、シロキサン結合を有する基などが挙げられる。両親媒性化合物(c)は、疎水基として炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。炭素数6〜20のアルキル基又はアルキレン基は、例えば、アルキルフェニル基、アルキルフェノキシ基、アルコキシ基、フェニルアルキル基などの形で含有されていてもよい。
【0079】
両親媒性化合物(c)は、親水基として繰り返し数6〜20のポリエチレングリコール鎖を有し、かつ、疎水基として炭素原子数6〜20のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。これらの両親媒性化合物(c)の中でも、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=8〜17)(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(n=8〜17)(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0080】
組成物(X)に含まれる、重合性化合物(a)と両親媒性化合物(c)の好ましい割合は、重合性化合物(a)及び両親媒性化合物(c)の種類や組み合わせによって異なるが、重合性化合物(a)1質量部に対して、両親媒性化合物(c)0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることが更に好ましい。重合性化合物(a)1質量部に対して、両親媒性化合物(c)が0.1質量部未満であると、高い親水性の表面を形成することが困難となり、また、5質量部よりも多いと、水に対して膨潤し、組成物(X)の重合体がゲル化するおそれがある。
【0081】
重合性化合物(a)と両親媒性化合物(c)との混合比を適宜選択することにより、湿潤状態でゲル化せず、かつ高親水性、および低吸着性を示す硬化物を製造することができる。両親媒性化合物(c)の親水性の度合いが強いほど、例えばグリフィンのHLB値が大きなものほど、両親媒性化合物(c)の添加量を少なくすることが好ましい。
【0082】
組成物(X)には、必要に応じて、光重合開始剤、重合遅延剤、重合禁止剤、溶剤、増粘剤、改質剤、着色剤などを混合して使用することができる。
【0083】
組成物(X)に添加できる光重合開始剤、重合遅延剤、および重合禁止剤としては、例えば、前記した反応誘発型相分離法において製膜液(Y)の光重合開始剤、重合遅延剤、および重合禁止剤と同様の化合物を好適に使用できる。
【0084】
溶剤としては、特に限定されないが、使用する重合性化合物(a)や組成物(X)に添加された添加剤、あるいは要求される粘度などによって溶剤の種類や添加量を適宜調整する必要があるが、例えば、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶剤、塩化メチレンなどの塩素系溶剤などが挙げられる。
【0085】
工程(2)において、多孔質層の上に組成物(X)を塗工する方法としては任意の塗工方法を用いることができ、例えば、スピンコート法、ローラーコート法、流延法、ディッピング法、スプレー法、バーコーター法、X−Yアプリケータ法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、ノズルからの押し出しや注型などの方法が挙げられる。また、組成物(X)が高粘度である場合や特に薄く塗工する場合には、組成物(X)に溶剤を含有させて塗工した後、該溶剤を揮発させる方法により塗工することもできる。
【0086】
組成物(X)を塗工する厚さは、活性エネルギー線照射後に多孔質層の上部に硬化又は半硬化塗膜が得られれば特に制限されないが、例えば底面の多孔質層に特定の物質を固定して、アフィニティークロマトグラフィーとして使用する場合には、活性エネルギー線照射後に多孔質層の上部に形成される硬化又は半硬化塗膜の厚さ、すなわち凹部の壁面高さが3〜150μmとなる範囲が好ましく、5μm〜50μmとなる範囲であれば更に好ましい。3μmより薄いと凹部に蓋となる他の部材を固着して該凹部を空洞状の流路とする際に、流路が閉塞するおそれがある。一方、150μmより厚いと、水溶液が流路内を通過しながら、水溶液中の物質が底面の多孔質層に吸脱着(相互作用)しにくくなり、アフィニティークロマトグラフィーの用途には不向きとなる。
【0087】
照射する活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、レーザー光線、放射光などの光線;エックス線、ガンマ線、放射光などの電離放射線;電子線、イオンビーム、ベータ線、重粒子線などの粒子線が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性や硬化速度の面から紫外線及び可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。硬化速度を速め、硬化を完全に行う目的で、活性エネルギー線の照射を低酸素濃度雰囲気で行うことが好ましい。低酸素濃度雰囲気としては、窒素気流中、二酸化炭素気流中、アルゴン気流中、真空又は減圧雰囲気中が好ましい。
【0088】
多孔質層を底面全体または底面の一部に形成された凹部を形成するために、上記活性エネルギー線を照射する際に、活性エネルギー線をパターニング照射する。パターニング照射の方法は任意であり、例えば、活性エネルギー線を照射しない部分をマスキングして照射する、あるいはレーザーなどの活性エネルギー線のビームを走査するなどのフォトリソグラフィーの手法が利用できる。
【0089】
組成物(X)の未硬化塗膜の硬化を半硬化とすることによって、接着剤を使用することなく蓋となる他の部材と固着することが可能であり、また、接着剤を使用する場合にも接着強度が向上する。組成物(X)の硬化状態を半硬化とした場合には、最終的なマイクロ流体素子と成す前のいずれかの工程において後硬化を行い、完全に硬化させることが好ましいが、本発明のマイクロ流体素子の機能に差し障りがなければ必ずしも完全に硬化させる必要はない。後硬化は、活性エネルギー線による硬化の場合には、半硬化させるのに使用した活性エネルギー線と同じものであっても異なるものであっても良い。後硬化はまた、活性エネルギー線による硬化の他に、熱硬化により硬化してもよい。
【0090】
工程(3)は、工程(2)において形成された凹部を有する部材の凹部に蓋となる他の部材を固着して前記凹部を空洞状の流路と成す工程である。
【0091】
蓋となる部材としては、使用目的に応じて適宜選択し得るものであり、流路に流す流体に侵されないものを使用すればよく、該部材は粘着性を有するテープやシートまたは板状のものであっても良い。
【0092】
蓋となる部材で凹部に蓋をするには、蓋部材と凹部を有する部材を貼り合わせればよい。上記したように、凹部を有する部材が半硬化塗膜で、蓋部材との接着性が良好で有れば、そのまま貼り付ければよい。また、凹部を有する部材の接着性が低いか、あるいは硬化塗膜である場合には、接着剤などを使用して両部材を貼り合わせればよい。
【0093】
また、活性エネルギー線重合性化合物を含む組成物を高分子のフィルムやシートのような支持体に塗布し、活性エネルギー線を照射して、該組成物の塗膜を半硬化させて、上記凹部を有する部材の凹部に貼り合わせて、再び活性エネルギー線を照射して完全に硬化させる方法もある。ここで使用される活性エネルギー線重合性化合物及びその組成物は、上記工程(3)で使用される重合性化合物(a)及び組成物(X)と同じものが使用できる。また、重合性化合物の塗布方法も工程(3)と同様の方法が使用できる。
【0094】
蓋部材と凹部を有する部材を貼り合わせる際の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、スチレンブタジエン樹脂系接着剤、(メタ)アクリル系接着剤などが使用できる。
【0095】
本発明の製造方法を使用すると、微細な流路の内表面に、該流路を閉塞することなく、均一な厚さの多孔質層を有するマイクロ流体素子を容易に得ることができる。また、該製造方法により、複数の微小なマイクロ流体素子を、一枚の支持体(露光現像版)上に、位置合わせする必要なく容易に作成することができることから、良好な再現性、優れた寸法安定性で多数のマイクロ流体素子を一度に生産することができる。
【0096】
本発明の製造方法により得られたマイクロ流体素子は、微細な流路内部に多孔質層を有することから、比表面積が大きく、多くの物質を固定化でき、極少量の試験液で、感度や精度の高い生化学の分析や検出を短時間で行うことができる。
【0097】
本発明のアフィニティー電気泳動処理方法(以下、「処理方法」と略称する場合がある)において、電気泳動用溶液の粘度は粘度が使用温度において、0.2〜20mP・sであり、0.8〜10mP・sが好ましい。粘度の下限は、自ずから限界はあろうが、低いことそれ自体による不都合はないため、限定することを要しないが、導電性の媒体による分析対象物質の溶液としては、通常0.2mP・s以上である。各種電解質の水溶液を電気泳動用溶液として使用することが電気泳動に効果的でるため、粘度は0.8mP・s以上であることが好ましい。該電気泳動用溶液の粘度が該上限を超えると分離性能が低下する。よって、本発明においては、上記範囲内においても、できるだけ低いことが好ましい。
【0098】
電気泳動用媒体としては公知慣用のものを使用することが可能であり、プローブと前記特定の物質とのアフィニティーを阻害しないものが好ましい。例えば、本発明で用いるプローブを含有しないものが好ましい。本発明に使用できる媒体としては、例えば、緩衝液などの水系溶液、N,N−ジメチルスルホキシドやイソプロピルカーボネートなどの導電性有機溶剤、アンモニア、二酸化炭素、水などの超臨海流体、などであり得る。また、これらに、例えばアセトンなどの低粘度の非導電性有機溶剤を混合して、粘度調節することも可能である。
【0099】
本発明の処理方法において使用する電気泳動用媒体は、従来のアフィニティー電気泳動で用いられるようなゲルやゾルではなく、これら従来法で使用される媒体に比べて、著しく低粘度の溶液を使用できる。
【0100】
本発明の処理方法は、ゲルやゾルを用いずに低粘度の媒体を使用しても分離可能であることは、予想されざる驚くべきことである。本分離方法においては、低粘度の媒体を使用できることで、該媒体を微細な電気泳動用の流路に注入することが容易になり、また、一つのマイクロ流体デバイス内に他の工程、例えば合成工程や精製工程と連結して組み込む場合にも、該反応溶液や精製溶液を電気泳動用媒体としてそのまま使用できるため、電気泳動用流路のみに専用の電気泳動分離用の媒体を充填するという困難が除去される。
【0101】
本発明の処理方法において、プローブが固定された流路に導入する試料溶液の量は任意であり、流路の一部に、移動方向に狭い「バンド」として導入し、電気泳動によって該バンドを移動及び/又は分離させることによって分離や分析などの処理を行ってもよいし、流路容積に比べて多量の試料溶液を導入して広いバンドとし、その移動する先端部において上記の処理を行ってもよい。
【0102】
流路に試料を狭いバンドとして導する方法としては、例えば、特開2001−242137号公報に記載された方法などが使用でき、4本の流路が一点にて交差している十字型の形態を持つ電気泳動用部材において、該4本の流路のうち、一本の表面のみにプローブが固定され、それ以外の3本にはプローブが固定されていない電気泳動用部材を用意し、当該すべての流路を電気泳動用溶液にて満たした後、該プローブが固定された流路に対して垂直に交わる2本の流路(サンプル導入用流路)の末端の一方にサンプルを加え、サンプルが他方の末端に泳動するように該2本の流路間に電圧を印可し、泳動したサンプルが交差点を通過している最中に、残りの2本の流路間に、サンプルが該プローブを固定した流路内部を通過する方向に電圧を印可する手法がある。
【0103】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。本実施例における紫外線照射、および蛍光特性測定は、以下の方法により行った。
【0104】
(紫外線ランプ1による照射)
3000Wメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm2の紫外線を特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0105】
(紫外線ランプ2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0106】
(蛍光強度測定方法)
ライカ株式会社製の共焦点レーザー顕微鏡TCS−NTを用いて測定した。測定条件はPMT感度520V、ピンホール1.00である。
【0107】
(実施例1)
[エネルギー線硬化性組成物(i)の調製]
平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)72質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬株式会社製の「R−684」)18質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)10質量部、デカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を150質量部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10質量部、紫外線重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュア184」)3質量部を、均一に混合して組成物(i)を調製した。
【0108】
[エネルギー線硬化性組成物(ii)の調製]
活性エネルギー線架橋重合性化合物として、「ユニディックV−4263」を80質量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製の「ニューフロンティアHDDA」)を20質量部、光重合開始剤として「イルガキュア184」を5質量部を均一に混合して組成物(ii)を調製した。
【0109】
[エネルギー線硬化性組成物(iii)の調製]
活性エネルギー線架橋重合性化合物として、「ユニディックV−4263」を60部、「ニューフロンティアHDDA」40部、光重合開始剤として「イルガキュア184」5部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.5部を均一に混合して組成物(iii)を調製した。
【0110】
[塗膜層(2)の形成]
下基材(1)としてポリアクリレート(三菱レイヨン社製の「アクリライトL 000番」)製の板を用い、これに2000rpm、50秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(ii)を塗布し、紫外線ランプ1により紫外線を3秒照射して、塗膜(2)を半硬化させた。
【0111】
[多孔質塗膜(3)の形成]
この半硬化状態の塗膜(2)の上に、500rpm、30秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(i)を塗布し、該組成物(i)に紫外線ランプ1により紫外線を40秒間照射して組成物(i)を硬化させ、n−ヘキサンでデカン酸メチルを洗浄除去して多孔質塗膜(3)を形成した。
【0112】
[プローブ固定用部分多孔質塗膜の形成]
上記多孔質塗膜(3)に、2000rpm、30秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(iii)を染みこませ、該組成物(iii)の未硬化塗膜を形成し、フォトマスク(A)を通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒間行って前記組成物(iii)の半硬化塗膜を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(iii)をエタノールで除去して、多孔質塗膜(3)が一部分に存在するプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)を支持体上に形成した。
【0113】
[多孔質層を底面に持つ凹部(流路)の形成]
上記プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)の上に、500rpm、30秒間条件のスピンコーターを用いて組成物(iii)を塗工し、該組成物(iii)の未硬化塗膜を形成し、フォトマスク(B)を通して紫外線ランプ2による紫外線照射を120秒間行い前記組成物(iii)の半硬化塗膜(5)を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(iii)をエタノールで除去して、プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)が底面に露出した多孔質層を底面に持つ凹部を支持体上に形成した。
【0114】
[プローブ導入のためのプローブ固定用部分多孔質塗膜前処理1]
上記工程で作製した凹部を有する支持体を、10%ポリアリルアミン溶液(日東紡製のPAA−10C)を純水にて希釈し得られる5質量%ポリアリルアミン水溶液と接触させ、50℃にて2時間反応させた(ポリアリルアミン中の一部のアミノ基をプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)中のエポキシ基と反応させた)後、流水で30分間洗浄することによって、該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)へのアミノ基の導入を行った。
【0115】
[プローブ導入のためのプローブ固定用部分多孔質塗膜前処理2]
上記工程にてアミノ基を導入した凹部を有する支持体を、25質量%グルタルアルデヒド溶液(和光純薬工業製の25%グルタルアルデヒド溶液)をリン酸緩衝液(和光純薬工業製の「りん酸緩衝剤粉末」を1リットルの滅菌水に溶かしたもの)にて5倍希釈して作製した5質量%グルタルアルデヒド水溶液中に入れ、50℃、2時間反応させた(該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)中に導入されたほぼ全てのアミノ基を、該グルタルアルデヒド中の片方のアルデヒド基と反応させた)後、流水で5分洗浄して、該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)へのアルデヒド基の導入を行った。
【0116】
[プローブの調製]
5’末端にアミノ基を修飾した500μMのDNA鎖A(5’−GTTCGACGTCATCGTCTCGATCTCG−3’)を1μL、該DNA鎖Aの遺伝子配列に相補的な500μMのDNA鎖B(5’−CGAGATCGAGACGATGACGTCGAAC−3’)を1μL、PCR用10X緩衝液(宝酒造株式会社製の10X Ex Taq Buffer)を1μL、滅菌水を7μL加えたPCR用反応チューブを、PCR反応用サーマルサイクラーを用いて95℃2分、80℃2分、70℃2分、60℃2分、50℃2分、40℃2分、30℃2分、4℃2分の温度変化を与えることにより、DNA鎖AとBをハイブリダイゼーションさせてDNA鎖Cを形成し、該DNA鎖Cを50μM含むDNA溶液(C)を10μL調製した。
【0117】
[プローブの固定1]
前記工程にてアルデヒド基を導入した凹部を有する支持体の底面にあるプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)に、上記方法にて調製したDNA溶液(C)を5μL滴下して、湿度100%、50℃にて15時間反応(DNAの末端アミノ基を多孔質層のアルデヒド基と反応)させた後、0.2質量%のテトラヒドロ硼酸ナトリウム水溶液中に入れ、5分間還元反応させ、次いで、0.2×SSC/0.1%SDS溶液でリンスし、次に、0.2×SSCでリンスし、該プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)への前記DNA鎖Cの導入を行った。
【0118】
[プローブの固定2]
上記工程にてDNA溶液(C)を導入した凹部を有する支持体を、10×TBE緩衝液(和光純薬工業製の「10XTBE粉末」を1リットルの滅菌水に溶かしたもの)を滅菌水にて100倍し作製した0.1XTBE緩衝液中に入れ、95℃にて5分間煮沸しプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)に導入されたDNA鎖Cから前記DNA鎖Bを解離させ、前記DNA鎖Aのみがプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)上に固定された凹部を有する支持体を得、該DNA鎖Aをプローブとした。
【0119】
[蓋の固着]
組成物(ii)を、一時的な支持体である7.5cm×2.5cm×30μmのポリプロピレンフィルム(二村化学工業社製の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム「太閤」FOR 30番」)のコロナ放電処理された面上に、127μmのバーコーターを用いて塗工した。該組成物(ii)の未硬化塗膜に、紫外線ランプ1により紫外線を3秒照射し、前記組成物の半硬化塗膜(6)を形成し、上記工程で作製した凹部に張り合わせ、紫外線ランプ1により、紫外線を40秒間照射して完全に硬化させた後、該一時的な支持体であるポリプロピレンフィルムを剥離し、多孔質層が底面に露出した流路(10)を形成した。
【0120】
この後、前記工程において凹部上に張り合わせ完全に硬化した塗膜(6)上に組成物(i)を塗布して塗膜(7)を形成し、さらにその上に上基材(8)として、下基材(1)と同じポリアクリレート製(三菱レイヨン社製の「アクリライトL 000番」)の7.5cm×2.5cm×1mmの板を重ね合わせ、50mW/cm2の紫外線を窒素雰囲気中にて塗膜全面に40秒間照射し、塗膜(7)を硬化させた。これにより塗膜(6)上に塗膜(7)および上基板(8)が接着一体化された。
[開口部の形成]
次いで、上基板(8)、塗膜(7)および塗膜(6)を通過し流路(10)に通じる直径1mmの孔を、ドリルを使用して流路の両末端に形成し、さらにこれら2つの孔にそれぞれ内径3mm、高さ5mmのポリ塩化ビニル管を接着して開口部(11)、(12)とし、アフィニティー電気泳動用部材(20)を製造した。
【0121】
[アフィニティー電気泳動用サンプル調製]
5’末端をFITCにて修飾し、プローブであるDNA鎖Aに完全に相補的な配列を持つ500μMのDNA鎖D(5’−CGAGATCGAGACGATGACGTCGAAC−3’)と、5’末端をFITCにて修飾し、DNA鎖Aと相同な配列を持つ500μMのDNA鎖E(5’−GTTCGACGTCATCGTCTCGATCTCG−3’)とをそれぞれ1μLずつ、10×TBE溶液を5μL、さらに滅菌水を93μL加え、アフィニティー電気泳動用サンプルとした。
【0122】
[アフィニティー電気泳動方法]
電気泳動用溶液として10×TBE緩衝液を滅菌水にて20倍希釈して作製した0.5XTBE緩衝液中を使用した。該電気泳動用溶液をアフィニティー電気泳動用部材(20)の開口部(11)より注入し、開口部(11)と流路(10)を該電気泳動溶液にて充填し、次に開口部(12)を前記アフィニティー電気泳動用サンプルにて充填した後、開口部(11)及び(12)に白金電極を挿入した。開口部(11)側の白金電極をパワーサプライの陽極に、開口部(12)側の白金電極をパワーサプライの陰極に接続した後、白金電極間に500Vを印加し、電気泳動を行った。泳動されるDNA鎖の検出は、ライカ株式会社製の共焦点レーザー顕微鏡TCS−NTを用い、プローブ固定用部分多孔質塗膜(4)から開口部(12)側に5mm離れた位置(13)にて行った。
その結果、流路(10)の底面に存在するプローブ固定用部分多孔質塗膜(4)上に固定されたDNA鎖Aとのアフィニティーを持つDNA鎖Dは、アフィニティーを有さないDNA鎖Eよりも遅れて検出位置(13)を通過した。
【0123】
【発明の効果】
本発明のアフィニティー電気泳動用部材は、流路内壁面に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有することにより、流路を閉塞することなく、微細な領域においても多量のプローブ固定量を実現でき、さらに、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にあるため、流路内部を移動する分析対象物質とプローブとの間に有効にアフィニティーを生じさせることができることから、本発明のアフィニティー電気泳動用部材を使用すると、正確で迅速な分析が可能となる。
【0124】
また、流路の断面形状が方形形状のアフィニティー電気泳動用部材、該流路内における多孔質層が流路内壁面の一面にのみ形成されたアフィニティー電気泳動用部材はその形成が容易である。さらに前記多孔質層の層厚さが1〜50μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材や、多孔質層の平均孔径が0.05〜3μmの範囲にあるアフィニティー電気泳動用部材はプローブの担持量を十分多くできるため、より正確な分析が可能となる。なかでも、プローブ化合物がオリゴヌクレオチドである本発明のアフィニティー電気泳動用部材はDNA分析に好適に利用できる。
【0125】
さらに、本発明のアフィニティー電気泳動用部材は、電気泳動媒体として、ゾルやゲルを使用しなくても分析が可能であるため、使用に先立ち煩雑な準備操作が不要で、市場流通時の性能劣化も少なく、また、乾燥状態での保存も可能であるため、保存や市場の流通も容易である。
【0126】
本発明のアフィニティー電気泳動用部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または検出できることから、該処理方法を使用するとゲルやゾルを使用することなく、分離対象物質の溶媒を媒体に使用して分析が可能である。このため、流路中でゲルを調製したり、粘稠なゾルを流路に充填するという煩雑な準備操作が不要で、迅速な分析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に使用した本発明のアフィニティー電気泳動用部材の模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】図1中のI−I線に沿う断面図である。
【図3】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図4】図1に示すアフィニティー電気泳動用部材を製造する際に用いるフォトマスク(A)を示した平面図である。
【図5】図1に示すアフィニティー電気泳動用部材を製造する際に用いるフォトマスク(B)を示した平面図である。
【符号の説明】
1…下基材、2…塗膜、3多孔質塗膜、4部分多孔質塗膜、
5…半硬化塗膜、6…半硬化塗膜、7…塗膜、8…上基材
10…流路(欠損部)、11…開口部、12…開口部、13、検出位置
20…アフィニティー電気泳動用部材。
Claims (9)
- 微細な流路を有するアフィニティー電気泳動用部材であって、前記流路の内壁面の少なくとも一部に、分析対象物質とアフィニティーを有するプローブが固定された多孔質層を有し、かつ、前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜100μmの範囲にあることを特徴とするアフィニティー電気泳動用部材。
- 前記流路の断面形状が方形形状である請求項1に記載のアフィニティー電気泳動用部材。
- 多孔質層が、前記流路内壁面の一面にのみ形成された請求項2に記載のアフィニティー電気泳動用部材。
- 前記多孔質層と対向する内壁までの平均距離が1〜50μmの範囲にある請求項3に記載のアフィニティー電気泳動用部材。
- 前記多孔質層の層厚さが1〜50μmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載のアフィニティー電気泳動用部材。
- 前記多孔質層の平均孔径が0.05〜3μmの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載のアフィニティー電気泳動用部材。
- 前記プローブが、オリゴヌクレオチドである請求項1〜5のいずれかに記載のアフィニティー電気泳動用部材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のアフィニティー電気泳動用部材の流路内で、プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を含有し、かつ粘度が0.2〜20mP・sの範囲にある溶液中の前記プローブと実質的にアフィニティーを有する物質を電気泳動により分離または検出することを特徴とする電気泳動処理方法。
- 前記プローブとアフィニティーを有する物質が、DNAである請求項7に記載の電気泳動処理方法。
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