JP2005023970A - ダイナミックダンパ - Google Patents
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Abstract
【課題】コンパクト化でき、ばね定数を小さくすることができる構造でありながら、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合でも、振動を十分抑制することができるダイナミックダンパを提供する。
【解決手段】質量部材1と、質量部材1を両持ち支持する一対の固定部2,3とを設け、一方の固定部2と、質量部材1の一端部1Aとの間に第1ゴム状弾性体4を介在させ、他方の固定部3と、質量部材1の他端部1Bとの間に第2ゴム状弾性体5を介在させ、一対の弾性連結部分7,8(9,10)を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分7,8,9,10のうち、少なくとも一対の弾性連結部分9,10に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12をそれぞれ形成することで、複数対の弾性連結部分7,8,9,10のばね定数を各対ごとに異ならせてある。
【選択図】 図1
【解決手段】質量部材1と、質量部材1を両持ち支持する一対の固定部2,3とを設け、一方の固定部2と、質量部材1の一端部1Aとの間に第1ゴム状弾性体4を介在させ、他方の固定部3と、質量部材1の他端部1Bとの間に第2ゴム状弾性体5を介在させ、一対の弾性連結部分7,8(9,10)を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分7,8,9,10のうち、少なくとも一対の弾性連結部分9,10に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12をそれぞれ形成することで、複数対の弾性連結部分7,8,9,10のばね定数を各対ごとに異ならせてある。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸を空間を空けて挿通させる筒状の質量部材と、前記回転軸に外嵌固定されて前記質量部材を両持ち支持する一対の固定部とを設け、一方の固定部と、前記質量部材の軸芯方向の一端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体を介在させ、他方の固定部と前記質量部材の他端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体を介在させてあるダイナミックダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のドライブシャフト等の回転軸には回転のアンバランス等に起因して振動が生じ、この振動がサスペンションを介して車内に伝わって騒音が発生することがある。このような場合、筒型のダイナミックダンパを回転軸に取付けて、その固有振動数を回転軸の共振振動数にチューニングし、回転軸の振動エネルギーを共振によりダイナミックダンパの振動エネルギーとして吸収することで振動を抑制している。
【0003】
冒頭に記載したダイナミックダンパは、上記の効果に加え、ダイナミックダンパをコンパクト化し、ばね定数を小さくして所望の性能を発揮させるために開発されている。つまり、質量部材と固定部が回転軸の径方向で重ならないのでダイナミックダンパの外径を小さくすることができ、第1ゴム状弾性体及び第2ゴム状弾性体にせん断力が加わるのでばね定数を小さくできて所望の性能を発揮することができる。
【0004】
この種のダイナミックダンパでは、従来、第1ゴム状弾性体と第2ゴム状弾性体から成る弾性連結部を、全周にわたって肉厚が一定の形状に設定してあった(特許文献1参照)。そのために、前記固有振動数を単一の共振振動数域にしか設定できず、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合、振動を十分抑制することができなかった。
【0005】
特許文献2に開示されているように、特許文献1と同一構造の大小一対のダイナミックダンパを用意し、小さい方のダイナミックダンパを回転軸に圧入外嵌し、このダイナミックダンパを間隔を空けて覆うように大きい方のダイナミックダンパを回転軸に取付ける技術もある。しかしながら、これでは部品点数が増えてダイナミックダンパをコンパクト化できず、その上、回転軸への取付けに手間がかかる。
【0006】
【特許文献1】
特公平6−37915号公報
【特許文献2】
特開平8−145117号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて成されたものである。そして、その目的は、コンパクト化でき、ばね定数を小さくすることができる構造でありながら、固有振動数を複数の共振振動数域に設定できて、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合でも、振動を十分抑制することができるダイナミックダンパを提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴構成は、回転軸を空間を空けて挿通させる筒状の質量部材と、前記回転軸に外嵌固定されて前記質量部材を両持ち支持する一対の固定部とを設け、一方の固定部と、前記質量部材の軸芯方向の一端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体を介在させ、他方の固定部と前記質量部材の他端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体を介在させてあるダイナミックダンパであって、
前記第1ゴム状弾性体と第2ゴム状弾性体から成る弾性連結部を周方向に複数に区分けして、前記弾性連結部の軸芯を挟んで位置する一対の弾性連結部分を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分のうち、少なくとも一対の弾性連結部分に、ばね定数を小さくするための貫通孔をそれぞれ形成することで、前記複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせてある点にある。
【0009】
この構成によれば、質量部材と一対の固定部が回転軸の径方向で重ならないのでダイナミックダンパの外径を小さくすることができる。また、回転軸と質量部材の間に空間が形成されて質量部材が径方向に変位可能になり、第1ゴム状弾性体及び第2ゴム状弾性体にせん断力が加わるのでばね定数を小さくすることができる。
【0010】
さらに、前記弾性連結部の軸芯を挟んで位置する一対の弾性連結部分を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分のうち、少なくとも一対の弾性連結部分に、ばね定数を小さくするための貫通孔をそれぞれ形成することで、前記複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせてあるので、次の作用を奏することができる。
【0011】
例えば、弾性連結部を周方向に4個に区分けして二対の弾性連結部分から構成し、そのうちの一対の弾性連結部分に貫通孔を形成した場合、貫通孔が形成されていない一対の弾性連結部分の中央部と交差する方向で、所定の値よりも高い固有振動数で共振して回転軸の振動を吸収し、前記貫通孔が形成されている別の一対の弾性連結部分の中央部と交差する方向で、所定の値よりも低い固有振動数で共振して回転軸の振動を吸収する。
【0012】
そして、前記一対の弾性連結部分の幅方向の端部側と交差する方向や、別の一対の弾性連結部分の幅方向の端部側と交差する方向では、高低の中間の値の固有振動数で共振して回転軸の振動を吸収する。このように、ダイナミックダンパの固有振動数を回転軸の複数の共振振動数域にチューニングすることができる。
【0013】
複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせる手段として、少なくとも一対の弾性連結部分に貫通孔をそれぞれ形成するから、ばね定数を小さく設定しやすくすることができる。
【0014】
前記弾性連結部を三対以上の弾性連結部分から構成した場合も上記と同様の作用を奏することができる。
【0015】
本発明において、前記複数対の弾性連結部分の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせるとともに、各対の一方の弾性連結部分と他方の弾性連結部分を同一又はほぼ同一肉厚に設定し、肉厚の薄い側の一対の弾性連結部分に前記貫通孔を形成すると、前記一対の弾性連結部分のばね定数をより小さく設定しやすくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,図2,図3に、自動車のドライブシャフトS(回転軸に相当)に圧入外嵌された状態でドライブシャフトSの振動を抑制する筒型のダイナミックダンパを示してある。
【0017】
このダイナミックダンパは、ドライブシャフトSを小さな空間Aを空けて挿通させる金属円筒状の質量部材1と、ドライブシャフトSに外嵌固定されて質量部材1を両持ち支持する一対の円筒状の固定部2,3とを設け、一方の固定部2と、質量部材1の軸芯方向の一端部1Aとの間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体4を介在させ、他方の固定部3と、質量部材1の他端部1Bとの間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体5を介在させて構成してある。
【0018】
前記一方の固定部2は第3ゴム状弾性体から成り、他方の固定部3は第4ゴム状弾性体から成る。これらは、質量部材1の内周面や外周面に加硫接着された第5ゴム状弾性体14を介して連なっている。第1〜第5ゴム状弾性体は、同一のゴム配合物によって同一の成形型内で質量部材1とともに一体に加硫成形される。
【0019】
両固定部2,3の外周部に、締付けバンド(図示せず)を巻回するための環状の溝13をそれぞれ形成し、ドライブシャフトSに強く固定することができるようにしてある。
【0020】
前記空間Aは、第5ゴム状弾性体14の内周面とドライブシャフトSの外周面との間に形成されており、前記軸芯方向で第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5側にも入り込んでいる。すなわち、第1ゴム状弾性体4の一部分とドライブシャフトSの外周面との間、及び、第2ゴム状弾性体5の一部分とドライブシャフトSの外周面との間にも空間Aが形成されている。
【0021】
上記の構成によれば、質量部材1と一対の固定部2,3がドライブシャフトSの径方向で重なり合わないのでコンパクト化することができる。そして、振動で質量部材1が径方向に変位して、第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5にせん断力が加わるので、第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5のばね定数を小さくすることができる。
【0022】
第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5との組み合わせで弾性連結部6を構成している。第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5から成る弾性連結部6を周方向に4つに区分けして、弾性連結部6の軸芯Oを挟んで位置する一対の弾性連結部分7,8(9,10)を複数形成し、一対の弾性連結部分7,8の径方向の肉厚と、別の一対の弾性連結部分9,10の径方向の肉厚とを異ならせ、後者の肉厚を前者の肉厚よりも薄くしてある。言い換えれば、前記複数対の弾性連結部分7,8,9,10の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせてある。各弾性連結部分7,8,9,10は断面が扇形になっている。
【0023】
各対の一方の弾性連結部分7(9)と他方の弾性連結部分8(10)は同一又はほぼ同一肉厚で、かつ、互いに弾性連結部6の軸芯Oに対して点対称に位置している。前記一対の弾性連結部分7,8は別の一対の弾性連結部分9,10よりも周方向の幅が広く設定されている。この構成に換えて同一幅あるいは幅狭に設定されていてもよい。
【0024】
二対の弾性連結部分7,8,9,10のうち、肉厚が薄い方の一対の弾性連結部分9,10に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12を一対づつ形成してある。両貫通孔11,12は、質量部材1の軸芯方向で質量部材1の両側(第1ゴム状弾性体4側と第2ゴム状弾性体5側)に位置し、平面視で弾性連結部6の周方向に長い角孔に形成されている。貫通孔11,12の断面は扇形である。第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5は同一形状になっている。
【0025】
このように、複数対の弾性連結部分7,8,9,10の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせ、かつ、少なくとも一対の弾性連結部分9,10に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12をそれぞれ形成することで、複数対の弾性連結部分7,8,9,10のばね定数を各対ごとに異ならせてある。
【0026】
ドライブシャフトSに固定された上記構造のダイナミックダンパに振動が入力すると、肉厚が厚い前記一対の弾性連結部分7,8の中央部と交差する方向で、所定の値よりも高い固有振動数で共振してドライブシャフトSの振動を吸収し、肉厚が薄く貫通孔11,12が形成された別の一対の弾性連結部分9,10の中央部と交差する方向で、所定の値よりも低い固有振動数で共振してドライブシャフトSの振動を吸収する。
【0027】
[別実施形態]
(1)上記の実施形態では、前記複数対の弾性連結部分7,8,9,10の肉厚を各対ごとに異ならせたが、前記複数対の弾性連結部分7,8,9,10の肉厚を一定に設定し、前記一対の弾性連結部分7,8に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12をそれぞれ形成することで、前記一対の弾性連結部分の7,8のばね定数を別の一対の弾性連結部分の9,10のばね定数より小さくしてあってもよい。
【0028】
(2)前記弾性連結部6を三対以上の弾性連結部分に周方向に区分けしてあってもよい。この場合、二対の弾性連結部分に貫通孔11,12を形成してあってもよい。
【0029】
(3)上記構造のダイナミックダンパを取付ける対象はドライブシャフト以外に、自動車のプロペラシャフトや自動車のその他の回転軸であってもよい。また、自動車以外の装置の回転軸であってもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、コンパクト化でき、ばね定数を小さくすることができる構造でありながら、固有振動数を複数の共振振動数域に設定できて、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合でも、振動を十分抑制することができるダイナミックダンパを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイナミックダンパの側面図
【図2】図1のA−O−A断面図
【図3】ダイナミックダンパの平面図
【符号の説明】
1 質量部材
1A 質量部材の一端部
1B 質量部材の他端部
2 固定部
3 固定部
4 第1ゴム状弾性体
5 第2ゴム状弾性体
6 弾性連結部
7,8,9,10 弾性連結部分
11,12 貫通孔
A 空間
O 弾性連結部の軸芯
S 回転軸
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸を空間を空けて挿通させる筒状の質量部材と、前記回転軸に外嵌固定されて前記質量部材を両持ち支持する一対の固定部とを設け、一方の固定部と、前記質量部材の軸芯方向の一端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体を介在させ、他方の固定部と前記質量部材の他端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体を介在させてあるダイナミックダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のドライブシャフト等の回転軸には回転のアンバランス等に起因して振動が生じ、この振動がサスペンションを介して車内に伝わって騒音が発生することがある。このような場合、筒型のダイナミックダンパを回転軸に取付けて、その固有振動数を回転軸の共振振動数にチューニングし、回転軸の振動エネルギーを共振によりダイナミックダンパの振動エネルギーとして吸収することで振動を抑制している。
【0003】
冒頭に記載したダイナミックダンパは、上記の効果に加え、ダイナミックダンパをコンパクト化し、ばね定数を小さくして所望の性能を発揮させるために開発されている。つまり、質量部材と固定部が回転軸の径方向で重ならないのでダイナミックダンパの外径を小さくすることができ、第1ゴム状弾性体及び第2ゴム状弾性体にせん断力が加わるのでばね定数を小さくできて所望の性能を発揮することができる。
【0004】
この種のダイナミックダンパでは、従来、第1ゴム状弾性体と第2ゴム状弾性体から成る弾性連結部を、全周にわたって肉厚が一定の形状に設定してあった(特許文献1参照)。そのために、前記固有振動数を単一の共振振動数域にしか設定できず、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合、振動を十分抑制することができなかった。
【0005】
特許文献2に開示されているように、特許文献1と同一構造の大小一対のダイナミックダンパを用意し、小さい方のダイナミックダンパを回転軸に圧入外嵌し、このダイナミックダンパを間隔を空けて覆うように大きい方のダイナミックダンパを回転軸に取付ける技術もある。しかしながら、これでは部品点数が増えてダイナミックダンパをコンパクト化できず、その上、回転軸への取付けに手間がかかる。
【0006】
【特許文献1】
特公平6−37915号公報
【特許文献2】
特開平8−145117号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に鑑みて成されたものである。そして、その目的は、コンパクト化でき、ばね定数を小さくすることができる構造でありながら、固有振動数を複数の共振振動数域に設定できて、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合でも、振動を十分抑制することができるダイナミックダンパを提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴構成は、回転軸を空間を空けて挿通させる筒状の質量部材と、前記回転軸に外嵌固定されて前記質量部材を両持ち支持する一対の固定部とを設け、一方の固定部と、前記質量部材の軸芯方向の一端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体を介在させ、他方の固定部と前記質量部材の他端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体を介在させてあるダイナミックダンパであって、
前記第1ゴム状弾性体と第2ゴム状弾性体から成る弾性連結部を周方向に複数に区分けして、前記弾性連結部の軸芯を挟んで位置する一対の弾性連結部分を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分のうち、少なくとも一対の弾性連結部分に、ばね定数を小さくするための貫通孔をそれぞれ形成することで、前記複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせてある点にある。
【0009】
この構成によれば、質量部材と一対の固定部が回転軸の径方向で重ならないのでダイナミックダンパの外径を小さくすることができる。また、回転軸と質量部材の間に空間が形成されて質量部材が径方向に変位可能になり、第1ゴム状弾性体及び第2ゴム状弾性体にせん断力が加わるのでばね定数を小さくすることができる。
【0010】
さらに、前記弾性連結部の軸芯を挟んで位置する一対の弾性連結部分を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分のうち、少なくとも一対の弾性連結部分に、ばね定数を小さくするための貫通孔をそれぞれ形成することで、前記複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせてあるので、次の作用を奏することができる。
【0011】
例えば、弾性連結部を周方向に4個に区分けして二対の弾性連結部分から構成し、そのうちの一対の弾性連結部分に貫通孔を形成した場合、貫通孔が形成されていない一対の弾性連結部分の中央部と交差する方向で、所定の値よりも高い固有振動数で共振して回転軸の振動を吸収し、前記貫通孔が形成されている別の一対の弾性連結部分の中央部と交差する方向で、所定の値よりも低い固有振動数で共振して回転軸の振動を吸収する。
【0012】
そして、前記一対の弾性連結部分の幅方向の端部側と交差する方向や、別の一対の弾性連結部分の幅方向の端部側と交差する方向では、高低の中間の値の固有振動数で共振して回転軸の振動を吸収する。このように、ダイナミックダンパの固有振動数を回転軸の複数の共振振動数域にチューニングすることができる。
【0013】
複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせる手段として、少なくとも一対の弾性連結部分に貫通孔をそれぞれ形成するから、ばね定数を小さく設定しやすくすることができる。
【0014】
前記弾性連結部を三対以上の弾性連結部分から構成した場合も上記と同様の作用を奏することができる。
【0015】
本発明において、前記複数対の弾性連結部分の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせるとともに、各対の一方の弾性連結部分と他方の弾性連結部分を同一又はほぼ同一肉厚に設定し、肉厚の薄い側の一対の弾性連結部分に前記貫通孔を形成すると、前記一対の弾性連結部分のばね定数をより小さく設定しやすくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,図2,図3に、自動車のドライブシャフトS(回転軸に相当)に圧入外嵌された状態でドライブシャフトSの振動を抑制する筒型のダイナミックダンパを示してある。
【0017】
このダイナミックダンパは、ドライブシャフトSを小さな空間Aを空けて挿通させる金属円筒状の質量部材1と、ドライブシャフトSに外嵌固定されて質量部材1を両持ち支持する一対の円筒状の固定部2,3とを設け、一方の固定部2と、質量部材1の軸芯方向の一端部1Aとの間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体4を介在させ、他方の固定部3と、質量部材1の他端部1Bとの間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体5を介在させて構成してある。
【0018】
前記一方の固定部2は第3ゴム状弾性体から成り、他方の固定部3は第4ゴム状弾性体から成る。これらは、質量部材1の内周面や外周面に加硫接着された第5ゴム状弾性体14を介して連なっている。第1〜第5ゴム状弾性体は、同一のゴム配合物によって同一の成形型内で質量部材1とともに一体に加硫成形される。
【0019】
両固定部2,3の外周部に、締付けバンド(図示せず)を巻回するための環状の溝13をそれぞれ形成し、ドライブシャフトSに強く固定することができるようにしてある。
【0020】
前記空間Aは、第5ゴム状弾性体14の内周面とドライブシャフトSの外周面との間に形成されており、前記軸芯方向で第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5側にも入り込んでいる。すなわち、第1ゴム状弾性体4の一部分とドライブシャフトSの外周面との間、及び、第2ゴム状弾性体5の一部分とドライブシャフトSの外周面との間にも空間Aが形成されている。
【0021】
上記の構成によれば、質量部材1と一対の固定部2,3がドライブシャフトSの径方向で重なり合わないのでコンパクト化することができる。そして、振動で質量部材1が径方向に変位して、第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5にせん断力が加わるので、第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5のばね定数を小さくすることができる。
【0022】
第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5との組み合わせで弾性連結部6を構成している。第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5から成る弾性連結部6を周方向に4つに区分けして、弾性連結部6の軸芯Oを挟んで位置する一対の弾性連結部分7,8(9,10)を複数形成し、一対の弾性連結部分7,8の径方向の肉厚と、別の一対の弾性連結部分9,10の径方向の肉厚とを異ならせ、後者の肉厚を前者の肉厚よりも薄くしてある。言い換えれば、前記複数対の弾性連結部分7,8,9,10の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせてある。各弾性連結部分7,8,9,10は断面が扇形になっている。
【0023】
各対の一方の弾性連結部分7(9)と他方の弾性連結部分8(10)は同一又はほぼ同一肉厚で、かつ、互いに弾性連結部6の軸芯Oに対して点対称に位置している。前記一対の弾性連結部分7,8は別の一対の弾性連結部分9,10よりも周方向の幅が広く設定されている。この構成に換えて同一幅あるいは幅狭に設定されていてもよい。
【0024】
二対の弾性連結部分7,8,9,10のうち、肉厚が薄い方の一対の弾性連結部分9,10に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12を一対づつ形成してある。両貫通孔11,12は、質量部材1の軸芯方向で質量部材1の両側(第1ゴム状弾性体4側と第2ゴム状弾性体5側)に位置し、平面視で弾性連結部6の周方向に長い角孔に形成されている。貫通孔11,12の断面は扇形である。第1ゴム状弾性体4と第2ゴム状弾性体5は同一形状になっている。
【0025】
このように、複数対の弾性連結部分7,8,9,10の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせ、かつ、少なくとも一対の弾性連結部分9,10に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12をそれぞれ形成することで、複数対の弾性連結部分7,8,9,10のばね定数を各対ごとに異ならせてある。
【0026】
ドライブシャフトSに固定された上記構造のダイナミックダンパに振動が入力すると、肉厚が厚い前記一対の弾性連結部分7,8の中央部と交差する方向で、所定の値よりも高い固有振動数で共振してドライブシャフトSの振動を吸収し、肉厚が薄く貫通孔11,12が形成された別の一対の弾性連結部分9,10の中央部と交差する方向で、所定の値よりも低い固有振動数で共振してドライブシャフトSの振動を吸収する。
【0027】
[別実施形態]
(1)上記の実施形態では、前記複数対の弾性連結部分7,8,9,10の肉厚を各対ごとに異ならせたが、前記複数対の弾性連結部分7,8,9,10の肉厚を一定に設定し、前記一対の弾性連結部分7,8に、ばね定数を小さくするための貫通孔11,12をそれぞれ形成することで、前記一対の弾性連結部分の7,8のばね定数を別の一対の弾性連結部分の9,10のばね定数より小さくしてあってもよい。
【0028】
(2)前記弾性連結部6を三対以上の弾性連結部分に周方向に区分けしてあってもよい。この場合、二対の弾性連結部分に貫通孔11,12を形成してあってもよい。
【0029】
(3)上記構造のダイナミックダンパを取付ける対象はドライブシャフト以外に、自動車のプロペラシャフトや自動車のその他の回転軸であってもよい。また、自動車以外の装置の回転軸であってもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、コンパクト化でき、ばね定数を小さくすることができる構造でありながら、固有振動数を複数の共振振動数域に設定できて、振動数の異なる複数の振動の入力がある場合でも、振動を十分抑制することができるダイナミックダンパを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイナミックダンパの側面図
【図2】図1のA−O−A断面図
【図3】ダイナミックダンパの平面図
【符号の説明】
1 質量部材
1A 質量部材の一端部
1B 質量部材の他端部
2 固定部
3 固定部
4 第1ゴム状弾性体
5 第2ゴム状弾性体
6 弾性連結部
7,8,9,10 弾性連結部分
11,12 貫通孔
A 空間
O 弾性連結部の軸芯
S 回転軸
Claims (2)
- 回転軸を空間を空けて挿通させる筒状の質量部材と、前記回転軸に外嵌固定されて前記質量部材を両持ち支持する一対の固定部とを設け、一方の固定部と、前記質量部材の軸芯方向の一端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第1ゴム状弾性体を介在させ、他方の固定部と前記質量部材の他端部との間に、それらを前記軸芯方向で連結する第2ゴム状弾性体を介在させてあるダイナミックダンパであって、
前記第1ゴム状弾性体と第2ゴム状弾性体から成る弾性連結部を周方向に複数に区分けして、前記弾性連結部の軸芯を挟んで位置する一対の弾性連結部分を複数形成し、それら複数対の弾性連結部分のうち、少なくとも一対の弾性連結部分に、ばね定数を小さくするための貫通孔をそれぞれ形成することで、前記複数対の弾性連結部分のばね定数を各対ごとに異ならせてあるダイナミックダンパ。 - 前記複数対の弾性連結部分の径方向の肉厚を各対ごとに異ならせるとともに、各対の一方の弾性連結部分と他方の弾性連結部分を同一又はほぼ同一肉厚に設定し、肉厚の薄い側の一対の弾性連結部分に前記貫通孔を形成してある請求項1記載のダイナミックダンパ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003188472A JP2005023970A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | ダイナミックダンパ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003188472A JP2005023970A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | ダイナミックダンパ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005023970A true JP2005023970A (ja) | 2005-01-27 |
Family
ID=34187012
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003188472A Withdrawn JP2005023970A (ja) | 2003-06-30 | 2003-06-30 | ダイナミックダンパ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005023970A (ja) |
-
2003
- 2003-06-30 JP JP2003188472A patent/JP2005023970A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20060512 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
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A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20070330 |