JP2005023863A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】点火プラグから検出したイオン電流に基づいて空燃比を正確に求め、内燃機関を最適に制御する。
【解決手段】各気筒10a〜10dのイオン電流を取得する点火プラグ16と、イオン電流と筒内の空燃比との関係をモデル化し、イオン電流に基づいて筒内の空燃比を出力する点火プラグモデル42と、を備える。点火プラグモデル42を簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル42bから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【選択図】 図4
【解決手段】各気筒10a〜10dのイオン電流を取得する点火プラグ16と、イオン電流と筒内の空燃比との関係をモデル化し、イオン電流に基づいて筒内の空燃比を出力する点火プラグモデル42と、を備える。点火プラグモデル42を簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル42bから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関の制御装置に関し、特に、空燃比(A/F)の制御を行う装置に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、点火プラグからイオン電流を検出し、イオン電流に基づいて燃料噴射量を制御する方法が知られている。例えば、特開2000−54942号公報には、活性後の空燃比センサの空燃比からイオン電流による空燃比検出誤差を補正するための補正値を学習し、空燃比センサが不活性の時にはイオン電流により空燃比を制御する方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−54942号公報
【特許文献2】
特開平5−180059号公報
【特許文献3】
特開平10−54279号公報
【特許文献4】
特開2000−213395号公報
【特許文献5】
特開平10−11105号公報
【特許文献6】
特開2001−152932号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン電流は燃焼室内の点火プラグの近傍のみでしか測定することができない。従って、イオン電流の出力値は、測定時における燃焼室内での燃料の分布状況に影響を受け、燃焼室内での燃料の分布は流動的であるため、イオン電流の測定値は測定毎に大きく変動するという問題が生じる。更に、イオン電流出力にはノイズ成分が多く発生するため、測定値はノイズによって測定毎に変動する。このため、イオン電流に基づいて正確に空燃比を推定することは困難である。
【0005】
上記公報に記載された方法では、イオン電流と空燃比との関係を複数回測定し、その関係を用いて空燃比を推定している。しかしながら、この方法では、空燃比を検出するためには複数回のイオン電流測定を行う必要があり、1回のイオン電流測定に基づいて空燃比を正確に求めることはできない。従って、イオン電流に基づいて燃焼1回毎の空燃比を逐次求めることは非常に困難となる。
【0006】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、点火プラグから検出したイオン電流に基づいて空燃比を正確に求め、内燃機関を最適に制御することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、筒内のイオン電流又は燃焼圧を取得する手段と、前記イオン電流又は燃焼圧と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力する空燃比推定モデルと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記空燃比推定モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を更に備えたことを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と前記空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、前記排気モデルを決定するパラメータを取得する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、前記排気モデルを決定するパラメータは、各気筒からの排気の割合、及び排気の輸送遅れであることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記パラメータの変動に基づいて異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、第1〜第8の発明のいずれかにおいて、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを構築する手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、第9の発明において、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と、前記燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、第9又は第10の発明において、前記燃料モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0018】
第12の発明は、第9〜第11の発明のいずれかにおいて、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を更に備えたことを特徴とする。
【0019】
第13の発明は、第4〜第8及び第12の発明のいずれかにおいて、前記空燃比センサモデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0020】
第14の発明は、第9〜第11の発明のいずれかにおいて、内燃機関を定常運転させた場合に、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と前記空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、前記空燃比推定モデルを修正する修正手段を更に備えたことを特徴とする。
【0021】
第15の発明は、第14の発明において、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
第16の発明は、第15の発明において、内燃機関を過渡運転させた場合に、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを修正する修正手段を更に備えたことを特徴とする。
【0023】
第17の発明は、第16の発明において、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と、修正された前記燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0024】
第18の発明は、第12の発明において、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0025】
第19の発明は、第12の発明において、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と実機の空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0026】
第20の発明は、第1又は第2の発明において、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係を線形成分を用いてモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性を線形成分を用いてモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を含む線形モデルと、前記線形モデルの空燃比センサモデルから出力された全気筒の空燃比と、前記空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0027】
第21の発明は、上記の目的を達成するため、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、前記線形モデルの前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と、前記空燃比センサで実測された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
第22の発明は、上記の目的を達成するため、燃料噴射量と空燃比との関係をモデル化し、燃料噴射量を入力として排気集合部に設けられた空燃比センサの出力に相当する空燃比を出力するハイブリッドモデルと、目標空燃比を入力として、当該目標空燃比に応じた燃料噴射量を出力する前記ハイブリッドモデルの近似逆モデルと、前記空燃比センサで実測された空燃比と、前記近似逆モデルから出力された燃料噴射量を入力として前記ハイブリッドモデルから出力された空燃比とを比較する比較手段と、前記比較手段における比較の結果に基づいて、燃料噴射量を制御する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
第23の発明は、第22の発明において、前記ハイブリッドモデルは、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を備えたことを特徴とする。
【0030】
第24の発明は、第21又は第23の発明において、筒内のイオン電流又は燃焼圧を取得する手段と、前記イオン電流又は燃焼圧と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力する空燃比推定モデルと、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを構築する手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0031】
第25の発明は、第22〜第24の発明のいずれかにおいて、前記近似逆モデルは、前記ハイブリッドモデルから時間遅れ項を除いたモデルをフィードバック制御して得られるモデルであることを特徴とする。
【0032】
第26の発明は、第21及び第23〜第25の発明のいずれかにおいて、前記燃料モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0033】
第27の発明は、第21及び第23〜第26の発明のいずれかにおいて、前記空燃比センサモデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0034】
第28の発明は、第24〜第27の発明のいずれかにおいて、前記空燃比推定モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0036】
実施の形態1.
図1は、本発明の各実施形態の制御装置によって制御される実機44の構成を示す模式図である。図1では、4気筒の内燃機関10からなる実機44を例示している。図1に示すように、内燃機関10の#1〜#4の各気筒10a〜10dには、吸気管12a〜12d、排気管14a〜14dが連通している。各気筒10a〜10dは、点火プラグ16をそれぞれ備えている。また、排気管14a〜14dの集合部(排気集合部)18よりも下流における排気管20には、空燃比(A/F)センサ22が装着されている。
【0037】
各吸気管12a〜12dには、燃料噴射弁(インジェクタ)24が装着されている。燃料噴射弁24は、噴射量Tau1〜Tau4の燃料を各吸気管12a〜12dへ噴射する。各気筒10a〜10dへの吸入空気は、吸気管26から各吸気管12a〜12dへ送られる。吸気管26には、吸入空気量Gaを検出するエアフロメータ(AFM)28が設けられている。また、実施の形態1の実機44においては、各排気管14a〜14dに空燃比(A/F)センサ30が装着されている。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の燃料制御装置はECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した点火プラグ16、A/Fセンサ22,30、燃料噴射弁24、エアフロメータ28などが接続されている。
【0039】
図2は、本実施形態にかかる点火プラグモデル(点火プラグイオン電流モデル)42を示す模式図である。点火プラグモデル42は#1〜#4の各気筒10a〜10d毎に構成され、各気筒10a〜10dの点火プラグ16で検出されたイオン電流を入力として各気筒10a〜10dの空燃比(A/F)をモデル出力する。点火プラグ16で検出されるイオン電流は、混合気の燃焼により生じるイオンの量に応じて流れる電流であって、点火プラグ11に所定の電圧を印加して抵抗値を測定することで検出できる。イオン電流は、点火プラグイオン電流検出回路において検出される。なお、検出したイオン電流にフィルタなどのノイズ除去の一次処理等を施しても良い。
【0040】
図3は、点火プラグ16で検出されるイオン電流と、A/Fとの関係を示す模式図である。図3に示すように、A/Fが12.5近辺の値をとると、点火プラグイオン電流は最大となる。図3では、イオン電流とA/Fとの関係を理想化した特性を示しているが、実際には、同じ燃焼状態(空燃比)であってもイオン電流の出力値、ピークは燃焼毎、測定毎に異なる。また、イオン電流の出力にはノイズ成分が多く発生する。従って、図3に示すような、イオン電流とA/Fとの関係が1対1で対応した特性を得ることは困難である。
【0041】
本実施形態では、図2の点火プラグモデル42を、簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル(NNモデル)42bからなるハイブリッドモデルにより構成し、イオン電流出力とA/Fとの関係を精密に規定する。図4は、ハイブリッドモデルから構成した点火プラグモデル42を示す模式図である。図4において、簡易線形モデル42aは、イオン電流とA/Fとの関係を線形近似したモデルである。簡易線形モデル42aで主に表現されるモデルは、各気筒10a〜10dにおけるイオン電流とA/Fの特性の共通部分であって、各気筒10a〜10dの点火プラグ16に共通する特性を含むものである。
【0042】
簡易線形モデル42aは、例えば、以下の(1)式で表すことができる。
【0043】
【0044】
(1)式において、AF(t)、ION(t)はそれぞれ時刻tでのA/F(出力)とイオン電流(入力)を表している。また、a0, a1, a2,・・・, b0, b1, b2,・・・は最小二乗法で求めることのできるモデルパラメータ(係数)である。また、A/F(出力)をイオン電流とエンジンの運転条件、例えば回転数、負荷、吸入空気量などを入力とした線形式で表してもよい。
【0045】
ニューラルネットモデル(NNP)42bは、点火プラグ16で検出されるイオン電流と、A/Fとの関係において、非線形部分を表現したモデルである。ニューラルネットモデル42bで主に表現されるモデルは、各気筒10a〜10dにおけるイオン電流とA/Fの特性の相違する部分であって、点火プラグ16を含む各部品の製造バラツキ、燃焼室の加工バラツキなどに起因する非線形特性を含むものである。ニューラルネットモデル42bは非線形部分のモデル化に適しているため、点火プラグモデル42を簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル42bから構成することで、点火プラグ16から検出されるイオン電流出力とA/Fとの関係を精密に規定することが可能となる。
【0046】
図5は、点火プラグモデル42と実機44との関係を示す模式図である。図5に示すように、実機44の点火プラグ16で検出されたイオン電流は点火プラグモデル42へ入力され、各気筒10a〜10d毎にA/Fがモデル出力される。ここで、点火プラグモデル42からモデル出力された各気筒10a〜10dのA/Fは、排気管14a〜14dで検出されるA/Fに相当する。従って、点火プラグモデル42からのA/Fのモデル出力値と、排気管14a〜14dに装着されたA/Fセンサ30の検出値とを比較し、学習を行うことで、点火プラグモデル42のモデル化を精度良く行うことができる。
【0047】
図6に基づいて、点火プラグモデル42をモデリングする方法を説明する。図6は、点火プラグモデル42を獲得するための学習モードを示している。学習モードにおいては、ベンチテスト等を行い、点火プラグ16から検出されたイオン電流出力とA/Fセンサ30から実測されたA/Fの出力値を用いて簡易線形モデル42aを獲得する。
【0048】
簡易線形モデル42aを作成した後、内燃機関10を定常運転させた状態で、点火プラグ16からのイオン電流出力を点火プラグモデル42へ入力して、簡易線形モデル42aによるA/Fのモデル出力値を出力する。この際、必要に応じて運転条件を点火プラグモデル42へ入力する。そして、簡易線形モデル42aで計算されてモデル出力されたA/F値と、実機44のA/Fセンサ30における実測A/F値との出力誤差ΔA/Fを求める。そして、出力誤差ΔA/Fをニューラルネットモデル42bで吸収させるため、ΔA/Fを用いてニューラルネットモデル42bの学習を行う。この際、簡易線形モデル42aのパラメータ((1)式における係数a0, a1, a2,・・・, b0, b1, b2,・・・)は、最初に簡易線形モデル42aを獲得した時の値で固定値としておく。
【0049】
なお、A/Fセンサ30で出力された実測A/F値には、センサ特性に起因した遅れ等の要因が含まれる場合がある。従って、図6に示すように、A/Fセンサ30から出力される実測A/Fと、A/Fセンサ30に当たる排気ガスの実際のA/Fとの関係をモデル化したモデル(A/Fセンサ逆モデル47)を作成し、A/Fセンサ30の出力をA/Fセンサ逆モデル47へ入力してセンサ特性に起因する遅れ等の要因を取り除いておくことが望ましい。これにより、ニューラルネットモデル42bの学習をより精度良く行うことができる。
【0050】
簡易線形モデル42aのみを用いた制御では、システムの線形部分しかモデルで表現することができないため、実システムとの誤差が大きく、良好な制御性が得られない。一方、ニューラルネットモデル42bのみでモデリングを行った場合は、モデルの学習に長時間を要することが想定される。本実施形態の点火プラグモデル42によれば、ニューラルネットモデル42bが非線形成分の学習に適しているため、簡易線形モデル42aと併用することにより、実機44とモデルとの誤差を最小限に抑えることができる。従って、モデル全体の精度を飛躍的に向上させることができる。また、モデルの基本的な線形部分を簡易線形モデル42aで表現することで、ニューラルネットモデル42bにおける学習を最小限に抑えることができ、点火プラグモデル42を迅速に構築することができる。
【0051】
点火プラグモデル42の学習が終了した後、点火プラグモデル42を固定(FIX)し、排気管14a〜14dに装着されたA/Fセンサ30を取り外す。従って、製品出荷時など、点火プラグモデル42を学習する場合のみ実機44にA/Fセンサ30を装着すれば、その後のA/F算出は点火プラグモデル42を用いて行うことができる。これにより、実機44に継続してA/Fセンサ30を装着しておく必要がなくなり、実機44の製造コストを削減することができる。
【0052】
点火プラグモデル42のモデリングが完了した後は、点火プラグモデル42によるモデルシミュレーション、及びA/F制御が実現できる。図4に示すように、点火プラグモデル42のモデルシミュレーションでは、点火プラグ16のイオン電流検出回路から得られた電流値を入力としてA/Fがモデル出力される。図4に示すように、簡易線形モデル42aの出力にニューラルネットモデル42bの出力を加えることで、実機44と同じ出力を得ることができる。この際、次の入力(燃料噴射量)の値で予めシミュレーションを行うことで、次のA/Fを正確に推定することができ、A/Fのリアルタイム制御が可能となる。従って、このシミュレーションにより正確に排気管14a〜14dにおけるA/Fを求めることができ、A/Fに基づいて燃料噴射量を最適に制御することが可能となる。
【0053】
図7は、点火プラグモデル42を用いて#1の気筒10aのA/Fを制御する方法を示す模式図である。図7に示すように、点火プラグモデル42からモデル出力されたA/Fと目標A/Fとを比較し、比較の結果に基づいてPID等のコントローラー45により気筒10aの燃料噴射弁24による燃料噴射量Tau1を制御する。#2〜#4の気筒10b〜10dについても、各気筒10b〜10dに対応した点火プラグモデル42により同様の制御を行う。従って、本実施形態によれば、A/Fセンサを用いたA/F検出が不要となり、また、各気筒10a〜10dのA/Fを個別に制御することが可能となる。
【0054】
また、A/Fセンサを用いた通常のA/F制御では、A/Fセンサが活性化するまである程度の時間を要し、その間は正確なA/Fを検出することはできない。しかし、点火プラグモデル42を用いた場合は始動直後からA/Fをモデル出力することができ、モデル出力したA/Fに基づいて空燃比制御を行うことができる。従って、本実施形態によれば、始動直後から空燃比制御を行うことが可能となる。
【0055】
以上説明したように実施の形態1によれば、点火プラグ16で検出されるイオン電流からA/Fを算出する点火プラグモデル42をモデル化し、点火プラグモデル42を簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル42bとからなるハイブリッドモデルから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。従って、点火プラグモデル42から求めたA/Fに基づいて、正確な気筒別A/F制御を実現することが可能となる。
【0056】
なお、燃焼圧センサを備えた実機44では、燃焼圧とA/Fとの間に一定の相関関係があるため、燃焼圧に基づいてA/Fを推定することができる。従って、点火プラグモデル42と同様の方法で、燃焼圧と筒内のA/Fとの関係をモデル化し、燃焼圧からA/Fを出力するモデル(空燃比推定モデル)を構築しても良い。
【0057】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、排気集合部18の下流に設けられたA/Fセンサ22の特性を学習してA/Fセンサモデル46を構成する。また、実施の形態2では、排気管14a〜14dの形状、長さ等に起因するA/Fセンサ22への排気の当たり状態や、排気の輸送遅れをモデル化する。
【0058】
図8は、A/Fセンサモデル46の構成を示す模式図である。実施の形態2では、A/Fセンサモデル46を、簡易線形モデル46aとニューラルネットモデル(NNS)46bからなるハイブリッドモデルにより構成し、A/Fセンサ22の特性を精密にモデル化する。
【0059】
A/Fセンサ22で出力された実測A/F値は、A/Fセンサ22に当たった排気ガスの実際のA/Fに対して、センサ特性に起因した遅れ等の要因が含まれる場合がある。センサ特性の基本的部分は一次遅れ系で表現できるため、A/Fセンサモデル46では、一次遅れ系を簡易線形モデル46aで表現し、センサにおける複雑な化学反応など線形近似で表しにくい部分をニューラルネットモデル46bで表現する。簡易線形モデル46aは、以下の(2)式により構成することができる。
【0060】
【0061】
ここで、u(t), y(t)はそれぞれ時刻tでの簡易線形モデル46aへの入力と出力を示している。また、a0, a1,・・・, b0, b1,・・・は最小二乗法で求めることのできるモデルパラメータ(係数)である。また、出力A/Fを機関運転条件、例えば回転数、負荷、吸入空気量などの線形項を加えて表してもよい。
【0062】
(2)式による簡易線形モデル46aのみでシステムを構成して制御に用いてもよいが、ニューラルネットモデル46bと組み合わせることで、より精度の高いシステムモデルを得ることができる。
【0063】
図9は、A/Fセンサモデル46を学習する方法を示す模式図である。先ず、モデルガス等を使用したベンチテスト等を行い、モデルガスによる入力A/FとA/Fセンサ22で実測された検出値を用いて簡易線形モデル46aを作成する。上記の(2)式を用いる場合は、最小二乗法により係数a0, a1,・・・, b0, b1,・・・の値を求めることで簡易線形モデル46aを作成することができる。
【0064】
簡易線形モデル46aを作成した後、簡易線形モデル46aから算出されたモデル出力によるA/F値とA/Fセンサ22での実測A/F値との出力誤差ΔA/Fを求める。そして、この誤差をニューラルネットモデル46bで吸収させるように学習を行う。ニューラルネットモデル46bは非線形部分の学習に適しているため、簡易線形モデル46aと併用することにより、モデル全体の精度の飛躍的向上を達成することができる。また、ニューラルネットモデル46bのみでモデルを作成する場合と比較すると、短時間で正確なモデルを得ることができる。
【0065】
A/Fセンサモデル46のモデリングが完了した後は、A/Fセンサモデル46によるモデルシミュレーション及びA/F制御が実現できる。図8に示すように、A/Fセンサモデル46によるモデルシミュレーションでは、任意のガス(モデルガス等)の空燃比を入力として、同じ空燃比のモデルガスが実機44の排気管20に流れた場合のA/Fセンサ22の出力値に相当するA/Fがモデル出力される。図8に示すように、簡易線形モデル46aの出力にニューラルネットモデル46bの出力を加えることで、実機44のA/Fセンサ22と同等の出力を得ることができる。従って、このシミュレーションによりA/Fセンサ22の特性を加味した上で、排気集合部18の下流での正確なA/Fをモデル出力することができ、出力したA/Fに基づいて空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0066】
次に、実施の形態1の点火プラグモデル42と、実施の形態2のA/Fセンサモデル46を接続したシステムについて説明する。実施の形態1で説明したように、点火プラグモデル42は、各気筒10a〜10d毎に構成される。一方、A/Fセンサモデル46は、排気集合部18の下流におけるA/Fセンサ22の特性を学習しているため、1つだけ構成される。従って、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46を接続する場合は、各気筒10a〜10d毎に点火プラグモデル42からモデル出力された空燃比を合計して、A/Fセンサモデル46へ入力する必要がある。
【0067】
各気筒10a〜10dに対応した点火プラグモデル42からは、各排気管14a〜14dにおけるA/Fが出力される。図10は、点火プラグモデル42から出力された各排気管14a〜14dの空燃比と、A/Fセンサ22で検出されるA/Fとの関係を示した模式図である。図10に示すように、各排気管14a〜14dを流れる排気ガスは排気集合部18で集合する。そして、排気集合部18におけるA/F(排気管20におけるA/F)は、各排気管14a〜14dの排気の割合と排気輸送遅れによって決定される。従って、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46を接続する際に、各排気管14a〜14dでの排気割合と排気輸送遅れを考慮する必要がある。
【0068】
図11は、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46とを接続した複合モデル48を示す模式図である。ここで、図11では、複合モデル48とともに実機44を図示している。複合モデル48では、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46とを接続するため、両モデルの間に排気集合部モデル50を挿入している。各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42からの出力は、排気集合部モデル50で合計され、A/Fセンサモデル46へ入力される。
【0069】
図12は、点火プラグモデル42、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46の関係を詳細に示す模式図である。各気筒10a〜10dに対応した点火プラグモデル42からは、各排気管14a〜14dにおけるA/Fが出力される。排気集合部モデル50は、各気筒10a〜10dの排気割合(R1,R2,R3,R4)と排気輸送遅れdをパラメータとして構成されている。排気割合(R1,R2,R3,R4)は、各排気管14a〜14dにおける排気ガスの比率を表したものであり、R1+R2+R3+R4=1である。図12に示すように、排気集合部モデル50は、各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42からの出力(#1AF, #2AF, #3AF, #4AF)を、排気割合(R1,R2,R3,R4)に応じて合計し、排気輸送遅れdによる遅れ分を加味して、A/Fセンサモデル46へ出力する。すなわち、排気集合部モデル50では、(#1AF×R1+#2AF×R2+#3AF×R3+#4AF×R4)を演算して各排気管14a〜14dのA/Fを合計し、更に排気輸送遅れdによる遅れ分を加味して出力する。
【0070】
排気集合部モデル50から出力されたA/Fは、実機44の排気集合部18におけるA/F(排気管20におけるA/F)に相当する。排気集合部モデル50からモデル出力されたA/FはA/Fセンサモデル46へ入力され、A/Fセンサ22における遅れ等のセンサ特性が加味されて出力される。従って、複合モデル48が実機44を正確に反映していれば、A/Fセンサモデル46のモデル出力によるA/Fと、A/Fセンサ22による実測のA/Fとは一致する。
【0071】
排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdは、主として排気管14a〜14dの形状、長さ等によって決定される。複合モデル48を取得するためには、先ず、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを求めておく必要がある。
【0072】
そこで、実施の形態2では、A/Fセンサモデル46の出力と、実機44におけるA/Fセンサ22の出力とを比較し、比較の結果に基づいて排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを決定する。この際、運転条件(回転数NE、負荷率KL)毎に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdは変動するため、実機44を様々な運転条件で運転し、運転条件毎に求めたR1,R2,R3,R4,dを自動学習する。
【0073】
すなわち、運転条件毎に、実機44の点火プラグ16から検出されたイオン電流を点火プラグモデル42へ入力し、図11及び図12に示すように、A/Fセンサモデル46からモデル出力したA/F値と実機44のA/Fセンサ22の出力値とから、その出力誤差を求め、出力誤差に基づいて排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気遅れdを自動学習する。運転条件毎に学習した排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdのパラメータは固定(FIX)される。点火プラグモデル42は実施の形態1の方法で取得されており、A/Fセンサモデル46は上述した方法で取得されているため、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdが確定することで、図11に示す複合モデル48を完成させることができる。なお、A/Fセンサ30で出力された実測A/F値には、センサ特性に起因した遅れ等の要因が含まれる場合があるため、図12に示すように、A/Fセンサ22からの出力をA/Fセンサ逆モデル47へ入力して得られた値と、A/Fセンサモデル46からモデル出力したA/F値とを比較することがより好適である。
【0074】
複合モデル48が完成すると、点火プラグ16から検出されたイオン電流を入力として、A/Fセンサ22で実測されるA/Fを出力する経路がモデル化される。従って、点火プラグモデル42により各気筒10a〜10dのA/Fを個別に制御するとともに、複合モデル48から出力されたA/Fセンサ22の実測A/Fに相当するA/F値に基づいて、全気筒のA/Fを一括制御することも可能となる。また、実機44が経年変化等により複合モデル48と相違する場合は、定期的に定期的に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを算出して最新の値に更新することで、複合モデル48から出力されたA/Fに基づく制御を継続することができる。
【0075】
複合モデル48の各モデルが実機44の状態を反映しなくなった場合は、複合モデル48から出力されたモデル出力A/F値と、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値とが相違することとなる。そして、図11のシステムによれば、複合モデル48から出力されたモデル出力A/F値と、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値との差分は、全て排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdに反映される。従って、定期的に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを算出し、過去に算出した値と比較することで、実機44の経年変化、劣化の度合い、故障の有無等を検出することが可能となる。そして、異常が判定されるまでは、点火プラグモデル42により各気筒10a〜10dのA/Fを個別に制御し、異常が判定された後は、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値に基づいて各気筒10a〜10dのA/Fを一括して制御することも可能となる。
【0076】
以上説明したように実施の形態2によれば、A/Fセンサ22の特性をモデル化してA/Fセンサモデル46を構築したため、A/Fセンサ22の実測A/F値に対応したA/Fを精度良くモデル出力することが可能となる。また、A/Fセンサモデル46を簡易線形モデル46aとニューラルネットモデル46bとからなるハイブリッドモデルから構成したため、実施の形態1と同様に精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0077】
また、点火プラグ16から検出されたイオン電流を入力として、A/Fセンサ22で実測されるA/Fを出力する複合モデル48を構築することで、A/Fセンサ22で実測されるA/Fをモデル出力することが可能となる。これにより、複合モデル48からモデル出力したA/Fに基づいて、各気筒10a〜10dのA/Fを一括制御することが可能となる。また、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを定期的に算出し、過去に算出した値と比較することで、異常判定を行うことが可能となる。
【0078】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、吸気管12a〜12dにおける燃料付着量を学習して、各気筒10a〜10dのA/Fと、燃料噴射弁24による燃料噴射量との関係をモデル化するものである。
【0079】
図13は、燃料モデル52を示す模式図である。例えば#1の気筒10aにおいて、吸気管12aへの燃料付着が生じないと仮定した場合の空燃比(噴射空燃比)AF1は、気筒10aの吸気行程における吸入空気量Gaと、燃料噴射弁24による気筒10aへの燃料噴射量Tau1から算出することができる。すなわち、AF1=Ga/Tau1として算出することができる。しかし、燃料噴射量Tau1の一部は吸気管12aの壁面に付着するため、気筒10a内の実際のA/FはAF1とならない場合がある。図13の燃料モデル52は、噴射空燃比AF1を入力として、吸気管12aでの燃料の付着を考慮した上で、気筒10aでの実際の空燃比Cal_AF1を出力するものである。
【0080】
図14は、燃料付着モデル54の構成を示す模式図である。図14に示すように、実施の形態3では、図13の燃料モデル52を簡易線形モデル54aとニューラルネットモデル(NNW)54bからなる燃料付着モデル54により構成し、AF1とCal_AF1との関係を精密に規定する。簡易線形モデル54aは、主として各吸気管12a〜12dにおいて共通する燃料の付着特性を表現したモデルであり、ニューラルネットモデル54bは、各吸気管12a〜12dの形状、加工精度などのバラツキに起因した非線形部分を表現したモデルである。なお、ここでは#1の気筒10aにおける燃料付着モデル54について説明するが、燃料付着モデル54は、#2〜#4の各気筒10b〜10dにおいても同様にモデル化される。
【0081】
図14に示すように、吸気管12aへの実吸入空気量Gaと実燃料噴射量Tau1とから算出された噴射空燃比AF1は、燃料付着モデル54へ入力される。燃料付着モデル54では、吸気管12aの壁面への燃料付着を考慮して気筒10aの実際の空燃比Cal_AF1を出力する。
【0082】
この際、図14に示すように、簡易線形モデル54aにおいて、吸気管12aにおける燃料の残留率P、付着率Rに基づいた線形成分の演算を行い、ニューラルネットモデル54bにおいて非線形部分の演算を行う。
【0083】
図15は、燃料付着モデル54の学習と、燃料付着モデル54によるモデルシミュレーション及びA/F制御を示す模式図である。ここで、図15(A)は、燃料付着モデル54を獲得する学習モードを示している。
【0084】
図15(A)に示す学習モードにおいては、最初に簡易線形モデル54a内のパラメータ(例えば、燃料モデルの残留率Pと付着率R)を予めベンチテスト等により各ユニット毎に求めておく。また、ニューラルネットモデル54bに関しても予め初期設定値を学習しておくことが望ましい。
【0085】
次に、各運転条件における吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1を燃料付着モデル54に入力し、点火プラグモデル42によるA/Fのモデル出力値と、燃料付着モデル54の簡易線形モデル54aにより計算したA/F値との出力誤差ΔA/Fを求める。次に、この出力誤差ΔA/Fをニューラルネットモデル54bで吸収させるため、学習を行う。この際、簡易線形モデル54aのパラメータ(残留率P、付着率Rなど)は固定とする。この学習により、各気筒10a〜10d毎に燃料付着モデル54を獲得することができる。燃料付着モデル54を獲得した後、モデルパラメータを固定(FIX)する。
【0086】
学習モードにおいて、点火プラグモデル42は実施の形態1の方法で既に完成されているため、点火プラグモデル42から各気筒10a〜10dのA/Fを正確に求めることができる。従って、点火プラグモデル42から求めた各気筒10a〜10dのA/Fに基づいて、燃料付着モデル54を獲得することが可能となる。
【0087】
簡易線形モデル54aのみを用いた制御では、システムの線形部分しかモデルで表現することができないため、実システムとの誤差が大きく、良好な制御性が得られない。一方、ニューラルネットモデル54bのみでモデリングを行った場合は、モデルの学習に長時間を要することが想定される。本実施形態の燃料付着モデル54によれば、ニューラルネットモデル54bが非線形成分の学習に適しているため、簡易線形モデル54aと併用することにより、実機44における燃料の付着状態とモデルとの誤差を最小限に抑えることができる。従って、モデル全体の精度を飛躍的に向上させることができる。また、モデルの基本的な線形部分を簡易線形モデル54aで表現することで、ニューラルネットモデル54bにおける学習を最小限に抑えることができ、燃料付着モデル54を迅速に構築することができる。
【0088】
図15(B)は、燃料付着モデル54によるモデルシミュレーション及びA/F制御を示す模式図である。燃料付着モデル54を獲得した後、吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1を入力としてシミュレーションを行い、A/Fのモデル計算値を出力する。図15(B)に示すように、簡易線形モデル54aの出力にニューラルネットモデル54bを加算することで、実機44と同等の出力を得ることができる。従って、このシミュレーションにより筒内の正確なA/Fを求めることができ、求めたA/Fに基づいて燃料噴射量、空燃比を精密に制御することが可能となる。
【0089】
図16は、燃料付着モデル54を用いたシステムの構成をより詳細に示した模式図である。図16では、燃料付着モデル54とともに、点火プラグモデル42、実機44を図示している。図16に示すように、吸入空気量Gaと、燃料噴射量Tau1から算出された噴射空燃比AF1は、気筒10aについての燃料付着モデル54へ入力される。燃料付着モデル54では、AF1を入力として、吸気管12aにおける燃料付着を考慮して気筒10aの空燃比Cal_AF1をモデル出力する。モデル出力された空燃比Cal_AF1は、点火プラグモデル42からモデル出力されたA/Fと比較され、ニューラルネットモデル54bの学習が行われる。
【0090】
図17は、図7で説明した点火プラグモデル42によるA/F制御を、燃料付着モデル54を併用して行う方法を示す模式図である。図17に示すように、点火プラグモデル42によるモデル出力A/Fと目標A/Fとから求めた燃料噴射量Tau1を、燃料付着モデル54で修正し、修正した値で燃料噴射弁24による燃料噴射を行う。このように、点火プラグモデル42によるA/F出力と併用することで、A/Fの制御性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0091】
なお、適宜に燃料付着モデル54の学習を行い、簡易線形モデル54a、ニューラルネットモデル54bにおける初期設定値を定期的に取得してその値を監視することで、システムの劣化検出や異常検出(吸気管12a〜12dの汚れ付着、燃料噴射弁24のつまり等の不具合の検出)を行うことが可能となる。
【0092】
以上説明したように実施の形態3によれば、吸気管12a〜12dにおける燃料の付着状態を燃料付着モデル54でモデル化し、燃料付着モデル54を簡易線形モデル54aとニューラルネットモデル54bとからなるハイブリッドモデルから構成したため、実施の形態1と同様に精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。これにより、燃料付着モデル54からモデル出力されたA/Fに基づいて、各気筒10a〜10dのA/Fを制御することが可能となる。また、点火プラグモデル42によるA/F制御と併用することで、A/Fの制御性を飛躍的に向上させることができる。
【0093】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1〜3の方法で点火プラグモデル42、燃料付着モデル54、A/Fセンサモデル46を構築し、各モデルに変化が生じた場合に、各モデルを修正して各モデルの精度を高めるものである。そして、実施の形態4では、修正した各モデルを用いてシステム全体のモデルを監視し、異常検出を行う。
【0094】
図18は、実施の形態4にかかるシステムの構成を示す模式図である。図18のシステムは、図11の複合モデル48と同様のモデルであって、点火プラグモデル42、排気集合部モデル50、A/Fセンサモデル46から構成されている。
【0095】
点火プラグモデル42、A/Fセンサモデル46は、実施の形態1,2で説明した方法で既に学習が行われており、モデルが完成されている。また、排気集合部モデル50についても、実施の形態2で説明した方法により、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdが既に取得されている。
【0096】
各気筒10a〜10dのイオン電流を検出する点火プラグ16は、燃焼室内に配置されているため非常に過酷な環境下にある。従って、経年変化などに起因する点火プラグ16の劣化によって、点火プラグモデル42のモデルが変化する場合がある。
【0097】
一方、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdは、前述したように排気管14a〜14dの長さ、形状等から定まるため、排気集合部モデル50の経年変化は殆ど生じないと考えて良い。また、実機44のA/Fセンサ22の特性はほぼ一定しているため、経年変化等により、A/Fセンサモデル46でモデル化されたセンサ特性が、実機44のA/Fセンサ22の特性から外れる可能性は低い。
【0098】
従って、図18のシステムにおいて、A/Fセンサモデル46からモデル出力されたA/F値と、実機44のA/Fセンサ22の出力値とが異なる場合は、点火プラグモデル42にモデル変化が生じたものと推定することができる。
【0099】
このため、実施の形態4では、定常運転時において、A/Fセンサモデル46から出力されたA/F値のモデル出力と、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値とを比較し、双方のA/F値が相違する場合は、最もモデル変化が生じ易い点火プラグモデル42が変化したものと推定して、各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42のニューラルネットモデル42bを修正する。これにより、点火プラグモデル42を常に最新のモデルに更新することが可能となる。
【0100】
特に、定常運転時においては、吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着量はほぼ一定しており、吸気管12a〜12dへの燃料付着の度合いに起因して点火プラグモデル42からの出力が変動することはない。従って、定常運転時において図18のシステム(A/Fセンサモデル46)から出力されたA/F値には、吸気管12a〜12dでの燃料付着の増減による変動要因は含まれていない。
【0101】
同様に、定常運転時において実機44のA/Fセンサ22から出力されたA/F値にも、吸気管12a〜12dへの燃料付着の増減による変動要因は含まれていない。従って、定常運転時において出力された、図18のシステムによるA/Fのモデル出力値と、A/Fセンサ22による実測A/F値とを比較することで、吸気管12a〜12dにおける燃料付着の増減に起因したA/Fの変動を排除した状態で、双方のA/F値を正確に比較することができる。そして、比較の結果に基づいて高精度に点火プラグモデル42を修正することが可能となる。
【0102】
一方、加減速時などの過渡運転時には、吸入空気量の変動等に起因して吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着量が変動する。従って、過渡運転時においては、運転条件に応じて燃料付着モデル54が変動する。このため、本実施形態では、図18の方法で点火プラグモデル42を修正した後、過渡運転時の運転条件に応じて各気筒10a〜10dの燃料付着モデル54を修正する。
【0103】
図19は、過渡運転時の運転条件に応じて燃料付着モデル54を修正する方法を示す模式図である。図19に示すように、修正した点火プラグモデル42の出力に基づいて、燃料付着モデル54を修正する。この際、過渡運転時の運転条件に応じた噴射空燃比AF1〜AF4、吸入空気量Gaを各気筒10a〜10dの燃料付着モデル54へ入力し、過渡運転時の運転条件に応じて検出されたイオン電流を点火プラグモデル42へ入力する。そして、燃料付着モデル54から出力されたモデルA/F値と、点火プラグモデル42から出力されたモデルA/F値とを比較し、比較の結果に基づいて燃料付着モデル54のニューラルネットモデル54bを修正する。
【0104】
これにより、過渡運転時における様々な運転条件に対応するように燃料付着モデル54を修正することができ、燃料付着モデル54を精密に構成することが可能となる。
【0105】
次に、修正した点火プラグモデル42および燃料付着モデル54を用いて、各気筒10a〜10d毎にA/Fを制御する方法を説明する。図20は、定常運転時において、図18の方法で修正した点火プラグモデル42によるモデル出力A/F値に基づいて、各気筒10a〜10dのA/Fを制御する方法を示す模式図である。図20に示すように、点火プラグモデル42から出力されたモデル出力によるA/F値は、各気筒10a〜10dの目標A/Fと比較される。そして、比較の結果に基づいて、各気筒10a〜10dの燃焼噴射量Tau1〜Tau4を修正する。点火プラグモデル42は、経年変化等による変動要因を含めて図18の方法で修正されているため、点火プラグモデル42のモデル出力に応じて燃焼噴射量Tau1〜Tau4を修正することで、各気筒10a〜10dのA/Fを目標A/Fに制御することが可能となる。
【0106】
一方、過渡運転時においては、上述したように運転条件に応じて吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着量が変動する。従って、図20の方法で点火プラグモデル42から求めた定常運転時の燃料噴射量Tau1〜Tau4を、燃料付着モデル54を用いて修正する。この際、図19の方法で既に修正した燃料付着モデル54を用いる。これにより、過渡運転時において、吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着を考慮した上で、各気筒10a〜10dでの最適な燃料噴射量Tau1〜Tau4を求めることができる。
【0107】
図21は、修正した点火プラグモデル42、燃料付着モデル54を用いて、システムの監視、異常検出を行う方法を示す模式図である。図21のシステムでは、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50及びA/Fセンサモデル46を用いてシステムを構成している。燃料付着モデル54は、図19の方法で修正したものである。
【0108】
図21のシステムでは、燃料付着モデル54から各気筒10a〜10dのA/Fがモデル出力され、排気集合部モデル50へ入力される。排気集合部モデル50では、実施の形態2と同様に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを用いて、実機44の排気集合部18でのA/Fに相当するA/Fをモデル出力する。排気集合部モデル50から出力されたA/Fは、A/Fセンサモデル46により実機44のA/Fセンサ22の特性が加味されて、A/Fセンサ22の実測A/F値に相当するA/Fがモデル出力される。
【0109】
図21のシステムにおいて、燃料付着モデル54からモデル出力されたA/F値は、図18の方法で修正された点火プラグモデル42によるA/Fのモデル出力値と比較される。ここで、双方のA/F値が相違する場合は、燃料付着モデル54、または点火プラグモデル42に異常が発生したものと判断できる。ここで、点火プラグモデル42の異常とは、点火プラグ16の劣化等により、点火プラグモデル42が実機44を反映しない状態となったことをいう。従って、点火プラグモデル42の異常判定により、実機44に異常が生じていることを認識できる。
【0110】
より詳細には、定常運転時では、吸気管12a〜12dにおける燃料付着量はほぼ一定しているため、吸気管12a〜12dでの燃料付着が生じていない場合と同様の条件と考えることができる。従って、定常運転時に燃料付着モデル54からモデル出力されるA/Fは、吸入空気量Gaと燃料噴射量Tau1〜Tau4から求まる噴射空燃比AF1〜AF4とほぼ等しくなる。このため、定常運転時における燃料付着モデル54のモデル出力A/F値の変動要因は小さく、定常運転時において燃料付着モデル54のモデル出力値と点火プラグモデル42のモデル出力値とが相違する場合は、点火プラグモデル42に異常が生じたものと判断できる。
【0111】
一方、定常運転時に燃料付着モデル54のモデル出力値と点火プラグモデル42のモデル出力値とが一致する場合は、点火プラグモデル42が正常であると判断できる。この場合において、過渡運転時に燃料付着モデル54のモデル出力値と点火プラグモデル42のモデル出力値とが相違する場合は、既に点火プラグモデル42が正常と判断されているため、燃料付着モデル54に異常が生じたものと判断できる。燃料付着モデル54の異常とは、例えば燃料噴射弁24のつまり、吸気管の汚れ等による燃料付着モデル54と実機44との相違である。従って、燃料付着モデル54の異常判定により、実機44に異常が生じていることを認識できる。
【0112】
また、図21のシステムにおいて、A/Fセンサモデル46から出力されたモデル出力によるA/F値は、実機44のA/Fセンサ22による実測A/F値と比較される。そして、双方のA/F値が相違する場合は、排気集合部モデル50に異常が生じることは想定できないため、燃料付着モデル54、またはA/Fセンサモデル46に異常が生じているものと判断できる。特に、上述した方法で燃料付着モデル54と点火プラグモデル42の双方に異常が生じていないと既に判定されている場合は、A/Fセンサモデル46に異常が生じたものと判断することができる。このように、モデルと実機44の該当箇所の出力を比較し、双方の出力が相違する場合は、該当箇所の手前の実機44の部分の特性がモデルと相違していると判定できる。これにより、実機44の異常判定を行うことができる。
【0113】
A/Fセンサモデル46から出力されたモデル出力によるA/F値と、実機44のA/Fセンサ22での実測によるA/F値との比較は随時行い、モデル出力A/F値と実測A/F値との出力誤差が所定のしきい値の範囲内の場合は、図20の方法で点火プラグモデル42による各気筒別の制御を行う。モデル出力A/F値と実測A/F値との出力誤差が所定のしきい値を超えた場合は、図18、図19の方法で点火プラグモデル42、燃料付着モデル54を順に修正する。特に、モデル出力A/F値と実測A/F値との出力誤差が大きく相違する場合は、点火プラグモデル42による各気筒別のA/F制御を停止し、実機44のA/Fセンサ22の出力に基づいた全気筒一括A/F制御に切り換える。
【0114】
A/Fセンサ22の出力に基づいた全気筒一括A/F制御へ切り換えた場合は、以下に説明する手順でモデルの修正・判定を実施する。
【0115】
(1)先ず、定常状態で図18による点火プラグモデル42の修正を行う。この結果、各気筒の点火プラグモデル42のパラメータが基準値以上に異なる場合は、点火プラグモデル42の学習を取りやめる。そして、点火プラグモデル42の学習の代わりに、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正する。
【0116】
(2)次に、過渡状態で図19に示す方法で燃料付着モデル54の修正を行う。この結果、各気筒10a〜10dの燃料付着モデル54のパラメータがある基準値以上異なる場合は、燃料付着モデル54の学習を停止する。そして、燃料付着モデル54の学習の代わりに、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正する。
【0117】
(3)点火プラグモデル42または燃料付着モデル54の修正の代わりに排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正した場合において、求められた排気割合(R1,R2,R3,R4)または排気輸送遅れdが所定の上限値以上となった場合は、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdの学習を停止し、実機44のA/Fセンサ22による全気筒一括A/F制御を所定の期間継続する。そして、所定の期間の経過後に図18の点火プラグモデル42の修正、図19の燃料付着モデル54の修正を順次行う。
【0118】
(4)排気割合(R1,R2,R3,R4)または排気輸送遅れdが所定の上限値以上となる期間が継続する場合は、実機44のシステムに異常があると判断できる。この場合は、点火プラグモデル42による各気筒10a〜10dのモデルA/F出力値及びA/Fセンサ22による実測A/F値と、システム中の該当部分の出力とを比較し、システム内のモデル異常部分を判定する。この場合、モデルA/F出力値及び実測A/F値と相違する出力が得られたモデル部分に該当する実機44の部位が異常であると判定できる。上述したように、点火プラグモデル42のパラメータが基準値以上に異なるまでは、点火プラグモデル42の学習を行うため、点火プラグモデル42は基準値内で修正されている。従って、点火プラグモデル42の出力に基づいて異常判定を行うことができる。
【0119】
このように、排気集合部モデル50の経時変化は殆ど生じないが、点火プラグモデル42のパラメータが基準値以上に異なる場合、または燃料付着モデル54のパラメータがある基準値以上異なる場合は、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正することで、点火プラグモデル42、燃料付着モデル54の経時変化の修正を含めた状態でモデル修正を総括的に行うことができる。この場合、A/Fセンサモデル46に経時変化が生じていたとしても、A/Fセンサモデル46の経時変化は応答遅れに関係するものであるため、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正することで、各気筒の応答遅れに起因するA/Fセンサモデル46の経時変化を吸収することができ、A/Fセンサモデル46の修正を含めた状態でモデル修正を行うことができる。
【0120】
以上説明したように実施の形態4によれば、実機44の排気集合部18に設けられたA/Fセンサ22の出力に基づいて、点火プラグモデル42を修正することが可能となる。従って、過酷な使用環境下にある点火プラグ16が劣化して、点火プラグモデル42と実機44との間に変動が生じた場合であっても、点火プラグモデル42を最新のモデルに更新することが可能となる。
【0121】
また、点火プラグモデル42によるモデル出力A/F値と燃料付着モデル54によるモデル出力A/F値との比較の結果に基づいて、点火プラグモデル42または燃料付着モデル54を修正することが可能となる。更に、点火プラグモデル42及び燃料付着モデル54が正常と判定された後は、実機44の排気集合部18に設けられたA/Fセンサ22の出力とA/Fセンサモデル46のモデル出力A/F値とに基づいて、A/Fセンサモデル46の異常判定を行うことが可能となる。従って、本実施形態によれば、各モデルを修正することにより、各モデルの精度を向上させることが可能となる。
【0122】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5は、実施の形態1〜3の方法で各モデルを構築した後、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46からなるシステムを、線形モデルによるA/F適応制御と、点火プラグモデル42による各気筒10a〜10dのA/F制御との組み合わせで制御するものである。各モデルは実施の形態4の方法で予め修正しておくことが好適である。
【0123】
図22は、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46からなるシステムを線形近似して、A/Fの適応制御を行う方法を示す模式図である。ここで、図22(A)は、図21と同様のシステムを示しており、A/Fセンサモデル46、燃料付着モデル54の双方を、簡易線形モデル46a,54aとニューラルネットモデル46b,54bとからなるハイブリッドモデルから構成している。
【0124】
また、図22(B)は、図22(A)のシステムにおいて、線形モデルのみを取り出したシステムを示している。すなわち、図22(B)のシステムでは、図22(A)のシステムから、A/Fセンサモデル46のニューラルネットモデル46bと燃料付着モデル54のニューラルネットモデル54bとが取り除かれている。
【0125】
実施の形態3で説明したように、燃料付着モデル54は各気筒10a〜10d毎に構成される。そして、燃料付着モデル54では、全気筒10a〜10dで共通する特性が簡易線形モデル54aで表現され、気筒10a〜10d毎に異なる特性がニューラルネットモデル54bで表現される。従って、図22(A)では、4気筒(10a〜10d)毎に吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1〜4が燃料付着モデル54へ入力され、A/Fセンサモデル46からA/F値がモデル出力される。従って、図22(A)のシステムは4入力1出力である。
【0126】
一方、図22(B)のシステムでは、燃料付着モデル54から、各気筒10a〜10d毎の特性を表現したニューラルネットモデル54bを取り除いて燃料付着モデル54’を構成している。従って、燃料付着モデル54’は全ての気筒10a〜10dにおける燃料モデルを表すことになる。従って、燃料付着モデル54’へ入力される燃料噴射量はは全ての気筒10a〜10dへの燃料噴射量Tau1〜4の総和である。従って、図22(B)のシステムは1入力1出力である。
【0127】
点火プラグモデル42、A/Fセンサモデル46の線形近似部分のみを抽出して連結した図22(B)のシステムにおいては、入出力関係を以下の(3)式に示すような線形式で表現することができる。そして、(3)式を用いて、実機44のA/Fセンサ22の出力値に基づいて適応制御を実施する。なお、図22(B)おいて、簡易線形モデル46a,54aは既に完成しているため、(3)式の係数f0〜f2・・・, g0〜g2・・・を新たに算出する必要はない。
【0128】
【0129】
(3)式において、Gf(t)は時刻tでの燃料付着モデル54への入力(U(t))を示している。また、AF(t)は、時刻tでのA/Fセンサモデル46の出力(Y(t))を示している。(3)式において、目標A/FをAF_targetとし、評価関数Eを以下の(4)式で表すこととする。評価関数Eは、時刻t+dでの空燃比AF(t+d)をAF_targetへ収束させることを規定した関数である。
【0130】
E=[AF_target−AF(t+d)+γ1{AF(t)−AF(t−1)}+γ2{Gf(t)−Gf(t−1)}]2・・・(4)
【0131】
(4)式の右辺=0とすると、時刻t+dでの空燃比AF(t+d)を目標トルクAF_targetとする制御が可能となる。(4)式の右辺=0として、すなわち右辺の[ ]内を0として(3)式へ代入し、Gf (t)について解くと以下の(5)式が得られる。(5)式は、図22(B)のシステムを上記(2)式で表した場合に、時刻tにおける望ましい入力Gf(t)を算出する式である。本実施形態では、(5)式に基づいて入力Gf(t)の制御を行う。なお、Gf(t)は、例えば燃料噴射量である。
【0132】
【0133】
(5)式において、燃料付着モデル54への入力Gf(t)を燃料噴射量U(t)とおく。すなわち、(5)式においてGf(t)=U(t)とすると、現在の入力はU(t)、次回の入力はU(t+1)となり、ともに(5)式から算出できる。そして、現在の入力U(t)から次の入力U(t+1)を得るための燃料噴射量の補正量ΔU(t+1)は、ΔU(t+1)=U(t+1)−U(t)として算出できる。従って、(5)式に基づいてU(t), U(t+1)を算出することで、補正量ΔU(t+1)が求まる。
【0134】
ここで求めたΔU(t+1)は、全気筒10a〜10dを一括して制御する場合の燃料噴射量の補正量である。一方、各気筒10a〜10dの燃料噴射量は、図23に示すように、各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42から求めることができる。図23は、図20と同様に、点火プラグモデル42から各気筒10a〜10dの燃料噴射量を求める方法を示す模式図である。
【0135】
図20で説明したように、点火プラグモデル42からモデル出力したA/F値と目標A/Fとを比較することにより、各気筒10a〜10dでの最適な燃料噴射量Tau1〜Tau4を求めることができる。各気筒10a〜10dの現在の燃料噴射量u1(t), u2(t), u3(t), u4(t)、次の燃料噴射量u1(t+1), u2(t+1), u3(t+1), u4(t+1)は、図23に示す方法で算出できる。そして、時刻tにおいて、次の燃料噴射量u1(t+1), u2(t+1), u3(t+1), u4(t+1)を得るための各気筒10a〜10dの補正量Δu1(t+1), Δu2(t+1), Δu3(t+1), Δu4(t+1)は、それぞれ以下の式で算出される。
【0136】
Δu1(t+1)=u1(t+1)−u1(t)
Δu2(t+1)=u2(t+1)−u2(t)
Δu3(t+1)=u3(t+1)−u3(t)
Δu4(t+1)=u4(t+1)−u4(t)
【0137】
このようにして、全気筒10a〜10dを一括制御する場合の燃料噴射量の補正量ΔU(t+1)と、各気筒10a〜10dの個別の燃料噴射量の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)とを算出した後、ΔU(t+1)、およびΔu1(t+1)〜Δu4(t+1)を用いて燃料噴射量を制御する。
【0138】
具体的には、気筒別の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)の総和がシステム全体の補正量ΔU(t+1)と等しくなるよう制御を行う。例えば、システム全体の補正量ΔU(t+1)を気筒別補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)で比例配分して、各気筒の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)を修正する。この場合、#1の気筒10aでの補正量Δu1(t+1)の修正値Δu1_new(t+1)は、以下の(6)式から算出できる。
【0139】
【0140】
また、各気筒の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)を先に修正し、その後、全体の補正量ΔU(t+1)を補正するようにしても良い。これにより、各気筒10a〜10dの燃料噴射量のバラツキを最初に補正することができ、その後に全体の燃料噴射量を適応制御することで、排気ガスのエミッションを向上させることができる。
【0141】
点火プラグ16は燃焼室内に配置され、過酷な使用環境下にあるが、本実施形態のようにシステムの線形モデルと併用してA/F制御を行うことにより、点火プラグモデル42が実機44と相違した場合であっても、精度の高いA/F制御を継続することが可能となる。また、実施の形態4で説明した方法で各モデルを修正しておくことで、より精度の高いA/F制御を行うことが可能となる。
【0142】
次に、図22(A)のシステムを制御する他の方法を説明する。図24は、図22(A)のシステムをオブザーバー構成により制御する方法を示す模式図である。図24の例では、A/Fセンサモデル46からモデル出力されたA/F値と、実機44のA/Fセンサ22の検出値とを比較し、比較の結果に基づいてPID等のコントローラー55により各気筒10a〜10dの燃料噴射量Tau1〜Tau4を補正する。
【0143】
図24のシステム構成によれば、図22(A)のシステムにコントローラー55を追加することにより、各気筒10a〜10dの燃料噴射量Tau1〜Tau4をオブザーバー制御することが可能となる。
【0144】
以上説明したように実施の形態5によれば、点火プラグモデル42によるA/F制御と、システム線形モデルによるA/F制御を併用して制御を行うことで、A/Fを2重ループで制御することが可能となる。従って、制御の精度を高めることができ、ロバスト性を向上させることが可能となる。また、オブザーバー制御により燃料付着モデル54、排気集合部モデル50及びA/Fセンサモデル46からなるハイブリッドモデルを制御することにより、簡素な構成でハイブリッドモデルを高精度に制御することが可能となる。
【0145】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について説明する。実施の形態6は、実施の形態1〜3の方法で各モデルを構築した後、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46からなるシステムを近似逆モデルを用いて制御するものである。各モデルは実施の形態4の方法で予め修正しておくことが好適である。
【0146】
図25は、実施の形態6にかかる制御装置の構成を示す模式図である。図25に示すハイブリッドモデル56は図21と同様のモデルであって、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、A/Fセンサモデル46から構成される。ハイブリッドモデル56は、吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1〜4を入力として、排気集合部18でのA/Fをモデル出力する。近似逆モデル58は、ハイブリッドモデル56の逆モデルに近似したモデルであって、A/Fを入力として燃料噴射量Tau1〜4を出力する。また、図25に示すように、本実施形態の制御装置は実機44とPID等のコントローラー60を含むものである。
【0147】
図25のシステムにおいて、ハイブリッドモデル56は、燃料噴射量Tau1〜4を入力として排気集合部18でのA/Fをモデル出力する。従って、近似逆モデル58に目標A/Fを入力すると、その目標空燃比を得るために必要な燃料噴射量が出力される。このように、近似逆モデル58によれば、フィードバック等を行うことなく、目標A/Fに対応する燃料噴射量を短時間で、かつ高精度に求めることができる。
【0148】
図25に示すように、近似逆モデルから出力された燃料噴射量は、実機44とハイブリッドモデル56の双方へ入力される。実機44では、入力された燃料噴射量により機関が運転され、排気集合部18の下流のA/Fセンサ22でA/Fが検出される。一方、ハイブリッドモデル56では、入力された燃料噴射量から排気集合部18でのA/Fがモデル出力される。実機44とハイブリッドモデル56のそれぞれから出力されたA/Fは比較され、比較の結果に基づいて、コントローラー60によりPID制御される。
【0149】
通常のPID等による制御の場合、目標値に制御するためには試行錯誤を繰り返すこととなるが、本実施形態では、近似逆モデル58から目標A/Fに対応する燃料噴射量を出力することができるため、その後のコントローラー60による制御では、誤差分を修正する程度の制御を行うのみで、実機44を目標A/Fに制御することが可能となる。従って、図25のシステムによれば、近似逆モデル58を用いることで、その後の制御における目標修正量を最小限に抑えることができ、目標値への収束を短時間で行うことができる。これにより、目標A/Fが大きく変動した場合であっても、近似逆モデル58から出力した目標A/Fに対応する燃料噴射量に基づいて、目標値への制御を短時間で行うことができる。
【0150】
図26は、ハイブリッドモデル56から近似逆モデル58を構成する方法を示す模式図である。図26(A)は、図25におけるハイブリッドモデル56の構成を示している。近似逆モデル58を構成する場合は、先ず、図26(A)のシステムから時間遅れ部分を取り除く。すなわち、図26(B)に示すように、排気輸送遅れdの要因を取り除いて排気集合部モデル50’を構成する。
【0151】
近似逆モデル58は、図26(B)に示すハイブリッドモデルの前にPID等のコントローラー62を挿入し、ループを設けてフィードバック制御することにより構築することができる。図26(C)は、図26(B)のハイブリッドモデルをコントローラー62を用いてフィードバック制御したモデルである。このように、ハイブリッドモデル56から時間遅れ項(排気輸送遅れd)を取り除き、コントローラー62によるフィードバックを行うことで、近似逆モデル58を構成することができる。
【0152】
図27に基づいて、上記手法により近似逆モデル58を構築できる理由を説明する。図27(A)は、ハイブリッドモデル56を示す模式図である。図27(A)において、ハイブリッドモデル56の入力はU、出力はYである。図27(B)は、ハイブリッドモデル56の逆モデル57を示す模式図である。逆モデル57は、ハイブリッドモデル56における望ましい出力Yrを入力として、ハイブリッドモデル56における望ましい入力Urを出力する。このように、逆モデル57を構成することができれば、ハイブリッドモデル56における目標の出力Yrに基づいて、入力Urを求めることができる。しかし、逆モデル57を直接作成することは一般的に困難である。
【0153】
図27(C)は、ハイブリッドモデル56の前にコントローラー62を設け、ループを設けてフィードバック制御したモデルを示している。すなわち、図27(C)のモデルは、図26(C)の近似逆モデル58に相当する。コントローラー62の伝達関数をC(s)、ハイブリッドモデル56の伝達関数をP(s)とすると、図27(C)において以下の(7)式の関係が成立する。
出力U=(C/(1+PC))×入力Yr ・・・(7)
(7)式の右辺の分母・分子をCで割ると、以下の(8)式が得られる。
出力U=(1/(1/C+P))×入力Yr ・・・(8)
(8)式において、コントローラー62のゲインを限りなく大きくすると、1/C→0になるので、以下の(9)式が得られる。
出力U=(1/P)×入力Yr ・・・(9)
(9)式によれば、図27(C)のモデルの伝達関数は1/Pとなる。そして、この伝達関数によれば、図27(C)のモデルは、図27(A)のハイブリッドモデル56(伝達関数P)の逆モデルとなる。従って、図26、図27の手法によれば、ハイブリッドモデル56の近似逆モデル58を構築することが可能となる。
【0154】
図28は、図25において、ハイブリッドモデル56、近似逆モデル58の構成を具体的に示した模式図である。図28のシステムによれば、近似逆モデル58へ目標A/Fを入力すると、目標A/Fに対応した燃料噴射量を瞬時に、かつ高精度に算出できる。従って、通常のフィードバック制御でA/F制御を行う場合と比較して、目標A/Fへの制御を短時間で行うことができる。これにより、運転状態の変化などの要因から目標空燃比が大きく変わった場合であっても、短時間で目標空燃比へ制御することが可能となる。
【0155】
また、近似逆モデル58から燃料噴射量を出力した後は、コントローラー60を用いて誤差分を修正する程度の制御を行うのみで、実機44の燃料噴射量を目標値に応じた値に制御することが可能となる。
【0156】
以上説明したように実施の形態6によれば、ハイブリッドモデル56の近似逆モデル58を簡単に構成することが可能となる。そして、近似逆モデル58から目標A/Fに応じた燃料噴射量を瞬時に求めることができ、更に、実機44、ハイブリッドモデル56の出力に応じてコントローラー60による制御を行うため、追従性、安定性に優れた制御を実現することが可能となる。
【0157】
なお、上述した各実施形態では、点火プラグモデル42、A/Fセンサモデル46、燃料付着モデル54を簡易線形モデルとニューラルネットモデルからなるハイブリッドモデルにより構成したが、ニューラルネットモデルのみから各モデルを構成しても良い。
【0158】
【発明の効果】
第1の発明によれば、イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力することができるため、空燃比センサ等により空燃比を実測することなく各気筒の空燃比を求めることが可能となる。
【0159】
第2の発明によれば、空燃比推定モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0160】
第3の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、各気筒の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0161】
第4の発明によれば、空燃比推定モデル、排気モデル及び空燃比センサモデルを備えたことにより、空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて、空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力するモデルを構築することが可能となる。
【0162】
第5の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0163】
第6の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と、空燃比センサで実測された空燃比とを比較して、排気モデルを決定するパラメータを取得することが可能となる。
【0164】
第7の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と、空燃比センサで実測された空燃比とを比較して、各気筒からの排気の割合、及び排気の輸送遅れを取得することが可能となる。
【0165】
第8の発明によれば、排気モデルを決定するパラメータの変動に基づいて異常判定を行うことが可能となる。
【0166】
第9の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比とを比較した結果に基づいて、燃料モデルを構築することが可能となる。
【0167】
第10の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と、燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0168】
第11の発明によれば、燃料モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0169】
第12の発明によれば、燃料モデル、排気モデル及び空燃比センサモデルを備えたことにより、燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて、空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力するモデルを構築することが可能となる。
【0170】
第13の発明によれば、空燃比センサモデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0171】
第14の発明によれば、内燃機関を定常運転させた場合に、空燃比センサモデルから出力された空燃比と空燃比センサで実測された空燃比とを比較した結果に基づいて、空燃比推定モデルを修正することが可能となる。
【0172】
第15の発明によれば、修正した空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を高精度に制御することが可能となる。
【0173】
第16の発明によれば、内燃機関を過渡運転させた場合に、修正された空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比とを比較した結果に基づいて、燃料モデルを修正することが可能となる。
【0174】
第17の発明によれば、修正された空燃比推定モデルから出力された空燃比と、修正された燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を高精度に制御することが可能となる。
【0175】
第18の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行うことが可能となる。
【0176】
第19の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と実機の空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行うことが可能となる。
【0177】
第20の発明によれば、線形モデルの空燃比センサモデルから出力された全気筒の空燃比と、空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0178】
第21の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と、空燃比センサで実測された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0179】
第22の発明によれば、ハイブリッドモデルの近似逆モデルから目標空燃比に応じた燃料噴射量を出力することができるため、その後の制御における目標修正量を最小限に抑えることができ、目標値への収束を短時間で行うことができる。
【0180】
第23の発明によれば、ハイブリッドモデルを燃料モデル、排気モデル及び空燃比センサモデルから構成したため、燃料噴射量を入力として排気集合部に設けられた空燃比センサの出力に実測値に相当する空燃比を出力することができる。
【0181】
第24の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比とを比較した結果に基づいて、燃料モデルを構築することが可能となる。
【0182】
第25の発明によれば、ハイブリッドモデルから時間遅れ項を除いたモデルをフィードバック制御することにより近似逆モデルを構築することができる。
【0183】
第26の発明によれば、燃料モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0184】
第27の発明によれば、空燃比センサモデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0185】
第28の発明によれば、空燃比推定モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の各実施形態の制御装置によって制御される実機の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかる点火プラグモデルを示す模式図である。
【図3】イオン電流と、A/Fとの関係を示す模式図である。
【図4】ハイブリッドモデルから構成した点火プラグモデルを示す模式図である。
【図5】点火プラグモデルと実機との関係を示す模式図である。
【図6】点火プラグモデルを獲得するための学習モードを示す模式図である。
【図7】点火プラグモデルを用いて各気筒のA/Fを制御する方法を示す模式図である。
【図8】実施の形態2にかかるA/Fセンサモデルの構成を示す模式図である。
【図9】A/Fセンサモデルを学習する方法を示す模式図である。
【図10】点火プラグモデルから出力された各排気管のA/Fと、A/Fセンサで検出されるA/Fとの関係を示した模式図である。
【図11】点火プラグモデルとA/Fセンサモデルとを接続したモデルを示す模式図である。
【図12】点火プラグモデル、排気集合部モデル、およびA/Fセンサモデルの関係を詳細に示す模式図である。
【図13】燃料モデルを示す模式図である。
【図14】実施の形態3にかかる燃料付着モデルの構成を示す模式図である。
【図15】燃料付着モデルの学習と、燃料付着モデルによるモデルシミュレーション及びA/F制御を示す模式図である。
【図16】燃料付着モデルを用いたシステムの構成を詳細に示す模式図である。
【図17】点火プラグモデルによるA/F制御を、燃料付着モデルを併用して行う方法を示す模式図である。
【図18】実施の形態4にかかるシステムの構成を示す模式図である。
【図19】過渡運転時の運転条件に応じて燃料付着モデルを修正する方法を示す模式図である。
【図20】点火プラグモデルの出力に基づいて各気筒のA/Fを制御する方法を示す模式図である。
【図21】修正した点火プラグモデル、燃料付着モデルを用いて、システムの監視、異常検出を行う方法を示す模式図である。
【図22】システムを線形近似して、A/Fの適応制御を行う方法を示す模式図である。
【図23】点火プラグモデルから各気筒の燃料噴射量の修正量を求める方法を示す模式図である。
【図24】システムをオブザーバー構成により制御する方法を示す模式図である。
【図25】実施の形態6にかかる制御装置の構成を示す模式図である。
【図26】ハイブリッドモデルから近似逆モデルを構成する方法を示す模式図である。
【図27】ハイブリッドモデルから近似逆モデルを構成する方法を示す模式図である。
【図28】図25において、ハイブリッドモデル、近似逆モデルの構成を具体的に示した模式図である。
【符号の説明】
16 点火プラグ
50 排気集合部モデル
22 A/Fセンサ
42 点火プラグモデル
42a,46a,54a 簡易線形モデル
42b,46b,54b ニューラルネットモデル
44 実機
46 A/Fセンサモデル
50 排気集合部モデル
54 燃料付着モデル
55,60,62 コントローラー
56 ハイブリッドモデル
58 近似逆モデル
【発明の属する技術分野】
この発明は内燃機関の制御装置に関し、特に、空燃比(A/F)の制御を行う装置に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、点火プラグからイオン電流を検出し、イオン電流に基づいて燃料噴射量を制御する方法が知られている。例えば、特開2000−54942号公報には、活性後の空燃比センサの空燃比からイオン電流による空燃比検出誤差を補正するための補正値を学習し、空燃比センサが不活性の時にはイオン電流により空燃比を制御する方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−54942号公報
【特許文献2】
特開平5−180059号公報
【特許文献3】
特開平10−54279号公報
【特許文献4】
特開2000−213395号公報
【特許文献5】
特開平10−11105号公報
【特許文献6】
特開2001−152932号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン電流は燃焼室内の点火プラグの近傍のみでしか測定することができない。従って、イオン電流の出力値は、測定時における燃焼室内での燃料の分布状況に影響を受け、燃焼室内での燃料の分布は流動的であるため、イオン電流の測定値は測定毎に大きく変動するという問題が生じる。更に、イオン電流出力にはノイズ成分が多く発生するため、測定値はノイズによって測定毎に変動する。このため、イオン電流に基づいて正確に空燃比を推定することは困難である。
【0005】
上記公報に記載された方法では、イオン電流と空燃比との関係を複数回測定し、その関係を用いて空燃比を推定している。しかしながら、この方法では、空燃比を検出するためには複数回のイオン電流測定を行う必要があり、1回のイオン電流測定に基づいて空燃比を正確に求めることはできない。従って、イオン電流に基づいて燃焼1回毎の空燃比を逐次求めることは非常に困難となる。
【0006】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、点火プラグから検出したイオン電流に基づいて空燃比を正確に求め、内燃機関を最適に制御することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、筒内のイオン電流又は燃焼圧を取得する手段と、前記イオン電流又は燃焼圧と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力する空燃比推定モデルと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記空燃比推定モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を更に備えたことを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と前記空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、前記排気モデルを決定するパラメータを取得する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、前記排気モデルを決定するパラメータは、各気筒からの排気の割合、及び排気の輸送遅れであることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記パラメータの変動に基づいて異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、第1〜第8の発明のいずれかにおいて、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを構築する手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、第9の発明において、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と、前記燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、第9又は第10の発明において、前記燃料モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0018】
第12の発明は、第9〜第11の発明のいずれかにおいて、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を更に備えたことを特徴とする。
【0019】
第13の発明は、第4〜第8及び第12の発明のいずれかにおいて、前記空燃比センサモデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0020】
第14の発明は、第9〜第11の発明のいずれかにおいて、内燃機関を定常運転させた場合に、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と前記空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、前記空燃比推定モデルを修正する修正手段を更に備えたことを特徴とする。
【0021】
第15の発明は、第14の発明において、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
第16の発明は、第15の発明において、内燃機関を過渡運転させた場合に、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを修正する修正手段を更に備えたことを特徴とする。
【0023】
第17の発明は、第16の発明において、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と、修正された前記燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする。
【0024】
第18の発明は、第12の発明において、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0025】
第19の発明は、第12の発明において、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と実機の空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0026】
第20の発明は、第1又は第2の発明において、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係を線形成分を用いてモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性を線形成分を用いてモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を含む線形モデルと、前記線形モデルの空燃比センサモデルから出力された全気筒の空燃比と、前記空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0027】
第21の発明は、上記の目的を達成するため、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、前記線形モデルの前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と、前記空燃比センサで実測された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
第22の発明は、上記の目的を達成するため、燃料噴射量と空燃比との関係をモデル化し、燃料噴射量を入力として排気集合部に設けられた空燃比センサの出力に相当する空燃比を出力するハイブリッドモデルと、目標空燃比を入力として、当該目標空燃比に応じた燃料噴射量を出力する前記ハイブリッドモデルの近似逆モデルと、前記空燃比センサで実測された空燃比と、前記近似逆モデルから出力された燃料噴射量を入力として前記ハイブリッドモデルから出力された空燃比とを比較する比較手段と、前記比較手段における比較の結果に基づいて、燃料噴射量を制御する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
第23の発明は、第22の発明において、前記ハイブリッドモデルは、噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を備えたことを特徴とする。
【0030】
第24の発明は、第21又は第23の発明において、筒内のイオン電流又は燃焼圧を取得する手段と、前記イオン電流又は燃焼圧と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力する空燃比推定モデルと、前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを構築する手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0031】
第25の発明は、第22〜第24の発明のいずれかにおいて、前記近似逆モデルは、前記ハイブリッドモデルから時間遅れ項を除いたモデルをフィードバック制御して得られるモデルであることを特徴とする。
【0032】
第26の発明は、第21及び第23〜第25の発明のいずれかにおいて、前記燃料モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0033】
第27の発明は、第21及び第23〜第26の発明のいずれかにおいて、前記空燃比センサモデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0034】
第28の発明は、第24〜第27の発明のいずれかにおいて、前記空燃比推定モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0036】
実施の形態1.
図1は、本発明の各実施形態の制御装置によって制御される実機44の構成を示す模式図である。図1では、4気筒の内燃機関10からなる実機44を例示している。図1に示すように、内燃機関10の#1〜#4の各気筒10a〜10dには、吸気管12a〜12d、排気管14a〜14dが連通している。各気筒10a〜10dは、点火プラグ16をそれぞれ備えている。また、排気管14a〜14dの集合部(排気集合部)18よりも下流における排気管20には、空燃比(A/F)センサ22が装着されている。
【0037】
各吸気管12a〜12dには、燃料噴射弁(インジェクタ)24が装着されている。燃料噴射弁24は、噴射量Tau1〜Tau4の燃料を各吸気管12a〜12dへ噴射する。各気筒10a〜10dへの吸入空気は、吸気管26から各吸気管12a〜12dへ送られる。吸気管26には、吸入空気量Gaを検出するエアフロメータ(AFM)28が設けられている。また、実施の形態1の実機44においては、各排気管14a〜14dに空燃比(A/F)センサ30が装着されている。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の燃料制御装置はECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した点火プラグ16、A/Fセンサ22,30、燃料噴射弁24、エアフロメータ28などが接続されている。
【0039】
図2は、本実施形態にかかる点火プラグモデル(点火プラグイオン電流モデル)42を示す模式図である。点火プラグモデル42は#1〜#4の各気筒10a〜10d毎に構成され、各気筒10a〜10dの点火プラグ16で検出されたイオン電流を入力として各気筒10a〜10dの空燃比(A/F)をモデル出力する。点火プラグ16で検出されるイオン電流は、混合気の燃焼により生じるイオンの量に応じて流れる電流であって、点火プラグ11に所定の電圧を印加して抵抗値を測定することで検出できる。イオン電流は、点火プラグイオン電流検出回路において検出される。なお、検出したイオン電流にフィルタなどのノイズ除去の一次処理等を施しても良い。
【0040】
図3は、点火プラグ16で検出されるイオン電流と、A/Fとの関係を示す模式図である。図3に示すように、A/Fが12.5近辺の値をとると、点火プラグイオン電流は最大となる。図3では、イオン電流とA/Fとの関係を理想化した特性を示しているが、実際には、同じ燃焼状態(空燃比)であってもイオン電流の出力値、ピークは燃焼毎、測定毎に異なる。また、イオン電流の出力にはノイズ成分が多く発生する。従って、図3に示すような、イオン電流とA/Fとの関係が1対1で対応した特性を得ることは困難である。
【0041】
本実施形態では、図2の点火プラグモデル42を、簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル(NNモデル)42bからなるハイブリッドモデルにより構成し、イオン電流出力とA/Fとの関係を精密に規定する。図4は、ハイブリッドモデルから構成した点火プラグモデル42を示す模式図である。図4において、簡易線形モデル42aは、イオン電流とA/Fとの関係を線形近似したモデルである。簡易線形モデル42aで主に表現されるモデルは、各気筒10a〜10dにおけるイオン電流とA/Fの特性の共通部分であって、各気筒10a〜10dの点火プラグ16に共通する特性を含むものである。
【0042】
簡易線形モデル42aは、例えば、以下の(1)式で表すことができる。
【0043】
【0044】
(1)式において、AF(t)、ION(t)はそれぞれ時刻tでのA/F(出力)とイオン電流(入力)を表している。また、a0, a1, a2,・・・, b0, b1, b2,・・・は最小二乗法で求めることのできるモデルパラメータ(係数)である。また、A/F(出力)をイオン電流とエンジンの運転条件、例えば回転数、負荷、吸入空気量などを入力とした線形式で表してもよい。
【0045】
ニューラルネットモデル(NNP)42bは、点火プラグ16で検出されるイオン電流と、A/Fとの関係において、非線形部分を表現したモデルである。ニューラルネットモデル42bで主に表現されるモデルは、各気筒10a〜10dにおけるイオン電流とA/Fの特性の相違する部分であって、点火プラグ16を含む各部品の製造バラツキ、燃焼室の加工バラツキなどに起因する非線形特性を含むものである。ニューラルネットモデル42bは非線形部分のモデル化に適しているため、点火プラグモデル42を簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル42bから構成することで、点火プラグ16から検出されるイオン電流出力とA/Fとの関係を精密に規定することが可能となる。
【0046】
図5は、点火プラグモデル42と実機44との関係を示す模式図である。図5に示すように、実機44の点火プラグ16で検出されたイオン電流は点火プラグモデル42へ入力され、各気筒10a〜10d毎にA/Fがモデル出力される。ここで、点火プラグモデル42からモデル出力された各気筒10a〜10dのA/Fは、排気管14a〜14dで検出されるA/Fに相当する。従って、点火プラグモデル42からのA/Fのモデル出力値と、排気管14a〜14dに装着されたA/Fセンサ30の検出値とを比較し、学習を行うことで、点火プラグモデル42のモデル化を精度良く行うことができる。
【0047】
図6に基づいて、点火プラグモデル42をモデリングする方法を説明する。図6は、点火プラグモデル42を獲得するための学習モードを示している。学習モードにおいては、ベンチテスト等を行い、点火プラグ16から検出されたイオン電流出力とA/Fセンサ30から実測されたA/Fの出力値を用いて簡易線形モデル42aを獲得する。
【0048】
簡易線形モデル42aを作成した後、内燃機関10を定常運転させた状態で、点火プラグ16からのイオン電流出力を点火プラグモデル42へ入力して、簡易線形モデル42aによるA/Fのモデル出力値を出力する。この際、必要に応じて運転条件を点火プラグモデル42へ入力する。そして、簡易線形モデル42aで計算されてモデル出力されたA/F値と、実機44のA/Fセンサ30における実測A/F値との出力誤差ΔA/Fを求める。そして、出力誤差ΔA/Fをニューラルネットモデル42bで吸収させるため、ΔA/Fを用いてニューラルネットモデル42bの学習を行う。この際、簡易線形モデル42aのパラメータ((1)式における係数a0, a1, a2,・・・, b0, b1, b2,・・・)は、最初に簡易線形モデル42aを獲得した時の値で固定値としておく。
【0049】
なお、A/Fセンサ30で出力された実測A/F値には、センサ特性に起因した遅れ等の要因が含まれる場合がある。従って、図6に示すように、A/Fセンサ30から出力される実測A/Fと、A/Fセンサ30に当たる排気ガスの実際のA/Fとの関係をモデル化したモデル(A/Fセンサ逆モデル47)を作成し、A/Fセンサ30の出力をA/Fセンサ逆モデル47へ入力してセンサ特性に起因する遅れ等の要因を取り除いておくことが望ましい。これにより、ニューラルネットモデル42bの学習をより精度良く行うことができる。
【0050】
簡易線形モデル42aのみを用いた制御では、システムの線形部分しかモデルで表現することができないため、実システムとの誤差が大きく、良好な制御性が得られない。一方、ニューラルネットモデル42bのみでモデリングを行った場合は、モデルの学習に長時間を要することが想定される。本実施形態の点火プラグモデル42によれば、ニューラルネットモデル42bが非線形成分の学習に適しているため、簡易線形モデル42aと併用することにより、実機44とモデルとの誤差を最小限に抑えることができる。従って、モデル全体の精度を飛躍的に向上させることができる。また、モデルの基本的な線形部分を簡易線形モデル42aで表現することで、ニューラルネットモデル42bにおける学習を最小限に抑えることができ、点火プラグモデル42を迅速に構築することができる。
【0051】
点火プラグモデル42の学習が終了した後、点火プラグモデル42を固定(FIX)し、排気管14a〜14dに装着されたA/Fセンサ30を取り外す。従って、製品出荷時など、点火プラグモデル42を学習する場合のみ実機44にA/Fセンサ30を装着すれば、その後のA/F算出は点火プラグモデル42を用いて行うことができる。これにより、実機44に継続してA/Fセンサ30を装着しておく必要がなくなり、実機44の製造コストを削減することができる。
【0052】
点火プラグモデル42のモデリングが完了した後は、点火プラグモデル42によるモデルシミュレーション、及びA/F制御が実現できる。図4に示すように、点火プラグモデル42のモデルシミュレーションでは、点火プラグ16のイオン電流検出回路から得られた電流値を入力としてA/Fがモデル出力される。図4に示すように、簡易線形モデル42aの出力にニューラルネットモデル42bの出力を加えることで、実機44と同じ出力を得ることができる。この際、次の入力(燃料噴射量)の値で予めシミュレーションを行うことで、次のA/Fを正確に推定することができ、A/Fのリアルタイム制御が可能となる。従って、このシミュレーションにより正確に排気管14a〜14dにおけるA/Fを求めることができ、A/Fに基づいて燃料噴射量を最適に制御することが可能となる。
【0053】
図7は、点火プラグモデル42を用いて#1の気筒10aのA/Fを制御する方法を示す模式図である。図7に示すように、点火プラグモデル42からモデル出力されたA/Fと目標A/Fとを比較し、比較の結果に基づいてPID等のコントローラー45により気筒10aの燃料噴射弁24による燃料噴射量Tau1を制御する。#2〜#4の気筒10b〜10dについても、各気筒10b〜10dに対応した点火プラグモデル42により同様の制御を行う。従って、本実施形態によれば、A/Fセンサを用いたA/F検出が不要となり、また、各気筒10a〜10dのA/Fを個別に制御することが可能となる。
【0054】
また、A/Fセンサを用いた通常のA/F制御では、A/Fセンサが活性化するまである程度の時間を要し、その間は正確なA/Fを検出することはできない。しかし、点火プラグモデル42を用いた場合は始動直後からA/Fをモデル出力することができ、モデル出力したA/Fに基づいて空燃比制御を行うことができる。従って、本実施形態によれば、始動直後から空燃比制御を行うことが可能となる。
【0055】
以上説明したように実施の形態1によれば、点火プラグ16で検出されるイオン電流からA/Fを算出する点火プラグモデル42をモデル化し、点火プラグモデル42を簡易線形モデル42aとニューラルネットモデル42bとからなるハイブリッドモデルから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。従って、点火プラグモデル42から求めたA/Fに基づいて、正確な気筒別A/F制御を実現することが可能となる。
【0056】
なお、燃焼圧センサを備えた実機44では、燃焼圧とA/Fとの間に一定の相関関係があるため、燃焼圧に基づいてA/Fを推定することができる。従って、点火プラグモデル42と同様の方法で、燃焼圧と筒内のA/Fとの関係をモデル化し、燃焼圧からA/Fを出力するモデル(空燃比推定モデル)を構築しても良い。
【0057】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、排気集合部18の下流に設けられたA/Fセンサ22の特性を学習してA/Fセンサモデル46を構成する。また、実施の形態2では、排気管14a〜14dの形状、長さ等に起因するA/Fセンサ22への排気の当たり状態や、排気の輸送遅れをモデル化する。
【0058】
図8は、A/Fセンサモデル46の構成を示す模式図である。実施の形態2では、A/Fセンサモデル46を、簡易線形モデル46aとニューラルネットモデル(NNS)46bからなるハイブリッドモデルにより構成し、A/Fセンサ22の特性を精密にモデル化する。
【0059】
A/Fセンサ22で出力された実測A/F値は、A/Fセンサ22に当たった排気ガスの実際のA/Fに対して、センサ特性に起因した遅れ等の要因が含まれる場合がある。センサ特性の基本的部分は一次遅れ系で表現できるため、A/Fセンサモデル46では、一次遅れ系を簡易線形モデル46aで表現し、センサにおける複雑な化学反応など線形近似で表しにくい部分をニューラルネットモデル46bで表現する。簡易線形モデル46aは、以下の(2)式により構成することができる。
【0060】
【0061】
ここで、u(t), y(t)はそれぞれ時刻tでの簡易線形モデル46aへの入力と出力を示している。また、a0, a1,・・・, b0, b1,・・・は最小二乗法で求めることのできるモデルパラメータ(係数)である。また、出力A/Fを機関運転条件、例えば回転数、負荷、吸入空気量などの線形項を加えて表してもよい。
【0062】
(2)式による簡易線形モデル46aのみでシステムを構成して制御に用いてもよいが、ニューラルネットモデル46bと組み合わせることで、より精度の高いシステムモデルを得ることができる。
【0063】
図9は、A/Fセンサモデル46を学習する方法を示す模式図である。先ず、モデルガス等を使用したベンチテスト等を行い、モデルガスによる入力A/FとA/Fセンサ22で実測された検出値を用いて簡易線形モデル46aを作成する。上記の(2)式を用いる場合は、最小二乗法により係数a0, a1,・・・, b0, b1,・・・の値を求めることで簡易線形モデル46aを作成することができる。
【0064】
簡易線形モデル46aを作成した後、簡易線形モデル46aから算出されたモデル出力によるA/F値とA/Fセンサ22での実測A/F値との出力誤差ΔA/Fを求める。そして、この誤差をニューラルネットモデル46bで吸収させるように学習を行う。ニューラルネットモデル46bは非線形部分の学習に適しているため、簡易線形モデル46aと併用することにより、モデル全体の精度の飛躍的向上を達成することができる。また、ニューラルネットモデル46bのみでモデルを作成する場合と比較すると、短時間で正確なモデルを得ることができる。
【0065】
A/Fセンサモデル46のモデリングが完了した後は、A/Fセンサモデル46によるモデルシミュレーション及びA/F制御が実現できる。図8に示すように、A/Fセンサモデル46によるモデルシミュレーションでは、任意のガス(モデルガス等)の空燃比を入力として、同じ空燃比のモデルガスが実機44の排気管20に流れた場合のA/Fセンサ22の出力値に相当するA/Fがモデル出力される。図8に示すように、簡易線形モデル46aの出力にニューラルネットモデル46bの出力を加えることで、実機44のA/Fセンサ22と同等の出力を得ることができる。従って、このシミュレーションによりA/Fセンサ22の特性を加味した上で、排気集合部18の下流での正確なA/Fをモデル出力することができ、出力したA/Fに基づいて空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0066】
次に、実施の形態1の点火プラグモデル42と、実施の形態2のA/Fセンサモデル46を接続したシステムについて説明する。実施の形態1で説明したように、点火プラグモデル42は、各気筒10a〜10d毎に構成される。一方、A/Fセンサモデル46は、排気集合部18の下流におけるA/Fセンサ22の特性を学習しているため、1つだけ構成される。従って、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46を接続する場合は、各気筒10a〜10d毎に点火プラグモデル42からモデル出力された空燃比を合計して、A/Fセンサモデル46へ入力する必要がある。
【0067】
各気筒10a〜10dに対応した点火プラグモデル42からは、各排気管14a〜14dにおけるA/Fが出力される。図10は、点火プラグモデル42から出力された各排気管14a〜14dの空燃比と、A/Fセンサ22で検出されるA/Fとの関係を示した模式図である。図10に示すように、各排気管14a〜14dを流れる排気ガスは排気集合部18で集合する。そして、排気集合部18におけるA/F(排気管20におけるA/F)は、各排気管14a〜14dの排気の割合と排気輸送遅れによって決定される。従って、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46を接続する際に、各排気管14a〜14dでの排気割合と排気輸送遅れを考慮する必要がある。
【0068】
図11は、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46とを接続した複合モデル48を示す模式図である。ここで、図11では、複合モデル48とともに実機44を図示している。複合モデル48では、点火プラグモデル42とA/Fセンサモデル46とを接続するため、両モデルの間に排気集合部モデル50を挿入している。各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42からの出力は、排気集合部モデル50で合計され、A/Fセンサモデル46へ入力される。
【0069】
図12は、点火プラグモデル42、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46の関係を詳細に示す模式図である。各気筒10a〜10dに対応した点火プラグモデル42からは、各排気管14a〜14dにおけるA/Fが出力される。排気集合部モデル50は、各気筒10a〜10dの排気割合(R1,R2,R3,R4)と排気輸送遅れdをパラメータとして構成されている。排気割合(R1,R2,R3,R4)は、各排気管14a〜14dにおける排気ガスの比率を表したものであり、R1+R2+R3+R4=1である。図12に示すように、排気集合部モデル50は、各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42からの出力(#1AF, #2AF, #3AF, #4AF)を、排気割合(R1,R2,R3,R4)に応じて合計し、排気輸送遅れdによる遅れ分を加味して、A/Fセンサモデル46へ出力する。すなわち、排気集合部モデル50では、(#1AF×R1+#2AF×R2+#3AF×R3+#4AF×R4)を演算して各排気管14a〜14dのA/Fを合計し、更に排気輸送遅れdによる遅れ分を加味して出力する。
【0070】
排気集合部モデル50から出力されたA/Fは、実機44の排気集合部18におけるA/F(排気管20におけるA/F)に相当する。排気集合部モデル50からモデル出力されたA/FはA/Fセンサモデル46へ入力され、A/Fセンサ22における遅れ等のセンサ特性が加味されて出力される。従って、複合モデル48が実機44を正確に反映していれば、A/Fセンサモデル46のモデル出力によるA/Fと、A/Fセンサ22による実測のA/Fとは一致する。
【0071】
排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdは、主として排気管14a〜14dの形状、長さ等によって決定される。複合モデル48を取得するためには、先ず、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを求めておく必要がある。
【0072】
そこで、実施の形態2では、A/Fセンサモデル46の出力と、実機44におけるA/Fセンサ22の出力とを比較し、比較の結果に基づいて排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを決定する。この際、運転条件(回転数NE、負荷率KL)毎に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdは変動するため、実機44を様々な運転条件で運転し、運転条件毎に求めたR1,R2,R3,R4,dを自動学習する。
【0073】
すなわち、運転条件毎に、実機44の点火プラグ16から検出されたイオン電流を点火プラグモデル42へ入力し、図11及び図12に示すように、A/Fセンサモデル46からモデル出力したA/F値と実機44のA/Fセンサ22の出力値とから、その出力誤差を求め、出力誤差に基づいて排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気遅れdを自動学習する。運転条件毎に学習した排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdのパラメータは固定(FIX)される。点火プラグモデル42は実施の形態1の方法で取得されており、A/Fセンサモデル46は上述した方法で取得されているため、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdが確定することで、図11に示す複合モデル48を完成させることができる。なお、A/Fセンサ30で出力された実測A/F値には、センサ特性に起因した遅れ等の要因が含まれる場合があるため、図12に示すように、A/Fセンサ22からの出力をA/Fセンサ逆モデル47へ入力して得られた値と、A/Fセンサモデル46からモデル出力したA/F値とを比較することがより好適である。
【0074】
複合モデル48が完成すると、点火プラグ16から検出されたイオン電流を入力として、A/Fセンサ22で実測されるA/Fを出力する経路がモデル化される。従って、点火プラグモデル42により各気筒10a〜10dのA/Fを個別に制御するとともに、複合モデル48から出力されたA/Fセンサ22の実測A/Fに相当するA/F値に基づいて、全気筒のA/Fを一括制御することも可能となる。また、実機44が経年変化等により複合モデル48と相違する場合は、定期的に定期的に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを算出して最新の値に更新することで、複合モデル48から出力されたA/Fに基づく制御を継続することができる。
【0075】
複合モデル48の各モデルが実機44の状態を反映しなくなった場合は、複合モデル48から出力されたモデル出力A/F値と、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値とが相違することとなる。そして、図11のシステムによれば、複合モデル48から出力されたモデル出力A/F値と、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値との差分は、全て排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdに反映される。従って、定期的に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを算出し、過去に算出した値と比較することで、実機44の経年変化、劣化の度合い、故障の有無等を検出することが可能となる。そして、異常が判定されるまでは、点火プラグモデル42により各気筒10a〜10dのA/Fを個別に制御し、異常が判定された後は、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値に基づいて各気筒10a〜10dのA/Fを一括して制御することも可能となる。
【0076】
以上説明したように実施の形態2によれば、A/Fセンサ22の特性をモデル化してA/Fセンサモデル46を構築したため、A/Fセンサ22の実測A/F値に対応したA/Fを精度良くモデル出力することが可能となる。また、A/Fセンサモデル46を簡易線形モデル46aとニューラルネットモデル46bとからなるハイブリッドモデルから構成したため、実施の形態1と同様に精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0077】
また、点火プラグ16から検出されたイオン電流を入力として、A/Fセンサ22で実測されるA/Fを出力する複合モデル48を構築することで、A/Fセンサ22で実測されるA/Fをモデル出力することが可能となる。これにより、複合モデル48からモデル出力したA/Fに基づいて、各気筒10a〜10dのA/Fを一括制御することが可能となる。また、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを定期的に算出し、過去に算出した値と比較することで、異常判定を行うことが可能となる。
【0078】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、吸気管12a〜12dにおける燃料付着量を学習して、各気筒10a〜10dのA/Fと、燃料噴射弁24による燃料噴射量との関係をモデル化するものである。
【0079】
図13は、燃料モデル52を示す模式図である。例えば#1の気筒10aにおいて、吸気管12aへの燃料付着が生じないと仮定した場合の空燃比(噴射空燃比)AF1は、気筒10aの吸気行程における吸入空気量Gaと、燃料噴射弁24による気筒10aへの燃料噴射量Tau1から算出することができる。すなわち、AF1=Ga/Tau1として算出することができる。しかし、燃料噴射量Tau1の一部は吸気管12aの壁面に付着するため、気筒10a内の実際のA/FはAF1とならない場合がある。図13の燃料モデル52は、噴射空燃比AF1を入力として、吸気管12aでの燃料の付着を考慮した上で、気筒10aでの実際の空燃比Cal_AF1を出力するものである。
【0080】
図14は、燃料付着モデル54の構成を示す模式図である。図14に示すように、実施の形態3では、図13の燃料モデル52を簡易線形モデル54aとニューラルネットモデル(NNW)54bからなる燃料付着モデル54により構成し、AF1とCal_AF1との関係を精密に規定する。簡易線形モデル54aは、主として各吸気管12a〜12dにおいて共通する燃料の付着特性を表現したモデルであり、ニューラルネットモデル54bは、各吸気管12a〜12dの形状、加工精度などのバラツキに起因した非線形部分を表現したモデルである。なお、ここでは#1の気筒10aにおける燃料付着モデル54について説明するが、燃料付着モデル54は、#2〜#4の各気筒10b〜10dにおいても同様にモデル化される。
【0081】
図14に示すように、吸気管12aへの実吸入空気量Gaと実燃料噴射量Tau1とから算出された噴射空燃比AF1は、燃料付着モデル54へ入力される。燃料付着モデル54では、吸気管12aの壁面への燃料付着を考慮して気筒10aの実際の空燃比Cal_AF1を出力する。
【0082】
この際、図14に示すように、簡易線形モデル54aにおいて、吸気管12aにおける燃料の残留率P、付着率Rに基づいた線形成分の演算を行い、ニューラルネットモデル54bにおいて非線形部分の演算を行う。
【0083】
図15は、燃料付着モデル54の学習と、燃料付着モデル54によるモデルシミュレーション及びA/F制御を示す模式図である。ここで、図15(A)は、燃料付着モデル54を獲得する学習モードを示している。
【0084】
図15(A)に示す学習モードにおいては、最初に簡易線形モデル54a内のパラメータ(例えば、燃料モデルの残留率Pと付着率R)を予めベンチテスト等により各ユニット毎に求めておく。また、ニューラルネットモデル54bに関しても予め初期設定値を学習しておくことが望ましい。
【0085】
次に、各運転条件における吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1を燃料付着モデル54に入力し、点火プラグモデル42によるA/Fのモデル出力値と、燃料付着モデル54の簡易線形モデル54aにより計算したA/F値との出力誤差ΔA/Fを求める。次に、この出力誤差ΔA/Fをニューラルネットモデル54bで吸収させるため、学習を行う。この際、簡易線形モデル54aのパラメータ(残留率P、付着率Rなど)は固定とする。この学習により、各気筒10a〜10d毎に燃料付着モデル54を獲得することができる。燃料付着モデル54を獲得した後、モデルパラメータを固定(FIX)する。
【0086】
学習モードにおいて、点火プラグモデル42は実施の形態1の方法で既に完成されているため、点火プラグモデル42から各気筒10a〜10dのA/Fを正確に求めることができる。従って、点火プラグモデル42から求めた各気筒10a〜10dのA/Fに基づいて、燃料付着モデル54を獲得することが可能となる。
【0087】
簡易線形モデル54aのみを用いた制御では、システムの線形部分しかモデルで表現することができないため、実システムとの誤差が大きく、良好な制御性が得られない。一方、ニューラルネットモデル54bのみでモデリングを行った場合は、モデルの学習に長時間を要することが想定される。本実施形態の燃料付着モデル54によれば、ニューラルネットモデル54bが非線形成分の学習に適しているため、簡易線形モデル54aと併用することにより、実機44における燃料の付着状態とモデルとの誤差を最小限に抑えることができる。従って、モデル全体の精度を飛躍的に向上させることができる。また、モデルの基本的な線形部分を簡易線形モデル54aで表現することで、ニューラルネットモデル54bにおける学習を最小限に抑えることができ、燃料付着モデル54を迅速に構築することができる。
【0088】
図15(B)は、燃料付着モデル54によるモデルシミュレーション及びA/F制御を示す模式図である。燃料付着モデル54を獲得した後、吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1を入力としてシミュレーションを行い、A/Fのモデル計算値を出力する。図15(B)に示すように、簡易線形モデル54aの出力にニューラルネットモデル54bを加算することで、実機44と同等の出力を得ることができる。従って、このシミュレーションにより筒内の正確なA/Fを求めることができ、求めたA/Fに基づいて燃料噴射量、空燃比を精密に制御することが可能となる。
【0089】
図16は、燃料付着モデル54を用いたシステムの構成をより詳細に示した模式図である。図16では、燃料付着モデル54とともに、点火プラグモデル42、実機44を図示している。図16に示すように、吸入空気量Gaと、燃料噴射量Tau1から算出された噴射空燃比AF1は、気筒10aについての燃料付着モデル54へ入力される。燃料付着モデル54では、AF1を入力として、吸気管12aにおける燃料付着を考慮して気筒10aの空燃比Cal_AF1をモデル出力する。モデル出力された空燃比Cal_AF1は、点火プラグモデル42からモデル出力されたA/Fと比較され、ニューラルネットモデル54bの学習が行われる。
【0090】
図17は、図7で説明した点火プラグモデル42によるA/F制御を、燃料付着モデル54を併用して行う方法を示す模式図である。図17に示すように、点火プラグモデル42によるモデル出力A/Fと目標A/Fとから求めた燃料噴射量Tau1を、燃料付着モデル54で修正し、修正した値で燃料噴射弁24による燃料噴射を行う。このように、点火プラグモデル42によるA/F出力と併用することで、A/Fの制御性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0091】
なお、適宜に燃料付着モデル54の学習を行い、簡易線形モデル54a、ニューラルネットモデル54bにおける初期設定値を定期的に取得してその値を監視することで、システムの劣化検出や異常検出(吸気管12a〜12dの汚れ付着、燃料噴射弁24のつまり等の不具合の検出)を行うことが可能となる。
【0092】
以上説明したように実施の形態3によれば、吸気管12a〜12dにおける燃料の付着状態を燃料付着モデル54でモデル化し、燃料付着モデル54を簡易線形モデル54aとニューラルネットモデル54bとからなるハイブリッドモデルから構成したため、実施の形態1と同様に精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。これにより、燃料付着モデル54からモデル出力されたA/Fに基づいて、各気筒10a〜10dのA/Fを制御することが可能となる。また、点火プラグモデル42によるA/F制御と併用することで、A/Fの制御性を飛躍的に向上させることができる。
【0093】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1〜3の方法で点火プラグモデル42、燃料付着モデル54、A/Fセンサモデル46を構築し、各モデルに変化が生じた場合に、各モデルを修正して各モデルの精度を高めるものである。そして、実施の形態4では、修正した各モデルを用いてシステム全体のモデルを監視し、異常検出を行う。
【0094】
図18は、実施の形態4にかかるシステムの構成を示す模式図である。図18のシステムは、図11の複合モデル48と同様のモデルであって、点火プラグモデル42、排気集合部モデル50、A/Fセンサモデル46から構成されている。
【0095】
点火プラグモデル42、A/Fセンサモデル46は、実施の形態1,2で説明した方法で既に学習が行われており、モデルが完成されている。また、排気集合部モデル50についても、実施の形態2で説明した方法により、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdが既に取得されている。
【0096】
各気筒10a〜10dのイオン電流を検出する点火プラグ16は、燃焼室内に配置されているため非常に過酷な環境下にある。従って、経年変化などに起因する点火プラグ16の劣化によって、点火プラグモデル42のモデルが変化する場合がある。
【0097】
一方、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdは、前述したように排気管14a〜14dの長さ、形状等から定まるため、排気集合部モデル50の経年変化は殆ど生じないと考えて良い。また、実機44のA/Fセンサ22の特性はほぼ一定しているため、経年変化等により、A/Fセンサモデル46でモデル化されたセンサ特性が、実機44のA/Fセンサ22の特性から外れる可能性は低い。
【0098】
従って、図18のシステムにおいて、A/Fセンサモデル46からモデル出力されたA/F値と、実機44のA/Fセンサ22の出力値とが異なる場合は、点火プラグモデル42にモデル変化が生じたものと推定することができる。
【0099】
このため、実施の形態4では、定常運転時において、A/Fセンサモデル46から出力されたA/F値のモデル出力と、実機44のA/Fセンサ22の実測A/F値とを比較し、双方のA/F値が相違する場合は、最もモデル変化が生じ易い点火プラグモデル42が変化したものと推定して、各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42のニューラルネットモデル42bを修正する。これにより、点火プラグモデル42を常に最新のモデルに更新することが可能となる。
【0100】
特に、定常運転時においては、吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着量はほぼ一定しており、吸気管12a〜12dへの燃料付着の度合いに起因して点火プラグモデル42からの出力が変動することはない。従って、定常運転時において図18のシステム(A/Fセンサモデル46)から出力されたA/F値には、吸気管12a〜12dでの燃料付着の増減による変動要因は含まれていない。
【0101】
同様に、定常運転時において実機44のA/Fセンサ22から出力されたA/F値にも、吸気管12a〜12dへの燃料付着の増減による変動要因は含まれていない。従って、定常運転時において出力された、図18のシステムによるA/Fのモデル出力値と、A/Fセンサ22による実測A/F値とを比較することで、吸気管12a〜12dにおける燃料付着の増減に起因したA/Fの変動を排除した状態で、双方のA/F値を正確に比較することができる。そして、比較の結果に基づいて高精度に点火プラグモデル42を修正することが可能となる。
【0102】
一方、加減速時などの過渡運転時には、吸入空気量の変動等に起因して吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着量が変動する。従って、過渡運転時においては、運転条件に応じて燃料付着モデル54が変動する。このため、本実施形態では、図18の方法で点火プラグモデル42を修正した後、過渡運転時の運転条件に応じて各気筒10a〜10dの燃料付着モデル54を修正する。
【0103】
図19は、過渡運転時の運転条件に応じて燃料付着モデル54を修正する方法を示す模式図である。図19に示すように、修正した点火プラグモデル42の出力に基づいて、燃料付着モデル54を修正する。この際、過渡運転時の運転条件に応じた噴射空燃比AF1〜AF4、吸入空気量Gaを各気筒10a〜10dの燃料付着モデル54へ入力し、過渡運転時の運転条件に応じて検出されたイオン電流を点火プラグモデル42へ入力する。そして、燃料付着モデル54から出力されたモデルA/F値と、点火プラグモデル42から出力されたモデルA/F値とを比較し、比較の結果に基づいて燃料付着モデル54のニューラルネットモデル54bを修正する。
【0104】
これにより、過渡運転時における様々な運転条件に対応するように燃料付着モデル54を修正することができ、燃料付着モデル54を精密に構成することが可能となる。
【0105】
次に、修正した点火プラグモデル42および燃料付着モデル54を用いて、各気筒10a〜10d毎にA/Fを制御する方法を説明する。図20は、定常運転時において、図18の方法で修正した点火プラグモデル42によるモデル出力A/F値に基づいて、各気筒10a〜10dのA/Fを制御する方法を示す模式図である。図20に示すように、点火プラグモデル42から出力されたモデル出力によるA/F値は、各気筒10a〜10dの目標A/Fと比較される。そして、比較の結果に基づいて、各気筒10a〜10dの燃焼噴射量Tau1〜Tau4を修正する。点火プラグモデル42は、経年変化等による変動要因を含めて図18の方法で修正されているため、点火プラグモデル42のモデル出力に応じて燃焼噴射量Tau1〜Tau4を修正することで、各気筒10a〜10dのA/Fを目標A/Fに制御することが可能となる。
【0106】
一方、過渡運転時においては、上述したように運転条件に応じて吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着量が変動する。従って、図20の方法で点火プラグモデル42から求めた定常運転時の燃料噴射量Tau1〜Tau4を、燃料付着モデル54を用いて修正する。この際、図19の方法で既に修正した燃料付着モデル54を用いる。これにより、過渡運転時において、吸気管12a〜12dの壁面への燃料付着を考慮した上で、各気筒10a〜10dでの最適な燃料噴射量Tau1〜Tau4を求めることができる。
【0107】
図21は、修正した点火プラグモデル42、燃料付着モデル54を用いて、システムの監視、異常検出を行う方法を示す模式図である。図21のシステムでは、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50及びA/Fセンサモデル46を用いてシステムを構成している。燃料付着モデル54は、図19の方法で修正したものである。
【0108】
図21のシステムでは、燃料付着モデル54から各気筒10a〜10dのA/Fがモデル出力され、排気集合部モデル50へ入力される。排気集合部モデル50では、実施の形態2と同様に排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを用いて、実機44の排気集合部18でのA/Fに相当するA/Fをモデル出力する。排気集合部モデル50から出力されたA/Fは、A/Fセンサモデル46により実機44のA/Fセンサ22の特性が加味されて、A/Fセンサ22の実測A/F値に相当するA/Fがモデル出力される。
【0109】
図21のシステムにおいて、燃料付着モデル54からモデル出力されたA/F値は、図18の方法で修正された点火プラグモデル42によるA/Fのモデル出力値と比較される。ここで、双方のA/F値が相違する場合は、燃料付着モデル54、または点火プラグモデル42に異常が発生したものと判断できる。ここで、点火プラグモデル42の異常とは、点火プラグ16の劣化等により、点火プラグモデル42が実機44を反映しない状態となったことをいう。従って、点火プラグモデル42の異常判定により、実機44に異常が生じていることを認識できる。
【0110】
より詳細には、定常運転時では、吸気管12a〜12dにおける燃料付着量はほぼ一定しているため、吸気管12a〜12dでの燃料付着が生じていない場合と同様の条件と考えることができる。従って、定常運転時に燃料付着モデル54からモデル出力されるA/Fは、吸入空気量Gaと燃料噴射量Tau1〜Tau4から求まる噴射空燃比AF1〜AF4とほぼ等しくなる。このため、定常運転時における燃料付着モデル54のモデル出力A/F値の変動要因は小さく、定常運転時において燃料付着モデル54のモデル出力値と点火プラグモデル42のモデル出力値とが相違する場合は、点火プラグモデル42に異常が生じたものと判断できる。
【0111】
一方、定常運転時に燃料付着モデル54のモデル出力値と点火プラグモデル42のモデル出力値とが一致する場合は、点火プラグモデル42が正常であると判断できる。この場合において、過渡運転時に燃料付着モデル54のモデル出力値と点火プラグモデル42のモデル出力値とが相違する場合は、既に点火プラグモデル42が正常と判断されているため、燃料付着モデル54に異常が生じたものと判断できる。燃料付着モデル54の異常とは、例えば燃料噴射弁24のつまり、吸気管の汚れ等による燃料付着モデル54と実機44との相違である。従って、燃料付着モデル54の異常判定により、実機44に異常が生じていることを認識できる。
【0112】
また、図21のシステムにおいて、A/Fセンサモデル46から出力されたモデル出力によるA/F値は、実機44のA/Fセンサ22による実測A/F値と比較される。そして、双方のA/F値が相違する場合は、排気集合部モデル50に異常が生じることは想定できないため、燃料付着モデル54、またはA/Fセンサモデル46に異常が生じているものと判断できる。特に、上述した方法で燃料付着モデル54と点火プラグモデル42の双方に異常が生じていないと既に判定されている場合は、A/Fセンサモデル46に異常が生じたものと判断することができる。このように、モデルと実機44の該当箇所の出力を比較し、双方の出力が相違する場合は、該当箇所の手前の実機44の部分の特性がモデルと相違していると判定できる。これにより、実機44の異常判定を行うことができる。
【0113】
A/Fセンサモデル46から出力されたモデル出力によるA/F値と、実機44のA/Fセンサ22での実測によるA/F値との比較は随時行い、モデル出力A/F値と実測A/F値との出力誤差が所定のしきい値の範囲内の場合は、図20の方法で点火プラグモデル42による各気筒別の制御を行う。モデル出力A/F値と実測A/F値との出力誤差が所定のしきい値を超えた場合は、図18、図19の方法で点火プラグモデル42、燃料付着モデル54を順に修正する。特に、モデル出力A/F値と実測A/F値との出力誤差が大きく相違する場合は、点火プラグモデル42による各気筒別のA/F制御を停止し、実機44のA/Fセンサ22の出力に基づいた全気筒一括A/F制御に切り換える。
【0114】
A/Fセンサ22の出力に基づいた全気筒一括A/F制御へ切り換えた場合は、以下に説明する手順でモデルの修正・判定を実施する。
【0115】
(1)先ず、定常状態で図18による点火プラグモデル42の修正を行う。この結果、各気筒の点火プラグモデル42のパラメータが基準値以上に異なる場合は、点火プラグモデル42の学習を取りやめる。そして、点火プラグモデル42の学習の代わりに、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正する。
【0116】
(2)次に、過渡状態で図19に示す方法で燃料付着モデル54の修正を行う。この結果、各気筒10a〜10dの燃料付着モデル54のパラメータがある基準値以上異なる場合は、燃料付着モデル54の学習を停止する。そして、燃料付着モデル54の学習の代わりに、排気集合部モデル50における排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正する。
【0117】
(3)点火プラグモデル42または燃料付着モデル54の修正の代わりに排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正した場合において、求められた排気割合(R1,R2,R3,R4)または排気輸送遅れdが所定の上限値以上となった場合は、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdの学習を停止し、実機44のA/Fセンサ22による全気筒一括A/F制御を所定の期間継続する。そして、所定の期間の経過後に図18の点火プラグモデル42の修正、図19の燃料付着モデル54の修正を順次行う。
【0118】
(4)排気割合(R1,R2,R3,R4)または排気輸送遅れdが所定の上限値以上となる期間が継続する場合は、実機44のシステムに異常があると判断できる。この場合は、点火プラグモデル42による各気筒10a〜10dのモデルA/F出力値及びA/Fセンサ22による実測A/F値と、システム中の該当部分の出力とを比較し、システム内のモデル異常部分を判定する。この場合、モデルA/F出力値及び実測A/F値と相違する出力が得られたモデル部分に該当する実機44の部位が異常であると判定できる。上述したように、点火プラグモデル42のパラメータが基準値以上に異なるまでは、点火プラグモデル42の学習を行うため、点火プラグモデル42は基準値内で修正されている。従って、点火プラグモデル42の出力に基づいて異常判定を行うことができる。
【0119】
このように、排気集合部モデル50の経時変化は殆ど生じないが、点火プラグモデル42のパラメータが基準値以上に異なる場合、または燃料付着モデル54のパラメータがある基準値以上異なる場合は、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正することで、点火プラグモデル42、燃料付着モデル54の経時変化の修正を含めた状態でモデル修正を総括的に行うことができる。この場合、A/Fセンサモデル46に経時変化が生じていたとしても、A/Fセンサモデル46の経時変化は応答遅れに関係するものであるため、排気割合(R1,R2,R3,R4)及び排気輸送遅れdを修正することで、各気筒の応答遅れに起因するA/Fセンサモデル46の経時変化を吸収することができ、A/Fセンサモデル46の修正を含めた状態でモデル修正を行うことができる。
【0120】
以上説明したように実施の形態4によれば、実機44の排気集合部18に設けられたA/Fセンサ22の出力に基づいて、点火プラグモデル42を修正することが可能となる。従って、過酷な使用環境下にある点火プラグ16が劣化して、点火プラグモデル42と実機44との間に変動が生じた場合であっても、点火プラグモデル42を最新のモデルに更新することが可能となる。
【0121】
また、点火プラグモデル42によるモデル出力A/F値と燃料付着モデル54によるモデル出力A/F値との比較の結果に基づいて、点火プラグモデル42または燃料付着モデル54を修正することが可能となる。更に、点火プラグモデル42及び燃料付着モデル54が正常と判定された後は、実機44の排気集合部18に設けられたA/Fセンサ22の出力とA/Fセンサモデル46のモデル出力A/F値とに基づいて、A/Fセンサモデル46の異常判定を行うことが可能となる。従って、本実施形態によれば、各モデルを修正することにより、各モデルの精度を向上させることが可能となる。
【0122】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5は、実施の形態1〜3の方法で各モデルを構築した後、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46からなるシステムを、線形モデルによるA/F適応制御と、点火プラグモデル42による各気筒10a〜10dのA/F制御との組み合わせで制御するものである。各モデルは実施の形態4の方法で予め修正しておくことが好適である。
【0123】
図22は、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46からなるシステムを線形近似して、A/Fの適応制御を行う方法を示す模式図である。ここで、図22(A)は、図21と同様のシステムを示しており、A/Fセンサモデル46、燃料付着モデル54の双方を、簡易線形モデル46a,54aとニューラルネットモデル46b,54bとからなるハイブリッドモデルから構成している。
【0124】
また、図22(B)は、図22(A)のシステムにおいて、線形モデルのみを取り出したシステムを示している。すなわち、図22(B)のシステムでは、図22(A)のシステムから、A/Fセンサモデル46のニューラルネットモデル46bと燃料付着モデル54のニューラルネットモデル54bとが取り除かれている。
【0125】
実施の形態3で説明したように、燃料付着モデル54は各気筒10a〜10d毎に構成される。そして、燃料付着モデル54では、全気筒10a〜10dで共通する特性が簡易線形モデル54aで表現され、気筒10a〜10d毎に異なる特性がニューラルネットモデル54bで表現される。従って、図22(A)では、4気筒(10a〜10d)毎に吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1〜4が燃料付着モデル54へ入力され、A/Fセンサモデル46からA/F値がモデル出力される。従って、図22(A)のシステムは4入力1出力である。
【0126】
一方、図22(B)のシステムでは、燃料付着モデル54から、各気筒10a〜10d毎の特性を表現したニューラルネットモデル54bを取り除いて燃料付着モデル54’を構成している。従って、燃料付着モデル54’は全ての気筒10a〜10dにおける燃料モデルを表すことになる。従って、燃料付着モデル54’へ入力される燃料噴射量はは全ての気筒10a〜10dへの燃料噴射量Tau1〜4の総和である。従って、図22(B)のシステムは1入力1出力である。
【0127】
点火プラグモデル42、A/Fセンサモデル46の線形近似部分のみを抽出して連結した図22(B)のシステムにおいては、入出力関係を以下の(3)式に示すような線形式で表現することができる。そして、(3)式を用いて、実機44のA/Fセンサ22の出力値に基づいて適応制御を実施する。なお、図22(B)おいて、簡易線形モデル46a,54aは既に完成しているため、(3)式の係数f0〜f2・・・, g0〜g2・・・を新たに算出する必要はない。
【0128】
【0129】
(3)式において、Gf(t)は時刻tでの燃料付着モデル54への入力(U(t))を示している。また、AF(t)は、時刻tでのA/Fセンサモデル46の出力(Y(t))を示している。(3)式において、目標A/FをAF_targetとし、評価関数Eを以下の(4)式で表すこととする。評価関数Eは、時刻t+dでの空燃比AF(t+d)をAF_targetへ収束させることを規定した関数である。
【0130】
E=[AF_target−AF(t+d)+γ1{AF(t)−AF(t−1)}+γ2{Gf(t)−Gf(t−1)}]2・・・(4)
【0131】
(4)式の右辺=0とすると、時刻t+dでの空燃比AF(t+d)を目標トルクAF_targetとする制御が可能となる。(4)式の右辺=0として、すなわち右辺の[ ]内を0として(3)式へ代入し、Gf (t)について解くと以下の(5)式が得られる。(5)式は、図22(B)のシステムを上記(2)式で表した場合に、時刻tにおける望ましい入力Gf(t)を算出する式である。本実施形態では、(5)式に基づいて入力Gf(t)の制御を行う。なお、Gf(t)は、例えば燃料噴射量である。
【0132】
【0133】
(5)式において、燃料付着モデル54への入力Gf(t)を燃料噴射量U(t)とおく。すなわち、(5)式においてGf(t)=U(t)とすると、現在の入力はU(t)、次回の入力はU(t+1)となり、ともに(5)式から算出できる。そして、現在の入力U(t)から次の入力U(t+1)を得るための燃料噴射量の補正量ΔU(t+1)は、ΔU(t+1)=U(t+1)−U(t)として算出できる。従って、(5)式に基づいてU(t), U(t+1)を算出することで、補正量ΔU(t+1)が求まる。
【0134】
ここで求めたΔU(t+1)は、全気筒10a〜10dを一括して制御する場合の燃料噴射量の補正量である。一方、各気筒10a〜10dの燃料噴射量は、図23に示すように、各気筒10a〜10dの点火プラグモデル42から求めることができる。図23は、図20と同様に、点火プラグモデル42から各気筒10a〜10dの燃料噴射量を求める方法を示す模式図である。
【0135】
図20で説明したように、点火プラグモデル42からモデル出力したA/F値と目標A/Fとを比較することにより、各気筒10a〜10dでの最適な燃料噴射量Tau1〜Tau4を求めることができる。各気筒10a〜10dの現在の燃料噴射量u1(t), u2(t), u3(t), u4(t)、次の燃料噴射量u1(t+1), u2(t+1), u3(t+1), u4(t+1)は、図23に示す方法で算出できる。そして、時刻tにおいて、次の燃料噴射量u1(t+1), u2(t+1), u3(t+1), u4(t+1)を得るための各気筒10a〜10dの補正量Δu1(t+1), Δu2(t+1), Δu3(t+1), Δu4(t+1)は、それぞれ以下の式で算出される。
【0136】
Δu1(t+1)=u1(t+1)−u1(t)
Δu2(t+1)=u2(t+1)−u2(t)
Δu3(t+1)=u3(t+1)−u3(t)
Δu4(t+1)=u4(t+1)−u4(t)
【0137】
このようにして、全気筒10a〜10dを一括制御する場合の燃料噴射量の補正量ΔU(t+1)と、各気筒10a〜10dの個別の燃料噴射量の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)とを算出した後、ΔU(t+1)、およびΔu1(t+1)〜Δu4(t+1)を用いて燃料噴射量を制御する。
【0138】
具体的には、気筒別の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)の総和がシステム全体の補正量ΔU(t+1)と等しくなるよう制御を行う。例えば、システム全体の補正量ΔU(t+1)を気筒別補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)で比例配分して、各気筒の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)を修正する。この場合、#1の気筒10aでの補正量Δu1(t+1)の修正値Δu1_new(t+1)は、以下の(6)式から算出できる。
【0139】
【0140】
また、各気筒の補正量Δu1(t+1)〜Δu4(t+1)を先に修正し、その後、全体の補正量ΔU(t+1)を補正するようにしても良い。これにより、各気筒10a〜10dの燃料噴射量のバラツキを最初に補正することができ、その後に全体の燃料噴射量を適応制御することで、排気ガスのエミッションを向上させることができる。
【0141】
点火プラグ16は燃焼室内に配置され、過酷な使用環境下にあるが、本実施形態のようにシステムの線形モデルと併用してA/F制御を行うことにより、点火プラグモデル42が実機44と相違した場合であっても、精度の高いA/F制御を継続することが可能となる。また、実施の形態4で説明した方法で各モデルを修正しておくことで、より精度の高いA/F制御を行うことが可能となる。
【0142】
次に、図22(A)のシステムを制御する他の方法を説明する。図24は、図22(A)のシステムをオブザーバー構成により制御する方法を示す模式図である。図24の例では、A/Fセンサモデル46からモデル出力されたA/F値と、実機44のA/Fセンサ22の検出値とを比較し、比較の結果に基づいてPID等のコントローラー55により各気筒10a〜10dの燃料噴射量Tau1〜Tau4を補正する。
【0143】
図24のシステム構成によれば、図22(A)のシステムにコントローラー55を追加することにより、各気筒10a〜10dの燃料噴射量Tau1〜Tau4をオブザーバー制御することが可能となる。
【0144】
以上説明したように実施の形態5によれば、点火プラグモデル42によるA/F制御と、システム線形モデルによるA/F制御を併用して制御を行うことで、A/Fを2重ループで制御することが可能となる。従って、制御の精度を高めることができ、ロバスト性を向上させることが可能となる。また、オブザーバー制御により燃料付着モデル54、排気集合部モデル50及びA/Fセンサモデル46からなるハイブリッドモデルを制御することにより、簡素な構成でハイブリッドモデルを高精度に制御することが可能となる。
【0145】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について説明する。実施の形態6は、実施の形態1〜3の方法で各モデルを構築した後、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、およびA/Fセンサモデル46からなるシステムを近似逆モデルを用いて制御するものである。各モデルは実施の形態4の方法で予め修正しておくことが好適である。
【0146】
図25は、実施の形態6にかかる制御装置の構成を示す模式図である。図25に示すハイブリッドモデル56は図21と同様のモデルであって、燃料付着モデル54、排気集合部モデル50、A/Fセンサモデル46から構成される。ハイブリッドモデル56は、吸入空気量Ga、燃料噴射量Tau1〜4を入力として、排気集合部18でのA/Fをモデル出力する。近似逆モデル58は、ハイブリッドモデル56の逆モデルに近似したモデルであって、A/Fを入力として燃料噴射量Tau1〜4を出力する。また、図25に示すように、本実施形態の制御装置は実機44とPID等のコントローラー60を含むものである。
【0147】
図25のシステムにおいて、ハイブリッドモデル56は、燃料噴射量Tau1〜4を入力として排気集合部18でのA/Fをモデル出力する。従って、近似逆モデル58に目標A/Fを入力すると、その目標空燃比を得るために必要な燃料噴射量が出力される。このように、近似逆モデル58によれば、フィードバック等を行うことなく、目標A/Fに対応する燃料噴射量を短時間で、かつ高精度に求めることができる。
【0148】
図25に示すように、近似逆モデルから出力された燃料噴射量は、実機44とハイブリッドモデル56の双方へ入力される。実機44では、入力された燃料噴射量により機関が運転され、排気集合部18の下流のA/Fセンサ22でA/Fが検出される。一方、ハイブリッドモデル56では、入力された燃料噴射量から排気集合部18でのA/Fがモデル出力される。実機44とハイブリッドモデル56のそれぞれから出力されたA/Fは比較され、比較の結果に基づいて、コントローラー60によりPID制御される。
【0149】
通常のPID等による制御の場合、目標値に制御するためには試行錯誤を繰り返すこととなるが、本実施形態では、近似逆モデル58から目標A/Fに対応する燃料噴射量を出力することができるため、その後のコントローラー60による制御では、誤差分を修正する程度の制御を行うのみで、実機44を目標A/Fに制御することが可能となる。従って、図25のシステムによれば、近似逆モデル58を用いることで、その後の制御における目標修正量を最小限に抑えることができ、目標値への収束を短時間で行うことができる。これにより、目標A/Fが大きく変動した場合であっても、近似逆モデル58から出力した目標A/Fに対応する燃料噴射量に基づいて、目標値への制御を短時間で行うことができる。
【0150】
図26は、ハイブリッドモデル56から近似逆モデル58を構成する方法を示す模式図である。図26(A)は、図25におけるハイブリッドモデル56の構成を示している。近似逆モデル58を構成する場合は、先ず、図26(A)のシステムから時間遅れ部分を取り除く。すなわち、図26(B)に示すように、排気輸送遅れdの要因を取り除いて排気集合部モデル50’を構成する。
【0151】
近似逆モデル58は、図26(B)に示すハイブリッドモデルの前にPID等のコントローラー62を挿入し、ループを設けてフィードバック制御することにより構築することができる。図26(C)は、図26(B)のハイブリッドモデルをコントローラー62を用いてフィードバック制御したモデルである。このように、ハイブリッドモデル56から時間遅れ項(排気輸送遅れd)を取り除き、コントローラー62によるフィードバックを行うことで、近似逆モデル58を構成することができる。
【0152】
図27に基づいて、上記手法により近似逆モデル58を構築できる理由を説明する。図27(A)は、ハイブリッドモデル56を示す模式図である。図27(A)において、ハイブリッドモデル56の入力はU、出力はYである。図27(B)は、ハイブリッドモデル56の逆モデル57を示す模式図である。逆モデル57は、ハイブリッドモデル56における望ましい出力Yrを入力として、ハイブリッドモデル56における望ましい入力Urを出力する。このように、逆モデル57を構成することができれば、ハイブリッドモデル56における目標の出力Yrに基づいて、入力Urを求めることができる。しかし、逆モデル57を直接作成することは一般的に困難である。
【0153】
図27(C)は、ハイブリッドモデル56の前にコントローラー62を設け、ループを設けてフィードバック制御したモデルを示している。すなわち、図27(C)のモデルは、図26(C)の近似逆モデル58に相当する。コントローラー62の伝達関数をC(s)、ハイブリッドモデル56の伝達関数をP(s)とすると、図27(C)において以下の(7)式の関係が成立する。
出力U=(C/(1+PC))×入力Yr ・・・(7)
(7)式の右辺の分母・分子をCで割ると、以下の(8)式が得られる。
出力U=(1/(1/C+P))×入力Yr ・・・(8)
(8)式において、コントローラー62のゲインを限りなく大きくすると、1/C→0になるので、以下の(9)式が得られる。
出力U=(1/P)×入力Yr ・・・(9)
(9)式によれば、図27(C)のモデルの伝達関数は1/Pとなる。そして、この伝達関数によれば、図27(C)のモデルは、図27(A)のハイブリッドモデル56(伝達関数P)の逆モデルとなる。従って、図26、図27の手法によれば、ハイブリッドモデル56の近似逆モデル58を構築することが可能となる。
【0154】
図28は、図25において、ハイブリッドモデル56、近似逆モデル58の構成を具体的に示した模式図である。図28のシステムによれば、近似逆モデル58へ目標A/Fを入力すると、目標A/Fに対応した燃料噴射量を瞬時に、かつ高精度に算出できる。従って、通常のフィードバック制御でA/F制御を行う場合と比較して、目標A/Fへの制御を短時間で行うことができる。これにより、運転状態の変化などの要因から目標空燃比が大きく変わった場合であっても、短時間で目標空燃比へ制御することが可能となる。
【0155】
また、近似逆モデル58から燃料噴射量を出力した後は、コントローラー60を用いて誤差分を修正する程度の制御を行うのみで、実機44の燃料噴射量を目標値に応じた値に制御することが可能となる。
【0156】
以上説明したように実施の形態6によれば、ハイブリッドモデル56の近似逆モデル58を簡単に構成することが可能となる。そして、近似逆モデル58から目標A/Fに応じた燃料噴射量を瞬時に求めることができ、更に、実機44、ハイブリッドモデル56の出力に応じてコントローラー60による制御を行うため、追従性、安定性に優れた制御を実現することが可能となる。
【0157】
なお、上述した各実施形態では、点火プラグモデル42、A/Fセンサモデル46、燃料付着モデル54を簡易線形モデルとニューラルネットモデルからなるハイブリッドモデルにより構成したが、ニューラルネットモデルのみから各モデルを構成しても良い。
【0158】
【発明の効果】
第1の発明によれば、イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力することができるため、空燃比センサ等により空燃比を実測することなく各気筒の空燃比を求めることが可能となる。
【0159】
第2の発明によれば、空燃比推定モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0160】
第3の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、各気筒の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0161】
第4の発明によれば、空燃比推定モデル、排気モデル及び空燃比センサモデルを備えたことにより、空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて、空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力するモデルを構築することが可能となる。
【0162】
第5の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0163】
第6の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と、空燃比センサで実測された空燃比とを比較して、排気モデルを決定するパラメータを取得することが可能となる。
【0164】
第7の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と、空燃比センサで実測された空燃比とを比較して、各気筒からの排気の割合、及び排気の輸送遅れを取得することが可能となる。
【0165】
第8の発明によれば、排気モデルを決定するパラメータの変動に基づいて異常判定を行うことが可能となる。
【0166】
第9の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比とを比較した結果に基づいて、燃料モデルを構築することが可能となる。
【0167】
第10の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と、燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0168】
第11の発明によれば、燃料モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0169】
第12の発明によれば、燃料モデル、排気モデル及び空燃比センサモデルを備えたことにより、燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて、空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力するモデルを構築することが可能となる。
【0170】
第13の発明によれば、空燃比センサモデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0171】
第14の発明によれば、内燃機関を定常運転させた場合に、空燃比センサモデルから出力された空燃比と空燃比センサで実測された空燃比とを比較した結果に基づいて、空燃比推定モデルを修正することが可能となる。
【0172】
第15の発明によれば、修正した空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を高精度に制御することが可能となる。
【0173】
第16の発明によれば、内燃機関を過渡運転させた場合に、修正された空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比とを比較した結果に基づいて、燃料モデルを修正することが可能となる。
【0174】
第17の発明によれば、修正された空燃比推定モデルから出力された空燃比と、修正された燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を高精度に制御することが可能となる。
【0175】
第18の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行うことが可能となる。
【0176】
第19の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と実機の空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行うことが可能となる。
【0177】
第20の発明によれば、線形モデルの空燃比センサモデルから出力された全気筒の空燃比と、空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0178】
第21の発明によれば、空燃比センサモデルから出力された空燃比と、空燃比センサで実測された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を最適に制御することが可能となる。
【0179】
第22の発明によれば、ハイブリッドモデルの近似逆モデルから目標空燃比に応じた燃料噴射量を出力することができるため、その後の制御における目標修正量を最小限に抑えることができ、目標値への収束を短時間で行うことができる。
【0180】
第23の発明によれば、ハイブリッドモデルを燃料モデル、排気モデル及び空燃比センサモデルから構成したため、燃料噴射量を入力として排気集合部に設けられた空燃比センサの出力に実測値に相当する空燃比を出力することができる。
【0181】
第24の発明によれば、空燃比推定モデルから出力された空燃比と燃料モデルから出力された空燃比とを比較した結果に基づいて、燃料モデルを構築することが可能となる。
【0182】
第25の発明によれば、ハイブリッドモデルから時間遅れ項を除いたモデルをフィードバック制御することにより近似逆モデルを構築することができる。
【0183】
第26の発明によれば、燃料モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0184】
第27の発明によれば、空燃比センサモデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【0185】
第28の発明によれば、空燃比推定モデルを簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成したため、精度の良いモデルを簡単かつ迅速に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の各実施形態の制御装置によって制御される実機の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかる点火プラグモデルを示す模式図である。
【図3】イオン電流と、A/Fとの関係を示す模式図である。
【図4】ハイブリッドモデルから構成した点火プラグモデルを示す模式図である。
【図5】点火プラグモデルと実機との関係を示す模式図である。
【図6】点火プラグモデルを獲得するための学習モードを示す模式図である。
【図7】点火プラグモデルを用いて各気筒のA/Fを制御する方法を示す模式図である。
【図8】実施の形態2にかかるA/Fセンサモデルの構成を示す模式図である。
【図9】A/Fセンサモデルを学習する方法を示す模式図である。
【図10】点火プラグモデルから出力された各排気管のA/Fと、A/Fセンサで検出されるA/Fとの関係を示した模式図である。
【図11】点火プラグモデルとA/Fセンサモデルとを接続したモデルを示す模式図である。
【図12】点火プラグモデル、排気集合部モデル、およびA/Fセンサモデルの関係を詳細に示す模式図である。
【図13】燃料モデルを示す模式図である。
【図14】実施の形態3にかかる燃料付着モデルの構成を示す模式図である。
【図15】燃料付着モデルの学習と、燃料付着モデルによるモデルシミュレーション及びA/F制御を示す模式図である。
【図16】燃料付着モデルを用いたシステムの構成を詳細に示す模式図である。
【図17】点火プラグモデルによるA/F制御を、燃料付着モデルを併用して行う方法を示す模式図である。
【図18】実施の形態4にかかるシステムの構成を示す模式図である。
【図19】過渡運転時の運転条件に応じて燃料付着モデルを修正する方法を示す模式図である。
【図20】点火プラグモデルの出力に基づいて各気筒のA/Fを制御する方法を示す模式図である。
【図21】修正した点火プラグモデル、燃料付着モデルを用いて、システムの監視、異常検出を行う方法を示す模式図である。
【図22】システムを線形近似して、A/Fの適応制御を行う方法を示す模式図である。
【図23】点火プラグモデルから各気筒の燃料噴射量の修正量を求める方法を示す模式図である。
【図24】システムをオブザーバー構成により制御する方法を示す模式図である。
【図25】実施の形態6にかかる制御装置の構成を示す模式図である。
【図26】ハイブリッドモデルから近似逆モデルを構成する方法を示す模式図である。
【図27】ハイブリッドモデルから近似逆モデルを構成する方法を示す模式図である。
【図28】図25において、ハイブリッドモデル、近似逆モデルの構成を具体的に示した模式図である。
【符号の説明】
16 点火プラグ
50 排気集合部モデル
22 A/Fセンサ
42 点火プラグモデル
42a,46a,54a 簡易線形モデル
42b,46b,54b ニューラルネットモデル
44 実機
46 A/Fセンサモデル
50 排気集合部モデル
54 燃料付着モデル
55,60,62 コントローラー
56 ハイブリッドモデル
58 近似逆モデル
Claims (28)
- 筒内のイオン電流又は燃焼圧を取得する手段と、
前記イオン電流又は燃焼圧と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力する空燃比推定モデルと、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記空燃比推定モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- 前記空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。
- 各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、
排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。 - 前記空燃比センサモデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする請求項4記載の内燃機関の制御装置。
- 前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と前記空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、前記排気モデルを決定するパラメータを取得する手段を更に備えたことを特徴とする請求項4又は5記載の内燃機関の制御装置。
- 前記排気モデルを決定するパラメータは、各気筒からの排気の割合、及び排気の輸送遅れであることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の制御装置。
- 前記パラメータの変動に基づいて異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする請求項6又は7記載の内燃機関の制御装置。
- 噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、
前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを構築する手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。 - 前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と、前記燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする請求項9記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃料モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする請求項9又は10記載の内燃機関の制御装置。
- 各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、
排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、
を更に備えたことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。 - 前記空燃比センサモデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする請求項4〜8及び12のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
- 内燃機関を定常運転させた場合に、前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と前記空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、前記空燃比推定モデルを修正する修正手段を更に備えたことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
- 修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比に基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を備えたことを特徴とする請求項14記載の内燃機関の制御装置。
- 内燃機関を過渡運転させた場合に、修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを修正する修正手段を更に備えたことを特徴とする請求項15記載の内燃機関の制御装置。
- 修正された前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と、修正された前記燃料モデルから出力された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段を更に備えたことを特徴とする請求項16記載の内燃機関の制御装置。
- 前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする請求項12記載の内燃機関の制御装置。
- 前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と実機の空燃比センサで実測された空燃比との比較の結果に基づいて、異常判定を行う異常判定手段を更に備えたことを特徴とする請求項12記載の内燃機関の制御装置。
- 噴射空燃比と筒内の空燃比との関係を線形成分を用いてモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、排気集合部に設けられた空燃比センサの特性を線形成分を用いてモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、を含む線形モデルと、
前記線形モデルの空燃比センサモデルから出力された全気筒の空燃比と、前記空燃比推定モデルから出力された各気筒の空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置。 - 噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、
各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、
排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、
前記線形モデルの前記空燃比センサモデルから出力された空燃比と、前記空燃比センサで実測された空燃比とに基づいて、内燃機関の空燃比を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 燃料噴射量と空燃比との関係をモデル化し、燃料噴射量を入力として排気集合部に設けられた空燃比センサの出力に相当する空燃比を出力するハイブリッドモデルと、
目標空燃比を入力として、当該目標空燃比に応じた燃料噴射量を出力する前記ハイブリッドモデルの近似逆モデルと、
前記空燃比センサで実測された空燃比と、前記近似逆モデルから出力された燃料噴射量を入力として前記ハイブリッドモデルから出力された空燃比とを比較する比較手段と、
前記比較手段における比較の結果に基づいて、燃料噴射量を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記ハイブリッドモデルは、
噴射空燃比と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記噴射空燃比に基づいて筒内の空燃比を出力する燃料モデルと、
各気筒の空燃比と排気集合部における空燃比との関係をモデル化し、前記燃料モデルから出力された各気筒の空燃比に基づいて排気集合部の空燃比を出力する排気モデルと、
排気集合部に設けられた空燃比センサの特性をモデル化し、前記排気モデルから出力された空燃比に基づいて前記空燃比センサでの実測値に相当する空燃比を出力する空燃比センサモデルと、
を備えたことを特徴とする請求項22記載の内燃機関の制御装置。 - 筒内のイオン電流又は燃焼圧を取得する手段と、
前記イオン電流又は燃焼圧と筒内の空燃比との関係をモデル化し、前記イオン電流又は燃焼圧に基づいて筒内の空燃比を出力する空燃比推定モデルと、
前記空燃比推定モデルから出力された空燃比と前記燃料モデルから出力された空燃比との比較の結果に基づいて、前記燃料モデルを構築する手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項21又は23記載の内燃機関の制御装置。 - 前記近似逆モデルは、前記ハイブリッドモデルから時間遅れ項を除いたモデルをフィードバック制御して得られるモデルであることを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃料モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする請求項21及び23〜25のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記空燃比センサモデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする請求項21及び23〜26のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記空燃比推定モデルは、簡易線形モデルとニューラルネットモデルとから構成されることを特徴とする請求項24〜27のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
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- 2003-07-03 JP JP2003191439A patent/JP2005023863A/ja not_active Withdrawn
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