JP2005023407A - 成膜装置及び成膜方法 - Google Patents

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志朗 瀧川
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孝市 笹川
Takahiko Kondo
隆彦 近藤
Hiroshi Takigawa
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Abstract

【課題】 成膜速度の向上が図られた成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】 アーク蒸発室1と成膜室4とを異なる高さに配置し、それにより、両者1,4を連結する可変チューブからなるプラズマダクト3’を屈曲形状とする。プラズマダクト3’のダクト出口7には、オリフィス8’が挿入され、また、ダクト外周には、ダクトの形状に合わせて磁界発生装置9Bが配置されている。このようなプラズマダクト3’の屈曲形状及びオリフィス8’を用いて、ダクト内におけるドロップレット・中性粒子ビーム52と荷電粒子ビーム51との進行方向の違いに基づき、ドロップレット及び中性粒子の一部を荷電粒子から分離する。それにより、所定量に調整されたドロップレット及び中性粒子が成膜室4に供給される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、アーク放電により蒸発させた蒸発粒子を用いて基板の表面に薄膜を形成する成膜装置及び成膜方法に関する。
イオンプレーティング装置の一種として、アーク放電を用いて基板の表面に薄膜を形成する成膜装置がある。アーク放電が行われるアーク蒸発室は、陰極と陽極とを備え、成膜時には、陰極と陽極との間でアーク放電を行って膜形成材料からなるターゲット(通常は、陰極がターゲットに相当する)を蒸発させて蒸発粒子を発生させる。この蒸発粒子は、主に、イオン化した膜形成材料粒子であるイオン化粒子(具体的には、陰極材料がイオン化して電荷を帯びているもの)と、電子と、膜形成材料の中性粒子と、膜形成材料細片等であるドロップレットとを含んでいる。ここでは、前記イオン化粒子と電子とを総称して荷電粒子と呼ぶ。この荷電粒子によってプラズマが形成され、荷電粒子のうちのイオン化粒子を、アーク蒸発室の下流に配設された成膜室において基板の表面に堆積させて薄膜を形成する(例えば特許文献1参照)。
アーク蒸発室で発生した前記蒸発粒子のうち、ドロップレットや中性粒子は副成物であって、この副成物(例えば、サブミクロンから数十ミクロンサイズのドロップレット)が膜に混入すると、膜の表面が滑らかでなくなるとともに膜厚が不均一となる。そこで、アーク蒸発室から得られた蒸発粒子に含まれる荷電粒子を副成物たるドロップレット及び中性粒子から分離し、荷電粒子のみを成膜に用いるとともに、この分離したドロップレット及び中性粒子を、アーク蒸発室と成膜室との間に設けたドロップレット捕集部に集める構成の装置がある。このような装置では、ドロップレットや中性粒子が膜に混入するのを防止することができる(例えば特許文献2参照)。
特開2001−316801号公報 特開2002−8893号公報
上記構成の成膜装置を用いて薄膜を形成すると、成膜速度が小さいために、成膜に時間を要する。したがって、量産のためには、成膜速度を向上させる必要がある。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、成膜速度の向上を図ることが可能な成膜装置及び成膜方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、成膜速度が小さいのは、成膜に有効に利用される蒸発粒子の割合が少ないことによる、具体的には、蒸発粒子のうちの荷電粒子のみが成膜に利用され、これ以外のドロップレットや中性粒子は除去されて成膜に利用されないためであること、また、適切な量に調整してドロップレット及び中性粒子を荷電粒子とともに成膜に用いれば、十分な膜質を実現しつつ成膜速度を効果的に向上させることができることが明らかとなった。さらに、膜形成材料の種類によって、当該材料から生じるドロップレット及び中性粒子の性状(具体的には発生量等)に違いがあり、それゆえ、各材料においてそれぞれ最適な成膜を行うためには、膜形成材料の種類に応じてドロップレット及び中性粒子の除去量を適宜調整するのが好ましいことが明らかとなった。そして、これらの点に鑑み、以下の発明に到った。
すなわち、本発明に係る成膜装置及び成膜方法は、内部でアーク放電により膜形成材料を蒸発させ、イオン化した前記膜形成材料であるイオン化粒子と、前記膜形成材料の中性粒子と、ドロップレットとを含む蒸発粒子を発生させるアーク蒸発室と、内部に配置される基板に前記蒸発粒子を堆積させて成膜が行われる成膜室と、前記アーク蒸発室と前記成膜室とを連結する輸送管とを備え、少なくとも前記輸送管が、前記イオン化粒子と所定量の前記ドロップレット及び前記中性粒子とを含む前記蒸発粒子を用いて前記成膜室において前記成膜が行われるように、前記輸送管内を移動する前記イオン化粒子から前記ドロップレット及び前記中性粒子の一部を分離、捕獲して前記ドロップレット及び前記中性粒子の量を調整するドロップレット・中性粒子量調整構造を有するものである。
かかる構成によれば、イオン化粒子だけでなく所定量のドロップレット及び中性粒子を用いて成膜を行うため、成膜に用いられる蒸発粒子の利用率が向上し、よって、成膜速度の向上が図られる。また、ここでは、ドロップレット及び中性粒子を含んでも十分な膜質が得られるように、成膜に用いられるドロップレット及び中性粒子の量が前記所定量に調整されている。このため、膜質を保ちつつ成膜速度の向上を図ることが可能となる。
前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記輸送管における前記ドロップレット及び前記中性粒子の移動方向と前記イオン化粒子の移動方向とを異なる方向とすることにより前記分離を行ってもよい。
かかる構成によれば、イオン化粒子とドロップレット及び中性粒子との移動方向の違いから、イオン化粒子からドロップレット及び中性粒子の一部を容易に分離することができる。
前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記輸送管のアーク蒸発室接続口と成膜室接続口とを相対的に異なる位置に配置することによって形成される、前記アーク蒸発室接続口を含む面の法線に対する前記輸送管の傾斜配置と、前記イオン化粒子が前記輸送管の内壁に衝突することなく移動するように前記イオン化粒子を誘導する誘導手段と、を含んでもよい。例えば、前記誘導手段は、前記輸送管と同軸の誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界により、前記イオン化粒子が前記輸送管の中心軸に沿って移動してもよい。あるいは、前記誘導手段は、前記輸送管の中心軸から偏心した軸を有する誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界により、前記イオン化粒子が前記偏心した軸に沿って移動してもよい。また、これらの場合において、前記アーク蒸発室及び前記成膜室の相対的な配置を調節する相対配置調節構造をさらに備え、前記輸送管の前記傾斜配置の傾斜が、前記相対配置調節構造による前記配置調節によって調整される構成であってもよい。
また、前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記輸送管の屈曲形状と、前記イオン化粒子が前記輸送管の内壁に衝突することなく移動するように前記イオン化粒子を誘導する誘導手段と、を含んでもよい。例えば、前記誘導手段は、前記輸送管と同軸の誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界により、前記イオン化粒子が前記輸送管の中心軸に沿って移動してもよい。あるいは、前記誘導手段は、前記輸送管の中心軸から偏心した軸を有する誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界により、前記イオン化粒子が前記偏心した軸に沿って移動してもよい。また、これらの場合において、前記輸送管が、屈曲自在に構成された可変管であってもよく、また、前記アーク蒸発室及び前記成膜室の相対的な配置を調節する相対配置調節構造をさらに備え、前記可変管の屈曲形状が、前記相対配置調節構造による前記配置調節によって調整される構成であってもよい。
かかる構成によれば、誘導手段によって常に内壁に衝突することなく輸送管内を移動するイオン化粒子と、誘導手段の作用を受けずアーク蒸発室から輸送管へ導入された際の導入方向に従って当該方向に直進するドロップレット及び中性粒子とを、このような両者の移動性の違いに基づき、輸送管の傾斜及び屈曲形状を利用して分離することが可能となる。すなわち、輸送管内を前記導入方向に従って直進するドロップレット及び中性粒子は、輸送管の傾斜及び屈曲によりその進路が輸送管内壁で妨げられると、この内壁に衝突して付着し、一方、輸送管の傾斜及び屈曲形状に合わせて誘導されて移動するイオン化粒子は、輸送管の内壁に衝突することなく成膜室に達する。ここで、輸送管の傾斜及び屈曲形状は、成膜室に所定量のドロップレット及び中性粒子が供給されるように適宜設定されているので、かかる構成によれば、特別な構成を要することなく簡単な構成により、ドロップレット及び中性粒子の量の調整を行うことができる。
前記輸送管は絞り構造を有し、前記絞り構造が前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造をさらに形成してもよい。
かかる構成では、前述と同様に輸送管におけるイオン化粒子とドロップレット及び中性粒子との移動方向の違いを利用し、絞り構造によって一部のドロップレット及び中性粒子の進路を遮断してこれを除去することにより、イオン化粒子と前記所定量のドロップレット及び中性粒子とを選択的に成膜室へ供給することができる。それにより、ドロップレット及び中性粒子の量を調整することが可能となる。かかる構成によれば、輸送管の傾斜配置や屈曲による分離だけでなく、絞り構造によってもドロップレット及び中性粒子の分離を行うことができるため、分離効率を保持しつつ輸送管の傾斜や屈曲を抑えることが可能となる。このように輸送管の傾斜や屈曲を抑えることにより、成膜室への蒸発粒子の供給効率を向上させることが可能となるため、より成膜速度の向上が図られる。
前記輸送管が、その両端部に取り付けられた接続部材により、前記アーク蒸発室及び前記成膜室に脱着自在に構成されてもよい。また、前記輸送管の前記成膜室側の端部に、前記輸送管よりも内径が小さい前記接続部材である絞り接続部材が取り付けられ、前記絞り接続部材の本体は、前記成膜室に向かって断面が大きくなるテーパ形状を有し、前記絞り接続部材の本体の前記テーパ状の外周面が、内側に折り返された前記輸送管の端部によって覆われてもよい。
かかる構成によれば、絞り接続部材の本体のテーパ状の外周面が、輸送管によって覆われているため、この絞り部材の外周面に衝突したドロップレット及び中性粒子は、当該外周面を多う輸送管の折り返し端部に付着する。したがって、絞り接続部材にドロップレット及び中性粒子が直接付着するのを防止することが可能となる。特に、かかる構成では、ドロップレット及び中性粒子が付着した輸送管を交換すれば、付着したドロップレット及び中性粒子の除去を容易に行うことができる。このため、付着ドロップレット及び中性粒子による輸送管の閉塞や当該ドロップレット及び中性粒子の膜への混入等を防止することができる。したがって、安定した成膜が実現可能となる。
前記成膜室がさらに前記ドロップレット・中性粒子量調整構造を有し、前記成膜室の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記成膜室における前記イオン化粒子と前記ドロップレット及び前記中性粒子との移動方向の違いに基づき、前記所定量のドロップレット及び中性粒子と前記イオン化粒子とが供給される領域に前記基板が配置されるように前記基板の位置を調節する基板調節構造であってもよい。
かかる構成では、輸送管の場合と同様に、成膜室におけるイオン化粒子とドロップレットとの移動方向の違いを利用し、イオン化粒子と前記所定量のドロップレット及び中性粒子とが供給される成膜室の領域に基板を配置する。それによって、成膜室において、蒸発粒子中からドロップレット及び中性粒子の一部を分離し、ドロップレット及び中性粒子の量を調整することが可能となる。かかる構成によれば、輸送管だけでなく、成膜室においてもドロップレット及び中性粒子の分離を行うことができるため、輸送管の傾斜や屈曲を抑えることが可能となる。そして、輸送管の傾斜や屈曲を抑えることにより、成膜室への蒸発粒子の供給率を向上させることが可能となるため、より成膜速度の向上が図られる。
上記の成膜装置及び成膜方法は、Ti、Au、及びCuからなる第1の膜形成材料群から選択される膜形成材料を用いた成膜と、Al、及びZnからなる第2の膜形成材料群から選択される膜形成材料を用いた成膜とに少なくとも用いられてもよい。
発生するドロップレット及び中性粒子の性状(発生量、粒子の質量等)は、膜形成材料の種類によって異なり、例えば、AlやZnを膜形成材料として用いた場合には、発生するドロップレットを含む中性粒子の量が多く、一方、例えば、TiやAuを膜形成材料として用いた場合には、発生するドロップレットを含む中性粒子の量が少ない。そこで、本発明に係る成膜装置及び成膜方法では、アーク蒸発室と成膜室との相対配置を前記相対配置調節構造により調節して輸送管の傾斜及び屈曲を調整するか、又は、成膜室の基板調節構造により基板の位置を調節することによって、膜形成材料に応じて、輸送管や成膜室におけるドロップレット及び中性粒子の分離量を調整する。それにより、各膜形成材料に応じて、それぞれ成膜に適した所定量のドロップレット及び中性粒子を用いて成膜を行うことが可能となる。したがって、かかる構成によれば、種々の膜形成材料に適用可能であり、かつ、各材料において適宜良好な成膜を行うことが可能な成膜装置及び成膜方法を実現することが可能となる。
本発明は、以上に説明したような形態で実施され、以下のような効果を奏する。すなわち、本発明の成膜装置及び成膜方法によれば、アーク蒸発室で発生した蒸発粒子のうち、荷電粒子だけでなく、所定量に調整されたドロップレット及び中性粒子も成膜に用いるため、成膜に有効に利用される蒸発粒子の利用率が増加する。このため、荷電粒子のみを用いて成膜を行う場合に比べて、成膜速度の向上を図ることが可能となる。また、ここでは、ドロップレット及び中性粒子が所定量、すなわち、十分な膜質を実現しつつ成膜速度の向上を図ることが可能な量に調整されているため、ドロップレット及び中性粒子が含まれても、十分な膜質の成膜が行われる。さらに、膜形成材料の種類に応じてドロップレットの除去量を適宜調整可能な構成を実現できるため、種々の膜形成材料を用いた成膜に適用可能であり、かつ、各材料において良好な成膜を行うことが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態の構成に限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であることは勿論である。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る成膜装置の構成を示す模式図である。また、図2は、図1の成膜装置の成膜時における蒸発粒子の輸送工程を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態の成膜装置は、アーク蒸発室1と、蒸発粒子の輸送経路たるプラズマダクト3と、基板5に成膜を行う成膜室4とを主たる構成要素として含む。アーク蒸発室1はプラズマダクト3を介して成膜室4に接続されており、これらの主たる構成要素は、各要素が連通しかつ真空状態を実現可能であるように組み立てられている。
アーク蒸発室1は、陰極2Aと、これに対向配置されたリング状の陽極2Bとを含み、陰極2A及び陽極2Bによってアーク蒸発源2が構成される。このアーク蒸発源2は、アーク電源(図示せず)に接続されている。陰極2Aは膜形成材料から構成されており、よって、陰極2Aがターゲットに相当する。なお、ここでは陰極2Aがターゲットを兼ねる場合について説明するが、陰極2Aの表面に、膜形成材料からなるターゲットを別に配設する構成も可能である。また、ここでは陽極2Bがリング状の場合について説明するが、トーラス状等の他の形状のものでもよい。
ターゲットたる陰極2Aの構成材料は、導電性を有する固体なら特に限定されず、金属単体、合金、無機単体、無機化合物等が用いられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いてもよい。例えば、Ti、Cu、Al、Zn、Au等の金属単体から構成されてもよい。ここでは、Tiから構成される陰極2Aを用いている。
ここで、以下の説明においては、アーク蒸発室1における陰極構成材料であるTiの蒸発によって得られる粒子を、蒸発粒子と呼ぶ。この蒸発粒子は、主に、イオン化した陰極構成材料粒子であるイオン化粒子と、電子と、陰極構成材料の中性粒子と、陰極構成材料が細片状になったものや液状となったもの(以下、これをドロップレットと呼ぶ)とを含んでいる。ここでは、従来技術において前述したように、電荷を帯びているイオン化粒子及び電子をまとめて荷電粒子と呼ぶ。この荷電粒子はプラズマを形成する。
陽極2Bの構成材料は、200℃程度の温度に耐えられ、かつ、導電性を有する固体ならば特に限定されず、金属単体、合金、無機単体、無機化合物等が用いられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いてもよい。例えば、Cuやステンレスから構成されてもよく、ここでは、Cuから構成される陽極2Bを用いている。
アーク蒸発室1の外周には、膜形成材料の蒸発により発生した荷電粒子を蒸発粒子出口6’からプラズマダクト3に導く誘導磁界を発生させる磁界発生装置9Aが配置されている。磁界発生装置9Aは、例えば、コイルからなるリング状(図中においてはリングの断面を示す)の電磁石が用いられており、この電磁石が、アーク蒸発室1の外周を取り囲むように配置されている。
成膜室4には、成膜対象たる基板5を回転可能に支持するための基板支持構造15が配置されている。そして、後述するプラズマダクト3のダクト入口6とダクト出口7とが鉛直方向において相対的にずれて配置されるように、ダクト入口6が接続されるアーク蒸発室1の蒸発粒子出口6’と、ダクト出口7が接続される成膜室4の蒸発粒子入口7’とが、鉛直方向において相対的に異なる高さで配置されている。アーク蒸発室1の蒸発粒子出口7’の外周部には、荷電粒子をプラズマダクト3に導く誘導磁界を発生させる磁界発生装置9Cが配設されている。また、成膜室4の蒸発粒子入口7’の外周部には、荷電粒子を成膜室4に導く誘導磁界を発生させる磁界発生装置9C’が配設されている。磁界発生装置9C,9C’としては、例えば磁界発生装置9Aと同様のリング状の電磁石が用いられており、この電磁石が、蒸発粒子出口6’及び蒸発粒子入口7’を取り囲むように配置されている。
プラズマダクト3は、絶縁材料からなる硬質の円筒管から構成される。プラズマダクト3の一開口端がアーク蒸発室1の蒸発粒子出口6’に接続され、他の開口端が成膜室4の蒸発粒子入口7’に接続されている。以下、アーク蒸発室1に接続されたプラズマダクト3の開口端をダクト入口6と呼ぶ。また、成膜室4に接続されたプラズマダクト3の開口端には、プラズマダクト3の中心軸Cと同軸上にオリフィス8が挿入されている。オリフィス8によって径が絞られた開口端をダクト出口7と呼ぶ。
成膜装置では、前述のようにアーク蒸発室1の蒸発粒子出口6’と成膜室4の蒸発粒子入口7’とが異なる高さで配置されているため、両者を連結するプラズマダクト3は、水平面に対して傾斜して配置される。それゆえ、プラズマダクト3のダクト入口6とダクト出口7とは、鉛直方向において相対的にずれた高さで配置され、ダクト入口6を含む面の法線方向に投影した場合の投影領域は、ダクト出口7とは完全には一致しない。
ここで、水平面に対するプラズマダクト3の傾斜角度、及び、オリフィス8の径は、後述するように、成膜室4に所定量のドロップレット及び中性粒子が供給される構成を実現可能とするように設定されている。この所定量とは、十分な膜質と高い成膜速度が両立された成膜を行うのに適したドロップレット及び中性粒子の量であり、具体的には、所望の成膜速度(具体的には、最大の成膜速度)を実現可能とするドロップレット及び中性粒子の最小量である。
プラズマダクト3の外周部には、ダクト内を荷電粒子が斜行して進行するように誘導磁界を発生させる磁界発生装置9Bが配置されている。磁界発生装置9Bとしては、例えば、磁界発生装置9Aと同様のリング状の電磁石が用いられており、この電磁石にプラズマダクト3が嵌め込まれている。
次に、成膜装置の成膜動作について説明する。
成膜時には、アーク蒸発室1、プラズマダクト3及び成膜室4内を所定の真空状態とし、アーク蒸発室1のアーク蒸発源2において、アーク放電を行う。それにより、陰極2Aの構成材料(Ti)が蒸発して蒸発粒子が生じる。前述のように、蒸発粒子は、荷電粒子(イオン化粒子及び電子)と、ドロップレット及び中性粒子とを含んでいる。そして、アーク放電により発生した蒸発粒子のうち、リング状の陽極2Bの内孔を通過したものがダクト入口6からプラズマダクト3内に入る。この場合、蒸発粒子中の荷電粒子は、磁界発生装置9A,9Cにより発生した磁界(図示せず)により、磁界発生装置9A,9Cの中心軸に沿って進むように誘導されて効率よくプラズマダクト3に導入される。一方、ドロップレット及び中性粒子は、前述の磁界の影響は受けず、よって、進行方向を遮られることなく陽極2Bの内孔を通過して蒸発粒子出口6’に達したドロップレット及び中性粒子のみが、プラズマダクト3に導入される。このようにしてプラズマダクト3に導入された荷電粒子は、ビーム状の流れ(以下、これを荷電粒子ビーム51と呼ぶ)を形成してダクト内を移動する。また、ドロップレット及び中性粒子は、ビーム状の流れ(以下、これをドロップレット・中性粒子ビーム52と呼ぶ)を形成してダクト内を移動する。
図2に示すように、ダクト内を移動する蒸発粒子のうち、荷電粒子(荷電粒子ビーム51)は、磁界発生装置9Bにより発生した磁界50により誘導されて斜行される。詳細には、ダクト内において、荷電粒子のうちの電子がまず磁界50に引っ張られるとともにこの磁界50にとらえられ、続いて、電子に引っ張られてイオン化粒子が移動する。ここでは、リング状の磁界発生装置9Bがプラズマダクト3を取り囲んで配置されているため、ダクトと同軸を有する磁界50がダクトを囲むように発生し、荷電粒子はこの磁界50に誘導されて移動する。それにより、ダクトと同軸、すなわち中心軸Cを有する荷電粒子ビーム51が形成される。したがって、荷電粒子は、プラズマダクト3の傾斜に合わせて常にダクト内を中心軸Cに沿って移動し、その後、オリフィス8の内孔を通過してダクト出口7から成膜室4に入る。
一方、ドロップレット及び中性粒子は、磁界50の影響を受けず、よって、ドロップレット・中性粒子ビーム52は、アーク蒸発室1からプラズマダクト3に導入された際の導入方向に従い、ダクト内をこの方向に沿って直進する。この場合には、ドロップレット及び中性粒子ビーム52が、ダクト内を水平方向に沿って直進する。ここで、前述のように、プラズマダクト3は水平面に対して傾斜して配置されていることから、ドロップレット・中性粒子ビーム52の一部の領域は、ダクト内壁によって進路が遮られる。このように進路が妨げられたドロップレット・中性粒子ビーム52の領域では、ドロップレット及び中性粒子がダクト内壁に衝突して付着する。したがって、ダクト内壁に衝突することなくダクト内を移動したドロップレット及び中性粒子のみが、ダクト出口7に到達する。また、ダクト出口7にはオリフィス8が配設されているため、進路がオリフィス8の本体によって遮られたドロップレット及び中性粒子は、オリフィス8の本体に衝突して付着する。そして、オリフィス8の内孔を通過したドロップレット及び中性粒子のみが成膜室4に導入される。
このように、本実施の形態では、プラズマダクト3の傾斜とオリフィス8による絞りとを用いて、ダクト内におけるドロップレット及び中性粒子と荷電粒子との移動性の相異に基づき、荷電粒子からドロップレット及び中性粒子の一部を分離して除去することができる。ここで、前述のように、プラズマダクト3の傾斜及びオリフィス8の径は、十分な膜質を得つつ高い成膜速度を実現可能な成膜を行うのに適した量(すなわち所定量)のドロップレット及び中性粒子を成膜室4に供給できるように設定されているため、上記のようにプラズマダクト3とオリフィス8とを用いてドロップレット及び中性粒子の除去を行うことにより、成膜室4には、所定量に調整されたドロップレット及び中性粒子が供給される。
上記のようにして成膜室4に供給された荷電粒子、ドロップレット、及び、中性粒子は、成膜室4に配置された基板5の表面に衝突して付着する。それにより、基板5の表面に、陰極構成材料(Ti)から構成される膜が形成される。ここで、成膜室4には、前述の所定量のドロップレット及び中性粒子が供給されるため、このドロップレット及び中性粒子を荷電粒子とともに成膜に利用することにより、荷電粒子のみを用いて成膜を行う場合に比べて、成膜速度の向上を図ることができ、かつ、ドロップレット及び中性粒子を含んでいても十分な膜質を実現することができる。
以上のように、本実施の形態の成膜装置では、プラズマダクト3の傾斜とオリフィス8による絞りとにより、ドロップレット及び中性粒子の除去量を調整することができる。それゆえ、適切な量のドロップレット及び中性粒子を成膜に有効に利用することが可能となり、その結果、膜質を保持しつつ成膜速度の向上を図ることが可能となる。
なお、上記においては、傾斜配置されたプラズマダクト3のダクト出口7にオリフィス8が配置されているが、プラズマダクト3の傾斜のみにより除去を行ってドロップレット及び中性粒子の成膜室4への供給量を調整する構成も可能である。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る成膜装置の構成を示す模式図である。本実施の形態の成膜装置は、実施の形態1の成膜装置と同様の構成を有するが、以下の点が、実施の形態1と異なっている。
すなわち、本実施の形態では、図3に示すように、固定式のプラズマダクト3の代わりに、可変式のプラズマダクト3’が用いられている。具体的には、プラズマダクト3’は、屈曲自在に形成されたポリイミドからなる蛇腹状のチューブで構成され、チューブ内壁の表面は凹凸形状を有している。ここでは、異なる高さに配置されたアーク蒸発室1の蒸発粒子出口6’と成膜室4の蒸発粒子入口7’とを連結するプラズマダクト3’が、鉛直方向に屈曲して緩やかなZ字状をなしている。
プラズマダクト3’の両端部には、それぞれコネクタ21が装着されている。このコネクタ21により、アーク蒸発室1及び成膜室4へのプラズマダクト3’の脱着が自在になっている。プラズマダクト3’のダクト出口7側のコネクタ21は、ダクト出口7の径を絞るように、内孔がプラズマダクト3’の内径よりも小さくなっており、よって、オリフィスとして機能する。そこで、以下においては、このような絞り構造を有するダクト出口7側のコネクタ21を、オリフィス8’と呼ぶ。
荷電粒子ビーム51及びドロップレット・中性粒子ビーム52に対面するオリフィス8’の本体部は、ダクト出口7側に向かって断面が大きくなるテーパ形状を有している。そして、プラズマダクト3’の端部が内側に折り返された部分(以下、折り返し部20と呼ぶ)が、このテーパ形状のオリフィス8’の外周に当接してプラズマダクト3’が取り付けられている。オリフィス8’の内孔は、実施の形態1のオリフィス8と同様、前記所定量のドロップレット及び中性粒子を成膜室4に供給できるように径が設定されている。そして、本実施の形態では、後述するように、プラズマダクト3’の屈曲形状とオリフィス8’とにより、成膜室4に供給されるドロップレット及び中性粒子の量が調整される。
プラズマダクト3’の外周には、プラズマダクト3’の形状の変化に合わせて配置が変化する磁界発生装置9Bが設けられている。例えば、磁界発生装置9Bは、プラズマダクト3’を取り囲む複数のリング状の電磁石が、所定の間隔で分散配置されて構成される。このような磁界発生装置9Bは、プラズマダクト3’の形状変化に合わせて配置が変化するので、プラズマダクト3’と磁界発生装置9Bとの相対的な配置は一定である。それゆえ、プラズマダクト3’の形状変化に関わらず、磁界発生装置9Bにより、常にダクトと同軸の磁界(図示せず)が発生する。したがって、プラズマダクト3’の内部には、ダクトの屈曲形状に関わらず常にダクトの中心軸Cに沿う荷電粒子ビーム51が形成される。
本実施の形態では、アーク蒸発室1で発生しプラズマダクト3’に導入された蒸発粒子のうち、荷電粒子が、実施の形態1の場合と同様に上記磁界により誘導される。それにより、ダクト内には、プラズマダクト3’の屈曲形状に関わらず、常にダクトの中心軸Cに沿った荷電粒子ビーム51が形成される。したがって、荷電粒子がプラズマダクト3’の内壁に衝突することはない。そして、ダクト出口7に達した荷電粒子は、オリフィス8’の本体に衝突することなく、その内孔を通過して成膜室4に導入される。
一方、蒸発粒子のうちのドロップレット及び中性粒子は、上記磁界の作用を受けず、このため、アーク蒸発室1からプラズマダクト3’に導入された際の進行方向を保ってダクト内を直進し、ドロップレット・中性粒子ビーム52を形成する。この場合には、水平方向にドロップレット・中性粒子ビーム52が形成される。ここで、前述のように、プラズマダクト3’は屈曲形状を有していることから、ドロップレット・中性粒子ビーム52の一部の領域は、ダクト内壁によって進路が遮られる。このように進路が遮られたドロップレット・中性粒子ビーム52の領域では、ドロップレット及び中性粒子がダクト内壁に衝突して付着する。特に、ここでは、前述のようにプラズマダクト3’の内壁表面が凹凸形状を有するため、ドロップレット及び中性粒子がさらにダクト内壁に衝突しやすくなっている。また、ダクト内を水平方行に直進してダクト出口7に達したドロップレット及び中性粒子のうち、進路がオリフィス8’の本体部によって遮られたものは、オリフィス8’の本体部と衝突する。ここで、ドロップレット及び中性粒子が衝突するオリフィス8’の本体部は、プラズマダクト3’の折り返し部20で覆われているため、衝突したドロップレット及び中性粒子は、オリフィス8’には直接付着せず、プラズマダクト3’の折り返し部20に付着する。一方、オリフィス8’の本体部に衝突することなくその内孔を通過したドロップレット及び中性粒子は、成膜室4に導入される。
上記のように、本実施の形態では、プラズマダクト3’の屈曲形状とオリフィス8’による絞りとを用いることにより、ドロップレット及び中性粒子と荷電粒子との移動特性の相異に基づき、荷電粒子からドロップレット及び中性粒子の一部を分離して除去する。そして、成膜室4において、供給された荷電粒子、ドロップレット及び中性粒子を用いて成膜が行われる。
ここで、本実施の形態では、実施の形態1と同様、成膜室4に供給されるドロップレット及び中性粒子が前記所定量となるように、プラズマダクト3’の屈曲及びオリフィス8’の径が適宜設定されている。したがって、成膜室4に供給されるドロップレット及び中性粒子の量を、所定量に調整することが可能となる。なお、プラズマダクト3’の屈曲状態は、実施の形態1の場合と同様、アーク蒸発室1と成膜室4との相対配置に基づく蒸発粒子出口6’及び蒸発粒子入口7’の配置により設定される。
本実施の形態の成膜装置によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。そして、さらに、屈曲したプラズマダクト3’を用いることによって、ドロップレット及び中性粒子をよりダクト内壁に衝突させやすい構造を実現でき、それゆえ、実施の形態1のようにダクトの傾斜を利用する場合に比べて、より効率よくドロップレット及び中性粒子を除去することが可能となる。特に、プラズマダクト3’では、ダクト内壁の表面が凹凸形状を有するため、より衝突しやすい構造が実現されさらに除去効率が向上する。したがって、アーク蒸発室1と成膜室4との高低差を大きくしなくても、また、プラズマダクト3’における蒸発粒子の輸送距離を短くしても、ドロップレット及び中性粒子の除去を効率よく行うことができる。それゆえ、成膜に利用される蒸発粒子(具体的には、成膜に利用される荷電粒子と所定量のドロップレット及び中性粒子とであり、以下においてはこれらを成膜粒子と総称する)の成膜室4への供給効率を向上させることができ、結果として、成膜速度の向上がさらに図られる。
なお、上記においては、プラズマダクト3’の屈曲形状だけではなくオリフィス8’によってもドロップレット及び中性粒子の除去を行っているが、オリフィス8’を配設せず、ダクトの形状のみによって前記除去を行う構成であってもよい。また、上記のようにオリフィス8’を配設すると、オリフィス8’によっても除去を行うことができるため、オリフィス8’を配設しない場合に比べてダクトの屈曲を小さくすることができる。ここで、プラズマダクト3’の屈曲形状と成膜速度との関係では、成膜粒子の成膜室4への供給効率の点から、プラズマダクト3’の屈曲が小さいほど、また、ダクトの長さが短い程、成膜速度が向上するので好ましい。したがって、オリフィス8’を設けた本実施の形態では、オリフィス8’を設けない場合よりも、さらに成膜速度の向上が図られる。
本実施の形態の成膜装置では、除去されたドロップレット及び中性粒子が、プラズマダクト3’の内壁及び折り返し部20に付着する。この付着物の量が多くなると、粒子の移動の妨げとなったり、不純物として膜に混入したりするおそれがある。そこで、本実施の形態では、ダクト内に付着物が蓄積されたら、プラズマダクト3’の交換を行う。この場合、プラズマダクト3’は、コネクタ21によってアーク蒸発室1及び成膜室4に容易に脱着可能に構成されているため、容易にプラズマダクト3’の交換が可能である。そして、プラズマダクト3’を交換することにより、良好な成膜を安定して行うことが可能となる。
また、上記のようにポリイミドから構成されるプラズマダクト3’では、ポリイミドと金属との密着性が弱いことから、付着物を回収して再利用することも可能となる。また、ポリイミドから構成されるプラズマダクト3’は、良好な耐熱性を有するため、成膜時の高温下でも高い耐久性を維持できる。特に、プラズマダクト3’が屈曲形状を有しかつその内壁表面が凹凸形状を有する本実施の形態では、ドロップレット及び中性粒子とダクト内壁との衝突頻度が高く、この衝突による発熱量が多いので、耐熱性の高いポリイミドから構成されるプラズマダクト3’を用いるのが有効である。
次に、以下の実施の形態3及び実施の形態4においては、複数種類の膜形成材料に適用可能であり、かつ、各材料において適切な成膜を行うことが可能な成膜装置について説明する。
膜形成材料の蒸発粒子を用いた成膜では、膜形成材料の種類に応じて、発生する蒸発粒子中のドロップレット及び中性粒子の性状、具体的にはその発生量や個々の粒子の重さや大きさ等、がそれぞれ異なる。例えば、膜形成材料としてTi、Au、Cuを用いた場合には、発生するドロップレットの量は少ない。一方、Al、Zn等を用いた場合には、発生するドロップレットの量が多い。それゆえ、例えば、上記実施の形態2において、Tiを膜形成材料とする場合の装置構成をそのままAlを膜形成材料とする場合に適用すると、Alの方がTiよりもドロップレットの発生量が多いため、Alを用いた場合には成膜室4に導入されるドロップレットの量が多くなる。このため、この場合には、十分な膜質の膜が得られないおそれがある。そこで、実施の形態3及び実施の形態4では、かかる点に鑑み、各膜形成材料におけるドロップレット及び中性粒子の性状に対応し、各材料において、成膜室4に供給されるドロップレット及び中性粒子を前記所定量に適宜調整することが可能な成膜装置について説明する。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
図4に示すように、本実施の形態の成膜装置は、実施の形態2の装置と同様の構成を有するが、アーク蒸発室1の高さ調節を行う高さ調節装置10が配設された点が、実施の形態2とは異なっている。すなわち、本実施の形態の成膜装置では、アーク蒸発室1の下方に、高さ調節装置10が配設されている。例えば、高さ調節装置10は、エアシリンダ10Aと、エアシリンダ10Aへの空気の供給及び排気によって昇降するピストンロッド10Bと、ピストンロッド10Bの先端に取り付けられたアーク蒸発室支持部材10Cとを含んで構成され、アーク蒸発室支持部材10Cにアーク蒸発室1の底面が取り付けられている。
かかる構成の高さ調節装置10では、エアシリンダ10Aのピストンロッド10Bが上昇(前進)すると、ピストンロッド10Bの動作に応じてアーク蒸発室1が上昇する。また、エアシリンダ10Aのピストンロッド10Bが下降(後退)すると、ピストンロッド10Bの動作に応じてアーク蒸発室1が下降する。本実施の形態では、このようなアーク蒸発室1の昇降動作により、アーク蒸発室1と成膜室4との相対配置(具体的には両者の高低差)を調節する。それにより、蒸発粒子出口6’と蒸発粒子入口7’の相対配置を調節してプラズマダクト3’の屈曲形状を調整する。ここで、実施の形態2において前述したように、プラズマダクト3’は、ポリイミドからなる可変式のチューブから構成されているため、このようなアーク蒸発室1の高さ調節によって、プラズマダクト3’は容易に形状が変化する。そして、このようにプラズマダクト3’の屈曲形状を変化させることにより、成膜室4に供給されるドロップレットの量を調整することが可能となる。
例えば、ドロップレットの発生量が少ないTiを膜形成材料として用いる場合、成膜に適した量(すなわち所定量)のドロップレット及び中性粒子を成膜室4に供給するには、後述のAlの場合に比べて、プラズマダクト3’及びオリフィス8’によって除去するドロップレットの量が少なくてよい。したがって、この場合には、プラズマダクト3’の屈曲を小さくする。このような屈曲の小さいプラズマダクト3’の形状は、アーク蒸発室1と成膜室4との高低差が小さくなるように高さ調節装置10を制御してアーク蒸発室1の高さ調節を行うことにより形成される。
一方、例えば、ドロップレットの発生量が多いAlを膜形成材料として用いる場合、成膜に適した量(すなわち所定量)のドロップレット及び中性粒子を成膜室4に供給するには、Tiの場合に比べて、プラズマダクト3’及びオリフィス8によって除去するドロップレットの量を多くする必要がある。したがって、この場合には、プラズマダクト3’の屈曲を、上記Tiの場合に比べて大きくして除去量を多くする。このような屈曲の大きいプラズマダクト3’の形状は、アーク蒸発室1と成膜室4との高低差が大きくなるように高さ調節装置10を制御してアーク蒸発室1の高さ調節を行うことにより形成される。
上記のようにアーク蒸発室1の高さを調節してプラズマダクト3’の屈曲形状を調節すると、プラズマダクト3’の外周に配置された磁界発生装置9Bは、プラズマダクト3’の形状変化に合わせて配置が変化する。このため、ダクト内には、実施の形態2において前述したように、ダクトの形状変化にかかわらず、常に、ダクトの中心軸Cと同軸の磁界が発生する。このため、荷電粒子は、この磁界に誘導され、常に中心軸Cに沿ってダクト内を移動する。したがって、プラズマダクト3’の屈曲形状を変化させても、成膜室4に供給される荷電粒子の量は影響を受けず、ドロップレット及び中性粒子の量のみを調整することができる。
以上のように、本実施の形態の成膜装置では、膜形成材料の種類に応じてプラズマダクト3’の屈曲の程度を調節することにより、各材料において、成膜に適した所定量のドロップレットを成膜室4に供給することが可能となる。したがって、このような成膜装置は、複数種類の膜形成材料に適用可能であり、かつ、いずれの材料においても、良好な成膜を行うことが可能となる。
上記においては、アーク蒸発室1の高さを調節してプラズマダクト3’の屈曲形状を変化させる場合について説明したが、本実施の形態の変形例として、実施の形態1のようにプラズマダクト3を傾斜させた構成において、アーク蒸発室1の高さを調節してもよい。また、本実施の形態及びその変形例においては、アーク蒸発室1と成膜室4との高低差を相対的に変化させるのであれば、アーク蒸発室1及び成膜室4のいずれを動かしてもよい。また、上記においては、アーク蒸発室1の高さ調節装置10が空気圧をピストンロッド10Bの駆動源とする場合について説明したが、空気圧以外に、例えば、ピストンロッド10Bが油圧等によって駆動されてもよく、また、電動でピストンロッド10Bが駆動されてもよい。
さらに、上記においては、アーク蒸発室1の位置を鉛直方向に変化させる場合について説明したが、本実施の形態のさらに他の変形例として、成膜室4に対するアーク蒸発室1の相対的な角度を変化させることによりドロップレット及び中性粒子の除去量を調整する構成であってもよい。図5は、かかる変形例における成膜装置の構成を示す模式図である。図5に示すように、本例の成膜装置では、成膜室4が固定された状態で、アーク蒸発室1が高さ調節装置10によって鉛直方向上下に移動するとともに、回転調節装置11によって、アーク蒸発室1が仮想軸Rを回転軸として時計回り及び反対回りに回転自在に構成されている。それにより、アーク蒸発室1の成膜室4に対する相対的な高さが変化するとともに、アーク蒸発室1の成膜室4に対する相対的な角度が変化する。このような回転調節装置11は、例えば、空気圧、油圧、電気等により回転駆動するように構成されている。
高さ調節装置10及び回転調節装置11は、各々別個独立に制御され、それぞれ単独で、又は、両方同時に駆動する。例えば、高さ調節装置10のみを駆動させてアーク蒸発室1を鉛直方向上向きに移動させると、装置全体がZ字状となり、また、アーク蒸発室1を鉛直下向きに移動させると、装置全体がS字状となる。さらに、高さ調節装置10と回転調節装置11とを同時に駆動させ、アーク蒸発室1を鉛直方向下向きに移動させるとともに図中の矢印aの方向に回転させると、装置全体が、上に凸のr字状となる。また、アーク蒸発室1を鉛直方向上向きに移動させるとともに図中の矢印bの方向に回転させると、装置全体が、下に凸のr字状となる。このようにアーク蒸発室1の位置を変化させることにより、上記の実施の形態で前述した効果と同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る成膜装置の構成を示す模式図である。図6に示すように、本発明の実施の形態4に係る成膜装置は、実施の形態2の成膜装置と同様の構成を有するが、成膜室4において基板5の位置を変えることができる点が、実施の形態2とは異なっている。すなわち、本実施の形態の成膜装置では、基板支持構造15が、成膜室4において基板5を鉛直方向上下自在に移動させる基板調節構造12を含んで構成されている。具体的には、ここでは基板調節構造12がアクチュエータから構成され、アクチュエータ12は、成膜室4の外部に設けられたエアシリンダ(図示せず)に接続されている。
本実施の形態の成膜装置において、例えば、ドロップレットの発生量が多いAlを膜形成材料に用いる場合、前述のように、ドロップレットの発生量が少ないTiを用いる場合に比べて、ドロップレットの除去量を多くする必要がある。ここで、ドロップレットの除去量を増加させるためには、プラズマダクト3’の屈曲を大きくすればよいが、屈曲の増加に伴って蒸発粒子の輸送経路が複雑となるため、プラズマダクト3’の屈曲をある程度以上大きくすると、成膜粒子の成膜室4への供給率がかえって低下してしまい、その結果、成膜速度の低下を招く。そこで、本実施の形態では、プラズマダクト3’の屈曲を所定の範囲に抑えるとともに、このような屈曲の抑制によりプラズマダクト3’で除去されずに成膜室4に供給された余分なドロップレットを、基板5の位置を調節することによって除去する。以下、詳細を説明する。
プラズマダクト3’の屈曲及びオリフィス8’による絞りを用いたドロップレットの除去については、実施の形態2と同様である。ここで、例えば、ドロップレットの発生量が多いAlを膜形成材料とした場合、本実施の形態では、成膜室4への成膜粒子の供給率を低下させないようにプラズマダクト3’の屈曲が所定の範囲に抑えられているため、プラズマダクト3’の屈曲形状だけではドロップレットの除去を十分に行うことができない。このため、所定量(すなわち成膜に適した量)よりも多くのドロップレットが成膜室4に供給される。
ここで、成膜室4に供給された成膜粒子では、磁界発生装置9Bによる誘導磁界によりプラズマダクト3’の中心軸Cに沿ってダクト内を進んできた荷電粒子と、ダクト入口6における導入方向に従ってダクト内をこの方向に直進してきたドロップレットとで、成膜室4における移動性が異なっており、それゆえ、成膜室4における分布状態が、ドロップレットと荷電粒子とではそれぞれ異なっている。本実施の形態では、このようなドロップレット及び荷電粒子の成膜室4における分布状態の相異を利用する。すなわち、成膜室4において、荷電粒子及び前記所定量のドロップレットが照射され、かつ、前記所定量よりも過剰なドロップレットが基板照射範囲外に来る位置に、基板5を配置する。基板5の位置調節は、アクチュエータ12を用いて基板5を鉛直方向上向き又は下向きに移動させることにより行う。このような基板位置の調節により、成膜室4において、余分なドロップレットを分離してドロップレットの量を調整し、所定量のドロップレットを用いて成膜を行うことが可能となる。
上記のように、本実施の形態の装置では、基板5の位置を変化させることにより成膜室4においてさらにドロップレットの分離を行うことができるため、プラズマダクト3’の屈曲を抑えた構成であっても、ドロップレットを十分に除去することができる。それゆえ、プラズマダクト3’の屈曲の影響を受けて成膜速度が低下するのを防止することができ、かつ、ドロップレットの量の調整を適切に行うことが可能となる。したがって、十分な膜質を実現しつつ成膜速度の向上を図ることが可能となる。
以上のように、本実施の形態の成膜装置では、膜形成材料の種類に応じて基板5の位置を調節することにより、各材料において、適宜所定量のドロップレットを用いて成膜を行うことが可能となる。したがって、複数種類の膜形成材料に適用可能であり、かつ、いずれの材料においても良好な成膜を行うことが可能な成膜装置が得られる。
なお、上記においては基板5を成膜室4内において鉛直方向に移動させる場合について説明したが、基板5の移動方向はこれに限定されるものではない。ドロップレットの除去を適切に行うことができる方向であれば、これ以外の方向、例えば、水平方向等に移動させてもよい。
上記の実施の形態1〜4においては、成膜室4とアーク蒸発室1とを鉛直方向にずらして配置する場合について説明したが、両者1,4をこれ以外の方向、例えば水平方向にずらして配置してもよい。また、アーク蒸発室1と成膜室4との相対位置が変化するのであれば、アーク蒸発室1及び成膜室4のいずれを動かしてもよい。また、実施の形態1〜4においては、アーク蒸発室1が成膜室4よりも高い位置に配置され、それにより、プラズマダクト3が右下がりの傾斜、及び、プラズマダクト3’がZ字形状を形成する場合について説明したが、例えば、アーク蒸発室1が成膜室4よりも低い位置に配置され、それにより、プラズマダクト3が右上がりの傾斜、及び、プラズマダクト3’がS字形状を形成する構成であってもよい。
また、実施の形態1〜4において、さらに、磁界発生装置9Bにより発生させる磁界の強さや、オリフィス8,8’の径を調整することによっても、ドロップレット及び中性粒子の量の調整を行うことができる。例えば、磁界の強さを調整してドロップレット及び中性粒子の除去量を増加させることにより、プラズマダクトの傾斜や屈曲を抑えつつ、ドロップレット及び中性粒子の除去量を増加させることが可能となる。
また、実施の形態1〜4において、磁界発生装置9A,9B,9C,9C’は、電磁石に限定されるものではなく、例えば、永久磁石であってもよい。また、これらの磁界発生装置9A,9B,9C,9C’の形状、配置位置、配置数等は、上記に限定されるものではなく、最適な成膜が実施可能であるように適宜設定するのが好ましい。さらに、荷電粒子を誘導する手段として、磁界発生装置ではなく電界発生装置を用い、磁界の代わりに電界を発生させて荷電粒子を誘導してもよい。
また、実施の形態1〜4においては、プラズマダクト3,3’の中心軸Cと同軸の磁界を発生させてこの中心軸Cに沿った荷電粒子ビーム51を形成する場合について説明したが、プラズマダクト3,3’の内壁に衝突しない流れを形成できるのであれば、荷電粒子ビーム51は必ずしも中心軸Cに沿って形成されなくてもよい。例えば、プラズマダクト3,3’の中心軸Cから偏心した軸(以下、偏心軸と呼ぶ)を有する磁界を発生させ、この磁界により、該偏心軸に沿った荷電粒子ビーム51を形成してもよい。この場合、偏心軸に沿って形成された荷電粒子ビーム51と衝突することがないように、オリフィス8,8’の内孔が配置される。
また、上記の実施の形態1〜4においては、成膜時に装置内を真空状態とする場合について説明したが、例えば、窒素、酸素、アルゴン、水素等のガスを供給しながら成膜を行ってもよい。
本発明の実施の形態1に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 図1の成膜装置のプラズマダクトにおける蒸発粒子の移動を説明するための図である。 本発明の実施の形態2に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態3に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態3の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の実施の形態4に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
符号の説明
1 アーク蒸発室
2 アーク蒸発源
3,3’プラズマダクト
4 成膜室
5 基板
6 ダクト入口
7 ダクト出口
8,8’オリフィス
9A,9B,9C,9C’荷電粒子誘導手段(磁界発生装置)
10 高さ調節装置
11 回転調節装置
12 基板調節構造
50 磁界

Claims (21)

  1. 内部でアーク放電により膜形成材料を蒸発させ、イオン化した前記膜形成材料であるイオン化粒子と、前記膜形成材料の中性粒子と、ドロップレットとを含む蒸発粒子を発生させるアーク蒸発室と、
    内部に配置される基板に前記蒸発粒子を堆積させて成膜が行われる成膜室と、
    前記アーク蒸発室と前記成膜室とを連結する輸送管とを備え、
    少なくとも前記輸送管が、前記イオン化粒子と所定量の前記ドロップレット及び前記中性粒子とを含む前記蒸発粒子を用いて前記成膜室において前記成膜が行われるように、前記輸送管内を移動する前記イオン化粒子から前記ドロップレット及び前記中性粒子の一部を分離、捕獲して前記ドロップレット及び前記中性粒子の量を調整するドロップレット・中性粒子量調整構造を有することを特徴とする成膜装置。
  2. 前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記輸送管における前記ドロップレット及び前記中性粒子の移動方向と前記輸送管における前記イオン化粒子の移動方向とを異なる方向とすることにより前記分離を行う請求項1記載の成膜装置。
  3. 前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記輸送管のアーク蒸発室接続口と成膜室接続口とを相対的に異なる位置に配置することによって形成される、前記アーク蒸発室接続口を含む面の法線に対する前記輸送管の傾斜配置と、前記イオン化粒子が前記輸送管の内壁に衝突することなく移動するように前記イオン化粒子を誘導する誘導手段と、を含む請求項2記載の成膜装置。
  4. 前記誘導手段は、前記輸送管と同軸の誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界によって、前記輸送管の中心軸に沿って前記イオン化粒子が移動する請求項3記載の成膜装置。
  5. 前記誘導手段は、前記輸送管の中心軸から偏心した軸を有する誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界によって、前記偏心した軸に沿って前記イオン化粒子が移動する請求項3記載の成膜装置。
  6. 前記アーク蒸発室及び前記成膜室の相対的な配置を調節する相対配置調節構造をさらに備え、
    前記輸送管の前記傾斜配置の傾斜が、前記相対配置調節構造による前記配置調節によって調整される請求項3〜5のいずれかに記載の成膜装置。
  7. 前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記輸送管の屈曲形状と、前記イオン化粒子が前記輸送管の内壁に衝突することなく移動するように前記イオン化粒子を誘導する誘導手段と、を含む請求項2記載の成膜装置。
  8. 前記誘導手段は、前記輸送管と同軸の誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界によって、前記輸送管の中心軸に沿って前記イオン化粒子が移動する請求項7記載の成膜装置。
  9. 前記誘導手段は、前記輸送管の中心軸から偏心した軸を有する誘導磁界を発生させる磁界発生装置であり、前記誘導磁界によって、前記偏心した軸に沿って前記イオン化粒子が移動する請求項7記載の成膜装置。
  10. 前記輸送管が、屈曲自在に構成された可変管である請求項7〜9のいずれかに記載の成膜装置。
  11. 前記アーク蒸発室及び前記成膜室の相対的な配置を調節する相対配置調節構造をさらに備え、
    前記可変管の屈曲形状が、前記相対配置調節部による前記配置調節によって調整される請求項10記載の成膜装置。
  12. 前記輸送管は絞り構造を有し、前記絞り構造が前記輸送管の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造をさらに形成する請求項1〜11のいずれかに記載の成膜装置。
  13. 前記輸送管が、その両端部に取り付けられた接続部材により、前記アーク蒸発室及び前記成膜室に脱着自在に構成された請求項1〜12のいずれかに記載の成膜装置。
  14. 前記輸送管の前記成膜室側の端部に、前記輸送管よりも内径が小さい前記接続部材である絞り接続部材が取り付けられ、
    前記絞り接続部材の本体は、前記成膜室に向かって断面が大きくなるテーパ形状を有し、前記絞り接続部材の本体の前記テーパ状の外周面が、内側に折り返された前記輸送管の端部によって覆われた請求項13記載の成膜装置。
  15. 前記成膜室がさらに前記ドロップレット・中性粒子量調整構造を有し、
    前記成膜室の前記ドロップレット・中性粒子量調整構造は、前記成膜室における前記イオン化粒子と前記ドロップレット及び前記中性粒子との移動方向の違いに基づき前記所定量のドロップレット及び前記中性粒子と前記イオン化粒子とが供給される領域に前記基板が配置されるように前記基板の位置を調節する基板調節構造である請求項記載1〜14のいずれかに記載の成膜装置。
  16. Ti、Au、及びCuからなる第1の膜形成材料群から選択される膜形成材料を用いた成膜と、Al及びZnからなる第2の膜形成材料群から選択される膜形成材料を用いた成膜とに少なくとも用いられる請求項6、11及び15のいずれかに記載の成膜装置。
  17. アーク蒸発室内においてアーク放電により膜形成材料を蒸発させ、イオン化した前記膜形成材料であるイオン化粒子と、前記膜形成材料の中性粒子と、ドロップレットと、を含む蒸発粒子を発生させる工程と、
    前記蒸発粒子を、前記アーク蒸発室から基板が配置された成膜室に輸送管を介して輸送する工程と、
    前記成膜室内において前記基板に前記蒸発粒子を堆積させて成膜を行う工程とを備え、
    少なくとも前記輸送工程は、前記輸送管内を移動する前記イオン化粒子から前記ドロップレット及び前記中性粒子の一部を分離、捕獲して前記ドロップレット及び前記中性粒子の量を調整する工程を含み、
    前記成膜工程は、前記輸送工程をへて前記成膜室に供給された前記イオン化粒子と前記調整工程によって所定量に調整された前記ドロップレット及び前記中性粒子とを含む前記蒸発粒子を用いて前記成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
  18. 前記輸送工程の前記調整工程では、前記輸送管における前記ドロップレット及び前記中性粒子の移動方向を、前記イオン化粒子の移動方向と異なる方向とすることにより前記分離を行う請求項17記載の成膜方法。
  19. 前記輸送工程の前記調整工程は、さらに、前記輸送管に形成された絞り構造を用いて前記分離を行う請求項17又は18記載の成膜方法。
  20. 前記成膜工程がさらに前記調整工程を含み、
    前記成膜工程の前記調整工程では、前記成膜室内における前記基板の位置を調節し、前記成膜室における前記イオン化粒子と前記ドロップレット及び前記中性粒子との移動方向の違いを利用して、前記所定量の前記ドロップレット及び前記中性粒子と前記イオン化粒子とが供給される領域に前記基板を配置することにより前記分離を行う請求項17〜19のいずれかに記載の成膜方法。
  21. 前記調整工程では、前記膜形成材料に応じて前記ドロップレット及び前記中性粒子の分離量を調整する請求項17〜20のいずれかに記載の成膜方法。
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