JP2005022781A - 給紙装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型で簡単な構造でありながら、設置姿勢の制約が少なく、用紙の先端が不揃いであっても確実に給紙できるようにする。
【解決手段】給紙装置Mは、複数枚の小切手Sを収容保持する用紙挿入部11と、回転駆動される給紙ローラ20と、用紙挿入部11における用紙給送方向の下流側に位置する第1の位置と上流側に位置する第2の位置との間で、給紙ローラ20を移動させる給紙ローラ移動制御機構80と、用紙挿入部11を挟んで給紙ローラ20の外周面と対向する位置に配置され、小切手Sを給紙ローラ20の外周面に押圧付勢する為の押圧部材30と、少なくとも給紙ローラ20が第1の位置から第2の位置へ移動される際に、押圧部材30を給紙ローラ20から離間する位置に変位させる押圧部材制御機構とを備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、データ読み込み装置やプリンタ装置などにおいて、複数枚の用紙を一枚ずつ処理部に向けて供給する給紙装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、給紙装置としては、プリンタ、ファクシミリ、コピー機などに使用されるローラ式の給紙装置が一般的に知られている。
この種のローラ式の給紙装置では、給紙方向の先端部に円筒形の給紙ローラを配置し、用紙の先端近傍を給紙ローラで引き込んで送り出すようにすることが多い。
【0003】
これは、用紙の先端近傍を保持して送り出した方が、用紙のこし(剛性)に拘わらず、用紙送り動作が安定するからである。また、用紙の先端が摺れるときの摩擦を利用して用紙を一枚ず分離する摩擦分離パッドを給紙ローラの下流側に配置する形式の給紙装置の場合、その摩擦分離パッドと給紙ローラを互いに近い関係に配置した方が、複数の用紙の分離性を高める上で有利となるからである。
【0004】
ところが、給紙ローラを給紙方向の先端部に配置すると、用紙の先端が不揃いな場合、給紙ローラに接する位置に用紙の先端が届いていないものが存在することがあり、その際、給紙ローラが用紙の先端を引き込めずに、送り出し不能となることがあり得る。
【0005】
そこで、通常の給紙装置では、用紙の先端を揃えるための対策を講じているのが普通であり、その対策としては、大きく分けて次のようなものがある。
一つは、レーザープリンタやコピー機などによく見られる方式で、用紙を給紙カセット内に水平置きし、用紙の上下左右の位置決めを確実に行う方式である(例えば、特許文献1参照)。
もう一つは、インクジェットプリンタなどによく見られる方式で、用紙の向きを下向きにセット(縦置き)し、重力を利用して下側のパッド部まで用紙の先端を落とし込む方式である(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−277044号
【特許文献2】
特開昭62−153033号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、用紙を水平置きし、用紙の上下左右の位置決めを確実に行う方式の場合は、給紙カセットを必要とするので、給紙装置の小型化が難しい。
また、用紙の向きを下向きにセットし、重力を利用して下側のパッドまで用紙の先端を落とし込む方式の場合は、給紙装置を小型化できるものの、用紙のセット方向が上下でないと給紙できないため、設置姿勢に制約がある。
【0008】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、小型で簡略な構造でありながら設置姿勢の制約が少なく、複数枚の用紙の先端が多少不揃いであっても、確実に用紙を給紙可能な給紙装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、複数枚の用紙を収容保持する用紙挿入部と、回転駆動される給紙ローラと、前記用紙挿入部における用紙給送方向の下流側に位置する第1の位置と上流側に位置する第2の位置との間で、前記給紙ローラを移動させる給紙ローラ移動制御機構と、前記用紙挿入部を挟んで前記給紙ローラの外周面と対向する位置に配置され、前記用紙を前記給紙ローラの外周面に押圧付勢する為の押圧部材と、少なくとも前記給紙ローラが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動される際に、前記押圧部材を前記給紙ローラから離間する位置に変位させる押圧部材制御機構と、を備えたことを特徴とする給紙装置により達成される。
【0010】
上記構成の給紙装置によれば、給紙ローラ移動制御機構は、用紙挿入部における用紙給送方向の下流側に位置する第1の位置と上流側に位置する第2の位置との間で、給紙ローラを移動させるが、少なくとも前記給紙ローラが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する際には、押圧部材制御機構により前記押圧部材が前記給紙ローラから離間する位置に変位させられるので、給紙ローラに用紙が押圧付勢されることはない。
又、前記給紙ローラが前記第2の位置から前記第1の位置へ移動する際には、前記給紙ローラの外周面に用紙が押圧付勢される。
【0011】
そこで、前記給紙ローラが用紙に接触し始める位置(給紙ローラが用紙を送り出す位置)を、用紙給送方向の上流側に位置する第2の位置に設定することができる。
これにより、用紙が不揃いで先端が後端側に位置している用紙についても、先端が少なくとも第1の位置と第2の位置との間にさえあれば、前記給紙ローラで確実に引き込んで送り出すことができる。言い換えれば、多少先端が揃っていない場合であっても、用紙を安定給紙することが可能になる。
【0012】
尚、好ましくは前記給紙ローラ移動制御機構が、前記給紙ローラと一体に回転するカムと、このカムが摺接することでカムの回転位相に応じて前記給紙ローラを前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させる固定カムフォロワと、前記給紙ローラを前記第2の位置から第1の位置に向けて弾性付勢する付勢手段と、を備える。
【0013】
上記構成の給紙装置によれば、給紙ローラと一体に取り付けたカムの働きによって、給紙ローラは1回転する間に、自動的に第1の位置と第2の位置との間を往復移動することができるので、給紙ローラの回転用と移動用の駆動手段を別に設ける必要がなく、構造を簡単にすることができる。
【0014】
又、好ましくは上記給紙装置において、前記給紙ローラのローラ軸に平行な軸位置が可動の中間軸と軸位置が固定の入力軸とを設け、前記ローラ軸と前記中間軸とを第1のリンクで連結すると共に前記中間軸と前記入力軸とを第2のリンクで連結し、これら入力軸と中間軸とローラ軸とにそれぞれ設けた回転伝達部材によって、前記前記入力軸に入力された回転駆動力を前記ローラ軸に伝達する。
【0015】
上記構成の給紙装置によれば、それぞれ第1及び第2のリンクで軸間寸法を固定した状態で、回転伝達部材(例えば、伝動歯車や摩擦ローラ)により入力軸からローラ軸まで回転を伝えるようにしているので、軸位置が固定の入力軸に対し外部の駆動手段から回転駆動力を与えるだけで、ローラ軸の位置が移動する給紙ローラを確実に回転駆動することができる。
【0016】
又、好ましく前記給紙ローラが、外周面に円弧部及び弦部を有する扇形状に形成されると共に、該給紙ローラが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動される際に、前記弦部が前記用紙挿入部を挟んで前記押圧部材と対向するように組付けられる。
尚、前記円弧部の外周面は前記給紙ローラの回転中心軸と同心の円弧面とされ、前記弦部の外周面は前記円弧面より内側に引っ込んだ曲面又は略平面とされる。
【0017】
この場合、前記弦部が押圧部材と対向している待機状態の給紙ローラが所定量回動させられると、用紙は前記給紙ローラの外周面における円弧部の始端(回動される給紙ローラの外周面が、弦部から円弧部に切り替わる部分)に、先ず接触する。
即ち、前記給紙ローラが用紙に接触し始める位置(給紙ローラが用紙を引き込む位置)を、円筒形の給紙ローラが接触する位置よりも用紙後端側の位置に設定することができる。
【0018】
そこで、用紙が不揃いで先端が後端側に位置している用紙について、前記給紙ローラで更に確実に引き込んで送り出すことができる。
又、前記弦部が前記用紙挿入部を挟んで前記押圧部材と対向する際には、実質的な用紙挿入部の幅が最大に開いた状態に保たれるので、用紙の挿入が容易になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る給紙装置を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る給紙装置の概略構成を示す平面図であり、図2及び図3は図1に示した給紙装置の動作を説明する説明図であり、図4は図1に示した給紙装置における駆動系の動作を説明する概略構成図である。
【0020】
本第1実施形態の給紙装置Mは、図1に示すように、小切手(用紙)Sを立姿勢で先端(図中右端)を水平方向に向けて用紙ホルダ10にセットし、その姿勢のまま水平方向(矢印Y1方向)に送り出すものである。図示略のフレームに取付けられる用紙ホルダ10は、束にした状態で複数枚の小切手Sを差し込みセットし得る用紙挿入部11を形成する一対の側壁12A,12Bと、小切手Sの下端が載る底壁12Cとから構成されている。
【0021】
この給紙装置Mは、用紙ホルダ10にセットされた小切手Sを順次一枚ずつ送り出すための主要構成要素として、給紙ローラ20と、給紙ローラ移動制御機構80と、を備えている。
給紙ローラ20は、用紙ホルダ10の一方の側壁12Aの側に配置されており、用紙ホルダ10の用紙挿入部11を挟んで他方の側壁12Bの側には押圧部材30が配置されている。
【0022】
この給紙ローラ20は、ローラ軸21に回転自在に支持され、図示略のモータ(駆動手段)によって矢印Y2方向に回転駆動させられることで、自身の外周面で小切手Sを下流の用紙搬送経路に給紙するものである。
そして、本第1実施形態の給紙ローラ20は、外周面が円弧部23及び弦部24を有する扇形状に形成されている。前記円弧部23の外周面は前記給紙ローラ20の回転中心軸Oと同心の円弧面とされ、前記弦部24の外周面は前記円弧部23より内側に引っ込んだ緩やかな曲面とされている。
【0023】
更に、給紙ローラ20の外周面が、ゴム等の高摩擦部材でライニングされている。そして、給紙ローラ20は、図1に示すように、用紙ホルダ10の一方の側壁12Aに形成した開口13を介して、回転する円弧部23が、用紙挿入部11の内側の空間に突出できるように設けられている。
【0024】
前記ローラ軸21は、給紙ローラ20を給紙方向に回転させるため、給紙方向と垂直な向き(図示例では鉛直方向)に配置されている。
更に、この給紙ローラ20のローラ軸21は、後述する給紙ローラ移動制御機構80によって、小切手Sの給紙方向の下流側の第1の位置と、上流側の第2の位置との間で移動可能に設けられている。
【0025】
図2(a)は給紙方向下流側の第1の位置に給紙ローラ20のローラ軸21がある状態、図2(c)は給紙方向上流側の第2の位置に給紙ローラ20のローラ軸21がある状態を示している。
前記ローラ軸21の移動を案内するために、フレーム9とローラ軸21との間にはガイド機構70が設けられている。ガイド機構70は、給紙ローラ20が給紙方向とほぼ平行に移動できるように案内するものであり、フレーム9側のガイドレール71と、ガイドレール71に沿ってスライドするローラ軸21側のスライダ72とからなる。
【0026】
そして、前記用紙挿入部11における用紙給送方向の下流側に位置する第1の位置と上流側に位置する第2の位置との間で、前記給紙ローラ20を移動させる給紙ローラ移動制御機構80は、前記給紙ローラ20を自身の回転駆動力によって少なくとも前記円弧部23の終端23Bが小切手Sを離れてから次に前記円弧部23の始端23Aが小切手Sに接触するまでの間に前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、且つ、前記円弧部23が小切手Sに接触した状態で前記第2の位置から第1の位置へ移動させる、という機能を果たすものである。
【0027】
本第1実施形態における前記給紙ローラ移動制御機構80は、給紙ローラ20の下方においてローラ軸21に連結されることで給紙ローラ20と一体に回転するカム81と、このカム81が摺接することでカム81の回転位相に応じて給紙ローラ20を前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させる固定カムフォロワ(固定壁)82と、給紙ローラ20を第2の位置から第1の位置に向けて弾性付勢する圧縮コイルバネ(付勢手段)83と、を備える。
【0028】
また、このようにローラ軸21が移動可能となっているため、ローラ軸21を駆動する駆動機構90には、図4に示すようなリンク機構と伝動歯車機構を使用した構造が採用されている。
この駆動機構90は、給紙ローラ20のローラ軸21と平行に軸位置が可動の中間軸91と、軸位置が固定の入力軸92とを設け、前記ローラ軸21と前記中間軸91とを第1のリンク93で連結すると共に前記中間軸91と前記入力軸92と第2のリンク94で連結し、これら入力軸92と中間軸91とローラ軸21とに、順次噛合する伝動歯車(回転伝達部材)95,96,97を設けたものである。
【0029】
このように第1及び第2のリンク93,94と伝動歯車95,96,97を用いることで、前記入力軸92に図示略のモータ(駆動手段)からの回転駆動力を入力すると、順次、伝動歯車95,96,97を介してローラ軸21に回転が伝達され、給紙ローラ20及びカム81が回転するようになっている。この場合、入力軸92及び中間軸91の軸自身が実際に回転しなくても、伝動歯車95,96が回転すればよい。
【0030】
前記押圧部材(ホッパとも呼ばれる)30は、用紙挿入部11を挟んで給紙ローラ20の外周面と対向する位置に配置されており、圧縮コイルバネ(弾性付勢部材)31によって給紙ローラ20に向けて付勢されることで、小切手Sを給紙ローラ20の外周面に向けて弾性付勢するものである。
この押圧部材30は、用紙ホルダ10の他方の側壁12Bに設けた開口部14内に側壁12Bと略平行に配置されており、給紙ローラ20に接近・離間する方向に平行移動できるようになっている。
【0031】
なお、前記押圧部材30は、例えば給紙方向上流側の基端部を回動可能に軸支することで、自由端側を給紙ローラ20の回転中心軸Oと平行な支軸を中心に揺動できるようにしてもよい。いずれにしろ、用紙挿入部11にセットした小切手Sを、必要に応じて給紙ローラ20に押し付けることができるようになっていればよい。
【0032】
前記押圧部材30よりも小切手Sの給紙方向(矢印Y1方向)における下流側には、摩擦分離パッド40が配置されている。この摩擦分離パッド40は、小切手Sを用紙ホルダ10にセットする際に、小切手Sの先端の用紙搬送経路側への不用意な飛び出しを規制すると共に、給紙ローラ20と押圧部材30に挟まれながら送り出される小切手Sの先端を適正に誘導することで、積層状態でセットされた小切手Sを一枚ずつ分離するためのものである。
【0033】
この摩擦分離パッド40は、支軸42により小切手Sの給紙方向に揺動自在に設けられおり、図示略のねじりコイルバネ(付勢手段)によって小切手Sの先端を押し戻す方向に付勢されている。
また、本第1実施形態の給紙装置Mは、押圧部材30及び摩擦分離パッド40を給紙ローラ20の回転位置に応じて変位させるための図示しない押圧部材制御機構及びパッド制御機構を備えている。
【0034】
前記押圧部材制御機構は、給紙ローラ20に対する押圧部材30の位置を、バネ31の付勢力に抗して規制するものであり、図2(a),(b)に示すように、給紙ローラ20の弦部24が押圧部材30に対向する位置にある間は、押圧部材30を圧縮コイルバネ31の付勢力に抗して給紙ローラ20から離れた待機位置に変位させ、図2(c)に示すように、給紙ローラ20の円弧部23の始端23Aが押圧部材30に接近した時から、図3(d)〜(f)に示すように、円弧部23が押圧部材30に対向する位置にある間は、前記待機位置への規制を解除することで、圧縮コイルバネ31の弾性付勢力によって押圧部材30を押圧付勢し、小切手Sを給紙ローラ20の円弧部23の周面に押圧接触させる。
【0035】
また、前記パッド制御機構は、小切手Sの先端に対する摩擦分離パッド40の接触角度を給紙ローラ20の回転位相に応じて規制するもので、給紙ローラ20と押圧部材30に挟まれながら小切手Sが送り出され始める時点で、小切手Sの先端を所定の接触角度で受け止めることができるようにパッド40を待機させる。
【0036】
尚、これら押圧部材制御機構及びパッド制御機構は、給紙ローラ20の回転位相に応じてそれぞれ押圧部材30の位置及び摩擦分離パッド40の接触角度を規制するものであるが、給紙ローラ20との同期は、例えば軸位置が固定の入力軸92に設けられた伝動歯車95と一体回転する円盤カム(図示せず)に設けたカム面と、前記押圧部材30及び前記摩擦分離パッド40にそれぞれ設けられたカムフォロワとで行うことができる。
【0037】
次に、本第1実施形態に係る給紙装置Mの動作について説明する。
本第1実施形態の給紙装置Mにより複数枚の小切手Sの給紙を行う場合は、図1に示すように、複数枚の小切手Sを束ねたまま、立姿勢で先端を水平方向(図1の右方向)に向けて用紙ホルダ10にセットする。
この段階では、押圧部材30が給紙ローラ20から最も離れた待機位置に保持されている。また、給紙ローラ20の弦部24は押圧部材30に略平行に対向する位置にあるので、実質的な用紙挿入部11の幅Hが最大に開いた状態に保たれており、複数枚の小切手Sの挿入を容易にできる。
【0038】
更に、摩擦分離パッド40は、用紙挿入部11に略直交して小切手Sの先端を位置決め可能な位置(用紙挿入部11より下流の用紙搬送経路を塞いだ状態)に保持されている。
そこで、前記給紙ローラ20の弦部24が押圧部材30と対向している待機状態において、用紙挿入部11に小切手Sをセットする際には、前記摩擦分離パッド40が小切手Sの先端を位置決めすることができる。即ち、用紙挿入部11にセットされる小切手Sが、下流の用紙搬送経路に不用意に入ってしまうことがない。
【0039】
この時、給紙ローラ20のローラ軸21は、給紙方向下流側の第1の位置に位置している。尚、図2及び図3では、この第1の位置を基準線Lで表す。
この状態で、図示略のモータの回転駆動力を前記駆動機構90を介して給紙ローラ20に伝えると、給紙ローラ20の矢印Y2方向の回転に伴って、図2(b)に示すように、給紙ローラ移動制御機構80のカム81とカムフォロワ82の作用により、給紙ローラ20のローラ軸21が、給紙方向下流側の第1の位置から上流側の第2の位置に向けて移動する。
【0040】
図2(c)に示すように、給紙ローラ20の回転に伴って、給紙ローラ20の円弧部23の始端23Aが押圧部材30側に徐々に接近して行き、ローラ軸21が第1の位置から最大に離れた位置に到達すると、この段階で、押圧部材位置規制機構による規制が解除されて、押圧部材30が圧縮コイルバネ31の弾性付勢力で小切手Sを給紙ローラ20に押圧接触させる。
【0041】
この時、給紙ローラ20は、円弧部23の始端23Aが、該給紙ローラ20の回転中心軸Oより給紙方向上流側(図2中、左側)において押圧部材30に接近している段階にあるので、小切手Sは給紙ローラ20における円弧部23の始端23Aに、回転中心軸Oより給紙方向上流側の位置で先ず接触する。この位置は、給紙ローラ20の回転中心軸Oよりも、給紙ローラ20の半径の1/2程度くらいの寸法K1だけ給紙方向上流側の位置である。
【0042】
また、それ以前に、給紙ローラ20のローラ軸21が、基準線L(第1の位置)よりも寸法K2だけ上流の第2の位置に移動しているので、基準線Lよりも、合計でK=K1+K2だけ給紙方向上流の位置で、給紙ローラ20に小切手Sが接触することになる。
従って、小切手Sの先端が基準線Lよりも上流側に多少ずれていても、給紙ローラ20における円弧部23の始端23Aで確実に小切手Sを捉えることができる。
【0043】
この状態から給紙ローラ20の回転が更に進むと、図3(d)に示すように、円弧部23により押圧部材30が待機位置側に押し戻されつつ、円弧部23の周面と押圧部材30に挟まれながら一番上層の小切手Sが給紙方向(矢印Y1方向)へと送り出される。同時に、給紙ローラ20のローラ軸21が第2の位置から第1の位置へ向けて戻る。よって、この給紙ローラ20自体の移動によっても、小切手Sに送り出し力が付与される。
【0044】
なお、この前の段階において、パッド位置規制機構の作用により、摩擦分離パッド40が前記小切手Sの先端に対して所定の接触角度に傾いている。
そこで、所定の傾斜角度で小切手Sが来るのを待ち、次の段階で、前記摩擦分離パッド40のパッド面41が所定の接触角度で小切手Sの先端を受けながら、小切手Sのこしの強さとねじりコイルバネ43の付勢力とのバランスで接触角度を自動的に調整しながら、一番上層の小切手Sと下層の小切手Sとの分離を行うことができる。
【0045】
更に、図3(e)に示すように、給紙ローラ20の円弧部23が小切手Sを介して摩擦分離パッド40に圧接することで、摩擦分離パッド40は小切手Sを円弧部23とで挟持した状態となる。
従って、給紙ローラ20の円弧部23によって用紙挿入部11から送り出された小切手Sは、先端がパッド面41に摺接しながら一枚だけ分離され、円弧部23の回転に伴って給紙装置M外(例えば、下流の用紙搬送経路)へスムーズに送り出されていく。
【0046】
図3(f)に示すように、給紙ローラ20の円弧部23の回転によって一枚の小切手Sの送り出しが終了すると、円弧部23の終端23Bが押圧部材30と対向する位置を通過するタイミングに合わせて、押圧部材位置規制機構が押圧部材30を図2(b)に示す待機位置に押し戻す。
また、これとほぼ同時に、摩擦分離パッド40の規制が解除されることで、摩擦分離パッド40が図示しないねじりコイルバネの弾性付勢力で用紙挿入部11と略直交する位置に揺動する。
【0047】
そこで、この摩擦分離パッド40の動きにより、用紙挿入部11に待機している小切手Sの先端が該摩擦分離パッド40に当たる位置まで飛び出している場合は、それが摩擦分離パッド40によって押し戻されることで、小切手Sの先端の位置が揃えられる。この時、押圧部材30は既に待機位置に押し戻されているので、小切手Sは比較的自由に動くことができ、小切手Sの先端が摩擦分離パッド40により無理なく揃えられる。
即ち、給紙ローラ20が1回転し、給紙ローラ20の弦部24が押圧部材30に向かい合う度に、摩擦分離パッド40が用紙挿入部11と略直交する位置に揺動して、小切手Sの先端を揃える作用を有する。
【0048】
上述したように、本第1実施形態の給紙装置Mによれば、用紙挿入部11において先端の位置が給紙方向上流側にある小切手Sについても、1個の前記給紙ローラ20で確実に引き込んで送り出すことができるようになる。即ち、多少先端が揃っていない場合であっても、小切手Sを安定給紙することが可能になる。
従って、複数のローラを使用する場合と比べて、機構を簡略化・小型化することができる。また、重力を利用して小切手Sの先端を揃えるものではないから、小切手Sの先端を水平に向けて小切手Sを立置きする場合にも対応することが容易であり、設置姿勢を特に選ばずに、プリンタやデータ読み込み装置等の各種機器に搭載することができる。
【0049】
図5は上記第1実施形態の給紙装置Mを組み込んだ場合のデータ読み込み装置Pの平面レイアウト図である。
このデータ読み込み装置Pでは、U字形にレイアウトした第1の搬送経路101の入口部分に上記実施形態の給紙装置Mが配置され、第1の搬送経路101の途中の適宜箇所に給紙ローラ102,103,104が配置され、出口部分に排出ローラ105が配置されている。また、U字形の第1の搬送路101の中間直線部101Aに読み取り処理部(スキャナ)110,120が配置されている。また中間直線部101Aの延長線上には、中間直線部101Aを共用することで直線的な第2の搬送経路112を構成する直線搬送路112Aが接続されている。
【0050】
そして、このデータ読み込み装置Pでは、給紙装置Mから小切手Sを送り出すと、立った姿勢のままU字形の搬送経路101に沿って小切手Sが移動し、途中、読み取り処理部(スキャナ)110,120で小切手S上に記録されたデータが読み取られる。また、免許証やIDカード等の剛性の高いカードを読み取る場合は、第2の搬送経路112を使用してカードを移動させることにより、読み取り処理部110,120でカード上のデータを読み取ることができる。
【0051】
この例のように、立ち姿勢で複数枚の小切手Sをセットし、その姿勢のまま水平方向に小切手Sを送り出す場合、小切手Sの先端位置がばらつくことが多いが、多少ばらついていても、本第1実施形態の給紙装置Mによれば、小切手Sを確実に送り出すことができる。従って、単純な機構でありながら、設置姿勢を選ばず、給紙の信頼性を確保することができる。
【0052】
尚、本発明の給紙装置における用紙挿入部、給紙ローラ、押圧部材及び押圧部材制御機構等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、用紙ホルダ10の側壁12Bに平行移動可能に押圧部材30を設け、該押圧部材30を圧縮コイルバネ31で弾性付勢する場合について述べたが、側壁12B自体を平行移動可能な押圧部材としてバネで弾性付勢してもよい。又、側壁12B自体を押圧部材とし、ローラ軸に対して弾性変位可能に取付けられた給紙ローラが用紙を外周面に向けて押圧付勢しても良い。
【0053】
図6は本発明の第2実施形態に係る給紙装置の概略構成を示す平面図である。。尚、本第2実施形態の給紙装置Nは、扇形状の給紙ローラ20に換えて円筒形の給紙ローラ220を用いた以外は上記第1実施形態の給紙装置Mにおける構成部材と略同様の構成であるので、同様の構成部材については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
本第2実施形態の給紙装置Nは、図6に示すように、用紙ホルダ10にセットされた小切手Sを順次一枚ずつ送り出すための主要構成要素として、円筒形の給紙ローラ220と、給紙ローラ移動制御機構80と、押圧部材制御機構と、を備えている。
【0055】
図6(a)に示すように、複数枚の小切手Sを束ねたまま、立姿勢で先端を水平方向(図6の右方向)に向けて用紙ホルダ10にセットする。
この段階では、押圧部材制御機構により押圧部材30が給紙ローラ220から最も離れた待機位置に保持されている。又、摩擦分離パッド40は、小切手Sの先端に対して所定の接触角度に傾いた状態で給紙ローラ220側に弾性付勢されている。
この時、給紙ローラ220のローラ軸21は、給紙方向下流側の第1の位置に位置している。尚、図6では、この第1の位置を基準線Lで表す。
【0056】
この状態で、図示略のモータの回転駆動力を前記駆動機構90を介して給紙ローラ220に伝えると、給紙ローラ220の矢印Y2方向の回転に伴って、図6(b)に示すように、給紙ローラ移動制御機構80のカム81とカムフォロワ82の作用により、給紙ローラ220のローラ軸21が、給紙方向下流側の第1の位置から上流側の第2の位置に向けて移動する。
【0057】
図6(c)に示すように、給紙ローラ220の回転に伴って、給紙ローラ220のローラ軸21が第1の位置から上流側の第2の位置に到達すると、この段階で、押圧部材位置規制機構による規制が解除されて、押圧部材30が圧縮コイルバネ31の弾性付勢力で小切手Sを給紙ローラ220に押圧接触させる。
【0058】
この時、給紙ローラ220のローラ軸21が、基準線L(第1の位置)よりも寸法K2だけ上流の第2の位置に移動しているので、基準線Lよりも寸法K2だけ給紙方向上流の位置で、給紙ローラ220に小切手Sが接触することになる。
従って、小切手Sの先端が基準線Lよりも上流側に多少ずれていても、給紙ローラ220で確実に小切手Sを捉えることができる。
【0059】
この状態から給紙ローラ220の回転が更に進むと、給紙ローラ220の周面と押圧部材30に挟まれながら一番上層の小切手Sが給紙方向(矢印Y1方向)へと送り出される。同時に、給紙ローラ220のローラ軸21が第2の位置から第1の位置へ向けて戻る。よって、この給紙ローラ220自体の移動によっても、小切手Sに送り出し力が付与される。
【0060】
すると、給紙ローラ220によって用紙挿入部11から送り出された小切手Sは、先端がパッド面41に摺接しながら一枚だけ分離され、給紙装置N外(例えば、下流の用紙搬送経路)へスムーズに送り出されて行く。
そして、給紙ローラ220の回転によって一枚の小切手Sの送り出しが終了すると、給紙ローラ220のローラ軸21が第1の位置に復帰するタイミングに合わせて、押圧部材位置規制機構が押圧部材30を図6(a)に示した待機位置に押し戻す。
【0061】
このように、給紙ローラ220を小切手Sから離れているときに予め給紙方向上流側の第2の位置に移動させ、それから給紙ローラ220と小切手Sを接触させて小切手Sを送り出すようにしているので、給紙ローラ220の寸法K2分だけ上流側から小切手Sを送り出すことができる。従って、多少先端が揃っていない場合であっても、小切手Sを安定給紙することが可能になる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の給紙装置によれば、給紙ローラ移動制御機構は、用紙挿入部における用紙給送方向の下流側に位置する第1の位置と上流側に位置する第2の位置との間で、給紙ローラを移動させるが、少なくとも前記給紙ローラが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する際には、押圧部材制御機構により前記押圧部材が前記給紙ローラから離間する位置に変位させられるので、給紙ローラに用紙が押圧付勢されることはない。
又、前記給紙ローラが前記第2の位置から前記第1の位置へ移動する際には、前記給紙ローラの外周面に用紙が押圧付勢される。
【0063】
そこで、前記給紙ローラが用紙に接触し始める位置を、用紙給送方向の上流側に位置する第2の位置に設定することができる。
これにより、用紙が不揃いで先端が後端側に位置している用紙についても、先端が少なくとも第1の位置と第2の位置との間にさえあれば、前記給紙ローラで確実に引き込んで送り出すことができる。言い換えれば、多少先端が揃っていない場合であっても、用紙を安定給紙することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る給紙装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示した給紙装置の動作を説明する説明図である。
【図3】図1に示した給紙装置の動作を説明する説明図である。
【図4】図1に示した給紙装置における駆動機構の動作を説明する概略構成図である。
【図5】図1に示した給紙装置を搭載したデータ読み込み装置の平面レイアウトを概略的に示す構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る給紙装置の動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
11・・用紙挿入部、20・・給紙ローラ、23・・円弧部、23A・・始端、24・・弦部、30・・押圧部材、80・・給紙ローラ移動制御機構、M・・給紙装置、S・・小切手(用紙)。

Claims (4)

  1. 複数枚の用紙を収容保持する用紙挿入部と、
    回転駆動される給紙ローラと、
    前記用紙挿入部における用紙給送方向の下流側に位置する第1の位置と上流側に位置する第2の位置との間で、前記給紙ローラを移動させる給紙ローラ移動制御機構と、
    前記用紙挿入部を挟んで前記給紙ローラの外周面と対向する位置に配置され、前記用紙を前記給紙ローラの外周面に押圧付勢する為の押圧部材と、
    少なくとも前記給紙ローラが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動される際に、前記押圧部材を前記給紙ローラから離間する位置に変位させる押圧部材制御機構と、を備えたことを特徴とする給紙装置。
  2. 前記給紙ローラ移動制御機構が、前記給紙ローラと一体に回転するカムと、このカムが摺接することでカムの回転位相に応じて前記給紙ローラを前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動させる固定カムフォロワと、前記給紙ローラを前記第2の位置から第1の位置に向けて弾性付勢する付勢手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
  3. 前記給紙ローラのローラ軸に平行な軸位置が可動の中間軸と軸位置が固定の入力軸とを設け、前記ローラ軸と前記中間軸とを第1のリンクで連結すると共に前記中間軸と前記入力軸とを第2のリンクで連結し、これら入力軸と中間軸とローラ軸とにそれぞれ設けた回転伝達部材によって、前記前記入力軸に入力された回転駆動力を前記ローラ軸に伝達することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給紙装置。
  4. 前記給紙ローラが、外周面に円弧部及び弦部を有する扇形状に形成されると共に、該給紙ローラが前記第1の位置から前記第2の位置へ移動される際に、前記弦部が前記用紙挿入部を挟んで前記押圧部材と対向するように組付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置。
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