JP2005019306A - 固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン輸率が高く、電気伝導度が大きい固体電解質型燃料電池の電解質を提供する。
【解決手段】(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物(以下、ABO3酸化物という)を主相とし、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物(以下、A2B3O7酸化物という)を第二相とし、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる。
【選択図】 なし
【解決手段】(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物(以下、ABO3酸化物という)を主相とし、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物(以下、A2B3O7酸化物という)を第二相とし、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、イオン輸率が高くかつ電気伝導度が大きい固体電解質型燃料電池用固体電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、固体電解質型燃料電池は、水素ガス、天然ガス、メタノール、石炭ガスなどを燃料とすることができるので、発電における石油代替エネルギー化を促進することができ、さらに廃熱を利用することができるので省資源および環境問題の観点からも注目されている。この固体電解質型燃料電池は作動温度が900〜1000℃の高温タイプのものと、作動温度が600〜800℃の低温タイプのものがあり、その構造は、固体電解質の片面に酸素極集電体を積層し、固体電解質のもう一方の片面に燃料極集電体を積層し、前記酸素極集電体の外側に空気導入口を有するセパレータを積層し、燃料極集電体の外側に燃料導入口を有するセパレータを積層した構造を有している。酸素極集電体は酸化剤ガスである空気を流す流路として機能する役割があるところから、ガス通路が形成されたランタンクロマイトなどの導電性セラミックス、白金のメッシュ、あるいは銀の多項質体などが使用されている。そして、固体酸化物燃料電池の発電容量を大きくするために、酸素極集電体、燃料極集電体、固体電解質およびセパレータはいずれも板状構造を有している。
【0003】
前記固体電解質として、(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0〜0.29、z:0.01〜0.3、y+z:0.025〜0.3)からなる組成を有する固体電解質が知られており、この固体電解質は高いイオン伝導性があり、また電気伝導度が低い特性を有すると言われている。この固体電解質は、La2O3粉末、SrCO3粉末、Ga2O3粉末、MgO粉末およびCoO粉末を用意し、これら原料粉末を(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.3、y+z:0.035〜0.3)となるように配合し、混合した後、温度:500〜1300℃で予備焼成し、この予備焼成した混合物を粉砕し、冷間静水圧プレスにより円盤状圧縮成形体に成形し、得られた円盤状圧縮成形体を温度:1200℃以上(好ましくは1300℃以上)で焼結させることにより得られる(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−335164号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
固体電解質型燃料電池の発電効率を上るための一手段として、イオン伝導性が高くかつ電気伝導度の高い特性を有する固体電解質を作製し、これを組み込んで、起電力を高く維持した状態で発電する方法がある。しかし、従来の(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.3、y+z:0.035〜0.3)からなる固体電解質は、酸化物イオン伝導性の他に電子伝導性及びホール伝導性も併せ持ち、これを燃料電池の電解質として使用すると、電子伝導によるリーク電流が生じ、そのリーク電流相当分の酸化物イオンが発電反応とは無関係に燃料極側で水素を消費してしまい、それによって燃料極側の水蒸気分圧が上昇して、燃料電池の起電力が低くなるという問題があった。そのため、電気伝導度を高く維持したままで、電子伝導性及びホール伝導性の寄与を小さくする、すなわちイオン輸率をより一層高めることが必要であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、電気伝導度が高くかつイオン輸率がより一層高い特性を有する固体電解質を得るべく研究を行った。その結果、
(イ)従来の(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物の焼結体からなる固体電解質に、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる酸化物をX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含有した混合酸化物焼結体からなる固体電解質は、電気伝導度が従来の固体電解質よりも高くかつイオン輸率が大幅に上昇し、この固体電解質を使用した固体電解質型燃料電池は発電効率が一層向上する、
(ロ)前記電気伝導度の高い固体電解質は従来の固体電解質の製造工程における予備焼成を通常の温度よりも高い温度で焼成することにより得られる、などの研究結果が得られたのである。
【0007】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物を主相とし、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、
前記混合酸化物焼結体は、第二相の(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物が、主相である(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体である固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質、に特徴を有するものである。
【0008】
一般に、固体電解質を構成する(La1−xSrx)をA、(Ga1−y−zMgyCoz)をBと置き換えて、主相である(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物をABO3酸化物と記載し、第二相である(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物をA2B3O7酸化物と記載することがある。
この記載方法に基づくと、この発明は、ABO3酸化物を主相とし、A2B3O7酸化物を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、前記混合酸化物焼結体は、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体である固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質、に特徴を有するものである。
【0009】
この発明のABO3酸化物を主相とし、A2B3O7酸化物を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、前記混合酸化物焼結体は、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体である固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質は、原料粉末としていずれも平均粒径:0.05〜3μmを有するLa2O3粉末、SrCO3粉末、Ga2O3粉末、MgO粉末およびCoO粉末を用意し、これら原料粉末を(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)となるように配合し、混合した後、従来の予備焼成温度よりも高温の1320〜1400℃で予備焼成し、この予備焼成した凝集体を粉砕し、冷間静水圧プレスやドクターブレード法により円盤状成形体に成形し、得られた円盤状成形体を温度:1400℃以上で焼結させることにより得られる。
【0010】
前記予備焼成を通常より高温で行うことにより、Co成分の一部が表面に偏析し、La成分の一部が揮発して(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる相が(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる素地中に形成されるものと考えられる。
【0011】
このようにして製造したこの発明の固体電解質は、ABO3酸化物を主相とし、A2B3O7酸化物を第二相として主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当する割合で含まれる混合酸化物焼結体で構成されている。
【0012】
この発明の固体電解質型燃料電池の固体電解質はA2B3O7で表される結晶構造の酸化物を第二相として含んでいることはX線回折法により特定することができる。この場合、A2B3O7で表される結晶構造の酸化物の含有量が0.1質量%未満では固体電解質のイオン輸率を十分に高めることができず、一方、5質量%を越えて含有すると電気伝導度が上昇するもののイオン輸率が極端に低下するようになるので好ましくない。したがって、A2B3O7酸化物からなる第二相の含有量を主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に(一層好ましくは、0.5〜2%)に定めた。
【0013】
このようにして得られたこの発明の固体電解質型燃料電池の固体電解質は、平均結晶粒径:1〜10μm、見掛け密度:6.5〜6.7g/cm3、厚さ:150〜300μm(好ましくは、200〜250μm)の範囲内にあることが好ましい。この発明の固体電解質型燃料電池の固体電解質は従来の固体電解質に比べて電気伝導度が大きくかつイオン輸率が大きい。したがって、この発明の固体電解質はイオン輸率が大きいので、これを用いる固体酸化物型燃料電池の電圧が高くなり、発電効率を高めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の固体酸化物燃料電池の固体電解質を実施例により具体的に説明する。
原料粉末としていずれも平均粒径:0.6μmのLa2O3粉末、平均粒径:1.1μmのSrCO3粉末、平均粒径:0.9μmのGa2O3粉末、平均粒径:0.4μmのMgO粉末および平均粒径:1.2μmのCoO粉末を用意し、表1に示される配合組成となるように配合し、混合した。次いで得られた混合粉末をドクターブレード法でシート成形し、円盤状に切り出して、表2に示される条件で焼結することにより、本発明固体電解質1〜9、比較固体電解質1〜2および従来固体電解質を作製した。
【0015】
得られた本発明固体電解質1〜9、比較固体電解質1〜2および従来固体電解質のX回折におけるABO3相のメインピークとA2B3O7相のメインピークのピーク強度比を測定し、その結果を表2に示し、さらにこれら固体電解質の見掛け密度および平均結晶粒径を測定し、その結果を表2に示し、さらにこれら固体電解質のイオン輸率および電気伝導度を測定し、その結果を表2に示した。
【0016】
なお、固体電解質のイオン伝導率は仕切により試料の両端の雰囲気の酸素分圧を互いに異なる既知の値にして酸素濃淡電池を作製し、この電池の起電力を測定すると共に、同じ条件の理論起電力をネルンスト式から求め、それらの比からイオン輸率を算出した。
さらに、固体電解質の電気伝導度は、円盤状の焼結体から切断した直方体試料に、電極となる白金ペーストを塗布したのち、白金線を接続して1050℃で30分間焼き付け、大気雰囲気中、温度:750℃に保持された条件下で直流4端子法により求めた。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
表2に示される結果から、本発明固体電解質1〜9は従来固体電解質に比べて電気伝導度が高くかつイオン伝導率が上昇していることがわかる。しかし、比較固体電解質1はA2B3O7相が存在しているが、その割合が小さいのでイオン輸率がほとんど上昇せず、また比較固体電解質2はA2B3O7相の割合が多くなり過ぎて電気伝導度が上昇するもののかえってイオン輸率が低下するので固体電解質型燃料電池の固体電解質として好ましくない特性が現れることが分かる。
【0020】
【発明の効果】
この発明のイオン輸率が高い固体電解質を組込んで作製した固体酸化物型燃料電池は、電池電圧が高くなって発電効率が向上し、長期に亘って高効率で安定な性能を与えることができる。
【産業上の利用分野】
この発明は、イオン輸率が高くかつ電気伝導度が大きい固体電解質型燃料電池用固体電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、固体電解質型燃料電池は、水素ガス、天然ガス、メタノール、石炭ガスなどを燃料とすることができるので、発電における石油代替エネルギー化を促進することができ、さらに廃熱を利用することができるので省資源および環境問題の観点からも注目されている。この固体電解質型燃料電池は作動温度が900〜1000℃の高温タイプのものと、作動温度が600〜800℃の低温タイプのものがあり、その構造は、固体電解質の片面に酸素極集電体を積層し、固体電解質のもう一方の片面に燃料極集電体を積層し、前記酸素極集電体の外側に空気導入口を有するセパレータを積層し、燃料極集電体の外側に燃料導入口を有するセパレータを積層した構造を有している。酸素極集電体は酸化剤ガスである空気を流す流路として機能する役割があるところから、ガス通路が形成されたランタンクロマイトなどの導電性セラミックス、白金のメッシュ、あるいは銀の多項質体などが使用されている。そして、固体酸化物燃料電池の発電容量を大きくするために、酸素極集電体、燃料極集電体、固体電解質およびセパレータはいずれも板状構造を有している。
【0003】
前記固体電解質として、(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0〜0.29、z:0.01〜0.3、y+z:0.025〜0.3)からなる組成を有する固体電解質が知られており、この固体電解質は高いイオン伝導性があり、また電気伝導度が低い特性を有すると言われている。この固体電解質は、La2O3粉末、SrCO3粉末、Ga2O3粉末、MgO粉末およびCoO粉末を用意し、これら原料粉末を(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.3、y+z:0.035〜0.3)となるように配合し、混合した後、温度:500〜1300℃で予備焼成し、この予備焼成した混合物を粉砕し、冷間静水圧プレスにより円盤状圧縮成形体に成形し、得られた円盤状圧縮成形体を温度:1200℃以上(好ましくは1300℃以上)で焼結させることにより得られる(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−335164号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
固体電解質型燃料電池の発電効率を上るための一手段として、イオン伝導性が高くかつ電気伝導度の高い特性を有する固体電解質を作製し、これを組み込んで、起電力を高く維持した状態で発電する方法がある。しかし、従来の(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.3、y+z:0.035〜0.3)からなる固体電解質は、酸化物イオン伝導性の他に電子伝導性及びホール伝導性も併せ持ち、これを燃料電池の電解質として使用すると、電子伝導によるリーク電流が生じ、そのリーク電流相当分の酸化物イオンが発電反応とは無関係に燃料極側で水素を消費してしまい、それによって燃料極側の水蒸気分圧が上昇して、燃料電池の起電力が低くなるという問題があった。そのため、電気伝導度を高く維持したままで、電子伝導性及びホール伝導性の寄与を小さくする、すなわちイオン輸率をより一層高めることが必要であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、電気伝導度が高くかつイオン輸率がより一層高い特性を有する固体電解質を得るべく研究を行った。その結果、
(イ)従来の(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物の焼結体からなる固体電解質に、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる酸化物をX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含有した混合酸化物焼結体からなる固体電解質は、電気伝導度が従来の固体電解質よりも高くかつイオン輸率が大幅に上昇し、この固体電解質を使用した固体電解質型燃料電池は発電効率が一層向上する、
(ロ)前記電気伝導度の高い固体電解質は従来の固体電解質の製造工程における予備焼成を通常の温度よりも高い温度で焼成することにより得られる、などの研究結果が得られたのである。
【0007】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物を主相とし、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、
前記混合酸化物焼結体は、第二相の(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物が、主相である(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体である固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質、に特徴を有するものである。
【0008】
一般に、固体電解質を構成する(La1−xSrx)をA、(Ga1−y−zMgyCoz)をBと置き換えて、主相である(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物をABO3酸化物と記載し、第二相である(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物をA2B3O7酸化物と記載することがある。
この記載方法に基づくと、この発明は、ABO3酸化物を主相とし、A2B3O7酸化物を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、前記混合酸化物焼結体は、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体である固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質、に特徴を有するものである。
【0009】
この発明のABO3酸化物を主相とし、A2B3O7酸化物を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、前記混合酸化物焼結体は、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体である固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質は、原料粉末としていずれも平均粒径:0.05〜3μmを有するLa2O3粉末、SrCO3粉末、Ga2O3粉末、MgO粉末およびCoO粉末を用意し、これら原料粉末を(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)となるように配合し、混合した後、従来の予備焼成温度よりも高温の1320〜1400℃で予備焼成し、この予備焼成した凝集体を粉砕し、冷間静水圧プレスやドクターブレード法により円盤状成形体に成形し、得られた円盤状成形体を温度:1400℃以上で焼結させることにより得られる。
【0010】
前記予備焼成を通常より高温で行うことにより、Co成分の一部が表面に偏析し、La成分の一部が揮発して(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる相が(La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる素地中に形成されるものと考えられる。
【0011】
このようにして製造したこの発明の固体電解質は、ABO3酸化物を主相とし、A2B3O7酸化物を第二相として主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当する割合で含まれる混合酸化物焼結体で構成されている。
【0012】
この発明の固体電解質型燃料電池の固体電解質はA2B3O7で表される結晶構造の酸化物を第二相として含んでいることはX線回折法により特定することができる。この場合、A2B3O7で表される結晶構造の酸化物の含有量が0.1質量%未満では固体電解質のイオン輸率を十分に高めることができず、一方、5質量%を越えて含有すると電気伝導度が上昇するもののイオン輸率が極端に低下するようになるので好ましくない。したがって、A2B3O7酸化物からなる第二相の含有量を主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に(一層好ましくは、0.5〜2%)に定めた。
【0013】
このようにして得られたこの発明の固体電解質型燃料電池の固体電解質は、平均結晶粒径:1〜10μm、見掛け密度:6.5〜6.7g/cm3、厚さ:150〜300μm(好ましくは、200〜250μm)の範囲内にあることが好ましい。この発明の固体電解質型燃料電池の固体電解質は従来の固体電解質に比べて電気伝導度が大きくかつイオン輸率が大きい。したがって、この発明の固体電解質はイオン輸率が大きいので、これを用いる固体酸化物型燃料電池の電圧が高くなり、発電効率を高めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の固体酸化物燃料電池の固体電解質を実施例により具体的に説明する。
原料粉末としていずれも平均粒径:0.6μmのLa2O3粉末、平均粒径:1.1μmのSrCO3粉末、平均粒径:0.9μmのGa2O3粉末、平均粒径:0.4μmのMgO粉末および平均粒径:1.2μmのCoO粉末を用意し、表1に示される配合組成となるように配合し、混合した。次いで得られた混合粉末をドクターブレード法でシート成形し、円盤状に切り出して、表2に示される条件で焼結することにより、本発明固体電解質1〜9、比較固体電解質1〜2および従来固体電解質を作製した。
【0015】
得られた本発明固体電解質1〜9、比較固体電解質1〜2および従来固体電解質のX回折におけるABO3相のメインピークとA2B3O7相のメインピークのピーク強度比を測定し、その結果を表2に示し、さらにこれら固体電解質の見掛け密度および平均結晶粒径を測定し、その結果を表2に示し、さらにこれら固体電解質のイオン輸率および電気伝導度を測定し、その結果を表2に示した。
【0016】
なお、固体電解質のイオン伝導率は仕切により試料の両端の雰囲気の酸素分圧を互いに異なる既知の値にして酸素濃淡電池を作製し、この電池の起電力を測定すると共に、同じ条件の理論起電力をネルンスト式から求め、それらの比からイオン輸率を算出した。
さらに、固体電解質の電気伝導度は、円盤状の焼結体から切断した直方体試料に、電極となる白金ペーストを塗布したのち、白金線を接続して1050℃で30分間焼き付け、大気雰囲気中、温度:750℃に保持された条件下で直流4端子法により求めた。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
表2に示される結果から、本発明固体電解質1〜9は従来固体電解質に比べて電気伝導度が高くかつイオン伝導率が上昇していることがわかる。しかし、比較固体電解質1はA2B3O7相が存在しているが、その割合が小さいのでイオン輸率がほとんど上昇せず、また比較固体電解質2はA2B3O7相の割合が多くなり過ぎて電気伝導度が上昇するもののかえってイオン輸率が低下するので固体電解質型燃料電池の固体電解質として好ましくない特性が現れることが分かる。
【0020】
【発明の効果】
この発明のイオン輸率が高い固体電解質を組込んで作製した固体酸化物型燃料電池は、電池電圧が高くなって発電効率が向上し、長期に亘って高効率で安定な性能を与えることができる。
Claims (3)
- (La1−xSrx)(Ga1−y−zMgyCoz)O3(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)からなる組成を有しペロブスカイト結晶構造を有する酸化物(以下、ABO3酸化物という)を主相とし、(La1−xSrx)2(Ga1−y−zMgyCoz)3O7(ただし、x:0.05〜0.3、y:0.025〜0.29、z:0.01〜0.1、y+z:0.035〜0.3)で表される結晶構造の酸化物(以下、A2B3O7酸化物という)を第二相として含む混合酸化物焼結体からなる固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質であって、
前記混合酸化物焼結体は、第二相のA2B3O7酸化物が、主相であるABO3酸化物とのX線回折図のメインピーク強度比で0.1〜5%に相当するように含まれる混合酸化物焼結体であることを特徴とする固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質。 - 請求項1記載の固体電解質は、平均結晶粒径:1〜10μm、見掛け密度:6.5〜6.7g/cm3を有する固体電解質型燃料電池に使用するための固体電解質。
- 請求項1または2記載の固体電解質を備えた固体電解質型燃料電池。
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- 2003-06-27 JP JP2003184887A patent/JP2005019306A/ja active Pending
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