JP2005017586A - ポリイミド無端ベルト、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イミド化を行うための焼成温度低減、焼成時間短縮を可能とし、かつイミド化反応による膜品質の低下を防ぎ十分な強度などの特性を備えるベルトを提供すること。
【解決手段】電子写真装置の中間転写用又は定着用の無端ベルトであって、部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を金型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化して得られるポリイミドの成形体を主体とすることを特徴とするポリイミド無端ベルト、及びその製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】電子写真装置の中間転写用又は定着用の無端ベルトであって、部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を金型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化して得られるポリイミドの成形体を主体とすることを特徴とするポリイミド無端ベルト、及びその製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いるポリイミド無端ベルト、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る装置である。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトは、例えばポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1参照。)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2参照。)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3参照。)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
さらに近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち中間転写及び定着方式が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
【0003】
ここで、中間転写及び定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐え得ることが要求される。この要請から、中間転写及び定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性を併有するポリイミド樹脂が適している。
ポリイミド樹脂は、一般に不溶であるためにその前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥後に過熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミドとして使用している。イミド化反応においては一般に250℃〜350℃の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点より問題があった。また、ポリアミック酸の脱水に伴い、塗膜表面ならびに塗膜中のボイドの発生や、脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力により膜厚の均一性がとれないことや、抵抗値のばらつきが生じるなど膜品質の上でも問題があった。
【0004】
この問題に対して、溶媒可溶性のポリイミド材料の使用が提案されている。可溶性ポリイミドは、分子中に屈曲性をもった構造を導入することで、剛直なイミド構造を有するのにもかかわらず溶媒への溶解性を付与している。そのため、可溶性ポリイミド材料は、基材に塗工して溶剤を乾燥させるだけで、ポリイミド膜を形成することができるため、上記問題点を解決できる。
しかしながら、可溶性ポリイミドはその分子構造に起因し、一般には強度が小さく、伸び、破断などを起こしやく、ベルトとして使用するに不適なものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−200904号公報
【特許文献2】
特開平6−228335号公報
【特許文献3】
特開平6−149083号公報
【特許文献4】
特開平6−258960号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、部分的にイミド化したポリアミック酸溶液を使用することで、イミド化を行うための焼成温度低減、焼成時間短縮を可能とすることを見出し、かつイミド化反応による膜品質の低下を防ぎ十分な強度などの特性を備えるベルトが得られることができることとなり本発明の完成に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下により達成された。
<1> 電子写真装置の中間転写用又は定着用の無端ベルトであって、部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を成形型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化して得られるポリイミドの成形体を主体とすることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
<2> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることを特徴とする、前記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
<3> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることを特徴とする、前記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
<4> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることを特徴とする、前記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
【0008】
<5> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化されることを特徴とする前記<1>〜<4>に記載のポリイミド無端ベルト。
<6> 前記脱水剤が、1価カルボン酸無水物であることを特徴とする、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<7> 前記触媒が、3級アミンであることを特徴とする、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
【0009】
<8> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化された後、前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が除去されることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<9> 前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が、減圧加熱、又は再沈殿法により除去されることを特徴とする前記<8>に記載のポリイミド無端ベルト。
<10> 前記ポリイミドの成形体が、少なくとも無機粉体及び有機粉体の一方からなるフィラー成分を含有することを特徴とする前記<1>〜<9>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<11> 前記フィラー成分の含有重率が、ポリイミド100重量部に対し、5〜60重量部であることを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
【0010】
<12> 106Ω・cm以上1012Ω・cm以下の体積抵抗率を有することを特徴とする前記<1>〜<11>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<13> 厚みが10μm以上1000μm以下であることを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
【0011】
<14> 部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を成形型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化することを特徴とする電子写真装置の中間転写用又は定着用のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<15> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることと特徴とする前記<14>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<16> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることと特徴とする前記<14>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<17> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることと特徴とする前記<14>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0012】
<18> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化されることを特徴とする前記<14>〜<17>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<19> 前記脱水剤が、1価カルボン酸無水物であることを特徴とする前記<18>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<20> 前記触媒が、3級アミンであることを特徴とする前記<18>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0013】
<21> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化された後、前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が除去されることを特徴とする前記<14>〜<20>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<22> 前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が、減圧加熱、又は再沈殿法により除去されることを特徴とする前記<21>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0014】
本発明のポリイミド無端ベルトは、従来のベルトで問題となっていた塗膜中のボイドの発生、体積収縮による膜厚の不均一性、及び抵抗値のばらつきなどの膜品質を改善したものである。更に、低エネルギーで作製したベルトでは達成できなかった、引っ張り強度等の機械的特性、及び体積固有抵抗等の電気的特性をも両立させることに成功した。
従来のように、ポリアミック酸に高エネルギーを加えてポリイミドを作製した場合、機械的特性、及び電気的特性については、目的値を達成することができるが、過度な負荷により膜品質に劣るベルトとなっていた。逆に、膜品質を重視し、低エネルギーによりポリイミドを作製すると、ボイド等の発生は抑えられるが、機械的強度等が弱く、ベルトとして使用するに耐えなかった。
【0015】
本発明では、これらの相反する性能を両立させ、ポリイミド無端ベルトが、膜品質、機械的性能、電気的性能を兼ね備えたものとなった。
このようなポリイミド無端ベルトを得る手法として、予めポリアミック酸の一部をポリイミドにし、その後、低エネルギーの付加によって全体がポリイミドとすることを、本発明において初めて提案した。一部がポリイミドとなっているポリアミック酸でも、塗布液の溶媒には溶解され得ることを見出した。従って、本発明のベルト製造方法は、塗布性能等の製造効率にも優れたものとなっている。本発明により得られたベルトは、従来のベルトとは全く異なり、膜品質、機械的特性、電気的特性をすべて両立し得た優れたベルトである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いるポリイミド無端ベルトに関する。詳しくは、本発明のポリイミド無端ベルトは、その転写方式が中間転写ベルト方式であり、かつ/又はベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構を有すれば、組み込まれる装置は特に限定されない。例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置や、感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像担持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。従って、本発明のポリイミド無端ベルトは、中間転写及び定着用として用いられるのみならず、中間転写ベルト、定着用ベルトとして用いることも可能である。上述の中間転写及び定着用ベルトとは、同一ベルト上において中間転写過程と定着過程を行うベルトである。
このポリイミドベルトは無端ベルトの形状を有する。本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド成形体を主体とするものである。
このポリイミド成形体は、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液を無端ベルト状に形成し、ついでイミド化して形成される。
【0017】
ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。
【0018】
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0019】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0020】
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ −4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ −5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ −4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ −2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0022】
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
ポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
【0024】
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸および部分イミド化されたポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
塗布液には、固形分が5質量%以上30質量%以下となるよう、溶媒を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に使用される部分イミド化されたポリアミック酸は、上記ポリアミック酸を▲1▼加熱/▲2▼又は脱水剤/脱水剤ならびに触媒を作用させ、ポリアミック酸中のアミック酸基の一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換することによって得られる。
加熱する方法における加熱温度は、通常60℃以上200℃以下とされ、好ましくは100℃以上170℃以下とされる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が200℃を超えると得られる重合体の分子量が小さいものになる。
一方、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および環化触媒を添加する方法において、脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。環化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
この脱水閉環は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および環化触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下とされる。
【0026】
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることが好ましい。より好ましくは、組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であり、更に好ましくは、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)である。イミド基とアミック酸基との組成比が、10/90(モル/モル)以下であると、ベルト製造時に十分な効果を得ることができない場合があり、90/10(モル/モル)以上であると、部分的にイミド化されたポリアミック酸が不溶化する可能性がある。
【0027】
前記部分的にイミド化されたポリアミック酸に、作用させた脱水剤/脱水剤ならびに触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用いることができる。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、部分イミド化されたポリアミック酸は溶解させないような貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤、ヘキサンなどのような炭化水素系溶剤、などが使用できる。析出する部分イミド化されたポリアミック酸は、ろ別・乾燥後、再度NMP等の溶剤に溶解させる。
【0028】
本発明におけるポリイミド無端ベルトのポリイミド樹脂層には、その抵抗値や熱伝導性を制御するために、さらに無機粉体及び有機粉体などのフィラーを導入することができる。
ここで、フィラーが樹脂中で分散不良を起こした場合、材料の絶縁破壊現象や、画像不良を起こす。一方、フィラーが樹脂中で極めてよく分散された場合、フィラー同士の接点が減少し、結果として電気導電性や熱伝導性が向上しない。この相反する問題点を解決するために、フィラーが樹脂中で十分に分散しても、なお単位体積あたりの無機粉体同士の接触点が十分に確保できることが要求される。そのためには、樹脂中に導入するフィラーを2種類以上とし、少なくとも1つのフィラーの平均アスペクト比が10以上であることが望ましい。フィラーの粒径は、1μm以上1000μm以下が好ましい。
フィラーは、無機粉体及び有機粉体を併用しても良い。
樹脂中に導入されるフィラーの種類は特に限定されない。例えば、抵抗値の制御の観点から、カーボンブラックをはじめとする導電性無機粉体を樹脂中に適量混合する方法が最も効果的である。カーボンブラック以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物など導電性物質で皮膜形成したもの等が、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリンなどの導電性高分子材料の添加も可能である。
また、熱伝導性を制御する観点から、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等があげられる。なかでも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が好ましい。
ベルト中に含まれる無機粉体の量は、特に制限を設けないが、ポリイミド100重量部に対して、フィラーが5重量部以上60重量部以下の範囲であることが望ましい。この範囲より少なすぎると抵抗値や熱伝導性を制御する目的を十分に発揮できない。一方、この範囲より多すぎると樹脂の靭性を低下せしめるため好ましくない。
【0029】
ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ベルトのシワ寄りは、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド無端ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。なお、「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm2以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅50μm以下の突起物の高さを無視したものである。
また、ポリイミド無端ベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値等の観点から好ましくなく、薄すぎるとその靭性が小さすぎるため好ましくない。従って、ベルトの用途を考慮すると、ベルトの厚みは10μm以上1000μm以下、好ましくは30μm以上150μm以下であることが望ましい。
【0030】
得られたポリイミド無端ベルトの体積抵抗率は、106Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは、109Ω・cm以上1012Ω・cm以下である。この体積抵抗率が1×106Ωcm未満である場合には、像担持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、前記体積抵抗率が1×1012Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記体積抵抗率を、上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0031】
次に、ポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について一例を示す。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下、好ましくは0.5モル〜2モルの1価カルボン酸無水物と、1価カルボン酸無水物に対して0.01モル以上2モル以下の3級アミンとを混入する。室温から200℃の温度にて脱水閉環反応を行った後、反応液をメタノールなどの貧溶媒中に添加することで部分イミド化されたポリアミック酸を析出させる。析出した部分イミド化されたポリアミック酸ろ別した後、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒に溶解させ、部分イミド化されたポリアミック酸溶液を得る。
次に、この溶液に2種類以上の無機粉体をポリアミック酸樹脂の乾燥重量100重量部に対して合計5重量部〜60重量部含有せしめる。
無機粉体を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
次に、この溶液を金型の内面もしくは外面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを均一にする。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
次に、ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行なう。
【0033】
更に、この金型を200℃〜450℃で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。部分的にイミド化されていないポリアミック酸溶液をイミド化した場合と、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液をイミド化した場合とを比較すると、該部分的イミド化率等によって異なるが、イミドの種類を同一とすると、概ね50℃〜200℃程度、低い温度でイミド化の完結が可能となる。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。
【0034】
以上、本発明にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0036】
〔実施例1〕
合成例1〔ポリアミック酸〕
攪拌翼がついた2000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を334.4g入れ、60℃に加熱した。4、4’−ジアミノジフェニルエーテル40.00gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、ピロメリット酸二無水物43.60gを徐々に加えて溶解させた。ピロメリット酸二無水物溶解した後ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇した。溶液の粘度が50Pa・sとなったところでNMP1254gを添加し希釈した後、攪拌を停止して5%ポリアミック酸溶液を得た。
【0037】
合成例2〔部分イミド化したポリアミック酸〕
合成例1で得たポリアミック酸溶液1000gをフラスコ容器に秤りとった。攪拌を行いながら、ピリジン9.60gと無水酢酸12.10gを添加した。室温で3時間脱水閉環反応を行った。反応液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させ、部分イミド化されたポリアミック酸31.00gを得た。NMRにてアミック酸に起因するカルボン酸プロトンの定量してイミド化率を算出したところ、62%であった。
【0038】
調整例1〔分散液の調整〕
次いで、NMP180gにカーボンブラック3030B(三菱化学株式会社製)を4g入れ、よく攪拌し、超音波分散機により処理して、1μm以下の粒子径とした。この分散液に先の合成例2で得た部分イミド化されたポリアミック酸20.00gを溶解させた。
【0039】
製造例1〔ベルトの製造〕
このようにして得られたカーボンブラックを分散させた部分イミド化されたポリアミック酸溶液を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させた。次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥させた。次に、金型をオーブンに入れ、250℃、約30分焼成を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。
【0040】
得られたポリイミド無端ベルトのイミド化率、厚み測定及び体積抵抗値測定、引張り強度等の機械的特性を以下のように行った。
【0041】
(イミド化率)
得られたポリイミド無端ベルトから試験片を切り出しFT−IRにより測定を行った。400℃焼成品をイミド化率100%として、1776cm−1のカルボニル基の伸縮ピークと1012cm−1の芳香環の振動ピークとの比により求めた。
(ベルト厚み測定)
得られたポリイミド無端ベルトから試験片をランダムに10箇所切りだし、フィルム厚み計を用いて行った。
(体積抵抗値)
得られたポリイミド無端ベルトから10×10cm2の試験片を切りだし、アドバンテック社製の超高抵抗測定装置でその体積抵抗値を測定した。
【0042】
(引張り強度)
引張り強度は、引張り試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605N)にて測定した。打ち抜き成型機を使用して、長さ100mm、幅5mmの試験片を作製し、40mm長で引張り試験を行った。
(加熱膨張率、及び熱収縮率)
加熱膨張率、熱収縮率は熱機械分析システムTMA−50(島津製作所株式会社製)を使用して、それぞれ30℃〜100℃、350℃〜150℃での形状変化より測定した。打ち抜き成型機を使用して、長さ100mm、幅10mmの試験片を作製し、40mm長の加熱膨張率、熱収縮率の測定を行った。
【0043】
(ベルト外観)
得られたベルトの外観を、目視観察し、以下のように評価を行なった。
○:まったくボイドの発生が見られず、膜の均一性に優れる。
○〜△:ボイドの発生がやや見られるが、実用には問題ない。
△:ボイドの発生が見られ、実用にはやや支障がある。
×:ボイドが多発し、実用できない。
【0044】
その結果、このポリイミド無端ベルトのイミド化率はおよそ100%で、厚みは70±2μmであり、体積抵抗値は、1×108Ω・cmであった。得られたポリイミドベルトの特性等は表1に示す。このベルトは、イミド化反応がほぼ十分進行しており、高い膜強度を得ている。また、イミド化反応進行に見られるフィルムの膜厚ムラも抑えられ均一であった。さらに体積固有抵抗も1×108Ωcmを示し、中間転写ベルトとして好適な特性を備えていることが確認された。
【0045】
〔実施例2〜5〕
製造例1の合成例2で得られた部分イミド化されたポリアミック酸溶液を用いて、表1に示すように各種製造条件を変更させた以外は、実施例1の調整例1及び製造例1と同様にしてポリイミドベルトを作製した。得られたポリイミドベルトの特性等は表1に示す。いずれの条件で得られたベルトも、実施例1同様の好適な特性を備えていることが確認された。
【0046】
〔実施例6〜8〕
実施例1の合成例2のピリジン、無水酢酸量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、部分イミド化されたポリアミック酸溶液を得た。これを用いて、製造条件を個々に変量させて実施例1の調整例1及び製造例1と同様にしてポリイミドベルトを調整した。得られたポリイミドベルトの特性等は表1に示す。いずれの条件で得られたベルトも、実施例1同様の好適な特性を備えていることが確認された。
【0047】
〔実施例9〕
実施例1で得られたポリアミック酸溶液500gをフラスコ容器に秤量した後、120℃で還流し、3時間脱水閉環反応を行なった。室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。
イミド化率を算出したところ、15%であった。
【0048】
〔実施例10〕
還流温度を250℃とした以外は、実施例9と同様にして反応を行ない、ポリイミド溶液を得た。
イミド化率を算出したところ、85%であった。
【0049】
〔実施例11〕
還流温度を150℃とした以外は、実施例9と同様にして反応を行ない、ポリイミド溶液を得た。
イミド化率を算出したところ、25%であった。
【0050】
〔比較例1〕
合成例3〔ポリアミック酸〕
実施例1の合成例1で得られたポリアミック酸の部分イミド化を行なわず、そのまま調整例1の方法で、分散液を調製した。この際のポリアミック酸の使用量は、調製例1と同様20.00gであった。更に、実施例1の製造例1と同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを製造した。得られたポリイミド無端ベルトの厚みは70±20μmであり、膜表面にボイドの発生も見られておりボイドイミド膜の均一性は不十分であった。イミド化率は60%であり、製造例1と同様な乾燥、焼成条件ではイミド化反応は完終することができなかった。また、体積抵抗値は、1×105Ω・cmであり、中間転写ベルトとしては使用できなかった。さらに、力学的強度にも劣るベルトであり、使用に耐えなかった。
【0051】
〔比較例2〜5〕
比較例1において、イミド転化の温度・時間を表2に示すよう変更した以外は比較例1と同様にして、ポリイミドベルトを製造した。得られたポリイミドベルトの特性等は表2に示す。
いずれの条件で得られたベルトもポリイミド無端ベルトの厚みには大きなばらつきが見られた。得られるフィルムの均一性も低かった。また、イミド化反応進行が不十分であるため、体積固有抵抗も低く、焼成工程により最終的にベルト品質にばらつきがある問題点もあった。さらに、力学的強度にも劣るベルトであり、使用に耐えなかった。
【0052】
〔比較例6〕
合成例1で得られたポリアミック酸を用いて、実施例1の合成例2において、ピリジンを46.50g、無水酢酸を60.5gとした以外は合成例1と同様にして反応を行った。反応の進行に従い、ポリイミドの析出が起こり、塗工可能な溶液を得ることができなかった。
【0053】
〔比較例7〕
実施例1の合成例1で得られたポリアミック酸の部分イミド化処理を行わなわず、イミド転化における焼成温度を320℃、焼成時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミドベルトのイミド化率は100%、体積抵抗値は1×108Ωcmと実施例と同程度であったが、実施例と比較して焼成エネルギーが高く、生産性に問題があった。また、膜表面にポリアミック酸の脱水に伴うボイドが多数発生していた。
【0054】
表1〜表3に、各実施例、比較例にて作製されたベルトの特性を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
上記の結果より、力学的特性、電気的特性を良化しつつ、膜品質をも向上させたポリイミド無端ベルトは、本発明にかかるもののみであった。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係るポリイミド無端ベルトは、従来の製法で得られるポリイミド無端ベルトと比較して焼成時に低エネルギーで製造することが可能であり、イミド転化時に見られるボイドの発生が少ない。また、低エネルギーで処理されていても、高いイミド分率となるため、ベルト強度、高耐久性を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いるポリイミド無端ベルト、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る装置である。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトは、例えばポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1参照。)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2参照。)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3参照。)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
さらに近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち中間転写及び定着方式が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
【0003】
ここで、中間転写及び定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐え得ることが要求される。この要請から、中間転写及び定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性を併有するポリイミド樹脂が適している。
ポリイミド樹脂は、一般に不溶であるためにその前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥後に過熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行い、ポリイミドとして使用している。イミド化反応においては一般に250℃〜350℃の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点より問題があった。また、ポリアミック酸の脱水に伴い、塗膜表面ならびに塗膜中のボイドの発生や、脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力により膜厚の均一性がとれないことや、抵抗値のばらつきが生じるなど膜品質の上でも問題があった。
【0004】
この問題に対して、溶媒可溶性のポリイミド材料の使用が提案されている。可溶性ポリイミドは、分子中に屈曲性をもった構造を導入することで、剛直なイミド構造を有するのにもかかわらず溶媒への溶解性を付与している。そのため、可溶性ポリイミド材料は、基材に塗工して溶剤を乾燥させるだけで、ポリイミド膜を形成することができるため、上記問題点を解決できる。
しかしながら、可溶性ポリイミドはその分子構造に起因し、一般には強度が小さく、伸び、破断などを起こしやく、ベルトとして使用するに不適なものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−200904号公報
【特許文献2】
特開平6−228335号公報
【特許文献3】
特開平6−149083号公報
【特許文献4】
特開平6−258960号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、部分的にイミド化したポリアミック酸溶液を使用することで、イミド化を行うための焼成温度低減、焼成時間短縮を可能とすることを見出し、かつイミド化反応による膜品質の低下を防ぎ十分な強度などの特性を備えるベルトが得られることができることとなり本発明の完成に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下により達成された。
<1> 電子写真装置の中間転写用又は定着用の無端ベルトであって、部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を成形型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化して得られるポリイミドの成形体を主体とすることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
<2> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることを特徴とする、前記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
<3> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることを特徴とする、前記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
<4> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることを特徴とする、前記<1>に記載のポリイミド無端ベルト。
【0008】
<5> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化されることを特徴とする前記<1>〜<4>に記載のポリイミド無端ベルト。
<6> 前記脱水剤が、1価カルボン酸無水物であることを特徴とする、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<7> 前記触媒が、3級アミンであることを特徴とする、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
【0009】
<8> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化された後、前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が除去されることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<9> 前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が、減圧加熱、又は再沈殿法により除去されることを特徴とする前記<8>に記載のポリイミド無端ベルト。
<10> 前記ポリイミドの成形体が、少なくとも無機粉体及び有機粉体の一方からなるフィラー成分を含有することを特徴とする前記<1>〜<9>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<11> 前記フィラー成分の含有重率が、ポリイミド100重量部に対し、5〜60重量部であることを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
【0010】
<12> 106Ω・cm以上1012Ω・cm以下の体積抵抗率を有することを特徴とする前記<1>〜<11>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
<13> 厚みが10μm以上1000μm以下であることを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
【0011】
<14> 部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を成形型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化することを特徴とする電子写真装置の中間転写用又は定着用のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<15> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることと特徴とする前記<14>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<16> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることと特徴とする前記<14>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<17> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることと特徴とする前記<14>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0012】
<18> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化されることを特徴とする前記<14>〜<17>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<19> 前記脱水剤が、1価カルボン酸無水物であることを特徴とする前記<18>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<20> 前記触媒が、3級アミンであることを特徴とする前記<18>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0013】
<21> 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化された後、前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が除去されることを特徴とする前記<14>〜<20>のいずれかに記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
<22> 前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が、減圧加熱、又は再沈殿法により除去されることを特徴とする前記<21>に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
【0014】
本発明のポリイミド無端ベルトは、従来のベルトで問題となっていた塗膜中のボイドの発生、体積収縮による膜厚の不均一性、及び抵抗値のばらつきなどの膜品質を改善したものである。更に、低エネルギーで作製したベルトでは達成できなかった、引っ張り強度等の機械的特性、及び体積固有抵抗等の電気的特性をも両立させることに成功した。
従来のように、ポリアミック酸に高エネルギーを加えてポリイミドを作製した場合、機械的特性、及び電気的特性については、目的値を達成することができるが、過度な負荷により膜品質に劣るベルトとなっていた。逆に、膜品質を重視し、低エネルギーによりポリイミドを作製すると、ボイド等の発生は抑えられるが、機械的強度等が弱く、ベルトとして使用するに耐えなかった。
【0015】
本発明では、これらの相反する性能を両立させ、ポリイミド無端ベルトが、膜品質、機械的性能、電気的性能を兼ね備えたものとなった。
このようなポリイミド無端ベルトを得る手法として、予めポリアミック酸の一部をポリイミドにし、その後、低エネルギーの付加によって全体がポリイミドとすることを、本発明において初めて提案した。一部がポリイミドとなっているポリアミック酸でも、塗布液の溶媒には溶解され得ることを見出した。従って、本発明のベルト製造方法は、塗布性能等の製造効率にも優れたものとなっている。本発明により得られたベルトは、従来のベルトとは全く異なり、膜品質、機械的特性、電気的特性をすべて両立し得た優れたベルトである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いるポリイミド無端ベルトに関する。詳しくは、本発明のポリイミド無端ベルトは、その転写方式が中間転写ベルト方式であり、かつ/又はベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構を有すれば、組み込まれる装置は特に限定されない。例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置や、感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像担持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。従って、本発明のポリイミド無端ベルトは、中間転写及び定着用として用いられるのみならず、中間転写ベルト、定着用ベルトとして用いることも可能である。上述の中間転写及び定着用ベルトとは、同一ベルト上において中間転写過程と定着過程を行うベルトである。
このポリイミドベルトは無端ベルトの形状を有する。本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリイミド成形体を主体とするものである。
このポリイミド成形体は、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液を無端ベルト状に形成し、ついでイミド化して形成される。
【0017】
ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。
【0018】
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0019】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0020】
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ −4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ −5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ −4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ −2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0022】
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
ポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
【0024】
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸および部分イミド化されたポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
塗布液には、固形分が5質量%以上30質量%以下となるよう、溶媒を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に使用される部分イミド化されたポリアミック酸は、上記ポリアミック酸を▲1▼加熱/▲2▼又は脱水剤/脱水剤ならびに触媒を作用させ、ポリアミック酸中のアミック酸基の一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換することによって得られる。
加熱する方法における加熱温度は、通常60℃以上200℃以下とされ、好ましくは100℃以上170℃以下とされる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が200℃を超えると得られる重合体の分子量が小さいものになる。
一方、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および環化触媒を添加する方法において、脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。環化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
この脱水閉環は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤および環化触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下とされる。
【0026】
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることが好ましい。より好ましくは、組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であり、更に好ましくは、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)である。イミド基とアミック酸基との組成比が、10/90(モル/モル)以下であると、ベルト製造時に十分な効果を得ることができない場合があり、90/10(モル/モル)以上であると、部分的にイミド化されたポリアミック酸が不溶化する可能性がある。
【0027】
前記部分的にイミド化されたポリアミック酸に、作用させた脱水剤/脱水剤ならびに触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用いることができる。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、部分イミド化されたポリアミック酸は溶解させないような貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤、ヘキサンなどのような炭化水素系溶剤、などが使用できる。析出する部分イミド化されたポリアミック酸は、ろ別・乾燥後、再度NMP等の溶剤に溶解させる。
【0028】
本発明におけるポリイミド無端ベルトのポリイミド樹脂層には、その抵抗値や熱伝導性を制御するために、さらに無機粉体及び有機粉体などのフィラーを導入することができる。
ここで、フィラーが樹脂中で分散不良を起こした場合、材料の絶縁破壊現象や、画像不良を起こす。一方、フィラーが樹脂中で極めてよく分散された場合、フィラー同士の接点が減少し、結果として電気導電性や熱伝導性が向上しない。この相反する問題点を解決するために、フィラーが樹脂中で十分に分散しても、なお単位体積あたりの無機粉体同士の接触点が十分に確保できることが要求される。そのためには、樹脂中に導入するフィラーを2種類以上とし、少なくとも1つのフィラーの平均アスペクト比が10以上であることが望ましい。フィラーの粒径は、1μm以上1000μm以下が好ましい。
フィラーは、無機粉体及び有機粉体を併用しても良い。
樹脂中に導入されるフィラーの種類は特に限定されない。例えば、抵抗値の制御の観点から、カーボンブラックをはじめとする導電性無機粉体を樹脂中に適量混合する方法が最も効果的である。カーボンブラック以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物など導電性物質で皮膜形成したもの等が、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリンなどの導電性高分子材料の添加も可能である。
また、熱伝導性を制御する観点から、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等があげられる。なかでも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が好ましい。
ベルト中に含まれる無機粉体の量は、特に制限を設けないが、ポリイミド100重量部に対して、フィラーが5重量部以上60重量部以下の範囲であることが望ましい。この範囲より少なすぎると抵抗値や熱伝導性を制御する目的を十分に発揮できない。一方、この範囲より多すぎると樹脂の靭性を低下せしめるため好ましくない。
【0029】
ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ベルトのシワ寄りは、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド無端ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。なお、「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm2以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅50μm以下の突起物の高さを無視したものである。
また、ポリイミド無端ベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値等の観点から好ましくなく、薄すぎるとその靭性が小さすぎるため好ましくない。従って、ベルトの用途を考慮すると、ベルトの厚みは10μm以上1000μm以下、好ましくは30μm以上150μm以下であることが望ましい。
【0030】
得られたポリイミド無端ベルトの体積抵抗率は、106Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは、109Ω・cm以上1012Ω・cm以下である。この体積抵抗率が1×106Ωcm未満である場合には、像担持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、前記体積抵抗率が1×1012Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記体積抵抗率を、上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0031】
次に、ポリイミド無端ベルトを成形する具体的方法について一例を示す。
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下、好ましくは0.5モル〜2モルの1価カルボン酸無水物と、1価カルボン酸無水物に対して0.01モル以上2モル以下の3級アミンとを混入する。室温から200℃の温度にて脱水閉環反応を行った後、反応液をメタノールなどの貧溶媒中に添加することで部分イミド化されたポリアミック酸を析出させる。析出した部分イミド化されたポリアミック酸ろ別した後、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒に溶解させ、部分イミド化されたポリアミック酸溶液を得る。
次に、この溶液に2種類以上の無機粉体をポリアミック酸樹脂の乾燥重量100重量部に対して合計5重量部〜60重量部含有せしめる。
無機粉体を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
次に、この溶液を金型の内面もしくは外面に塗布する。金型としては、円筒形金型が好ましく、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の成形型が、本発明に係る成形型として良好に動作し得る。また、成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。更に、円筒金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒金型上の溶液の厚みを均一にする。円筒金型上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
次に、ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布したこの円筒金型を、加熱もしくは真空環境に置き、含有溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行なう。
【0033】
更に、この金型を200℃〜450℃で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。部分的にイミド化されていないポリアミック酸溶液をイミド化した場合と、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液をイミド化した場合とを比較すると、該部分的イミド化率等によって異なるが、イミドの種類を同一とすると、概ね50℃〜200℃程度、低い温度でイミド化の完結が可能となる。
その後、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得ることができる。
【0034】
以上、本発明にかかるポリイミド無端ベルトの製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0036】
〔実施例1〕
合成例1〔ポリアミック酸〕
攪拌翼がついた2000mlフラスコ容器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を334.4g入れ、60℃に加熱した。4、4’−ジアミノジフェニルエーテル40.00gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。加熱・攪拌を続けながら、ピロメリット酸二無水物43.60gを徐々に加えて溶解させた。ピロメリット酸二無水物溶解した後ポリアミック酸重合反応が進行し、溶液の粘度が上昇した。溶液の粘度が50Pa・sとなったところでNMP1254gを添加し希釈した後、攪拌を停止して5%ポリアミック酸溶液を得た。
【0037】
合成例2〔部分イミド化したポリアミック酸〕
合成例1で得たポリアミック酸溶液1000gをフラスコ容器に秤りとった。攪拌を行いながら、ピリジン9.60gと無水酢酸12.10gを添加した。室温で3時間脱水閉環反応を行った。反応液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させ、部分イミド化されたポリアミック酸31.00gを得た。NMRにてアミック酸に起因するカルボン酸プロトンの定量してイミド化率を算出したところ、62%であった。
【0038】
調整例1〔分散液の調整〕
次いで、NMP180gにカーボンブラック3030B(三菱化学株式会社製)を4g入れ、よく攪拌し、超音波分散機により処理して、1μm以下の粒子径とした。この分散液に先の合成例2で得た部分イミド化されたポリアミック酸20.00gを溶解させた。
【0039】
製造例1〔ベルトの製造〕
このようにして得られたカーボンブラックを分散させた部分イミド化されたポリアミック酸溶液を、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させた。次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥させた。次に、金型をオーブンに入れ、250℃、約30分焼成を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。
【0040】
得られたポリイミド無端ベルトのイミド化率、厚み測定及び体積抵抗値測定、引張り強度等の機械的特性を以下のように行った。
【0041】
(イミド化率)
得られたポリイミド無端ベルトから試験片を切り出しFT−IRにより測定を行った。400℃焼成品をイミド化率100%として、1776cm−1のカルボニル基の伸縮ピークと1012cm−1の芳香環の振動ピークとの比により求めた。
(ベルト厚み測定)
得られたポリイミド無端ベルトから試験片をランダムに10箇所切りだし、フィルム厚み計を用いて行った。
(体積抵抗値)
得られたポリイミド無端ベルトから10×10cm2の試験片を切りだし、アドバンテック社製の超高抵抗測定装置でその体積抵抗値を測定した。
【0042】
(引張り強度)
引張り強度は、引張り試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605N)にて測定した。打ち抜き成型機を使用して、長さ100mm、幅5mmの試験片を作製し、40mm長で引張り試験を行った。
(加熱膨張率、及び熱収縮率)
加熱膨張率、熱収縮率は熱機械分析システムTMA−50(島津製作所株式会社製)を使用して、それぞれ30℃〜100℃、350℃〜150℃での形状変化より測定した。打ち抜き成型機を使用して、長さ100mm、幅10mmの試験片を作製し、40mm長の加熱膨張率、熱収縮率の測定を行った。
【0043】
(ベルト外観)
得られたベルトの外観を、目視観察し、以下のように評価を行なった。
○:まったくボイドの発生が見られず、膜の均一性に優れる。
○〜△:ボイドの発生がやや見られるが、実用には問題ない。
△:ボイドの発生が見られ、実用にはやや支障がある。
×:ボイドが多発し、実用できない。
【0044】
その結果、このポリイミド無端ベルトのイミド化率はおよそ100%で、厚みは70±2μmであり、体積抵抗値は、1×108Ω・cmであった。得られたポリイミドベルトの特性等は表1に示す。このベルトは、イミド化反応がほぼ十分進行しており、高い膜強度を得ている。また、イミド化反応進行に見られるフィルムの膜厚ムラも抑えられ均一であった。さらに体積固有抵抗も1×108Ωcmを示し、中間転写ベルトとして好適な特性を備えていることが確認された。
【0045】
〔実施例2〜5〕
製造例1の合成例2で得られた部分イミド化されたポリアミック酸溶液を用いて、表1に示すように各種製造条件を変更させた以外は、実施例1の調整例1及び製造例1と同様にしてポリイミドベルトを作製した。得られたポリイミドベルトの特性等は表1に示す。いずれの条件で得られたベルトも、実施例1同様の好適な特性を備えていることが確認された。
【0046】
〔実施例6〜8〕
実施例1の合成例2のピリジン、無水酢酸量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、部分イミド化されたポリアミック酸溶液を得た。これを用いて、製造条件を個々に変量させて実施例1の調整例1及び製造例1と同様にしてポリイミドベルトを調整した。得られたポリイミドベルトの特性等は表1に示す。いずれの条件で得られたベルトも、実施例1同様の好適な特性を備えていることが確認された。
【0047】
〔実施例9〕
実施例1で得られたポリアミック酸溶液500gをフラスコ容器に秤量した後、120℃で還流し、3時間脱水閉環反応を行なった。室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。
イミド化率を算出したところ、15%であった。
【0048】
〔実施例10〕
還流温度を250℃とした以外は、実施例9と同様にして反応を行ない、ポリイミド溶液を得た。
イミド化率を算出したところ、85%であった。
【0049】
〔実施例11〕
還流温度を150℃とした以外は、実施例9と同様にして反応を行ない、ポリイミド溶液を得た。
イミド化率を算出したところ、25%であった。
【0050】
〔比較例1〕
合成例3〔ポリアミック酸〕
実施例1の合成例1で得られたポリアミック酸の部分イミド化を行なわず、そのまま調整例1の方法で、分散液を調製した。この際のポリアミック酸の使用量は、調製例1と同様20.00gであった。更に、実施例1の製造例1と同様の方法で、ポリイミド無端ベルトを製造した。得られたポリイミド無端ベルトの厚みは70±20μmであり、膜表面にボイドの発生も見られておりボイドイミド膜の均一性は不十分であった。イミド化率は60%であり、製造例1と同様な乾燥、焼成条件ではイミド化反応は完終することができなかった。また、体積抵抗値は、1×105Ω・cmであり、中間転写ベルトとしては使用できなかった。さらに、力学的強度にも劣るベルトであり、使用に耐えなかった。
【0051】
〔比較例2〜5〕
比較例1において、イミド転化の温度・時間を表2に示すよう変更した以外は比較例1と同様にして、ポリイミドベルトを製造した。得られたポリイミドベルトの特性等は表2に示す。
いずれの条件で得られたベルトもポリイミド無端ベルトの厚みには大きなばらつきが見られた。得られるフィルムの均一性も低かった。また、イミド化反応進行が不十分であるため、体積固有抵抗も低く、焼成工程により最終的にベルト品質にばらつきがある問題点もあった。さらに、力学的強度にも劣るベルトであり、使用に耐えなかった。
【0052】
〔比較例6〕
合成例1で得られたポリアミック酸を用いて、実施例1の合成例2において、ピリジンを46.50g、無水酢酸を60.5gとした以外は合成例1と同様にして反応を行った。反応の進行に従い、ポリイミドの析出が起こり、塗工可能な溶液を得ることができなかった。
【0053】
〔比較例7〕
実施例1の合成例1で得られたポリアミック酸の部分イミド化処理を行わなわず、イミド転化における焼成温度を320℃、焼成時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルトを得た。得られたポリイミドベルトのイミド化率は100%、体積抵抗値は1×108Ωcmと実施例と同程度であったが、実施例と比較して焼成エネルギーが高く、生産性に問題があった。また、膜表面にポリアミック酸の脱水に伴うボイドが多数発生していた。
【0054】
表1〜表3に、各実施例、比較例にて作製されたベルトの特性を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
上記の結果より、力学的特性、電気的特性を良化しつつ、膜品質をも向上させたポリイミド無端ベルトは、本発明にかかるもののみであった。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係るポリイミド無端ベルトは、従来の製法で得られるポリイミド無端ベルトと比較して焼成時に低エネルギーで製造することが可能であり、イミド転化時に見られるボイドの発生が少ない。また、低エネルギーで処理されていても、高いイミド分率となるため、ベルト強度、高耐久性を得ることができる。
Claims (22)
- 電子写真装置の中間転写用又は定着用の無端ベルトであって、部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を成形型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化して得られるポリイミドの成形体を主体とすることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸における、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比が、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記脱水剤が、1価カルボン酸無水物であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記触媒が、3級アミンであることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化された後、前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が除去されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が、減圧加熱、又は再沈殿法により除去されることを特徴とする請求項8に記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記ポリイミドの成形体が、少なくとも無機粉体及び有機粉体の一方からなるフィラー成分を含有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 前記フィラー成分の含有重率が、ポリイミド100重量部に対し、5〜60重量部であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 106Ω・cm以上1012Ω・cm以下の体積抵抗率を有することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 厚みが10μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかに記載のポリイミド無端ベルト。
- 部分的にイミド化されたポリアミック酸の溶液を成形型に塗布した後、乾燥及び焼成工程によりイミド化することを特徴とする電子写真装置の中間転写用又は定着用のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造とのモル比が、20/80(モル/モル)〜80/20(モル/モル)であることと特徴とする請求項14に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造とのモル比が、30/70(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることと特徴とする請求項14に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸において、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造とのモル比が、40/60(モル/モル)〜70/30(モル/モル)であることと特徴とする請求項14に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化されることを特徴とする請求項14〜請求項17のいずれかに記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記脱水剤が、1価カルボン酸無水物であることを特徴とする請求項18に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記触媒が、3級アミンであることを特徴とする請求項18に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記部分的にイミド化されたポリアミック酸が、加熱、脱水剤、又は脱水剤及び触媒により、部分的にイミド化された後、前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が除去されることを特徴とする請求項14〜請求項20のいずれかに記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
- 前記脱水剤、又は前記脱水剤及び前記触媒が、減圧加熱、又は再沈殿法により除去されることを特徴とする請求項21に記載のポリイミド無端ベルトの製造方法。
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-
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