JP2005017503A - Irアブレーション用積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来よりも高品位の印刷画像が得られ、IRアブレーション層の生産性を向上した、種々の感光性樹脂層に応用できる積層体を提供すること。
【解決手段】少なくとも、基材およびIRアブレーション層を有するアブレーション用積層体であって、前記アブレーション層が、IR吸収性金属層を含み、かつ、基材とIRアブレーション層との間に離型層を有していることを特徴とするIRアブレーション用積層体。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも、基材およびIRアブレーション層を有するアブレーション用積層体であって、前記アブレーション層が、IR吸収性金属層を含み、かつ、基材とIRアブレーション層との間に離型層を有していることを特徴とするIRアブレーション用積層体。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ製版技術により凸版印刷版やレリーフ版を製造する際に使用されるIRアブレーション用積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、凸版やフレキソ印刷の分野において、デジタル画像形成技術としても知られているコンピュータ製版技術(コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術)は、極めて一般的なものとなってきている。CTP技術では、感光性印刷版の重合するべきでない領域を覆うために従来から使用されている写真マスク(フォトマスクやネガフィルムともいう)は、印刷版内で形成統合されるマスクに取って代わられている。このような統合マスクを得るための方法として、市場には2つの技術が存在する。一つは感光性印刷原版上にインクジェットプリンターでマスクを印刷する方法であり、もう一つは感光層上に紫外線に対して実質的に不透明で(即ち紫外線を実質的に通さない)、かつ、IRレーザの照射により融除可能な層(この層は、一般に「IRアブレーション層」や「赤外融除層」等と呼ばれており、本明細書では「IRアブレーション層」と呼ぶこととする。)を設け、当該層にIRレーザで画像形成をすることでマスクを形成する方法である。これらの技術を用いることで画像(マスク)が版上に直接形成され、次の工程で当該画像(マスク)を介して紫外線が照射され、製版へといたる。
【0003】
ところで、上記IRアブレーション層を有する感光性印刷原版において、IRアブレーション層には、一般に、高分子バインダにカーボンブラックを多量に含有させた組成物が使用されている。また通常、IRアブレーション層上には、原版の保存時や取り扱いの際にIRアブレーション層の保護のためにカバーフィルムが設けられており、このカバーフィルムはIRレーザの照射前またはIRレーザの照射後(通常、主露光後、現像前の時点)に除去される。しかしIRアブレーション実施後、紫外線で主露光し、現像液で現像する際にカーボンブラックが現像液へ移行して現像液が汚れやすく、現像液を一回の製版作業毎に交換しなければならず、これが印刷コストの上昇の原因になっている。
【0004】
そこで、上記従来の問題が解消されて、高品位の印刷画像が得られ、しかも、現像液の汚れを低減できること、および種々の感光性樹脂層に対しても応用できるようなIRアブレーション用積層体が要望されている。
【0005】
ところが、IRレーザの照射前またはIRレーザの照射後(通常、主露光後、現像前の時点)にカバーフイルム(本発明においては基材ともいう)を除去する際、IRアブレーション層の一部がともに除去されてしまい、高品位の印刷画像が得られないという欠点が生じていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、従来よりも高品位の印刷画像が得られ、IRアブレーション層の生産性を向上した、種々の感光性樹脂層に応用できる積層体を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(1)少なくとも、基材およびIRアブレーション層を有するアブレーション用積層体であって、前記アブレーション層が、IR吸収性金属層を含み、かつ、基材とIRアブレーション層との間に離型層を有していることを特徴とするIRアブレーション用積層体。(2)離型層が、熱硬化性樹脂を含有している前記(1)記載のIRアブレーション用積層体。(3)離型層が、アルキド樹脂を含有している前記(1)記載のIRアブレーション用積層体。(4)離型層とIR吸収性金属層との間に非IR感受性高分子樹脂層を有している前記(1)記載のIRアブレーション用積層体。(5)IR吸収性金属層が金属蒸着層である前記(1)または(4)記載のIRアブレーション用積層体である。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明IRアブレーション用積層体の一実施態様例の模式断面図であって、基材1、離型層2、非IR感受性高分子樹脂層3およびIRアブレーション層であるIR吸収性金属4からなり、図2は、さらに好ましい例として、図1において、基材1のIRアブレーション層とは反対側にブロッキング防止層7を設けた本発明IRアブレーション用積層体の一実施態様例の模式断面図であり、図3は、本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に応用した例であり、感光性樹脂層5の上に図1で示すIRアブレーション用積層体がそのまま積層されている。
【0009】
本発明におけるIRアブレーション層はIR吸収性金属を含むものであり、「IR吸収性金属」とは、IRを吸収して融除され得る金属、合金または含金属化合物を意味し、ここでの合金とは、2種以上の金属元素の融合物だけでなく、2種以上の金属元素とともに金属元素以外の元素を含む融合物も含む。また、「IR吸収性金属」は1種の材料でも2種以上の材料を併用してもよい。
【0010】
上記金属の好ましい例としては、Al、Zn、Cuが挙げられる。また、上記合金の好ましい例としては、Ca、Sc、Tl、V、Sb、Cr、Mn、Fe、Al、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Ta、W、Au、BiおよびPbから選ばれる2種以上の金属の合金や、かかる2種以上の金属とともに、さらに非金属元素(炭素、ケイ素等)および/または希土類元素(Nd、Sm、Gd、Tb等)を含む合金、が挙げられる。また、含金属化合物としては、IRを吸収して融除され得るものであれば、金属酸化物、金属窒化物等の各種化合物を使用できるが、それらの中でも、亜クロム酸銅、酸化クロム、アルミン酸コバルト−クロム等の暗色無機顔料が好ましい。
なお、IRアブレーション層の破れやキズつきの防止(膜強度)の点から、IR吸収性金属には、金属、合金を用いるのが好ましく、特に好ましくはAl、Zn、Cu、Bi−In−Cu合金であり、とりわけ好ましくはAlである。
【0011】
本発明における離型層は基材(本発明においてはカバーフイルムともいう)とIRアブレーション層との間に設けることを特徴とするものであり、離型層は基材に直接、接して設けることが好ましい。離型層はロール状の基材に加工することで設け、次工程で非IR感受性層やIRアブレーション層が設けられる。
なお、本発明においては、基材のIRアブレーション層とは反対側にブロッキング防止層を設けることが好ましく、このブロッキング防止層が存在することにより、ロールの状態での非IR感受性層と基材(カバーフイルム)の密着を防止し、その後のIRアブレーション層の加工性を向上することができるので好ましい。上記ブロッキング防止層としては、以下に示す離型層に用いられる材料を利用することができる。
【0012】
本発明における離型層は熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールラウリル樹脂、エポキシ樹脂等の単体もしくは混合体でもよい。好ましくは、飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂が好ましく、さらに望ましくは、飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂とメラミン樹脂との混合体がよい。アルキド樹脂を変性する飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が使用できる。脂肪酸で変性したアルキド樹脂とメラミン樹脂との混合比率は、100/0から5/95重量部で有ることが好ましい。さらに好ましくは100/0〜15/85重量部である。メラミン樹脂のみの場合、ロール状に巻き取った際に接触するIR吸収性金属層との接着性が大きくなって、IR吸収性金属層が浮いてしまい、良好な感光性樹脂積層体が得られないので好ましくない。
さらに、本発明においる離型層として、硬化型シリコーン樹脂を含有しているタイプでもよく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業社製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア社製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン社製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング社製SD7223、SD7226、SD7229、LTC750A等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
また、必要に応じて離型層中に易滑剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0013】
本発明における離型層を基材(カバーフィルム)の上に設ける方法としては、塗布法などが挙げられるがいずれの方法も採用することができる。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター(原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」参照)あるいはこれら以外の塗布装置を用いて、カバーフィルム製造工程外で塗布液を塗布する方法、カバーフィルム製造工程内で塗布する方法等が挙げられる。カバーフィルム製造工程内で塗布する方法としては、一般的な熱可塑性樹脂未延伸フィルムに塗布液を塗布し、逐次あるいは同時に二軸延伸する方法、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、さらに先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法、あるいは二軸延伸熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、さらに横および/または縦方向に延伸する方法などがある。
【0014】
本発明における離型層は基材(カバーフィルム)の片面にのみ設けてもよいし、両面に設けてもよい。両面の場合、一方はブロッキング防止層として機能するので、本発明においては好ましい態様である。前記熱硬化性樹脂層の厚さは0.01〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5μmの範囲である。この層の厚さが0.01μm未満の場合には、均一な層が得難いために離型効果が発現しない。一方、10μmより厚い場合には、往々にして熱硬化性樹脂の硬化が不充分になって離型効果が発現しないので好ましくない。
【0015】
次に、本発明における非IR感受性高分子樹脂層の構成材料としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、両性インターポリマー、アルキルセルローズ、セルローズ系ポリマー(特にヒドロキシプロピルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ニトロセルローズ)、エチレンとビニルアセテートのコポリマー、セルローズアセテートブチレート、ポリブチラール、環状ゴム等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、両性インターポリマーは米国特許第4,293,635号に記載されているものを採用することができる。
【0016】
上記例示の材料の中でも、水又は水性媒体で現像できることや、シワの発生等を考慮して、本発明では、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシドが挙げられ、なかでも重合度500〜4000、好ましくは1000〜3000で、かつ、ケン化度70%以上、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは80〜90%のポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールが望ましい。ここで、変性ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコールの水酸基と反応性を有する化合物(例えば、カルボキシル基、二重結合、芳香族環等を有する化合物)を二次的に反応させたり、酢酸ビニルと他のビニルモノマーとの共重合体をケン化したりして、末端や主鎖中にカルボキシル基、カルボニル基、ポリオキシアルキレン基、アセトアセチル基、スルホン基、シラノール基を導入したものである。
【0017】
本発明において、IRアブレーション層は実質的に紫外線(活性光線)を透過させない。すなわち、活性光線に対する光学濃度が2.5を超える値であり、好ましくは3.5を超える値である。
前記光学濃度を有するためには、IR吸収性金属層3の厚みは、70〜20000Åが好ましく、特に好ましくは100〜8000Å、とりわけ好ましくは100〜5000Åである。厚みが70Å未満であると、IRアブレーション後のマスクとしての機能が劣るので好ましくなく、また、2000Åを超えると、画像形成用のIRではアブレーション(融除)することが困難になるので、好ましくない。
【0018】
一方、IRアブレーション層をIR吸収性金属層3と他のIR吸収性物質とで構成する場合、IR吸収性金属層3の厚みは、50〜15000Åが好ましく、特に好ましくは70〜8000Å、とりわけ好ましくは100〜5000Åである。厚みが50Å未満であると、IRアブレーション後のマスクとしての機能が劣るので好ましくなく、また、15000Åを超えると、画像形成用のIRではアブレーション(融除)することが困難になるので、好ましくない。
【0019】
次に本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に応用する場合、感光性樹脂層5の上に図1で示すIRアブレーション用積層体をそのまま積層してもよい。前記感光性樹脂層5は、エラストマーバインダ等も含む公知の可溶性合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物(以下、架橋剤ともいう)及び光重合開始剤を少なくとも含む組成物の層である。さらに添加剤、例えば可塑剤、熱重合防止剤剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料または酸化防止剤を含んでよい。
【0020】
エラストマーバインダは、単一のポリマーでも、ポリマー混合物でもよい。また、疎水性のポリマーでも、親水性のポリマーでも、疎水性のポリマーと親水性のポリマーの混合物でもよい。疎水性ポリマーとしては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ウレタンゴムが好適である。これらはそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。親水性ポリマーとしては、−COOH、−COOM(Mは1価、2価、或いは3価の金属イオンまたは置換または無置換のアンモニウムイオン)、−OH、−NH2、−SO3H、リン酸エステル基などの親水基を有するものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸またはその塩類の重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類と酢酸ビニルとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とアクリロニトリルとの共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、−COOM基を有するポリウレタン、−COOM基を有するポリウレアウレタン、−COOM基を有するポリアミド酸およびこれらの塩類または誘導体が挙げられる。これらはそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
可溶性合成高分子化合物がエラストマーバインダの場合、好適に用いられる光重合性不飽和化合物としては、重合性印刷版の製造に使用でき且つエラストマーバインダと相溶性である慣用の重合可能なエチレン性モノ又はポリ不飽和有機化合物である。当該化合物の例としては、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3−ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアリルオキシジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンチルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、オリゴブタジエン(メタ)アクリレート、オリゴイソプレン(メタ)アクリレート、オリゴプロピレン(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジイソプロピルケタール、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2―メチルアントラキノン、2−アリルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明を利用し得る感光性樹脂層は、可溶性合成高分子化合物、重合性化合物及び光開始剤以外に、添加剤、例えば、可塑剤、熱重合防止剤、染料、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0023】
前記感光性樹脂層は、各成分の材料を適宜変更することにより、水溶性現像液、半水溶性現像液又は有機溶剤性現像液に可溶或いは分散するものに調製できるが、水又は水性媒体で現像できるものとするのが好ましい。また、かかる水又は水性媒体で現像できる感光性樹脂層とする場合、具体的には、EP−A767407号公報、特開昭60−211451号公報、特開平2−175702号公報、特開平4−3162号公報、特開平2−305805号公報、特開平3−228060号公報、特開平10−339951号公報等に記載されている感光性樹脂層に相当するものとするのが好ましい。
【0024】
本発明における基材1は、感光性樹脂版に応用するとカバーフィルムとなるものであり、該カバーフィルムは原版の貯蔵および取り扱いの間にIRアブレーション層の保護のために設けられるものであり、IR照射前またはIR照射後に除去(剥離)される。
【0025】
本発明において、基材1(カバーフィルム)の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド等が好適である。これらはいずれかを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、これらに他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。
前記基材の厚みは10〜300μmが好ましく、特に好ましくは10〜200μmである。
【0026】
次に、本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に応用した場合に設けられる支持体は、可撓性を有し、かつ、寸法安定性に優れた材料が好ましく用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、或いはポリカーボネートを挙げることができる。支持体の厚みは50〜350μm、好ましくは100〜250μmが原版の機械的特性、形状安定性あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から好ましい。また、必要により、支持体と感光性樹脂層との接着を向上させるために、この種の目的で従来から使用されている公知の接着剤を表面に設けてもよい。
【0027】
本発明IRアブレーション用積層体を作成する方法としては特に限定されないが、予め離型層が設けられた基材(カバーフィルム)の離型層上に、塗布、スプレーコーティング等で必要により非IR感受性高分子樹脂層を形成後、これに続けて真空蒸着、スパッタリング等でIR吸収性金属層を形成して他方の積層体を形成することにより得ることができる。
【0028】
また、前記感光性印刷原版を作製する方法としては、一般的には、支持体上に塗布、スプレーコーティング等で感光性樹脂層を形成するか、若しくは、市販の感光性印刷版から保護フィルムを剥がすことで一方の積層体を作成し、さらにこれとは別に、前記本発明IRアブレーション用積層体を形成し、これら2つの積層体をヒートプレス機等を用いてラミネートすることにより作製することができる。ラミネート条件は、温度を室温〜150℃、好ましくは50〜120℃とし、圧力を20〜200kg重/cm2、好ましくは50〜150kg重/cm2とするのがよい。
【0029】
前記感光性樹脂原版からの印刷版の作製は以下のようにして行う。
カバーフィルムを剥がした後、または、残したまま、IRアブレーション層にIRレーザによる画像照射を行いことでIRアブレーションを実施し、感光性樹脂層上にマスクを形成する。適当なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に適当なレーザシステムは、市販されており、例えばダイオードレーザシステムOmniSetter(登録商標)(Fa. Misomex;レーザ波長:830nm;作業幅:1800mm)或いはND/YAGレーザシステムDigilas(登録商標)(Fa. Schepers)を挙げることができる。これらは、それぞれ感光性印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置およびレイアウトコンピュータを含む。画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0030】
次に、上記のようにして、画像情報をIRアブレーション層に書き込んだ後これをマスクとし、感光性印刷版に該マスクを介して化学線を全面照射する。これはレーザシリンダ上において直接行うことが有利である。或いは、版を、レーザ装置から取り外し、慣用の平板な照射ユニットで照射してもよい。照射工程の間、感光性樹脂層は上記マスクの形成工程(融除工程)で露出した領域において重合し、一方照射光を通さないIRアブレーション層によりなお被覆されているIRアブレーション層領域では、重合は起こらない。活性光線の照射は、慣用の真空フレームで酸素を除去して行うことも可能であるが、大気酸素の存在下に行うことが有利である。
【0031】
上記のようにして活性光線が照射された版は、現像工程に供される。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができ、版の性質に応じて、水、有機溶剤またはこれらの混合物を使用することができる。現像の間に、感光性樹脂層の非重合領域及びIRアブレーション層の残留部は除去される。IRアブレーション層を1種の溶剤又は溶剤混合物でまず除去し、別の現像剤で感光性樹脂層を現像することも可能である。現像工程後、得られた印刷版は乾燥させる。版の乾燥条件は、例えば、45〜80℃で5分〜4時間である。乾燥後に、幾つかの後処理操作をさらに行ってもよい。例えば、印刷版を非粘着性にするために、殺菌灯の照射又はBr2による処理を行うことができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
離型層の作製
[飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂の製造]
無水フタル酸とグリセロールを180℃まで加熱して第1段階のシロップにし、溶融したステアリン酸を添加して遊離水酸基をエステル化する。加熱を180℃から220℃まで続け、酸価10(KOHmg/g)になるまで反応させ、ステアリン酸変性アルキド樹脂が得られる。
[離型層の製造]
得られたステアリン酸変性アルキド樹脂400部、メチル化メラミン樹脂(住友化学工業:スミマールM−100)100部をトルエン25000部、メチルエチルケトン24500部に溶解させて調製した固形分1重量%の塗布液を厚さ100μm、幅1000mm、長さ1200mの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製E5002)の片面にグラビアコートを行うことにより、ロール状の離型層をコートしたフィルムを得た。コート、乾燥後の塗膜厚は0.1μmであった。
[IRアブレーション層の製造]
上記離型層をコートしたフィルムのコートとは反対面に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製ゴーセノールKH−20)2000部、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体(三洋化成(株)製サンフレックスSE−270)1500部を純水66500部に溶解させて調製した固形分5重量%の塗布液をグラビアコートし、ロール状のIRアブレーション層の前駆体を形成したロール状のフィルムを得た。この時の乾燥後の塗膜厚は2.0μmであった。次に、このIRアブレーション層の前駆体の面に、真空蒸着法により、アルミを厚さ約600Å蒸着した。この時の光学濃度(OD)は3.0であった。この光学濃度(OD)は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン(株)製造)によって測定した。蒸着したロールを巻き出して、IRアブレーション層を評価した結果、蒸着面はムラや模様はなく、金属光沢があり、カバーフィルム面からの異常剥離は見られず、問題のないロール状のカバーフィルム付きIRアブレーション層が得られた。
【0033】
参考例1
原版の作製
厚さ100μmのPETフィルム支持体(東洋紡績(株)製E5002)、感光性樹脂層、ポリビニルアルコール層およびケミカルマット化PET保護フィルムから構成される感光性フレキソ印刷版(Cosmolight NEO(東洋紡績(株)製))のケミカルマット化PET保護フィルムを剥離し、更に下層のポリビニルアルコール層を感光性樹脂層から慣用の接着テープを用いて除去した。露出させた感光性樹脂層に上記実施例1で作製した本発明IRアブレーション用積層体のアルミニウム蒸着面を重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて100℃、100kg重/cm2でラミネートし、PET支持体、感光性樹脂層、アルミニウム蒸着層、ポリビニルアルコール層およびケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)からなる版を得た。この版の総厚みは1.90mmであった。
【0034】
IRアブレーション
まず、レリーフ深度を通常用いられる約0.8mmにするため上記フレキソ版のPET支持体側から化学線(光源Philips・10R、365nmにおける照度7.5mW/cm2)を20秒間照射することによって、裏露光を実施し、次にケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)を剥離した。この時保護フィルム(カバーフィルム)のみが剥がれ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層は感光性樹脂層上に残っていた。この感光性樹脂層上を10倍ルーペで拡大して観察したところ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層に破れやキズは認められなかった。この版を、Cyrel Digital Imager Spark(BARCO社製)の回転ドラムにポリビニルアルコール層が表側に、支持体のPETフィルムが裏側なるように巻き付け、真空引き後、ダイオードレーザで画像形成を行った。使用した本装置のレーザー出力は4.8mW、レーザー解像度は2540dpi、レーザースポット径は直径15μmであった。回転ドラムは1500rpmで回転させた。IRアブレーション後、版を取り出して10倍ルーペで拡大して観察したところ、問題なくアルミニウム蒸着層がアブレーションされていることを確認した。
【0035】
製版の実施
上記IRアブレーションした、デジタル画像マスクで覆われた感光性フレキソ印刷版全面に、化学線を15分間照射し、その後A&V(株)製現像機(StuckSystem)で、40℃、6分間現像した。現像液には、食器洗剤Cascade(米国P&G製)を1%添加した水道水を用いた。現像工程中、IRアブレーション層の残部(アルミニウム蒸着層、ポリビニルアルコール層)および感光性樹脂層の非照射領域は除去され、化学線の照射領域が残った。現像後、60℃で20分間乾燥し、化学線で5分間照射し、最後に表面粘着を除去するため殺菌灯を5分間照射した。 この後、実施例1と同様にして、版の全面に化学線を照射し、さらに現像を行い、出来上がったフレキソ印刷版を10倍の拡大ルーペで検査したところ、2ポイントの凸部および凹文字、30μm幅の細線、100μmの直径の独立点および156lpi、1%網点全ての試験パターンが正確に形成されていた。
【0036】
実施例2
実施例1において、離型層として用いられたステアリン酸変性アルキド樹脂含有の塗布液を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製E5002)の両面にグラビアコートを行うこと以外は全て実施例1と同様にし、離型層とブロッキング防止層を有するカバーフイルムを得た。その結果、実施例1と同様に、カバーフィルムのみが簡単に剥がれ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層は感光性樹脂層上に残っており、何ら問題は無かった。また、製版においても、2ポイントの凸部および凹文字、30μm幅の細線、100μmの直径の独立点および156lpi、1%網点全ての試験パターンが正確に形成されていることを確認した。
【0037】
比較例1
実施例1において、離型層をコート、形成しない以外は実施例1と同様に行った。蒸着したロールを巻き出して評価した結果、蒸着面にはランダムな模様が入っており、金属光沢は失われ、しかも、カバーフィルムから所々IRアブレーション層が剥離していた。
【0038】
比較参考例1
原版の作製
上記比較例1で得られたアブレーション用積層体を用いて、実施例1と同様に作製した感光性樹脂積層体を実施例1と同様にして原版を作成した。出来上がった凸版印刷版を10倍の拡大ルーペで検査したところ、前記のIRアブレーション層に発生したキズ等の影響により、所望とする画像以外の微小な凸部や、レリーフの欠損部が認められ、画像再現性の悪いものであった。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明の離型層を設けたIRアブレーション用積層体を用いることにより、従来の設備や方法をそのまま利用でき、容易に、かつ高精度のマスク形成が可能であり、高品位の印刷画像が得られる印刷版やレリーフ板を得ることができるので、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明IRアブレーション用積層体の第1の具体例を示す模式断面図である。
【図2】本発明IRアブレーション用積層体の第2の具体例を示す模式断面図である。
【図3】本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に積層した模式断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 離型層
3 非IR感受性高分子樹脂層
4 IR吸収性金属層(IRアブレーション層)
5 感光性樹脂層
6 支持体
7 ブロッキング防止層
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ製版技術により凸版印刷版やレリーフ版を製造する際に使用されるIRアブレーション用積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、凸版やフレキソ印刷の分野において、デジタル画像形成技術としても知られているコンピュータ製版技術(コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術)は、極めて一般的なものとなってきている。CTP技術では、感光性印刷版の重合するべきでない領域を覆うために従来から使用されている写真マスク(フォトマスクやネガフィルムともいう)は、印刷版内で形成統合されるマスクに取って代わられている。このような統合マスクを得るための方法として、市場には2つの技術が存在する。一つは感光性印刷原版上にインクジェットプリンターでマスクを印刷する方法であり、もう一つは感光層上に紫外線に対して実質的に不透明で(即ち紫外線を実質的に通さない)、かつ、IRレーザの照射により融除可能な層(この層は、一般に「IRアブレーション層」や「赤外融除層」等と呼ばれており、本明細書では「IRアブレーション層」と呼ぶこととする。)を設け、当該層にIRレーザで画像形成をすることでマスクを形成する方法である。これらの技術を用いることで画像(マスク)が版上に直接形成され、次の工程で当該画像(マスク)を介して紫外線が照射され、製版へといたる。
【0003】
ところで、上記IRアブレーション層を有する感光性印刷原版において、IRアブレーション層には、一般に、高分子バインダにカーボンブラックを多量に含有させた組成物が使用されている。また通常、IRアブレーション層上には、原版の保存時や取り扱いの際にIRアブレーション層の保護のためにカバーフィルムが設けられており、このカバーフィルムはIRレーザの照射前またはIRレーザの照射後(通常、主露光後、現像前の時点)に除去される。しかしIRアブレーション実施後、紫外線で主露光し、現像液で現像する際にカーボンブラックが現像液へ移行して現像液が汚れやすく、現像液を一回の製版作業毎に交換しなければならず、これが印刷コストの上昇の原因になっている。
【0004】
そこで、上記従来の問題が解消されて、高品位の印刷画像が得られ、しかも、現像液の汚れを低減できること、および種々の感光性樹脂層に対しても応用できるようなIRアブレーション用積層体が要望されている。
【0005】
ところが、IRレーザの照射前またはIRレーザの照射後(通常、主露光後、現像前の時点)にカバーフイルム(本発明においては基材ともいう)を除去する際、IRアブレーション層の一部がともに除去されてしまい、高品位の印刷画像が得られないという欠点が生じていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、従来よりも高品位の印刷画像が得られ、IRアブレーション層の生産性を向上した、種々の感光性樹脂層に応用できる積層体を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(1)少なくとも、基材およびIRアブレーション層を有するアブレーション用積層体であって、前記アブレーション層が、IR吸収性金属層を含み、かつ、基材とIRアブレーション層との間に離型層を有していることを特徴とするIRアブレーション用積層体。(2)離型層が、熱硬化性樹脂を含有している前記(1)記載のIRアブレーション用積層体。(3)離型層が、アルキド樹脂を含有している前記(1)記載のIRアブレーション用積層体。(4)離型層とIR吸収性金属層との間に非IR感受性高分子樹脂層を有している前記(1)記載のIRアブレーション用積層体。(5)IR吸収性金属層が金属蒸着層である前記(1)または(4)記載のIRアブレーション用積層体である。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明IRアブレーション用積層体の一実施態様例の模式断面図であって、基材1、離型層2、非IR感受性高分子樹脂層3およびIRアブレーション層であるIR吸収性金属4からなり、図2は、さらに好ましい例として、図1において、基材1のIRアブレーション層とは反対側にブロッキング防止層7を設けた本発明IRアブレーション用積層体の一実施態様例の模式断面図であり、図3は、本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に応用した例であり、感光性樹脂層5の上に図1で示すIRアブレーション用積層体がそのまま積層されている。
【0009】
本発明におけるIRアブレーション層はIR吸収性金属を含むものであり、「IR吸収性金属」とは、IRを吸収して融除され得る金属、合金または含金属化合物を意味し、ここでの合金とは、2種以上の金属元素の融合物だけでなく、2種以上の金属元素とともに金属元素以外の元素を含む融合物も含む。また、「IR吸収性金属」は1種の材料でも2種以上の材料を併用してもよい。
【0010】
上記金属の好ましい例としては、Al、Zn、Cuが挙げられる。また、上記合金の好ましい例としては、Ca、Sc、Tl、V、Sb、Cr、Mn、Fe、Al、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Ta、W、Au、BiおよびPbから選ばれる2種以上の金属の合金や、かかる2種以上の金属とともに、さらに非金属元素(炭素、ケイ素等)および/または希土類元素(Nd、Sm、Gd、Tb等)を含む合金、が挙げられる。また、含金属化合物としては、IRを吸収して融除され得るものであれば、金属酸化物、金属窒化物等の各種化合物を使用できるが、それらの中でも、亜クロム酸銅、酸化クロム、アルミン酸コバルト−クロム等の暗色無機顔料が好ましい。
なお、IRアブレーション層の破れやキズつきの防止(膜強度)の点から、IR吸収性金属には、金属、合金を用いるのが好ましく、特に好ましくはAl、Zn、Cu、Bi−In−Cu合金であり、とりわけ好ましくはAlである。
【0011】
本発明における離型層は基材(本発明においてはカバーフイルムともいう)とIRアブレーション層との間に設けることを特徴とするものであり、離型層は基材に直接、接して設けることが好ましい。離型層はロール状の基材に加工することで設け、次工程で非IR感受性層やIRアブレーション層が設けられる。
なお、本発明においては、基材のIRアブレーション層とは反対側にブロッキング防止層を設けることが好ましく、このブロッキング防止層が存在することにより、ロールの状態での非IR感受性層と基材(カバーフイルム)の密着を防止し、その後のIRアブレーション層の加工性を向上することができるので好ましい。上記ブロッキング防止層としては、以下に示す離型層に用いられる材料を利用することができる。
【0012】
本発明における離型層は熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールラウリル樹脂、エポキシ樹脂等の単体もしくは混合体でもよい。好ましくは、飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂が好ましく、さらに望ましくは、飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂とメラミン樹脂との混合体がよい。アルキド樹脂を変性する飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が使用できる。脂肪酸で変性したアルキド樹脂とメラミン樹脂との混合比率は、100/0から5/95重量部で有ることが好ましい。さらに好ましくは100/0〜15/85重量部である。メラミン樹脂のみの場合、ロール状に巻き取った際に接触するIR吸収性金属層との接着性が大きくなって、IR吸収性金属層が浮いてしまい、良好な感光性樹脂積層体が得られないので好ましくない。
さらに、本発明においる離型層として、硬化型シリコーン樹脂を含有しているタイプでもよく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業社製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア社製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン社製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング社製SD7223、SD7226、SD7229、LTC750A等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
また、必要に応じて離型層中に易滑剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0013】
本発明における離型層を基材(カバーフィルム)の上に設ける方法としては、塗布法などが挙げられるがいずれの方法も採用することができる。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター(原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」参照)あるいはこれら以外の塗布装置を用いて、カバーフィルム製造工程外で塗布液を塗布する方法、カバーフィルム製造工程内で塗布する方法等が挙げられる。カバーフィルム製造工程内で塗布する方法としては、一般的な熱可塑性樹脂未延伸フィルムに塗布液を塗布し、逐次あるいは同時に二軸延伸する方法、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、さらに先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法、あるいは二軸延伸熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、さらに横および/または縦方向に延伸する方法などがある。
【0014】
本発明における離型層は基材(カバーフィルム)の片面にのみ設けてもよいし、両面に設けてもよい。両面の場合、一方はブロッキング防止層として機能するので、本発明においては好ましい態様である。前記熱硬化性樹脂層の厚さは0.01〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5μmの範囲である。この層の厚さが0.01μm未満の場合には、均一な層が得難いために離型効果が発現しない。一方、10μmより厚い場合には、往々にして熱硬化性樹脂の硬化が不充分になって離型効果が発現しないので好ましくない。
【0015】
次に、本発明における非IR感受性高分子樹脂層の構成材料としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、両性インターポリマー、アルキルセルローズ、セルローズ系ポリマー(特にヒドロキシプロピルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ニトロセルローズ)、エチレンとビニルアセテートのコポリマー、セルローズアセテートブチレート、ポリブチラール、環状ゴム等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、両性インターポリマーは米国特許第4,293,635号に記載されているものを採用することができる。
【0016】
上記例示の材料の中でも、水又は水性媒体で現像できることや、シワの発生等を考慮して、本発明では、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシドが挙げられ、なかでも重合度500〜4000、好ましくは1000〜3000で、かつ、ケン化度70%以上、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは80〜90%のポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールが望ましい。ここで、変性ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコールの水酸基と反応性を有する化合物(例えば、カルボキシル基、二重結合、芳香族環等を有する化合物)を二次的に反応させたり、酢酸ビニルと他のビニルモノマーとの共重合体をケン化したりして、末端や主鎖中にカルボキシル基、カルボニル基、ポリオキシアルキレン基、アセトアセチル基、スルホン基、シラノール基を導入したものである。
【0017】
本発明において、IRアブレーション層は実質的に紫外線(活性光線)を透過させない。すなわち、活性光線に対する光学濃度が2.5を超える値であり、好ましくは3.5を超える値である。
前記光学濃度を有するためには、IR吸収性金属層3の厚みは、70〜20000Åが好ましく、特に好ましくは100〜8000Å、とりわけ好ましくは100〜5000Åである。厚みが70Å未満であると、IRアブレーション後のマスクとしての機能が劣るので好ましくなく、また、2000Åを超えると、画像形成用のIRではアブレーション(融除)することが困難になるので、好ましくない。
【0018】
一方、IRアブレーション層をIR吸収性金属層3と他のIR吸収性物質とで構成する場合、IR吸収性金属層3の厚みは、50〜15000Åが好ましく、特に好ましくは70〜8000Å、とりわけ好ましくは100〜5000Åである。厚みが50Å未満であると、IRアブレーション後のマスクとしての機能が劣るので好ましくなく、また、15000Åを超えると、画像形成用のIRではアブレーション(融除)することが困難になるので、好ましくない。
【0019】
次に本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に応用する場合、感光性樹脂層5の上に図1で示すIRアブレーション用積層体をそのまま積層してもよい。前記感光性樹脂層5は、エラストマーバインダ等も含む公知の可溶性合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物(以下、架橋剤ともいう)及び光重合開始剤を少なくとも含む組成物の層である。さらに添加剤、例えば可塑剤、熱重合防止剤剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料または酸化防止剤を含んでよい。
【0020】
エラストマーバインダは、単一のポリマーでも、ポリマー混合物でもよい。また、疎水性のポリマーでも、親水性のポリマーでも、疎水性のポリマーと親水性のポリマーの混合物でもよい。疎水性ポリマーとしては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ウレタンゴムが好適である。これらはそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。親水性ポリマーとしては、−COOH、−COOM(Mは1価、2価、或いは3価の金属イオンまたは置換または無置換のアンモニウムイオン)、−OH、−NH2、−SO3H、リン酸エステル基などの親水基を有するものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸またはその塩類の重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類と酢酸ビニルとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはその塩類とアクリロニトリルとの共重合体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、−COOM基を有するポリウレタン、−COOM基を有するポリウレアウレタン、−COOM基を有するポリアミド酸およびこれらの塩類または誘導体が挙げられる。これらはそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
可溶性合成高分子化合物がエラストマーバインダの場合、好適に用いられる光重合性不飽和化合物としては、重合性印刷版の製造に使用でき且つエラストマーバインダと相溶性である慣用の重合可能なエチレン性モノ又はポリ不飽和有機化合物である。当該化合物の例としては、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3−ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアリルオキシジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンチルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、オリゴブタジエン(メタ)アクリレート、オリゴイソプレン(メタ)アクリレート、オリゴプロピレン(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
光開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジイソプロピルケタール、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2―メチルアントラキノン、2−アリルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明を利用し得る感光性樹脂層は、可溶性合成高分子化合物、重合性化合物及び光開始剤以外に、添加剤、例えば、可塑剤、熱重合防止剤、染料、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0023】
前記感光性樹脂層は、各成分の材料を適宜変更することにより、水溶性現像液、半水溶性現像液又は有機溶剤性現像液に可溶或いは分散するものに調製できるが、水又は水性媒体で現像できるものとするのが好ましい。また、かかる水又は水性媒体で現像できる感光性樹脂層とする場合、具体的には、EP−A767407号公報、特開昭60−211451号公報、特開平2−175702号公報、特開平4−3162号公報、特開平2−305805号公報、特開平3−228060号公報、特開平10−339951号公報等に記載されている感光性樹脂層に相当するものとするのが好ましい。
【0024】
本発明における基材1は、感光性樹脂版に応用するとカバーフィルムとなるものであり、該カバーフィルムは原版の貯蔵および取り扱いの間にIRアブレーション層の保護のために設けられるものであり、IR照射前またはIR照射後に除去(剥離)される。
【0025】
本発明において、基材1(カバーフィルム)の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド等が好適である。これらはいずれかを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、これらに他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。
前記基材の厚みは10〜300μmが好ましく、特に好ましくは10〜200μmである。
【0026】
次に、本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に応用した場合に設けられる支持体は、可撓性を有し、かつ、寸法安定性に優れた材料が好ましく用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、或いはポリカーボネートを挙げることができる。支持体の厚みは50〜350μm、好ましくは100〜250μmが原版の機械的特性、形状安定性あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から好ましい。また、必要により、支持体と感光性樹脂層との接着を向上させるために、この種の目的で従来から使用されている公知の接着剤を表面に設けてもよい。
【0027】
本発明IRアブレーション用積層体を作成する方法としては特に限定されないが、予め離型層が設けられた基材(カバーフィルム)の離型層上に、塗布、スプレーコーティング等で必要により非IR感受性高分子樹脂層を形成後、これに続けて真空蒸着、スパッタリング等でIR吸収性金属層を形成して他方の積層体を形成することにより得ることができる。
【0028】
また、前記感光性印刷原版を作製する方法としては、一般的には、支持体上に塗布、スプレーコーティング等で感光性樹脂層を形成するか、若しくは、市販の感光性印刷版から保護フィルムを剥がすことで一方の積層体を作成し、さらにこれとは別に、前記本発明IRアブレーション用積層体を形成し、これら2つの積層体をヒートプレス機等を用いてラミネートすることにより作製することができる。ラミネート条件は、温度を室温〜150℃、好ましくは50〜120℃とし、圧力を20〜200kg重/cm2、好ましくは50〜150kg重/cm2とするのがよい。
【0029】
前記感光性樹脂原版からの印刷版の作製は以下のようにして行う。
カバーフィルムを剥がした後、または、残したまま、IRアブレーション層にIRレーザによる画像照射を行いことでIRアブレーションを実施し、感光性樹脂層上にマスクを形成する。適当なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に適当なレーザシステムは、市販されており、例えばダイオードレーザシステムOmniSetter(登録商標)(Fa. Misomex;レーザ波長:830nm;作業幅:1800mm)或いはND/YAGレーザシステムDigilas(登録商標)(Fa. Schepers)を挙げることができる。これらは、それぞれ感光性印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置およびレイアウトコンピュータを含む。画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0030】
次に、上記のようにして、画像情報をIRアブレーション層に書き込んだ後これをマスクとし、感光性印刷版に該マスクを介して化学線を全面照射する。これはレーザシリンダ上において直接行うことが有利である。或いは、版を、レーザ装置から取り外し、慣用の平板な照射ユニットで照射してもよい。照射工程の間、感光性樹脂層は上記マスクの形成工程(融除工程)で露出した領域において重合し、一方照射光を通さないIRアブレーション層によりなお被覆されているIRアブレーション層領域では、重合は起こらない。活性光線の照射は、慣用の真空フレームで酸素を除去して行うことも可能であるが、大気酸素の存在下に行うことが有利である。
【0031】
上記のようにして活性光線が照射された版は、現像工程に供される。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができ、版の性質に応じて、水、有機溶剤またはこれらの混合物を使用することができる。現像の間に、感光性樹脂層の非重合領域及びIRアブレーション層の残留部は除去される。IRアブレーション層を1種の溶剤又は溶剤混合物でまず除去し、別の現像剤で感光性樹脂層を現像することも可能である。現像工程後、得られた印刷版は乾燥させる。版の乾燥条件は、例えば、45〜80℃で5分〜4時間である。乾燥後に、幾つかの後処理操作をさらに行ってもよい。例えば、印刷版を非粘着性にするために、殺菌灯の照射又はBr2による処理を行うことができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
離型層の作製
[飽和脂肪酸で変性したアルキド樹脂の製造]
無水フタル酸とグリセロールを180℃まで加熱して第1段階のシロップにし、溶融したステアリン酸を添加して遊離水酸基をエステル化する。加熱を180℃から220℃まで続け、酸価10(KOHmg/g)になるまで反応させ、ステアリン酸変性アルキド樹脂が得られる。
[離型層の製造]
得られたステアリン酸変性アルキド樹脂400部、メチル化メラミン樹脂(住友化学工業:スミマールM−100)100部をトルエン25000部、メチルエチルケトン24500部に溶解させて調製した固形分1重量%の塗布液を厚さ100μm、幅1000mm、長さ1200mの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製E5002)の片面にグラビアコートを行うことにより、ロール状の離型層をコートしたフィルムを得た。コート、乾燥後の塗膜厚は0.1μmであった。
[IRアブレーション層の製造]
上記離型層をコートしたフィルムのコートとは反対面に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製ゴーセノールKH−20)2000部、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体(三洋化成(株)製サンフレックスSE−270)1500部を純水66500部に溶解させて調製した固形分5重量%の塗布液をグラビアコートし、ロール状のIRアブレーション層の前駆体を形成したロール状のフィルムを得た。この時の乾燥後の塗膜厚は2.0μmであった。次に、このIRアブレーション層の前駆体の面に、真空蒸着法により、アルミを厚さ約600Å蒸着した。この時の光学濃度(OD)は3.0であった。この光学濃度(OD)は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン(株)製造)によって測定した。蒸着したロールを巻き出して、IRアブレーション層を評価した結果、蒸着面はムラや模様はなく、金属光沢があり、カバーフィルム面からの異常剥離は見られず、問題のないロール状のカバーフィルム付きIRアブレーション層が得られた。
【0033】
参考例1
原版の作製
厚さ100μmのPETフィルム支持体(東洋紡績(株)製E5002)、感光性樹脂層、ポリビニルアルコール層およびケミカルマット化PET保護フィルムから構成される感光性フレキソ印刷版(Cosmolight NEO(東洋紡績(株)製))のケミカルマット化PET保護フィルムを剥離し、更に下層のポリビニルアルコール層を感光性樹脂層から慣用の接着テープを用いて除去した。露出させた感光性樹脂層に上記実施例1で作製した本発明IRアブレーション用積層体のアルミニウム蒸着面を重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて100℃、100kg重/cm2でラミネートし、PET支持体、感光性樹脂層、アルミニウム蒸着層、ポリビニルアルコール層およびケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)からなる版を得た。この版の総厚みは1.90mmであった。
【0034】
IRアブレーション
まず、レリーフ深度を通常用いられる約0.8mmにするため上記フレキソ版のPET支持体側から化学線(光源Philips・10R、365nmにおける照度7.5mW/cm2)を20秒間照射することによって、裏露光を実施し、次にケミカルマット化PET保護フィルム(カバーフィルム)を剥離した。この時保護フィルム(カバーフィルム)のみが剥がれ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層は感光性樹脂層上に残っていた。この感光性樹脂層上を10倍ルーペで拡大して観察したところ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層に破れやキズは認められなかった。この版を、Cyrel Digital Imager Spark(BARCO社製)の回転ドラムにポリビニルアルコール層が表側に、支持体のPETフィルムが裏側なるように巻き付け、真空引き後、ダイオードレーザで画像形成を行った。使用した本装置のレーザー出力は4.8mW、レーザー解像度は2540dpi、レーザースポット径は直径15μmであった。回転ドラムは1500rpmで回転させた。IRアブレーション後、版を取り出して10倍ルーペで拡大して観察したところ、問題なくアルミニウム蒸着層がアブレーションされていることを確認した。
【0035】
製版の実施
上記IRアブレーションした、デジタル画像マスクで覆われた感光性フレキソ印刷版全面に、化学線を15分間照射し、その後A&V(株)製現像機(StuckSystem)で、40℃、6分間現像した。現像液には、食器洗剤Cascade(米国P&G製)を1%添加した水道水を用いた。現像工程中、IRアブレーション層の残部(アルミニウム蒸着層、ポリビニルアルコール層)および感光性樹脂層の非照射領域は除去され、化学線の照射領域が残った。現像後、60℃で20分間乾燥し、化学線で5分間照射し、最後に表面粘着を除去するため殺菌灯を5分間照射した。 この後、実施例1と同様にして、版の全面に化学線を照射し、さらに現像を行い、出来上がったフレキソ印刷版を10倍の拡大ルーペで検査したところ、2ポイントの凸部および凹文字、30μm幅の細線、100μmの直径の独立点および156lpi、1%網点全ての試験パターンが正確に形成されていた。
【0036】
実施例2
実施例1において、離型層として用いられたステアリン酸変性アルキド樹脂含有の塗布液を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製E5002)の両面にグラビアコートを行うこと以外は全て実施例1と同様にし、離型層とブロッキング防止層を有するカバーフイルムを得た。その結果、実施例1と同様に、カバーフィルムのみが簡単に剥がれ、ポリビニルアルコール層とアルミニウム蒸着層は感光性樹脂層上に残っており、何ら問題は無かった。また、製版においても、2ポイントの凸部および凹文字、30μm幅の細線、100μmの直径の独立点および156lpi、1%網点全ての試験パターンが正確に形成されていることを確認した。
【0037】
比較例1
実施例1において、離型層をコート、形成しない以外は実施例1と同様に行った。蒸着したロールを巻き出して評価した結果、蒸着面にはランダムな模様が入っており、金属光沢は失われ、しかも、カバーフィルムから所々IRアブレーション層が剥離していた。
【0038】
比較参考例1
原版の作製
上記比較例1で得られたアブレーション用積層体を用いて、実施例1と同様に作製した感光性樹脂積層体を実施例1と同様にして原版を作成した。出来上がった凸版印刷版を10倍の拡大ルーペで検査したところ、前記のIRアブレーション層に発生したキズ等の影響により、所望とする画像以外の微小な凸部や、レリーフの欠損部が認められ、画像再現性の悪いものであった。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明の離型層を設けたIRアブレーション用積層体を用いることにより、従来の設備や方法をそのまま利用でき、容易に、かつ高精度のマスク形成が可能であり、高品位の印刷画像が得られる印刷版やレリーフ板を得ることができるので、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明IRアブレーション用積層体の第1の具体例を示す模式断面図である。
【図2】本発明IRアブレーション用積層体の第2の具体例を示す模式断面図である。
【図3】本発明IRアブレーション用積層体を感光性樹脂版に積層した模式断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 離型層
3 非IR感受性高分子樹脂層
4 IR吸収性金属層(IRアブレーション層)
5 感光性樹脂層
6 支持体
7 ブロッキング防止層
Claims (5)
- 少なくとも、基材およびIRアブレーション層を有するアブレーション用積層体であって、前記アブレーション層が、IR吸収性金属層を含み、かつ、基材とIRアブレーション層との間に離型層を有していることを特徴とするIRアブレーション用積層体。
- 離型層が、熱硬化性樹脂を含有している請求項1記載のIRアブレーション用積層体。
- 離型層が、アルキド樹脂を含有している請求項1記載のIRアブレーション用積層体。
- 離型層とIR吸収性金属層との間に非IR感受性高分子樹脂層を有している請求項1記載のIRアブレーション用積層体。
- IR吸収性金属層が金属蒸着層である請求項1または4記載のIRアブレーション用積層体。
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