JP2005016546A - 油圧−機械式変速装置 - Google Patents

油圧−機械式変速装置 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の入力分割型の油圧−機械式変速装置を備えた走行車両は、エンジン始動時および走行開始時に機体にショック(振動)が生じる場合があった。
【解決手段】油圧−機械式変速装置50に具備される差動機構51を構成する三つの要素(キャリア61と該キャリアに回転可能に軸支されたプラネタリギヤ62とからなるキャリア部63、サンギヤ64、インターナルギヤ65)のうち、油圧−機械式変速装置に具備される静油圧式無段変速装置62の油圧モータ82が接続されて駆動力が出力される要素(出力要素)の回転を制動する制動手段53を設けた。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置の技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、静油圧式無段変速装置(Hydro Static Transmission;HST)と差動機構とを組み合わせた油圧−機械式変速装置(Hydro Mechanical Transmission;HMT)は公知となっており、各種作業車両等に適用されている。
このような油圧−機械式変速装置は、差動機構を構成する三つの要素(キャリア部、サンギヤ、インターナルギヤ)と、静油圧式無段変速装置を構成する油圧ポンプと油圧モータの連動の態様によって、▲1▼出力分割型(入力結合型)と、▲2▼入力分割型(出力結合型)の二つの形式に分けられる。
▲1▼出力分割型(入力結合型)は、差動機構を構成する三つの要素のうち、外部に駆動力を出力する要素(出力要素)に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが接続されるものである。
▲2▼入力分割型(出力結合型)は、差動機構を構成する三つの要素のうち、外部に駆動力を出力する要素(出力要素)に静油圧式無段変速装置の油圧モータが接続されるものである。
そして、油圧−機械式変速装置は静油圧式無段変速装置と比較して▲1▼いわゆる入力分割型においては高速時における動力伝達効率が高く、出力分割型は低速時における動力伝達効率が高い、▲2▼無段変速できる速度範囲が大きい、といった点で優れている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−355705号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の油圧−機械式変速装置のうち、特に入力分割型と呼ばれるものについては、走行車両等に用いた場合において、該走行車両が停止した状態からエンジンを始動した時に機体に大きなショック(振動)が発生したり、あるいは静油圧式無段変速装置を操作していないにもかかわらず走行車両の駆動輪に動力がわずかに伝達される場合があった。
これは、入力分割型の油圧−機械式変速装置が、その内部において一度駆動力を二つの駆動力伝達経路に分岐(分割)させ、油圧−機械式変速装置の外部に駆動力を出力する際(または外部の出力軸にて)二つに分岐された駆動力を再び合流(結合)させる構造に起因している。以下にその理由を示す。
【0005】
入力分割型の油圧−機械式変速装置を構成する差動機構は、キャリアと該キャリアに回転可能に設けられたプラネタリギヤとからなるキャリア部と、プラネタリギヤと噛合するサンギヤと、プラネタリギヤと噛合するインターナルギヤと、からなる三つの要素を備えており、これら三つの要素が、入力要素(駆動源が接続されて駆動力が入力される部分)、入力分割要素(静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが接続される部分)、出力要素(静油圧式無段変速装置の油圧モータが接続されて駆動力が出力される部分)のいずれかの機能を果たす。
入力分割型の油圧−機械式変速装置には、入力要素から入力分割要素に駆動力を伝達し、入力分割要素から静油圧式無段変速装置に駆動力を伝達し、静油圧式無段変速装置から出力要素に駆動力を伝達する第一の駆動力伝達経路と、入力要素から出力要素に直接駆動力を伝達する第二の駆動力伝達経路からなる計二つの駆動力伝達経路が形成されている。
【0006】
油圧−機械式変速装置が停止した状態から駆動力が入力されたときには、第二の駆動力伝達経路にはほとんど駆動力が伝達されず、駆動力のほぼ100%が第一の駆動力伝達経路に伝達された後、中立状態(油圧ポンプが回転しても油圧モータに圧油が搬送されない状態)の静油圧式無段変速装置を操作して油圧ポンプの回転により油圧モータに圧油が搬送される状態とし、静油圧式無段変速装置から出力要素に駆動力が伝達される、という過程を経て駆動力が油圧−機械式変速装置の外部に出力されることが望ましい。そして、油圧−機械式変速装置の差動装置の入力分割要素の回転数が所定の回転数以上となった時点から、第一の駆動力伝達経路と第二の駆動力伝達経路が、回転数や負荷等に応じて駆動力伝達の配分を変えつつ外部に駆動力を出力することが望ましい。
【0007】
しかし、入力要素が第一の駆動力伝達経路および第二の駆動力伝達経路に分配する駆動力の比は、第一の駆動力伝達経路を駆動するためのトルクと、第二の駆動力伝達経路を駆動するためのトルクの比により決まるので、実際には、油圧−機械式変速装置が停止した状態から駆動力が入力されたときには、静油圧式無段変速装置が中立状態(油圧ポンプが回転駆動されても油圧モータに圧油が搬送されない状態)でも、入力要素から出力要素に直接駆動力を伝達する第二の駆動力伝達経路側に駆動力の一部が伝達され、油圧−機械式変速装置よりも下流側の駆動力伝達経路(副変速装置等)の遊び分だけ出力要素が回転駆動される。
油圧−機械式変速装置よりも下流側の駆動力伝達経路の遊びがなくなるまで出力要素が回転駆動されると、第二の駆動力伝達経路を介して出力要素を回転駆動させるために要するトルクが急激に増大する。すると今度は静油圧式無段変速装置を経て出力要素を回転駆動する第一の駆動力伝達経路側に駆動力の多くが伝達されるようになる。第一の駆動力伝達経路側に駆動力の多くが伝達されるようになると、入力分割要素が回転駆動されるとともに前記出力要素が逆方向に回転して油圧−機械式変速装置よりも下流側の駆動力伝達経路の遊びが再び大きくなり、また第二の駆動力伝達経路側に駆動力が伝達される。
上述の如く第一の駆動力伝達経路および第二の駆動力伝達経路を介して出力要素に伝達される駆動力の比率が短時間に大きく変動を繰り返すことにより、差動機構内の各要素の挙動が不安定となり、結果として油圧−機械式変速装置(および油圧−機械式変速装置を備える走行車両等)の振動の原因となる。
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑み、駆動力入力開始時における油圧−機械式変速装置のショック(振動)等を防止し、安定性を向上させるものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置において、
差動機構は、キャリアと該キャリアに回転可能に軸支されたプラネタリギヤとからなるキャリア部と、プラネタリギヤと噛合するサンギヤと、プラネタリギヤと噛合するインターナルギヤと、からなる三つの要素を備え、静油圧式無段変速装置は、油圧ポンプと、油圧モータと、油圧ポンプと油圧モータとを流体的に接続する油圧経路とを備え、
前記差動装置の三つの要素は、それぞれ、駆動源が接続されて駆動力が入力される入力要素または静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが接続される入力分割要素または静油圧式無段変速装置の油圧モータが接続されて駆動力が出力される出力要素、のいずれかに対応して出力要素の回転を制動する制動手段を設けたものである。
【0011】
請求項2においては、前記入力要素はキャリア部であり、前記入力分割要素はサンギヤであり、前記出力要素はインターナルギヤであるものである。
【0012】
請求項3においては、前記入力要素はキャリア部であり、前記入力分割要素はインターナルギヤであり、前記出力要素はサンギヤであるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の油圧−機械式変速装置が適用される走行車両の左側面図、図2は本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例に係るスケルトン図、図3は本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例の断面図、図4は本発明の油圧−機械式変速装置が適用された走行車両のエンジン始動・加速試験の結果を示す図、図5は本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例に係るスケルトン図、図6は本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例の断面図、図7は本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例に係るスケルトン図、図8は本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例の断面図である。
【0014】
まず、図1を用いて本発明の油圧−機械式変速装置が適用される走行車両の一例であるトラクタ201の全体構成について説明する。なお本発明は本実施例のトラクタ201に限らず、エンジン等の駆動源により発生した駆動力を変速する必要がある装置に広く適用可能である。
【0015】
トラクタ201本機の前後には前輪1・1および後輪2・2が支承され、前部のボンネット6内部にはエンジン5が配置され、該ボンネット6の後方にはステアリングハンドル10が配設されている。ステアリングハンドル10の後方には座席11が配設され、座席11の側部には主変速レバー、副変速レバー、PTO操作レバー等の操作レバー群が配設されている。これらステアリングハンドル10、座席11および操作レバー群等はキャビン12内の運転部に配置されている。
【0016】
エンジン5の後部にはクラッチハウジング7が配置され、クラッチハウジング7の後部にミッションケース9が配設され、エンジン5からの駆動力を前輪1・1および後輪2・2に伝達して駆動する。なお、トラクタ201を後輪駆動方式としても、専用のクラッチを介して前輪1・1への駆動力の伝達・遮断を切換可能な方式としても、常に前輪1・1に駆動力を伝達する方式としてもよく、限定されない。
【0017】
また、前記エンジン5の駆動力はミッションケース9後端から突出したPTO軸15に伝達されて、該PTO軸15から図示しないユニバーサルジョイント等を介して車両後端に作業機装着装置20を介して装着した作業機40を駆動するように構成している。そして、前記座席11前下方のステップ上にはクラッチを断接操作するためのクラッチペダルやブレーキペダル等が配設されている。
【0018】
以下では、図2から図4を用いて本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例である油圧−機械式変速装置50について説明する。なお、以下の説明では、油圧−機械式変速装置を「HMT」、静油圧式無段変速装置を「HST」と表記することとする。
【0019】
HMT50は主に、差動機構51、HST52、制動手段53等で構成される。HMT50は図1に示すトラクタ201に適用される場合、ミッションケース9内に配設される。
【0020】
差動機構51は、主にキャリア61と該キャリア61に回転可能に軸支された複数のプラネタリギヤ62・62・・・とからなるキャリア部63と、プラネタリギヤ62・62・・・と互いに噛合するサンギヤ64と、プラネタリギヤ62・62・・・と互いに噛合するインターナルギヤ65と、からなる三つの要素を備えている。
【0021】
HST52は、主に油圧ポンプ81と、油圧モータ82と、該油圧ポンプ81と油圧モータ82とを流体的に接続する油圧経路83とを備えている。
【0022】
油圧ポンプ81は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンポンプであり、入力軸と、該入力軸に相対回転不能に嵌設されるシリンダブロックと、該シリンダブロックに穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストンと、該ピストンを往復駆動させる斜板カムとして作用する可動斜板を備えている。油圧ポンプ81の可動斜板は、その板面と入力軸の軸線方向との成す角度を変更することが可能に構成され、可動斜板の板面を入力軸の軸線方向に対して垂直としたときは入力軸が回転駆動されても油圧モータ82に圧油を搬送することがない中立状態であり、該可動斜板の板面を入力軸の軸線方向に対して垂直の状態から傾倒させることにより、入力軸の回転駆動に連動して油圧モータ82に圧油を搬送する。また、可動斜板の傾倒角度を調節することにより、入力軸が一回転する間に搬送される圧油の量を調節することが可能である。
なお、以後の説明では、HST52を「作動させる」とは、「油圧ポンプ81の可動斜板を入力軸に対して傾倒させ、油圧モータ82に圧油を搬送可能な状態とする」ことを指すものとする。
【0023】
油圧モータ82は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンモータであり、出力軸と、該出力軸に相対回転不能に嵌設されるシリンダブロックと、該シリンダブロックに穿設された複数のシリンダ孔に気密的に摺接可能に収容された複数のピストンと、油圧ポンプ81から搬送されてきた圧油によるピストンの往復駆動力を出力軸の回転駆動力に変換する斜板カムとして作用する可動斜板を備えている。油圧モータ82の可動斜板は、その板面と入力軸の軸線方向との成す角度を変更することが可能に構成され、可動斜板の傾倒角度を調節することにより、油圧ポンプ81から搬送されてくる圧油の量に対する出力軸の回転量を調節することが可能である。なお、本実施例の油圧モータ82については可動斜板を用いているが、該可動斜板に代えて、固定式斜板(出力軸と斜板の板面との成す角度が固定されている)を用いても良い。
【0024】
図2および図3に示す如く、駆動源であるエンジン5から出力された駆動力は、駆動力伝達軸21、カップリング22を介してHMT50の入力軸54を回転駆動する。駆動力伝達軸21の先端部および入力軸54の先端部はそれぞれカップリング22にスプライン嵌合している。入力軸54は軸受を介してミッションケース9内に回転自在に軸支され、カップリング22とスプライン嵌合する先端部はミッションケース9の前方に突出している。入力軸54にはキャリア61が外嵌固定され、入力軸54とキャリア61とは一体的に回転する。
【0025】
キャリア61は略円盤状の部材であり、その盤面の中心(すなわち、入力軸54の軸中心)から等距離の位置に、複数のプラネタリ軸66・66・・・が突設されている。そして、該プラネタリ軸66・66・・・にはそれぞれ、プラネタリギヤ62・62・・・が回転自在に遊嵌(軸支)されている。
【0026】
サンギヤ64は、筒状部材である胴体部64aの外周面の一端にギヤ部64bが形成されるとともに、外周面の他端にはギヤ67が外嵌固定されている。胴体部64aは入力軸54に回転自在に遊嵌され、ギヤ部64bはプラネタリギヤ62と互いに噛合している。また、サンギヤ64に外嵌固定されたギヤ67は、HST52の油圧ポンプ81の入力軸に外嵌固定された入力ギヤ84と互いに噛合している。
【0027】
インターナルギヤ65は、主に胴体部65a、ギヤ部65b、ギヤ部65cで構成される。胴体部65aは直径の異なる二つの筒状部材が積層された形状の部材であり、胴体部65aの直径が小さい筒部は、軸受を介してサンギヤ64の胴体部64aにベアリングを介して回転自在に遊嵌される。また、胴体部65aの直径が小さい筒部の外周面にはギヤ部65bが形成され、該ギヤ部65bはHST52の油圧モータ82の出力軸に外嵌固定された出力ギヤ85と互いに噛合している。
一方、胴体部65aの直径が大きい筒部の内周面にはギヤ部(内歯)65cが形成され、該ギヤ部65cはプラネタリギヤ62と互いに噛合する。
また、胴体部65aの直径が大きい筒部の端部には、ローター91が内嵌固定されている。
【0028】
インターナルギヤ65のギヤ部65bは、副変速装置23の入力ギヤ24とも互いに噛合している。エンジン5からHMT50に入力された駆動力は、HMT50内で変速された後、出力されて副変速装置23に伝達され、さらにデフギヤ25等を介して後輪2・2に伝達される(後輪2・2は回転駆動される)。
【0029】
本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例であるHMT50は、いわゆる入力分割型(出力結合型)と呼ばれる形式の油圧−機械式変速装置である。
そして、HMT50を構成する差動機構51は、キャリア61と該キャリア61に回転可能に設けられたプラネタリギヤ62とからなるキャリア部63と、プラネタリギヤ62と噛合するサンギヤ64と、プラネタリギヤ62と噛合するインターナルギヤ65と、からなる三つの要素を備えており、キャリア部63が入力要素(駆動源であるエンジン5が接続されて駆動力が入力される部分)、サンギヤ64が入力分割要素(HST52の油圧ポンプ81が接続される部分)、インターナルギヤ65が出力要素(HST52の油圧モータ82が接続されて駆動力が出力される部分)の機能をそれぞれ果たす。
【0030】
入力分割型の油圧−機械式変速装置であるHMT50には、入力要素から入力分割要素に駆動力を伝達し、入力分割要素から静油圧式無段変速装置に駆動力を伝達し、静油圧式無段変速装置から出力要素に駆動力を伝達する第一の駆動力伝達経路と、入力要素から出力要素に直接駆動力を伝達する第二の駆動力伝達経路からなる計二つの駆動力伝達経路が形成されている。
HMT50の場合、第一の駆動力伝達経路は、キャリア部63からサンギヤ64、HST52を経てインターナルギヤ65に駆動力を伝達する経路であり、第二の駆動力伝達経路は、キャリア部63から直接インターナルギヤ65に駆動力を伝達する経路である。
【0031】
上記の如きHMT50は、例えばエンジン5の始動時など、HMT50内の差動機構51やHST52を構成する各部材(要素)が静止した状態から回転駆動される際には、第二の駆動力伝達経路を介して出力要素であるインターナルギヤ65に駆動力の一部が伝達され、各部材(要素)の挙動が不安定になり、機体(厳密にはHMT50)に強いショック(振動)が発生する。
【0032】
このようなショックは、HMT50を備えるトラクタ201の作業者(運転者)にとって不快であるばかりでなく、HMT50を構成する各構成部材(要素)の寿命や耐久性という観点から見ても好ましくない。
【0033】
そこで、本実施例のHMT50には制動手段53が設けられている。該制動手段53は、出力要素であるインターナルギヤ65の回転を制動するものであり、主にインターナルギヤ65に設けられたローター91と、ブレーキパッド92・93で構成されている。
ローター91はインターナルギヤ65に内嵌された略円盤形状の部材であり、その中央には孔が設けられてリング状となっている。ブレーキパッド92・93は同じく略円盤状の部材であり、その中央には孔が設けられてリング状となっている。ブレーキパッド92・93はそれぞれローター91の表裏の盤面に対向し、かつ制動手段53が作動しないときはブレーキパッド92・93の盤面とローター91の盤面とが接触しないように配置される(この状態を「解除」された状態とする)。制動手段53を作動させると、ブレーキパッド92・93がローター91を挟持し、ブレーキパッド92・93の盤面とローター91の盤面との接触部位にて発生する摩擦力によりインターナルギヤ65の回転が制動される。
【0034】
制動手段53は、例えば座席近傍に設けた操作手段(レバーやスイッチ等)を作業者が操作することにより制動・解除の切替が行われるように構成しても良く、あるいはコントローラ等の制御手段により、エンジン5が始動して、HMT50の入力分割要素(本実施例ではサンギヤ64)の回転数が所定の回転数以上になる時点(またはエンジン5が始動してから所定時間が経過し、結果的に入力分割要素の回転数が所定値以上となる時点)までは制動手段53が作動し、その後は制動手段53が解除される構成としても良い。
【0035】
図4は上記制動手段53を設けたHMT50を搭載したトラクタ201におけるエンジン始動・加速試験の結果を示すものである。
当該試験においては、HMT50は予め中立状態(HST52の油圧ポンプ81が回転駆動されても圧油を油圧モータ82に搬送しない状態)とし、エンジン5を時刻t0にて始動後、時刻t1から徐々にHST52の油圧ポンプ81を作動させてトラクタ201を加速走行させた。なお、図4中の細い二点鎖線は、常に制動手段53を解除した状態(従来のHMTと略同様の状態でHMT50を用いた場合)で試験を行ったものであり、図4中の太い実線は、時刻t0からt1までの間において制動手段53を作動させ、時刻t1以降は制動手段53を解除した状態(HMT50の本来の使用方法の実施の一例を用いた場合)で試験を行ったものである。
【0036】
図4に示す如く、常に制動手段53を解除した状態で試験を行った場合、時刻t0から時刻t1までの間でトラクタ201の前後方向(進行方向)の速度および加速度が正負の値の間で振動している。これは、HST52を作動させていない(走行を開始していない)にもかかわらず駆動力の一部が第二の駆動力伝達経路を介して後輪2・2に伝達されていることを示している。
【0037】
エンジン始動時においては、HST52を経てインターナルギヤ65を回転駆動する第一の駆動力伝達経路よりも直接インターナルギヤ65を回転駆動させる第二の駆動力伝達経路の方が回転駆動させるために要するトルクが小さくなる場合がある(第一の駆動力伝達経路は、HST52を中立にしている時であっても、少なくとも圧油(作動油)の粘性抵抗に抗して油圧ポンプ81を回転させるためのトルクを要する)。
このとき、駆動力の多くは第二の駆動力伝達経路を経て出力され、HMT50よりも下流側の駆動力伝達経路(副変速装置23等)の遊び分だけインターナルギヤ65が回転駆動される。HMT50よりも下流側の駆動力伝達経路(副変速装置23等)の遊びがなくなるまでインターナルギヤ65が回転駆動されると、第二の駆動力伝達経路を介してインターナルギヤ65を回転駆動させるために要するトルクが急激に増大する。すると今度はHST52を経てインターナルギヤ65を回転駆動する第一の駆動力伝達経路側に駆動力が伝達されるようになる。
そして、入力要素であるキャリア部63のプラネタリギヤ62の回転に応じてインターナルギヤ65が逆回転され、HMT50よりも下流側の駆動力伝達経路(副変速装置23等)の遊びが再度大きくなってくると、第二の駆動力伝達経路の方が第一の駆動力伝達経路に比べて回転駆動に要するトルクが小さいという状況が再び生じる。
上記の如き挙動を繰り返すことが、時刻t0から時刻t1までの間でトラクタ201の前後方向(進行方向)の速度および加速度が正負の値の間で振動する原因であり、結果としてトラクタ201の機体に前後方向の振動が発生する。
【0038】
また、時刻t1から時刻t2までの間でもトラクタ201の前後方向(進行方向)の速度および加速度が振動している。これは、入力分割要素であるサンギヤ64の回転数が所定の値以上となり、プラネタリギヤ62の回転方向が略一定の方向となる(正逆回転を繰り返さない状態となる)までは、トラクタ201の機体に前後方向の振動が発生し続けていることを示している。
【0039】
一方、時刻t0からt1までの間において制動手段53を作動させ、時刻t1以降は制動手段53を解除した状態で試験を行った場合、前記常に制動手段53を解除した状態で試験を行った場合の如くトラクタ201の前後方向(進行方向)の速度および加速度は不安定な挙動を起こすことなく、スムーズに加速することが可能である。
これは、エンジン始動時において、出力要素であるインターナルギヤ65を制動手段53により制動することにより、入力要素であるキャリア部63が、入力分割要素であるサンギヤ64を回転駆動するために要するトルクに比して、出力要素であるインターナルギヤ65を回転駆動するために要するトルクを増大させ、駆動力の大半を第一の駆動力伝達経路側に伝達させることによる。
このように構成することにより、エンジン始動から所定時間(本実施例の場合、時刻t0から時刻t1まで)の間にインターナルギヤ65はほとんど回転せず、サンギヤ64の回転数が十分に上昇する。従って、制動手段53を解除してHST52を作動させたとしても、第二の駆動力伝達経路を経てキャリア部63からインターナルギヤ65に伝達される駆動力が相対的に小さくなっているので、プラネタリギヤ62が正逆回転を繰り返すと入った不安定な挙動を起こすことがなく、機体にショックを発生することがないのである。
【0040】
以上の如く、いわゆる入力分割型(出力結合型)の油圧−機械式変速装置であるHMT50の差動機構51を構成する三つの要素のうち、出力要素(本実施例においてはインターナルギヤ65)に制動手段53を設けることにより、エンジン始動時および走行開始時の機体のショック(振動)を防止することが可能である。換言すれば、静止状態から駆動力が入力された時、および入力分割要素の回転数が所定値以上になるまでに油圧−機械式変速装置に発生するショック(振動)を防止することが可能である。
【0041】
以下では、図5および図6を用いて本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例である油圧−機械式変速装置(HMT)150について説明する。
【0042】
HMT150は主に、差動機構151、HST152、制動手段153等で構成される。HMT150は図1に示すトラクタ201に適用される場合、ミッションケース9内に配設される。
【0043】
差動機構151は、主にキャリア161と該キャリア161に回転可能に軸支された複数のプラネタリギヤ162・162・・・とからなるキャリア部163と、プラネタリギヤ162・162・・・と互いに噛合するサンギヤ164と、プラネタリギヤ162・162・・・と互いに噛合するインターナルギヤ165と、からなる三つの要素を備えている。
【0044】
HST152は、主に油圧ポンプ181と、油圧モータ182と、該油圧ポンプ181と油圧モータ182とを流体的に接続する油圧経路183とを備えている。油圧ポンプ181および油圧モータ182の詳細構成については、前記HST52の油圧ポンプ81および油圧モータ82と略同じである。
【0045】
図5および図6に示す如く、駆動源であるエンジン5から出力された駆動力は、駆動力伝達軸21、カップリング22を介してHMT150の入力軸154を回転駆動する。駆動力伝達軸21の先端部および入力軸154の先端部はそれぞれカップリング22にスプライン嵌合している。入力軸154は軸受を介してミッションケース9内に回転自在に軸支され、カップリング22とスプライン嵌合する先端部はミッションケース9の前方に突出している。入力軸154にはキャリア161が外嵌固定され、入力軸154とキャリア161とは一体的に回転する。
【0046】
キャリア161は略円盤状の部材であり、その盤面の中心(すなわち、入力軸154の軸中心)から等距離の位置に、複数のプラネタリ軸166・166・・・が突設されている。そして、該プラネタリ軸166・166・・・にはそれぞれ、プラネタリギヤ162・162・・・が回転自在に遊嵌(軸支)されている。
【0047】
サンギヤ164は、筒状部材である胴体部164aの外周面の一端にギヤ部164bが形成されるとともに、外周面の他端にはギヤ167が外嵌固定されている。胴体部164aは入力軸154に回転自在に遊嵌され、ギヤ部164bはプラネタリギヤ162と互いに噛合している。また、サンギヤ164に外嵌固定されたギヤ167は、HST152の油圧モータ182の出力軸に外嵌固定された出力ギヤ185と互いに噛合している。
また、胴体部164aの端部には、取付部材194を介してローター191が固定されている。
【0048】
インターナルギヤ165は、主に胴体部165a、ギヤ部165b、ギヤ部165cで構成される。胴体部165aは直径の異なる二つの筒状部材が積層された形状の部材であり、胴体部165aの直径が小さい筒部は、軸受を介してサンギヤ164の胴体部164aに回転自在に遊嵌される。また、胴体部165aの直径が小さい筒部の外周面にはギヤ部165bが形成され、該ギヤ部165bはHST152の油圧ポンプ181の入力軸に外嵌固定された入力ギヤ184と互いに噛合している。
一方、胴体部165aの直径が大きい筒部の内周面にはギヤ部165cが形成され、該ギヤ部165cはプラネタリギヤ162と互いに噛合する。
【0049】
サンギヤ164に外嵌固定されたギヤ167は、副変速装置23の入力ギヤ24とも互いに噛合している。エンジン5からHMT150に入力された駆動力は、HMT150内で変速された後、出力されて副変速装置23に伝達され、さらにデフギヤ25等を介して後輪2・2に伝達される(後輪2・2は回転駆動される)。
【0050】
本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例であるHMT150は、いわゆる入力分割型(出力結合型)と呼ばれる形式の油圧−機械式変速装置である。
そして、HMT150を構成する差動機構151は、キャリア161と該キャリア161に回転可能に設けられたプラネタリギヤ162とからなるキャリア部163と、プラネタリギヤ162と噛合するサンギヤ164と、プラネタリギヤ162と噛合するインターナルギヤ165と、からなる三つの要素を備えており、キャリア部163が入力要素(駆動源であるエンジン5が接続されて駆動力が入力される部分)、インターナルギヤ165が入力分割要素(HST152の油圧ポンプ181が接続される部分)、サンギヤ164が出力要素(HST152の油圧モータ182が接続されて駆動力が出力される部分)の機能をそれぞれ果たす。
【0051】
入力分割型の油圧−機械式変速装置であるHMT150には、入力要素から入力分割要素に駆動力を伝達し、入力分割要素から静油圧式無段変速装置に駆動力を伝達し、静油圧式無段変速装置から出力要素に駆動力を伝達する第一の駆動力伝達経路と、入力要素から出力要素に直接駆動力を伝達する第二の駆動力伝達経路からなる計二つの駆動力伝達経路が形成されている。
HMT150の場合、第一の駆動力伝達経路は、キャリア部163からインターナルギヤ165、HST152を経てサンギヤ164に駆動力を伝達する経路であり、第二の駆動力伝達経路は、キャリア部163から直接サンギヤ164に駆動力を伝達する経路である。
【0052】
上記の如きHMT150は、例えばエンジン5の始動時など、HMT150内の差動機構151やHST152を構成する各部材(要素)が静止した状態から回転駆動される際には、第二の駆動力伝達経路を介して出力要素であるサンギヤ164に駆動力の一部が伝達され、各部材(要素)の挙動が不安定になり、機体(厳密にはHMT150)に強いショック(振動)が発生する。
【0053】
このようなショックは、HMT150を備えるトラクタ201の作業者(運転者)にとって不快であるばかりでなく、HMT150を構成する各構成部材(要素)の寿命や耐久性という観点から見ても好ましくない。
【0054】
そこで、本実施例のHMT150には制動手段153が設けられている。該制動手段153は、出力要素であるサンギヤ164の回転を制動するものであり、主にサンギヤ164に取付部材194を介して設けられたローター191と、ブレーキパッド192・193で構成されている。
ローター191は略円盤形状の部材であり、その中央には孔が設けられてリング状となっている。ブレーキパッド192・193は同じく略円盤状の部材であり、その中央には孔が設けられてリング状となっている。ブレーキパッド192・193はそれぞれローター191の表裏の盤面に対向し、かつ制動手段153が作動しないときはブレーキパッド192・193の盤面とローター191の盤面とが接触しないように配置される(この状態を「解除」された状態とする)。制動手段153を作動させると、ブレーキパッド192・193がローター191を挟持し、ブレーキパッド192・193の盤面とローター191の盤面との接触部位にて発生する摩擦力によりサンギヤ164の回転が制動される。
【0055】
制動手段153は、例えば座席近傍に設けた操作手段(レバーやスイッチ等)を作業者が操作することにより制動・解除の切替が行われるように構成しても良く、あるいはコントローラ等の制御手段により、エンジン5が始動して、HMT150の入力分割要素(本実施例ではインターナルギヤ165)の回転数が所定の回転数以上になる時点(またはエンジン5が始動してから所定時間が経過し、結果的に入力分割要素の回転数が所定値以上となる時点)までは制動手段153が作動し、その後は制動手段153が解除される構成としても良い。
【0056】
以上の如く、いわゆる入力分割型(出力結合型)の油圧−機械式変速装置であるHMT150の差動機構151を構成する三つの要素のうち、出力要素(本実施例においてはサンギヤ164)に制動手段153を設けることにより、エンジン始動時および走行開始時の機体のショック(振動)を防止することが可能である。
【0057】
以下では、図7および図8を用いて本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例である油圧−機械式変速装置(HMT)250について説明する。
【0058】
HMT250は主に、差動機構251、HST252、制動手段253等で構成される。HMT250は図1に示すトラクタ201に適用される場合、ミッションケース9内に配設される。
【0059】
差動機構251は、主にキャリア261と該キャリア261に回転可能に軸支された複数のプラネタリギヤ262・262・・・とからなるキャリア部263と、プラネタリギヤ262・262・・・と互いに噛合するサンギヤ264と、プラネタリギヤ262・262・・・と互いに噛合するインターナルギヤ265と、からなる三つの要素を備えている。
【0060】
HST252は、主に油圧ポンプ281と、油圧モータ282と、該油圧ポンプ281と油圧モータ282とを流体的に接続する油圧経路283とを備えている。油圧ポンプ281および油圧モータ282の詳細構成については、前記HST52の油圧ポンプ81および油圧モータ82と略同じである。
【0061】
図7および図8に示す如く、駆動源であるエンジン5から出力された駆動力は、駆動力伝達軸21、カップリング22を介してHMT250の入力軸254を回転駆動する。駆動力伝達軸21の先端部および入力軸254の先端部はそれぞれカップリング22にスプライン嵌合している。入力軸254は軸受を介してミッションケース9内に回転自在に軸支され、カップリング22とスプライン嵌合する先端部はミッションケース9の前方に突出している。入力軸254にはキャリア261が外嵌固定され、入力軸254とキャリア261とは一体的に回転する。
【0062】
キャリア261は略円盤状の部材であり、その盤面の中心(すなわち、入力軸254の軸中心)から等距離の位置に、複数のプラネタリ軸266・266・・・が突設されている。そして、該プラネタリ軸266・266・・・にはそれぞれ、プラネタリギヤ262・262・・・が回転自在に遊嵌(軸支)されている。
【0063】
サンギヤ264は、筒状部材である胴体部264aの外周面の一端にギヤ部264b、他端にはギヤ部264cが形成されている。胴体部264aは入力軸254に回転自在に遊嵌され、ギヤ部264bはプラネタリギヤ262と互いに噛合している。また、ギヤ部264cは、HST252の油圧モータ282の出力軸に外嵌固定された出力ギヤ285と互いに噛合している。
また、胴体部264aの端部には、取付部材294を介してローター291が固定されている。
【0064】
インターナルギヤ265は、主に胴体部265a、ギヤ部265b、ギヤ部265cで構成される。胴体部265aは直径の異なる二つの筒状部材が積層された形状の部材であり、胴体部265aの直径が小さい筒部は、軸受を介して入力軸254に回転自在に遊嵌される。また、胴体部265aの直径が小さい筒部の外周面にはギヤ部265bが形成され、該ギヤ部265bはHST252の油圧ポンプ281の入力軸に外嵌固定された入力ギヤ284と互いに噛合している。一方、胴体部265aの直径が大きい筒部の内周面にはギヤ部265cが形成され、該ギヤ部265cはプラネタリギヤ262と互いに噛合する。
【0065】
サンギヤ164のギヤ部164cは、副変速装置23の入力ギヤ24とも互いに噛合している。エンジン5からHMT250に入力された駆動力は、HMT250内で変速された後、出力されて副変速装置23に伝達され、さらにデフギヤ25等を介して後輪2・2に伝達される(後輪2・2は回転駆動される)。
【0066】
本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例であるHMT250は、いわゆる入力分割型(出力結合型)と呼ばれる形式の油圧−機械式変速装置である。
そして、HMT250を構成する差動機構251は、キャリア261と該キャリア261に回転可能に設けられたプラネタリギヤ262とからなるキャリア部263と、プラネタリギヤ262と噛合するサンギヤ264と、プラネタリギヤ262と噛合するインターナルギヤ265と、からなる三つの要素を備えており、キャリア部263が入力要素(駆動源であるエンジン5が接続されて駆動力が入力される部分)、インターナルギヤ265が入力分割要素(HST252の油圧ポンプ281が接続される部分)、サンギヤ264が出力要素(HST252の油圧モータ282が接続されて駆動力が出力される部分)の機能をそれぞれ果たす。
【0067】
入力分割型の油圧−機械式変速装置であるHMT250には、入力要素から入力分割要素に駆動力を伝達し、入力分割要素から静油圧式無段変速装置に駆動力を伝達し、静油圧式無段変速装置から出力要素に駆動力を伝達する第一の駆動力伝達経路と、入力要素から出力要素に直接駆動力を伝達する第二の駆動力伝達経路からなる計二つの駆動力伝達経路が形成されている。
HMT250の場合、第一の駆動力伝達経路は、キャリア部263からインターナルギヤ265、HST252を経てサンギヤ264に駆動力を伝達する経路であり、第二の駆動力伝達経路は、キャリア部263から直接サンギヤ264に駆動力を伝達する経路である。
【0068】
上記の如きHMT250は、例えばエンジン5の始動時など、HMT250内の差動機構251やHST252を構成する各部材(要素)が静止した状態から回転駆動される際には、第二の駆動力伝達経路を介して出力要素であるサンギヤ264に駆動力の一部が伝達され、各部材(要素)の挙動が不安定になり、機体(厳密にはHMT250)に強いショック(振動)が発生する。
【0069】
このようなショックは、HMT250を備えるトラクタ201の作業者(運転者)にとって不快であるばかりでなく、HMT250を構成する各構成部材(要素)の寿命や耐久性という観点から見ても好ましくない。
【0070】
そこで、本実施例のHMT250には制動手段253が設けられている。該制動手段253は、出力要素であるサンギヤ264の回転を制動するものであり、主にサンギヤ264に取付部材294を介して設けられたローター291と、ブレーキパッド292・293で構成されている。
ローター291は略円盤形状の部材であり、その中央には孔が設けられてリング状となっている。ブレーキパッド292・293は同じく略円盤状の部材であり、その中央には孔が設けられてリング状となっている。ブレーキパッド292・293はそれぞれローター291の表裏の盤面に対向し、かつ制動手段253が作動しないときはブレーキパッド292・293の盤面とローター291の盤面とが接触しないように配置される(この状態を「解除」された状態とする)。制動手段253を作動させると、ブレーキパッド292・293がローター291を挟持し、ブレーキパッド292・293の盤面とローター291の盤面との接触部位にて発生する摩擦力によりサンギヤ264の回転が制動される。
【0071】
制動手段253は、例えば座席近傍に設けた操作手段(レバーやスイッチ等)を作業者が操作することにより制動・解除の切替が行われるように構成しても良く、あるいはコントローラ等の制御手段により、エンジン5が始動して、HMT250の入力分割要素(本実施例ではインターナルギヤ265)の回転数が所定の回転数以上になる時点(またはエンジン5が始動してから所定時間が経過し、結果的に入力分割要素の回転数が所定値以上となる時点)までは制動手段253が作動し、その後は制動手段253が解除される構成としても良い。
【0072】
以上の如く、いわゆる入力分割型(出力結合型)の油圧−機械式変速装置であるHMT250の差動機構251を構成する三つの要素のうち、出力要素(本実施例においてはサンギヤ264)に制動手段253を設けることにより、エンジン始動時および走行開始時の機体のショック(振動)を防止することが可能である。
【0073】
油圧−機械式変速装置の第二実施例であるHMT150と、第三実施例であるHMT250とは、差動機構を構成する三要素が対応する機能の組み合わせが同じ(キャリア部が入力要素、インターナルギヤが入力分割要素、サンギヤが出力要素)であるが、HSTを構成する油圧ポンプおよび油圧モータの配置が異なる。
すなわち、HMT150の場合は油圧ポンプ181および油圧モータ182はいずれも入力軸154がミッションケース9の外部に突出している側に設けられているのに対して、HMT250の場合は油圧ポンプ281は入力軸254がミッションケース9の外部に突出している側に設けられ、油圧モータ282は入力軸254が突出している方向とは逆側に設けられており、ちょうど油圧ポンプ281と油圧モータ282とに挟まれた位置に差動機構251を設けた配置となっている。
このように、HSTを構成する油圧ポンプおよび油圧モータは差動機構の一側に配置することも、油圧ポンプと油圧モータとで差動機構を挟んで配置することも可能であり、当該HMTを備える走行車両等の他の構成部材との干渉や、重量バランスを考慮して適宜配置を変更することが可能である。
【0074】
なお、上述の油圧−機械式変速装置の第一実施例であるHMT50、第二実施例であるHMT150、第三実施例であるHMT250は、いずれも差動機構の出力要素に制動手段を設けたが、制動手段の配設場所はこれに限定されず、例えば出力要素に噛合するギヤに設けたり、あるいは出力要素と一体的に回転する軸等が設けられている場合には該軸に設けても同様の効果を奏する。
また、本実施例の制動手段はローターとブレーキパッドの組み合わせであったが、これに限定されず、出力要素を制動(回転不能または回転に要するトルクが大きい状態)および解除可能な構成であれば同様の効果を奏する。例えば、出力要素にギヤを形成するとともに、該ギヤと噛合して出力要素を回転不能とする位置と、出力要素と干渉しない位置との間で移動可能に構成された部材(ストッパー)等を設けても良い。
【0075】
さらに、本発明に係る制動手段は、いわゆる入力分割型(出力結合型)の油圧−機械式変速装置に広く適用可能である。すなわち、第一実施例であるHMT50の如く、▲1▼入力要素がキャリア部、入力分割要素がサンギヤ、出力要素がインターナルギヤの場合や、第二実施例であるHMT150および第三実施例であるHMT250の如く、▲2▼入力要素がキャリア部、入力分割要素がインターナルギヤ、出力要素がサンギヤの場合、に限定されず、▲3▼入力要素がサンギヤ、入力分割要素がキャリア部、出力要素がインターナルギヤの場合、▲4▼入力要素がサンギヤ、入力分割要素がインターナルギヤ、出力要素がキャリア部の場合、▲5▼入力要素がインターナルギヤ、入力分割要素がサンギヤ、出力要素がキャリア部の場合、▲6▼入力要素がインターナルギヤ、入力分割要素がキャリア部、出力要素がサンギヤの場合、のいずれにも適用可能である。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0077】
即ち、請求項1に示す如く、差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置において、
差動機構は、キャリアと該キャリアに回転可能に軸支されたプラネタリギヤとからなるキャリア部と、プラネタリギヤと噛合するサンギヤと、プラネタリギヤと噛合するインターナルギヤと、からなる三つの要素を備え、静油圧式無段変速装置は、油圧ポンプと、油圧モータと、油圧ポンプと油圧モータとを流体的に接続する油圧経路とを備え、
前記差動装置の三つの要素は、それぞれ、駆動源が接続されて駆動力が入力される入力要素または静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが接続される入力分割要素または静油圧式無段変速装置の油圧モータが接続されて駆動力が出力される出力要素、のいずれかに対応して出力要素の回転を制動する制動手段を設けたので、静止状態から駆動力が入力された時、および入力分割要素の回転数が所定値以上になるまでに油圧−機械式変速装置に発生するショック(振動)を防止することが可能である。
【0078】
請求項2に示す如く、前記入力要素はキャリア部であり、前記入力分割要素はサンギヤであり、前記出力要素はインターナルギヤであるので、静止状態から駆動力が入力された時、および入力分割要素の回転数が所定値以上になるまでに油圧−機械式変速装置に発生するショック(振動)を防止することが可能である。
【0079】
請求項3に示す如く、前記入力要素はキャリア部であり、前記入力分割要素はインターナルギヤであり、前記出力要素はサンギヤであるので、静止状態から駆動力が入力された時、および入力分割要素の回転数が所定値以上になるまでに油圧−機械式変速装置に発生するショック(振動)を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油圧−機械式変速装置が適用される走行車両の左側面図。
【図2】本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例に係るスケルトン図。
【図3】本発明の油圧−機械式変速装置の第一実施例の断面図。
【図4】本発明の油圧−機械式変速装置が適用された走行車両のエンジン始動・加速試験の結果を示す図。
【図5】本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例に係るスケルトン図。
【図6】本発明の油圧−機械式変速装置の第二実施例の断面図。
【図7】本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例に係るスケルトン図。
【図8】本発明の油圧−機械式変速装置の第三実施例の断面図。
【符号の説明】
50 油圧−機械式変速装置(HMT)
51 差動機構
52 静油圧式無段変速装置(HST)
53 制動手段
61 キャリア
62 プラネタリギヤ
63 キャリア部
64 サンギヤ
65 インターナルギヤ
81 油圧ポンプ
82 油圧モータ
83 油圧経路

Claims (3)

  1. 差動機構と静油圧式無段変速装置とを組み合わせた油圧−機械式変速装置において、
    差動機構は、キャリアと該キャリアに回転可能に軸支されたプラネタリギヤとからなるキャリア部と、プラネタリギヤと噛合するサンギヤと、プラネタリギヤと噛合するインターナルギヤと、からなる三つの要素を備え、静油圧式無段変速装置は、油圧ポンプと、油圧モータと、油圧ポンプと油圧モータとを流体的に接続する油圧経路とを備え、
    前記差動装置の三つの要素は、それぞれ、駆動源が接続されて駆動力が入力される入力要素または静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが接続される入力分割要素または静油圧式無段変速装置の油圧モータが接続されて駆動力が出力される出力要素、のいずれかに対応して出力要素の回転を制動する制動手段を設けた、ことを特徴とする油圧−機械式変速装置。
  2. 前記入力要素はキャリア部であり、前記入力分割要素はサンギヤであり、前記出力要素はインターナルギヤである、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧−機械式変速装置。
  3. 前記入力要素はキャリア部であり、前記入力分割要素はインターナルギヤであり、前記出力要素はサンギヤである、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧−機械式変速装置。
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DE102010029866A1 (de) * 2010-06-09 2011-12-15 Zf Friedrichshafen Ag Stufenloses Leistungsverzweigungsgetriebe mit einem Variator
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JP2019049296A (ja) * 2017-09-08 2019-03-28 いすゞ自動車株式会社 油圧機械式無段変速機

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