JP2005016448A - 内接型ギヤポンプのインナーロータ - Google Patents

内接型ギヤポンプのインナーロータ Download PDF

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Katsuaki Hosono
克明 細野
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Abstract

【課題】クランク軸から伝達される回転モーメントによる部分的な応力集中を緩和する。
【解決手段】クランク軸6及び取付孔5は、同一円上の四つの主円弧部11,21と隣り合う主円弧部11,11,21,21を連結する四つの直線状連結部12,12,12,12とを備え、対向する連結部12,12,22,22がほぼ平行な断面形状を有する。主円弧部11,21と直線状連結部12,22とのなす回転方向4箇所の隅部13,23のうち、クランク軸6の3箇所の隅部13,13,13から取付孔5に回転力が加わるから、1箇所に発生する応力が従来の略4分の3となる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アウターロータと歯合する内接型ギヤポンプのインナーロータに係わり、特に軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔が前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記取付孔に挿入した前記駆動軸により回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に広く知られた内接型ギヤポンプとしては、インナーロータ及びアウターロータにトロコイド歯形を利用したトロコイド型ポンプがある。このトロコイド型ポンプは、インナーロータを回転駆動することによってインナーロータに噛み合うアウターロータをインナーロータと同一方向に回転させ、この回転によって各ロータ同士の接触部間に形成されるポンプ室の容積を増減させて吸引ポートから流体を吸引し、吐出ポートから吐出すものであって、効率の良さや製作し易いなどの利点を持つため、広く普及している。
【0003】
上記のような内接型ギヤポンプは、原動機のオイルポンプとして用いられ、原動機のクランク軸を前記駆動軸として前記インナーロータが回転駆動される(例えば、特許公報1)。
【0004】
その一例を、図17により説明すると、内接型ギヤポンプ1は、ケーシング2のロータ室2A内においてアウターロータ3にインナーロータ4が偏心状態で内接して組み付けられたものである。アウターロータ3は内周に円弧歯に形成した内歯部3Aを有し、一方インナーロータ4は外周にトロコイド歯に形成した外歯部4Aを有し、複数の空隙部を形成して歯合している。内歯部3A及び外歯部4Aの数は、インナーロータ4の方が1つ少なくなっている。そして、前記アウターロータ3は、ケーシング2のロータ室2A内に回転自在に嵌合されている。また前記インナーロータ4は、その中心軸に取付孔5を有し、この取付孔5に駆動軸たるクランク軸6が挿入接続さている。さらに前記ケーシング2のロータ室2Aには両ロータ3,4の中心軸を挟んで両側に吸入口7と吐出口8とが形成されている。そして、使用時には、クランク軸6を介してインナーロータ4が回転運動し、それに伴い内歯部3Aと外歯部4Aとの噛合によりアウターロータ3も同方向へ回転し、それぞれの空隙部の容積がアウターロータ3及びインナーロータ4が一回転する間に大小に変化し吸入口7でオイルを吸入し、吐出口8でオイルを吐き出すというものである。
【0005】
そして、エンジンのクランク軸6によりインナーロータ4を回転する内接型ギヤポンプ1では、前記ケーシング2にアウターロータ3とインナーロータ4を組み込んだ後、インナーロータ4の取付孔5にクランク軸6を挿入接続するなどのために、取付孔5とクランク軸6との間に挿入可能な隙間を設け、インナーロータ4の中心軸の芯出しをケーシング2との係合により得るようにしている。
【0006】
例えば、その係合構造としては、インナーロータの側面に軸方向に突出した筒状部を設け、この筒状部を支承する支承孔部をケーシングに設け(例えば特許公報2)、該支承孔部によりインナーロータの回転中心を規定する。この場合、取付孔とクランク軸との間の隙間より、筒状部と支承孔部との間の隙間を小さく設定する。
【0007】
上記のように取付孔とクランク軸との間に所定の隙間を設けたものでは、クランク軸の回転を取付孔に確実に伝達するため、クランク軸の外周に一対の平坦面を形成している(例えば特許文献1、特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−343985号公報(図8、段落0019段)
【特許文献2】
特開昭63−223382号公報(第2頁右下欄最下行〜第3頁左上欄第1行、第5図、第6図、第8図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のクランク軸と取付孔との係合構造を図18及び図19に示すと、クランク軸6の外周に平坦面6A,6Aを形成し、前記クランク軸6を挿入接続する取付孔5もほぼ同一形状に形成し、それらクランク軸6の平坦面6Aと取付孔5との間には所定の隙間Cが設けられている。尚、図18及び図19では説明のために、隙間Cを実際の寸法よりも大きく図示している。したがって、図18及び図19に示す構造では、クランク軸6の平坦面6Aの回転方向一側に位置する2箇所の隅部6Bにおいて、取付孔5に回転モーメントが伝達される。このため取付孔5の隅部5Aの近傍に応力が集中し、耐久性の低下を招き、また、伝達箇所で高い面圧が発生するため、異音が生じ易い。そして、インナーロータに焼結部品を用いた場合、最大応力に対応して、インナーロータ全体の強度を確保する必要がある。
【0010】
また、クランク軸6の角である隅部6Bが取付孔5に当たるため、隅部6Bが当たる部分で取付孔5が磨耗する問題があり、さらに、取付孔5とクランク軸6との間に硬質な異物が侵入すると、取付孔5が損傷し易かった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、駆動軸から伝達される回転モーメントによる部分的な応力集中を緩和することができる内接型ギヤポンプのインナーロータを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔は前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記取付孔に挿入した前記駆動軸により回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータにおいて、前記駆動軸及び前記取付孔は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部を連結する四つの直線状連結部とを備えた断面形状を有するものである。
【0013】
この請求項1の構成によれば、主円弧部と直線状連結部とのなす回転方向4箇所の隅部のうち、駆動軸の3箇所の隅部から取付孔に回転力が加わるから、1箇所に発生する応力は略4分の3となる。また、局部的な応力集中を抑制できるから、異音などの発生を防止できる。
【0014】
請求項2の発明は、軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔は前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記駆動軸により前記取付孔に回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータにおいて、前記駆動軸は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部を連結する四つの連結部とを備えた断面形状を有し、前記取付孔の連結部は、内側に突出する大円弧状をなすものである。
【0015】
請求項2の構成によれば、駆動軸の連結部と取付孔の大円弧状をなす連結部とが線接触した状態で、駆動軸の回転力が取付孔に伝達されるため、取付孔に発生する局部的応力値を低下させることができる。
【0016】
請求項3の発明は、軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔は前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記駆動軸により前記取付孔に回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータにおいて、前記駆動軸は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部の両端を連結する四つの連結部とを備えた断面形状を有し、前記取付孔の連結部の両端側に、小半径の凸状小円弧部を設けたものである。
【0017】
請求項3の構成によれば、駆動軸の連結部と取付孔の連結部の凸状小円弧部の一方とが線接触した状態、又は駆動軸の連結部と取付孔の連結部とが面接触した状態で、駆動軸の回転力が取付孔に伝達されるため、取付孔に発生する局部的応力を低下させることができる。
【0018】
また、請求項4の発明は、前記連結部は、前記凸状小円弧部の内端より外側に位置するものである。
【0019】
請求項4の構成によれば、駆動軸の連結部と取付孔の連結部の凸状小円弧部の少なくとも一方とが線接触した状態で、駆動軸の回転力が取付孔に伝達されるため、取付孔に発生する局部的応力を低下させることができる。
【0020】
また、請求項5の発明は、前記主円弧部と前記連結部との連結箇所の駆動軸隅部に対応して、前記取付孔の隅部に外側に凹んだ凹部を設けたものである。
【0021】
請求項5の構成によれば、凹部を設けることにより、駆動軸の隅部が取付孔の隅部に当たることがない。
【0022】
また、請求項6の発明は、前記凹部は、小半径の円弧状切り欠き部からなるものである。
【0023】
請求項6の構成によれば、取付孔の隅部箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0024】
また、請求項7の発明は、前記凹部は、前記取付孔の前記円弧部の端部を外側に凹ませたものである。
【0025】
請求項7の構成によれば、取付孔の隅部箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0026】
また、請求項8の発明は、前記インナーロータが鉄系焼結部材である。
【0027】
請求項8の構成によれば、鉄系焼結部材であるから、取付孔の形状加工が容易である。
【0028】
また、請求項9の発明は、前記焼結部材は、Fe−Cu−C系で密度が6.6〜7.0cmである。
【0029】
請求項9の構成によれば、従来品よりも低い密度の部品で対応が可能となり、製品コストの削減が可能となる。
【0030】
また、請求項10の発明は、前記駆動軸が、原動機のクランク軸に連結されているものである。
【0031】
請求項10の構成によれば、原動機の振動条件においても、異音の発生を防止し、耐久性に優れたインナーロータが得られる。
【0032】
【発明の実施形態】
以下、本発明の成形用金型装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、上記図17〜図19で説明した部位には同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
【0033】
図1〜図2は本発明の第1実施形態を示し、同図において、前記クランク軸6は、その軸芯6Sを中心とする同一円上に位置する四つの主円弧部11,11,11,11と、周方向に隣り合う主円弧部11,11,11,11を連結する直線状連結部12,12,12,12とを備え、軸芯6Sを中心として対向する連結部12,12同士が平行な断面形状を有し、上下左右対称である。そして、前記主円弧部11と連結部12との交差位置が隅部13である。このようにクランク軸6の断面は正方形の角部を円弧で結んだ形状をなし、実際の製法においては、例えば、S45Cなどの炭素鋼からなる断面円形の軸を用い、その外周面の4箇所を平坦面に形成することにより得られる。
【0034】
前記インナーロータ4に形成された前記取付孔5は、その軸芯5Sを中心とする同一円上に位置する四つの主円弧部21,21,21,21と、周方向に隣り合う主円弧部21,21を連結する直線状連結部22,22,22,22とを備え、軸芯5Sを中心として対向する連結部12,12同士が平行な断面形状を有し、上下左右対称である。そして、前記主円弧部21と連結部22との交差位置が隅部23である。また、図中Kは、取付孔5の基本円であり、この基本円K上に前記主円弧部21が位置する。
【0035】
そして、図2の説明図に示すように、前記主円弧部11,21の隙間Xは0.5mm以下、連結部12,22の隙間Yは0.05〜0.25mmに設定されている。
【0036】
また、前記インナーロータ4は、Feを主成分としたFe−Cu−C系焼結部材であり、原料粉末を圧縮成形して圧粉体を形成し、これを焼結して得られるものである。そして、この例では前記クランク軸6はエンジンなどの原動機に用いるものであり、内接型ギヤポンプ1は、前記原動機の内接型オイルポンプであり、この条件を使用条件を満たすため、前記インナーロータ4の密度を6.6〜7.0cm(6.6cm以上〜7.0cm以下)としている。また、前記インナーロータ4の引張り強度は、35〜40kg/mm程度である。
【0037】
次に、前記構成につき、その作用を説明すると、原動機を駆動してクランク軸6が回転すると、直線状連結部12,22間に間隔Yが設けられているため、クランク軸6の主円弧部11の回転方向先端側の隅部13が、取付孔5の隅部23に当接してインナーロータ4に回転力が伝達される。この場合、主円弧部11,11,11,11の回転方向先端側の四箇所の隅部13,13,13,13のうち、いずれか三箇所の隅部13,13,13が取付孔5の隅部23,23,23に圧接して回転が伝達される。
【0038】
したがって、従来はクランク軸と取付孔とが2箇所の隅部で回転力を伝達していたのに対して、3箇所の隅部13,13,13で回転力を伝達するため、取付孔5の隅部23箇所に発生する応力をほぼ4分の3に抑えることができる。
【0039】
このように本実施形態では、請求項1に対応して、軸芯6Sに駆動軸たるクランク軸6を挿入する取付孔5を形成し、この取付孔5はクランク軸6にほぼ対応する断面形状を有し、取付孔5に挿入したクランク軸6により回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータ4において、クランク軸6及び取付孔5は、同一円上の四つの主円弧部11,21と隣り合う主円弧部11,11,21,21を連結する四つの直線状連結部12,12,12,12とを備え、対向する連結部12,12,22,22がほぼ平行な断面形状を有するから、主円弧部11,21と直線状連結部12,22とのなす回転方向4箇所の隅部13,23のうち、クランク軸6の3箇所の隅部13,13,13から取付孔5に回転力が加わるから、1箇所に発生する応力が従来の略4分の3となり、クランク軸6から伝達される回転モーメントによる部分的な応力集中を緩和することができる。
【0040】
また、このように本実施形態では、請求項8に対応して、インナーロータ4が鉄系焼結部材であるから、取付孔5の形状加工が容易である。
【0041】
また、このように本実施形態では、請求項9に対応して、前記焼結部材は、Fe−Cu−C系で密度が6.6〜7.0cmであるから、従来品よりも低い密度の部品で対応が可能となり、製品コストの削減が可能となる。
【0042】
また、このように本実施形態では、請求項10に対応して、前記駆動軸が、原動機のクランク軸6に連結されているから、原動機の振動条件においても、異音の発生を防止し、耐久性に優れたインナーロータが得られる。
【0043】
図3〜図5は本発明の第2実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記取付孔5の隅部23は、凹部たる小半径の円弧状切り欠き部24により構成され、この円弧状切り欠き部24は外側に凹んでいる。尚、円弧状切り欠き部24の小半径とは、円弧状切り欠き部24の半径が少なくとも主円弧部21の半径より小さいことを意味する。
【0044】
図4に示すように、前記円弧状切り欠き部24の中心S1は取付孔5内に位置し、半径R1が1〜5mmに形成されている。また、直線状連結部22に対する円弧状切り欠き部24の深さtは0.5〜2mmに形成されている。この場合、半径R1が1mm未満では、応力集中が大きくなり、好ましくなく、半径R1が5mmを超えると、クランク軸6とインナーロータ4の伝達部の面積が小さくなり、発生応力が過大となる恐れがある。また、深さtは、0.5mm未満では、切り欠きとしての役目を果たさず、深さtが2mmを超えると、インナーロータ4の強度の低下が大きくなる問題がある。
【0045】
したがって、主円弧部21と直線状連結部22との交差箇所である隅部23に円弧状切り欠き部24を設けることにより、クランク軸6の隅部13が取付孔5に当たることがなくなる。
【0046】
このように本実施形態では、請求項5に対応して、主円弧部11と連結部12との連結箇所の駆動軸隅部13に対応して、取付孔5の隅部23に外側に凹んだ凹部たる小半径の円弧状切り欠き部24を設けたから、クランク軸6の隅部13が取付孔5の隅部23に当たることがなく、取付孔5の隅部23箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0047】
また、このように本実施形態では、請求項6に対応して、凹部は、小半径の円弧状切り欠き部24からなるから、取付孔5の隅部箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0048】
図6〜図7は本発明の第3実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記取付孔5の連結部22Aを、内側に突出する大円弧状に形成している。前記連結部22Aは中央部分で最大に突出し、この中央部分と前記クランク軸6の直線状連結部12との間の寸法を前記隙間Yの寸法としており、取付孔5の連結部22Aの両端には隅部23が形成され、連結部22Aの突出高さHは、0.05〜0.25mmである。尚、この突出高さHとは連結部22Aの中央部分と両端の隅部23の高さの差である。また、連結部22Aの半径R2は取付孔5の各部の寸法と前記突出高さHにより決まる。この場合、突出高さHが0.05mm未満では、半径R2の曲率は大きくなり過ぎ、クランク軸6との接触に対し、発生応力の削減の効果が充分に得られない。また、半径R2が0.25mmを超えると、クランク軸6との接触部位が中心軸方向に大きくずれる結果を招き、すなわち前記接触部位と軸芯6Sとの間隔が狭まり、同一の伝達トルクに対して発生応力が上がる傾向が強いため、避けるべきである。
【0049】
したがって、回転時には、平面であるクランク軸6の直線状連結部12と曲面である取付孔5の円弧状の連結部22Aとが線接触することにより、クランク軸6から取付孔5に回転力が伝達されるため、隅部同士による場合に比べて、取付孔5における部分的な応力集中を防止できる。
【0050】
このように本実施形態では、請求項2に対応して、クランク軸6は、同一円上の四つの主円弧部11,11,11,11と隣り合う主円弧部11,11,11,11の両端を連結する四つの直線状連結部12,12,12,12とを備え、対向する連結部12,12,12,12がほぼ平行な断面形状を有し、取付孔5は、同一円上の四つの主円弧部21,21,21,21と隣り合う主円弧部11,11,11,11の両端を連結する四つの連結部とを備え、取付孔5の連結部22Aは、内側に突出する大円弧状をなすから、クランク軸6の連結部12と取付孔5の大円弧状をなす連結部22Aとが線接触した状態で、クランク軸6の回転力が取付孔5に伝達されるため、取付孔5に発生する局部的応力値を低下させることができる。
【0051】
図8は本発明の第4実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、上記第3実施形態の構成において、隅部23に前記円弧状切り欠き部24を形成している。
【0052】
このように本実施形態では、連結部22Aを内側に突出する大円弧状に形成し、凹部たる円弧状切り欠き部24を備えるから、請求項2,5及び6に対応して、上記各実施形態と同様な作用・効果を奏する。
【0053】
図9〜図10は本発明の第5実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、第3実施形態の隅部に、凹部たる逃げ凹部25を形成している。この逃げ凹部25は、主円弧部21の端部21Tを外側に凹ませ、該端部21Tと前記連結部22Aの端部とを円弧隅部26により連結する。前記端部21Tは前記基本円Kより外側に位置し、この例では、端部21Tは基本円Kの接線である。そして、前記端部21Tと前記連結部22Aの端部とを円弧隅部26で連結し、この円弧隅部26の半径R3は1〜5mmであり、基本円Kに対する円弧隅部26の深さUは0.5〜2mmに形成されている。この場合、半径R3が1mm未満の場合、応力の集中を招き易く、半径R3が5mmを超えると、クランク軸6とインナーロータ4との接触部の面積が小さくなり、応力過大を生じ易い。また、深さUは、0.5mm未満では、逃げの効果が充分でなく、2mmを超えると、インナーロータ4の強度の低下が大きくなり好ましくない。
【0054】
したがって、主円弧部21と直線状連結部22との交差箇所である隅部に逃げ凹部25を設けることにより、クランク軸6の隅部13が取付孔5に当たることがなくなる。
【0055】
このように本実施形態では、連結部22Aを内側に突出する大円弧状に形成し、凹部たる逃げ凹部25を設けたから、請求項2及び5に対応して、上記各実施形態と同様な作用・効果を奏する。
【0056】
また、このように本実施形態では、請求項7に対応して、凹部は、取付孔5の円弧部21の端部21Tを外側に凹ませたから、取付孔5の隅部箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0057】
図11は本発明の第6実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記直線状連結部22の両端側に小半径の凸状小円弧部31,31を設けている。この凸状小円弧部31の端部には隅部23が形成され、直線状連結部22の突出高さHは、0.05〜0.25mmであり、凸状小円弧部31の半径R4は3〜15mmである。尚、前記突出高さとは連結部22と隅部23の高さの差である。この場合、突出高さHが0.05mm未満では、インナーロータ4の製作精度の影響を受け易く、応力の緩和の目的を充分に果さない恐れがある。突出高さHが0.25mmを超えると、それ以上大きくしても、応力の緩和についての効果が増すことがなく、かえってインナーロータ4の強度を低下させる恐れがある。半径R4は、曲率小では応力が過大となり、曲率大ではクランク軸6との接触部位が中心軸方向へ移動して充分なトルク伝達に支障が起きる恐れがあるため、3〜15mmの範囲が好ましい。
【0058】
したがって、回転時には、平面であるクランク軸6の直線状連結部12と曲面である取付孔5の凸状小円弧部31とが線接触するか、直線状連結部12と連結部22とが面接触することにより、クランク軸6から取付孔5に回転力が伝達されるため、隅部同士の場合に比べて、取付孔5における部分的な応力集中を防止できる。
【0059】
このように本実施形態では、請求項3に対応して、クランク軸6は、同一円上の四つの主円弧部11,11,11,11と隣り合う主円弧部11,11,11,11の両端を連結する四つの連結部12,12,12,12とを備え、対向する連結部12,12,12,12がほぼ平行な断面形状を有し、取付孔5の連結部22,22,22,22の両端側に、小半径の凸状小円弧部31,31を設けたから、クランク軸6の連結部12と取付孔5の連結部22の凸状小円弧部31,31の一方とが線接触した状態、又はクランク軸6の連結部12と取付孔5の連結部22とが面接触した状態で、クランク軸6の回転力が取付孔5に伝達されるため、取付孔5に発生する局部的応力値を低下させることができる。
【0060】
図12は本発明の第7実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、第6実施形態と同様に、中央の直線状連結部22の両端側に前記凸状小円弧部31,31を設け、この凸状小円弧部31の端部に前記円弧状切り欠き部24を設けている。すなわち主円弧部21と凸状小円弧部31との隅部を円弧状切り欠き部24としている。
【0061】
このように本実施形態では、取付孔5の連結部22,22,22,22の両端側に、小半径の凸状小円弧部31,31を設け、凹部として円弧状切り欠き部24を備えるから、請求項3,5及び6に対応して、上記各実施形態と同様な作用・効果を奏する。
【0062】
図13は本発明の第8実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、第7実施形態と同様に、中央の直線状連結部22の両端側に前記凸状小円弧部31,31を設け、この凸状小円弧部31の端部と主円弧部21との間に前記逃げ凹部25を設けている。
【0063】
このように本実施形態では、取付孔5の連結部22,22,22,22の両端側に、小半径の凸状小円弧部31,31を設け、凹部として逃げ凹部25を備えるから、請求項3,5及び7に対応して、上記各実施形態と同様な作用・効果を奏する。
【0064】
図14は本発明の第9実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記直線状連結部22が前記凸状小円弧部31,31の内端31A,31Aより外側に位置し、その凸状小円弧部31,31の内端31A,31Aとクランク軸5の連結部12との間が隙間Yになっている。この凸状小円弧部31の突出高さHは、0.05〜0.25mmである。尚、この突出高さHとは、凸状小円弧部31の内端31Aと隅部23の高さの差であり、同時に凸状小円弧部31の内端と連結部22の高さの差である。そして、連結部22の延長線上に前記隅部23が位置する。尚、連結部22は両端側の凸状小円弧部31,31の内端31A,31Aを結んだ仮想よりより外側にあればよく、直線でも曲線でよい。この場合、突出高さHが0.05mm未満では、インナーロータ4の製作精度の影響を受け易く、応力の緩和の目的を充分に果さない恐れがある。突出高さHが0.25mmを超えると、それ以上大きくしても、応力の緩和についての効果が増すことがなく、かえってインナーロータ4の強度を低下させる恐れがある。半径R4は、曲率小では応力が過大となり、曲率大ではクランク軸6との接触部位が中心軸方向へ移動して充分なトルク伝達に支障が起きる恐れがあるため、3〜15mmの範囲が好ましい。
【0065】
したがって、回転時には、平面であるクランク軸6の直線状連結部12と曲面である取付孔5の凸状小円弧部31とが線接触するか、直線状連結部12と2つ前記凸状小円弧部31,31が線接触することにより、クランク軸6から取付孔5に回転力が伝達されるため、隅部同士の場合に比べて、取付孔5における部分的な応力集中を防止できる。
【0066】
このように本実施形態では、請求項3に対応して、クランク軸6は、同一円上の四つの主円弧部11,11,11,11と隣り合う主円弧部11,11,11,11の両端を連結する四つの連結部12,12,12,12とを備え、対向する連結部12,12,12,12がほぼ平行な断面形状を有し、取付孔5の連結部22,22,22,22の両端側に、小半径の凸状小円弧部31,31を設けたから、クランク軸6の連結部12と取付孔5の連結部22の凸状小円弧部31,31の一方又は両方が線接触した状態で、クランク軸6の回転力が取付孔5に伝達されるため、取付孔5に発生する局部的応力値を低下させることができる。
【0067】
また、このように本実施形態では、請求項4に対応して、連結部22は、凸状小円弧部31の内端31Aより外側に位置するから、クランク軸6の連結部12が凸状小円弧部31,31の一方、又はそれら内端31A,31Aに当たった状態で回転力が伝達されるから、取付孔5に発生する局部的応力を低下させることができる。
【0068】
図15は本発明の第10実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、第9実施形態と同様に、中央の直線状連結部22の両端側に前記凸状小円弧部31,31を設け、この凸状小円弧部31の端部に前記円弧状切り欠き部24を設けている。すなわち主円弧部21と凸状小円弧部31との隅部を円弧状切り欠き部24としている。
【0069】
このように本実施形態では、取付孔5の連結部22,22,22,22の両端側に、小半径の凸状小円弧部31,31を設け、凹部として円弧状切り欠き部24を備え、請求項3,4,5及び6に対応して、上記各実施形態と同様な作用・効果を奏する。
【0070】
図16は本発明の第11実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、第9実施形態と同様に、中央の直線状連結部22の両端側に前記凸状小円弧部31,31を設け、この凸状小円弧部31の端部と主円弧部21との間に前記逃げ凹部25を設けている。
【0071】
このように本実施形態では、取付孔5の連結部22,22,22,22の両端側に、小半径の凸状小円弧部31,31を設け、凹部として逃げ凹部25を備え、請求項3,4,5及び7に対応して、上記各実施形態と同様な作用・効果を奏する。
【0072】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0073】
【発明の効果】
請求項1の発明は、前記駆動軸及び前記取付孔は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部を連結する四つの直線状連結部とを備えた断面形状を有するものであり、駆動軸から伝達される回転モーメントによる部分的な応力集中を緩和することができる。
【0074】
請求項2の発明は、前記取付孔の連結部は、内側に突出する大円弧状をなすものであり、駆動軸から伝達される回転モーメントによる部分的な応力集中を緩和することができる。
【0075】
請求項3の発明は、前記取付孔の連結部の両端側に、小半径の凸状小円弧部を設けたものであり、駆動軸から伝達される回転モーメントによる部分的な応力集中を緩和することができる。
【0076】
また、請求項4の発明は、前記連結部は、前記凸状小円弧部の内端より外側に位置するものであり、取付孔に発生する局部的応力を低下させることができる。
【0077】
また、請求項5の発明は、前記主円弧部と前記連結部との連結箇所の駆動軸隅部に対応して、前記取付孔の隅部に外側に凹んだ凹部を設けたものであり、駆動軸の隅部が取付孔の隅部に当たることがない。
【0078】
また、請求項6の発明は、前記凹部は、小半径の円弧状切り欠き部からなるものであり、取付孔の隅部箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0079】
また、請求項7の発明は、前記凹部は、前記取付孔の前記円弧部の端部を外側に凹ませたものであり、取付孔の隅部箇所近傍に発生する応力を削減することができる。
【0080】
また、請求項8の発明は、前記インナーロータが鉄系焼結部材であり、取付孔の形状加工が容易である。
【0081】
また、請求項9の発明は、前記焼結部材は、Fe−Cu−C系で密度が6.6〜7.0cmであり、従来品よりも低い密度の部品で対応が可能となり、製品コストの削減が可能となる。
【0082】
また、請求項10の発明は、前記駆動軸が、原動機のクランク軸に連結されているものであり、原動機の振動条件においても、異音の発生を防止し、耐久性に優れたインナーロータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す取付孔と駆動軸の断面図である。
【図2】同上、インナーロータと駆動軸の正面説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す取付孔と駆動軸の断面図である。
【図4】同上、取付孔の要部の拡大断面図である。
【図5】同上、取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す取付孔と駆動軸の断面図である。
【図7】同上、取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態を示す取付孔の要部の拡大断面図である。
【図10】同上、取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図11】本発明の第6実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図13】本発明の第8実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図14】本発明の第9実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図15】本発明の第10実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図16】本発明の第11実施形態を示す取付孔と駆動軸の要部の拡大断面図である。
【図17】内接型ギヤポンプを示す概略図である。
【図18】従来例を示す取付孔と駆動軸の断面図である。
【図19】従来例を示す回転伝達状態の取付孔と駆動軸の断面図であり、一部を拡大してる。
【符号の説明】
1 内接型ギヤポンプ
4 インナーロータ
5 取付孔
5S 軸芯(取付孔の軸芯)
6 クランク軸(駆動軸)
6S 軸芯(クランク軸の軸芯)
11 主円弧部
12 直線状連結部
13 隅部
21 主円弧部
21T 端部
22 直線状連結部
22A 連結部
23 隅部
24 円弧状切り欠き部(凹部)
25 逃げ凹部(凹部)
31 凸状小円弧部

Claims (10)

  1. 軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔は前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記取付孔に挿入した前記駆動軸により回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータにおいて、前記駆動軸及び前記取付孔は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部を連結する四つの直線状連結部とを備えた断面形状を有することを特徴とする内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  2. 軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔は前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記駆動軸により前記取付孔に回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータにおいて、前記駆動軸は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部を連結する四つの連結部とを備えた断面形状を有し、前記取付孔の連結部は、内側に突出する大円弧状をなすことを特徴とする内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  3. 軸芯に駆動軸を挿入する取付孔を形成し、この取付孔は前記駆動軸にほぼ対応する断面形状を有し、前記駆動軸により前記取付孔に回転力が伝達される内接型ギヤポンプのインナーロータにおいて、前記駆動軸は、同一円上の四つの主円弧部と隣り合う前記主円弧部の両端を連結する四つの連結部とを備えた断面形状を有し、前記取付孔の連結部の両端側に、小半径の凸状小円弧部を設けたことを特徴とする内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  4. 前記取付孔の前記連結部は、前記凸状小円弧部の内端より外側に位置することを特徴とする請求項3記載の内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  5. 前記主円弧部と前記連結部との連結箇所の駆動軸隅部に対応して、前記取付孔の隅部に外側に凹んだ凹部を設けたことを特徴とする請求項2〜4記載の内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  6. 前記凹部は、小半径の円弧状切り欠き部からなることを特徴とする請求項5記載の内接型ギヤポンプインナーロータ。
  7. 前記凹部は、前記取付孔の前記円弧部の端部を外側に凹ませたことを特徴とする請求項5記載の内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  8. 前記インナーロータが鉄系焼結部材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  9. 前記焼結部材は、Fe−Cu−C系で密度が6.6〜7.0cmであることを特徴とする請求項8記載の内接型ギヤポンプのインナーロータ。
  10. 前記駆動軸が、原動機のクランク軸に連結されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の内接型ギヤポンプのインナーロータ。
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